(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】封止材料
(51)【国際特許分類】
C09K 3/10 20060101AFI20220721BHJP
F16J 15/10 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C09K3/10 Q
F16J15/10 W
(21)【出願番号】P 2020156350
(22)【出願日】2020-09-17
(62)【分割の表示】P 2017560265の分割
【原出願日】2016-05-19
【審査請求日】2020-10-14
(32)【優先日】2015-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2015-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2016-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】502254213
【氏名又は名称】フレキシタリック インベストメンツ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】FLEXITALLIC INVESTMENTS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】ボンド、スティーブン ピーター
(72)【発明者】
【氏名】ロジャース、リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ウールフェンデン、スティーブン
(72)【発明者】
【氏名】スキッパー、ニール
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-015620(JP,A)
【文献】特開2010-159428(JP,A)
【文献】特表2002-502448(JP,A)
【文献】特開平04-288388(JP,A)
【文献】特開平04-194463(JP,A)
【文献】特開2015-090174(JP,A)
【文献】特開平01-313321(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K3/10-3/12
F16J15/00-15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐水性封止材料であって、30~70%w/wの封止材料の割合の変性化学的剥離バーミキュライトである変性CEVと、30~70%w/wの封止材料の割合の充填剤とを含み、前記変性CEVが
、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、アンモニウム、または式R4N
+
(式中、Rは、メチル、エチル、またはそれらの組合せから選択される)の第4級アンモニウム化合物の1種類以上から選択される耐水性向上一価陽イオンを含み、
前記変性CEV中の前記耐水性向上一価陽イオンが、前記変性CEV中の陽イオン交換部位に存在する、耐水性封止材料。
【請求項2】
前記耐水性封止材料は、更に、0~10%w/wの封止材料の割合の別の添加剤を含む、請求項1に記載の耐水性封止材料。
【請求項3】
前記耐水性向上一価陽イオンが交換可能陽イオンである、請求項1又は2に記載の耐水性封止材料。
【請求項4】
前記封止材料がシートの形態である、請求項1~3のいずれか一項に記載の耐水性封止材料。
【請求項5】
動的または静的シール用の、請求項1~4のいずれか一項に記載の耐水性封止材料。
【請求項6】
耐水性のガスケットまたはバルブシールであって、前記ガスケットが、封止層を含み、前記バルブシールが封止材料を含み、封止層/封止材料が、30~70%w/wの封止層/封止材料の割合の変性化学的剥離バーミキュライトである変性CEVと、30~70%w/wの封止層/封止材料の割合の充填剤とを含み、前記変性CEVが
、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、アンモニウム、または式R4N
+
(式中、Rは、メチル、エチル、またはそれらの組合せから選択される)の第4級アンモニウム化合物の1種類以上から選択される耐水性向上一価陽イオンを含
み、前記変性CEV中の前記耐水性向上一価陽イオンが、前記変性CEV中の陽イオン交換部位に存在する、耐水性のガスケットまたはバルブシール。
【請求項7】
前記封止層/封止材料が、0~10%w/wの封止層/封止材料の割合の別の添加剤とを含む、請求項6に記載の耐水性のガスケットまたはバルブシール。
【請求項8】
前記ガスケットは、前記封止層のコアおよび/または支持体を含む、請求項6又は7に記載の耐水性のガスケットまたはバルブシール。
【請求項9】
前記耐水性向上一価陽イオンが交換可能陽イオンである、請求項6~8のいずれか一項に記載の耐水性のガスケットまたはバルブシール。
【請求項10】
前記耐水性向上一価陽イオンが、リチウム、n-プロピルアンモニウム、およびn-ブチルアンモニウム以外である、請求項6~9のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項11】
前記耐水性向上一価陽イオンが、カリウムおよびアンモニウムから選択される、請求項1
~10のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項12】
前記耐水性向上一価陽イオンが、カリウムである、請求項
11に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項13】
前記変性CEVおよび充填剤はそれらが全体的に均一な混合物を形成するように密接に混合される、請求項1~
12のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項14】
前記変性CEVおよび充填剤のそれぞれが封止材料/層/シートの全体に均一に分布し、それによってそれらが全体的に均一な混合物を形成する、請求項
13に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項15】
封止材料/層/シートの中の変性CEVの量が、30~68%w/wの封止材料/層の範囲内である、請求項1~
14のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項16】
前記封止材料/層/シートの中の変性CEVの量が、35~65%w/wの封止材料/層の範囲内である、請求項
15に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項17】
前記封止材料/層/シートの中の変性CEVの量が、40~60%w/wの封止材料/層の範囲内である、請求項
16に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項18】
封止材料/層/シートの中の充填剤の量が、32~70%w/wの封止材料/層の範囲内である、請求項1~
17のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項19】
前記封止材料/層/シートの中の充填剤の量が、35~65%w/wの封止材料/層の範囲内である、請求項
18に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項20】
前記封止材料/層/シートの中の充填剤の量が、40~60%w/wの封止材料/層の範囲内である、請求項
19に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項21】
ガスケット/バルブシール/封止層/封止材料またはシートの中の交換可能陽イオンの少なくとも1%が耐水性向上一価陽イオンである、請求項3~5及び9~
20のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項22】
前記ガスケット/バルブシール/封止層/封止材料またはシートの中の前記交換可能陽イオンの少なくとも10%が耐水性向上一価陽イオンである、請求項
