IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コーロン インダストリーズ インクの特許一覧

特許7108642硬化可能な石油樹脂、その製造方法及びその用途
<>
  • 特許-硬化可能な石油樹脂、その製造方法及びその用途 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】硬化可能な石油樹脂、その製造方法及びその用途
(51)【国際特許分類】
   C08F 232/08 20060101AFI20220721BHJP
   C09J 145/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C08F232/08
C09J145/00
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019572076
(86)(22)【出願日】2018-06-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-08-27
(86)【国際出願番号】 KR2018007171
(87)【国際公開番号】W WO2019004675
(87)【国際公開日】2019-01-03
【審査請求日】2020-01-16
(31)【優先権主張番号】10-2017-0083493
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】イ,ジェ ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミョン ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ワン ジェ
(72)【発明者】
【氏名】パク,デ スン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジュン ヒョ
【審査官】工藤 友紀
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-511409(JP,A)
【文献】特開2012-140540(JP,A)
【文献】国際公開第2016/018131(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0218131(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0086916(KR,A)
【文献】特開2012-140539(JP,A)
【文献】国際公開第2017/057269(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 2/00-301/00
C09J 1/00-201/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石油樹脂単量体から由来した繰り返し単位(A)と、
シラン単量体から由来した繰り返し単位(B)と、
スチレン系単量体から由来した繰り返し単位とを、含み、
前記石油樹脂単量体は、ナフサ分解によって得られた混合C5留分、混合C9留分、ジシクロペンタジエン及びこれらの混合物からなる群から選択される1種を含み、
前記シラン単量体は、トリフェニルビニルシランであるか、または下記の化2で示されることを特徴とする、硬化型石油樹脂。
【化2】
(前記化学式2で、Rは水素又はメチル基であり、R~Rは、互いに同じか異なり、水素、C1~C20のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C1~C12のアルコキシ基、C2~C12のアシルオキシ基、C6~C30のアリールオキシ基、C5~C30のアラルオキシ基、又はC1~C20のアミン基であり、nは1~12の整数であり、x及びyは、0又は1である。)
【請求項2】
前記スチレン系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、2-メチル-4-クロロスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、cis-β-メチルスチレン、trans-β-メチルスチレン、4-メチル-α-メチルスチレン、4-フルオロ-α-メチルスチレン、4-クロロ-α-メチルスチレン、4-ブロモ-α-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、2-フルオロスチレン、3-フルオロスチレン、4-フルオロスチレン、2,4-ジフルオロスチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、オクタクロロスチレン、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン、α-ブロモスチレン、β-ブロモスチレン、2-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、及び、これらの混合物からなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項1に記載の硬化型石油樹脂。
【請求項3】
前記Rは水素又はメチル基であり、R~Rは、互いに同じか異なり、C1~C6のアルキル基又はC1~C6のアルコキシ基であり、nは1~6の整数、x及びyは0又は1であることを特徴とする、請求項に記載の硬化型石油樹脂。
【請求項4】
前記シラン単量体は、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリアセトキシビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、及び、γ-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種であることを特徴とする、請求項に記載の硬化型石油樹脂。
【請求項5】
前記硬化型石油樹脂は、繰り返し単位のトータルの100重量%の中において、石油樹脂単量体から由来した繰り返し単位(A)30~70重量%、シラン単量体から由来した繰り返し単位(B)10~40重量%、及び、スチレン系単量体から由来した繰り返し単位(C)10~40重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載の硬化型石油樹脂。
【請求項6】
前記硬化型石油樹脂は、軟化点が70~150℃であり、重量平均分子量(Mw)が500~5000g/molであることを特徴とする、請求項1に記載の硬化型石油樹脂。
【請求項7】
ポリオレフィン系ベースポリマー、石油樹脂、及び、触媒を含む反応型接着剤組成物であって、
前記石油樹脂は請求項1~のいずれか一項に記載の硬化型石油樹脂であることを特徴とする、反応型接着剤組成物。
【請求項8】
前記反応型接着剤組成物は、トータルの組成物100重量%の中において、ポリオレフィン系ベースポリマー70~94重量%、石油樹脂5~30重量%、及び触媒0.1~10重量%を含むことを特徴とする、請求項に記載の反応型接着剤組成物。
【請求項9】
