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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】遺伝子ノックアウト方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20220722BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20220722BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20220722BHJP
   C12N 15/31 20060101ALI20220722BHJP
   C12N 15/52 20060101ALI20220722BHJP
   C12M 1/00 20060101ALI20220722BHJP
   C12M 3/00 20060101ALI20220722BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20220722BHJP
   C12Q 1/6897 20180101ALI20220722BHJP
   C12Q 1/34 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C12N15/09 110
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/12
C12N15/31
C12N15/52 Z
C12M1/00 A
C12M3/00 Z
C12Q1/02
C12Q1/6897 Z
C12Q1/34
【請求項の数】 22
(21)【出願番号】P 2020529784
(86)(22)【出願日】2017-08-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-11-19
(86)【国際出願番号】 CN2017096510
(87)【国際公開番号】W WO2019028686
(87)【国際公開日】2019-02-14
【審査請求日】2020-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(73)【特許権者】
【識別番号】520047082
【氏名又は名称】博雅▲緝▼因(北京)生物科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】EDIGENE BIOTECHNOLOGY INC.
【住所又は居所原語表記】Life Science Park,Floor 2,Building 2,22 KeXueYuan Road,Changping District,Beijing 102206,China
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】特許業務法人栄光特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】魏文▲勝▼
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼一欧
(72)【発明者】
【氏名】周悦欣
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼▲鴻▼▲敏▼
(72)【発明者】
【氏名】袁▲鵬▼▲飛▼
(72)【発明者】
【氏名】▲劉▼源
【審査官】中野 あい
(56)【参考文献】
【文献】FEBS Lett, 2016 Nov 14, vol. 590, no. 23, pp. 4343-4353 (suppl. pp. 1-19)
【文献】Nat Commun, 2016 Jul 28, vol. 7, article no. 12338 (pp. 1-12)
【文献】Sci Rep, 2018 Jan 18, vol. 8, no. 1, article no. 1042 (pp. 1-9)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線形ドナーDNA、または細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができるものであるユニバーサルドナー構築体であって、前記線形ドナーDNAには、中央から両端までに順に、発現カセット;発現カセットの5’末端の、逆方向終止コドンからなる短い配列と、発現カセットの3’末端の、順方向終止コドンからなる短い配列;Cas9ヌクレアーゼによって切断できる標的部位を含む、5’末端および/または3’末端のユニバーサル標的配列;および両端の保護配列が含まれ、
前記発現カセットは、プロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含み、
前記ユニバーサル標的配列は、5’-GTACGGGGCGATCATCCACA-3’または5’-AATCGACTCGAACTTCGTGT-3’を含む、
ユニバーサルドナー構築体。
【請求項2】
線形ドナーDNA、または二本鎖線形ドナーDNAである請求項1に記載のユニバーサルドナー構築体。
【請求項3】
前記線形ドナーDNAは5’末端または3’末端のみにおいて前記ユニバーサル標的配列を有するか、または前記線形ドナーDNAは両端にそれぞれ前記ユニバーサル標的配列を有する請求項1または2に記載のユニバーサルドナー構築体。
【請求項4】
前記マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子である、請求項1~3のいずれか1項に記載のユニバーサルドナー構築体。
【請求項5】
前記保護配列の長さが5~30bpである、請求項1~4のいずれか1項に記載のユニバーサルドナー構築体。
【請求項6】
(1)下記の:
(a)Cas9ヌクレアーゼ;
(b)細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するgRNA;
(c)線形ドナーDNA、または細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができるものであるユニバーサルドナー構築体であって、前記線形ドナーDNAには、中央から両端までに順に、発現カセット;発現カセットの5’末端の、逆方向終止コドンからなる短い配列と、発現カセットの3’末端の、順方向終止コドンからなる短い配列;Cas9ヌクレアーゼによって切断できる標的部位を含む、5’末端および/または3’末端のユニバーサル標的配列;および両端の保護配列が含まれ、
前記発現カセットは、プロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含み、
前記ユニバーサル標的配列は、5’-GTACGGGGCGATCATCCACA-3’または5’-AATCGACTCGAACTTCGTGT-3’を含む、ユニバーサルドナー構築体;および
(d)線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するgRNAを細胞に導入するステップ;
(2)前記線形ドナーDNAを、非相同末端結合を介して細胞ゲノムの特定の標的部位に挿入するステップ;および
(3)前記マーカーの発現が陽性である細胞をスクリーニングするステップ
を含む、細胞(但し、ヒト受精卵を除く)内で遺伝子ノックアウトを生成する方法(但し、ヒト生体内で遺伝子ノックアウトを生成する方法を除く)
【請求項7】
前記ユニバーサルドナー構築体は、線形ドナーDNA、または二本鎖線形ドナーDNAである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記線形ドナーDNAは5’末端または3’末端のみにおいて前記ユニバーサル標的配列を有するか、または前記線形ドナーDNAは両端にそれぞれ前記ユニバーサル標的配列を有する、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するgRNAが、一種のgRNA、または細胞ゲノムの異なる標的配列を認識する複数のgRNAである、請求項6~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するgRNAがsgRNAであり、および/または、前記線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するgRNAがsgRNAである、請求項6~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するsgRNAと、前記線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するsgRNAとは、同じベクターに位置し、または、
前記細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するsgRNAと、前記線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するsgRNAとは、異なるベクターに位置する、
請求項6~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記マーカー遺伝子が抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子である、請求項6~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
薬剤耐性により細胞をスクリーニングするか、またはFACS法により細胞をスクリーニングする、請求項6~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記保護配列の長さが5~30bpである、請求項6~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
(1)Cas9ヌクレアーゼ、またはCas9ヌクレアーゼを発現することができるベクターまたは細胞;
(2)細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するgRNA;
(3)線形ドナーDNA、または細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができるものであるユニバーサルドナー構築体であって、前記線形ドナーDNAには、中央から両端までに順に、発現カセット;発現カセットの5’末端の、逆方向終止コドンからなる短い配列と、発現カセットの3’末端の、順方向終止コドンからなる短い配列;Cas9ヌクレアーゼによって切断できる標的部位を含む、5’末端および/または3’末端のユニバーサル標的配列;および両端の保護配列が含まれ、
前記発現カセットは、プロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含み、
前記ユニバーサル標的配列は、5’-GTACGGGGCGATCATCCACA-3’または5’-AATCGACTCGAACTTCGTGT-3’を含む、ユニバーサルドナー構築体;および
(4)線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するgRNA
を含む、遺伝子ノックアウトのためのシステムまたはキット。
【請求項16】
前記ユニバーサルドナー構築体は、線形ドナーDNA、または二本鎖線形ドナーDNAである、請求項15に記載のシステムまたはキット。
【請求項17】
前記線形ドナーDNAは5’末端または3’末端のみにおいて前記ユニバーサル標的配列を有するか、または前記線形ドナーDNAは両端にそれぞれ前記ユニバーサル標的配列を有する、請求項15または16に記載のシステムまたはキット。
【請求項18】
前記細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するgRNAが、一種のgRNA、または細胞ゲノムの異なる標的配列を認識する複数のgRNAである、請求項15~17のいずれか1項に記載のシステムまたはキット。
【請求項19】
前記細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するgRNAがsgRNAであり、および/または、前記線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するgRNAがsgRNAである、請求項15~18のいずれか1項に記載のシステムまたはキット。
【請求項20】
前記細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するsgRNAと、前記線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するsgRNAとは、同じベクターに位置し、または、
前記細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するsgRNAと、前記線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するsgRNAとは、異なるベクターに位置する、
請求項15~19のいずれか1項に記載のシステムまたはキット。
【請求項21】
前記マーカー遺伝子が抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子である、請求項15~20のいずれか1項に記載のシステムまたはキット。
【請求項22】
前記保護配列の長さが5~30bpである、請求項15~21のいずれか1項に記載のシステムまたはキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子編集技術に関し、特に遺伝子ノックアウト方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子編集技術は、遺伝子機能についての実験的研究を徹底的に変革した。ZFN(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)[1]、TALENs(転写活性化様エフェクターヌクレアーゼ)[2~4]、およびCRISPR/Cas9システム[5~7]の3つの主要な技術は、異なるメカニズムを利用して配列特異的な二本鎖切断(double-strand breaks,DSBs)を生成し、そして自然修復システムを誘発して配列特異性修復を完成する[8、9]。これらの技術は、機能的遺伝子研究[10]、染色体部位の動的およびリアルタイムイメージング[11、12]、疾患突然変異の修正[13]、遺伝子治療[14]などにおいて広く使用されている。CRISPR/Cas9システムは、その効率と操作の容易さのため特に人気がある。CRISPR/Cas9システムは、もともと細菌免疫システムが外来ウイルスまたはプラスミドを防御するために使用されており、II型CRISPRシステムでは、Cas9エンドヌクレアーゼがsgRNAに導かれて二本鎖DNAを切断し、ゲノムの二本鎖の切断を引き起こし、細胞のゲノム修復の不安定性を利用して修復エラー(塩基の欠失または挿入)を生成し、これによって遺伝子編集の効果を生じる。
【0003】
CRISPR/Cas9システムは、設計に基づいた、配列特異的なゲノム研究において未曾有の優勢を持っているが、CRISPR/Cas9システムによって引き起こされた遺伝子編集は、細胞集団ではまだまれなイベントであり、真に遺伝子が編集されたモノクローンを得るには煩瑣な労力が必要である。そのため、哺乳動物細胞で遺伝子ノックアウトを生成するなどの簡単な作業であっても、このシステムは依然として技術上では困難である[15]。例えば、CRISPR/Cas9システムを組み込んでCas9とsgRNAを恒久的に発現させたり[16]、Cas9を安定的に発現する細胞株を予め生成したり[17]、非相同末端結合(NHEJ)経路を増強したり[18]、特異的な薬剤によるスクリーニングが可能な単独の遺伝子を同時に破壊することによって遺伝子‐標的イベントを濃縮したり[19]、サロゲートレポーター(surrogate reporter)を使用して遺伝子ノックアウトを濃縮したり[20、21]して、さまざまな努力で遺伝子ノックアウトを生成するスキームの効率を高めている。しかしながら、さまざまな欠点により、これらの技術の広範な使用は制限されている。特に、哺乳動物細胞で複数遺伝子ノックアウトを生成することは困難な作業のままである。従来の方法を使用する時、単一の遺伝子をノックアウトする場合でも、標的遺伝子修復を含む希少なクローンに対する効率的な濃縮が欠けているため、長時間、多くて重く、かつリスクの高い作業である[22]。
【0004】
標的遺伝子の破壊が、濃縮に使用可能な表現型変化を引き起こせる場合、遺伝子ノックアウトクローンを簡単に取得できる。例えば、Hela CSPG4-/-細胞は、クロストリジウムディフィシレ(Clostridium difficile)毒素Bに対する耐性が付与された[23]。しかしながら、このストラテジーは一般化できない。従来の方法は、抗生物質耐性または蛍光タンパク質を発現するプラスミドをコトランスフェクションすることであるが[23、24]、この方法は、標的修飾を含む少数の細胞を濃縮することはない。
【0005】
外来のdsDNAフラグメントは、異なる修復メカニズムを通してDSBsを有する染色体部位に組み込まれる可能性があることは報告されている。相同組み換え(HR)による修復には、長いフランキング配列の構築が必要であり、組み込む効率は低いが、非相同末端結合(Non-Homologous end joining,NHEJ)によるDNA修復の組み込む効率[27、28]は、通常、相同組み換えによる修復の組み込む効率より高い[29]。遺伝子ノックインの目的を達成するように、CRISPR/Cas9により誘発されたNHEJを使用して外来線形ドナーDNAの挿入を媒介することは研究されている[30~34]。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【文献】Kim, Y.G., Cha, J. & Chandrasegaran, S. Hybrid restriction enzymes: zinc finger fusions to Fok I cleavage domain. Proc Natl Acad Sci U S A 93, 1156-1160 (1996).
【文献】Boch, J. et al. Breaking the code of DNA binding specificity of TAL-type III effectors. Science 326, 1509-1512 (2009).
【文献】Moscou, M.J. & Bogdanove, A.J. A simple cipher governs DNA recognition by TAL effectors. Science 326, 1501 (2009).
【文献】Miller, J.C. et al. A TALE nuclease architecture for efficient genome editing. Nat Biotechnol 29, 143-148 (2011).
【文献】Jinek, M. et al. A programmable dual-RNA-guided DNA endonuclease in adaptive bacterial immunity. Science 337, 816-821 (2012).
【文献】Mali, P. et al. RNA-guided human genome engineering via Cas9. Science 339, 823-826 (2013).
【文献】Cong, L. et al. Multiplex Genome Engineering Using CRISPR/Cas Systems. Science 339, 819-823 (2013).
【文献】Phillips, E.R. & McKinnon, P.J. DNA double-strand break repair and development. Oncogene 26, 7799-7808 (2007).
