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特許7108737通信中継装置、遠隔制御装置、システム、エリア制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】通信中継装置、遠隔制御装置、システム、エリア制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04W 84/06 20090101AFI20220721BHJP
   H04W 16/26 20090101ALI20220721BHJP
   H04W 16/28 20090101ALI20220721BHJP
   H04B 7/15 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
H04W84/06
H04W16/26
H04W16/28
H04B7/15
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021066783
(22)【出願日】2021-04-09
【審査請求日】2022-02-16
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、総務省、「HAPSを利用した無線通信システムに係る周波数有効利用技術に関する研究開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】柴田 洋平
(72)【発明者】
【氏名】高畠 航
(72)【発明者】
【氏名】星野 兼次
【審査官】中野 修平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/235324(WO,A1)
【文献】特開2018-093478(JP,A)
【文献】特開2005-295090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/15
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置であって、
前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定する位置推定手段と、
前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化するパラメータ最適化手段と、
前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記サービスリンク用アンテナに適用するパラメータ適用手段と、
を備えることを特徴とする通信中継装置。
【請求項2】
請求項1の通信中継装置において、
前記パラメータ最適化手段は、前記複数(M)個のサブエリアのそれぞれを順番に選択し、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記選択したサブエリアに含まれる複数のセルのそれぞれに対する前記複数(L)種類のアンテナパラメータと前記選択したサブエリア以外の他のサブエリアの方向を決めるパラメータとを最適化する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項3】
請求項1又は2の通信中継装置において、
前記パラメータ最適化手段は、前記サブエリアごとのパラメータ最適化を複数回(T回)繰り返し実行する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかの通信中継装置において、
前記複数の端末装置の位置の推定と前記アンテナパラメータの最適化と前記アンテナパラメータの最適値の前記サービスリンク用アンテナへの適用とを、定期的に、又は、前記サービスエリアにおける前記端末装置の分布の変化量が所定変化量よりも大きくなったときに実行する、ことを特徴とする通信中継装置。
【請求項5】
地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置と通信可能な遠隔制御装置であって、
前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定する位置推定手段と、
前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化するパラメータ最適化手段と、
前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記通信中継装置に送信するパラメータ送信手段と、
を備えることを特徴とする遠隔制御装置。
【請求項6】
請求項5の遠隔制御装置において、
前記パラメータ最適化手段は、前記複数(M)個のサブエリアのそれぞれを順番に選択し、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記選択したサブエリアに含まれる複数のセルのそれぞれに対する前記複数(L)種類のアンテナパラメータと前記選択したサブエリア以外の他のサブエリアの方向を決めるパラメータとを最適化する、ことを特徴とする遠隔制御装置。
【請求項7】
請求項5又は6の遠隔制御装置において、
前記パラメータ最適化手段は、前記サブエリアごとのパラメータ最適化を複数回(T回)繰り返し実行する、ことを特徴とする遠隔制御装置。
【請求項8】
請求項5乃至7のいずれかの遠隔制御装置において、
前記複数の端末装置の位置の推定と前記アンテナパラメータの最適化と前記アンテナパラメータの最適値の前記サービスリンク用アンテナへの適用とを、定期的に、又は、前記サービスエリアにおける前記端末装置の分布の変化量が所定変化量よりも大きくなったときに実行する、ことを特徴とする遠隔制御装置。
【請求項9】
請求項5乃至8のいずれかの遠隔制御装置と、前記空中滞在型の通信中継装置とを備えるシステム。
【請求項10】
地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置から地上に向けて形成した前記複数(N)個のセルからなるサービスエリアに対するエリア制御方法であって、
前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定することと、
前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化することと、
前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記サービスリンク用アンテナに適用することと、
を含むことを特徴とするエリア制御方法。
【請求項11】
地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定するためのプログラムコードと、
前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化するためのプログラムコードと、
前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記サービスリンク用アンテナに適用するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【請求項12】
地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置と通信可能な遠隔制御装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムであって、
前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定するためのプログラムコードと、
前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化するためのプログラムコードと、
前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記通信中継装置に送信するためのプログラムコードと、
を含むことを特徴とするプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空中滞在型の通信中継装置が地上に向けて形成するセルで構成されるサービスエリアの最適化に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空中に浮揚して滞在可能な高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」ともいう。)等の通信中継装置が地上に形成するサービスエリア(以下、単に「エリア」ともいう。)の全体で所望の通信品質(例えば、スループット)が得られるようにサービスリンクのアンテナパラメータを最適化するエリア最適化を行う方法が知られている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、エリアにおける端末装置としてのユーザ装置(以下「UE」ともいう。)の分布が一様分布であると想定してエリア最適化を行う方法が開示されている。また、非特許文献2には、エリアが複数のセルで構成されている場合に、エリア全体で所望の通信品質(例えば、スループット)が得られるようセルごとに最適化を行う方法が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Y. Shibata, N. Kanazawa, M. Konishi, K. Hoshino, Y. Ohta and A. Nagate, “System Design of Gigabit HAPS Mobile Communications,” inIEEE Access, vol. 8, pp. 157995-158007, 2020.