前記ポリオレフィン系ベースポリマーは、ポリアルファオレフィン単独、ポリオレフィン単独、これらの共重合体、及び、これらのブレンドからなる群から選択される1種以上であることを特徴とする、請求項に記載の反応型接着剤組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年06月30日付の韓国特許出願第10-2017-0083493号に基づく優先権の利益を主張するのであり、この韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は、この明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、硬化可能な石油樹脂、その製造方法及びその用途に関するものである。
【背景技術】
【0003】
自動車に使用される材料は、鉄鋼をはじめとして、アルミニウムといった非鉄金属、及び、ゴム、プラスチックなどの高分子材料が使われている。自動車材料は、軽量化のために、従来、鉄鋼、非金属などが担当していた部品を、プラスチック、エンジニアリングプラスチック、ゴム、熱可塑性エラストマーなどで代替しており、その中でも、ポリプロピレンといったポリオレフィン系汎用プラスチックが一番多く使われている。
【0004】
ポリオレフィン系汎用プラスチックは、軽くて費用が安く、耐薬品性及び成形性に優れるという利点があるので、自動車のバンパー、インストルメントパネルなどの大型部品、又は、ドアトリム、ダッシュボードなどの内装材として使われている。ポリオレフィン系樹脂の中でも、ポリプロピレンが、自動車内装材として最も脚光を浴びている。
【0005】
一方、プラスチック材料を組み付けるために、溶剤型接着剤(solvent based adhesive)、水溶性接着剤(water basead hesive)、ホットメルト型接着剤(hot-melt adhesive)、反応型接着剤(reactive adhesive)、感圧型接着剤(pressure sensitive adhesive)などの、多様な形態の接着剤が使われており、その中でも反応型接着剤に対する関心が高くなっている。
【0006】
反応型接着剤は、熱、光又は硬化剤によって硬化し、硬化反応の調節が易しく、強い接着力を有するという利点がある。
【0007】
反応型接着剤にはベースポリマーの種類によって種々のものがあり、その中で、ウレタン系樹脂を主成分とする反応型ポリウレタン系接着剤(PUR、Polyurethane reactive adhesive)が、広く使われている。前記反応型ポリウレタン系接着剤は、基材に塗布された後、空気中に含まれた水分と反応して、架橋反応(又は硬化反応)によって接着を行い、柔軟な接着被膜を形成するという利点がある。しかし、主原料として使用する高価のイソシアネート系化合物と、触媒として使用するスズ(Tin)といった有害物質を含んでいるため、これを代替するための安全で環境に優しい接着剤に対する市場の要求が高くなっている。
【0008】
このような要求に応えるように、反応型ポリオレフィン系接着剤(POR、Polyolefin reactive adhesive)が提示された。
【0009】
反応型ポリオレフィン系接着剤は、低い価格及び優れた接着力を有し、ベースポリマーとして低密度/高密度ポリエチレン樹脂、又は結晶性/非結晶性ポリプロピレン樹脂を主成分として使い、硬化反応のための触媒と接着力を高めるための石油樹脂と混合して使用する。
【0010】
接着力向上のための石油樹脂は、主にC5系石油樹脂又はC9系石油樹脂が、一般の石油樹脂又は水添形態の石油樹脂として使われている。一例として、韓国特許登録第10-1174019号では、非晶性のポリオレフィンを含む接着剤組成物に対する粘着付与樹脂として脂肪族石油樹脂を提示している。
【0011】
最近には、硬化速度を高め、接着力を改善するために、シランカップリング剤といったシラン系化合物を使う方法が提示された。韓国特許登録第10-1305438号では、自動車内装材として使用する、ポリウレタンとアルミニウム素材との接合のための、アルコキシシラン化合物を含む接着剤を開示している。
【0012】
このようなシラン系化合物は、単純に混合して添加されるか、ベースポリマーに対して改質を行う形態で使うことができ、具体的に、アメリカ特許公開第2005-0043455号、ヨーロッパ特許第EP0944670号、国際特許公開第WO第2005/100501号、アメリカ特許登録第5,824,718号でも、シラン系化合物を多様な形態で導入した組成物を開示している。しかし、このような単純導入方式では、シラン系化合物のグラフト率が低く、所望の水準の硬化速度の向上及び接着力改善の効果を確保することができなかった。
【0013】
一方、アメリカ特許登録第8,101,697号では、接着剤として使える、シラン官能基を含むアルファ-オレフィンジシクロペンタジエン又はノルボルネンジカルボン酸無水物などの重合性オレフィンを含む、高分子組成物を開示しているが、この特許の場合、重合性オレフィンが、開環メタセシス重合反応(Ring Opening Metathesis Polymerization)によって置換基又は官能基などとして導入されて分岐型(branched)の構造を示すのであり、接着特性向上の効果が十分ではない。
【0014】
また、本出願人は、韓国特許公開第2016-0016677号で、シラン系化合物をベースポリマーではない石油樹脂に導入した硬化可能石油樹脂を提案したことがある。ここで、提示した石油樹脂は分子構造内の二重結合でもって硬化が可能であって、反応型接着剤として使用することができるという内容とともに、その可能性を評価した。すなわち、シラン系化合物が導入された石油樹脂をポリオレフィン系基材に対して接着剤として適用した結果、ある程度の接着力は確保することができることを確認した。しかし、関連業界では、これより高い水準の接着力が要求されている。
【0015】
一方、自動車内装材として使用するポリオレフィン系基材は、接着剤処理に先立ち、接着力を高めるために、コロナ処理、プラズマ処理又はプライマー処理などの前処理を行うことが一般的である。
【0016】
ポリオレフィン系基材は、代表的な無極性のものであり、接着力を高めるためにコロナなどを前処理して一時的に極性を形成する方式が一般的であるが、このような前処理工程は、工程を複雑にし、トータルの費用を上昇させるなどの問題点がある。
【0017】
このような前処理によって、自動車製作の工程が長くなり、トータルの製作コストが増加する。
【0018】
また、自動車内装材の場合、接着部位不良の一番有り勝ちな原因は、接着強度よりは、むしろ適切でない被着剤の準備と、不適当な接着剤の選択にあるので、自動車内装材として使用するポリオレフィン系素材に適した接着剤の確保が至急の課題である。
【0019】
特に、自動車用素材として多く使われる基材の一つであるABS基材の場合、芳香族性構造を有するものなので、芳香族性構造を含む基材に特に適した接着剤も必要であるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【文献】韓国特許登録第10-1305438号公報
【文献】アメリカ特許公開第2005-0043455号公報
【文献】ヨーロッパ特許第EP0944670号公報
【文献】国際特許公開第WO2005/100501号公報
【文献】アメリカ特許登録第5,824,718号公報
【文献】アメリカ特許登録第8,101,697号公報
【文献】韓国特許公開第2016-0016677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
