(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】ポリウレタン樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/40 20060101AFI20220721BHJP
C08G 18/48 20060101ALI20220721BHJP
C08G 18/62 20060101ALI20220721BHJP
C08G 18/08 20060101ALI20220721BHJP
C08L 75/08 20060101ALI20220721BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20220721BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20220721BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
C08G18/40 063
C08G18/48 054
C08G18/62 004
C08G18/08 038
C08L75/08
C08K3/22
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2021115946
(22)【出願日】2021-07-13
【審査請求日】2021-11-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003506
【氏名又は名称】第一工業製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【氏名又は名称】有近 康臣
(74)【代理人】
【識別番号】100189393
【氏名又は名称】前澤 龍
(74)【代理人】
【識別番号】100203091
【氏名又は名称】水鳥 正裕
(72)【発明者】
【氏名】金井 梓
(72)【発明者】
【氏名】竹田 勝紀
(72)【発明者】
【氏名】繁中 望
(72)【発明者】
【氏名】石野 愛
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-020439(JP,A)
【文献】特開2016-210932(JP,A)
【文献】特開2016-098328(JP,A)
【文献】特表2020-524194(JP,A)
【文献】特開2015-131883(JP,A)
【文献】特開2014-009308(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00-18/87
C08L 75/08
C08K 3/22
H01L 23/29
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)を含むポリウレタン樹脂組成物であって、
前記水酸基含有化合物(A)、前記金属水酸化物(C)および前記可塑剤(D)を含む第1液と、前記イソシアネート基含有化合物(B)を含む第2液と、を含む二液型であり、
前記水酸基含有化合物(A)が、ポリブタジエンポリオール(A1)と、アルキレンオキシド単位の50モル%以上がブチレンオキシド単位である2官能のブチレンオキシド系ポリオール(A2)とを含み、
前記ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の数平均分子量が400以上3000以下であ
り、
前記イソシアネート基含有化合物(B)の持つイソシアネート基と前記水酸基含有化合物(A)の持つ水酸基とのモル比NCO/OHが0.6~1.5である、ポリウレタン樹脂組成物。
【請求項2】
前記ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の含有量が、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、請求項1記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項3】
前記ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の数平均分子量が600以上1600以下であり、前記ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の含有量が、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である、請求項1または2に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項4】
前記水酸基含有化合物(A)が、ひまし油系ポリオール(A3)をさらに含む、請求項1~3のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート基含有化合物(B)が、イソシアヌレート変性体を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項6】
前記金属水酸化物(C)が、水酸化アルミニウムを含む、請求項1~5のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項7】
前記可塑剤(D)が、フタル酸エステルを含む、請求項1~6のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【請求項8】
電気絶縁用封止剤として用いられる請求項1~
7のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、ポリウレタン樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、電子回路基板や電子部品は、外的要因から保護するためにポリウレタン樹脂組成物を用いて封止することが行われており、ポリウレタン樹脂組成物のポリオールとしてポリブタジエンポリオールを用いることが知られている。
【0003】