21に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項23】
前記ガスケット/バルブシール/封止層/封止材料またはシートの中の前記交換可能陽イオンの少なくとも50%が耐水性向上一価陽イオンである、請求項
22に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項24】
前記ガスケット/バルブシール/封止層/封止材料またはシートの中の前記交換可能陽イオンの70%または80%または90%または100%が耐水性向上一価陽イオンである、請求項
23に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項25】
耐水性向上一価陽イオンで、前記変性CEVの少なくとも1%の陽イオンが交換される、請求項1~
24のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項26】
耐水性向上一価陽イオンで、前記変性CEVの少なくとも10%の陽イオンが交換される、請求項
25に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項27】
耐水性向上一価陽イオンで、前記変性CEVの少なくとも25%又は50%又は70%の陽イオンが交換される、請求項
26に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項28】
耐水性向上一価陽イオンで、前記変性CEVの少なくとも90%の陽イオンが交換される、請求項
27に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項29】
前記充填剤が不活性充填剤である、請求項1~
28のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項30】
前記充填剤が、板状または粒子状の充填剤である、請求項
29に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項31】
板状の充填剤が、タルク、別の形態のバーミキュライト、およびマイカから選択される、請求項
30に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項32】
粒子状の充填剤が、非晶質シリカ、石英シリカ、および炭酸カルシウムから選択される、請求項
31に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項33】
前記充填剤のd
50平均粒度が10nm~50μmの範囲内である、請求項1~
32のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項34】
前記充填剤のd
50平均粒度が50nm~30μmの範囲内である、請求項
33に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項35】
前記充填剤のd
50平均粒度が500nm~25μmの範囲内である、請求項
34に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項36】
前記充填剤の表面積が200m
2/g未満である、請求項1~
35のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項37】
前記充填剤の表面積が10m
2/g未満である、請求項
36に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項38】
前記充填剤の表面積が5m
2/g未満である、請求項
37に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項39】
周囲温度における前記変性CEVのd間隔(クレイ-クレイ層間隔)が10~12Å(1~1.2nm)の範囲内である、請求項1~
38のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項40】
前記耐水性向上一価陽イオンが、耐水性封止材料/シート/層の前記変性CEV中に、未変性CEVと比較して、少なくとも2倍の量の増加で存在する、請求項1~
39のいずれか一項に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項41】
前記耐水性向上一価陽イオンが、前記耐水性封止材料/シート/層の前記CEV中に、未変性CEVと比較して、少なくとも10倍の量の増加で存在する、請求項
40に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項42】
前記耐水性向上一価陽イオンが、前記耐水性封止材料/シート/層の前記CEV中に、未変性CEVと比較して、少なくとも10
2倍の量の増加で存在する、請求項
41に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項43】
前記耐水性向上一価陽イオンが、前記耐水性封止材料/シート/層の前記CEV中に、未変性CEVと比較して、少なくとも10
3倍の量の増加で存在する、請求項
42に記載の耐水性の封止材料またはガスケットまたはバルブシール。
【請求項44】
ガスケットまたはバルブシールの封止材料である、請求項1~
43のいずれか一項に記載の耐水性封止材料。
【請求項45】
前記封止材料がパッキンリングの形態である、請求項6,7,9~
43のいずれか一項に記載のバルブシール。
【請求項46】
2つ以上のパッキンリングを含む、請求項
45に記載のバルブシール。
【請求項47】
請求項1~
43のいずれか一項に記載の封止材料を含む第1のパッキンリングと、黒鉛封止材料を含む第2のパッキンリングとを少なくとも含む、請求項
46に記載のバルブシール。
【請求項48】
パッキンリングが、前記バルブシールのヘッダーおよび/またはフッターを形成する、請求項
45~
47のいずれか一項に記載のバルブシール。
【請求項49】
前記バルブシールがバルブステムシールまたはボールバルブシールである、請求項6,7,9~
48のいずれか一項に記載のバルブシール。
【請求項50】
封止材料の製造方法であって、
(a)化学的剥離バーミキュライトであるCEVを充填剤と混合して、それらの密接した混合物を形成するステップと、
(b)
カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、アンモニウム、または式R4N
+
(式中、Rは、メチル、エチル、またはそれらの組合せから選択される)の第4級アンモニウム化合物の1種類以上から選択される耐水性向上一価陽イオンの溶液と接触させることによって、混合物の一価陽イオンを交換するステップと
を含む方法。
【請求項51】
化学的剥離バーミキュライトであるCEVを充填剤と混合して、それらの密接した混合物を形成した後、前記混合物からシートを形成し、ステップ(b)によりシートの一価陽イオンを交換する、請求項
50に記載の封止材料の製造方法。
【請求項52】
化学的剥離バーミキュライトであるCEVを充填剤と混合して、それらの密接した混合物を形成した後、前記混合物から形成したシートを乾燥し、ステップ(b)により乾燥したシートの一価陽イオンを交換する、請求項
51に記載の封止材料の製造方法。
【請求項53】
スラリー形態のCEV(乾燥粉末CEVを加えることで前記CEVの含有量を増加させることができる)と前記充填剤とを混合した後、密接した前記混合物は、シートに成形され、少なくとも部分的に乾燥されてから、耐水性向上一価陽イオン交換の前に、ガスケットまたはバルブシール中に組み込まれる、請求項
50~
52のいずれか一項に記載の方法。
【請求項54】
前記CEVは未乾燥CEVである、請求項
53に記載の方法。
【請求項55】
前記耐水性向上一価陽イオンの溶液の濃度が0.1~10mol・dm
-3の範囲内である、請求項
50~
54のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
前記耐水性向上一価陽イオンの溶液の濃度が0.5~5mol・dm
-3の範囲内である、請求項
55に記載の方法。
【請求項57】
前記耐水性向上一価陽イオンの溶液の濃度が1~3mol・dm
