(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】支持軸カバー
(51)【国際特許分類】
B41F 9/18 20060101AFI20220722BHJP
B41F 13/20 20060101ALI20220722BHJP
B41F 13/24 20060101ALI20220722BHJP
B41F 9/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B41F9/18
B41F13/20
B41F13/24 138
B41F9/00 B
(21)【出願番号】P 2019216189
(22)【出願日】2019-11-29
【審査請求日】2021-03-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000237260
【氏名又は名称】富士機械工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森川 亮
(72)【発明者】
【氏名】大宮 利信
(72)【発明者】
【氏名】石橋 俊夫
(72)【発明者】
【氏名】村上 徹
(72)【発明者】
【氏名】岩▲崎▼ 誠
(72)【発明者】
【氏名】鷹野 彰浩
(72)【発明者】
【氏名】篠原 博人
【審査官】加藤 昌伸
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-076375(JP,A)
【文献】特開平10-248410(JP,A)
【文献】特開2002-017176(JP,A)
【文献】特開2007-168215(JP,A)
【文献】米国特許第05894796(US,A)
【文献】特開2011-148144(JP,A)
【文献】特開平09-314806(JP,A)
【文献】特開2012-011551(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109703176(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 5/00 - 13/70
B41F 31/00 - 35/06
F16B 2/00 - 2/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
グラビア印刷機が具備する版胴の駆動側および従動側の少なくともいずれか一方に位置する支持軸に取り付けられる支持軸カバーであって、
前記支持軸の各々は、
回転不能な状態で、同軸上に互いに間隔を隔てて対向している固定軸と、
回転可能な状態で、前記固定軸の各々の対向面から突出して前記版胴の端部を支持する回転軸と、
を備え、
前記支持軸カバーは、
優弧形状の断面を有し、前記固定軸の外周面に嵌合する可撓性のクリップと、
前記固定軸および前記回転軸が被覆可能な大きさを有する可撓性のシートと、
を有し、
前記固定軸の外周面
の少なくとも上部に前記シートを装着して前記クリップで
その上側から挟み込むことにより、前記シートで前記回転軸の
少なくとも上部を被覆する、支持軸カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の支持軸カバーにおいて、
前記回転軸の各々の先端部分に、窄まったテーパコーン部が設けられるとともに、前記版胴の端面の各々に、前記テーパコーン部が嵌合するテーパ孔が設けられ、
駆動側の前記テーパコーン部には、駆動側の前記テーパ孔に設けられたキー溝に嵌合するとともに、径方向において駆動側の前記固定軸の外周面の近傍に位置するキーが設けられ、
駆動側の前記固定軸には、径方向外側に張り出す拡径部が設けられていて、駆動側では、その拡径部の外周面に前記シートを装着して前記クリップで挟み込むことにより、前記シートで前記回転軸の周囲を被覆する、支持軸カバー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の支持軸カバーにおいて、
前記クリップの周方向の一端の径方向外側に、折り返すように延出されたピンチ部が設けられ、
前記ピンチ部の先端に、前記シートを挟み込むスリットが形成されている、支持軸カバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