【文献】Chapman, J.R., Taylor, M.R. & Boulton, S.J. Playing the end game: DNA double-strand break repair pathway choice. Mol Cell 47, 497-510 (2012).
【文献】Gilbert, L.A. et al. CRISPR-mediated modular RNA-guided regulation of transcription in eukaryotes. Cell 154, 442-451 (2013).
【文献】Ma, H. et al. Multicolor CRISPR labeling of chromosomal loci in human cells. Proc Natl Acad Sci U S A 112, 3002-3007 (2015).
【文献】Chen, B. et al. Dynamic imaging of genomic loci in living human cells by an optimized CRISPR/Cas system. Cell 155, 1479-1491 (2013).
【文献】Li, H.L., Gee, P., Ishida, K. & Hotta, A. Efficient genomic correction methods in human iPS cells using CRISPR-Cas9 system. Methods (2015).
【文献】Savic, N. & Schwank, G. Advances in therapeutic CRISPR/Cas9 genome editing. Translational research : the journal of laboratory and clinical medicine 168, 15-21 (2016).
【文献】Miyaoka, Y. et al. Isolation of single-base genome-edited human iPS cells without antibiotic selection. Nat Methods 11, 291-293 (2014).
【文献】Fu, Y. et al. High-frequency off-target mutagenesis induced by CRISPR-Cas nucleases in human cells. Nat Biotechnol 31, 822-826 (2013).
【文献】Zhou, Y. et al. High-throughput screening of a CRISPR/Cas9 library for functional genomics in human cells. Nature 509, 487-491 (2014).
【文献】Yu, C. et al. Small Molecules Enhance CRISPR Genome Editing in Pluripotent Stem Cells. Cell Stem Cell 16, 142-147 (2015).
【文献】Liao, S., Tammaro, M. & Yan, H. Enriching CRISPR-Cas9 targeted cells by co-targeting the HPRT gene. Nucleic Acids Res 43, e134 (2015).
【文献】Kim, H. et al. Surrogate reporters for enrichment of cells with nuclease-induced mutations. Nat Methods 8, 941-943 (2011).
【文献】Ramakrishna, S. et al. Surrogate reporter-based enrichment of cells containing RNA-guided Cas9 nuclease-induced mutations. Nature communications 5, 3378 (2014).
【文献】Wang, T., Wei, J.J., Sabatini, D.M. & Lander, E.S. Genetic screens in human cells using the CRISPR-Cas9 system. Science 343, 80-84 (2014).
【文献】Yuan, P. et al. Chondroitin sulfate proteoglycan 4 functions as the cellular receptor for Clostridium difficile toxin B. Cell Res 25, 157-168 (2015).
【文献】Yang, J. et al. ULtiMATE System for Rapid Assembly of Customized TAL Effectors. PLoS One 8, e75649 (2013).
【文献】Perez, E.E. et al. Establishment of HIV-1 resistance in CD4+ T cells by genome editing using zinc-finger nucleases. Nat Biotechnol 26, 808-816 (2008).
【文献】Kim, H.J., Lee, H.J., Kim, H., Cho, S.W. & Kim, J.S. Targeted genome editing in human cells with zinc finger nucleases constructed via modular assembly. Genome Res 19, 1279-1288 (2009).
【文献】Lackner, D.H. et al. A generic strategy for CRISPR-Cas9-mediated gene tagging. Nature communications 6, 10237 (2015).
【文献】Auer, T.O. & Del Bene, F. CRISPR/Cas9 and TALEN-mediated knock-in approaches in zebrafish. Methods (2014).
【文献】Li, K., Wang, G., Andersen, T., Zhou, P. & Pu, W.T. Optimization of Genome Engineering Approaches with the CRISPR/Cas9 System. PLoS One 9, e105779 (2014).
【文献】Orlando, S.J. et al. Zinc-finger nuclease-driven targeted integration into mammalian genomes using donors with limited chromosomal homology. Nucleic Acids Res 38, e152 (2010).
【文献】Sakuma, T., Nakade, S., Sakane, Y., Suzuki, K.T. & Yamamoto, T. MMEJ-assisted gene knock-in using TALENs and CRISPR-Cas9 with the PITCh systems. Nat Protoc 11, 118-133 (2016).
【文献】Nakade, S. et al. Microhomology-mediated end-joining-dependent integration of donor DNA in cells and animals using TALENs and CRISPR/Cas9. Nature communications 5, 5560 (2014).
【文献】Cristea, S. et al. In vivo cleavage of transgene donors promotes nuclease-mediated targeted integration. Biotechnol Bioeng 110, 871-880 (2013).
【文献】Chen, F. et al. High-frequency genome editing using ssDNA oligonucleotides with zinc-finger nucleases. Nat Methods 8, 753-755 (2011).
【文献】Potter, C.J. & Luo, L. Splinkerette PCR for mapping transposable elements in Drosophila. PLoS One 5, e10168 (2010).
【文献】Uren, A.G. et al. A high-throughput splinkerette-PCR method for the isolation and sequencing of retroviral insertion sites. Nat Protoc 4, 789-798 (2009).
【文献】Yin, B. & Largaespada, D.A. PCR-based procedures to isolate insertion sites of DNA elements. Biotechniques 43, 79-84 (2007).
【文献】Peng, J., Zhou, Y., Zhu, S. & Wei, W. High-throughput screens in mammalian cells using the CRISPR-Cas9 system. FEBS J 282, 2089-2096 (2015).
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ドナー構築体、遺伝子ノックアウト方法、そのシステムおよびキットを提供する。本発明の遺伝子ノックアウト方法は、前記ドナー構築体に含まれるマーカー遺伝子を使用して、遺伝子がノックアウトされた細胞を濃縮し、配列特異的なヌクレアーゼによる遺伝子ノックアウトの生成効率を向上させる。
【0008】
本発明は一態様において、線形ドナーDNA、または細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができるものであるドナー構築体であって、前記線形ドナーDNAには、中央から両端までに順に、発現カセット;発現カセットの5’末端の、逆方向終止コドンからなる短い配列と、発現カセットの3’末端の、順方向終止コドンからなる短い配列;前記配列特異的なヌクレアーゼによって切断できる標的部位を含む、5’末端および/または3’末端の標的配列;および両端の保護配列が含まれ、前記発現カセットは、プロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含む、ドナー構築体を提供する。
【0009】
本発明において、前記線形ドナーDNAは二本鎖線形ドナーDNAである。
【0010】
好ましい実施形態では、前記ドナー構築体は線形ドナーDNAである。
【0011】
一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。
【0012】
もう一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。
【0013】
もう一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。
【0014】
もう一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼはNgAgoヌクレアーゼである。
【0015】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは5’末端または3’末端のみにおいて標的配列を有する。
【0016】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは両端にそれぞれ標的配列を有する。
【0017】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAの両端の標的配列は同じである。
【0018】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAの両端の標的配列は異なる。更なる実施形態では、前記線形ドナーDNAの両端の異なる標的配列は同じ遺伝子に由来する。その他のさらなる実施形態では、前記線形ドナーDNAの両端の異なる標的配列は異なる遺伝子に由来する。
【0019】
好ましい実施形態では、前記マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子である。
【0020】
好ましい実施形態では、保護配列の長さは5~30bp、もっとも好ましくは20bpである。
【0021】
本発明はもう一態様において、下記のステップを含む、細胞内で遺伝子ノックアウトを生成する方法を提供する:
(1)細胞ゲノムの特定の標的部位を切断できる配列特異的ヌクレアーゼとドナー構築体を細胞に導入するステップ;
前記ドナー構築体は線形ドナーDNA、または細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができるものであり、前記線形ドナーDNAには、中央から両端までに順に、発現カセット;発現カセットの5’末端の、逆方向終止コドンからなる短い配列と、発現カセットの3’末端の、順方向終止コドンからなる短い配列;前記配列特異的ヌクレアーゼによって切断できる標的部位を含む、5’末端および/または3’末端のユニバーサル標的配列;および両端の保護配列が含まれ、前記発現カセットは、プロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含み、
前記線形ドナーDNAを、非相同末端結合を介して細胞ゲノムの特定の標的部位に挿入する;
(2)前記マーカーの発現が陽性である細胞をスクリーニングするステップ。
【0022】
本発明において、前記線形ドナーDNAは二本鎖線形ドナーDNAである。
【0023】
好ましい実施形態では、前記ドナー構築体は線形ドナーDNAである。
【0024】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは5’末端または3’末端のみにおいて標的配列を有する。
【0025】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは両端にそれぞれ標的配列を有する。
【0026】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAの両端の標的配列は同じである。
【0027】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAの両端の標的配列は異なる。更なる実施形態では、前記線形ドナーDNAの両端の異なる標的配列は同じ遺伝子に由来する。その他のさらなる実施形態では、前記線形ドナーDNAの両端の異なる標的配列は異なる遺伝子に由来する。