【文献】柴田洋平, 高畠航, 星野兼次, 長手厚史, “複数セル構成におけるユーザ分布を考慮したHAPS動的セル制御アルゴリズム”, 信学技報, vol. 120, no. 322, RCS2020-185, pp. 170-175, 2021年1月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献2の方法では、エリア内の非一様のUE分布に対応できるが、セルごとに最適化を行うため計算が指数関数的に複雑になり、計算量が増大し、エリア最適化にかかる時間が増加する、という課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る通信中継装置は、地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置である。この通信中継装置は、前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定する位置推定手段と、前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化するパラメータ最適化手段と、前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記サービスリンク用アンテナに適用するパラメータ適用手段と、を備える。
【0007】
本発明の他の態様に係る遠隔制御装置は、地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置と通信可能な遠隔制御装置である。この遠隔制御装置は、前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定する位置推定手段と、前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化するパラメータ最適化手段と、前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記通信中継装置に送信するパラメータ送信手段と、を備える。
【0008】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記パラメータ最適化手段は、前記複数(M)個のサブエリアのそれぞれを順番に選択し、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて、前記選択したサブエリアに含まれる複数のセルのそれぞれに対する前記複数(L)種類のアンテナパラメータと前記選択したサブエリア以外の他のサブエリアの方向を決めるパラメータとを最適化してもよい。
【0009】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記パラメータ最適化手段は、遺伝的アルゴリズムを用いて前記サブエリアごとのパラメータ最適化を行ってもよい。
【0010】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記パラメータ最適化手段は、前記サブエリアごとのパラメータ最適化を複数回(T回)繰り返し実行してもよい。
【0011】
前記通信中継装置及び前記遠隔制御装置において、前記複数の端末装置の位置の推定と前記アンテナパラメータの最適化と前記アンテナパラメータの最適値の前記サービスリンク用アンテナへの適用とを、定期的に、又は、前記サービスエリアにおける前記端末装置の分布の変化量が所定変化量よりも大きくなったときに実行してもよい。
【0012】
前記通信中継装置において、前記中継通信局は、地上のゲートウェイ局との間のフィーダリンクを介して移動通信網に接続され、ベースバンド処理を行う基地局処理部を備えてもよい。
【0013】
前記通信中継装置において、前記中継通信局は、地上のゲートウェイ局との間のフィーダリンクを介して基地局装置に接続され無線中継を行うリピータ部を備えてもよい。
【0014】
本発明の更に他の態様に係るシステムは、前記いずれかの遠隔制御装置と、地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置と、を備える。
【0015】
本発明の更に他の態様に係る方法は、空中滞在型の通信中継装置から地上に向けて形成した複数(N)個のセルからなるサービスエリアに対するエリア制御方法である。このエリア制御方法は、前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定することと、前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化することと、前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記サービスリンク用アンテナに適用することと、を含む。