開示する技術は、グラビア印刷に用いられる版胴の端部周辺のインキ汚れを防止する支持軸カバーに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、グラビア印刷では、外周面に版面(凹版)を有する円柱状の版胴を用いて印刷が行われる。すなわち、版胴の一部をインキに浸漬するなどして、回転する版胴の版面にインキを付着させる。ドクターブレードで版面から過剰なインキを掻き取った後、連続搬送されるウエブに、その版面を圧着させる。そうすることにより、版面に付着した適量のインキをウエブに転写する。
【0003】
版胴は、印刷内容に合わせて交換されるので、グラビア印刷機に着脱可能な状態で支持される。その支持方法により、版胴には、シャフト付きタイプと、シャフトレスタイプとがある。シャフト付きタイプの版胴は、版胴の両端面から一対の支持軸が互いに逆向きに突出していて、これら支持軸を介してグラビア印刷機に支持される。
【0004】
一方、シャフトレスタイプの版胴は、その両端面に一対の孔が形成されている。これら孔に、印刷機に設けられた一対の支持軸を挿入することにより、シャフトレスタイプの版胴は印刷機に支持される。
【0005】
印刷時にドクターブレードで掻き取られるインキの一部は、版胴の端面に垂れ落ちたり版胴の端部から飛散したりする。それにより、版胴の端部の周辺がインキで汚れるという問題が発生する。インキは、乾燥して固化すると容易に除去できない。そのため、インキ汚れの除去は、時間と手間を要する作業となっている。印刷の高速化に伴ってインキ汚れが増加し、インキ汚れは、大きな問題となっている。
【0006】
特に、シャフトレスタイプの版胴の場合、支持軸が印刷機に設けられている。従って、支持軸がインキで汚れると、そのインキ汚れは印刷を切り替える間に除去しなければならず、印刷の切替時間の短縮化の妨げとなる。インキ汚れが版胴の孔の内部にまで及ぶと、その除去は、よりいっそう困難になる。
【0007】
このような事情から、これまでも、シャフトレスタイプの版胴を対象とする支持軸のインキ汚れを防止するカバーが提案されている。
【0008】
例えば、特許文献1には、シャフトレスタイプの版胴を支持して回転する回転シャフトの基端部分が、回転しない円筒状の版胴シャフトの内部に収容されているグラビア印刷機が開示されている。回転シャフトの先端部分の周囲を覆うように、断面ハット形状をした特定の筒状カバーを、版胴シャフトにネジ止めすることで、回転シャフトのインキ汚れを防止している。
【0009】
特許文献2には、回転しないスリーブ(版胴シャフトに相当)の周囲に、円筒状に巻回した厚紙をテープで貼り付け、支持軸の回転部位の周囲を厚紙で覆うことにより、支持軸のインキ汚れを防止する方法が開示されている。この方法は、カバーに厚紙を用いるので使い捨てできる。従って、特許文献1の方法に比べて安価である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】実開昭57-165438号公報
【文献】特開2010-76375号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
近年、生産性向上の要請から、印刷の切替時間の短縮化が重要な課題となっている。グラビア印刷の場合、通常、同時に多数の版胴が用いられる。そのため、清掃や交換など、印刷の切替時に版胴毎に行われる切替作業は、秒単位での時間短縮が要求されている。そのような状況下、インキ汚れの除去は、オペレータにとって大きな負担となっている。
【0012】
しかも、切替作業時には、オペレータは手袋を着用する。そのため、特許文献2のように、巻回した厚紙をスリーブにテープで貼り付けたり剥がしたりするのは難しく、カバーの脱着に時間を要する。カバーを適切に取り付けるためには、厚紙の一端を、ずれることなく円筒状にしたうえで版胴の端面に隙間無く接触させ、その状態で、厚紙をスリーブに貼り付けなければならない。その結果、やり直しになる場合が多く、実際には、時間と手間を要し、改善の余地があった。
【0013】
更に、版胴の下端部分をインキに浸漬して版面にインキを付着させる場合、版胴の外径が小さいと、カバーがインキの液面に接触し得る点でも改善の余地があった。
【0014】
