(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-20
(45)【発行日】2022-07-28
(54)【発明の名称】制御システム、制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F27D 19/00 20060101AFI20220721BHJP
F27D 3/15 20060101ALI20220721BHJP
B25J 18/02 20060101ALI20220721BHJP
B25J 9/06 20060101ALI20220721BHJP
【FI】
F27D19/00 Z
F27D3/15 S
B25J18/02
B25J9/06 Z
(21)【出願番号】P 2021121428
(22)【出願日】2021-07-26
【審査請求日】2021-08-03
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】村上 健太
(72)【発明者】
【氏名】松下 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】川口 秀喜
(72)【発明者】
【氏名】池内 圭
(72)【発明者】
【氏名】富岡 修一
(72)【発明者】
【氏名】古賀 隆二
【審査官】岩▲崎▼ 優
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-290391(JP,A)
【文献】特開平05-076965(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2019-0052376(KR,A)
【文献】特開昭61-152387(JP,A)
【文献】特開平06-198587(JP,A)
【文献】特開2001-154717(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第102847931(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0174683(US,A1)
【文献】特開平09-273872(JP,A)
【文献】特開平07-120170(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
F27D 19/00
F27D 3/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースとアタッチメント取付部とを有し、第1方向に移動することで対象物に接近する装置本体と、
前記アタッチメント取付部に取り付けられ且つ前記第1方向に移動することで前記対象物に接近するアタッチメントと、
を制御する制御システムであって、
前記アタッチメントの先端の、前記アタッチメント取付部から見た前記第1方向への移動速度は、
前記アタッチメント取付部の、前記ベースから見た前記第1方向への移動速度よりも速い、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項2】
前記装置本体及び前記アタッチメントを前記第1方向へ移動させるための第1指令をユーザから受け付ける受付手段と、
前記受付手段が前記第1指令を受け付けた場合に、前記アタッチメントが前記対象物から受ける反力に関するパラメータが所定の閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えていないと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向に移動させ、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向とは反対の第2方向に移動させる制御手段と、
を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の制御システム。
【請求項3】
前記制御手段は、前記パラメータが前記閾値を超えていないと前記判定手段が判定した場合には、前記アタッチメントとともに前記装置本体を前記第1方向に移動させる、
ことを特徴とする請求項2に記載の制御システム。
【請求項4】
前記パラメータは、前記反力の大きさである、
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の制御システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記パラメータが所定の値以下になるまで、前記アタッチメントを前記第2方向に移動させる、
ことを特徴とする請求項4に記載の制御システム。
【請求項6】
前記制御手段は、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記パラメータが前記所定の値以下になり且つ前記アタッチメントが前記対象物と接触した状態を維持するように前記アタッチメントを前記第2方向に移動するとともに、前記装置本体を前記第1方向に移動させる、
ことを特徴とする請求項5に記載の制御システム。
【請求項7】
前記受付手段は、前記装置本体及び前記アタッチメントを前記第2方向に移動させるための第2指令を受け付け、
前記アタッチメントが前記第1方向に沿って移動可能な複数の位置のうち、前記対象物に相対的に遠い位置を遠隔位置とし、前記対象物に前記遠隔位置よりも近い位置を中間位置とし、前記対象物に前記中間位置よりも近い位置を近接位置とし、前記アタッチメントの現在の位置が前記遠隔位置、前記近接位置、及び前記中間位置のいずれであるかを判別する判別手段を更に備え、
前記制御手段は、
前記受付手段が前記第1指令または前記第2指令を受け付けた際に、
前記判別手段が、前記アタッチメントが前記近接位置であると判別した場合には、前記装置本体を前記第1方向に移動させ、
前記判別手段が、前記アタッチメントが前記遠隔位置であると判別した場合には、前記装置本体を前記第2方向に移動させる、
ことを特徴とする請求項2から6のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項8】
前記制御手段は、
前記受付手段が前記第1指令を受け付けた際に、前記パラメータが前記閾値を超えていないと前記判定手段が判定した際に、前記アタッチメントを前記第1方向に移動させた後に、前記アタッチメントが前記近接位置であると前記判別手段が判別した場合には、前記装置本体を前記第1方向に移動させ、
前記受付手段が前記第2指令を受け付けた際に、前記アタッチメントが前記遠隔位置であると前記判別手段が判別した場合には、前記装置本体を前記第2方向に移動させる、
ことを特徴とする請求項7に記載の制御システム。
【請求項9】
前記制御手段は、前記アタッチメントが前記中間位置であると前記判別手段が判別した場合には、前記装置本体の移動を抑制する、
ことを特徴とする請求項7又は8に記載の制御システム。
【請求項10】
前記パラメータは、前記反力の変化の大きさである、
ことを特徴とする請求項2に記載の制御システム。
【請求項11】
ベースとアタッチメント取付部とを有し、第1方向に移動することで対象物に接近する装置本体と、
前記アタッチメント取付部に取り付けられ且つ前記第1方向に移動することで前記対象物に接近するアタッチメントと、
を制御する制御システムであって、
前記アタッチメントを前記第1方向へ移動させるための第1指令をユーザから受け付ける受付手段と、
前記受付手段が前記第1指令を受け付けた場合に、前記アタッチメントが前記対象物から受ける反力に関するパラメータが所定の閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えていないと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向に移動させ、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向とは反対の第2方向に移動させる制御手段と、
第1反力モード及び前記第1反力モードとは異なる第2反力モードを設定する設定手段と、
を備え、
前記アタッチメントの先端の、前記アタッチメント取付部から見た前記第1方向への移動速度は、
前記アタッチメント取付部の、前記ベースから見た前記第1方向への移動速度よりも速く、
前記パラメータは、
前記設定手段が前記第1反力モードを設定した場合には前記反力の大きさであり、
前記設定手段が前記第2反力モードを設定した場合には前記反力の変化の大きさである、
ことを特徴とする制御システム。
【請求項12】
前記アタッチメントが前記第1方向に沿って移動可能な複数の位置のうち、前記対象物に相対的に遠い位置を遠隔位置とし、前記対象物に前記遠隔位置よりも近い位置を中間位置とし、前記対象物に前記中間位置よりも近い位置を近接位置とし、前記アタッチメントの現在の位置が前記遠隔位置、前記近接位置、及び前記中間位置のいずれであるかを判別する判別手段を更に備え、