前述した問題を解決するために、本発明者らは、従来のようにコロナ処理などの前処理工程を行わずとも、ポリオレフィン系基材との接着力を高めることができる、反応型ポリオレフィン系接着剤組成物を製造しようとした。その結果、本発明者らは、反応型ポリオレフィン系接着剤組成物に適用される石油樹脂として石油樹脂単量体から由来した繰り返し単位、シラン単量体から由来した繰り返し単位、及び、スチレン系単量体から由来した繰り返し単位を含む共重合体を使う場合に、硬化工程以後に、ポリオレフィン系基材に対する優れた接着力を確保することができるということを確認した。
【0022】
また、自動車用素材として多く使われる基材の一つであるABS基材に芳香族性構造があることに着眼し、接着剤樹脂構造内にも芳香族性構造を導入して、基材と接着剤との間の相互の濡れ性(wettability)を高め、これにより接着力も高めることができるように、新規のスチレン系単量体から由来した繰り返し単位を適用した硬化型石油樹脂を開発し、既存の接着剤に比べて格段に向上した接着物性を具現することができることを確認した。
【0023】
したがって、本発明の目的は、スチレン系単量体から由来した繰り返し単位を含む硬化型石油樹脂を提供することにある。
【0024】
また、本発明の他の目的は、前記硬化型石油樹脂の製造方法を提供することにある。
【0025】
また、本発明のさらに他の目的は、前記硬化型石油樹脂を含む反応型ポリオレフィン系接着剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0026】
前記目的を達成するために、本発明は、石油樹脂単量体から由来した繰り返し単位、シラン単量体から来由した繰り返し単位及びスチレン系単量体から由来した繰り返し単位を含む硬化型石油樹脂を提供する。
【0027】
ここで、前記スチレン系単量体は、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、2-メチル-4-クロロスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、cis-β-メチルスチレン、trans-β-メチルスチレン、4-メチル-α-メチルスチレン、4-フルオロ-α-メチルスチレン、4-クロロ-α-メチルスチレン、4-ブロモ-α-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、2-フルオロスチレン、3-フルオロスチレン、4-フルオロスチレン、2,4-ジフルオロスチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、オクタクロロスチレン、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン、α-ブロモスチレン、β-ブロモスチレン、2-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上を含むことを特徴とする。
【0028】
石油樹脂単量体は、ナフサ分解によって得られた、混合C5留分、混合C9留分、ジシクロペンタジエン及びこれらの混合物からなる群から選択される1種を含むことを特徴とする。
【0029】
また、共重合シラン単量体は、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリアセトキシビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、γ-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン及びこれらの混合物からなる群から選択される1種を含むことを特徴とする。
【0030】
また、本発明は、石油樹脂単量体から由来した繰り返し単位、シラン単量体から由来した繰り返し単位及びスチレン系単量体から由来した繰り返し単位を共重合して製造する硬化型石油樹脂の製造方法を提供する。
【0031】
また、本発明は前記提示した硬化型石油樹脂の接着剤組成物としての用途を提供する。
【発明の効果】
【0032】
本発明による硬化型石油樹脂は、分子構造内に存在する二重結合によって硬化可能であるので、反応型接着剤、その中でも反応型ポリオレフィン系接着剤の組成として好ましく適用可能である。
【0033】
このような反応型ポリオレフィン系接着剤は、硬化型石油樹脂内に存在する芳香族性構造によって、ABSなどのように基材内の芳香族性構造を含むポリオレフィン系基材に対する高い接着力及び付着力を確保することができる。
【0034】
特に、コロナ又はプラズマなどの接着力向上のための前処理工程を遂行しなかったポリオレフィン基材に対して優れた接着力及び付着力を確保することができるので、ポリオレフィンを基材とする多様な製品の生産コストを大きく低めることができ、工程をより簡素化することができる。
【0035】
前記反応型ポリオレフィン系接着剤は、包装、製本、紙加工分野、建築土木分野、纎維皮革分野、電気電子分野、自動車分野などの多様な分野に応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】実験例2で測定した実施例1~3、比較例1及び2の組成物に対する硬化前後の剪断接着強度(Lap shear strength)変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0038】
ポリオレフィン系基材は代表的な無極性のものであり、接着力を高めるために、コロナなどを前処理して一時的に極性を作る方式が一般的であるが、本発明ではこのような高価の前処理なしに、無極性のポリオレフィン系基材にそのまま適用することができる接着剤を提示する。
【0039】
接着とは、分子、原子、イオンの引力によって、2つの表面がくっ付けられた状態をいい、接着剤は、界面引力によって2つの物質をくっ付けることができる物質であり、濡れ性(wetting)と接着強度が要求される。基材に対する濡れ性が有利になるほど、相対的に広い初期接着面積を有するとともに、より高い接着力を有するので、本発明では、ポリオレフィン系基材と化学構造が類似した、ポリオレフィン系をベースポリマーとする反応型接着剤組成物を使う。
【0040】
反応型ポリオレフィン系接着剤組成物は、ポリオレフィン系ベースポリマーに、硬化反応のための触媒と、接着力を高めるための石油樹脂とを混合して使用する。ここで、本発明では、前記石油樹脂として、ポリオレフィン系基材との優れた接着力を有するとともに硬化ができるように、新しい組成を有する石油樹脂を提示する。
【0041】
<石油樹脂>
具体的に、本発明による石油樹脂は、下記の化学式1に示したように、3種の単量体が共重合した共重合体の形態を有する。
【0042】
【化1】
【0043】
(前記化学式1にて、Aは石油樹脂単量体由来の繰り返し単位、Bはシラン単量体由来の繰り返し単位、Cはスチレン系単量体由来の繰り返し単位、m、n及びoは1以上の整数である。)
【0044】
ここで、共重合体の形態は便宜上前記のように表現したが、本発明で特に限定せず、ランダム共重合体(random copolymer)、交互共重合体(alternative copolymer)、ブロック共重合体(block copolymer)、グラフト共重合体(graft copolymer)及びスター共重合体(starblock copolymer)などの多様な形態が可能であり、好ましくはランダム共重合体であり得る。
