(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを含む医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/44 20060101AFI20220721BHJP
A61K 47/38 20060101ALI20220721BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20220721BHJP
A61K 47/22 20060101ALI20220721BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20220721BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20220721BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
A61K31/44
A61K47/38
A61K47/10
A61K47/22
A61K47/20
A61K9/10
A61P17/00
(21)【出願番号】P 2020502201
(86)(22)【出願日】2018-08-10
(86)【国際出願番号】 KR2018009151
(87)【国際公開番号】W WO2019031902
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2021-03-09
(31)【優先権主張番号】10-2017-0102316
(32)【優先日】2017-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】506213681
【氏名又は名称】アモーレパシフィック コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】100, Hangang-daero, Yongsan-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100121382
【氏名又は名称】山下 託嗣
(72)【発明者】
【氏名】チェ,ジュン ホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ウォン キョン
(72)【発明者】
【氏名】シン,クワァン-ヒョン
(72)【発明者】
【氏名】ウ,ビョン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】イ,キ-ファ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ミン-ス
(72)【発明者】
【氏名】ロン,ジョン ファ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミ ヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ヨン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】パク,ウン シル
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジェ ホン
【審査官】小川 知宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-544696(JP,A)
【文献】特開2017-031065(JP,A)
【文献】Journal of Dermatological Science,2011年,62,8-15
【文献】Journal of Pharmaceutical and Biomedical Analysis,2012年,61,8-14
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/44
A61K 47/00
A61K 9/00
A61P 17/00
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学式1で表される化合物(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを第1成分として含み、
ヒプロメロースであるセルロース系ポリマーを第2成分として含む水系の医薬組成物。
<化学式1>
【請求項2】
粘度が2ないし20mPa・s(粘度は20℃で2%(w/v)水溶液に対する粘度である)の前記セルロース系ポリマーを含む請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記セルロース系ポリマーの含有量が全体医薬組成物重量の1ないし5重量%である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項4】
前記セルロース系ポリマーと化学式1の化合物の重量比は1ないし3:1である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項5】
前記化学式1の化合物に対する溶解度が100mg/mL以上の溶媒をさらに含む請求
項1に記載の医薬組成物。
