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特許7108630時間的、空間的に全体に及ぶランダムアクセスのための物理チャネルを含む無線通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】時間的、空間的に全体に及ぶランダムアクセスのための物理チャネルを含む無線通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 74/08 20090101AFI20220721BHJP
   H04W 16/32 20090101ALI20220721BHJP
   H04W 4/70 20180101ALN20220721BHJP
【FI】
H04W74/08
H04W16/32
H04W4/70
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019554914
(86)(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-11
(86)【国際出願番号】 FR2018050797
(87)【国際公開番号】W WO2018185407
(87)【国際公開日】2018-10-11
【審査請求日】2021-02-10
(31)【優先権主張番号】1752978
(32)【優先日】2017-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】512315706
【氏名又は名称】シグフォックス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】マラール,ラウル
(72)【発明者】
【氏名】ポンサール,ブノワ
(72)【発明者】
【氏名】マンスゥイ,アルノー
【審査官】齋藤 浩兵
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/171731(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/029795(WO,A1)
【文献】仏国特許出願公開第03041856(FR,A1)
【文献】特表2018-515977(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1,4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルラー・ネットワーク・コア(30)に接続されたセルラー・アクセス・ネットワーク(31)を含み、前記セルラー・アクセス・ネットワークが、協調アクセスチャネルと呼ばれる物理チャネルで端末(20)とデータを交換するように適合された、セルラー基地局と呼ばれる基地局(310)を含み、各セルラー基地局(310)が地理的エリア(Zg1)にサービスを提供し、前記セルラー基地局によってサービスを提供されるすべての前記地理的エリアが地理的領域(Rg)を形成する、無線通信システム(10)であって、前記無線通信システム(10)が、前記セルラー・アクセス・ネットワーク(31)によってサービスを提供される前記地理的領域にサービスを提供する、ランダムアクセス基地局と呼ばれる基地局(320)を含み、各ランダムアクセス基地局(320)が、ランダム・アクセス・チャネルと呼ばれる永続的な、すなわち時間的に途切れずに連続して存在する物理チャネルで前記端末によって発信されたデータを受信するように適合されており、前記ランダムアクセス基地局の前記永続的な物理ランダム・アクセス・チャネルが前記地理的エリアの全体で1つの同じ無線リソースを使用し、前記端末に前記端末と前記ランダムアクセス基地局との間の時間同期を必要とすることなくいつでもランダム・アクセス・メッセージを送信できるようにする、無線通信システム(10)。
【請求項2】
前記端末(20)が、前記永続的な物理ランダム・アクセス・チャネルで前記ランダム・アクセス・メッセージを発信するように構成され、前記ランダム・アクセス・メッセージが前記端末の特定の識別コードを含む、請求項1に記載の無線通信システム(10)。
【請求項3】
前記セルラー基地局の全部または一部がランダムアクセス基地局でもある、請求項1または2に記載の無線通信システム(10)。
【請求項4】
前記ランダムアクセス基地局の全部または一部が、前記セルラー・アクセス・ネットワークとは別の、ランダム・アクセス・ネットワークと呼ばれるアクセスネットワークを形成し、前記ランダム・アクセス・ネットワークが前記セルラー・ネットワーク・コアに接続されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の無線通信システム(10)。
【請求項5】
前記セルラー基地局(310)と前記ランダム・アクセス・ネットワークの前記ランダムアクセス基地局(320)とが、前記協調アクセスチャネルと前記永続的な物理ランダム・アクセス・チャネルとに異なる物理層プロトコルを使用するように構成される、請求項4に記載の無線通信システム(10)。
【請求項6】
前記端末(20)と前記ランダム・アクセス・ネットワーク(32)の前記ランダムアクセス基地局(320)とが、超狭帯域無線信号の形でデータを交換するように構成される、請求項4または5に記載の無線通信システム(10)。
【請求項7】
前記端末(20)ごとに、前記セルラー・アクセス・ネットワーク(31)に対する前記端末の位置を表す位置情報の項目を格納するセルラー位置サーバを含み、前記セルラー位置サーバが、前記永続的な物理ランダム・アクセス・チャネルで前記端末によって発信され、前記ランダムアクセス基地局(320)によって受信された前記ランダム・アクセス・メッセージに従って前記端末の前記位置情報を更新するように構成される、請求項1から6のいずれか一項に記載の無線通信システム(10)。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の無線通信システム(10)の前記端末(20)のモビリティを管理するための方法(50)であって、前記無線通信システムが、前記セルラー・アクセス・ネットワークに対する前記端末の位置を表す位置情報の項目を格納するセルラー位置サーバを含み、前記方法(50)が、
前記端末(20)による、前記永続的な物理ランダム・アクセス・チャネルでの前記ランダム・アクセス・メッセージの発信のステップ(51)と、