-3の範囲内である、請求項
56に記載の方法。
【請求項58】
ガスケット/バルブシールリング/シート/封止層/封止材料が、0.2~3.0mol・dm
-3の前記一価陽イオン溶液中に5~180分の間、浸漬される、請求項
50~
57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
前記ガスケット/バルブシールリング/シート/封止層/封止材料が、0.3~1.0mol・dm
-3の溶液中に15~60分の間、浸漬される、請求項
58に記載の方法。
【請求項60】
前記混合物を、前記耐水性向上一価陽イオンのクエン酸塩または塩化物塩の溶液と接触させる、請求項
50~
59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
前記混合物を、前記耐水性向上一価陽イオンのクエン酸塩の溶液と接触させる、請求項
60に記載の方法。
【請求項62】
ガスケット封止材料またはバルブシール封止材料の製造方法である、請求項
50~
61のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスケットおよびバルブシールのための封止材料に関し、特に、本発明は、改善された耐水性を有するガスケットおよび/またはバルブシールに関する。
【背景技術】
【0002】
化学的剥離バーミキュライト(CEV)は、バーミキュライト鉱石を処理し、それを水中で膨潤させることによって形成される。可能性のある製造方法の1つでは、鉱石を飽和塩化ナトリウム溶液で処理して、マグネシウムイオンをナトリウムイオンと交換し、次に塩化n-ブチルアンモニウムで処理してナトリウムイオンをn-ブチルアンモニウムイオンで置換する。あるいは、一段階方法において、鉱石を飽和クエン酸リチウム溶液で処理することもできる。処理された鉱石を水で洗浄すると、膨潤が起こる。次に、この膨潤した材料に高剪断をかけると、非常に微細な(直径50μm未満)バーミキュライト粒子の水性懸濁液が得られる。別の化学処理剤は当業者に周知となっている。
【0003】
特許文献1には、純粋な剥離バーミキュライトを、水中のアンモニア(またはアミン)の濃厚溶液の蒸気に接触させることが開示されている。水中でアンモニアは解離して水酸化アンモニウムを形成するが、水中のアンモニアの解離定数は25℃において1.8×10-5である。したがって、蒸気中または溶液中のアンモニウム量は非常に少ない。実施例1では、n-ブチルアンモニウムで交換されたバーミキュライトに対するアンモニア溶液からの蒸気の影響を3日間の曝露で調べている。この方法は、溶液上のクレー表面に対するアミンの結合を伴う場合がある。
【0004】
特許文献2は、ガスケット中に使用するためのフィルムなどの防水性の純粋な剥離バーミキュライト物品に関する。この方法は、層間剥離させたバーミキュライト物品を無機一価陽イオンの溶液と接触させるステップを含む。ナトリウムが好ましい陽イオンである。別の材料としては、複合材料を挙げることができるが、これらの例は、純粋なバーミキュライトが独立した相として存在する紙および膜である。これらのフィルムの負荷を加えた試験は行われていない。
【0005】
特許文献3には、純粋なバーミキュライトのフィルムを多価陽イオン溶液に曝露することによって安定化でき、使用例が塩化マグネシウムおよび塩化アルミニウムであることが開示されている。
【0006】
CEVと充填剤との複合材料である化学的剥離バーミキュライトフィルムは、CEV単独で構成されるフィルムよりも一般に耐水性が低いことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第4,219,609号明細書
【文献】米国特許第5,330,843号明細書
【文献】英国特許第1,016,385号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
驚くべきことに、本発明者らは、本発明による変性された複合ガスケットおよびバルブシールによって、改善された耐水性のフィルムおよび封止材料が得られることを見出した。
【0009】
したがって本発明の態様の目的の1つは、改善された耐水性を有する、ガスケット、バルブシール、ガスケットもしくはバルブシールの封止材料、ガスケット封止層、バルブパッキンリング、および/またはガスケットシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によると、耐水性封止材料であって、30~70%w/wの封止材料の割合の変性化学的剥離バーミキュライト(CEV)と、30~70%w/wの封止材料の割合の充填剤と、任意選択により0~10%w/wの封止材料の割合の別の添加剤とを含み、変性CEVが耐水性向上一価陽イオンを含む耐水性封止材料が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の封止材料は、動的または静的の封止材料であってよい。たとえば、本発明の封止材料は、バルブシールの封止材料であってよいし、または本発明の封止材料はガスケットの封止材料であってよい。
【0013】
バルブシールの適切な用途としては、バルブステムオイルシールなどのバルブステムシールが挙げられる。
本発明の以上の態様から明らかなように、封止材料は複合材料である。封止材料はシートの形態であってよい。このようなシートは、ガスケットとして、またはガスケットの封止層としての使用に適切な形状に切断または成形が可能である。あるいは、封止材料/シートは、バルブパッキンリングとして使用するためのリングに成形することができる。適切には、シートを切断し、次にダイ成形などのプレス成形によって、バルブパッキンリングとして使用するためのリングを得ることができる。したがって、第1の態様の一実施形態では、本発明は、30~70%w/wの封止シートまたはリングの割合の変性化学的剥離バーミキュライト(CEV)と、30~70%w/wの封止シートまたはリングの割合の充填剤と、任意選択により0~10%w/wの封止シートまたはリングの割合の別の添加剤とを含み、変性CEVが耐水性向上一価陽イオンを含む、耐水性のガスケット複合封止シートまたはバルブ複合パッキンリングに及ぶ。
【0014】
耐水性向上一価陽イオンは、封止材料、シート、リング、または層の耐水性を改善する陽イオンを意味する。耐水性は、充填剤の軟化を防止し、構造的完全性を低下させる、ガスケット/封止層/シート/バルブシールまたはバルブパッキンリングなどの封止材料の突出を防止することによって、明らかとなりうる。本発明の耐水性向上一価陽イオンは、未変性CEV中の陽イオン、適切には別の一価陽イオンの陽イオン交換によって導入することができる。耐水性向上一価陽イオンは、一般に、リチウムまたはn-ブチルアンモニウム(C4H9NH3
+)などの未変性CEV中で一般に置換される一価陽イオン以外の周期表の元素の陽イオンまたは分子であると認識される。したがって、耐水性向上一価陽イオンは、適切には、リチウム陽イオンよりも、より適切にはリチウムおよび/またはC4H9NH3
+一価陽イオンよりも耐水性を向上させる。
【0015】
以上から、CEV中の耐水性向上一価陽イオンは典型的にはCEV中の陽イオン交換部位に存在することが理解されよう。
適切には、本発明の任意の態様によると、耐水性向上一価陽イオンは、本発明のガスケット封止層/シート/バルブシール/バルブパッキンリングなどの耐水性封止材料のCEV中に、典型的には、未変性CEV中に見られるよりも多い量で、これらの陽イオン交換部位に存在する。適切には少なくとも2倍の量の増加、より適切には少なくとも10倍の量の増加、最も適切には少なくとも102倍の量の増加、特に少なくとも103倍の量の増加である。防水性向上一価陽イオンは、典型的には陽イオン交換部位に存在するので、これらは交換可能陽イオンである。したがって、陽イオン交換部位における、本発明のガスケット封止層/シート/バルブシール/バルブパッキンリング中などの封止材料中の防水性向上一価陽イオンを交換可能陽イオンと呼ぶことができる。
【0016】
本発明の第2の態様によると、封止層と、任意選択により封止層のコアおよび/または支持体とを含む耐水性ガスケットであって、封止層が、30~70%w/wの封止層の割合の変性化学的剥離バーミキュライト(CEV)と、30~70%w/wの封止層の割合の充填剤と、任意選択により0~10%w/wの封止層の割合の別の添加剤とを含み、変性CEVが耐水性向上一価交換可能陽イオンを含む、耐水性ガスケットが提供される。