【請求項6】
前記溶媒は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、ピロリドン‐2及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される1種以上である請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項7】
前記溶媒は、ジエチレングリコールモノエチルエーテルまたはポリエチレングリコールである請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記溶媒は、ポリエチレングリコール300またはポリエチレングリコール400である請求項
7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
前記溶媒は、全体組成物重量の5ないし20重量%で含まれる請求項
5に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記化学式1の化合物は、全体組成物重量の0.1ないし1.5重量%で含まれる請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記医薬組成物は皮膚に適用される外用剤で製剤化される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項12】
前記医薬組成物は、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはパップ剤の剤形で製剤化される請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項13】
ヒプロメロースであるセルロース系ポリマーを第2成分で追加する工程を含む、下記化学式1で表される化合物(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを第1成分として含む水系医薬組成物の結晶形成を抑制する方法。
<化学式1>
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年8月11日付韓国特許出願第10‐2017‐0102316号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は本明細書の一部として含む。
本発明は、使用感に優れる(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを含む医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
化合物(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドは、下記化学式1で表され、国際公開WO2008/013414号の明細書の実施例230に開示されている化合物である。
<化学式 1>
【化1】
前記化学式1の化合物は、バニロイド受容体拮抗活性を有し、痛み、神経障害、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患、炎症性疾患などに効果的な治療剤としての用途が期待されている有用な化合物である。特に、筋肉痛又は皮膚疾患の場合、局所的に皮膚に直接適用される。よって、化学式1の化合物に適する製剤形態の一つとして外用製剤が求められている。
そこで、本発明者らの化学式1の化合物に対する溶解度実験で、水に対する溶解度が0.1mg/mL未満であり、難溶性を示すことが確認された。水に難溶性の薬物を外用製剤に製剤化するためには、通常、水を含有しないか、その含量を最小限に留めて、難溶性物質を可溶化できる溶媒を利用する。しかし、これは皮膚に良くない影響を与えたり、使用感が悪くなることがある。特に、アトピー皮膚炎のように感受性が上昇している患者に適用する場合、アトピー皮膚炎がより悪化したり、適用頻度が低下し、結局、治療効果に悪影響を及ぼすことがある。また、化学式1の化合物は、水に難溶であるのみならず、油に対する溶解度も顕著に低い。
水難溶性を改善するためにポリマーを利用して難溶性物質を無定形状態にした後で外用製剤化する試みがあった。しかし、無定形状態は基本的に不安定で、特に温度及び湿気に脆弱である(International Journal of Pharmaceutics 475(2014)385‐392)。また、外用製剤は、通常、それ自体に水が既に含まれているため、通常の方法では無定形が結晶化されることを抑制することが難しい。
難溶性物質を含む外用製剤に関する別の従来技術としては、別途製造した固体分散体を外用製剤の溶媒処方に混合することである。しかし、これは外用製剤完製品が医薬品の保管期間を確保可能な程度で結晶化を抑制する具体的なデータを提示することができなかった(J. DRUG DEL. SCI. TECH., 21(6)509‐5162011, Int J App Pharm.)。