前記制御手段は、前記受付手段が、前記第1指令または前記装置本体及び前記アタッチメントを前記第2方向に移動させるための第2指令、を受け付けた際に、前記アタッチメントが前記近接位置であると前記判別手段が判別した場合には、前記装置本体を前記第1方向に移動させ、前記アタッチメントが前記遠隔位置であると判別した場合には、前記装置本体を前記第2方向に移動させる、
ことを特徴とする請求項11に記載の制御システム。
【請求項13】
前記アタッチメントの先端の位置を示す情報と、前記対象物の位置を示す情報と、を前記ユーザに通知する第1通知手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項2から12のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項14】
前記アタッチメントの先端から前記対象物までの距離を示す情報を前記ユーザに通知する第2通知手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項2から13のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項15】
前記アタッチメントが前記第1方向に沿って移動可能な複数の位置のうち、前記対象物に相対的に遠い位置を遠隔位置とし、前記対象物に前記遠隔位置よりも近い位置を中間位置とし、前記対象物に前記中間位置よりも近い位置を近接位置としたときに、前記アタッチメントの現在の位置が前記遠隔位置、前記中間位置、及び前記近接位置のいずれであるかを示す情報を前記ユーザに通知する第3通知手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項2から14のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項16】
前記アタッチメントの先端と前記対象物とが接触しているか否かを示す情報を前記ユーザに通知する第4通知手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項2から15のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項17】
前記アタッチメントの先端の位置を示す情報と、前記アタッチメントが前記対象物から受ける反力を示す情報と、を前記ユーザに通知する第5通知手段を更に備える、
ことを特徴とする請求項2から16のいずれか1項に記載の制御システム。
【請求項18】
ベースとアタッチメント取付部とを有し、第1方向に移動することで対象物に接近する装置本体と、
前記アタッチメント取付部に取り付けられ且つ前記第1方向に移動することで前記対象物に接近するアタッチメントと、
を制御する制御方法であって、
前記アタッチメントの先端の、前記アタッチメント取付部から見た前記第1方向への移動速度は、前記アタッチメント取付部の、前記ベースから見た前記第1方向への移動速度よりも速く、
前記装置本体及び前記アタッチメントを第1方向へ移動させるための第1指令を受け付けた場合に、前記アタッチメントが対象物から受ける反力に関するパラメータが所定の閾値を超えたか否かを判定し、
前記パラメータが前記閾値を超えていないと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向に移動させ、
前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向とは反対の第2方向に移動させる、
ことを特徴とする制御方法。
【請求項19】
請求項1から
17のいずれか1項に記載の
制御システムとして、コンピュータを機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システム、制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
廃棄物溶融炉において、溶融スラグの排出口やその周辺に固化したスラグが付着することがある。このスラグが成長すると、スラグ排出口を閉塞するおそれがある。このため、炉口に作業棒を挿入してスラグを除去する必要がある。
上述の作業について、従来作業者(ヒト)が行っていた作業を垂直多関節ロボットに代替した構成が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
炉内に固化したスラグを除去するためには、作業棒を高速に、あるいは加速度を与えて操作する必要がある。
しかしながら、前記従来の垂直多関節ロボットでは、スラグを除去するために十分な速度及び加速度を付与することが不可能であった。
【0005】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、十分な速度をもって素早く対象物に接近することができる装置の制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係る制御システムは、第1方向に移動することで対象物に接近する装置本体と、前記装置本体に取り付けられ且つ前記第1方向に移動することで前記対象物に接近するアタッチメントと、を制御する制御システムであって、前記アタッチメントの移動速度は、前記装置本体の移動速度よりも速いことを特徴とする。
【0007】
この発明によれば、アタッチメントの移動速度は、装置本体の移動速度よりも速い。このような構成とすることで、装置本体のみによって対象物に接近する場合と比較して、より素早く対象物に接近することができる。また、装置本体の移動速度を高めるのではなく、装置本体に取り付けられるアタッチメントの移動速度を高めることで、対象物への素早い接近を実現できる。よって、例えば、装置本体の改造など、大掛かりな作業の発生が抑えられる。
【0008】
上記の構成は、例えば、アタッチメントの先端に取り付けた作業棒によって、溶融炉の内部に堆積したスラグを除去する際に顕著な効果をもたらす。すなわち、上述のスラグ除去においては作業棒を高速に、あるいは加速度を与えて操作する必要があるところ、この構成により上述の操作を可能とすることができる。
【0009】
また、前記装置本体及び前記アタッチメントを前記第1方向へ移動させるための第1指令をユーザから受け付ける受付手段と、前記受付手段が前記第1指令を受け付けた場合に、前記アタッチメントが前記対象物から受ける反力に関するパラメータが所定の閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えていないと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向に移動させ、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向とは反対の第2方向に移動させる制御手段と、を更に備えることを特徴としてもよい。
【0010】
この発明によれば、アタッチメントが対象物から受ける反力に関するパラメータが閾値を超えたか否かを判定手段により判定し、判定の結果によって制御手段によるアタッチメントの移動方向を変更する。
ここで、アタッチメントが対象物から反力を受けている状態で、装置本体が更に第1方向に移動することがある。これによりアタッチメントが受ける反力が過大となり、アタッチメントが破損するおそれがある。
【0011】
これに対し、判定手段が、パラメータが閾値を超えたと判定した場合には、アタッチメントを第1方向とは反対の第2方向に移動させる。また、上述のようにアタッチメントの移動速度は装置本体の移動速度よりも速い。これにより、アタッチメントが反力を受けた状態で装置本体が更に第1方向に移動した場合であっても、パラメータが対象物から離れるように移動させることができる。よって、アタッチメントが破損することを防ぎ、安全に作業することができる。
【0012】
また、前記制御手段は、前記パラメータが前記閾値を超えていないと前記判定手段が判定した場合には、前記アタッチメントとともに前記装置本体を前記第1方向に移動させることを特徴としてもよい。
【0013】
この発明によれば、パラメータが閾値を超えていない場合に、アタッチメントとともに装置本体を第1方向に移動させる。閾値を超えていない場合にのみアタッチメントと装置本体とを移動させることで、素早くアタッチメントを移動させることができることに加えて、安全性を確保することができる。
【0014】
また、前記パラメータは、前記反力の大きさであることを特徴としてもよい。
【0015】
この発明によれば、パラメータは反力の大きさである。これにより、閾値を適宜設定することで、アタッチメントが対象物から受ける反力が過大となる前にアタッチメントを第2方向へ移動させることができる。
【0016】
また、前記制御手段は、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記パラメータが所定の値以下になるまで、前記アタッチメントを前記第2方向に移動させることを特徴としてもよい。
【0017】
この発明によれば、判定手段が、パラメータが閾値を超えたと判定した場合には、パラメータが所定の値以下になるまで、アタッチメントを第2方向に移動させる。これにより、アタッチメントが過大な反力を受けることを防ぐと同時に、アタッチメントを対象物に対して追従するように移動させることができる。