【0028】
一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。
【0029】
もう一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。
【0030】
もう一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。
【0031】
好ましい実施形態では、前記方法は、細胞ゲノムの特定の標的部位を認識するガイドRNA(gRNA)を細胞に導入することをさらに含み、線形ドナーDNAの標的配列は、gRNAによって認識される標的部位を含む。
【0032】
一部の実施形態では、前記gRNAはsgRNAである。
【0033】
より好ましい実施形態では、前記方法は、細胞ゲノムの単一の特定の標的部位を認識するsgRNAを細胞に導入することをさらに含み、前記sgRNAによって認識される標的部位を含む標的配列は、線形ドナーDNAの5’末端および/または3’末端に位置する。一部の実施形態では、前記sgRNAによって認識される標的部位を含む標的配列は、細胞ゲノムの単一の遺伝子に由来する。一部の実施形態では、前記sgRNAによって認識される標的部位を含む標的配列は、細胞ゲノムの2つ以上の遺伝子のコンセンサス配列であり、その条件として、前記コンセンサス配列と、前記2つ以上の遺伝子のいずれか1つの、コンセンサス配列に対応する位置の配列とは、1つ以下の塩基の違いを有する。
【0034】
もう一部のより好ましい実施形態では、前記方法は、細胞ゲノムの1つの遺伝子上の2つの特定の標的部位を認識する2つのsgRNAを細胞に導入することをさらに含み、前記2つのsgRNAによって認識される2つの標的部位をそれぞれ含む2つの標的配列はそれぞれ2つの線形ドナーDNAに位置するか、または、それぞれ同一の線形ドナーDNAの両端に位置する。
【0035】
もう一部のより好ましい実施形態では、前記方法は、細胞ゲノムの2つ以上の特定の標的部位を認識する2つ以上のsgRNAを細胞に導入することをさらに含み、前記2つ以上のsgRNAによって認識される2つ以上の標的部位をそれぞれ含む2つ以上の標的配列はそれぞれ同一の線形ドナーDNAの両端、または異なる線形ドナーDNAに位置する。前記細胞ゲノムの2つ以上の特定の標的部位はそれぞれ異なる遺伝子に位置する。
【0036】
もう一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼはNgAgoヌクレアーゼである。
【0037】
好ましい実施形態では、前記方法は、細胞ゲノムの特定の標的部位を認識するガイドDNA(gDNA)を細胞に導入することをさらに含み、線形ドナーDNAの標的配列は、gDNAによって認識される標的部位を含む。
【0038】
本発明では、前記遺伝子ノックアウトは、単一遺伝子ノックアウトまたは複数遺伝子ノックアウトであってもよい。前記複数遺伝子ノックアウトは、2つまたはそれ以上の遺伝子のノックアウトであり、例えば、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の遺伝子のノックアウトである。
【0039】
好ましい実施形態では、前記マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子である。
【0040】
一つの好ましい実施形態では、薬剤耐性により細胞をスクリーニングする。
【0041】
もう一つの好ましい実施形態では、FACS法により細胞をスクリーニングする。
【0042】
好ましい実施形態では、保護配列の長さが5~30bpであり、もっとも好ましくは20bpである。
【0043】
本発明はもう一態様において、細胞ゲノムの特定の標的部位を切断できる配列特異的ヌクレアーゼとドナー構築体を含む、遺伝子ノックアウトのためのシステムまたはキットを提供し、
前記ドナー構築体は線形ドナーDNA、または細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができるものであり、前記線形ドナーDNAには、中央から両端までに順に、発現カセット;発現カセットの5’末端の、逆方向終止コドンからなる短い配列と、発現カセットの3’末端の、順方向終止コドンからなる短い配列;前記配列特異的ヌクレアーゼによって切断できる標的部位を含む、5’末端および/または3’末端の標的配列;および両端の保護配列が含まれ、前記発現カセットは、プロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含む。
【0044】
本発明では、線形ドナーDNAは二本鎖線形ドナーDNAである。
【0045】
一部の実施形態では、前記ドナー構築体は線形ドナーDNAである。もう一部の実施形態では、前記ドナー構築体は環状ドナー構築体であり、しかも細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができる。
【0046】
一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼはジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である。
【0047】
もう一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼは転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)である。
【0048】
もう一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼはCas9ヌクレアーゼである。
【0049】
好ましい実施形態では、前記システムまたはキットは、細胞ゲノムの特定の標的部位を認識するsgRNAをさらに含み、線形ドナーDNAの標的配列は、前記sgRNAによって認識される標的部位を含む。
【0050】
一部の実施形態では、gRNAはsgRNAである。
【0051】
もう一部の実施形態では、前記配列特異的ヌクレアーゼはNgAgoヌクレアーゼである。
【0052】
好ましい実施形態では、前記システムまたはキットは、細胞ゲノムの特定の標的部位を認識するgDNAを含み、線形ドナーDNAの標的配列は、前記gDNAによって認識される標的部位を含む。
【0053】
好ましい実施形態では、前記マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子である。
【0054】
好ましい実施形態では、保護配列の長さは5~30bp、もっとも好ましくは20bpである。
【0055】
本発明では、前記切断は、二本鎖切断(DSBs)を生成することである。
【0056】
本発明はもう一態様において、線形ドナーDNA、または細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができるものであるユニバーサルドナー構築体であって、前記線形ドナーDNAには、中央から両端までに順に、発現カセット;発現カセットの5’末端の、逆方向終止コドンからなる短い配列と、発現カセットの3’末端の、順方向終止コドンからなる短い配列;Cas9ヌクレアーゼによって切断できる標的部位を含む、5’末端および/または3’末端のユニバーサル標的配列;および両端の保護配列が含まれ、
前記発現カセットは、プロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含み、
前記ユニバーサル標的配列は、遺伝子ノックアウトされる細胞のゲノムには存在しない、ユニバーサルドナー構築体を提供する。
【0057】
一部の実施形態では、前記ユニバーサルドナー構築体は線形ドナーDNAである。
【0058】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは二本鎖線形ドナーDNAである。
【0059】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは5’末端または3’末端のみにおいて前記ユニバーサル標的配列を有する。
【0060】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは両端にそれぞれ前記ユニバーサル標的配列を有する。
【0061】
好ましい実施形態では、前記マーカー遺伝子は抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子である。
【0062】
好ましい実施形態では、保護配列の長さが5~30bpであり、もっとも好ましくは20bpである。
【0063】
好ましい実施形態では、前記ユニバーサルドナー構築体のユニバーサル標的配列は、5’-GTACGGGGCGATCATCCACA-3’(SEQ ID NO.1)または5’-AATCGACTCGAACTTCGTGT-3’(SEQ ID NO.2)を含む。
【0064】
本発明はもう一態様において、
(1)下記の:
(a)Cas9ヌクレアーゼ;
(b)細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するgRNA;
(c)線形ドナーDNA、または細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができるものであるユニバーサルドナー構築体であって、前記線形ドナーDNAには、中央から両端までに順に、発現カセット;発現カセットの5’末端の、逆方向終止コドンからなる短い配列と、発現カセットの3’末端の、順方向終止コドンからなる短い配列;Cas9ヌクレアーゼによって切断できる標的部位を含む、5’末端および/または3’末端のユニバーサル標的配列;および両端の保護配列が含まれ、
前記発現カセットは、プロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含み、
前記ユニバーサル標的配列は、遺伝子ノックアウトされる細胞のゲノムには存在しない、ユニバーサルドナー構築体;および
(d)線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するgRNA
を細胞に導入するステップ;
(2)前記線形ドナーDNAを、非相同末端結合を介して細胞ゲノムの特定の標的部位に挿入するステップ;および
(3)前記マーカーの発現が陽性である細胞をスクリーニングするステップ
を含む、細胞内で遺伝子ノックアウトを生成する方法を提供する。
【0065】
一部の実施形態では、前記ドナー構築体は、線形ドナーDNAである。
【0066】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは二本鎖線形ドナーDNAである。
【0067】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは5’末端または3’末端のみにおいて前記ユニバーサル標的配列を有する。
【0068】
一部の実施形態では、前記線形ドナーDNAは両端にそれぞれ前記ユニバーサル標的配列を有する。
【0069】
一部の実施形態では、細胞ゲノムの特定の標的配列を認識する前記gRNAが、一種のgRNA、または細胞ゲノムの異なる標的配列を認識する複数のgRNAであり、例えば、細胞ゲノムの異なる標的配列を認識する2つ、3つ、またはそれ以上のgRNAであってもよい。前記異なる標的配列は、同一の遺伝子に位置してもよく、異なる遺伝子に位置してもよい。前記異なる標的配列はそれぞれ異なる遺伝子に位置する場合、複数の遺伝子のノックアウトが実現できる。
【0070】
そのため、本発明では、前記遺伝子ノックアウトは、単一遺伝子ノックアウトまたは複数遺伝子ノックアウトであってもよい。複数遺伝子ノックアウトは、2つまたはそれ以上の遺伝子のノックアウトであり、例えば、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の遺伝子のノックアウトである。
【0071】
一部の実施形態では、細胞ゲノムの特定の標的配列を認識する前記gRNAがsgRNAである。
【0072】
一部の実施形態では、線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識する前記gRNAがsgRNAである。
【0073】
一部の実施形態では、細胞ゲノムの特定の標的配列を認識する前記sgRNAと、線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識する前記sgRNAとは、同じベクターに位置する。
【0074】
一部の実施形態では、細胞ゲノムの特定の標的配列を認識する前記sgRNAと、線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識する前記sgRNAとは、異なるベクターに位置する。
【0075】
好ましい実施形態では、前記マーカー遺伝子が抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子である。
【0076】
一つの好ましい実施形態では、薬剤耐性により細胞をスクリーニングする。
【0077】
もう一つの好ましい実施形態では、FACS法により細胞をスクリーニングする。
【0078】
好ましい実施形態では、保護配列の長さが5~30bpであり、もっとも好ましくは20bpである。
【0079】
好ましい実施形態では、前記ユニバーサルドナー構築体のユニバーサル標的配列は、5’-GTACGGGGCGATCATCCACA-3’(SEQ ID NO.1)または5’-AATCGACTCGAACTTCGTGT-3’(SEQ ID NO.2)を含む。
【0080】
本発明はもう一態様において、
(1)Cas9ヌクレアーゼ、またはCas9ヌクレアーゼを発現することができるベクターまたは細胞;
(2)細胞ゲノムの特定の標的配列を認識するgRNA;
(3)線形ドナーDNA、または細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができるものであるユニバーサルドナー構築体であって、前記線形ドナーDNAには、中央から両端までに順に、発現カセット;発現カセットの5’末端の、逆方向終止コドンからなる短い配列と、発現カセットの3’末端の、順方向終止コドンからなる短い配列;Cas9ヌクレアーゼによって切断できる標的部位を含む、5’末端および/または3’末端のユニバーサル標的配列;および両端の保護配列が含まれ、
前記発現カセットは、プロモーターにより駆動されるマーカー遺伝子を含み、
前記ユニバーサル標的配列は、遺伝子ノックアウトされる細胞のゲノムには存在しない、ユニバーサルドナー構築体;および
(4)線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識するgRNA
を含む、遺伝子ノックアウトのためのシステムまたはキットを提供する。
【0081】
一部の実施形態では、線形ドナーDNAは二本鎖線形ドナーDNAである。
【0082】
一部の実施形態では、前記ドナー構築体は線形ドナーDNAである。
【0083】