このように、医薬的に効能があっても製剤化が容易ではない、水難溶性及び脂難溶性化合物である化学式1の化合物を含有し、使用感に優れ、2年以上の保存期間で結晶の形成が抑制される医薬組成物の開発が求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明者らは上記問題点を解決するために多角的に研究した結果、セルロース系ポリマーを用いることによって、長期間結晶形成が遅延され、使用感に優れる医薬組成物を製造できることを見出し、本発明の完成に至った。
本発明の目的は、(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを含み、結晶の形成が抑制され、使用感に優れる医薬組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
前記目的を達成するために、本発明は下記化学式1で表される化合物(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを第1成分として含み、セルロース系ポリマーを第2成分として含む医薬組成物を提供する。
また、セルロース系ポリマーを第2成分として追加する工程を含む、化学式1で表される化合物(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを第1成分として含む医薬組成物の結晶形成を抑制する方法を提供する。
【発明の効果】
【0005】
本発明の医薬組成物は、活性成分である化学式1の化合物が結晶化されることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1a】本発明の参照組成物1ないし8をそれぞれ40℃チャンバーで24時間保管した後の、結晶析出可否を観察した光学及び偏光顕微鏡イメージである。
【
図1b】本発明の参照組成物1ないし8をそれぞれ40℃チャンバーで24時間保管した後の、結晶析出可否を観察した光学及び偏光顕微鏡イメージである。
【
図1c】本発明の参照組成物1ないし8をそれぞれ40℃チャンバーで24時間保管した後の、結晶析出可否を観察した光学及び偏光顕微鏡イメージである。
【
図2a】本発明の比較組成物1ないし3及び実施組成物1ないし10を加速条件である40℃恒温チャンバーで2週間保管した後の、結晶析出可否を観察した光学及び偏光顕微鏡イメージである。
【
図2b】本発明の比較組成物1ないし3及び実施組成物1ないし10を加速条件である40℃恒温チャンバーで2週間保管した後の、結晶析出可否を観察した光学及び偏光顕微鏡イメージである。
【
図2c】本発明の比較組成物1ないし3及び実施組成物1ないし10を加速条件である40℃恒温チャンバーで2週間保管した後の、結晶析出可否を観察した光学及び偏光顕微鏡イメージである。
【
図2d】本発明の比較組成物1ないし3及び実施組成物1ないし10を加速条件である40℃恒温チャンバーで2週間保管した後の、結晶析出可否を観察した光学及び偏光顕微鏡イメージである。
【
図3】本発明の実施組成物8を長期保管条件で24ヶ月及び31ヶ月保管した後の、結晶析出可否を観察した光学及び偏光顕微鏡イメージである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、特定ポリマーを使用することにより、長期間結晶形成が抑制された医薬組成物を提供することができる。
本発明による医薬組成物は、下記化学式1で表される化合物を第1成分で含み、セルロース系ポリマーを第2成分で含む。
<化学式 1>
【化2】
化学式1で表される化合物は、バニロイド受容体‐1(VR1又はTRPV1(transient receptor potential vanilloid‐1)拮抗剤として、痛み、神経障害、アトピー性皮膚炎などの皮膚疾患、炎症性疾患などに有用である。本発明の化学式1の化合物、その製造方法及びバニロイド受容体拮抗活性は、国際公開WO2008/013414号に詳細に開示されておりこの文献に開示されている全ての内容を本発明に参照として含む。
本発明において、化学式1の化合物は、薬学的に許容される塩及び親化合物の双方を含む。その例として、(1)無機酸で形成されたり、有機酸で形成される酸付加塩または(2)親化合物に存在する酸性プロトンが置換される時に形成される塩を含む。
【0008】
本発明による医薬組成物の第1成分である化学式1の化合物は、総組成物に対して0.1ないし1.5重量%、好ましくは0.5ないし1.2重量%、より好ましくは0.8ないし1.2重量%で含むことができる。化学式1で表される化合物の含量が0.1重量%未満であれば意図する治療効果が表れないこともあるし、1.5重量%超であれば、溶媒と第2成分と含量が相対的に減少され、使用感の低下と結晶形成の抑制効果が低減することがある。
本発明において、セルロース系ポリマーは、本発明の医薬組成物の活性成分である化学式1の化合物が結晶で形成されることを長期間抑制し、使用感を増進させる。前記セルロース系ポリマーは入手しやすく、化学反応を通じて構造変更が容易である特性を有し、一般に医薬組成物の賦形剤として幅広く用いられており、本発明では化学式1の化合物の結晶形成を抑制するために用いることができる。