【0018】
また、前記制御手段は、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記パラメータが前記所定の値以下になり且つ前記アタッチメントが前記対象物と接触した状態を維持するように前記アタッチメントを前記第2方向に移動するとともに、前記装置本体を前記第1方向に移動させることを特徴としてもよい。
【0019】
この発明によれば、アタッチメントが対象物と接触した状態を維持するようにアタッチメントを第2方向に移動するとともに、装置本体を第1方向に移動させる。これにより、アタッチメントと対象物との接触状態を保ちながら、装置本体を最適な位置に移動させることができる。
【0020】
また、前記受付手段は、前記装置本体及び前記アタッチメントを前記第2方向に移動させるための第2指令を受け付け、前記アタッチメントが前記第1方向に沿って移動可能な複数の位置のうち、前記対象物に相対的に遠い位置を遠隔位置とし、前記対象物に前記遠隔位置よりも近い位置を中間位置とし、前記対象物に前記中間位置よりも近い位置を近接位置とし、前記アタッチメントの現在の位置が前記遠隔位置、前記近接位置、及び前記中間位置のいずれであるかを判別する判別手段を更に備え、前記制御手段は、前記受付手段が前記第1指令または前記第2指令を受け付けた際に、前記判別手段が、前記アタッチメントが前記近接位置であると判別した場合には、前記装置本体を前記第1方向に移動させ、前記判別手段が、前記アタッチメントが前記遠隔位置であると判別した場合には、前記装置本体を前記第2方向に移動させることを特徴としてもよい。
【0021】
この発明によれば、判別手段が、アタッチメントが近接位置であると判別した場合には、装置本体を第1方向に移動させ、判別手段が、アタッチメントが遠隔位置であると判別した場合には、装置本体を第2方向に移動させる。つまり、アタッチメントの位置状態に合わせて装置本体を補助的に移動させることで、アタッチメントが必要以上に移動することを防ぐことができる。よって、アタッチメントが元の位置に戻るのに必要な時間を削減し、作業性を向上することができる。
【0022】
また、前記制御手段は、前記受付手段が前記第1指令を受け付けた際に、前記パラメータが前記閾値を超えていないと前記判定手段が判定した際に、前記アタッチメントを前記第1方向に移動させた後に、前記アタッチメントが前記近接位置であると前記判別手段が判別した場合には、前記装置本体を前記第1方向に移動させ、前記受付手段が前記第2指令を受け付けた際に、前記アタッチメントが前記遠隔位置であると前記判別手段が判別した場合には、前記装置本体を前記第2方向に移動させることを特徴としてもよい。
【0023】
対象物にアタッチメントが接近するとき、アタッチメントは近接位置であることが好ましい。というのは、アタッチメントが近接位置である場合には、アタッチメントが第2方向に移動する余地が生じる。そのため、アタッチメントが対象物に接触して反力を受けた状態で、例えば、反力が高まろうとしたとき等に、アタッチメントが近接位置であれば、アタッチメントを第2方向に逃がすことができる。
この発明によれば、受付手段が第1指令を受け付けた際に、判定手段が、パラメータが前記閾値を超えていないと判定した場合には、アタッチメントを第1方向に移動させる。そして判別手段が、アタッチメントが近接位置であると判別した場合には、装置本体を第1方向に移動させる。そのため、アタッチメントが近接位置に移動するまでは、アタッチメントが積極的に第1方向に前進する。
【0024】
一方、対象物からアタッチメントが離れようとするとき、アタッチメントは遠隔位置まで移動することが好ましい。というのは、アタッチメントが遠隔位置まで移動すれば、アタッチメントを対象物から素早く離し、アタッチメントまたは装置本体が損傷するのを避けつつ、アタッチメントに過度な反力が入力されることを抑制することができる。
この発明によれば、受付手段が前記第2指令を受け付けた際に、アタッチメントを第2方向に移動させる。そのため、アタッチメントを対象物から素早く離し、アタッチメントまたは装置本体が損傷するのを避けることができる。さらに判別手段が、アタッチメントが遠隔位置であると判別した場合には、装置本体を第2方向に移動させる。したがって、アタッチメントに過度な反力が入力されることを抑制することができる。
【0025】
また、前記制御手段は、前記アタッチメントが前記中間位置であると前記判別手段が判別した場合には、前記装置本体の移動を抑制することを特徴としてもよい。
【0026】
この発明によれば、アタッチメントが中間位置であると判別手段が判別した場合には、装置本体の移動を抑制する。これにより、ユーザがアタッチメントのみを移動させようとしたとき、装置本体が同時に移動することを抑えることができる。よって、より制御システムの操作性を向上することができる。
【0027】
また、前記パラメータは、前記反力の変化の大きさであることを特徴としてもよい。
【0028】
この発明によれば、パラメータは反力の変化の大きさである。例えば、制御システムの用途によっては、アタッチメントと対象物との間において一定の反力を保つ必要がある場合がある。このとき、パラメータを反力の変化の大きさとすることで、パラメータを反力の大きさとする場合と比較してより効率的に反力を維持することができる。
【0029】
上記の構成は、例えば、アタッチメントの先端に取り付けた回転砥石によって、大型鍛造品の仕上げ加工を行う際に顕著な効果をもたらす。すなわち、上述の仕上げ加工においては回転砥石を対象物の表面に対して一定の力で押し付ける必要があるところ、この構成により上述の操作を可能とすることができる。
【0030】
また、第1方向に移動することで対象物に接近する装置本体と、前記装置本体に取り付けられ且つ前記第1方向に移動することで前記対象物に接近するアタッチメントと、を制御する制御システムであって、前記アタッチメントを前記第1方向へ移動させるための第1指令をユーザから受け付ける受付手段と、前記受付手段が前記第1指令を受け付けた場合に、前記アタッチメントが前記対象物から受ける反力に関するパラメータが所定の閾値を超えたか否かを判定する判定手段と、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えていないと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向に移動させ、前記判定手段が、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向とは反対の第2方向に移動させる制御手段と、第1反力モード及び前記第1反力モードとは異なる第2反力モードを設定する設定手段と、を備え、前記アタッチメントの移動速度は、前記装置本体の移動速度よりも速く、前記パラメータは、前記設定手段が前記第1反力モードを設定した場合には前記反力の大きさであり、前記設定手段が前記第2反力モードを設定した場合には前記反力の変化の大きさであることを特徴としてもよい。
【0031】
この発明によれば、パラメータを設定手段により変更可能である。これにより、制御システムを複数の用途に用いることができる。
例えば、制御システムについて、第1反力モードを設定した場合には、アタッチメントの先端に取り付けた作業棒によって、溶融炉の内部に堆積したスラグを除去する作業に使用することができる。また、第2反力モードを設定した場合には、アタッチメントの先端に取り付けた回転砥石によって、大型鍛造品の仕上げ加工を行う作業に使用することができる。
【0032】
また、前記アタッチメントが前記第1方向に沿って移動可能な複数の位置のうち、前記対象物に相対的に遠い位置を遠隔位置とし、前記対象物に前記遠隔位置よりも近い位置を中間位置とし、前記対象物に前記中間位置よりも近い位置を近接位置とし、前記アタッチメントの現在の位置が前記遠隔位置、前記近接位置、及び前記中間位置のいずれであるかを判別する判別手段を更に備え、前記制御手段は、前記受付手段が、前記第1指令または前記装置本体及び前記アタッチメントを前記第2方向に移動させるための第2指令、を受け付けた際に、前記アタッチメントが前記近接位置であると前記判別手段が判別した場合には、前記装置本体を前記第1方向に移動させ、前記アタッチメントが前記遠隔位置であると判別した場合には、前記装置本体を前記第2方向に移動させることを特徴としてもよい。
【0033】
この発明によれば、アタッチメントが近接位置であると判別した場合には、装置本体を第1方向に移動させ、アタッチメントが遠隔位置であると判別した場合には、装置本体を第2方向に移動させる。これにより、アタッチメントが必要以上に移動することを防ぐことができる。よって、アタッチメントが元の位置に戻るのに必要な時間を削減し、作業性を向上することができる。
【0034】
また、前記アタッチメントの先端の位置を示す情報と、前記対象物の位置を示す情報と、を前記ユーザに通知する第1通知手段を更に備えることを特徴としてもよい。
【0035】
この発明によれば、アタッチメントの先端の位置を示す情報と、対象物の位置を示す情報と、をユーザに通知する第1通知手段を更に備える。これにより、ユーザは、通知された情報を用いて制御システムを最適に操作することができる。