そこで、開示する技術の目的は、支持軸のインキ汚れを安価で適切に防止でき、手袋を着用した状態でも簡単に脱着できる支持軸カバーを提供することにある。更には、版胴の外径の大小に関係なく、適切に利用できる支持軸カバーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
開示する技術は、グラビア印刷機が具備する版胴の駆動側および従動側の少なくともいずれか一方に位置する支持軸に取り付けられる支持軸カバーに関する。
【0016】
前記支持軸の各々は、回転不能な状態で、同軸上に互いに間隔を隔てて対向している固定軸と、回転可能な状態で、前記固定軸の各々の対向面から突出して前記版胴の端部を支持する回転軸と、を備える。
【0017】
前記支持軸カバーは、優弧形状の断面を有し、前記固定軸の外周面に嵌合する可撓性のクリップと、前記固定軸および前記回転軸が被覆可能な大きさを有する可撓性のシートと、を有している。そして、前記固定軸の外周面に前記シートを装着して前記クリップで挟み込むことにより、前記シートで前記回転軸の周囲を被覆する。
【0018】
すなわち、この支持軸カバーによれば、シートを丸めて、固定軸の外周面の上に装着し、その上に、クリップの開口を拡げて押し入れる。それにより、シートは、クリップによって適度に固定軸の外周面に圧着された状態で、固定軸に支持される。シートの位置は容易に調整できるので、シートの縁が、ほとんど隙間無く版胴の端面に接するように、シートを簡単に位置決めできる。
【0019】
シートには、厚紙や合成樹脂製の薄材など、安価な素材が利用できるので、使い捨てできる。従って、支持軸のインキ汚れを安価で効果的に防止できるうえに、手袋を着用した状態でも簡単に脱着できるので、生産性も向上できる。
【0020】
しかも、この支持軸カバーであれば、支持軸の下部を覆うシートを無くすことができるので、直漬けタイプの印刷機に適用した場合に、版胴の外径が小さくても、シートがインキの液面に接触するのを回避できる。従って、版胴の外径の大小に関係なく、適切に利用できる。
【0021】
前記支持軸カバーはまた、前記回転軸の各々の先端部分に、窄まったテーパコーン部が設けられるとともに、前記版胴の端面の各々に、前記テーパコーン部が嵌合するテーパ孔が設けられ、駆動側の前記テーパコーン部には、駆動側の前記テーパ孔に設けられたキー溝に嵌合するとともに、径方向において駆動側の前記固定軸の外周面の近傍に位置するキーが設けられ、駆動側の前記固定軸には、径方向外側に張り出す拡径部が設けられていて、駆動側では、その拡径部の外周面に前記シートを装着して前記クリップで挟み込むことにより、前記シートで前記回転軸の周囲を被覆する、としてもよい。
【0022】
このような版胴および回転軸の場合、駆動側では、版胴が回転軸と一体に回転するように、テーパコーン部に、挿入末端側の端部が版胴の端面からはみ出すキーが設けられるのが一般的である。そのため、径方向において駆動側の固定軸の外周面の近傍にキーが位置する場合、固定軸の外周面に支持軸カバーを取り付けると、シートの縁がキーに接触してばたつくおそれがある。
【0023】
それに対し、駆動側の固定軸に拡径部を設けて、その拡径部の外周面にシートを装着してクリップで挟み込むようにすれば、シートは、固定軸の外周面から径方向外側に離れた位置に保持される。従って、シートがキーと接触するのを回避できる。
【0024】
前記支持軸カバーはまた、前記クリップの周方向の一端の径方向外側に、折り返すように延出されたピンチ部が設けられ、前記ピンチ部の先端に、前記シートを挟み込むスリットが形成されている、としてもよい。
【0025】
この支持軸カバーの場合、シートをクリップに予め組み付けておくことができるので、よりいっそう簡単に装着できる。そして、給液タイプの印刷機に適用すれば、ドクターブレードによって掻き取られたインキだけでなく、インキ溜まりのインキが飛散して支持軸に付着することも防止できる。従って、よりいっそう支持軸のインキ汚れが防止できる。
【発明の効果】
【0026】
開示する支持軸カバーによれば、支持軸のインキ汚れを安価で効果的に防止できるうえに、手袋を着用した状態でも簡単に脱着できるので、生産性も向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】グラビア印刷機の主な構造を簡略化して示した図である。(a)は直漬けタイプの印刷機であり、(b)は給液タイプの印刷機である。
