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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】還元剤供給装置の制御装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/08 20060101AFI20220721BHJP
   F01N 3/18 20060101ALI20220721BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20220721BHJP
   F02D 29/02 20060101ALI20220721BHJP
   B01D 53/94 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
F01N3/08 G ZAB
F01N3/18 C
F02D17/00 Q
F02D29/02 321A
B01D53/94 222
B01D53/94 400
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020559843
(86)(22)【出願日】2019-11-12
(86)【国際出願番号】 JP2019044314
(87)【国際公開番号】W WO2020121713
(87)【国際公開日】2020-06-18
【審査請求日】2021-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2018233381
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 圭輔
(72)【発明者】
【氏名】武井 浩太郎
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-071270(JP,A)
【文献】国際公開第2018/047554(WO,A1)
【文献】特開2017-078345(JP,A)
【文献】特表2014-514496(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
F02D 17/00
F02D 29/02
B01D 53/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アイドルストップ機能を備えた車両に搭載され、
タンク(50)内の液体還元剤を圧送するポンプ(41)と、
供給される液体還元剤を噴射する噴射制御弁(31)と、
前記ポンプ(41)と前記噴射制御弁(31)とを接続する供給通路(57)と、
前記供給通路(57)と前記タンク(50)とを接続する循環通路(59)と、を備えた還元剤供給装置(30)を制御する制御装置(100)において、
前記アイドルストップ機能によらない内燃機関(5)の停止時に、液体還元剤をタンク(50)内に回収する回収制御部(113)と、
前記アイドルストップ機能による前記内燃機関(5)の停止時に、前記供給通路(57)内の圧力が所定の閾値未満となるように前記ポンプ(41)の出力を低下又は停止させ、前記アイドルストップ機能による前記内燃機関(5)の再始動時に、前記供給通路(57)内の圧力が前記所定の閾値未満の状態で前記ポンプ(41)の出力を増大させる一時停止制御部(117)と、
前記還元剤供給装置(30)による液体還元剤の噴射制御の開始前に、前記還元剤供給装置(30)の異常診断を実行する診断制御部(115)と、を備え、
前記診断制御部(115)は、
前記アイドルストップ機能による前記内燃機関(5)の再始動時には、前記異常診断を実行しないように構成される、
還元剤供給装置の制御装置。
【請求項2】
前記回収制御部(113)は、
前記アイドルストップ機能によらない前記内燃機関(5)の停止時に、流路切換弁(35)を駆動して前記ポンプ(41)により圧送される液体還元剤の流れる方向を逆転させた状態で前記ポンプ(41)を駆動することにより液体還元剤を前記タンク(50)内に回収し、
前記一時停止制御部(117)は、
前記アイドルストップ機能による前記内燃機関(5)の停止時に、前記流路切換弁(35)を駆動させずに前記ポンプ(41)の出力を低下又は停止させる、
請求項1に記載の還元剤供給装置の制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気浄化装置に使用される還元剤供給装置の制御装置に関する。特に、アイドルストップ機能を備えた車両に適用可能な還元剤供給装置の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジン等の内燃機関の排気ガスに含まれるNOX(窒素酸化物)を分解して排気ガスを浄化するための装置として、尿素SCR(Selective Catalytic Reduction)システムが実用化されている。尿素SCRシステムでは、液体還元剤として尿素水溶液が用いられる。尿素SCRシステムでは、尿素水溶液が分解することにより生成されるアンモニアが排気ガス中のNOXと反応することによりNOXが分解される。
【0003】
尿素SCRシステムは、排気通路に配設された選択還元触媒と、選択還元触媒よりも上流側の排気通路に尿素水溶液を噴射するための還元剤供給装置とを備える。選択還元触媒は、アンモニアを吸着し、流入する排気ガス中のNOXとアンモニアとの還元反応を促進する。還元剤供給装置は、タンク内に貯蔵された尿素水溶液を圧送するポンプと、ポンプにより圧送される尿素水溶液を噴射する噴射制御弁と、ポンプ及び噴射制御弁の駆動を制御する制御装置とを備える。制御装置は、噴射制御弁に供給される尿素水溶液の圧力が所定の基準圧に維持されるようにポンプの出力を制御しつつ、噴射制御弁の開閉を制御することにより、所定量の尿素水溶液を排気通路に噴射させる。
【0004】
