(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】患者用インタフェース及びヘッドギア
(51)【国際特許分類】
A61M 16/06 20060101AFI20220721BHJP
【FI】
A61M16/06 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020175971
(22)【出願日】2020-10-20
(62)【分割の表示】P 2019000265の分割
【原出願日】2010-12-22
【審査請求日】2020-10-26
(32)【優先日】2009-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2010-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504298349
【氏名又は名称】フィッシャー アンド ペイケル ヘルスケア リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】トロイ、バーンステン
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、ジョン、スミス
(72)【発明者】
【氏名】ブレット、ジョン、ハダート
(72)【発明者】
【氏名】マシュー、ジェームズ、アダムズ
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス、アレクサンダー、ホブソン
(72)【発明者】
【氏名】ティモシー、ジェームズ、ベレスフォード、シャープ
(72)【発明者】
【氏名】ロヒート、パテル
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー、ジェームズ、オルセン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー、ロジャー、スティーブンソン
【審査官】村上 勝見
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0032026(US,A1)
【文献】米国特許第04817596(US,A)
【文献】特表2008-541955(JP,A)
【文献】実開昭59-071655(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インタフェースであって、
マスクと、
ヘッドギアと、
平行に配置された弾性の細長要素および実質的に非弾性の細長要素を含む、前記マスクと前記ヘッドギアとの間の接続部と、
前記接続部の前記非弾性の細長要素の長
さを変更または調節するように作用する調節機構と、
を備え、
前記弾性の細長要素は、前記マスクを使用者に装着する間に、前記マスクを使用者の顔面の上に保持するとともに前記ヘッドギアを前記使用者の頭部の上に保持するように構成され、前記実質的に非弾性の細長要素は、前記非弾性の細長要素の長さの少なくとも一部が調節された後における人工呼吸時に前記接続部の伸張を減じるように構成されている、
インタフェース。
【請求項2】
請求項1に記載のインタフェースであって、
前記マスクは左側および右側を有し、前記ヘッドギアは左側および右側を有し、
前記接続部は、前記マスクの左側と前記ヘッドギアの左側との間の第1の接続部と、前記マスクの右側と前記ヘッドギアの右側との間の第2の接続部とを含み、
前記第1および第2の接続部は、平行に配置された弾性の細長要素と実質的に非弾性的の細長要素とを備えている、インタフェース。
【請求項3】
請求項2に記載のインタフェースであって、
前記調節機構が、
前記第1の接続部の前記非弾性の細長要素の長
さに影響を与えるかまたは調節するように作用する第1の調節機構と、
前記第2の接続部の前記非弾性の細長要素の長
さに影響を与えるかまたは調節するように作用する第2の調節機構と、
を備えている、インタフェース。
【請求項4】
請求項2または3に記載のインタフェースであって、
前記マスクの左側と前記ヘッドギアの左側との間の第3の接続部と、
前記マスクの右側と前記ヘッドギアの右側との間の第4の接続部と、
をさらに備え、
前記第3および第4の接続部が、平行に配置された弾性の細長要素と実質的に非弾性の細長要素とを備えている、インタフェース。
【請求項5】
請求項4に記載のインタフェースであって、
前記調節機構がさらに、
前記第3の接続部の非弾性の細長要素の長
さに影響を与えるかまたは調節するように作用する第3の調節機構と、
前記第4の接続部の前記非弾性の細長要素の長
さに影響を与えるかまたは調節するように作用する第4の調節機構と、
を備えている、インタフェース。
【請求項6】
請求項4に記載のインタフェースであって、
前記第1および第2の接続部が、前記マスクの上部と前記ヘッドギアの上部との間を接続し、
前記第3および第4の接続部が、前記マスクの下部と前記ヘッドギアの下部との間を接続する
インタフェース。
【請求項7】
前記調節機構のすべてが前記マスク上に配置されている、請求項1から
6のうちのいずれか一項に記載のインタフェース。
【請求項8】
前記マスクと前記ヘッドギアとの間の前記接続部が、
前記接続部の長さを調節可能
な調節可能モードと、
前記接続部の長さを実質的に増加させることができな
い固定モードと、
を有している、請求項1から
7のうちのいずれか一項に記載のインタフェース。
【請求項9】
前記接続部が右側接続部と左側接続部とを備え、
前記
調節可能モードにおいて、前記右側接続部の長さと前記左側接続部の長さがそれぞれ調節可能であり、
前
記固定モードにおいて、前記右側接続部の長さおよび前記左側接続部の長さを実質的に増加させることができない、請求項
8に記載のインタフェース。
【請求項10】
前記すべての調節機構が、少なくとも2つのモードを有するロック式であり、
a.
ロックモードでは、前記非弾性の細長要素の長さを長くすることができず、
b.
ロック解除モードでは、前記非弾性の細長要素の長さを長くすることができる
請求項
8に記載のインタフェース。
【請求項11】
前記各接続部が前記弾性の細長要素を備え、当該弾性の細長要素が、前
記ロックモードにおいて、前記マスクを着用者の顔面に保持するための保持力を提供するように構成されている、請求項
10に記載のインタフェース。
【請求項12】
前記各接続部が前記弾性の細長要素を備え、当該弾性の細長要素が、前
記ロック解除モードにおいて、前記マスクを着用者の顔面に保持するための保持力を提供するように構成されている、請求項
10または11に記載のインタフェース。
【請求項13】
前記ヘッドギアが、前記接続部の前記弾性の細長要素よりも伸張性が低い、請求項1から
12のうちのいずれか一項に記載のインタフェース。
【請求項14】
前記ヘッドギアが、前記接続部よりも伸張性が低い、請求項1から
12のうちのいずれか一項に記載のインタフェース。
【請求項15】
前記ロック式の前記調節機構が前
記ロック解除モードにあるときに、前記非弾性の細長要素の調節可能長さの少なくとも一部を短縮することができる、請求項
10に記載のインタフェース。
【請求項16】
請求項4から
10のうちのいずれか一項に記載のインタフェースであって、
前記第1および第2の接続部が、
使用者の頭部の側面の周りを通り、前記
使用者の耳の上に位置し、
前記第3および第4の接続部が、前記
使用者の頭部の側面の周りを通り、前記
使用者の耳の下に位置する、インタフェース。
【請求項17】
請求項4から
10のうちのいずれか一項に記載のインタフェースであって、前記調節機構が、
a) 摩擦クラスプ
b) コキ(ラダーロック)
c) バックル
d) ラチェット
e) クランプ
f) カムクリート
g) ポストおよび孔
のうちのいずれか一つである、インタフェース。
【請求項18】
請求項2から
17のいずれか一項に記載のインタフェースであって、
前記第1の接続部の前記弾性の細長要素と前記非弾性の細長要素とが実質的に一致した取り付け位置で前記マスクに取り付けられており、
前記第2の接続部の前記弾性の細長要素と前記非弾性の細長要素とが実質的に一致した取り付け位置で前記マスクに取り付けられている、インタフェース。
【請求項19】
請求項4から
17のいずれか一項に記載のインタフェースであって、
前記第3の接続部の前記弾性の細長要素および前記非弾性の細長要素が、実質的に一致した取り付け位置で前記マスクに取り付けられており、
前記第4の接続部の前記弾性の細長要素および前記非弾性の細長要素が、実質的に一致した取り付け位置で前記マスクに取り付けられている、インタフェース。
【請求項20】
請求項2から
19のうちのいずれか一項に記載のインタフェースであって、
前記第1の接続部の前記弾性の細長要素および前記非弾性の細長要素が、実質的に一致した取り付け位置で前記ヘッドギアに取り付けられており、
前記第2の接続部の前記弾性の細長要素および前記非弾性の細長要素が、実質的に一致した取り付け位置で前記ヘッドギアに取り付けられている、インタフェース。
【請求項21】
請求項4から
20のいずれか一項に記載のインタフェースであって、
前記第3の接続部の前記弾性の細長要素および前記非弾性の細長要素が、実質的に一致した取り付け位置で前記ヘッドギアに取り付けられており、
前記第4の接続部の弾性の細長要素および前記非弾性の細長要素が、実質的に一致した取り付け位置で前記ヘッドギアに取り付けられている、インタフェース。
【請求項22】
前記接続部の前記弾性の細長要素の長さが、その未伸張長さの約1.5倍から約3倍の間の長さまで伸張可能である、請求項1から
21のうちのいずれか一項に記載のインタフェース。
【請求項23】
前記接続部の前記弾性の細長要素の長さが、前記弾性の細長要素の材料の伸張以外には調節できない、請求項1から
22のうちのいずれか一項に記載のインタフェース。
【請求項24】
請求項
11または12に記載のインタフェースであって、
前記接続部の前記弾性の細長要素によって提供される保持力が、フィッティング中に
使用者の顔面上にマスクを保持するのに十分であるか、または使用中にマスクの密封を補助するのに十分である、インタフェース。
【請求項25】
前記マスクが
a. 鼻マスク
b. 口マスク
c. 口鼻マスク(フルフェイス)
d. 鼻ピロー
e. 鼻プロングを含む口マスク、
f. 鼻カニューレ
のうちのいずれかである、請求項1から
24のうちのいずれか1項に記載のインタフェース。
【請求項26】
前記弾性の細長要素と前記非弾性の細長要素とが互いに一体化されている、請求項1から
25のうちのいずれか一項に記載のインタフェース。
【請求項27】
請求項
26に記載のインタフェースであって、
前記弾性の細長要素が、その内部に自らの実質的な長さにわたって延在する通路を含み、
前記各非弾性の細長要素が前記通路内に配置されている、インタフェース。
【請求項28】
前記非弾性の細長要素が、
前記非弾性の細長要素の長手方向に負荷される圧縮力に耐えるように構成されている、請求項1から
27のうちのいずれか一項に記載のインタフェース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2009年12月23日に出願された米国仮特許出願第61/289,641号及び2010年10月8日に出願された米国仮特許出願第61/391,514号の、米国特許法第119条(d)に基づく優先権の利益を主張するものであり、上記の各出願の内容全体を参照によりここに援用する。
【0002】
[発明の技術分野]
本発明は、特に患者に人工呼吸療法を行う際に用いられるが、それに限定されない患者用インタフェース要素の改良に関する。特に、本発明は、インタフェースとインタフェースを患者に固着するために用いられるヘッドギアとに関する。
【背景技術】
【0003】
呼吸装置の分野において、患者の鼻及び/又は口を覆って顔面の鼻及び/又は口領域の周りにおける密封を達成して、ガスをインタフェース内に正圧で供給して患者に消費させることができるようにする様々な呼吸用インタフェースがある。
【0004】
これらのインタフェースは、顔面に対する効果的な密封を達成して、供給される呼吸ガスが有意に漏れる可能性を低下させなければならない。多くのインタフェースでは、多くの場合、良好な密封が達成されても、必ず患者の相当な不快感を伴い、単に一時的な成功にすぎず、且つ/又は患者にインタフェースを装着するために有意な時間がかかる。
【0005】
患者の不快感に関しては、この問題は救急医療環境において最も重大である。このような環境では、患者は何時間も或いはおそらくは何日間も連続的にインタフェースを着用することが必要になる。有意な不快感を体験すると、患者は所望の長期間にわたるマスクの着用を我慢しようという気にならなくなる。
【0006】
多くの構造において、患者の顔が歪んでくると効果的に密封することができなくなるため、良好な密封状態も一時的なものになる可能性がある。例えば、患者が横向きに寝ている時には、ヘッドギアの一方の側はきつく引かれる一方で、他方の側が緩んでくることがある。こうした非対称の負荷によって、ヘッドギアと関連ある何らかの呼吸管とによる正味トルクのために、インタフェースの軸が頭部の軸に対して捻れてしまうことがある。この軸の捻れは、インタフェースの一方の側における漏れを引き起こしかねない。加えて、横向きに寝ている患者は更にまた、密封部の周りにおいて顔面形状(例えば鼻腔領域)が歪むことがあり、これが更なる漏れを招きかねない。
【0007】
最後に、救急処置環境では、呼吸管理が確立される速度が重要である。従って、一部のヘッドギアの構成について、十分な密封状態を迅速に確立できることが現在の構成の改良すべき領域として識別された。
【発明の概要】
【0008】
患者の顔面に対するインタフェースの密着とヘッドギアを用いた患者の顔面へのインタフェースの固着との両方に改良を加えられることがわかった。
【0009】
インタフェースは、例えば病院で長期間にわたって又は就寝時に着用されることがあるため、好ましくは快適さを最大限に高める一方でインタフェースに対する十分な圧力を維持して適正な配置と顔面に対する適度の密着とを達成して、以って有意な漏れが生じる可能性を低下させなければならない。例えば、いかなる漏れも好ましくは約15リットル/分未満とする。院内環境では、患者が意識不明のままでインタフェースを着用することも起こりうる。快適さを高めることによって治療に対する患者の納得度も高めることができ、一般に良好な結果が得られる。
【0010】
インタフェースと関連のヘッドギアとは可能な限り容易に正しく装着及び脱着できることが好ましい。特に、単一のヘッドギア設計が広範な患者頭部サイズ、形状及び髪形の種類に対応できる一方で、依然として取扱い容易であることが望ましい。特にこれが該当するのは、スタッフがいつも患者のインタフェースと関連のヘッドギアとを装着し且つ取り外している院内環境である。望ましくは、インタフェースは様々な顔面の形状及びサイズにも対応する。
【0011】
患者の視点から見ると、インタフェースは可能な場合はある一定の利点をもたらさなければならない。例えば、患者は眼鏡をかけたがることがあり、そのために鼻領域の上の隙間が重要になる可能性がある。加えて、患者は人と話をしたがることがあり、従ってインタフェースを取り外さなくても患者の声がより聞き取りやすくなるようにインタフェースを進化させることが重要になる可能性がある。更に、患者は一般にインタフェースが有意な態様で視界に入り込まないことを好む。このため、より扁平な形状のインタフェースが望ましい。最後に、快適さの観点から、患者は、より低い騒音レベルを有する一方で同時に眼の方に向かうガス漏れを少なくし且つ材料臭を低下させたインタフェース及びヘッドギア構成を望む。
【0012】
臨床的に、医療従事者は、十分に密着するインタフェースが皮膚に対して略均等なインタフェース圧力分布をもたらして点荷重又は過剰な圧力勾配が生じる可能性を低下させることを望む。このような特徴は患者の皮膚を刺激する可能性を低下させる。加えて、二酸化炭素のフラッシングにより二酸化炭素を再吸入する可能性を低下させることが望ましい。
【0013】
本発明の目的は、患者用インタフェースを改良すること及び/又は患者用インタフェースを患者に固定するヘッドギアの構成を改良すること又は少なくとも一般大衆及び医療機関に有用な選択肢を提供することにある。
【0014】
本明細書において、特許明細書、その他の外部文書又はその他の情報源を引用する場合、それは一般に議論すべき内容を提供することを目的とする。特に別段の記載がない限り、こうした外部文書の引用が、こうした文書又はこうした情報源が何らかの管轄体において従来技術であることを認めたもの又は当該技術分野における共通の一般知識の一部分をなすことを認めたものとは解釈されないこととする。
【0015】
本明細書において用いられる「具備する(comprising)」という用語は、「少なくとも部分的に構成される」ことを意味する。「具備する」という用語を含む本明細書の各記述を解釈する場合、この用語の後に記載される特徴以外の特徴も存在することがある。「具備する(comprise)」及び「具備する(comprises)」等の関連用語も同じように解釈されることとする。
【0016】
本発明のある特定の実施形態は更にまた、広義には、個別に又は集合的に本出願の明細書に示され又は指示される部分、要素及び特徴と、これらのいずれか2つ以上の部分、要素又は特徴の何らか又は全ての組合せであると言ってよく、本発明に関連ある技術分野において周知の等値を有する特定の整数が本明細書に記載される場合は、こうした周知の等値は、個別に提示される場合と同様に本明細書に援用されたものと見なされる。
【0017】
本発明は、上述のこと並びに以下に単なる例として示される想定されるいくつかの構造に存在する。
【0018】
1つの態様において、本発明は、広義には、マスクと、ヘッドギアと、調節ラインと、調節ラインとマスクの上側部分との間の上側スライド接続部と、調節ラインとマスクの下側部分との間の下側スライド接続部と、調節ラインとヘッドギアの左側部分との間の左側スライド接続部と、調節ラインとヘッドギアの右側部分との間の右側スライド接続部とを具備し、これにより調節ラインはヘッドギアの左側部分とマスクの上側及び下側部分との間及びヘッドギアの右側部分とマスクの上側及び下側部分との間における接続部を形成し、調節ラインの少なくとも第1の部分を調節ラインの第2の部分に対して固定(直接的に若しくは間接的に)して、第1及び第2の部分間の調節ラインの経路に上側、下側、左側及び右側接続部を含ませて調節ラインの経路の長さを変化させることができるようにするクラスプ(clasp)、クランプ(clamp)又はその他の調節機構を具備するインタフェースにあると言うことができる。
【0019】
また他の態様によれば、調節ラインは、マスクの上側部分又はマスクの下側部分のいずれか若しくは両方の外側を横切って通る。
【0020】
更に他の態様によれば、ヘッドギアは上左側取付け部分及び下左側取付け部分と、上右側取付け部分及び下右側取付け部分とを含み、調節ラインはヘッドギアの左側及び右側部分の各々の上側及び下側取付け部分を通過する。
【0021】
また別の態様によれば、インタフェースは取付けラインと下側マスク部分との間において少なくとも2つのスライド接続部を含む。
【0022】
更に別の態様によれば、インタフェースは取付けラインと上側マスク部分との間において少なくとも2つのスライド接続部を含む。
【0023】
また他の態様によれば、インタフェースは、調節ラインが閉ループを形成するように2点で調節ラインを保持するクラスプを含む。
【0024】
また別の態様によれば、調節ラインの第1及び第2の部分はクラスプを通過し、クラスプを介していずれか又は両方の端部を引くことによりループの長さが短縮され、マスク及びヘッドギアとのスライド接続部はこの引締めをループ全体に分配する。
【0025】
更に他の態様によれば、クラスプ、クランプ又は調節機構は、調節ラインに閾値を超える張力が加わると、調節ラインを解放するか、又は調節ラインが自身を通り抜けることを可能にする(閾値は調節ラインに加わる張力を有用な張力範囲に制限する)。
【0026】
更に別の態様によれば、マスク上のスライド接続部の位置は、マスクの上側スライド接続部より上の突出部分とマスクの下側スライド接続部より下の突出部分とが実質的に等しくなるような位置である。
【0027】
また他の態様によれば、調節ラインは実質的に非伸張性である。
【0028】
更に他の態様によれば、マスクに関連ある1つ以上のこれらのスライド接続部は調節ラインと係合するプーリホイールを含む。
【0029】
また別の態様によれば、ヘッドギアに関連ある1つ以上のスライド接続部は調節ラインと係合するプーリホイールを含む。
【0030】
更に別の態様によれば、調節ラインは閉ループを可能にしているチューブに全体的または部分的に囲まれている。
【0031】
更に別の態様によれば、クラスプ、クランプ又はその他の調節機構は:
a)ジャムクリート
b)カムクリート
c)線形ラチェット式スキー用ビンディング形の機構
d)ラチェット及び解除調節ホイール
である。
【0032】
また他の態様において、本発明は、広義には、患者にガスを供給するインタフェースにおいて、内面において使用者の顔面に接触するシールを具備し、このシールは着用者の顔面に口と鼻との周りにおいて接触し、インタフェースの外面は人間の顔面の少なくとも1つの特徴を実質的に再現したものを含むように整形される、患者にガスを供給するインタフェースであると言ってよい。
【0033】
更に他の態様において、インタフェースの外面は人間の鼻を再現したものを含む。
【0034】
また別の態様において、シールは軟質のコンプライアントな(形状追従性を有する)材料により形成されるシール部材の一部分であり、インタフェースは、インタフェースの外面の一部分を形成するより剛性の支持部材を含み、人間の顔の特徴の少なくとも1つの複製がシール部材の一部分として形成される。
【0035】
更に別の態様によれば、支持部材は可撓性であり、支持部材の周辺部は着用者の顔の輪郭に沿うことができる。
【0036】
また他の態様によれば、シール部材は、使用者の顔面に接触するシール部分と、支持部材の内面に接触する外囲部分とを含み、支持部材の内面に接触するシール部分は、呼吸用ガスを供給することができるだけの十分な孔部を除いて全面的に又は実質的に完全である。
【0037】
また別の態様によれば、インタフェースはシール部材の孔部に密着するコネクタを含む。
【0038】
更に他の態様によれば、支持部材の外周縁部は、スカラップ部又は切欠部を含み、シール部材の人間の顔面の特徴は、この切欠部を介して突出する。
【0039】
更に別の態様によれば、シール部材は、シール部材の実質的に周縁部全体にわたって半径方向内方に突出する密着フラップを含み、この密着フラップは更にまた、インタフェースの装着時に最初に顔面に接触する。
【0040】
また他の態様によれば、支持部材は、使用者上のインタフェースを支持するヘッドギア用取付け部を含む。
【0041】
また別の態様によれば、支持部材は手で保持するために人間工学的に輪郭設定される。
【0042】
更に他の態様によれば、顔の特徴は人間の鼻を具備し、シール部材は着用者の鼻と頬上部と頬骨とを覆って延在し、支持部材の上側周縁部は鼻の下において横方向に上唇を横切って各鼻腔の傍を上方に向かって、各側において鼻腔の高さより上で横方向に鼻から離れるように延在する。
【0043】
更に別の態様によれば、支持体はシール部材の孔部と実質的に整合する開口を含み、この支持体の開口はシール部材の開口より大きい。
【0044】
また他の態様によれば、支持部材及びシール部材の各々は顎部分を含み、少なくともシール部材の顎部分は使用時に着用者の顎の下に延在する。
【0045】
また別の態様によれば、シールは膨張シールである。
【0046】
更に別の態様によれば、剛性の支持部材は、人間の鼻を再現したものの鼻梁領域において少なくとも部分的にシール部分の上に延在する架橋部分を含む。
【0047】
