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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ノズル掛け
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20220722BHJP
   F17C 13/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
F17C5/06
F17C13/00 301Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2019568873
(86)(22)【出願日】2018-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2018041987
(87)【国際公開番号】W WO2019150700
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2021-08-02
(31)【優先権主張番号】P 2018018030
(32)【優先日】2018-02-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】100106563
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 潤
(72)【発明者】
【氏名】竹澤 正浩
(72)【発明者】
【氏名】荒井 誠
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-80067(JP,A)
【文献】特開2003-34397(JP,A)
【文献】特開2004-19716(JP,A)
【文献】実開昭56-146200(JP,U)
【文献】特開2004-231241(JP,A)
【文献】国際公開第2017/203721(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/00-13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に水素を吐出する吐出管と、他端に握り部を有する充填ノズルを掛けるためのノズル掛けであって、
前記充填ノズルの吐出管を保持する上部と、
該上部に相対向し、前記充填ノズルの握り部を保持する下部と、
前記上部と前記下部とを繋ぐ中間部とを備えたノズル掛けであって、
前記下部は、前記充填ノズルの前記握り部を不動状態で係止する固定係止部を備え、
前記上部は、傾けられた前記充填ノズルの前記吐出管を前記中間部の手前の空間に挿入し易くする凹部と、前記吐出管に当接し、前記吐出管を可動状態で係止する可動係止部とを備えることを特徴とするノズル掛け。
【請求項5】
前記固定係止部は、前記充填ノズルの前記握り部が収容される凹部と、該凹部から上方に突出して前記握り部を係止する段部を備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のノズル掛け。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素充填装置において、水素充填ノズルが掛けられるノズル掛けに関する。
【背景技術】
【0002】
水素ステーション等に設定されている水素充填装置は、充填ホースの先端に設けられた充填ノズルを水素充填装置のノズル掛けから外し、充填すべき車両の充填口に接続してその車両の水素タンクに水素を充填している。ノズル掛けに充填ノズルを掛けるには、例えば、充填ノズルの下端を深さ50mm程度のフックに垂直に差し込んだ後、充填ノズルの上端をヒンジ状の蓋部品で固定していた。
【0003】
一方、車両の水素タンクに高圧の水素ガス、例えば70MPaの水素ガスを急速に充填しようとすると、断熱圧縮となり、車両の水素タンク内の温度が上昇する。このため、水素ガスを予め冷却して充填するプレクール充填と呼ばれる方法が実施されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来のノズル掛けは、フックと蓋部品が別部材からなるため、これらの製造誤差及び取付誤差によって充填ノズルのノズル掛けへの掛かり具合が変化し、充填ノズルがノズル掛けから脱落する懸念があった。
【0005】
また、充填ノズルをノズル掛けに掛けるには、フックへの差し込みと、蓋部品による固定の二段階の動作が必要となるため、より容易かつ迅速に充填ノズルをノズル掛けに掛けることが望まれていた。
【0006】
さらに、従来のノズル掛けには、充填ノズルを保持する上下の部材の間に、充填ノズルを除くと片手分の隙間しか残っていないため、充填ノズルの掛け外しを片手で行わなければならず、充填者の負担が大きかった。
【0007】
また、上記プレクール充填により、車両の充填口と接続される充填ノズルが冷却され、レバー等の可動部又は吐出管等の固定部が凍結して車両の充填口から充填ノズルが外れなかったり、次回の充填時に車両の充填口と接続できないおそれもあった。
【0008】