本発明におけるセルロース系ポリマーとしては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒプロメロースからなる群から選択される1種以上が挙げられ、好ましくはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒプロメロースからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはヒプロメロースである。
前記セルロース系ポリマーの含量は、本発明の医薬組成物総重量の1ないし5重量%、好ましくは1ないし3重量%、より好ましくは2.5重量%とすることができる。前記セルロース系ポリマーの含量が1重量%未満であれば、結晶形成抑制効果を十分に発揮することができず、医薬組成物で結晶が析出されることがあり、5重量%超であれば、結晶は析出されないが使用感が低下されることがある。
セルロース系ポリマーは、化学式1で表される化合物に対する重量比が1ないし3:1、好ましくは1.5ないし3:1、より好ましくは2ないし3:1とすることができる。前記重量比未満であれば、結晶形成抑制効果が十分に発揮することができず、医薬組成物で結晶が析出されることがあり、前記重量比超であれば、結晶が析出されないが使用感が低下されることがある。
また、前記セルロース系ポリマーの粘度は2ないし20mP・sとすることができ、好ましくは2ないし16mP・s、より好ましくは2ないし10mP・s、さらに好ましくは2ないし6mP・sである。粘度は20℃で2%(w/v)水溶液に対する粘度である。粘度が2mP・s未満であれば、結晶形成抑制効果を十分に発揮することができず、医薬組成物で結晶が析出されることがあり、20mP・s超であれば使用感がよくないこともある。特に、アトピー皮膚炎のように感受性が強い患者に適用する場合、アトピー皮膚炎がさらに悪化したり、服薬順応度が低下して、結局治療効果に悪影響を及ぼすことがある。
【0009】
具体的に、セルロース系ポリマーの中でヒドロキシプロピルセルロースは、20℃で2%(w/v)水溶液に対する粘度が6.0‐10.0mP・sのヒドロキシプロピルセルロースLFまたは粘度が150‐400mP・sのヒドロキシプロピルセルロースEFで、好ましくはヒドロキシプロピルセルロースLFである。
本発明において、セルロース系ポリマーは、顕微鏡(例えば、オリンポス社のBX50)の100倍率以上で、具体的には、100倍率で、好ましくは500倍率で、より好ましくは1000倍率で化学式1の化合物の結晶が観察されない程度で結晶形成を抑制する。結晶析出可否は、光学イメージで暗褐色の不規則な粒子が観察され、同時に同じ位置の偏光イメージで異方性粒子が観察された時に結晶と判断される。
【0010】
本発明において、溶媒を、難溶性である化学式1の化合物を溶解させるために使用してもよい。化学式1の化合物の溶媒に対する溶解度が高いため、少量でも溶解可能であり、安全性の高い溶媒が好ましい。
溶媒は、化学式1の化合物に対する溶解度が100mg/mL以上の溶媒が挙げられ、好ましくは120mg/mL以上、より好ましくは150mg/mL以上の溶媒を用いることができる。
本発明による溶媒は、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、2‐ピロリドン及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される1種以上が挙げられ、好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールの中で選択される1種以上であり、より好ましくはポリエチレングリコールである。本発明による溶媒として前記ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール300またはポリエチレングリコール400であってもよく、好ましくはポリエチレングリコール400である。
前記溶媒は、全体組成物重量において、5ないし20重量%、好ましくは5ないし15重量%、より好ましくは8ないし12重量%で含むことができるよい。溶媒の含量が5重量%未満であれば、前記化学式1で表される化合物を完全に溶解させることができず、20重量%超であれば、溶媒の含量が多すぎて使用感が低下することがある。
【0011】
本発明の医薬組成物は、皮膚外用剤として製剤化されることができ、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤、パップ剤、エッセンス、パック、パウダー、オイル、ワックス、スプレー、ペースト、溶液、懸濁液、乳濁液又はせっけんとして製剤化されてもよい。
一方、望む剤形に応じて、化学式1の化合物の効果を損傷させない範囲で、本技術分野で通常使用する公知の成分をさらに含むことができる。例えば、担体、乳化剤、保湿剤、皮膚コンディショニング剤、界面活性剤、キレート剤、酸化防止剤、殺菌剤、安定化剤及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択された添加剤が挙げられる。