【0045】
以下、各繰り返し単位について詳細に説明する。
【0046】
本発明による硬化型石油樹脂を構成する第1繰り返し単位はナフサ分解によって得られた石油樹脂単量体から由来した繰り返し単位(A)であり、分子構造内の重合可能な官能基であるエチレン不飽和性官能基を一つ以上含む。
【0047】
前記石油樹脂単量体としては、実用化可能な液状の混合C5~C12留分、又はジオレフィンが可能であり、好ましくは混合C5留分、混合C9留分、又はジオレフィンが可能である。
【0048】
混合C5留分は、1-ペンテン、2-メチル-2-ブテン、n-ペンタン、プロパジエン、ジシクロペンタジエン、ピペリレン、イソプレン、シクロペンテン、1,3-ペンタジエンなどを含み、混合C9留分は、スチレン、ビニルトルエン、インデン(Indene)、アルファメチルスチレン、及び、ベンゼン/トルエン/キシレン(BTX)などを含み、ジオレフィンは、プロパジエン、ジシクロペンタジエン、ピペリレン、イソプレン、シクロペンテン、1,3-ペンタジエンなどを含む。好ましくは、石油樹脂単量体として、ジオレフィン、より好ましくはジシクロペンタジエンを含む。
【0049】
前記繰り返し単位(A)とともに本発明による硬化型石油樹脂を構成する第2繰り返し単位は、シラン単量体から由来した繰り返し単位(B)であり、架橋及び硬化のための反応サイトを提供する。前記架橋及び硬化によって石油樹脂の硬化が可能であるので、反応型接着剤に添加したとき、単純な粘着力の向上ではなく、硬化によって接着力をさらに高めることができる。
【0050】
繰り返し単位(B)は、シラン単量体から由来し、これは、下記の化学式2として表示される、分子構造内に重合可能な官能基であるエチレン不飽和性官能基を含む化合物が好ましい:
【0051】
【化2】
【0052】
(前記化学式2にて、Rは水素又はメチル基であり、R~Rは、互いに同じか異なり、それぞれ独立に、水素、C1~C20のアルキル基、C3~C12のシクロアルキル基、C1~C12のアルコキシ基、C2~C12のアシルオキシ基、C6~C30のアリールオキシ基、C5~C30のアラルオキシ基、又はC1~C20のアミン基であり、nは1~12の整数であり、x及びyは、0又は1である。)
【0053】
好ましくは、前記Rは水素又はメチル基であり、R~Rは、互いに同じか異なり、C1~C6のアルキル基、又はC1~C6のアルコキシ基であり、nは1~6の整数であり、x及びyは、0又は1である。
【0054】
本明細書で言及する“アルキル”は、1~20個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の炭素原子の、線形又は分岐形の飽和1価炭化水素の部位を意味する。アルキル基は、非置換のものだけではなく、後述する一定の置換基によってさらに置換されうる。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、2-プロピル、n-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、ヘキシル、ドデシルなどを含むのであり、追加的にハロゲンで置換される場合、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、卜リクロロメチル、ヨードメチル(ヨウ化メチル)、ブロモメチル(臭化メチル)などを挙げることができる。
【0055】
本明細書で言及する“シクロアルキル”は、3~12個の環式炭素による、飽和又は不飽和である非芳香族1価の単環式、二環式又は三環式の炭化水素の部位を意味し、後述する一定の置換基によって、さらに置換されうる。
【0056】
例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、シクロヘプチル、シクロオクチル、デカヒドロナフタレニル、アダマンチル、ノルボルニル(すなわち、ビシクロ[2,2,1]ヘプト-5-エニル)などを挙げることができる。
【0057】
本明細書で言及する“アルコキシ”は、1~12個、好ましくは1~10個、より好ましくは1~6個の炭素原子による線形又は分岐形の飽和1価炭化水素の部位を意味する。アルコキシ基は、非置換のものだけではなく、後述する一定の置換基によってさらに置換されうる。アルコキシ基の例として、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘプトキシ、ドデキシなどが可能であり、追加的にハロゲンで置換される場合、フルオロメトキシ、ジフルオロメトキシ、トリフルオロメトキシ、クロロメトキシ、ジクロロメトキシ、卜リクロロメトキシ、ヨードメトキシ、ブロモメトキシなどを挙げることができる。
【0058】
本明細書で言及する“アシルオキシ”は、1~12個、好ましくは1~10個の炭素原子による線形又は分岐形の炭化水素であり、アセトキシ、オキシエタノール、オキシプロパノール、オキシブタノール、オキシペンタノール、オキシヘキサノール、オキシ-2,2-ジメチルプロパノール、オキシ-3,3-ジメチルブタノールなどを挙げることができる。これらは、後述する一定の置換基によって、さらに置換されうる。
【0059】
本明細書で言及する“アリールオキシ”は、単環式アリール基又は多環式アリール基内に酸素が含まれる場合を含む。ここで、アリール基は芳香族環を意味する。具体的に、アリールオキシ基としては、フェノキシ、p-トリルオキシ、m-トリルオキシ、3,5-ジメチル-フェノキシ、2,4,6-トリメチルフェノキシ、p-tert-ブチルフェノキシ、3-ビフェニルオキシ、4-ビフェニルオキシ、1-ナフチルオキシ、2-ナフチルオキシ、4-メチル-1-ナフチルオキシ、5-メチル-2-ナフチルオキシ、1-アントリルオキシ、2-アントリルオキシ、9-アントリルオキシ、1-フェナントリルオキシ、3-フェナントリルオキシ、9-フェナントリルオキシなどがあるが、これらに限定されない。
【0060】
本明細書で言及する“アミン基”は、炭素数は特に限定されないが、1~30であることが好ましい。アミン基の具体的な例としては、メチルアミン基、ジメチルアミン基、エチルアミン基、ジエチルアミン基、フェニルアミン基、ナフチルアミン基、ビフェニルアミン基、アントラセニルアミン基、9-メチル-アントラセニルアミン基、ジフェニルアミン基、フェニルナフチルアミン基、ジトリルアミン基、フェニルトリルアミン基、トリフェニルアミン基などがあるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
本明細書で全ての化合物又は置換基は、特別な言及がない限り、置換又は非置換のものであり得る。ここで、置換されるというのは、水素が、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシリル基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、チオ基、メチルチオ基、アルコキシ基、ニトリル基、アルデヒド基、エポキシ基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アセタール基、ケトン基、アルキル基、ペルフルオロアルキル基、シクロアルキル基、ヘテロシクロアルキル基、アリル基、ベンジル基、アリール基、ヘテロアリール基、これらの誘導体、及びこれらの組合せからなる群から選択される、いずれか1種で代替されることを意味する。
