(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】圧電トランスデューサを有するイメージング・デバイス
(51)【国際特許分類】
H04R 17/00 20060101AFI20220721BHJP
A61B 8/00 20060101ALI20220721BHJP
H04R 19/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H04R17/00 332B
A61B8/00
H04R19/00 330
(21)【出願番号】P 2019550544
(86)(22)【出願日】2017-11-23
(86)【国際出願番号】 US2017063163
(87)【国際公開番号】W WO2018102223
(87)【国際公開日】2018-06-07
【審査請求日】2020-10-21
(32)【優先日】2016-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2016-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2017-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519200344
【氏名又は名称】イーエックスオー イメージング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】アッカラジュ,サンディープ
(72)【発明者】
【氏名】クウォン,ヘサン
(72)【発明者】
【氏名】ハク,ユスフ
(72)【発明者】
【氏名】ブライゼック,ヤヌス
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-123150(JP,A)
【文献】特開2014-000122(JP,A)
【文献】特開2009-165212(JP,A)
【文献】特表2016-503312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0109436(US,A1)
【文献】特開2014-127921(JP,A)
【文献】特開平06-350155(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0107194(US,A1)
【文献】特開2012-129662(JP,A)
【文献】特開2007-088805(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 17/00
A61B 8/00
H04R 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と;
前記基板から懸架される少なくとも一つの膜と;
第二の基板であって、前記第二の基板は第一の金属導体を含み、前記少なくとも一つの膜は第二の金属導体を含み、前記第一および第二の金属導体が可変の空隙によって電気的に分離されており、前記可変の空隙は前記少なくとも一つの膜のたわみを示す、第二の基板と;
前記少なくとも一つの膜に取り付けられた複数のトランスデューサ素子とを有する、
トランシーバ素子であって、
前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、下部電極、下部電極上の圧電層および圧電層上の少なくとも一つの上部電極を有し、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、前記下部電極と前記少なくとも一つの上部電極の間に電位を印加することに応答して曲げモーメントを生成し、曲げモーメントを印加することに応答して電荷を生成し、
前記複数のトランスデューサ素子のうちの第一のトランスデューサ素子の圧電層が、前記複数のトランスデューサ素子のうちの第二のトランスデューサ素子の圧電層と逆向きに分極されている、
トランシーバ素子。
【請求項2】
前記少なくとも一つの膜が、溝およびバンプの少なくとも一方を含み、それにより可変の厚さをもつ、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項3】
第一の共振周波数をもつ前記第一
のトランスデューサ素子および
前記第一の共振周波数とは異なる第二の共振周波数をもつ前記第二のトランスデューサ素子が逆向きの曲げモーメントを生成する、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項4】
第一の共振周波数をもつ前記第一のトランスデューサ素子が
、前記第一の共振周波数とは異なる第二の共振周波数をもつ前記第二の
トランスデューサ素子と同じ向きの曲げモーメントを生成する、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項5】
前記第一のトランスデューサ素子の前記少なくとも一つの上部電極が、前記第二のトランスデューサ素子の前記下部電極に電気的に結合され、前記第一のトランスデューサ素子の前記下部電極が前記第二のトランスデューサ素子の前記少なくとも一つの上部電極に電気的に結合されている、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項6】
前記圧電層が一つまたは複数の圧電サブ層を含む、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項7】
前記少なくとも一つの膜が第一および第二の膜を含み、前記第一および第二の膜が異なる共振モードでアクチュエーションされる、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項8】
前記第一のトランスデューサ素子に加えられる電気信号が前記第二のトランスデューサ素子に加えられる電気信号に対して位相遅延をもつ、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項9】
前記少なくとも一つの膜が第一および第二の膜を含み、前記第一の膜は送信モードにおいて圧力波を生成するために動作し、前記第二の膜は受信モードにおいて圧力波を検出するためにのみ動作する、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項10】
前記基板が前記少なくとも一つの膜の下に配置された少なくとも一つの空洞を含み、前記空洞は真空であるまたは気体で充填されている、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項11】
前記第二の基板は光源を含み、前記少なくとも一つの膜は前記光源によって発される光の一部を通過させるよう配置された開口を含む、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項12】
前記圧電層が、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AlN、Sc-AlN、ZnO、PVDFおよびLiNiO
3のうちの少なくとも一つを含む、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項13】
前記基板において形成され、かつ膜と膜の間に配置された一つまたは複数の溝をさらに有する、請求項1記載のトランシーバ素子。
【請求項14】
圧力波を発生させ、外部圧力波を電気信号に変換するためのトランシーバ・セルと;
前記トランシーバ・セルの動作を制御するための制御ユニットとを有するイメージング・システムであって、