【0017】
本発明のさらなる一態様によると、耐水性ガスケットまたはバルブシールの封止材料であって、30~70%w/wの封止材料の割合の変性化学的剥離バーミキュライト(CEV)と、30~70%w/wの封止材料の割合の充填剤と、任意選択により0~10%w/wの封止材料の割合の別の添加剤とを含み、変性CEVが耐水性向上一価陽イオンを含む、封止材料が提供される。
【0018】
本発明のさらなる一態様によると、封止層と、任意選択により封止層のコアおよび/または支持体とを含む耐水性ガスケットであって、封止層が、30~70%w/wの封止層の割合の変性化学的剥離バーミキュライト(CEV)と、30~70%w/wの封止層の割合の充填剤と、任意選択により0~10%w/wの封止層の割合の別の添加剤とを含み、変性CEVが耐水性向上一価交換可能陽イオンを含む、耐水性ガスケットが提供される。
【0019】
本発明のさらなる一態様によると、30~70%w/wの封止材料の割合の変性化学的剥離バーミキュライト(CEV)と、30~70%w/wの封止材料の割合の充填剤と、任意選択により0~10%w/wの封止材料の割合の別の添加剤とを含む封止材料を含む耐水性バルブシールであって、変性CEVが耐水性向上一価陽イオンを含む、耐水性バルブシールが提供される。
【0020】
本発明のさらなる一態様によると、30~70%w/wの封止材料の割合の変性化学的剥離バーミキュライト(CEV)と、30~70%w/wの封止材料の割合の充填剤と、任意選択により0~10%w/wの封止材料の割合の別の添加剤とを含む封止材料を含む耐水性バルブシールであって、変性CEVが耐水性向上一価交換可能陽イオンを含む、耐水性バルブシール。
【0021】
バルブシールの封止材料は、少なくとも1つの第1のパッキンリングの形態であってよい。任意選択により、バルブシールはさらなるリングを含む。これのさらなるリングは、第1のリングの封止材料として規定されるものであってよいし、別のものであってもよい。
【0022】
用語「リング」は当技術分野において周知の用語であり、このようなリングは、関連する可動部分を収容するためのあらゆる適切な中央開口部、たとえば正方形または円形の開口部、好ましくは円形の開口部を有することができることを理解されよう。
【0023】
本発明のバルブパッキンリングは、連続であっても、分割されていてもよい。
バルブシールは、回転または往復運動する部品、たとえば往復運動するステムまたは回転するボールバルブと関連させて使用することができる。したがって、本発明の任意の態様のバルブシールは、バルブステムシールまたはボールバルブシールであってよい。同様に、本発明の任意の態様のバルブシール封止材料は、たとえばバルブステムシールの封止材料またはボールバルブシールの封止材料であってよい。
【0024】
使用中、バルブシールは、スタッフィングボックス中に配置され、ボルトなどによる応力がかかる。荷重は一般に軸方向であり、この荷重によって、バルブとスタッフィングボックスの外側とに向かってシールが膨張し、これによってバルブが移動可能な状態で、シールが形成される。
【0025】
バルブシールは、典型的には、封止材料の複数の積み重ねられた層またはリングを有し、各リングは特定の機能を有することができる。
したがって、本発明のさらなる一態様によるとは、バルブシールは、2個以上の封止材料のリング、適切には少なくとも3個、4個、5個、または6個および/または最大15個、12個、10個、または8個の封止材料のリングを含み、封止材料のリングの少なくとも1つは本発明による封止材料を含む。
【0026】
本発明による封止材料のバルブリングは、好ましくはバルブシールのヘッダーおよび/またはフッターのリングとして使用することができる。これはたとえば、温度が黒鉛酸化の限度を超える場合、または酸化性化学物質(NOxガスなど)が媒体である場合に、好ましくなりうる。
【0027】
任意選択により、本発明のバルブシール中の封止材料のさらなるリングの少なくとも1つは、黒鉛を含むことができる。黒鉛は、バーミキュライトよりも自己潤滑性が高く、好ましくは、回転または往復運動する部品への潤滑性の付与を促進するために、本発明によるバルブリングの間の中間のさらなるリング中に使用することができる。本発明による封止材料を含むリングがシールのヘッダーおよび/またはフッターとして使用される場合、これらのシールは、媒体または大気中の酸素から黒鉛層を保護し、その酸化を防止することができる。シールは、黒鉛を含む封止材料の、少なくとも2個、たとえば少なくとも3個、4個、または5個のさらなるリングを含むことができ、および/またはシールは黒鉛を含むさらなる封止リングを最大10層、8層、または6層含むことができる。
【0028】
バルブシールの封止材料のリング及びさらなるリングは、使用中に同軸に配置されるように構成することができる。
使用前にバルブシールのハイドロテスト(hydro-test)を行う場合に、本発明のシールが特に有用となりうる。この状況では、媒体が導入される前に漏れを調べるために、高圧水を用いてバルブまたはバルブ/パイプの組に圧力が加えられる。シールが未変性CEVを含有する封止材料でできている場合、このハイドロテストによって、底部(フッター)のシールの軟化またはその他の劣化が生じうる。
【0029】
好ましくは、本発明の任意の態様によると、ガスケット/封止層/封止材料/リングまたはシート中の少なくとも1%、より好ましくは少なくとも5%、最も好ましくは、少なくとも10%の交換可能陽イオンが防水性向上一価陽イオンであり、特に、少なくとも25%、さらに特に少なくとも50%、たとえば70または80または90または約100%が防水性向上一価陽イオンである。
【0030】
適切には、未変性CEV、すなわち詳細を前述したように未変性CEV材料の形成後に耐水性向上一価陽イオンによる陽イオン向上交換が行われていないCEVを含有することを除けば本発明の耐水性ガスケットまたはバルブ封止材料/ガスケット/シート/バルブシール/リングと同じであるガスケットまたはバルブ封止材料/ガスケット/シート/バルブシール/リングと比較すると、本発明の耐水性ガスケットまたはバルブ封止材料/ガスケット/シート/リングは耐水性である。適切には、耐水性向上一価交換可能陽イオンと同等の濃度の交換可能な非耐水性向上一価陽イオンを含有することを除けば本発明の耐水性ガスケットまたはバルブ封止材料/ガスケット/シート/バルブシール/リングと同じであるガスケットまたはバルブ封止材料/ガスケット/シート/バルブシール/リングと比較すると、本発明のガスケットまたはバルブ封止材料/ガスケット/シート/バルブシール/リングは耐水性である。適切には、いずれの場合も同等の量で、CEVがそれによって飽和される。適切には、未変性CEV中に存在する一価陽イオンであるので、リチウム、n-プロピルアンモニウム、およびn-ブチルアンモニウムは、耐水性を向上させるとは見なされないか、または非耐水性向上一価陽イオンと見なされる。したがって適切には、耐水性向上一価陽イオンは、リチウム、n-プロピルアンモニウム、およびn-ブチルアンモニウム以外である。
【0031】
典型的には、任意の態様の耐水性向上一価陽イオンは、アルカリ金属、アンモニウム、または第4級アンモニウム化合物の少なくとも1種類から選択される。置換する一価陽イオンは、より典型的には、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、フランシウム、アンモニウム、または式R4N+(式中、Rはメチル、エチル、またはそれらの組合せから選択される)の第4級アンモニウム化合物から選択することができる。本発明の任意の態様による好ましい耐水性向上一価陽イオンは、カリウム、アンモニウム、およびナトリウムであり、より適切にはカリウムおよびアンモニウムであり、最も適切にはカリウムである。
【0032】
2種類以上の耐水性向上一価陽イオンの混合物は、あらゆる割合であってよい。陽イオンの適切な組合せとしては、K/Na、K/Rb、およびK/Csが挙げられる。典型的には、2種類の陽イオンの混合物が存在する場合、それらは1:10~10:1(mol・dm-3:mol・dm-3)の範囲内の溶液から塗布される。