【0062】
具体的に、化学式2のシラン単量体は、ビニルトリメチルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリアセトキシビニルシラン、トリフェニルビニルシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシラン、3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート、γ-(メタ)アクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種を含み、好ましくはビニルトリメトキシシランを含む。
【0063】
前記シラン化合物のみで石油樹脂単量体と共重合する場合、ポリオレフィン系基材に対する付着性が低いから、本発明では、前記ポリオレフィン系基材との相溶性を高めるために、スチレン系単量体を使って共重合する。
【0064】
したがって、本発明による石油樹脂を構成する第3繰り返し単位である、繰り返し単位(C)は、スチレン系単量体から由来した繰り返し単位であり、ポリオレフィン系基材との接着力の増加に寄与する。本発明で提示するスチレン単量体は、分子構造内に、重合が可能な二重結合とともに芳香族性構造が存在する。前記二重結合は、石油樹脂単量体及びシラン単量体との共重合に寄与し、芳香族性構造は、接着力向上に寄与する。
【0065】
具体的に、スチレン系分子構造内に1個の二重結合を有するから、石油樹脂単量体とシラン単量体とともに共重合する際に前記二重結合が崩壊し、同じ状態の隣接した分子どうし連続的に結合する添加反応によって重合反応が起こる。その結果、石油樹脂内に接着力に優れた芳香族性構造が存在するので、ポリオレフィン系基材に対する高水準の接着力を確保することができる。
【0066】
使用可能なスチレン系単量体は、下記の化学式で示したように、スチレン、α-メチルスチレン、3-メチルスチレン、4-メチルスチレン、2,4-ジメチルスチレン、2,5-ジメチルスチレン、2-メチル-4-クロロスチレン、2,4,6-トリメチルスチレン、cis-β-メチルスチレン、trans-β-メチルスチレン、4-メチル-α-メチルスチレン、4-フルオロ-α-メチルスチレン、4-クロロ-α-メチルスチレン、4-ブロモ-α-メチルスチレン、4-t-ブチルスチレン、2-フルオロスチレン、3-フルオロスチレン、4-フルオロスチレン、2,4-ジフルオロスチレン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロスチレン、2-クロロスチレン、3-クロロスチレン、4-クロロスチレン、2,4-ジクロロスチレン、2,6-ジクロロスチレン、オクタクロロスチレン、2-ブロモスチレン、3-ブロモスチレン、4-ブロモスチレン、2,4-ジブロモスチレン、α-ブロモスチレン、β-ブロモスチレン、2-ヒドロキシスチレン、4-ヒドロキシスチレン、及びこれらの混合物からなる群から選択される1種以上が可能であり、好ましくはスチレンを使う。
【0067】
前述した繰り返し単位を有する、本発明による硬化型石油樹脂は、反応型接着剤組成物に適切な粘着力を付与し、硬化が可能であり、接着力向上のために各繰り返し単位の含量の限定が要求される。このような含量範囲は、石油樹脂自体の基本物性を維持するとともに、シラン単量体及びスチレン系単量体の導入によって得ようとする効果、すなわち硬化能及び接着力の向上を極大化するための範囲である。仮に、シラン系単量体又はスチレン系単量体の含量が多くなれば、石油樹脂の軟化点及び重合度が変わるため、前述した効果を充分に確保することができない。
【0068】
具体的に、繰り返し単位のトータルの100重量%の中において、繰り返し単位(A)は30~70重量%、好ましくは40~60重量%で、繰り返し単位(B)は10~40重量%、好ましくは15~35重量%で、また、繰り返し単位(C)は10~40重量%、好ましくは15~35重量%で含まれる。仮に、繰り返し単位(A)の含量が前記範囲未満であれば、所望水準の接着力を得ることができず、これと反対に、前記範囲を超えれば、相対的に他の繰り返し単位の含量が足りないために、硬化能及び接着力の向上を期待することができない。また、繰り返し単位(B)の含量が前記範囲未満であれば、硬化能が低下して硬化時間が長くなるなどの問題が発生し、これと反対に、前記範囲を超えれば、過度な硬化が起こるか硬化時間の制御が容易でないという問題が発生する。さらに、繰り返し単位(C)の含量が前記範囲未満であれば、ポリオレフィン系基材に対する接着力の向上を期待することができず、これと反対に、前記範囲を超えれば、相対的に他の繰り返し単位の含量が足りないために、硬化能及び接着力の向上を期待することができない。
【0069】
このように製造された石油樹脂は、軟化点が70~150℃、重量平均分子量(Mw)が500~5,000g/molである。
【0070】
<石油樹脂の製造方法>
一方、本発明による硬化型石油樹脂は、前述したような石油樹脂単量体、シラン単量体及びスチレン系単量体の共重合によって製造される。ここで、共重合は、各単量体内に存在する二重結合間の付加反応によって進む。特に、本発明による石油樹脂の場合、共重合に参加するシランが湿潤硬化メカニズムを引き起こす要因を提供し、追加的に共重合に参加するスチレンは芳香族成分を含んでいるから、芳香族成分で構成された基材に対する濡れ性及び相溶性を高めることにより、反応型接着剤組成物に適用するとき、特定の基材に対して向上した接着特性を示すことができる。
【0071】
共重合は多様な方法が使われうるのであり、本発明では特に限定しない。一例として、熱重合、光重合、イオン重合、放射線重合の方式が可能であり、好ましくは熱重合方式を使うことができる。
【0072】
熱重合は、石油樹脂単量体、シラン単量体及びスチレン系単量体を反応器に投入した後、150~300℃の熱を加え、0.5~10時間、好ましくは1~3時間反応させることでなされるのであり、必要な場合、圧力を加えることができる。圧力印加は、別途の圧力印加装置を装着するか、熱重合をオートクレーブ内で遂行する。ここで、圧力は20~25barの範囲内で遂行する。
【0073】
このような熱重合の反応温度、時間及び圧力の範囲は、前記提示した共重合体の物性(モル比、組成)を満たすことができる石油樹脂を得るための最適のパラメーターである。前記反応温度、時間及び圧力の範囲が前記範囲を外れる場合、最終生成物内に未反応物質が存在するか、石油樹脂の分子量が低くなるなどの問題が発生する。また、過度な条件で熱重合を遂行する場合、副反応が起こるか、分子量の過度な増加などによって接着力が低下するなどの問題が発生する。
【0074】
特に、本発明の石油樹脂の製造は、各単量体の反応性が高いから、熱重合の際に熱重合開始剤の使用を排除することができ、必要な場合、反応溶媒を使うことができる。
【0075】
使用可能な反応溶媒としては、非重合性溶媒を使い、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジクロロメタン、クロロエタン、ジクロロエタン、クロロベンゼンなどが使われ、好ましくはベンゼン、キシレン、トルエン、シクロヘキサン又はこれらの混合溶媒が使われうる。ここで、反応溶媒は、反応物の最終濃度が30~70重量%となるように希釈して使うことができる。
