(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】車載用のバックアップ電源制御装置及び車載用のバックアップ電源装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220722BHJP
H02J 7/34 20060101ALI20220722BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20220722BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20220722BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/34 G
H01M10/44 P
H01M10/48 P
H02J7/00 302C
H02J7/34 B
H02J9/06
(21)【出願番号】P 2018226488
(22)【出願日】2018-12-03
【審査請求日】2021-03-30
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 永典
【審査官】大濱 伸也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148733(JP,A)
【文献】特開2018-042334(JP,A)
【文献】特開2016-126007(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/00-11/00
H02J 7/00-7/12
H02J 7/34-7/36
H01M 10/42-10/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源部と蓄電部とを備えるとともに前記電源部からの電力が電力路を介して電力供給対象に供給される車載用電源システムにおいて、前記蓄電部からの電力供給を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部からの電力供給に基づく放電電流を第1放電路を介して前記電力路に供給する第1放電動作を行う第1放電部と、
前記蓄電部からの電力供給に基づく放電電流を前記第1放電路とは異なる第2放電路を介して前記電力供給対象に向けて供給する第2放電動作を行う第2放電部と、
前記電源部に基づく電力供給が失陥状態となった場合に前記第1放電部に前記第1放電動作を行わせる第1制御部と、
前記電源部に基づく電力供給が前記失陥状態となった場合において、少なくとも
前記電力路のうち前記第1放電路に電気的に接続される導電路の電圧が閾値電圧以下である場合に、前記第2放電部に前記第2放電動作を行わせる第2制御部と、
を有
し、
前記電力路において前記第1放電路の接続部よりも前記電力供給対象側には、オン状態とオフ状態とに切り替わるスイッチ部が設けられ、
前記スイッチ部は、オン状態のときに前記電源部側から前記電力供給対象側への電力供給を許容し、オフ状態のときに前記電源部側から前記電力供給対象側への電力供給を遮断し、
前記第2放電路は、前記電力路における前記スイッチ部よりも前記電力供給対象側に電気的に接続されており、
前記第2制御部は、前記電源部に基づく電力供給が前記失陥状態となった場合において、少なくとも前記導電路の電圧が前記閾値電圧以下である場合に、前記スイッチ部をオフ状態に切り替える車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項2】
前記第1制御部及び前記第2制御部は、互いに独立して動作する請求項1に記載の車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項3】
前記電力路に電気的に接続され、前記電源部から供給される電力に基づいて充電されるキャパシタを備える
請求項1又は請求項2に記載の車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項4】
一端が前記蓄電部に電気的に接続され、他端が前記電力路に電気的に接続され、前記電源部に基づく電力供給が前記失陥状態となった場合に前記蓄電部の充電電圧に基づく入力電圧を降圧して前記電力路に出力電圧を印加する低ドロップアウトレギュレータを備える
請求項1又は請求項2に記載の車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項5】
前記第2制御部は、前記電源部に基づく電力供給が前記失陥状態となった場合に、前記第1制御部による制御に応じて前記第1放電部が前記第1放電動作を開始する前に、前記第2放電部に前記第2放電動作を開始させる請求項1から請求項
4のいずれか一項に記載の車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項6】
前記第1放電部は、前記蓄電部の充電電圧に応じた入力電圧を昇圧又は降圧して所定の出力電圧を前記第1放電路に印加する電圧変換部であり、
前記第2放電部は、オン状態のときに前記蓄電部側から前記電力供給対象側への通電を許容し、オフ状態のときに前記蓄電部側から前記電力供給対象側への通電を遮断するスイッチであり、
前記第2制御部は、前記電源部に基づく電力供給が前記失陥状態となった場合に前記第2放電部に前記第2放電動作を開始させ、前記第2放電動作中に前記第1放電部が前記第1放電動作を開始した場合に前記第2放電動作を停止させる請求項1
から請求項
5のいずれか一項に記載の車載用のバックアップ電源制御装置。
【請求項7】
請求項1
から請求項
6のいずれか一項に記載の車載用のバックアップ電源制御装置と、
前記蓄電部と、
を備える車載用のバックアップ電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載用のバックアップ電源制御装置及び車載用のバックアップ電源装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車載用のバックアップ電源装置が知られている。例えば、特許文献1に記載のバックアップ電源装置(バックアップ電源装置8)は、電源入力部9と、出力部10と、キャパシタ部11と、充電回路部12と、昇圧回路部13と、制御部21とを備えている。このバックアップ電源装置8では、制御部21からの指示に応じて、充電回路部12が電源入力部9から供給される電力を用いてキャパシタ部11を予め充電する。そして、電源入力部9の電圧が閾値よりも低くなったことに基づき、制御部21からの指示に応じてキャパシタ部11に蓄えられた充電電圧が昇圧回路部13で昇圧されて出力部10から出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1のバックアップ電源装置8は、単一のバックアップ経路しか備えていないため、そのバックアップ経路を構成する部品や関連部品に異常(故障等)が生じていると、必要な時期にバックアップ動作を行えなくなる虞がある。