【0016】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定するためのプログラムコードと、前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化するためのプログラムコードと、前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記サービスリンク用アンテナに適用するためのプログラムコードと、を含む。
【0017】
本発明の更に他の態様に係るプログラムは、地上のサービスエリアに向けて形成した複数(N)個のセル内に位置する端末装置の無線通信を中継する中継通信局とサービスリンク用アンテナとを有する空中滞在型の通信中継装置と通信可能な遠隔制御装置に設けられたコンピュータ又はプロセッサで実行されるプログラムである。このプログラムは、前記サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定するためのプログラムコードと、前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、前記サブエリアごとに、前記複数の端末装置の位置の推定結果に基づいて前記サービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化するためのプログラムコードと、前記複数(M)個のサブエリアのすべてについて前記サブエリアごとの最適化が完了した後の前記複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、前記通信中継装置に送信するためのプログラムコードと、を含む。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、空中浮揚型の通信中継装置から地上に向けて形成する複数のセルからなるサービスエリア内の端末装置の分布の変化に対応可能な動的エリア制御を行うことができ、そのエリア最適化にかかる時間の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す説明図。
図2】(a)及び(b)はそれぞれ、9個のセルで構成されるサービスエリア内のセルごとのエリア最適化の適用前及び適用後のセルの配置の説明図。
図3】エリア最適化に用いるアンテナパラメータとしてのアンテナチルト角、垂直半値幅及び垂直半値幅の説明図。
図4】エリア最適化に用いるサブエリアの水平指向方向の説明図。
図5】各セルに適用する最適化の対象のアンテナパラメータの一覧を示す説明図。
図6】サービスエリアを複数のサブエリアに分割するエリア分割の一例を示す説明図。
図7】分割後の各サブエリアに含まれるアンテナパラメータの一覧を示す説明図。
図8】実施形態に係る動的エリア制御の一例を示すフローチャート。
図9】(a)~(c)は、図8の動的エリア制御におけるアンテナパラメータの最適化対象のサブエリアの切り替え一例を示す説明図。
図10】(a)~(c)はそれぞれ、サービスエリアを複数のサブエリアに分割するエリア分割の他の例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本書に記載された実施形態に係るシステムは、多セルから構成されるHAPSモバイル通信システムにおいて、HAPSが通信を中継する対象のエリアにおけるユーザのUE(端末装置)の位置を推定し、エリア全体を複数のサブエリアに分割した上で逐次的にサブエリアを選択し、選択されたサブエリア内のアンテナパラメータを、推定されたUEの位置情報を基に最適化することにより、エリア最適化にかかる時間の増加を抑制しつつ、ユーザ分布の変化に対応可能な動的エリア制御システムである。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの構成の一例を示す説明図である。本実施形態に係る通信システムは、多数の端末装置(以下「UE」という。)への同時接続や低遅延化などに対応する第5世代又はその後の世代の移動通信の3次元化ネットワークの実現に適する。また、本明細書に開示する通信システム、無線中継局、基地局、リピータ及びUEに適用可能な移動通信の標準規格は、第5世代の移動通信の標準規格、及び、第5世代以降の次々世代の移動通信の標準規格を含む。
【0022】
図1に示すように、通信システムは、空中浮揚型の通信中継装置(無線中継装置)としての高高度プラットフォーム局(HAPS)(「高高度疑似衛星」、「成層圏プラットフォーム」ともいう。)20を備えている。HAPS20は、所定高度の空域に位置して、所定高度のセル形成目標空域に3次元セル(3次元エリア)を形成する。HAPS20は、自律制御又は外部から制御により地面又は海面から100[km]以下の高高度の空域(浮揚空域)に浮遊あるいは飛行して位置するように制御される浮揚体としての飛行船に、中継通信局21が搭載されたものである。
【0023】
HAPS20の位置する空域は、例えば、地上(又は海や湖などの水上)の高度が11[km]以上及び50[km]以下の成層圏の空域である。この空域は、気象条件が比較的安定している高度15[km]以上25[km]以下の空域であってもよく、特に高度がほぼ20[km]の空域であってもよい。
