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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】枕及び枕における頭部の支持方法
(51)【国際特許分類】
   A47G 9/10 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
A47G9/10 S
A47G9/10 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021044462
(22)【出願日】2021-03-18
(65)【公開番号】P2021151474
(43)【公開日】2021-09-30
【審査請求日】2021-12-14
(31)【優先権主張番号】P 2020048254
(32)【優先日】2020-03-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520095843
【氏名又は名称】金澤 良明
(73)【特許権者】
【識別番号】520095865
【氏名又は名称】南堀 良明
(74)【代理人】
【識別番号】100101605
【弁理士】
【氏名又は名称】盛田 昌宏
(72)【発明者】
【氏名】金澤 良明
(72)【発明者】
【氏名】南堀 良明
【審査官】田村 惠里加
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-196021(JP,A)
【文献】登録実用新案第3191479(JP,U)
【文献】特許第6344782(JP,B1)
【文献】実公平06-001023(JP,Y2)
【文献】実開平06-046568(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2014/0183093(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47G 9/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
頭部を支持する枕であって、
柔軟な薄肉シートから形成されるとともに、所定の流動性を有する流体が所定量充填された密封容器と、
上記密封容器の下面に積層されるクッション体とを備えて構成されており、
頭部によって上記密封容器内の流体を排除して、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面所定範囲で互いに接触させることができるとともに、
上記頭部の重量を、上記密封容器と上記クッション体の双方で支持することができるように構成された、枕。
【請求項2】
上記流体は所定の液体と気体とを含み、
上記気体は、大気圧の下で、上記液体に対して体積割合で0.5~10%の割合で配合されている、請求項1に記載の枕。
【請求項3】
少なくとも20cmの直径を有する球体を上記密封容器の上方から押し付けたとき、上記球体が上記密封容器内の流体を排除して、上記密封容器の上下の内面が所定範囲で
接触させられるように構成されている、請求項1又は請求項2に記載の枕。
【請求項4】
上下の上記薄肉シートの内面は、上記球体の全表面積の20分の1~3分の1の面積で接触させられる、請求項3に記載の枕。
【請求項5】
上記密封容器を変形しない平坦面に設置して、少なくとも25cmの直径を有する球体を上記密封容器の上方から押し付けたとき、上記球体が上記密封容器内の流体を排除して、上記密封容器の上下の内面が接触させられるとともに、
上記密封容器内の容量に余裕がなくなるように構成されている、請求項1に記載の枕。
【請求項6】
上記液体の粘度が、0.5~20mPa・sである、請求項2に記載の枕。
【請求項7】
上記液体が水であり、上記気体が空気である、請求項2に記載の枕。
【請求項8】
上記流体は、0℃以下の温度範囲で凍結しない液体材料を含んで構成されている、請求 項1から請求項7のいずれか1項に記載の枕。
【請求項9】
上記密封容器内に、5~20容積%の粒子状固形物を含む、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の枕。
【請求項10】
上記粒子状固形物は、上記密封容器に充填された液体の比重以下の比重を有するとともに、上記密封容器を平坦面に載置したときの上記密封容器の厚みの5分の1以下の粒径を有する、請求項9に記載の枕。
【請求項11】
上記密封容器を収容して上下面を覆う第1の収容部と、
上記第1の収容部の上方又は下方に積層可能に連結されるとともに、クッション体を収容できる第2の収容部とを設けたカバーを備える、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の枕。
【請求項12】
上記カバーは、上記第1の収容部又は上記第2の収容部に積層可能に連結されるとともに、第2のクッション体を収容できる第3の収容部を備える、請求項11に記載の枕。
【請求項13】
上記カバーは、上記第1の収容部、上記第2の収容部又は上記第3の収容部に積層可能に連結されるとともに、第3のクッション体を収容できる第4の収容部を備える請求項12に記載の枕。
【請求項14】
上記カバーは、最大熱吸収速度(qーmax)が、0.3以上の材料から形成されている、請求項11から請求項13のいずれか1項に記載の枕。
【請求項15】
上記カバーは、上記密封容器の表面に接する部分に、上記密封容器表面との間の熱伝導を促進するコーティング層が形成されている、請求項14に記載の枕。
【請求項16】
上記密封容器は、少なくとも一の縁部において、密封容器を構成する上記薄肉シートの一部を変形させて、上記流体が充填された空間の容量を調節できる容量調節手段が設けられている、請求項1から請求項15のいずれか1項に記載の枕。
【請求項17】
枕による頭部の支持方法であって、
上記枕は、柔軟な薄肉シートから形成されるとともに、所定の流動性を有する流体が充填された密封容器と、
上記密封容器の下面に積層されるクッション体とを備えて構成されており、
少なくとも頭部によって上記密封容器内の流体を排除して、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面を所定の範囲で互いに接触させることにより、上記頭部の重量を、上記密封容器と上記クッション体の双方で支持する、枕における頭部支持方法。
【請求項18】
上記流体は、液体と気体とを含み、
上記気体は、大気圧の下で、上記液体に対して、体積割合で0.5~10%の割合で混合されているとともに、
頭部の移動によって、上記流体の流動音を発生させる、請求項17に記載の枕における頭部支持方法。
【請求項19】
接触させられた上下の上記薄肉シートの接触面の面積が上記頭部の全表面積の20分の1~3分の1である、請求項17又は請求項18に記載の枕における頭部支持方法。
【請求項20】
上記接触面において、上記頭部の重量の20%~90%を支持する、請求項19に記載の枕における頭部支持方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、枕及び枕における頭部支持方法に関する。詳しくは、就寝時等における頭部を確実に保持するとともに、寝返り等の際に頭部を容易に移動させることができ、また、頭部の動きに応じて睡眠を促進できる音を発生させることができる枕、及び枕における頭部の支持方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、種々の安眠枕が提供されている。近年は、頭部の圧力によって表面が頭部の形状に応じて変形し、この変形形態を保持しつつ頭部を均一な圧力で保持できるスポンジ状の材料(以下、低反発スポンジという。)を用いた枕や、水等の流体を充填した枕が提供されている。
【0003】
また、睡眠導入時に音楽や自然音を聞くことにより、睡眠が促進されることは良く知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2002ー159388
【文献】特開2009ー207750
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