【0005】
本発明は、上述した課題の少なくとも一つを解決するためになされたものであり、バックアップ動作の信頼性を高め得る構成を、より簡易に実現することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、
電源部と蓄電部とを備えるとともに前記電源部からの電力が電力路を介して電力供給対象に供給される車載用電源システムにおいて、前記蓄電部からの電力供給を制御する車載用のバックアップ電源制御装置であって、
前記蓄電部からの電力供給に基づく放電電流を第1放電路を介して前記電力路に供給する第1放電動作を行う第1放電部と、
前記蓄電部からの電力供給に基づく放電電流を前記第1放電路とは異なる第2放電路を介して前記電力供給対象に向けて供給する第2放電動作を行う第2放電部と、
前記電源部に基づく電力供給が失陥状態となった場合に前記第1放電部に前記第1放電動作を行わせる第1制御部と、
前記電源部に基づく電力供給が前記失陥状態となった場合において、少なくとも前記第1放電部による前記第1放電動作が異常状態である場合に、前記第2放電部に前記第2放電動作を行わせる第2制御部と、
を有する。
【0007】
本発明の第2態様の車載用のバックアップ電源装置は、
第1態様の車載用のバックアップ電源制御装置と、
前記蓄電部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
第1態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、電源部に基づく電力供給が失陥状態となった場合に、第1放電部に第1放電動作を行わせる。この第1放電動作が行われれば、蓄電部に基づく電力を電力路に供給することができ、電力供給対象への電力供給を継続することができる。
更に、第1態様の車載用のバックアップ電源制御装置は、第1放電部による第1放電動作が異常状態となったとしても、第2放電部に第2放電動作を行わせ、第1放電部とは異なる経路で電力供給対象へと電力を供給することができる。よって、バックアップ動作の信頼性が格段に高まる。しかも、第2放電部によるバックアップ動作の際にも、第1放電部によるバックアップ動作の場合と共通の蓄電部を電力供給源とすることができるため、部品点数の増加を抑えつつ、上記効果を得ることができる。
このように、第1態様の車載用のバックアップ電源制御装置によれば、バックアップ動作の信頼性を高め得る構成を、より簡易に実現することができる。
【0009】
第2態様の車載用のバックアップ電源装置によれば、第1態様の車載用のバックアップ電源制御装置と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施例1のバックアップ電源制御装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
【
図2】実施例1における第2放電制御の流れを示すフローチャートである。
【
図3】実施例1における充放電部によるバックアップが正常に行われる場合の流れを示すタイミングチャートである。
【
図4】実施例1における充放電部によるバックアップが正常に行われない場合の流れを示すタイミングチャートである。
【
図5】実施例2のバックアップ電源制御装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
【
図6】実施例2における充放電部によるバックアップが正常に行われない場合の流れを示すタイミングチャートである。
【
図7】実施例3のバックアップ電源制御装置を備えた車載用電源システムを概略的に示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明における好ましい実施の形態を説明する。
【0012】
第1制御部及び第2制御部は、互いに独立して動作する構成であってもよい。
この構成によれば、第1制御部に起因する異常(例えば第1制御部の故障等)によって第1放電動作が正常に行われない場合であっても、第2制御部は独立して第2放電部を制御し、第2放電動作を行わせることができる。
【0013】
電力路において第1放電路の接続部よりも電力供給対象側には、オン状態とオフ状態とに切り替わるスイッチ部が設けられていてもよい。そして、スイッチ部は、オン状態のときに電源部側から電力供給対象側への電力供給を許容し、オフ状態のときに電源部側から電力供給対象側への電力供給を遮断する構成であってもよい。第2放電路は、電力路における前記スイッチ部よりも電力供給対象側に電気的に接続されていてもよく、第2制御部は、電源部に基づく電力供給が失陥状態となった場合において、少なくとも第1放電部による第1放電動作が異常状態である場合に、スイッチ部をオフ状態に切り替える構成であってもよい。
この構成によれば、第1放電動作が異常状態となった場合にスイッチ部をオフ状態に切り替えて電力路におけるスイッチ部の電源部側と電力供給対象側とを電気的に切り離すことができる。従って、第2放電動作によって電力路におけるスイッチ部よりも電力供給対象側に放電電流を供給する際に、電力路におけるスイッチ部よりも電源部側の影響を受けることなく安定的に放電電流を供給することができる。
【0014】
電力路に電気的に接続され、電源部から供給される電力に基づいて充電されるキャパシタを備えていてもよい。
この構成によれば、電源部側でオープン故障などが生じて電力供給が途絶えた場合に、キャパシタから電力供給対象へと即座に電力を供給することができる。従って、電源部に基づく電力供給が途絶えてから第1放電部又は第2放電部によるバックアップ動作が開始されるまでの間、電力供給対象への電力供給が維持される可能性が高まる。
【0015】
一端が蓄電部に電気的に接続され、他端が電力路に電気的に接続され、電源部に基づく電力供給が失陥状態となった場合に蓄電部の充電電圧に基づく入力電圧を降圧して電力路に出力電圧を印加する低ドロップアウトレギュレータを備えていてもよい。
この構成によれば、電源部側でオープン故障などが生じて電力供給が途絶えた場合に、低ドロップアウトレギュレータによって電力供給対象へと即座に電力を供給することができる。従って、電源部に基づく電力供給が途絶えてから第1放電部又は第2放電部によるバックアップ動作が開始されるまでの間、電力供給対象への電力供給が維持される可能性が高まる。なお、電力路の電圧が、所定電圧(低ドロップアウトレギュレータによって降圧動作が開始される電位差となる電圧)を超えている間は、低ドロップアウトレギュレータによる降圧動作がなされないため、この期間は、低ドロップアウトレギュレータによる蓄電部の放電は抑えられる。
【0016】
第2制御部は、電源部に基づく電力供給が失陥状態となった場合に、第1制御部による制御に応じて第1放電部が第1放電動作を開始する前に、第2放電部に第2放電動作を開始させるように動作してもよい。