還元剤供給装置が車両に搭載される場合、低温環境下で車両が停車している間に尿素水溶液が凍結して体積が膨張し、ポンプや配管等が破損するおそれがある。このため、特許文献1に記載されているように、車両に搭載される還元剤供給装置においては、内燃機関の停止時に、還元剤供給装置内に残留する尿素水溶液をタンク内に回収する制御が実行される。内燃機関の停止時に尿素水溶液をタンク内に回収した場合、次の内燃機関の始動時において、噴射制御弁に供給される尿素水溶液の圧力が所定の基準圧となるまで尿素水溶液を還元剤供給装置内に充填した後に、尿素水溶液の噴射制御が再開される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-223347号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、アイドルストップ機能を備えた車両が実用化されている。アイドルストップ機能を備えた車両では、車両が走行状態から停止したときに内燃機関が自動停止し、車両の走行開始時等、所定の条件成立時に内燃機関が再始動する。このようなアイドルストップ機能による内燃機関の停止時においては、比較的短時間で内燃機関が再始動することが予測されているため、内燃機関の再始動後に尿素水溶液の噴射制御を速やかに再開させることができるように、ポンプの駆動は継続される。
【0007】
このとき、内燃機関の再始動に伴うクランキング時に、スタータモータへの電力供給に起因してバッテリの電圧が瞬間的に低下することがある。このバッテリ電圧の瞬時低下の程度が大きいと、還元剤供給装置のポンプへの供給電力が瞬間的に不足することになる。ポンプは、吐出側の圧力に抗して尿素水溶液を送り込むように駆動するため、電圧低下による不十分な電力供給状態ではポンプの運転状態を維持することができない。このような状態がポンプの異常挙動として検出されると、所定の診断制御によってポンプ自体の故障でないことが確認されるまで尿素水溶液の噴射制御を再開させることができない。
【0008】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、アイドルストップ機能による内燃機関の再始動に伴うクランキング時に生じるバッテリ電圧の瞬時低下に起因して尿素水溶液の噴射制御の開始が遅れることを抑制可能な還元剤供給装置の制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある観点によれば、アイドルストップ機能を備えた車両に搭載され、タンク内の液体還元剤を圧送するポンプと、供給される液体還元剤を噴射する噴射制御弁と、ポンプと噴射制御弁とを接続する供給通路と、供給通路とタンクとを接続する循環通路と、を備えた還元剤供給装置を制御する制御装置であって、アイドルストップ機能によらない内燃機関の停止時に、液体還元剤をタンク内に回収する回収制御部と、アイドルストップ機能による内燃機関の停止時に、供給通路内の圧力が所定の閾値未満となるようにポンプの出力を低下又は停止させ、アイドルストップ機能による内燃機関の再始動時に、供給通路内の圧力が所定の閾値未満の状態でポンプの出力を増大させる一時停止制御部と、還元剤供給装置による液体還元剤の噴射制御の開始前に、還元剤供給装置の異常診断を実行する診断制御部と、を備え、診断制御部は、アイドルストップ機能による内燃機関の再始動時には、異常診断を実行しないように構成される、還元剤供給装置の制御装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように本発明によれば、アイドルストップ機能による内燃機関の再始動に伴うクランキング時に生じるバッテリ電圧の瞬時低下に起因して尿素水溶液の噴射制御の開始が遅れることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施の形態に係る制御装置を適用可能な尿素SCRシステムを示す模式図である。
図2】エンジン制御装置の構成例を示すブロック図である。
図3】制御装置の構成例を示すブロック図である。
図4】制御装置による制御処理を示すフローチャートである。
図5】アイドルストップ機能によらない内燃機関の停止時の動作を示すフローチャートである。
図6】アイドルストップ機能による内燃機関の停止時の動作を示すフローチャートである。
図7】従来例を説明するためのタイムチャートである。
図8】本実施形態の例を示すフローチャートである。
図9】参考例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
<1.尿素SCRシステムの構成例>
まず、本実施形態に係る制御装置を適用可能な還元剤供給装置30を備えた尿素SCRシステム10の構成例について説明する。図1は、尿素SCRシステム10の構成例を示す模式図である。
【0014】
尿素SCRシステム10は、ディーゼルエンジン等の内燃機関5の排気系に設けられる。内燃機関5は、クランクシャフトに連結されて始動時に内燃機関5をクランキングさせるスタータモータ3を備える。スタータモータ3の種類は特に限定されず、発電機能を備えたモータであってもよい。
【0015】
尿素SCRシステム10は、液体還元剤として尿素水溶液を用いて、内燃機関5から排出される排気ガス中のNOXを分解して排気ガスを浄化する。尿素水溶液としては、例えば凍結温度が最も低い約32.5%濃度の尿素水溶液が用いられる。この場合の尿素水溶液の凍結温度は約-11℃である。
【0016】
尿素SCRシステム10は、排気管11の途中に配設された選択還元触媒13と、選択還元触媒13よりも上流の排気通路内に尿素水溶液を噴射する還元剤供給装置30とを備える。選択還元触媒13よりも上流及び下流の排気管11には、それぞれNOX濃度を検出する上流側NOXセンサ21及び下流側NOXセンサ23が設けられている。上流側NOXセンサ21及び下流側NOXセンサ23のセンサ信号は制御装置100に出力される。これ以外に、排気管11には、温度センサやアンモニアセンサ等の図示しないセンサ類が設けられていてもよい。