もう一部の実施形態では、前記ドナー構築体は環状ドナー構築体であり、しかも細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成することができる。
【0084】
一部の実施形態では、細胞ゲノムの特定の標的配列を認識する前記gRNAが、一種のgRNA、または細胞ゲノムの異なる標的配列を認識する複数のgRNAであり、例えば、細胞ゲノムの異なる標的配列を認識する2つ、3つ、またはそれ以上のgRNAであってもよい。前記異なる標的配列は、同一の遺伝子に位置してもよく、異なる遺伝子に位置してもよい。前記異なる標的配列はそれぞれ異なる遺伝子に位置する場合、複数の遺伝子のノックアウトが実現できる。
【0085】
一部の実施形態では、細胞ゲノムの特定の標的配列を認識する前記gRNAがsgRNAである。
【0086】
一部の実施形態では、線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識する前記gRNAがsgRNAである。
【0087】
一部の実施形態では、細胞ゲノムの特定の標的配列を認識する前記gRNAと、線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識する前記gRNAとは、同じベクターに位置する。
【0088】
一部の実施形態では、細胞ゲノムの特定の標的配列を認識する前記gRNAと、線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列を認識する前記gRNAとは、異なるベクターに位置する。
【0089】
好ましい実施形態では、前記マーカー遺伝子が抗生物質耐性遺伝子または蛍光タンパク質遺伝子である。
【0090】
好ましい実施形態では、保護配列の長さが5~30bpであり、もっとも好ましくは20bpである。
【0091】
本発明では、前記切断は、二本鎖切断(DSBs)を生成することである。
【0092】
好ましい実施形態では、前記ユニバーサルドナー構築体のユニバーサル標的配列は、5’-GTACGGGGCGATCATCCACA-3’または5’-AATCGACTCGAACTTCGTGT-3’を含む。
【0093】
本発明は、マーカー遺伝子を、遺伝子ノックアウトされた切断標的部位に挿入することにより、マーカーを介して遺伝子ノックアウトを生成する希少クローンを効果的に濃縮することができる。本発明は、sgRNAsの設計が困難な遺伝子の標的化、およびいくつかの遺伝子を同時に標的化してノックアウトする必要がある場合に特に有用である。この方法は、DNA二本鎖切断を生成する様々な遺伝子編集システム、特にCRISPRシステムの、遺伝子とその機能の生物医学分野での幅広い応用に寄与する。
【図面の簡単な説明】
【0094】
図1】ピューロマイシンによるスクリーニングを介してHeLa細胞のANTXR1遺伝子上にCas9/gRNA標的突然変異を含む細胞を濃縮するドナー設計と実験的検証を示す図である。(a)は、ANTXR1遺伝子上のsgRNA-またはpgRNA標的部位の、NHEJに基づいた線形ドナーのノックインの概略図であり、ゲノム部位と線形ドナーにはgRNAの切断部位sg1およびsg2gがあり、終止コドンは***で標識され、矢印はリーディングフレームの方向を指す。(b)は、ドナー(gRNA添加または非添加)でトランスフェクションした細胞のピューロマイシン耐性クローンのMTT染色を示す図である。(c)は、sgRNA/pgRNA(それらの対応するドナーを添加(暗いバー)または非添加(明るいバー))でトランスフェクションしたHeLa細胞のANTXR1ノックアウト率の比較を示す図であり、ANTXR1ノックアウト率は、PA/LFnDTA耐性を有する細胞の百分比として表される。PA/LFnDTA耐性分析を行う前に、ピューロマイシン(1μg/ml)で細胞をスクリーニングした。エラーバーはs.d.(n=3)、t-test、**P<0.01、***P<0.001を表す。(d)は、異なるgRNAsおよびそのドナーを使用したANTXR1ノックアウト細胞の濃縮のまとめを示す図である。
図2】ドナー媒介のピューロマイシン耐性スクリーニングによる、混合コロニーおよびモノクローンにおけるANTXR1ノックアウト細胞の濃縮の実験的検証を示す図である。(a)は、PA/LFnDTA処理を使用したまたは使用しなかった、異なるHeLa細胞群の画像である。sgRNAまたはpgRNAによりそれらに対応する線形ドナーの添加もしくは非添加で、トランスフェクションして混合細胞を取得し、スケールは200μmである。(b)は、ピューロマイシン耐性(purо+)を有するモノクローンの線形ドナーが組み込まれたANTXR1部位のPCR検証を示す図であり、クローンは、sgRNA2ANTXR1/DonorANTXR1-sg2(左)またはpgRNAANTXR1/DonorANTXR1-pg(右)でトランスフェクションされたHeLa細胞から得られた。
図3】ピューロマイシンスクリーニングによりHeLa細胞でのHEBGF破壊イベントを濃縮したドナー設計と実験的検証を示す図である。(a)は、HBEGF遺伝子を標的とするドナー設計を示す図である。(b)は、線形ドナーDonorHBEGF-sg1(Cas9/sgRNA添加または非添加)でトランスフェクションした細胞におけるピューロマイシン耐性クローンのMTT染色を示す図である。(c)は、DT(40ng/ml)処理を使用したまたは使用しなかった、異なるHeLa細胞群の画像である。sgRNA(sgRNA1HBEGF)(その対応する線形ドナー(DonorHBEGF-sg1)添加または非添加)でトランスフェクションして混合細胞を取得し、スケールは200μmである。(d)は、sgRNA(sgRNA1HBEGF)、Cas9を発現するプラスミド、およびピューロマイシン耐性遺伝子(明るいバー)を含むレポータープラスミド、または、sgRNA、Cas9を発現するプラスミド、および線形ドナー(DonorHBEGF-sg1)(暗いバー)でトランスフェクションしたHeLa細胞のHBEGFノックアウト率を示す図であり、HBEGFノックアウト率は、DT耐性を有する細胞に対する百分比として表される。DT耐性分析を行う前に、ピューロマイシン(1μg/ml)で細胞をスクリーニングした。エラーバーはs.d.(n=3)、t-test、***P<0.001を表す。
図4】EGFPによりHEK293T細胞でのHEBGF破壊イベントを濃縮したドナー設計と実験的検証を示す図である。(a)は、HBEGF遺伝子を標的とするドナー設計を示す図である。(b)は、DT(40ng/ml)処理を使用したまたは使用しなかった、異なるHEK293T細胞群の画像である。sgRNA(sgRNA2HBEGF)(その対応する線形ドナー(DonorHBEGF-sg2)添加または非添加)でトランスフェクションして混合細胞を取得し、スケールは200μmである。(c)mCherryを発現するsgRNA(sgRNA2HBEGF)プラスミド、およびCas9を発現するプラスミド(明るいバー)、または、sgRNA、Cas9を発現するプラスミド、および線形ドナー(DonorHBEGF-sg2、EGFP)(暗いバー)でトランスフェクションしたHEK293T細胞のHBEGFノックアウト率を示す図であり、HBEGFノックアウト率は、DT耐性を有する細胞に対する百分比として表される。DT耐性分析を行う前に、FACSで細胞をスクリーニングした。エラーバーはs.d.(n=3)、t-test、***P<0.05を表す。
図5】ピューロマイシンによるスクリーニングを介してHeLaOC細胞のANTXR1破壊イベントを濃縮するドナー設計と実験的検証を示す図である。(a)は、ANTXR1を標的とするドナー設計である。ドナーは、5’末端に一つのsgRNA切断部位(DonorANTXR1-sg1またはDonorANTXR1-sg2)を含み、または、両端に二つのgRNAs(DonorANTXR1-pg)を含む。(b)は、ドナー(gRNA添加または非添加)でトランスフェクションした細胞のピューロマイシン耐性クローンのMTT染色を示す図である。(c)は、PA/LFnDTA処理を使用したまたは使用しなかった、異なるHeLaOC細胞群の画像である。sgRNAまたはpgRNAにより、それらに対応する線形ドナーの添加もしくは非添加でトランスフェクションして混合細胞を取得し、スケールは200μmである。(d)は、sgRNAsによりそれらの対応するドナーの添加または非添加でトランスフェクションしたHeLaOC細胞のANTXR1ノックアウト率を示す図であり、ANTXR1ノックアウト率は、PA/LFnDTA耐性を有する細胞の百分比として表される。PA/LFnDTA耐性分析を行う前に、ピューロマイシン(1μg/ml)で細胞をスクリーニングした。エラーバーはs.d.(n=3)、t-test、***P<0.001を表す。(e)は、ピューロマイシン耐性モノクローンの線形ドナーが組み込まれたANTXR1部位のPCR検証を示す図である。(f)は、異なるgRNAsおよびそのドナーを使用したANTXR1ノックアウト細胞の濃縮のまとめを示す図である。
図6】HeLaOC細胞でのsplinkerette PCR(spPCR)分析によるドナー挿入のオフターゲット評価を示す図である。(a)は、spPCR分析用のアダプター(adaptоr)とプライマーの設計を示す図である。Splink1およびSplink2プライマーはアダプター配列とマッチングし、プライマーR1およびR2は、線形ドナー配列とマッチングした。(b)は、spPCR反応結果を示す図である。
図7】ピューロマイシンによるスクリーニングを介してHeLaOC細胞のHBEGF破壊イベントを濃縮するドナー設計と実験的検証を示す図である。(a)は、HBEGFを標的とするドナー設計である。ドナーは、5’末端に一つのsgRNA切断部位(DonorHBEGF-sg1またはDonorHBEGF-sg2)を含み、または、両端に二つのgRNAs(DonorHBEGF-pg)を含む。(b)は、ドナー(sgRNA/pgRNA添加または非添加)でトランスフェクションした細胞のピューロマイシン耐性クローンのMTT染色を示す図である。(c)は、ピューロマイシン耐性モノクローンの線形ドナーが組み込まれたHBEGF部位のPCR検証を示す図である。(d)は、異なるgRNAsおよびそのドナーを使用したHBEGFノックアウト細胞の濃縮のまとめを示す図である。
図8】HeLaOC細胞において、1ステップで2つ以上の遺伝子ノックアウトを生成したドナー設計と実験的検証を示す図である。(a)は、PSEN1およびPSEN2遺伝子上のsgRNA-またはpgRNA標的部位での、NHEJに基づいた線形ドナーのノックインの概略図である。(b~c)は、ゲノム内のPSEN1およびPSEN2の一部のコード配列であり、sgRNAコード領域(下線が付いている)および突然変異対立遺伝子を含むシーケンシング分析を示す図である。クローン1(b)は、pgRNAPSEN1+PSEN2/DonorPSEN1+PSEN2でトランスフェクションしたHeLaOC細胞に由来する。クローン2(c)は、pgRNAPSEN1+PSEN2/DonorPSEN1+PSEN2でトランスフェクションしたHeLaOC細胞に由来する。影付きの領域のヌクレオチドは、Cas9を導いてDNA認識及び切断を行うPAM配列を表す。破線は欠失を示し、長い文字はヌクレオチドの挿入を示し、背景の明るい灰色の矢印はドナーのCMVプロモーターの方向を示す。(d)は、HSPA遺伝子ファミリーの複数配列アライメント解析を示す図であり、そのコンセンサス配列、5つのHSPAファミリー遺伝子のコンセンサス配列を標的とするsgRNA、および複数の遺伝子突然変異を含む細胞を濃縮するためのユニバーサル線形ドナー(DonorHSPA)の設計が示されている。黒い影付きのヌクレオチドは、5つのHSPA遺伝子のコンセンサス配列を表す。暗い灰色の影付きのヌクレオチドは、3つまたは4つのHSPA遺伝子のコンセンサス配列を表し、明るい灰色の影付きのヌクレオチドは、非コンセンサス配列を表す。(e)は、DonorHSPAが欠失または存在している条件下で、ピューロマイシンによりスクリーニングした後、sgRNAHSPAが5つの標的遺伝子上で誘発したindelsを示す図である。エラーバーはs.d.(n=3)、t-test、**P<0.01、***P<0.001を表す。(f)は、sgRNA標的領域(下線が付いている)を含むHeLaクローン3のゲノム内のHSPA1A、HSPA1B、HSPA1L、およびHSPA6遺伝子の一部のコード配列を示す図である。クローン3は、sgRNAHSPA/DonorHSPAでトランスフェクションしたHeLaOC細胞に由来する。影付きのヌクレオチドは、PAM配列を表し、破線は欠失していることを表す。背景の明るい灰色の矢印は、ドナーのCMVプロモーターの方向を示す。
図9】HeLaOC細胞におけるPSEN1及びPSEN2 sgRNA効率の評価と単一クローンの認識を示す図である。(a)は、T7E1分析を使用して、PSEN1及びPSEN2部位でsgRNAPSEN1、sgRNAPSEN2、およびpgRNAPSENによるindels効率に対する評価を示す図である。エラーバーは、s.d.(n=3)を表す。(b)は、ドナー(pgRNAPSEN添加または非添加)でトランスフェクションした細胞のピューロマイシン耐性クローンのMTT染色を示す図である。(c)は、ピューロマイシン耐性モノクローンの線形ドナーが組み込まれたPSEN1(L3/R3)とPSEN2(L4/R4)との二つの部位のPCR結果を示す図である。
図10】ドナーを使用して、または使用せずにトランスフェクションした混合細胞におけるHSPAファミリー遺伝子の標的領域のシーケンシングを示す図である。sgRNA標的部位は影で示されており、これらのシーケンシング分析には、ドナー挿入を含む標的領域は含まれていない。
図11】HSPA1A、HSPA1B、HSPA1L、HSPA6、およびHSPA2の5つのHSPAファミリー遺伝子の標的部位上でドナーが挿入されたモノクローン同定を示す図である。(a)は、ピューロマイシン耐性モノクローンの5つの遺伝子部位上で線形ドナーが組み込まれたことのPCR検証結果を示す図である。(b)は、HSPA1A、HSPA1B、HSPA1L、HSPA6の4つの遺伝子部位にドナー挿入の結果のまとめを示す図である。
図12】ユニバーサルsgRNAを含むドナーを利用した遺伝子ノックアウトの実験のフローチャートである。
図13】ユニバーサルsgRNAを含むドナーを利用した遺伝子ノックアウトの効率の検証を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0095】
本発明は、新しいドナー構築体および遺伝子ノックアウト方法を提供し、当該方法は、線形ドナーDNAを利用して配列特異的ヌクレアーゼによる遺伝子ノックアウトの生成効率を向上させる。本発明の線形ドナーDNAは、配列特異的ヌクレアーゼにより切断できる少なくとも1つの標的部位を含む。細胞ゲノムの標的部位に基づいて線形ドナーDNAに含まれる標的部位を設計し、これによって、細胞ゲノムの標的部位を切断できる配列特異的ヌクレアーゼも、線形ドナーDNAに含まれる標的部位を切断できるようになる。配列特異的ヌクレアーゼとドナー構築体を細胞に導入した後、配列特異的ヌクレアーゼが細胞の特定の標的部位に二本鎖切断(DSBs)を生成する時、線形ドナーDNAに含まれる少なくとも一つの標的部位を同時に切断し、これによって、線形ドナーDNAは高い効率で非相同末端結合(Non-Homologous end joining、NHEJ)経路を通して細胞ゲノムの切断された標的部位に挿入される。そして、マーカーを介して細胞をスクリーニングし、ゲノムの特定の標的部位で切断されて遺伝子ノックアウトを生成した細胞を効果的に濃縮することができ、配列特異的ヌクレアーゼを介して遺伝子ノックアウトを生成した効率を大幅に高めることができる。