人は、就寝中に数回~数十回寝返りを行う。上記寝返りは、睡眠にとって非常に重要な要素であるばかりでなく、その回数が少ない場合は腰痛等を引き起こすとの研究結果が報告されている。寝返りにともなって、頭部の移動も行われるが、頭部が円滑に移動できないと、寝返りを行いにくくなる。また、首周りの筋肉が緊張させられた状態で就寝したり、寝返りの際に頭部の動きが阻害されると、首や肩こりが発生しやすい。さらに、寝返りの際に頭部に大きな力が作用すると、頸ついに障害(寝違い:一種の捻挫)が生じる恐れも高まる。
【0006】
上記低反発スポンジを用いた枕では、頭部の広い範囲に均一な力を作用させるとともに、頭部を自然な姿勢に保持することができる。ところが、低反発スポンジを用いた枕では、頭部が沈み込むように保持されるとともに、この状態での保形性が高い。したがって、頭部を移動させるには、頭部の形態に応じて変形させられた上記低反発スポンジをさらに変形させなければならない。このため、頭部の移動に大きな抵抗力が発生し、寝返りの際における頭部の動きが阻害されるという問題がある。
【0007】
一方、水等の流体を一つの収容空間に充填した枕では、流体が上記収容空間内で自由に流動できるため、頭部が転がり移動する場合の抵抗がきわめて小さい。特に、移動速度が小さい場合には、抵抗がほとんど発生しない。このため、頭部を上記液体で支持する枕においては、頭の移動に抵抗がほとんどなく、頭部の動きを阻害することはない。
【0008】
ところが、頭部が移動する際の抵抗がほとんど発生しないため、少しの力が作用するだけで頭部が大きく移動してしまう。このため、頭部を所定の位置及び姿勢で安定的に保持するのが困難である。また、頭部の位置が抵抗なく変更できることから、睡眠導入期や睡眠中に不安定感を覚えることも多い。さらに、頭部の移動抵抗が小さいと、頭部が枕から外れやすいといった問題もある。
【0009】
上記特許文献1では、流体を充填する空間を区分して、頭部を安定的に保持できるように構成している。ところが、空間を区分することにより流体の移動が規制されるため、頭部が移動する際の抵抗が小さくなることはない。また、頭部が移動する(転がる)ためには、区分された上記空間の間に形成される段差を乗り越える必要があるため、頭部を移動させるための抵抗が大きく変化し、睡眠を妨げる恐れがある。
【0010】
また、特許文献2に記載されているように、音楽等に睡眠の導入効果があることは実証されている。ところが、睡眠中の音の効果については、これまで余り知られていなかった。近年研究が進み、所定の音が睡眠中の脳を刺激し、睡眠の質を高めたり、認知症に効果があることが分かってきた。
【0011】
本願発明は、上記課題を解消するために案出されたものであって、頭部を安定的に保持しつつ、頭部の動きを阻害することがなく、さらに、頭部の移動によって睡眠を促進できる音を発生させることができる枕を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
頭部を支持する枕であって、柔軟な薄肉シートから形成されるとともに、所定の流動性を有する流体が所定量充填された密封容器と、上記密封容器の下面に積層されるクッション体とを備えて構成されており、頭部によって上記密封容器内の流体を排除して、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面所定範囲で互いに接触させることができるとともに、上記頭部の重量を、上記密封容器と上記クッション体の双方で支持することができるように構成されている。
【0013】
上記密封容器を、柔軟な薄肉シートから形成するとともに、上記流体を所定量充填して構成することにより、頭部の重量によって上記密封容器内の流体が排除された状態で頭部が保持される。また、頭部の移動によって、上記流体が上記密封容器内で流動させられるため、上記密封容器を変形させるための抵抗、特に弾性的な抵抗はほとんど発生しない。したがって、上記密封容器については、従来のスポンジのような大きな移動抵抗は発生しない。
【0014】
一方、本願発明においては、頭部の重量は、上記密封容器のみによって支持されるのではなく、上記密封容器の下方に配置されたクッション体によっても直接的に支持される。すなわち、上記密封容器は、使用者の頭部の重量によって、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面が、所定範囲で互いに接触させることができるように、上記流体と上記気体とが充填されている。この構成によって、密封容器内に充填された流体から作用する圧力のみで頭部を保持するのではなく、上記流体及び上記密封容器から作用する圧力(一種の浮力)と、上記密封容器の下方に配置されるクッション体から直接的に作用する圧力の2つの力によって頭部を支持できるように構成されている。
【0015】
上記クッション体として、種々の材料から形成されたものを採用できる。たとえば、従来の枕の材料として使用されるタオルやスポンジを採用できる。また、小豆、蕎麦殻等の粒子状材料を採用できる。上記クッション体は、上記密封容器に充填された流体とは異なり、頭部を移動させるのにクッション体自体を変形させる必要があり、頭部が移動する際に抵抗が発生する。本願発明は、上記流体が充填された密封容器と上記クッション体の双方で頭部の重量を分担支持するように構成することにより、所定の位置で頭部を安定的に保持できるとともに、寝返り等に伴う頭部の移動に必要な抵抗を低減させ、睡眠を阻害することがないように構成している。
【0016】
頭部を載置したときの上記密封容器の変形量と上記クッション体の変形量は、上記密封容器の流体充填可能容量(最大充填可能容量)と、充填された流体の量と、上記密封容器の下方に配置されたクッション体の変形特性と、頭部の大きさ等によって複雑に変化する。このため、これらの多くの特性に基づいて、枕の特性を規定するのは困難である。特に、密封容器の最大充填可能容量に対する上記流体の充填率が高いと、頭部を載置した場合に、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面を、所定範囲で互いに接触させることができなくなる。また、充填率が同じ密封容器であっても、密封容器の形態によって、上下の上記薄肉シートの内面を接触できる面積が大きく変化する。
【0017】
一方、所定の直径を有する球体を押し付けたときの上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面が接触させられる領域(接触面)の面積は容易に計測できる。しかも、上記接触させられる領域の面積は、上記クッション体の変形量を直接示すものであり、これを特定することにより頭部の移動抵抗等を規定することが可能となり、枕の特性を特定することも可能となる。なお、球体における球冠の表面積は、球体の高さに比例する。すなわち、クッション体の球体に沈み込んだ高さと、沈み込んだ球体の接触表面積とは比例する。したがって、接触面積の代わりに、上記球体がクッション体に沈み込んだ高さを計測して基準とすることもできる。
【0018】
頭部を枕の上に載置したとき、上記密封容器の上下の内面が接触させられる領域の面積が大きくなるほど、上記クッション体の変形量が大きくなり、上記クッション体によって支持される重量も大きくなる。また、上記密封容器の上下の内面が接触させられる領域の面積が大きくなるほど、頭部を移動させる際の上記クッション体の変形抵抗も大きくなることは明らかである。
【0019】
人の頭部の大きさは、年齢によって異なるものの、それほど広く分布するものではない。このため、特定の半径を有する球体を人の頭部と仮定した場合、各部材(密封容器とクッション体)の変形特性が異なっていても、上記接触させられる領域の面積(あるいは、球冠の高さ)を容易に測定することが可能であり、また、上下の上記薄肉シートの内面の接触可能面積を規定することにより、所要の変形特性を有するクッション体を設定することも可能となる。すなわち、上記接触面積によって、寝心地に関する上記枕の特性を規定することが可能となる。
【0020】