また他の態様によれば、インタフェースは更に、呼吸管接続ポートを含み、この接続ポートはシール部材に取り付けられる。
【0048】
また別の態様において、本発明は、広義には、使用者の鼻と口とを覆うと共に使用者の顔面に接触して少なくとも密封縁部に沿って密着するように構成された軟質のコンプライアントなシール部材と、このシール部材に隣接すると共にシール部材を支持する支持部材とを具備する呼吸マスクであって、少なくとも支持部材の外側部分は、少なくとも支持部材の内側部分に対して移動可能な複数の変位可能部材を具備する呼吸マスクにあると言うことができる。
【0049】
また他の態様によれば、支持部材の内側部分はシールに接続されるハブ部分を含み、変位可能部材は、内側のハブからシール部材の周辺の密封縁部の方へと外方に分岐するように片持ちにされる。
【0050】
また別の態様によれば、変位可能部材は互いに移動可能である。
【0051】
更に他の態様によれば、呼吸マスクは、支持部材又はシール部材に隣接すると共に支持部材又はシール部材を支持するまた他の支持部材を含み、少なくともこのまた他の支持部材の外側部分は、少なくともこのまた他の支持部材の内側部分に対して移動可能な複数の変位可能部材を具備する。
【0052】
更に別の態様によれば、変位可能部材の移動は、主に、呼吸マスクを着用している時の使用者の顔面に対して前から後ろへと向かう方向である。
【0053】
また他の態様によれば、1つ以上の変位可能部材は更に、変位可能部材の自由端部に関連ある1つ以上のコンプライアントな部材含む。
【0054】
また別の態様によれば、コンプライアントな部材は圧縮可能なフープである。
【0055】
更に他の態様によれば、コンプライアントな部材は連接状の弾性ビームである。
【0056】
更に別の態様によれば、コンプライアントな部材は圧縮可能なフォーム材料からなる。
【0057】
また他の態様によれば、支持部材又はまた他の支持部材は、この支持部材又はまた他の支持部材をある方向に実質的に補強する半剛性補強リブを含む。
【0058】
また別の態様によれば、補強リブ及び上述の方向は、マスクを着用している時の使用者の正中矢状面と実質的に整合する。
【0059】
また他の態様において、本発明は、広義には、実質的に本明細書においていずれか1つ以上の図面を参照して説明するインタフェースであると言ってよい。
【0060】
また別の態様において、本発明は、広義には、マスクと、ヘッドギアと、このマスクとヘッドギアとの間の接続部であって、平行に配置される弾性の伸張性要素と実質的に非伸張性の要素とを具備する接続部と、接続部の非伸張性要素の長さを調節するように作用する調節機構とを具備するインタフェースにあると言うことができる。
【0061】
更に他の態様によれば、接続部は、使用時においてマスクの第1の側から使用者の頭部の後ろを周ってマスクの第2の側まで延在するように構成される。
【0062】
更に別の態様によれば、マスクは左側と右側とを有し、ヘッドギアは左側と右側とを有し、接続部は、マスクの左側とヘッドギアの左側との間の第1の接続部と、マスクの右側とヘッドギアの右側との間の第2の接続部とを有し、第1及び第2の接続部は、平行に配置される弾性の伸張性要素及び実質的に非伸張性の要素と、第1の接続部の非伸張性要素の長さを調節するように作用可能な第1の調節機構と、第2の接続部の非伸張性要素の長さを調節するように作用可能な第2の調節機構とを具備する。
【0063】
また他の態様によれば、インタフェースは更に、マスクの左側とヘッドギアの左側との間の第3の接続部と、マスクの右側とヘッドギアの右側との間の第4の接続部とを具備し、第3及び第4の接続部は、平行に配置される弾性の伸張性要素及び実質的に非伸張性の要素と、第3の接続部の非伸張性要素の長さを調節するように作用する第3の調節機構と、第4の接続部の非伸張性要素の長さを調節するように作用する第4の調節機構とを具備する。
【0064】
また別の態様によれば、第1及び第2の接続部はマスクの上側部分とヘッドギアの上側部分との間を接続し、第3及び第4の接続部はマスクの下側部分とヘッドギアの下側部分との間を接続する。
【0065】
更に他の態様によれば、第1及び第2の調節機構は、第1及び第2の接続部の非伸張性要素の長さを調節するように作用する。
【0066】
更に別の態様によれば、第3及び第4の調節機構は、第3及び第4の接続部の非伸張性要素の長さを調節するように作用する。
【0067】
また他の態様によれば、全ての調節機構はマスク上に配置される。
【0068】
また別の態様によれば、全ての調節機構は、少なくとも2つのモードを有するロック式であり、第1のロックモードでは非伸張性要素の長さを伸ばすことはできず、第2のロック解除モードでは非伸張性要素の長さを伸ばすことができる。
【0069】
更に他の態様によれば、ロック機構がロックモードにある時に非伸張性要素の長さを短くすることができる。
【0070】
更に別の態様によれば、第1及び第2の接続部は使用者の頭の側部の周りを通ると共に使用者の耳の上に配置され、第3及び第4の接続部は使用者の頭の側部の周りを通ると共に使用者の耳の下に配置される。
【0071】
また他の態様によれば、各々の調節機構は、下記の内の1つである:
a.摩擦クラスプ
b.コキ
c.バックル
d.ラチェット
e.クランプ
f.カムクリート。
【0072】
また他の態様によれば、第1の接続部の弾性要素及び非伸張性要素は、実質的に合致する取付け位置においてマスクに取り付けられ、第2の接続部の弾性要素及び非伸張要素は、実質的に合致する取付け位置においてマスクに取り付けられる。
【0073】
また別の態様によれば、第3の接続部の弾性要素及び非伸張性要素は、実質的に合致する取付け位置においてマスクに取り付けられ、第4の接続部の弾性要素及び非伸張要素は、実質的に合致する取付け位置においてマスクに取り付けられる。
【0074】
更に他の態様によれば、第1の接続部の弾性要素及び非伸張性要素は、実質的に合致する取付け位置においてヘッドギアに取り付けられ、第2の接続部の弾性要素及び非伸張要素は、実質的に合致する取付け位置においてヘッドギアに取り付けられる。
【0075】
更に別の態様によれば、第3の接続部の弾性要素及び非伸張性要素は、実質的に合致する取付け位置においてヘッドギアに取り付けられ、第4の接続部の弾性要素及び非伸張要素は、実質的に合致する取付け位置においてヘッドギアに取り付けられる。
【0076】
また他の態様によれば、接続部の弾性の伸張性要素の長さは、その非伸長時の長さの約1.5倍~3倍に伸長可能である。
【0077】
また別の態様によれば、接続部の弾性の伸張性要素の長さは、その非伸長時の長さの約2倍に伸長可能である。
【0078】
更に他の態様によれば、接続部の弾性の伸張性要素の長さは、材料を伸長させる方法以外の方法では調節することができない。
【0079】
更に別の態様によれば、接続部の弾性の伸張性要素により得られる保持力は、装着時にマスクを使用者の顔面上に十分に維持することができる程度である。
【0080】
また他の態様によれば、接続部の弾性の伸張性要素により得られる保持力は、装着時にマスクの密着を十分に助けることができる程度である。
【0081】
また別の態様によれば、マスクは、下記の内の1つである:
g.鼻マスク
h.口マスク
i.口鼻マスク(フルフェイス)
j.鼻ピロー
k.鼻プロングを含む口マスク
l.鼻カニューレ。
【0082】
更に他の態様によれば、それぞれの各接続部の弾性要素及び非伸張性要素は、一方が他方の内側に入って一体化される。
【0083】
更に別の態様によれば、各接続部の弾性要素は、自身の実質的な長さにわたって延在する内部通路を含み、それぞれの非伸張性要素は、この通路内に配置される。
【0084】
また他の態様によれば、それぞれの各接続部の非伸張性要素は更にまた、自身の長さに沿った圧縮力に耐えるように構成される。
【0085】
また別の態様において、本発明は、広義には、マスクと、ヘッドギアと、マスクとヘッドギアとの間の接続部であって、接続部の長さを調節することができる第1の調節可能モードと接続部の長さを実質的に増加させることができない第2の固定モードとを有する接続部とを具備するインタフェースにあると言うことができる。
【0086】
更に他の態様によれば、この接続部は右側接続部と左側接続部とを具備し、右側接続部及び左側接続部の各々の長さは第1のモードにおいて調節可能であり、第2の固定モードでは右側接続部及び左側接続部の長さを実質的に増加させることはできない。
【0087】
更に別の態様によれば、接続部の長さの調節は、少なくとも2つのモードを有するロック機構によって行われ、第1のモードでは接続部の長さを伸ばすことはできず、第2のモードにおいて接続部の長さを伸ばすことができる。
【0088】
また他の態様によれば、ロック機構がロックモードにある時に接続部の長さを短くすることができる。
【0089】
また別の態様によれば、各接続部は、第1のロックモードにおいて保持力を発揮してマスクを着用者の顔面上に保持するように構成される弾性の伸張要素を具備する。
【0090】
更に他の態様によれば、各接続部は、第2のロック解除モードにおいて保持力を発揮してマスクを着用者の顔面上に保持するように構成される弾性の伸張要素を具備する。
【0091】
更に別の態様によれば、ヘッドギアは接続部の弾性要素より低い伸張性を有する。
【0092】
また他の態様によれば、ヘッドギアは接続部より低い伸張性を有する。
【0093】
また別の態様において、本発明は、広義には、マスクと共に用いられるヘッドギアであって、使用者の頭の後ろに係合するように構成されると共に下後側部分と左側部分と右側部分と左及び右上側弓状部分とを具備する第1のストラップを具備し、下後側部分は使用時に使用者の首上において実質的に外後頭隆起の下に配置されるようになされ、左側及び右側部分の各々は下後側部分のそれぞれの側から患者の耳及び乳様突起の後において上外側に延在し、左及び右上側部分の各々は、それぞれの耳の上に延在すると共に使用者の耳の前方に延在して左及び右上側終端部分を形成する弓状部を具備し、左側弓状部の頂点領域から右側弓状部の頂点領域まで延在する第2のストラップを具備し、下後側部分のそれぞれの側から使用者の耳の前方及び下に延在する第3及び第4の各ストラップを具備し、それぞれの上側終端部分から延在する第5及び第6の各ストラップとを具備する、マスクと共に用いられるヘッドギアにあると言うことができる。
【0094】
更に他の態様によれば、第5及び第6のストラップはそれぞれの側の上側終端部分に接続されて、第5及び第6の各々のストラップの全体的な角度配向を略矢状面内で移動させることができるようになっている。
【0095】
更に別の態様によれば、この略矢状面は、患者の頭部のそれぞれの側面に対応する。
【0096】
また他の態様によれば、第5及び第6のストラップとそれぞれの側の上側終端部分との間における接続部は、略横方向に延在する軸の周りにおいて枢動する。
【0097】
また別の態様によれば、第2のストラップは互いに解除可能に接合される左手側部分と右手側部分とを具備する。
【0098】
更に他の態様によれば、第2のストラップは長さ調節可能である。
【0099】
更に別の態様によれば、第1及び第2のストラップは単一の扁平部材により形成される。
【0100】
また他の態様によれば、この扁平部材は、第2のストラップの左及び右手側部分が互いに接合されると使用者の頭部に係合するようになされた三次元ヘッドギア形状をとる。
【0101】
また別の態様によれば、第1、第2、第3及び第4のストラップは単一の扁平部材により形成される。
【0102】
更に他の態様によれば、第3及び第4のストラップは、この単一の扁平部材によって形成されない。
【0103】
更に別の態様によれば、第5及び第6のストラップは、この単一の扁平部材によって形成されない。
【0104】
また他の態様によれば、第2のストラップは単一の材料によって構成され、この材料は軟質ではない。
【0105】
また別の態様によれば、第1及び第2のストラップは、自己支持性且つ弾力性の材料からなる。
【0106】
更に他の態様によれば、第3及び第4のストラップは、自己支持性且つ弾力性の材料からなる。
【0107】
更に別の態様によれば、第5及び第6のストラップは、自己支持性且つ弾力性の材料からなる。
【0108】
また他の態様によれば、第3及び第4のストラップは、軟質材料からなる。
【0109】
また別の態様によれば、第5及び第6のストラップは、軟質材料からなる。
【0110】
更に他の態様によれば、左側及び右側弓状部分は単一の弾力性材料によって構成される。
【0111】
更に別の態様によれば、第2、第3、第4、第5及び第6のストラップの幅は10mm~30mmの範囲内である。
【0112】
また他の態様によれば、第1のストラップの幅は、下後側部分を除いて、10mm~30mmの範囲内である。
【0113】
また別の態様によれば、第1のストラップの下後側部分における幅は、10mm~50mmの範囲内である。
【0114】
更に他の態様によれば、第1、第2、第3、第4、第5及び第6のストラップの厚さは0.1mm~3mmの範囲内である。
【0115】
更に別の態様によれば、ストラップは以下の1つの材料層を有する積層体である:
m.ポリプロピレン(PP)不織布
n.ポリエチレン(PE)不織布
o.サントプレーン/ポリプロピレン混合体。
【0116】
また他の態様によれば、第3及び第4のストラップは、ストラップ幅が小さくなった領域を含む。
【0117】
また別の態様によれば、幅が小さくなった領域は下後側部分に隣接する。
【0118】
更に他の態様によれば、第5及び第6のストラップは、ストラップ幅が小さくなった領域を含む。
【0119】
更に別の態様によれば、第5及び第6のストラップの幅が小さくなった領域は上側終端部分に隣接する。
【0120】
また他の態様によれば、下記のいずれか1つ以上は、に加えて少なくとも1つの軟質材料を具備する積層構造を含む:
p.第1のストラップ
q.第3又は第4のストラップ
r.第5又は第6のストラップ。
【0121】
また別の態様によれば、本発明は、広義には、
ガスキャビティを形成すると共に左側と右側とを有するマスクと、
それぞれ自身の左側とマスクの左側との間及び自身の右側とマスクの右側との間を接続する左側及び右側ストラップを含むヘッドギアと、を具備するインタフェースであって、 マスクは左側ストラップに取り付けられる第1の分離可能接続部と、右側ストラップに取り付けられる第2の分離可能接続部とを含み、
マスクの前側の外面上に配置されない分離可能接続部は他にはない、
ものであるということができる。
【0122】
更に他の態様によれば、ヘッドギアは、それぞれ自身の左側とマスクの左側との間及び自身の右側とマスクの右側との間を接続するまた他の左側及び右側ストラップを含み、
【0123】
マスクは更に、このまた他の左側ストラップに取り付けられる第3の分離可能接続部と、このまた他の右側ストラップに取り付けられる第4の分離可能接続部とを含む。
【0124】
更に別の態様によれば、
各分離可能接続部は、マスクの前側の外面上に配置される突起を具備し、
左側及び右側の各ストラップは、接続を完了するためにそれぞれの突起の上に嵌着する大きさとされる少なくとも1つの孔部を含む。
【0125】
また他の態様によれば、各突起はマスク表面から離れる方向に延在すると共に、突起の遠位端において孔部への挿通を阻止するように作用するフランジを含む。
【0126】
また別の態様において、本発明は、広義には、内面を有するガスキャビティと、着用者の顔面に接触してガスキャビティを実質的に密封するシールと、ガス空間内に配置される仕切り壁によって少なくとも部分的に形成されると共にガスを受けるガス入口ポートと連通するプレナム空間と、それを通ってガスがプレナム空間からガスキャビティへと流れるディフューザポート出口とを具備し、ディフューザポート出口は少なくとも部分的に仕切り壁の周縁部分により形成されるマスク組立体にあると言うことができる。
【0127】
更に他の態様によれば、ディフューザポートは実質的に仕切り壁の周縁部全体の周りに延在する。
【0128】
更に別の態様によれば、ディフューザポートは10mm未満の幅である。
【0129】
また他の態様によれば、ディフューザポートは3~6mmの範囲内の幅である。
【0130】
また別の態様によれば、仕切り壁は、入口ポートからのガス流を偏向させて、シールの少なくとも一部分に近接する仕切り壁の周縁部の周りにおいてガスキャビティに流入させるように構成される。
【0131】
更に他の態様によれば、マスクは更に1つ以上の圧力監視ポートを具備する。
【0132】
更に別の態様によれば、圧力監視ポートは、マスク本体上に配置されると共に、プレナムチャンバを通って延在し、且つガスキャビティと連通する。
【0133】
また他の態様によれば、シールは膨張シールである。
【0134】
また別の態様によれば、ガス入口ポートは、取り付けられる呼吸管に接続される短尺の高可撓性の管を有する。
【0135】
更に他の態様によれば、ディフューザポートの全断面積はガス入口ポートの面積の少なくとも2倍である。
【0136】
更に別の態様によれば、ディフューザポートは実質的に仕切り壁の周縁部全体の周りに延在する。
【0137】
また他の態様によれば、ディフューザポートは実質的に仕切り壁の周縁部全体の周りに延在する連続開口ではなく、仕切り壁周辺部に沿って閉鎖された領域を含む。
【0138】
また別の態様によれば、仕切り壁は自身を貫通する1つ以上の孔部を含む。
【0139】
更に他の態様によれば、マスクは、仕切り壁の中央領域から略半径方向に延在すると共に仕切り壁又はマスクキャビティ壁から突出する1つ以上の流れ誘導リブを含む。
【0140】
更に別の態様において、本発明は、広義には、内面を有するガスキャビティと、着用者の顔に接触してガスキャビティを実質的に密封するシールと、呼吸ガスを着用者の顔面に対して略接線方向の旋風状パターンで回旋させる流れ影響構造と、この流れ影響構造に流体接続されるガス入口ポートとを具備するマスク組立体にあると言うことができる。
【0141】
また他の態様によれば、流れ影響構造は、マスクキャビティ壁に対して実質的に垂直に延在する実質的に円筒状の壁と、この円筒壁と同軸的に延在すると共に円筒壁と自身との間に略環状の回旋空間を形成する実質的に円錐状の壁とを具備する。
【0142】
また別の態様によれば、環状回旋空間は、マスクキャビティに開口すると共に、マスクキャビティ壁付近において狭くなる。
【0143】
更に他の態様によれば、ガス入口ポートは環状回旋空間の中央から偏移すると共に、ガス流を環状回旋空間内へと略接線方向に誘導するように構成される。
【0144】
更に別の態様によれば、上述のマスク組立体は更に窒息防止弁を具備する。
【0145】
また他の態様によれば、上述のマスク組立体は更に1つ以上の圧力監視ポートを具備する。
【0146】
本発明の1つの態様において、呼吸用インタフェースは、使用者の鼻と口とを覆うように構成された軟質のコンプライアントな膨張シール部材を具備する。このシール部材は、使用者の顔面に接触するように構成された密封部分を具備する。密封部分は、巻き返された周縁部とこの周縁部から内方に延在する密封フランジとを具備する。密封フランジは、一方の端部が巻き返された周縁部に接続される延長面を具備する。支持部材がシール部材に固着される。この支持部材はシール部材より剛性である。支持部材は支持部材周縁部を具備する。密封部分の巻き返された周縁部は支持部材周縁部を超えて外方に延在する。略垂直な正中面がインタフェースを右半分と左半分とに分割する。インタフェースは、略垂直な正中面の周りにおいて、インタフェースを通って延在する任意の略水平な平面の周りにおけるより可撓性である。
【0147】
また他の態様によれば、密封部分の巻き返された周縁部は、支持部材周縁部の全長にわたって支持部材周縁部を超えて延在する。
【0148】
また別の態様によれば、密封フランジはシール部材の巻き返された周縁部の実質的に全体から半径方向内方に延在する。
【0149】
更に他の態様によれば、シール部材は更に、シール部材の巻き返された周縁部に近接して密封部分に接続される外囲部分を具備し、この外囲部分は支持部材に固着される。
【0150】
更に別の態様によれば、シール部材の密封部分はシール部材の外囲部分より実質的に可撓性である。
【0151】
また他の態様によれば、シール部材の巻き返された周縁部は平面図において複数の半径R1によって画定され、巻き返された周縁部は断面において厚さt及び内側半径R2を具備し、略水平な平面がヘッドギアの第1の上側接続部とヘッドギアの第2の上側接続部とを通って延在し、シール部材の巻き返された周縁部の上側部分は、この略水平な平面より上に形成され、周縁部の上側部分全体が、(1)4≦(R2/t)≦7と(2)(R1/R2)<10とを満たす。
【0152】
また別の態様によれば、第1の接触点は、密封フランジの少なくとも一部分に沿って配置されて、密封フランジが巻き返された周縁部より先に使用者の顔面に接触するように構成される。
【0153】
更に他の態様によれば、支持部材はヘッドギア組立体の取付け部とシール部材との間に配置されてヘッドギア組立体からシール部材に力を伝達することができるようになっている複数の個別変位可能部材を具備する。
【0154】
本発明の1つの態様において、呼吸用インタフェースは、使用者の鼻と口とを覆うように構成された軟質のコンプライアントな膨張シール部材を具備する。このシール部材は、使用者の顔面に接触するように構成された密封部分を具備する。密封部分は、巻き返された周縁部とこの周縁部から内方に延在する密封フランジとを具備する。密封フランジは、一方の端部が巻き返された周縁部に接続される延長面を具備する。支持部材がシール部材に固着される。この支持部材はシール部材より剛性である。インタフェースはチャンバを形成する。空気流入口がチャンバ内へと延在し、チャンバ内には空気流入口に近接して流れ偏向部が配置される。この流れ偏向部は、空気流入口からの空気流の少なくとも一部分をインタフェース内において半径方向に拡散させる。
【0155】
また他の態様において、拡散された空気流は密封フランジの少なくとも一部分の上において半径方向に導かれる。
【0156】
また別の態様において、空気流入口は垂直に対して約0°~約70°の範囲内の角度をなしてインタフェース内へと延在する。
【0157】
更に他の態様によれば、流れ偏向部は仕切り壁を具備する。
【0158】
更に別の態様によれば、流れ偏向部は回旋構造を具備する。
【0159】
また他の態様によれば、インタフェースは、インタフェースの支持部材に接続されるヘッドギア組立体と組み合わされる。
【0160】
本発明の1つの態様において、ヘッドギア組立体は、呼吸用インタフェースを頭部に固着するために用いられる。ヘッドギア組立体は第1のストラップ部分を具備する。この第1のストラップ部分は下後側領域を具備する。下後側領域は後頭隆起の上又は下に配置されるように構成される。下後側領域は、第1の側部領域及び第2の側部領域へと前方及び上方に延在する。第1の側部領域は下後側領域から上外側に延在する。第2の側部領域は下後側領域から上外側に延在する。第1及び第2の各々の側部領域は乳様突起の後ろ及び耳の上に延在するように構成される。第1の側部領域は第1の弓状部分を具備し、第2の側部領域は第2の弓状部分を具備する。第1の弓状部分と第2の弓状部分とは頂部ストラップにより接続される。頂部ストラップは耳の上から頭部をわたって延在するように構成される。第1の終端部分は第1の弓状部分から前方に延在し、第2の終端部分は第2の弓状部分から前方に延在する。
【0161】
また他の態様によれば、頂部ストラップは頭冠の前方に位置するようになされ、下後側領域は頭冠の下に位置するようになされて、頭冠が頂部ストラップと下後側領域との間において捕捉されるようになっている。
【0162】
また別の態様によれば、第1のストラップ部分の少なくとも一部分は半剛性である。
【0163】
更に他の態様によれば、頂部ストラップは第1の部分と第2の部分とを具備し、第1の部分と第2の部分とはコネクタにより互いに取り付けられる。