【0033】
好ましくは、CEVおよび充填剤は、密接に混合され、好ましくは、それらが全体的に均一な混合物を形成するように、それぞれが封止材料/層/シート/リング全体に均一に分布される。前述のように、耐水性向上一価陽イオンは、未変性CEV中の陽イオンとの陽イオン交換によって導入することができる。一価陽イオンの交換は、一般に、表面上および/またはバーミキュライトの薄層の間で行われると考えられ、それによって未変性CEVの交換可能陽イオンが耐水性向上一価陽イオンによって置換される。
【0034】
任意の態様の封止材料、シート、層、またはリングの中のCEVの典型的な量は、30~68%w/w、より典型的には35~65%w/w、最も典型的には40~60%w/wの封止材料/層の範囲内である。
【0035】
任意の態様の封止材料、シート、層、またはリングの中の充填剤の典型的な量は、32~70%w/w、より典型的には35~65%w/w、最も典型的には40~60%w/wの封止材料/層の範囲内である。
【0036】
任意選択により、さらなる添加剤が、任意の態様の封止材料、シート、層、またはリングの中に、0~8%w/w、より典型的には、0~5%w/w、最も典型的には、0~3%w/wの封止材料/層の範囲内で存在することができる。
【0037】
CEVと充填剤とを合わせた量は、封止材料、シート、層、またはリングの中で100%w/wを超えることはなく、別の添加剤の存在下で90%w/wからとなる場合があり、したがって上記範囲内の選択された量は組み合わせられるべきであることを理解されよう。
【0038】
適切なさらなる添加剤は、粉砕されたガラス繊維またはゴムなどの補強材から選択することができる。
封止材料/層/シート/リングの陽イオン交換の程度は、多数の要因によって決定される。しかし、交換は学的剥離バーミキュライト中で起こるが、充填剤が、小板にナノ間隔を形成し、それによって陽イオン交換を最大化する効果を有する場合がある。
【0039】
典型的には、変性CEVは、耐水性向上一価陽イオンで、少なくとも70%の陽イオンが交換され、より典型的には少なくとも80%の陽イオンが交換され、最も典型的には少なくとも90%の陽イオンが交換され、ここで100%の交換は、耐水性向上一価陽イオンで完全に飽和することを意味する。しかし、耐水性の向上は、はるかに少ない交換量で得られ、したがって変性CEVは、耐水性向上一価陽イオンで、単に少なくとも1%の陽イオンを交換することができ、たとえば、少なくとも5または10または25または50%の陽イオンを交換することができる。変性CEVの完全飽和までの交換は、粉末X線回折によって求めることができる。たとえば、リチウムイオンで飽和した未変性CEV試料を耐水性向上陽イオンの溶液で処理する場合、耐水性陽イオンによってCEV粉末中のリチウム陽イオンが置換されるので、X線回折を使用することで、リチウム陽イオンおよびそれぞれの層間隔に対応するピークが、耐水性向上陽イオンおよびそれぞれの層間隔に対応する第2のピークに変わることを示すことができる。
【0040】
「完全飽和」は、一価陽イオン交換部位中、典型的にはバーミキュライト薄層間の交換部位中に存在する未変性CEVの陽イオンが、耐水性向上陽イオンでほぼ完全に交換されることを意味することを意図している。たとえば、機械的遮断、温度差、圧力などの結果としては、一価陽イオン交換部位における耐水性向上一価陽イオンの完全な交換が可能とならない場合があることは明らかであろう。したがって、適切には、ほぼ完全な交換は、少なくとも95%の交換、たとえば少なくとも96%、97%、98%、99%、または少なくとも99.5%の交換であってよい。未変性CEVの調製中には、リチウムまたはn-ブチル陽イオンなどの大過剰の剥離性イオンが一般に使用される。この過剰によって、バーミキュライトの利用可能な一価陽イオン交換部位の実質的にすべてがCEV中で占有されると予想される。したがって、上記の「完全飽和」の定義は、CEV中の利用可能な一価陽イオン交換部位の少なくとも90%、たとえば少なくとも95%、97%、98%、99%、99.5%または実質的にすべてが耐水性向上陽イオンで占められることも一般に意味する。
【0041】
本発明のガスケットは多層または単層であってよい。単層ガスケットの場合、封止材料または層は、ガスケット全体を形成するように成形され、一方、2つ以上の層を有しうる多層ガスケットでは、封止材料がガスケットの1つ以上の層を形成することができ、コアおよび/または支持体が別の層を形成することができる。一実施形態では、ガスケットは、典型的には隣接しているが、必ずしも隣接している必要はない2つの封止層の間に介在するコアの形態である。このようなガスケットは、典型的には、接合部分の接合面の間に介在し、それによってそれらの間にシールが形成されるように成形される。一実施形態では、ガスケットは、支持層と、その上にある封止層であって、典型的には支持層と隣接しているが、必ずしも隣接している必要はない封止層との形態であってよい。ガスケットは積層体の形態であってよく、または支持層に封止層が浸透していてもよい。このような浸透は、たとえば封止層が浸透したガーゼまたはワイヤーメッシュの支持体によって行うことができ、それによって封止層を補強することができる。
【0042】
多層ガスケットのさらなる一実施形態では、さらなる層を封止層に取り付けることができ、たとえば、封止層は、使用中に封止層とそれぞれの結合面との間に介在するさらなる層またはコーティングを有することができる。このようなさらなる層は、当業者に周知であり、ガスケットが使用される用途によって決定される。
【0043】
したがって、本発明のガスケットの封止材料または層は、あらゆる適切なガスケットの用途に使用できることが理解されよう。典型的な実施形態としては、カンプロファイルガスケット、螺旋巻きガスケット、および鋼コアガスケットが挙げられ、これらは本発明の封止材料の向上した耐水性のため有利となりうる。
【0044】
有利には、本発明の封止材料またはガスケットまたはバルブシールまたは封止ホイルによって、改善された耐水性が得られる。なんらかの理論によって束縛しようとするものではないが、充填剤を含まないCEV封止材料または層/リングを陽イオン溶液の形態の関連する陽イオンと単に接触させるだけでは、本発明による充填剤を有する封止層/リングまたは材料よりも飽和に到達するのが遅くなりうることが示唆されている。したがって、本発明による充填剤を含む封止層/リングまたは材料は、充填剤を含まない封止材料よりも効率的に交換が可能である。驚くべきことに、これによって、このような材料の耐水性が向上している。
【0045】
本発明の任意の態様によると、封止材料/層/シート/リングは、耐水性向上一価陽イオンと接触させることによって、典型的には未変性CEVを有する封止材料/層/シート/リングを関連の一価陽イオンの溶液と接触させることによって、陽イオンが交換される。
【0046】
ある実施形態では、耐水性向上一価陽イオンは、未変性CEVを有する封止材料/層/シート/リングに、クエン酸塩または塩化物塩、典型的にはその溶液として、好ましくはクエン酸塩として導入される。
【0047】
好ましくは、本発明の任意の態様の充填剤は、不活性充填剤である。不活性充填剤とは、本発明のガスケットまたはバルブシールまたは封止材料の中でバインダーとして有効ではないこと、および/または本発明のガスケットまたはバルブシールの用途において一般に化学的に不活性であることを意味する。適切には、充填剤は、非吸湿性であり、水と非反応性であり、および/または非補強性である。
【0048】
適切な不活性充填剤は、当業者に周知の板状または粒子状の充填剤である。本発明の状況において板状充填剤は、封止材料中で板、層状、または木の葉形の構造をとる充填剤を意味する。板状充填剤としては、タルク、別の形態のバーミキュライト、およびマイカが挙げられる。別の形態のバーミキュライトとしては、熱的剥離バーミキュライトが挙げられる。適切な粒子状充填剤としては、非晶質シリカ、石英シリカ、および炭酸カルシウムが挙げられる。
【0049】
板状または粒子状の充填剤をCEVに導入して、フィルム、典型的にはそれと密接に混合されたフィルムを形成することで、改善された耐水性向上一価陽イオンの交換が、それとの接触、適切にはその溶液との接触で行われることが分かった。
