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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】荷電粒子ビームシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   H01J 37/145 20060101AFI20220721BHJP
   H01J 37/153 20060101ALI20220721BHJP
   H01J 37/147 20060101ALI20220721BHJP
   H01J 37/09 20060101ALI20220721BHJP
   H01J 37/22 20060101ALI20220721BHJP
   H01J 37/28 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H01J37/145
H01J37/153 B
H01J37/147 B
H01J37/09 A
H01J37/22 502H
H01J37/28 B
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019541777
(86)(22)【出願日】2018-03-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-16
(86)【国際出願番号】 EP2018056569
(87)【国際公開番号】W WO2018172186
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-01-14
(31)【優先権主張番号】62/473,997
(32)【優先日】2017-03-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520284322
【氏名又は名称】カール ツァイス マルチセム ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ リートイーゼル
(72)【発明者】
【氏名】ダーク ザイドラー
【審査官】後藤 大思
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/124648(WO,A1)
【文献】特開2014-123565(JP,A)
【文献】特開2006-277996(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01J 37/00-37/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷電粒子ビームシステムであって、
第1の荷電粒子ビームを生成するように構成された荷電粒子源と、
入来する第1の荷電粒子ビームから複数の荷電粒子ビームレットを生成するように構成されたマルチビーム生成器であって、前記複数の荷電粒子ビームレットの各個別のビームレットは、前記複数の荷電粒子ビームレットの他のビームレットから空間的に分離される、マルチビーム生成器と、
前記複数の荷電粒子ビームレットの第1の個別のビームレットが第1の平面において衝突する第1の領域が、前記複数の荷電粒子ビームレットの第2の個別のビームレットが前記第1の平面において衝突する第2の領域から空間的に分離される方法で、前記第1の平面において入来荷電粒子ビームレットを集束させるように構成された対物レンズと、
投射システムと、複数の個別の検出器を備えた検出器システムと、
を備え、
前記投射システムは、衝突する荷電粒子に起因して前記第1の平面内の前記第1の領域を出る二次電子を含む相互作用生成物を前記複数の個別の検出器のうちの第1の1つの検出器上に結像し、衝突する荷電粒子に起因して前記第1の平面内の前記第2の領域を出る二次電子を含む相互作用生成物を前記複数の個別の検出器のうちの第2の1つの検出器上に結像するように構成され、
前記投射システムは、磁気レンズ、磁気偏向器、及び磁気非点収差補正器を含む第1の従属部品と、前記複数の荷電粒子ビームレットが試料の表面上の1つの位置から次の位置まで走査される走査周波数に相当する調整周波数を提供する第2の従属部品とを備える、
荷電粒子ビームシステムであって、
前記第1の平面は、前記試料上に存在し、
前記投射システムの実際の状態を分析し、前記複数の荷電粒子ビームレットによる前記試料の走査中に前記第2の従属部品を操作するように構成されたコンピュータシステムをさらに備え、
前記コンピュータシステムは、前記個別の検出器上の前記二次電子を含む前記相互作用生成物のビームスポットの位置および/または形が一定に保たれる方法で前記第2の従属部品を調整するように構成され、
前記コンピュータシステムは、2ステップモードで前記投射システムを調整するように構成され、それにより、
a. 第1のステップで、前記第1の従属部品は、前記第2の従属部品が一定に保たれているかまたはスイッチを切られている間に調整され、
b. 第2のステップで、前記第2の従属部品は、前記第1の従属部品が一定に保たれている間に調整される、荷電粒子ビームシステム
【請求項2】
前記第2の従属部品は、静電レンズ、静電偏向器および静電非点収差補正器からなる群のうちの少なくとも1つを含む、請求項1に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項3】
前記投射システムは、交差面内に電流監視開孔を備える、請求項1または2に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項4】
高速CCDカメラをさらに備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項5】
前記第2の従属部品は、静電マイクロ光学部品アレイを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の荷電粒子ビームシステム。
【請求項6】
少なくとも1つのコントローラによって、静電レンズ、静電偏向器、及び静電非点収差補正器を含む高速マルチビーム投射位置合わせシステムと、磁気レンズ、磁気偏向器、及び磁気非点収差補正器を含む荷電粒子光学素子と、を備える荷電粒子ビームシステムを動作させる方法であって、
a. 前記高速マルチビーム投射位置合わせシステムをオフ状態にして、前記荷電粒子光学素子で前記荷電粒子ビームシステムを位置合わせするステップと、
b. 複数の二次荷電粒子ビームレットのパターンの画像を記録するステップと、
c. 第1の像が記録される前に前記高速マルチビーム投射位置合わせシステムを作動させるステップと、
d. 複数の検出器上への二次電子を含む相互作用生成物の最適な結像のために前記高速マルチビーム投射位置合わせシステムを制御するステップであって、高速検出器が検出システムへのビーム経路の高速位置合わせの可能性を提供する、非点収差補正器の励起が最適なスポット形状のために調整される、集束素子及び試料高電圧バイアスが最適なスポット形状のために調整される、又は投射交差ズームシステムを介して処理能力対クロストークが最適化されるステップと、
を含む、方法。
【請求項7】