少なくとも1つの前記ランダムアクセス基地局(320)による、前記端末によって発信された前記ランダム・アクセス・メッセージの受信のステップ(52)と、
前記端末(20)から受信された前記ランダム・アクセス・メッセージに従った前記端末(20)の更新された位置情報の項目の決定のステップ(53)と、
前記セルラー位置サーバによる、前記更新された位置情報に従った前記セルラー位置サーバに格納された前記端末(20)の前記位置情報の更新のステップ(54)と
を含む、方法(50)。
【請求項9】
前記端末(20)の前記更新された位置情報が、前記ランダム・アクセス・メッセージを受信した少なくとも1つの前記ランダムアクセス基地局(320)の位置情報の項目に従って決定される、請求項8に記載の方法(50)。
【請求項10】
前記セルラー位置サーバによる、前記更新された位置情報を、前記セルラー位置サーバによって格納された前記位置情報と比較することによる前記端末(20)の事前定義されたモビリティ基準の評価のステップ(55)と、前記モビリティ基準が検証されたとき、
前記セルラー・アクセス・ネットワークに対する前記端末(20)の現在位置に使用されるべき前記セルラー・アクセス・ネットワーク(31)にアクセスするためのパラメータの、前記端末(20)に送信される、発信のステップ(56)と、
前記端末(20)による、受信された前記セルラー・アクセス・ネットワークにアクセスするための前記パラメータの格納のステップ(57)と
を含む、請求項8または9に記載の方法(50)。
【請求項11】
前記端末(20)を前記セルラー・アクセス・ネットワークと接続する事前ステップと、前記端末(20)のセルラー通信モジュール(21)を待機状態にする事前ステップとを含み、前記ランダム・アクセス・メッセージが、前記セルラー通信モジュールが待機状態にあり、前記端末(20)によって評価された、事前定義された発信基準が検証されたときに発信される、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法(50)。
【請求項12】
前記ランダム・アクセス・メッセージが前記端末の特定の識別コードを含む、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法(50)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システムの分野に関し、より具体的には、マシンツーマシン(M2M)タイプまたはモノのインターネット(IoT)タイプの用途へのセルラー・アクセス・ネットワークの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばIoTの状況では、日常のありふれたオブジェクトが各々通信オブジェクトになるように設計されており、このために、無線通信システムの無線アクセスネットワークに送信されるデータを発信するように適合された端末を装備している。
【0003】
そのような状況では、低コストである(したがって複雑度が低い)と同時に、電力エネルギー消費量も低い解決策があることが重要である。これにより、例えば、多くの日常のありふれたオブジェクトに、その生産コストに大きな影響を与えることなく、特に、それらのオブジェクトが電池式である場合にその自律性にさほど影響を及ぼすことなく通信させることが可能になる。
【0004】
今日、GPRS、EDGE、UMTS、HSPA、HSPA+、LTE、CDMA2000無線通信システムなどといった、「セルラー」システムと呼ばれる多くの無線通信システムが知られており、これらは現在、主に人対人(H2H)タイプの用途向けに実施されている。そのようなセルラー無線通信システムには、すでに大規模に展開されていることに加えて、非常に高くなり得る可変フローを提供し、低レベルの干渉を保証する予約周波数帯域を使用するという利点があるので、それらのシステムをM2Mおよび/またはIoTタイプの用途にも再利用しようとするのは当然である。
【0005】
従来、セルラー無線通信システムは、複数のセルラー基地局を含むセルラー・アクセス・ネットワークを含む。各セルラー基地局は、「セル」という名前でも知られる所定の地理的エリアにサービスを提供し、セルラー基地局によってサービスを提供されるすべての地理的エリアのグループが地理的領域を形成する。セルラー・アクセス・ネットワークは無線広域ネットワーク(またはWWAN)タイプのものであり、すなわち、サービス対象の地理的領域は、典型的には10000km2を超える、さらには50000km2さえも超える有効エリアのものである。
【0006】
そのようなセルラー無線通信システムでは、端末とセルラー・アクセス・ネットワークとの間のデータ交換が、協調アクセスチャネルと呼ばれるアクセスを用いる物理チャネルで行われ、すなわち、いつ、どの無線リソースで、端末が前記セルラー・アクセス・ネットワークとデータを交換できるかを決定するのはセルラー・アクセス・ネットワークである。したがって、アップロードリンクおよび/またはダウンロードリンクで端末がアクセスネットワークとデータを交換するための一般的な手順は、セルラー・アクセス・ネットワークに事前の無線リソース要求を行い、セルラー・アクセス・ネットワークがそれに応答して使用されるべき無線リソースを指示することからなる。データ交換の最後に、無線リソースは他の端末が使用できるように解放される。
【0007】
各端末がセルラー・アクセス・ネットワークに、例えば、前記端末が発信呼を行おうとする場合に、アップロードリンクでデータを発信することが求められていると指示することができるようにするために、各セルラー基地局は物理ランダム・アクセス・チャネル(またはPRACH)と呼ばれる物理アクセスチャネルを実施する。物理ランダム・アクセス・チャネルは、所定の時間間隔にわたって予約される、任意の端末が、端末をセルラー基地局に指示するためのランダム・アクセス・メッセージを発信するために使用できる無線リソースに対応する。
【0008】
ランダム・アクセス・メッセージを発信する前に、端末は、前記端末が前記セルラー基地局と時間的に同期されることを可能にし、またセルラー基地局の物理ランダム・アクセス・チャネルの様々なパラメータ(時間間隔の時間的位置およびランダム・アクセス・メッセージに予約された無線リソース)を知ることも可能にするセルラー基地局の物理拡散チャネルをリッスンしなければならない。ランダム・アクセス・メッセージを発信した後、続いて、特に前記端末を識別することを目的として、無線リソースを予約する前にセルラー基地局と前記端末との間で複数のメッセージの交換が行われる。