本願発明では、使用状態における、すなわち、頭部を載置した状態で、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面が、所定範囲で互いに接触させることができるように、上記密封容器に上記流体が充填されている。人の頭部の大きさ及び形態は、人や年齢によって異なるが、上述したように、ほぼある範囲内に収まる。このため、使用状態における上記接触面積の範囲を容易に規定することができる。本願発明では、少なくとも20cmの直径を有する球体を頭部とみなして密封容器の上方から押し付けたとき、上記球体が上記密封容器内の流体を排除して、上記密封容器の上下の上記薄肉シートの内面が所定範囲で接触させられるように構成している。すなわち、頭部とみなした上記球体を枕の上に載置した場合、まず、上記球体によって枕内の流体が排除された分だけ上記球体が上記密封容器内に沈み込む。次に、沈んだ上記球体によって上下の上記薄肉シートの内面が接触させられる。そして、上下の上記薄肉シートの接触面積が増加するように球体が上記クッション体に沈み込む。さらに、上記球体によって排除された流体が、上記密封容器の容量に達した場合、すなわち、上記球体によって上記排除された流体が退避する容量がなくなった場合、上記密封容器内の圧力が高まり、上記球体が密封容器内へそれ以上沈み込むことがなくなる。この変形態様は、上記密封容器の上下に種々の弾性特性を有するクッション等を設けた場合にも同様に生じる。
【0021】
人の頭部の周囲の長さ(頭囲)は、帽子を選ぶ際の基準となるものであり、大人男性で平均570mmであり、また、その分布は、528mmから613mmの範囲にあるとされている。頭部が球形であると仮定すると、上記の頭囲の値から、その直径は平均値が181mmであり、168mm~195mmの範囲にあることになる。したがって、少なくとも直径20cmの直径を有する球体を、上記密封容器上に載置して押し付けたときに、上記球体が上記密封容器内の流体及び気体を排除して、上記密封容器の上下の内面が所定範囲で接触させられるように設定することにより、ほぼすべての人の頭を載置した場合に、上記密封容器の上下の内面が接触させられることになる。また、上記直径の球体を用いることにより、人の頭部が上記密封容器に載置された場合における、上記接触面積の範囲を規定することが可能となる。なお、子供の頭部のように、頭部の重量や寸法が小さい場合は、上記密封容器内の流体の浮力のみによって頭部の重量が支持される場合(すなわち、上記密封容器の上下の内面が接触しない場合)も考えられるが、本願発明において要求される流動性を確保できる上記流体の比重は、頭部の比重に比べて小さく、また、頭部の全体が上記密封容器内に沈み込むことは考えられないため、考慮する必要はないと考えられる。
【0022】
上記構成を採用することにより、頭部を、上記密封容器から作用する反力と、上記クッション体から作用する反力の双方の力によって支持することが可能となる。なお、上記接触面積は、上記密封容器の下方にクッション体を配置した場合について説明したが、下方のクッション体に加えて、上記密封容器の上方にタオル等の薄いクッション体を配置した場合も、頭部の重量は最終的には、上記密封容器と下方に配置された上記クッション体で支持されることになるため、同様の効果を得られる。
【0023】
上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面の接触面積が小さい場合、上記クッション体から作用する力が小さくなり、頭部を移動させる場合の抵抗力も小さくなる。頭部が移動するのに所要の抵抗を発生させるには、上下の上記薄肉シートの内面が接触させられる領域の面積を、少なくとも上記球体(頭部)の全表面積の20分の1以上となるように構成するのが望ましい。
【0024】
頭部の形が球体であると仮定した場合で全表面積の20分の1によって上下の上記薄肉シート内面が接触させられた場合、上記頭部は直径の約20分1の高さ分だけ、上記クッション体が沈み込むことになる。そして、頭部が転がり移動するには、上記密封容器内の流体移動と、上記クッション体の変形が必要となる。上記密封容器内の流体は容易に流動することができるため、頭部の動きによる変形抵抗はほとんど発生しない。一方、上記クッション体には変形抵抗が生じるため、頭部の移動に所定の抵抗が発生する。また、上記クッション体は流体ではなく、変形に対する固定的な抵抗が存在するため、頭部を所定の位置及び姿勢で保持する保持力が発生する。また、頭部の下面の一部が保持された状態で左右に揺れるように移動することも容易になる。すなわち、船が岩礁で座礁した場合、所定位置を保持しつつ波によって揺り動かされるような状態となる。所定位置における頭部の一種の揺れを許容することにより、所定の安定感を得られるとともに、揺れによって血行を促進する効果を期待でき、また、首等の筋肉を弛緩させて睡眠を促進する効果を期待できる。
【0025】
上記抵抗や保持力は、クッション体の変形特性に応じて変化する。しかしながら、上記クッション体に作用するのは頭部の全重量ではないため、従来のように頭部の全体を上記クッション体に直接支持させた場合に比べて小さくなり、通常の枕に比べて頭部を容易に移動させることができる。このため、寝返り等を容易に行うことも可能になるとともに、所定の位置に頭部を保持する保持力も発生する。
【0026】
頭部(球体と仮定した場合には、直径20cmの球体)の全表面積の20分の1~3分の1の領域で、より好ましくは、全表面積の10分の1~3分の1の領域で、上記密封容器の上下内面が接触させられるように構成するのが望ましい。接触面積が、頭部の全表面積の20分の1以下では、頭部の移動抵抗が小さくなって、頭部を安定支持することができなくなる。一方、接触面積が、3分の1以上になると、頭がクッション体に大きく沈み込むため(球体と仮定した頭部の直径の3分の1以上がクッション体に沈み込む)、頭部を移動させるのが困難になる恐れがある。上記の範囲に設定することにより、頭部に適度の移動抵抗を確保することが可能となる。
【0027】
上述した内容は、上記密封容器の下方にクッション体を設けた場合において、密封容器の上下の内面が接触する場合について述べたが、密封容器を変形しない平坦面に載置して、上記密封容器の上下の上記薄肉シートの内面を接触させることができる球体の直径を規定することにより、上記密封容器の特性を示すことができる。後述するように、使用者の好みによって上記クッション体が選択される場合がある。また、密封容器の特性(仕様)を規定しておき、上述した接触面積となるように、クッション体の材料や厚みを設定する場合も考えられる。このため、所定の範囲のクッション体に適合する密封容器の特性を規定する必要がある。
【0028】
たとえば、上記密封容器を、変形しない平坦面に設置して、少なくとも25cmの直径を有する球体を載置したとき、上記球体が上記密封容器内の流体及び気体を排除して、上記密封容器の上下の内面が接触させられるとともに、上記密封容器内の容量に余裕がなくなるように構成することができる。
【0029】
直径25cmの球体は、人間の頭部の約1.5倍の直径となる。上記平坦面及び上記球体は変形しないため、理論的には、密封容器の上下の内面は一点で接触させられることになる。上記基準の密封容器に、枕として構成可能なクッション体を組み合わせた場合、使用状態において、上述した面積の範囲内で、密封容器の上下内面を接触させることが可能となる。
【0030】
密封容器に液体のみ充填した場合、頭部の移動による流動音を発生させるにはかなり大きな流速を発生させる必要がある。特に、密封容器に液体のみ充填した場合は、就寝中の頭部の移動によっては、流動音はほとんど発生しない。本願発明では、上記密封容器内に、所定の流動性を有する液体と気体とを所定の割合で含む流体を充填する。
【0031】
液体と気体とを混合した流体を採用することにより、頭部の移動によって粘度の異なる流体が流動させられることになり、これら流体間に速度差が生じる。また、気体は、液体より比重が小さく、密封容器内の空間の上方内面に沿って流動させられるとともに、頭部の移動によって一種の泡となって、分割集合させられる。このため、液体と気体とを混合して、密封容器に充填することにより、所要の流動音を発生させることができる。
【0032】
就寝中の使用者に与える音の影響についての詳細な効果は実証されていない。しかしながら、海の波音や川のせせらぎ音等の自然の音が、睡眠導入によい効果をもたらすことは周知である。本願発明に係る上記密封容器によって発生する音は、上記波音や川のせせらぎ音に近く、したがって、睡眠導入の促進効果を期待できる。
【0033】