例えば、特許文献1には、水酸基含有化合物、イソシアネート基含有化合物、金属水酸化物および可塑剤を含有し、前記水酸基含有化合物がポリブタジエンポリオールおよびひまし油系ポリオールを含有し、前記金属水酸化物が水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムである、ポリウレタン樹脂組成物が開示されている。これにより、特許文献1によれば、例えば電気電子部品に用いられるポリウレタン樹脂組成物において、金属水酸化物により難燃性を付与しつつ、耐湿熱性、電気絶縁性、作業性およびケミカルストレスクラック性を改善することができることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気電子部品においては、その長寿命化に伴い、長期にわたって湿熱下で使用されることから、優れた耐湿熱性が求められている。そのため、例えば、上記のように金属水酸化物を配合した電気電子部品用のポリウレタン樹脂組成物においても、更なる耐湿熱性の向上が望まれる。
【0006】
本発明の実施形態は、耐湿熱性に優れるポリウレタン樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は以下に示される実施形態を含む。
[1] 水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)を含むポリウレタン樹脂組成物であって、前記水酸基含有化合物(A)が、ポリブタジエンポリオール(A1)と、アルキレンオキシド単位の50モル%以上がブチレンオキシド単位であるブチレンオキシド系ポリオール(A2)とを含み、前記ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の数平均分子量が400以上3000以下である、ポリウレタン樹脂組成物。
[2] 前記ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の含有量が、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上15質量部以下である、[1]に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[3] 前記ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の数平均分子量が600以上1600以下であり、前記ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の含有量が、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、1質量部以上10質量部以下である、[1]または[2]に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[4] 前記水酸基含有化合物(A)が、ひまし油系ポリオール(A3)をさらに含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[5] 前記イソシアネート基含有化合物(B)が、イソシアヌレート変性体を含む、[1]~[4]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[6] 前記金属水酸化物(C)が、水酸化アルミニウムを含む、[1]~[5]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[7] 前記可塑剤(D)が、フタル酸エステルを含む、[1]~[6]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[8] 前記水酸基含有化合物(A)、前記金属水酸化物(C)および前記可塑剤(D)を含む第1液と、前記イソシアネート基含有化合物(B)を含む第2液と、を含む二液型である、[1]~[7]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
[9] 電気絶縁用封止剤として用いられる[1]~[8]のいずれか1項に記載のポリウレタン樹脂組成物。
【発明の効果】
【0008】
本発明の実施形態によれば、耐湿熱性に優れるポリウレタン樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物(A)と、イソシアネート基含有化合物(B)と、金属水酸化物(C)と、可塑剤(D)と、を含有する。
【0010】
[水酸基含有化合物(A)]
水酸基含有化合物(A)としては、1分子中に2つ以上の水酸基を有するポリオール化合物を用いることができ、本実施形態では、水酸基含有化合物(A)は、ポリブタジエンポリオール(A1)とブチレンオキシド系ポリオール(A2)とを含む。
【0011】
ポリブタジエンポリオール(A1)としては、特に限定されず、分子中に1,4-結合型、1,2-結合型またはそれらが混在したポリブタジエン構造と少なくとも2つの水酸基を有するものが好ましい。より好ましくは、ポリブタジエン構造の両末端にそれぞれ水酸基を有するものである。ポリブタジエンポリオール(A1)としては、その不飽和二重結合の一部または全てが水添された水添ポリブタジエンポリオールでもよく、未水添のものと水添されたものを併用してもよい。また、分子量や官能基数の異なるポリブタジエンポリオールを2種以上併用してもよい。
【0012】
ポリブタジエンポリオール(A1)の分子量は特に限定されず、例えば、数平均分子量(Mn)が600~15000でもよく、800~9000でもよく、1000~7000でもよく、1300~5000でもよく、1400~3000でもよい。
【0013】
ポリブタジエンポリオール(A1)の官能基数は特に限定されず、例えば2.0~4.0でもよく、2.0~2.5でもよい。
【0014】
ポリブタジエンポリオール(A1)の水酸基価は特に限定されず、例えば10~200mgKOH/gでもよく、15~150mgKOH/gでもよく、20~120mgKOH/gでもよく、25~100mgKOH/gでもよく、40~90mgKOH/gでもよい。
【0015】