前記記録された画像を分析するステップと、所望パターンからの前記記録されたパターンの偏差を補正するために適切な電圧を差し引くステップと、前記高速マルチビーム投射位置合わせシステムの適切な部品に前記差し引かれた電圧を印加するステップと、をさらに含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
交差面における前記複数の二次荷電粒子ビームレットのセンタリングを監視するステップをさらに含む、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
一次荷電粒子ビームレットによって試料を同時に走査する間に少なくとも2回前記高速マルチビーム投射位置合わせシステムを調整するステップをさらに含む、請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、荷電粒子ビームシステムおよび方法に関する。より詳細には、本発明は、マルチビーム荷電粒子ビームシステムおよび関連方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マルチビーム荷電粒子ビームシステムは、例えば、国際公開第2005024881A2号パンフレットおよび国際公開第2016/124648号パンフレットに開示される。
【0003】
マルチビーム電子顕微鏡などのマルチビーム荷電粒子ビームシステムのために、異なる一次荷電粒子ビームに由来する相互作用生成物、すなわち二次電子は、投射システムによって別個の検出器上に結像される必要がある。この目標を達成するために、静電抽出場を使用することができる。均一な抽出場は、二次電子などの相互作用生成物をマルチ検出器の個別の検出器上に結像させることと、走査偏向器電圧とマルチ検出器の個別の検出器におけるそれぞれのビーム位置との間のマッピングが忠実であることとを確実にする。マルチ検出器の個別の検出器、例えばマルチ検出器の部品を形成するシンチレータ、における二次電子のスポット形状は、静電抽出場の均一性に決定的に依存する。1つのスポットが1つまたはいくつかの対応する検出器上に結像されるとき、静電抽出場の均一性は、ビームと対応する検出信号との間のクロストークを左右する。
【0004】
試料表面上の残留電荷の存在するところで、静電抽出場は局所的に歪むことがある。それによって、別個の検出器への結像は、表面の実行可能な走査が不可能な程度に乱されることがある。特に、検出器におけるビームの位置決めは、強く時間依存的かつ一次ビーム位置依存的になることがある。走査型電子顕微鏡(SEM)における帯電緩和のための一般的な方法は、特に良好な二次結像のための抽出場均一性制約に関して、マルチビーム走査ビームシステムの一次および二次ビーム経路の両方に適合するのが簡単ではない。これは、試料帯電、ガス圧入手法などの影響を低減するために格子を使用する方法に当てはまる。定常状態の場合に(すなわちワークフロー実行の間または画像フレームの記録の間に)検出器を再調整するための利用可能な方法は、マルチビーム荷電粒子ビームシステムでビームを操るのに十分高速ではない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、衝突する一次荷電粒子ビームまたはビームレットに起因して試料が帯電する場合に同様にマルチビーム荷電粒子ビームシステムを動作させるための解決策を提供することである。これらの目標および他の目標は、請求項1に記載の特徴を有するシステムおよび請求項9に記載の特徴を有する方法を用いて解決される。有利な実施形態は、従属請求項に開示される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
原則として本発明は、投射システムを静的(または低周波数)従属部品と動的(または高周波数)従属部品とに分けて考えることによって、これらの目標を解決する。高周波数従属部品を用いてその場で投射システムの再調整が達成される。
【0007】
荷電粒子ビームシステムは、第1の荷電粒子ビームを生成するように構成された荷電粒子源と、入来する第1の荷電粒子ビームから複数の荷電粒子ビームレットを生成するように構成されたマルチビーム生成器を備え、複数の荷電粒子ビームレットの各個別のビームレットは、複数の荷電粒子ビームレットの他のすべてのビームレットから空間的に分離される。荷電粒子ビームシステムは、複数の荷電粒子ビームレットの第1の個別のビームレットが第1の平面において衝突する第1の領域が、複数の荷電粒子ビームレットの第2の個別のビームレットが第1の平面において衝突する第2の領域から空間的に分離される方法で、第1の平面において入来荷電粒子ビームレットを集束させるように構成された対物レンズをさらに備える。荷電粒子ビームシステムは、投射システムと、複数の個別の検出器を備えた検出器システムとをさらに備える。投射システムは、衝突する荷電粒子に起因して第1の平面内の第1の領域を出る相互作用生成物を複数の個別の検出器のうちの第1の1つの検出器、または第1の検出器群上に結像し、衝突する荷電粒子に起因して第1の平面内の第2の領域を出る相互作用生成物を複数の個別の検出器のうちの第2の1つの検出器、または第2の検出器群上に結像するように構成される。投射システムは、低周波数調整を提供する第1の従属部品と、高周波数調整を提供する第2の従属部品とを備える。
【0008】
複数の個別の検出器のうちの第1の1つの検出器は、複数の個別の検出器のうちの第2の1つの検出器と異なっている。各二次荷電粒子ビームレットに対して個別の検出器の群が設けられる場合、すなわち各二次荷電粒子ビームレットに対して2つ以上の検出器が設けられる場合、第1の二次荷電粒子ビームレットに割り振られた個別の検出器の第1の群は、第2の二次荷電粒子ビームレットに割り振られた個別の検出器の第2の群と完全に異なっており、個別の検出器の第1の群の検出器は、個別の検出器の第2の群に同時に属さない。
【0009】
ある特定の場合、個別の検出器は、複数の感応検出サブフィールドから構成されてもよく、すなわち各二次荷電粒子ビームレットは、単一の個別の検出器を形成する複数の検出サブフィールドに衝突する。
【0010】
荷電粒子ビームシステムの一実施形態で、高周波数調整を提供する従属部品は、静電レンズ、静電偏向器および静電非点収差補正器を含む群のうちの少なくとも1つを含む。理想的には、高周波数調整を提供する従属部品は、静電レンズ、静電偏向器および静電非点収差補正器などの静電素子のみからなり、磁気素子を何も含まない。
【0011】
高周波数調整を提供する従属部品は、一次荷電粒子ビームレットが試料表面上の1つの位置から次の位置まで走査される走査周波数に相当する調整周波数を提供することができ、すなわち試料上の走査フィールドが各一次荷電粒子ビームレットで走査される間に高周波数調整を数回、すなわち2回以上、行うことができる。
【0012】
高周波数調整を提供する従属部品は、同様に、個別の二次荷電粒子ビームレットに個別に影響を与え得る、静電マイクロレンズアレイまたは静電非点収差補正器アレイを含み得る。それぞれの静電非点収差補正器アレイは、各二次電子ビームレットのための電子透過開口部と、各開口部を取り囲む2、3、4、6または8個の電極とを有する多孔アレイを含み得る。電極は、互いに対しておよび多孔アレイのキャリアに対して電気的に絶縁される。各開口部を取り囲む個別の電極に適切な電圧を印加することによって、このような開口部を透過する二次電子ビームレットを高周波数で個別に調整または変更することができる。