また、就寝中であっても音に対する認知機能は発揮されており、レム睡眠中の寝返り時等においては、音が脳を刺激することが実証されている。また、睡眠中の音の刺激が認知症の予防あるいは治療に効果があるとの研究結果がある。
【0034】
本願発明では、頭部の移動にともなう流動音が発生する。しかも、自己の頭部の移動によって発生する音声であり、また、液体の流動音であるため自然界の水音に近く、睡眠を阻害することはない。
【0035】
上記流体の粘度は、頭部の移動によって大きな抵抗を発生しない範囲であって、気体と混合することにより、所要の流動音を発生させるように設定することができる。たとえば、上記液体の粘度を、0.1~20mPa・sの範囲に設定することができる。また、液体の粘度を、0.5~10mPa・sに設定するのが好ましい。液体の粘度が0.1mPa・s未満であると、流動抵抗が小さくなり、発生する流動音も水の流動音と異質のものとなる。また、0.1mPa・s未満の液体は揮発性のものが多くなるため、利用するのは困難である。一方、液体の粘度が、20mPa・sを越えると、流動抵抗が大きくなり、流速も低下するため、流動音が発生しにくくなり、波音やせせらぎ音からは遠くなるため、睡眠促進効果は期待できないと考えられる。なお、20℃における水の粘度は1.0mPa・sであり、波音や川のせせらぎ音に近い流動音を発生させるには、流体として水を採用するか、水の粘度に近い粘度を有する流体を採用するのが好ましい。
【0036】
なお、流動音は、上記流体の粘度等の特性によって変化するため、使用者の好みに合わせて、所要の粘度を有する流体を選択することもできる。たとえば、上記流体として水を採用し、上記気体として空気を採用できる。また、安全性を確保できれば、流動性のある種々の液体状の油脂を採用できる。なお、気体にも粘性があるが、液体と比較すると非常に小さいため、発生する音声に気体の粘度が関係することはほとんどなく、考慮する必要はないと考えられる。
【0037】
上記流動音は、上記液体の流動抵抗と上記気体の流動抵抗(流動速度)の差からも生じるものであり、配合割合によって、流動音が変化する。たとえば、ゴム風船の中に水と空気とを充填した水ヨウヨウのように、配合割合で流動音が変化する。
【0038】
睡眠に適する流動音を発生させるには、上記気体を上記液体に対して、大気圧の下で、容積割合で0.5~10%の割合で混合したものを採用するのが好ましい。上記範囲に設定することにより、頭部の移動にともなう上記液体の流動によって、波音や川のせせらぎ音に近い音を発生させることができ、睡眠を促進できる流動音を発生することが可能となる。
【0039】
上記混合割合が0.5%未満では、流動音が小さくなりすぎて、睡眠中の人が感知しうる流動音を発生させることができない。一方、10%を越えると、密封容器の変形に上記空気の弾性の影響が出て、寝心地を低下させる恐れがある。
【0040】
砂浜に波が打ち寄せる音が、睡眠を促進させるとの種々の報告がある。砂浜に打ち寄せる波音は、砂浜の砂が流体によって流動させられる際の衝突音を含む。このため、上記密封容器内の上記流体に粒子状固形物を混合することにより、頭部の移動によって粒子間の衝突音を発生させることが可能となり、砂浜に波が打ち寄せる音に近い音を発生させることができる。
【0041】
上記密封容器内に、5~20容量%の粒子状固形物を含ませるのが好ましい。粒子状固形物の配合割合が5容量%未満の場合、効果のある衝突音を発生させることが困難である。一方、20容量%以上配合すると、流体の流動性が低下させられて、本願発明の上述した作用効果がなくなる恐れがある。
【0042】
上記粒子状固形物は、上記密封容器に充填された液体の比重以下の比重を有するとともに、上記密封容器を平坦面に載置したときの上記密封容器の厚みの5分の1以下の粒径を有するものを採用するのが好ましい。
【0043】
上記粒子状固形物として、液体の比重以下のものを採用することにより、上記粒子状固形物を上記液体に浮遊させた状態で保持することができる。このため、液体の流動にともなって、上記粒子状固形物を効果的に流動させることが可能となり、所要の衝突音を発生させることができる。また、上記粒子状固形物を浮遊させることにより、頭部の下に挟まれることがなくなり、寝心地を低下させる恐れもなくなる。また、粒子状固形物の大きさが大きいと、上記液体の流動を阻害する。また、上記密封容器を平坦面に載置したときの上記密封容器の厚みの5分の1以上の粒径を有するものを採用すると、頭部の移動による流体の流動によって、これら粒子状固形物を流動させるのが困難になる。このため、効果的な衝突音を発生させることができなくなる。
【0044】
上記粒子状固形物は、衝突によって衝突音が発生するものであれば特に限定されることはない。充填された液体より比重の軽い天然あるいは人工の無機物質等を採用することができる。たとえば、液体として水を採用した場合は、水に浮く軽石粒子や水より比重の小さい樹脂粒子を採用できる。また、硬質ゴムや硬質プラスチック等で形成された粒子を採用できる。ゴムやプラスチックは、金属等に比べて衝突の際に生じる音が小さく、また、音の周波数も小さい。このため、睡眠を阻害するような衝突音が発生しにくい。
【0045】
枕には、通常カバーが設けられる。一方、本願発明に係る枕は、密封容器とクッション体とを備えて構成される。このため、上記カバーは、上記密封容器と、上記クッション体とを収容できるように構成するのが望ましい。
【0046】
また、上記密封容器と上記クッション体とを積層して、一の収容部に収容することもできる。さらに、上記密封容器と上記クッション体とを接着等して一体化し、一のカバーに収容できるように構成してもよい。
【0047】
上記密封容器と上記クッション体とを別途形成して、使用に際して重ね合わすこともできる。この場合、たとえば、上記カバーを、上記密封容器を収容して上下面を覆う第1の収容部と、上記第1の収容部の上方又は下方に積層可能に連結される第2の収容部とを備えて構成し、これら収容部を折り重ねるように構成することができる。
【0048】
上記密封容器と上記クッション体とを別途収容できるように構成することにより、使用者の好みに応じた、上記密封容器及びクッション体を選択して、上記カバーに装着できる。たとえば、上記クッション体として、スポンジやタオル等の種々の材料から構成されたものを採用できる。また、種々の厚みのクッション体を採用することが可能となり、頭部の保持高さ等を変更して、最適な寝心地を有する枕を構成できる。
【0049】
少なくとも、上記密封容器の下方にクッション体が配置されるが、上記下方のクッション体に加えて、密封容器の上方にもクッション体を配置することができる。たとえば、上記カバーを、上記第1の収容部又は上記第2の収容部に積層可能に連結される第3の収容部を設けて構成し、この第3の収容部に第2のクッション体を収容して、上記第1又は第2の収容部に対して選択的に重ね合わすことができるように構成することができる。
【0050】
上記構成を採用することにより、上記密封容器の上下にクッション体を設けた構成の枕のみならず、上記密封容器の下方に上記第1のクッション体と上記第2のクッション体を設けた構成の枕、及び第1のクッション体のみ備える枕を構成できる。したがって、使用者の好みに応じて種々の枕を構成することが可能となる。
【0051】
また、上述したカバーを、上記密封容器及び上記クッション体を着脱可能に保持するものとすることにより、上記カバーのみを洗濯することができるため、衛生性にも優れる。
【0052】
さらに、上記カバーを、上記第1の収容部又は上記第2の収容部に積層可能に連結されるとともに、第3のクッション体を収容できる第4の収容部を添えて構成することができる。これにより、3種類のクッション体を組み合わせて種々の順で積層し、使用者の個々の好みに対応することも可能となる。
【0053】
上記密封容器に充填される流体の充填量(最大充填可能容量に対する充填割合)によって、上述した接触させられる領域の面積や、密封容器の高さが変化する。このため、上記密封容器の最大充填容量に対する流体の充填割合を変化させることにより、寝心地を変化させることが可能となり、適用可能範囲を広げることができる。たとえば、上記密封容器を、少なくとも一の縁部において、密封容器を構成する上記薄肉シートの一部を変形させて、上記流体が充填された空間の容量を調節できるように構成することができる。この構成を採用すると、上記密封容器の最大充填容量に対する流体の充填割合を調整することが可能となり、上記密封容器と上記クッション体によって分担保持される頭部重量の割合を変更することが可能となる。このため、寝心地を容易に変更することができる。