本明細書において、ポリブタジエンポリオール(A1)の数平均分子量(Mn)は、GPC法(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法)により測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて算出した値である。GPCの条件は、例えば、カラム:東ソー(株)製「TSKgel GMHHR-H」、溶媒:THF、流速:0.6mL/分、測定温度:40℃である。ポリブタジエンポリオール(A1)の水酸基価はJIS K1557-1:2007のA法に準じて測定される値であり、ポリオール1g中の水酸基(OH基)をアセチル化する酢酸と反応する、水酸化カリウム(KOH)のmg数である。ポリブタジエンポリオール(A1)の官能基数は、下記式により算出される値である。
官能基数={(水酸基価)×(Mn)}/(56.1×1000)
【0016】
ポリブタジエンポリオール(A1)の含有量は特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、1~25質量部でもよく、2~20質量部でもよく、3~15質量部でもよい。
【0017】
ブチレンオキシド系ポリオール(A2)は、アルキレンオキシド単位の50モル%以上がブチレンオキシド単位であるポリオールである。より詳細には、ブチレンオキシド系ポリオール(A2)は、当該ポリオールを形成するのに使用される全アルキレンオキシドの50モル%以上がブチレンオキシドであるポリアルキレングリコールであり、広義のポリブチレングリコールである。水酸基含有化合物(A)として、かかるブチレンオキシド系ポリオール(A2)を上記ポリブタジエンポリオール(A1)とともに併用することにより、ポリウレタン樹脂組成物の耐湿熱性を向上することができる。また、ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の代わりにひまし油系ポリオールを併用した場合に比べて、ポリウレタン樹脂組成物の製造時の混合粘度を低くして作業性を向上することができる。
【0018】
ブチレンオキシド系ポリオール(A2)において、全アルキレンオキシド単位に対するブチレンオキシド単位の量は、耐湿熱性およびポリブタジエンポリオール(A1)との相溶性の観点から、60モル%以上であることが好ましく、より好ましくは70モル%以上であり、80モル%以上でもよく、90モル%以上でもよく、100モル%でもよい。ブチレンオキシド単位以外のアルキレンオキシド単位を有する場合、当該他のアルキレンオキシド単位としては、特に限定されず、例えばエチレンオキシド単位および/またはプロピレンオキシド単位が挙げられる。
【0019】
好ましい一実施形態において、ブチレンオキシド系ポリオール(A2)は、アルキレンオキシド単位が100モル%のブチレンオキシド単位からなるポリブチレングリコールでもよい。
【0020】
本実施形態では、ブチレンオキシド系ポリオール(A2)として、数平均分子量(Mn)が400~3000のものを用いる。ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の数平均分子量が400以上であることにより、ポリブタジエンポリオール(A1)との相溶性を向上することができる。また、3000以下であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の硬化性を向上することができる。ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の数平均分子量は600以上であることが好ましく、より好ましくは800以上である。該数平均分子量は、2000以下であることが好ましく、より好ましくは1600以下であり、1300以下でもよい。
【0021】
ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の水酸基価は特に限定されず、例えば37~500mgKOH/gでもよく、50~300mgKOH/gでもよく、60~200mgKOH/gでもよい。
【0022】
本明細書において、ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の数平均分子量(Mn)は、下記式により、水酸基価と官能基数から換算される値である。
数平均分子量=56.1×1000×官能基数/水酸基価
ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の水酸基価は、JIS K1557-1:2007のA法に準じて測定される値(mgKOH/g)である。ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の官能基数は、下記のように開始剤としての活性水素原子含有化合物における活性水素の数から求められる。
【0023】
ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の構造は特に限定されず、例えば、2~8個の活性水素原子を有する化合物を開始剤として、これにブチレンオキシドを含むアルキレンオキシドを付加重合させた構造を有してもよい。ブチレンオキシドとしては、1,2-ブチレンオキシドおよび/または2,3-ブチレンオキシドが用いられるが、好ましくは1,2-ブチレンオキシドである。
【0024】
上記開始剤として、例えばエチレングリコールやプロピレングリコールなどの2個の活性水素原子を持つ化合物(ジオール)を用いれば、2官能のブチレンオキシド系ポリオール(A2)が得られる。また、開始剤として、例えばグリセリンやトリメチロールプロパンなどの3個の活性水素原子を持つ化合物(トリオール)を用いれば、3官能のブチレンオキシド系ポリオール(A2)が得られる。3官能の方が2官能よりも硬化が速くなると考えられるため、より速い硬化が求められる場合、3官能のブチレンオキシド系ポリオール(A2)を使用してもよい。ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の官能基数は特に限定されず、2~8でもよく、2~4でもよい。好ましくは、ブチレンオキシド系ポリオール(A2)は、2官能または3官能であり、2官能のものと3官能のものを併用してもよい。