【0096】
細胞ゲノムの標的部位に基づいて線形ドナーDNAに含まれる標的部位を設計し、得られた線形ドナーDNAは特異的線形ドナーであり、細胞ゲノムの異なる標的部位で遺伝子ノックアウトを行う必要がある時、当該標的部位の配列に基づいて、組み合わせて使用するための線形ドナーDNAを構築する。したがって、本発明をさらに最適化するために、発明者は本発明においてさらにユニバーサル線形ドナーDNAを提供し、このユニバーサル線形ドナーDNAは、配列特異的ヌクレアーゼにより切断できるユニバーサル標的配列を含み、このユニバーサル標的配列は、遺伝子ノックアウトされる細胞のゲノムには存在せず、すなわち、このユニバーサル標的配列と同じの、配列特異的ヌクレアーゼにより切断できる配列は、遺伝子ノックアウトの必要がある細胞のゲノムには存在しない。この場合、配列特異的ヌクレアーゼとユニバーサル線形ドナーDNAを細胞に導入した後、配列特異的ヌクレアーゼが細胞の特定の標的部位に二本鎖切断(DSBs)を生成する時、ユニバーサル線形ドナーDNAに含まれるユニバーサル標的配列も当該標的配列のユニバーサルgRNAを認識することにより前記配列特異的ヌクレアーゼにより切断され、この時、線形ドナーDNAは依然として高い効率で非相同末端結合(Non-Homologous end joining、NHEJ)経路を通して細胞ゲノムの切断された標的部位に挿入されることができる。そして、マーカーを介して細胞をスクリーニングし、ゲノムの特定の標的部位で切断されて遺伝子ノックアウトを生成した細胞を効果的に濃縮することができるとともに、配列特異的ヌクレアーゼを介して遺伝子ノックアウトを生成した効率を大幅に高めることができる。前記ユニバーサル線形ドナーDNAの標的配列は、ノックアウトされる細胞とは関係なく、ユニバーサルドナーとして異なる細胞の異なる目標遺伝子のノックアウトに使用でき、いずれも配列特異的ヌクレアーゼによって遺伝子ノックアウトを生成する効率を高めることができる。ユニバーサル線形ドナーは特に、Cas9/CRISPRシステムを使用した遺伝子のノックアウトに使用することができ、このシステムはgRNA(好ましくはsgRNA)を用いて目標配列を標的とし、遺伝子ノックアウトを行う場合、細胞ゲノムの特定の標的部位に対するgRNAを構築するだけで済み、組み合わせて使用するための線形ドナーDNAを特別に構築する必要はなく、ユニバーサル線形ドナーDNAおよびこのユニバーサル線形ドナーDNAを標的とするgRNAを直接に使用すればよい。これによって、操作の複雑さが低下され、効率は向上した。
【0097】
相同対立遺伝子の一つが修飾されると、標的対立遺伝子の突然変異の頻度は通常高いことは報告されている[25、26]。したがって、理論に拘束されることを望まないが、標的対立遺伝子の一つの特定の部位にドナーを挿入して、ドナーに含まれるマーカー遺伝子を発現するクローンをスクリーニングできれば、すべての対立遺伝子が修飾される希少イベントを濃縮することができると本発明者は推測する。
【0098】
本発明では、「遺伝子ノックアウト」は、遺伝子編集による遺伝子機能の喪失である。通常追求される遺伝子ノックアウトの効果は、2つの対立遺伝子が同時にノックアウトされ、その時点で対応するタンパク質が機能を喪失し、遺伝子ノックアウト細胞株が得られることである。1つの対立遺伝子のみがノックアウトされた場合、タンパク質は依然として一部の役割を果たすことができ、タンパク質機能が低下するに過ぎない。本発明の線形ドナーDNAおよび本発明の方法により、2つの対立遺伝子がノックアウトされた細胞を効率的に濃縮することができる。
【0099】
本発明のドナー構築体は二本鎖DNAである。本発明のドナー構築体自身は線形ドナーDNAであってもよく、あるいは、本発明のドナー構築体は、線形ドナーDNAを含む環状DNA分子であってもよく、細胞に導入されると、細胞内で切断されて線形ドナーDNAを生成する。細胞内で環状ドナー構築体を切断して線形ドナーDNAを生成する方法は、本分野で周知である。例えば、環状構築体は、線形ドナーDNAの5’末端の上流および3’末端の下流において、別の配列特異的ヌクレアーゼの切断部位をさらに含んでもよい。
【0100】
本発明の方法では、線形ドナーDNAを生成するように、細胞内で環状構築体の線形ドナーDNAの5’末端上流および3’末端下流の配列を切断する、別の配列特異的ヌクレアーゼを細胞に導入することをさらに含んでもよい。
【0101】
本発明の線形ドナーDNAにおいて、「逆方向終止コドン」とは、コドンの方向が発現カセットのリーディングフレームの方向と反対であることを指す。「順方向終止コドン」とは、コドンの方向が発現カセットのリーディングフレームの方向と同じであることを指す。終止コドンの役割は、線形ドナーが順方向または逆方向のどちらでゲノムに挿入されていても、2つのトリプレット終止コドンが内因性および外因性遺伝子の発現を停止させることができることである。
【0102】
本発明の線形ドナーDNAの「保護配列」は任意の配列であってもよく、好ましくは、保護配列と、同一の線形ドナーDNAの標的配列とは異なる。保護配列の長さは5~30bpであってもよく、好ましくは20bpである。保護配列の役割は、細胞内の酵素(例えば、エキソヌクレアーゼ)によって線形ドナーDNAの標的配列が切断されるのを防ぐことである。
【0103】
本文に記載の「マーカー遺伝子」とは、その発現がスクリーニングまたは濃縮されることができる任意のマーカー遺伝子を指し、すなわち、当該マーカー遺伝子が細胞で発現される場合、当該マーカー遺伝子を発現する細胞をある方式でスクリーニングして濃縮することができる。本発明に使用可能なマーカー遺伝子は、発現後にFACSによりソーティングできる蛍光タンパク質遺伝子、または抗生物質でスクリーニングできる耐性遺伝子、または発現後に対応する抗体によって認識され、かつ免疫染色あるいは磁気ビーズ吸着によってスクリーニングできるタンパク質遺伝子を含むが、これらに限られていない。本発明に使用可能な耐性遺伝子は、ブラスチシジン(Blasticidin)、ジェネティシン(Geneticin、G-418)、ハイグロマイシン(Hygromycin B)、ミコフェノール酸(Mycophenolic Acid)、ピューロマイシン(Puromycin)、ブレオマイシン(Zeocin)またはネオマイシン(Neomycin)に対する耐性遺伝子を含むが、これらに限定されていない。本発明に使用可能な蛍光タンパク質遺伝子は、青色蛍光タンパク質(Cyan Fluorescent Protein)、緑色蛍光タンパク質(Green Fluorescent Protein)、黄色蛍光タンパク質(Yellow Fluorescent Protein)、オレンジ蛍光タンパク質(Orange Fluorescent Protein)、赤色蛍光タンパク質(Red Fluorescent Protein)、遠赤色蛍光タンパク質(Far-Red Fluorescent Protein)、または切り替え可能な蛍光タンパク質(Switchable Fluorescent Proteins)の遺伝子を含むが、これらに限られていない。
【0104】
配列特異的ヌクレアーゼの例として、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)が含まれる。ジンクフィンガーヌクレアーゼは、ジンクフィンガータンパク質ドメインと非特異的エンドヌクレアーゼドメインからなる、天然に存在しない人工的に改造されたエンドヌクレアーゼである。ジンクフィンガータンパク質ドメインは、一連のCys2-His2ジンクフィンガータンパク質がタンデムで構成され、各ジンクフィンガータンパク質は、3’から5’への方向のDNA鎖上の一つの特異的トリプレット塩基および5’から3’への方向の一つの塩基を認識して結合する。複数のジンクフィンガータンパク質はタンデムで接続して、一段の特異的塩基配列を認識する一つのジンクフィンガープロテオームを形成することができ、強い特異性を持っている。ジンクフィンガープロテオームにリンクされた非特異的エンドヌクレアーゼは、FokIカルボキシル末端の96のアミノ酸残基からなるDNA切断ドメインに由来する。各FokIモノマーは一つのジンクフィンガープロテオームに接続され、特定の部位を認識する一つのZFNを形成し、二つの認識部位間の距離が適切である場合(6~8bp)、二つのモノマーZFNは互いに作用して酵素消化機能を果たしてDNA固定点切断の目的を達成する。標的配列に対して8~10個のジンクフィンガードメインを設計し、これらの亜鉛ドメインをDNAヌクレアーゼに接続すると、標的配列の二本鎖切断(Double strand breaks、DSBs)を実現でき、さらにDSBs修復メカニズムを誘発してゲノム内の特定の部位に対して指向性変換を行うことができる。
【0105】
配列特異的ヌクレアーゼの別の例として、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)が含まれる。転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼは主にFokIエンドヌクレアーゼドメインとTALEタンパク質のDNA結合ドメインとから組み合わせてなる。TALEタンパク質は、33~35のアミノ酸からなる複数の反復ペプチドセグメントを含み、各ペプチドセグメントは一つの塩基を認識することができる。ZFNと同様に、TALENはDNA標的配列を切断してDSBsを形成し、さらにDNA損傷修復メカニズムを活性化してゲノムに対して特定の部位を変換することができる。
【0106】
本発明に使用可能な配列特異的ヌクレアーゼシステムの別の例として、Cas9/CRISPR(Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats、クラスター化して規則的な配置の短い回文配列リピート、クリスパー)システムが含まれる。Cas9/CRISPRシステムは、RNAによるDNA結合を利用して標的DNAの配列特異的切断を行い、crRNA(CRISPR-derived RNA)が塩基対合を介してtracrRNA(trans-activating RNA)に結合してtracrRNA/crRNA複合体を形成し、この複合体はヌクレアーゼCas9タンパク質をガイドしてcrRNAに対合した標的配列上の特定の位置で二本鎖DNAを切断する。crRNAに対合した標的配列は通常、ゲノムPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)部位(NNG)の上流の約20個のヌクレオチドの配列である。
【0107】
標的部位に対するCas9タンパク質の切断には、ガイドRNAが必要である。用語の「ガイドRNA」は、gRNA(guide RNA)とも呼ばれ、gRNAは通常、crRNA上の、標的配列に相補的なヌクレオチド、およびcrRNAとtracrRNAが塩基対合によって形成されるRNA Scaffoldを含み、crRNAと対合する標的配列を認識することができる。gRNAは、Cas9タンパク質と一緒に複合体を形成し、Cas9タンパク質を標的配列にガイドしてその中の標的部位を切断することができる。
【0108】
通常、gRNAはsgRNA(single guide RNA)として使用される。sgRNAは「一本鎖ガイドRNA」とも呼ばれ、crRNAとtrancrRNAとが融合してなる一本のRNA鎖である。
【0109】
本発明に使用可能な配列特異的ヌクレアーゼシステムの別の例として、NgAgoヌクレアーゼおよびそのgDNAが含まれる。NgAgoヌクレアーゼは、5’末端リン酸化された一本鎖ガイドDNA(gDNA)に結合して、gDNAに相補的な標的配列を切断してDNA二本鎖切断を引き起こすことができる。
【0110】
本発明の線形ドナーDNAは、一端にのみ標的配列を有していてもよく、両端にそれぞれ標的配列を有していてもよい。線形ドナーDNAの両端の標的配列は異なってもよい。細胞ゲノムの二つの異なる標的部位で切断によって遺伝子ノックアウトを生成する必要がある場合、それぞれ一つの対応する標的配列を含む、二つの線形ドナーDNAを提供してもよく、各端に一つの対応する標的配列が含まれている、一つの線形ドナーDNAを提供してもよい。細胞ゲノムの複数の異なる標的部位で切断によって遺伝子ノックアウトを生成する必要がある場合、適切な数の線形ドナーDNAを提供してもよく、各線形ドナーDNAの一端または両端にそれぞれ複数の異なる対応する標的配列の中の一つが含まれている。例えば、標的部位の数と同じの数の線形ドナーDNAを提供し、各線形ドナーDNAは一つの対応する標的配列を含む。あるいは、標的部位の数より少ない線形ドナーDNAを提供し、そのすべてまたはその一部の線形ドナーDNAの両端はそれぞれ、複数の異なる対応する標的配列の中の一つを含み、その他の線形ドナーDNAはそれぞれ、他の対応する標的配列の中の一つを含む。
【0111】
ユニバーサル標的配列を含むユニバーサル線形ドナーDNAの場合、そのいずれか一端または両端に前記ユニバーサル標的配列を含んでもよい。このユニバーサル線形ドナーDNAの標的配列は、細胞ゲノム内の切られる標的部位には依存しないため、細胞ゲノムの任意の一つの標的部位、任意の二つの標的部位、またはそれ以上の標的部位に対して切断して遺伝子ノックアウトを生成する場合に普遍的に適用できる。
【0112】
本発明に記載の「ユニバーサル標的配列」とは、配列特異的ヌクレアーゼにより切断できる配列を指すが、このユニバーサル標的配列は、遺伝子ノックアウトされる細胞のゲノムには存在せず、すなわち、このユニバーサル標的配列と同じの、配列特異的ヌクレアーゼにより切断できる配列は、遺伝子ノックアウトされる細胞のゲノムには存在しなく、ユニバーサル標的配列は、細胞ゲノム上に存在する、同一の配列特異的ヌクレアーゼにより切断できる標的配列とは異なる。このユニバーサル標的部位を含む線形ドナーDNAは、細胞ゲノム上の標的部位に対して特異性を持っていないため、ノックアウトする必要がある遺伝子およびその上の標的部位に対して特定の線形ドナーDNAを構築する必要がなく、細胞内の任意の遺伝子の遺伝子ノックアウトに普遍的に適用できる。
【0113】
配列特異的ヌクレアーゼは、タンパク質の形、またはそれをコードする核酸配列(例えば、mRNAまたはcDNA)の形で細胞に導入することができる。配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸は、プラスミドまたはウイルスベクターに含まれて細胞に導入することができ、例えば、トランスフェクションにより細胞に導入することができる。また、配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸は、エレクトロポレーション、リポソーム、マイクロインジェクションなどによって細胞に直接に送達することもできる。