【0164】
更に別の態様によれば、ヘッドギア組立体は第1の非弾性接続ストラップと第2の非弾性接続ストラップとを含み、第1の非弾性接続ストラップ及び第2の非弾性接続ストラップはインタフェースに固着可能である。
【0165】
また他の態様によれば、ヘッドギア組立体は第1の弾性接続ストラップと第2の弾性接続ストラップとを含み、第1の弾性接続ストラップ及び第2の弾性接続ストラップはインタフェースに固着可能である。
【0166】
また別の態様によれば、第1の非弾性接続ストラップと第1の弾性接続ストラップとは、第1の終端部分とインタフェースとの間において平行に延在し、第2の非弾性接続ストラップと第2の弾性接続ストラップとは、第2の終端部分とインタフェースとの間において平行に延在する。
【0167】
更に他の態様によれば、ヘッドギア組立体は第3の非弾性接続ストラップと第4の非弾性接続ストラップとを具備し、第3の非弾性接続ストラップ及び第4の非弾性接続ストラップは第1のストラップ部分とインタフェースとの間において延在する。
【0168】
更に別の態様によれば、ヘッドギア組立体は第1のストラップ部分から離れる方向に延在する第1の下部接続ストラップと第2の下部接続ストラップとを含み、第1及び第2の下部接続ストラップの少なくとも一部分は半剛性であり、そのために第1及び第2の下部接続ストラップは、下後側領域が頭部上に配置される時に横方向外方又は前方に出て来て、第1の下部接続ストラップと第2の下部接続ストラップとがヘッドギア組立体を頭部上に配置する時に頭部の後ろでもつれる可能性を低下させるように構成される。
【0169】
また別の態様によれば、第1の下部接続ストラップ及び第2の下部接続ストラップは下後側領域に接続され、半剛性部分は第1の下部接続ストラップ及び第2の下部接続ストラップと下後側領域との間の接続部に近接する。
【0170】
更に他の態様によれば、ヘッドギア組立体はインタフェースと組み合わされ、このインタフェースは支持部材とシール部材とを具備し、シール部材は支持部材に接続され、ヘッドギア組立体は支持部材に接続される。
【0171】
更に別の態様によれば、調節ラインは、自身とインタフェースの上側部分との間において上側スライド接続部を備える。下側スライド接続部は、調節ラインとインタフェースの下側部分との間にある。左側スライド接続部は、調節ラインとヘッドギア組立体の左側部分との間にある。右側接続部は、調節ラインとヘッドギア組立体の右側部分との間にある。調節ラインは、上側スライド接続部と左側スライド接続部と右側スライド接続部と下側スライド接続部とを接続する。
【0172】
また他の態様によれば、調節機構が調節ラインに取り付けられて調節ラインの長さを変更することができるようになっており、これによりヘッドギア組立体とインタフェースとの組立体における張力を変化させることができる。
【0173】
また別の態様によれば、調節機構は調節ラインの長さを変化させて、インタフェースとヘッドギア組立体との間において所定のレベルの張力をもたらす。
【0174】
更に他の態様によれば、インタフェースは張力調整要素を用いてヘッドギア組立体に接続され、この張力調整要素はロック要素と協働して、ヘッドギア組立体及びインタフェースの装着時に張力調整要素がインタフェースとヘッドギア組立体との間における弾性接続部となる一方で、ロック要素はヘッドギア組立体及びインタフェースの装着後にインタフェースとヘッドギア組立体との間において非弾性接続部を創出するようになっている。
【0175】
更に別の態様によれば、張力調整要素は、調節可能な長さを有するラインを具備し、ロック要素はクラスプを具備する。
【0176】
また他の態様によれば、インタフェースの支持部材は、ヘッドギア組立体用取付け部を具備する。
【0177】
また別の態様によれば、ヘッドギア組立体は第1の接続点においてインタフェースに接続され、ヘッドギア組立体は、ヘッドギア組立体の張力調節が第1の接続点又はその前方で行われるように構成される。
【0178】
更に他の態様によれば、ヘッドギア組立体とインタフェースとの締結は、第1の接続点からヘッドギア組立体の方へと折り返されることにより張力を創出するストラップによらない。
【0179】
更に別の態様によれば、第1の接続点はポストを具備し、ヘッドギア組立体は、このポストと係合する少なくとも1つの対応する孔部を具備する。
【0180】
本発明の1つの態様において、ヘッドギア組立体が移動可能に且つ弾性的にインタフェースの上側部分に接続されるインタフェース及びヘッドギア組立体を頭部に固着する方法であって、第1の手を用いてインタフェースを顔面上に配置する段階と、第2の手を用いてヘッドギア組立体の後側部分を把持すると共にヘッドギア組立体の後側部分を頭部の上に持ち上げる段階と、ヘッドギア組立体の後側部分を下方に引いて頭部の後ろにかぶせて最終的にヘッドギア組立体の頂部ストラップを頭部の頂部上に着座させる段階と、第2の手からヘッドギア組立体を放すと共に第1の手からインタフェースを放して、弾性的に接続されたヘッドギア組立体とインタフェースとが第1の手又は第2の手により保持されなくても実質的に正位置に維持されるようにする段階と、非弾性の下部ストラップをインタフェースに固着すると共に非弾性の上部ストラップをインタフェースに固着して、インタフェースとヘッドギア組立体とが非弾性的に接続されるようにする段階とを具備する。
【0181】
また他の態様によれば、弾性要素がヘッドギア組立体とインタフェース組立体との間に延在してヘッドギア組立体とインタフェースとの間における弾性接続部となり、上記の方法は更に、インタフェースの上側部分とヘッドギア組立体との間に弾性要素を有する状態でインタフェースを配向して、ヘッドギア組立体とインタフェースとが顔面に対して正しく配向されるようにする段階を具備する。
【0182】
また別の態様によれば、インタフェースは、内方に延在するフランジを有するシールを具備し、このフランジは、顎を受けるように構成された凹部を具備し、上記の方法は更に、顎を凹部内に配置しながら第1の手を用いてインタフェースを顔面上に配置する段階を具備する。
【0183】
更に他の態様によれば、インタフェースを鼻と接触させる前に顎が凹部内に配置される。
【0184】
以下に、本発明を例証するためのものであって制限するためのものではない幾つかの好適な実施形態の図面を参照して、本発明の上記及びその他の特徴と態様と利点とを説明する。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【
図1】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成される患者用インタフェース及び/又はヘッドギアと併用されてよい加湿形気道陽圧システムのブロック線図である。
【
図2】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェース本体の側面図である。図に示す本体は、使用者に取り付けられて示されているが、ヘッドギア又は呼吸管は取り付けられていない。
【
図4】
図2のインタフェース本体のシール部材の外側の正面斜視図である。
【
図5】
図2のインタフェース本体のシール部材の内側の背面斜視図である。
【
図6】シール部材の巻返し及び注気の態様を示す、シール部材の一部分の略断面図である。
【
図7】シール部材の巻返しに関する特性を示すグラフである。
【
図8】シール部材のまた他の巻返し及び注気の態様を示す、シール部材の一部分の略断面図である。
【
図9】シール部材の予荷重に関する特性を示すグラフである。
【
図10】
図2のインタフェース本体の支持部材の外側の正面斜視図である。
【
図11】
図2のインタフェース本体の支持部材の内側の背面斜視図である。
【
図12】支持部材の可撓性とシール部材の可撓性との相互作用に関する特性を示すグラフである。
【
図13】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるヘッドギアを用いて使用者に装着される、一般に
図2のインタフェース本体の改変態様を含むまた他のインタフェースの正面斜視図である。この図に示すインタフェースは、呼吸管又は給気導管を取り付けられて示されている。
【
図14】使用者の顎の付近に位置するように構成された呼吸ガス入口ポートを自身の下側部分に配置された、本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェースの正面斜視図である。
【
図15】1つ以上の曲げモードで示される、本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェースの上面図である。
【
図16】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるまた他のインタフェースの正面斜視図である。このインタフェースは、一方の側のみに示すヘッドギア用ストラップを有して図示されている。
【
図17】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェースの正面斜視図である。このインタフェースは、ヘッドギア用ストラップを有さずに示されている。
【
図18】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成される支持部材を有する、
図16及び17のものと同様のインタフェースの一部分を示す正面図である。
【
図19】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成される支持部材を有する、
図16及び17のものと同様のインタフェースの一部分を示す正面図である。
【
図20】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成される支持部材を有する、
図16及び17のものと同様のインタフェースの一部分を示す正面図である。
【
図21】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成される支持部材を有するインタフェースの正面図である。
【
図22】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるヘッドギアを用いて使用者に装着される、
図2のインタフェース本体を含むインタフェースの正面斜視図である。図に示すインタフェースは、呼吸管又は給気導管を取り付けられて図示されている。
【
図23】エルボコネクタを用いてインタフェースに接続される呼吸管又は給気導管を有する、本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェース及びヘッドギアの側面図である。
【
図24】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェースの背面図である。図に示すインタフェースは、ディフューザポートを有するプレナム空間を具備する。
【
図25】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェースの背面斜視図である。図に示すインタフェースは、旋風状の流れを誘発する構成を具備する。
【
図26】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェース及びヘッドギアの側面図である。
【
図27】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるヘッドギアを用いて使用者に装着される、一般に
図2のインタフェース本体の改良形態を含むまた別のインタフェースの正面斜視図である。図に示すインタフェースは、呼吸管又は給気導管を取り付けられて示されている。
【
図28】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェース及びヘッドギアの側面図である。図に示すヘッドギアは、一体化された弾性及び非弾性ストラップを含む。
【
図29】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェース及びヘッドギアの側面図である。図に示すヘッドギアは、一体化された弾性及び非弾性ストラップと骨とを含む。
【
図30】本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるヘッドギアの斜視図である。
【
図31】使用者に装着されて示される、
図30のインタフェース及びヘッドギアの斜視図である。
【
図32】(a)~(d)は、本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェース及びヘッドギアの一連の装着段階を示す図である。
【
図33】(a)~(d)は、本発明のある一定の特徴と態様と利点とに従って整えられ且つ構成されるインタフェース及びヘッドギアの一連の装着段階を示す図である。
【
図34】第1のストラップ部分が接続ストラップの少なくとも一部分の上に延在して歪みの緩和と補強とを達成する、接続ストラップと
図30の第1のストラップ部分との接合部を示す図である。
【
図35】インタフェース及びヘッドギア組立体により皮膚に加えられる圧力とインタフェースからの漏れ量との関係を示すグラフである。
【
図36】圧力と漏れ量との関係を判断する試験の構成を示す略図である。
【発明を実施するための形態】
【0186】
[システム全体]
図1を参照すると、加湿形気道陽圧(PAP)システム100が示されており、患者P又はその他の使用者が、患者用インタフェース102を介して、加湿され且つ加圧されたガスを受けている。PAPシステム100は、持続性、可変性又は二相性気道陽圧法或いは何らかのその他の適切な形態の呼吸療法であってよい。一部の構成において、PAPシステム100は、病院用人工呼吸器又は何らかのその他の適切な形態の呼吸療法であるか、又はこれを含んでよい。一部の用途において、インタフェース102は、非加湿形PAPシステムと一緒に使用可能である。
【0187】
インタフェース102は、例えば加湿ガス輸送通路又は吸気用呼吸管104を形成する導管に接続される。導管104は、ガス又は導管の壁部を加熱して導管内における加湿ガスの結露を減らす加熱手段又はヒータ線(図示せず)を内蔵してよい。
【0188】
導管104は加湿チャンバ108の出口106に接続される。加湿チャンバ108は好ましくはある水量110を含む。加湿チャンバ108は好ましくは塑性材料により形成される。一部の構成において、加湿チャンバは、加湿器114の加熱板112と直接接触する高熱伝導性の底板(例えばアルミの底板等)を有する。
【0189】
加湿器114は適切な制御装置116を含む。制御装置116は何らかの適切な制御装置又は制御手段であってよく、電子制御装置であってよい。制御装置116は、関連の記憶装置に記憶されるコンピュータソフトウェア指令を実行するマイクロプロセッサベースの制御装置を具備してよい。
【0190】
制御装置116は、システム100の使用者が、例えば患者Pに供給されるガスの湿度及び/又は温度の所望のレベルを表す値(例えば事前設定値、入力値等)であるがこれらに制限されない値を設定することができる例えばユーザ入力118(例えばダイヤル、ボタン等)であるがこれに制限されない入力源からの入力を受ける。制御装置は更にまた、その他の入力源(例えばコネクタ124を介した温度及び/または流速センサ120、122、及び加熱板温度センサ126)からの入力も受けてよい。
【0191】
ユーザ入力118を用いて入力されるユーザ設定湿度及び/又は温度値及びその他の入力に呼応して、制御装置116は、加熱板112をいつ又はどのレベルまで付勢して加湿チャンバ108内の水量110を加熱するかを判断する。加湿チャンバ108内の水量110が加熱されると、水蒸気が加湿チャンバ108の容積内において水量110の表面より上に溜まり始める。
【0192】
この水蒸気は、ガス供給ブロワ128又はその他の適切なガス供給手段から供給されて入口130を介して加湿チャンバ108に流入するガス(例えば空気)流と共に加湿チャンバの出口106から流出する。患者の口から吐き出されるガスは、
図1では周囲環境に直接放出され、又は治療が人工呼吸器によって行われている場合には吐き出されたガスは呼気用呼吸管(図示せず)により人工呼吸器に戻される。
【0193】
ブロワ128は、ブロワ入口134を介して空気又はその他のガスを引き込む可変圧力調節装置、可変圧力調節手段又は可変速度ファン132を含む。可変速度ファン132の速度は、制御装置136に対する入力とユーザ入力138(例えばダイヤル、ボタン等)による圧力若しくはファン速度のユーザ設定値、所定値若しくは事前設定値とに呼応して、制御装置136により制御される。一部の構成では、制御装置136の機能は制御装置116により実行可能である。
【0194】
患者用インタエース102は一般に、マスクと関連のヘッドギアとを具備する。以下に説明する患者用インタフェースは、特に、患者が遅滞なく人工呼吸療法を必要とすることが多い病院又は救急医療環境において特に有用性が認められる。加えて、こうした環境の患者はしばしば人工呼吸療法を長期間にわたって、且つ往々にして連続的に受ける。従って、インタフェースは迅速に患者に装着することができるように設計されると共に、インタフェースは快適さを高めるように設計される。好ましくは、インタフェース及びヘッドギア組立体は、最初に約25秒未満で装着可能である一方で、インタフェースを介した送出圧力設定が約15cmH
2Oで約20リットル/分未満の漏れ量を達成する。加えて、
図35に示すように、インタフェース及びヘッドギア組立体は、好ましくは、インタフェースを介した送出圧力設定が約15cmH
2Oで約15リットル/分未満の漏れ量と約22.5mmHg未満の皮膚表面圧力とを達成する。22.5mmHgという皮膚表面圧力は、長い治療期間にわたって褥瘡ができる可能性を低下させる上で臨床的に重要であることがわかった。約15リットル/分という漏れ量は、加圧ガスを供給するために用いられる装置の安定性に直接関係することがわかった。一部の構成では、皮膚表面圧力を約18mmHg未満とし、漏れ量を約11リットル/分未満とすることができる。
【0195】
図36を参照して、皮膚表面圧力と漏れ量との測定方法を説明する。
図36に示すように、1つ以上のセンサ150を被験者Pの顔面上に配置することができる。センサ150はインタフェース102の接触領域に沿って配置することができる。好ましくは、センサ150は、治療中に褥瘡ができやすい領域(例えば頬骨から延在する領域、目の下の領域及び鼻梁を横切る領域)に沿って配置される。センサ150は圧力を検出するようになされている。一部の構成では、センサ150は圧力変換器である。好ましくは、センサ150は、約0mmHg~約100mmHgの動作範囲を有する圧力変換器である。更に好ましくは、センサ150は、約0mmHg~約50mmHgの動作範囲を有する圧力変換器である。センサ150は更にまた、好ましくは薄膜圧力変換器である。一部の構成では、センサ150は約0.5mm以下の厚さを有する。
【0196】
センサ50を被験者の顔面上に配置した状態でインタフェース102を被験者の顔面に当てて、インタフェースがセンサ150の上に載置されるようにする。圧力源128を作動させて、加圧ガスがインタフェース102を介して被験者に供給されるようにする。好ましくは、ガスは分析のために約15cmH2Oに加圧される。インタフェース102は、ヘッドギア組立体700によってもたらされる張力により正位置に固着される。好ましくは、ヘッドギア組立体700を用いて、インタフェースと被験者の顔面との間の目の領域における漏れを略皆無にまで減少させることができるだけの十分な張力を供給する。試験の目的上、システム内にはいかなるバイアス流穴も設けず(即ちシステム内のあらゆるバイアス流穴を塞いで)、あらゆる漏れが一般にインタフェースと被験者との間でのみ生じるようにする。
【0197】
インタフェースを張力により被験者の顔面に固着すると共に圧力源により約15cmH2Oの圧力でガスを供給しながら、被験者に息を止めさせて、加圧ガスがインタフェース102と被験者Pの顔面との間のシール部から漏れるようにする。流量計152を用いて漏れ量を測定することができる。流量計152を人工呼吸器又はその他の陽圧ガス源と一体化させてもよく、又は流量計152を別個の構成要素としてもよい。好ましくは、流量計152は約0リットル/分及び約200リットル/分の範囲内で動作可能である。
【0198】
加圧ガスが漏れている間に、インタフェースと被験者の顔面との間における漏れ量と圧力とを監視することができる。ピーク漏れ量とピーク圧力とを記録した後に、ヘッドギア組立体700によりもたらされる張力を調節する(例えば増加させる)ことができ、更に他の複数組のデータを得ることができる。複数のデータ点により、皮膚圧力と漏れ量とを反映するインタフェースの性能エンベロープを導出することができる。複数の被験者を用いて複数の示度を得ることができる。
【0199】
[露出状態の鼻マスク]
次に
図2を参照すると、図に示すインタフェース102は、一般にコンプライアントなシール部材202と支持部材204とを具備するインタフェース本体200を具備する。
図2において、インタフェース102は患者Pの上に乗せられて示されており、いかなるヘッドギア又は呼吸管接続部も取り付けられていない。以下に説明するように、インタフェース102の外観の少なくとも一部分は、好ましくは人間の顔面の少なくとも1つの特徴を実質的に再現したものの外観を呈する。一部の構成において、インタフェース102の外観の少なくとも一部分は、少なくとも人間の鼻を実質的に再現したものを具備する。
【0200】
図2に示すように、図のインタフェース102は、患者P又はその他の使用者の鼻Nと口との両方を覆うフルフェイスマスクである。インタフェース102は用途に従った大きさとされてよい。換言すれば、インタフェース102は、約2歳以上の様々な年齢を有する可能性がある患者又はその他の使用者による使用に対応するために、様々なサイズで提供されてよい。インタフェース102は、患者の顎から鼻梁までの寸法に基づくサイズとされてよい。好ましくは、インタフェースの各々の連続するサイズによって対応することができるサイズ範囲は、約3mm~約7mm重複する。更に好ましくは、サイズは約5mm重複する。例えば、顎から鼻梁までの寸法基準に基づいて、約110mmまでの寸法を有する人物を対象とする小又はサイズ1と;約105mm~約130mmの寸法を有する人物を対象とする中又はサイズ2と;約125mm~約145mmの寸法を有する人物を対象とする大又はサイズ3との3つのサイズのインタフェースを提供することができる。有利な点として、1つのサイズと次のサイズとの間で寸法範囲を重複させると、この重複範囲内に含まれる1人の患者が2つのサイズを使用することができるようになり、これによって患者がサイズ間の空所に入ってしまうことが確実に防がれる。その他の寸法設定技術を用いることもできる。
【0201】
インタフェース102の外面は、好ましくは手に馴染む形状をなし、これによってインタフェースを患者に装着する人物による操作を向上させることができる。好ましくは、図に示すインタフェース102の形状は、装着時に医療従事者がインタフェース102の顎領域においてインタフェース102を把持するように仕向ける。このような把持位置の結果として、インタフェース102の装着時に医療従事者の手が患者の目領域に接近することがなくなり、それによって装着時における患者の平静さを高めることができる。加えて、突出した鼻の再現は、患者に対する正しい配置を明確に示すと共に、正しく配置するための重要な視覚的且つ触覚的な手掛かりとなって、マスクの装着と使用とを非常に容易に且つ直覚的に行うことができるようになる。
【0202】