この構成によれば、失陥状態の発生後、第1放電部が第1放電動作を開始する前に第2放電部によるバックアップ動作を開始することができる。よって、第1放電部のみによってバックアップ動作を行う構成と比較して、失陥状態が発生してからバックアップ動作が開始されるまでのタイムラグをより短くすることができる。
【0017】
第1放電部は、蓄電部の充電電圧に応じた入力電圧を昇圧又は降圧して所定の出力電圧を第1放電路に印加する電圧変換部であってもよい。第2放電部は、オン状態のときに蓄電部側から電力供給対象側への通電を許容し、オフ状態のときに蓄電部側から電力供給対象側への通電を遮断するスイッチであってもよい。第2制御部は、電源部に基づく電力供給が失陥状態となった場合に第2放電部に第2放電動作を開始させ、第2放電動作中に第1放電部が第1放電動作を開始した場合に第2放電動作を停止させるように動作してもよい。
この構成によれば、失陥状態が発生した場合に、第1放電部によって所定の出力電圧を出力するようにバックアップ動作を行うことができる。しかも、第1放電部が第1放電動作を開始する前に第2放電部による第2放電動作が開始されれば、失陥状態が発生してからバックアップ動作が開始されるまでのタイムラグをより短くすることができ、第2放電動作の開始後に第1放電動作が開始された場合に第2放電動作を停止すれば、その後のバックアップ動作を第1放電動作に一本化することができる。
【0018】
以下、本発明を具体化した実施例について説明する。
【0019】
<実施例1>
図1には、実施例1に係る車載用のバックアップ電源制御装置1(以下、「バックアップ電源制御装置1」ともいう)を備えた車載用電源システム100の回路図が概略的に示されている。車載用電源システム100は、負荷94(電力供給対象)へ電力を供給するための主電源となる電源部90と、少なくとも電源部90からの電力供給が途絶えたときに電力供給源となる蓄電部92と、電源部90からの電力供給が途絶えたときに蓄電部92からの放電を迅速に行う機能を備えたバックアップ電源制御装置1とを有しており、電源部90又は蓄電部92を電力供給源として負荷94に電力を供給するシステムとして構成されている。また、バックアップ電源制御装置1及び蓄電部92を備えた形で車載用のバックアップ電源装置2が構成されている。
【0020】
この車載用電源システム100は、電源部90からの電力供給が正常状態のときに、バックアップ電源制御装置1に設けられた第1導電路71、第2導電路72、第3導電路73を介して、電源部90から負荷94に電力を供給する構成をなす。本構成において「電源部90からの電力供給が正常状態のとき」とは、電源部90の出力電圧が「所定の値(第1閾値電圧Vth1)」を超える場合であり、具体的には、電源部90の出力電圧に基づいて第1導電路71に印加される電圧が「所定の値(第1閾値電圧Vth1)」を超える場合である。
【0021】
バックアップ電源制御装置1は、電源部90からの電力供給に基づいて充電される蓄電部92をバックアップ用の電源とし、蓄電部92の放電動作を制御する装置である。このバックアップ電源制御装置1は、充放電部10(第1放電部)及び第2放電部12を有し、充放電部10又は第2放電部12によって蓄電部92の放電と放電停止とを切り替え、放電時には蓄電部92からの電力を負荷94に供給し得る構成となっている。
【0022】
電源部90は、主電源として機能し、例えば、鉛バッテリ等の公知の車載用バッテリとして構成されている。電源部90は、高電位側の端子が第1配線部81に電気的に接続され、第1配線部81に対して所定の出力電圧を印加する。電源部90の満充電時の出力電圧は、0Vよりも大きい値に設定されている。
【0023】
蓄電部92は、補助電源として機能し、例えば、電気二重層キャパシタ(EDLC)等の公知の蓄電手段によって構成されている。蓄電部92は、第4導電路74を介して充放電部10に電気的に接続されており、充放電部10によって充電がなされる。また、蓄電部92は、充放電部10及び第2放電部12の各々と電気的に接続されており、充放電部10又は第2放電部12によって放電がなされる。なお、実施例1において、蓄電部92の満充電時の出力電圧は、0Vよりも大きく、且つ電源部90の満充電時の出力電圧よりも小さくなっている。但し、蓄電部92の満充電時の出力電圧は、電源部90の満充電時の出力電圧と同じとしてもよいし、電源部90の満充電時の出力電圧よりも大きくしてもよい。
【0024】
負荷94は、電力供給対象の一例に相当し、公知の車載用電気部品として構成されている。負荷94は、第2配線部82を介してバックアップ電源制御装置1と電気的に接続されている。負荷94は、例えば、シフトバイワイヤシステムや先進運転支援システム(ADAS)におけるECU、アクチュエータ等、電源部90からの電力供給が失陥状態となった場合でも電力供給が望まれる電気部品が好適例である。負荷94は上述した正常状態のときには電源部90から供給される電力に基づいて動作し、電源部90からの電力供給が失陥状態のときには蓄電部92から供給される電力に基づいて動作する。
【0025】
バックアップ電源制御装置1は、主として、上述した充放電部10及び第2放電部12に加え、入力遮断部14、出力遮断部16、制御部20などを備える。
【0026】
入力遮断部14は、電源部90と負荷94との間に介在し、電源部90側から負荷94側への電力供給を許容する許容状態と禁止する禁止状態とに切り替わるものであり、例えばFET等の公知のスイッチング素子として構成されている。入力遮断部14は、電源部90側の端部に第1導電路71が電気的に接続されており、この第1導電路71を介して電源部90に電気的に接続されている。入力遮断部14は、負荷94側の端部に第3導電路73が電気的に接続されており、第3導電路73を介して負荷94と電気的に接続されている。入力遮断部14は、制御部20から与えられる第1制御信号SG1によって制御されるようになっており、許容信号をなす第1制御信号SG1が与えられることで許容状態に切り替わり、禁止信号をなす第1制御信号SG1が与えられることで禁止状態に切り替わる。
【0027】
出力遮断部16は、スイッチ部の一例に相当し、入力遮断部14よりも負荷94側の位置において、電源部90と負荷94との間に介在し、電源部90側から負荷94側への電力供給を許容する許容状態と禁止する禁止状態とに切り替わるものであり、例えばFET等の公知のスイッチング素子として構成されている。出力遮断部16は、入力遮断部14側(電源部90側)の端部に第3導電路73が電気的に接続されており、第3導電路73を介して入力遮断部14が電気的に接続されている。出力遮断部16は、負荷94側の端部に第2導電路72が電気的に接続されており、第2導電路72を介して負荷94に電気的に接続されている。出力遮断部16は、制御部20から与えられる第3制御信号SG3によって制御されるようになっており、許容信号をなす第3制御信号SG3が与えられることで許容状態に切り替わり、禁止信号をなす第3制御信号SG3が与えられることで禁止状態に切り替わる。なお、本構成では、第1導電路71、第2導電路72、第3導電路73が電力路70を構成する。