【0013】
荷電粒子ビームシステムのさらなる実施形態で、投射システムは、交差面内に電流監視開孔を備える。
【0014】
別の実施形態で、荷電粒子ビームシステムは、高速CCDカメラをさらに備える。高速CCDカメラを使用して、試料の帯電に起因する、検出面における相互作用生成物の像(またはスポット)の位置または形の変化を識別することができる。高速CCDカメラで記録された画像を分析することによって、所望の位置および/または所望の形からの、検出面における相互作用生成物のスポットまたは像の偏差を決定することができ、高周波数調整を提供する従属部品のための適切な調整値を差し引くことができ、それぞれの調製電圧をそれぞれの部品に印加することができる。
【0015】
一実施形態で、荷電粒子ビームシステムは、投射システムの実際の状態を分析し、複数の荷電粒子ビームレットによる試料の走査中に第2の従属部品を操作するように構成されたコンピュータシステムを備える。
【0016】
荷電粒子ビームシステムのさらなる実施形態で、コンピュータシステムは、マルチ検出器の個別の検出器上の相互作用生成物の位置および/または形が一定に保たれる方法で投射システムの第2の(動的または高周波数)従属部品を調整するように構成される。
【0017】
荷電粒子ビームシステムの一実施形態で、コンピュータは、2ステップモードで投射システムを調整するように構成され、それにより、
a. 第1のステップで、第1の(低周波数)従属部品は、第2の(動的)従属部品が一定に保たれているかまたはスイッチを切られている間に調整され、
b. 第2のステップで、第2の(動的)従属部品は、第1の従属部品が一定に保たれている間に調整される。
【0018】
本発明の一実施形態による方法は、
- 高速マルチビーム投射位置合わせ方法をオフ状態にして、静的方法および静的荷電粒子光学素子でマルチビーム荷電粒子ビームシステムを位置合わせするステップと、
- ワークフローを整備し開始するステップと、
- 第1の像が記録される前に高速マルチビーム投射位置合わせシステムを作動させるステップと、
- 複数の検出器上への相互作用生成物の最適な結像のために高速マルチビーム投射位置合わせシステムを制御するステップと
を含む。
【0019】
動的従属部品の助けを借りた投射システムの位置合わせは、試料の像を記録するワークフローが実行される間に実行され数回繰り返される。投射システムの位置合わせのために像を記録するプロセスを中断することなく、複数の一次荷電粒子ビームレットで試料を走査し、衝突する一次荷電粒子が原因で試料を出た相互作用生成物を記録することによって、試料の像を記録する間に投射システムの位置合わせを実行することができる。
【0020】
方法の第1のステップで、マルチビーム荷電粒子ビームシステムは、静的方法および静的(または低周波数)荷電粒子光学部品を使用することのみによって調整される。このステップ中に、高速マルチビーム投射位置合わせシステムの部品には、電圧が印加されないか、または既知で定義済みの時不変電圧だけが印加される。
【0021】
検出器収集効率およびクロストークに対する試料帯電の影響を補償するための高速投射システム位置合わせは、投射システム位置合わせ要素、例えば集束の低レイテンシ制御だけでなく、マルチビーム荷電粒子ビームシステムの走査システムと高速検出器カメラおよびリアルタイム投射システム位置合わせアルゴリズムとの同期も提供する。
【0022】
投射システムは、磁気レンズまたはいくつかの磁気レンズと静電素子の組み合わせを備える。静電素子でヒステリシスが解消され、数秒の代わりに数msのスイッチング時間が達成される。加えて、調整中のラーモア回転が回避される。
【0023】
相互作用生成物の投射経路内の静電偏向器および/または静電非点収差補正器は、渦電流がなく、誘導性がなく、調整時間がmsの代わりにμsになるという利点を提供する。
【0024】
国際公開第2016/124648号パンフレットの図2に描かれるような、投射システム内に配置されたズーム開孔を用いて、開孔サイズの高速な実質上の変更が達成される。相互作用生成物の二次荷電粒子ビーム経路内の追加の高速偏向器は、検出システム上へのビーム経路の高速位置合わせの可能性を提供する。
【0025】
相互作用生成物のビーム経路の交差面内に配置された高速角度分解電流監視装置を活用して、リアルタイムでの交差点のセンタリングを達成することができる。
【0026】
高速CCDカメラおよび静電位置合わせ要素は、コンピュータシステムに直接結合することができる。それによって、他のすべての要素を制御する主制御ソフトウェアを通したレイテンシが回避され、静電位置合わせ要素のオフモードでは、二次電子投射はそれらによってまったく影響を受けない。コンピュータシステムは、グラフィック処理ユニット(GPU)を備えてもよく、FPGAを利用したものであってもよい。位置合わせアルゴリズムは、CCDカメラによって記録された画像において高速スポット位置およびスポット形状検出を達成するために構成することができる。二次電子ビームレットの最適なシフトは、偏向器の励起に対する偏向素子の感度を使用することによって達成することができ、直接最適化のためにフィードバックループを使用することができる。画像歪みの場合、二次電子ビームスポットの形状に関する非点収差補正器の感度を使用することによって、および二次電子ビームスポットの形状の直接最適化のためにフィードバックループを使用することによって、二次電子の最適な位置を調整するために非点収差補正器の励起を使用することができる。
【0027】
位置合わせアルゴリズムを用いて、非点収差補正器の励起は、非点収差補正器の感度を使用することによって、および直接最適化のためにフィードバックループを使用することによって、最適なスポット形状のために調整される。集束素子の位置合わせおよび試料高電圧バイアスは、レンズの感度を使用し、直接最適化のためにフィードバックループを同様に使用することによって、最適なスポット形状のために調整される。クロストーク最適化のために、投射交差ズームシステムと、リアルタイムで(フレーム毎に1回)処理能力(TPT)対クロストークを最適化するためのそれぞれの制御アルゴリズムとを介して、実質上の開孔サイズを変更することができる。
【0028】
位置合わせアルゴリズムは、例えば、走査された一次荷電粒子ビームレットのフライバック中に、すなわち、試料上のラインまたはフィールドが一次荷電粒子ビームレットによって走査された後、一次荷電粒子ビームレットが新しいラインまたは新しいフレームの開始点に戻される間に、像記録モードから交差監視モードへの高速切り替えを提供することができ、このようなフライバック中に、通常、一次荷電粒子ビームレットと試料との相互作用生成物は、試料の像を記録するために使用されない。交差位置の最適化は、複数の一次荷電粒子ビームレットを用いて試料を走査することによって試料の像を記録するプロセス中に、その場で交差監視によって同様に達成することができる。
【0029】
開孔上での高速角度分解電流検出は、角度分解電流検出器によって検出される最小化した電流を達成するように静電素子を調整することによって交差点のセンタリングおよび/または位置合わせのために有利である。それぞれの角度分解電流検出器は、開孔の開口部を取り囲む複数の電気的に絶縁された電極を有する、投射システムの交差面における絞りを用いて達成することができる。