【0076】
熱重合後に得られた石油樹脂は、通常の後処理工程を経て、一例として、脱気及び濃縮の工程を経て、未反応物質、副反応生成物などを除去して、本発明で製造しようとする硬化型石油樹脂を得る。
【0077】
脱気工程は、固相の硬化型石油樹脂と、未反応物質及び副反応生成物(例えば、オリゴマー)を分離するための工程であり、高温で遂行し、必要な場合、高圧の下で遂行する。
【0078】
前記脱気工程は、石油樹脂の収率及び軟化点に直接的な関連があり、脱気温度が高いほど収率及び軟化点は減少する傾向を示す。しかし、余りにも低い場合、未反応物質及び副反応生成物の除去が難しいので、硬化型石油樹脂の純度が大きく低下する。よって、収率及び軟化点が低下しない条件で脱気工程を行わなければならない。
【0079】
好ましくは、本発明では、200~280℃、好ましくは230~270℃の温度範囲で1分~15分間遂行する。仮に、脱気を前記温度未満で遂行すれば、前述したように硬化型石油樹脂の純度が低くなり、これと反対に、前記温度以上で遂行すれば、収率及び軟化点が低下して、最終に得られる石油樹脂の物性(すなわち、接着力、凝集力)が低下するので、前記範囲内で適切に使用する。
【0080】
<反応型接着剤組成物>
前述した硬化型石油樹脂は多様な用途に適用可能であり、分子構造内の二重結合によって硬化が可能であるので、好ましくは反応型接着剤組成物に適用可能である。
【0081】
反応型接着剤組成物は、ポリオレフィン系ベースポリマー、石油樹脂及び触媒を含み、特に、本発明では、前記反応型ポリオレフィン系接着剤組成物の石油樹脂として、前述したような硬化型石油樹脂を使うことにより、多様な基材に対する高い接着力を確保することができる。
【0082】
特に、本発明の反応型ポリオレフィン系接着剤組成物は、高い接着力により、従来に接着力確保のために遂行していた基材の前処理工程(例えば、プラズマ処理、コロナ処理、プライマー処理など)を排除することができる。ここで、基材は、本発明で特に限定せず、各種の、プラスチック、フィルム、紙、不織布、ガラス又は金属を使うことができ、前記プラスチックの中でも、自動車内装材として使われるポリオレフィン系樹脂であり得る。
【0083】
好ましくは、本発明による反応型ポリオレフィン系接着剤組成物は、トータルの組成物100重量%の中において、ポリオレフィン系ベースポリマー70~94重量%、好ましくは75~90重量%、硬化型石油樹脂5~30重量%、好ましくは10~25重量%、触媒0.1~10重量%、好ましくは0.5~5重量%を含む。
【0084】
仮に、前記硬化型石油樹脂の含量が前記範囲未満であれば、接着性能向上の効果を期待することができず、これと反対に、前記範囲を超えれば、相対的に他の組成の含量が減少して反応型接着剤組成物としての機能を満足に遂行することができない。ここで、他のポリオレフィン系ベースポリマー及び触媒の含量は、各組成の機能を充分に発揮することができるように限定された。
【0085】
反応型ポリオレフィン系接着剤組成物を構成するポリオレフィン系ベースポリマーは、本発明で特に限定せず、当該分野で通常使われるポリマーが使われうる。
【0086】
一例として、前記ポリオレフィン系ベースポリマーとしては、ポリアルファオレフィン、ポリオレフィンの単独、これらの共重合体、又はこれらをブレンドして使用することができる。前記ポリアルファオレフィンは、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン及び1-エイコセンなどの線形アルファ-オレフィンが共重合されたものであり、ポリオレフィンは、ポリエチレン、ポリプロピレンの単独、又は、これらの共重合体であり得る。必要な場合、前記ポリアルファオレフィン及びポリオレフィンは、そのまま使うか、シラン改質されたものを使うことができる。
【0087】
前記ポリオレフィン系ベースポリマーは、直接製造するか、市販されているものを購入して使用することができ、一例として、シラン改質されたポリアルファオレフィンとして、Evonik Degussa GmbH社の製品であるVESTOPLAST(例えば、VESTOPLAST 206V、VESTOPLAST 2412)などが可能であり、シラン改質ポリオレフィンとして、Clariant AG社の製品であるLICOCENE PE SI 3361 TP及びLICOCENEPPなどが使用可能であり、エチレンアルファオレフィンとしては、ExxonMobil Chemical Co.社の製品であるVISTAMAXX 6102(propylene-based elastomers)、EXACT 5008(ethylene-butene copolymer)、EXACT 3031(ethylene-hexene copolymer)などが可能であり、Dow Chemical Co.社の製品であるENGAGE(例えば、ENGAGE 8200)などが可能である。
【0088】
硬化触媒は、硬化速度を調節するために添加されうる。具体例では、ホスフィン系、ボロン系、イミダゾール系又はこれらの混合触媒を使うことができる。
【0089】
前記ホスフィン系硬化触媒は、トリフェニルホスフィン(Triphenylphosphine)、トリ-o-トリルホスフィン(Tri-o-tolylphosphine)、トリ-m-トリルホスフィン(Tri-m-tolylphosphine)、トリ-p-トリルホスフィン(Tri-p-tolylphosphine)、トリ-2,4-キシリルホスフィン(Tri-2,4-xylylphosphine)、トリ-2,5-キシリルホスフィン(Tri-2,5-xylylphosphine)、トリ-3,5-キシリルホスフィン(Tri-3,5-xylylphosphine)、トリベンジルホスフィン(Tribenzylphosphine)、トリス(p-メトキシフェニル)ホスフィン(Tris(p-methoxyphenyl)phosphine)、トリス(p-tert-ブトキシフェニル)ホスフィン(Tris(p-tert-butoxyphenyl)phosphine)、ジフェニルシクロヘキシルホスフィン(Diphenylcyclohexylphosphine)、トリシクロホスフィン(Tricyclohexylphosphine)、トリブチルホスフィン(Tributylphosphine)、トリ-tett-ブチルホスフィン(Tri-tert-butylphosphine)、トリ-n-オクチルホスフィン(Tri-n-octylphosphine)、ジフェニルホスフィノスチレン(Diphenylphosphinostyrene)、ジフェニルホスフィン酸クロリド(Diphenylphosphinous chloride)、トリ-n-オクチルホスフィンオキシド(Tri-n-octylphosphine oxide)、ジフェニルホスフィニルヒドロキノン(Diphenylphosphinyl hydroquinone)、テトラブチルホスホニウムヒドロキシド(Tetrabutylphosphonium hydroxide)、テトラブチルホスホニウムアセテート(Tetrabutylphosphonium acetate)、ベンジルトリフェニルホスホニウムヘキサフルオロアンチモネート(Benzyltriphenylphosphonium