【0054】
本願発明に係る枕は、柔軟な薄肉シートから形成されるとともに、所定の流動性を有する流体が充填された密封容器と、上記密封容器の下面に積層されるクッション体とを備えて構成されている。上記枕において、少なくとも頭部によって上記密封容器内の流体が排除されて、上記密封容器を構成する上下の上記薄肉シートの内面が互いに接触させられる。すなわち、本願発明に係る枕の頭部の支持方法においては、頭部重量が上記密封容器と上記クッション体の双方によって分担支持される。この頭部の支持方法によって、従来にない寝心地を得ることができる。
【0055】
特に、上下の上記薄肉シートの内面が接触させられる領域の面積を、上記頭部の全表面積の1/20~1/3の範囲に設定することにより、頭部の移動に適度の抵抗を発生させ、所要の寝心地を得ることができる。また、所要の寝心地を得るために、上記接触面において、上記頭部の重量の20%~95%、好ましくは20~90%を支持するように構成するのが望ましい。20%より小さい場合、密封容器によって支持される割合が高くなため、載置位置を保持する機能が低くなり、十分な安定感を得ることができない。一方、90%を超えると、頭部の移動抵抗が大きくなる。上記範囲に設定することにより、寝返り等における、頭部の移動を阻害することなく、また、頭部を安定的に保持するための抵抗を得ることが可能となる。
【0056】
頭部を冷却することにより、睡眠導入が促進されることが報告されている。上記頭部を冷却するには、頭部から発生する熱をいずれかに逃がす必要がある。また、冷却効果を感じさせるには、頭部を枕に載置した際に、接触冷感を与えるのが効果的である。
【0057】
本願発明では、上記流体として水を用いることができるため、それ自体で冷却効果がある。特に、接触冷感を得ることができるように構成することにより、より睡眠を促進することができる。なお、接触冷感とは、接触した場合に冷たく感じる感覚であり、熱伝導性によるものである。
【0058】
接触冷感を高めるため、上記カバーを、最大熱吸収速度(qーmax)が、0.3以上、好ましくは0.4以上の繊維材料から形成するのが好ましい。上記値が0.3以上のものを採用すると、使用初期にひんやりしていると感じられる。また、上記値が0.4以上に設定することにより、接触初期に明確な冷たさを感じることができるとされている。たとえば、ポリエチレン繊維素材、麻素材等から形成されたカバーを採用するのが好ましい。
【0059】
本願発明では、密封容器に液体が充填されているため、熱容量の大きな液体を採用することにより、水枕と同様に冷却効果を確保することは容易である。一方、上記液体に頭部の熱をいかに移動させることができるかが問題である。上記最大熱吸収速度(qーmax)が大きな材料を採用しても、上記密封容器との間に空気層が形成されるため、顕著な効果は期待できない。
【0060】
上記課題を解決するため、上記カバーが上記密封容器の表面に接する部分に、熱伝導を促進するコーティング層を設けることができる。
【0061】
上記コーティング層は、上記密封容器の表面に密着できる材料から構成するのが好ましい。たとえば、上記最大熱吸収速度(qーmax)が大きな繊維シートに、ポリエチレンやポリアミドから形成されたコーティング層を設けることができる。上記コーティング層を設けることにより、上記カバー材料と上記密封容器の接触面積を増加させることが可能となり、接触冷感が高まるばかりでなく、上記カバーを介して頭部の熱を上記密封容器内の液体に継続的に移動させることが可能となる。このため、接触冷感を持続させることが可能となり、睡眠をより促進することができる。
【0062】
しかも、上記構成を採用することにより、接触冷感を長時間維持することができるばかりでなく、上記密封容器とカバーとを分離して洗濯することができるため、衛生性を高めることが可能となる。
【発明の効果】
【0063】
頭部の重量を、密封容器及び流体と、変形可能なクッション体とによって分担支持することにより、頭部を安定的に保持するとともに、移動抵抗を低減させ、寝返り等を容易に行うことができる。また、頭部の移動によって、上記液体の流動音を発生させ、安眠を促進できる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1】本願発明の第1の実施形態に係る枕の構造を示す外観図である。
図2】本願発明に係る枕の原理を説明するための図であり、頭部を載置していない状態を示す概略断面である。
図3】頭部を載置した場合の枕の変形の過程を説明する図である。
図4図2において、頭部を載置した状態を示す概略断面図である。
図5】本願発明に係る枕の作用を説明するための概略断面図である。
図6】密封容器の特性を設定する場合の断面図である。
図7】本願発明の第2の実施形態に係る枕の構造を示す外観図である。
図8図6に示す枕の第1の使用形態を示す断面図である。
図9図6に示す枕の第2の使用形態を示す断面図である。
図10図7に示す使用形態での頭部の支持態様を示す模式断面図である。
図11図8に示す使用形態での頭部の支持態様を示す模式断面図である。
図12】本願発明の第3の実施形態に係る枕の構造を示す外観図である。
図13】密封容器の容量を調節する手法を示す断面図である。
図14】接触冷感を得るためのカバーを装着した場合の要部断面図である。
図15図14の要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0065】
以下、本願発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本実施形態では、矩形状に形成された枕に本願発明を適用したが、円形等他の外観形態を有する枕にも適用できる。なお、枕使用者の頭部6を球体として表している。
【0066】
図1に示すように、枕101は、柔軟な薄肉シートから形成されるとともに、流体が所定量充填された密封容器2と、上記密封容器2の少なくとも下面に積層されるクッション体3とを備える。上記密封容器2及び上記クッション体3は、これら部材を収納する収容部4a,4bを設けたカバー401に収容される。そして、上記収容部4a,4bを折り重ねるようにして積層することにより利用に供される。以下の説明は、理解を容易にするため、上記カバー401を省略して説明する。
【0067】
上記密封容器2は、柔軟な矩形状の上下の薄肉シート2a,2bの縁部を接合して形成されており、内部に流体5が充填されている。容易に変形させることができれば、上記薄肉シート2a,2bの材料は限定されることはない。たとえば、種々のプラスチック製シートやゴム製シートを採用できる。また、プラスチックあるいはゴムと、繊維等から形成された複合材料シートを採用することもできる。上記薄肉シートの厚みも、頭部の重量によって容易に変形させることができる柔軟性と、頭部の重量を支持できる強度を有しておれば、特に限定されることはない。プラスチック製シートを採用する場合、0.05mm~0.3mmの厚みを有するものを採用するのが好ましい。本実施形態では、0.1mmの厚みを有するポリエチレン製シートを採用している。
【0068】
本実施形態に係る上記密封容器2は、矩形状に形成されている。一対の矩形状のプラスチック製シート2a,2bの三方の縁部を溶着した袋体を形成し、溶着されていない一方の縁部に設けられた開口部分から上記流体5を所定量充填した後に、この一方の縁部を溶着することにより、矩形袋状の密封容器2が形成される。なお、本実施形態では、上記流体5として水と空気とを混合したものを採用している。
【0069】
上記クッション体3は、種々の材料から形成できる。たとえば、タオル等の布や、スポンジ状の多孔体を採用できる。また、樹脂ビーズや、蕎麦殻等の粒子状物質を袋に充填したものを採用することもできる。
【0070】