【0025】
また、上記付加重合の形態として、ブチレンオキシドとともに他のアルキレンオキシドを共重合させる場合、ランダム共重合でもよく、ブロック共重合でもよい。一実施形態において、開始剤にブチレンオキシドを付加重合させた後、当該ポリブチレンオキシド鎖の末端にエチレンオキシドを付加させた構造を持つ、末端エチレンオキシド付加ポリブチレングリコールを用いてもよい。末端にエチレンオキシドを付加させることにより、硬化性を高めることができる。
【0026】
なお、ブチレンオキシド系ポリオール(A2)としては、上記の構成を持つものをいずれか1種用いてもよく、また、数平均分子量や構造等が異なる2種以上のものを併用してもよい。
【0027】
ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の含有量は特に限定されないが、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、1~15質量部であることが好ましい。ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の含有量が1質量部以上であることにより、耐湿熱性を向上することができ、またポリウレタン樹脂組成物の製造時の混合粘度を低くすることができる。該含有量が15質量部以下であることにより、硬化後における樹脂表面からのブリードを抑制することができるとともに、硬化性を向上することができる。ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の含有量は、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、より好ましくは1~10質量部であり、さらに好ましくは1.5~7質量部である。
【0028】
ポリブタジエンポリオール(A1)とブチレンオキシド系ポリオール(A2)との質量比は特に限定されないが、(A2)/(A1)が0.1~3.5であることが好ましく、より好ましくは0.2~1.0である。
【0029】
ポリブタジエンポリオール(A1)とブチレンオキシド系ポリオール(A2)の合計の含有量(A1+A2)は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、4~26質量部であることが好ましく、より好ましくは5~21質量部であり、さらに好ましくは6~16質量部である。
【0030】
一実施形態において、水酸基含有化合物(A)は、さらにひまし油系ポリオール(A3)を含んでもよい。ひまし油系ポリオール(A3)としては、ひまし油、ひまし油脂肪酸、及びこれらに水素付加した水添ひまし油や水添ひまし油脂肪酸を用いて製造されたポリオールを使用することができる。より詳細には、ひまし油系ポリオール(A3)としては、例えば、ひまし油、ひまし油とその他の天然油脂とのエステル交換物、ひまし油と多価アルコールとの反応物、ひまし油脂肪酸と多価アルコールとのエステル化反応物、及びこれらにアルキレンオキシドを付加重合したポリオールなどが挙げられる。
【0031】
ひまし油系ポリオール(A3)の水酸基価は特に限定されず、例えば50~250mgKOH/gでもよく、100~180mgKOH/gでもよい。ひまし油系ポリオール(A3)の水酸基価は、JIS K1557-1:2007のA法に準じて測定される。
【0032】
ひまし油系ポリオール(A3)の含有量は特に限定されないが、耐湿熱性の観点からは少量であることが好ましく、例えば、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、0.01~1質量部でもよく、0.1~1質量部でもよい。
【0033】
本実施形態において、水酸基含有化合物(A)は、ポリブタジエンポリオール(A1)とブチレンオキシド系ポリオール(A2)のみで構成されてもよく、ポリブタジエンポリオール(A1)とブチレンオキシド系ポリオール(A2)とひまし油系ポリオール(A3)のみで構成されてもよいが、他の水酸基含有化合物を含んでもよい。水酸基含有化合物(A)100質量%に対するポリブタジエンポリオール(A1)とブチレンオキシド系ポリオール(A2)との合計量(A1+A2)は特に限定されないが、70質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上であり、さらに好ましくは90質量%以上であり、100質量%でもよい。
【0034】
上記他の水酸基含有化合物としては、各種ポリオールが用いられ、特に限定されない。例えば、ひまし油系ポリオール(A3)以外のポリエステルポリオール、ブチレンオキシド系ポリオール(A2)以外のポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ダイマー酸ポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、アクリルポリオール、ポリイソプレンポリオールなどが挙げられる。さらに、一般に架橋剤として用いられている低分子量ポリオールでもよく、具体的には、N,N-ビス(2-ヒドロキシプロピル)アニリン、ヒドロキノン-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル、レゾルシノール-ビス(β-ヒドロキシエチル)エーテル等の芳香族アルコール、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、オクタンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン等の脂肪族アルコールが挙げられる。
【0035】
[イソシアネート基含有化合物(B)]