【0024】
本実施形態の通信システムにおける1又は2以上のHAPSで3次元セルを形成する目標の空域であるセル形成目標空域は、HAPS20が位置する空域と従来のマクロセル基地局等の基地局(例えばLTEのeNodeB又は次世代のgNodeB)がカバーする地面近傍のセル形成領域との間に位置する、所定高度範囲(例えば、50[m]以上1000[m]以下の高度範囲)の空域である。
【0025】
なお、本実施形態の3次元セルが形成されるセル形成目標空域は、海、川又は湖の上空であってもよい。また、HAPS20で形成する3次元セルは、地上又は海上に位置するUE61との間でも通信できるよう地面又は海面に達するように形成してもよい。
【0026】
HAPS20の中継通信局21は、サービスリンク用アンテナ(以下「SLアンテナ」という。)211により、移動局であるUE61と無線通信するための複数のビームを地面に向けて形成する。SLアンテナ211は、例えば、複数のアンテナ素子が2次元的に又は3次元的に配列され、地上に向けて複数のビームを形成可能な単数又は複数のアレイアンテナである。
【0027】
UE61は、遠隔操縦可能な小型のヘリコプター等の航空機であるドローンに組み込まれた通信端末モジュールでもよいし、飛行機の中でユーザが使用するユーザ装置であってもよい。セル形成目標空域においてビームが通過する領域が3次元セルである。セル形成目標空域において互いに隣り合う複数のビームは部分的に重なってもよい。
【0028】
HAPS20の中継通信局21は、例えば、地上(又は海上)側のコアネットワークに接続された中継局としてのゲートウェイ局(「フィーダ局」ともいう。)70と無線通信する基地局、又は、地上(又は海上)側の基地局装置に接続された中継局としてのフィーダ局(リピータ親機)70と無線通信するリピータ子機である。なお、以下の実施形態では、中継通信局21がリピータ子機である場合について説明する。
【0029】
HAPS20の中継通信局21は、フィーダリンク用アンテナ(以下「FLアンテナ」という。)212により無線通信可能な地上又は海上に設置されたゲートウェイ局(以下「GW局」という。)70及び基地局装置80を介して移動通信網90のコアネットワークに接続され、更には外部の通信網であるインターネットに接続されている。FLアンテナ212は、例えば、複数のアンテナ素子が2次元的に又は3次元的に配列された単数又は複数のアレイアンテナであってもよい。図中のフィーダリンクFL(F)は、GW局70からHAPS20を経由してUE61に向かうフォワードリンクであり、フィーダリンクFL(R)は、UE61からHAPS20を経由してGW局70に向かうリバースリンクである。
【0030】
HAPS20は、内部に組み込まれたコンピュータ又はプロセッサ等で構成された制御部が制御プログラムを実行することにより、自身の浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。例えば、HAPS20は、後述の動的エリア制御を自律的に行うことができる。また、HAPS20は、自身の現在位置情報(例えばGPS位置情報)、予め記憶した位置制御情報(例えば、飛行スケジュール情報)、周辺に位置する他のHAPSの位置情報などを取得し、それらの情報に基づいて浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理を自律制御してもよい。
【0031】
また、HAPS20の制御部は、制御プログラムを実行することにより、次のC1~C3の手段としても機能する。
C1.サービスエリア20A内に位置する複数のUE61の位置を推定する位置推定手段
C2.サービスエリア20Aを、複数のセル20Cを含む複数(M)個のサブエリア20Sに分割し、サブエリア20Sごとに、前記複数のUE61の位置の推定結果に基づいてSLアンテナ211の複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化するパラメータ最適化手段
C3.複数(M)個のサブエリア20Sのすべてについてサブエリア20Sごとの最適化が完了した後の複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、SLアンテナ211に適用するパラメータ適用手段
【0032】
ここで、上記複数のUE61の位置は、例えば、各UE61からフィードバックされるGNSSの位置情報又はMR(測定報告)を用いて推定することができる。
【0033】
また、HAPS20の浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理は、移動通信網90の通信センター等に設けられた遠隔制御装置95によって制御できるようにしてもよい。遠隔制御装置95は、例えば、PCなどのコンピュータ装置やサーバ等で構成することができる。HAPS20は、遠隔制御装置95からの制御情報を受信したり遠隔制御装置95に監視情報などの各種情報を送信したりできるように制御用通信端末装置(例えば、移動通信モジュール)が組み込まれ、遠隔制御装置95から識別できるように端末識別情報(例えば、IPアドレス、電話番号など)が割り当てられるようにしてもよい。制御用通信端末装置の識別には通信インターフェースのMACアドレスを用いてもよい。