前記担体としては、動物繊維、植物繊維、ワックス、パラフィン、澱粉、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコーン、ベントナイト、シリカ、タルク、酸化亜鉛、ラクトース、シリカ、アルミニウムヒドロキシド、カルシウムシリケート、ポリアミドパウダー、水、エタノール、イソプロパノール、エチルカーボネート、エチルアセテート、ベンジルアルコール、ベンジルベンゾエイト、プロピレングリコール、1,3‐ブチルグリコールオイル、グリセロール脂肪族エステル、ポリエチレングリコール、液状希釈剤、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールエステル及びポリオキシエチレンソルビタンエステル等の懸濁剤、微小結晶セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド、ベントナイト、アガまたはトラガカント、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウレート、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセライド、脂肪酸ジエタノールアミド、植物性オイル、リノリン誘導体、またはエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどが挙げられるが、これに限定されない。
【0012】
前記保湿剤としては、グリセリン、グリセリルステアレートなどがあるが、これに限定されない。
前記皮膚コンディショニング剤としては、サリクロメチコン、ジメチコンなどがあるが、これに限定されない。
前記界面活性剤としては、ポリオキシエチレン‐ソルビタン‐脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレン共重合体、セテアリルグルコシド及びモノ/ジグリセライドなどを挙げることができるが、これに限定されない。
前記キレート剤としては、エチレンジアミンテトラ酢酸ナトリウム(EDTA)、α‐ヒドロキシ脂肪酸、ラクトフェリン、α‐ヒドロキシ酸、クエン酸、乳酸、マロン酸、ビリルビン、ビリベルジン(biliverdin)などがあるが、これに限定されない。
前記酸化防止剤としては、ブチルヒドロキシアニソル、ジブチルヒドロキシトルエンまたはプロピルガラートなどを挙げることができるが、これに限定されない。
その他、前記医薬組成物に配合可能な成分として、pH調節剤、可塑剤、可溶化剤、ゲル化剤、結合剤、等張化剤、無痛化剤、保存剤、分散剤、不透明化剤、抗酸化剤、浸透圧調節剤、消泡剤、湿潤剤、増粘剤、粘着剤、遮蔽剤、着色剤、着香剤、被膜形成剤、懸濁化剤、揮発抑制剤、吸着剤、乳脂成分、エモリエント剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、アルコール、血行促進剤、冷感剤、制汗剤などが挙げられる。
【0013】
本発明の医薬組成物の好ましい1回投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、組成物の形態、投与経路及び期間によって異なるが、皮膚外用剤で適用する時の塗布量は、患者の人差し指の節ぐらいクリームを一列に絞る時の容量(1 finger‐tip unit(FTU)、0.5g)が患者の手のひらの大きさの2倍面積(~BSA2%)に塗布する1回の適正量に該当する。
BSA(Body Surface Area)とは、病変部位を意味し、9の法則(Rule of 9)によって全皮膚面積100%の中で、病変部位の面積を評価した数値である。
例えば、本発明の医薬組成物の投与対象がアトピー皮膚炎患者、例えば、5%~30%BSA病変の患者の場合、1回投与量は好ましくは25mg~150mgとすることができ、1日投与量の範囲内で病変の大きさ、形態、症状の度合い、年齢を考慮して適切に調節して投与することができる。
【0014】
本発明の医薬組成物は、TRPV1拮抗剤である前記化学式1の化合物を有効成分で含むため、TRPV1拮抗効果で治療できる疾病、例えば、痛み、アトピー皮膚炎などの皮膚疾患などに対する治療目的で用いることができる。また、使用感も増進されるので、特に皮膚外用剤として適宜製剤化してもよい。
本発明の医薬組成物は、好ましくは
(1)薬物として第1成分である前記化学式1の化合物、
(2)第2成分としてセルロース系ポリマー、
(3)溶媒としてジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、2‐ピロリドン及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される1種以上の成分、
(4)水相の成分として水、
(5)油相の成分として、PEG‐30水添キャスターオイル、中鎖トリグリセライド、セトステアリルアルコール、スクアラン及びシクロメチコンからなる群から選択される1種以上の成分、
(6)界面活性剤として、ポリオキシエチレン‐ソルビタン‐脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル類、ソルビタン脂肪酸エステル類、ポリオキシエチレン‐ポリオキシプロピレン共重合体、セテアリルグルコシド及びモノ/ジグリセライドからなる群から選択される1種以上の成分、
(7)増粘剤として、キサンタンガム、ゼラチン、ゲランガム、カラギーナン及びカルボマーからなる群から選択される1種以上の成分を含む、水中油(O/W)エマルジョン形態とすることができる。
