(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】給気および温室の温度を低下させるための方法
(51)【国際特許分類】
F25B 19/00 20060101AFI20220721BHJP
A01G 9/24 20060101ALI20220721BHJP
F24F 3/14 20060101ALI20220721BHJP
F24F 3/044 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
F25B19/00 Z
A01G9/24 R
F24F3/14
F24F3/044
(21)【出願番号】P 2019503888
(86)(22)【出願日】2017-04-04
(86)【国際出願番号】 NL2017050210
(87)【国際公開番号】W WO2017176114
(87)【国際公開日】2017-10-12
【審査請求日】2020-03-26
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518355652
【氏名又は名称】ファン・デル・フーベン・ホルティカルチャラル・プロジェクツ・ベー・フェー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】スパーンス,ペーテル・ルーベン
(72)【発明者】
【氏名】キッケルト,フィンセント・マルテイン
【審査官】笹木 俊男
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-210235(JP,A)
【文献】特表2014-500793(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0033192(US,A1)
【文献】国際公開第2015/123659(WO,A1)
【文献】特開2010-200634(JP,A)
【文献】特開2013-111072(JP,A)
【文献】特開2005-180856(JP,A)
【文献】特表2012-525954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 19/00
F24F 3/14
F24F 11/00 ~ 11/89
A01G 9/24
B01D 53/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)供給周囲空気を液体水に接触させ、水の一部が気化して、供給周囲空気よりも高い湿度および低い温度の空気を得る工程と、
(b)工程(a)で得られた空気を、吸湿性水溶液に接触させて、工程(a)で得られた空気よりも湿度が低下した空気と、水希釈吸湿性溶液とを得る工程と、
(c)工程(b)で得られた空気を、液体水に接触させ、水の一部が気化して、工程(a)で得られた空気よりも温度が低下した空気を得る工程と、
工程(c)で得られた空気を温室の内部に供給する工程と
によって、供給周囲空気の温度を低下させる方法であって、
工程(d)では、工程(b)で得られた水希釈吸湿性溶液を濃縮し、冷却して、濃縮され冷却された吸湿性溶液を得、この溶液を工程(b)で吸湿性水溶液または吸湿性水溶液の一部として使用
し、
工程(d)の水希釈吸湿性溶液の濃縮が連続的に実施され、工程(a)、(b)および(c)が非連続的に実施され、
濃縮吸湿性溶液を得るための工程(d)の水希釈吸湿性溶液の濃縮が、1日当たり少なくとも23時間実施され、工程(a)、(b)および(c)が1日当たり1から14時間実施され、
工程(b)で得られた水希釈吸湿性溶液の一部が断熱貯蔵容器に貯蔵され、工程(b)で得られた水希釈吸湿性溶液の一部は濃縮吸湿性溶液と混合され、工程(b)では、得られた混合物が吸湿性水溶液として1日当たり1から14時間使用され、1日当たり少なくとも23時間かけて、断熱容器から排出された水希釈吸湿性溶液の流れ中に存在する水の一部を気化させることによって、濃縮吸湿性溶液が得られる、供給周囲空気の温度を低下させる方法。
【請求項2】
供給周囲空気の露点が30℃を超える請求項1に記載の方法。
【請求項3】
吸湿性水溶液が1,2-プロパンジオールを含む請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程(c)で得られた空気の露点が30℃未満である請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程(a)、(b)および(c)を実施する場合に、工程(b)で使用される前に混合物が冷却される請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