【0114】
ドナー構築体は、核酸を細胞に導入するのに適した任意の方法で送達することができ、例えば、トランスフェクションにより細胞に導入することができる。
【0115】
Cas9/CRISPRシステムとNgAgoヌクレアーゼを使用して遺伝子ノックアウトを生成する場合、sgRNAまたはgDNAを細胞に導入する必要がある。RNAまたはDNAを細胞に導入するのに適した任意の方法でsgRNAまたはgDNAを送達することができる。sgRNAは、単離されたRNAの形で細胞に導入できる。単離されたsgRNAは、本分野で既知の任意のインビトロ転写システムを使用してインビトロ転写により調製することができる。また、sgRNAをコードする配列とプロモーターを含むベクターを通してsgRNAを細胞に導入することができる。前記ベクターは、ウイルスベクターまたはプラスミドであってもよい。細胞を導入する方法は、トランスフェクションであってもよい。
【0116】
Cas9を誘導して細胞ゲノムの二つ以上の異なる標的部位で切断して遺伝子ノックアウトを生成するように、異なる標的部位に対する二つ以上のsgRNAを細胞に導入することができる。この二つ以上のsgRNAは、異なるベクターに含まれていてもよく、gRNAペア(paired gRNA)を含むベクター、またはそれ以上のsgRNAを含むベクターのような同一のベクターに含まれていてもよい。
【0117】
本発明の方法では、異なる標的部位に対する二つ以上のsgRNAを細胞に導入する場合、これらのsgRNAによって認識される標的配列を含む線形ドナーDNAをも同時に導入する。線形ドナーDNAは5’末端または3’末端にのみ標的配列を含むことができ、または両端にそれぞれ標的配列を含むことができるので、sgRNAの数と線形ドナーDNAの数とは異なってもよく、一つのsgRNAが一つの線形ドナーDNAに対応してもよく、二つのsgRNAが二つの線形ドナーDNAに対応してもよい。
【0118】
Cas9/CRISPRシステムと本発明のユニバーサル線形ドナーDNAを使用して遺伝子ノックアウトを行う場合、ユニバーサル線形ドナーDNAとCas9ヌクレアーゼを細胞に導入する他、Cas9を誘導して細胞ゲノムの特定の標的配列とユニバーサル線形ドナーDNA上のユニバーサル標的配列を切断するように、細胞ゲノムの特定の標的配列に対するsgRNA、ユニバーサル線形ドナーDNA上のユニバーサル標的配列に対するsgRNAを細胞に導入する必要がある。細胞ゲノムの特定の標的配列に対するsgRNAと、ユニバーサル線形ドナーDNA上のユニバーサル標的配列に対するsgRNAとは、異なるベクターに含まれていてもよく、同一のベクターに含まれていてもよい。
【0119】
細胞ゲノムの特定の標的配列に対するsgRNAは、一つまたは複数のsgRNA、例えば、2つ、3つ、またはそれ以上のgRNAであってもよい。これらの一つを超えるsgRNAは、細胞ゲノム上の異なる標的部位に対して同時に切断することを実現するように、細胞ゲノムにおける異なる特定の標的配列に対することができる。これらの異なる標的部位は異なる遺伝子に位置する場合、複数の遺伝子のノックアウト、例えば、2つ、3つ、またはそれ以上の遺伝子のノックアウトを実現することができる。具体的に言えば、複数遺伝子ノックアウトを行う時、Cas9を誘導して細胞ゲノムの複数の特定の標的配列とユニバーサル線形ドナーDNA上のユニバーサル標的配列を切断するように、細胞ゲノムにおける複数の特定の標的配列に対しての複数のsgRNAと、ユニバーサル線形ドナーDNA上のユニバーサル標的配列に対してのsgRNAとをそれぞれ細胞に導入することができる。前記複数の特定の標的配列は異なる遺伝子に位置し、それによって複数遺伝子ノックアウトを実現する。前記細胞ゲノムにおける複数の特定の標的配列に対しての複数のsgRNAは異なるベクターに含まれていてもよく、同一のベクターに含まれていてもよい。前記細胞ゲノムにおける複数の特定の標的配列に対しての複数のsgRNAのいずれか一つ以上のsgRNAとユニバーサル線形ドナーDNA上のユニバーサル標的配列に対してのsgRNAとは、異なるベクターに含まれていてもよく、同一のベクターに含まれていてもよい。
【0120】
本発明によれば、前記ユニバーサル線形ドナーDNA上のユニバーサル標的配列は好ましくは、5’-GTACGGGGCGATCATCCACA-3’(SEQ ID NO.1)または5’-AATCGACTCGAACTTCGTGT-3’(SEQ ID NO.2)である。
【0121】
好ましくは、本発明では、Cas9/CRISPRシステムを使用して遺伝子ノックアウトを生成する場合、Cas9、sgRNA、および線形ドナーDNAを同時に細胞に導入してもよく、または、例えば、まずCas9を細胞に導入し、そしてsgRNAと線形ドナーDNAを細胞に導入してもよい。一部の実施形態では、Cas9を含むベクター、sgRNAを含むベクター、および線形ドナーDNAを用いて細胞をコトランスフェクションする。もう一部の実施形態では、Cas9とsgRNAをインビトロでタンパク質とRNA複合体に組み立てて線形ドナーDNAと一緒に細胞をコトランスフェクションする。もう一部の実施形態では、Cas9とsgRNAをレンチウイルスによって細胞内に安定的発現し、線形ドナーDNAで細胞をトランスフェクションする。他の一部の実施形態では、まずCas9を細胞内で安定的に発現し、そしてsgRNAを含むベクターと線形ドナーDNAで細胞をコトランスフェクションする。
【0122】
本発明により提供される遺伝子ノックアウトに用いられるシステムまたはキットにおいて、配列特異的ヌクレアーゼは、タンパク質の形、またはそれをコードする核酸配列(例えば、mRNAまたはcDNA)の形、例えば、配列特異的ヌクレアーゼをコードする核酸を含むプラスミドまたはウイルスベクターの形であってもよい。Cas9/CRISPRシステムを使用する場合、sgRNAは単離されたRNAの形、またはsgRNAをコードする配列とプロモーターを含むベクターの形、例えば、ウイルスベクターまたはプラスミドベクターであってもよい。
【0123】
本文に記載の細胞は、任意の真核細胞であってもよく、例えば、全能性細胞、多能性細胞、成体幹細胞、受精卵または体細胞などの単離された動物細胞であってもよい。一部の実施形態では、前記細胞は脊椎動物の細胞である。一部の実施形態では、前記細胞は哺乳動物細胞である。一部の実施形態では、前記細胞はヒト細胞である。一部の実施形態では、前記細胞は、ウシ、ヤギ、ヒツジ、ネコ、イヌ、ウマ、げっ歯類動物、魚、霊長類動物の細胞である。一部の実施形態では、げっ歯類動物は、マウス、ラット、ウサギを含む。
【0124】
本発明の方法は、細胞内の単一の遺伝子または複数の遺伝子に対して標的遺伝子ノックアウトを行うことに使用でき、例えば、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の遺伝子を標的としてノックアウトすることに使用できる。複数の遺伝子に対しての標的遺伝子ノックアウトは、同時に行ってもよいし、前後に行ってもよい。例えば、2つ以上の標的遺伝子に対する配列特異的ヌクレアーゼまたは配列特異的ヌクレアーゼシステムをすべて細胞に導入してから、濃縮スクリーニングすることができる。あるいは、一つ以上の標的遺伝子に対する配列特異的ヌクレアーゼまたは配列特異的ヌクレアーゼシステムを細胞に導入してから濃縮スクリーニングし、そしてその他の標的遺伝子に対する配列特異的ヌクレアーゼまたは配列特異的ヌクレアーゼシステムを細胞に導入してから濃縮スクリーニングしてもよい。異なる標的遺伝子に対して異なるマーカー/マーカー遺伝子を使用することができる。例えば、前述のように、Cas9/CRISPRシステムを使用して遺伝子ノックアウトを生成する場合、それぞれ異なる標的部位に対する二つ以上のsgRNAを細胞に導入する時、これらsgRNAによって認識される標的配列を含む線形ドナーDNAを同時に導入することができる。これらの異なる標的部位が異なる遺伝子上に位置する時、複数の遺伝子の遺伝子ノックアウトを実現することができる。また、細胞ゲノム内の二つ以上の遺伝子のコンセンサス配列を使用してsgRNAと線形ドナーDNA内の標的配列を設計することができ、この場合、細胞ゲノム内の単一の特定の標的部位を認識するsgRNAを細胞に導入すると同時に、前記sgRNAによって認識される標的配列を含む線形ドナーDNAを導入することができ、前記sgRNAによって認識される標的配列は、細胞ゲノム内の2つ以上の遺伝子のコンセンサス配列であり、その条件として、前記コンセンサス配列と、前記2つ以上の遺伝子のいずれか1つの、コンセンサス配列に対応する位置の配列とは、1つ以下の塩基の違いを有する。実施例7で証明されたように、二つの塩基の違いはsgRNAによる認識を混乱させる可能性がある。
【0125】
本発明の線形ドナーDNAによる遺伝子編集のための標的遺伝子は、Cas9/CRISPRシステムを介して二本鎖切断を生成できる限り、特に限定されていない。標的遺伝子は、エクソン、イントロン、または調節配列、若しくはそれらの任意の組み合わせであってもよい。
【0126】
本発明で使用される「含む」または「含有する」という用語は、「含むがこれらに限られていない」、「基本的に…からなる」、または「…からなる」を意味する。
【実施例
【0127】
以下の実施例および図面を合わせて本発明についてさらに説明するが、これらは例示な説明のために過ぎず、本発明の範囲を限定するものではない。特に指定のない限り、実施例はいずれも、例えば、Sambrookらの分子クローニング実験マニュアル(Sambrook J & Russell DW,Mоlecular clоning:a labоratоry manual,2001)などの従来の実験条件、またはメーカーにより提供されたプロトコルに従って行われた。
【0128】
実施例1 線形ドナーDNAを利用した、HeLa細胞におけるANTXR1遺伝子上のノックアウトイベントの濃縮
【0129】
1、sgRNAの設計
HeLa細胞におけるANTXR1遺伝子の第一エクソンを標的とする2つのsgRNAを設計し、それらが標的部位で欠失または挿入突然変異(Indels)を生成する効率をT7E1アッセイで検証し、検証の結果は表1に示される。sgRNA1ANTXR1の標的配列は、本実施例ではsg1と呼ばれ、sgRNA2ANTXR1の標的配列は、本実施例ではsg2と呼ばれる。
【0130】
【表1】
【0131】
2、線形ドナーDNAの構築
2つの線形ドナーDNA(DonorANTXR1-sg2とDonorANTXR1-pg)を構築した。その構造を図1aに示す。
DonorANTXR1-sg2は5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg2、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。
DonorANTXR1-pgは5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg1、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、sg2、20bpの保護配列を含む。
対照としての線形ドナーDNA(Donornо cut)は5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、20bpのランダム配列、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。ランダム配列はsg1またはsg2とは異なる。
【0132】
3、トランスフェクション
Cas9を発現するプラスミド、sgRNA2ANTXR1またはpgRNAANTXR1、およびそれらに対応するドナーでHeLa細胞をコトランスフェクションし、対照として、線形ドナーDNA(DonorANTXR1-sg2、DonorANTXR1-pg、およびDonornо cut)のみでHeLa細胞をトランスフェクションし、ピューロマイシンを加えて耐性によりスクリーニングして、混合コロニー(pооled pоpulatiоn)と単一のクローン(single clones)を得て、MTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)で染色した。その結果は図1bに示される。
sgRNA2ANTXR1とその対応するドナーDonorANTXR1-sg2を受けたサンプル、およびpgRNAANTXR1とその対応するドナーDonorANTXR1-pgを受けたサンプルから、ピューロマイシン耐性(purо+)を有する多くの細胞クローンを得た。ドナーのみでトランスフェクションすると、わずかのピューロマイシン耐性クローンしか生じなかった。これは、染色体への線形ドナーの組み込むはまれでランダムであるからかもしれない。また、対照ドナーDonornо cutと、Cas9を発現するプラスミドおよびsgRNA2ANTXR1のコトランスフェクションも、有意な量のpurо+クローンを生成できなかった(図1bの一番右の図参照)。これは、sgRNAにより媒介されたCas9がドナー上での切断は、効果的なドナーの組み込むに対して重要であることを示している。pgRNAANTXR1により媒介された二重切断DonorANTXR1-pgの組み込むは、sgRNA2ANTXR1とDonorANTXR1-sg2との和よりも効率的である。しかしながら、どの線形ドナーDNAを使用しても、十分なpurо+クローンが生成され、後続の突然変異体の同定に使用できる。
【0133】
4、遺伝子ノックアウトの効率の検証
また、Cas9を発現するプラスミドとsgRNA2ANTXR1またはpgRNAANTXR1を用い、それらの対応するドナーの添加または非添加で、HeLa細胞をコトランスフェクションし、ピューロマイシン(1μg/ml)を用いて混合コロニーおよびモノクローンをスクリーニングして取得した。その中で、対応するドナーを添加しなかった場合に、ピューロマイシン耐性遺伝子を発現するプラスミドと一緒にコトランスフェクションした。HeLa細胞におけるANTXR1遺伝子のノックアウトにより、細胞がキメラ炭疽毒素(PA/LFnDTA)に対して耐性が生じ[17]、PA/LFnDTA(PA:150ng/ml;LFnDTA:100ng/ml)を用いて、ピューロマイシンによりスクリーニングして取得した混合コロニーとモノクローンを処理して、線形ドナーDNAがANTXR1ノックアウト効率に対する影響を比較した。PA/LFnDTAで処理した異なる細胞の画像は図2aに示される。purо+混合コロニー中の、当該毒素耐性を有する細胞の百分比を計算することによってANTXR1ノックアウト効率を確定し、図1cに示すように、sgRNA2ANTXR1またはpgRNAANTXR1を単独に用いる場合より、線形ドナーDNAの使用は、遺伝子ノックアウト効率を6~8倍にも高めた。purо+モノクローンの線形ドナーが組み込まれたANTXR1部位についてPCR検証を行い、PCR増幅に使用されたL1/R1プライマー配列は表2に示される。その結果は図2bに示す。これから分かるように、purо+細胞混合物から単離された大部分のクローンは、sgRNA標的部位にドナー挿入物を含んでいる(図1dも参照)。図1dから、ドナーフラグメントを有する細胞のほぼ90%が真の遺伝子ノックアウトクローンであることも分かる。