イソシアネート基含有化合物(B)としては、1分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する種々のポリイソシアネート化合物を用いることができる。イソシアネート基含有化合物(B)としては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート化合物(B1)、脂環式ポリイソシアネート化合物(B2)、および芳香族ポリイソシアネート化合物(B3)、ならびにこれらの変性体および多核体が挙げられ、いずれか1種用いても2種以上併用してもよい。
【0036】
脂肪族ポリイソシアネート化合物(B1)としては、例えば、テトラメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネート、3-メチルペンタン-1,5-ジイソシアネートなどが挙げられる。
【0037】
脂環式ポリイソシアネート化合物(B2)としては、例えば、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0038】
芳香族ポリイソシアネート化合物(B3)としては、例えば、トリレンジイソシアネート(TDI、例えば2,4-TDI、2,6-TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI、例えば2,2’-MDI、2,4’-MDI、4,4’-MDI)、4,4’-ジベンジルジイソシアネート、1,5-ナフチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,3-フェニレンジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0039】
これらのポリイソシアネート化合物(B1)~(B3)の変性体としては、例えば、イソシアヌレート変性体、アロファネート変性体、ビュレット変性体、アダクト変性体、カルボジイミド変性体などが挙げられる。
【0040】
一実施形態において、イソシアネート基含有化合物(B)は、イソシアヌレート変性体を含むことが好ましい。イソシアヌレート変性体を用いることにより、上記水酸基含有化合物(A)との混合性に優れ、ポリウレタン樹脂組成物の硬化後における硬度の均一性を向上することができる。イソシアヌレート変性体としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物(B1)のイソシアヌレート変性体、脂環式ポリイソシアネート化合物(B2)のイソシアヌレート変性体、芳香族ポリイソシアネート化合物(B3)のイソシアヌレート変性体が挙げられる。好ましくは脂肪族ポリイソシアネート化合物(B1)のイソシアヌレート変性体であり、より好ましくはHDIイソシアヌレートである。
【0041】
他の一実施形態において、イソシアネート基含有化合物(B)は、HDIを含むことが好ましい。イソシアネート基含有化合物(B)としては、HDIと上記イソシアヌレート変性体を併用してもよく、HDIとHDIイソシアヌレートを併用してもよい。
【0042】
さらに他の一実施形態において、イソシアネート基含有化合物(B)は、MDIを含んでもよい。MDIとしてはモノメリックMDIでもよく、ポリメリックMDI(クルードMDI)でもよい。イソシアネート基含有化合物(B)としては、MDIと、上記のHDIおよび/またはイソシアヌレート変性体(好ましくはHDIイソシアヌレート)を併用してもよい。
【0043】
ポリウレタン樹脂組成物における、イソシアネート基含有化合物(B)の含有量は、特に限定されず、例えば、水酸基含有化合物(A)100質量部に対して、5~60質量部でもよく、8~50質量部でもよく、10~40質量部でもよく、15~30質量部でもよい。
【0044】
水酸基含有化合物(A)とイソシアネート基含有化合物(B)との比は、特に限定されず、例えば、イソシアネート基含有化合物(B)の持つイソシアネート基と水酸基含有化合物(A)の持つ水酸基とのモル比NCO/OH(インデックス)が、0.6~1.5でもよく、0.7~1.3でもよく、0.8~1.2でもよい。
【0045】
[金属水酸化物(C)]
金属水酸化物(C)としては、例えば水酸化アルミニウムおよび/または水酸化マグネシウムが挙げられ、好ましくは水酸化アルミニウムを用いることである。
【0046】
金属水酸化物(C)の含有量は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、40~85質量部でもよく、50~75質量部でもよい。金属水酸化物(C)の含有量が40質量部以上であることにより難燃性を向上することができ、また85質量部以下であることにより、ポリウレタン樹脂組成物の製造時の混合粘度を低くすることができる。
【0047】
[可塑剤(D)]
可塑剤(D)としては、例えば、ジオクチルフタレート、ジイソノニルフタレート、ジウンデシルフタレートなどのフタル酸エステル、ジオクチルアジペート、ジイソノニルアジペートなどのアジピン酸エステル、メチルアセチルリシノレート、ブチルアセチルリシノレート、アセチル化リシノール酸トリグリセリド、アセチル化ポリリシノール酸トリグリセリドなどのひまし油系エステル、トリオクチルトリメリテート、トリイソノニルトリメリテートなどのトリメリット酸エステル、テトラオクチルピロメリテート、テトライソノニルピロメリテートなどのピロメリット酸エステル、トリクレジルフォスフェート、トリスキシレニルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシレニルホスフェート、トリフェニルフォスフェートなどリン酸エステル等が挙げられ、これらはいずれか一種または二種以上組み合わせて用いることができる。これらの中でも可塑剤(D)としては、フタル酸エステルを用いることが好ましい。
【0048】
可塑剤(D)の含有量は、特に限定されず、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して、5~30質量部でもよく、10~28質量部でもよく、15~25質量部でもよい。可塑剤(D)の含有量が5質量部以上であることにより、硬化後のポリウレタン樹脂の硬度を下げることができる。
【0049】
[その他の成分]