好ましくは、インタフェース102は、顔の輪郭に略沿う扁平な形状を有する。これにより、患者がマスクを意識することを最小限に抑えると共に、圧縮可能容積を最小限にすることができて、それによってインタフェース102を人工呼吸時の使用に特に適したものにすることができる。扁平な形状のインタフェース102は、好ましくは患者の視線にかからず、患者の周辺視覚に最小限の影響しか及ぼさない。加えて、先行技術と比べると、扁平な形状のインタフェース102は、インタフェースの内側に形成される圧縮可能容積を減少させる一方で再呼吸可能な二酸化炭素量も減少させ、これらの各々がより望ましいインタフェース構造とインタフェース性能の向上とをもたらす。
【0203】
[コンプライアントなシール部材]
次に
図2、4及び5を参照すると、コンプライアントなシール部材202は、患者Pの顔面に接触するインタフェース200の構成要素である。シール部材202は、好ましくは膨張(インフレーション)又はバルーンタイプのシールである。膨張又はバルーンタイプのシールは、使用時にはインタフェース102に送給されるシステム圧力又は空気流が内方に延在するフランジ、スカート又はその他の同様の部材を患者の顔面上へと付勢して実質的なシールを形成させる種類のシールである。このため、膨張又はバルーンタイプのシールは、緩衝材を患者の顔面の特徴に密着させることができるだけの十分な力で患者の顔面に対して緩衝材を押し付け又は変形させるためにヘッドギアによるインタフェース保持力のみに依存する種類のシールとは異なる。
【0204】
適切な膨張又はバルーン(空気注入)効果を得るために、図に示すシール部材202は、周縁部206と、周縁部206から内方に延在する密封フランジ208とを具備する。好ましくは、密封フランジ208は周縁部206の全体又は実質的に全体から内方に延在する。以下に説明するように、周縁部206は好ましくは巻き返された縁部を具備する。
【0205】
図5を参照すると、図の密封フランジ208は、少なくとも一部分が患者Pの顔の皮膚表面に当接する延長面210を具備する。一方の端部分が周縁部206に接続される延長面210は、給気装置からの空気又は圧力を捕捉すると共にインタフェース本体200のフランジ208を患者Pの顔面の方へと所望の角度で付勢するポケット状の構造を形成する。密封フランジ208は、図のシール部材202の密封部分212の少なくとも一部分を形成してよい。密封部分212は使用時に患者の方に向くか、又は患者に最も近い位置にある。
図6を参照すると、図のシール部材202の密封部分212は、巻き返された縁部又は丸味を有する縁部によって形成される周縁部206においてシール部材202の外囲部分214に接続されてよい。
【0206】
好ましくは、密封部分212は外囲部分214より実質的に可撓性である。密封部分212は、例えば外囲部分214と同じ材料により形成されるものの外囲部分214より薄い厚さを有してよいが、これに制限されるわけではない。一部の実施形態では、外囲部分214に対して密封部分212にシリコーン、熱可塑性エラストマー又はフォーム(例えばスキン層を含む連続気泡フォーム又は独立気泡フォーム)等の異なる材料を用いることができる。使用時において、密封部分212は患者Pの顔面に当接して載置され、膨張シール(気体注入により膨張するシール)の内圧及びヘッドギアの保持圧力下で、密封部分212は患者Pの顔面に押し付けられて、周縁部206の内方において効果的なシールを創出する。
【0207】
図4を参照すると、周縁部206は、一連の半径R
1によって画定される形状を具備する。半径R
1は、巻き返された周縁部206の外面に対して画定される。このため、巻き返された周縁部206の最外側部分は一連の半径R
1によって画定される平面形状を有する。加えて、
図6に示すように、巻き返された周縁部206は厚さ(t)と内側半径(R
2)とによって画定される。
図7に、以下では壁比と呼ぶ、ある特定の部分における周縁部206の巻返し部分の内側半径とその特定の部分における周縁部の壁面厚さとの比(R
1/t)と、以下で巻返し比と呼ぶ、周縁部206の特定の部分の特定の半径R
1と周縁部206のその特定の部分における周縁部の巻返し部分の内側半径との比(R
1/R
2)との間における望ましい関係を示す。図に示すように、約4以下の壁比では、シール部材202の周縁部206は、望ましい巻返しを呈さずに寧ろその特定の部分において潰れやすくなる場合があることがわかった。加えて、約7以上の壁比では、その特定の部分において望ましい巻返しを得られないほど硬くなりかねない構成になることもわかった。更にまた、約10以上の半径比では、シール部材202の特定の部分が過度に直線状になって、望ましい巻返しを得られない場合があることがわかった。このため、
図7に網掛けで示す領域が周縁部206の望ましい巻返し性の領域である。周縁部206は、平面図において一連の半径により画定されるため、望ましい巻返し性の領域内に位置する様々な部分を有する。好ましくは、周縁部206の少なくとも上側部分(即ち使用時に略目の方向に漏れを起こす部分)は、寸法が望ましい巻返し性の領域内に完全に含まれるように構成される。換言すれば、これらの部分は、好ましくは、(1)4≦(R
2/t)≦7と(2)(R
1/R
2)<10との2つの式を満たす。一部の構成において、シール部材202の少なくとも鼻部分と頬骨の方へと延在するシール部材202の横方向延在部分とは、寸法(即ち巻返し半径、平面半径及び壁面厚さ)が少なくともこれらの部分において望ましい巻返し性の領域の範囲内に含まれると共に上述の式を満たすように構成される。一部の構成では、少なくとも上側ヘッドギア取付け位置と交わる略水平な平面より上に位置するシール部材202の部分は、寸法(即ち巻返し半径、平面半径及び壁面厚さ)が少なくともこれらの部分において望ましい巻返し性の領域の範囲内に含まれると共に上述の式を満たすように構成される。一部の構成においては、シール部材202の周縁部全体が、寸法(即ち巻返し半径、平面半径及び壁面厚さ)が全ての部分において望ましい巻返し性の範囲内に含まれると共に上述の式を満たすように構成される。
【0208】
好ましくは、密封部分212は、外囲部分214に対して鋭角をなす程度に内方に湾曲する。更に、
図8を参照すると、フランジ208は患者Pの皮膚表面に接触して示されている。図に示すように、図の構成において周縁部206から最も遠くに配置されるフランジ208の端部である第1の接触点216に対して、半径R
2の起点は約0mm~約40mm以上の範囲内の距離218に配置されてよい。
図9のグラフに示すように、(1)距離218(即ち第1の接触点216と半径R
2の起点との間の距離)と(2)周縁部206の周りの位置に係わりなくフランジ208と皮膚表面との間の角度である予荷重角度Θとの間には、ある関係が存在すると考えられる。予荷重角度は、経験的に作成された
図9のグラフに示す角度でありうる。この関係に従って、フランジ208を滑らかに巻き返すと共に患者Pの顔面に押し付けることができる。
図9に示すように、患者Pの皮膚上における接触長さを伸ばすことによって接触角を小さくすることが可能になり、このことから有意な接触長さの場合には、フランジの自由端部の突出の度合いを小さくすることができることがわかる。他方、フランジの自由端部の突出を大きくすることにより、より短い接触長さにわたって適切な密封を得ることができる。一部の構成において、長さ218の選択は、様々な患者の顔面形状に基づいて行われてよい。換言すれば、単なる例証として、様々な母集団を対象とした単一サイズのマスクを得るためには、顔の寸法が最も変動する顎領域においてフランジをより長くし、且つ任意の人種に関して外形の寸法があまり変動しない鼻領域ではフランジをより短くする。鼻梁寸法は人種間で異なることがある。望ましい長さを判断した上で、漏れの可能性を低下させることができる角度を判断する。
【0209】
すぐ上に記載したように、第1の接触点216は、フランジ208の端部が少なくとも幾つかの位置で外方に突出するためにもたらされる。一部の実施形態において、フランジ208の自由端部は、患者Pの顔面に接触するインタフェース本体200の第1の表面となる。フランジ208の距離218は、好ましくは約0mm~約10mmだけ患者の顔面の方へと延在する。一部の実施形態では、この突出は約3mm~7mmの範囲内である。
【0210】
有利な点として、フランジ208は患者の顔面の方に向けられるため、フランジ208の自由端部又はフランジ208のまた他の部分は、患者の顔面に接触した後に、マスクが患者の顔面に押し付けられて密着度が高まるにつれて平常位置から次第に大きく内方に湾曲する(即ち内方に曲がる)。このため、フランジは装着時に予荷重を受け、それが顔面の様々な解剖学的構造及び形状の周りに沿うシールの能力を高め、そのことが延いてはインタフェース本体200の密着性能の向上をもたらす。
【0211】
図に示すシール部材202は注気形又は空気注入形のシールであるため、シール部材202は皮膚に加わる圧力を最小限に抑えるように作用する。加えて、シール部材202は、圧力を分配し、且つ過剰な局所圧力分布が起こる可能性を低下させるように作用する。換言すれば、図のシール部材202は、点荷重又は過剰な圧力勾配の可能性を低下させる。
【0212】
再び
図2を参照すると、シール部材202は患者Pの鼻Nと口とを包み込んで図示されている。シール部材202は、
図4及び5に示すように、人間の鼻の実質的な再現となるように整形される鼻部分220を具備する。好ましくは、鼻部分220は、シール部材202の上側部分である。図に示す構成において、鼻部分220の少なくとも外面は、人間の鼻を実質的に再現したものを含むように整形される。好ましくは、鼻部分220の外面及び内面が、人間の鼻を実質的に再現したものを含むように整形される。特に、図の構成では、鼻部分220は鼻の形状の実質的な部分を再現したものである。このため、鼻部分220は鼻の形状の大部分を再現したものとなる。
【0213】
一部の実施形態において、シール部材202の鼻部分220は、鼻全体又は略鼻全体を再現したものである。図の実施形態における鼻形状は、特定の患者に合わせたものではなしに一般化された鼻形状となる。図に示す鼻部分220は鼻梁222を具備する。図の鼻部分は更にまた小鼻224又はその他の同様の特徴を具備してよい。好ましくは、鼻部分220は人間の鼻の典型を示すこと又は人間の鼻に似せることができるだけの十分な特徴を真似たものである。しかし、一部の実施形態では、シール部材202は、人間の鼻を受けることはできるが鼻の外観を実質的に再現したものを構成するわけではないポケット又は鼻チャンバ226を形成するように整形された部分を含んでよい。換言すれば、シール部材202は、例えば立方体の形状に近似する形状又は実質的に半円筒形をなす形状であるがこれらに制限されない形状を有する鼻部分を有してよい。
【0214】
鼻部分220内に形成される鼻チャンバ226は、鼻部分220の内側に様々な使用者の鼻を収容するために、好ましくは一般的な鼻より大きくなっている。好ましくは、シール部材220は、鼻中隔突起228を具備する。鼻中隔突起228は、鼻中隔の領域において前方(即ち着用時に顔から離れる方向)に延在して、患者の鼻中隔の領域においてシール部材202の内側に拡大凹部を形成する。シール部材202は更にまた、好ましくは、上唇の中央に近接して配置される上唇突起230を具備する。鼻中隔突起228及び上唇突起230の1つ以上を設けることにより、鼻チャンバ226はこれらの位置において拡大されて、シール部材202内において空隙部分を増加させる。
【0215】
図5を参照すると、図に示すシール部材202の密封部分212は、一般的な顔面の形状に実質的に沿うように整形されてよい。図の構成において、フランジ208を含む密封部分212は、中空領域232を具備する。中空領域232は患者の顎を収容することができる。中空領域232は、フランジ208の一部分に沿って顎を受け入れることができる。引き続き
図5を参照すると、フランジ208を含む図の密封部分212は更にまた、鼻梁用の凹部234を具備する。凹部234は一般にC形又はU形をなす湾曲壁面を具備する。
【0216】
引き続き
図5を参照すると、フランジ208を含む図の密封部分212は、患者の顎に近接して配置される中空領域232と患者の鼻梁に近接して配置される凹部234との間に延在する湾曲頬部分236を具備する。湾曲頬部分236は、中空領域232に隣接して接続されてよい。加えて、凹部234は湾曲頬部分236間に位置すると共に、一部の構成では湾曲頬部分236を分離し且つ接続する。
【0217】
図4は、シール部材202の外面の図である。この外面図に外囲部分214がよりわかりやすく示されている。図に示す構成において、シール部材202は頬部分238と顎部分240と鼻部分220とを組み込まれている。頬部分238は好ましくは鼻部分220から横方向外向きに広がる。使用時には、頬部分238は鼻領域から外方に患者の頬骨突起の方へと延在する。頬部分238は更にまた、側方部分239を顎部分240の方へと下方に延在させる。このように、頬部分238は口の側方端部の外側の位置において患者の下顎の方へと延在する。
【0218】
図4及び5を参照すると、シール部材202は、自身の外面から内面へと延在する孔部242を形成する。孔部242は、インタフェース本体200の使用中に患者の口が配置される位置又はそれより下に配置されてよい。一部の実施形態において、孔部242は鼻チャンバ226より下に配置される。孔部242は鼻中隔突起228の下に配置されると表現することができる。孔部242はさらに上唇突起230の下に配置されると表現することができる。更に、孔部242は患者の顎を収容する中空領域232の上に配置されると表現することができる。このように、孔部242は患者の口の予想位置と患者の顎の先端との間に配置されてよい。孔部242は、好ましくは、シール部材202を右半分と左半分とに略二等分するシール部材202の正中面に沿って配置される。以下に説明する理由により、図の孔部242はシール部材の略平面状の部分244に配置される。
【0219】
[支持部材]
図2を参照すると、支持部材204は、シール部材202の一部分の上に重なる。支持部材204はコンプライアントなシール部材202より実質的に剛性であって、支持部材204がコンプライアントなシール部材202を支持するようになっている。しかし、支持部材204はそれでも尚、ある程度の可撓性を有してよく、支持部材204は好ましくは完全に剛性ではない。一部の構成において、支持部材204は、例えば約1mmの厚さのシート状のポリプロピレン又はポリエチレン塑性材料と同様の剛直性を有するが、これに制限されるわけではない。
【0220】
図に示すように、支持部材204は周縁部250を具備する。周縁部250はシール部材202の周縁部206と同様の形状を有してよいが、切欠部252が差し渡されると共にその差渡し距離が周縁部205の長さに含まれると、周縁部250は好ましくはシール部材の周縁部206と比べて短い長さを有する。換言すれば、支持部材204の周縁部の全長は好ましくはシール部材202の周縁部の全長を下回る。シール部材202の周縁部には鼻部分220の上側部分が含まれるため、支持部材の周縁部の全長は(切欠部252の寸法を含めても)、支持部材204の周縁部206の全長を下回る。
【0221】
一部の構成において、シール部材202は、全ての位置において支持部材204を超えて外方に延在する。
図6に示すように、半径R
2は、支持部材204の周縁部250からシール部材202の巻き返された部分の外面まで形成される約3mm~約6mmの範囲内の間隙ROを有して画定される。
【0222】
図10及び11に示すように、図の支持部材204は輪郭設定された板状の外観を具備する。換言すれば、支持部材204は三次元の形状を有するが、それでも高い起伏レベルを有するわけではない。好ましくは、支持部材204は、平均的な大人用インタフェースのサイズを有するインタフェースにおいて、約50mm及び約65mmを下回る全起伏深さを有する。
【0223】
さもなければ略滑らか且つ連続的な外観の周縁部250は上側切欠部252によって中断される。切欠部252は患者の鼻の領域に配置される。このため、
図2に示す実施形態では、支持部材204は人間の鼻を真似た部分を含まない。人間の鼻部分を具備しないことにより、支持部材204はより高い体積可撓性を有する。人間の鼻の形状は、代わりにシール部材202又はインタフェース本体200の何らかのその他の構成要素により形成される。切欠部252は支持部材204の可撓性を高める。このため、頬骨の角度が異なっても、支持部材204は若干撓んで患者により良好に適合する。
【0224】
図に示す構成において、シール部材202の鼻部分220は支持部材204の上側切欠部252から突出する。図に示す支持部材204の切欠部252の形状はシール部材204の鼻部分220の形状に対応する。切欠部252は、支持部材204の鼻部分を除去することにより、支持部材204に前から後まで最小限の曲率を有する形状を与える(即ち支持部材204は形成時に扁平な形状と小さい起伏深さとを有する)。
【0225】
全体的な印象として、図に示す構成によって、人間の形態に似る一方でシール部材202の外囲部分214を支持することによりシール部材202の膨張を制御するのを助けるように機能するフルフェイスのインタフェースが得られる。使用中のインタフェースの外観は、部分的に人間的な外観となって、以って患者とインタフェースを使用している患者を見る人物との感情的な反応を向上させる。重要な点として、このことはインタフェースに対する患者の受容度を高め、以って納得度を高める。
【0226】
切欠部252は、好ましくは、支持部材204の周縁部250から内方に延在する凹部を形成する。図に示す構成において、切欠部252はインタフェース本体200の中心又は少なくとも支持部材204の中心に向かって内方に延在する。切欠部252は鼻中隔を収容するために延長切欠部分251を含む。希望に応じてその他の適切な形状も切欠部252に設けることができる。一部の構成においては、切欠部252は、更に上唇の中央部分を収容するために支持部材204の内側に凹部を形成する隆起部253の上に配置されてよい。
【0227】
図の支持部材204において、切欠部252は、切欠部252により分離される1対の上方伸展部254を側方に有する。好ましくは、上方伸展部254は支持部材204の上限範囲を画定する。更に好ましくは、上方伸展部254は、非常に高い可撓性のシール部材202の部分を除いて、インタフェース本体200の最上側部分を形成する。
【0228】
図2を参照すると、患者Pの鼻Nが破線で示されている。鼻Nは、シール部材202の鼻部分220によって形成されるチャンバ226内に突出する一方で、支持部材204の切欠部252は鼻Nの下の位置で正中面を横切る。支持部材204の上方伸展部254は、鼻の付根Bを超えて上方に延在する。図に示す構成では、上方伸展部254は、患者Pの鼻Nの先端を収容するように設計されるインタフェース本体200の部分を超えて上方に延在する。
【0229】
切欠部252の側方縁部は、鼻Nの横方向の縁に沿って延在して、コンプライアントなシール部材202が頬骨に沿って延在することができるように、且つ支持部材204が頬骨領域においてシール部材202を補強することができるようになっている。患者Pの頬骨上においてインタフェース本体200を支持することによって、患者Pが体験する快適さのレベルを有意に高めることができる。
【0230】
上方伸展部254は更にまた、安定化機能を果たすと共に、少なくとも部分的に図のマスクを患者の顔面の中央部分において安定させる手段を形成する。特に、上方伸展部254は大体において頭蓋の上顎骨の位置に対応するか、又は上顎骨の位置の上に重なる。
【0231】
支持部材204は、全体として人間の顔面の典型的な下側部分に沿う。このため、
図10及び11を参照すると、支持部材204の外面256は全体として凸状の外観を有する一方で、支持部材204の内面258は全体として凹状の外観を有する。支持部材204の内面258は全体としてシール部材202の外面に沿う。支持部材204の顎部分260は支持部材204の内面258に沿って中空の窪みを具備してよい。加えて、1対の頬部分262の各々は支持部材の内面258に沿って中空の窪みを具備する。
【0232】
支持部材204の周縁部250は全体的に頬部分262の外側から顎部分260の外側まで延在すると共に、患者の顎の線の内側を辿る。このため、図に示す支持部材204の周縁部250は患者の顎まで延在する。好ましくは、支持部材204の下側部分264は患者Pの顎の下に引っかかる。患者Pの顎の下に引っかかることにより、支持部材204は患者Pの顔面のこの領域におけるシール部材202の密着を補助する。図に示す支持部材204は、シール部材202を支持すると共にシール部材202の外囲部分214により形成されるチャンバを補強する広い材料面を形成する。一部の構成において、支持部材204は、一般にシール部材202の一部分を取り巻く補強リムを形成する。
【0233】
図2及び3に示すように、インタフェース本体200は全体として使用者の顔の下半分の一般的な形状を再現したものである。インタフェース本体200は、上端部において鼻覆うことができる。一部の構成では、インタフェース本体200は、鼻の軟骨の上に延在すると共に両目間に位置する鼻骨の少なくとも一部分の上に重なるように構成される。少なくともシール部材は、シール部材202が頬骨に沿って外方に延在するように着用者の頬骨の方へと外方に延在する翼部を含んでよい。インタフェース本体200は、支持部材204の下側部分264が顎の下に引っかかる位置まで顎の線に従って下方に延在する。
【0234】
引き続き
図10及び11を参照すると、支持部材204は更にまた、略中央に配置される開口266を具備する。開口266は切欠部252の略下に配置される。好ましくは、開口266は、図のインタフェース本体200を実質的に対称な両側の左半分と右半分とに分割するインタフェース本体200の正中面に沿って配置される。図に示す構成では、開口266及び切欠部252のいずれもが正中面に沿って配置される。正中面は、開口266及び切欠部252と交わり、好ましくは開口266及び切欠部252を二等分する。
【0235】
支持部材204の開口266は、好ましくは、シール部材202を貫通して形成される孔部242の位置に対応する。孔部242は、
図4及び5によりわかりやすく示されている。孔部242は、シール部材202の顔面側に形成されるチャンバへの呼吸ガス入口及び出口の配設位置となる。孔部242は、平面部分244に配置されることにより、シール部材202への給気用呼吸管の簡便な接続と密封とを促進する。更にまた、開口266の領域の支持部材204は給気用呼吸管の接続部(例えばエルボコネクタ又はその他の構成のコネクタ)を支持するように構成されてよい。
【0236】
[架橋部分]
図13を参照すると、一部の実施形態の支持部材204は更にまた、少なくとも切欠部252の領域においてシール部材202の上を渡って延在する架橋部分300を含んでよい。このため、一部の実施形態では、架橋部分300は鼻部分220の領域においてシール部材202の周縁部206付近に配置される。架橋部分300は、この領域において膨張シール部材202を付加的に支持する。この付加的な支持は、空気を一般に患者の目の付近へと向かわせる、鼻の側部に沿った空気漏れの可能性を低下させるのに有用であることがある。
【0237】
図14を参照すると、この実施形態の架橋部分300は、シール部材202の周縁部206付近においてシール部材202の上に延在する。
図14に示す架橋部分300は、好ましくは約5mm~6mmの範囲内の幅を有する。
図14の実施形態は、支持部材204とシール部材202との可撓性を高め、それが着用者の顔面形状に対する順応性を高める。換言すれば、支持部材204はより低いたわみ剛性を有し、そのためにインタフェース200はヘッドギアのストラップによりもたらされる保持力下で撓むことができる一方で、架橋部分300が鼻部分220又は鼻部分220に近接する位置においてシール部材202を支持する。架橋部分は、シール部材202が鼻梁の位置で撓んで、この撓みの結果として空気が一般に目の付近に向かって漏れる可能性を低減させるのに役立つ。