前記トランシーバ・セルは:
基板と;
前記基板から懸架される少なくとも一つの膜と;
第二の基板であって、前記第二の基板は第一の金属導体を含み、前記少なくとも一つの膜は第二の金属導体を含み、前記第一および第二の金属導体が可変の空隙によって電気的に分離されており、前記可変の空隙は前記少なくとも一つの膜のたわみを示す、第二の基板と;
前記少なくとも一つの膜に取り付けられた複数のトランスデューサ素子とを含み、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、下部電極、下部電極上の圧電層および圧電層上の少なくとも一つの上部電極を有し、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、前記下部電極および前記少なくとも一つの上部電極の間に電位を印加することに応答して曲げモーメントを生成し、前記外部圧力波に起因する曲げモーメントに応答して電荷を生成し、
前記複数のトランスデューサ素子のうちの第一のトランスデューサ素子の圧電層が、前記複数のトランスデューサ素子のうちの第二のトランスデューサ素子の圧電層と逆向きに分極されている、
イメージング・システム。
【請求項15】
前記トランシーバ・
セルによって生成された圧力波を集束させるためのコーティング層をさらに有する、
請求項
14記載のイメージング・システム。
【請求項16】
前記電気信号を処理するためのプロセッサと;
前記プロセッサからの処理された信号に基づいて画像を表示するためのディスプレイとをさらに有する、
請求項
14記載のイメージング・システム。
【請求項17】
前記少なくとも一つの膜は第一および第二の膜を含み、前記第一および第二の膜は異なる共振モードでアクチュエーションされる、請求項
14記載のイメージング・システム。
【請求項18】
基板と;
前記基板から懸架され、前記基板に対して動くよう前記基板から離間されている部分を含む少なくとも一つの膜と;
第二の基板であって、前記第二の基板は第一の金属導体を含み、前記少なくとも一つの膜は第二の金属導体を含み、前記第一および第二の金属導体が可変の空隙によって電気的に分離されており、前記可変の空隙は前記少なくとも一つの膜のたわみを示す、第二の基板と;
前記少なくとも一つの膜の前記部分の上面に取り付けられた複数のトランスデューサ素子とを有する、
トランシーバ素子であって、
前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、下部電極、下部電極上の圧電層および圧電層上の少なくとも一つの上部電極を有し、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、前記下部電極と前記少なくとも一つの上部電極の間に電位を印加することに応答して曲げモーメントを生成し、曲げモーメントを印加することに応答して電荷を生成し、前記複数のトランスデューサ素子は互いから物理的に離間されて
おり、
前記複数のトランスデューサ素子のうちの第一のトランスデューサ素子の圧電層が、前記複数のトランスデューサ素子のうちの第二のトランスデューサ素子の圧電層と逆向きに分極されている、
トランシーバ素子。
【請求項19】
前記複数のトランスデューサ素子のうちの第一のトランスデューサ素子が、前記複数のトランスデューサ素子のうちの第二のトランスデューサ素子と逆向きに分極されている、請求項
18記載のトランシーバ素子。
【請求項20】
前記第一のトランスデューサ素子の前記少なくとも一つの上部電極が、前記第二のトランスデューサ素子の前記下部電極に電気的に結合され、前記第一のトランスデューサ素子の前記下部電極が前記第二のトランスデューサ素子の前記少なくとも一つの上部電極に電気的に結合されている、請求項
19記載のトランシーバ素子。
【請求項21】
圧力波を発生させ、外部圧力波を電気信号に変換するためのトランシーバ・セルと;
前記トランシーバ・セルの動作を制御するための制御ユニットとを有するイメージング・システムであって、
前記トランシーバ・セルは:
基板と;
前記基板から懸架され、前記基板に対して動くよう前記基板から離間されている部分を含む少なくとも一つの膜と;
第二の基板であって、前記第二の基板は第一の金属導体を含み、前記少なくとも一つの膜は第二の金属導体を含み、前記第一および第二の金属導体が可変の空隙によって電気的に分離されており、前記可変の空隙は前記少なくとも一つの膜のたわみを示す、第二の基板と;
前記少なくとも一つの膜の前記部分の上面に取り付けられた複数のトランスデューサ素子とを含み、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、下部電極、下部電極上の圧電層および圧電層上の少なくとも一つの上部電極を有し、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、前記下部電極と前記少なくとも一つの上部電極の間に電位を印加することに応答して曲げモーメントを生成し、曲げモーメントを印加することに応答して電荷を生成し、前記複数のトランスデューサ素子は互いから物理的に離間されて
おり、
前記複数のトランスデューサ素子のうちの第一のトランスデューサ素子の圧電層が、前記複数のトランスデューサ素子のうちの第二のトランスデューサ素子の圧電層と逆向きに分極されている、
イメージング・システム。
【請求項22】
前記複数のトランスデューサ素子のうちの第一のトランスデューサ素子が、前記複数のトランスデューサ素子のうちの第二のトランスデューサ素子と逆向きに分極されている、請求項
21記載のイメージング・システム。
【請求項23】
前記第一のトランスデューサ素子の前記少なくとも一つの上部電極が、前記第二のトランスデューサ素子の前記下部電極に電気的に結合され、前記第一のトランスデューサ素子の前記下部電極が前記第二のトランスデューサ素子の前記少なくとも一つの上部電極に電気的に結合されている、請求項
22記載のイメージング・システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
A.技術分野
本発明は、イメージング・デバイスに関し、より詳細には、圧電トランスデューサを有するイメージング・デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
B.発明の背景
人体の内部器官を画像化し、内部器官の画像を表示するための非侵入的イメージング・システムは、信号を人体中に送信し、器官から反射された信号を受信する。典型的には、イメージング・システムにおいて使用されるトランスデューサはトランシーバと呼ばれ、トランシーバのいくつかは、光音響効果または超音波効果に基づく。一般に、圧電トランスデューサは、医療撮像、管内の流れ測定、スピーカー、マイクロフォン、砕石術、治療のための組織加熱および手術のための高強度集束超音波(HIFU)のような撮像および他の応用に使用される。
【0003】
ミクロ機械加工技術の進歩により、センサーやアクチュエータを基板に効率的に組み込むことができる。特に、容量性変換(cMUT)または圧電変換(pMUT)を使うミクロ機械加工超音波トランスデューサ(MUT)は、大きな形状因子を有する従来のバルク圧電素子と比較して特に有利である。これらのトランスデューサの基本的な概念は1990年代初頭に開示されたが、これらの概念の商業的実装は多くの課題に直面している。たとえば、従来のcMUTセンサーは、動作中の誘電電荷の蓄積のため、特に障害または性能のドリフトを起こしやすい。従来のpMUTは有望な選択肢であったが、送信および受信の非効率性に関する問題がある。よって、効率を高め、さまざまなセンシング・デバイスに適用できるpMUTが必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