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物には、上記した各成分の他に、必要に応じて、例えば、触媒、酸化防止剤、整泡剤、希釈剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤などの各種添加剤を、本実施形態の目的を損なわない範囲で加えることができる。
【0050】
触媒としては、例えば、有機スズ触媒、有機鉛触媒、有機ビスマス触媒などの金属触媒、アミン触媒などの各種ウレタン重合触媒を用いることができる。触媒の含有量は、特に限定されず、例えば、ポリウレタン樹脂組成物100質量部に対して0.0001~0.1質量部でよく、0.001~0.01質量部でもよい。
【0051】
[ポリウレタン樹脂組成物]
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物(A)と金属水酸化物(C)と可塑剤(D)を含む第1液と、イソシアネート基含有化合物(B)を含む第2液と、を含む二液型ポリウレタン樹脂組成物として構成されてもよい。かかる二液型ポリウレタン樹脂組成物は、第1液および第2液とともに、上記その他の成分を含む第3液をさらに備えてもよい。
【0052】
該二液型ポリウレタン樹脂組成物は、第1液と第2液をそれぞれ調製することにより製造することができ、すなわち、第1液と第2液はそれぞれ別の容器に充填されたものでもよい。別々の容器に充填された第1液と第2液は、使用時に混合されることにより水酸基含有化合物(A)とイソシアネート基含有化合物(B)が反応してポリウレタン樹脂が形成され、硬化してもよい。その際、加熱により硬化させてもよい。本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物は、第1液と第2液を混合して得られたものであってもよく、硬化前の液状でもよく、硬化したものであってもよい。
【0053】
第1液は、水酸基含有化合物(A)、金属水酸化物(C)および可塑剤(D)のみで構成されてもよく、また、これらの他に、必要に応じて、例えば、触媒、酸化防止剤、整泡剤、希釈剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤などの各種添加剤が配合されてもよい。好ましくは、第1液は水酸基含有化合物(A)、金属水酸化物(C)、可塑剤(D)および触媒を含むことである。
【0054】
第2液は、イソシアネート基含有化合物(B)のみで構成されてもよく、また、イソシアネート基含有化合物(B)とともに金属水酸化物(C)および/または可塑剤(D)を含んでもよい。また、これらの他に、必要に応じて、例えば、酸化防止剤、整泡剤、希釈剤、難燃剤、紫外線吸収剤、着色剤などの各種添加剤が配合されてもよい。
【0055】
[ポリウレタン樹脂組成物の用途]
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物の用途は、特に限定されないが、電気電子部品における電気絶縁用封止剤として用いることが好ましい。電気電子部品としては、特に限定されないが、例えば、トランスコイル、チョークコイルおよびリアクトルコイルなどの変圧器、機器制御基板、センサ、無線通信部品などが挙げられる。
【0056】
本実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物を用いて樹脂封止された電気電子部品は、例えば、電気洗濯機、便座、湯沸し器、浄水器、風呂、食器洗浄機、太陽光パネル、電動工具、自動車、バイクなどに使用することができる。
【実施例】
【0057】
以下、実施例及び比較例に基づいて、ポリウレタン樹脂組成物について詳細に説明するが、本発明はこれにより限定されない。
【0058】
実施例及び比較例において使用する各成分の詳細を以下に示す。
【0059】
[水酸基含有化合物(A)]
・ポリブタジエンポリオール1:数平均分子量2800、水酸基価47mgKOH/g、官能基数2.3、製品名:Poly bd R-45HTLO、クレイバレー社製
・ポリブタジエンポリオール2:数平均分子量1600、水酸基価80mgKOH/g、官能基数2.3、下記製法による調製品
【0060】
窒素で系内を置換した攪拌反応器に150質量部の1,3-ブタジエン、イソプロパノール88質量%と水12質量%とを含有する共沸混合物105質量部、および60%過酸化水素水溶液30質量部を仕込んだ。その反応器の内容物を連続的に攪拌しながら120℃になるまで加熱し、攪拌しながら120℃から130℃に保ち2時間重合反応を行った。所定時間完了後、その反応器の内容物を冷却し、その反応生成物を反応器から取り出し、未反応モノマーを反応生成物から取り除き、その生成物を水洗して残留イソプロパノール及び未反応過酸化水素を除去した。この生成物を真空乾燥して、粘度が25℃で5000mPa・sのポリブタジエンポリオールを得た。
【0061】
・BO系ポリオール1:下記合成例1に従い、プロピレングリコールを開始剤としてブチレンオキシドを付加重合して得られたポリブチレングリコール(数平均分子量3000、官能基数2、全アルキレンオキシド単位中のブチレンオキシド単位の量100モル%)
【0062】
合成例1:プロピレングリコール2.53質量部に48%KOH0.55質量部と1,2-ブチレンオキシド(BO)10.8質量部をステンレス製オートクレーブに仕込み、窒素置換した後、釜内を減圧し、昇温した。そして、120℃±5℃および最高圧0.2MPaにてBO導入反応を行った後、120±5℃で240分間、BO熟成反応を行った。次いで、80℃まで冷却後、90~110℃で10mmHg以下に減圧した。その後、BOを86.67質量部追加し、120℃±5℃および最高圧0.4MPaにてBO導入反応を行った後、120±5℃で360分間、BO熟成反応を行った。冷却後、100±5℃にて20mmHg(2.7kPa)到達まで減圧し、次いで、精製・ろ過して、2官能のポリブチレングリコールを得た。
【0063】