濃縮吸湿性溶液が冷却流体に対する間接的な熱交換によって冷却され、濃縮され冷却された吸湿性溶液および使用済みの冷却流体が生じる請求項
5に記載の方法。
【請求項7】
冷却流体として再使用するために、1日当たり少なくとも23時間実施される冷却工程で、使用済みの冷却流体の温度を低下させる請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
吸収冷凍機プロセスによって、冷却流体の温度を低下させる請求項
7に記載の方法。
【請求項9】
吸収冷凍機プロセスが、(i)液体アンモニアを気化させる工程、(ii)液体水との接触によりアンモニア蒸気を吸収し、アンモニアで飽和された水相を生じる工程、(iii)アンモニア飽和水相を加熱して液体水からアンモニアガスを分離する工程および(iv)アンモニアガスを冷却して工程(i)で再使用するためにアンモニアを凝縮する工程を含む請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
工程(i)のアンモニアの気化の冷却効果によって、冷却流体の温度を低下させる請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
温室の内部に空気を分配するようなその長さに沿って複数の開口部を有する多数の平行に配向された空気分配管を介して、空気が温室の内部に供給される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)で得られた低温の空気が共通空間に供給され、その空間が少なくとも5つの空気分配管に流体接続され、その空間に、温室内からの空気の再循環流が供給される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
工程(c)で得られた低温の空気が、1日当たり1から14時間共通空間に供給され、残りの時間では、少なくとも温室内からの空気の再循環流が共通空間に供給されて、管を介して温室に戻され再循環される請求項
12に記載の方法。
【請求項14】
温室であって、
一方の側で共通空間に流体接続された多数の平行で実質的に水平に配向された空気分配管と、
第1の気化冷却パッド、吸湿性除湿パッドおよび第2の気化冷却パッドを備え、温室の外部を共通空間に流体接続する冷却部とを備える温室であって、
共通空間が、温室の内部を共通空間に流体接続する1つ以上の開口部と、共通空間から前記多数の空気分配管に空気を輸送する手段とをさらに備え
、
冷却部が、第1の気化冷却パッドに流体接続された空気入口と、第2の気化冷却パッドに流体接続された空気出口と、第1の冷却パッドと吸湿性冷却パッドとの間のバイパスバルブとを備え、このバイパスバルブが、空気入口と、第1の冷却パッドと、吸湿性除湿パッドと、第2の気化冷却パッドと、共通空間への空気出口とを通る空気の流路を形成するための閉位置と、空気入口と、第1の冷却パッドと、共通空間へのバイパスバルブとを通る空気の代替流路を可能にする1つ以上の開位置とを有する、温室。
【請求項15】
共通空間が、温室の側壁と、前記側壁から離間された平行壁と、屋根とによって画定され、側壁には冷却部が設けられ、平行壁には共通空間を空気分配管に流体接続するための開口部が存在し、平行壁および/または屋根には、温室の内部を共通空間に流体接続する1つ以上の開口部が設けられている請求項
14に記載の温室。
【請求項16】
温室の内部を共通空間に流体接続する1つ以上の開口部には、温室内から共通空間への空気の流れを制御するように、これらの開口部を開閉する手段が設けられている請求項
15に記載の温室。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給気の温度を低下させる方法と、多数の平行で実質的に水平に配向された空気分配管と冷却部とを備える温室とに関する。
【背景技術】
【0002】