上記密封容器2には、水と空気とを混合した流体5が充填されている。本実施形態では、上記流体5は、上記水に対して2容量%の空気8が充填されている。上記空気8の混合割合は、0.5~10%の範囲で設定できる。上記範囲に設定することにより、流体が流動する際に、上記空気8が泡となって離散集合させられ、流動音が発生する。なお、上記流体5の構成も特に限定されることはない。たとえば、流動性のある油脂と、チッソ等の不活性ガスを混合したものを流体として利用できる。所要の流動性を確保するため、上記液体として粘度が、0.5~20mPa・sである液体を採用するのが好ましい。なお、水の粘度は、常温(20℃)において、1mPa・sである。
【0071】
本願発明に係る枕においては、頭部6の重量を、上記密封容器2からの反力と、上記クッション体3からの反力によって支持するように構成する。このために、使用状態において、上記密封容器2の上下の薄肉シート2a,2bの内面を所定範囲で接触させることができるように、上記密封容器2の寸法や変形特性と、上記クッション体3の変形特性が設定される。
【0072】
本実施形態に係る枕の構造及び機能を図2図4に基づいて具体的に説明する。なお、これらの図は、理解を容易にするため、密封容器2とクッション体3とを積層しただけの枕110において、使用者の頭部6を球体と仮定するとともに、上記密封容器2上に頭部6を直接載置した場合の変形形態を示している。
【0073】
図3に、図2に示す枕110に頭部6を載せた場合の形態変化を模式的に示す。なお、実際の形態変化は、上記密封容器2の三次元の形態変化であるが、二次元の形態変化として模式的に表している。図3(a)は、頭部6を載置する前の状態、図3(b)は、上記頭部6が密封容器2に沈み込んではいるが、クッション体3にまで沈み込んでいない状態、図3(c)は、頭部6がクッション体3に沈み込んで、上記クッション体3を所定量変形させているが、密封容器2の容量に余裕がある状態、図3(d)は、密封容器2が頭部6によって排除された流体5を他の部位に退避(移動)させる容量の余裕がなくなった状態を示す。
【0074】
枕110に頭部6を載置しない状態(図3(a))では、密封容器2の下方に配置されたクッション体3に密封容器2の自重が作用し、この自重分上記クッション体3が、若干ではあるが均等に圧縮変形させられる。図3(b)に示すように、頭部6が密封容器2に沈み込むと、その分密封容器2内の流体が排除されるが、排除された流体が上記頭部6の周囲の空間に流動させられて、上方の薄肉シート2aが膨れ上がるように変形させられている。すなわち、上記形態において充填容量に余裕があれば、上記頭部6によって排除された流体5は密封容器2の周囲の厚みが増加することにより吸収される。この場合、頭部6には、上記排除された分の液体5の重量に対応した浮力が作用すると考えられる。
【0075】
図3(b)の状態から、頭部6がさらに沈み込むと、図3(c)に示すように、上記密封容器2の上下の薄肉シート2a,2bが接触させられ、頭部6が上記クッション体3に沈み込む。この状態では、上記頭部6の重量は、上記クッション体3の弾性力と、上記流体5による一種の浮力により支持される。なお、図3(c)(d)から明らかなように、上記密封容器2を介して流体5が浮力を作用させる面積(薄肉シート2(a)と頭部6の接触面積)が、上記クッション体3の変形が増加するとともに減少し、上記頭部6に作用する浮力の影響が減少する。
【0076】
さらに、図3(d)に示すように、上記頭部6によって上記密封容器2の容量に余裕がなくなると、頭部6が排除した液体5が他の部位に移動できなくなるとともに密封容器2がそれ以上変形できなくなる。上記変形が停止した後、上記密封容器2に頭部6からそれ以上の重量が作用した場合は、上記密封容器2と上記頭部6とが、上記クッション体3に対して一体的に支持されることになる。すなわち、上記密封容器2と頭部6とが、相対的な形態を保持した状態で一体的に上記クッション体3に対して沈み込む。
【0077】
本願発明に係る枕110は、上記図3(c)に示す状態、及び上記図3(d)に示す状態で使用できる。すなわち、上記密封容器2の上下の薄肉シート2a,2bが頭部6によって所定面積で接触させられるとともに上記クッション体3に沈み込んだ状態(図3(c))、及び頭部6によって排除された流体5によって上記密封容器2のそれ以上の変形が不可能となった状態(図3(d))で使用することができる。
【0078】
上記図3(c)及び図3(d)の状態では、上記頭部6の重量は、上記密封容器2と上記クッション体3の双方で支持されている。一方、上記の各状態から頭部6が横方向に移動しようとした場合、上記クッション体3を変形させるために抵抗が発生する。図5に示すように、頭部6が移動する際の抵抗(転がり移動するための抵抗)は、上記接触により変形状態にあるクッション体3において、上記変形状態からさらに変位あるいは変形する際に生じるものである。このため、上記接触させられる領域Sの変形量を特定することにより、寝返り時等における頭部の移動抵抗を推定することができる。このことからも、上記接触させられる領域Sの面積を特定することにより、枕110の変形特性を特定することができる。
【0079】
一方、移動速度が小さい場合は、密封容器2を変形させる抵抗はほとんど発生しない。したがって、頭部6を移動させる抵抗が軽減される。なお、図3(d)で示す場合も、密封容器2内の流体5が移動する抵抗が発生すると思われるが、頭部6の移動速度が小さい場合は上記流体5の流動抵抗も上記クッション体3の変形抵抗に比べて小さい。
【0080】
上述したように、上記密封容器2に上記頭部6によって排除された流体5を収容する容量に余裕がある場合、使用者の頭部6を載置すると、頭部6の下方の水が排除されて他の部分の厚みが増加するように変形させられる。この変化は、上記密封容器2の容量に余裕がなくなるまで増加する。上記厚みの変化は、上記密封容器2の充填可能容量に対する水の充填割合や、密封容器2の形態等によって変化する。しかも、上記密封容器2の少なくとも下方には、クッション体3が配置されているため、上記密封容器2の変形形態も、上記クッション体3の変形特性によって大きく変化する。このため、上記流体5を構成する水の充填割合やクッション体3の弾性等によって、上記密封容器2の変形特性を特定することは困難である。
【0081】
一方、上記クッション体3に、頭部6の重量の一部を直接支持させるには、上記密封容器2を構成する上下の薄肉シート2a,2bの内面が接触させられるように構成する必要がある。しかも、図4に示すように、上記接触させられる領域Sの面積が増加すると、クッション体3の変形量が増加し、頭部6を支持する反力も増加する。また、クッション体3の変形量や変形抵抗は比較的容易に測定できることから、クッション体3が支持する頭部の重量を求めることも可能となる。したがって、上記密封容器2と上記クッション体3が頭部を支持する力の割合を容易に求めることも可能となる。たとえば、頭部6を示す球体として透明なものを用いると、上方からの目視で接触面を確認することが可能となり、また、接触面積を容易に測定できる。
【0082】
なお、上下の上記薄肉シート2a,2bの内面が接触させられない領域においても、上記密封容器2から上記クッション体3に圧力が作用している。上下の上記薄肉シート2a,2bが接触させられていない領域においては、上記クッション体3には、上記密封容器2から圧力が作用しているとともに、その面積は上下の上記薄肉シート2a,2bが接触させられる領域Sの面積に比べて大きいため、通常の大きさの枕では、上記接触させられる領域Sの面積によって、枕の変形特性をほぼ特定できる。
【0083】
図4に、図3(c)の拡大図を示す。この図は、頭部6が、上記密封容器2とクッション体3によって支持されるとともに、上記密封容器2の容量に余裕がある状態を示す。頭部6を載置した領域から離れた部分では、上記密封容器2の重量による均一な圧力が上記クッション体3の表面に作用する。これにより、クッション体3が、図4に示すh1の高さ分沈み込んでいる。
【0084】
少なくとも、使用状態において、上下の上記薄肉シート2a,2bの内面が、上記球体6の全表面積の20分の1~3分の1の面積で接触させられるように構成するのが望ましい。接触面積が、頭部の全表面積の20分の1以下では、頭部の移動抵抗が小さくなって、頭部を安定支持することができなくなる。一方、接触面積が、3分の1以上になると、頭がクッション体に大きく沈み込むため(球体と仮定した頭部の直径の3分の1以上がクッション体に沈み込む)、頭部を移動させるのが困難になる恐れがある。上記の範囲に設定することにより、頭部に適度の移動抵抗を確保することが可能となる。