実施形態において、トランシーバ素子は:基板と;基板から懸架する少なくとも一つの膜と;前記少なくとも一つの膜に取り付けられた複数のトランスデューサ素子とを含み、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、下部電極、下部電極上の圧電層および圧電層上の少なくとも一つの上部電極を有し、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、前記下部電極と前記少なくとも一つの上部電極の間に電位を印加することに応答して曲げモーメントを生成し、曲げモーメントを印加することに応答して電荷を生成する。
【0005】
実施形態において、イメージング・システムは、圧力波を発生させ、外部圧力波を電気信号に変換するトランシーバ・セルと、トランシーバ・セルの動作を制御する制御ユニットとを含む。前記トランシーバ・セルは、基板と;基板から懸架する少なくとも一つの膜と;前記少なくとも一つの膜に取り付けられた複数のトランスデューサ素子とを含み、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、下部電極、下部電極上の圧電層および圧電層上の少なくとも一つの上部電極を有し、前記複数のトランスデューサ素子のそれぞれは、前記下部電極および前記少なくとも一つの上部電極の間に電位を印加することに応答して曲げモーメントを生成し、前記外部圧力波に起因する曲げモーメントに応答して電荷を生成する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
本発明の実施形態を参照する。実施形態の例が添付の図面に示されることがある。これらの図は、限定ではなく、例示的であることが意図されている。本発明は一般にこれらの実施形態の文脈で説明されるが、本発明の範囲をこれらの特定の実施形態に限定することは意図されていないことを理解しておくべきである。
【0007】
【
図1】本開示の実施形態によるイメージング・システムを示す図である。
【0008】
【
図2】本開示の実施形態によるイメージャのブロック図を示す。
【0009】
【
図3A】本開示の実施形態による例示的なトランシーバ・タイルの概略図を示す。
【0010】
【
図3B】本開示の実施形態による一つまたは複数のトランシーバ・タイルを含むトランシーバ・アレイの上面図および側面図を示す。
【0011】
【
図4A】本開示の実施形態によるトランシーバ・セルの拡大図を示す。
【0012】
【
図4B】本開示の実施形態による例示的な圧電素子の断面図を示す。
【0013】
【
図5】本開示の実施形態による、線4-4に沿って取られた、
図4Aにおけるトランシーバ・セルの断面図を示す。
【0014】
【
図6】本開示の実施形態によるトランシーバ・セルの概略断面図を示す。
【
図7】本開示の実施形態によるトランシーバ・セルの概略断面図を示す。
【0015】
【
図8】本開示の実施形態による圧電素子内に曲げモーメントを生成する機構を示す。
【0016】
【
図9】本開示の実施形態による圧電素子上に電荷を発生させる機構を示す。
【0017】
【
図10】本開示の実施形態による、複数の圧電素子への電気的接続の概略図を示す。
【
図11】本開示の実施形態による、複数の圧電素子への電気的接続の概略図を示す。
【0018】
【
図12】本開示の実施形態による、複数の圧電素子に結合された例示的な膜の斜視図を示す。
【0019】
【0020】
【
図14】本開示の実施形態による送信モード/プロセスにおける
図13の膜の数値シミュレーションを示す。
【0021】
【
図15】本開示の実施形態による時間遅延の関数としての
図12における膜の利得のプロットを示す。
【0022】
【
図16】本開示の実施形態による異なる共振周波数特性を有する複数の膜を有するトランシーバ・セルの概略図を示す。
【0023】
【
図17】本開示の実施形態による周波数の関数としての
図16の膜の利得のプロットを示す。
【0024】
【
図18A】本開示の実施形態による異なる共振周波数特性を有する複数の膜を有するトランシーバ・セルの概略図を示す。
【0025】
【
図18B】本開示の実施形態による周波数の関数としての
図18Aの膜の利得のプロットを示す。
【0026】
【
図19A】本開示の実施形態による、異なる周波数応答を有する複数の膜を有するトランシーバ・セルの概略図を示す。
【0027】
【
図19B】本開示の実施形態による、周波数の関数としての
図19Aの膜の利得のプロットを示す。
【0028】
【
図20】本開示の実施形態による、複数の膜を有するトランシーバ・セルの概略図を示す。
【0029】
【
図21A】本開示の実施形態による、
図20の膜のうちの一つの断面図を示す。
【0030】
【
図21B】本開示の実施形態による第一共振モードでアクチュエーションされる
図21Aの膜を示す。
【0031】
【
図22A】本開示の実施形態による、
図20の膜のうちの一つの断面図を示す。
【0032】
【
図22B】本開示の実施形態による、第三共振モードでアクチュエーションされる
図22Aの膜を示す。
【0033】
【
図23A】本開示の実施形態による、
図20の膜のうちの一つの断面図を示す。
【0034】
【
図23B】本開示の実施形態による第五共振モードでアクチュエーションされる
図23Aの膜を示す。
【0035】
【
図24】本開示の実施形態による、二つの膜を有する例示的なトランシーバ・セルを製造するためのステップを示す。
【
図25】本開示の実施形態による、二つの膜を有する例示的なトランシーバ・セルを製造するためのステップを示す。
【
図26】本開示の実施形態による、二つの膜を有する例示的なトランシーバ・セルを製造するためのステップを示す。
【
図27】本開示の実施形態による、二つの膜を有する例示的なトランシーバ・セルを製造するためのステップを示す。
【
図28】本開示の実施形態による、二つの膜を有する例示的なトランシーバ・セルを製造するためのステップを示す。
【0036】
【
図29】本開示の実施形態による異なる電極パターンを有する三つのトランシーバ・セルの概略図を示す。
【0037】
【
図30】本開示の実施形態による周波数の関数としての
図29におけるトランシーバ・セルの利得のプロットを示す。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下の記述では、説明の目的上、開示の理解を提供するために、具体的な詳細が記載される。しかしながら、本開示がこれらの詳細なしに実施可能であることは、当業者には明白であろう。さらに、当業者は、以下に記述される本開示の実施形態が、プロセス、装置、システムまたはデバイスなどの多様な仕方で実装されうることを認識するであろう。
【0039】