そこで、本発明は上記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、充填ノズルの掛け外しを容易に、迅速かつ確実に行うことができ、プレクール充填にも対応したノズル掛けを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のノズル掛けは、一端に水素を吐出する吐出管と、他端に握り部を有する充填ノズルを掛けるためのノズル掛けであって、前記充填ノズルの吐出管を保持する上部と、該上部に相対向し、前記充填ノズルの握り部を保持する下部と、前記上部と前記下部とを繋ぐ中間部とを備えたノズル掛けであって、前記下部は、前記充填ノズルの前記握り部を不動状態で係止する固定係止部を備え、前記上部は、前記充填ノズルの前記吐出管に当接し、前記吐出管を可動状態で係止する可動係止部を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明のノズル掛けによれば、上部、下部及び中間部が一部材からなるため、これらの製造誤差及び取付誤差が生じることがなく、充填ノズルとノズル掛けとの間の寸法誤差を極めて小さくすることができる。これにより、ノズル掛けからの充填ノズルの脱落等を確実に防止することができる。また、充填ノズルを固定係止部と可動係止部との間に配するだけで充填ノズルを両係止部で保持することができるため、ワンタッチで充填ノズルをノズル掛けに掛けることができる。
【0011】
上記ノズル掛けにおいて、前記可動係止部は、前記充填ノズルが該ノズル掛けに掛けられている際に前記吐出管を下方に付勢する付勢手段を備えることができる。これにより、ノズル掛けからの充填ノズルの脱落をより確実に防止することができる。
【0012】
また、前記可動係止部を、下方に向かって突出する球状に形成すると共に、中心部にガス噴出口を設けることができる。これにより、吐出管の端部が球状に凹むように形成された充填ノズルのノズル掛けからの脱落をより確実に防止すると共に、噴出口から噴出するガス(圧縮空気、不活性ガス)によってプレクール充填等により凍結した水滴等を除去することができる。また、前記付勢手段によって吐出管を下方に付勢しながらガスを吐出することで、所定の部位に漏れを生じることなくガスを噴射することができる。
【0013】
さらに、前記充填ノズルが該ノズル掛けに掛けられている際に、前記中間部と前記充填ノズルの側面との間に所定の大きさ以上の隙間が形成されるように構成することができ、これによって例えば、ユーザが充填ノズルを両手で把持した状態で充填ノズルの掛け外しを行うことができる。
【0014】
また、前記固定係止部を、前記充填ノズルの前記握り部が収容される凹部と、該凹部から上方に突出して前記握り部を係止する段部を備えるようにすることで、簡単な構成でノズル掛けからの充填ノズルの脱落をさらに確実に防止することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、充填ノズルの掛け外しを容易に、迅速かつ確実に行うことができ、プレクール充填にも対応したノズル掛けを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るノズル掛けを備えたガス充填装置の一例を示す全体構成図であって、(a)は正面図、(b)は左側面図、(b)は右側面図である。
図2】本発明に係るノズル掛けの第1の実施形態を示す全体構成図であって、(a)は左斜め上方向から見た斜視図、(b)は左斜め下方向から見た斜視図である。
図3図2のノズル掛けに充填ノズルが掛けられた状態を示す縦断面図である。
図4図3のノズル掛けに充填ノズルを掛ける動作を説明するための断面図である。
図5図3及び図4に示す可動係止部から充填ノズルに圧縮空気を噴射する動作について説明するためのフローチャートである。
図6】本発明に係るノズル掛けの第2の実施形態を示す全体構成図であって、(a)は左斜め上方向から見た斜視図、(b)は左斜め下方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るノズル掛けを備えたガス充填装置の一例を示し、このガス充填装置10の正面中央部に本発明に係るノズル掛け1が設けられる。同図は、充填ホース13の先端部に設けられた充填ノズル11がノズル掛け1に掛けられている状態を示している。
【0019】
ノズル掛け1は、図2及び図3に示すように、大別して、充填ノズル11の吐出管11aを保持する上部2と、充填ノズル11の握り部11bを保持する下部3と、上部2と下部3とを繋ぐ中間部4とを備える。
【0020】
上部2は、充填ノズル11の吐出管11aを係止する可動係止部5を備え、この可動係止部5は、上下方向に延設される軸部材5aと、軸部材5aの表面上を摺動可能で、下方に向かって球状に突出する本体5bと、本体5bを下方向に付勢するばね5cとで構成される。また、上部2には、充填ノズル11の吐出管11aから排出される微量の水素が滞留するため、滞留した水素を抜くための貫通孔2aが穿設される。
【0021】
軸部材5a及び本体5bは、各々中心部に貫通孔5e、5fが形成されると共に、これらの貫通孔5e、5fが圧縮空気搬送管9の内部と連通している。これにより、圧縮空気源から圧縮空気搬送管9及び軸部材5aを介して本体5bの噴出口5dから吐出管11aに向かって圧縮空気(ドライガス)を噴射し、吐出管11aに付着する水滴や、凍結物、ごみを除去することができる。ここで、可動係止部5の本体5bが下方に向かって凸球状であると共に、吐出管11aの先端が凹球状に形成されているため、噴出口5dが吐出管11aの凹部内に位置し、吐出管11aに付着する凍結物等を効率よく除去することができる。
【0022】
下部3は、充填ノズル11の握り部11bの下端に接続される充填ホース13を避けるために下面視U字状に形成される凹部6を備え、凹部6に握り部11bの下端を係止する段部7が形成されている。段部7は、例えば10mm程度の高さを有し、段部7には、握り部11bの下端で押圧されてONになるノズルスイッチ8が設けられている。
【0023】
中間部4は、充填ノズル11を両手で把持した状態で充填ノズル11の掛け外しを行うための空間4aを形成しながら、上部2と下部3を繋いでいる。