【
図4A】従動軸に装着する支持軸カバーを説明するための図である。
【
図4B】駆動軸に装着する支持軸カバーを説明するための図である。
【
図5】支持軸カバーの変形例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、開示する技術の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。ただし、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物あるいはその用途を制限するものではない。
【0029】
<グラビア印刷機>
図1の(a)および(b)に、主なグラビア印刷機(単に印刷機1ともいう)の要部を、簡略化して例示する。(a)の印刷機1は、ファニッシャロール3を使用しないタイプ(直漬けタイプ)であり、(b)の印刷機1は、ファニッシャロール3を使用するタイプ(給液タイプ)である。開示する技術は、これら双方の印刷機1に適用できる。
【0030】
印刷機1にはまた、インキパン2、版胴4、圧胴5、ドクターブレード6などが備えられている。インキパン2は、トレイ状の容器である。ドクターブレード6は、長い刃物状の部材である。ファニッシャロール3、版胴4、および圧胴5の各々は、いずれも横長な円柱状の部材からなる。版胴4の外周面の両端部を除く部分には、印刷模様を構成する版面(凹版)が形成されている。これらはいずれも、略水平に延びるように軸支されている。
【0031】
印刷時には、連続搬送されるウエブWに合わせて、版胴4等が所定方向に回転する。印刷時にはまた、版胴4の外周面のうち、圧胴5との圧接部位に向かって回転している側の所定部位に、所定の角度で、その刃先が圧接するように、ドクターブレード6が版胴4に対して位置決めされる。
【0032】
印刷時には、常に所定量のインキがインキパン2に保持される。直漬けタイプの場合、版胴4の下部がインキに浸漬される。それにより、版胴4の外周面にインキが付着する。
【0033】
一方、給液タイプの場合、ファニッシャロール3の下部がインキに浸漬される。版胴4がファニッシャロール3に圧接される。ファニッシャロール3の周速度は、版胴4よりも小さく設定される。それにより、ファニッシャロール3と版胴4との圧接部位の上側の隙間にインキ溜まりが形成される。そのインキが版胴4の外周面に付着する。
【0034】
圧胴5は、版胴4の上方に配置されている。印刷時には、ウエブWを間に挟み込んだ状態で、圧胴5の下部が版胴4の上部に圧接される。版胴4の外周面に付着する過剰なインキは、ドクターブレード6によって掻き取られる。そうして、適量になったインキが、ウエブWに転写されて印刷が行われる。
【0035】
ドクターブレード6で掻き取られるインキの一部は、版胴4の各端面に垂れ落ちたり版胴4の端部から飛散したりする。そのインキが版胴4を支持している支持軸に付着して固化すると、容易には除去できない。特に、シャフトレスタイプの版胴4の場合、支持軸は印刷機1に設けられているので、支持軸のインキ汚れは、印刷を切り替える間に除去しなければならない。従って、支持軸がインキで汚れると、印刷の切替時間の短縮化の妨げとなる。
【0036】
<版胴、支持軸>
図2、
図3に、上述した印刷機1が具備する版胴4と、その駆動側および従動側の双方に位置する支持軸(駆動軸20、従動軸30)の具体例を示す。図示の版胴4は、シャフトレスタイプである。
【0037】
版胴4は、円筒状の本体部11と、本体部11の両端の開口を塞ぐように取り付けられた一対の円板状の端面部12,12とを有している。版胴4は、中空円柱状に形成されている。版胴4の各端面の中央部分には、テーパ孔13が形成されている。テーパ孔13の内周面は、内方に向かうほど内径が小さくなるように傾斜している(円錐台状)。
【0038】
駆動側に位置するテーパ孔13の内周面の周方向における一箇所には、テーパ孔13の内周面に沿って軸方向に延びる断面矩形のキー溝14が形成されている。なお、版胴4の外径や長さは、一例である。版胴4の外径や長さは、その印刷機1の許容範囲で、印刷内容に応じて変更される。
【0039】