・BO系ポリオール2:上記合成例1において1段目のBO熟成反応後に追加するBOの量を40質量部とし、その他は合成例1と同様の方法に従い、プロピレングリコールを開始剤としてブチレンオキシドを付加重合して得られたポリブチレングリコール(数平均分子量1600、官能基数2、全アルキレンオキシド単位中のブチレンオキシド単位の量100モル%)
【0064】
・BO系ポリオール3:上記合成例1において1段目のBO熟成反応後に追加するBOの量を13.3質量部とし、その他は合成例1と同様の方法に従い、プロピレングリコールを開始剤としてブチレンオキシドを付加重合して得られたポリブチレングリコール(数平均分子量800、官能基数2、全アルキレンオキシド単位中のブチレンオキシド単位の量100モル%)
【0065】
・BO系ポリオール4:下記合成例2に従い、プロピレングリコールを開始剤としてブチレンオキシドを付加重合して得られたポリブチレングリコール(数平均分子量400、官能基数2、全アルキレンオキシド単位中のブチレンオキシド単位の量100モル%)
【0066】
合成例2:プロピレングリコール19質量部に48%KOH0.83質量部と1,2-ブチレンオキシド(BO)81質量部をステンレス製オートクレーブに仕込み、窒素置換した後、釜内を減圧し、昇温した。そして、120℃±5℃および最高圧0.2MPaにてBO導入反応を行った後、120±5℃で240分間、BO熟成反応を行った。脱BO冷却後、100±5℃にて20mmHg(2.7kPa)到達まで減圧し、次いで、精製・ろ過して、2官能のポリブチレングリコールを得た。
【0067】
・BO系ポリオール5:下記合成例3に従い、プロピレングリコールを開始剤としてブチレンオキシドを付加重合し、さらにその末端にエチレンオキシドを付加して得られた末端EO付加ポリブチレングリコール(数平均分子量1250、官能基数2、全アルキレンオキシド単位中のブチレンオキシド単位の量57モル%、エチレンオキシド単位の量43モル%)
【0068】
合成例3:プロピレングリコール6.08質量部に48%KOH0.55質量部と1,2-ブチレンオキシド(BO)25.9質量部をステンレス製オートクレーブに仕込み、窒素置換した後、釜内を減圧し、昇温した。そして、120℃±5℃および最高圧0.2MPaにてBO導入反応を行った後、120±5℃で240分間、BO熟成反応を行った。次いで、80℃まで冷却後、抜き取り、90~110℃で10mmHg以下に減圧した。その後、BOを38.0質量部追加し、120℃±5℃および最高圧0.4MPaにてBO導入反応を行った後、120±5℃で360分間、BO熟成反応を行った。その後、エチレンオキシド(EO)を30.0質量部追加し、120℃±5℃および最高圧0.4MPaにてEO導入反応を行った後、120±5℃で360分間、EO熟成反応を行った。脱EO冷却後、100±5℃にて20mmHg(2.7kPa)到達まで減圧し、次いで、精製・ろ過して、EO末端付加ポリブチレングリコールを得た。
【0069】
・BO系ポリオール6:下記合成例4に従い、グリセリンを開始剤としてブチレンオキシドを付加重合して得られたポリブチレングリコール(数平均分子量1100、官能基数3、全アルキレンオキシド単位中のブチレンオキシド単位の量100モル%)
【0070】
合成例4:グリセリン8.37質量部に48%KOH0.5質量部と1,2-ブチレンオキシド(BO)28.1質量部をステンレス製オートクレーブに仕込み、窒素置換した後、釜内を減圧し、昇温した。そして、120℃±5℃および最高圧0.2MPaにてBO導入反応を行った後、120±5℃で240分間、BO熟成反応を行った。次いで、80℃まで冷却後、90~110℃で10mmHg以下に減圧した。その後、BOを63.62質量部追加し、120℃±5℃および最高圧0.4MPaにてBO導入反応を行った後、120±5℃で360分間、BO熟成反応を行った。冷却後、100±5℃にて20mmHg(2.7kPa)到達まで減圧し、次いで、精製・ろ過して、3官能のポリブチレングリコールを得た。
【0071】
・BO系ポリオール7:下記合成例5に従い、グリセリンを開始剤としてブチレンオキシドを付加重合し、さらにその末端にエチレンオキシドを付加して得られた末端EO付加ポリブチレングリコール(数平均分子量1120、官能基数3、全アルキレンオキシド単位中のブチレンオキシド単位の量84モル%、エチレンオキシド単位の量16モル%)
【0072】
合成例5:上記合成例4において、2段目のBO熟成反応でBOを55.24質量部追加し、エチレンオキシド(EO)を10.2質量部追加し、120℃±5℃および最高圧0.4MPaにてEO導入反応を行った後、120±5℃で360分間、EO熟成反応を行った。脱EO冷却後、100±5℃にて20mmHg(2.7kPa)到達まで減圧し、次いで、精製・ろ過して、3官能のEO末端付加ポリブチレングリコールを得た。
【0073】
・PO系ポリオール1:数平均分子量700、官能基数2のポリプロピレングリコール、製品名:ハイフレックスD-700、第一工業製薬(株)製
・PO系ポリオール2:数平均分子量1000、官能基数2のポリプロピレングリコール、製品名:ハイフレックスD-1000、第一工業製薬(株)製
・PO系ポリオール3:数平均分子量1300、官能基数2のポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、製品名:エパン410、第一工業製薬(株)製
・PO系ポリオール4:数平均分子量1000、官能基数3のポリプロピレングリコール、製品名:X-2116、第一工業製薬(株)製
・PO系ポリオール5:数平均分子量3000、官能基数3のポリプロピレングリコール、製品名:ハイフレックスG-3000、第一工業製薬(株)製
・ひまし油系ポリオール:数平均分子量938、官能基数2.7、製品名:ひまし油D、伊藤製油(株)製
【0074】
[その他の成分]
・可塑剤:フタル酸ジウンデシル
・金属水酸化物:水酸化アルミニウム、製品名:BX-053、日本軽金属株式会社製
・触媒:ジオクチル錫、製品名:ネオスタンU-810、日東化成(株)製
【0075】
[イソシアネート基含有化合物(B)]
・ポリイソシアネート1:HDIイソシアヌレート、製品名:デュラネートTPA-100、旭化成(株)製