【0009】
端末が着信呼を受信することを可能にするために、各端末は、原則として、前記端末が位置する地理的エリア内のセルラー基地局に接続されなければならない。セルラー無線通信システムは、端末ごとに、例えば、前記端末が接続された最後のセルラー基地局の識別子の形でセルラー・アクセス・ネットワークに対する前記端末の位置を表す位置情報を格納するセルラー位置サーバを含む。端末に着信呼が送信される場合、位置情報により、「ページング」チャネルと呼ばれる物理チャネルで、この着信呼を前記端末に通知するためにどのセルラー基地局が使用されなければならないかを知ることが可能になる。着信呼が通知された後、端末は上述したステップを展開して、この着信呼に応答できるように無線リソースを予約する。
【0010】
端末のモビリティは様々な手順によって管理され、そのうちの主要な手順は、「セル再選択」および「位置更新」という名前で知られている。
【0011】
これらの様々な手順を実施するために、端末は、発信呼の場合と同様に、すなわち、物理ランダム・アクセス・チャネルでランダム・アクセス・メッセージを発信することによって、セルラー・アクセス・ネットワークに定期的に指示されなければならない。これらの手順は一般に、例えば、セルラー・アクセス・ネットワークをリッスンし、端末が今や、それが接続されているセルラー基地局とは異なるセルラー基地局により近いと判断することによって、端末が移動したことを検出したときに開始される。
【0012】
上述した様々な手順が完全によく理解され、特に、非常に短い遅延で着信呼を確立することを必要とするH2Hタイプの用途に適合された場合、これらの手順は、M2Mタイプの用途にはあまり適さないことが判明している。実際、これらの手順は、(セルラー・アクセス・ネットワークを定期的にリッスンする、無線リソースを予約するなどのために)高い電力消費を必要とし、その電力消費はM2Mタイプの用途には高すぎることが判明している。
【0013】
現在のセルラー無線通信システム、特にロング・ターム・エボリューション(LTE)システムを適合させるために、様々な手法が検討されている。
【0014】
第1の手法は、拡張不連続受信(eDRX)という名前で知られ、端末がセルラー・アクセス・ネットワークに、所定の期間で物理「ページング」チャネルのみをリッスンすると指示することを可能にする。そのような構成により、物理「ページング」チャネルをリッスンすることに関連した電力消費を削減することが可能になるが、着信呼を確立するための遅延が大幅に増加する。
【0015】
第2の手法は、電力スリープモード(PSM)という名前で知られ、セルラー・アクセス・ネットワークの側でアクティブな端末の接続を保存している間に、前記端末がかなりの期間にわたって待機モードに入ることを可能にすることからなる。よって、端末が待機モードを出るときに、端末の接続は保存されているので、端末は必然的にセルラー・アクセス・ネットワークに再度接続されてはならない。そのような構成により端末の電力消費を削減することが可能になり、よって端末は長時間にわたって待機モードに留まることができるが、そのような構成は、端末が別のセルラー基地局によってサービスを提供される地理的エリアに移動した場合に接続がアクティブのままなので、端末のモビリティを管理する際に問題を生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明は、先行技術の解決策の限界の全部または一部、特に上述した限界を、セルラー・アクセス・ネットワークを含む無線通信システムにおいて指示される端末によって実行されるべき操作の数量を減らすことを可能にする解決策を提案することによって克服することを目的とする。
【0017】
さらに、本発明はまた、少なくともいくつかの実施方法において、セルラー・アクセス・ネットワークに対する端末のモビリティを管理するために交換すべきメッセージの数量を減らすことを可能にする解決策を提案することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
このために、第1の態様によれば、本発明は、セルラー・ネットワーク・コアに接続されたセルラー・アクセス・ネットワークを含む無線通信システムに関し、前記セルラー・アクセス・ネットワークは物理協調アクセスチャネルで端末とデータを交換するように適合されたセルラー基地局を含み、各セルラー基地局は地理的エリアにサービスを提供し、前記セルラー基地局によってサービスを提供されるすべての地理的エリアが前記セルラー・アクセス・ネットワークによってサービスを提供される地理的領域を形成する。さらに、本無線通信システムは、セルラー・アクセス・ネットワークによってサービスを提供される地理的領域にサービスを提供する、ランダムアクセス基地局と呼ばれる基地局を含み、各ランダムアクセス基地局は、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルで端末によって発信されたデータを受信するように適合されており、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルは地理的領域全体で1つの同じ無線リソースを使用する。
【0019】
よって、物理ランダム・アクセス・チャネルが限られた期間の時間間隔に制限される先行技術のセルラー無線通信システムとは対照的に、物理ランダム・アクセス・チャネルは永続的であり、すなわち、途切れずに連続して存在する。したがって、前記永続的物理ランダム・アクセス・チャネルでいつでも発信することができるので、ランダム・アクセス・メッセージを発信するための時間同期は不要である。
【0020】
さらに、異なるセルラー基地局がそのそれぞれの物理ランダム・アクセス・チャネルに異なる無線リソースを使用するか、または少なくとも、使用されるべき無線リソースが、端末が位置する地理的エリアに依存する現在のセルラー無線通信システムとは対照的に、すべての永続的物理ランダム・アクセス・チャネルが地理的領域内で同じ無線リソース(周波数帯域またはサブバンド、拡散コードおよび/またはスクランブルコードなど)を使用する。したがって、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルによって使用される無線リソースを端末が事前に格納することができる。この無線リソースが一度格納されると、この無線リソースは地理的領域全体で有効なので、端末がランダム・アクセス・メッセージを発信する前に物理拡散チャネルをリッスンする必要はなくなる。
