IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人京都大学の特許一覧 ▶ フォルシア株式会社の特許一覧

特許7109027需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム
<>
  • 特許-需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム 図1
  • 特許-需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム 図2
  • 特許-需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム 図3
  • 特許-需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム 図4
  • 特許-需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム 図5
  • 特許-需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム 図6
  • 特許-需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム 図7
  • 特許-需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム 図8
  • 特許-需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 30/02 20120101AFI20220722BHJP
   G06Q 50/12 20120101ALI20220722BHJP
【FI】
G06Q30/02 310
G06Q50/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2019154153
(22)【出願日】2019-08-26
(65)【公開番号】P2021033718
(43)【公開日】2021-03-01
【審査請求日】2021-05-28
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 https://annual2019.jsiam.org/ (令和1年8月23日) 〔刊行物等〕 https://annual2019.jsiam.org/wp-admin/admin.php?page=control_panel (令和1年8月23日)
(73)【特許権者】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(73)【特許権者】
【識別番号】502133251
【氏名又は名称】フォルシア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】梅野 健
(72)【発明者】
【氏名】新谷 健
(72)【発明者】
【氏名】原 旅人
(72)【発明者】
【氏名】東川 翔
(72)【発明者】
【氏名】長峰 駿介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 みちる
(72)【発明者】
【氏名】洲巻 圭介
【審査官】安田 勇太
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-256702(JP,A)
【文献】国際公開第2016/151640(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00 -99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のサービスを提供する主体が受け付けた前記サービスの予約数について、前記サービスの提供日前の時点tまでの日ごとに生じた予約数の時系列での推移を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記時点tまでの日ごとに生じた予約数の時系列での推移に基づいて、前記サービスの提供日までの日ごとに生じる予約数の時系列での推移を示す第1の指数関数を導出し、前記第1の指数関数を用いて前記サービスの提供日までの予約数の合計を推定する推定部と、
前記推定部により推定された前記サービスの提供日までの予約数の合計に基づく予測情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする需要予測システム。
【請求項2】
前記取得部は、前記サービスが予約後にキャンセルされた数について、前記サービスの提供日前の時点tまでの日ごとに生じたキャンセル数の時系列での推移をさらに取得し、
前記推定部は、前記時点tまでの日ごとに生じたキャンセル数の時系列での推移に基づいて、前記サービスの提供日までの日ごとに生じるキャンセル数の時系列での推移を示す第2の指数関数を導出し、前記第2の指数関数を用いて前記サービスの提供日までのキャンセル数の合計を推定し、
前記出力部は、前記サービスの提供日までの予約数の合計からキャンセル数の合計を減じた値に基づく予測情報を出力することを特徴とする請求項1に記載の需要予測システム。
【請求項3】
所定のサービスを提供する複数の主体をそれぞれ含む複数のグループであって、前記サービスが提供されるエリアを含む属性の少なくとも一部が異なる複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおける前記サービスの提供日までの日ごとに生じる予約数の時系列での推移を近似した指数関数に関する情報を記憶する第1記憶部と、
前記複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおいて複数の主体のそれぞれが予約される確率を記憶する第2記憶部と、
前記サービスを提供する予測対象となる主体である対象主体に関する情報を取得する取得部と、
前記複数のグループのうち前記対象主体を含むグループである対象グループについて前記第1記憶部に記憶された前記対象グループに対応する指数関数と、前記第2記憶部に記憶された前記対象主体が予約される確率とをもとに、前記対象主体が提供する前記サービスの提供日までの予約数の合計を推定する推定部と、
前記推定部により推定された予約数の合計に基づく予測情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする需要予測システム。
【請求項4】
前記第1記憶部に記憶される指数関数に関する情報は、時定数を含み、
前記取得部は、前記サービスの提供日までの予約数の合計に関して前記対象主体が定める目標値と、前記サービスの提供日前の予測対象となる時点tとをさらに取得し、
前記推定部は、前記対象グループに対応する指数関数の時定数と、前記対象主体が定める目標値とをもとに、前記目標値を達成するための値として、前記時点tまでの予約数の合計の適正値をさらに推定することを特徴とする請求項3に記載の需要予測システム。
【請求項5】
前記第1記憶部は、前記複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおける前記サービスの提供日までの日ごとに生じるキャンセル数の時系列での推移を近似した指数関数に関する情報をさらに記憶し、
前記推定部は、前記対象グループに対応する前記キャンセル数の推移を近似した指数関数と、前記対象主体が予約される確率とをもとに、前記対象主体が提供する前記サービスの提供日までのキャンセル数の合計をさらに推定し、
前記出力部は、前記推定部により推定された予約数の合計からキャンセル数の合計を減じた値に基づく予測情報を出力することを特徴とする請求項3または4に記載の需要予測システム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の需要予測システムから出力された予測情報が示す前記サービスの提供日までの予約数の合計と、前記予約数の合計に関して定められた目標値との比較結果に応じて、前記サービスの価格の変更に関する情報を生成することを特徴とする価格決定システム。
【請求項7】
請求項2または請求項5に記載の需要予測システムから出力された予測情報が示す前記サービスの提供日までの予約数の合計から前記サービスの提供日までのキャンセル数の合計を減じた値と、前記予約数の合計からキャンセル数の合計を減じた値に関して定められた目標値との比較結果に応じて、前記サービスの価格の変更に関する情報を生成することを特徴とする価格決定システム。
【請求項8】