【0028】
充放電部10は、第1放電部の一例に相当し、蓄電部92からの電力供給に基づく放電電流を第1放電路61を介して電力路70に供給する第1放電動作と、第1放電路61を介した放電電流を停止する第1停止動作とを行いうる回路である。第1放電路61は、充放電部10と第3導電路73との間に介在する導電路である。充放電部10は、例えば、公知の充放電回路として構成されており、より具体的には、昇降圧型DCDCコンバータ等の公知の電圧変換回路として構成されている。充放電部10は、電源部90と蓄電部92との間に介在し、電源部90から供給された電力によって蓄電部92を充電する充電部として機能する。また、充放電部10は、蓄電部92と負荷94との間に介在し、蓄電部92を放電させて負荷94側に電力供給する放電部として機能する。充放電部10は、蓄電部92側の端部が第4導電路74に電気的に接続されており、第4導電路74を介して蓄電部92に電気的に接続されている。充放電部10は、負荷94側(電源部90側)の端部が第3導電路73に電気的に接続されており、第3導電路73を介して入力遮断部14及び出力遮断部16の各々に電気的に接続されている。即ち、入力遮断部14は、電源部90と充放電部10との間に介在しており、出力遮断部16は、充放電部10と負荷94との間に介在している。
【0029】
充放電部10は、電源部90からの電力に基づいて蓄電部92を充電する充電動作と、蓄電部92の充電を停止させる充電停止動作と、蓄電部92を放電させる放電動作(第1放電動作)と、蓄電部92の放電を停止させる放電停止動作(第1停止動作)と、を行い得る。充放電部10は制御部20から与えられる第2制御信号SG2によって制御されるようになっており、充電信号をなす第2制御信号SG2が与えられることで充電動作を行い、充電停止信号をなす第2制御信号SG2が与えられることで充電停止動作を行い、放電信号をなす第2制御信号SG2が与えられることで放電動作を行い、放電停止信号をなす第2制御信号SG2が与えられることで放電停止動作を行う。
【0030】
充放電部10は、充電信号をなす第2制御信号SG2が与えられている場合、電源部90から第1導電路71、入力遮断部14及び第3導電路73を介して入力される電源電圧を昇降圧する電圧変換動作を行い、その昇降圧した電圧を、第4導電路74を介して蓄電部92に印加する。充放電部10は、充電停止信号をなす第2制御信号SG2が与えられている場合、上述した充電動作を停止して、第3導電路73と第4導電路74とを非導通状態とする。
【0031】
充放電部10は、放電信号をなす第2制御信号SG2が与えられている場合、第4導電路74に印加された入力電圧(蓄電部92からの出力電圧)に基づき、第3導電路73又は第2導電路72に向けて決定された目標電圧を出力する放電動作を行う。充放電部10は、放電停止信号をなす第2制御信号SG2が与えられている場合、上述した放電動作を停止して、第3導電路73と第4導電路74とを非導通状態とする。
【0032】
第2放電部12は、充放電部10(第1放電部)とは異なる放電部であり、蓄電部92からの電力供給に基づく放電電流を第1放電路61とは異なる第2放電路62を介して電力供給対象に向けて供給する第2放電動作と、第2放電路62を介した放電電流を停止する第2停止動作とを行い得る回路である。第2放電部12は、例えば、公知の放電回路として構成されており、より具体的には、公知のスイッチ(例えば、FET等の公知の半導体スイッチング素子など)として構成されている。第2放電部12は、蓄電部92と負荷94との間に介在し、蓄電部92を放電させて負荷94側に電力供給する放電部として機能する。第2放電部12は、蓄電部92側の端部が第4導電路74に電気的に接続されており、第4導電路74を介して蓄電部92に電気的に接続されている。第2放電部12は、負荷94側の端部が第2導電路72に電気的に接続されており、第2導電路72を介して負荷94に電気的に接続されている。
【0033】
第2放電部12は、蓄電部92を放電させる放電動作(第2放電動作)と、蓄電部92の放電を停止させる放電停止動作(第2停止動作)と、を行い得る。第2放電部12は、放電動作においては、蓄電部92側から負荷94側への電力供給を許容する許容状態となり、放電停止動作においては、蓄電部92側から負荷94側への電力供給を禁止する禁止状態となる。第2放電部12は、制御部20から与えられる第4制御信号SG4によって制御されるようになっており、放電信号をなす第4制御信号SG4が与えられることで放電動作を行い、放電停止信号をなす第4制御信号SG4が与えられることで放電停止動作を行う。
【0034】
制御部20は、例えば公知のマイクロコントローラ等を備えて構成されている。制御部20は、入力遮断部14に対し第1制御信号SG1を与えることで、入力遮断部14を許容状態及び禁止状態のうち任意の状態に切り替えることができる。また、制御部20は、出力遮断部16に対し第3制御信号SG3を与えることで、出力遮断部16を許容状態及び禁止状態のうち任意の状態に切り替えることができる。
【0035】
制御部20は、充放電部10に第2制御信号SG2を与えることで、充放電部10に対し、充電動作、充電停止動作、放電動作、及び放電停止動作のうち任意の動作を行わせることができる。また、制御部20は、電源部90からの電力供給が失陥状態となったことを検出することができ、上記失陥状態となったことを検出したことに基づき、蓄電部92が放電するように充放電部10を制御する第1放電制御を行い得る。なお、制御部20は、第1導電路71の電圧を監視しており、第1導電路71の電圧が所定の第1閾値電圧Vth1以下となった場合に、上記失陥状態になったと判定する。即ち、本構成では、第1導電路71の電圧が所定の第1閾値電圧Vth1以下となった場合が「電源部90に基づく電力供給が失陥状態となった場合」の一例に相当する。第1閾値電圧Vth1は、0Vよりも大きく且つ電源部90の出力電圧よりも小さい値である。
【0036】
制御部20は、第2放電部12に第4制御信号SG4を与えることで、第2放電部12に対し、放電動作及び放電停止動作のうち任意の動作を行わせることができる。また、制御部20は、上記失陥状態を検出した場合に充放電部10による蓄電部92の放電が行われない異常の有無を判定し得る。そして、制御部20は、その異常が有ると判定した場合に、蓄電部92が放電するように第2放電部12を制御する第2放電制御を行い得る。
【0037】
制御部20は、各々独立して作動する第1制御部22と第2制御部24とを有する。第1制御部22は、電源部90の出力電圧に基づいて第1導電路71に印加された電圧(第1導電路71の電圧)を検出する電圧検出部、及び蓄電部92の充電電圧(第4導電路74の電圧)を検出する電圧検出部を有しており、電源部90の出力電圧に基づいて第1導電路71に印加された電圧(第1導電路71の電圧)、及び蓄電部92の充電電圧(第4導電路74の電圧)を取得し得る。第1制御部22は、充放電部10及び入力遮断部14を制御対象としており、上述した第1放電制御を行い得る。第1制御部22は、第2制御部24が故障等によって作動しなくなった場合であっても、作動し得るように構成されている。