【0030】
ビームセンタリングのための角度分解検出器の代替実施形態は、発光物質で覆われた開孔と、発光物質に衝突する二次荷電粒子に起因するシンチレーションを検出する高速カメラとを備え得る。同様に、この代替実施形態は、リアルタイムセンタリングのための交差監視装置を提供する。
【0031】
添付図面を参照してさらなる詳細を開示する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】マルチビーム荷電粒子システムの一実施形態の略図を示す。
図2】第1の実施形態の検出システムの略図を示す。
図3】二次電子ビームレットのビーム経路における投射システム制御のための高速(動的)従属部品を有するマルチビーム投射制御の一部分のブロック図を示す。
図4】追加の静電偏向器、静電非点収差補正器、静電レンズ、ビームスプリッタ偏向器および開始エネルギーHV供給部を有する投射経路の略図を示す。
図5図5a-図5fは、試料帯電によって引き起こされる特定の歪みの場合に投射システムの動的従属部品を用いて達成される補正の説明図を示す。
図6】二次荷電粒子ビームレットのフィルタリングを達成するために投射システム内に設けることができる絞りを示す。
図7】交差位置補正のための角度依存電流読み出しのための交差監視能力を有する開口絞りの実施形態を示す。
図8】検出システムのさらなる実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
下記の例示的な実施形態で、機能および構造が類似の構成要素は、できる限り類似の参照符号で指し示される。
【0034】
図1の略図は、マルチビームレット荷電粒子顕微鏡システム1の基本的な特徴および機能を例示する。図で使用されるシンボルは、例示された構成要素の物理的構成を表さないが、それらのそれぞれの機能性を象徴するように選ばれていることに留意するべきである。示されるシステムのタイプは、対物レンズ102の物体平面101に位置する物体7の表面上に一次電子ビームスポット5を生成するために複数の一次電子ビームレット3を使用する走査型電子顕微鏡(SEM)のそれである。しかしながら、イオン、とりわけヘリウムイオン、陽電子、ミューオンおよびその他のものなどの他のタイプの一次荷電粒子を電子の代わりに使用してシステム1の特徴および機能が同様に実施され得ることは、言うまでもない。
【0035】
示される顕微鏡システム1は、複数の一次荷電粒子ビームレット3を生成するための荷電粒子マルチビームレット生成器300と、一次荷電粒子ビーム経路13から二次荷電粒子ビーム経路11を分離するためのビーム・スプリッタ・ユニット400と、物体平面101上に一次荷電粒子ビームレット3を集束させるように適合された物体照射ユニット100と、各二次荷電粒子ビームレット9に対する個別の強度信号を作成するための検出ユニット200とを備える。
【0036】
例示された実施形態で、一次ビームレット生成器300は、電子源301、コリメーティングレンズ303、一次ビームレット形成ユニット305、および視野レンズ307を備える。
【0037】
電子源301は、コリメーティングレンズによって平行にされて一次ビームレット形成ユニット305に入射するビーム311を形成する、発散電子ビーム309を生成する。図1に示されるようにただ1つの発散電子ビーム309を生成する電子源の代わりに、2つ以上の発散電子ビームを作成する電子源を使用してもよい。2つ以上の電子ビームは、それから、ただ1つのコリメーティングレンズ303によって、またはそれぞれ個別の電子ビーム309のサブセットもしくはただ1つを平行にする適切な数のコリメーティングレンズ303によって、平行にされる。
【0038】
ビームレット形成ユニット305は、基本的に、1つまたは複数の電子ビーム311によって照射される第1の多孔プレートと、ビーム311中の電子の移動の方向に関して、第1の多孔プレートの下流に位置する第2の多孔プレートとを備える。第2の多孔プレートは、好ましくは、集束させる特質が開孔に与えられ、第2の多孔プレートがマイクロレンズアレイの機能を担うように、規定電位に設定される。
【0039】
ビームスポット5において物体7に入射する一次電子は、物体7の表面から放射される二次電子を生成する。二次電子は、二次電子ビームレット9を形成し、それは、対物レンズ102およびビーム・スプリッタ・ユニット400を横断し、二次ビーム経路11に従う。ビーム・スプリッタ・ユニット400は、通常、磁場を用いて一次ビーム経路13から二次ビーム経路11を分離し、二次ビーム経路11を検出ユニット200に方向づける。
【0040】
検出ユニット200は、二次電子ビームレット9を検出器配置209の電子感知型検出器207の表面平面211上に投射するための投射レンズ205を備える。電子感知型検出器207は、単一デバイスであってもよく、または2つ以上の個別の検出器を備えてもよい。これにかかわらず、検出器207は、投射レンズ205によって検出器表面211上に集束される二次荷電粒子ビームレット9のパターンに適合したパターンに配置された感知エリアのアレイを提供する。これは、検出器表面211に入射する他の二次荷電粒子ビームレット9から独立した各個別の二次荷電粒子ビームレット9の検出を可能にする。したがって、複数の電気信号が作成され、それによって、各信号の値は、二次ビームレット9のうちのただ1つの二次ビームレットの性質に対応する。
【0041】
一次ビームレット生成器300が、各パターンが基本パターンのサブパターンを形成するように一次ビームレット3のパターンを変更することだけでなく、基本パターンを変更することも可能にする場合、検出器配置209には、好ましくは、異なる基本パターンに配置されたその感知エリアをそれぞれ有する、さらなる検出器207が装備されている。二次ビームレット9のパターンは、一次ビームレット生成器300によって生成される一次ビームレット3のパターンに対応するので、各検出器207の感知エリア・アレイ・パターンは、好ましくは、一次ビームレット3のために利用可能なパターンのうちの1つに対応する。
【0042】
物体照射ユニット100は、例えば試料台のような物体取付け台によって物体7の調査される表面が位置決めされる物体平面101上に一次荷電粒子ビームレット3を集束させる対物レンズ102を備える。物体取付け台は、図に示されていない。物体照射システム100は、複数の集束荷電粒子ビームレットで同時に試料の表面を走査するために、複数の荷電粒子ビームレットをビーム伝播方向に対して垂直な方向に偏向させることができる偏向システム(図示されない)をさらに備える。
【0043】
例示された実施例で、一次荷電粒子源は、エミッタチップ310および引き出し電極302を特徴とする電子源301の形で実施される。例えばヘリウムイオンのような、電子以外の一次荷電粒子を使用するとき、一次荷電粒子源301の構成は、示されたものと異なっていてもよい。
【0044】