図に示される要素/コンポーネントは、本開示の例示的な実施形態を示しており、本開示を埋没させることを避けることが意図されている。明細書において、「一つの実施形態」、「好ましい実施形態」、「ある実施形態」または「実施形態」への言及は、その実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造、特性または機能が、本開示の少なくとも一つの実施形態に含まれ、複数の実施形態に含まれていてもよいことを意味する。明細書の随所において「一実施形態では」、「ある実施形態では」、または「実施形態では」という句が現われることは、必ずしもすべて同じ実施形態(単数または複数)を指しているわけではない。「含む」「含んでいる」「有する」「有している」という用語はオープン・タームであると理解されるものとし、それに伴うリストは例であり、リストされた項目に限定されることは意図されていない。本明細書において使用されるいかなる見出しも、単に整理の目的のためであり、明細書または請求項の範囲を限定するためには使われない。さらに、明細書のさまざまな箇所におけるある種の用語の使用は、例示のためのものであり、限定として解釈されるべきではない。
【0040】
図1は、本開示の実施形態によるイメージング・システム100を示す。図のように、システム100は、送信モード/プロセスにおいて、心臓などの内部器官112に向かって圧力波122を生成し送信するイメージャ120と;通信チャネル130を通じてイメージャに信号を通信する装置102とを含んでいてもよい。実施形態において、内部器官112は、圧力波122の一部をイメージャ120に向かって反射してもよく、イメージャ120は、受信モード/プロセスにおいて、反射された圧力波を捕捉し、電気信号を生成しうる。イメージャ120は、該電気信号を装置102に伝えてもよく、装置102は、該電気信号を使って、ディスプレイ/スクリーン104上に人間の器官の画像を表示しうる。
【0041】
イメージャ120は、動物の内部器官の画像を得るために使用されてもよいことを注意しておく。また、圧力波122は、人間/動物の体を通過し、内部器官によって反射されることができる音響波、超音波または光音響波でありうることも注意しておく。
【0042】
実施形態において、イメージャ120は、ポータブル装置であってもよく、無線でまたはケーブルを介して、通信チャネル130を通じて装置102と信号を通信してもよい。実施形態では、装置102は、携帯電話またはiPad(登録商標)などのモバイル装置、またはユーザーに対して画像を表示することができる静止コンピューティング装置であってもよい。
【0043】
図2は、本開示の実施形態によるイメージャ120のブロック図を示す。実施形態において、イメージャ120は、超音波イメージャであってもよい。
図2に描かれるように、イメージャ120は:圧力波を送受信するためのトランシーバ・タイル(単数または複数)210と;圧力波を集束させるレンズとして動作し、トランシーバ・タイルと人体110との間のインピーダンス・インターフェースとしても機能するコーティング層212と;トランシーバ・タイル210を制御するためのASICチップのような制御ユニット202と;イメージャ120のコンポーネントを制御するためのマイクロプロセッサ214と;一つまたは複数のポート230を通じて装置102のような外部装置とデータを通信するための通信ユニット208と;データを記憶するためのメモリ218と;イメージャのコンポーネントに電力を提供するためのバッテリー206と;任意的に、目標器官の画像を表示するためのディスプレイ216とを含んでいてもよい。
【0044】
実施形態において、装置102がディスプレイ/スクリーンを有していてもよい。そのような場合、イメージャ120にはディスプレイは含まれなくてもよい。実施形態において、イメージャ120は、ポート230のうちの一つを通して装置102から電力を受け取ってもよい。そのような場合、イメージャ120は、バッテリー206を含まなくてもよい。イメージャ120のコンポーネントのうちの一つまたは複数は、一つの一体型の電気素子に組み合わされてもよいことを注意しておく。同様に、イメージャ120の各コンポーネントは、一つまたは複数の電気素子において実装されてもよい。
【0045】
実施形態において、ユーザーは、コーティング層212と人体110との間のインピーダンス整合が改善されうるよう、すなわち界面での電力損失が低減されるよう、コーティング層212上にゲルを塗布してもよい。
【0046】
図3Aは、本開示の実施形態による例示的なトランシーバ・タイル210の概略図を示す。セル300の数およびトランシーバ・タイル210内のトランシーバ・セルの配列は、任意の性質でありうるが、いくつかの典型的な配列は、長方形グリッド、六角形グリッド、環状グリッド、極性グリッドなどを含みうる。純粋に例示の目的のために、
図3Aには、九個のトランシーバ・セル300を有するトランシーバ・タイル210が示されている。
【0047】
図3Bは、本開示の実施形態による一つまたは複数のトランシーバ・タイルを含むトランシーバ・アレイ220の上面図および側面図を示している。図示されるように、トランシーバ・アレイ220は、所定の仕方で配置された一つまたは複数のトランシーバ・タイル210を含んでいてもよい。たとえば、トランシーバ・タイル(または略してタイル)210は、物理的に曲げられて、湾曲したトランシーバ・アレイをさらに形成し、イメージャ120内に配置されてもよい。イメージャ112が任意の好適な数のタイルを含んでいてもよく、タイルは、任意の好適な仕方で配置されてもよく、各タイル210は、セル300と同一または類似の任意の好適な数のトランシーバ・セルを含んでいてもよいことは、当業者には明白であるはずである。実施形態において、トランシーバ・アレイ220は、基板から作製されるミクロ機械加工されたアレイであってもよい。
【0048】
図4Aは、本開示の実施形態によるトランシーバ・セル300の拡大図を示す。図示されるように、各セルは、一つまたは複数の任意に成形された膜400を含む。
図4Aの三つの膜が純粋に例示の目的のために示されているが、他の好適な数の膜がトランシーバ・セル300に含まれてもよい。実施形態において、トランシーバ・セル300は、(これに限られないが)任意の幾何学的形状、たとえば長方形、菱形、六角形または円形であってもよい。
【0049】
実施形態において、一つまたは複数の圧電素子450がそれぞれの膜400に取り付けられてもよく、ここで、膜は、圧電素子450または外部圧力によってアクチュエーションされうる。実施形態において、膜400および一つまたは複数の圧電素子450の組み合わせを使用して、超音波または音響波を送信し、膜に衝突する音響波または超音波を電気信号に変換する圧電トランスデューサを作り出すことができる。実施形態において、それぞれの膜400は、任意の形状であることができ、種々の長さ、幅、および可変厚さを有することができる。
【0050】
実施形態において、それぞれの膜400は、一つまたは複数の主振動モードでアクチュエーションされてもよい。膜の共振周波数は、膜の物理的な幾何形状、膜の厚さの変動などのさまざまなパラメータによって決定されうる。実施形態において、膜400の厚さの変動は、膜をエッチングすることと、膜上に材料を選択的に堆積することのうちの少なくとも一つによって達成されてもよい。
【0051】
実施形態では、圧電素子450による膜400のアクチュエーションによって音響出力、すなわち圧力波を生成することは、送信モード/プロセスとして知られ、Txと記される。同様に、膜上の外部圧力の、圧電素子上の電荷の変化への変換は、受信モード/プロセスとして知られ、Rxと記される。以下、膜400と圧電素子450との組み合わせは、トランスデューサ素子452と呼ばれる。実施形態において、膜400は、カンチレバー〔片持ち梁〕、単純に支持された梁、ダイヤフラム、波打ち(corrugated)ダイヤフラム、および他の単純に支持されたまたははめ込まれた装置を含むが、これらに限定されない、機械的に共振する要素として解釈されてもよい。
【0052】