【0238】
引き続き
図14を参照すると、マスクの反対側を静止させたままで横方向に負荷302を加えることによりインタフェース200は正中面の周りにおいて撓む。図の実施形態では、この撓みによってインタフェース200の全体としての幅が小さくなる。力302はインタフェース200の頬部分262に近い位置において加えられる。好ましくは、力302は、約1Nの大きさを有する場合、力302の方向に対して略平行に測定した時に少なくとも約4mm以上、好ましくは少なくとも約5mmの変位を引き起こす。一般にヘッドギアが矢印の方向に力302を加えることはないが、上述の撓みがインタフェース200において見受けられることがわかった。更にまた、この撓みは、広範な顔面形状にわたるシール部材202の密着性の向上を達成するのに役立つ可能性があることもわかった。
【0239】
好ましくは、この撓み又は曲げは、正中面の周りにおいて起こる。一部の実施形態では、インタフェース200は、インタフェース200の頬骨領域(即ち上側部分)において、インタフェース200の下顎骨領域(即ち下側部分)と比べて高い可撓性又は変形性を有することが好ましい。このような撓み域の相違は切欠部252によって達成可能である。このため、切欠部252を利用して、より大きな解剖学的変動が予想され且つ顔が不快さに対してより敏感である頬骨領域においてより高い変形性を有するインタフェースを得ることができる。
【0240】
次に
図15を参照すると、インタフェース200は、使用時にヘッドギアにより加えられる一般的な力の下で約20度まで撓むことができる。例えば、
図15に、シール部材202と支持部材204とを具備するインタフェース200が示されている。支持部材204は、好ましくは実質的に正中面Mの周りにおいて変形することができる程度に十分に可撓性である。
図15に上から見下ろした図で示されているインタフェース200は、
図14の斜視図と
図23の側面図とにも示されている。図に示すように、図のインタフェース200は、
図15の上から見下ろした図において、略三角形の外観を具備する。加えて、凹部306が、この図の三角形の底辺308に沿って形成される。言うまでもなく、凹部306は、患者の鼻の少なくとも一部分を収容するように構成される。
図23の側面図において、インタフェース200は略正方形又は角錐台の形状を具備する。一部の構成においては、側方から見た時に、いかなる有意な凹部もインタフェースに沿って認められない。図の構成は、略水平に延在する平面の周りにおける可撓性と比較すると、略垂直な正中面の周りにおいて有意に高い可撓性を有するインタフェースをもたらす。更に、図の構成は、最上部から最下部までの長さが最外側の頬部分から最外側の頬部分までの幅より大きく、且つ略三角形の上側周縁面310(即ち頬部分間に延在する周縁面の上側部分が前から見た時に略三角形である)と略三角形の下側周縁面312(即ち頬部分間に延在する周縁面の下側部分が前から見た時に略三角形である)とを有するインタフェースをもたらす。略三角形の上側周縁面及び略三角形の下側周縁面と頬部分に対して窪んだ鼻部分及び顎部分とにより、水平方向に延在する平面の周りにおける可撓性と比較すると、垂直方向の正中面の周りにおいて有意に高い可撓性を有する構成が得られる。
【0241】
図15に示すように、インタフェース200の左手側を固定して移動の可能性を減らし、力304を加える。好ましくは、力304は、一般に頬骨部分に対応する、インタフェース200の略最広幅部分に加えられる。力304を加えると、インタフェース200は、好ましくは角度αが角度βに変化する(即ち角度変化がα-βとなる)ように変形する。1つの実施形態において、力304が3Nの大きさで加えられる場合、αからβへの変化は少なくとも約10度である。より特定の実施形態では、使用時のインタフェースの一般的なストラップ力は、略α-β=10°~50°の変形を引き起こすことができると考えられる。また他の実施形態において、4本のストラップが用いられると仮定すると、ストラップ毎に約1.5N~約15Nの一般的なストラップ力の下でα-βは少なくとも約10°~30°である。
【0242】
1つの実施形態において、1Nの大きさを有する力304はインタフェース200を少なくとも約5mm変形させることができる。また他の実施形態では、3Nの大きさを有する力304はインタフェース200を約5mm~約50mm変形させることができる。また別の実施形態では、3Nの大きさの力304はインタフェース200を約15mm~約25mm変形させることができる。
【0243】
使用時には、支持部材204の撓みが起こってインタフェースの形状が閉じること又は開くことがある。一部の実施形態において、インタフェース200を所定の量だけ開かせるために加えられる力は、インタフェース200を同じ量だけ閉じさせるために加えられる力より小さい場合がある。例えば、1つの実施形態において、1Nの大きさの力304と反対の方向に加えられる力(即ち拡開力)はインタフェース200を少なくとも約3mm変形させることができる。また他の実施形態では、3Nの拡開力はインタフェース200を約3mm~約25mm変形させることができる。更に他の実施形態では、3Nの拡開負荷は、インタフェースを約10mm~約20mm変形させることができる。
【0244】
図12を参照すると、支持部材204の曲げ弾性率とシール部材202の曲げ弾性率とを相関させることができる。
図12のグラフに示すように、シール部材202を形成する材料の曲げ弾性率は、好ましくは約15MPa未満である。約15MPaを有意に超えるレベルでは、シール部材202は過度に剛性又は剛直性となることがわかった。他方、支持部材204の曲げ弾性率は、好ましくは約480MPa未満である。約480MPaを有意に超えるレベルでは、支持部材204は過度に剛性又は剛直性となることがわかった。加えて、支持部材204の曲げ弾性率は、好ましくは約50MPaを上回る。約50MPaを有意に下回るレベルでは、支持部材204は過度の撓みを呈する。最後に、支持部材204及びシール部材202の両方に望まれる撓み特性を限定すると、
図12に示す網掛け範囲内において望ましい相互関係が見られることがわかった。
【0245】
[可撓性インタフェース支持体]
これまでは、患者の顔面に対するインタフェースの密着性は、患者の顔面形状に沿わせる上での問題によって妨げられてきた。インタフェースを患者の特定の顔面形状に正確に沿わせることができないことにより、インタフェースのシールと患者の顔面との間において過剰な漏れが引き起こされる。先行技術のインタフェース構成では、ヘッドギアを締めることにより、患者の顔面上のシール接触面に不均一な負荷を加える力ベクトルが生じることがあった。シール接触面の不均一な負荷は、幾つかの位置において圧力点を、また他の位置において不十分な圧力をもたらしかねない。圧力点は患者の皮膚の炎症を引き起こす一方で、不十分な圧力の位置では漏れが起こる可能性がある。
【0246】
図16~21を参照すると、より均一に患者の顔面に沿い且つ密着するインタフェース200の能力を高める構造を備えたインタフェース200の幾つかの実施形態が示されている。これらの構造は更にまた、インタフェース200が幅広く様々な顔面形状に沿う能力も高める。好ましくは、より均一なシール圧力分布は、インタフェース200に複合構造を適用することによって達成可能である。これにより、インタフェース200は撓み且つ捻じ曲がって様々な顔面形状に対応する一方で、シール部材202を支持部材204と顔面との間で膨張させ又は膨らませて、以ってヘッドギアの装着力をシール部材と皮膚との間においてインタフェースにより均一に分配することが可能になる。
【0247】
図16に示すように、患者用インタフェース200は、上述したもののように、軟質のコンプライアントなシール部材202と支持部材204とを具備する。シール部材202は、使用時に鼻と口とを覆うと共に、シール部材202の周縁部206に沿って顔面の周りに密着するように構成される。大体において、
図16に示すインタフェース200は、
図2に図示され且つ
図2に関して説明されたインタフェース200と同じである。特に、以下に説明する
図16~21の特徴は、例えば本明細書の別の部分に記載の説明に従って整えられ且つ構成されるインタフェース200において実施可能である。
【0248】
追加の支持部材404がシール部材202又は支持部材204の上に設けられて、シール部材202に対する支持を行う。支持部材404及びシール部材202は、小さい壁面厚さを有すると共に、相補的な形状に形成されて、シール部材202が支持部材404の下にぴったりと嵌合するようになっている。好ましくは、少なくとも1つの実施形態において、支持部材404及びシール部材202の外側の輪郭又は形状は、一般的な顔面の輪郭に実質的に沿って、インタフェース200が相対的に薄い形状の構成要素を構成するようになっている。一部の実施形態では、患者用インタフェース200はより一般的なサイズ及び寸法であってよい。
【0249】
支持部材404は、支持部材404に接続される中央ハブ部分470を具備する。一部の構成において、中央ハブ部分470はシール部材202に直接接続されてよい。ハブ部分470から外方に、端部において間隙490により分離される複数の変位可能部材472又は「フィンガ」が放射状に延在する。これらの変位可能部材472は、好ましくはハブ部分470から片持ちにされると共に、周縁部206の方へと外方に延在する。変位可能部材472は、好ましくはその下のシール部材202に剛直的に結合又は取付けされず、シール部材202又は存在する場合は支持部材204と変位可能部材472との間で相対的なスライド運動を生じさせることができるようになっている。
【0250】
一部の実施形態において、変位可能部材472は片持ちにされるのではなしに弾力的に蝶番付けされてよい。このような構成では、変位可能部材472は互いに実質的に前から後ろに向かう方向(インタフェース200装着時の顔面に対して)に移動可能とされて、ハブ部分470に作用するヘッドギアによって加えられる力がインタフェース200を顔面の方へと付勢するようになっている。
【0251】
好ましくは、変位可能部材472は、軟質のコンプライアントなシール部材202より有意に剛性である材料により製作される。例えばインタフェースの枠に用いられるポリプロピレン、ポリエチレン又はポリカーボネート等であるがこれらに制限されない何らかの一般的な高分子材料が適切である場合がある。1つの変形態様によれば、変位可能部材472は、隣接するフィンガ472の隣接する横方向の縁部間において捕手のミットと同様の態様で延在する弾性材料を含んでよい。換言すれば、帯紐状の弾性材料が隣接するフィンガ472間に延在してよい。
【0252】
複数の変位可能部材472は、中央ハブ470に加えられる負荷をより広い表面積のインタフェース200全体に分配して、以ってシール部材202の周縁部206を使用者の顔面上に押し付けることができるより局在化した力をもたらすように機能する。特に、変位可能フィンガ472はハブ470から片持ちにされるため、且つ変位可能フィンガ472は自由端部において前から後ろに有意に移動するため、変位可能部材472を含む支持部材404は顔面に沿うことができると共に、幅広く様々な顔面形状に対して適正な密着性を達成することができる。自身の下のシール部材202に対する変位可能部材470の少なくとも自由端部474のスライド運動は、使用者の顔面の形状の相違によって部材472がその下のシール部材202の若干異なる部分に圧力を加えることができるメカニズムとなる。このような構造により、広範な顔面形状に対する所定のシールの適合性を高めることができる。
【0253】
着用者が相対的に扁平な顔を有する場合は、十分な密着を達成することはより容易である。しかし、使用者が前から後ろへの大きな形状変化を含む顔を有する場合は、変位可能部材472の自由端部474が相対的に中央のハブ470から遠い位置において局在化した押圧力をもたらして、ヘッドギアからの力をハブ470から自由端部474に伝達することができるようにする。
【0254】
一部の構成においては、自身から延在する変位可能部材472を有する複数の各ハブ部分470がインタフェース上に分散的に配置されてよい。例えば、顎と左及び右頬とは、使用者の顔面に負荷を加えるのに好ましい場所であり、インタフェースはこれらの位置の1つ以上においてハブ部分470を含んでよい。
【0255】
次に
図18を参照すると、更に他の支持部材480を
図16及び17に示す支持部材404に適用することができる。一部の構成では、支持部材480は支持部材404に固着されて、積層形の構造体を形成する。支持部材480は、互いに且つ/又は少なくとも更に他の支持部材480の内側ハブ部分484に対して移動可能である複数の変位可能部材482を具備してよい。好ましくは、更に他の支持部材480のフィンガ482は支持部材404のフィンガ472上に担われる。図の構成では、支持部材404とまた他の支持部材480との上に同じ個数の変位可能部材が示されているが、変位可能部材の個数及び配置は変動してよい。一部の実施形態においては、更に他の支持部材480に関連ある複数の変位可能部材がシール部材402上に直接担われてよい。
【0256】
これらを組み合わせたものを含む実施形態を構成することができることが理解されよう。換言すれば、複数のフィンガ(支持部材又は更に他の支持部材のいずれかの)の一部がシール上に直接担われるか、又はその他のフィンガ上に担われてよい。例えば、
図16に示すインタフェース200は、シール部材402と支持部材404(及び/又は更に他の支持部材(図示せず))との間に介在する支持部材204を含む。この実施形態において、支持部材(及び/又は更に他の支持部材)の自由端部474は支持部材204上に担われ、この支持部材204が次にはその下のシール部材402に圧力を加える。支持部材204は更に負荷力をシール部材402全体に分散させ且つ/又はより軟質の支持部材402を支持する役割を果たす。
【0257】
図19に示すまた別の実施形態において、支持部材(及び/又は更に他の支持部材)の自由端部474はその下のコンプライアントなシール部材202上に直接担われてよい。
図20に示す実施形態においては、フィンガの自由端部474はその下の更に他の支持部材の変位可能部材482上に担われる。何らかのその他の適切な変形態様を用いることもできる。
【0258】
上記の説明では、変位可能部材によって顔面への適合性の向上及び/又は密着性の向上が達成される種類のインタフェース用シールを数例示しただけである。その他の構成も考えられる。変位可能部材の個数と間隔と幅とは変動してよい。加えて、
図16~21に示す全ての例証的な実施形態でも、平面図において略円形の支持部材(及び更に他の支持部材)が示され、且つ/または一般に中央位置から放射状に延在する変位可能部材が示されているが、その他の形状も考えられる。例えば、中央の略円形のハブではなしに、線形又は略矩形のハブを用いてもよい。このような実施形態では、変位可能部材474は、例えば
図21に示すように「葉のような」構造をなして又は木の枝のように外方に放射状に延在してよいが、これらに制限されるわけではない。このような実施形態においては、ハブが、インタフェース着用時の使用者の正中面と実質的に整合することが好ましい場合がある。加えて、ハブは、この構造の「幹」を実質的に補強するために1つ以上の半剛性補強リブ492を含んでよい。含まれた幹補強リブ492が梁となって、所定の方向の曲げに耐える。
【0259】
更に別の実施形態において、変位可能部材は、前から後ろへと向かう方向の曲げに対する片持ち部分の剛性を調整するために、様々な厚さを有して構成されてよい。例えば、フィンガの材料厚さは、自由端部に向かって減少していってよい。同様に、フィンガは図に示すように実質的に矩形の平面形状を有しても又は有さなくてもよい。例えば、変位可能部材の幅は自由端部に向かって狭くなっていってもよく、又は望ましい変位レベルを達成するために異なる形状を有してもよい。
【0260】
更に別の実施形態において、上記の実施形態において説明した変位可能部材の自由端部は更に、自由端部がシール部材上又はその下の更に他の支持部材上に担われる位置において特徴を含んでよい。例えば、圧縮可能材料のパッドを自由端部とシール面との間に配置して、圧縮可能パッドがシール部材上に担われるようにすることができる。また他の例では、自由端部は、自由端部とシール部材との間の接触点において丸味を有してよい。これに代わる方法として、自由端部は、シール上に担われるコンプライアントな部材を含んでよい。このコンプライアントな部材は、例えばフォーム又は複数の小さい圧縮可能フープ構造であってよい。
【0261】
上記は、既に説明した模擬鼻インタフェースと組み合わせて適用されるインタフェース支持体の例の説明である。このインタフェース支持体は、軟質のコンプライアントなシールを有するその他のインタフェース構成と一緒に使用可能である。例えば、支持体本体をシールと変位可能支持部材との間に挟み込む必要はない。少なくとも1つの実施形態では、この構成が好ましい。換言すれば、変位可能支持部材は、特定の位置においてコンプライアントなシールに直接作用して、インタフェースシールを使用者の顔面に押し付ける。同様に、インタフェース支持体は、何らかの単一のヘッドギア構成にも用途を制限されるわけではない。インタフェース支持体の一般的な目的は、ヘッドギアにより実質的に単一の位置に加えられる力を広い面積にわたって分配することであり、このため、開示の構成は、局在化した力をインタフェース本体全体にわたって分配する手段を定義するものである。特に、インタフェース支持体は、広い面積にわたって力を分配すると共に、更にまた前から後へと向かう方向における顔面の輪郭の大きな変動に対応することができる。
【0262】
[呼吸管接続部]
次に
図14~22を参照すると、呼吸管500が、少なくとも2つの異なる態様でインタフェース200に接続されて示されている。呼吸管とインタフェースとの間における下述の接続部は、相互交換可能である。加えて、記載のあらゆる接続部は記載のあらゆるインタフェースと一緒に使用可能である。
【0263】
最初に
図22を参照すると、図に示す呼吸管500はエルボ504を用いて呼吸管コネクタに接続される。呼吸管コネクタは、シール部材202の孔部242に取り付けられると共に孔部242に密着する。呼吸管コネクタは孔部242に固着されるため、呼吸管コネクタは支持部材204に形成される開口266を介して延在する。
【0264】
一部の構成では、コネクタの半剛性部分がシール部材202の孔部242を介してシール部材202の片側から突出する一方で、コネクタのまた他の半剛性部分が第1の半剛性部材にスナップ嵌めされるスナップ嵌め構成が用いられる。一部の構成では、何らかのその他の適切な結合技術を用いて、軟質のコンプライアントなシール部材202上にボスを形成させることができ、コネクタをこのボスに接続することができる。エルボ504はコネクタに接続可能である。
【0265】
図22において、インタフェース本体200は、シール部材202又はシール部材202及び支持体204に接続されるコネクタに呼吸管500がエルボ504により接続されて示されている。スイベル502は、エルボ504がインタフェース本体200に対して回転することを可能にして、給気導管500がインタフェース本体200に対して異なる配向をとるようにし、以って例えば移動時であるがこれに制限されずに使用者の快適さを高める。更に他のスイベル506がエルボ504と呼吸管500との間に配設されてよい。
【0266】
本明細書に記載のインタフェースは更にまた、短尺であり且つYピースに接続される導管500を用いて双方向流形人工呼吸器に使用可能である。加えて、例えばCPAP装置によってもたらされる一方向流形システムでは、適切な換気穴をエルボ504又はシール部材202の鼻梁付近の領域に設けることができる。更に、スイベル502ではなしに、ボール管継手形接続部を用いて、呼吸管500とインタフェース本体200との間の連結を可能にすることができる。
【0267】
図14に示すもの等の一部の構成では、インタフェース本体200は、窒息防止弁520を含んでよい。窒息防止弁520は、インタフェース本体に付随してよく、又は一部の実施形態では例えば呼吸導管接続部若しくはエルボコネクタに内蔵されてよいが、これに制限されるわけではない。
【0268】
エルボ504を用いた接続部は、使用に適する一方で、呼吸ガスを実質的に水平にインタフェース本体200に流入させる。従って、呼吸ガスは真っ直ぐに患者の口の方へと導かれる。この構成は幾つかの欠点を有することがわかった。例えば、患者は呼吸ガスが自身の顔面又は口に真っ直ぐに導かれることを不快に感じることがある。加えて、エルボコネクタ504はインタフェース本体200の前に取り付けられると共に、使用者の顔面から外方にある距離だけ突出する。シール部材202が鼻と相互作用するインタフェース本体200の頂部(即ちインタフェース本体200の鼻部分220)は、患者間で解剖学的な変動が非常に大きいため、密着困難となる部分である。その結果として、鼻梁はインタフェースの漏れの一般的な箇所となっている。インタフェース本体200に加えられるあらゆるトルクはこの領域において密着問題を悪化させる。この効果を補償するためには、ヘッドギアを過度に締め付けてインタフェース本体200を患者の顔面上にきつく押し付けるのが一般的である。過度な締め付けは、極めて望ましくない不快感に繋がる可能性がある。
【0269】
引き続き
図14を参照すると、この実施形態において、呼吸管500への接続は、呼吸管に直接接続されると共に着用者の顎の付近においてある角度をなして(着用者の顎から下方に突出して)インタフェース本体200に入る短尺の可撓管522を用いて行われる。このため、ガスは、インタフェースに上向きの方向に且つ患者の口及び鼻に向かって流入する。換言すれば、管522は下方に且つ患者から離れる方向に延在する。
【0270】
可撓管522はポート525を介してインタフェース本体に接続される。ポート525は、平常位置において前方に向いている時に患者の口を通って直接外方に延在する線より下に配置される。好ましくは、導管522はポート525を介して垂直に対して約0°~約70°の角度をなしてインタフェース本体200に入る。一部の構成では、挿入角は約50°~約60°の範囲内である。好ましくは、挿入角は約55°である。
【0271】
好ましくは、ガスポート525は患者の顎の付近(即ち患者の下唇と顎の先端との間)に配置される。このポート位置によりポート525が有利に配置されて、インタフェース本体200の前部に穴、ポスト、ループ、クリップ等の取付け機構を配置する余地が増えるようになる。加えて、このポート位置により、窒息防止弁520を口の前に配置することができる余地も得られる。更に、使用時にインタフェースの内側の最下点付近に配置される呼吸ガス入口ポート525は、効果的な嘔吐物排出口となる。
【0272】
短尺の管体522は、非常に高い可撓性を有すると共に患者用インタフェース200と呼吸管500と間の接続部の位置をインタフェースそのものから遠ざけることにより、患者の頭部の自然な動きを可能にする。患者用インタフェース200と呼吸管500との間の接続は、周知の種類の剛性コネクタによって達成可能である。これらのコネクタを患者の顎及び首から離して配置することにより、特に頭部を前方に傾けるときに、患者の頭部の可動性が高まる。
【0273】
加圧ガスをインタフェース本体に供給する何らかのその他の適切な技術を用いることもできる。
【0274】
[インタフェースの流れ制御]
次に
図24及び25を参照して、インタフェース本体200内における流れの拡散及び制御を説明する。インタフェース本体200は、何らかの適切な態様に構成されてよく、図に示す構成では、インタフェース本体200は、例えばシール部材202によってインタフェース200内に形成されるキャビティ600を具備するが、これに制限されるわけではない。シール部材202は、本明細書に開示の態様を含むがこれらに制限されない何らかの適切な態様に構成されてよい。使用時において、シール部材202は患者の顔面に接触すると共に、患者顔面に密着する。シール部材202は、顔面に密着している時に、キャビティ600から空気又はガスが漏れる可能性を低下させる。