【0021】
ゆえに、そのような構成は、端末が、地理的領域内のその位置がどうであれ、常に、最初に知られる無線リソースを使用してランダム・アクセス・メッセージを自発的に発信できる限りにおいて、特に有利である。言い換えれば、ランダムアクセス基地局は、時間的(永続的)にも空間的(地理的領域全体で利用可能)にも全体に及ぶ物理ランダム・アクセス・チャネルを形成する。
【0022】
特定の実施形態では、無線通信システムは、個別に、または任意の技術的に可能な組み合わせに従って、以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0023】
特定の実施形態では、端末は、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルでランダム・アクセス・メッセージを発信するように構成され、前記ランダム・アクセス・メッセージは、前記端末の特定の識別コードを含む。
【0024】
よって、ランダム・アクセス・メッセージ、すなわち端末をランダムアクセス基地局に指示するためのメッセージは、あいまいさなく、前記ランダム・アクセス・メッセージを発信した端末を識別することを可能にし、すなわち、その端末を他のすべての端末と区別することを可能にする。
【0025】
これに反して、先行技術のセルラー無線通信システムでは、ランダム・アクセス・メッセージは、あいまいさなく、ランダム・アクセス・メッセージを発信した端末を識別することを可能とせず、前記端末の明確な識別に達するために、アップロードリンクとダウンロードリンクの両方で複数のメッセージが交換されなければならない。これは特に、永続的ではない先行技術の物理ランダム・アクセス・チャネルでは、複数の端末が前記物理ランダム・アクセス・チャネルに対応する時間間隔の間にランダム・アクセス・メッセージを発信することを可能にするには、ランダム・アクセス・メッセージに含まれる情報の量が非常に限られている、という事実によって説明される。
【0026】
本発明の主題である無線通信システムでは、物理ランダム・アクセス・チャネルが永続的であるので、ランダム・アクセス・メッセージに含まれる情報の量をより大きくすることができ、1つの単一メッセージによって前記端末を明確に識別することを可能にすることができ、前記端末を認証することさえも可能にすることができる。「1つの単一メッセージ」とは、ダウンロードリンクでメッセージを交換する必要なく、端末を明確に識別する(必要に応じて認証する)ことができることを意味する。しかしながら、ランダム・アクセス・メッセージからの2つのサブメッセージの端末による発信の間にダウンロードリンクで発信されるメッセージがなくなるとすぐに、ランダム・アクセス・メッセージを不連続的に発信されるサブメッセージに分割することができる。
【0027】
特定の実施形態では、各セルラー基地局は、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルの無線リソースとは異なる無線リソースを使用する一時的物理ランダム・アクセス・チャネルを含み、前記セルラー基地局の一時的物理ランダム・アクセス・チャネルは異なる無線リソースを使用する。
【0028】
言い換えると、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルは、時間的、空間的に全体に及び、限られた期間にわたって、端末が位置する地理的エリアに依存する異なる無線リソースを使用する、先行技術による物理ランダム・アクセス・チャネルを補完することによって実施することができる。
【0029】
特定の実施形態では、セルラー基地局の全部または一部がランダムアクセス基地局でもある。
【0030】
特定の実施形態では、ランダムアクセス基地局の全部または一部が、セルラー・アクセス・ネットワークとは別の、ランダム・アクセス・ネットワークと呼ばれるアクセスネットワークを形成し、前記ランダム・アクセス・ネットワークはセルラー・ネットワーク・コアに接続される。
【0031】
特定の実施形態では、セルラー基地局とランダム・アクセス・ネットワークのランダムアクセス基地局とは、協調物理アクセスチャネルと永続的物理ランダム・アクセス・チャネルとに異なる物理層プロトコルを使用するように構成される。
【0032】
特定の実施形態では、端末とランダム・アクセス・ネットワークのランダムアクセス基地局とは、超狭帯域無線信号の形でデータを交換するように構成される。
【0033】
特定の実施形態では、セルラー無線通信システムは、端末ごとに、セルラー・アクセス・ネットワークに対する前記端末の位置を表す位置情報の項目を格納するセルラー位置サーバを含み、前記セルラー位置サーバは、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルで前記端末によって発信され、ランダムアクセス基地局によって受信されたランダム・アクセス・メッセージに従って端末の位置情報を更新するように構成される。
【0034】
第2の態様によれば、本発明は、本発明の実施形態のいずれか1つによる無線通信システムの端末のモビリティを管理するための方法に関し、前記システムは、セルラー・アクセス・ネットワークに対する前記端末の位置を表す位置情報の項目を格納するセルラー位置サーバを含む。モビリティを管理するための方法は、
端末による、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルでのランダム・アクセス・メッセージの発信と、
少なくとも1つのランダムアクセス基地局による、前記端末によって発信されたランダム・アクセス・メッセージの受信と、
前記端末から受信されたランダム・アクセス・メッセージに従った前記端末からの更新された位置情報の項目の決定と、
セルラー位置サーバによる、更新された位置情報に従った前記セルラー位置サーバに格納された端末の位置情報の更新と
を含む。
【0035】
そのような構成は、端末がセルラー・アクセス・ネットワークをリッスンする必要なく端末の位置情報を更新できるという点で特に有利である。
【0036】
特定の実施方法では、モビリティを管理するための方法は、個別に、または任意の技術的に可能な組み合わせに従って、以下の特徴のうちの1つまたは複数をさらに含むことができる。
【0037】
特定の実施方法では、端末の更新された位置情報は、前記ランダム・アクセス・メッセージを受信した少なくとも1つのランダムアクセス基地局の位置情報の項目に従って決定される。
【0038】