本発明の組成物の中で薬物として第1成分である化学式1の化合物の含量は、全体組成物重量の0.1ないし1.5重量%とすることができる。第2成分であるセルロース系ポリマーの含量は、全体組成物重量の1ないし5重量%とすることができる。前記溶媒の含量は、全体組成物重量の5ないし20重量%とすることができる。前記水相の含量は全体組成物重量の45ないし90重量%とすることができる。前記油相の含量は、5ないし30重量%とすることができる。前記界面活性剤の含量は1ないし10重量%とすることができる。前記増粘剤は、0.01ないし5重量%とすることができる。
【0015】
また、本発明は化学式1で表される化合物(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを第1成分として含む医薬組成物の結晶形成を抑制する方法を提供し、これはセルロース系ポリマーを第2成分として追加する工程を含む。
【実施例】
【0016】
項目1.下記化学式1で表される化合物(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミド及びセルロース系ポリマーを含む医薬組成物。
<化学式1>
【化3】
項目2.第1項目において、前記セルロース系ポリマーは化学式1の化合物の結晶形成を抑制するものである医薬組成物。
項目3.第1項目または第2項目において、前記医薬組成物は光学顕微鏡を利用して100倍率以上、好ましくは500倍率以上、より好ましくは1000倍率以上で観察する時、化学式1の化合物の結晶が観察されない医薬組成物。
項目4.第3項目において、前記光学顕微鏡は偏光フィルターが装着されたものである医薬組成物。
項目5.第1項目ないし第4項目のいずれか一項目において、前記セルロース系ポリマーは下記(i)ないし(iii)のいずれか一つ以上を特徴とする医薬組成物。
(i)その粘度が2ないし20mPa・s、好ましくは2ないし16mPa・s、より好ましくは2ないし10mPa・s、最も好ましくは2ないし6mPa・s、
(ii)その含有量が全体組成物重量の1ないし5重量%、好ましくは1ないし3重量%、より好ましくは2.5重量%、または、
(iii)化学式1で表される化合物に対する重量比が1ないし3:1、好ましくは1.5ないし3:1、より好ましくは2ないし3:1。
項目6.第1項目ないし第5項目のいずれか一項目において、前記セルロース系ポリマーは、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒプロメロースからなる群から選択される1種以上のものであったり、好ましくはヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒプロメロースからなる群から選択される1種以上のものであったり、より好ましくはヒプロメロースである医薬組成物。
項目7.第1項目ないし第6項目のいずれか一項目において、化学式1の化合物の溶媒に対する溶解度が100mg/mL以上、好ましくは120mg/mL以上、より好ましくは150mg/mL以上の溶媒をさらに含む医薬組成物。
項目8.第7項目において、前記溶媒はジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、2‐ピロリドン及びジメチルスルホキシドからなる群から選択される1種以上、好ましくはジエチレングリコールモノエチルエーテル及びポリエチレングリコールからなる群から選択される1種以上、より好ましくはポリエチレングリコールである医薬組成物。
項目9.第7項目において、前記ポリエチレングリコールは、ポリエチレングリコール300またはポリエチレングリコール400、好ましくはポリエチレングリコール400である医薬組成物。
項目10.第7項目ないし第9項目のいずれか一項目において、前記溶媒は全体組成物重量の5ないし20重量%、好ましくは5ないし15重量%、より好ましくは8ないし12重量%、最も好ましくは10重量%で含まれる医薬組成物。
項目11.第1項ないし第10項のいずれか一項目において、前記化学式1で表される化合物が0.1ないし1.5重量%、好ましくは0.5ないし1.2重量%、より好ましくは0.8ないし1.2重量%含まれる医薬組成物。
項目12.第1項目ないし第11項目のいずれか一項目において、前記医薬組成物は皮膚に適用される外用剤で製剤化される医薬組成物。
項目13.第1項目ないし第12項目のいずれか一項目において、前記医薬組成物は、クリーム、ゲル、パッチ、噴霧剤、軟膏剤、硬膏剤、ローション剤、リニメント剤、パスタ剤またはパップ剤の剤形で製剤化される医薬組成物。
項目14.ヒプロメロースを追加する段階を含む、下記化学式1で表される化合物(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを含む医薬組成物で化学式1の化合物の結晶形成を抑制する方法。
<化学式1>
【化4】
下記実験例においては、化学式1の化合物は、(R)‐N‐[1‐(3,5‐ジフルオロ‐4‐メタンスルホニルアミノ‐フェニル)‐エチル]‐3‐(2‐プロピル‐6‐トリフルオロメチル‐ピリジン‐3‐イル)‐アクリルアミドを意味する。
【0017】
予備実験例1:化学式1の化合物に適する溶媒選定