【0038】
第2制御部24は、電源部90の出力電圧に基づいて第1導電路71に印加された電圧(第1導電路71の電圧)を検出する電圧検出部、及び第3導電路73の電圧を検出する電圧検出部を有しており、電源部90の出力電圧に基づいて第1導電路71に印加された電圧(第1導電路71の電圧)、及び第3導電路73の電圧を取得し得る。第2制御部24は、第2放電部12及び出力遮断部16を制御対象としており、上述した第2放電制御を行い得る。第2制御部24は、第1制御部22が故障等によって作動しなくなった場合であっても、作動し得るように構成されている。
【0039】
第1制御部22及び第2制御部24の各々は、マイクロコントローラとして構成されていてもよいし、FPGA(field programmable gate array)などであってもよく、その他のハード回路で構成されていてもよい。例えば、第1制御部22及び第2制御部24の各々を、別々のワンチップマイコンとして構成するようにしてもよい。なお、本実施例では、第1制御部22がマイクロコントローラとして構成され、第2制御部24がハード回路で構成される例について説明する。
【0040】
次に、バックアップ電源制御装置1の動作について説明する。
電源部90からの電力供給が正常状態のときには、入力遮断部14及び出力遮断部16がともに許容状態とされ、第1導電路71、第3導電路73及び第2導電路72を介して負荷94に電力供給される。また、第2放電部12は、禁止状態とされる。
【0041】
このとき、第1制御部22(制御部20)は、蓄電部92の充電電圧(第4導電路74の電圧)を監視しており、蓄電部92の充電電圧が充電の必要となる所定の値以下である場合に、充放電部10に向けて充電信号をなす第2制御信号SG2を出力する。これにより、充放電部10が充電動作を行うように充放電部10を制御する。そして、蓄電部92の充電電圧が所定の目標電圧に到達すると、充放電部10に向けて充電停止信号をなす第2制御信号SG2を出力することで、充放電部10が充電停止動作を行うように充放電部10を制御する。
【0042】
更に、第1制御部22(制御部20)は、電源部90からの電力供給が失陥状態となったか否かを繰り返し判定する。より具体的には、第1導電路71の電圧を監視しており、第1導電路71の電圧が第1閾値電圧Vth1以下となったか否かを繰り返し判定し、第1導電路71の電圧が第1閾値電圧Vth1以下となった場合に、電源部90からの電力供給が失陥状態となったことが検出される。
【0043】
第1制御部22(制御部20)は、失陥状態を検出した場合、入力遮断部14に向けて禁止信号をなす第1制御信号SG1を出力するとともに、充放電部10に向けて放電信号をなす第2制御信号SG2を出力する。即ち、第1制御部22(制御部20)は、入力遮断部14が禁止状態となるように入力遮断部14を制御するとともに、蓄電部92が放電するように充放電部10を制御する。これにより、蓄電部92から負荷94に電力が供給され、充放電部10によるバックアップが行われる。
【0044】
しかし、電源部90からの電力供給が失陥状態となった場合に、充放電部10によるバックアップが正常に行われないこともあり得る。その理由として、例えば、充放電部10が故障等により正常に作動しない場合、入力遮断部14が故障等により許容状態のまま維持されてしまい第3導電路73に印加できない場合、第1制御部22が故障等により充放電部10及び入力遮断部14を正常に作動させることができない場合、などが考えられる。こうした状況に備え、このバックアップ電源制御装置1では以下の対策が取られている。
【0045】
第2制御部24(制御部20)は、始動スイッチ(例えばイグニッションスイッチ)がオン状態になった後、始動スイッチ(例えばイグニッションスイッチ)がオフ状態になるまで、
図2で示す第2放電制御を繰り返し実行する。
【0046】
第2制御部24は、ステップS10にて、第1導電路71の電圧及び第3導電路73の電圧を取得する。そして、電源部90からの電力供給が失陥状態となったか否かを判定する。具体的には、ステップS12にて、第1導電路71の電圧が第1閾値電圧Vth1以下であるか否かを判定する。第1導電路71の電圧が第1閾値電圧Vth1以下でない場合には(ステップS12:NO)、電源部90からの電力供給が正常に行われていると判定する。そして、ステップS18にて、出力遮断部16に向けて許容信号をなす第3制御信号SG3を出力するとともに、第2放電部12に向けて禁止信号をなす第4制御信号SG4を出力する。即ち、第2制御部24(制御部20)は、出力遮断部16の許容状態を維持するように制御するとともに、第2放電部12の禁止状態を維持するように制御する。
【0047】
その後、失陥状態になると、第1導電路71の電圧が第1閾値電圧Vth1以下になるので、ステップS12にて、第1導電路71の電圧が第1閾値電圧Vth1以下であると判定し(ステップS12:YES)、失陥状態であると判定する。第2制御部24(制御部20)は、失陥状態であると判定した場合(第1導電路71の電圧が第1閾値電圧Vth1以下である場合)には、充放電部10による蓄電部92の放電が行われない異常の有無を判定する。具体的には、第2制御部24は、ステップS14にて、第3導電路73の電圧が第2閾値電圧Vth2以下であるか否かを判定する。第2閾値電圧Vth2は、本実施例では第1閾値電圧Vth1と同じとする。
【0048】
ステップS14にて、第3導電路73の電圧が第2閾値電圧Vth2以下でないと判定した場合には(ステップS14:NO)、充放電部10によるバックアップが正常に行われていると判断する。そして、ステップS18にて、出力遮断部16に向けて許容信号をなす第3制御信号SG3を出力するとともに、第2放電部12に向けて放電停止信号をなす第4制御信号SG4を出力する。即ち、第2制御部24(制御部20)は、出力遮断部16の許容状態を維持するように制御するとともに、第2放電部12の禁止状態を維持するように制御する。
【0049】
これに対し、第2制御部24(制御部20)は、ステップS14にて、第3導電路73の電圧が第2閾値電圧Vth2以下であると判定した場合には(ステップS14:YES)、充放電部10によるバックアップが正常に行われていないと判定する。即ち、充放電部10による蓄電部92の放電が行われない異常が有ると判定する。そして、ステップS16にて、出力遮断部16に向けて禁止信号をなす第3制御信号SG3を出力するとともに、第2放電部12に向けて放電信号をなす第4制御信号SG4を出力する。即ち、第2制御部24(制御部20)は、出力遮断部16を禁止状態に制御するとともに、第2放電部12が蓄電部92を放電させるように第2放電部12を制御する。これにより、蓄電部92から負荷94に電力が供給され、第2放電部12によるバックアップが行われる。