【0134】
【表2】
【0135】
実施例2 線形ドナーDNAを利用した、HeLa細胞におけるHBEGF遺伝子上のノックアウトイベントの濃縮
【0136】
単一または二重切断部位を有するドナーはいずれも、標的部位に修飾を有する細胞に対するスクリーニングを大幅に改善することができるため、便宜上、本実施例では、単一切断ドナーのみを使用した。
【0137】
1、sgRNAの設計
HeLa細胞におけるHBEGF遺伝子を標的とする2つのsgRNAを設計し、それらが標的部位でIndelsを生成する効率をT7E1アッセイで検証した。検証結果を表3に示す。sgRNA1HBEGFの標的配列は本実施例ではsg1と呼ばれ、sgRNA2HBEGFの標的配列は本実施例ではsg2と呼ばれる。
【0138】
【表3】
【0139】
2、線形ドナーDNAの構築
線形ドナーDNA(DonorHBEGF-sg1)を構築した。その構造は図3aに示される。
DonorHBEGF-sg1は5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg1、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。
【0140】
3、トランスフェクション
Cas9を発現するプラスミド、sgRNA1HBEGF、およびそれに対応するドナーDonorHBEGF-sg1でHeLa細胞をコトランスフェクションし、対照として、ドナーDonorHBEGF-sg1のみでHeLa細胞をトランスフェクションし、ピューロマイシンを加えて耐性でスクリーニングして、混合コロニー(pооled pоpulatiоn)と単一のクローン(single clones)を得て、MTTで染色した。その結果は図3bに示される。
実施例1の結果と同様に、ドナープラスsgRNAでしか大量のpurо+クローンを取得しなかった。この結果により再び証明されたように、ドナー挿入は、特異的なsgRNA/Cas9sgRNAにより媒介されたDSBsによって決められる。
【0141】
4、遺伝子ノックアウトの効率の検証
また、Cas9を発現するプラスミドとsgRNA1HBEGFを用い、それに対応するドナーDonorHBEGF-sg1の添加または非添加で、HeLa細胞をコトランスフェクションし、ピューロマイシン(1μg/ml)を用いて混合コロニーおよびモノクローンをスクリーニングして取得した。その中で、対応するドナーを添加しなかった場合に、ピューロマイシン耐性遺伝子を発現するプラスミドと一緒にコトランスフェクションした。HBEGF遺伝子はジフテリア毒素(DT)受容体をコードするので、HeLa細胞においてそれをノックアウトすると、細胞がDTに対して耐性が生じ[17]、DT(40ng/ml)を用いて、ピューロマイシンによりスクリーニングして取得した混合コロニーとモノクローンを処理して、線形ドナーDNAがHBEGFノックアウト効率に対する影響を比較した。DTで処理した異なる細胞の画像は図3cに示される。図3dに示すように、purо+混合コロニー中の、DT耐性を有する細胞の百分比を計算することによってHBEGFノックアウト効率を確定した。図3cと図3dから分かるように、sgRNA1HBEGFを単独に用いる場合より、線形ドナーDNAの使用は、HBEGF遺伝子ノックアウト効率を大幅に高めた。
【0142】
実施例3 線形ドナーDNAを利用した、HEK293T細胞におけるHBEGF遺伝子上のノックアウトイベントの濃縮
【0143】
1、sgRNAの設計および線形ドナーDNAの構築
HEK293T細胞におけるHBEGF遺伝子を標的とするsgRNA2HBEGFを設計し、線形ドナーDNA(DonorHBEGF-sg2)を構築した。ドナーは5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg2、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるEGFP遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。図4aを参照することができる。
【0144】
2、遺伝子ノックアウトの効率の検証
Cas9を発現するプラスミドとsgRNA2HBEGFを用い、それに対応するドナーDonorHBEGF-sg2の添加または非添加で、HEK293T細胞をコトランスフェクションし、FACSで細胞をスクリーニングし、ドナーが添加された群についてFACSでEGFP陽性細胞をスクリーニングし、ドナーが添加されなかった群についてFACSでmCherry陽性細胞をスクリーニングした。DT(40ng/ml)を用いて、FACSにより選択された細胞を処理して、線形ドナーDNAがHBEGFノックアウト効率に対する影響を比較した。DTで処理した異なる細胞の画像は図4bに示される。図4dに示すように、EGFP陽性細胞中の、DT耐性を有する細胞の百分比を計算することによってHBEGFノックアウト効率を確定した。sgRNA2HBEGFを単独に用いる場合より、線形ドナーDNAの使用は、HBEGF遺伝子ノックアウト効率を大幅に高めた。
【0145】
実施例4 線形ドナーDNAを利用した、HeLaOC細胞におけるANTXR1遺伝子上のノックアウトイベントの濃縮
【0146】
1、HeLaOC細胞株の確立
Cas9を安定的に発現するHeLaOC細胞株を既存の方法に従って確立した[17]。
【0147】
2、sgRNAの設計および線形ドナーDNAの構築
図5aに示すように、HeLaOC細胞におけるANTXR1遺伝子を標的とする2つのsgRNA(sgRNA1ANTXR1とsgRNA2ANTXR1)を設計し、三つの線形ドナーDNA(DonorANTXR1-sg1、DonorANTXR1-sg2、およびDonorANTXR1-pg)を構築した。sgRNA1ANTXR1の標的配列は、本実施例ではsg1と呼ばれ、sgRNA2ANTXR1の標的配列は、本実施例ではsg2と呼ばれる。
DonorANTXR1-sg1は5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg1、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。
DonorANTXR1-sg2は5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg2、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。
DonorANTXR1-pgは5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg1、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、sg2、20bpの保護配列を含む。
【0148】
3、トランスフェクション
Cas9を発現するプラスミド、sgRNA1ANTXR1またはsgRNA2ANTXR1またはpgRNAANTXR1、およびそれらに対応するドナーでHeLaOC細胞をコトランスフェクションし、対照として、線形ドナーDNA(DonorANTXR1-sg1、DonorANTXR1-sg2、およびDonorANTXR1-pg)のみでHeLaOC細胞をトランスフェクションし、ピューロマイシンを加えて耐性でスクリーニングして、MTTで染色した。その結果は図5bに示される。
HeLa細胞における結果と同様に、ドナープラスsgRNAでしか大量のpurо+クローンを取得しなかった。
【0149】
4、遺伝子ノックアウトの効率の検証
また、Cas9を発現するプラスミドとsgRNA1ANTXR1またはsgRNA2ANTXR1またはpgRNAANTXR1を用い、それらに対応するドナーの添加または非添加で、HeLaOC細胞をコトランスフェクションし、ピューロマイシン(1μg/ml)を用いてスクリーニングした。スクリーニングして取得した細胞をPA/LFnDTAで処理し、PA/LFnDTAで処理した異なる細胞の画像は図5cに示される。purо+混合コロニー中の、当該毒素耐性を有する細胞の百分比を計算することによってANTXR1ノックアウト効率を確定し、図5dに示すように、sgRNAを単独に用いる場合より、線形ドナーDNAの使用は、ANTXR1遺伝子ノックアウト効率を大幅に高めた。
purо+の単一クローンについて、ANTXR1遺伝子上のドナーDonorANTXR1-sg1の組み込む部位でPCR検証をした結果、purо+の大部分のクローンはsgRNA標的部位にドナー挿入物を含み(図5eと図5f)、ドナーフラグメントを有する細胞の大部分が真の遺伝子ノックアウトクローンである(図5f)ことが分かった。
~500bp(長さは、野生型ANTXR1遺伝子に対応する)のPCRフラグメントおよび~1.8kb(長さは、野生型ANTXR1遺伝子プラスドナー挿入物に対応する)のPCRフラグメントについてゲノムシーケンシングを行った。結果を表4に示す。
【0150】
【表4】
【0151】
PCR検証結果(図5e)とシーケンシング結果(表4)から見えるように、大部分のクローンにはドナー挿入が一つしか含まれていない。ただし、ドナー陽性クローンでは、ほとんどの対立遺伝子が標的部位で編集(または突然変異が発生するという)されるが、ドナーを使用せずに濃縮する場合、単独のsgRNAに挿入または欠失突然変異(indels)が生じる効率は低い。この発見は明らかに、ドナー挿入とsgRNAまたはpgRNAの役割と密接に関連していることを示している。
【0152】
5、CRISPR/Casシステムのオフターゲット効果に対するドナーの影響
外部ドナーの使用がCRISPR/Casシステムのオフターゲット効果に影響を与えるかどうかを検査するために、splinkerette PCR分析によって全ゲノムの組み込む部位を見つけた[35~37]。
本実施例では、splinkerette PCR分析によって、ピューロマイシンによりスクリーニングした後に単一クローンおよび混合細胞クローン内のオフターゲットの挿入を検証した。ANTXR1遺伝子上に正しいドナー挿入がある場合、プライマーSplink2/R1とSplink2/R2で増幅するとそれぞれ711-と927-bpの産物が生じる(図6a参照)。
splinkerette PCR分析を行うために、HeLaOC細胞においてANTXR1を標的とした、ドナー挿入を有する10つの単一クローンと、4つのpurо+混合クローンとをランダムに選択した。splinkerette PCRの結果(図6b)によれば、ドナーでトランスフェクションされなかったクローンと同様に、ドナーによって濃縮された単一クローンまたは混合コロニーには、検測可能なオフターゲット効果はなかった。
【0153】
実施例5 線形ドナーDNAを利用した、HeLaOC細胞におけるHBEGF遺伝子上のノックアウトイベントの濃縮
【0154】
1、sgRNAの設計および線形ドナーDNAの構築
図7aに示すように、HeLaOC細胞におけるHBEGF遺伝子を標的とする2つのsgRNA(sgRNA1HBEGFとsgRNA2HBEGF)を設計し、三つの線形ドナーDNA(DonorHBEGF-sg1、DonorHBEGF-sg2、およびDonorHBEGF-pg)を構築した。sgRNA1HBEGFの標的配列は、本実施例ではsg1と呼ばれ、sgRNA2HBEGFの標的配列は、本実施例ではsg2と呼ばれる。
DonorHBEGF-sg1は5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg1、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。
DonorHBEGF-sg2は5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg2、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。
DonorHBEGF-pgは5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sg1、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、sg2、20bpの保護配列を含む。
【0155】
3、トランスフェクション
Cas9を発現するプラスミド、sgRNA1HBEGFまたはsgRNA2HBEGFまたはpgRNAHBEGF、およびそれらに対応するドナーでHeLaOC細胞をコトランスフェクションし、対照として、線形ドナーDNA(DonorHBEGF-sg1、DonorHBEGF-sg2、およびDonorHBEGF-pg)のみでHeLaOC細胞をトランスフェクションし、ピューロマイシンを加えて耐性でスクリーニングした。その結果は図7bに示される。
HeLa細胞における結果と同様に、ドナープラスsgRNAでしか大量のpurо+クローンを取得しなかった。
【0156】
4、遺伝子ノックアウトの効率の検証
purо+の単一クローンについて、HBEGF遺伝子上のドナーDonorHBEGF-sg1の組み込む部位でPCR検証を行い、PCR増幅に使用されたL2/R2プライマー配列は表5に示される。これから分かるように、purо+の大部分のクローンは、sgRNA標的部位にドナー挿入物を含んでおり(図7cと図7d)、ドナーフラグメントを有する細胞の大部分は真の遺伝子ノックアウトクローンである(図7d)。
【0157】
【表5】
【0158】
実施例6 線形ドナーDNAを利用した、HeLaOC細胞での二重遺伝子ノックアウト
1、sgRNAの設計
【0159】
HeLaOC細胞におけるPSEN1とPSEN2との2つの標的遺伝子を選択し、この二つの標的遺伝子をそれぞれ標的とする二つのsgRNAを設計し、それらが標的部位でIndelsを生成する効率をT7E1アッセイで検証し、検証の結果は表6に示される。sgRNA1PSEN1の標的配列は、本実施例ではsgPSEN1と呼ばれ、sgRNAPSEN2の標的配列は、本実施例ではsgPSEN2と呼ばれる。
【0160】
【表6】
【0161】
2、線形ドナーDNAの構築
2種類のドナーを構築した。図8aに示すように、1種類は二つの単独のドナー(DonorPSEN1+DonorPSEN2)を有し、各ドナーは、対応するsgRNAの標的配列を有し、もう1種類のドナー(DonorPSEN)は両端にそれぞれ2つのsgRNA標的配列を有する。DonorPSEN1またはDonorPSEN2は、その5’末端にsgRNAPSEN1またはsgRNAPSEN2の切断部位を有する。DonorPSEN1+PSEN2はその5’末端にsgRNAPSEN1の切断部位を有し、3’末端にsgRNAPSEN2の切断部位を有する。
DonorPSEN1は5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sgPSEN1、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。
DonorPSEN2は5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sgPSEN2、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。