特定の実施方法では、モビリティを管理するための方法は、セルラー位置サーバによる、更新された位置情報を、前記セルラー位置サーバによって格納された位置情報と比較することによる端末の事前定義されたモビリティ基準の評価と、モビリティ基準が検証されたとき、
セルラー・アクセス・ネットワークに対する端末の現在位置に使用されるべきセルラー・アクセス・ネットワークへのアクセスパラメータの、端末に送信される、発信と、
端末による、受信された前記セルラー・アクセス・ネットワークのアクセスパラメータの格納と
を含む。
【0039】
特定の実施方法では、モビリティを管理するための方法は、端末をセルラー・アクセス・ネットワークと接続する事前ステップと、前記端末のセルラー通信モジュールを待機状態にする事前ステップとを含み、ランダム・アクセス・メッセージは、前記セルラー通信モジュールが待機状態にあり、端末によって評価された、事前定義された発信基準が検証されたときに発信される。
【0040】
特定の実施方法では、ランダム・アクセス・メッセージは、前記端末の特定の識別コードを含む。
【0041】
本発明は、一切限定的ではない例として与えられる、次のものを表す図を参照してなされる以下の説明を読めば最もよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】無線通信システムの好ましい実施形態の概略図である。
図2】セルラー・アクセス・ネットワークのセルラー基地局とランダム・アクセス・ネットワークのランダムアクセス基地局とを地理的に分布させた一例の概略図である。
図3】無線通信システムにおいて端末のモビリティを管理するための方法を実施する一例の主要なステップを示す図である。
図4】モビリティを管理するための方法を実施する好ましい方法の主要なステップを示す図である。
【0043】
これらの図において、相互に同一の参照符号は、同一のまたは類似した要素を指している。明確にするために、特に明記されない限り、表されている要素は縮尺どおりではない。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1に無線通信システム10の好ましい実施形態を概略的に示す。図1で示されるように、無線通信システム10は、セルラー・ネットワーク・コア30に接続されたセルラー・アクセス・ネットワーク31を含む。
【0045】
セルラー・アクセス・ネットワーク31は、セルラー基地局と呼ばれる複数の基地局310を含む。各セルラー基地局310は、「セル」という名前でも知られる所定の地理的エリアZg1にサービスを提供し、セルラー基地局310によってサービスを提供されるすべての地理的エリアZg1のグループが地理的領域Rgを形成する。
【0046】
上述したように、セルラー・アクセス・ネットワーク31は無線広域ネットワーク(WWAN)タイプのものであり、すなわち、サービス対象の地理的領域Rgは、典型的には10000km2を超える、さらには50000km2さえも超える有効エリアのものである。
【0047】
セルラー基地局310は、端末20とデータを交換するように適合されている。上述したように、端末20とセルラー・アクセス・ネットワーク31との間のデータ交換は、協調物理ランダム・アクセス・チャネルと呼ばれる物理ランダム・アクセス・チャネルで行われ、すなわち、いつ、どの無線リソースで、端末20が前記セルラー・アクセス・ネットワーク31とデータを交換することができるかを決定するのはセルラー・アクセス・ネットワーク31および/またはセルラー・ネットワーク・コア30である。
【0048】
セルラー・アクセス・ネットワーク31は、例えば、GPRS、EDGE、UMTS、HSPA、HSPA+、LTE、CDMA2000アクセスネットワークなどである。一般に、無線通信システム10では、上述した、すなわち、サービス対象の地理的領域が地理的エリア(セル)に分割され、主に協調アクセス物理チャネルでデータを交換する無線広域ネットワークタイプのセルラー・アクセス・ネットワークの一般原理に対応し次第、任意のタイプのセルラー・アクセス・ネットワーク31を使用することができる。これには、特に、現在のすべてのセルラー・アクセス・ネットワークだけでなく、その将来の進化型も含まれる。
【0049】
以下の説明では、非限定的に、セルラー・アクセス・ネットワーク31がロング・ターム・エボリューション(LTE)タイプのものである場合について検討する。そのような状況において、セルラー・アクセス・ネットワーク31は、E-UTRAN(Evolved-Universal Terrestrial Access Network)という名前で、セルラー基地局310は、EnodeB(Evolved Node B)という名前で、セルラー・ネットワーク・コア30は、EPC(Evolved Packet Core)という名前で知られている。
【0050】
無線通信システム10はまた、好ましい実施形態では、例えばセルラー・ネットワーク・コア30に属するセルラー位置サーバ(図には表されていない)も含む。セルラー位置サーバは、モビリティ管理エンティティ(MME)という名前で知られ、LTEアクセスネットワークの場合、端末20ごとに、セルラー・アクセス・ネットワーク31に対する前記端末の位置を表す位置情報の項目を格納する。例えば、端末20の位置情報の項目は、前記端末20が接続された最後のセルラー基地局310の識別子に対応する。
【0051】
図1に示されるように、無線通信システム10は、以下で「ランダム・アクセス・ネットワーク32」と呼ばれる、セルラー・アクセス・ネットワーク31とは別の、セルラー・ネットワーク・コア30に接続された第2の無線アクセスネットワークも含む。
【0052】
ランダム・アクセス・ネットワーク32は、セルラー基地局310と同じ地理的領域Rgにサービスを提供する、ランダムアクセス基地局と呼ばれる基地局320を含む。
【0053】
図2に、地理的領域Rgにおけるセルラー基地局310およびランダムアクセス基地局320の地理的分布の例を概略的に表す。図2に示されるように、各ランダムアクセス基地局320は所定の地理的エリアZg2にサービスを提供し、すべての地理的エリアZg2のグループが地理的領域Rgをカバーする。
【0054】
各ランダムアクセス基地局320は、物理ランダム・アクセス・チャネルと呼ばれる永続的物理チャネルで端末20によって発信されたデータを受信するように適合されている。言い換えれば、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルは、特に端末20によって発信されたランダム・アクセス・メッセージを、時間的に途切れずに受信することができる。