駆動軸20および従動軸30は、印刷機1に設けられている。駆動軸20および従動軸30の各々は、固定軸40と回転軸50とを備えている。各固定軸40は、円筒形に形成された厚みの薄いカバー状の部材からなる。各固定軸40は、回転不能な状態で印刷機1に設置されている。駆動側および従動側の各固定軸40は、略水平に延びる軸Jと中心を一致させた状態で、互いに所定の間隔を隔てて対向するように配置されている。
【0040】
各回転軸50は、固定軸40よりも僅かに外径が小さい円柱状の部材からなる。各回転軸50は、軸Jを中心に回転可能な状態で各固定軸40に挿通されている。回転軸50の先端部分は、各固定軸40の対向面から突出しており、そこには、テーパ孔13に嵌合する窄まった形状のテーパコーン部51が設けられている。駆動側に位置するテーパコーン部51には、キー溝14に嵌合するキー52が設けられている。
【0041】
キー52は、テーパコーン部51の外周面に沿って軸方向に延びている。この駆動軸20の場合、固定軸40の外径は、回転軸50の外径よりも僅かに大きい程度である。そのため、最も径方向外側に位置しているキー52の挿入末端側の端部52aは、径方向において駆動側の固定軸40の外周面の近傍に位置している。
【0042】
駆動側の回転軸50は、印刷機1に設置されたモータ(不図示)に連結されていて、そのモータの駆動によって回転する。各回転軸50は、
図2に実線および仮想線で示すように、軸Jに沿って、各固定軸40の対向面から前進および後退が可能に構成されている。版胴4は、その中心が軸Jに一致し、かつ、キー52がキー溝14に嵌合するように、駆動軸20および従動軸30の間に位置決めされる。
【0043】
そうして、駆動側および従動側の回転軸50が進出し、各テーパ孔13に各テーパコーン部51が嵌合することにより、版胴4の各端部は、従動側および駆動側の回転軸50によって支持される。版胴4を印刷機1から取り外す時には、駆動側および従動側の各回転軸50が後退する。それにより、各テーパ孔13から各テーパコーン部51が抜き出され、従動側および駆動側の各回転軸50から版胴4が分離される。
【0044】
<支持軸カバー>
図4Aに、従動軸30に取り付けられる支持軸カバー60を例示する。支持軸カバー60は、止めクリップ61およびシート62を有している。
【0045】
止めクリップ61は、優弧形状(周方向の長さが全円周の半分より大きい円弧形状)の断面を有する、弾性変形可能な可撓性の部材からなる。止めクリップ61は、従動側の固定軸40の外周面に嵌合するように形成されている。止めクリップ61は、溶剤耐性に優れたプラスチック、金属などで形成されている。
【0046】
シート62は、厚紙や、溶剤耐性に優れた合成樹脂製の可撓性の薄材からなる。シート62は、固定軸40および回転軸50が被覆可能な大きさに裁断して使用される。シート62は、再利用してもよいが、安価であるため使い捨てするのが好ましい。
【0047】
図4Aに示すように、シート62を丸めて、回転軸50の上部が被覆されるように、固定軸40の外周面の上に装着する。図示例では、シート62は断面優弧状に装着される。固定軸40に装着したシート62の上に、止めクリップ61の開口を拡げて、止めクリップ61を押し入れる。そうして、固定軸40と止めクリップ61との間にシート62を挟み込む。
【0048】
それにより、シート62は、止めクリップ61によって適度に固定軸40の外周面に圧着された状態で、固定軸40に支持される。シート62の位置は容易に調整できるので、シート62の縁が、ほとんど隙間無く版胴4の端面に接するように、シート62を簡単に位置決めできる。従って、この支持軸カバー60は、手袋を着用していても、極めて短時間で適切に装着できる。取り外しも同様に、簡単に行える。
【0049】
しかも、この支持軸カバー60では、支持軸20,30の下部は被覆しないようにできる。従って、直漬けタイプの印刷機1に適用した場合に、版胴4の外径が小さくても、シート62がインキの液面に接触するのを回避できる。
【0050】
なお、シート62で固定軸40や回転軸50の全周を被覆することもできる。すなわち、シート62を大きく裁断することにより、周方向の一部が重なる様に固定軸40の外周面に巻き付ける。そうして、その重なり合った部分を止めクリップ61で挟み込めばよい。
【0051】