DonorPSENは5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sgPSEN1、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、sgPSEN2、20bpの保護配列を含む。
【0162】
3、トランスフェクションおよび遺伝子ノックアウトの効率の検証
Cas9を発現するプラスミド、sgRNAPSEN1またはpgRNAPSEN2でHeLaOC細胞をコトランスフェクションし、または、Cas9を発現するプラスミド、pgRNAPSENでHeLaOC細胞をコトランスフェクションし、これによってPSEN1とPSEn2遺伝子の特定の部位にindelsを生成した。indelsの生成効率をT7E1により分析し[26](使用されたプライマーについて表7参照)、その結果は図9aに示される。それらのコトランスフェクションはいずれも一般的な活性のみを示した。
Cas9を発現するプラスミド、pgRNAPSEN、およびDonorPSENでHeLaOC細胞をコトランスフェクションし、または、Cas9を発現するプラスミド、pgRNAPSEN、およびDonorPSEN1+DonorPSEN2でHeLaOC細胞をコトランスフェクションし、ピューロマイシンを加えて耐性でスクリーニングして、purо+クローンを得ることができた(図9b参照)。前の実施例の結果と同様に、ドナープラスpgRNAでは大量のpurо+クローンを得た。
各トランスフェクションの結果について、purо+の単一クローンを取って、PSEN1とPSEN2遺伝子上の、ドナーDonorPSEN、およびDonorPSEN1+DonorPSEN2の組み込む部位についてPCR検証を行い、PCR増幅に使用されたプライマー配列は表7に示される。その中で、L3/R3は、PSEN1上の組み込む部位を増幅するためのものであり、L4/R4は、PSEN2上の組み込む部位を増幅するためのものであり、PCR検証結果は図9cに示す。2つの遺伝子がいずれもドナー挿入を含むクローンは、枠で表示され、クローン1とクローン2を選択してさらにゲノムシーケンシング解析をした結果、2つのクローンがいずれもPSEN1とPSEN2の破壊を示した(図8bと図8c)。
【0163】
【表7】
【0164】
実施例7 線形ドナーDNAを利用した、HeLaOC細胞での多遺伝子ノックアウト
【0165】
1、標的遺伝子の選択およびsgRNAの設計
HeLaOC細胞のHSPA遺伝子ファミリーを選択した。この遺伝子ファミリーは、HSAPA1A、HSPA1B、HSBA1L、HSPA6、およびHSPA2の5つの遺伝子を有し、これらは相同性を有する。図8dに示すように、HSAPA1A、HSPA1B、およびHSBA1Lを同時に標的とするsgRNAHSPAを設計し、このsgRNAの標的配列には、HSPA6の対応する配列と1つのミスマッチが有、HSPA2と2つのミスマッチがある。
【0166】
2、線形ドナーDNAの構築
線形ドナーDonorHSPAを構築し、5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sgHSPA、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む(図8d)。
【0167】
3、トランスフェクションおよび遺伝子ノックアウトの効率の検証
Cas9を発現するプラスミド、sgRNAHSPAを使用し、それに対応するドナーDonorHSPAが添加または非添加で、HeLaOC細胞をコトランスフェクションしてindelsを誘発し、ピューロマイシンを介して耐性でスクリーニングした。ドナーが添加されなかった群について、ピューロマイシン耐性遺伝子を発現するプラスミドと一緒にコトランスフェクションした。すべての5つの遺伝子のindels効率をT7E1アッセイ(使用されたプライマーについて表8参照)により評価し、その結果は図8eに示される。単独のsgRNAHSPAと比べて、ドナーHSPAを使用することにより、HSPA1A部位での突然変異率は約5.5倍増加し、HSPA1B部位での突然変異率は約6.1倍増加し、HSPA1L部位での突然変異率は約3.4倍増加し、HSPA6部位での突然変異率は約6.6倍増加した。興味深いことに、ドナーを使用してもしなくても、HSPA2遺伝子上にはindelsは検出されなかった。これは、2つのミスマッチがsgRNAHSPAの認識を完全に混乱させてしまい、さらに重要なことに、ドナーによるスクリーニングは、オフターゲット効果のリスクを増加しなかったことを示している。
ドナーとコトランスフェクションして、およびドナーとコトランスフェクションせずに得られた混合細胞のHSPAファミリー遺伝子の標的配列についてシーケンシングし、その結果は図10に示される。その結果、HSPAファミリー遺伝子部位上にドナートランスフェクションがあるかないかを問わず、細胞混合シーケンシングの結果は、T7E1アッセイの結果と一致している。
なお、T7E1アッセイは、スクリーニングされたコロニーが標的突然変異を有する細胞を高度に濃縮し、ドナーを使用しない従来の方法と比べて、濃縮係数は約753(5.5*6.1*3.4*6.6)であることを示した。この計算ではドナー挿入を有する遺伝子は考慮されてないことに鑑み、実際の効率向上はさらに大きい。
ピューロマイシン耐性を有する単一クローンについて、5つの標的部位上でPCR検証を行った。5つの遺伝子の標的部位を増幅するために使用された特異的プライマー(L5/R5、L6/R6、L7/R7、L8/R8、L9/R9)は表8に示される。その結果は図11aと11bに示される。少なくとも2つの標的遺伝子上にドナー挿入を有する6つのクローン(図において枠で表示され、それぞれ1~6と番号付けられた)を選択してゲノム配列分析をして、その結果を図11bに示される。クローン3は4つの遺伝子の対応する部位上で修飾があり、HSPA1A、HSPA1B、およびHSPA1L上にフレームシフト突然変異を有し、完全なノックアウトを生成し、HSPA6上に2つのフレーム内突然変異を有する(図8f)。
【0168】
【表8】
【0169】
実施例8 ユニバーサルsgRNAを含む線形ドナーDNAを利用した、SC-8細胞のCSPG4遺伝子上のノックアウトイベントの濃縮
【0170】
1、ユニバーサルsgRNAのスクリーニング
下記表に示すように、次の10つのsgRNAをスクリーニングの候補配列として選択した。
【0171】
【表9】
【0172】
2、線形ドナーDNAの構築
上記10つのユニバーサルsgRNAに基づいて10つの線形ドナーDNA(DonorsgRNA_Universal_1~10-purо)を構築した。
これらの線形ドナーDNAは5’から3’末端へそれぞれ、20bpの保護配列、sgRNAUniversal_1~10の標的配列、逆方向終止コドン、CMVプロモーターにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子、順方向終止コドン、20bpの保護配列を含む。
【0173】
3、タンデムsgRNAプラスミドの構築
上記10つの線形ドナーに基づいて10つのタンデムsgRNAプラスミド(PlasmidpgRNA_Universal_1~10)を構築し、その構造は図12に示す。
タンデムで接続する2つのsgRNAはそれぞれsgRNACSPG4とsgRNAUniversal_1~10である。sgRNACSPG4はTcdB毒素の受容体CSPG4を標的とし、sgRNAUniversal_1~10は、対応するドナーDNA(DonorsgRNA_Universal_1~10-purо)における標的配列を標的とする。
【0174】
4、トランスフェクション
トランスフェクション実験で使用した細胞株は、Cas9を安定的に発現する細胞株(SC-8)であり、10つのタンデムプラスミドPlasmidpgRNA_Universal_1~10と、対応するドナーDNA(DonorsgRNA_Universal_1~10-purо)とでSC-8細胞をコトランスフェクションし、対照として、10つの線形ドナーDNA(DonorsgRNA_Universal_1~10-purо)のみでSC-8細胞をトランスフェクションした。そして、ピューロマイシンを加えて耐性でスクリーニングして、混合コロニー(pооled pоpulatiоn)を得た。スクリーニングの結果は下記表に示される。
【0175】
【表10】
【0176】
上記の結果によると、sgRNAUniversal_1、sgRNAUniversal_3、sgRNAUniversal_6、およびsgRNAUniversal_9の4つのsgRNAの効果が良好であったため、これら4つのsgRNAに対応する混合コロニーを実験対象として後続実験で使用した。
【0177】
4、遺伝子ノックアウト効率の検証
TcdB毒素を4つの混合コロニーに加えてスクリーニングし、23時間後に細胞の生存を観察し、実験の結果を図13に示す。TcdB毒素を加えて23時間後、sgRNAUniversal_1とsgRNAUniversal_9を加えた実験群に対応する細胞生存率は、その他の2つの群よりも有意に高いことが分かり、これは、sgRNAUniversal_1とsgRNAUniversal_9の遺伝子ノックアウト効率がより高いことを示している。
【0178】
上記実施例1~7で使用された材料および方法は下記通りである。
細胞培養とトランスフェクション
HeLa、HeLaOC、およびHEK293T細胞は、10%ウシ胎児血清(FBS、蘭州百霊生物技術有限公司、蘭州、中国)が添加されたDulbecco‘s modified Eagle’s培地(DMEM、10-013-CV、Corning,Tewksbury,MA,USA)に保持され、温度は37℃で、5%COが導入された。トランスフェクションのために、すべての細胞を6ウェルプレートに播種し、X-tremeGENE HP(06366546001,Roche,Mannheim,Germany)でメーカーのプロトコルに従ってトランスフェクションした。簡単に説明すると、2μgのDNAと4μlのX-tremeGENE HPを200μlのOpti-MEM I Reduced Serum Medium(31985088,Thermo Fisher Scientific,Grand Island,NY,USA)に加えた。混合物を室温で15分間インキュベーションした後、細胞に加えた。
【0179】
gRNA発現プラスミドのクローニング
sgRNAを発現するプラスミドについて、各sgRNAコード配列のオリゴヌクレオチドを個別に設計し(表9参照)、合成した(北京睿博興科生物技術有限公司)。
【0180】
【表11】
【0181】
オリゴヌクレオチドを1×TEで10μMの濃度に溶解し、Trans Taq HiFi Buffer II(K10222、北京全式金生物技術有限公司)を使用してペアになったオリゴヌクレオチドを混合し、95℃に加熱して3分間保持してから、4℃までゆっくり冷却した。これらのアニーリングされたオリゴヌクレオチドペアを37℃で30分間リン酸化し、加熱して不活性化させた後、「Golden Gate」法を使用して生成物をsgRNA骨格ベクターにライゲーションした。pgRNAを発現するプラスミドについて、2つのgRNAコード配列を含むプライマーでgRNAのscaffold配列とU6プロモーターを増幅し(表5)、そしてPCR産物を精製し、「Golden Gate」法を使用してsgRNA骨格ベクターにライゲーションした。以前に報告されたsgRNA骨格ベクター[17]と比べて、本発明のsgRNA骨格ベクターはsgRNA骨格を改変し[38]、EGFP配列をmCherryコード配列に置き換えた。
【0182】
T7E1アッセイ
DNeasy Blood & Tissue kit(69504、Qiagen,Hilden,Germany)を使用してゲノムDNAを抽出し、gRNA標的配列を含むゲノム領域に対してPCR増幅をした。アッセイに使用したプライマー配列は表2、表5、表7、表8に示される。使用されたプライマー配列について、50μlシステムから300~500ngのPCR産物を取り、10×NEB Buffer2と混合し、95℃で3分間加熱してから、室温までゆっくり冷却した。得られた生成物に0.5μlのT7E1を加え、37℃で15分間インキュベーションした後、アガロースゲル電気泳動にかけた。電気泳動画像について、バンド切断の効率をImage J画像分析ソフトウェアで分析し、sgRNAがIndelsを生成する効率を示した。
【0183】
線形ドナーの構築
CMVにより駆動されるピューロマイシン耐性遺伝子またはEGFP遺伝子を含むドナーおよび終止コドンの配列を予め生成し、pEASY-T5-Zerоクローンベクター(CT501-02、北京全式金生物技術有限公司)にクローニングしてユニバーサルテンプレートとした。sgRNA切断標的部位と保護配列を含むプライマーを用いてテンプレートを増幅した。プライマー配列は表10に示される。
【0184】
【表12】
【0185】
【表13】
【0186】
NHEJに基づいたドナー挿入および細胞スクリーニング
HeLaOC細胞では、1μgの精製された線形ドナーPCR産物と1μgのsgRNA/pgRNAとを用いて細胞をトランスフェクションした。トランスフェクションの2週間後、1μg/mlのピューロマイシンで細胞を処理した。HeLaとHEK293T細胞において、1μgのドナー、0.5μgのsgRNA/pgRNA、および0.5μgのCas9プラスミドで細胞をトランスフェクションした。そして、トランスフェクションの2週間後、使用するドナーの種類に応じて、1μg/mlのピューロマイシで細胞を処理するか、または、蛍光活性化セルソーティング(FACS)によってEGFP陽性を確定した。
【0187】
Splinkerette PCR
Splinkerette PCR法は以前に報告されている(Potter, C.J. & Luo, L. Splinkerette PCR for mapping transposable elements in Drosophila. PLoS One 5, e10168 (2010); Uren, A.G. et al. A high-throughput splinkerette-PCR method for the isolation and sequencing of retroviral insertion sites. Nat Protoc 4, 789-798 (2009);Yin, B. & Largaespada, D.A. PCR-based procedures to isolate insertion sites of DNA elements. Biotechniques 43, 79-84 (2007))。使用されたプライマーとアダプター(adaptоr)の配列は表11に示される。
【0188】
【表14】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
【配列表】
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