【0055】
さらに、前記ランダムアクセス基地局320の永続的物理ランダム・アクセス・チャネルは、地理的領域全体で1つの同じ無線リソースを使用する。「無線リソース」とは、例えば、所定の周波数帯域または所定の周波数サブバンド(例えば、直交周波数分割多元接続(OFDMA)信号の搬送波)、拡散コードおよび/またはスクランブルコードなどを意味する。
【0056】
よって、ランダム・アクセス・ネットワーク32のランダムアクセス基地局320は、永続的であり途切れずに利用できるので時間的にも、また同じ無線リソースが地理的領域全体で使用される(使用されるべき無線リソースは端末20が位置する地理的エリアZg1、Zg2から独立している)ので空間的にも全体に及ぶ物理ランダム・アクセス・チャネルを形成する。ゆえに、各端末20は、地理的領域Rg内のその位置がどうであれ、常に、最初に知られるこの無線リソースを使用してランダム・アクセス・メッセージを自発的に発信することができる。
【0057】
「ランダムアクセス」とは、すべての永続的物理ランダム・アクセス・チャネルによって使用される無線リソースへのアクセスがランダム・アクセス・ネットワーク32によって調整されないことを意味することに留意されたい。むしろ、いつ永続的物理ランダム・アクセス・チャネルでランダム・アクセス・メッセージを発信するかを、前記ランダム・アクセス・ネットワーク32からの事前の許可なくそれ自体で決定するのは端末20である。例えば、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルにアクセスするための方法は、ALOHAまたは搬送波感知多重アクセス(CSMA)タイプのものなどである。
【0058】
前記物理ランダム・アクセス・チャネルが永続的である場合、前記永続的物理ランダム・アクセス・チャネル上の端末20の多重化は主に時間的である。ただし、時間的(統計的)多重化を別のタイプの多重化に結合することを排除するものはない。
【0059】
例えば、すべての永続的物理ランダム・アクセス・チャネルによって使用される無線リソースを、端末20によって発信されたランダム・アクセス・メッセージの周波数幅δFよりもずっと大きい(少なくとも10倍の)幅ΔF(例えば、約数百キロヘルツ)の所定の周波数帯域とすることができる。そのような場合、端末20が、ランダム・アクセス・メッセージを発信するために、周波数帯域内の幅δFの特定の周波数サブバンドをさらにランダムに選択することが可能である。必要に応じて、端末20は、幅ΔFの前記周波数帯域内で、周波数でも(統計的に)多重化される。
【0060】
別の例によれば、すべての永続的物理ランダム・アクセス・チャネルが、異なる拡散コードまたはスクランブルコードの1つの同じ所定のセットを使用することができる。そのような場合、端末20が、ランダム・アクセス・メッセージを発信するために、拡散コードまたはスクランブルコードの所定のセットの中から、拡散コードまたはスクランブルコードをさらにランダムに選択することが可能である。必要に応じて、端末20は、拡散コードまたはスクランブルコードの所定のセットの中からのコードでも(統計的に)多重化される。
【0061】
現在のセルラー・アクセス・ネットワークには一般に物理ランダム・アクセス・チャネルがすでにあることにさらに留意されたい。例えば、LTEアクセスネットワークでは、各セルラー基地局310は物理ランダム・アクセス・チャネル(PRACH)を実施する。しかしながら、ランダム・アクセス・ネットワーク32の永続的物理ランダム・アクセス・チャネルとは対照的に、物理ランダム・アクセス・チャネルPRACHは一時的であり(すなわち、非永続的なので、セルラー基地局310との端末の時間的同期を必要とする)、異なる無線リソースを使用する、すなわち、使用されるべき無線リソースは、端末20が位置する地理的エリアZg1内のセルラー基地局310に依存する。したがって、セルラー・アクセス・ネットワーク31の物理ランダム・アクセス・チャネルPRACHで発信するために、端末20は、セルラー基地局310によって発信された物理拡散チャネルを必ず事前にリッスンして、セルラー基地局310と時間的に同期され、前記物理ランダム・アクセス・チャネルPRACHのパラメータ(時間間隔の時間的位置およびランダム・アクセス・メッセージに予約された無線リソース)を知らなければならない。
【0062】
ランダムアクセス基地局320がセルラー・アクセス・ネットワーク31とは別のランダム・アクセス・ネットワーク32に属する図1に示される例では、セルラー基地局310とランダムアクセス基地局320とは、好ましくは、異なる物理層プロトコルを使用するように構成され、各端末20は、
セルラー基地局310とデータを交換するように適合されたセルラー通信モジュール21と、
ランダムアクセス基地局320とデータを交換するように適合されたランダムアクセス通信モジュール22
という2つの別々の通信モジュールを含む。
【0063】
例えば、セルラー・アクセス・ネットワーク31はLTEアクセスネットワークであり、ランダム・アクセス・ネットワーク32は超狭帯域アクセスネットワークである。「超狭帯域」またはUNB)とは、端末20とランダム・アクセス・ネットワーク32との間で交換される信号(ランダム・アクセス・メッセージを含む)の瞬時周波数スペクトルが、2キロヘルツ未満、さらには1キロヘルツ未満でさえもの周波数幅のものである。そのような信号の発信は、電力消費を大幅に削減して実現することができる。さらに、そのような信号を用いて、数百キロヘルツの幅ΔFの周波数帯域で多数の端末20の周波数多重化(統計的)を実現することが可能である。
【0064】
したがって、図1に示される例では、ランダム・アクセス・ネットワーク32(例えば、UNB)は、セルラー・アクセス・ネットワーク31(例えば、LTE)を補完してそこに、時間的、空間的に全体に及ぶ物理ランダム・アクセス・チャネルを追加する。
【0065】
ランダムアクセス基地局320によって提供される永続的物理ランダム・アクセス・チャネルは多数の用途を有し、特に、セルラー・アクセス・ネットワーク31に対する端末20のモビリティを管理するために、または前記セルラー・アクセス・ネットワーク31および/またはセルラー・ネットワーク・コア30を調べて、端末20が、データを受信するためにセルラー・アクセス・ネットワーク31と協調した、物理アクセスチャネルを確立しなければならないかどうかを知るためなどにも使用することができる。