【0275】
呼吸管又はまた他の短尺の可撓管104が、本明細書に記載の態様を含むがこれらに制限されない何らかの適切な態様でインタフェース本体200に接続される。呼吸管104は呼吸ガスを入口ポート602に供給する。入口ポート602は、好ましくは、患者の顎の付近に位置することになるインタフェース本体200の領域に配置される。更に好ましくは、入口ポート602は、呼吸ガスが直接患者の顔に向かって導入されるのではなしに上方に角度をなす方向に導入されるように構成される。
【0276】
図24を参照すると、シール部材202内に形成されるキャビティ600は、仕切り壁604により分割されてよい。仕切り壁604は、キャビティ600内にいかなる適切な態様で形成されてもよい。仕切り壁604は、好ましくは、ボス606又はその他の適切な取付け構造によりキャビティ600内において取り付けられるか、又は支持される。このような構成において、仕切り壁604は、仕切り壁604の周辺縁部608により画定される境界の範囲内に含まれる位置に取り付けられる。図に示す構成では、周辺縁部608全体が、キャビティ600を形成するシール部材202の内壁部又はその他のインタフェース壁部から離間する。
【0277】
仕切り壁604は、仕切り壁604と内壁部との間に間隙が形成されるように内壁部から偏移してよい。仕切り壁604は、好ましくはキャビティ600の全体的な形状に略沿って、仕切り壁604と内壁部との間の略一定な間隙によりプレナム空間が形成されるようになる。好ましくは、仕切り壁604とキャビティ600の内壁部との間の間隙は約10ミリメートル未満である。更に好ましくは、この間隙は約3ミリメートル~約6ミリメートルの範囲内である。一部の構成において、ポート602からの流れと仕切り壁との間の流入角は約30°~約80°の範囲内である。一部の構成では、この流入角は約50°~70°の範囲内である。好ましくは、流入角は約60°である。
【0278】
ディフューザポート又はディフューザ出口610が仕切り壁604の周辺縁部608と内壁部との間の空間によって形成されてよい。一部の構成において、この仕切り壁は略円形であると共に、約30mm~約100mmの範囲内の直径を有する。複数の構成において、この直径は約40mm~80mmの範囲内である。仕切り壁の周辺縁部608は、好ましくは、シール部材202の外周縁部付近まで延在するような大きさ及び配置とされる。更に好ましくは、仕切り壁604の周辺縁部608は、フランジ208により形成される延長面210が上に重なる領域まで延在する。
【0279】
仕切り壁604は更にまた、好ましくはキャビティ600の下側部分内に含まれる。更に好ましくは、仕切り壁604の上縁部612は、インタフェース本体200の頬骨の高さ又はそれより下に配置される。更に一層好ましくは、仕切り壁604の上縁部612は、鼻部分220のための切欠部252の最下側部分と略整合する。従って、上縁部612は患者の鼻と略同じ位置に配置される。
【0280】
図に示す実施形態において、ディフューザ出口610は実質的に又は完全に仕切り壁604全体の周りに隣接する。一部の構成において、ディフューザ出口610は、専ら仕切り壁604の上縁部612に沿って形成されてよい。一部の構成では、ディフューザ出口610は、ディフューザ出口610が呼吸ガスを着用者の頬骨領域の上において実質的に接線方向に流動させる上側ディフューザポート部分を含むような上縁部612沿いの領域を含む。
【0281】
しかし、一部の構成では、仕切り壁604はシール部材202の内面の形状に従わず、そのため、仕切り壁604とシール部材202の内面との間に形成される間隙は実質的に一定ではない。
【0282】
入口ポート602は呼吸管からキャビティ600内に形成されるプレナム空間内へとガスを供給する。入口ポート602は、仕切り壁604とシール部材202の内面又はインタフェース本体200の特定の領域においてシール部材202が支持部材204に置き換えられる場合は支持部材204の内面との間に形成されるプレナムチャンバ内へと至る。このため、入口ポート602を介して供給されるガスは一般に、仕切り壁604により、直接患者の口へと流れることを阻止される。寧ろ、ガス流は仕切り壁604に衝突すると共に、薄いプレナムチャンバ全体にわたって偏向される。
【0283】
キャビティ600を形成する内壁部と仕切り壁640とが着用者の顔面の輪郭に近似する場合は、結果的に得られる拡散呼吸ガス流は実質的に顔面に対して接線方向になる。拡散呼吸ガス流は、キャビティ内壁部と仕切り壁604の周辺部608との間の間隙により形成されるディフューザポート610を介してプレナムチャンバから流出する。
【0284】
プレナムチャンバは、流れ抵抗を実質的に増加させることなしに、患者に対して呼吸ガス流を仕切り壁の縁部周辺に均一に分配する手段として機能する。注気又は空気注入シールを内蔵するインタフェースにおいて、ガス流を入口ポート602の軸に沿って流動させ続ける代わりに入口ポート602から半径方向外方へと導くディフューザポート610は、ガス流をシール部材202の周縁部の方へ、好ましくはシール部材202の周縁部上へと導き、これは患者の顔面へのフランジ208の密着に役立つ。
【0285】
一部の構成において、仕切り壁604は複数の異なる位置(例えば少なくとも2つ以上の位置)において支持されてよい。仕切り壁604は、ディフューザポート610が仕切り壁604の周辺縁部608に沿って且つ/又は上縁部612に沿って連続開口ポートではない別個の領域を含むような態様で支持されてよい。換言すれば、ディフューザポート610は実質的に仕切り壁604の周縁部608全体にわたって延在する連続開口でなくてよい。
【0286】
好ましくは、ディフューザポート610の全断面積は呼吸ガス入口ポート602の断面積より大きい。このような構成では、ガス速度は入口ポート602からディフューザポート610へと減少していく。好ましくは、ディフューザポート610の断面積は入口ポート602の断面積の少なくとも2倍である。更に一層好ましくは、ディフューザポート610の断面積は入口ポート602の断面積の2~5倍である。断面積を大きくすることにより、人工呼吸器の同調性の問題の発生と患者に対する噴流効果とを減らすことができる。例えば、ガス流を拡散させ且つ/又は減速させることにより、着用者の皮膚の上においてガス流を接線方向に再誘導することと併せて、患者の体験をより快適なものにすることができる。
【0287】
一部の構成において、仕切り壁604は1つ以上の小さい穴を具備してよい。これらの穴は、一部の穏やかな呼吸ガスが口の方へと直接流れることを可能にする。更に、一部の構成においては、プレナムチャンバは仕切り等の流れ誘導機構を含んで、顔面の特定の部分への流れの集中を補助する。例えば、通常的に治療中の熱感及び不快感に寄与する患者の受容体領域から離れる方向に流れを導くことができる。加えて、一部の構成では、顔面上の流れの感覚を助長する受容体領域の方へと流れを導くことができ、それによって息切れ感又は気流欠乏感を和らげることができる。一部の構成において、流れは、流れ誘導機構を用いて鼻から離れる方向に偏向されてよい。流れ誘導機構は、キャビティ及び/又は仕切り壁904の内面に付随してよい。
【0288】
好ましくは、インタフェース本体200は更にまた、窒息防止弁520を具備する。弁520は、一部の構成において、仕切り壁支持ボス606に組み込まれてよい。加えて、一部の構成では、仕切り壁604を撓曲、移動又は旋回させて、入来する流れが仕切り壁604により分散される一方で、呼気は直接ポートの方へと導かれるようにすることができる。
【0289】
一部の実施形態において、インタフェース本体200は、インタフェース本体200の外面上に配置される1つ以上の圧力監視ポート(図示せず)を備えてよい。圧力監視ポートは、プレナムチャンバを介して延在すると共にガスキャビティ600内に開口してよい。換言すれば、このポートの開口部は、好ましくはガスキャビティ600内において仕切り壁604とキャビティの内面との間に形成されるプレナムチャンバの外側の位置に配置される。更に好ましくは、ポートの開口部は、仕切り壁604に沿ってプレナムチャンバに対して仕切り壁604の反対側に配置される。圧力監視ポートをバッフル壁又は仕切り壁604の背後であるが、それでもなお患者の顔面の前に配置することにより、圧力監視精度を高めることができる。このような配置は人工呼吸器に用いた場合に呼吸トリガ等も向上させる。
【0290】
仕切り壁604は、患者の発話に関連ある音響効果の顕著な向上をもたらすことがわかった。偏移した仕切り壁604により形成されるプレナムチャンバは、インタフェースの音響効果を向上させ、それによって患者の言葉がより聞き取りやすくなることがわかった。加えて、流れをインタフェース内へと拡散させることにより、患者は鼻及び/又は口に噴きつける噴流に耐えて話をしなくてもよくなる。換言すれば、患者は人工呼吸器から入来する吸気に耐えて話をしなくてもよくなる。
【0291】
更に、空気流が拡散することにより、仕切り壁604によりもたらされるプレナムチャンバ構成は、キャビティ600内における復水の発生を減らすのに役立つ可能性がある。加えて、本明細書に開示する流れ拡散構成は、インタフェース表面上に溜まる望ましくない水蒸気、水滴及び流動水の貯留が生じる可能性を低下させることがわかった。拡散空気流により、復水又は凝縮液はキャビティ600から押し出されると共に、ポート又はその他の回収位置若しくは排出位置の方へと導かれる。
【0292】
次に
図25を参照すると、更に他の流れ拡散構成が示されている。この構成において、インタフェース本体200に流入する呼吸ガスは、キャビティ600の周りで回旋して、好ましくは実質的に患者の顔の表面に対して接線方向に向かう旋風運動を生じる。
【0293】
インタフェース本体200はガスキャビティ600を具備する。シール部材202は、顔面に接触すると共にキャビティ600を顔面に対して実質的に密封するように構成される。呼吸ガス入口ポート602は顎の付近に配置される。呼吸管は、本明細書の別の部分に説明するように、ガスを呼吸ガス入口ポート602に送給する。
【0294】
呼吸ガス入口ポートはガス回旋構造620内に配置されてよい。回旋構造620は、インタフェースキャビティ壁部に対して実質的に垂直に延在する実質的に円筒状の壁622を具備する。換言すれば、患者が直立している状態において、円筒壁622は実質的に患者の口の前の位置において前方に突出する。実質的に円錐状の壁624は、円筒壁622と同軸的に延在し、回旋空間626が円筒壁622と円錐壁624との間に形成される。円錐壁624は、円錐壁624と円筒壁622との間の間隙がインタフェース着用者に接近するほど大きくなるように角度をなす。
【0295】
使用時において、呼吸ガスは円錐壁624のポート602を介して回旋空間626に流入する。ポート602は壁622、624の軸から偏移して、ガス流が図に示すように偏移して且つ略接線方向に回旋空間626に流入するようになっている。その結果としてガスは図の環状回旋空間626の周りにおいて反時計方向に流れて回転流を形成する。傾斜した円錐壁624は、この回転流を患者の方へと(即ち
図25の紙面から出てくる方向に)付勢する。流れが回転して患者の方へと移動する時に、ガス流は円錐壁624の頂部から剥離し、その結果として大きく広がった翼状の空気となって外方に患者の顔面に向かって移動する。こうして得られた流れは着用者の顔面を横切って拡散すると共に好ましくは回旋構造に流入するガス流よりゆっくりと移動する。一部の構成において、患者の顔面へと向かう空気の流れは約8m/秒未満である。一部の構成では、患者の顔面へと向かう流れは約6.5m/秒未満である。上述したプレナムチャンバの実施形態と同様の態様で、結果として患者の快適さが高まる。
【0296】
[ヘッドギア]
インタフェース本体200は、何らかの適切なヘッドギア組立体700を用いて患者に固着される。幾つかの異なるヘッドギア組立体を以下に図面を参照して説明する。
【0297】
最初に
図26を参照すると、ヘッドギア組立体700は、患者Pとインタフェース本体200との間において導入される加圧ガス流により創出される動きに抗してインタフェース本体200を拘束するために用いられることがわかる。力ベクトルR1が、インタフェース本体200の形状とインタフェース本体200に流入するガス流とによって発生する。平衡力ベクトルE1は反対方向に延在すると考えられる。理想的には、単一のストラップが平衡力ベクトルE1の作用線に沿って配置される限り、単一のストラップを用いてインタフェース本体200を顔面に固着することができる。顎の捕捉が望まれる場合は、保持線LRも考えられる。保持線LRは耳の最上側部分に沿って且つインタフェース本体200の中央部分を通って延在する。
【0298】
好ましくは、インタフェース本体200は主に患者の顔面の左頬骨と右頬骨と顎との少なくとも3つの部分上において支持される。好ましくは、インタフェース200上におけるストラップ取付け位置は、上部ストラップについては頬骨の垂直方向の位置に、下部ストラップについては顎領域に略対応する。このような構成は、ヘッドギアがそれによってインタフェースを患者の顔面上において保持する対称な力パターンをもたらす。
【0299】
以下に説明するヘッドギア組立体700の一部は、略保持線LRに沿って延在する単一のストラップを具備する一方で、その他のヘッドギア組立体700は2つ以上のストラップを具備する(例えば
図13、16、22、23、26及び27)。例えば、
図16の構成において、ヘッドギア組立体700は、インタフェース本体200から2つの方向に延在してインタフェース本体200を使用者の顔面に固着する1つのストラップを具備する。このストラップは簡便のために一方の側のみに図示されているが、同様のストラップがインタフェース本体の他方の側にも用いられるか、又は同じストラップがインタフェース本体200の両側に延在してよい。
【0300】
次に
図13、22及び27を参照すると、インタフェース本体200を患者に取り付けるために用いることができるヘッドギア組立体700の更に他の例が示されている。これらのヘッドギア組立体700は例証のために示されており、その他の種類のヘッドギアも同様に適することがある。
【0301】
[スロット及び面ファスナ]
図22の例において、ヘッドギア組立体700は上部ストラップ702と下部ストラップ704とを具備する。上部ストラップ702は、耳の上において患者の頭の後ろの周りに延在する。下部ストラップ704は、耳の下において患者の首の後ろの周りに延在する。
【0302】
各ストラップ702、704は、インタフェース本体200の支持部材204に固着される。ストラップ702、704は、クリップに挿通することにより支持部材204に固着されてよい。しかし、一部の実施形態では、ストラップ702、704は、支持部材204を貫通して形成されてよいスロット706を用いて支持部材204に固着されてよい。特に、ストラップ702、704の自由端部708をスロット706に挿通することができる。ストラップ702、704の自由端部708は、例えばベルクロ(登録商標)等の面ファスナにより再びストラップの残りの部分上に固着されてよいが、これに制限されるわけではない。その他の適切な成端技術を用いることもできる。
【0303】
一部の構成においては、上部ストラップ702は下側領域において支持部材204に固着される一方で、下部ストラップ704は上側領域において支持部材204に固着される。このような構成では、ストラップ702、704は患者の頭の側部の上で交差する。
【0304】
[一体化されたストラップ部分を有するインタフェース本体]
図13を参照すると、図に示す支持部材204は、上側細長ストラップ部分710及び下側細長ストラップ部分712等の一体的な細長ストラップ部分を具備する。各細長ストラップ部分710、712はストラップ(例えば上部ストラップ702及び下部ストラップ704)を固着する機構で終端してよい。このような機構は、スロット714の形態で設けられてよい。その他の機構も考えられる。例えば、上部及び下部のヘッドギア用ストラップ702、704の端部と一体的ストラップ部分710、712の端部とに適切な相補的コネクタ、バックル及び穴等を設けてもよい。
【0305】
[単一点調節]
図27に、ヘッドギア組立体700をより容易に調節することができる、ヘッドギア組立体700の更に他の構成が示されている。インタフェースを所望の配置及び/又は張力にするための調節が望まれる。調節性を得るための現行の方法では、例えば
図22及び13に関して説明した面ファスナの端部等であるがこれに制限されない調節可能な機構を組み合わせたものが用いられる。調節可能な機構を組み合わせたものは、インタフェース本体202上において2つ、3つ又は4つ以上の離散的係止点に接続される。各係止点への各接続は別々の手順で調節される必要があり、このことがインタフェース本体の略対称な配置と負荷との達成を困難にしている。
【0306】
図27を参照すると、図に示すヘッドギア組立体700及び調節システムは、ヘッドギア組立体700とインタフェース本体200との間に少なくとも1つのスライド接続部を含む。好ましくは、この少なくとも1つのスライド接続部は、上部ストラップ702とインタフェース本体200の上側部分との間の上側スライド接続部と、下部ストラップ704とインタフェース本体200の下側部分との間の下側スライド接続部とを具備する。
【0307】
これらのスライド接続部は、インタフェース本体200の外面を横切って通るライン716を具備してよい。ライン716は、インタフェース本体200の各側においてヘッドギア用ストラップ702、704に接続される。ライン716は、支持部材204の外面上のスライドクリップ718内においてスライド可能に固着される。好ましくは、ライン716とクリップ718との材料選択によって低摩擦の接触が達成されて、クリップ718に対するライン716の容易な相対移動又はスライドが可能になる。一部の構成においては、ライン716をホース又は管の管腔内に完全に又は部分的に封入して、スライド機構を保護し且つ/又は異物(例えば髪)が調節機構に引っ掛かる可能性を低下させることができる。
【0308】
クリップ718は、好ましくはライン716を捕捉して、ライン716がクリップ718又はインタフェース本体200から離脱する可能性を低下させる。捕捉されるがスライド可能なライン716により、例えばインタフェース本体200が頭部又は顔面から取り外されても、ヘッドギアとインタフェース本体200とを接続されたままにしておくことができる。好ましくは、クリップ718は、希望に応じてインタフェース本体をライン716から取り外すことを可能にするが、さもなければ通常の使用状態においてライン716は取り付けられたままに保たれる。
【0309】
クリップ718は、好ましくは鼻部分220の高さより下の位置においてインタフェース本体200を横切ってライン716を案内するように配置される。クリップ718は更にまた、下部ストラップ704の端部間におけるスライド(滑動)界面を得るために用いられる。下側クリップ718は、インタフェース本体200の下側部分を横切ってライン716を案内する。
【0310】
一部の構成において、クリップ718は1つ以上の回転プーリホイールを具備して、更に摩擦を低下させると共にスライド(滑動)性(即ちライン716とインタフェース本体200との間における相対移動)を向上させる。この点に関して、「スライド(滑動)」という用語は、ライン716とインタフェース本体200との間における相対移動を広範に表現するために用いられたものである。ライン716の回路内における低い摩擦は、例えば使用中であるがこれに制限されずにインタフェース本体200及び/又はヘッドギア組立体700が顔面又は頭部上において移動する時に、ライン716がライン716によって形成されるループの回路の周り全体において緊張状態に保たれることを可能にする。
【0311】
図27を参照すると、単一の調節ライン716はインタフェース本体200とのスライド接続部718を通過すると共に、ヘッドギア組立体700の右側及び左側部分のスライド接続部720を通過する。調節ライン716の2つの端部分はクラスプ722で一緒になる。調節ライン716の端部724を横方向に引き離して、クラスプ722を介して調節ライン716を更に引くことができ、これによって調節ライン716のループの長さが短くなり、患者における装着具合がきつくなる(即ち張力が高くなる)。クラスプ722は、十分な張力が加えられると調節ライン716を通過させる。クラスプ722はいかなる適切な形態を有してもよい。一部の構成において、クラスプ722は伸縮キーホルダー形の構成要素、クラスプ、ジャムクリート、カムクリート、ホイール又はスキー用ビンディング形ラチェット機構又はその他の適切な調節機構を具備してよい。
【0312】
一部の構成においては、調節ライン716の一方の端部のみがクラスプ722を介して調節可能である。調節ライン716の他方の端部は固定又は係止されてよい。一部の構成では、調節ライン716の他方の端部は、例えばクラスプ722、インタフェース本体200、1つ以上のストラップ又はインタフェース本体200とクラスプ722とに固定されるが、これに制限されるわけではない。
【0313】
一部の構成において、クラスプ722は、該クラスプが耐えることができるループ内の張力の大きさの所定の又は調節可能な限度を有してよい。このような構成では、クラスプの張力限度を用いて、保持システムが使用者の顔面に加えることができる力の大きさの限度を設定することができる。クラスプ722は、ホイールが一方の方向に回転すると調節ライン716により形成されるループが締まる一方で、ホイールが他方の方向に回転すると調節ライン716により形成されるループが緩むようにホイールの周りに調節ライン716が巻きつけられた状態で支持部材204に回転可能に固定されるホイールであってもよい。この実施形態においては、ラチェット及び解除機構を組み込んで、ホイールの調節が行われない時(すなわち解除機構がロック状態にある時)にライン716を正位置に保持することができる。
【0314】
一部の構成において、インタフェース本体200及びライン716のループには、支持部材204の上側部分に沿って配置される単一のクリップ718のみが含まれてよい。好ましくは、単一のクリップ718は正中面に沿って又は正中面にかなり接近して配置される。一部の構成においては、幾つかのクリップ718がインタフェース本体200に沿って分散配置されてよく、ライン716は、これらの幾つかのクリップ718の一部分のみを通って延在するように経路設定されてよい。このような態様で、ライン716により形成されるループの形状を変動させることができる。その結果として、ヘッドギア用ストラップ部分720の方へと延在するライン716の角度を制御することができ、ライン716により形成されるループを、患者の耳又はその他の解剖学的特徴の周りに巡らせて快適さ及び/又は装着具合を向上させることができる。
【0315】
上述したように、
図27に示すと共に上記に説明したヘッドギア組立体700は、インタフェースとヘッドギアとの接続部に関する1つの単純な調節部を特徴とする。換言すれば、単一の調節点は、様々なサイズ及び解剖学的特徴の使用者に装着される患者用インタフェースの有効サイズを縮小及び/又は拡大させる上で有効である。加えて、単一点での調節だけでインタフェースの張力を調節することができる。特に、図に示す構成における単一点調節は、ライン716における張力調節時及び調節後にインタフェース及びヘッドギアを顔面上において対称に配置されたままにしておくことを可能にする一方で、使用中及び膨張シールの加圧中にはある程度の滑動を可能にする。
【0316】