【0017】
選択還元触媒13は、内燃機関5の排気ガス中に含まれるNOXを、アンモニアを用いて選択的に還元する機能を有する。選択還元触媒13は、還元剤供給装置30により噴射された尿素水溶液が分解することにより生成されたアンモニアを吸着し、流入する排気ガス中のNOXをアンモニアと反応させて分解する。選択還元触媒13は、触媒温度が高いほどアンモニアの吸着可能量が減少する性質を有する。また、選択還元触媒13は、触媒温度が高いほど、あるいは、吸着可能量に対する実際のアンモニアの吸着量の割合が大きいほど、NOXの還元効率が高くなる性質を有する。
【0018】
還元剤供給装置30は、選択還元触媒13よりも上流側で排気通路内に尿素水溶液を噴射する。還元剤供給装置30は、噴射制御弁31とポンプ41とを備える。噴射制御弁31は、選択還元触媒13よりも上流の排気管11に固定されている。ポンプ41は、タンク50内の尿素水溶液を吸い上げ、噴射制御弁31に向けて圧送する。ポンプ41及び噴射制御弁31は、制御装置100によって駆動制御される。
【0019】
ポンプ41の吸入口には、他端がタンク50内に位置する第1の還元剤供給通路58が接続されている。ポンプ41の吐出口には、他端が噴射制御弁31に接続された第2の還元剤供給通路57が接続されている。ポンプ41は、第1の還元剤供給通路58を介してタンク50内の尿素水溶液を吸い上げ、第2の還元剤供給通路57を介して尿素水溶液を噴射制御弁31に供給する。
【0020】
第2の還元剤供給通路57には、他端がタンク50に接続された循環通路59が接続されている。循環通路59にはオリフィス70が備えられ、第2の還元剤供給通路57内の圧力を保持できるようになっている。オリフィス70の代わりに一方向弁が用いられてもよい。また、第2の還元剤供給通路57内の圧力を検出する圧力センサ43が設けられている。圧力センサ43は、噴射制御弁31に供給される尿素水溶液の圧力を検出するセンサであり、センサ信号は制御装置100に出力される。
【0021】
ポンプ41としては、例えばダイヤフラム式又はギヤ式のモータポンプが用いられる。ポンプ41の出力は、制御装置100により制御される。本実施形態では、制御装置100は、噴射制御弁31に供給される尿素水溶液の圧力が所定の基準圧で維持されるようにポンプ41の出力を制御する。例えば制御装置100は、圧力センサ43により検出される圧力と基準圧との差分に基づいて、ポンプ41の出力をフィードバック制御する。
【0022】
噴射制御弁31は、例えば通電制御により開弁及び閉弁が切り替えられる電磁駆動式の噴射弁が用いられる。本実施形態では、制御装置100は、噴射制御弁31に供給される尿素水溶液の圧力が所定の基準圧となるようにポンプ41の出力を制御しつつ、尿素水溶液の目標噴射量に応じて噴射制御弁31の開弁時間を調節する。例えば制御装置100は、一定の噴射サイクルごとに、噴射サイクルの全時間に対する通電時間の比であるデューティ比を調節することにより、尿素水溶液の噴射量を制御する。
【0023】
排気通路に噴射される尿素水溶液の噴射量は、選択還元触媒13よりも下流での排気ガス中のNOXの濃度及びアンモニアの濃度が基準値以下となるように制御される。例えば、尿素水溶液の目標噴射量は、内燃機関5から排出される排気ガス中のNOXを浄化し得るアンモニア量と、選択還元触媒13におけるアンモニアの目標吸着量に対する過不足のアンモニア量との合計量を生成可能な量に設定される。また、尿素水溶液の目標噴射量は、下流側NOXセンサ23のセンサ値に基づいて補正されてもよい。例えば、下流側NOXセンサ23により検出されるNOX濃度が所定の基準値を上回る場合には、尿素水溶液の噴射量を増量させる補正を行う。
【0024】
また、還元剤供給装置30は、装置内の尿素水溶液をタンク50に回収する手段を備える。上述のとおり、尿素水溶液の凍結温度は低くても-11℃程度であるため、低温環境下において内燃機関5の停止中に尿素水溶液が凍結する場合がある。装置内で尿素水溶液が凍結すると、尿素水溶液の体積が膨張して、それぞれの配管やポンプ41、噴射制御弁31等を破損させるおそれがある。このため、内燃機関5の停止時において、装置内の尿素水溶液はタンク50に回収される。
【0025】
本実施形態に係る還元剤供給装置30は、ポンプ41により圧送される尿素水溶液の流れる方向を切り換える流路切換弁35を備える。流路切換弁35は、排気通路への尿素水溶液の噴射制御を実行する間、ポンプ41の吸入口を第1の還元剤供給通路58に接続し、ポンプ41の吐出口を第2の還元剤供給通路57に接続する。また、流路切換弁35は、尿素水溶液の回収制御を実行する間、ポンプ41の吸入口を第2の還元剤供給通路57に接続し、ポンプ41の吐出口を第1の還元剤供給通路58に接続する。これにより、還元剤供給装置30内の尿素水容器がタンク50側に吸い戻される。本実施形態において、尿素水溶液の噴射制御が実行される間、流路切換弁35は、非通電状態に維持される。また、尿素水溶液の回収制御が実行される間、流路切換弁35は、通電状態に維持される。このため、流路切換弁35による電力消費量を低減することができる。
【0026】
なお、尿素水溶液をタンク50内に回収する手段は、流路切換弁35を用いる例に限られない。例えば、ポンプ41として逆回転可能なポンプを用い、尿素水溶液の噴射制御を実行する間はポンプ41を正回転させる一方、尿素水溶液の回収制御を実行する間はポンプ41を逆回転させて尿素水溶液をタンク50側に吸い戻してもよい。また、尿素水溶液の噴射制御を実行する間に駆動させるポンプ41とは別に、尿素水溶液の回収制御を実行する間に駆動させる別のポンプを備えてもよい。
【0027】