請求項2または請求項5に記載の需要予測システムから出力された予測情報が示す前記サービスの提供日までのキャンセル数の合計と、前記キャンセル数の合計に関して定められた目標値との比較結果に応じて、前記サービスの価格の変更に関する情報を生成することを特徴とする価格決定システム。
【請求項9】
所定のサービスを提供する主体が受け付けた前記サービスの予約数について、前記サービスの提供日前の時点tまでの日ごとに生じた予約数の時系列での推移を取得し、前記サービスが予約後にキャンセルされた数について、前記サービスの提供日前の時点tまでの日ごとに生じたキャンセル数の時系列での推移を取得する取得部と、
前記取得部により取得された前記時点tまでの日ごとに生じた予約数の時系列での推移に基づいて、前記サービスの提供日までの日ごとに生じる予約数の時系列での推移を示す第1の指数関数を導出し、前記取得部により取得された前記時点tまでの日ごとに生じたキャンセル数の時系列での推移に基づいて、前記サービスの提供日までの日ごとに生じるキャンセル数の時系列での推移を示す第2の指数関数を導出する導出部と、
前記導出部により導出された第1の指数関数のパラメータと第2の指数関数のパラメータとを比較した結果に関する情報を出力する出力部と、
を備えることを特徴とする情報処理システム。
【請求項10】
所定のサービスを提供する主体が受け付けた前記サービスの予約数について、前記サービスの提供日前の時点tまでの日ごとに生じた予約数の時系列での推移を取得する機能と、
前記取得する機能により取得された前記時点tまでの日ごとに生じた予約数の時系列での推移に基づいて、前記サービスの提供日までの日ごとに生じる予約数の時系列での推移を示す第1の指数関数を導出し、前記第1の指数関数を用いて前記サービスの提供日までの予約数の合計を推定する機能と、
前記推定する機能により推定された前記サービスの提供日までの予約数の合計に基づく予測情報を出力する機能と、
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項11】
所定のサービスを提供する複数の主体をそれぞれ含む複数のグループであって、前記サービスが提供されるエリアを含む属性の少なくとも一部が異なる複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおける前記サービスの提供日までの日ごとに生じる予約数の時系列での推移を近似した指数関数に関する情報を記憶する第1記憶部と、前記複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおいて複数の主体のそれぞれが予約される確率を記憶する第2記憶部と、にアクセス可能なコンピュータに、
前記サービスを提供する予測対象となる主体である対象主体に関する情報を取得する機能と、
前記複数のグループのうち前記対象主体を含むグループである対象グループについて前記第1記憶部に記憶された前記対象グループに対応する指数関数と、前記第2記憶部に記憶された前記対象主体が予約される確率とをもとに、前記対象主体が提供する前記サービスの提供日までの予約数の合計を推定する機能と、
前記推定する機能により推定された予約数の合計に基づく予測情報を出力する機能と、
を実現させるためのコンピュータプログラム。
【請求項12】
請求項10または11に記載のコンピュータプログラムから出力された予測情報が示す前記サービスの提供日までの予約数の合計と、前記予約数の合計に関して定められた目標値との比較結果に応じて、前記サービスの価格の変更に関する情報を生成することを特徴とするコンピュータプログラム。
【請求項13】
所定のサービスを提供する主体が受け付けた前記サービスの予約数について、前記サービスの提供日前の時点tまでの日ごとに生じた予約数の時系列での推移を取得し、前記サービスが予約後にキャンセルされた数について、前記サービスの提供日前の時点tまでの日ごとに生じたキャンセル数の時系列での推移を取得する機能と、
前記取得する機能により取得された前記時点tまでの日ごとに生じた予約数の時系列での推移に基づいて、前記サービスの提供日までの日ごとに生じる予約数の時系列での推移を示す第1の指数関数を導出し、前記取得する機能により取得された前記時点tまでの日ごとに生じたキャンセル数の時系列での推移に基づいて、前記サービスの提供日までの日ごとに生じるキャンセル数の時系列での推移を示す第2の指数関数を導出する機能と、
前記導出する機能により導出された第1の指数関数のパラメータと第2の指数関数のパラメータとを比較した結果に関する情報を出力する機能と、
をコンピュータに実現させるためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データ処理技術に関し、特に需要予測システム、価格決定システム、情報処理システムおよびコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
機械学習モデルを利用して宿泊施設における適正な宿泊料金を設定する宿泊料金設定装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2019-16035号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の技術では、多くの宿泊施設における過去の実績データ(例えば客室予約数の時系列変化の情報)が十分にない場合、精度のよい機械学習モデルの構築が困難である。
【0005】
本発明はこうした課題に鑑みてなされたものであり、1つの目的は、サービスの提供者にとって有用な情報を効率的に提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の需要予測システムは、所定のサービスを提供する主体が受け付けたサービスの予約数について、サービスの提供日前の時点tまでの時系列での予約数の推移を取得する取得部と、取得部により取得された時点tまでの時系列での予約数の推移に基づいて、サービスの提供日までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、第1の指数関数を用いてサービスの提供日までの予約数の合計を推定する推定部と、推定部により推定されたサービスの提供日までの予約数の合計に基づく予測情報を出力する出力部と、を備える。
【0007】
本発明の別の態様もまた、需要予測システムである。この需要予測システムは、所定のサービスを提供する複数の主体をそれぞれ含む複数のグループであって、サービスが提供されるエリアを含む属性の少なくとも一部が異なる複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおけるサービスの提供日までの時系列での予約数の推移を近似した指数関数に関する情報を記憶する第1記憶部と、複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおいて複数の主体のそれぞれが予約される確率を記憶する第2記憶部と、サービスを提供する予測対象となる主体である対象主体に関する情報を取得する取得部と、複数のグループのうち対象主体を含むグループである対象グループについて第1記憶部に記憶された対象グループに対応する指数関数と、第2記憶部に記憶された対象主体が予約される確率とをもとに、対象主体が提供するサービスの提供日までの予約数の合計を推定する推定部と、推定部により推定された予約数の合計に基づく予測情報を出力する出力部と、を備える。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、価格決定システムである。この価格決定システムは、上記いずれかの需要予測システムから出力された予測情報が示すサービスの提供日までの予約数の合計と、予約数の合計に関して定められた目標値との比較結果に応じて、サービスの価格の変更に関する情報を生成する。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、情報処理システムである。この情報処理システムは、所定のサービスを提供する主体が受け付けたサービスの予約数について、サービスの提供日前の時点tまでの時系列での予約数の推移を取得し、サービスが予約後にキャンセルされた数について、サービスの提供日前の時点tまでの時系列でのキャンセル数の推移を取得する取得部と、取得部により取得された時点tまでの時系列での予約数の推移に基づいて、サービスの提供日までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数を導出し、取得部により取得された時点tまでの時系列でのキャンセル数の推移に基づいて、サービスの提供日までの時系列でのキャンセル数の推移を示す第2の指数関数を導出する導出部と、導出部により導出された第1の指数関数のパラメータと第2の指数関数のパラメータとを比較した結果に関する情報を出力する出力部と、を備える。