実施形態において、電気ワイヤによって圧電素子450への一つまたは複数の電気接続410が形成されてもよい。電気ワイヤ(
図4Aには示さず)は、ミクロ機械加工、ワイヤボンディング技術、または垂直相互接続を介して外部電気回路をセルに接続するなどのさまざまな技術によって、トランシーバ・セル300上に堆積されてもよい。
【0053】
図4Bは、本開示の実施形態による例示的な圧電素子450の断面図を示す。図示されるように、圧電素子450は:下部電極466、一つまたは複数の上部電極460、および上部電極と下部電極との間に配置された圧電層464を含んでいてもよい。純粋に例示の目的で
図4Bにはユニモルフ圧電素子が示されているが、実施形態では、複数の圧電サブ層および電極から構成される多層圧電素子(マルチモルフ)が利用されることができる。また、
図4Bは、例示の目的のために三つの上部電極を示しているが、実施形態において、圧電素子450は、一つまたは複数の上部電極を含むことができる。実施形態において、圧電層464は、PZT、KNN、PZT-N、PMN-Pt、AlN、Sc-AlN、ZnO、PVDF、およびLiNiO
3のうちの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0054】
実施形態において、圧電層464の厚さは100μm未満であってもよく、Txモード/プロセスにおける上部電極と下部電極との間の電位は1~20Vであってもよい。対照的に、従来の圧電素子の上部電極と下部電極との間の電位は100~200Vの範囲である。圧電素子450を駆動するための電力は、圧電素子を駆動するパルスまたは波形の電圧の二乗に比例しうるので、圧電素子450によって消費される電力は、従来の圧電素子によって消費される電力よりも著しく低くてもよい。
【0055】
実施形態において、圧電素子450は、圧電ミクロ機械加工超音波トランスデューサであってもよく、半導体、MEMSまたは超音波産業において使用される通常の技術によって製造されてもよい。同様に、実施形態において、トランシーバ・アレイ220内の他のコンポーネントは、半導体、MEMSまたは超音波産業における通常の技術によって製造されてもよい。
【0056】
図5は、本開示の実施形態による、
図4Aにおけるトランシーバ・セル300の、線4-4に沿っての断面図を示している。図示されるように、膜400と同じまたは同様であってもよい膜504は、さまざまな厚さを有し、複数の圧電素子520a~520cに結合されてもよい。実施形態において、膜504は、懸架機構506によって下部基板501(これは
図4Aの基板402と同じまたは同様であってもよい)から懸架してもよい。
【0057】
実施形態において、膜504の厚さは、溝511、波打ち形、および穿孔/開口512のうちの一つまたは複数を平面膜において形成することによって変化をつけられてもよい。実施形態において、膜504の厚さは、一つまたは複数の気密空洞が膜の下に形成されうるよう、平面膜において溝および/または波打ち形511のみを形成することによって変化をつけられてもよい。実施形態において、材料は、膜の上面および/または下面上にバンプ510を形成するよう、選択的に堆積されるか、または堆積されてパターン化されてもよく、ここで、バンプが膜の厚さを変化させる。実施形態において、膜504の厚さの変動は、エッチングおよび堆積技術のような通常のウエハー処理技術によって達成されてもよい。
【0058】
実施形態において、一つまたは複数の圧電素子520a~520cは、膜504の上面および/または下面に配置されてもよい。実施形態では、圧電素子520a~520cのそれぞれは、二つ以上の端子を有し、異なるサイズおよび幾何形状を有していてもよい。たとえば、圧電素子520aおよび520bは、二つの端子を有していてもよく、一方、圧電素子520cは、三つの端子(一つの下部電極および二つの上部電極)を有していてもよい。
【0059】
実施形態において、圧電素子520a~520cは、電気ワイヤ/導体(今や
図5には示されている)に接続されてもよく、ここで、電気ワイヤは、ミクロ機械加工、パターニング、ワイヤボンディング技術、または三次元相互接続を介して外部電気回路をセルに接続することなどのさまざまな技術によって、膜504上に堆積されてもよい。
【0060】
実施形態において、上部基板502は任意的な要素であってもよい。実施形態において、各対の金属導体516は、下部金属プレートに近接して配置された上部金属プレートを含み、それによりキャパシタを形成してもよい。動作中、外部圧力波に起因する膜504のたわみは、金属導体516のキャパシタンスの変化を測定することによって、測定されうる。実施形態において、レーザー514などの光源が、光源514によって放射された光が膜504における開口/穿孔512を通過しうるよう、膜504に近接して配置されてもよい。実施形態において、開口部512からの光は、上部基板が下部基板に接合されるときに、上部基板502を下部基板501に対して整列させるために使用されてもよい。
【0061】
実施形態では、上部基板502はASICチップであってもよく、ASICチップは、圧電素子520a~520cを制御するための電気、電子、またはフォトニック素子を含む。上部基板502は、これに限定されないが、電気スルービア、フリップチップ接合、共晶接合、またはミクロ機械加工されたデバイスで一般に使用される他のリード転写技術を含む多くの技術を通じて、膜504内の電気接続に接続されうる。実施形態において、ASICチップは、複数のバンプを含んでいてもよく、バンプは、垂直相互接続によって、またはワイヤボンディングによって、膜504上の電気回路に接続されてもよい。
【0062】
図6~7は、本開示の実施形態によるトランシーバ・セルの概略的な断面図を示している。
図6に示されるように、膜600は、両端で基板601から懸架され、一つまたは複数の機械的支持体604によって基板601との離間した関係を維持してもよい。実施形態において、一つまたは複数の圧電素子604a~604cが、膜の上面に配置されてもよい。
図5のように膜600の下面に一つまたは複数の圧電素子が配置されてもよいことを注意しておく。また、膜の厚さに変化がつけられるよう、膜の上面(および/または下面)に一つまたは複数の溝610またはバンプが形成されてもよい。
【0063】
実施形態において、一つまたは複数の空洞602a~602cが、膜600と基板601との間に形成されてもよく、空洞内部のガス圧は、膜の対応する部分の振動運動が制御されうるように調整されてもよい。たとえば、空洞602aは、膜の部分620aが垂直方向に自由に動けるよう真空であってもよく、空洞602cは気体で満たされて、膜の部分620cの振動運動が気体によって減衰されてもよい。
【0064】
実施形態において、膜600は、これに限られないがアノード接合、シリコン溶融接合、共晶接合、ガラスフリット接合、はんだ接着などの、一般に使われる基板接合および接着技術を使って、基板601に接合されて、膜600の下に真空(たとえば602a)または空気ギャップ(たとえば602bおよび602c)を作り出すことができる。この接合は、真空または空気ギャップにおける音響エネルギーの迅速な減衰を許容し、膜を水分または他の反応物から保護することができる。
【0065】
実施形態において、さまざまな型の能動素子または受動素子がトランシーバ・セル間に組み込まれて、セル間の音響クロストークを低減してもよい。たとえば、基板601は、クロストークを減衰させるための溝(