【0036】
また、前記アタッチメントの先端から前記対象物までの距離を示す情報を前記ユーザに通知する第2通知手段を更に備えることを特徴としてもよい。
【0037】
この発明によれば、アタッチメントの先端から対象物までの距離を示す情報をユーザに通知する第2通知手段を更に備える。これにより、ユーザは、よりアタッチメントと対象物との位置関係を適切に把握することができる。よって、例えば、上述の第1指令又は第2指令のいずれを行うべきかを適切に判断することができる。
【0038】
また、前記アタッチメントが前記第1方向に沿って移動可能な複数の位置のうち、前記対象物に相対的に遠い位置を遠隔位置とし、前記対象物に前記遠隔位置よりも近い位置を中間位置とし、前記対象物に前記中間位置よりも近い位置を近接位置としたときに、前記アタッチメントの現在の位置が前記遠隔位置、前記中間位置、及び前記近接位置のいずれであるかを示す情報を前記ユーザに通知する第3通知手段を更に備えることを特徴としてもよい。
【0039】
この発明によれば、アタッチメントの位置をユーザに通知する第3通知手段を更に備える。これにより、ユーザは、上述の第1指令又は第2指令によって制御システムがどのように作動するかを把握し、最適な操作を実現することができる。
【0040】
また、前記アタッチメントの先端と前記対象物とが接触しているか否かを示す情報を前記ユーザに通知する第4通知手段を更に備えることを特徴としてもよい。
【0041】
この発明によれば、アタッチメントの先端と対象物とが接触しているか否かを示す情報をユーザに通知する第4通知手段を更に備える。これにより、ユーザは、アタッチメントに対して反力が生じたとき、その反力がアタッチメントの先端と対象物とが適切に接触したことによるものであるか、あるいは想定外の物質等と接触したものであるか等を適切に識別することができる。
【0042】
また、本発明に係る汎用ロボットの制御方法は、装置本体と、アタッチメントと、を備える汎用ロボットの制御方法であって、前記装置本体及び前記アタッチメントを前記第1方向へ移動させるための第1指令を受け付けた場合に、前記アタッチメントが対象物から受ける反力に関するパラメータが所定の閾値を超えたか否かを判定し、前記パラメータが前記閾値を超えていないと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向に移動させ、前記パラメータが前記閾値を超えたと判定した場合には、前記アタッチメントを前記第1方向とは反対の第2方向に移動させることを特徴とする。
【0043】
また、本発明に係るプログラムは、前記制御システムを作動させるための制御装置として、コンピュータを機能させる。
【発明の効果】
【0044】
本発明によれば、十分な速度をもって素早く対象物に接近することができる装置の制御システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【
図1】本実施形態に係る制御システムの制御対象の構成例である。
【
図2】
図1に示すアタッチメント周辺の拡大図である。
【
図3】本実施形態に係る装置本体及びアタッチメントの模式図である。
【
図4】
図3に示すアタッチメントが第1方向へ移動した状態を示す図である。
【
図5】
図4において装置本体が第1方向へ移動した状態を示す図である。
【
図6】
図5において装置本体の移動によってアタッチメントの先端に設けられた作業棒が対象物に接触した状態を示す図である。
【
図7】
図6においてアタッチメントが第2方向への移動を開始した状態を示す図である。
【
図8】
図7においてアタッチメントが中間位置となった状態を示す図である。
【
図9】本実施形態のアタッチメントの動作フローである。
【
図10】本実施形態の装置本体の動作フローである。
【
図11】本実施形態の制御システムのシステム構成図である。
【
図13】本実施形態の変形例1に関わる装置本体及びアタッチメントの動作フローである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、図面を参照し、本発明の一実施形態に係る制御システム200を説明する。制御システム200の説明にあたり、まず、制御対象100について説明する。
【0047】
(制御対象100)
図1に示すように、制御システム200は、制御対象100を制御する。制御対象100は、例えば、溶融炉Mの内部に堆積した対象物(スラグS)を除去するために用いられる。具体的には、制御対象100は、作業棒Rを操作し、作業棒RをスラグSに物理的に接触させることで除去する。以下、本実施形態について上述の用途を例に挙げて説明する。
【0048】
制御対象100は、装置本体10と、アタッチメント20と、を備える。
装置本体10は、アタッチメント20(後述する)を、溶融炉Mの付近まで移動させる。装置本体10は、ベース11と、アーム12と、関節13と、ハンド14と、を備える。
【0049】
ベース11は、装置本体10において作業現場に設置される部位である。ベース11にはアーム12の一方の端が接続されている。
アーム12は、一方の端がベース11に接続され、他方の端が関節13に接続される。
関節13は、アーム12とハンド14とを接続する。
ハンド14は、関節13を介してアーム12と接続されている。また、ハンド14にはアタッチメント20が接続されている。これにより、アタッチメント20に6自由度を付与する。
【0050】
装置本体10には、例えば、公知の6軸垂直多関節ロボットが好適に用いられる。本実施形態において、装置本体10は、ハンド14によって、アタッチメント20を
図1に示す第1方向D1及び第2方向D2に移動させる。なお、第1方向D1は、装置本体10のハンド14から溶融炉Mの内部に堆積したスラグSへ接近する直線方向をいう。第2方向D2は、第1方向D1の反対の方向をいう。
【0051】
アタッチメント20は、装置本体10のハンド14に取り付けられている。
図2に示すように、アタッチメント20は、基台部21と、可動部22と、力覚センサ23と、グリッパ24と、駆動部25と、を備える。
アタッチメント20において、可動部22は、基台部21に設けられたサーボモータ25m(後述する)によって、第1方向D1及び第2方向D2に移動する。以下において、上述の可動部22の移動方向について、特に軸方向と呼称することがある。
【0052】
基台部21は、アタッチメント20における装置本体10のハンド14に取り付けられる部位である。
図2に示すように、基台部21は、第1プレート21p1と、第1シャフト21s1と、第2プレート21p2と、第2シャフト21s2と、第3プレート21p3と、第4プレート21p4と、を備える。
【0053】
第1プレート21p1は、第2方向D2側の面がハンド14に取り付けられている。これにより、基台部21がハンド14に取り付けられる。
第1プレート21p1は、例えば、円盤状である。第1プレート21p1の第1方向D1側の面には、複数の第1シャフト21s1が、前記円盤状における中心から径方向の距離を等しくして、間隔をあけて複数接続されている。
【0054】
第1シャフト21s1は、第2方向D2側の端が第1プレート21p1の第1方向D1側の面に接続され、第1方向D1側の端が第2プレート21p2の第2方向D2側の面に接続されている。
基台部21の軸方向において、第1シャフト21s1が設けられた部位には、サーボモータ25mや、不図示のサーボモータ制御部が位置している(後述する)。
【0055】
第2プレート21p2は、第2方向D2側の面が第1シャフト21s1に接続されている。これにより、第1プレート21p1とともに第1シャフト21s1を支持する。
第2プレート21p2は、例えば、円盤状である。第2プレート21p2の第1方向D1側の面には、複数の第2シャフト21s2が、前記円盤状における中心から径方向の距離を等しくして、間隔をあけて複数接続されている。
【0056】
第2シャフト21s2は、第2方向D2側の端が第1プレート21p1の第1方向D1側の面に接続され、第1方向D1側の端が第3プレート21p3の第2方向D2側の面に接続されている。
基台部21の軸方向において、第2シャフト21s2が設けられた部位には、サーボモータ25mのモータシャフト25msが位置している(後述する)。
【0057】
第3プレート21p3は、第2方向D2側の面が第2シャフト21s2に接続されている。これにより、第2プレート21p2とともに第2シャフト21s2を支持する。
第3プレート21p3は、例えば、円盤状である。第3プレート21p3の第1方向側の面には、複数の支持レール25lの第2方向側の端部が接続されている(後述する)。
【0058】
第4プレート21p4は、第2方向D2側の面が複数の支持レール25lの第1方向側の端部に接続されている。これにより、第3プレート21p3とともに支持レール25lを支持する。
第4プレート21p4は、例えば、円盤状である。また、第4プレート21p4は、底板22bが支持レール25lにおける第1方向D1の端部まで移動した時、支持レール25lから抜けることを防ぐことを防ぐ役割を有する。
上述の基台部21における各部品同士の接続及び取り付けには、例えば、ボルト締結が好適に用いられる。