【0010】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を装置、コンピュータプログラム、コンピュータプログラムを読み取り可能に記録した記録媒体などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、サービスの提供者にとって有用な情報を効率的に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実データの曲線フィッティングの結果を示す図である。
図2】第1実施例の通信システムの構成を示す図である。
図3】第1実施例の需要予測装置の機能ブロックを示すブロック図である。
図4】予約関数を模式的に示す図である。
図5】予約関数とキャンセル関数を模式的に示す図である。
図6】第3実施例の需要予測装置の機能ブロックを示すブロック図である。
図7】第4実施例の情報処理装置の機能ブロックを示すブロック図である。
図8】第5実施例の通信システムの構成を示す図である。
図9図8の価格決定装置の機能ブロックを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施例では、宿泊施設(ホテル等)の需要予測(予約数およびキャンセル数の予測)を例示するが、実施例に記載の技術は、宿泊施設に限られず、供給量が制限されたサービス全般の需要予測に適用可能である。例えば、旅客輸送、スポーツ、コンサート、リラクゼーション、映画、駐車場、アミューズメント、美容、浴場、レジャー等のサービスにおける需要予測にも適用可能である。
【0014】
実施例のシステムを説明する前に、実施例で使用する需要予測アルゴリズムについて説明する。
まず、予約数とキャンセル数に対する定義を与える。実施例では、宿泊施設における或る日の宿泊予約数X(t)とキャンセル数Y(t)が、以下の関数にしたがって振る舞うものとする。
【数1】
【0015】
ただし、A>B>0とする。また、tは、宿泊日(言い換えればサービス提供日)より何日前かを示す値(単位:日)である。また、φ(t)とφ(t)は、以下を満たすものとする。
【数2】
つまり、X(0)=A,X(∞)=0,Y(0)=B,Y(∞)=0となる。
このとき、以下を仮説として置く。
【0016】
任意の0≦t<tに対し、次の式が成立するとする。
φ(t)=φ(t)φ(t-t) ・・・(式1)
式1に対する直感的な理解を与える。
ある区間εと日付αが与えられたとき、式1は以下の性質を持つ。
φ(α)=φ(0)φ(α-0)=φ(α)
φ(α+ε)=φ(α)φ(ε)
すなわち、ε日後(あるいはε日前)の値は、α日時点での値によらず、そこから一定の割合だけ減る(或いは増える)という性質を持つ。
【0017】
この性質は、自然界において原子の半減期の性質にも見られるような自己比例を意味し、すなわち観測数の変化が、その時点での観測数に比例することを意味している。すなわち、人の予約行動を自然現象と見なし、予約数は、期日(予約の対象となる日であって、言い換えればサービス提供日)から遠ざかるにつれて(例えばその距離に比例して)日々減少していくことを仮定したことになる。
【0018】
予約数とキャンセル数に対して上記の定義と仮説を置いた場合、φ(t)とφ(t)は、陽に表すことができる。
【数3】
ただし、τとτは、正の時定数であり、言い換えれば、予約数とキャンセル数の変化を司る定数パラメータである。サービス提供者が宿泊施設の場合、τとτは、リードタイムとも言え、予約数とキャンセル数の増加度合いが大きくなるタイミングに応じた定数である。
【0019】
図1は、実データの曲線フィッティングの結果を示す。図1の横軸は、上記のtを示し、すなわち宿泊施設に対する予告が行われた日(宿泊日の何日前か)を示している。図1の縦軸は、予約数またはキャンセル数を対数スケールで示している。ポイント100は、ある時点tにおける予約数を示す実データであり、ポイント102は、ある時点tにおけるキャンセル数を示す実データである。予約曲線104は、ポイント100の推移を近似した曲線であり、キャンセル曲線106は、ポイント102の推移を近似した曲線である。
【0020】
既述したように、図1の縦軸は対数スケールであるため、予約曲線104とキャンセル曲線106はともに指数関数となる。本発明者は、実データを用いた検証により、宿泊施設における予約数X(t)とキャンセル数Y(t)は、以下の関数系に相応しくフィッティングされることを発見した。
【数4】
なお、Aは、サービス提供当日(宿泊日当日)の予約数であり、Bは、サービス提供当日(宿泊日当日)のキャンセル数である。
【0021】
以上の結果を予測アルゴリズムに転換する。上記の仮説「予約数は、宿泊日から前に遡るにつれ、その数(宿泊日からの距離)に比例して日々減少していく」ことが一定程度正しいことに基づくと、以下は情報として等価なものとなる。
「予約数は、宿泊日から前に遡るにつれ、その数に比例して日々減少していく」
「予約数は、宿泊日から前に遡るにつれ、指数関数的に減少していく」
「予約数は、(未来の)宿泊日に向かって近づくにつれ、指数関数的に増加していく」
したがって、上記の式2を予約数の予測に用いることができ、また、上記の式3をキャンセル数の予測に用いることができることがわかる。
【0022】
以上説明した需要予測アルゴリズムを利用する実施例を詳細に説明する。
<第1実施例>
図2は、第1実施例の通信システム10の構成を示す。通信システム10は、ユーザ装置12で総称されるユーザ装置12a、ユーザ装置12b、ユーザ装置12cと、需要予測装置14とを備える。通信システム10の各装置は、LAN、WAN、インターネット等を含む通信網16を介して接続される。
【0023】
複数のユーザ装置12は、所定のサービス(実施例では宿泊サービス)の複数の提供者(実施例では宿泊施設)が使用する情報処理装置である。例えば、ユーザ装置12aは、ホテルAの担当者が使用し、ユーザ装置12bは、ホテルBの担当者が使用し、ユーザ装置12cは、ホテルCの担当者が使用してもよい。また、各ユーザ装置12は、PC、スマートフォンまたはタブレット端末であってもよい。
【0024】
需要予測装置14は、上記の需要予測アルゴリズムを使用して需要予測サービスを提供する情報処理装置である。第1実施例の需要予測装置14は、ウェブサーバの機能を備え、需要予測サービスをウェブアプリケーション(ウェブサービス)として提供する。
【0025】
図3は、第1実施例の需要予測装置14の機能ブロックを示すブロック図である。本明細書のブロック図で示す複数の機能ブロックは、ハードウェア的には、回路ブロック、メモリ、その他のLSIで構成することができ、ソフトウェア的には、メモリにロードされたプログラムをCPUが実行すること等により実現される。したがって、これらの機能ブロックがハードウェアのみ、ソフトウェアのみ、またはそれらの組合せによっていろいろな形で実現できることは当業者には理解されるところであり、いずれかに限定されるものではない。
【0026】
需要予測装置14は、制御部20と通信部22を備える。制御部20は、各種データ処理を実行する。通信部22は、所定の通信プロトコルにしたがって外部装置と通信する。制御部20は、通信部22を介してユーザ装置12とデータを交換する。
【0027】
制御部20は、予約情報取得部30、推定部32、予測情報出力部34を含む。これら複数の機能ブロックに対応する複数のモジュールが実装されたコンピュータプログラムは記録媒体に格納されてよく、その記録媒体を介して需要予測装置14のストレージにインストールされてもよい。または、上記のコンピュータプログラムは、外部装置から通信網を介してダウンロードされて需要予測装置14のストレージにインストールされてもよい。需要予測装置14のCPUは、上記コンピュータプログラムをメインメモリに読み出して実行することにより、上記複数の機能ブロックの機能を発揮してもよい。以降のブロック図についても同様である。
【0028】
予約情報取得部30は、所定のサービス(例えば宿泊サービス)を提供する主体が受け付けた上記サービスの予約数に関する情報であって、上記サービスの提供日前の時点tまでの時系列での予約数の推移を示す情報である予約情報を取得する。
【0029】
推定部32は、予約情報取得部30により取得された予約情報が示す時点tまでの時系列での予約数の推移(予約実績とも言え、観測データとも言える)に基づいて、サービス提供日までの時系列での予約数の推移を示す指数関数(以下「予約関数」とも呼ぶ。)を導出する。推定部32は、導出した予約関数を用いてサービス提供日までの予約数の合計を推定する。