半密閉型温室については、1992年に、Klimaatbeheersing、第21巻、第165から172頁(1992)のVan Paassen、A.H.C.らによるVerdampingskoeling voor tuinbouwkassen(Evaporative cooling for greenhouses)と題された論文に記載されている。このような温室の周囲空気では、温室内からの再循環空気またはそれらの混合物が、多数の平行に配向された通気管を介して温室に分配される。半密閉型(semi-closed)という用語は、周囲空気が温室に供給され得、また温室が、それ自体の空気の大部分に限りまたはそれ自体の空気の大部分を部分的に再循環するように装備されているという事実を指す。通気管は、栽培物の下に平行に配置される。通気管内に液体水を注入することによって空気が冷却される。半密閉型温室の例は、国際公開第2004/032606号、欧州特許出願公開第1464219号明細書および国際公開第2008/002686号に記載されている。様々な半密閉型温室が建設され、成功裏に運転されてきた。
【0003】
公知の半密閉型温室の問題点は、周囲空気が高い露点を有する場合、周囲空気を効率的に冷却することが困難になることである。周囲空気の温度を十分に低下させるためには、従来の気化冷却では十分ではなく、さらに多くのエネルギーを消費する冷凍冷却が必要である。代わりに、いわゆる密閉型温室を使用することもある。しかしながら、密閉型温室は、新鮮な空気が温室に供給されないという欠点を有する。したがって、そのような温室を操作するためには、例えば二酸化炭素を添加するための追加の措置が必要とされる。さらに、周囲温度が高い場合には、このような密閉型温室には、エネルギーを消費する冷凍冷却も必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2004/032606号
【文献】欧州特許出願公開第1464219号明細書
【文献】国際公開第2008/002686号
【非特許文献】
【0005】
【文献】Van Paassen、A.H.C.らによるVerdampingskoeling voor tuinbouwkassen(Evaporative cooling for greenhouses)、Klimaatbeheersing、第21巻、第165から172頁(1992)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、さらに効率的に給気、特に高い露点を有する給気の温度を低下させる方法を提供することが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
次の方法によりこれが達成される。給気の温度を低下させる方法:
(a)給気と液体水とを接触させ、水の一部が気化して、給気よりも高い湿度および低い温度の空気を得る工程と、
(b)工程(a)で得られた空気と、吸湿性水溶液とを接触させて、工程(a)で得られた空気よりも湿度が低下した空気と、水希釈吸湿性溶液とを得る工程と、
(c)工程(b)で得られた空気と、液体水とを接触させ、水の一部が気化して、工程(a)で得られた空気よりも温度が低下した空気を得る工程であって、
工程(d)では、工程(b)で得られた水希釈吸湿性溶液を濃縮し、冷却して、濃縮され冷却された吸湿性溶液を得、この溶液を工程(b)で吸湿性水溶液または吸湿性水溶液の一部として使用する工程により、給気の温度を低下させる方法。
【0008】
出願人は、本発明による方法により、空気、特に高い露点を有する空気の温度を低下させる効率的な方法が得られることを見出した。工程(a)で得られた高度に飽和した空気流に対して工程(b)を実施することにより、高いエネルギー含量を有する水希釈吸湿性溶液が得られる。このエネルギーを使用して、該方法の効率をさらに向上させることができる。さらに、淡水または大量の淡水を加えることなく、この方法を実施することが可能である。
【0009】
給気の露点は、好ましくは高く、さらに好ましくは30℃を超える。工程(c)で得られた空気の露点は、30℃未満が好適である。工程(c)で得られた空気の飽和度は高く、好適には相対湿度が90%を超えるため、得られた空気の温度は30℃未満、好適には25から29℃である。空気のこのような温度および飽和度は、温室での使用に適している。
【0010】
工程(a)は、液体水と給気とが直接接触する任意の方法によって実施されてもよい。これは、例えば輸送導管内の給気流に水を噴霧することによって達成されてもよい。好ましくは、水が下方向に開放表面領域に沿って流れ、給気が実質的な水平方向に開放表面領域および水を通過するいわゆる気化パッドが使用される。液体水の一部の気化により、結果として、気化パッドを通過する空気の温度が低下し、水飽和度が上昇する。水の温度は、好ましくは、工程(a)に供給される給気の温度と前記給気の露点との間である。工程(a)で得られた空気が、水で飽和されているか、ほぼ水で飽和されていることが有利であることが分かっている。工程(a)で得られた空気は、好ましくは85%超、さらに好ましくは90%超の相対湿度を有する。