・ポリイソシアネート2:HDI、製品名:デュラネートD-201、旭化成(株)製
・ポリイソシアネート3:クルードMDI、製品名:ルプラネートM5S、BASF INOAC ポリウレタン(株)製
【0076】
[実施例1~16及び比較例1~6]
下記表1~3に示す配合(質量部)により、各実施例および各比較例のポリウレタン樹脂組成物を調製した。調製に際しては、表1~3に示す第1液を所定量秤量し、適宜熱をかけて溶かし込みながら攪拌混合を行い、混合後、25℃に調整した。続いて、この混合物に25℃に調整した第2液(イソシアネート基含有化合物(B))を表1~3に記載のとおりに加えて攪拌混合し、脱泡した。
【0077】
各実施例および各比較例について、相溶性、硬化性、耐久性、体積固有抵抗、マイグレーション特性および混合粘度を測定・評価した。測定・評価方法は以下のとおりである。
【0078】
[相溶性]
水酸基含有化合物である、ポリブタジエンポリオールと、BO系ポリオール、PO系ポリオールまたはひまし油系ポリオールとを混合した後、室温で7日間放置し、放置後の液の状態を下記基準により評価した。
A:透明
B:濁りあり
C:分離
【0079】
[硬化性]
上記脱泡後のポリウレタン樹脂組成物を、縦5cm×横5cm×高さ3cmの容器に流し込み、80℃の硬化炉で1時間放置後、樹脂の硬度を測定した。硬度は、JIS K6253-3に準拠したタイプAデュロメータおよびJIS K7312に準拠したタイプC硬さ試験機で測定し、下記基準により評価した。なお、硬化性は速く硬化するか否かの評価である。
A:タイプAデュロメータ硬さが0以上、
B:タイプAデュロメータ硬さが0未満(タイプAデュロメータでは測定不可)かつタイプC硬さが0以上
C:硬化発現なし、または液状
【0080】
[耐久性]
上記脱泡後のポリウレタン樹脂組成物を、縦5cm×横5cm×高さ1cmの型に流し込み、80℃の硬化炉で48時間硬化させて樹脂片を作製した。該樹脂片を温度121℃、湿度100%、2atmの高温高湿槽で処理し、500時間経過後、750時間経過後、1000時間経過後にJIS K6253-3に準拠したタイプAデュロメータにより硬さを測定し、下記基準により評価した。
A:1000時間経過後のタイプAデュロメータ硬さが5以上
B:750時間経過後のタイプAデュロメータ硬さが5以上かつ1000時間経過後のタイプAデュロメータ硬さが5未満
C:500時間経過後のタイプAデュロメータ硬さが5以上かつ750時間経過後のタイプAデュロメータ硬さが5未満
【0081】
[体積固有抵抗]
上記の耐久性と同様の樹脂片を作製し、該樹脂片を温度121℃、湿度100%、2atmの高温高湿槽で処理し、500時間経過後、750時間経過後、1000時間経過後に体積固有抵抗をJIS K6911により測定し(測定電圧:500V)、下記基準により評価した。
A:1000時間経過後の体積固有抵抗が109Ω・cm以上
B:1000時間経過後の体積固有抵抗が109Ω・cm未満かつ750時間経過後の体積固有抵抗が109Ω・cm以上
C:750時間経過後の体積固有抵抗が109Ω・cm未満かつ500時間経過後の体積固有抵抗が109Ω・cm以上
【0082】
[マイグレーション特性]
ガラスシャーレにJIS2型くし形電極基板を配置し、陽極および陰極を配線した。その上に、上記脱泡後のポリウレタン樹脂組成物を注型し、80℃の硬化炉で48時間硬化させて試験片を作製した。該試験片を温度85℃、湿度85%の湿熱槽にて、100Vの電圧を印加してマイグレーション試験を実施し、1000時間経過までに通電するか否かを、下記基準により評価した。電極周囲の水分が多いほど、陽極から銅イオンが溶出し、陰極へ移動、陰極側で析出する。析出分が成長すると絶縁不良となり、最終的には配線パターン間がショートする。かかるショートが発生するか否かの試験である。
A:通電なし
C:通電あり
【0083】
[混合粘度]
上記脱泡直後のポリウレタン樹脂組成物の25℃での粘度をB型回転粘度計により測定した。
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
結果は表1~3に示すとおりである。ポリブタジエンポリオールと併用するポリオールとしてPO系ポリオール1~5を用いた比較例1~5であると、湿熱処理後の耐久性(硬度変化)には優れていたものの、湿熱処理後の体積固有抵抗の低下が大きく、またマイグレーション特性にも劣っており、耐湿熱性に劣っていた。
【0088】
ポリブタジエンポリオールと併用するポリオールとしてひまし油系ポリオールを用いた比較例6では、湿熱処理後のマイグレーション特性には優れていたものの、湿熱処理後の耐久性(硬度変化)が劣っており、体積固有抵抗についても低下傾向が見られた。また混合粘度も高かった。
【0089】
これに対し、ポリブタジエンポリオールとBO系ポリオールを併用した実施例1~16であると、湿熱処理後の耐久性(硬度変化)、体積固有抵抗およびマイグレーション特性に優れており、比較例1~6に対して耐湿熱性に優れていた。
【0090】
なお、明細書に記載の種々の数値範囲は、それぞれそれらの上限値と下限値を任意に組み合わせることができ、それら全ての組み合わせが好ましい数値範囲として本明細書に記載されているものとする。また、「X~Y」との数値範囲の記載は、X以上Y以下を意味する。
【0091】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその省略、置き換え、変更などは、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【要約】
【課題】耐湿熱性に優れるポリウレタン樹脂組成物を提供する。
【解決手段】実施形態に係るポリウレタン樹脂組成物は、水酸基含有化合物(A)、イソシアネート基含有化合物(B)、金属水酸化物(C)、および可塑剤(D)を含む。水酸基含有化合物(A)が、ポリブタジエンポリオール(A1)と、アルキレンオキシド単位の50モル%以上がブチレンオキシド単位であるブチレンオキシド系ポリオール(A2)とを含む。ブチレンオキシド系ポリオール(A2)の数平均分子量が400以上3000以下である。
【選択図】なし