エンジン制御装置80及び還元剤供給装置30の制御装置100には、バッテリ1が接続されている。エンジン制御装置80は、内燃機関5に備えられたスタータモータ3及び図示しない燃料噴射弁等の電子制御部品に対する供給電力を制御する。還元剤供給装置30の制御装置100は、還元剤供給装置30に備えられたポンプ41、流路切換弁35及び噴射制御弁31に対する供給電力を制御する。
【0028】
<2.エンジン制御装置>
還元剤供給装置30が備えられる内燃機関5は、車両の停止に伴って内燃機関5を自動停止させるアイドルストップ機能を備える。アイドルストップ機能は、内燃機関5のスイッチがオンになっている状態で、ブレーキペダルが踏み込まれ、車速がゼロになり、内燃機関5の回転数が所定値以下になる等、所定の自動停止条件が成立した場合に内燃機関5を停止させる機能である。また、アイドルストップ機能は、内燃機関5の自動停止中にブレーキペダルの踏み込みが緩められる等、所定の再始動条件が成立した場合に内燃機関5を再始動させる機能である。
【0029】
図2は、アイドルストップ機能を実行可能なエンジン制御装置80の構成例を示す図であり、アイドルストップ機能に関連する部分の機能構成を示している。エンジン制御装置80の一部又は全部は、例えば、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサユニット等で構成されていてもよく、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよい。また、エンジン制御装置80は、CPU(Central Processing Unit)等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0030】
エンジン制御装置80は、処理部71及び記憶部79を備える。記憶部79は、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)等の記憶素子により構成される。記憶部79は、ソフトウェアプログラムや種々の演算処理に用いられるパラメータ、演算結果、センサ類による計測結果等を記憶する。記憶部79は、CD-ROMやHDD(Hard Disk Drive)等の記憶媒体を用いて構成されてもよい。エンジン制御装置80には、直接、あるいは、CAN(Controller Area Network)等のバス配線を介して各種センサのセンサ信号が入力される。アイドルストップ機能に関連するセンサとしては、例えばブレーキペダルの操作量あるいは踏力を検出するペダルセンサ、車速センサ及び内燃機関5の回転数を検出する回転センサ等が例示される。
【0031】
処理部71は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等のプロセッサからなり、ブレーキ操作量検出部72、回転数検出部74、車速検出部76及びアイドルストップ制御部78等を主要な要素として備える。これらの各部は、具体的にはCPU等のプロセッサによる演算処理の実行によって実現される機能である。
【0032】
ブレーキ操作量検出部72は、ペダルセンサのセンサ信号を取得し、ブレーキペダルの操作量を検出する。回転数検出部74は、回転数センサのセンサ信号を取得し、内燃機関5の回転数を検出する。車速検出部76は、車速センサのセンサ信号を取得し、車速を検出する。
ただし、回転数検出部74や車速検出部76による検出方法は、上記の例に制限されるものではなく、上述した方法以外の方法であってもよい。
【0033】
アイドルストップ制御部78は、上記の各部により検出される情報に基づいて、内燃機関5を自動停止させる自動停止条件が成立しているか否かを判別する。自動停止条件が成立している場合、アイドルストップ制御部78は、内燃機関5を停止させる。自動停止条件は、例えばブレーキペダルの操作量が所定の閾値を超え、内燃機関5の回転数が所定のしきい値以下であり、さらに、車速がゼロの状態が、所定時間以上継続することであってもよい。なお、自動停止条件は、上記の例に限られるものではなく、上記以外の条件を含んでもよい。
【0034】
例えばアイドルストップ制御部78は、ブレーキペダルの操作量が所定の閾値を超え、内燃機関5の回転数が所定のしきい値以下となり、車速がゼロの状態が検知されたときにタイマカウントを開始し、同様の状態で所定時間経過した場合に自動停止条件が成立したと判定し、内燃機関5を自動停止させる。一方、タイマカウントを開始した後、所定時間経過前に、ブレーキペダルが踏み戻されたり、変速装置のシフトポジションが切り換えられたりした場合等には、アイドルストップ制御は中止され、タイマがリセットされる。
【0035】
また、アイドルストップ制御部78は、自動停止条件が成立し、内燃機関5を自動停止させた後、ブレーキペダルが踏み戻されたとき等に内燃機関5を再始動させる。具体的に、アイドルストップ制御部78は、内燃機関5のスタータモータ3に電力を供給して内燃機関5をクランキングさせ、燃料噴射弁に電力を供給して燃料噴射を開始させて内燃機関5を再始動させる。
【0036】
エンジン制御装置80は、自動停止条件が成立し、内燃機関5が自動停止中である場合には、アイドルストップ機能によって内燃機関5が停止中であることを示す信号を還元剤供給装置30の制御装置100に対して出力する。
【0037】
<3.還元剤供給装置の制御装置>
図3は、本実施形態に係る還元剤供給装置30の制御装置100の構成例を示す図であり、制御装置100の機能構成を示している。エンジン制御装置80と同様に、制御装置100の一部又は全部は、例えば、マイクロコンピュータ、マイクロプロセッサユニット等で構成されていてもよく、ファームウェア等の更新可能なもので構成されていてもよい。また、エンジン制御装置80は、CPU等からの指令によって実行されるプログラムモジュール等であってもよい。
【0038】