電子源301は、発散電子ビーム309を発し、それは、示された実施例ではコリメーティングレンズ303によって平行にされて、平行ビーム311を形成する。コリメーティングレンズ303は、通常、1つもしくは複数の静電レンズもしくは磁気レンズによって、または静電レンズと磁気レンズの組み合わせによって形成される。コリメーティングレンズの使用は、必須ではないが、ビームレット形成ユニット305で使用される多孔プレートが平面構造、すなわち開孔315が非曲面内に配置される構成を有するとき、好ましい。コリメーティングレンズ303が使用されないとき、多孔プレート313および320の開孔315は、好ましくは曲面内に配置され、その曲率は、例えば、参照により本明細書に援用される、文献国際公開第2007/028596A1号パンフレットに説明されるように、一次ビーム309の発散性に適合される。
【0045】
平行ビーム311(または、コリメーティングレンズが使用されない場合、非平行ビーム)は、一次ビームレット形成ユニット305の多孔セレクタプレート313に入射する。多孔プレートセレクタ313は、その中に形成された2つ以上の開孔アレイ317を有する。各開孔アレイは、多孔セレクタプレート313内に形成された1つまたは複数の開孔315を備える。多孔アレイの開孔は、一次元または二次元パターンに配置することができ、それによって、二次元パターンは物体の表面の高速検査のために好ましい。
【0046】
検出システムはフィルタ208をさらに備え、それを活用して、第1の平面101において試料7から出る相互作用生成物(例えば二次電子)をそれらの軌道またはビーム経路に従ってフィルタリングすることができる。フィルタを有するそれぞれの検出システムの一実施例が図2に示される。
【0047】
マルチビームシステムは、マルチ検出器209を用いて記録された画像を評価および分析するためだけでなく個別の荷電粒子ビーム成分を制御するように構成される、コンピュータシステムまたはコントローラ10をさらに備える。加えて、コントローラ10は、デイスプレイ上にマルチ検出器209を用いて集められた検出信号に基づいて画像を生成するように構成される。
【0048】
図2の検出システム200は、投射レンズ205およびマルチ検出器209に加えて2つの追加の荷電粒子レンズ210、211を備える。第1の追加の荷電粒子レンズ210は、交差面214内に交差点を形成する。この交差面で、異なる領域で第1の平面101を出る相互作用生成物のビーム経路、すなわち二次電子ビームレットのビーム経路は、重畳される。第2の追加の荷電粒子レンズ211は、その焦点面が第1の追加の荷電粒子レンズ210の交差面214と実質的に一致するように動作する。第1の平面101を出る相互作用生成物のビーム経路は、それから、第2の追加の荷電粒子レンズ211の下流で互いに分離されて走り、マルチ検出器209の別個の検出領域215上に投射レンズ205によって投射される。
【0049】
交差面214またはその近傍に絞り216が配置され、それを活用して、相互作用生成物をそれらのビーム経路に従ってフィルタリングすることができる。円形開口部218を含む、絞りに関する第1の実施形態が図6に示される。円形開口部218は、相互作用生成物に対して透過性であり、一方絞り216の外側部分は、相互作用生成物に対して非透過性である。投射システムの交差面におけるこのような種類の明視野絞りを用いて、異なる個別の検出フィールド間のクロストーク、すなわち、第1の領域で第1の平面101を出る相互作用生成物のビーム経路と、第1の領域とは異なる第2の領域で第1の平面101を出る相互作用生成物に割り当てられた検出器との間のクロストークを回避するか、または少なくとも低減することができる。
【0050】
図2の投射システムの高周波数調整のために、以下に図4を参照して説明されるように、同様の方法で配置され同様の方法で制御される図2に示される要素に加えて、静電レンズ、静電偏向器および静電非点収差補正器などの追加の動的要素を設けることができる。同様に、二次荷電粒子ビームレットによって生成されるスポットの像を記録するための検出器方式は、図4を参照して以下により詳細に説明されるように構成することができる。
【0051】
図2に示されるシステムおよび図6に示される絞りのさらなる詳細に関しては、国際公開第2016/124648号パンフレットのそれぞれの図の説明が参照され、そのそれぞれの図2および6に関するその開示は、参照により本明細書に援用される。
【0052】
検出システム200における絞りに関する代替実施形態が図7に示される。絞り1213は、相互作用生成物に対して透過性である円形開口部1214を同様に有する。しかしながら、円形開口部は、絞りの本体に対してだけでなく互いに対しても電気的に絶縁された数個の電極1215a~1215hによって半径方向に取り囲まれている。電極は、電流検出器として機能することができる。各電極は信号線を備え、それを介して各電極内に誘導された電流を検出することができる。電極1215a~1215hのセットに誘導された電流または電荷の非対称性を検出することによって、絞りの開孔を通過する荷電粒子ビームレットの偏心を検出することができる。
【0053】
代替実施形態で、電極を円形開口部1214の周りに配置する代わりに、発光物質を円形開口部の周囲に設けることができ、さらに、衝突する電子に起因して発光物質によって発せられる光を検出するために光検出器が設けられる。発光物質の発光の非対称性を検出することによって、絞り1213を通過する荷電粒子ビームレットの偏心を検出することができる。
【0054】
絞りに関する上述の代替実施形態だけでなく図7に示される絞りも、図2に示される検出システムの交差面214または図8の交差面238内に配置される場合、その場での交差監視装置として使用することができる。したがって、投射システムは、交差面内に電流監視開孔を備える。
【0055】
図8は、相互作用生成物をそれらのビーム経路に従ってフィルタリングする可能性を提供する検出システムの代替を示す。図8は、国際公開第2016/124648号パンフレットの図4と同一であり、この検出システムならびにその能力および利点の説明に関しては、参照により本明細書に援用される、国際公開第2016/124648号パンフレットの図4のそれぞれの説明に委ねる。図8(または国際公開第2016/124648号パンフレットの図4)に示されるシステムは、これもまた国際公開第2016/124648号パンフレットにより詳細に説明されているように、交差ズームシステムを形成することに特に留意するべきである。
【0056】
投射レンズ205およびマルチ検出器209に加えて、図8の検出器システム200は、6つのさらなる粒子ビームレンズ230、231、232、233、235、236を有する。2つの第1のさらなる粒子ビームレンズ230、231は、第1の交差面238内に二次荷電粒子ビームレットの第1の交差点を形成し、2つの後続のさらなる粒子ビームレンズ232、233は、第2の交差面239内に二次荷電粒子ビームレットの第2の交差点を形成する。第2の交差面239に続く2つのさらなる粒子ビームレンズ235、236は、第1の平面101においてさまざまなフィールド領域から現れる相互作用生成物がマルチ検出器209上への投射レンズ205を活用してマルチ検出器209のさまざまな検出領域215上に再び投射されるように、第2の交差面239から現れる相互作用生成物の二次荷電粒子ビームレットを再び集める。
【0057】
検出器システム200のこの実施形態で、2つの異なる絞り237、234を第1および第2の交差面238および239で同時に使用することができる。例として、図6に描写される明視野絞り213を第1の交差面238内に配置することができ、環状の開孔を有する絞りを第2の交差面239内に配置することができる。この実施形態では、検出領域215間のクロストークの抑制と、第1の平面101におけるそれらの開始角度による相互作用生成物の標的フィルタリングとを同時に実行する。