【0030】
図4は、予約関数を模式的に示す。図4の横軸は、サービス提供日までの残り日数tである。図4の縦軸は、サービスの予約数X(t)である。図4では縦軸を通常スケールで示している。推定部32は、予約情報が示す時点t(例えば30日前)までの予約数の推移を上記の式2にフィッティングして式2のパラメータAおよびτを推定することにより予約関数110を導出する。このとき、サービス提供日(すなわちt=0)までの予約数の合計は、0≦t<∞でX(t)を積分することにより求められ、Aτとなる。推定部32は、予約関数110のAτを求めることによりサービス提供日までの予約数の合計を推定する。
【0031】
図3に戻り、予測情報出力部34は、推定部32により推定されたサービス提供日までの予約数の合計に基づく予測情報を出力する。実施例では、予測情報出力部34は、予測情報をユーザ装置12へ送信して、ユーザ装置12(ユーザ装置12側の表示装置)に予測情報を表示させる。変形例として、予測情報出力部34は、予測情報をユーザ装置12以外の表示装置に表示させ、または、ユーザ装置12以外の記憶装置に記憶させてもよい。
【0032】
予測情報は、典型的には、推定部32により推定されたサービス提供日までの予約数の合計を示すものであるが、その合計を加工した情報を含んでもよい。また、予測情報は、推定部32により導出された予約関数に関する情報(グラフ等)を含んでもよく、時点t1から対象日までの各日で受け付けることが予想される予約数を含んでもよい。
【0033】
第1実施例の通信システム10の動作を説明する。宿泊施設のレベニューマネージャは、ユーザ装置12を操作して需要予測装置14が提供するウェブサイトにアクセスする。レベニューマネージャは、ある未来日(「対象日」と呼ぶ。)における予約数の見込を得たい場合、現在(上記のtに相当)までに受付済の対象日の宿泊予約数の推移を示す予約情報をユーザ装置12から需要予測装置14へ送信させる。なお、予約情報では、対象日と時点tとが明示的に指定されてもよい。
【0034】
需要予測装置14の予約情報取得部30は、ユーザ装置12から送信された予約情報を受け付ける。需要予測装置14の推定部32は、予約情報に基づいて予約関数110を導出し、予約関数110(すなわちAおよびτ)を用いて対象日までの予約数の合計を推定する。需要予測装置14の予測情報出力部34は、対象日までの予約数の合計を示す予測情報をユーザ装置12へ送信して表示させる。
【0035】
宿泊施設のレベニューマネージャは、需要予測装置14から提供された予測情報が示す対象日までの予約数の合計が、自施設の客室数や目標の稼働率により定まる目標値より低い場合、対象日の宿泊料金を下げるという意思決定が可能になる。一方、レベニューマネージャは、予測情報が示す対象日までの予約数の合計が上記目標値を上回る場合、対象日の宿泊料金を上げるという意思決定が可能になる。
【0036】
このように第1実施例の需要予測装置14によると、予測対象となるサービス提供者における予約実績に基づいて、任意の対象日までの予約数の合計に関する予測情報を提供することができる。これにより、サービス提供者におけるレベニューマネジメントやダイナミックプライシングを支援することができる。また、多くの過去の実績データは不要であるため、利用者の負担を軽減しつつ、精度よい予測情報を提供することができる。
【0037】
変形例を説明する。需要予測装置14は、物理的に複数の装置を含んでもよい。すなわち、複数の装置を含み得る情報処理システムが、上記実施例の需要予測装置14の機能を発揮してもよい。この場合、上記実施例の需要予測装置14の機能は、複数の装置に分散して配置されてもよく、複数の装置がシステムとして連携することにより上記実施例の需要予測装置14の機能を発揮してもよい。別の態様として、上記実施例の需要予測装置14の機能を含むアプリケーションがユーザ装置12にインストールされてもよい。この場合、ユーザ装置12がスタンドアロンにて上記実施例の需要予測装置14の機能を発揮してもよい。
【0038】
<第2実施例>
本実施例について、第1実施例と相違する点を中心に以下説明し、共通する点の説明を省略する。第2実施例の特徴は、既述の第1実施例および変形例の特徴と任意の組合せが可能であることはもちろんである。
【0039】
第2実施例における通信システム10の構成と需要予測装置14の機能ブロックは、第1実施例と同様である(図2および図3)。第2実施例の需要予測装置14は、キャンセルを加味した予測情報を提供する。具体的には、予約情報取得部30は、所定のサービス(例えば宿泊サービス)が予約後にキャンセルされた数に関する情報であって、上記サービスの提供日前の時点tまでの時系列でのキャンセル数の推移を示す情報であるキャンセル情報をさらに取得する。なお、第1実施例に記載した予約情報の時点tと、キャンセル情報の時点tは、同じであってもよく、異なってもよい。
【0040】
推定部32は、予約情報取得部30により取得されたキャンセル情報が示す時点t2までの時系列でのキャンセル数の推移に基づいて、サービス提供日までの時系列でのキャンセル数の推移を示す指数関数(以下「キャンセル関数」とも呼ぶ。)を導出する。推定部32は、キャンセル関数を用いてサービス提供日までのキャンセル数の合計を推定する。
【0041】
図5は、予約関数とキャンセル関数を模式的に示す。図5の横軸は、サービス提供日までの残り日数tである。図5の縦軸は、サービスの予約数X(t)またはキャンセル数Y(t)である。図5でも縦軸を通常スケールで示している。推定部32は、キャンセル情報が示す時点t(例えば35日前)までのキャンセル数の推移を上記の式3にフィッティングして式3のパラメータBおよびτを推定することによりキャンセル関数112を導出する。このとき、サービス提供日(t=0)までのキャンセル数の合計は、0≦t<∞でY(t)を積分することにより求められ、Bτとなる。推定部32は、キャンセル関数112のBτを求めることによりサービス提供日までのキャンセル数の合計を推定する。
【0042】
予測情報出力部34は、サービスの提供日までの予約数の合計(すなわち予約関数110のAτ)からキャンセル数の合計(すなわちキャンセル関数112のBτ)を減じた値に基づく予測情報を出力する。サービスの提供日までの予約数の合計からキャンセル数の合計を減じた値は、受け付けた予約全体の中からキャンセル分を除外した「実予約数」とも言える。予測情報は、推定部32により導出された予約関数110およびキャンセル関数112に関する情報(グラフ等)を含んでもよく、また、対象日までの各日で受け付けることが予想される予約数およびキャンセル数を含んでもよい。
【0043】
第2実施例の通信システム10の動作を説明する。宿泊施設のレベニューマネージャは、ある未来日(「対象日」と呼ぶ。)における実予約数の見込を得たい場合、現在までに受付済の対象日の宿泊予約数の推移を示す予約情報と、現在までに受付済の対象日の宿泊キャンセル数の推移を示すキャンセル情報とをユーザ装置12から需要予測装置14へ送信させる。この場合、予約情報の時点tとキャンセル情報の時点tは同じになる。なお、キャンセル情報では、対象日と時点tとが明示的に指定されてもよい。
【0044】
需要予測装置14の予約情報取得部30は、ユーザ装置12から送信された予約情報とキャンセル情報を受け付ける。需要予測装置14の推定部32は、予約情報に基づいて予約関数110を導出し、予約関数110を用いて対象日までの予約数の合計を推定する。それとともに推定部32は、キャンセル情報に基づいてキャンセル関数112を導出し、キャンセル関数112を用いて対象日までのキャンセル数の合計を推定する。需要予測装置14の予測情報出力部34は、対象日までの予約数の合計からキャンセル数の合計を減じた実予約数を示す予測情報をユーザ装置12へ送信して表示させる。
【0045】
このように第2実施例の需要予測装置14によると、キャンセル分を除外した対象日における実予約数の見込をサービス提供者に提供できる。これにより、サービス提供者におけるレベニューマネジメントやダイナミックプライシングを一層効果的に支援することができる。
【0046】
<第3実施例>
本実施例について、第1実施例と相違する点を中心に以下説明し、共通する点の説明を省略する。第3実施例の特徴は、既述の第1実施例、第2実施例および変形例の特徴と任意の組合せが可能であることはもちろんである。
【0047】
本発明者は、上記の式2および式3で示した需要予測アルゴリズムが、同じサービスを提供する複数のサービス提供者のグループ(「カテゴリ」とも言える。)にも当てはまることを発見した。そこで第3実施例では、グループの需要予測からそのグループ内の特定のサービス提供者に対する需要を予測する技術を提案する。