図6には示さず)を含んでもよい。別の例では、膜600の基板601への接合がクロストークを低減してもよい。これらの受動的なクロストーク減衰機構に加えて、圧電素子604a~604cのうちの一つまたは複数がアクチュエーションされて、クロストークを能動的に減衰させてもよい。このような能動クロストーク減衰機能は、電気的に励起されて、膜の支持体の機械的振動を物理的に減衰させてもよい。
【0066】
図7において、膜700は、両端で基板701から懸架され、一つまたは複数の支持体704によって基板701との離間した関係を維持してもよい。また、一つまたは複数の空洞702a~702cが基板701と膜704との間に形成されてもよく、空洞702は、空洞602a~602cと同様の機能を有していてもよい。実施形態において、膜700は、これに限られないがアノード接合、シリコン溶融接合、共晶接合、ガラスフリット接合、はんだ接着などの一般的に使用される基板接合および接着技術を使って基板701に接合されてもよい。実施形態において、基板701は、膜700に取り付けられた圧電素子を制御するための電気的、電子的、またはフォトニック素子を含むASICチップであってもよく、基板701は、垂直相互接続またはワイヤボンディングによって膜700に電気的に接続されてもよい。
【0067】
図8は、本開示の実施形態によって圧電素子800内に曲げモーメントを生成する機構を示す。図示されるように、圧電素子800は、上部電極802、圧電層804および下部電極806を含んでいてもよく、ここで、圧電層804は、上向きまたは下向きのいずれかの方向に分極(矢印Pによって示される)されうる。実施形態において、上部電極802と下部電極806の間に電位が印加されるときに電場(矢印Eによって示される)が生成されうる。分極方向に依存して、圧電素子800は、異なる曲げモーメント(矢印Mによって示される)を生成しうる。Txモード/プロセスでは、圧電素子800によって生成される曲げモーメントは、下にある膜に伝達され、膜を振動させ、圧力波を発生させる。
【0068】
実施形態において、圧電層804の分極Pは、ポーリング(poling)〔分極処理〕と呼ばれるプロセスによって変えられてもよい。実施形態において、ポーリング・プロセスは、キュリー点より上の温度で、所定の時間期間にわたって、上部電極と下部電極の間に高電圧を印加することを含んでいてもよい。実施形態において、圧電層804の厚さおよび材料に依存して、ポーリング・プロセスのための電圧が変えられてもよい。たとえば、1μmの厚さの圧電層については、電圧ポテンシャルは約15Vであってもよい。
【0069】
実施形態において、圧電素子は、二つより多くの電極を有していてもよい。たとえば、圧電素子502cは、二つの上部電極および一つの下部電極を有していてもよい。実施形態において、第一の上部電極の下の圧電層の第一の部分は、第一の方向にポーリングされてもよく、第二の電極の下の圧電層の第二の部分は、第二の方向にポーリングされてもよく、第一の方向は、第二の方向と平行または逆向きでありうる。
【0070】
図9は、本開示の実施形態によって圧電素子800上に電荷を発生させる機構を示している。図示するように、圧電素子800は、曲げモーメントMを印加すると電荷を生じうる。実施形態では、圧電素子804は、上向きまたは下向きのいずれかの方向に分極されうる。分極方向に依存して、各圧電素子800上に形成される電荷は、異なる極性を有しうる。実施形態において、下部電極806は、接地または所定の電圧バイアスに接続されてもよい。
【0071】
Rxモード/プロセスでは、膜は、内部器官112から反射される圧力波などの外部圧力波によって曲げられてもよく、膜の曲がりは、圧電素子800に伝達され、圧電素子上に電荷を発生させることができる。この電荷を使って、圧力波の強度が測定されてもよい。また、複数の圧電素子によって発生する電荷は、内部器官112の画像を得るために処理されてもよい。
【0072】
実施形態において、膜の波打ちと称される膜の厚さに変化をつけることには、曲げモーメントの選択的な印加が膜のたわみプロファイルをさらに変化させうる領域を作り出すというさらなる恩恵がありうる。これは「応力整形」(stress shaping)と呼ばれる。実施形態において、応力整形と膜の異なる部分への圧電素子の選択的な配置または取り付けとの組み合わせは、所定の仕方で膜を偏向させるために使用されてもよい。
【0073】
図10~
図11は、本開示の実施形態による、複数の圧電素子への電気的接続の概略図を示している。例示の目的のために、圧電素子1024および1026は、二端子デバイスである、すなわち、各圧電素子は二つの電極をもつと想定される。ただし、各圧電素子は二つより多くの電極を有していてもよい。また、圧電素子1024および1026は、二つの電気ポート/端子1006および1008に電気的に結合されてもよい。
【0074】
図10において、第一の圧電素子1024の上部電極1020は、電気接続1030によって圧電素子1026の下部電極1030に接続されてもよく、上部電極1020は、電気端子1006に結合されてもよい。同様に、第一の圧電素子1024の下部電極1022は、電気接続1040によって第二の圧電素子1026の上部電極1028に接続されてもよく、下部電極1022は、電気端子1008に結合されてもよい。実施形態において、電気接続のこの構成は、二つの電気端子を使用することによって、異なる圧電素子を逆向きに分極させることを許容しうる。実施形態において、同じ二つの端子1006および1008が、TxおよびRxモードで使用されてもよい。この技術は、二つの端子1006および1008を介して操作される膜またはセル内の複数の圧電素子に容易に拡張することができる。
【0075】
図11では、圧電素子1102および1104の各々の分極は、
図10における対応する圧電素子の分極と反対であってもよい。このように、Txモード/プロセスでは、圧電素子1102および1104は、圧電素子1024および1026によって生成される曲げモーメントと反対の曲げモーメントを生成しうる。同様に、Rxモード/プロセスにおいて、圧電素子1102および1104は、圧電素子1024および1026によって形成される電荷とは反対の電荷を形成しうる。
【0076】
実施形態において、
図10および
図11の電気的構成の一つの利点は、圧電素子の各々が「二ポート」電気デバイスとして動作可能であることである。多数の別個の圧電素子が膜上に配置されうるとしても、二ポート構成では、二つの電気ポート/端子1006および1008のみが必要とされうる。実施形態では、二ポート電気構成は、デバイスを動作させるのに必要な相互接続の数を大幅に減らしうるとともに、送信および受信モード電子回路の単純化に加えて、大きなタイルを作り出すのに有利でありうる。
【0077】
実施形態において、複数の膜が単一のセル内で使用されて、セルからの音響出力を増加させてもよい。あるいはまた、セル内の膜のいくつかは、異なる共振周波数で動作するよう設計されてもよい。
図12は、本開示の実施形態によるトランスデューサ素子1200の斜視図を示している。
図13は、本開示の実施形態による、線12-12に沿って取られた
図12のトランスデューサ素子の断面図を示している。図示されるように、トランスデューサ素子1200は、複数の圧電素子1220および1224と結合された膜1204を含んでいてもよい。上から見ると、内側圧電素子1224は、丸まったコーナーをもつ長方形の形状を有していてもよく、外側圧電素子1220は、ベルトの形状を有していてもよく、圧電素子1224を取り囲んでいてもよい。実施形態において、内側圧電素子1224は、下向きに分極されてもよく、外側圧電素子1220は、上向きに分極されてもよい。膜1204は、膜1204の厚さが変えられるように、一つまたは複数の溝1230を有してもよい。膜1204は、基板1202から懸架されてもよく、基板1202は、膜1204が基板1202の上面に接触することなく振動しうるように、空洞1232を有してもよい。実施形態において、空洞1232は、真空であってもよく、または所定の圧力で気体で満たされていてもよい。