制御装置100は、処理部110、記憶部140、噴射弁駆動部150、ポンプ駆動部160及び流路切換弁駆動部170を備える。記憶部140は、RAMやROM等の記憶素子により構成される。記憶部140は、ソフトウェアプログラムや種々の演算処理に用いられるパラメータ、演算結果、センサ類による計測結果等を記憶する。記憶部140は、CD-ROMやHDD等の記憶媒体を用いて構成されてもよい。制御装置100には、直接、あるいは、CAN等のバス配線を介して、上流側NOXセンサ21及び下流側NOXセンサ23のセンサ信号及び内燃機関5の運転状態に関する情報が入力される。
【0039】
噴射弁駆動部150、ポンプ駆動部160及び流路切換弁駆動部170は、それぞれ電気回路により構成され、処理部110から出力される指令信号に基づいて動作して噴射制御弁31、ポンプ41又は流路切換弁35を駆動させる。処理部110は、CPUやMPU等のプロセッサからなり、診断制御部115、噴射制御部111、回収制御部113及び一時停止制御部117を主要な要素として備える。これらの各部は、具体的にはCPU等のプロセッサによる演算処理の実行によって実現される機能である。
【0040】
噴射制御部111は、内燃機関5の運転状態において、排気ガス温度、還元触媒13の温度、還元触媒13の下流側でのNOX濃度及び内燃機関5の運転状態に関する情報等に基づいて尿素水溶液の噴射量を制御する。具体的に、噴射制御部111は、内燃機関5の運転状態において、流路切換弁35を非通電状態としつつ、圧力センサ43によって検出される第2の還元剤供給通路57内の圧力が所定の基準圧となるようにポンプ41の出力を制御する。本実施形態において、基準圧は0.9MPaに設定されるが、基準圧は適宜の値に設定されてよい。また、噴射制御部111は、排気ガス中のNOX濃度や還元触媒13におけるアンモニアの吸着可能量に基づいて算出される尿素水溶液の目標噴射量にしたがって噴射制御弁31の開閉を制御する。
【0041】
具体的に、ポンプ41から噴射制御弁31に圧送される尿素水溶液の圧力は基準圧に維持されており、噴射制御弁31が開いたときに尿素水溶液が排気通路内に噴射される。噴射制御部111は、尿素水溶液の目標噴射量に応じて噴射弁駆動部150に対して駆動指令信号を出力する。噴射弁駆動部150は、駆動指令信号に基づいて噴射制御弁31をDUTY制御し、適切な量の尿素水溶液を排気通路内に噴射する。
【0042】
回収制御部113は、アイドルストップ機能によらない内燃機関5の停止時に、還元剤供給装置30内の尿素水溶液をタンク50内に回収する制御を実行する。例えば、回収制御部113は、アイドルストップ機能により内燃機関5が自動停止される状態でない場合に、内燃機関5の回転数がゼロになったときに流路切換弁35を通電状態とし、ポンプ41を駆動させることによって尿素水溶液をタンク50側に吸い戻す。回収制御部113は、あらかじめ設定された時間が経過したとき、あるいは、あらかじめ設定された条件が成立したときに回収制御を終了する。
【0043】
なお、回収制御部113が、内燃機関5の停止がアイドルストップ機能によらない停止であるか否かを判定してもよく、アイドルストップ機能によらない内燃機関5の停止であることを示す情報をエンジン制御装置80から受信することにより、アイドルストップ機能によらない内燃機関5の停止を検知してもよい。内燃機関5の停止を検知する方法は、内燃機関5の回転数がゼロになったか否かに基づき判定する方法に限られない。
【0044】
診断制御部115は、還元剤供給装置30による尿素水溶液の噴射制御の開始前に、還元剤供給装置30の異常診断を実行する。上述のとおり、尿素水溶液は約-11℃で凍結する。また、排気熱の影響や自然蒸発等によって尿素水溶液の濃度が上昇すると尿素水溶液の凍結温度が上昇するために、尿素水溶液が凍結あるいは凝固しやすくなる。したがって、還元剤供給装置30の噴射制御の開始時に尿素水溶液が凍結していないことを確認する必要がある。このほか、ポンプ41や噴射制御弁31が正常に動作することを確認する必要がある。
【0045】
このため、診断制御部115は、以下に例示する種々の診断制御を実行する。例えば診断制御部115は、還元剤供給装置30の作動開始前に、タンク50内の温度やポンプ41の周囲の温度等に基づいて尿素水溶液が凍結しているか否かを判定する。尿素水溶液が凍結していると判定される場合、診断制御部115は、尿素水溶液を解凍する制御を実行する。また、診断制御部115は、ポンプ41を作動させたときのポンプ41の回転数が、あらかじめ設定された目標回転数の範囲内であるか否かを見ることによって、ポンプ41が正常に動作しているか否かを判定する。
【0046】
また、診断制御部115は、噴射制御弁31に電流を供給したときの供給電流値の波形に基づいて、噴射制御弁31が正常に動作しているか否かを判定する。この場合、噴射制御弁31のバルブピストンが最大リフト位置に到達することにより生じる逆起電流が現れた場合、診断制御部115は、噴射制御弁31が正常に動作していると判定する。また、診断制御部115は、回収制御部113による尿素水溶液の回収制御時に、例えば流路切換弁35を通電状態としてポンプ41を駆動させたときの、第2の還元剤供給通路57内の圧力の低下度合いに基づいて、噴射制御弁31の噴射孔の詰まりの発生の有無を診断する。噴射孔が詰まっている場合、診断制御部115は、尿素水溶液の噴射制御の開始までに、噴射孔の詰まりを解消する制御を実行する。
【0047】
診断制御部115は、回収制御部113による尿素水溶液の回収制御が開始された後、及び、次の還元剤供給装置30の起動時に、あらかじめ設定された診断制御を実行し、還元剤供給装置30に異常がないと判定されたときに、尿素水溶液の噴射制御の実行を許可する。なお、診断制御部115により実行される診断制御は、上記の例以外の診断を含んでもよい。
【0048】
一時停止制御部117は、アイドルストップ機能による内燃機関5の自動停止時に、圧力センサ43によって検出される第2の還元剤供給通路57内の圧力が所定の閾値未満となるようにポンプ41の出力を低下又は停止させる。これにより、第2の還元剤供給通路57内の尿素水溶液が循環通路59を介してタンク50内に戻され、第2の還元剤供給通路57内の圧力が徐々に低下する。また、一時停止制御部117は、アイドルストップ機能による内燃機関5の再始動時に、第2の還元剤供給通路57内の圧力が所定の閾値未満の状態でポンプ41の出力を増大させる。