【0048】
第3実施例における通信システム10の構成は、第1実施例と同様である。図6は、第3実施例の需要予測装置14の機能ブロックを示すブロック図である。需要予測装置14は、制御部20により参照または更新されるデータの記憶領域である記憶部24をさらに備える。記憶部24は、指数関数記憶部40と選択確率記憶部42を含む。制御部20は、予約情報取得部50、導出部52、要求取得部54、推定部56、予測情報出力部58を含む。
【0049】
指数関数記憶部40は、所定のサービスを提供する複数の主体をそれぞれ含む複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおけるサービス提供日までの時系列での予約数の推移を近似した指数関数に関する情報を記憶する。複数のグループは、上記所定のサービスに関する属性の少なくとも一部が異なる。サービスに関する属性は、少なくともサービスが提供されるエリア(渋谷、新宿等)を含み、実施例ではサービスが提供される価格帯、曜日および季節をさらに含む。指数関数に関する情報は、式2に対応する予約関数のAおよびτを含む。また、指数関数に関する情報は、式3に対応するキャンセル関数のBおよびτを含む。
【0050】
選択確率記憶部42は、複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおいて複数の主体(すなわちサービス提供者)のそれぞれが、サービス利用者(顧客、消費者等)により予約される確率を記憶する。予約される確率は、予約先として選択される確率とも言え、サービス提供者が有する競争力とも言え、サービス提供者が保持する市場シェアとも言える。
【0051】
予約情報取得部50は、第1実施例の予約情報取得部30に対応する。予約情報取得部50は、所定のサービス(例えば宿泊サービス)を提供する主体が受け付けた上記サービスの予約数に関する情報であって、上記サービスの提供日までの時系列での予約数の推移を示す予約情報を取得する。予約情報取得部50は、複数の主体に対応する複数の予約情報を取得する。例えば、予約情報取得部50は、旅行予約ポータルサイトを提供するシステムから、そのシステムに記憶された複数の主体に対する予約実績に基づく複数の予約情報を取得してもよい。
【0052】
導出部52は、第1実施例の推定部32に対応する。導出部52は、予約情報取得部50により取得された複数の主体に対応する複数の予約情報を、各主体が属するグループごとに分類する。導出部52は、グループごとに複数の予約情報が示すサービス提供日までの時系列での予約数の推移を上記の式2にフィッティングすることにより、グループごとに予約数の推移を近似した指数関数である予約関数を導出する。すなわち、導出部52は、グループごとに式2のAおよびτを推定する。導出部52は、導出した予約関数に関する情報(Aおよびτを含む)を指数関数記憶部40に格納する。
【0053】
第3実施例の予約関数X(t)は、サービス提供日前の時点tにおける或るグループi(例えばエリア、価格帯、曜日、季節が一致する宿泊施設群)に対する予約数の時間推移を示すものであり、以下の式4で表される。式4は、式2にグループの概念を導入したものである。
【数5】
式4のAは、グループiにおけるサービス提供当日(宿泊日当日)の予約数である。また、式4のτxiは、グループiにおける正の時定数である。
【0054】
また、導出部52は、複数のグループそれぞれの予約情報に基づいて、各グループにおいて複数の主体のそれぞれが予約される確率(以下「選択確率」とも呼ぶ。)を導出する。導出部52は、各グループにおける各主体の選択確率Pi,jを選択確率記憶部42に格納する。選択確率Pi,jのiはグループの識別子であり、jは主体の識別子である。
【0055】
選択確率導出の具体例を説明する。ここでは、東京の恵比寿エリアで宿泊料金12000円のホテルAについて或る日の選択確率を求めることとする。Aホテルは、宿泊料金12000円の部屋を100部屋備え、年間平均稼働率が75%とする。すなわち、Aホテルの1日あたりの平均部屋予約数は75部屋である。
【0056】
一方、恵比寿エリアには宿泊施設が300施設(合計6000部屋)あることとする。また、各施設の平均価格や年間平均稼働率について以下のような公開データが得られていることとする。
・8000円未満 2000部屋、平均稼働室数1500部屋(75%)
・8000円以上15000円未満 2500部屋、平均稼働室数2100部屋(84%)
・15000円以上30000円未満 1300部屋、平均稼働室数800部屋(61%)
・30000円以上 200部屋、平均稼働室数100部屋(50%)
【0057】
この例では、導出部52は、恵比寿エリア、かつ価格帯8000円以上15000円未満のグループにおけるホテルAの選択確率を75/2100(すなわち3.52%)と導出する。導出部52は、導出した選択確率を年間平均の選択率と見なし、曜日や季節等の条件の変化に応じて、宿泊需要量を変動させて(例えば平日は2100より少なくし、休日は2100より多くする等)、複数のグループにおけるホテルAの選択確率を導出してもよい。
【0058】
要求取得部54は、ユーザ装置12からの要求に応じて、需要予測の対象となるサービス提供主体である対象主体(例えば特定の宿泊施設)に関する情報を取得する。要求取得部54は、要求元のユーザ装置12(またはそのユーザ)に応じて対象主体を特定してもよい。対象主体に関する情報は、少なくとも対象主体の識別情報を含み、また、需要予測の対象となるグループである対象グループを特定可能な情報を含む。また、対象主体に関する情報は、需要予測の対象となる日付(対象日)を含んでもよく、その対象日の属性(曜日や季節等)を含んでもよい。
【0059】
推定部56は、第1実施例の推定部32に対応する。推定部56は、対象主体(エリアを含む)や対象日の属性の組み合わせと、対象グループとの対応関係を保持する。推定部56は、予め分類された複数のグループの中から、対象主体を含む対象グループであって、対象日の属性に合致する対象グループを特定する。推定部56は、指数関数記憶部40に記憶された対象グループに対応する指数関数(式4)と、選択確率記憶部42に記憶された対象主体の選択確率とをもとに、対象主体が提供するサービスのその提供日までの予約数の合計を推定する。
【0060】
対象グループiにおいて、サービス提供日のt日前の時点で既に予約した合計人数S(t)は、式4を時点tから∞まで積分することにより以下の式で表される。
【数6】
【0061】
第3実施例では、グループGの中に宿泊施設がM個あるとき、施設Fi,j(j=1,...,Mi)に対して、グループGの全宿泊者が一定の確率(選択確率)Pi,jにて施設Fi,jへの予約が入ることとする。このとき、サービス提供日前のt日目時点までの施設Fi,jへの予約数合計Xi,j(t)は、以下の式5で表される。
【数7】
また、サービス提供日(t=0)までの施設Fi,jへの予約数合計Xi,j(0)は、以下の式6で表される。
【数8】
【0062】
式6のPi,jは、対象施設の選択確率であり、導出部52により予め導出され、選択確率記憶部42に記憶されている。また、式6のAおよびτXiは、対象グループに対応する予約関数のパラメータであり、導出部52により予め導出され、指数関数記憶部40に記憶されている。そのため、推定部56は、指数関数記憶部40に記憶された対象グループに対応する予約関数のAおよびτXiを取得し、また、選択確率記憶部42に記憶された対象主体の選択確率Pi,jを取得する。そして、それらの乗算結果を対象主体が提供するサービスのその提供日までの予約数の合計として導出する。
【0063】
予測情報出力部58は、第1実施例の予測情報出力部34に対応する。予測情報出力部58は、推定部56により推定された予約数の合計に基づく予測情報を出力する。例えば、予測情報出力部58は、推定部56により推定された予約数の合計を示す予測情報をユーザ装置12へ送信して、ユーザ装置12に予測情報を表示させる。
【0064】
第3実施例の通信システム10の動作を説明する。需要予測装置14の予約情報取得部50は、宿泊施設予約ポータルサイトを提供するシステムから、そのシステムに記憶された複数の宿泊施設に対する予約実績に基づく複数の予約情報を取得する。導出部52は、複数の宿泊施設に対応する複数の予約情報をもとに、予め定められた複数のグループのそれぞれについて予約数の推移を近似した予約関数を導出し、導出した予約関数に関する情報を指数関数記憶部40に格納する。また、導出部は、予め定められた複数のグループのそれぞれについて、複数のサービス提供主体の選択確率を導出し、各サービス提供主体の選択確率に関する情報を選択確率記憶部42に格納する。