【0058】
ここで、2つの絞り237、234は、同様に、環状の開孔を有する絞りが第1の交差面238内に配置され、中央の開孔を有する絞りが第2の交差面239内に配置されるように、交換された方法で配置されてもよいことが注目される。
【0059】
さらなる粒子ビームレンズ230、231、232、233、234、235の励起を変えることによって、二次荷電粒子ビームレットの軌道を2つの交差面238、239において互いに独立して設定することが可能である。交差面238、239における軌道を変えることによって、絞りをそのために機械的に交換する必要なく、異なる絞り半径および絞り直径をシミュレートすることが可能である。検出器システム200に入るときおよび投射レンズ205に入るときの軌道は、第1の平面101におけるフィールド領域とマルチ検出器209の検出領域との間の関連性を維持することができるように、この場合一定に保つことができる。第1の平面101における二次荷電粒子ビームレットのすべてによって送られる物体視野は、その過程で変化せず一定のままである。
【0060】
この場合、さらなる粒子ビームレンズ230、231、232、233、235、236は、磁気レンズまたは静電レンズのいずれかとすることができる。
【0061】
図8の実施形態で、6つのさらなる粒子ビームレンズ230、231、232、233、235、236は、2つの絞り234、237および投射レンズ205とともに投射システムを形成する。
【0062】
図8の投射システムの高周波数調整のために、再び、以下に図4を参照して説明されるように、同様の方法で配置され同様の方法で制御される図8に示される要素に加えて、静電レンズ、静電偏向器および静電非点収差補正器などの追加の動的要素を設けることができる。同様に、二次荷電粒子ビームレットによって生成されるスポットの像を記録するための検出器方式は、図4を参照して以下により詳細に説明されるように構成することができる。
【0063】
図3は、マルチビーム荷電粒子ビームシステムの(図1の制御システム10に対応する)制御システム800の一部分のブロック図である。制御システム800は、走査システム制御部品801と、荷電粒子ビームレンズおよび多重極を調整するための投射システムの静的または低周波数従属部品のための制御802とを備える。制御システム800は、検出器カメラ804(図4の空間分解検出システム290に対応する)、リアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805および1つまたは複数の高速投射位置合わせ要素を含む、高速投射位置合わせサブシステムをさらに備える。図3に示される制御システムは、とりわけ、図4に示され以下により詳細に説明されるような投射システムを制御するために特に使用することができる。
【0064】
図4の投射システム200は、静的(または低周波数)電子光学素子250、270、および285のセット、ならびに動的(または高周波数)電子光学素子260、280、および288のセットを含む。静的電子光学素子は、試料7からの二次電子(SE)3を検出面209a上に結像させるために使用される。これらは、1つまたは複数の電子光学レンズ251、偏向器271、および/または非点収差補正器286を含み得る。静的な場合、遅い位置合わせ時間で十分なので、磁気レンズ、磁気偏向器、および磁気非点収差補正器が使用される。コントローラ160は、静的電圧供給部150を介して静的試料電位を制御するだけでなく、静的電子光学素子250、270、および285も制御する。この目標を達成するために、コントローラは、検出面209aに衝突する信号のごく一部を使用する空間分解検出システム290を使用する。例えば、空間分解検出システム290は、検出面209aからのスポットから放射される光のごく一部を撮像する高速CCDカメラを備えることができ、検出面209aには、透明キャリア上に置かれた発光物質で作られたプレートを、マルチ検出器209を形成するように配置することができる。検出面209a内で作り出された信号の大半は、画像取得システムに送り込むために使用される。画像取得システムは、同様に、マルチ検出器の一部を形成する。
【0065】
上記のように、検出面209a内にシンチレータプレート209が配置され、その上に二次電子ビームレットが投射システム200によって方向づけられる。投射システム200は、図1のマルチビーム検査システムに組み込まれるとき、電子ビームレット9を形成する電子光学部品、すなわち、例えばマルチ電子検出器に向かって電子ビームレットを導く対物レンズ102、ビームスイッチ400、およびレンズ263などのシンチレータプレート209の表面上に電子ビームレット9を集束させる部品を含む。電子ビームレット9は、入射位置213においてシンチレータプレート209に入射する。同様に、電子ビームレット9がシンチレータプレート209の表面上に集束される場合、ビームスポットが表面上に形成され、その直径は任意に小さくすることができない。ビームスポットの中心は、互いから距離P2で配設された入射位置213とみなすことができる(図1を参照されたい)。
【0066】
シンチレータプレート209は、電子ビームレット9の入射電子によって励起されるとき光ビームを発するシンチレータ材料を含む。したがって、入射位置213のそれぞれに光ビーム源が配設される。図4では、単一のそのような光ビーム221だけが3つの描写された電子ビームレット9のうちの1つの入射位置213から発せられるところを示されている。光ビーム221は、第1のレンズ306、ミラー291、第2のレンズ292、第3のレンズ293およびビームスプリッタ294を備えた光学顕微鏡を通して伝播し、それから画像取得システムの受光エリア330に入射する。受光エリア330は、光ビーム221の大部分が結合されて光検出器296、297、298、299、331に導かれるグラスファイバの束295の表側によって形成される。光検出器は、例えば、光電子増倍管、アバランシェ・フォトダイオード、フォトダイオードまたは他の種類の適当な光検出器を含み得る。光学顕微鏡は、受光エリア330が配設される領域に、検出面209a内に配置されたシンチレータプレート209の表面を光学的に結像するように構成される。この光学結像によって入射位置213の光学像が受光エリア330に形成される。入射位置213のそれぞれに対して、画像取得システムの別個の受光エリア330が設けられる。さらなる受光エリア330のそれぞれは、表側に結合された光を別個のそれぞれの光検出器296、297、298、299、331に導く光導波路295の表側によって形成することができる。光学結像によって、入射位置213のそれぞれは、受光エリア330と関連付けられ、受光エリア330のそれぞれに入射する光は、光検出器296、297、298、299、331のうちの別個の1つによって検出される。光検出器296、297、298、299、331は、電気信号線を介して検出信号を出力する。検出信号は、電子ビームレット9の強度を表す。
【0067】