【0049】
本実施形態に係る制御装置100では、一時停止制御部117は、アイドルストップ機能による内燃機関5の自動停止時にポンプ41を停止させ、内燃機関5の再始動時にポンプ41の駆動を再開させる。その際、一時停止制御部117は、流路切換弁35を駆動させずにポンプ41を停止させ、その後ポンプ41の駆動を再開させる。
【0050】
なお、一時停止制御部117が、内燃機関5の停止がアイドルストップ機能による停止であるか否かを判定してもよく、アイドルストップ機能による内燃機関5の停止であることを示す情報をエンジン制御装置80から受信することにより、アイドルストップ機能による内燃機関5の停止を検出してもよい。
【0051】
ポンプ41を停止させた際の第2の還元剤供給通路57内の圧力の目安となる閾値は、ポンプ41の仕様に応じて設定される。ポンプ41の駆動を開始させる際に、ポンプ41は第2の還元剤供給通路57側の圧力に抗して尿素水溶液を吐出するため、第2の還元剤供給通路57内の圧力が高すぎるとポンプ41を駆動させることができない。本実施形態において、一時停止制御部117は、内燃機関5の自動停止時にポンプ41を停止させ、第2の還元剤供給通路57内の圧力を、少なくともポンプ41の駆動を開始可能な0.1MPa未満になるまで低下させる。ただし、閾値は例示であって、0.1MPaに限定されない。
【0052】
また、内燃機関5の自動停止条件が成立してから再始動条件が成立するまでの時間が短い場合、つまり、ポンプ41を停止させてから駆動を再開させるまでの時間が短い場合、第2の還元剤供給通路57内の圧力が閾値未満となっていないことも考えられる。このため、一時停止制御部117は、ポンプ41の駆動を再開させる際に、第2の還元剤供給通路57内の圧力が閾値未満となっていることを判別したうえでポンプ41の駆動を再開させる。
【0053】
なお、アイドルストップ機能による内燃機関5の自動停止時においては、回収制御が行われることがなく、また、尿素水溶液の噴射制御の停止時間が短時間であることから、診断制御部115による診断制御の実行を条件とすることなく尿素水溶液の噴射制御が再開される。したがって、尿素水溶液の噴射制御の再開までの時間が短縮される。
【0054】
また、一時停止制御部117は、第2の還元剤供給通路57内の圧力が閾値未満となっている状態でポンプ41の駆動を再開させるため、ポンプ41の回転数が目標回転数の範囲から外れるおそれも低減される。したがって、尿素水溶液の噴射制御の実行開始の条件とは別に、ポンプ41の異常を検知してフェールセーフモードに入るようなこともなくなり、尿素水溶液の噴射制御の再開までの時間が短縮される。
【0055】
<4.動作>
次に、図4図6に示すフローチャートに基づいて、本実施形態に係る還元剤供給装置30の制御装置100の動作の一例を説明する。
【0056】
図4に示すように、制御装置100の回収制御部113は、内燃機関5の停止を検知すると(ステップS11)、内燃機関5の停止がアイドルストップ機能による停止か否かを判別する(ステップS13)。回収制御部113は、アイドルストップ機能によらない内燃機関5の停止を直接判定してもよく、エンジン制御装置80等の他の制御装置から送信される情報に基づいてアイドルストップ機能によらない内燃機関5の停止を判定してもよい。
【0057】
内燃機関5の停止がアイドルストップ機能による停止でない場合(S13/No)、制御装置100は、図5に示すフローチャートにしたがって尿素水溶液の回収制御を実行する。具体的に、回収制御部113は、ポンプ41の駆動を一旦停止させ(ステップS21)、次いで、流路切換弁35を通電状態にする(ステップS23)。次いで、回収制御部113は、ポンプ41の駆動を再開させ(ステップS25)、次いで、噴射制御弁31を開弁する(ステップS27)。これにより、ポンプ41によって、第2の還元剤供給通路57側の尿素水溶液がタンク50内に吸い戻される。
【0058】
次いで、回収制御部113は、回収制御の停止条件が成立したか否かを判別する(ステップS29)。停止条件は、ポンプ41の駆動を再開させてから、あるいは、噴射制御弁31を開弁してからの経過時間があらかじめ設定された時間に到達したか否かであってもよく、診断制御部115による所定の診断制御が終了したか否かであってもよく、その両方を満たすか否かであってもよい。
【0059】
回収制御の停止条件が成立していない場合(S29/No)、回収制御部113は、ステップS29の判別を繰り返す。一方、回収制御の停止条件が成立している場合(S29/Yes)、回収制御部113は、ポンプ41を停止させるとともに噴射制御弁31を閉弁して、回収制御を終了する(ステップS31)。
【0060】
上記のステップS13において、内燃機関5の停止がアイドルストップ機能による自動停止である場合(S13/Yes)、制御装置100は、図6に示すフローチャートにしたがって、自動停止中の制御を実行する。具体的に、制御装置100の一時停止制御部117は、流路切換弁35を非通電状態に維持したまま(ステップS41)、ポンプ41の駆動を停止させる(ステップS43)。このとき、噴射制御弁31は閉弁状態で維持される。これにより、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが徐々に低下する。
【0061】
次いで、一時停止制御部117は、アイドルストップ機能により内燃機関5が再始動したか否かを判別する(ステップS45)。一時停止制御部117は、アイドルストップ機能による内燃機関5の再始動を直接判定してもよく、エンジン制御装置80等の他の制御装置から送信される情報に基づいてアイドルストップ機能による内燃機関5の再始動を判定してもよい。