【0050】
次に、
図3及び
図4のタイミングチャートを用いて、バックアップ電源制御装置1によるバックアップ動作を説明する。
【0051】
図3には、充放電部10によるバックアップが正常に行われる場合の動作が例示されている。
電源部90からの電力供給が正常状態のとき、第1導電路71の電圧は、第1閾値電圧Vth1よりも高い電圧に維持されている。このため、第1制御部22は、許容信号をなす第1制御信号SG1を出力することで、入力遮断部14を許容状態とする。更に、第1制御部22は、蓄電部92の充電電圧(第4導電路74の出力電圧)を監視しており、蓄電部92の充電電圧が充電の必要な値以下である場合には充電信号をなす第2制御信号SG2を出力することで充放電部10によって蓄電部92を充電し、蓄電部92の充電電圧が目標電圧に到達すると充電停止信号をなす第2制御信号SG2を出力することで充放電部10による充電動作を停止させる。
【0052】
また、電源部90からの電力供給が正常状態のとき、第1導電路71の電圧は、第1閾値電圧Vth1よりも高い電圧に維持されており、第3導電路73の電圧は、第2閾値電圧Vth2よりも高い電圧に維持されている。このため、第2制御部24は、許容信号をなす第3制御信号SG3及び放電停止信号をなす第4制御信号SG4を出力している。このため、出力遮断部16は許容状態とされ、第2放電部12は放電停止動作を行う。
そして、バックアップ電源制御装置1の出力電圧(第2導電路72の電圧)は、第1閾値電圧Vth1及び第2閾値電圧Vth2のいずれの値よりも高い電圧に維持されている。
【0053】
その後、失陥状態になると、タイミングT1にて失陥状態になったことが第1制御部22及び第2制御部24によって検出される。失陥状態を検出した第2制御部24は、更に第3導電路73の電圧が第2閾値電圧Vth2以下であると判定する。即ち、充放電部10による蓄電部92の放電が行われない異常が有ると判定する。本構成では、失陥状態のときに第3導電路73の電圧が第2閾値電圧Vth2以下である状態が、「第1放電部による第1放電動作が異常状態である場合」の一例に相当する。そして、第2制御部24は、失陥状態となってから充放電部10による放電が開始されるまでに要する時間を待機することなく、タイミングT2にて、直ちに禁止信号をなす第3制御信号SG3及び放電信号をなす第4制御信号SG4を出力する。これにより、第2制御部24は、出力遮断部16を禁止状態に制御するとともに、蓄電部92が放電するように第2放電部12を制御する。
【0054】
他方、第1制御部22は、タイミングT3にて、失陥状態を検出したことに基づき、禁止信号をなす第1制御信号SG1及び放電信号をなす第2制御信号SG2を出力する。これにより、第1制御部22は、入力遮断部14を禁止状態に制御するとともに、充放電部10が放電するように充放電部10を制御する。その結果、蓄電部92が充放電部10によって放電されるので、第3導電路73の電圧が第2閾値電圧Vth2以上になる。
【0055】
その後、第2制御部24は、第3導電路73の電圧が第2閾値電圧Vth2以上になったことを受けて、上記異常が無いと判定し、タイミングT4にて、許容信号をなす第3制御信号SG3及び放電停止信号をなす第4制御信号SG4を出力する。これにより、第2制御部24は、出力遮断部16を許容状態に制御するとともに、第2放電部12の放電を停止させる。
【0056】
これに対し、バックアップが正常に行われない場合には、
図4に例示する以下のような動作が行われる。なお、
図4に示す例では、第1制御部22に故障等が生じて、入力遮断部14及び充放電部10に制御信号を出力することができない場合を想定している。
【0057】
電源部90からの電力供給が正常状態のときの動作は、バックアップが正常に行われる場合と同様であるため説明を省略する。
失陥状態になると、タイミングT1にて失陥状態になったことが第2制御部24によって検出される。失陥状態を検出した第2制御部24は、更に第3導電路73の電圧が第2閾値電圧Vth2以下であると判定する。即ち、充放電部10による蓄電部92の放電が行われない異常が有ると判定する。そして、第2制御部24は、上記異常が有ると判定したときに、失陥状態となってから第1制御部22が充放電部10によって蓄電部92を放電させるまでに要する時間を待機することなく、タイミングT2にて、直ちに禁止信号をなす第3制御信号SG3及び放電信号をなす第4制御信号SG4を出力する。これにより、第2制御部24は、出力遮断部16を禁止状態に制御するとともに、蓄電部92が放電するように第2放電部12を制御する。
【0058】
他方、第1制御部22は、故障等が生じており、失陥状態を検出することができない。あるいは、失陥状態を検出することはできるが、適切な制御信号を出力することができない。その結果、入力遮断部14は許容状態のまま維持され、充放電部10は放電しない状態が維持される。このため、第3導電路73の電圧は、第2閾値電圧Vth2以下の状態が維持される。従って、第2制御部24は、第2放電部12による蓄電部92の放電を継続する。即ち、充放電部10によるバックアップが正常に行われない場合に、第2放電部12によるバックアップが行われる。
【0059】
次に、本構成のバックアップ電源制御装置1の効果を説明する。
本構成のバックアップ電源制御装置1は、電源部90に基づく電力供給が失陥状態となった場合に、充放電部10(第1放電部)に第1放電動作を行わせる。この第1放電動作が行われれば、蓄電部92に基づく電力を電力路70に供給することができ、負荷94(電力供給対象)への電力供給を継続することができる。更に、本構成では、充放電部10(第1放電部)による第1放電動作が異常状態となったとしても、第2放電部12に第2放電動作を行わせ、充放電部10(第1放電部)とは異なる経路で負荷94へと電力を供給することができる。よって、バックアップ動作の信頼性が格段に高まる。しかも、第2放電部12によるバックアップ動作の際にも、充放電部10(第1放電部)によるバックアップ動作の場合と共通の蓄電部92を電力供給源とすることができるため、部品点数の増加を抑えつつ、上記効果を得ることができる。このように、本構成のバックアップ電源制御装置1によれば、バックアップ動作の信頼性を高め得る構成を、より簡易に実現することができる。
【0060】
本構成では、第1制御部22及び第2制御部24が、互いに独立して動作する構成であるため、第1制御部22に起因する異常(例えば第1制御部22の故障等)によって第1放電動作が正常に行われない場合であっても、第2制御部24は独立して第2放電部12を制御し、第2放電動作を行わせることができる。
【0061】