【0065】
宿泊施設のレベニューマネージャは、ユーザ装置12を操作して需要予測装置14が提供するウェブサイトにアクセスする。レベニューマネージャは、ある未来日(「対象日」と呼ぶ。)における予約数の見込を得たい場合、その対象日と自施設の識別情報を含む予測要求をユーザ装置12から需要予測装置14へ送信させる。需要予測装置14の要求取得部54は、ユーザ装置12から送信された予測要求を受け付け、推定部56に渡す。
【0066】
需要予測装置14の推定部56は、予測要求に基づいて、需要予測の対象主体を識別する。また、推定部56は、予測要求が示す対象日や、対象主体が存在するエリア等に基づいて需要予測の対象グループを識別する。推定部56は、予め導出された対象グループに対応する予約関数と、予め導出された対象主体の選択確率とをもとに、対象日までに対象主体が獲得すると見込まれる予約数の合計を推定する。
【0067】
需要予測装置14の予測情報出力部58は、推定部56により推定された対象日までの予約数の合計(予測値)を示す予測情報をユーザ装置12へ送信して表示させる。宿泊施設のレベニューマネージャは、需要予測装置14から提供された予測情報が示す対象日までの予約数の合計が、自施設の客室数や目標の稼働率により定まる目標値より低い場合、対象日の宿泊料金を下げるという意思決定が可能になる。一方、レベニューマネージャは、予測情報が示す対象日までの予約数の合計が上記目標値を上回る場合、対象日の宿泊料金を上げるという意思決定が可能になる。
【0068】
このように第3実施例の需要予測装置14によると、需要予測の対象主体(サービス提供者)の予約情報が少ない(もしくは無い)場合でも、市場全体のデータと他のサービス提供者における予約情報を用いることで、対象主体に関する需要予測情報を提供することができる。これにより、サービス提供者におけるレベニューマネジメントやダイナミックプライシングを効率的に支援することができる。
【0069】
第3実施例の第1変形例を説明する。需要予測装置14の要求取得部54は、サービス提供日までの予約数の合計に関して予測対象となる対象主体が定める目標値と、サービス提供日前の予測対象となる時点tとをさらに取得する。
【0070】
例えば、要求取得部54は、ユーザ装置12から送信された、対象主体の室数と目標の稼働率とを含む予測要求を受け付け、その室数と稼働率とをもとにサービス提供日までの予約数の合計(言い換えればサービス提供日までに受け付ける予約総数)の目標値を導出してもよい。また、ユーザ装置12から送信される予測要求では、未来のサービス提供日(目標を達成すべき日)が指定されてもよい。この場合、要求取得部54は、現在からサービス提供日までの日数を上記の時点tとして取得してもよい。
【0071】
対象主体の室数をCとし、目標の稼働率をαとすると、サービス提供日までの予約数の合計の目標値はCαとなる。式6をもとに理想状態は、以下の式7で表される。
【数9】
式5と式7から、目標値を達成するために時点tで受け付けておくべき予約数(適正値)は、以下の式8で表される。
【数10】
【0072】
需要予測装置14の推定部56は、式8にしたがい、予測対象となる対象グループに対応する指数関数の時定数と、対象主体が定める目標値とをもとに、その目標値を達成するための値として、時点tまでの予約数の合計の適正値をさらに推定する。需要予測装置14の予測情報出力部58は、第3実施例に記載した推定部56により推定された対象日までの予約数合計の予測値と、本変形例に記載した推定部56により推定された目標値を達成するための時点tまでの予約数合計の適正値とを含む予測情報をユーザ装置12へ送信して表示させてもよい。
【0073】
本変形例の需要予測装置14によると、未来日における予約数の目標を達成するために、時点t(例えば現時点)で受け付けておくべき予約数の適正値を提供できる。例えば、宿泊施設のレベニューマネージャは、時点tでの予約の実績値が適正値を下回る場合、未来日における目標値を達成するために宿泊料金を下げる意思決定が可能になる。一方、レベニューマネージャは、時点tでの予約の実績値が適正値を上回る場合、利益を大きくするために宿泊料金を上げる意思決定が可能になる。
【0074】
第3実施例の第2変形例を説明する。本変形例は、第2実施例に記載したキャンセルの考慮を第3実施例に適用したものである。指数関数記憶部40は、複数のグループのそれぞれに対応付けて、各グループにおけるサービス提供日までの時系列でのキャンセル数の推移を近似した指数関数に関する情報をさらに記憶する。
【0075】
予約情報取得部50は、所定のサービスを提供する主体が受け付けた上記サービスのキャンセル数に関する情報であって、サービス提供日までの時系列でのキャンセル数の推移を示すキャンセル情報を取得する。例えば、予約情報取得部50は、旅行予約ポータルサイトを提供するシステムから、そのシステムが受け付けたキャンセル実績に基づく、複数の主体に対応する複数のキャンセル情報を取得してもよい。
【0076】
導出部52は、複数の主体に対応する複数のキャンセル情報を、各主体が属するグループごとに分類する。導出部52は、グループごとに複数のキャンセル情報が示すサービス提供日までの時系列でのキャンセル数の推移を上記の式3にフィッティングすることにより、グループごとにキャンセル数の推移を近似した指数関数であるキャンセル関数を導出する。すなわち、導出部52は、グループごとに式3のBおよびτを推定する。導出部52は、導出したキャンセル関数に関する情報(Bおよびτを含む)を指数関数記憶部40に格納する。
【0077】
キャンセル関数Y(t)は、サービス提供日前の時点tにおける或るグループi(例えばエリア、価格帯、曜日、季節が一致する宿泊施設群)に対するキャンセル数の時間推移を示すものであり、以下の式9で表される。
【数11】
【0078】
推定部56は、予め分類された複数のグループのうち対象主体を含む対象グループについて指数関数記憶部40に記憶された対象グループに対応するキャンセル関数と、選択確率記憶部42に記憶された対象主体の選択確率とをもとに、対象主体が提供するサービスのその提供日までのキャンセル数の合計をさらに推定する。
【0079】
具体的には、サービス提供日(t=0)までの施設Fi,jへのキャンセル数合計Yi,j(0)は、予約数に関する式6と同様に、以下の式10で表される。
【数12】
推定部56は、指数関数記憶部40に記憶された対象グループに対応するキャンセル関数のBおよびτYiを取得し、また、選択確率記憶部42に記憶された対象主体の選択確率Pi,jを取得する。そして、それらの乗算結果を対象主体が提供するサービスのその提供日までのキャンセル数の合計として導出する。
【0080】
予測情報出力部58は、推定部56により推定された予約数の合計からキャンセル数の合計を減じた値に基づく予測情報を出力する。本変形例の需要予測装置14によると、キャンセルを加味した対象日における「実予約数」の見込をサービス提供者に提供できる。これにより、サービス提供者におけるレベニューマネジメントやダイナミックプライシングを一層効果的に支援することができる。
【0081】
<第4実施例>
本実施例について、第2実施例と相違する点を中心に以下説明し、共通する点の説明を省略する。第4実施例の特徴は、既述の第1実施例~第3実施例および変形例の特徴と任意の組合せが可能であることはもちろんである。
【0082】
第4実施例の通信システム10の構成は、図1の通信システム10における需要予測装置14を情報処理装置18に置き換えたものである。第4実施例の情報処理装置18は、或るサービス提供者の運用状態(経営状態とも言える)が健全かどうかの診断を支援する機能を備える。この診断支援機能は、第1実施例~第3実施例の需要予測装置14に組み込まれてもよいことはもちろんである。
【0083】
図7は、第4実施例の情報処理装置18の機能ブロックを示すブロック図である。情報処理装置18の制御部20は、予約情報取得部60、導出部62、出力部64を備える。
【0084】
予約情報取得部60は、第2実施例の予約情報取得部30に対応する。予約情報取得部60は、所定のサービスを提供する主体が受け付けた上記サービスの予約数について、サービス提供日前の時点tまでの時系列での予約数の推移を取得する。また、予約情報取得部60は、上記サービスが予約後にキャンセルされた数について、サービス提供日前の時点tまでの時系列でのキャンセル数の推移を取得する。時点tと時点tは同じであってもよく、異なってもよい。
【0085】
導出部62は、予約情報取得部60により取得された時点tまでの時系列での予約数の推移に基づいて、サービス提供日までの時系列での予約数の推移を示す第1の指数関数(例えば図5の予約関数110、式2)を導出する。また、導出部62は、予約情報取得部60により取得された時点tまでの時系列でのキャンセル数の推移に基づいて、サービス提供日までの時系列でのキャンセル数の推移を示す第2の指数関数(図5のキャンセル関数112、式3)を導出する。