【0078】
実施形態において、Txモード/プロセスでは、圧電素子1220および1224にかかる適切な電気信号の印加は、膜1204のピストン運動を生じうる。
図14は、本開示の実施形態によるTxモード/プロセスにおける膜1204の数値シミュレーションを示す。図示されるように、膜1204の中心部分は、電場が波打ち形の膜1204上の圧電素子1220および1224に印加されるとき、ピストン運動を有しうる(すなわち、上方に動く)。実施形態において、ピストン運動は、圧力レベルが膜1204の体積変位に正比例するので、音響出力の有意な増加をもたらしうる。シミュレーション結果は、ピストン運動が膜の単純な曲げ運動と比較して音響送信を9 dB増加させうることを示している。
【0079】
実施形態において、圧電素子1220および1224を作動させる電気信号の間の時間遅延または位相遅延を調整することによって、膜の中央部分の変位(利得)の増加が達成されうる。
図15は、本開示の実施形態による時間/位相遅延の関数としての膜1204の利得のプロットを示している。図示されるように、膜1204の中心部分の変位(利得)は、圧電素子1220および1224を駆動するための電気信号間の位相遅延が約90度であるときに、その最大値に達しうる。
【0080】
実施形態において、Rxモード/プロセスでは、膜1204の異なる部分に逆向きの曲げモーメントが現われることがある。圧電素子1220および1224は逆向きに分極されているので、同じ極性の電荷が両方の圧電素子に現われることがある。実施形態において、圧電素子1220および1224への電気接続は、同じ極性の電荷を収集するように配置されてもよい。シミュレーション結果によれば、二つの逆向きに分極した素子の使用は、一つの分極のみを使用する場合と比較して、電荷発生を約50%増加させうる。
【0081】
図16は、本開示の実施形態による異なる共振周波数特性を有する複数の膜1604aおよび1604bを有するトランシーバ・セル1600の概略図を示している。図示されるように、複数の膜1604aおよび1604bは、基板1602上に配置されていてもよい。実施形態において、膜の寸法および膜の離間は、放出される音の主波長のある割合に維持されてもよく、これは、トランスデューサ・セル1600の帯域幅を増加させうる。
【0082】
図17は、本開示の実施形態による周波数の関数としての膜1604aおよび1604bの利得のプロットを示している。実施形態において、膜1604aおよび1604bは、それぞれ異なる共振周波数特性1702および1704を有していてもよい。
【0083】
実施形態において、帯域幅が増加したトランスデューサ・セルは、高調波イメージング・モードで動作させられてもよい、すなわち、Txモード周波数がRxモード周波数と異なるので、望ましいことがありうる。高調波イメージングを使う実施形態では、圧電素子を駆動するために第一のパルスが送られ、続いて第二のパルスが送られ、圧電素子は、第一のパルスに対して逆相で第二のパルスによって駆動される。この技術は一般にパルス反転と呼ばれる。
【0084】
実施形態において、トランシーバ・セル内の複数の膜は、以下の設計ポイントのうちの一つまたは複数を変化させることによって、異なる周波数で送信または受信するように設計されうる:(1)膜の波打ちパターン、(2)圧電素子の形状、(3)膜の物理的寸法、および(4)圧電素子の分極。
【0085】
図18Aは、本開示の実施形態による、基板1802と、異なる共振周波数特性を有する複数の膜1804a~1804cとを含むトランシーバ・セル1800の概略図を示している。
図18Bは、本開示の実施形態による、周波数の関数としての膜1804a~1804cの利得のプロットを示している。
図18Bにおいて、曲線1822、1824および1826は、それぞれ、膜1804a、1804cおよび1804bに対応する。図示されるように、膜1804bのピーク利得に対応する周波数は、膜1804aおよび1804cのピーク利得に対応する周波数から離されてもよい。
【0086】
実施形態において、膜1804aおよび1804cは、TxおよびRx両方のモードで動作させられてもよく、一方、膜1804bは、Rxモードのみで動作させられてもよい。膜1804aおよび1804cの共振周波数は、膜1804aおよび1804cの周波数利得応答を調整することによってトランスデューサの帯域幅を増加するように設計されてもよく、一方、膜1804bは、Rxモードでのみ動作し、Txモードの高調波応答を受信するよう設計されてもよい。
【0087】
図19Aは、本開示の実施形態による、異なる周波数応答を有する複数の膜1902a~1902cを有するトランシーバ・セル1900の概略図を示している。図示されるように、三つの膜1902a~1902cは、基板1904上に配置されていてもよい。
図19Bは、本開示の実施形態による周波数の関数としての
図19Aの膜の利得のプロットを示している。
図19Bにおいて、曲線1922a~1922cは、それぞれ、膜1902a~1902cに対応しうる。図示されるように、三つの膜1902a~1902cは、異なる周波数応答を有していてもよく、最大利得における周波数は、互いから分離されており、トランスデューサ・セルの帯域幅を増加させる。トランスデューサ・セル1900は、増大した帯域幅を有していてもよいので、トランスデューサ・セルは、高調波イメージング・モードで動作させられてもよい、すなわち、Txモード周波数がRxモード周波数とは異なる。
【0088】
図20は、本開示の実施形態による、複数のトランスデューサ素子2004a~2004cを有するトランシーバ・セル2000の概略図を示している。図示されるように、トランスデューサ素子2004a~2004cは、基板2002上に配置されてもよく、各トランスデューサ素子は、膜、好ましくは波打ち形にされた膜、および膜上に配置された複数の圧電素子を含んでいてもよい。図示されるように、膜上の各圧電素子の分極方向は、上向き矢印2010または下向き矢印2012によって示される。
【0089】
図21Aは、本開示の実施形態による第一の共振モードでアクチュエーションされる膜を示している。図示されるように、トランスデューサ素子2004aは、懸架機構2104によって基板2002から懸架されうる膜2102を含んでいてもよい。複数の圧電素子2106は、膜2102上に配置されてもよく、各圧電素子は、矢印Pによって示されるように、上向きまたは下向きに分極されてもよい。
【0090】
好適な電気信号が膜2102上の圧電素子2106に印加されると、膜2102は、第一の共振モードで振動しうる。
図21Bは、本開示の実施形態による第一共振モードでアクチュエーションされる膜2102を示している。(簡単のため、
図21Bでは圧電素子2016は示されていない。)
【0091】
実施形態において、膜上の圧電素子の極性は、膜が異なる共振モードで振動できるように配置されてもよい。
図22Aは、本開示の実施形態によるトランスデューサ素子2004bの断面図を示している。
図22Bは、本開示の実施形態による第三共振モードでアクチュエーションされる膜2202を示している。トランスデューサ素子2004bはトランスデューサ素子2002bと同様であってもよいが、圧電素子2206が圧電素子2106とは異なる極性をもつという違いがある。