【0059】
可動部22は、基台部21に取り付けられ、軸方向に移動する。可動部22は、天板22tと、支持部22lと、軸支持部22sと、底板22bと、を備える。
天板22tは、可動部22の軸方向において第1方向D1の側に設けられる。天板22tの第1方向D1の側の面には、力覚センサ23や、上述の作業棒Rを取り付けるグリッパ24が取り付けられている。また、天板22tの第2方向D2の側の面には、支持部22l及び軸支持部22sが接続されている。
【0060】
支持部22lは、天板22tと、底板22bとの間に複数設けられた棒状の部材である。支持部22lの第1方向D1側の端部は天板22tの第2方向D2側の面と接続されている。天板22tの第2方向D2側の面は、底板22bに接続されている。
【0061】
軸支持部22sは、天板22tの中央に設けられている。軸支持部22sの第1方向D1側の端部は天板22tの第2方向D2側の面と接続されている。軸支持部22sの第2方向D2側の端部は、ボールねじ25s(後述する)の第1方向D1側の端部に接続されている。
底板22bは、例えば、円盤状の部材である。底板22bは、前記円盤状の中心にめねじ部(不図示)を備え、ボールねじ25sと係合する。これにより、ボールねじ25sの回転に伴って底板22bがボールねじ25sの軸方向を摺動する。これにより可動部22が軸方向に移動する。また、底板22bには、支持レール25lが貫通する貫通穴(不図示)が設けられている。
【0062】
力覚センサ23は、可動部22に設けられたセンサである、力覚センサ23は、例えば、可動部22に負荷された軸方向の圧力を感知する。上述の構成により、力覚センサ23は、例えば、作業棒RがスラグSに接触することで発生する反力の大きさ又は反力の変化の大きさを感知する。この反力の大きさ又は反力の変化の大きさに対して閾値を設けることで、作業棒Rからアタッチメント20に向けて過大な反力が負荷されることを防ぐ制御を行う(詳細は後述する)。
【0063】
グリッパ24は、可動部22に設けられた力覚センサ23に接するように設けられている。グリッパ24は、例えば、制御システム200によって操作する作業棒Rをアタッチメント20に取り付けるために把持する部位である。作業棒Rに生じた反力は、このグリッパ24を介して力覚センサ23に伝達される。
【0064】
駆動部25は、軸方向において可動部22と基台部21との距離を変化させる。駆動部25は、サーボモータ25mと、ボールねじ25sと、支持レール25lと、を備える。
サーボモータ25mは、アタッチメント20の軸方向において第1シャフト21s1が設けられた部位に位置している。サーボモータ25mは、不図示のサーボモータ制御部によって駆動する。サーボモータ25mは、モータシャフト25msを備える。モータシャフト25msの第1方向D1側の端部には、ボールねじ25sの第2方向D2側の端部が接続されている。
【0065】
ボールねじ25sは、底板22bの中央に設けられためねじ部を貫通している。この状態において、ボールねじ25sは、サーボモータ25mによって回転する。これにより、底板22bが軸方向に移動することで、可動部22が軸方向に移動する。
支持レール25lは、第2方向D2側の端部が第3プレート21p3の第1方向D1側の面に接続されている。支持レール25lは、底板22bに設けられた貫通穴を貫通する。また、支持レール25lは、この貫通穴を摺動可能である。これにより、サーボモータ25mの回転によって底板22b及び可動部22が軸方向に回転することを防ぎ、ボールねじ25sの機構によって可動部22が軸方向に移動することを担保する。
【0066】
また、アタッチメント20の移動機構の移動速度は、装置本体10の移動速度よりも速い。あるいは、本構成と同等の移動速度を確保できれば、駆動部25には、例えば、油圧シリンダが用いられていてもよい。
【0067】
上述のように、アタッチメント20は、ハンド14によって第1方向D1及び第2方向D2へ移動する。これに加えて、アタッチメント20の駆動部25によって、可動部22が第1方向D1及び第2方向D2へ往復移動する。また、アタッチメント20には、グリッパ24を介して作業棒Rが取り付けられる。この作業棒Rが、駆動部25によって第1方向D1及び第2方向D2に往復移動する。このように往復移動する作業棒Rの先端をスラグSに接触させることで、溶融炉Mの内部のスラグSを除去する。なお、
図1及び
図2に示すように、作業棒Rのアタッチメント20側の端部と、溶融炉M側の端部との間に保持部を設けてもよい。これにより作業棒Rの中間部を保持することで、作業棒Rが円滑に往復移動することを担保してもよい。
【0068】
(制御システム200)
次に、
図3から
図8の模式図と、
図9及び
図10のフローチャートと、
図11に示すシステム構成図を用いて、制御システム200における装置本体10とアタッチメント20の具体的な動きについて説明する。
制御システム200は、炉前運転室210と、制御盤220と、を備えている。
まず、
図11に示すように、作業現場に設置された制御システム200では、装置本体10が炉前運転室210に設けられたロボット用制御盤211に接続されている。ロボット用制御盤211は、プログラミングペンダント212と、座標計算機213にそれぞれ接続されている。また、アタッチメント20及びロボット用制御盤211がユーザの操作する制御盤220に接続されている。
【0069】
炉前運転室210に備えられたロボット用制御盤211、及び制御盤220はそれぞれ、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)等のプロセッサとメモリとを備えるシステム制御装置を備え、プログラムを実行する。ロボット用制御盤211及び制御盤220はそれぞれ、プログラムの実行によって受付手段と、判定手段と、制御手段と、判別手段と、を備える装置として機能する。
受付手段は、第1指令FW及び第2指令BW(後述する)を、ユーザによる操作レバー221の操作を介して受け付ける。
判定手段は、アタッチメント20が対象物から受ける反力に関するパラメータ(例えば、反力の大きさ又は反力の変化の大きさ)が所定の閾値を超えたか否かを判定する。
【0070】
なお、上述のパラメータ及び閾値は、制御システム200の用途に応じて適宜決定する。例えば、制御システム200をアタッチメント20の先端に取り付けた作業棒Rによって、溶融炉Mの内部に堆積したスラグSを除去する用途に用いる場合は、パラメータはスラグSと作業棒Rとが接触することで生じる反力の大きさとする。パラメータは、制御盤220が力覚センサ23から取得することが可能である。なお閾値は、予め判定手段に記憶されていることが好ましい。
【0071】
制御手段は、判定手段が判定した結果によって、装置本体10及びアタッチメント20の移動方向を変更する。具体的な制御については後述する。
判別手段は、アタッチメント20の位置を判別する手段である。具体的には、アタッチメント20が第1方向D1に沿って移動可能な複数の位置のうち、対象物に相対的に遠い位置を遠隔位置BN(後退位置)とし、対象物に遠隔位置BNよりも近い領域を中間位置Nとし、対象物に中間位置Nよりも近い位置を近接位置NF(前進位置)とする。本実施形態において、中間位置Nに係る領域の大きさはユーザによって任意に決定されることが好ましい。判別手段は、アタッチメント20の現在の位置が遠隔位置BN、近接位置NF、及び中間位置Nのいずれであるかを判別する。判別手段は、例えば、基台部21の第1プレート21p1と可動部22の天板22tとの距離をセンサによって判別してもよいし、サーボモータ25mの回転量を解析することで位置を判別してもよい。
【0072】
制御盤220は、操作レバー221と、ディスプレイ222と、を備える。本実施形態に係る制御システム200は、この操作レバー221をユーザが操作することによる指令を、受付手段が受け付けることにより作動する。ユーザによる操作レバー221を用いた指令は、次に記載する通りである。すなわち、装置本体10及びアタッチメント20を第1方向D1に移動(前進)させるための第1指令FW(前進指令)と、装置本体10及びアタッチメント20を第2方向D2に移動(後退)させるための第2指令BW(後退指令)と、である。
【0073】
ディスプレイ222は、ユーザが制御盤220を操作するとき、各要件を判断するための情報を把握するために用いられる。
図12に示すように、ディスプレイ222は、第1通知手段I1と、第2通知手段I2と、第3通知手段I3と、第4通知手段I4と、して機能する。
【0074】
第1通知手段I1は、アタッチメント20の先端(本実施形態においては、作業棒Rの先端)の位置を示す情報と、スラグSの位置を示す情報と、をユーザに通知する。第1通知手段I1は、距離を示す数字(mm表示)の上に各構成部品を色分けしてディスプレイ222の上部に表示することで、距離を視覚的に認知しやすく表示する。
【0075】
第2通知手段I2は、アタッチメント20の先端から溶融炉M内に配置された耐火物までの距離を示す情報をユーザに通知する。この情報は、ディスプレイ222の下方に位置する表に、mm表示の数値で表示される。また、第2通知手段I2は距離に応じて色分けすることで、前記距離を視覚的に認知しやすく表示する。