【0034】
遠隔制御装置95は、例えば、HAPS20と連携することにより後述の動的エリア制御を行うことができる。
【0035】
また、HAPS20は、自身又は周辺のHAPSの浮揚移動(飛行)や中継通信局21での処理に関する情報、HAPS20の位置情報、HAPS20の状態に関する情報や各種センサなどで取得した観測データなどの監視情報を、遠隔制御装置95等の所定の送信先に送信するようにしてもよい。制御情報は、HAPSの目標飛行ルート情報を含んでもよい。監視情報は、HAPS20の現在位置、飛行ルート履歴情報、対気速度、対地速度及び推進方向、HAPS20の周辺の気流の風速及び風向、並びに、HAPS20の周辺の気圧及び気温の少なくとも一つの情報を含んでもよい。
【0036】
中継通信局21とUE61との無線通信の上りリンク及び下りリンクの複信方式は、特定の方式に限定されず、例えば、時分割複信(Time Division Duplex:TDD)方式でもよいし、周波数分割複信(Frequency Division Duplex:FDD)方式でもよい。また、中継通信局21とUE61との無線通信のアクセス方式は、特定の方式に限定されず、例えば、FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、TDMA(Time Division Multiple Access)方式、CDMA(Code Division Multiple Access)方式、又は、OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access)であってもよい。また、前記無線通信には、ダイバーシティ・コーディング、送信ビームフォーミング、空間分割多重化(SDM:Spatial Division Multiplexing)等の機能を有し、送受信両方で複数のアンテナを同時に利用することにより、単位周波数当たりの伝送容量を増やすことができるMIMO(多入力多出力:Multi-Input and Multi-Output)技術を用いてもよい。また、前記MIMO技術は、1つの基地局が1つのUEと同一時刻・同一周波数で複数の信号を送信するSU-MIMO(Single-User MIMO)技術でもよいし、1つの基地局が複数の異なるUEに同一時刻・同一周波数で信号を送信又は複数の異なる基地局が1つのUEに同一時刻・同一周波数で信号を送信するMU-MIMO(Multi-User MIMO)技術であってもよい。
【0037】
なお、以下の実施形態では、UE61と無線通信する中継通信局21を有する通信中継装置が、無人飛行船タイプのHAPS20の場合について図示して説明するが、通信中継装置は、ソーラープレーン、ドローン(無人航空機)又は他の種類の飛行体に中継通信局21が搭載されたものであってもよい。また、以下の実施形態は、HAPS以外の他の空中浮揚型の通信中継装置にも同様に適用できる。
【0038】
上記構成のHAPSモバイル通信システムにおいて、例えば基地局装置80からの信号がGW局70及びHAPS20で中継され、地上のUE61に通信サービスを提供することができる。本通信システムでは、HAPS20が地上に向けて形成する複数のセル20C(1)~20C(7)で構成されるサービスエリア(以下、単に「エリア」ともいう。)20Aの全体で所望の通信品質(例えば、スループット)が得られるようにSLアンテナ211のアンテナパラメータを最適化するエリア最適化を行う。
【0039】
上記エリアにおけるUEの分布は場所や時間によって異なる。例えば災害時にはエリア内の一部にUEが集中してトラフィックが急激な増加が発生する可能性がある。このような場所や時間によって変化するエリア内の非一様のUE分布に対応できるように、本実施形態では、エリア20Aを構成するセルごとに上記エリア最適化を動的に行う動的エリア制御を行う。
【0040】
図2(a)及び(b)はそれぞれ、9個のセルで構成されるサービスエリア内のセルごとのエリア最適化の適用前及び適用後のセルの配置の説明図である。図2中の明度が高い9箇所の部分がセルの位置であり、当該部分の数字はセルを識別するための番号である。また、図2においてエリア内のUEの位置を小さい点で示している。図2の例では、エリア内の5箇所でUEの密度が部分的に高くなっているUE高密度部が発生している。図2(a)のセルごとのエリア最適化の適用前では図中の矢印で示した3箇所のUE高密度部60がセルに対応していないが、図2(b)のセルごとのエリア最適化の適用後では3箇所のUE高密度部60に対応している。
【0041】
このようにセルごとのエリア最適化を行うことによりセルの位置をエリア内の非一様のUE分布に対応させることができる。しかしながら、SLアンテナ211の複数のアンテナパラメータをセルごとに最適化を行うエリア最適化を実施する場合、エリア内のセルの数やアンテナパラメータの数の増加により、セルごとにアンテナパラメータの最適化するための計算が指数関数的に複雑になり、計算量が増大し、エリア最適化にかかる時間が増加してしまう。