【0050】
典型的には、たとえばMalvern Mastersizerによる光散乱によって測定される充填剤のd50平均粒度は、10nm~50μm、より好ましくは50nm~30μm、最も好ましくは500nm~25μmの範囲内である。
【0051】
典型的には、Malvern Mastersizerによる光散乱によって測定されるCEVのd50平均粒度は、1μm~100μm、より好ましくは5μm~50μm、最も好ましくは10μm~30μmの範囲内である。
【0052】
ISO 9277などの窒素吸収によって測定される充填剤の表面積は、200m2/g未満、より好ましくは10m2/g未満、最も好ましくは5m2/g未満である。
周囲条件下で、X線回折によって求められる本発明の封止材料またはガスケット封止材料の中のCEVのd間隔(クレイ-クレイ層間隔)は、適切には10~12Åの範囲内であり、適切にはPANalytical XPert MPD θ-θ回折計によって、CuKα放射線(λ=1.5418Å(0.15418nm))が使用され、Si標準物質を用いて較正され、Niフィルターおよび湾曲グラファイトモノクロメーターが回折ビーム中に取り付けられ、Bragg-Brentano反射配置で操作されることで測定することができる。プログラム可能な発散および散乱線除去スリットを用いて1cm×1cmの正方形の試料に照射した。X線管は40kVおよび40mAで操作した。
【0053】
本発明の任意の態様の2つ以上の任意選択の特徴を、必要な変更を加えて本発明の任意の態様と組み合わせることが可能なことは理解されよう。
本発明の第3の態様によると、バルブまたはガスケットの封止材料の製造方法であって
(a)化学的剥離バーミキュライト(CEV)を充填剤と混合して、それらの密接混合物を形成するステップと、
(b)任意選択により、混合物からシートを形成するステップと、
(c)任意選択により、混合物から形成した前記シートを乾燥させるステップと、
(d)耐水性向上一価陽イオンの溶液と接触させることによって、混合物/シート/乾燥シートの一価陽イオンを交換するステップと
を含む方法が提供される。
【0054】
適切には、CEVは、バーミキュライト鉱石をクエン酸リチウム溶液で処理し、続いて、処理した鉱石を洗浄することによって形成することができる。別の陽イオンによる処理も可能である。しかし適切には、バーミキュライト鉱石はクエン酸リチウムで処理される。したがって、ステップa)のCEVは、少なくとも部分的に、好ましくは完全に処理陽イオンで飽和させることができる。処理陽イオンは、あらゆる適切な陽イオンであってよいが、典型的には、リチウム、n-ブチルアンモニウム((n-ブチル)NH3
+)、またはn-プロピルアンモニウム((n-プロピル)NH3
+)であり、より典型的にはリチウムである。(n-ブチル)NH3
+または(n-プロピル)NH3
+が処理陽イオンとして使用される場合、バーミキュライト鉱石のナトリウムによる前処理ステップが典型的には必要となる。
【0055】
適切には、接触ステップ(d)の効果は、典型的には陽イオン交換部位において、未変CEV中に見られるよりも多い量で、耐水性バルブまたはガスケット封止材料のCEV中に耐水性向上一価陽イオンを存在させることである。適切には、耐水性向上一価陽イオンは、適切には少なくとも2倍の量の増加、より適切には少なくとも10倍の量の増加、最も適切には少なくとも102倍の量の増加、特に少なくとも103倍の量の増加で存在する。
【0056】
あるいは、防水性向上一価交換可能陽イオンは、1×10-5~5×10-2mol・g-1、より好ましくは1×10-4~1×10-2mol・g-1、最も好ましくは2×10-4~5×10-3mol・g-1封止材料の範囲内で存在する。陽イオン交換および化学分析によって、本発明による材料、シート、またはガスケットの中のすべておよび特定の種類の交換可能陽イオンの量を求めることができる。このような技術は当業者に周知であり、これらの技術によって、材料の陽イオン交換容量(CEC)、すなわち交換可能陽イオンの量を求めることができる。詳細を前述したように、好ましくは、本発明の任意の態様によると、ガスケット/封止層/封止材料/シート/バルブ封止材料またはリングの中の交換可能陽イオン少なくとも1%、より好ましくは少なくとも5%、たとえば10%が、防水性向上一価陽イオンであり、特に、少なくとも25%、さらに特に、少なくとも50%、たとえば少なくとも70または80または90または100%が防水性向上一価陽イオンである。
【0057】
好ましくは、乾燥粉末CEVを加えることでCEV含有量を増加させることができるが典型的にはスラリー形態の未乾燥CEVであるCEVと、充填剤との混合の後、得られた密接混合物はシートに成形され、陽イオン交換の前に少なくとも部分的に乾燥させる。任意選択により、このシートからガスケット封止層またはバルブリングが形成され、任意選択により、陽イオン交換の前に、さらにこれをガスケットまたはバルブシール中に組み込むことができる。任意選択により、ダイ成形などのプレス成形によってシートからバルブリングが形成される。したがって、任意選択により、ステップ(d)は、封止層/材料をガスケット/バルブシールに組み込む前または後のいずれかでの、耐水性向上一価陽イオンの溶液と接触させることによる、ガスケット封止層またはバルブ封止材料の一価陽イオンの交換である。
【0058】
陽イオン交換は、好ましくは、封止材料、シートまたはガスケット/ガスケット封止層またはバルブ封止材料/パッキンリングを、関連する陽イオンの溶液、典型的にはその水溶液と接触させることによって行われる。
【0059】
陽イオン交換される材料、シートまたはガスケット/バルブ封止材料と接触させる防水性向上一価陽イオンは、典型的には、陽イオン交換部位のすべて、すなわち少なくとも95%、より典型的には約100%を交換するのに化学量論的に必要な量よりも多い。
【0060】
材料、シートまたはガスケット/バルブ封止材料を、防水性向上一価陽イオンの溶液と接触させるための好ましい曝露時間は1~180分であり、より好ましくは5~180分、より好ましくは15~60分、たとえば少なくとも2分、より典型的には少なくとも10分、最も好ましくは少なくとも20分である。
【0061】
適切には、材料、シートまたはガスケット/ガスケット封止層またはバルブ封止材料/パッキンリングを、関連する陽イオンの溶液と、材料、シートまたはガスケット/ガスケット封止層またはバルブ封止材料/パッキンリングの溶液中への浸漬によって、好ましくは材料、シートまたはガスケット/ガスケット封止層またはバルブ封止材料/パッキンリングの溶液中へのディッピングによって接触させる。任意選択により、溶液の材料、シートまたはガスケット/ガスケット封止層またはバルブ封止材料/パッキンリングへの塗布が、材料、シートまたはガスケット/ガスケット封止層またはバルブ封止材料/パッキンリングの上への溶液のコーティングによって行われ、典型的には続いて脱イオン水による洗浄が行われる。この塗布方法は、浸漬が商業的に実現できない、より大きなシートまたはガスケット/バルブシールの場合に有利となりうる。
【0062】
有利には、陽イオン溶液によるシート、典型的には乾燥シートの交換は、成形前の未乾燥/乾燥未変性CEVと充填剤との混合物に陽イオン交換溶液を直接加えるよりも、改善された耐水性を有する可撓性シートの製造により有効であることが分かった。このような場合、後者のシートは、ほとんどの用途で脆すぎることが分かった。
【0063】
さらに、本発明者らは、充填剤を加える前に陽イオン溶液を未乾燥/乾燥未変性CEVを加えることは、有効なシートが形成されないことが分かった。
本発明の任意の態様、すなわちは第1および/または第2および/または第3および/またはさらなる態様の2つ以上の任意選択の特徴を、必要な変更を加えて本発明の任意の態様、すなわち第1および/または第2および/または第3および/またはさらなる態様と組み合わせることが可能なことは理解されよう。
【0064】