【0011】
工程(b)では、工程(a)で得られた空気と、吸湿性水溶液とを接触させる。この吸湿性水溶液は、吸湿性塩またはグリコールを含んでもよい。吸湿性塩の例には、塩化リチウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム、ギ酸カリウムおよび塩化ナトリウムが挙げられる。グリコールは腐食性が低く、使用するのが好ましい。好適なグリコールの例には、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびブチレングリコールが挙げられる。該方法を温室で使用する場合、1,2-プロパンジオールとしても知られているプロピレングリコールが有毒ではないことから好ましい。
【0012】
工程(b)では、工程(a)の気化冷却パッドと同様の方法で、工程(a)で得られた空気と、吸湿性水溶液とを直接接触させる。液体の吸湿性水溶液は、開放表面領域に沿って流れ落ち得、空気は、いわゆる吸湿性除湿パッドの前記開放表面を水平に流れる。液体の吸湿性水溶液によって、空気中に存在する水蒸気が吸収される。このプロセス工程では、水が凝縮し、結果として生じる結露の潜熱により吸湿性水溶液の温度が上昇し、工程(b)で空気が吸湿性水溶液と接触することから空気の温度が上昇する。いくつかの用途では、吸湿性除湿パッドの除湿効率を改善するために、表面領域および液体水が局所的に冷却される。ここで出願人は、工程(b)で比較的温かい水希釈吸湿性溶液を得ることがさらに効率的であることを見出した。これは、工程(b)の比較的温かい水希釈吸湿性溶液が、工程(d)でさらに効率的に再生され得るためである。
【0013】
工程(b)に供給される吸湿性水溶液中の1,2-プロパンジオールの濃度は、好ましくは80重量%超である。工程(b)に供給される吸湿性水溶液の温度は、好ましくは可能な限り低く、さらに好ましくは-10℃を超え、さらに一層好ましくは4℃を超える。工程(b)に供給される吸湿性水溶液の温度は、好ましくは、工程(a)に供給される給気の温度を超え6℃未満であり、さらに好ましくは10℃未満である。
【0014】
工程(c)では、工程(b)で得られた空気と、液体水とを接触させる。これは、工程(a)について説明したのと同じ方法で実施されてもよい。好ましくは、工程(c)は、先に説明した気化パッドで実施される。工程(a)および(b)を実施することにより、空気の露点およびエンタルピーが低下し、この空気が工程(c)に供されると、効率的な温度低下が達成される。
【0015】
好ましくは、工程(c)で得られた空気は、温室の内部に供給される。周囲空気を建物の内部に供給する必要があるような用途または同様の用途では、周囲空気を冷却する必要性が変化する。例えば、昼間は、周囲空気の露点および/または温度は、温室または建物への直接吸気には高すぎることがあり、夜間は、露点および/または温度が吸気に十分である場合がある。この方法は、以下でさらに詳細に説明するように、吸湿性溶液および/または冷却流体の効率的な再生が可能になることから、そのような状況に特に適している。好適には、工程(d)の水希釈吸湿性溶液の濃縮は連続的に実施され、工程(a)、(b)および(c)は非連続的に実施される。濃縮吸湿性溶液を得るための工程(d)の水希釈吸湿性溶液の濃縮が、1日当たり少なくとも23時間実施され、工程(a)、(b)および(c)が1日当たり1から14時間実施される場合がさらに好ましい。工程(a)、(b)および(c)が実施される場合、周囲空気は、本発明による温度低下プロセスを実施することを必要とする露点および/または温度を有し得ることが理解される。
【0016】
上述の連続非連続(continuous-non-continuous)法では、工程(b)で得られた水希釈吸湿性溶液の一部を断熱貯蔵容器に貯蔵し、工程(b)で得られた水希釈吸湿性溶液の一部と濃縮吸湿性溶液とを混合するのが好ましい。上述の工程(b)では、1日当たり1から14時間を参照して、得られた混合物を吸湿性水溶液として使用する。1日当たり少なくとも23時間かけて、断熱容器から排出された水希釈吸湿性溶液の流れ中に存在する水の一部を気化させることによって、濃縮吸湿性溶液が得られる。この気化を実施するための熱源は、任意の高温の気体または液体流であってよい。熱交換は、直接的な熱交換、好ましくは間接的な熱交換によるものでもよい。そのような方法の実施形態では、水希釈吸湿性溶液の再生は、1日当たり少なくとも23時間かけて実施されてもよく、通常の連続操作では1日当たり24時間とする。このようにして、再生プロセス装置が効率的に使用される。