図4では、簡略化のために、5つの光検出器296、297、298、299、331だけが示されていることに言及するべきである。現実的な実施形態では、光検出器296、297、298、299、331の数は、少なくとも一次荷電粒子ビームレットの数および二次電子ビームレット9の数に対応する。好ましい実施形態では、画像取得システムは、一次荷電粒子ビームの数よりもさらに多くの光検出器296、297、298、299、331、例えば各二次電子ビームレットに対して5、10または20個の光検出器を備える。各一次電子ビームレットに対する複数個の光検出器は、特定の二次荷電粒子ビームレットに光検出器を割り当てる際に追加の柔軟性を提供する。
【0068】
光ビーム221のわずかな部分がビームスプリッタ294を透過して、高速CCDカメラとすることができる空間分解検出システム290に衝突する。
【0069】
本明細書に明らかにされた実施形態で、光検出器296、297、298、299、331は、(第1のレンズ306、ミラー291、第2のレンズ292、第3のレンズ293およびビームスプリッタ294を備えた)光学顕微鏡がシンチレータプレート209を結像する受光エリアから少し離れて配設され、受け取られた光はグラスファイバによって光検出器に導かれる。しかしながら、光学顕微鏡がシンチレータプレート209の像を生成するところに光検出器296、297、298、299、331を直接配設し、したがって受光エリアによって光感応エリアを形成することが同様に可能である。
【0070】
二次電子ビームレット9は真空中を伝播し、同様に、電子ビームレットが衝突するシンチレータプレート209の表面も真空中に配設される。光学顕微鏡306、291、292、293、294は、真空外に配設されてもよく、その場合、真空窓が光ビーム221のビーム経路内に設けられ、真空窓は、ビーム221によって横断され、環境から真空を分離する。
【0071】
二次荷電粒子の複数のビームレットの検出は、上記のようなシンチレータ、光学顕微鏡、ファイバ束および光検出器方式の組み合わせ以外の検出システムを用いて同様に達成することができる。後続の高速読み出しを伴うMCP(マルチチャネルプレート)と高速CCDカメラの組み合わせ、または、光子への中間変換および逆変換なしで入来荷電粒子を電気的読み出し信号に直接変換するpn接合からなる1つまたは複数の画素上に各二次荷電粒子ビームレットが結像される直接電子検出器を使用することが同様に可能である。下記の位置合わせ方式の適合は、そのような代替検出方式に対して同様に簡単であることになる。
【0072】
シンチレータプレート209に入射する電子ビームは、シンチレータプレートの前の領域で残留ガス分子をイオン化させて入射位置213に電荷をもたらす場合があり、電荷は次に、真空中の残留ガス状汚染物質を引き付ける場合があり、その結果汚染物質がシンチレータプレート209上の入射位置213に堆積してシンチレータ材料の特性の劣化をもたらし、その結果入射電子ビームレット9によって引き起こされる光ビーム221の強度が時間とともに減少する場合がある。この問題は、シンチレータプレート209の面法線に直交する方向に、すなわち検出面209a内で、入射位置213を変位させることによって対処することができる。これを用いて、電子ビームレット9は、常に同じ入射位置213でシンチレータプレートの表面に入射するのではなく、シンチレータプレート209の表面の上を移動し、したがって、その表面上で常に新しい位置に移動する。シンチレータプレート209の表面上の別の位置で生じる汚染物質は、そのとき、入射二次電子ビームレット9によって引き起こされる入射位置213における光の発生を妨げない。
【0073】
動的電子光学素子は、静的結像システムによって考慮されない、試料7からの二次電子(SE)3の検出面209a上への残留結像誤差を動的に補正するために使用される。これらの残留結像誤差は、SEの開始エネルギーまたはSEの開始角度分布などの結像特性および制約が結像の1フレーム内で変化することがある帯電表面の走査中に生じることがある。これらの動的要素は、1つまたは複数の電子光学レンズ260、偏向器280、および/または非点収差補正器288を含み得る。動的な場合に高速位置合わせ時間が必要とされるので、好ましくは静電レンズ、静電偏向器および/または静電非点収差補正器などの静電部品だけが使用される。動的コントローラ170は、電圧供給部151を介して静的電位に加えられる動的試料電位を制御するだけでなく、動的電子光学素子260、280、および288も制御する。この目標を達成するために、動的コントローラ170は、検出面209aに衝突する信号のごく一部を使用する空間分解検出システム290を使用する。ビーム分割装置400は、静的に位置合わせされる磁気セクタからなる。ビーム分割装置400内の高速静電偏向素子410は、動的コントローラ170によって同様に制御される。
【0074】
さらなるコントローラ160が静的または低周波数の特性および部品を制御する。
【0075】
検出面209a上にスポットを作り出すための最終的なレンズ263は、静的または動的タイプのいずれかとすることができ、それぞれ、コントローラ160または170によって制御することができる。
【0076】
図5a~5fで、円551は、画像取得システムの対応する検出器の感応エリアに対応し、したがって、検出面209における二次電子ビームレットの理想的な位置に対応する、空間分解検出システム290上のエリアを描写する。空間分解検出システム290上のこれらのエリアと画像取得検出器の感応エリアとの間のマッピングは、固定であり、前もってこれを較正することができる(参考のために、参照により本明細書に援用される、米国特許第9,336,982B2号明細書およびその中の参考文献を参照されたい)。円550は、投射システム200によって検出面209a上に結像された二次電子ビームレットの位置分布を描写する。図5aは、二次電子ビームレット550の位置分布と感応エリア551との間のシフトを描写する。高速偏向システム280を使用して、図5fに示される、感応エリア551上への二次電子ビームレット550の正しい位置決めを与えるように、これを補正することができる。これを達成するために、二次電子ビームレット550の位置分布と感応エリア551との間のシフトは、空間分解検出システム290によって記録された画像を記録および分析することによって決定される。高速偏向システム280のための適切な偏向電位は、記録された画像を分析することによって、リアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805によって決定され、このように決定された偏向電位は、動的コントローラ170によって高速偏向システム280に印加される。偏向電位は、高速偏向システム280に印加された適切な電位を用いて図5fに示されるように二次電子550の位置が感応エリア551の中心と一致する方法で決定される。
【0077】