溶融炉M内に位置するスラグSの位置は、下記のように認識する。すなわち、アタッチメント20の先端が溶融炉M内に配置された耐火物に接触する前(上述のmm表示が0mmになる前)にアタッチメント20から反力を感知した場合に、アタッチメント20の先端とスラグSとが接触したと判断して、スラグSの位置を認識する。
【0076】
第3通知手段I3は、アタッチメント20の現在の位置が遠隔位置BN、中間位置N、及び近接位置NFのいずれであるかを示す情報をユーザに通知する。この情報は、ディスプレイ222の上部に表示される。
第4通知手段I4は、アタッチメント20の先端とスラグSとが接触しているか否かを示す情報をユーザに通知する。第4通知手段I4は、力覚センサ23の数値によって作業棒Rに生じた反力をディスプレイ222の下方に位置する表に表示する。また、第4通知手段I4は、反力の大きさに応じて色分けすることで、反力の大きさを視覚的に認知しやすく表示する。
また、上述の各情報について、画面の中央に位置する画像を参照してもよい。この画像は、上述の各情報をもとに、溶融炉M内の作業棒R及びスラグSの位置を断面図上において視覚的に表示したものである。
【0077】
(制御方法)
次に、上述の各手段及び操作による装置本体10及びアタッチメント20の具体的な動きを説明する。まず、装置本体10及びアタッチメント20の位置について、次のように記載する。すなわち、
図3に示すように、装置本体10が移動する前の位置を原点Oとする。装置本体10が第1方向D1に進んだ位置(最も前進した位置)を本体前進位置Frとする。
装置本体10の位置は、例えば、ロボット用制御盤211の制御値に基づいて判定することができる。また、原点O及び本体前進位置Frを示す情報は、予めロボット用制御盤211に記憶されている。
【0078】
また、アタッチメント20の位置について、可動部22における底板22bと、駆動部25のボールねじ25sの位置関係を基準に次のように記載する。すなわち、
図3に示すように、ボールねじ25sの第2方向D2側の端部、すなわち底板22bの可動域における第2方向D2側の端部を後退端Bとする。ボールねじ25sの可動域の中央を、中間位置Nとする。ボールねじ25sの第1方向D1側の端部、すなわち底板22bの稼働域における第1方向D1側の端部を前進端Fとする。前述したアタッチメント20の遠隔位置BNは、中間位置Nと後退端Bとの間の領域である。アタッチメント20の近接位置NFは、中間位置Nと前進端Fとの間の領域である。
アタッチメント20の位置は、例えば、制御盤220によるサーボモータ25mの制御値に基づいて判定することができる。また、後退端B、中間位置N、前進端Fを示す情報は、予め制御盤220に記憶されている。
【0079】
本実施形態では、まず、
図9及び
図10に基づいて、制御フローについて説明する。その後、
図3から
図8に基づいて、具体的な制御例について説明する。
【0080】
(制御フロー)
本実施形態では、制御システム200は、アタッチメント20及び装置本体10を並行に制御する。以下では、アタッチメント20及び装置本体10それぞれの制御フローを説明する。
【0081】
(第1モード)
まず、第1モードの動作について説明する。第1モードは、
図9及び
図10に示す動作フローチャートに従って、アタッチメント20と装置本体10とを動作するモードである。
以下、
図9に示すアタッチメント20の動作フローチャートについて説明する。
ユーザは、操作レバー221によって、第1指令FWを入力する(ステップSA1)。この指令を受付手段が受け付けたとき、判定手段によってアタッチメント20が対象物から受ける反力に関するパラメータが所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップSA2)。例えば、判定手段は、予め記憶されている閾値を読み出し、この閾値と、力覚センサ23から取得されたパラメータと、を比較することで判定する。
反力が閾値を超えていない(ステップSA2:NO)と判定手段が判定したとき、アタッチメント20が前進端Fにあるか否かを判別手段により判別する(ステップSA3)。例えば、判別手段は、制御盤220の制御値と、制御盤220に記憶されている前進端Fを示す情報と、を比較することで判別する。アタッチメント20が前進端Fにないと判別手段が判別した場合(ステップSA3:NO)、アタッチメント20を第1方向D1に移動させる(ステップSA4)。その後、フローを終了する。アタッチメント20が前進端Fにあると判別手段が判別した場合(ステップSA3:YES)は、そのままフローを終了する。
【0082】
操作レバー221によって、第2指令BWを入力した(ステップSA5)場合、あるいは第1指令FWを入力した場合(ステップSA1)においてアタッチメント20に反力が生じていると判定した場合(ステップSA2:YES)場合には、アタッチメント20が後退端Bにあるか否かを判別手段により判別する(ステップSA6)。アタッチメント20が後退端Bにないと判別した場合(ステップSA6:NO)は、アタッチメント20を第2方向D2に移動させ(ステップSA7)、フローを終了する。アタッチメント20が後退端Bにあると判別した場合(ステップSA6:YES)は、そのままフローを終了する。
【0083】
次に、
図10に示す装置本体10の動作フローチャートについて説明する。
まず、操作レバー221によって第1指令FW又は第2指令BWのいずれかの入力を受付手段が受け付けた(ステップSR1)とき、アタッチメント20の位置を判別手段により判別する(ステップSR2)。アタッチメント20の位置が近接位置NFにある(すなわち、中間位置Nよりも第1方向D1側にある)と判別した場合(ステップSR2:YES)は、装置本体10を第1方向D1に移動させ(ステップSR3)、フローを終了する。例えば、判別手段は、制御盤220の制御値と、制御盤220に記憶されている中間位置Nを示す情報と、を比較することで判別する。
アタッチメント20の位置が近接位置NFにない場合と判別した場合(ステップSR2:NO)は、アタッチメント20の位置が遠隔位置BNにあるか否かを判別する(ステップSR4)。アタッチメント20の位置が遠隔位置BNにある(すなわち、中間位置Nよりも第2方向D2側にある)と判別した場合(ステップSR4:YES)は、装置本体10を第2方向D2に移動させ(ステップSR5)、フローを終了する。アタッチメント20が近接位置NFにも遠隔位置BNにもない、すなわち、中間位置Nにあると判別した場合(ステップSR4:NO)は、そのままフローを終了する。
【0084】
(第2モード)
次に、第2モードの動作について説明する。第2モードは、
図13に示す動作フローチャートに従って、アタッチメント20及び装置本体10を動作するモードである。第2モードでは、アタッチメント20の制御と、装置本体10の制御と、を同時に並行して行う。
まず、ユーザは、操作レバー221によって、第1指令FWを入力する(ステップSS1)。この指令を受付手段が受け付けたとき、判定手段によってアタッチメント20が対象物から受ける反力に関するパラメータが所定の閾値を超えたか否かを判定する(ステップSS2)。
反力が閾値を超えていない(ステップSS2:NO)と判定手段が判定したとき、アタッチメント20が前進端Fにあるか否かを判別手段により判別する(ステップSS3)。これと並行して、アタッチメント20の位置を判別手段により判別する(ステップSS5)。
アタッチメント20が前進端Fにないと判別手段が判別した場合(ステップSS3:NO)、アタッチメント20を第1方向D1に移動させる(ステップSS4)。その後、フローを終了する。アタッチメント20が前進端Fにあると判別手段が判別した場合(ステップSS3:YES)は、そのままフローを終了する。
アタッチメント20の位置が近接位置NFにある(すなわち、中間位置Nよりも第1方向D1側にある)と判別した場合(ステップSS5:YES)は、装置本体10を第1方向D1に移動させ(ステップSS6)、フローを終了する。アタッチメント20の位置が近接位置NFにない(すなわち、中間位置Nよりも第2方向D2側にある)と判別した場合(ステップSS5:NO)には、そのままフローを終了する。
つまり、反力が閾値を超えておらず(ステップSS2:NO)、更にアタッチメント20が前進端Fになく(ステップSS3:NO)、かつアタッチメント20が近接位置NFにある場合(ステップSS5:YES)は、装置本体10とともにアタッチメント20を第1方向D1に移動させる。
【0085】
操作レバー221によって、第2指令BWを入力した(ステップSS7)場合、あるいは第1指令FWを入力した場合(ステップSS1)においてアタッチメント20に反力が生じていると判定した場合(ステップSS2:YES)場合には、アタッチメント20が後退端Bにあるか否かを判別手段により判別する(ステップSS8)。これと並行して、アタッチメント20の位置が遠隔位置BNにあるか否かを判別する(ステップSS10)。