水及び油に難溶性の化学式1の化合物を可溶化することができる溶媒を選定するために、下記表1に記載された様々な溶媒を対象として化学式1の化合物の溶解度実験を実施した。溶解度が高い溶媒は、溶解度が低い溶媒に比べて少量で化学式1の化合物を溶解することができるので、特に皮膚外用剤で製剤化する場合、相対的により多くの含量の水を含むことができて使用感がさらに増進される。
表1に記載された各溶媒1mLに過量の化学式1の化合物を入れ、25℃で200rpmで振りながら(Shakingincubator、SI600R、JEIO TECH、Korea)24時間撹拌した。その後、10,000rpmで10分間遠心分離し、上澄液を、メンブレインフィルター(0.2μm)を使って濾過し、その後、メタノールで適当に希釈してHPLCで分析した。分析結果から化学式1の化合物の各溶媒に対する溶解度を算出した。その結果を表1に示す。
【表1】
表1で分かるように、化学式1の化合物はジメチルスルホキシド(DMSO、Sigma―Aldrich社)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(Sigma‐Aldrich社)、2‐ピロリドン(Aldrich 社)、ポリエチレングリコール(PEG、Sanyo社)に対して100mg/ml以上の高い溶解度を示し、化学式1の化合物に適する溶媒としてもちいることができる。しかし、水相含量が高い組成物で化学式1の化合物の溶解度が顕著に低減するため、単純にこの溶媒のみを活用しては製剤化することは困難である。例えば、PEG400 10%(w/w)水溶液での溶解度は約0.08mg/mLで、ほとんど溶けない。
【0018】
製造例1:本発明の参照例組成物の製造
1)セルロース系ポリマーの準備
表2に記載したような特性を有する8種の様々なセルロース系ポリマー、つまりメチルセルロース(MC、Metolose、Shinetsu社)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC、Natrosol、Ashland社)、ヒドロキシプロピルセルロース (HPC、Klucel、Ashland社)LF及びEF等級、ヒプロメロース(Hypromellose、Shinetsu社)2910の3、4.5、6、15mPa・sタイプを準備した。
【表2】
【0019】
2)本発明の参照組成物1ないし8の製造
予備実験例1で適すると確認された溶媒の一つであるPEG400 10gに化学式1の化合物1gを溶解させて第1溶液を製造した。前記表2に示したメチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース (HPC)LF及びEF等級、ヒプロメロース2910の3、4.5、6及び15mPa・sタイプのポリマー2gをそれぞれ精製水87gに溶かして第2溶液を製造した。第2溶液に第1溶液を滴下して混合液状態の本発明の参照組成物1ないし8を製造した。
【0020】
製造例2:皮膚外用剤クリーム製造
表3に記載したような通常のクリーム剤形組成と第1成分で化学式1の化合物、第2成分(セルロース系ポリマー)及び溶媒(ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコール、ジメチルスルホキシド)を利用して皮膚外用剤用クリームを製造した。
表3の油相と水相をそれぞれ加温して準備し、化学式1の化合物を溶媒に溶解させて準備し、増粘剤を線分散させて準備し、各セルロース系ポリマーを水に溶解させて準備した。
その後、前記油相と水相を先ず65℃で乳化した後、水に溶解されたセルロース系ポリマーを入れて均質化させた後、溶媒に溶解された化学式1の化合物を投入して、増粘剤と添加剤を投入した後で均質化し、35℃に冷却してクリーム剤形の皮膚外用剤用医薬組成物を製造した。
【表3】
【0021】
前記クリーム剤形の他に、下記剤形にも化学式1の化合物を含んで結晶形成が抑制された剤形を製造することができる。
剤形例1:ゲル
表4の組成にしたがって、通常の方法で本発明の化学式1の化合物、溶媒(PEG400)及びセルロース系ポリマー(Hypromellose6)を含むゲルを製造した。
【表4】
【0022】
剤形例2:軟膏剤
表5の組成にしたがって、通常の方法で本発明の化学式1の化合物、溶媒(PEG400)及びセルロース系ポリマー(Hypromellose3)を含む軟膏剤を製造した。
【表5】
【0023】
剤形例3:ローション剤
表6の組成にしたがって、通常の方法で本発明の化学式1の化合物、溶媒(PEG400)及びセルロース系ポリマー(Hypromellose6)を含むローション剤を製造した。
【表6】
【0024】
実験例1:製造例1の組成物の粒度及び分散安定性
前記製造例で製造された本発明の参照例組成物1ないし8の粒度及び分散安定性を測定した。
粒子の大きさ(Size)はレーザー粒度分析機(laser particle size analyzer、Zetasizer Nano ZS、Malvern Instruments、Southborough、UK)を利用して動的光散乱法(Dynamic Light Scattering)で測定した。また、分散安定性は測定機器(Turbiscan AGS、Formulaction、Toulouse、France)を利用して50℃の温度で毎2時間ずつ24時間測定してTSI(Turbiscan Stability Index)を算出した。このように測定された粒子の大きさ(単位:nm)及びTSIを表7に記載した。