【0086】
すなわち、導出部62は、予約関数110(式2)のパラメータであるAとτを導出するとともに、キャンセル関数112(式3)のパラメータであるBとτを導出する。既述だが、Aは、サービス提供当日に受け付けることが予想される予約数であり、Bは、サービス提供当日に受け付けることが予想されるキャンセル数である。また、τとτはそれぞれの指数関数の時定数である。
【0087】
本発明者は、実データを分析し、τとτがサービス提供者の特性により決まるという知見を得た。例えば、τとτは、宿泊施設がビジネス向けかリゾート向けかに依存する。具体的には、ビジネスホテルではτ=10[日]程度(リードタイムが比較的短い)、リゾートホテルではτ=25[日]程度(リードタイムが比較的長い)という結果が得られた。すなわち、τとτによってサービス提供者を特徴付けることができる。
【0088】
これを踏まえ、導出部62は、導出した予約関数110のパラメータとキャンセル関数112のパラメータとを比較し、その比較結果に関する情報(以下「診断支援情報」とも呼ぶ。)を生成する。出力部64は、導出部62により生成された診断支援情報を外部へ出力する。
【0089】
例えば、導出部62は、第1診断処理として、予約関数110のτとキャンセル関数112のτの大小関係を診断支援情報に含めてもよい。また、導出部62は、(ケース1-1)τとτの差が所定の閾値内であれば通常の状態であることを診断支援情報に含めてもよい。一方、(ケース1-2)τがτより上記閾値を超えて小さければ、または(ケース1-3)τがτより上記閾値を超えて大きければ、異常な状態であることを診断支援情報に含めてもよい。ケース1-2では、予約のペースがキャンセルペースより早いため、通常より予約が多くなることが予想されるからである。また、ケース1-3では、予約ペースよりもキャンセルペースが早いため、通常より予約が少なくなることが予想されるからである。
【0090】
また、導出部62は、第2診断処理として、予約関数110のAとキャンセル関数112のBとの比を診断支援情報に含めてもよい。また、導出部62は、(ケース2-1)B/Aが所定の閾値に等しい場合(または所定の閾値の範囲内の場合)、通常の状態であることを診断支援情報に含めてもよい。また、(ケース2-2)B/Aが上記閾値より小さい場合(または上記閾値の範囲を超えて小さい場合)、良好な状態であることを診断支援情報に含めてもよい。ケース2-2では、サービス提供前の時点tで、通常の予約ペースと比較してキャンセルのペースが遅い(すなわちキャンセルが少ない)ため良好な状態と判断できるからである。
【0091】
また、(ケース2-3)B/Aが上記閾値より大きい場合(または上記閾値の範囲を超えて大きい場合)、不良な状態であることを診断支援情報に含めてもよい。ケース2-3では、サービス提供前の時点tで、通常の予約ペースと比較してキャンセルのペースが速い(すなわちキャンセルが多い)ため不良な状態と判断できるからである。
【0092】
なお、第1診断処理および第2診断処理における閾値は、情報処理装置18の開発者の知見や、情報処理装置18を用いた実験により適切な値が定められてもよい。また、情報処理装置18は、情報処理装置18の利用者ごと、例えば宿泊施設のレベニューマネージャごとに予め定められた閾値を記憶してもよい。例えば、利用者が分析対象として指定する複数の宿泊施設におけるτ-τの平均値が第1診断処理における閾値として使用されてもよい。また、上記複数の宿泊施設におけるB/Aの平均値が、第2診断処理における閾値として使用されてもよい。
【0093】
第4実施例の通信システム10の動作を説明する。ホテルグループ(例えばホテルA、ホテルB、ホテルC)のレベニューマネージャは、ユーザ装置12を操作して情報処理装置18が提供するウェブサイトにアクセスする。レベニューマネージャは、現在までに受付済の或る対象日の宿泊予約数の時系列での推移を示す予約情報と、現在までに受付済の或る対象日の宿泊キャンセル数の時系列での推移を示すキャンセル情報について、分析対象とする複数のホテルそれぞれの予約情報とキャンセル情報をユーザ装置12から情報処理装置18へ送信させる。
【0094】
情報処理装置18の予約情報取得部60は、ユーザ装置12から送信された複数のホテル分の予測情報とキャンセル情報を受け付ける。情報処理装置18の導出部62は、ホテルごとに予約情報から予約関数110を導出し、キャンセル情報からキャンセル関数112を導出する。導出部62は、ホテルごとに予約関数110のパラメータとキャンセル関数112のパラメータとを比較し、複数のホテルのそれぞれにおけるパラメータ比較結果を含む診断支援情報を生成する。情報処理装置18の出力部64は、診断支援情報をユーザ装置12へ送信して表示させる。
【0095】
レベニューマネージャは、情報処理装置18から提供された診断支援情報を見て、グループ内各ホテルの宿泊予約および宿泊キャンセルの状態が健全か否かを判断することができる。このように第4実施例の情報処理装置18によると、サービス提供者の将来に亘る運用状態(経営状態とも言える)が健全かどうかの診断を支援することができる。
【0096】
<第5実施例>
本実施例について、第1実施例と相違する点を中心に以下説明し、共通する点の説明を省略する。第5実施例の特徴は、既述の第1実施例~第4実施例および変形例の特徴と任意の組合せが可能であることはもちろんである。
【0097】
上記第1~第3実施例の需要予測装置14は、宿泊施設の需要予測結果をユーザ装置12(ホテルのレベニューマネージャ等)へ提供し、サービスの価格調整は宿泊施設側に任せるものであった。第5実施例では、需要予測結果に基づくサービスの価格調整を一層効果的に支援する技術を提案する。
【0098】
図8は、第5実施例の通信システム10の構成を示す。第5実施例の通信システム10は、第1実施例の構成に加え、価格決定装置70をさらに備える。第5実施例の需要予測装置14は、第1実施例~第3実施例(またはそれらの変形例)のいずれの構成であってもよい。需要予測装置14は、予測情報を価格決定装置70へ送信する。予測情報は、予測対象のサービス提供者の識別情報と、そのサービス提供者がサービス提供日までに受け付ける予約数の合計(予測値)を含む。
【0099】
価格決定装置70は、需要予測装置14から出力された予測情報が示すサービス提供日までの予約数の合計と、その予約数の合計に関して定められた目標値との比較結果に応じて、サービスの価格の変更に関する情報を生成する情報処理装置である。需要予測装置14と同様に、価格決定装置70は物理的に複数の装置を含んでもよい。すなわち、複数の装置を含み得る情報処理システムが、本実施例の価格決定装置70の機能を発揮してもよい。別の態様として、本実施例の価格決定装置70の機能を含むアプリケーションがユーザ装置12にインストールされてもよい。この場合、ユーザ装置12がスタンドアロンにて本実施例の価格決定装置70の機能を発揮してもよい。
【0100】
図9は、図8の価格決定装置70の機能ブロックを示すブロック図である。価格決定装置70の制御部20は、予測情報取得部72、目標値取得部74、現在価格取得部76、価格変更情報生成部78、価格変更情報出力部80を含む。
【0101】
予測情報取得部72は、需要予測装置14から出力された予測情報を取得する。目標値取得部74は、サービス提供日までの予約数の合計に関して定められた目標値を取得する。実施例では、サービス提供者により決定された目標値であり、サービス提供日までの予約数の合計の目標値を取得する。例えば、サービス提供者が宿泊施設の場合、目標値取得部74は、予測対象日の部屋数と目標稼働率とをユーザ装置12(または需要予測装置14)から取得し、それらの積を目標値として取得してもよい。なお、価格決定装置70は、複数のサービス提供者により決定されたサービス提供者ごとの目標値を記憶する目標値記憶部を備えてもよく、目標値取得部74は、予測情報が示す予測対象のサービス提供者に対応する目標値を目標値記憶部から取得してもよい。
【0102】
現在価格取得部76は、サービス提供者により定められた予測対象日のサービス提供価格を示す価格情報を取得する。ここでのサービス提供価格は、予測対象日のサービス提供を予約した顧客が支払う金額(サービス提供者が宿泊施設の場合、宿泊価格)である。現在価格取得部76は、サービス提供者の価格情報をユーザ装置12、需要予測装置14、または所定のサービス予約サイト(旅行予約ポータルサイト等)のシステムから取得してもよい。
【0103】