【0017】
上述の連続非連続法では、工程(a)、(b)および(c)を実施する場合に、工程(b)で使用される前に、水希釈吸湿性溶液と濃縮吸湿性溶液との混合物が冷却されることが好ましい。混合物は、好ましくは、冷却流体に対する間接的な熱交換によって冷却され、濃縮され冷却された吸湿性溶液および使用済みの冷却流体が生じる。このような操作の結果、工程(a)、(b)および(c)を実施する場合にのみ冷却流体が使用され、冷却流体として再使用するために、1日当たり少なくとも23時間かけて使用済みの冷却流体の温度を低下させてもよい。このようにして、使用済みの冷却流体の冷却に関与するプロセス装置が効率的に使用される。
【0018】
任意の既知の冷却プロセスによって、冷却流体として再使用するために使用済みの冷却流体の温度を低下させてもよい。出願人は、吸収冷凍機プロセスによって使用済みの冷却流体の温度を低下させた場合、効率的なプロセスが達成可能であることを見出した。好適な吸収冷凍機プロセスの例は、(i)液体アンモニアを気化させる工程、(ii)液体水との接触によりアンモニア蒸気を吸収し、アンモニアで飽和された水相を生じる工程、(iii)アンモニア飽和水相を加熱して液体水からアンモニアガスを分離する工程および(iv)アンモニアガスを冷却して工程(i)で再使用するためにアンモニアを凝縮する工程を含む。そのようなプロセスでは、工程(i)のアンモニアの気化の冷却効果によって、使用済みの冷却流体の温度を低下させる。工程(iii)を実施するための熱源は、任意の高温液体またはガス流、例えば廃熱流であってよい。好ましくは、熱源は蒸気である。上述のように水希釈吸湿性溶液の再生のために蒸気が使用される場合、動力源として蒸気のみを使用して操作することができるプロセスが得られる。工程(iv)のアンモニアガスの冷却は、濃縮工程の前に、その貯蔵から排出された水希釈吸湿性溶液との間接的な熱交換によって部分的に実施されてもよい。このように冷却されたアンモニアは、冷却塔などの従来の手段によってさらに冷却されてもよい。
【0019】
工程(c)で得られた空気が温室の内部に供給される場合、温室の内部に空気を分配するようなその長さに沿って複数の開口部を有する多数の平行に配向された空気分配管を介して、空気が温室の内部に供給されることが好ましい場合がある。そのようなプロセスでは、工程(c)で得られた低温の空気が共通空間に最初に供給され、その空間が少なくとも5つの空気分配管に流体接続され、その空間に、温室内からの空気の再循環流が供給されることが好ましい場合がある。さらに好ましくは、工程(c)で得られた低温の空気が、先に述べた1日当たり1から14時間共通空間に最初に供給され、残りの時間では、少なくとも温室内からの空気の再循環流が共通空間に供給されて、管を介して温室に戻され再循環される。工程(a)、(b)および(c)が実施されない期間に、温室に周囲空気を入れることが依然として有利であり得る。例えば、周囲空気の温度は、夜間に十分に低く、冷却工程(a)から(c)を実施せずに、この空気を取り込むことができる。この状況では、気化冷却パッドおよび吸湿性除湿パッドを少なくとも部分的にバイパスすることが好ましい場合がある。液体はパッドを通って流れないが、パッドを通る周囲空気を引き込むために圧力降下を克服しなければならない。例えば、工程(a)の気化冷却パッドと工程(b)の吸湿性除湿パッドとの間にバルブを設けることによって、圧力降下が著しく低いバイパスが形成される。
【0020】
本発明はまた、一方の側で共通空間に流体接続された多数の平行で実質的に水平に配向された空気分配管と、
第1の気化冷却パッド、吸湿性除湿パッドおよび第2の気化冷却パッドを備え、温室の外部を共通空間に流体接続する冷却部とを備える温室であって、
共通空間が、温室の内部を共通空間に流体接続する1つ以上の開口部と、共通空間から前記多数の空気分配管に空気を輸送する手段とをさらに備える温室に関する。空気を輸送する手段は、例えば各空気分配管の入口に配置された換気装置など、任意の公知の空気置換手段によるものであってよい。
【0021】