【0042】
例えば、N個のセルで構成されるエリアのエリア最適化において、エリア内の任意のi番目のセルiに対する複数(L)種類のアンテナパラメータとして、次の4種類のアンテナパラメータA~Dを定義して用いる。
A.チルト角θtilt,i
B.垂直半値幅θ3dB,i
C.水平半値幅φ3dB,i
D.セルの水平指向方向ω
【0043】
図3に示すように、チルト角θtilt,iは、HAPS20のSLアンテナ211から対象のi番目のセル20(i)の中心に向かうベクトルVcの水平方向Hからの角度である。垂直半値幅θ3dB,iは、i番目のセル20(i)の中心に向かうベクトルVcを含む垂直面Pにおいてビームの利得が主ビーム中央の最大利得から3dB減少した2点間の角度幅である。水平半値幅φ3dB,iは、i番目のセル20(i)の中心に向かうベクトルVcを含む水平面Pにおいてビームの利得が主ビーム中央の最大利得から3dB減少した2点間の角度幅である。
【0044】
また、図4に示すように、i番目のセルの水平指向方向ωは、HAPS20のSLアンテナ211の位置(図示の例では半径Rのエリア20Aの中心)を基準点として含む水平面において、所定の基準水平方向Hsを基準にして、上記基準点から対象のセル(図示の例ではセル2)の中心を通る方向の角度である。
【0045】
4種類のアンテナパラメータA~Dの場合、セルの数がN個とすると最適化の対象のアンテナパラメータの数の合計は4N個である。例えば、セルの数が9個の場合、図5に示すように最適化の対象のアンテナパラメータの数の合計は36個である。各アンテナパラメータの候補数が10個とすると、最適化対象のアンテナパラメータの候補数の組み合わせ数は、104N個なる。このように最適化対象のアンテナパラメータの候補数の組み合わせ数は、セルの数Nが増加していくと指数関数的に増加し、セルごとに最適化を行うため計算が指数関数的に複雑になっていく。そのため、エリア最適化のための計算量が増大し、エリア最適化にかかる時間が増加する。
【0046】
そこで、本実施形態では、サービスエリア20Aを複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、サブエリアごとに複数(L)種類(上記例では4種類)のアンテナパラメータを最適化している。
【0047】
例えば、図6に示すようにセルの数Nが9個であり、エリア20Aを分割したサブエリア20S(1)~20S(3)の数Mが3個の場合、各サブエリアはN/M=3個のセルで構成される。なお、図6において高明度部がセルであり、セル中の数字はセルの識別番号である(後述の図9及び図10においても同様)。
【0048】
図6の例において、各サブエリアのアンテナパラメータの数は12個である(図7参照)。ここで、セル1~セル3を含むサブエリア1についてアンテナパラメータを最適化するとき、残りのサブエリア2,3のアンテナパラメータは固定とする。その代わりに、サブエリア2,3それぞれについて、サブエリア全体の方向を決める方向調整パラメータΔω、Δωを最適化する。この方向調整パラメータΔω、Δωを用いて、注目サブエリア1以外のサブエリア2及び3についてセルの水平指向方向ω(i=4~9)が更新される。例えば、サブエリア2に含まれるセル4~6の水平指向方向ω、ω、ωが次式(1)のω4,NEW、ω5,NEW、ω6,NEWに更新され、サブエリア3に含まれるセル7~9の水平指向方向ω、ω、ωが次式(2)のω7,NEW、ω8,NEW、ω9,NEWに更新される。
【数1】
【数2】
【0049】
同様に、セル4~セル6を含むサブエリア2についてアンテナパラメータを最適化するとき、残りのサブエリア1,3のアンテナパラメータは固定した上で、サブエリア1,3それぞれのサブエリア全体の方向を決める方向調整パラメータΔω、Δωを最適化する。また、セル7~セル9を含むサブエリア3についてアンテナパラメータを最適化するとき、残りのサブエリア1,2のアンテナパラメータは固定した上で、サブエリア1,2それぞれのサブエリア全体の方向を決める方向調整パラメータΔω、Δωを最適化する。
【0050】
上記方向調整パラメータΔω、Δω、Δωは、各サブエリアが互いに影響することを考慮し、アンテナパラメータを最適化するときに対象のサブエリア以外の残りのサブエリアの方向についても同時に調整するための追加パラメータである。
【0051】
エリア20Aを3つのサブエリア1~3に分割した場合、図7に示すように各サブエリアに含まれるアンテナパラメータは12個ずつになる。すなわち、1回あたりで最適化するアンテナパラメータの数を、エリア20A全体の4N個から、サブエリアごとの4(N/M)+M-1個まで削減することができる。従って、1回あたりの最適化の計算量を大幅に削減することができる。
【0052】