価格変更情報生成部78は、予測情報取得部72により取得された予測情報が示すサービス提供日までの予約数の合計(以下「予測値」とも呼ぶ。)と、目標値取得部74により取得されたサービス提供日までの予約数の合計の目標値とを比較する。価格変更情報生成部78は、予測値と目標値との比較結果に応じて変化させたサービス提供価格を含む価格変更情報を生成する。価格変更情報出力部80は、価格変更情報生成部78により生成された価格変更情報を外部装置へ送信する。
【0104】
第5実施例の通信システム10の動作を説明する。宿泊施設のレベニューマネージャは、ユーザ装置12を操作して需要予測装置14が提供する需要予測ウェブサイトにアクセスする。レベニューマネージャは、ある未来日(「対象日」と呼ぶ。)における予約数の見込を得たい場合、現在までに受付済の対象日の宿泊予約数の推移を示す予約情報と、対象日における予約数目標値とをユーザ装置12から需要予測装置14へ送信させる。
【0105】
ここでの需要予測装置14の動作は第1実施例と同様であるため説明を省略する。ただし、第5実施例の需要予測装置14は、対象日までの予約数の合計(予測値)を示す予測情報と、ユーザ装置12から受け付けた目標値を価格決定装置70へ送信する。価格決定装置70の予測情報取得部72は、予測情報を需要予測装置14から取得し、また、価格決定装置70の目標値取得部74は、目標値を需要予測装置14から取得する。価格決定装置70の現在価格取得部76は、旅行予約サイトから予測対象宿泊施設における対象日のサービス提供価格を取得する。
【0106】
価格決定装置70の価格変更情報生成部78は、予測情報が示す予測値が目標値未満の場合、対象日における新たなサービス提供価格としてそれまでの価格より低い価格を決定する。一方、予測情報が示す予測値が目標値より大きい場合、対象日における新たなサービス提供価格としてそれまでの価格より高い価格を決定する。価格変更情報生成部78は、対象日における新たなサービス提供価格を示す価格変更情報を生成する。価格変更情報出力部80は、価格変更情報を旅行予約サイトのシステムへ送信し、旅行予約サイトに表示される予測対象宿泊施設のサービス提供価格を、価格変更情報が示す新たなサービス提供価格に更新させる。価格変更情報生成部78と価格変更情報出力部80は、需要予測の結果をもとにサービス提供価格を自動的に決定(調整)する価格決定部(価格調整部)とも言える。
【0107】
なお、サービス提供価格を下げる場合の減額値、および、サービス提供価格を上げる場合の増額値は、各サービス提供者により予め定められ、価格決定装置70に登録されてもよい。この場合、価格決定装置70は、各サービス提供者の減額値および増額値を記憶する調整データ記憶部をさらに備えてもよい。また、減額値および増額値は、金額に限らず、サービス提供価格に対する割合でもよい。また、減額値および増額値は、価格決定装置70の開発者の知見や、需要予測装置14および価格決定装置70を用いた実験により適切な値が決定されてもよい。さらにまた、複数段階の減額値と複数段階の増額値が定められてもよく、価格変更情報生成部78は、予測情報が示す予測値が目標値より小さいほど、大きな減額値を適用して、サービス提供価格を大きく減額してもよい。また、価格変更情報生成部78は、予測情報が示す予測値が目標値より大きいほど、大きな増額値を適用して、サービス提供価格を大きく増額してもよい。
【0108】
第5実施例の価格決定装置70によると、需要予測装置14による需要予測対象となったサービス提供者のサービス提供価格を、需要予測結果をもとに自動で調整する。これにより、サービス提供者(例えば宿泊施設のレベニューマネージャ)の負担を低減することができる。
【0109】
第1変形例を説明する。価格決定装置70の価格変更情報生成部78は、対象日における新たなサービス提供価格を決定し、そのサービス提供価格を示す価格変更の提案情報を生成してもよい。価格変更情報出力部80は、価格変更の提案情報を需要予測要求元のユーザ装置12へ送信し、その提案情報をユーザ装置12に表示させてもよい。または、価格変更情報出力部80は、価格変更の提案情報を需要予測装置14へ送信し、その提案情報を需要予測装置14が提供する需要予測ウェブページに表示させてもよい。
【0110】
第2変形例を説明する。価格決定装置70の価格変更情報生成部78は、予測情報が示す予測値が目標値未満の場合、対象日におけるサービス提供価格を下げることを推奨する旨の提案情報を生成してもよい。一方、予測情報が示す予測値が目標値より大きい場合、対象日におけるサービス提供価格を上げることを推奨する旨の提案情報を生成してもよい。価格変更情報出力部80は、提案情報を需要予測要求元のユーザ装置12へ送信し、その提案情報をユーザ装置12に表示させてもよい。または、価格変更情報出力部80は、提案情報を需要予測装置14へ送信し、その提案情報を需要予測装置14が提供する需要予測ウェブページに表示させてもよい。
【0111】
第3変形例を説明する。既述したように、上記第2実施例(および上記第3実施例の変形例)に記載の需要予測装置14は、サービス提供日までの予約数の合計からキャンセル数の合計を減じた値(「実予約数予測値」と呼ぶ。)を含む予測情報を出力する。価格決定装置70の予測情報取得部72は、この予測情報を取得する。本変形例では、価格決定装置70の目標値取得部74は、サービス提供者により決定された目標値であり、サービス提供日までの予約数の合計からキャンセル数の合計を減じた値の目標値(「実予約数目標値」と呼ぶ。)を取得してもよい。
【0112】
価格決定装置70の価格変更情報生成部78は、予測情報が示す実予約数予測値と、実予約数目標値との比較結果に応じて、サービス価格の変更に関する情報を生成してもよい。具体的には、価格変更情報生成部78は、実予約数予測値が実予約数目標値未満の場合、新たなサービス提供価格としてそれまでの価格より低い価格を決定してもよい。一方、実予約数予測値が実予約数目標値より大きい場合、新たなサービス提供価格としてそれまでの価格より高い価格を決定してもよい。本変形例の価格決定装置70によると、予約数からキャンセル数を減じた実予約数の予測値をもとにサービス提供価格を調整することを効果的に支援でき、例えば自動的な調整を実現できる。
【0113】
第4変形例を説明する。本変形例の需要予測装置14は、上記第2実施例(および上記第3実施例の変形例)に記載の需要予測装置14と同様の構成を備え、サービス提供日までのキャンセル数の合計(「キャンセル数予測値」と呼ぶ。)を含む予測情報を出力する。価格決定装置70の予測情報取得部72は、この予測情報を取得する。本変形例では、価格決定装置70の目標値取得部74は、サービス提供者により決定された目標値であり、サービス提供日までのキャンセル数の合計の目標値(「キャンセル数目標値」と呼ぶ。)を取得してもよい。
【0114】
価格決定装置70の価格変更情報生成部78は、予測情報が示すキャンセル数予測値と、キャンセル数目標値との比較結果に応じて、サービス価格の変更に関する情報を生成してもよい。具体的には、価格変更情報生成部78は、キャンセル数予測値がキャンセル数目標値未満の場合、新たなサービス提供価格としてそれまでの価格より高い価格を決定してもよい。一方、キャンセル数予測値がキャンセル数目標値より大きい場合、新たなサービス提供価格としてそれまでの価格より低い価格を決定してもよい。本変形例の価格決定装置70によると、キャンセル数の予測値をもとにサービス提供価格を調整することを効果的に支援でき、例えば自動的な調整を実現できる。
【0115】
以上、本発明を第1~第5実施例をもとに説明した。これらの実施例は例示であり、各構成要素あるいは各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0116】
上述した実施例および変形例の任意の組み合わせもまた本開示の実施の形態として有用である。組み合わせによって生じる新たな実施の形態は、組み合わされる実施例および変形例それぞれの効果をあわせもつ。また、請求項に記載の各構成要件が果たすべき機能は、実施例および変形例において示された各構成要素の単体もしくはそれらの連携によって実現されることも当業者には理解されるところである。
【符号の説明】
【0117】
10 通信システム、 14 需要予測装置、 18 情報処理装置、 30 予約情報取得部、 32 推定部、 34 予測情報出力部、 40 指数関数記憶部、 42 選択確率記憶部、 50 予約情報取得部、 54 要求取得部、 56 推定部、 58 予測情報出力部、 60 予約情報取得部、 62 導出部、 64 出力部、 70 価格決定装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9