本発明に使われた分散安定性分析技術であるTurbiscanは、複合光散乱(multiple light scattering)を利用して剤形の分散を光学的に測定する技術であって、分散安定性が低下される現象、すなわち沈降(sedimentation)、クリーミング(creaming)のような粒子移動(particle migration)現象と凝集(flocculation)、合体(coalescence)のような粒子の大きさの変化(particle size variation)現象をいずれも分析することができ、様々な安定性研究に活用される(Talanta、Volume50、Issue2、13 September 1999、Langmuir、2004、20、9007‐9013、Med Chem。2015Jun;11(4):391‐399.)。また、粒子の大きさが大きいほど結晶が成長されることを意味するので、本発明で測定されたTSIと大きさを測定して医薬組成物の分散安定性を予測することができ、これによって活性化合物の結晶化過程を推論することができる。
【表7】
表7から分かるように、本発明の参照例5ないし7は比較的に小さい粒子の大きさの結晶を有し、TSIも平均6ないし10程度で比較的に低いものと確認された。これによって、ヒプロメロースを使用した本発明の組成物は、活性成分である化学式1の化合物の結晶形成が顕著に抑制されることを予想することができた。
一方、ヒプロメロースの代わりにMC及びHECを使用した参照例組成物1ないし2は、粒子の大きさが比較的に大きかったし、HPCを使用した参照例組成物3ないし4はTSIがかなり高くて活性成分である化学式1の化合物の結晶形成が抑制されないことを予想することができた。
表7を参照すれば、セルロース系ポリマー全体でTSIの傾向性は表れなかったし、これによって化学式1の化合物と各セルロース系ポリマー間の相互作用(interaction)の側面で差があることが分かる。
また、同一なヒプロメロースを使用した場合でも、ヒプロメロースの粘度が増加するほど、組成物内の活性物質の結晶の大きさ及びTSIが大きくなる傾向があることを確認した。
このように、参照例1ないし8のセルロース系ポリマーは、いずれも本発明の医薬組成物の活性成分である化学式1の化合物の結晶形成抑制効能を示し、特に、セルロース系ポリマーの中でもヒプロメロースの場合、化学式1の化合物に対する結晶形成を顕著に抑制することを予想することができる。
【0025】
実験例2:製造例1の組成物の24時間保管後の結晶析出可否確認
前記製造例1で製造された本発明の参照例組成物1ないし8をそれぞれ40℃のチャンバーで24時間保管した後、結晶析出可否を光学顕微鏡と偏光フィルター(Olympus BX50 Microphotographic System、Tokyo、Japan)を利用して観察し、その結果を
図1aないし1cに示す。
結晶析出可否は、光学顕微鏡イメージで暗色の不規則な粒子が観察され、同時に同じ位置の偏光イメージで異方性粒子が観察された時に結晶と判断した。
図1から分かるように、セルロース系ポリマーを使用した参照例組成物1ないし 7は、いずれも結晶析出が抑制されることを確認することができる。特に、セルロース系ポリマーとしてヒプロメロースを使用した本発明の参照例組成物5ないし7では、結晶析出が顕著に抑制されることを確認することができる。
【0026】
実験例3:製造例2組成物の安定性確認
前記製造例2で製造されたセルロース系ポリマーを含むクリーム剤形の組成物を加速条件である40℃の恒温チャンバーで2週間保管した後、光学及び偏光顕微鏡で観察(100倍率)し、その結果を
図2aないし2dに示す。
図2aないし2dから確認できるように、化学式1の化合物を含んでセルロース系ポリマーを含まない比較例3は、化学式1の化合物を含まないでセルロース系ポリマーを含まない比較例1と比べる時、結晶析出を確認することができた。
一方、MC、HECまたはHPCのようなセルロース系ポリマーを使用した実施例組成物1ないし3は、化学式1の化合物を含まないでセルロース系ポリマーを含む比較例2と比べる時、結晶析出が抑制されることを確認することができる。
また、セルロース系ポリマーとしてヒプロメロースを使用した本発明の組成物(実施例組成物4ないし7)は結晶析出が顕著に抑制されることが分かる。
セルロース系ポリマー(Hypromellose、3)を同量使用するものの、溶媒をそれぞれPEG300、PEG400、ジエチレングリコールモノエチルエーテル及びDMSOを使った本発明の組成物(実施例7ないし10)も結晶析出が顕著に抑制されるものとして表れ、特に、PEG400を使った実施例7の結晶析出抑制効果が最も優れることが分かる。
その後の観察でヒプロメロースを使用した本発明の実施例8組成物は、40℃の恒温チャンバーで6ヶ月以上結晶形成が抑制されることを確認し、長期保存条件で31ヶ月間結晶形成が抑制されたことを確認することができた(
図3)。