図5bは、感応エリア551に対する二次電子ビームレット550の位置分布の歪みを描写する。高速非点収差補正システム285を使用して、図5fに示される、感応エリア551上への二次電子ビームレット550の正しい位置決めを与えるように、これを補正することができる。これを達成するために、二次電子ビームレット550の位置分布の歪みは、空間分解検出システム290によって画像を記録し、空間分解検出システム290によって記録された画像をリアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805によって分析し、画像分析に基づいて高速非点収差補正システム285のための適切な非点収差補正器電圧を決定することによって決定される。同時にスポット非点収差補正を正しく保つためには、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20150357157A1号明細書に極めて詳細に説明されるように、少なくとも2つの非点収差補正器の使用が必要となる。非点収差補正器電圧は、高速非点収差補正システム285に印加された適切な電圧を用いて、図5fに示されるように二次電子ビームレット550の位置が感応エリア551の中心と一致する方法で、リアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805によって決定される。それぞれ決定された非点収差補正器電圧は、動的コントローラ170によって高速非点収差補正システム285に印加される。
【0078】
図5cは、感応エリア551に関する二次電子ビームレット550の集束ずれを描写する。高速レンズシステム260を使用して、図5fに示される、感応エリア551上への二次電子ビームレット550の正しい集束を与えるように、これを補正することができる。これを達成するために、感応エリア551における二次電子ビームレット550の集束ずれは、空間分解検出システム290によって記録された画像をリアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805によって記録および分析することによって決定される。同時にスポット位置を正しく保つためには、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20150357157A1号明細書に極めて詳細に説明されるように、少なくとも2つのレンズの使用が必要となる。高速レンズシステム260のための適切な電圧は、高速レンズシステム260に印加された適切な電圧を用いて、図5fに示されるように、二次電子ビームレット550の位置が感応エリア551の中心と一致し、かつ空間分解検出システム290上の光スポットの直径が最小化されるかまたは適切な寸法を有する方法で、リアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805によって決定され、動的コントローラ170によって高速レンズシステム260に印加される。
【0079】
図5dは、感応エリア551上への二次電子ビームレット550の非点収差結像を描写する。高速非点収差補正システム285を使用して、図5fに示される、感応エリア551上への二次電子ビームレット550の正しい形状を与えるように、これを補正することができる。同時にスポット位置を正しく保つためには、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20150357157A1号明細書に極めて詳細に説明されるように、少なくとも2つの非点収差補正器の使用が必要となる。非点収差補正を達成するために、二次電子ビームレット550の非点収差結像は、空間分解検出システム290によって記録された画像を記録および分析することによって決定される。高速非点収差補正システム285のための適切な非点収差補正器電圧は、リアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805によって決定され、このような非点収差補正器電圧は、動的コントローラ170によって高速非点収差補正システム285に印加される。非点収差補正器電圧は、高速非点収差補正システム285に印加された適切な電圧を用いて、図5fに示されるように二次電子ビームレット550のビームスポットの形が感応エリア551の中心にそれらの中心がある円形になる方法で、画像分析に基づいて決定される。
【0080】
図5eは、感応エリア551に関する二次電子ビームレット550の結像の倍率変化を描写する。高速レンズシステム260を使用して、図5fに示される、感応エリア551上への二次電子ビームレット550の正しい位置決めを与えるように、これを補正することができる。同時にスポット集束を正しく保つためには、参照により本明細書に援用される米国特許出願公開第20150357157A1号明細書に極めて詳細に説明されるように、少なくとも2つのレンズの使用が必要となる。これを達成するために、感応エリア551における二次電子ビームレット550の倍率変化は、空間分解検出システム290によって記録された画像を記録および分析することによって決定される。高速レンズシステム260のための適切な電圧は、画像分析に基づいて、リアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805によって決定され、動的コントローラ170によって高速レンズシステム260に印加される。適切な電圧は、高速レンズシステム260に印加された適切な電圧を用いて、図5fに示されるように、すべての二次電子ビームレット550の位置が感応エリア551の中心と一致し、かつ空間分解検出システム290上の光スポットの直径が最小化されるかまたは適切な寸法を有する方法で、リアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805によって決定される。
【0081】
上に、図5a~5fに関して個別の歪みの補正だけが説明される。しかしながら、リアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805は、有利には、空間分解検出システム290を用いて記録された画像が説明された歪みの組み合わせを示す場合、高速位置合わせ部品のために適切な電位および電圧を決定するように同様に構成される。静電レンズ、静電非点収差補正器および静電偏向器のための適切な電圧は、そのとき、同時にまたは反復ステップで連続的に、リアルタイム投射位置合わせアルゴリズム805によって決定される。
【0082】
空間分解検出システム290を用いた画像の記録は、試料の像がマルチ検出器の助けを借りて記録される前に、または試料の像の部分がマルチ検出器の助けを借りて記録される間に、例えば所定数のラインが複数の一次電子ビームレットによって走査された後に行われる。
【0083】
図4に示される実施形態で、高周波数調整を提供する従属部品の1つまたは複数の要素260、280、288は、同様に、個別の二次電子ビームレットに個別に影響を与え得る、静電マイクロレンズアレイ、静電マイクロ偏向器アレイまたは静電マイクロ非点収差補正器アレイなどの静電マイクロ光学部品アレイを含み得る。それぞれの静電マイクロ光学部品アレイは、各二次電子ビームレットのための電子透過開口部と、各開口部を取り囲む1、2またはより多くの個数、すなわち例えば3、4、6または8個の電極とを有する多孔アレイを含み得る。複数の電極は、互いに対しておよび多孔アレイのキャリアに対して電気的に絶縁される。各開口部を取り囲む個別の電極に適切な電圧を印加することによって、このような開口部を透過する二次電子ビームレットを高周波数で個別に調整または変更することができる。
図1
図2
図3
図4
図5a)】
図5b)】
図5c)】
図5d)】
図5e)】
図5f)】
図6
図7
図8