好ましくは、本明細書の任意の態様による封止材料、シートまたは層/リングは圧縮することができ、このような圧縮は使用前または陽イオン置換前におこなうことができる。あるいは、圧縮は、シートからの切断などの成形中におこなうことができる。圧縮によって、任意選択により、シートの完全性が向上し、性能が改善される。典型的には、未圧縮のシートまたは層/リングの密度は、0.9g/cm3~1.5g/cm3、より好ましくは1.0g/cm3~1.4g/cm3、より好ましくは1.1g/cm3~1.3g/cm3である。ガスケットの適切な圧縮圧力によって、1.0~2.1g/cm3、より好ましくは1.2g/cm3~2.0g/cm3、最も好ましくは1.6g/cm3~1.9g/cm3の範囲内の密度のシートまたは層/リングが得られる。適切には、バルブ封止材料/パッキンリングの圧縮圧力によって、1.1~2.7g/cm3、より好ましくは1.3~2.5g/cm3、最も好ましくは1.6~2.2g/cm3の範囲内の密度のシートまたは層/リングを得ることができる。
【0065】
一価陽イオン溶液中の陽イオンの濃度は特に制限されないが、0.1~10mol・dm-3の範囲内、より好ましくは0.5~5mol・dm-3の範囲内、最も好ましくは1~3mol・dm-3の範囲内であってよい。一般に、陽イオンは十分に溶媒和し、飽和溶液までのあらゆる濃度を陽イオン交換ステップに使用することができる。
【0066】
封止材料、シート、または層/リングの上に陽イオン溶液がコーティングされる実施形態では、一価陽イオン溶液中の陽イオンの濃度は、一般に、浸漬塗布方法の場合よりも高い。典型的には、封止材料、シート、または層/リングの上に陽イオン溶液がコーティングされる場合、一価の溶液中の陽イオンの濃度は1mol・dm-3~10mol・dm-3、たとえば5mol・dm-3~10mol・dm-3、より好ましくは7mol・dm-3~10mol・dm-3最も好ましくは8mol・dm-3~9.5mol・dm-3の範囲内である。
【0067】
適切には、本発明によると、ガスケット/シート/封止層/封止材料/パッキンリングは、0.2~3.0mol・dm-3の溶液中に5~180分の間の時間浸漬することができる、より好ましくは0.3~1.0mol・dm-3の溶液中に15~60分の間の時間浸漬することができる。
【0068】
バルブ封止材料は、バルブの周囲の位置で、耐水性向上一価陽イオンの溶液と接触させることによって処理することができる。したがって、任意選択により、ステップ(d)において、耐水性向上一価陽イオンの溶液は、バルブ封止材料と、それらがバルブの周囲にあるときに接触させることができる。適切には、このような一実施形態では、溶液と接触させる前に、封止材料はその目標密度まで圧縮されない。処理後にシールを完全に緻密化することができる。
【0069】
水に浸漬した後の処理後および未処理のシールを秤量することによって、耐水性の有意な向上を示すことができる。
定義
本明細書において値が%w/wの単位で示される場合、他に示されない限り、これらは乾燥重量を基準としている。陽イオンのパーセント値として値が占められる場合、これらは数すなわちモルを基準としている。
【0070】
バルブシールと関連する本明細書におけるシート、層、および封止材料は、そのようなシールのリングまたはパッキンリングと一般に同義であることが理解されよう。しかし、これは、1つのパッキンリングが、複数の層を有する可能性、または複数のシートから製造される可能性を排除するものではない。
【0071】
本発明のより十分な理解のため、およびその実施形態を実施できる方法を示すため、これより単なる例として以下の実施例および図面を参照する。
図1は梁試験装置である。
【実施例】
【0072】
方法
表1に記載のドウ組成の配合物から、成分を混合して未乾燥ドウを形成し、次に未乾燥ドウ全体をキャスティング方向でドクターブレードを引くことで、支持層(140gsmの紙、Cresta“D”)の上に均一なコーティングを広げることによって、実施例のホイルを作製した。得られたコーティングを乾燥させ、乾燥させたコーティングから支持層を剥離して除去した。乾燥させたコーティングは、より長い方向がキャスティング方向(グレーンを「有する」)と平行になるように、5cm×2cmのホイルクーポンに切断した。90mmOD×50mmIDのガス漏れ試験用試料(DIN)も切断した。
【0073】
混合物の種々の粘度のため、ホイルにキャスト可能となる粘稠度を得るためにドウ配合物に脱イオン水を加える必要があった。これらの水の添加は表1に示している。混合とホイルへのキャストとの後、他に示されない限り、ホイルは、前述のクーポンの切断の前に、乾燥時に約0.6mmの厚さとなるまで固化させた。個別の厚さおよび密度を表1に記録している。
【0074】
【0075】
使用した充填剤をまとめたデータを表2に示す。
【0076】
【0077】
次に、上記配合物の切断したクーポンフィルムを塩溶液1~4中に浸漬することによって陽イオン交換をおこなうか、または螺旋巻きガスケットを塩溶液5および6中に浸漬した。
【0078】
1.「対照」(未処理の試料)
2.試料を最初に0.33Mのクエン酸カリウム(1NのK+)中に浸漬し、次に脱イオン水で2回洗浄し、40℃で3時間乾燥させる。
【0079】
3.1Mの塩化カリウム(1NのK
+)を使用して(2)と同様
4.1Mの塩化ナトリウム(1NNa
+)を使用して(3)と同様
5.詳細に後述した手順で0.33Mクエン酸セシウム
6.詳細に後述した手順で1.0Mクエン酸アンモニウム
図1に示す装置を使用して、前述の条件1~4により処理したクーポンの浸漬(梁)試験を行った。
【0080】
16mmの正方形断面のPVC導管から、浸漬梁試験用のフレーム構造2を作製した。間隔を開けて向かい合う導管の組4、6は、この第1の組の上に重なる第2の同一の組8、10と平行に配列され、これによってそれらの間に間隙22を残すことで、重ねられる導管の組の間で垂直に延在する試験クーポン14が収容されて挟まれ、それによってその末端が第1の4、8および第2の6、10の重なり合う導管の間に挟まれた。こうして試験クーポン14によって、重なる導管の組の間の間隙12に橋がかけられる。試験中のクーポンの移動を防止するために、ガラス板のおもり(360g)24が、それぞれの第2の導管8、10の上に載せられる。試験クーポン14およびフレーム構造2は、試験クーポンの各末端で1cmを支持し、導管の間の間隙12に、支持されずに橋を架ける3cmが残るように設計される。1ポンド硬貨(重量9.5g、直径22.5mm;厚さ3.15mm)16を各クーポンの中央の上に載せた。試験のために、フレーム構造2を透明ポリプロピレン容器18中に入れた。キャスト中に空気に曝露した表面が下を向くようにすべてのクーポンを搭載した。
【0081】
クーポンが水中に入るように、容器に1Lの脱イオン水20を満たし、クーポンを1~2時間連続して観察し、その後間隔をあけて24時間観察した。
8時間および24時間において、mmの目盛を有する三角定規を用いて肉眼でクーポンの下方向のたわみを水平位置からのmmで測定することによって、崩壊しなかったクーポンの劣化の評価を行った。適切な場合には、各クーポンが崩壊するのに要した時間を記録した。
【0082】
結果
1.対照:
以下の表3中、比較調製例1が比較例11を示すことを除けば、比較例番号は表1中のそれぞれの調製例の番号と一致しており、梁試験の崩壊までの時間は分:秒で記録した。
【0083】
【0084】
100%CEVの試料である比較例11は、l充填剤を含有する試料(比較例1~10)よりもはるかに長く残った。固化させた試料の比較例1は、固化させていない試料の比較例2よりも長く残った。
【0085】
2. 0.33M(1N)のクエン酸カリウム
以下の表4中、前述の塩溶液2中に浸漬して作製した試料を実施例1~10および比較例12として示している。比較調製例1が比較例12を示すことを除けば、実施例1~10の番号は、表1のそれぞれの調製番号と一致している。
【0086】
表4中、梁試験中の崩壊までの時間を分の単位で示している。しかし、100%CEVである比較例12を除いたすべての試料は、48時間後に破壊されずに残り;梁の垂直方向のたわみ(単位mm)は8時間後、24時間後、および48時間後に記録される。
【0087】
【0088】
3. 1M(1N)の塩化カリウム
以下の表5中、前述の塩溶液3中に浸漬して作製した試料を実施例11~20および比較例13として示している。実施例11~20は、それぞれ調製例1~10を使用している。比較例13は比較調製例1を使用している。
【0089】
【0090】