ライン716を特徴とするインタフェース本体200及びヘッドギア700の1つの利点は、ヘッドギア組立体700及びインタフェース本体200が頭部及び顔面上において正位置にある時にインタフェース本体200及び/またはヘッドギア組立体700の調節を行うことができるところにある。これは、インタフェース本体200及びヘッドギア組立体700の使い易さを高めると共に簡単な調節を行うことを可能にし、そのことが更に患者の快適さを高める。インタフェース本体200の迅速な装着及び調節により、可能な限り早急に治療を始めることができる。更に、この調節システムは、多くの異なるヘッドギア構成と多くの異なる種類の患者用インタフェースに適用可能である。
【0317】
[装着しやすいヘッドギア]
図26に、患者に迅速且つ容易に装着可能且つ/又は患者又は医療従事者の少なくとも一方により調節可能であるヘッドギア組立体700が示されている。
【0318】
ほとんどのインタフェース本体、特には注気形シールを具備するインタフェース本体200の場合に、ヘッドギア組立体700は好ましくは少しの伸縮性しか有さない。換言すれば、ヘッドギア組立体700は、インタフェース本体200に接続される場合に、好ましくはいかなる伸縮性も又は実質的にいかなる伸縮性も有さない。しかし、膨張シールを有するインタフェースは、患者の顔面にインタフェース本体200を引き寄せる適切なレベルの張力で装着することは特に困難である場合がある。例えば、インタフェース本体200にいかなる呼吸ガス流も送給せずに患者にインタフェース本体200を装着すると、呼吸ガスを送給すると、インタフェース本体200を患者の顔面に快適に維持するために加えられる張力が実質的な漏れの可能性を低下させることができるほど十分ではなくなることがある。
【0319】
図26を参照すると、患者Pはインタフェース本体200を鼻及び口の上に配置されている。ヘッドギア組立体700は、インタフェース本体200の各側に2つの一般に非弾性の接続ストラップ730とインタフェース本体200の各側に2つの一般に弾性の接続ストラップ732とを含む。接続ストラップ730、732はインタフェース本体をヘッドギア組立体700の残りの部分に接続する。
【0320】
非弾性接続ストラップ730は、一端において、取巻き形ヘッドギア734を含む何らかの適切なヘッドギア700に固定され、非弾性接続ストラップ730は、好ましくは、非弾性接続ストラップ730の長さを変動させることを可能にする(即ちインタフェース本体200とヘッドギア734との間における接続部の長さの調節を可能にする)調節機構736を用いてインタフェース本体200に接続される。一部の用途において、調節機構736は、インタフェース本体200ではなしにヘッドギア734に接続される非弾性接続ストラップ730の端部に配置されてよい。いずれの場合も、調節機構736は好ましくは、患者Pの頭部を動かさなくても調節機構736を操作することができるように、患者の頭部を枕又はその他の構造に乗せたままで操作することができる位置に配置される。
【0321】
調節機構736は、いかなる適切な構造を具備してもよい。一部の構成において、調節機構736は、インタフェース本体200に固定されると共に非弾性接続ストラップ730がそれを介して延在する摩擦クラスプを具備する。この摩擦クラスプは、接続ストラップ730を把持するために偏倚して接続ストラップが摩擦クラスプを通り抜ける可能性を低下させる摩擦要素により機能する。調節が必要とされる場合は、摩擦部材を接続ストラップ730から解除して、以ってストラップ730を希望に応じて長くすることができる。摩擦クラスプは、片手で容易に操作することができる単純な機構736となる。一部の構成において、調節機構736は、例えばコキ、バックル、ラチェット、クランプ、カムクリート又はポスト及び穴係合機構を具備してよいが、これらに制限されるわけではない。
【0322】
多くの異なる種類の調節機構を用いて、相対的に非弾性の接続ストラップ730の長さを調節できるようにすることができる。例えば、接続ストラップ730がロープ又はコード等である構成には特に摩擦クラスプ及び様々な形態のカムクリートが適する場合がある一方で、接続ストラップ730が半剛性である場合には特にその他の形態の調節部の方が適することがある。例えば、スキー用ビンディング形のラチェット機構又はその他のクラスプロック機構を適宜用いることができる。
【0323】
一部の構成において、調節機構736は少なくとも2つのモードを有するロック式である。第1のロックモードにおいては、実質的に非弾性の接続ストラップ730の長さを長くすることはできない。ロック解除モードでは、ストラップ730の長さを両方向に調節すること(即ち長くすること及び短くすること)ができる。一部の構成において、それぞれの調節機構736がロックモードにある時には、ストラップ730の長さを短くすることはできるが、長さを長くすることはできない。
【0324】
一部の構成において、ロックモードは、それぞれのストラップ730を長くする調節及び短くする調節が行われる可能性を低下させる作用をする。一部の構成では、全ての調節機構736がインタフェース本体200上に配置される。好ましくは、全ての調節機構736は、インタフェース本体200の前向き面上に配置される。このように調節機構736を配置することにより、患者Pの頭の後側を枕の上に乗せたままでストラップ730の長さ調節を容易に行うことができる。
【0325】
相対的に弾性の上部及び下部接続ストラップ732を相対的に非弾性の接続ストラップ730と平行に配置して、両組のストラップ730、732をインタフェース本体200とヘッドギア734との間に延在させるようにすることができる。換言すれば、相対的に弾性の接続ストラップ732を一方の端部においてヘッドギア734に固定すると共に、更にまた他方の端部においてインタフェース本体200に固定する。相対的に弾性のストラップ732の接続位置は、相対的に非弾性のストラップ730の接続位置と実質的に一致してよい。しかし、一部の構成では、接続位置を偏移させて、非弾性及び弾性ストラップ730、732がそれぞれヘッドギア734及びインタフェース本体200に異なる位置で接続されるようにしてよい。
【0326】
相対的に弾性の接続ストラップ732は、好ましくは伸張性(即ち伸長可能)である。一部の構成において、相対的に弾性のストラップ732は、引き伸ばされていない長さの約1.5倍~約3倍に伸長可能である。好ましくは、相対的に弾性のストラップ732の長さは、引き伸ばされていない長さ又は弛緩長さの約2倍に伸長可能とする。好ましくは、相対的に弾性のストラップ732は、ストラップ材料の伸長による以外のいかなる方法でも長さを調節することはできない。
【0327】
相対的に弾性のストラップ732と相対的に非弾性のストラップ730とを平行に配置することにより2段階の装着手順が容易になる。相対的に弾性のストラップ732により大まかな装着が可能になり、然る後に、最終的な装着が相対的に非弾性のストラップを用いて達成される。一部の救急処置用途では、可能な限り迅速に患者に呼吸療法を行うことが望まれる。迅速な治療開始を達成するために、好ましい装着手順では、最初にインタフェース本体200を患者Pの顔面に対して保持し、然る後にヘッドギア組立体700を患者Pの頭の上に装着する。一部の装着方法では、この装着手順は実質的に患者の頭部に沿って(即ち実質的に患者の正中矢状面に合わせて)行われる。
【0328】
インタフェース本体200を患者Pに装着する方法は:(1)インタフェース本体200を一方の手で、ヘッドギア組立体700を他方の手で把持する段階と;(2)インタフェース本体200を患者の口及び鼻の上に配置して、可能な限り迅速に治療を行う(即ち治療用空気流が既に送給開始されている)段階と;(3)所望のヘッドギア位置に近い位置までヘッドギア組立体700を後方に引いて患者の頭部に被せる段階と;(4)相対的に非弾性の接続部を緩めたままで、インタフェース本体200及び/又はヘッドギア組立体700を放す一方で、相対的に弾性のストラップ732にヘッドギア組立体700を頭部上に且つインタフェース本体200を顔面上に保持させることができるだけの十分な張力を発揮させる段階と;(5)相対的に非弾性のストラップ730を用いてヘッドギア組立体700及びインタフェース本体200の最終調節を行う段階とを具備する。最終調節において、相対的に非弾性のストラップ730の長さを調節すると共に調節機構736を用いてこの所望のレベル/長さに固定することにより、相対的に非弾性のストラップ730を所望の張力レベルにすることができる。
【0329】
相対的に弾性の接続ストラップ732を相対的に非弾性の接続ストラップ730と平行に配置することにより、相対的に非弾性のストラップ730の最終調節まで人的介入を要さずにヘッドギア組立体700を正位置に保つように装着することが可能になる。相対的に弾性のストラップ732は、インタフェース本体200とヘッドギア組立体700との間において大きな移動度をもたらして、ヘッドギア組立体700を患者Pの頭部及び耳の上にかなり容易に装着することを可能にする。相対的に弾性のストラップ732により発揮される保持力は、好ましくは装着時にインタフェース本体200を患者の顔面上に、ヘッドギア組立体700を患者の頭部上に保持することができるだけの十分なものである。相対的に弾性のストラップ732によりインタフェース本体を顔面に適正に密着させることができるだけの十分な張力を得る必要はないが、一部の構成では、相対的に弾性のストラップ732により発揮される弾性保持力を、使用時にインタフェース本体200を顔面に密着させることができる程度に十分に高くすることができる。それでもやはり、広範囲の患者頭部サイズに容易に対応することができる構成であることが好ましい。
【0330】
相対的に非弾性の接続ストラップ730を用いて、一旦ストラップ730を所望の張力/長さに調節し終えると、人工呼吸中にヘッドギア組立体700が伸長する可能性を低下させることができる。弾性ストラップの僅かな伸長がマスク内の圧力を若干降下させることがある。この僅かな圧力降下が人工呼吸器からの応答を生じさせて、ヘッドギア又はヘッドギアとインタフェースとの間の接続部の弾性的伸長により脈動ガス供給が引き起こされるようになる可能性がある。こうした理由により、実質的に非弾性のヘッドギア及びヘッドギアとインタフェースとの間の接続部が望ましい。膨張シールを有するインタフェース本体と一緒に用いられる場合は、ガスをインタフェース本体に流しながら且つシール部材202を膨張させたままで相対的に非弾性の接続ストラップ730の所望の張力/長さを設定することができる。
【0331】
上述の実施形態において、インタフェース本体200とヘッドギア組立体700との間における接続は、インタフェース本体200の両側の上部及び下部の両方のストラップによって行われるが、1組の平行な弾性及び非弾性ストラップ732、730を用いてもよく、又はストラップをインタフェース本体200の一方の側のみに設けてもよい。一部の構成において、平行な弾性及び非弾性ストラップ構成は、各側の上部又は下部ストラップ組の一方のみに用いられる一方で、単一のストラップ(弾性又は非弾性のいずれか)が他方に用いられてよい。一部の構成では、平行な弾性及び非弾性ストラップ構成は、インタフェース本体の一方の側のみに用いられる一方で、他方は単一のストラップ(弾性又は非弾性のいずれか)のみである。
【0332】
加えて、一部の構成において、平行な構成の弾性及び非弾性732、730は、上部及び下部ストラップを有するのではなしに単一の高さのストラップのみを有する構成に用いられる。一部の構成では、頂部ストラップが下側領域においてインタフェース本体に固着される一方で、下部ストラップは上側領域に固着されることがある。このような構成では、ストラップは患者の頭の側部の上で交差する。
【0333】
インタフェース本体200を患者Pに装着する上述の方法は単なる例証であって、変更されてよく、逆転されてもよい。例えば、ヘッドギア組立体700を最初に患者Pの頭部に装着し、然る後にストラップとインタフェース本体200とを引き伸ばして患者Pの頭部に被せて、最終的にインタフェース本体200を略正位置につけることができる。最後に、通常的にガス流をインタフェース本体に送給しながら相対的に非弾性の接続ストラップ730を適切な長さに締めることができる。
【0334】
このため、一部の構成では、一般に非弾性の接続ストラップ703は、インタフェース本体200とヘッドギア組立体700とを患者の頭部の上に容易に装着することができるだけの十分に長めの長さに調節される。その後、インタフェース本体200を一方の手で把持し、ヘッドギアを他方の手で把持する。一方の手でヘッドギア組立体700を頭部上におおよそに配置する。他方の手でインタフェース本体200をヘッドギア組立体700から引き離すことによりヘッドギア組立体700の相対的に弾性のストラップ732を伸長させる。インタフェース本体200をヘッドギア組立体700から引き離した状態で、インタフェース本体200を患者の顔面の上において下方に移動させて口と鼻との上に取り付ける。一旦手を離すと、相対的に弾性のストラップ732が十分な保持力を発揮してインタフェース本体200を患者の顔面上において保持すると共にヘッドギア組立体700を患者の頭部上において正位置に保持する一方で、相対的に非弾性の接続ストラップ730は緩んだままである。ヘッドギア組立体700とインタフェース本体200との調節を完了させるために、相対的に非弾性の接続ストラップの適切な長さ/張力が達成されるまで、調節機構736を介して相対的に非弾性の接続ストラップ730を引く。
【0335】
図28を参照して、相対的に非弾性の接続ストラップ740が相対的に弾性の接続ストラップ742と少なくとも部分的に一体化される更に他の構成を説明する。図に示す相対的に非弾性の接続ストラップ740は、実質的に非伸長性のストラップを具備すると共に、一方の端部においてヘッドギア734に固定される。他方の端部において、実質的に非伸長性の接続ストラップ740は、接続ストラップ740の長さを変動させることを可能にする調節機構744によりインタフェース本体200に接続される。図の構成において、弾性の接続ストラップ742は、一方の端部から他方の端部まで延在すると共にその内側に相対的に非弾性の接続ストラップ740が配置される通路746を具備する。調節機構744は、摩擦クラスプ又は本明細書の別の部分に記載したものを含むがこれに制限されない何らかのその他の適切な調節機構を具備してよい。この調節機構は、好ましくはインタフェース本体200に取り付けられるが、希望に応じてまた別の位置に配置されてもよい。
図28に示す実施形態の利点は、構成が小型であり、視覚的に邪魔にならず、且つストラップが絡まる可能性が低くなるところにある。
【0336】
この実施形態は、ヘッドギア734とインタフェース本体200との間において上部及び下部ストラップ又は1つの高さのストラップのみを含んでよいことが理解される。
図28の実施形態は、摩擦クラスプ744又はその他の適切な調節機構による、相対的に非弾性の接続ストラップ740のロックモードを具備する。ロック解除モードにある時は、相対的に非弾性の接続ストラップ740を長くすること又は短くすることができる。ロックモードにある時は、接続ストラップ740の長さは固定されるか、又はこれに代わる態様として長くすることができない。インタフェース本体200の装着時に、接続ストラップ740及びそれぞれの調節機構744は、インタフェース本体200とヘッドギア734との間の距離が増加する可能性を低下させる歪み制限効果を発揮する一方で、より高い弾性の接続ストラップ742が大まかな装着時に一時的な保持力を発揮する。
【0337】
前述の実施形態のように、
図28に示す構成では、最初にインタフェース本体から又は最初にヘッドギア組立体からのいずれでも装着することができる。好ましい装着手順では、前述のように、インタフェース本体とヘッドギア組立体とが実質的に並行して装着され、すぐに治療を行うために最初にインタフェース本体が患者の顔面の上に配置される。
【0338】
一部の構成において、相対的に非弾性の接続部材
740(図29に点線で示す)は、通路746を通って延在する実質的に圧縮不能/非座屈性の骨部材748により置き換えられるか、又は補完されてよい。この実施形態において、骨部材748は、インタフェース本体200とヘッドギア734との間において、一般に伸びと圧縮又は座屈との両方に抵抗する接続部となる。このような構成では、骨部材748は、好ましくは一般に座屈及び圧縮力に抵抗するように半剛性とされ、これによってヘッドギアに全体の形状を維持させることができる。
【0339】
特に半剛性ヘッドギア組立体に関連して、形状維持性又は自己支持性によって全体としての組立体が直覚的に装着することができるものになることがわかった。特に、接続部及び/又はヘッドギア部材を自己支持性にして、三次元形状が維持されるようにすると、ほとんど何も教えなくてもヘッドギアを正しい配向に装着することができる。自己支持構成においては、ストラップがもつれにくいことが更にまた、全体としての組立体を装着するのにかかる時間を短くする。
【0340】
骨748の半剛性の性質は、インタフェース本体200とヘッドギア734との間における接続部の長さを単純な手順によって短くすることを可能にする。例えば、ロープ又はコードの代わりに骨748を用いると、調節機構744がロック解除位置にある時の接続部の長さは弾性接続ストラップ742の保持力に呼応して「自動的」に短くなる傾向にある。この特徴は更に、システムの装着及び/又は脱着に用いる手順の単純化を助ける。
【0341】
[半剛性ヘッドギア]
患者用インタフェース200と一緒に用いられる更に他のヘッドギアの実施形態を以下に
図30~32を参照して説明する。図に示す構成において、ヘッドギア組立体700は、半剛性ヘッドギア組立体800を具備する。
図30に示すもののようなヘッドギア組立体の利点は、使用していない時にヘッドギア組立体が実質的に三次元の形状を維持することができるところにある。その結果として、患者の頭部へのヘッドギア組立体の装着を直覚的に行うことができると共に、装着前にほとんど何も教えなくても又はもつれることなしに着実且つ正確に達成することができる。
【0342】
本明細書において用いる場合、「半剛性」という用語は、ヘッドギア組立体は、組み立てられたヘッドギア組立体がそれに合わせてヘッドギアが設計された患者の頭部に近い寸法を有する三次元形状をとることができる程度に十分に剛性である一方で、患者の解剖学的特徴に略沿うことができる程度に十分に可撓性でもあることを表すために用いられる。例えば、ヘッドギア組立体のその他の構成要素の幾つか(例えばストラップ)も、これらの構成要素が実質的に「自己支持性」である三次元形態を保持する能力を有する程度に部分的又は全面的に「半剛性」であってよい。「半剛性」のヘッドギア組立体とは、ヘッドギア組立体の各々の且つ全ての構成要素が半剛性であることを意味することを意図しているものではない。例えば、自己支持性ヘッドギア組立体がとることができる実質的に三次元の形態は主にヘッドギア組立体の後部と頂部とに関する。加えて、「半剛性」のヘッドギア組立体は、患者の頭部に配置された時に耳の前方及び耳の上に延在する半剛性領域を含んでよい。
【0343】
図に示すヘッドギア組立体800は、一般に、患者の頭部に係合するように構成される第1のストラップ部分802を具備する。図に示す第1のストラップ部分802は、一般に、下後側領域804と;側部領域806と;上部分812との3つの小部分又は小領域を具備する。一部の構成において、少なくとも第1のストラップ部分802は内面と外面との間において対照的な色を有して形成されて、このように着色されたあらゆる部分の捻れが即座に識別されるようになっている。
【0344】
下後側領域804は、使用者の頭の後ろに係合するように構成される。好ましくは、下後側領域804は、外後頭隆起上又は外後頭隆起より下の位置において頭部に係合するように構成される。下後側領域804は、頭の後ろの周りの距離にわたると共に頭の各側に延在する。一部の構成では、下後側領域804は、患者の耳管を通って延在する水平面より約25度下に配置されるように構成された長手中央を具備する。
【0345】
頭のいずれの側においても、第1のストラップ部分802は左及び右側部領域806となって上方に延在する。側部領域806は一般に上外側(即ち上方且つ外方)に延在する。側部領域806は、患者の耳の後ろに延在するように構成される。好ましくは、側部領域806は患者の乳様突起の後ろにも延在するように構成される。第1のストラップ部分802の左及び右側部領域806の各々は弓状部分808となって延在するか、又は弓状部分808を具備する。弓状部分808は上方且つ前方に曲がる。弓状部分808は患者のそれぞれの耳の上に延在するように構成される。好ましくは、各々の弓状部分808はそれぞれの終端部分810で終端する。終端部分810は、好ましくは、患者の耳の前方に位置するように構成される。一部の構成において、第1のストラップ部分802の側部領域806及び弓状領域808は軟質の内側パッド部分を含むのではなしに、患者の頭部/髪と直接接触する単一の自己支持性弾性材料を具備してよい。
【0346】
第1のストラップ部分802の上部分812は、側部領域806の弓状部分808に接続される。上部分812は、一部の構成では耳の前方に配置されてよい。好ましくは、上部分812は耳から略垂直に配置される。更に好ましくは、上部分812の長手中央は、耳管と交差する垂直平面から約13mm後方に離間するように構成される。一部の実施形態において、上部分812は第1の部分814と第2の部分816とを具備し、第1の部分814と第2の部分816とが組み合わさって上部分812を形成する。第1の部分814は左側弓状部分808の頂点から上方に延在する一方で、第2の部分816は右側弓状部分808の頂点から上方に延在する。好ましくは、上部分812は自己支持性且つ弾性の材料により形成される。一部の構成において、上部分812は、軟質のパッド付き裏当て層を含むいかなる裏当ても含まない。
【0347】
第1の部分814と第2の部分816とはいかなる適切なコネクタ818を用いて接続されてもよい。コネクタ818は、第1及び第2の部分814、816が調節可能に接続されるような調節機構を具備してよい。コネクタ818の調節機構は、快適さを高めるために、好ましくは裏面において実質的に平らである。好ましくは、調節機構は、小さなサイズ変動に対処してある範囲のサイズに対応することができるように調節可能である。例えば、コネクタ818は、第1の部分上の一連の離間した孔部と、上方に突出すると共に第2の部分816上に配置される1つ以上のポストとを具備してよい。一部の構成において、これらの孔部及びポストにより、約20mmの調節ピッチと1つ、2つ又は3つ以上の可能位置とが得られる。この種の調節機構は、ポストを適切な孔部に圧入することにより上部分812の長さを簡単に調節することを可能にする。
【0348】
一部の構成において、第1及び第2の部分814、816は一体的に形成され(即ち上部分812は永久的又は半永久的に弓状部分808に接続される単一のストラップであり)、一部の構成においては、第1及び第2の部分814、816は調節不能に接続される一方で、図に示す構成では、ヘッドギア組立体800を調節して患者に合わせることができる。
【0349】
引き続き
図30を参照すると、少なくとも弓状部分808は、好ましくは、有意な変形又は変位に抵抗することができる程度に十分に剛性である。換言すれば、弓状部分は、負荷が終端部分810又はその周りに前向きに加えられても弓状部が開くことに抵抗する程度に十分に剛性である。加えられる負荷は、例えばヘッドギア組立体800を患者に着用させたままでインタフェース本体200を使用して呼吸ガスを患者に送給している時に見られることがあるストラップ張力に対応するが、これに制限されるわけではない。好ましくは、終端部分810は負荷を担うことができる程度に強く構成されると共に、次の式に一致する曲げ挙動を呈する:[(t*w