hexafluoroantimonate)、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(Tetraphenylphosphonium tetraphenylborate)、テトラフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート(Tetraphenylphosphonium tetra-p-tolylborate)、ベンジルトリフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート(Benzyltriphenylphosphonium tetraphenylborate)、テトラフェニルホスホニウムテトラフルオロボレート(Tetraphenylphosphonium tetrafluoroborate)、p-トリルトリフェニルホスホニウムテトラ-p-トリルボレート(p-Tolyltriphenylphosphonium tetra-p-tolylborate)、トリフェニルホスフィントリフェニルボラン(Triphenylphosphine triphenylborane)、1,2-ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(1,2-Bis(diphenylphosphino)ethane)、1,3-ビス(ジフェニルホスフィノ)プロパン(1,3-Bis(diphenylphosphino)propane)、1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン(1,4-Bis(diphenylphosphino)butane)、1,5-ビス(ジフェニルホスフィノ)ペンタン(1,5-Bis(diphenylphosphino)pentane)などが使われうるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらは、単独で又は2種以上混合して使われうる。
【0090】
前記ボロン系硬化触媒としては、フェニルボロン酸(Phenyl boronic acid)、4-メチルフェニルボロン酸(4-Methylphenyl boronic acid)、4-メトキシフェニルボロン酸(4-Methoxyphenyl boronic acid)、4-トリフルオロメトキシフェニルボロン酸(4-Trifluoromethoxyphenyl boronic acid)、4-tert-ブトキシフェニルボロン酸(4-tert-Butoxyphenyl boronic acid)、3-フルオロ-4-メトキシフェニルボロン酸(3-Fluoro-4-methoxyphenyl boronic acid)、ピリジン-トリフェニルボラン(Pyridine-triphenylborane)、2-エチル-4-メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレート(2-Ethyl-4-methyl imidazolium tetraphenylborate)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン-7-テトラフェニルボレート(1,8-Diazabicyclo[5.4.0]undecene-7-tetraphenylborate)などが使われうるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらは、単独で又は2種以上混合して使われうる。
【0091】
追加的に、本発明による反応型ポリオレフィン系接着剤組成物は、シランカップリング剤、充填剤、難燃剤、顔料、酸化防止剤、紫外線安定剤、分散剤、消泡剤、増粘剤、可塑剤、粘着性付与樹脂、シランカップリング剤、及び、これらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の添加剤を適切に含むことができる。
【0092】
一例として、シランカップリング剤としては、エポキシ含有シラン又はメルカプト含有シランを使うことができる。前記エポキシが含有されたシランカップリング剤としては、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランがあり、アミン基が含有されたものとして、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチルブチリデン)プロピルアミン、N-フェニル-3-アミノプロピルトリメトキシシランなどがあるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらは、単独で又は2種以上混合して使われうる。
【0093】
前記メルカプトが含有されたものとして、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートが含有された3-イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどを例示することができるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらを、単独で又は2種以上を混合して使うことができる。
【0094】
前記充填剤としては、必要によって、無機又は有機の充填剤を使うことができる。
【0095】
前記無機充填剤としては、金属成分である金粉、銀粉、銅粉、ニッケルを使うことができ、非金属成分であるアルミナ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、シリカ、窒化ホウ素、二酸化チタン、ガラス、酸化鉄、セラミックなどを使うことができるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらを、単独で又は2種以上を混合して使うことができる。
【0096】
前記有機充填剤としては、カーボン、ゴム系フィラー、ポリマー系などを使うことができるが、必ずしもこれらに制限されるものではない。これらを、単独で又は2種以上を混合して使うことができる。
【0097】
前記充填剤の粒径は、約10nm~約10μm、好ましくは約100nm~約7μmである。
【0098】
前述したような組成を含む反応型ポリオレフィン系接着剤組成物は、前記各成分を、例えばプラストミル(plastomill)、バンバリーミキサー、ロール、インターナルミキサーなどの混練機を用いて混練することにより調製することができる。
【0099】
本発明で提示する反応型ポリオレフィン系接着剤組成物は、熱硬化によって硬化可能である。常温硬化又は熱硬化を進める場合には。約20~約100℃で遂行し、その条件によって30秒~72時間遂行する。
【0100】
特に、前記反応型ポリオレフィン系接着剤組成物は、素材及びその形態にかかわらず、接着能が要求される分野であればどこにも使用可能である。一例として、非鉄金属、ゴム、プラスチック、纎維、木材、皮革、セラミック、紙、ガラスなどの多様な素材に適用されうるのであり、特に、素材がプラスチック、その中でもポリオレフィン系、好ましくはポリエチレン又はポリプロピレンの素材の場合に、好ましく適用可能である。
【0101】
より好ましくは、本発明の反応型ポリオレフィン系接着剤組成物は、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン系素材を使う自動車内装材、その中でもABSのような芳香族性の構造を含む自動車内装材に適用する。