本構成では、電力路70において第1放電路61の接続部73Aよりも電源部90側には、オン状態とオフ状態とに切り替わる入力遮断部14が設けられている。そして、電力路70において接続部73Aよりも負荷94(電力供給対象)側には、オン状態とオフ状態とに切り替わる出力遮断部16(スイッチ部)が設けられている。そして、電力路70は、入力遮断部14よりも電源部90側に第1導電路71が設けられ、出力遮断部16(スイッチ部)よりも負荷94(電力供給対象)側に第2導電路72が設けられ、入力遮断部14と出力遮断部16(スイッチ部)との間に第3導電路73が設けられている。そして、入力遮断部14は、オン状態のときに第1導電路71側から第3導電路73側への電力供給を許容し、オフ状態のときに第1導電路71側から第3導電路73側への電力供給を遮断する構成をなす。出力遮断部16(スイッチ部)は、オン状態のときに第3導電路73側から第2導電路72側への電力供給を許容し、オフ状態のときに第3導電路73側から第2導電路72側への電力供給を遮断する構成をなす。第2放電部12は、第2導電路72に電気的に接続され、第2制御部24は、電源部90に基づく電力供給が失陥状態となった場合において、少なくとも充放電部10(第1放電部)による第1放電動作が異常状態である場合に、出力遮断部16(スイッチ部)をオフ状態に切り替えるように動作する。この構成によれば、第1放電動作が異常状態となった場合に出力遮断部16(スイッチ部)をオフ状態に切り替えて第3導電路73と第2導電路72とを電気的に切り離すことができる。従って、第2放電動作によって第2導電路72に放電電流を供給する際に、第3導電路73側の影響を受けることなく安定的に放電電流を供給することができる。
【0062】
第2制御部24は、電源部90に基づく電力供給が失陥状態となった場合に、第1制御部22による制御に応じて充放電部10(第1放電部)が第1放電動作を開始する前に、第2放電部12に第2放電動作を開始させるように動作してもよい。この構成によれば、失陥状態の発生後、充放電部10(第1放電部)が第1放電動作を開始する前に第2放電部12によるバックアップ動作を開始することができる。よって、充放電部10(第1放電部)のみによってバックアップ動作を行う構成と比較して、失陥状態が発生してからバックアップ動作が開始されるまでのタイムラグをより短くすることができる。
【0063】
充放電部10(第1放電部)は、蓄電部92の充電電圧に応じた入力電圧を昇圧又は降圧して所定の出力電圧を第1放電路61に印加する電圧変換部であってもよい。第2放電部12は、オン状態のときに蓄電部92側から負荷94(電力供給対象)側への通電を許容し、オフ状態のときに蓄電部92側から負荷94(電力供給対象)側への通電を遮断するスイッチであってもよい。第2制御部24は、電源部90に基づく電力供給が失陥状態となった場合に第2放電部12に第2放電動作を開始させ、第2放電動作中に充放電部10(第1放電部)が第1放電動作を開始した場合に第2放電動作を停止させるように動作してもよい。この構成によれば、失陥状態が発生した場合に、充放電部10(第1放電部)によって所定の出力電圧を出力するようにバックアップ動作を行うことができる。しかも、充放電部10(第1放電部)が第1放電動作を開始する前に第2放電部12による第2放電動作が開始されれば、失陥状態が発生してからバックアップ動作が開始されるまでのタイムラグをより短くすることができ、第2放電動作の開始後に第1放電動作が開始された場合に第2放電動作を停止すれば、その後のバックアップ動作を第1放電動作に一本化することができる。
【0064】
<実施例2>
実施例2のバックアップ電源制御装置201は、実施例1のバックアップ電源制御装置1に対してキャパシタ30を追加した構成であり、その他の構成は同じである。また、実施例2のバックアップ電源装置202は、バックアップ電源制御装置201と、蓄電部92とを備えた構成をなしており、実施例2の車載用電源システム200は、バックアップ電源装置202と、電源部90とを備えた構成をなしている。なお、第1実施例と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0065】
キャパシタ30は、
図5に示すように、電源部90と負荷94との間に介在する電力路70(第2導電路72)に電気的に接続されている。キャパシタ30は、電源部90からの電力供給が正常状態のときに、電源部90から電力路70を介して供給される電流によって充電される。一方で、上記失陥状態となったときに放電し、電力路70に放電電流を供給する。
【0066】
このバックアップ電源制御装置201の動作について説明する。
図6には、失陥状態となったときに、充放電部10による放電が行われない場合における動作のタイミングチャートが例示されている。
【0067】
キャパシタ30は失陥状態となる前の状態において、満充電状態となっている。電源部90からの電力供給が正常状態のときのキャパシタ30以外の動作は、第1実施例の場合と同様であるため説明を省略する。
【0068】
失陥状態になると、電源部90から電力が供給されなくなり、電力供給路(第2導電路72)の電圧が低下するので、キャパシタ30が放電する。このため、キャパシタ30が電気的に接続されている第2導電路72の電圧(バックアップ電源制御装置201の出力電圧)の低下が抑制される。そして、第2制御部24は、キャパシタ30から負荷94に電力供給されている間に、上記失陥状態になったことを検出するとともに、充放電部10による蓄電部92の放電が行われない異常が有ると判定し、禁止信号をなす第3制御信号SG3及び放電信号をなす第4制御信号SG4を出力する。即ち、第2制御部24は、出力遮断部16を禁止状態に制御するとともに、蓄電部92が放電するように第2放電部12を制御する。
【0069】
次に、実施例2のバックアップ電源制御装置201の効果について説明する。
本構成では、第2導電路72に電気的に接続され、電源部90から供給される電力に基づいて充電されるキャパシタ30を備える。この構成によれば、電源部90側でオープン故障などが生じて電源部90からの電力供給が途絶えた場合に、キャパシタ30から負荷94(電力供給対象)へと即座に電力を供給することができる。従って、電源部90に基づく電力供給が途絶えてから充放電部10(第1放電部)又は第2放電部12によるバックアップ動作が開始されるまでの間、負荷94(電力供給対象)への電力供給が維持される可能性が高まる。なお、上記構成では、第2導電路72にキャパシタ30が接続された例を示したが、第3導電路73にキャパシタ30が接続されていてもよい。
【0070】
<実施例3>
実施例3のバックアップ電源制御装置301は、実施例1のバックアップ電源制御装置1に対して低ドロップアウトレギュレータ32(以下、LDO32ともいう)を追加した構成であり、その他の構成は同じである。また、実施例3のバックアップ電源装置302は、バックアップ電源制御装置301と、蓄電部92とを備えた構成をなしており、実施例3の車載用電源システム300は、バックアップ電源装置302と、電源部90とを備えた構成をなしている。なお、第1実施例と同じ構成については同一の符号を付して説明を省略する。
【0071】
LDO32は、入力電圧を所定の電圧に降下させた降下後の電圧を出力するものである。LDO32は、