【0066】
図3に、上述したように無線通信システム10において端末20のモビリティを管理するための方法50の主要なステップを概略的に表す。図3に示されるように、モビリティを管理するための方法50は以下のステップを含む。
51 端末20による、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルでのランダム・アクセス・メッセージの発信のステップ、
52 少なくとも1つのランダムアクセス基地局320による、前記端末20によって発信されたランダム・アクセス・メッセージの受信のステップ、
53 前記端末20から受信された前記ランダム・アクセス・メッセージに従った前記端末20の更新された位置情報の項目の決定のステップ、
54 セルラー位置サーバによる、更新された位置情報に従った前記セルラー位置サーバに格納された端末20の位置情報の更新のステップ。
【0067】
よって、端末20によって発信され、少なくとも1つのランダムアクセス基地局320によって受信されたランダム・アクセス・メッセージは、セルラー位置サーバに格納された端末20の位置情報を更新するために使用される。
【0068】
例えば、端末20が、例えば全地球測位システム(GPS)タイプのジオロケーションモジュールを装備するか、またはジオロケーションモジュールに接続されている場合には、よって端末20はランダム・アクセス・メッセージに、ジオロケーションモジュールによって決定されたなどのその位置を直接含めることができる。前記ランダム・アクセス・メッセージがランダムアクセス基地局320によって受信されると、ランダム・アクセス・メッセージから前記位置を抽出して前記端末20の更新された位置情報を決定することができる。
【0069】
別の例によれば、前記ランダム・アクセス・メッセージを受信した少なくとも1つのランダムアクセス基地局320の位置情報の項目に従って、端末20の更新された位置情報を決定することが可能である。
【0070】
実際、ランダムアクセス基地局320の位置情報は、前記ランダムアクセス基地局320の位置を表し、ステップ53において、ランダム・アクセス・メッセージを受信した前記ランダムアクセス基地局320の近くに位置するセルラー基地局310を推定することを可能にする。このセルラー基地局310の識別子が、例えば、前記端末20の更新された位置情報として使用される。
【0071】
より一般的には、ランダムアクセス基地局320の位置を表す任意の位置情報を使用して、端末20の更新された位置情報を決定することができる。例えば、各ランダムアクセス基地局320において、関連表、前記ランダムアクセス基地局320の近くに位置する1つまたは複数のセルラー基地局310、を格納することが可能である。そのような場合、ランダムアクセス基地局320の位置情報は、このランダムアクセス基地局の識別子に直接対応する。
【0072】
また、端末20によって発信されたランダム・アクセス・メッセージを複数のランダムアクセス基地局320が受信できることにも留意されたい。この場合、ステップ53において、例えば、ランダム・アクセス・メッセージを受信した前記ランダムアクセス基地局320のうちの少なくとも2つの地理的エリアの交点に位置するセルラー基地局310を識別するために、複数のランダムアクセス基地局320の位置情報を使用することが可能である。あるいは、ランダム・アクセス・メッセージを受信した複数のランダムアクセス基地局320の位置情報と、これらのランダムアクセス基地局320の各々が前記ランダム・アクセス・メッセージを受信するためのパラメータ(受信電力レベル、受信時刻、受信の頻度など)とを使用して、従来の方法で前記端末20の位置を推定することも可能である。よって、前記端末20の推定位置は、前記端末20の更新された位置情報を決定するために使用される。
【0073】
好ましい実施形態では、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルで端末20によって発信されたランダム・アクセス・メッセージは、前記端末20の特定の識別コード、すなわち、前記端末20を他のすべての端末20と区別することを可能にする一意の識別コードを含む。ゆえに、端末20を、単一のメッセージ、この場合は、端末20がランダムアクセス手順を開始するためのランダム・アクセス・メッセージによって識別することができる。
【0074】
ランダム・アクセス・メッセージは、ランダム・アクセス・ネットワーク32が前記端末20を認証することを可能にする情報も含むことができる。必要に応じて、単一のランダム・アクセス・メッセージによって端末20の識別と認証の両方を行うこともでき、これは端末20によって作成されるメッセージの交換数を大幅に制限することを可能にし、したがって端末20の電力消費の制限にも寄与する。
【0075】
したがって、モビリティを管理するための方法50の場合、このように、永続的物理ランダム・アクセス・チャネルで端末20によって発信された単一のランダム・アクセス・メッセージによってセルラー・アクセス・ネットワーク31に対する端末20の位置情報を更新することが可能である。比較として、先行技術による「位置更新」手順の場合には、位置情報を更新するために、セルラー・アクセス・ネットワーク31のダウンロードリンクとアップロードリンクとで合計10個のメッセージを交換することが必要なときもある。
【0076】
この更新はさらに、端末20とセルラー・アクセス・ネットワーク31との間の対話なしに実行され、したがって、前記端末20のセルラー通信モジュール21を待機モードに保って実行できることにさらに留意されたい。したがって、モビリティを管理するための方法50を、セルラー・アクセス・ネットワーク31に対する端末20のモビリティの管理を改善すると同時に電力消費の点でもその利点から利益を得るために、特に、上述したPSMの手法に対して補完的に実施することができる。端末20は、このために、ランダムアクセス通信モジュール22(例えば、UNB)を使用し、その電力消費は有利にはセルラー通信モジュール21の電力消費よりも少ない。
【0077】
好ましくは、端末20による発信のステップ51は、前記端末20の判断で、端末20によって評価された所定の発信基準が検証されたときにのみ実行される。言い換えれば、位置情報の更新を制御し、ランダム・アクセス・メッセージをいつ発信するかを決定するのは端末20である。端末20は、セルラー位置サーバに格納された位置情報の更新と関連付けられる電力消費を制御する。