アタッチメント20が後退端Bにないと判別した場合(ステップSS8:NO)は、アタッチメント20を第2方向D2に移動させ(ステップSS9)、フローを終了する。アタッチメント20が後退端Bにあると判別した場合(ステップSS8:YES)は、そのままフローを終了する。
アタッチメント20の位置が遠隔位置BNにある(すなわち、中間位置Nよりも第2方向D2側にある)と判別した場合(ステップSS10:YES)は、装置本体10を第2方向D2に移動させ(ステップSS11)、フローを終了する。アタッチメント20の位置が遠隔位置BNにない(すなわち、中間位置Nよりも第1方向D1側にある)と判別した場合(ステップSS10:NO)は、そのままフローを終了する。
つまり、アタッチメント20が対象物から受ける反力に関するパラメータが閾値を超えたか否かを判定手段により判定し、判定の結果によって制御手段による装置本体10及びアタッチメント20の移動方向を変更する。
なお、上述の制御において、アタッチメント20が中間位置Nであると判別手段が判別した場合には、装置本体10の移動を抑制する制御を備えていてもよい。
【0086】
(制御例)
上述のアタッチメント20の動作フローチャート及び装置本体10のフローチャートは、操作レバー221への第1指令FW又は第2指令BWの入力により同時に開始される。上述の動作フローが同時に行われた場合の具体的な動きについては、
図3から
図8に示す通りとなる。
図3に示す初期位置から、操作レバー221によって第1指令FW又は第2指令BWのいずれかを入力する。以下、操作レバー221によって第1指令FWを入力した場合を例に挙げて説明する。なお
図3に示す初期状態では、装置本体10が原点Oに位置し、アタッチメント20が中間位置Nに位置している。
【0087】
図4に示すように、操作レバー221によって第1指令FWを入力すると、アタッチメント20が、
図9に示すステップSA1、SA2(NO)、SA3(NO)、SA4を経て、第1方向D1に移動する。
図5に示すように、装置本体10も、
図10に示すステップSR1、SR2(YES)、SR3を経て、第1方向D1に移動する。ただし本制御例では、このとき、装置本体10はアタッチメント20よりも始動までに時間がかかっている。そのため、制御信号自体は、ロボット用制御盤211及び制御盤220からそれぞれ並行に発信されていても、見かけ上は、アタッチメント20が先行して前進端Fまで移動し、その後、装置本体10が移動している。
【0088】
図6に示すように、アタッチメント20の先端に取り付けた作業棒RがスラグSに接すると、アタッチメント20に反力が生じる。この場合において第1指令FWが入力され続けると、アタッチメント20については、反力が閾値を超えたと判定されるまでは、
図9に示すステップSA1、SA2(NO)、SA3(YES)を経て、特に移動しない。一方、
図7に示すように、装置本体10は、
図10に示すステップSR1、SR2(YES)、SR3を経て、第1方向D1へ移動を続ける。反力が閾値を超えたと判定されると、
図8に示すように、アタッチメント20が、
図9に示すステップSA1、SA2(YES)、SA6(NO)、SA7を経て、第2方向D2へ移動する。
【0089】
このような動きにより、アタッチメント20に過大な反力が生じてアタッチメント20が破損することを防ぐ。
この状態となった後、ユーザは操作レバー221を前後動させ、装置本体10が静止した状態でアタッチメント20を第1方向D1及び第2方向D2に高速で往復させることで、スラグSを除去する。
また、判別手段の検知するアタッチメント20の位置や、判定手段の検知する反力の情報によって、以下のように装置本体10及びアタッチメント20を移動させてもよい。
【0090】
すなわち、判定手段が、パラメータが閾値を超えたと判定した場合には、パラメータが所定の値以下になるまで、アタッチメント20を第2方向D2に移動させるようにしてもよい。
また、判定手段が、パラメータが閾値を超えたと判定した場合には、パラメータが所定の値以下になり且つアタッチメント20が対象物と接触した状態を維持するようにアタッチメント20を第2方向D2に移動するとともに、装置本体10を第1方向D1に移動させてもよい。
【0091】
また、パラメータが閾値を超えていないと判定した際に、アタッチメント20を第1方向D1に移動させた後に、判別手段が、アタッチメント20が近接位置NFであると判別した場合には、装置本体10を第1方向D1に移動させてもよい。
また、受付手段が第2指令BWを受け付けた際に、判別手段が、アタッチメント20が遠隔位置BNであると判別した場合には、装置本体10を第2方向D2に移動させ、判別手段が、アタッチメント20が中間位置Nであると判別した場合には、アタッチメント20を第2方向D2に移動させてもよい。
【0092】
次に、本実施形態に係る制御システム200を上述の用途以外に用いる変形例として、制御システム200を、大型鍛造物の仕上げ加工に用いる例について説明する。
すなわち、アタッチメント20の先端に回転砥石を取付け、大型鍛造部品の仕上げ加工の為に制御システム200によって回転砥石を大型鍛造部品に押し付けるために用いてもよい。この場合は、上述のパラメータを、反力ではなく、反力の変化の大きさとしてもよい。
【0093】
また、第1反力モード及び第1反力モードとは異なる第2反力モードを設定する設定手段を備え、上述のパラメータを切り替え可能として、制御システム200を複数の用途に用いてもよい。
第1反力モードは、
図9のステップSA2及び
図13のステップSS2にて、アタッチメント20が対象物から受ける反力に関するパラメータとして、反力の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定手段に判定させるモードである。
第2反力モードは、
図9のステップSA2及び
図13のステップSS2にて、アタッチメント20が対象物から受ける反力に関するパラメータとして、反力の変化の大きさが所定の閾値を超えたか否かを判定手段に判定させるモードである。
つまり、上述の判定手段による判断基準について、設定手段が第1反力モードを設定した場合には反力の大きさをパラメータとして、第2反力モードを設定した場合には反力の変化の大きさをパラメータとするようにしてもよい。
【0094】
また、制御システム200は、受付手段が第1指令FWを受け付けた際に、判定手段が、パラメータが閾値を超えていないと判定した場合には、装置本体10及びアタッチメント20を第1方向D1に移動させ、パラメータが閾値を超えたと判断した場合には、装置本体10とアタッチメント20を第2方向D2に移動させる制御手段(第2モード)と、第1モードと第2モードを設定する設定手段を備えてもよい。
【0095】
また、前記第2モードでは、受付手段が第2指令BWを受け付けた際に、装置本体10及びアタッチメント20を第2方向D2に移動させることを特徴としてもよい。
【0096】
具体的には、受付手段が第1指令FWを受け付けた際に、判定手段が、パラメータが閾値を超えていないと判定した場合には、アタッチメント20を第1方向D1に移動させる。判別手段が、アタッチメント20が近接位置NFであると判別した場合には、装置本体10を第1方向D1に移動させる。判定手段が、パラメータが閾値を超えたと判定した場合には、アタッチメント20を第2方向D2に移動させる。判別手段が、アタッチメント20が遠隔位置BNであると判別した場合には、装置本体10を第2方向D2に移動させる。これにより、受付手段が第1指令FWを受け付けた際に、判定手段が、パラメータが閾値を超えたと判定した場合には、アタッチメント20は第2方向D2へ移動し、装置本体10は第1方向D1へ移動せず、作業中の予期せぬ力に対して素早く回避することができる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態に係る制御システム200によれば、アタッチメント20の移動速度は、装置本体10の移動速度よりも速い。このような構成とすることで、装置本体10のみによって対象物に接近する場合と比較して、より素早く対象物に接近することができる。また、装置本体10の移動速度を高めるのではなく、装置本体10に取り付けられるアタッチメント20の移動速度を高めることで、対象物への素早い接近を実現できる。よって、例えば、装置本体10の改造など、大掛かりな作業の発生が抑えられる。
【0098】
上記の構成は、例えば、アタッチメント20の先端に取り付けた作業棒Rによって、溶融炉Mの内部に堆積したスラグSを除去する際に顕著な効果をもたらす。すなわち、上述のスラグ除去においては作業棒Rを高速に、あるいは加速度を与えて操作する必要があるところ、この構成により上述の操作を可能とすることができる。
【0099】
また、アタッチメント20が対象物から受ける反力に関するパラメータが閾値を超えたか否かを判定手段により判定し、判定の結果によって制御手段によるアタッチメント20の移動方向を変更する。
ここで、アタッチメント20が対象物から反力を受けている状態で、装置本体10が更に第1方向D1に移動することがある。これによりアタッチメント20が受ける反力が過大となり、アタッチメント20が破損するおそれがある。
【0100】