【0024】
次に、上記構成を有するノズル掛け1に充填ノズル11を掛ける動作について、図4を参照しながら説明する。尚、図3及び図4において、ガス充填者の手及び充填ノズル11の下端部に接続される充填ホース13の図示を省略している。
【0025】
ガス充填者は、充填ノズル11の握り部11bを両手で握った状態で、図4(a)に示すように、充填ノズル11を傾けながら吐出管11aをノズル掛け1の中間部4の手前の空間に挿入する。次に、その状態から充填ノズル11を上昇させ、図4(b)に示すように、吐出管11aで可動係止部5を上方に押し込むようにして吐出管11aを上部2の下方に挿入する。
【0026】
吐出管11aで可動係止部5を上方に押し込んだ状態で、充填ノズル11の握り部11bを前方(図面では左方向)に移動させると、図4(c)に示す状態になる。この状態では、まだ充填ノズル11の握り部11bが下部3の凹部6に収納されておらず、段部7の上面に載置された状態である。そこで、さらに握り部11bを前方に移動させ、図3に示すように、充填ノズル11の握り部11bの下端部を凹部6に収容した状態で段部7によって係止する。
【0027】
握り部11bを段部7に係止した後は、作業者が握り部11bから手を離すだけで、可動係止部5の本体5bがばね5cで下方に付勢されるので、図3に示すように、吐出管11aが可動係止部5の本体5bに係止され、充填ノズル1が下方に付勢された状態でノズル掛け1に保持される。
【0028】
以上のように、本実施の形態によれば、上部2、下部3及び中間部4が一部材からなり、これらの製造誤差及び取付誤差が生じることがなく、充填ノズル11とノズル掛け1との間の寸法誤差を極めて小さくすることができる。これにより、ノズル掛け1からの充填ノズル11の脱落等を確実に防止することができる。
【0029】
また、充填ノズル11の握り部11bの段部7への係止と、吐出管11aの可動係止部5への係止をワンタッチで行うことができる。
【0030】
さらに、ばね5cで充填ノズル11を下方へ付勢することにより、段部7の高さが10mm程度でもノズル掛け1からの充填ノズル11の脱落を防止することができるため、充填者の負担を軽減することができる。
【0031】
一方、上述のようにプレクール充填等を行うと、充填ノズル11が凍結するおそれがあるため、図3及び図4に示すように、圧縮空気搬送管9から供給される圧縮空気を可動係止部5の噴出口5dから充填ノズル11に噴射する必要がある。この圧縮空気噴射動作について図3及び図5を参照しながら詳細に説明する。
【0032】
POS端末等の上位機器からノズル掛け1に充填許可信号が入力されると(ステップS1;Yes)、可動係止部5の噴出口5dから充填ノズル11に圧縮空気(エア)を噴射し(ステップS2)、ノズルスイッチ8がオンになると(ステップS3;Yes)、圧縮空気の噴射を停止する(ステップS4)。
【0033】
ステップS1~ステップS4により、充填ノズル11をノズル掛け1から外れ易くすると共に、充填ノズル11の吐出管11aを車両の充填口に接続し易くする。
【0034】
充填が終了してノズルスイッチ8がオフになると(ステップS5;Yes)、噴出口5dから充填ノズル11に圧縮空気を噴射し(ステップS6)、圧縮空気を噴射してからの時間Tが所定時間t1(例えば10秒)に達したら(ステップS7;Yes)、圧縮空気の噴射を停止する(ステップS8)。
【0035】
ステップS5~ステップS8により、次回の充填に備えて、充填ノズル11に付着する凍結した水滴等を除去することができる。
【0036】
次に、本発明に係るノズル掛けの第2の実施の形態について、図6を参照しながら説明する。
【0037】
このノズル掛け21は、上部22に凹部22bを形成した点で前述のノズル掛け1と異なる。この凹部22bが存在することにより、ガス充填者は、充填ノズル11(図4参照)を傾けながら吐出管11aをノズル掛け21の中間部4の手前の空間に挿入し易くなり、その後、充填ノズル11を上昇させて吐出管11aを上部22の下方に挿入し易くなるため、ノズル掛け1と比較して、充填ノズル11(図3等参照)をノズル掛け21に掛け易くすることができる。また、上部22には、滞留した水素を抜くための貫通孔22aが穿設される。尚、図6において、ノズル掛け1と同様の構成要素については、同一の参照番号を付して説明を省略する。
【0038】
上記実施の形態では、可動係止部5に本体5bを下方向に付勢する付勢手段としてばね5cを設けたが、必ずしもばね5cを設ける必要はなく、本体5bを下方向に付勢しないで充填ノズル11を可動係止部5と凹部6及び段部7との間で保持することもできる。
【0039】
また、可動係止部5の位置や形状等も、図示例以外のものとすることもでき、充填ノズル11の握り部11bを不動状態で係止する下部3の固定係止部と、充填ノズル11の吐出管11aに当接し、吐出管11aを可動状態で係止する可動係止部を備える構成であれば、他の構成を採用することもできる。
【0040】
さらに、ノズルスイッチ8をノズル掛け1の下部3に設けたが、上部2に設けることもでき、可動係止部5に設けることもできる。また、噴出口5dからは、圧縮空気(ドライガス)に代えて不活性ガスを噴射することもできる。
【符号の説明】
【0041】
1 ノズル掛け
2 上部
2a 貫通孔
3 下部
4 中間部
5 可動係止部
5a 軸部材
5b 本体
5c ばね
5d 噴出口
5e、5f 貫通孔
6 凹部
7 段部
8 ノズルスイッチ
9 圧縮空気搬送管
10 ガス充填装置
11 充填ノズル
11a 吐出管
11b 握り部
13 充填ホース
21 ノズル掛け
22 上部
22a 貫通孔
22b 凹部
図1
図2
図3
図4
図5
図6