図7に示すように、蓄電部92と負荷94との間に介在している。LDO32は、蓄電部92側の端部が第4導電路74に電気的に接続されており、第4導電路74を介して蓄電部92に電気的に接続されている。LDO32は、負荷94側の端部が第2導電路72(電力路70)に電気的に接続されており、第2導電路72(電力路70)を介して負荷94に電気的に接続されている。LDO32は、第4導電路74に印加された電圧を、電源部90からの電力供給が正常状態のときの第2導電路72の電圧よりも低い電圧に降下させて第2導電路72に印加する。ここで、LDO32の降下後の電圧は、0Vよりも大きく且つ第1閾値電圧Vth1以下の電圧に設定されている。
【0072】
このLDO32が設けられたバックアップ電源制御装置301の動作を説明する。ここでは、失陥状態となったときに、充放電部10による放電が行われない場合の例について説明する。
【0073】
電源部90からの電力供給が正常状態のときには、LDO32の降下後の電圧は、電源部90の出力電圧に基づいて第2導電路72に印加された電圧よりも小さい。このため、LDO32の降下後の電圧は、第2導電路72に印加されない。
【0074】
その後、失陥状態になると、電源部90から電力が供給されなくなり、第2導電路72の電圧が低下して、LDO32の降下後の電圧を下回ると、LDO32の降下後の電圧が第2導電路72に出力される。これにより、LDO32から負荷94に電力供給される。その後、第2放電部12が放電されると、第2導電路72の電圧がLDO32の降下後の電圧を上回り、LDO32の出力は停止する。
【0075】
次に、実施例3のバックアップ電源制御装置301の効果について説明する。
実施例3のバックアップ電源制御装置301は、一端が蓄電部92に電気的に接続され、他端が第2導電路72に電気的に接続され、電源部90に基づく電力供給が失陥状態となった場合に蓄電部92の充電電圧に基づく入力電圧を降圧して第2導電路72に出力電圧を印加するLDO32(低ドロップアウトレギュレータ)を備えている。この構成によれば、電源部90側でオープン故障などが生じて電力供給が途絶えた場合に、LDO32(低ドロップアウトレギュレータ)によって負荷94(電力供給対象)へと即座に電力を供給することができる。従って、電源部90に基づく電力供給が途絶えてから充放電部10(第1放電部)又は第2放電部12によるバックアップ動作が開始されるまでの間、負荷94(電力供給対象)への電力供給が維持される可能性が高まる。なお、第2導電路72の電圧が、所定電圧(低ドロップアウトレギュレータによって降圧動作が開始される電位差となる電圧)を超えている間は、LDO32(低ドロップアウトレギュレータ)による降圧動作がなされないため、この期間は、LDO32(低ドロップアウトレギュレータ)による蓄電部92の放電は抑えられる。なお、上記構成では、LDO32の他端が第2導電路72に接続された例を示したが、LDO32の他端が第3導電路73に接続されていてもよい。
【0076】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0077】
上述した実施例では、電源部90に鉛バッテリを用いているが、この構成に限定されず、本明細書のいずれの例においても、鉛バッテリに代えて又は鉛バッテリと併用して電源部90に他の電源手段(リチウムイオン電池,オルタネータ、コンバータなどの電力源)を用いてもよい。電源部90を構成する電源手段の数は1つに限定されず、複数の電源手段によって構成されていてもよい。
【0078】
上述した実施例では、蓄電部92に電気二重層キャパシタ(EDLC)を用いているが、この構成に限定されず、本明細書のいずれの例においても、蓄電部92に、リチウムイオンキャパシタ、コンデンサ、鉛バッテリ、リチウムイオン電池などの他の蓄電手段を用いてもよい。また、蓄電部92を構成する蓄電手段の数は1つに限定されず、複数の蓄電手段によって構成されていてもよい。
【0079】
上述した実施例では、入力遮断部14の例としてFETを例示したが、その他の半導体スイッチやリレーなどの電気部品であってもよい。
【0080】
上述した実施例では、入力遮断部14が制御部20からの指示に応じて許容状態と禁止状態とに切り替わるようにしたが、許容状態とするか禁止状態とするかを入力遮断部14自身が判断するようにしてもよい。例えば、入力遮断部14は、第1導電路71の電圧を監視して失陥状態となったか否かを自身で判断し、その判断結果に基づき許容状態と禁止状態とに切り替わるようにしてもよい。
【0081】
上述した実施例では、出力遮断部16の例としてFETを例示したが、その他の半導体スイッチやリレーなどの電気部品であってもよい。
【0082】
上述した実施例では、出力遮断部16が制御部20からの指示に応じて許容状態と禁止状態とに切り替わるようにしたが、許容状態とするか禁止状態とするかを出力遮断部16自身が判断するようにしてもよい。例えば、出力遮断部16は、第1導電路71の電圧及び第3導電路73の電圧を監視することで、失陥状態を検出した場合に、充放電部10による蓄電部92の放電が行われない異常の有無を判定し、その判定結果に基づき許容状態と禁止状態とに切り替わるようにしてもよい。
【0083】
上述した実施例では、第1放電部の一例として充放電部10を例示したが、蓄電部92を放電し得る構成であればよく、充電回路と放電回路とが別々に構成されていてもよい。また、第1放電部は電圧変換回路に限定されず、例えば、スイッチによって構成されていてもよい。
【0084】
上述した実施例では、第2放電部12がスイッチによって構成される例を示したが、蓄電部92を放電し得る構成であればよく、例えばDCDCコンバータによって構成されていてもよい。
【0085】
上述した実施例では、第2閾値電圧Vth2は、第1閾値電圧Vth1と同じとしたが、0Vよりも大きく、電源部90の出力電圧よりも小さく且つ蓄電部92の出力電圧よりも小さい電圧であれば、第1閾値電圧Vth1よりも大きくてもよいし、小さくても良い。
【0086】
上述した実施例では、失陥状態を検出してから制御信号を出力するまでのタイムラグが第1制御部22よりも第2制御部24の方が短くなるようにしたが、同程度となるようにしてもよいし、第2制御部24の方が長くなるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0087】
1,201,301…車載用のバックアップ電源制御装置
2,202,302…車載用のバックアップ電源装置
10…充放電部(第1放電部)
12…第2放電部
14…入力遮断部
16…出力遮断部(スイッチ部)
22…第1制御部
24…第2制御部
30…キャパシタ
32…低ドロップアウトレギュレータ
61…第1放電路
62…第2放電路
70…電力路
71…第1導電路
72…第2導電路
73…第3導電路
90…電源部
92…蓄電部
94…負荷(電力供給対象)
100,200,300…車載用電源システム