【0078】
様々なタイプの発信基準を検討することができ、特定の発信基準を選択することは、実施態様の一変形を構成するにすぎない。例えば、以下の場合に発信基準を検証済みと見なすことができる。
先行するランダム・アクセス・メッセージの発信後に事前定義された発信期間が失効した場合、および/または
例えば加速度計や任意の他の移動検出手段を装備した端末20が、端末20が移動したことなどを検出した場合。
【0079】
図4に、モビリティを管理するための方法50の好ましい実施方法の主要なステップを概略的に表す。さらに、図3を参照して説明したステップ、モビリティを管理するための方法50は、セルラー位置サーバによる、更新された位置情報を、前記セルラー位置サーバによって格納された位置情報と比較することによる端末20の事前定義されたモビリティ基準の評価のステップ55を含む。モビリティ基準が検証されない場合(図4の参照番号550)、モビリティを管理するための方法50を停止することができる。反対に(図4の参照番号551)、モビリティを管理するための方法50は以下のステップを含む。
56 セルラー・アクセス・ネットワーク31に対する端末20の現在位置に使用されるべきセルラー・アクセス・ネットワーク31にアクセスするための新しいパラメータの、端末20に送信される、発信のステップ、
57 端末20による、受信されたセルラー・アクセス・ネットワークにアクセスするための前記パラメータの格納のステップ。
【0080】
モビリティ基準の評価は、主に、端末20が、前記端末20が接続された最後のセルラー基地局310とは異なるセルラー基地局310の地理的エリアZg1内に端末20が移動したかどうかを判断することを目的とする。様々なタイプのモビリティ基準を検討することができ、特定のモビリティ基準を選択することは、実施態様の一変形を構成するにすぎない。例えば、以下の場合にモビリティ基準を検証済みと見なすことができる。
更新された位置情報が、セルラー位置サーバに事前に格納された位置情報と異なり次第、または
端末20が、前記端末20が接続された最後のセルラー基地局310の近くにはないセルラー基地局310の地理的エリア内に移動した場合。
【0081】
端末20に送信された、発信されたセルラー・アクセス・ネットワーク31へのアクセスのパラメータは、前記端末20がそこから移動した地理的エリアZg1内のセルラー基地局310への前記端末20の接続を加速することを可能にする、特に、セルラー通信モジュール21が移動中に待機モードにあった場合に前記端末20のセルラー通信モジュール21を覚醒させる任意のタイプの情報に対応する。例えば、アクセスパラメータは以下を含むことができる。
端末20の更新された位置情報、および/または
端末20がそこから移動した地理的エリアZg1内のセルラー基地局310の物理拡散チャネルによって使用される無線リソースに関する情報項目、
物理拡散チャネルで拡散された、特に、物理ランダム・アクセス・チャネルPRACH上のアクセスを制御することを目的とする、1つまたは複数の情報項目(例えば、物理ランダム・アクセス・チャネルPRACHで発信する前に検証されるべき最小受信電力レベルおよび/または前記物理ランダム・アクセス・チャネルPRACHで遵守されるべき最大発信電力レベルなど)など。
【0082】
アクセスパラメータは、ランダム・アクセス・ネットワーク32および/またはセルラー・アクセス・ネットワーク31によって発信される。例えば、アクセスパラメータによって表される情報の量が少ない場合には、ランダムアクセス基地局320がその情報を発信し、端末20に送信することができる。反対に、それらは好ましくは、セルラー基地局310によって発信される。必要に応じて、端末20のセルラー通信モジュール21が待機モードにある場合、ランダムアクセス基地局320によって、前記端末20に送信される覚醒メッセージを発信することが可能である。端末20は、覚醒メッセージを受信すると、セルラー通信モジュール21をアクティブ化して、セルラー・アクセス・ネットワーク31のセルラー基地局310を介してアクセスパラメータを受信する。
【0083】
より一般的には、以上で検討された実施方法および実施形態は非限定的な例として説明されており、ゆえに他の変形形態が重要であることに留意されたい。
【0084】
特に、本発明は、主にランダムアクセス基地局320が端末20のモビリティを管理するために使用される場合を検討することにより説明されている。しかしながら、上述したように、他の用途も考えられる。特に、端末20による永続的物理ランダム・アクセス・チャネル上でのランダム・アクセス・メッセージの発信を、データがそこに伝送され、前記端末20に送信されることが予期される場合に、セルラー・アクセス・ネットワーク31および/またはセルラー・ネットワーク・コア30に要求するために使用することができる。必要に応じて、端末20のセルラー通信モジュール21が待機モードにある場合、ランダムアクセス基地局320によって、前記端末20に送信される覚醒メッセージを発信することが可能である。端末20は、覚醒メッセージを受信すると、セルラー通信モジュール21をアクティブ化して前記データを受信する。ランダム・アクセス・ネットワーク32による覚醒メッセージの発信は、この場合、セルラー・アクセス・ネットワーク31の物理「ページング」チャネルに置き換わるので、上述したeDRXの手法に関して、端末20は、ランダム・アクセス・ネットワーク32に送信された、ランダム・アクセス・メッセージの発信による着信呼の確立のための遅延を制御することができる。
【0085】
さらに、本発明は、ランダムアクセス基地局320がセルラー・アクセス・ネットワーク31とは別のランダム・アクセス・ネットワーク32に属する場合を検討することにより説明されている。他の例によれば、セルラー基地局310の全部または一部がランダムアクセス基地局320でもあることを排除するものはない。したがって、ランダムアクセス基地局320でもあるセルラー基地局310は、一時的物理ランダム・アクセス・チャネルと永続的物理ランダム・アクセス・チャネルの両方を含む。
【0086】
また、本発明は、地理的領域Rgがセルラー・アクセス・ネットワーク31によってサービスを提供される地理的領域全体に対応することを検討することにより説明されている。しかしながら、本発明は、一時的物理ランダム・アクセス・チャネルが異なる無線リソースを使用する複数の地理的エリアによって形成された有効エリアの任意の地理的領域に一般的に適用可能である。
図1
図2
図3
図4