図8は、実施形態に係るHAPS20における動的エリア制御の一例を示すフローチャートである。図9(a)~(c)は、図8の動的エリア制御におけるアンテナパラメータの最適化対象のサブエリアの切り替え一例を示す説明図である。図8において、動的エリア制御は、UE位置推定ステップ(S110)と、逐次エリア最適化ステップ(S120)と、実環境への最適化パラメータを適用するパラメータ適用ステップ(S130)とを含む。
【0053】
UE位置推定ステップ(S110)では、何らかの方法でエリア20A内の各UE61の位置が推定され、その推定結果(例えば、各UE61の位置の座標データ)が出力される。各UE61の位置は、例えば、各UE61からフィードバックされるGNSSの位置情報又はMR(測定報告)を用いて推定することができる。
【0054】
次に、逐次エリア最適化ステップ(S120)では、UE位置推定ステップ(S110)で出力された各UE61の位置の推定結果(例えば、各UE61の位置の座標データ)が入力され、サブエリアごとに最適化される各セルのアンテナパラメータの最適値が出力される。例えば、N個のセルのエリア20AをM個のサブエリアに分割し、以下の手順で各サブエリアを順番に最適化する。
【0055】
まず、M個に分割されたサブエリアのうち、1つのサブエリア(例えば図9(a)のサブエリア20S(1))が選択される(S121)。
【0056】
次に、前述の合計4(N/M)+M-1個のアンテナパラメータが遺伝的アルゴリズム等により最適化される(S122)。
【0057】
次に、エリア20Aの全体のアンテナパラメータの値が、上記最適化されたパラメータの値でアップデートされる(S123)。
【0058】
次に、残りのサブエリア(例えば図9(b)のサブエリア20S(2)、図9(c)のサブエリア20S(3))についても、上記S121~S123の処理が繰り返される。更に、すべてのサブエリアについての上記S121~S123の処理がT回(T≧1)繰り返される。その結果、最終的には、上記S121~S123の処理がM×T回(T≧1)繰り返されることになる。
【0059】
パラメータ適用ステップ(S130)では、上記逐次エリア最適化ステップ(S120)が完了した後のエリア20A内の各セルのアンテナパラメータの更新最終値が、実環境の通信中継局におけるSLアンテナ211の制御設定値として適用される。
【0060】
なお、図8及び図9に例示した動的エリア制御は定期的(例えば、1時間ごと又は2時間後ごとの周期的なタイミング)に実行してもよいし、又は、エリア20A内のUE分布に大きな変化が生じるたびに(例えば、所定の監視エリア内のUE数の変化量が所定の閾値を超えたタイミングに)実行してもよい。
【0061】
なお、上記動的エリア制御におけるサービスエリア20Aの分割の数及び方法は、サービスエリア20A内に含まれるセルの数、サイズ及び形状などによって決定してもよい。
【0062】
図10(a)~(c)はそれぞれ、サービスエリア20Aを複数のサブエリアに分割するエリア分割の他の例を示す説明図である。図10(a)の例では、サービスエリア20A内に放射状に延びた12個のセルが形成され、そのセルを4個ずつ含むようにサービスエリア20Aが3分割されている。図10(b)の例では、複数層のセル構成を有するサービスエリア20A内に同心円状に3列に形成された21個のセルを7個ずつ含むようにサービスエリア20Aが3分割されている。
【0063】
なお、各サブエリアのサイズを同じするためには、サービスエリア20A内のセルの総数Nがサブエリアの数(サービスエリア20Aの分割数)Mで割り切れる必要があるが、必ずしもすべてのサブエリアのセル数が同じでなくてもよい。
【0064】
例えば、図10(c)の例では、複数層のセル構成を有するサービスエリア20Aを周方向に3分割するとともに径方向に2分割することにより、合計6個の複数層のサブエリア20S(1)~20S(6)に分割している。この場合、動的エリア制御で必要になるアンテナパラメータの数がサブエリア内のセル数に応じて異なる。例えば、図10(c)において、内側のサブエリア20S(1)~20S(3)では1回当たりの最適化対象のアンテナパラメータの数(種類の数)は4×3+6-1=17個であり、外側のサブエリア20S(4)~20S(6)では1回当たりの最適化対象のアンテナパラメータの数(種類の数)は4×4+6-1=21個である。
【0065】
以上、本実施形態によれば、地上に向けて形成する複数のセルからなるサービスエリア20A内のUE61の分布の変化に対応可能な動的エリア制御を行うことができ、そのエリア最適化にかかる時間の増加を抑制することができる。
【0066】
なお、本明細書で説明された処理工程並びにHAPS等の通信中継装置の中継通信局、フィーダ局、ゲートウェイ局、遠隔制御装置、サーバ、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、基地局及び基地局装置の構成要素は、様々な手段によって実装することができる。例えば、これらの工程及び構成要素は、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、又は、それらの組み合わせで実装されてもよい。
【0067】