【0102】
<発明の実施のための形態>
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、下記の実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは本発明の理解を助けるためのものに解釈されなければならないであろう。
【0103】
<製造例1:石油樹脂Aの製造>
ジシクロペンタジエン(DCPD、コーロンインダストリーズ(株)社製、純度76.10%)567.70g、ビニルトリメトキシシラン(TMVS、アルドリッチ社製、純度99.99%)144.00g、及びスチレン(SM、アルドリッチ社製、純度99.99%)144.00gに、溶媒としてHysol(コーロンインダストリーズ(株)社製、非重合性のナフテン系物質を主成分とする工程発生物であり、溶媒として使われる)344.30gを、前記3成分の総量が反応器である1Lオートクレーブの容量に対して60%となる量だけ計量してオートクレーブに投入した。原料投入の後、反応器を締結し、高温での酸素との反応などの不必要な反応をなくすために、窒素に置換し、若干の加圧状態にした。
【0104】
反応器の温度を278℃まで昇温させ、反応温度に至れば反応時間を測定し始めて、3時間反応させた。この際、反応器の内部は窒素でパージングしながら圧力を1.5barに調節し、300rpmで撹拌した。反応が完了すれば、常温にセットして冷却させた。30℃以下に冷却されれば、内部の圧力を解除させた後、反応器を開けて重合物を得た。
【0105】
重合物内には、重合された物質以外に、反応しなかった物質及び溶媒が含まれているので、これを除去した。具体的に、1Lのガラス4口ケトルに重合物の全量を投入し、常温で真空にした。真空度を1bar以下に維持するようにしたのであり、真空になったならば、撹拌しつつ、245℃にまで昇温させた。245℃に至れば、濃縮時間を測り始め、10分間維持した。濃縮が完了すれば、その状態で真空を解除し、内部の溶融した樹脂分を回収した。
【0106】
<製造例2:石油樹脂Bの製造>
単量体含量を下記の表1の通りにしたことを除き、前記製造例1と同様に遂行して石油樹脂Bを製造した。
【0107】
<製造例3:石油樹脂Cの製造>
単量体含量を下記の表1の通りにしたことを除き、前記製造例1と同様に遂行して石油樹脂Cを製造した。
【0108】
<製造例4:石油樹脂Dの製造>
石油樹脂単量体であるDCPDを単独で使ったことを除き、前記製造例1と同様に遂行して石油樹脂Dを製造した。
【0109】
【表1】
【0110】
<実験例1:硬化型石油樹脂物性分析>
前記製造例1~4で製造した石油樹脂の物性を測定した後、その結果を下記の表2に示した。物性の評価方法は次の通りである。
【0111】
(1)収率(%):重合で得た重合後の重さに対する、濃縮段階後に残った樹脂量を百分率で表示。
【0112】
(2)軟化点(℃):ASTM E 28の規格に従って測定する。丸い環に試料を溶かして注いでから、樹脂が固まれば、軟化点測定機器にこれを装着し、固まった樹脂上に鉄球を載せた後、温度を0.5℃/minで昇温させながら、樹脂が溶けて鉄球が落ちる時点の温度を測定する。
【0113】
(3)分子量(g/mol):ゲル浸透クロマトグラフィー(ヒューレットパッカード社製、モデルHP-1100)によって、ポリスチレン換算重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及びZ-平均分子量(Mz)を求めた。測定する重合体は、4000ppmの濃度となるようにテトラヒドロフランに溶解させて、GPCに100μlを注入した。GPCの移動相にはテトラヒドロフランを使い、1.0mL/分の流速で流入させ、分析は30℃で遂行した。カラムはアジレント社製のPIgel(1,000+500+100Å)3個を直列で連結した。検出器としては、RI検出器(ヒューレットパッアード社製、HP-1047A)を用いて30℃で測定した。この際、PDI(多分散指数;MWD)は、測定された重量平均分子量を数平均分子量で割ることで算出した。
【0114】
【表2】
【0115】
<実施例1~3及び比較例1~2:反応型接着剤組成物の製造>
前記製造例1~4で製造した石油樹脂を用いて、反応型接着剤組成物を製造した。
【0116】
混合器に、ベースポリマー、製造例1~4の石油樹脂、及び触媒を添加した後、撹拌して、反応型接着剤組成物を製造した。この際、ベースポリマーとしては、Si-APAO(Vestoplast 206、Evonik)、Si-PP(Licocene PP SI 1362、Clariant)を使い、触媒としてはリン系触媒であるHordaphos(Clariant)を使った。
【0117】
【表3】
【0118】
<実験例2:反応型接着剤組成物の物性評価>
前記実施例及び比較例で製造した反応型接着剤組成物を、芳香族性構造を含む基材(ABS)に塗布した後に以下で提示した物性を測定した後、その結果を下記の表4に示した。
【0119】
[剪断接着強度(LSS)、kgf]
剪断接着強度(Single-lap shear adhesion strength)を評価するために、裁断された2個のABS試片(1インチ×6インチ)の間に、定量された前記反応型接着剤組成物を塗布(塗布面積:1インチ×1インチ)した後、硬化を遂行した。
【0120】
硬化は、常温(25℃)、湿度60~70%にて2週間で遂行した後、インストロン試験機を用いて最大応力(強度)を測定したのであり、トータルで5回実施して、平均値を取った。
【0121】
【表4】
【0122】
前記表4を参照すると、本発明によってスチレン系をコモノマーとして使う場合、図1に示したように、硬化前のLSS(剪断接着強度)の増加率が、比較例1及び比較例2に比べ、最大で約2.45倍、約2.98倍の程度の高い向上を示した。
【0123】
一方、実施例1、2及び3のように石油樹脂を使うが、スチレン系コモノマーの組成を異にした場合、スチレン系コモノマー含有量が増加するほどLSSが概して増加する結果を示した。しかし、スチレン系コモノマーの含量が一定程度以上の場合、接着力が飽和する結果を示した。これにより、スチレン系単量体の濃度があまりにも高い場合、製造コストが高くかかり、硬化前のLSSの増加が大きくなく、好ましくないことが分かる。
【0124】
また、スチレン系コモノマーの含有量があまりにも少ない場合、樹脂組成内に芳香族性構造がABS基材との十分な接着力を形成するほどに含まれないのであるから、スチレン系コモノマーを適切に含むことで最も効果的な物性を示すことが分かった。
【0125】
一方、スチレン系単量体が含有される場合、基材との濡れ性を高め、このことは初期接着力(Green strength)を高める役割をするのであり、硬化後の最終強度は、濡れ・硬化メカニズムによって、シラン含量が主な役割をすることを確認することができた。
【0126】
初期接着力は、産業現場で非常に重要な物性の一つである。初期接着力が発現しない場合、接着剤を塗布した後の工程で接着剥離現象が発生して、作業性及び生産性を低下させ、品質問題を引き起こすことがありうるからである。
【産業上の利用可能性】
【0127】
本発明による硬化型石油樹脂は、反応型接着剤組成物の添加組成として好ましく適用可能である。
図1