今回も比較調製例1を含有する比較例13が破壊した唯一の試料であり、8~24時間の間で破壊が生じた。
4. 1M(1N)の塩化ナトリウム
以下の表6中、前述の塩溶液4中に浸漬して作製した試料を実施例21~29および比較例14として示している。実施例21~29は、それぞれ調製例1~9を使用している。比較例14は比較調製例1を使用している。
【0091】
【0092】
今回も、溶液3の場合と同様に、比較例14が8~24時間の間で破壊された。残りの試料は、溶液3の場合の対応する実施例よりも大きくたわんだ。
5. 0.33Mのクエン酸セシウム
42gのクエン酸一水和物脱イオン水溶液中に66gの炭酸セシウム(どちらもSigma Aldrich製)をゆっくり溶解させることによって、0.33Mの濃度のクエン酸セシウムを調製した。この溶液は使用前に400mlとなるように調製し、過剰の二酸化炭素を溶液から放出させるために24時間静置した。実施例30では、調製例3で形成した封止層を有する螺旋巻きガスケットを陽イオン溶液中に1時間浸漬し、洗浄し、乾燥させ、水中に30分浸漬することによって試験を行った。
【0093】
ガスケット封止層の耐水性によって、充填剤の軟化が防止され、構造的完全性を低下させるガスケットからの突出が防止される。陽イオン交換を行わなかった対照試料では、水中に30分浸漬した後、大部分の充填剤が突出した。しかし、実施例30では、充填剤の目視による突出は存在しなかった。
【0094】
6. 1Mのクエン酸アンモニウム
58gの炭酸アンモニウム(Sigma Aldrich製)を脱イオン水中の84gのクエン酸一水和物にゆっくり加え、400mlにすることによって、1Mの濃度のクエン酸アンモニウムを調製した。合計600mlの溶液中でこれらの量を半分にすることによって0.33Mの溶液を調製した。両方の場合で、二酸化炭素を放出させるために、使用前に溶液を24時間置いた。
【0095】
実施例31では、調製例3から形成した封止層を有する螺旋巻きガスケットを1Mの濃度の溶液中に1時間浸漬し、洗浄し、乾燥させ、水中に30分浸漬することによって試験を行った。
【0096】
実施例32では、調製例3から形成した封止層を有する螺旋巻きガスケットを0.33Mの濃度の溶液中に1時間浸漬し、洗浄し、乾燥させ、水中に30分浸漬することによって試験を行った。
【0097】
実施例31および実施例32の両方のガスケットは、充填剤の目視による突出が存在しなかったので、ガスケットに有利なレベルの防水性が付与された。
漏れ試験
調製例1または調製例3のいずれかにより形成され、種々の陽イオン溶液を用いて処理されたシートを有するガスケットに対して、修正したSHELLガス漏れ試験を行った。
【0098】
すべてのSHELL試験は、316Lのワイヤを有し処理されたシートを含有する4インチのClass 300ガスケット(ANSI B16.5に準拠)に対して行った。
試験リグは、隆起面を有するウェルドネックフランジを有した。リグの試験容積は約2.0リットルであった。以下の材料を使用した:
フランジ:ASTM A 182 Gr.F11またはF12
パイプ:ASTM A 335 P11
植込みボルト:ASTM A 193 Gr.B16
ナット:ASTM A 194 Gr.4H。
【0099】
フランジ面の粗さは平滑仕上げであった(Ra3.2~6.3μm)。すべての試料のガスケットは、試験前に100℃で1時間乾燥させた。
周囲温度でガスケットの試験を行うために、初期ボルト応力290MPa(すなわちカンプロファイルの応力領域上で71MPa、内側および外側リングを有する螺旋巻きガスケットの応力領域上で107MPa)を加え、内圧を5.2MPaまで上昇させた。30分の設定時間の後、圧力を1時間維持し、その後の内圧を記録した。
【0100】
高温でガスケットの試験を行うために、初期ボルト応力290MPa(すなわちカンプロファイルの応力領域上で71MPa、螺旋巻きガスケットの応力領域上で107MPa)を加え、試験ガスケットを有する接合部を約100℃/hの速度で450℃まで加熱した。温度が450℃に到達した後、内圧を約3.4MPaまで上昇させた。この温度を1時間維持し、その後の内圧を記録した。次に接合部を周囲温度まで冷却した後、加熱サイクルを繰り返した。
【0101】
SHELL試験の結果を以下の表7に示す。試験中には追加のガスは使用しなかった。
【0102】
【0103】
表7から、処理された封止材料を有する螺旋巻きガスケットは、固化または未固化のいずれでも未処理の試料よりも高いガス漏れ性能を示すことが分かる。クエン酸カリウム中に15分間浸漬したカンプロファイルガスケットは、60分の浸漬と同等の機能を果たす。したがって、防水性によって、有害なガス漏れ性能は生じない。
【0104】
上記実施例に示されるように、CEVに加えられる、粒度および比表面積が広範囲に及ぶ種々の充填剤の使用と、一価耐水性向上陽イオンの処理との組合せによって、充填剤とCEV材料との組合せの耐水性が向上する。
【0105】
特に、表3は、未処理状態で、100%CEV材料は、充填剤を有するが未処理のCEV材料よりも良好な耐水性を有することを示している。対照的に、表4、5、6、および7から、表3に使用されるものと同じ材料を耐水性向上陽イオンを含有する溶液で処理すると、驚くべきことに、充填剤を含むCEV材料が、処理済みおよび未処理の100%CEV材料よりも良好な耐水性を示すことが分かる。
【0106】
さらに、これらの実施例は、ある範囲の耐水性向上陽イオンが本発明に適切なとなることを示している。
実施例40~41は、TH894リングに関する(TH894パッキンはFlexitallicより入手可能な剥離バーミキュライトを主成分とするパッキンであり、この製品はインコネルワイヤで補強されている)。
【0107】
方法および結果
TH894パッキンのセグメントを10mmの断面および45mmの直径の3/4リングの区画に分割した。実施例40は防水処理を行わない比較例であり、実施例40は脱イオン水中への8時間の浸漬を行い、実施例41は、クエン酸カリウムによる処理であって、3/4リングを0.33M溶液中に1時間浸漬の後、水道水で洗浄し、次に50℃で2時間乾燥させる処理を行った試料であり、次にこれも脱イオン水中への8時間浸漬を行う。
【0108】
水中に浸漬する試料(実施例40および41)を浸漬前および8時間の浸漬後に秤量すると、実施例40は、水の吸着のため53.8%重量が増加し、一方、実施例41の増加はわずか25.1%であった。処理した実施例41は、未処理の実施例40よりも目視で膨潤が少なく、水から取り出した後で柔らかく感じなかった。
【0109】
実施例42
TH894の試料を、クエン酸カリウムの飽和溶液(3M)上でコーティングし、たとえば41に詳細が示されるように洗浄し乾燥させることによって、処理した。再び脱イオン水中に8時間浸漬することで試験を行うと、膨潤は未処理の実施例40と浸漬処理済みの実施例41との中間であり、水浸漬後の重量増加は45.3%であった。
【0110】
本明細書と関連し、本明細書と同時またはそれ以前に提出され、本明細書とともに公衆に対して閲覧自由となるすべての論文および文献に注目され、すべてのそのような論文および文献の内容が参照により本明細書に援用される。
【0111】
本明細書(あらゆる添付の請求項、要約書、および図面を含む)に開示されるすべての特徴、および/またはそのように開示されるあらゆる方法またはプロセスのすべてのステップは、そのような特徴および/またはステップの少なくとも一部が相互に排他的となる場合の組合せを除いたあらゆる組合せで組み合わせることができる。
【0112】
本明細書(あらゆる添付の請求項、要約書、および図面を含む)に開示されるそれぞれの特徴は、他に明記されない限り、同一、同等、または類似の目的を果たす別の特徴で置き換えることができる。したがって、他に明記されない限り、開示されるそれぞれの特徴は、一般的な一連の同等または類似の特徴の一例にすぎない。
【0113】
本発明は、以上の実施形態の詳細に限定されるものではない。本発明は、本明細書(あらゆる添付の請求項、要約書、および図面を含む)に開示される特徴のあらゆる新規な1つ、もしくはあらゆる新規な組合せ、またはそのように開示されるあらゆる方法もしくはプロセスのステップのあらゆる新規な1つもしくはあらゆる新規な組合せにまで拡張される。