【0085】
上記頭部6から作用する力(頭部の重量)は、上記密封容器2から作用する反力と、上記クッション体3が変形させられたことによる反力とを加え合わせたものである。また、図4に示すように、密封容器2の容量に余裕がある場合は、上下の上記薄肉シート2a,2bが接触させられる部分以外の領域、すなわち、上下の上記薄肉シート2a,2bが流体5を介して離間した領域においては、上側の薄肉シート2aが上記球体に接触する部分を除き、上記クッション体3に対して、上記密封容器2の高さに対応した重量が均一に作用して圧縮変形させられている。
【0086】
上記頭部6が排除した流体の重量による力が、上記密封容器2から上記頭部6(球体)に作用する反力となるように設定するのが望ましい。すなわち、上記頭部6の重量が上記密封容器内の圧力を高めないように構成するのが望ましい。これにより、流体5の圧力は、表面が大気に接している場合と同じ状態となり、流体5の流動性が阻害されることはなく、また、密封容器2内の圧力変化が生じない。なお、頭部6が上記密封容器2に大きく沈み込まない形態では、上記密封容器2に充填される流体の充填量率を大きく設定し、容量に余裕のない状態で頭部6を支持して上記密封容器2内の圧力を高め、上記密封容器2に頭部支持力の分担割合を増加させることもできる。
【0087】
一方、上記クッション体3は、上下の上記薄肉シート2a,2bが接触させられた部分において、上記頭部6の形態に応じて変形させられている。そして、この変形に要した力が、接触させられた領域Sから反力として上記球体6に直接作用し、この反力が、上記頭部6を支持するための上記クッション体3が分担する力となる。
【0088】
なお、図4に示すように、上記密封容器2の重量に基づいて上記クッション体3に作用する力は、上記クッション体3との接触面について均一な圧力として作用し、クッション体3の厚みをh1減少させるように作用する。また、この圧力が作用する面積は、上下の上記薄肉シート2a,2bが接触させられる領域の面積に比べてはるかに大きいため、上記密封容器2の重量によるクッション体の変形量h1は、上記接触させられる領域Sからクッション体に直接作用する力による変形量h2に比べて小さい。
【0089】
図5に示すように、頭部6が転がり移動する場合、すなわち、球体が転がり移動するには、上記密封容器2と上記クッション体3の移動方向の部分を変形させなければならない。上記密封容器2内には流体5が充填されているため、頭部6の移動速度が小さい場合は、この流体5が密封容器2内で流動させられることによる変形抵抗はほとんど生じない。したがって、密封容器2の変形に伴う球体6の横方向への移動抵抗は、ほとんど生じない。一方、上記クッション体3は、弾性あるいは塑性を有しているため、球体6が転がり移動する際に変形抵抗が発生し、球体6の横方向への転がり抵抗が発生する。したがって、ごく低速で上記球体6が移動するための抵抗(転がり抵抗)は、上記クッション体3を直接変形させるための力にほぼ等しい。したがって、上記密封容器2を構成する上下の薄肉シート2a,2bの上下内面が接触させられる領域Sの面積が大きいほど、上記球体6のころがり抵抗が大きくなる。また、上記接触させられる領域Sの面積は、上記密封容器2から球体6に作用する力の分だけ小さくなるため、上記クッション体3に直接球体6を載置した場合に比べて小さくなる。これにより、上記接触させられる領域Sの面積を調節することにより、上記球体6の転がり抵抗を調節することが可能となる。
【0090】
なお、接触させられる領域Sの面積は、頭部の重量やクッション体の弾性等によって変化する。また、頭部の重量は人によって異なるが、広い範囲に分布するものではなく、ほぼ体重の10分の1と言われている。本実施形態に係る枕の目的は、最適な転がり抵抗が発生するように構成することである。したがって、頭部6の重量に係わらず、上記接触させられる領域の面積を上記球の全表面積の20分の1~3分の1の範囲、より好ましくは、10分の1~3分の1の範囲で設定するのが望ましい。なお、上記接触させられる領域Sの面積は、球体6のクッション体3への沈み込み量(沈み込み深さh2あるいはh)によっても規定することができる。使用者の頭の形態や寸法に応じて、上記クッション体3と上記密封容器2とを調整し、最適な接触面積となるように構成するのが好ましい。
【0091】
上記構成によって、所要の転がり抵抗を有する枕110を構成することができる。上記枕110における転がり抵抗は、上記クッション体3に球体6を直接載置した場合に比べて小さく、寝返り等を容易に行うことが可能となり、寝心地を高めることができる。
【0092】
さらに、本実施形態では、図2に示すように、流体5として上記水とともに、空気8が密封容器2に充填されている。本実施形態では、上記空気8の配合割合は、水と空気の混合流体の2容量%としている。
【0093】
空気8の比重は水より小さいため、上記密封容器2の内部空間の上方内面に沿って集合している。球体6(頭部)を枕101に載置すると、図5に示すように、球体6の両側に分離させられた状態となる。
【0094】
上記頭部6が転がり移動すると、上記頭部6の移動にともなう水(流体5)の流動によって、上記空気8が気泡となって離散集合させられる。このとき、上記空気8と上記水の流動速度等に差が生じるため、流動音が発生する。上記流動音は、上記水と空気8の流動速度の差によって、空気の気泡が離散集合される際に生じる振動音であると考えられる。
【0095】
上記流動音は、使用者の頭の移動によって生じるものであり、大きな流動音や、周波数の高い流動音は発生しない。このため、睡眠を阻害する恐れもない。また、上記流動音は、波音や川のせせらぎ音と同様の水と空気が混合した流動音であり、睡眠を促進する効果を期待できる。睡眠促進効果を期待できる流動音を発生させるためには、充填された流体の体積割合で0.5~10%の空気8を配合するのが好ましい。
【0096】
上述した実施形態では、密封容器2とクッション体3とを備える枕の特性について説明したが、使用者の好みに応じて種々のクッション体を採用したい場合がある。このような場合は、使用者の頭部の重量や形態に係わらず所要の範囲の接触面積を得ることができる密封容器を提供する必要がある。
【0097】
このような場合、理論的には、密封容器2の最大充填容量に対する充填量を規定することにより、密封容器2の変形特性を規定することができると思われる。ところが、接触面積Sは、密封容器2の容量のみならず、形状や大きさによって変化する。このため、流体の充填割合のみを規定したのでは、所要の特性を有する密封容器2を得ることができない場合が多い。
【0098】
密封容器2のみ提供する場合、図6に示すように、上記密封容器2を変形しない平坦面7に載置して、少なくとも25cmの直径を有する球体601を載置したとき、上記球体601が上記密封容器2内の液体及び気体を排除して、上記密封容器2の上下の内面が接触させられるとともに、密封容器2内の充填容量に余裕がなくなるように構成することができる。上記の場合、上記密封容器の上下の薄肉シート2a,2bは、1点で接触させられる。上記充填容量に余裕がなくなったかどうかは、上記球体601と上側の薄肉シート2aとの接触面積及び上記密封容器2内の圧力を計測したり、上記密封容器2の他の部位を押圧して上下の上記薄肉シートが離間するかどうかを検査することにより容易に確認できる。
【0099】
上記球体601の直径(D1=25cm)は、人間の頭部のほぼ1.5倍の直径を有する。このため、上記の密封容器2を上述のクッション体3に積層して実際の頭部を載置した場合、上記クッション体3に頭部を沈み込ませることができる。上記のように設定することにより、所定範囲の特性を有するクッション体を組み合わせた場合に、所要の接触面積を得ることができる。
【0100】
上記のように設定された密封容器について、所要の接触面積を得ることができる範囲の種々のクッション体をあらかじめ定めておき、使用者が、好みに応じてクッション体を選択し、厚み等を調節することにより、所要の特性を有する枕を構成することもできる。なお、上記球体601の直径は、採用されるクッション体の弾性特性に応じて設定することができる。また、子供用の枕を構成する場合は、上記球体601より小さい球体を設定して、これを基準に密封容器を形成し、所定範囲のクッション体を選べるように構成するのが望ましい。
【0101】