図4Bに、駆動軸20に取り付けられる支持軸カバー60を例示する。駆動側のテーパコーン部51にはキー52がある。構造上、キー52の挿入末端側の端部52aは、版胴4の端面からはみ出した状態になるのが一般的である。この駆動軸20では、キー52の挿入末端側の端部52aは、径方向において駆動側の固定軸40の外周面の近傍に位置しているので、従動軸30と同様に支持軸カバー60を取り付けると、シート62の縁がキー52に接触してばたつくおそれがある。
【0052】
そのため、本実施形態では、駆動側の固定軸40には、径方向外側に張り出す拡径部が設けられている。図示例では、拡径部を設けるために、補助クリップ65が用いられている。補助クリップ65は、上述した止めクリップ61と同様の部材からなり、所定の厚みを有している。補助クリップ65は、駆動側の固定軸40の外周面に嵌合するように形成されている。
【0053】
図4Bに示すように、事前に駆動側の固定軸40の外周面に補助クリップ65が装着される。それにより、駆動側の固定軸40の外周面に径方向外側に張り出す拡径部が設けられる。そうして、従動軸30に取り付けられる支持軸カバー60と同様に、止めクリップ61およびシート62が駆動軸20に取り付けられる。ただし、駆動軸20側の止めクリップ61は、補助クリップ65の外周面に嵌合するように形成されている。
【0054】
駆動側では、補助クリップ65の外周面に丸めたシート62を装着し、補助クリップ65と止めクリップ61とでシート62を挟み込む。そうして、シート62で回転軸50の周囲を被覆する。補助クリップ65により、固定軸40の外周面から径方向外側に離れた位置にシート62が保持される。従って、シート62がキー52と接触するのを回避できる。
【0055】
<変形例>
図5に、支持軸カバー60の変形例を示す。本変形例の支持軸カバー60は、特に、給液タイプの印刷機1に適するように構成されている。本変形例では、止めクリップ61の形態が上述した実施形態と異なっている。シート62等、その他の構成は、上述した実施形態と同じであるため、同じ構成には同じ符号を用いてその説明は省略する。
【0056】
本変形例の止めクリップ61には、その周方向の一端に、ピンチ部70が設けられている。ピンチ部70は、止めクリップ61の一端の縁に沿って延びる帯板状の部分からなる。ピンチ部70は、止めクリップ61の周方向の一端から径方向外側に折り返すように延出している。ピンチ部70の先端には、シート62を挟み込むスリット71が全域に形成されている。
【0057】
支持軸カバー60を装着する場合には、まず、シート62の側部をピンチ部70のスリット71に挟み込む。そうして、
図5に矢印Y1で示すように、ピンチ部70に沿ってシート62を、止めクリップ61の開口側に折り曲げる。更に、シート62がピンチ部70および止めクリップ61に沿うように、シート62を止めクリップ61の内側に嵌め入れる。
【0058】
そうした状態で、シート62とともに、止めクリップ61を固定軸40の外周面に装着する。具体的には、
図5の下図に示すように、ピンチ部70が、インキ溜まりが形成されるファニッシャロール33と版胴4との圧接部位の上方に位置するように装着する。
【0059】
本変形例の支持軸カバー60によれば、シート62を止めクリップ61に予め組み付けておくことができるので、よりいっそう簡単に装着できる。そして、ドクターブレード6によって掻き取られたインキだけでなく、インキ溜まりのインキが飛散して支持軸20,30に付着することも防止できるので、よりいっそう支持軸20,30のインキ汚れが防止できる。
【0060】
なお、開示する技術にかかる支持軸カバーは、上述した実施形態に限定されず、それ以外の種々の構成をも包含する。
【0061】
例えば、実施形態では、シャフトレスタイプの版胴を用いるグラビア印刷機を例示したが、開示する技術は、シャフト付きタイプの版胴を用いるグラビア印刷機にも適用可能である。拡径部は、固定軸の一部を大径にしたり固定軸に別部材を組み付けたりして、固定軸の外周面に直接設けてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 グラビア印刷機
4 版胴
20 駆動軸(支持軸)
30 従動軸(支持軸)
40 固定軸
50 回転軸
60 支持軸カバー
61 止めクリップ
62 シート
65 補助クリップ(拡径部)
J 軸
W ウエブ