冷却部は、好適には、第1の気化冷却パッドに流体接続された空気入口と、第2の気化冷却パッドに流体接続された空気出口と、第1の冷却パッドと吸湿性除湿パッドとの間のバイパスバルブとを備え、このバイパスバルブは、空気入口と、第1の冷却パッドと、吸湿性除湿パッドと、第2の気化冷却パッドと、共通空間への空気出口とを通る空気の流路を形成するための閉位置と、空気入口と、第1の冷却パッドと、共通空間へのバイパスバルブとを通る空気の代替流路を可能にする1つ以上の開位置とを有する。
【0022】
温室は、先に半密閉型と呼ばれていたものが適している。温室は、好適には、温室の側壁と、前記側壁から離間された平行壁と、屋根とによって画定される共通空間を有し、側壁には冷却部が設けられ、平行壁には共通空間を空気分配管に流体接続するための開口部が存在し、平行壁および/または屋根には、温室の内部を共通空間に流体接続する1つ以上の開口部が設けられている。温室が矩形の間取りを有する場合、側壁は、いわゆる端切妻壁(end gable wall)とすることができるか、そのような端切妻壁に垂直に配置された実際の側壁とすることができる。温室の内部を共通空間に流体接続する1つ以上の開口部には、温室内から共通空間への空気の流れを制御するように、これらの開口部を開閉する手段が設けられている。
【0023】
本発明は、以下の図によって例示される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明による方法をどのように実施し得るかに関するフローチャートである。
【
図1a】流れ20が熱交換器21aで低温の流れ5および12に対して最初に冷却されることを除いて、
図1と同様のスキームを示す。
【
図3】温室の外側から端壁40に向かって見た際の本発明による温室が示されている。
【
図4】共通空間および冷却部の別の実施形態を示す。
【
図5】ルーバ62が閉じられ、ドア57が空気入口50を取り囲む状況での
図4の共通空間および冷却部を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明による方法をどのように実施し得るかに関するフローチャートである。フローチャートは、方法の可能な操作点を示すために使用される。第1の気化パッド2では、流れ1を介して、36℃の温度および70%の飽和度(露点30℃)を有する空気が液体水に接触させられる。流れ4を介して、水タンク3から第1の気化パッド2に水が供給され、流れ5を介してタンク3に戻される。気化パッド2から、流れ6中に31.9℃の温度および92%の飽和度を有する空気が得られる。次いで、吸湿性除湿パッド7では、この空気と、90重量%の1,2-プロパンジオールを含む吸湿性水溶液とを接触させる。吸湿性除湿パッド7から排出される流れ8中の空気は、33.9℃の温度および67%の飽和度を有する。第2の気化パッド9では、この空気が、液体水に接触させられる。流れ10で得られる空気は、29.5℃の温度および91%の飽和度を有し、27.9℃の露点を有する。流れ11を介して、水タンク3から第2の気化パッド9に水が供給され、流れ12を介してタンク3に戻される。流れ13を介して、タンク3に淡水またはプロセスの他の場所で得られた水が添加される。
【0026】
流れ16を介して、吸湿性除湿パッド7から断熱貯蔵タンク15に、39℃の温度を有する水希釈吸湿性溶液の流れ14が部分的に送られ、流れ17を介して、吸湿性除湿パッド7に部分的に再循環される。工程(b)で得られた水希釈吸湿性溶液のこの部分と、流れ19を介して貯蔵タンク18から供給された濃縮吸湿性溶液とが混合される。混合物は、流れ20を介して吸湿性除湿パッド7に送られる。流れ20は、冷却流体に対する熱交換器21で6℃に冷却される。流れ22を介して、冷却流体貯蔵タンク23から熱交換器21に冷却流体が供給される。流れ24を介して、タンク23に使用済みの冷却流体が戻される。流れ24の温度は熱交換器25で低下する。
【0027】
上述のプロセスは、不連続に、言い換えれば、流れ1中の空気の状態がこのプロセスによる冷却を必要とする際に、1日当たり一定期間中にのみ実施されることができる。工程(b)で得られ、タンク15に貯蔵された水希釈吸湿性溶液の濃縮と、タンク23内に存在する冷却流体の冷却とは、好ましくは連続して、言い換えれば、関連するプロセス装置を最大限に活用するために、1日当たり24時間全体にわたって実施される。
【0028】
水希釈吸湿性溶液が流れ27を介して供給される熱交換器26を使用して、水の一部を気化させることによって、水希釈吸湿性溶液の濃縮が実施される。水希釈吸湿性溶液の温度は、断熱タンクに貯蔵されるため比較的高いことから、必要な量の水を気化させるのに必要なエネルギーは少なくて済む。熱交換器26で使用される熱源は、流れ28として概略的に示されるような蒸気であってよい。流れ29を介して、気化した水が排出され、タンク3に送られてもよい。