【0062】
アイドルストップ機能による内燃機関5の再始動が行われない場合(S45/No)、一時停止制御部117は、ステップS45の判別を繰り返す。一方、アイドルストップ機能により内燃機関5が再始動した場合(S45/Yes)、一時停止制御部117は、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが閾値Pu_thre(本実施形態の例では0.1MPa)未満であるか否かを判別する(ステップS47)。
【0063】
第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが閾値Pu_thre以上である場合(S47/No)、一時停止制御部117は、ステップS47の判別を繰り返す。一方、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが閾値Pu_thre未満の場合(S47/Yes)、一時停止制御部117は、ポンプ41の駆動を開始させる(ステップS49)。次いで、一時停止制御部117は、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが基準圧Pu_tgt(本実施形態の例では0.9MPa)を超えたか否かを判別する(ステップS51)。
【0064】
第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが基準圧Pu_tgtに到達していない場合(S51/No)、一時停止制御部117は、ステップS51の判別を繰り返す。一方、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが基準圧Pu_tgtに到達している場合(S51/Yes)、一時停止制御部117は、尿素水溶液の噴射制御の実行を許可する(ステップS53)。これにより、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puを基準圧Pu_tgtに維持するようにポンプ41の出力が制御されつつ、噴射制御弁31による尿素水溶液の噴射が行われる。
【0065】
<5.効果>
次に、図7図9を参照して、本実施形態に係る制御装置100による制御処理の効果を説明する。図7は、アイドルストップ機能による内燃機関5の自動停止中においてもポンプ41の駆動を継続させる場合のタイムチャートであり、図8は、本実施形態に係る制御装置100を適用した場合のタイムチャートである。図9は、アイドルストップ機能による内燃機関5の自動停止時にポンプ41を停止させる例であって、尿素水溶液の噴射制御の実行開始前に診断制御を実行する場合のタイムチャートである。図7図9には、同一の時間軸により内燃機関5の状態Eo、バッテリ電圧Vb、ポンプ41の出力Dp、第2の還元剤供給通路57内の圧力Pu及び流路切換弁35の通電状態が示されている。
【0066】
図7に示すように、内燃機関5の自動停止中にポンプ41の駆動を継続させる場合、内燃機関5の回転数Neがゼロになって内燃機関5が運転状態(R)から停止状態(S)になる時刻t1以降、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが基準圧Pu_tgtで維持されるようにポンプ41は所定の設定出力Dp_Aで駆動制御される。時刻t2において内燃機関5の再始動条件が成立すると、内燃機関5のクランキングが開始されて、内燃機関5はクランキング状態(C)となる。
【0067】
このとき、スタータモータ3への電力供給によってバッテリ電圧Vbの瞬時低下が生じると、ポンプ41への供給電力が不足して、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puを基準圧Pu_tgtに維持する運転状態を維持することができなくなる。このため、時刻t3において内燃機関5が運転状態(R)となった後において、ポンプ41の設定出力Dpは上昇し続ける一方、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puは低下する。その後、ポンプ41の設定出力Dpが最大値Dp_maxとなる状態が続く。この間、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが基準圧Pu_tgtとなっていないために、尿素水溶液の噴射制御を再開することができない。
【0068】
第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが低下して、ポンプ41による第2の還元剤供給通路57側への尿素水溶液の吐出が開始される時刻t4以降、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが上昇する。その後、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが基準圧Pu_tgtとなった時刻t5において尿素水溶液の噴射制御が再開される。
【0069】
これに対して、図8に示すように、本実施形態に係る制御装置100を適用した場合、内燃機関5の回転数Neがゼロになって内燃機関5が運転状態(R)から停止状態(S)になる時刻t1において、ポンプ41の駆動が停止される。これにより、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが徐々に低下する。ポンプ41の駆動が停止した状態は、制御装置100に対して極くわずかな電流が供給されている状態となっている。
【0070】
このため、内燃機関5の再始動条件が成立して内燃機関5のクランキングが開始される時刻t2において、バッテリ電圧の瞬時低下が生じた場合であっても、ポンプ41を駆動させることができないような状態に移行することを避けることができる。したがって、本実施形態に係る制御装置100によれば、スタータモータ3への電力供給に起因するバッテリ電圧の瞬時低下に対する還元剤供給装置30の安定性を向上させることができる。