これに対し、判定手段が、パラメータが閾値を超えたと判定した場合には、アタッチメント20を第1方向D1とは反対の第2方向D2に移動させる。また、上述のようにアタッチメント20の移動速度は装置本体10の移動速度よりも速い。これにより、アタッチメント20が反力を受けた状態で装置本体10が更に第1方向D1に移動した場合であっても、パラメータが対象物から離れるように移動させることができる。よって、アタッチメント20が破損することを防ぎ、安全に作業することができる。
【0101】
また、パラメータが閾値を超えていない場合に、アタッチメント20とともに装置本体10を第1方向D1に移動させる。閾値を超えていない場合にのみアタッチメント20と装置本体10とを移動させることで、素早くアタッチメント20を移動させることができることに加えて、安全性を確保することができる。
【0102】
また、パラメータは反力の大きさである。これにより、閾値を適宜設定することで、アタッチメント20が対象物から受ける反力が過大となる前にアタッチメント20を第2方向D2へ移動させることができる。
【0103】
また、判定手段が、パラメータが閾値を超えたと判定した場合には、パラメータが所定の値以下になるまで、アタッチメント20を第2方向D2に移動させる。これにより、アタッチメント20が過大な反力を受けることを防ぐと同時に、アタッチメント20を対象物に対して追従するように移動させることができる。
【0104】
また、アタッチメント20が対象物と接触した状態を維持するようにアタッチメント20を第2方向D2に移動するとともに、装置本体10を第1方向D1に移動させる。これにより、アタッチメント20と対象物との接触状態を保ちながら、装置本体10を最適な位置に移動させることができる。
【0105】
また、判別手段が、アタッチメント20が近接位置NFであると判別した場合には、装置本体10を第1方向D1に移動させ、判別手段が、アタッチメント20が遠隔位置BNであると判別した場合には、装置本体10を第2方向D2に移動させる。つまり、アタッチメント20の位置状態に合わせて装置本体10を補助的に移動させることで、アタッチメント20が必要以上に移動することを防ぐことができる。よって、アタッチメント20が元の位置に戻るのに必要な時間を削減し、作業性を向上することができる。
【0106】
対象物にアタッチメント20が接近するとき、アタッチメント20は近接位置NFであることが好ましい。というのは、アタッチメント20が近接位置NFである場合には、アタッチメント20が第2方向D2に移動する余地が生じる。そのため、アタッチメント20が対象物に接触して反力を受けた状態で、例えば、反力が高まろうとしたとき等に、アタッチメント20が近接位置NFであれば、アタッチメント20を第2方向D2に逃がすことができる。
受付手段が第1指令FWを受け付けた際に、判定手段が、パラメータが前記閾値を超えていないと判定した場合には、アタッチメント20を第1方向D1に移動させる。そして判別手段が、アタッチメント20が近接位置NFであると判別した場合には、装置本体10を第1方向D1に移動させる。そのため、アタッチメント20が近接位置NFに移動するまでは、アタッチメント20が積極的に第1方向D1に前進する。
【0107】
一方、対象物からアタッチメント20が離れようとするとき、アタッチメント20は遠隔位置BNまで移動することが好ましい。というのは、アタッチメント20が遠隔位置BNまで移動すれば、アタッチメント20を対象物から素早く離し、アタッチメント20または装置本体10が損傷するのを避けつつ、アタッチメント20に過度な反力が入力されることを抑制することができる。
受付手段が前記第2指令BWを受け付けた際に、アタッチメント20を第2方向D2に移動させる。そのため、アタッチメント20を対象物から素早く離し、アタッチメント20または装置本体10が損傷するのを避けることができる。さらに判別手段が、アタッチメント20が遠隔位置BNであると判別した場合には、装置本体10を第2方向D2に移動させる。したがって、アタッチメント20に過度な反力が入力されることを抑制することができる。
【0108】
また、アタッチメント20が中間位置Nであると判別手段が判別した場合には、装置本体10の移動を抑制する。これにより、ユーザがアタッチメント20のみを移動させようとしたとき、装置本体10が同時に移動することを抑えることができる。よって、より制御システム200の操作性を向上することができる。
【0109】
また、パラメータは反力の変化の大きさである。例えば、制御システム200の用途によっては、アタッチメント20と対象物との間において一定の反力を保つ必要がある場合がある。このとき、パラメータを反力の変化の大きさとすることで、パラメータを反力の大きさとする場合と比較してより効率的に反力を維持することができる。
【0110】
上記の構成は、例えば、アタッチメント20の先端に取り付けた回転砥石によって、大型鍛造品の仕上げ加工を行う際に顕著な効果をもたらす。すなわち、上述の仕上げ加工においては回転砥石を対象物の表面に対して一定の力で押し付ける必要があるところ、この構成により上述の操作を可能とすることができる。
【0111】
また、パラメータを設定手段により変更可能である。これにより、制御システム200を複数の用途に用いることができる。
例えば、制御システム200について、第1反力モードを設定した場合には、アタッチメント20の先端に取り付けた作業棒Rによって、溶融炉Mの内部に堆積したスラグSを除去する作業に使用することができる。また、第2反力モードを設定した場合には、アタッチメント20の先端に取り付けた回転砥石によって、大型鍛造品の仕上げ加工を行う作業に使用することができる。
【0112】
また、アタッチメント20が近接位置NFであると判別した場合には、装置本体10を第1方向D1に移動させ、アタッチメント20が遠隔位置BNであると判別した場合には、装置本体10を第2方向D2に移動させる。これにより、アタッチメント20が必要以上に移動することを防ぐことができる。よって、アタッチメント20が元の位置に戻るのに必要な時間を削減し、作業性を向上することができる。
【0113】
また、アタッチメント20の先端の位置を示す情報と、対象物の位置を示す情報と、をユーザに通知する第1通知手段I1を更に備える。これにより、ユーザは、通知された情報を用いて制御システム200を最適に操作することができる。
【0114】
また、アタッチメント20の先端から対象物までの距離を示す情報をユーザに通知する第2通知手段I2を更に備える。これにより、ユーザは、よりアタッチメント20と対象物との位置関係を適切に把握することができる。よって、例えば、上述の第1指令FW又は第2指令BWのいずれを行うべきかを適切に判断することができる。
【0115】
また、アタッチメント20の位置をユーザに通知する第3通知手段I3を更に備える。これにより、ユーザは、上述の第1指令FW又は第2指令BWによって制御システム200がどのように作動するかを把握し、最適な操作を実現することができる。
【0116】
また、アタッチメント20の先端と対象物とが接触しているか否かを示す情報をユーザに通知する第4通知手段I4を更に備える。これにより、ユーザは、アタッチメント20に対して反力が生じたとき、その反力がアタッチメント20の先端と対象物とが適切に接触したことによるものであるか、あるいは想定外の物質等と接触したものであるか等を適切に識別することができる。
【0117】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
例えば、力覚センサ23は、アタッチメント20の第1方向D1側の端部ではなく、第2方向D2側の端部に設けてもよい。
また、本実施形態に係る制御システム200は、コンクリート等のハツリ作業に用いてもよい。
なお、制御システム200の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。プログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。プログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0118】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した変形例を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0119】
10 装置本体
20 アタッチメント
200 制御システム
I1 第1通知手段
I2 第2通知手段
I3 第3通知手段
I4 第4通知手段
D1 第1方向
D2 第2方向
FW 第1指令
BW 第2指令
BN 遠隔位置
N 中間位置
NF 近接位置
F 前進端
B 後退端
【要約】
【課題】十分な速度をもって、素早く対象物に接近することができる装置の制御システムを提供することを目的とする。
【解決手段】制御システム200は、第1方向D1に移動することで対象物に接近する装置本体10と、装置本体10に取り付けられ、且つ第1方向D1に移動することで対象物に接近するアタッチメント20と、を制御するものであって、アタッチメント20の移動速度は、装置本体10の移動速度よりも速いことを特徴とする。
【選択図】
図1