3)/12]*TS>2400。ここで、tは材料の厚さであり、wはストラップの幅であり、TSはストラップの形成に用いられる材料の引張強さである。好ましくは、ヘッドギア組立体800の第1のストラップ部分802の少なくとも残りの部分(例えば弓状部分808、側部領域806、上部分812及び下後側領域804)は、次の2つの式を満たすように構成される:(1)[(w*t
3)/3]*FM<6,250。ここで、tは材料の厚さであり、wはストラップの幅であり、FMはストラップの形成に用いられる材料の曲げ弾性率である。(2)[(w*t
3)/12]*TS<24。ここで、tは材料の厚さであり、wはストラップの幅であり、TSはストラップの形成に用いられる材料の引張強さである。加えて、ストラップ幅は好ましくは少なくとも25mmである。一部の構成において、ストラップ幅は約30mmである。一部の構成では、ストラップは約1mmの厚さを有する。
【0350】
再び
図30を参照すると、左下部ストラップ820及び右下部ストラップ822の各々は下後側領域804のそれぞれの側から延在する。左下部ストラップ820と右下部ストラップ822とは、好ましくは下後側領域804から前方に延在する。更に好ましくは、左及び右下部ストラップ820、822は患者の耳の下の位置において前方に延在するように構成される。
【0351】
左及び右下部ストラップ820、822は、半剛性材料により形成されるか、又は半剛性ではなしに従順な材料により形成されてよい。本明細書において用いる場合、半剛性材料には、均質塑性材料及び接着不織布材料を含むがこれらに制限されない成形塑性材料又は板材料が含まれてよい。下部ストラップ820、822が半剛性である場合は、これらが少なくとも下後側領域804と一体的に形成されることが好ましい。しかし、一部の構成では、下部ストラップ820、822は別々に形成されてよく、且つ下後側領域804に永久的、半永久的又は取外し可能に固着されてよい。好ましくは右及び左下部ストラップ820、822は、使用時に患者の頭部及び/又は首の後ろの周りに延在する一体的構成要素として形成される。この一体的構成要素は、下後側領域804と一体的に形成されるか、又は下後側領域804とは別々に形成されると共に下後側領域に何らかの適切な態様で固着されてよい。また右及び左下部ストラップ820、822を単体として形成することにより、有利な点として、たとえ一体的なストラップ820、822が下後側領域804から分離されても、一体的なストラップ820、822は依然として患者の首又は頭部の後ろの周りに固着されるため、故障モードにおいてストラップ820、822の一方が下後側領域804から分離されることによりインタフェース本体200が患者の顔面から外れる可能性を低下させる。
【0352】
左上部ストラップ824及び右上部ストラップ826はそれぞれ、それぞれの終端部分810から延在する。好ましくは、上部ストラップ824、826は前方に、且つ患者の頭の側部の周りに延在する。更に好ましくは、上部ストラップ824、826は、一般に患者の目の下の領域において延在するように構成される。上部ストラップ824、826はインタフェース本体200に接続される。
【0353】
一部の構成において、上部ストラップ824、826は、第1のストラップ部分802とは別個に形成される。上部ストラップ824、826は半剛性材料又は従順且つ/又はコンプライアントな材料により構成されてよい。一部の実施形態において、上部ストラップ824、826は、軟質パッド(即ち患者の頭部に面する表面上のパッド)と一般に非弾性の部分(即ち患者の頭部に対してパッドの反対側の)とによって構成される積層構造をなして形成されてよい。このような構成が
図30に示されている。下部ストラップ820、822又は上部ストラップ824、826のいずれにも積層構造を具備させて、患者の頭部/顔面に接触する少なくともストラップの内側においてストラップ部分が軟質パッド要素を具備するようにすることができる。好ましくは、少なくとも下部ストラップ820、822は、そして一部の構成においては上部ストラップ824、826も、各ストラップの穴により約15Nの最大負荷を支持することができるように構成される。ストラップを、より高い負荷を支持することができるように構成することはできるが、約15Nの最大負荷を支持することにより、マスクが加圧される時に生じる力に対処することができる程度の十分な強度を有する小型のストラップが得られる。このように、ストラップは、好ましくはインタフェース200の加圧によって生じる力に対処することができる大きさとされる。
【0354】
本明細書においてヘッドギア及びストラップに関して用いる場合、「軟質」は、触覚で得られる反応によって評価される材料の品質を意味する材料の風合いを表現するために用いられる。加えて、本明細書においてヘッドギア及びストラップに関して用いる場合、「従順」は、患者の解剖学的特徴に(例えば顔面の特徴の周りに)沿うことができる材料の能力を表現するために用いられる。特に、「軟質」且つ/又は「従順」な材料の少なくとも1つの要素を含むストラップが更にまた「半剛性」且つ/又は軸方向に非弾性であることもある。
【0355】
それぞれの終端部分810への上部ストラップ824、826の取付けは、いかなる適切な態様であってもよい。一部の構成において、この取り付けは、例えば
図31に示すように、上部ストラップ824、826が枢軸点828の周りにおいて回転することを可能にする接合部を用いて行われる。枢軸点828は、終端部分810上において、垂直に対して約33度をなす平面と交差する位置に配置されてよい。一部の構成において、この平面は、上部分812により形成される平面の約33度前方に位置する。しかし、一部の構成では、上部ストラップ824、826は、それ以外の方法で第1のストラップ部分802に接続されてよい。一部の構成において、上部ストラップ824、826は第1のストラップ部分802の弓状部分808と一体的に形成されてよい。
【0356】
図34を参照すると、下部ストラップ820、822と下後側部分804との間の接合点は、
図30の実施形態の場合のように一体化されてよい。
図34に示すように、これらのストラップと下側部分とは撓み領域836を有して構成されて、その幅に沿ってある程度の屈曲を(紙面の平面内における動きを示す矢印850参照)達成すると共に軸方向の長さに沿ってある程度の回転(矢印852参照)を達成することができる。これらの動きは、撓み領域836を有さない構造に対する厚さ方向の屈曲を有意に増加させないままでストラップ820、822を患者の解剖学的特徴に沿わせるのに役立つ。
図34に示すように、撓み領域は溝付き領域を含んでよく、この溝付き領域は、撓み領域836が第1のストラップ部分802により補強される一方で患者の解剖学的特徴に対するストラップ820、822の順応を高めるために屈曲及び捻転することができる脊柱のような外観を有するように材料が除去された部分を有する。更にまた、ストラップ820、822は、補強部が患者に食い込む可能性又は剛性の縁部が患者に向けられる可能性を低下させることができる。補強部は、オーバーモールド成形、溶接、貼合せ、接着又は結合等を含むがこれらに制限されないいかなる適切な態様でストラップ820、822に取り付けられてもよい。
【0357】
図30に示す構成のような一部の構成において、上述の第1のストラップ部分802は、上部分812の第1及び第2の部分814、816が互いに接合されると三次元ヘッドギア形状をとる単一の扁平部材によって形成されてよい。一部の構成では、第1のストラップ部分802と下部ストラップ820、822とは単一の扁平部材によって形成される。一部の構成においては、第1のストラップ部分802と下部ストラップ820、822と上部ストラップ824、826とのいずれもが単一の扁平部材によって形成される。一部の構成では、第1のストラップ部分802と上部ストラップ824、826とのいずれもが単一の扁平部材によって形成される。一部の構成においては、第1のストラップ部分802は第1の単一の扁平部材によって形成され、第1及び第2の下部ストラップ820、822は第2の単一の扁平部材によって形成される。第1及び第2の単一の扁平部材は互いに何らかの適切な態様で固着されてよい。更に、一部の構成において、ヘッドギア組立体の1つ以上の部分(例えば第1のストラップ部分802)は成形又はその他の方法で三次元構成要素として形成されてよい。
【0358】
扁平部材は、例えばサントプレーン、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリオレフィンフォーム又は高分子材料の不織布等であるがこれらに制限されない自己支持性且つ弾力性且つ実質的に非弾性の材料からなってよい。一部の構成において、扁平材料はポリエチレン又はポリプロピレン族によって形成される。材料は、9.65MPaの引張降伏強さと8.96MPaの引張破断強さと234MPaの2%セカント曲げ弾性率とを有する線形低密度ポリエチレンであるダウレックス2517等の低密度ポリエチレンであってよい。扁平部材は、好ましくは、ヘッドギア組立体800が自重下でヘッドギア組立体800の配向に係わりなく実質的に形状を維持するような材料によって形成される。一部の構成において、ストラップは、30Nの引張荷重下で約6mmを超えて伸長しない。一部の構成では、ストラップは、30Nの引張荷重下で約3mmを超えて伸長しない。
【0359】
一部の構成において、1つ以上のストラップ又は扁平部材は、ポリオレフィンと接合(例えばオーバーモールド成形又は積層)されるポリオレフィン不織布(NWP)によって形成されてよい。このような構成では、オーバーモールド成形されるポリオレフィン材料が主要な形状維持特性を発揮する。加えて、より軟質のNWP材料が皮膚に接触するように構成されると共に、所望のレベルの快適さをもたらす。更にまた、NWP材料は、引張荷重に対する所望の耐力特性等の所望の耐力特性を得る上で役立つ。一部の構成において、下部ストラップ820、822は、例えば高分子不織布であるがこれに制限されない軟質材料を具備してよい。
【0360】
上述の実施形態のヘッドギア組立体800は、伸長性をほとんど又は実質的に全く有さない扁平な形状の快適なヘッドギア組立体800となる。例えば、ヘッドギア組立体は、約10kPaを上回る引張弾性率を有することができる。更に好ましくは、ヘッドギア組立体は約20kPaを上回る引張弾性率を有することができる。第1のストラップ部分802(即ち頭の後ろ及び頂部に係合する部分)に少なくとも半剛性の材料を用いることにより、組み立てられたヘッドギアは自己支持形の三次元形態を保持することができる。この特徴が本明細書に記載の特徴と組み合わさって、ほとんど又は全く何も教えなくても直覚的に装着することができるヘッドギア組立体をもたらす。特に、装着速度は、既存のヘッドギア設計より有意に速くなることがわかった。
【0361】
特に
図30を参照すると、図の下部ストラップ820、822及び図の上部ストラップ824、826は、ヘッドギア組立体800を様々な構成のインタフェース本体200に取り付けるための調節可能な機構を得るために、一連の調節用孔部830を含む。インタフェース本体200は、好ましくは、ストラップ820、822、824、826の孔部830と係合するように構成されたポスト832を具備する。製造時において、これらの孔部は、好ましくは、孔部を取り巻く材料を焼勺して、簡単に製造できる態様で孔部の耐久性を高めることができるようになるレーザ切断を用いて形成される。図に示す方式の取付け及び調節機構は、実用において有効であると共に、ほとんど又は全く何も教える必要がない直覚的な方法となる。特に、インタフェース本体200に対する調節/接続部の位置は、有利には、インタフェース本体の表面上に配置される。好ましくは、インタフェース本体200に対する調節/接続部の位置は、インタフェース本体200の外面上に形成される支持部材204の横方向延在部分上に配置される。このような位置は、容易に接近可能であると共に、例えば患者の頭部を枕の上に乗せたままで装着/調節を容易に行うことができる。換言すれば、ストラップの調節を耳の前の位置で、更に好ましくはインタフェースの最後側面の前で行うことができる。この調節は更にまた、孔部830によって定められる位置の個数が有限であるため、左側及び右側ストラップの長さ調節を正しい均衡状態にしておくのに向いている。上部及び/又は下部ストラップ(820、822、824、826)に設けられる孔部830は、非常に容易に数えること又は視覚的に合致させることができて、ヘッドギアの対称な装着を促進する。更に、例えば
図22のスロット及び面ファスナ要素を用いる場合に見られるように張力付与時にストラップを折り返さないため、装着時にストラップ820、822、824、826に加えられる力が有意に小さくなる。換言すれば、
図30~32に示す取付け及び調節機構を用いると、乗数効果は起こり得ない。
【0362】
加えて、図に示すストラップ820、822、824、826は、半剛性の構成であるため、自然に前方に提示される傾向にある。一部の構成では、図のストラップ820、822、824、826の一部分のみが半剛性構造により形成される。この部分が十分に横方向又は前方に提示されて、ストラップが患者の頭部の後ろに隠れること又はもつれることがなくなる。加えて、一部の構成では、下部ストラップ820、822の部分及び接続される下後側領域804の部分が半剛性である一方で、遠位端部(即ちインタフェース本体200に接続されるストラップ820、822の端部)は、軸方向には相対的に非弾性のままであるが、実質的により可撓性である。ストラップ820、822、824、826の前方に提示される性質により、孔部830とインタフェース本体200の取付け用ポスト832との位置決め及び整合を直覚的且つ容易に行うことができる。ストラップ820、822、824、826が所定の患者には相対的に長い場合には、ストラップ820、822、824、826は、ポスト823がそれを貫通して延在する孔部830を有意に超えて前方に突出しかねない。このような状況では、前方に突出しているストラップ820、822、824、826を折り返して、また他の孔部830をポスト832の上に通すことができる。その結果として、ストラップの余分な長さ部分がインタフェース本体上において保持されたさっぱりとしたこぎれいな構成が得られる。
【0363】
1つの実施形態において、上部ストラップ824、826と患者用インタフェース200との間の取付けは半永久的であることが好ましい。このような実施形態の場合の装着手順を特に
図32A~32Dを参照して以下に説明する。
図32Aにおいて、医療従事者はインタフェース本体200を手に取ると共に、それを患者の顔面上に配置して、直ちに呼吸療法を行う。インタフェース本体200を顔面上に配置する時に、インタフェース本体は上述したような密封フランジ208を含む。フランジ208は、患者の顎を収容し且つ/又は顎の上に配置される凹部を含む。このため、インタフェース本体200を顔面上に配置する時には、顎を凹部内に配置し、然る後にインタフェース本体200の残りの部分を顔面に接触させる。インタフェース本体を顔面上において正位置に配置した状態で、医療従事者は、上部ストラップ824、826によりインタフェース本体に接合されるヘッドギア組立体800を他方の手で把持すると共に、ヘッドギア組立体800を患者の頭の上に持ち上げる。
図32Bに示されるように、医療従事者はヘッドギア組立体800を下方に引いて患者の頭の後ろに被せる。下部ストラップ820、822は、半剛性の構造のためにやや解けたままで頭の側部の周りに位置する。加えて、インタフェース本体200は上部ストラップ824、826により顔面に対して緩く保持される。
図32Cに示すように、医療従事者はポスト832を適切な孔部830に圧入することにより下部ストラップ820、822をインタフェース組立体に接続する。それが望まれる場合は、
図32Dに示すように、上部ストラップを調節することができる。上部ストラップ820、822及び/又は下部ストラップ824、826に最終調節を行って最終的な装着を終える。上記の段階は必ずしも記載した順番に行われなくもよい。
【0364】
特に
図31を参照すると、ヘッドギア組立体800は、枢軸点828においてヘッドギア組立体800に固着される実質的に非弾性の上部ストラップ824、826を具備する。他方の端部において、実質的に非弾性の接続ストラップ824、826は、ストラップ824、826の長さを変動させることを可能にする調節機構を用いてインタフェース本体200に接続可能である。例えば、インタフェース本体200とヘッドギア組立体800との間における接続部の長さは、インタフェース本体200のポスト832を各々のストラップ824、826の適切な孔部830に圧入することによって調節可能である。左及び右側の各々の上部ストラップ824、826は、一方の端部においてヘッドギア組立体800に、他方の端部においてインタフェース本体200に何らかの適切な態様で固着される伸長可能な弾性ストラップ834を具備してよい。好ましくは、平行なストラップ(即ち平行をなす弾性及び非弾性ストラップ)が用いられる場合は、これらの2つのストラップを互いに異なる色にして、弾性及び非弾性ストラップ間において色を対比させる。弾性及び非弾性ストラップ824、826、834を平行に配置することにより、すでに説明した手順と同様の2段階の装着手順が容易になる。相対的に弾性のストラップ834を用いて大まかな装着を達成した後に、相対的に非弾性ストラップ824、826を用いて最終的な装着を達成する。一部の構成において、下部ストラップ820、822はすぐ上に説明した態様と同じ態様で構成されてよい。
【0365】
[ヘッドギア]
図33に、更に他のヘッドギア組立体900が示されている。ヘッドギア組立体900は、既に説明したもの等の幅広く様々な患者用インタフェースと一緒に使用可能である。特に、図に示すヘッドギア組立体900は、上述の構成の患者用インタフェース200に特に適する。ヘッドギア組立体900は、不器用な人でも容易に装着及び脱着できるように構成されている。加えて、図のヘッドギア組立体900は、患者の耳の下又は後ろに延在するストラップがないため、特に容易に且つ快適に装着及び脱着することができる。患者の耳の下に延在するストラップを有するヘッドギア組立体では、脱着又は装着時にこれらのストラップが患者の耳に引っ掛かることがある。
【0366】
図に示すヘッドギア組立体900は、患者の頭頂部の上に延在する頂部ストラップ902を具備する。頂部ストラップ902は、好ましくは患者の頭の曲線に実質的にぴったりと接して位置する。好ましくは、頂部ストラップ902は略耳の後ろの位置において患者の頭頂部の上に配置されるように構成される。
【0367】
頂部ストラップ902は、もみあげ部分904を具備してよい。もみあげ部分904は略垂直方向に延在する頂部ストラップ902から延在する。好ましくは、もみあげ部分904は略耳の上の位置において頂部ストラップ902から延在する。もみあげ部分は耳に対して下方且つ前方に延在する。もみあげ部分904は、好ましくは、患者の耳の下且つ前の位置で終端する。
【0368】
ヘッドギア組立体900は更に後部ストラップ906を具備する。このストラップ906は略患者の耳の上の位置において頂部ストラップ902に枢軸908で枢転可能に接続されてよい。枢軸908の位置は好ましくは略垂直に延在する頂部ストラップ902ともみあげ部分904との間の接続部の付近である。
【0369】
枢軸908は後部ストラップ906が2つの動作状態間において回転することを可能にする。
図33Aに示す第1の動作状態において、後部ストラップ906は上方に枢転して、患者の頭の後ろから離れ、これによってヘッドギア組立体900の容易な取外しが可能になる。
図33Bに示す第2の動作状態では、後部ストラップ906を下方に回転させて、後部ストラップ906の下後側部分を患者の頭の後ろに係合させるようにすることができる。好ましくは、後部ストラップ906の下後側部分は、外後頭隆起上又はそれより下の位置において患者の頭に係合するように構成される。
【0370】
後部ストラップ906と頂部ストラップ902とは、実質的に
図33Bに示す位置である下位置に後部ストラップ906を固定する作用をするロック機構を備えてよい。一部の構成において、このロック機構は、それぞれ頂部ストラップと後部ストラップとの一方に付随してよい戻り止めと対応する突起とを具備する。戻り止めと突起とは、好ましくは、ヘッドギア組立体900の両側に配置される整合組をなす。
【0371】
一部の構成において、後部ストラップ906は対応する戻り止めを備える一方で、頂部ストラップ902は突起を備えてよい。後部ストラップ906が、
図33Bに示す位置まで下げられると、戻り止めが突起と整合し、後部ストラップ906が正位置に固定されて、これによって後部ストラップ906はインタフェース本体200をストラップにより患者の顔面に引き付けることができる。
【0372】
後部ストラップ906を外してヘッドギア900をより容易に取り外すことができるようにするために、突起をばね偏倚させると共に、突起が戻り止めから外れるまで偏倚ばねを押圧することにより解除することができる。これに代わる方法として、ロック機構を圧倒することはできるが損傷させない程度の十分な力で後部ストラップ906を持ち上げてもよい。更にまた数多くのその他の適切なロック機構をヘッドギア組立体900に用いることができる。
【0373】
図に示すヘッドギア組立体900のもみあげ部分904は、ストラップ920、922(即ちそれぞれ上部及び下部ストラップ)をそこからインタフェース本体に取り付けることができる取付け点916、918となる。一部の構成において、ヘッドギア組立体900は、インタフェース本体200とヘッドギア組立体900との間においてもみあげ部分904の各側に単一のストラップのみを含んでよい。一部の構成では、上部ストラップ920をインタフェース本体200の下側部分に接続する一方で、下部ストラップ922をインタフェース本体200の上側部分に十字交差の態様で接続することができる。
【0374】
一部の構成において、1つ以上のストラップ920、922はよく伸びる弾性材料により形成されてよい。一部の構成において、1つ以上のストラップ920、922は実質的に非弾性材料により形成されてよい。頂部ストラップ902及びもみあげ部分904は、ヘッドギア組立体900が実質的に三次元形状をとることができ且つ一般にもつれないように、半剛性の自己支持性材料により形成されてよい。加えて、後部ストラップ906は半剛性の実質自己支持性材料により形成されてよい。一部の構成において、材料は、例えば従順な部分と半剛性部分との両方の積層構造を具備してよいが、これに制限されるわけではない。
【0375】
少なくとも頂部ストラップ902及びもみあげ部分904は、患者の快適さを高めるためにパッドを含んでよい。後部ストラップ906も、患者の快適さを更に高めるために、少なくとも部分的にパッドを含んでよい。パッドは、少なくとも層状のパッド材料がヘッドギアの内側において患者の皮膚及び/髪に隣接して配設されるいかなる適切な構成をとってもよい。一部の構成において、パッドは軟質のフォーム層又はその他の軟質材料であってよい。一部の構成では、半剛性のヘッドギア構成要素が、例えば軟質材料により全面的又は部分的に包み込まれるか、又は軟質材料をオーバーモールド成形されてよいが、これに制限されるわけではない。
【0376】
上述した本発明の説明に、本発明の好適な形態が示されている。添付の特許請求の範囲に暫定的に示す本発明の範囲から逸脱することなしに、これらに改変を加えることができる。特に、本発明は、複数の患者用インタフェース(マスク)の発明と複数のヘッドギア及び調節システムの発明とを説明するものであることが理解されるであろう。本明細書には、様々な実施形態のインタフェースが様々な実施形態のヘッドギアと組み合わされる複数の例が示されているが、本発明の各々の且つ全ての可能性が明示的に示されているわけではない。構成要素の各々の且つ全ての組合せを本発明の一部分として単独で又は組み合わせて用いることができることとする。同様に、ヘッドギア及びインタフェースのその他の周知の設計をそれぞれ本発明のインタフェース及びヘッドギアの設計と共に用いることもできる。