【0071】
また、本実施形態に係る制御装置100を適用した場合、アイドルストップ機能による内燃機関5の自動停止時には、尿素水溶液の噴射制御の開始前に実行される種々の診断制御が実行されない。このため、内燃機関5のクランキングが開始される時刻t2において第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが閾値Pu_thre未満になっている限り、ポンプ41の駆動が開始される。これにより第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが上昇し始める。
【0072】
アイドルストップ機能による内燃機関5の自動停止時間が短く、内燃機関5の再始動時に第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが閾値Pu_thre未満になっていないとしても、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが閾値Pu_thre未満になるまでの時間は還元剤供給装置30の仕様によって決まっているため、ポンプ41の駆動を開始させるまでの時間が過度に長くなることはない。
【0073】
その後、時刻t3で内燃機関5が運転状態(R)となった後、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが基準圧Pu_tgtとなった時刻t6において尿素水溶液の噴射制御が再開される。本実施形態に係る制御装置100を適用した場合、内燃機関5のクランキングが開始されてから尿素水溶液の噴射制御が再開されるまでの時間(t2からt6までの時間)が、図7に示す例(t2からt5までの時間)よりも短くなる。このため、排気ガス中のNOXの浄化効率の低下を抑制することができる。
【0074】
なお、内燃機関5の始動時において、尿素水溶液の噴射制御の実行開始前に種々の診断制御が実行される場合、アイドルストップ機能による内燃機関5の再始動時においても診断制御が実行されるとすると、内燃機関5のクランキングが開始されてから尿素水溶液の噴射制御が再開されるまでの時間が、本実施形態に係る制御装置100を適用した場合に比べて長くなる。特に、実行される診断制御が、ポンプ41の駆動を停止させた状態で実行可能な診断制御を含む場合には、ポンプ41の駆動を開始させる時期が遅れる。
【0075】
具体的に、図9に示す例では、時刻t2において内燃機関5の再始動条件が成立して内燃機関5のクランキングが開始された場合であっても、ポンプ41の停止状態において実行可能な診断制御が終了する時刻t7まではポンプ41の駆動を開始させることができない。このため、内燃機関5の自動停止時にポンプ41を停止させて第2の還元剤供給通路57内の圧力Puを低下させたとしても、内燃機関5が再始動する時刻t2から、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが基準圧Pu_tgtとなって尿素水溶液の噴射制御が再開される時刻t8までの時間が長くなる。
【0076】
以上説明したように、本実施形態に係る制御装置100によれば、アイドルストップ機能による内燃機関5の停止時にポンプ41を停止させるために、内燃機関5の再始動時にスタータモータ3への電力供給に起因してバッテリ電圧の瞬時低下が生じたとしても、バッテリ1からの供給電力がポンプ41の必要電力を下回ることを抑制することができる。したがって、バッテリ電圧の瞬時低下に起因して、ポンプ41が異常挙動を示していると判定されることを防ぐことができる。これにより、尿素水溶液の噴射制御の実行開始前にポンプ41の診断に時間を要することがなくなり、内燃機関5の再始動後速やかに尿素水溶液の噴射制御を再開させることができる。その結果、排気ガス中のNOXの浄化効率の低下を抑制することができる。
【0077】
また、本実施形態に係る制御装置100によれば、尿素水溶液の噴射制御が再開するまでに種々の診断制御が実行されるものの、アイドルストップ機能による内燃機関5の自動停止時には当該診断制御は実行されることがない。このため、内燃機関5の再始動時に、診断制御の実行に時間を要することがないため、尿素水溶液の噴射制御を速やかに再開させることができる。
【0078】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0079】
例えば、上記実施形態では、制御装置100は、アイドルストップ機能による内燃機関5の自動停止時にポンプ41を停止させていたが、本発明はかかる例に限定されない。制御装置100は、ポンプ41を停止させる代わりに、第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが閾値Pu_thre(本実施形態では0.1MPa)未満となり得る程度にポンプ41の出力を低下させてもよい。このようにポンプ41の出力を低下させた場合であっても、少なくとも第2の還元剤供給通路57内の圧力Puが閾値Pu_thre未満に低下する時間が経過した後に速やかにポンプ41の駆動を開始させることができる。このため、内燃機関5の再始動後、速やかに尿素水溶液の噴射制御が再開され、排気ガス中のNOXの浄化効率の低下を抑制することができる。
【符号の説明】
【0080】
1…バッテリ、3…スタータモータ、5…内燃機関、10…尿素SCRシステム、30…還元剤供給装置、31…噴射制御弁、35…流路切換弁、41…ポンプ、57…第2の還元剤供給通路、59…循環通路、80…エンジン制御装置、100…制御装置、111…噴射制御部、113…回収制御部、115…診断制御部、117…一時停止制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9