図22Bに示されるように、膜2202は、電場が圧電素子2206に印加されるとき、第三共振モードで振動しうる。
【0092】
図23Aは、本開示の実施形態によるトランスデューサ素子2004cの断面図を示している。
図23Bは、本開示の実施形態による第五共振モードでアクチュエーションされる膜2302を示している。図示されるように、トランスデューサ素子2004cはトランスデューサ素子2004aと同様であってもよいが、圧電素子2306が圧電素子2106とは異なる極性をもつという違いがある。
図23Bに示されるように、膜2302は、電場が圧電素子2306に印加されるとき、第五共振モードで振動しうる。
【0093】
実施形態において、Rxモード/プロセスにおいて、異なる周波数の外部圧力波の印加は、異なるモードでの膜の励起につながりうる。実施形態において、圧電素子の分極は、外部圧力波がそれぞれの膜を横断して同じ極性をもつ電荷を生じうるように配置されてもよい。そのような構成の恩恵の一つは、TxおよびRxモードにおける膜の周波数応答の形成に対する前例のない制御を可能にしうるということである。
【0094】
図24~
図28は、本開示の実施形態による、二つの膜をもつ例示的なトランシーバ・セルを製造するためのステップを示している。
図24のAは、基板2404上に配置された二つの膜2408の上面図を示し、
図24のBは、本開示の実施形態による、線24-24に沿って取られた膜および基板の断面図を示している。図示されるように、実施形態において、膜2408は、基板2404上に膜層2406を堆積することによって形成されてもよく、基板2404の一部を除去するよう二つの空洞2410が形成され、それにより基板2404に対して垂直方向に振動しうる膜2408を形成してもよい。実施形態において、空洞2410は、エッチングなどの通常のウエハー処理技術によって形成されてもよい。実施形態において、基板2404は、膜層2406と同じ材料から形成されてもよい。代替的な実施形態では、基板2404は、膜層2406とは異なる材料から形成されてもよい。空洞2410は、トランスデューサ・セルの上部導体(
図28の2802)のような他のコンポーネントが形成された後に形成されてもよいことを注意しておく。
【0095】
図25は、本開示の実施形態による、下部電極2502および三つの下部導体2504a~2504cを示す。図示されるように、膜2408のそれぞれは、三つの下部電極2502を有していてもよく、下部電極2502のそれぞれは、三つの下部導体2504a~2504cのうちの一つに電気的に接続されていてもよい。実施形態において、下部電極2502は、第一の金属から形成されてもよく、下部導体2504a~2504cは、第二の金属から形成されてもよく、第一の金属は、第二の金属と同じ(または異なる)ものでありうる。
【0096】
図26は、本開示の実施形態による、六つの下部電極2502および三つの下部導体2504a~2504c上に配置された圧電層2602、2604および2606を示している。
図27は、本開示の実施形態による、圧電層2602、2604および2606上に配置された上部電極2702および2704を示している。図示されるように、三つの上部電極がそれぞれの膜2408の上方に形成されてもよい。すなわち、それぞれの膜2408は、三つの圧電素子を含みうる。実施形態において、上部電極2702および2704のうちの一つ、圧電層2602、2604および2606のうちの一つ、および下部電極2502のうちの一つが二端子圧電素子を形成してもよく、電位が上部電極と下部電極の間に印加されると振動しうる。
【0097】
図28は、本開示の実施形態による、上部電極2702および2704に電気的に接続される上部導体2802および2804を示している。上部導体2802は、二つの上部電極2704に電気的に接続されていてもよく、上部導体2804は、四つの上部電極2702に電気的に接続されていてもよい。実施形態において、上部電極は、ビアを通じて下部導体2504aおよび2504bに電気的に接続されてもよい。たとえば、ビア2806および2808は、四つの上部電極2702を下部導体2504に電気的に接続してもよく、一方、ビア2810および2812は、二つの上部電極2704を下部導体2504bおよび2504cに電気的に接続してもよい。
【0098】
図29は、本開示の実施形態による、異なる電極パターンを有する三つのトランシーバ・セル2902a~2902cの概略図を示している。図示されるように、各トランシーバ・セル(たとえば、2902a)は、一つの膜(たとえば、2904a)および該膜上に配置された四つのトランスデューサ素子(たとえば、2906a)を有していてもよい。実施形態において、各トランシーバ・セルの利得は、トランスデューサ素子のサイズ、形状および数、各トランスデューサ素子の上部電極のサイズおよび形状、各膜のサイズおよび形状、トランスデューサ素子間の間隔、各トランスデューサ素子の分極など、様々な要因の関数でありうる。
【0099】
例示の目的のために、
図29において、トランスデューサ・セルの利得を制御するために上部電極の投射面積が変えられる。実施形態では、トランスデューサ素子2904cの上部電極はトランスデューサ素子2904bの上部電極よりも大きく、トランスデューサ素子2904bの上部電極はトランスデューサ素子2904aの上部電極よりも大きい。トランスデューサ素子2906a~2906cのサイズおよび数ならびに膜2904a~2904cのサイズなどの、利得に影響する他の要因は、トランシーバ・セル2902a~2902cにおいて同じであるが、トランシーバ・セル2902a~2902cの利得は、上部電極のサイズに依存して変わってくる。
図30は、周波数の関数としてのトランシーバ・セル2902a~2902cの利得のプロットを示し、曲線3002、3004、および3006は、それぞれ、トランシーバ素子2902a~2902cに対応してもよい。図示されるように、トランシーバ・セルの利得は、上部電極のサイズが増加するにつれて減少する。
【0100】
当業者には、実施形態において、次のことが明白であるはずである:(i)トランシーバ・アレイ、タイル、セル膜、圧電素子および圧電素子の電極のそれぞれは任意の好適な形状をもちうる;(ii)トランシーバ・アレイにおけるタイルの配置、タイル中のセルの配置、セル中の膜の配置、膜上の圧電素子の配置、および圧電素子上の電極の配置およびキャパシタ・パッドの配置は任意でありうる;(iii)膜の厚さの変動は、膜の性能を向上させるまたは変化させるために任意に変更されうる;(iv)トランシーバ・アレイにおけるタイルの数、タイル中のセルの数、セル中の膜の数、および膜中の圧電素子の数を設計によって変化させることができる;(v)圧電素子の分極をデバイスの動作中に変化させることができる;(vi)トランシーバ・アレイ内のコンポーネントが有益な仕方で組み合わされてもよい;(vii)レーザー光の透過を許容する膜内の穿孔の配置が任意でありうる;(viii)層間誘電体、電気ビア、電気的再分配層、音響インピーダンス整合層、防湿バリア、ハウジング、および電気的相互接続が、半導体、MEMS、または超音波産業において典型的に使用される材料から形成されうる。
【0101】
本発明はさまざまな変形および代替形態が可能であるが、その具体的な例を図面に示し、本明細書で詳細に記載してきた。しかしながら、本発明が開示された特定の形に限定されるものではなく、逆に、本発明は、添付の請求項の範囲内にはいるあらゆる修正、均等物および代替物をカバーするものであることを理解しておくべきである。