図7図11に、本願発明の第2の実施形態に係る枕102の構造の外観を示す。
【0102】
第2の実施形態に係る枕102は、上述した密封容器2に、複数のクッション体を組み合わせて使用できるように構成したものである。
【0103】
図7に示すように、上記枕102は、第1の実施形態と同様に、水と空気とを充填した密封容器2と、上記密封容器2の上方及び/又は下方に重ねて使用できる第1のクッション体3a及び第2のクッション体3bと、上記密封容器2及び上記クッション体3a,3bを収容できる布製のカバー402とを備えて構成されている。なお、上記密封容器2の構成は、上述した第1の実施形態と同様であるので説明は省略する。
【0104】
本実施形態では、厚みや変形量が異なる2種類のクッション体3a,3bが用いられる。上記クッション体3a,3bを構成する材料は特に限定されることはなく、厚みの異なるスポンジやタオルを採用できる。
【0105】
図8及び図9に、上記第2の実施形態に係る枕を使用する際の形態の断面図を示す。なお、密封容器2の構成及び機能は、第1の実施形態に係る枕101と同様であるので説明は省略する。
【0106】
上記第2の実施形態に係る枕102においては、図8に示すように、上記第1のクッション体3aと上記第2のクッション体3bの双方を、上記密封容器2の下方に積層して用いることができる。また、図9に示すように、上記密封容器2を上下から挟むようにして、用いることができる。さらに、図示しないが、上記第1のクッション体3aと上記第2のクッション体3bの一方のみを密封容器2に積層して、第1の実施形態と同様の使用形態で用いることもできる。
【0107】
図10に、図8に示す使用形態の枕102に、球体6(頭部)を載置した場合の変形形態を示す。また、図11に、図9に示す使用形態の枕102に、球体6(頭部)を載置した場合の変形状態を示す。なお、これらの図は、理解を容易にするため、カバー402を取り除いた形態を模式的に表したものである。
【0108】
図10に示す使用形態においては、密封容器2が頭部6に近接した状態に保持される。このため、頭部6の移動によって生じる密封容器2内で生じる流動音が使用者の耳にとどく大きさを大きく設定できる。また、密封容器2の下方のクッション体3a,3bの厚みが大きくなり、頭部を保持する高さ位置を高く設定できる。
【0109】
一方、図11に示す使用形態においては、頭部の保持高さは図10に示す実施形態と同様であるが、密封容器2と頭部との間に第1のクッション体3aが介挿される。上記クッション体3aによって、密封容器2に頭部の変位が直接伝わることがなくなる。また、密封容器2と頭部との間に第1のクッション体3aが介挿されるため、上記密封容器2内で発生する流動音がマイルドに聞こえるという効果を期待できる。
【0110】
上述の実施形態に係る枕によって、使用者の体格や好みに合わせて枕を調整することが可能となる。しかも、流動音の強度を調節することも可能になるため、汎用性が高まる。
【0111】
図12に、本願発明の第3の実施形態に係る枕103の外観図を示す。第3の実施形態は、上記第2の実施形態の枕102に、さらに、第3のクッション体3cを付加したものである。上記第3のクッション体3cを付加することにより、高さや流動音の調節範囲がさらに高まる。
【0112】
図13に、本願発明の第4の実施形態を示す。この実施形態は、密封容器2の変形特性を容易に変更できるように構成したものである。上述したように、頭部6の移動抵抗は、密封容器2を構成する上下の薄肉シート2a,2bの内面が接触させられる領域Sの面積によって大きく変化し、寝心地も変化する。上記接触させられる領域Sの面積は、上記密封容器2の充填可能容量と、これに充填された流体の容量の割合によって変化する。
【0113】
図13に示すように、本実施形態では、上記密封容器2の一方の縁部を所定幅で折り曲げて重ね合わせ、クリップ10によって固定している。これにより、上記密封容器2の最大充填容量が減少し、接触させられる領域Sの面積を低減させて、クッション体によって分担される頭部重量を低下させ、寝心地を変化させることが可能となる。
【0114】
図14及び図15に、本願発明の第5の実施形態を示す。
【0115】
睡眠を促進するには、頭部6を冷却するのが効果的であることはよく知られている。特に、就寝の初期に頭部6を冷却することにより、短時間に深い睡眠に誘導できる。
【0116】
本願枕は、基本的に密封容器2内に流体5を有しているため、上記流体5として水等の熱容量が大きな流体を選択するとともに、上記流体5への熱伝導を促進することにより、頭部を効果的に冷却することができる。
【0117】
通常、上記密封容器2と頭部6との間には、カバー502が設けられることが多い。上記カバー502を介して上記密封容器2内の流体に熱を伝導するには、まず、上記カバー502に熱伝導率の高い材料を選択する必要がある。上記材料として、最大熱吸収速度(qーmax)が、0.3以上、好ましくは0.4以上の繊維材料を採用するのが好ましい。上記値が0.3以上のものを採用すると、使用初期にひんやりとした接触冷感効果を感じられる。また、上記値が0.4以上のものを採用すると、接触初期に明確な冷たさを感じる接触冷感を得られる。たとえば、ポリエチレン繊維素材、麻素材等から形成されたカバーを採用するのが好ましい。上記最大熱吸収速度(qーmax)は、JIS L 1927、あるいはKES法に準じて設定することができる。
【0118】
上記最大熱吸収速度(qーmax)が大きな材料を採用しても、繊維素材の場合、上記密封容器2との接触面積が限られる。また、頭部6と上記密封容器2の間には、上記カバー502を介して一定割合の空気層が介在する。
【0119】
上記密封容器2への熱伝導性を高めるため、上記カバー502が上記密封容器2の表面に接する部分に、熱伝導を促進できる熱伝導性のシート等を設けることができる。
【0120】
図14及び図15に示す第5の実施形態では、上記カバー502の頭部接触部位に、開口部501を設け、この開口部501に、熱伝導性が高く、また接触冷感を得られる繊維材料から形成された接触層503aと、この接触層503aの下部に、熱伝導性が高く、柔軟性を有する材料から形成されたコーティング層503bを設けている。
【0121】
上記接触層503aは、ポリエチレン繊維や麻繊維等の接触冷感を得られる繊維材料から形成された不織布が採用されている。一方、上記コーティング層503bは、熱伝導性が高いポリエチレン等の樹脂材料を、上記不織布に積層して構成されている。
【0122】
上記構成を採用することにより、上記コーティング層503bと上記密封容器2との接触面積を大きく設定することが可能となる。また、上記不織布の所定深さまで上記コーティング層503bが入り込んでいるため、上記接触層503aと上記コーティング層503bとの間の熱伝導性も高い。このため、上記接触層503aに接触する頭部6から、上記密封容器2内の流体に、効率よく熱を吸収させることができる。また、上記流体として水を採用することにより、大きな熱容量を確保することが可能となり、吸熱性を一定時間持続させることも可能となる。
【0123】
また、上記密封容器2は、冷蔵庫等で冷却して用いることができるように設定するのが好ましい。一方、上記密封容器2内の流体が凍結すると、本願発明の上述した効果を発揮できない。このため、0℃以下の温度でも凍結しないような液体材料を選択するか、水を採用する場合には、グリセリン等の凍結防止成分を含ませて、0℃以下の温度でも上記流体の所定の流動性を確保できるように構成するのが好ましい。
【0124】
また、上記構成を採用することにより、接触冷感を長時間維持することができるばかりでなく、上記密封容器とカバーとを分離して洗濯することができるため、衛生性を高めることも可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
頭部を容易に移動することができるため、寝返りが打ちやすく、また、頭部の移動によって流体の流動音を発生して睡眠を促進できる枕を提供できる。
【符号の説明】
【0126】
2 密封容器
2a,2b 薄肉シート
3 クッション体
5 流体
8 気体(空気)
S 接触させられる領域
101 枕
401 カバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15