ハードウェア実装については、実体(例えば、無線中継局、フィーダ局、ゲートウェイ局、基地局、基地局装置、無線中継局装置、端末装置(ユーザ装置、移動局、通信端末)、管理装置、監視装置、遠隔制御装置、サーバ、ハードディスクドライブ装置、又は、光ディスクドライブ装置)において前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、1つ又は複数の、特定用途向けIC(ASIC)、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、デジタル信号処理装置(DSPD)、プログラマブル・ロジック・デバイス(PLD)、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、電子デバイス、本明細書で説明された機能を実行するようにデザインされた他の電子ユニット、コンピュータ、又は、それらの組み合わせの中に実装されてもよい。
【0068】
また、ファームウェア及び/又はソフトウェア実装については、前記構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段は、本明細書で説明された機能を実行するプログラム(例えば、プロシージャ、関数、モジュール、インストラクション、などのコード)で実装されてもよい。一般に、ファームウェア及び/又はソフトウェアのコードを明確に具体化する任意のコンピュータ/プロセッサ読み取り可能な媒体が、本明細書で説明された前記工程及び構成要素を実現するために用いられる処理ユニット等の手段の実装に利用されてもよい。例えば、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば制御装置において、メモリに記憶され、コンピュータやプロセッサにより実行されてもよい。そのメモリは、コンピュータやプロセッサの内部に実装されてもよいし、又は、プロセッサの外部に実装されてもよい。また、ファームウェア及び/又はソフトウェアコードは、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、不揮発性ランダムアクセスメモリ(NVRAM)、プログラマブルリードオンリーメモリ(PROM)、電気的消去可能PROM(EEPROM)、フラッシュメモリ、フロッピー(登録商標)ディスク、コンパクトディスク(CD)、デジタルバーサタイルディスク(DVD)、磁気又は光データ記憶装置、などのような、コンピュータやプロセッサで読み取り可能な媒体に記憶されてもよい。そのコードは、1又は複数のコンピュータやプロセッサにより実行されてもよく、また、コンピュータやプロセッサに、本明細書で説明された機能性のある態様を実行させてもよい。
【0069】
また、前記媒体は非一時的な記録媒体であってもよい。また、前記プログラムのコードは、コンピュータ、プロセッサ、又は他のデバイス若しくは装置機械で読み込んで実行可能であればよく、その形式は特定の形式に限定されない。例えば、前記プログラムのコードは、ソースコード、オブジェクトコード及びバイナリコードのいずれでもよく、また、それらのコードの2以上が混在したものであってもよい。
【0070】
また、本明細書で開示された実施形態の説明は、当業者が本開示を製造又は使用するのを可能にするために提供される。本開示に対するさまざまな修正は当業者には容易に明白になり、本明細書で定義される一般的原理は、本開示の趣旨又は範囲から逸脱することなく、他のバリエーションに適用可能である。それゆえ、本開示は、本明細書で説明される例及びデザインに限定されるものではなく、本明細書で開示された原理及び新規な特徴に合致する最も広い範囲に認められるべきである。
【符号の説明】
【0071】
20 :HAPS(通信中継装置)
20A :サービスエリア
20C :セル
20F :フットプリント
20S :サブエリア
21 :中継通信局
60 :UE高密度部
61 :UE(端末装置)
70 :GW局
80 :基地局装置
90 :移動通信網
95 :遠隔制御装置
211 :サービスリンク用アンテナ(SLアンテナ)
212 :フィーダリンク用アンテナ(FLアンテナ)
【要約】
【課題】地上に向けて形成する複数のセルからなるサービスエリア内の端末装置の分布の変化に対応可能な動的エリア制御を行うことができ、そのエリア最適化にかかる時間の増加を抑制することができる空中浮揚型の通信中継装置(HAPS)を提供する。
【解決手段】空中滞在型の通信中継装置(HAPS)は、サービスエリア内に位置する複数の端末装置の位置を推定し、前記サービスエリアを、複数のセルを含む複数(M)個のサブエリアに分割し、サブエリアごとに、複数の端末装置の位置の推定結果に基づいてサービスリンク用アンテナの複数(L)種類のアンテナパラメータを最適化し、複数(M)個のサブエリアのすべてについてサブエリアごとの最適化が完了した後の複数(L)種類のアンテナパラメータの最適値を、サービスリンク用アンテナに適用する。
【選択図】図8
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10