【0029】
流れ30および熱交換器25を介して冷却流体を再循環させ、タンク23に戻すことによって、タンク23内に存在する冷却流体の温度を連続的に低下させる。流れ31内の冷却流体を冷却するために使用される冷却媒体は、吸収冷凍機プロセス32の一部としての液体アンモニアの気化によるものである。吸収冷凍機プロセス32の必要な熱源は、流れ33を介して供給され、流れ34を介して排出される蒸気である。
【0030】
図1aは、流れ20が熱交換器21aで低温の流れ5および12に対して最初に冷却されることを除いて、
図1と同様のスキームを示す。
【0031】
図2は、
図3の概略的に示された温室の断面
図AA’を示す。様々な要素の相対的な寸法は拡大縮小されないが、図面の明瞭さを改善するために拡大または制限される場合がある。温室には、端切妻とも呼ばれる端壁40と、床41と、溝42を備えた切妻屋根43とが設けられている。切妻屋根43には、温室内の過圧を避けるために開くことができる通気口44が設けられている。実際には、温室の外部に流れる空気のみが通気口44を通って流れる。また、冷却部52を介して周囲空気を受け取り、開口部51を介して温室内から空気を受け取ることができる共通空間45が示されている。共通空間45は、端壁40と平行にかつ端壁40から離間して延びる仕切壁59によって画定されている。仕切壁59は、溝42の下方の位置まで延びている。共通空間の上端は、屋根60によって囲まれている。共通空間45では、これらの空気流が混合され、多数の平行で実質的に水平に配向された空気分配管46の入口53に供給されてもよい。管46の入口53には換気装置55が設けられている。このような管46の上に、温室内で栽培された栽培物が配置されてもよい。冷却部52には、周囲空気を取り入れるための空気入口50と、第1の気化冷却パッド47と、吸湿性除湿パッド48と、第2の気化冷却パッド49とが設けられている。
図1で説明したパッド47、48および49への気化性流体および吸湿性流体のための供給および排出導管は、明瞭性の理由からこの図には示されていない。周囲空気は、パッドを通る実質的に水平な流路によって流れる。処理された空気は、矢印54によって示されるように冷却部52から排出される。
【0032】
開口部51は、バルブ56によって開閉されて、温室内からの空気の量を調節することができる。閉じられると、管46を介して周囲空気のみが温室に供給される。温室空気のある程度の再循環が好ましいことが分かっている。したがって、バルブ56が開口部51を完全に閉じることができないようにバルブ56を設計することが好ましい場合がある。周囲空気のための空気入口50は、レール58に沿って上方に移動することができる垂直ドア57によって閉じることができる。実際には、ドア57は空気入口50を完全に包囲しないため、ある程度の周囲空気が共通空間45に常に流れる。
【0033】
図3では、温室の外側から端壁40に向かって見た際の本発明による温室が示されている。数字は
図3と同じ意味を持つ。端壁40が透明な材料から作られているため、バルブ56、仕切壁59、および管46の入口53のような一部の詳細が目に見える。温室は、大きな空気入口50または複数の空気入口50を備えたはるかに大きな端壁40を有してもよい。
【0034】
図4は、共通空間および冷却部の別の実施形態を示す。第1の気化冷却パッド47と、吸湿性除湿パッド48と、第2の気化冷却パッド49とが設けられた冷却部61が示されている。さらに、
図5に示される共通空間45の下部64から共通空間45の上部63を閉じることができるルーバ62が示されている。ルーバ62と空気入口50とが開けられると、温室内からの空気と周囲空気とが共通空間45の下部64に引き込まれる。吸湿性除湿および第2の気化冷却が必要でない状況では、第1の冷却パッド47と吸湿性除湿パッド48との間のバイパスバルブ65を開くことによって、これらのパッドをバイパスするような方法が有利であり得る。
【0035】
図5は、ルーバ62が閉じられ、ドア57が空気入口50を取り囲む状況での
図4の共通空間および冷却部を示す。吸湿性除湿パッド48および第2の気化冷却パッド49の一面に、温室内から比較的湿った空気を通すことによって、温室を冷却することが有利であり得る。第2のバイパスバルブ66を開き、それによって上部空間63と吸湿性除湿パッド48の入口とを流体接続することにより、このような流路が生じる。