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特許7109029PGE1コアブロック誘導体およびその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】PGE1コアブロック誘導体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07F 7/18 20060101AFI20220722BHJP
   C07C 405/00 20060101ALI20220722BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20220722BHJP
   C12N 9/18 20060101ALN20220722BHJP
   C12P 7/42 20060101ALN20220722BHJP
【FI】
C07F7/18 M CSP
C07C405/00 504T
C07B61/00 300
C12N9/18
C07F7/18 A
C12P7/42
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019521946
(86)(22)【出願日】2017-12-04
(86)【国際出願番号】 JP2017043536
(87)【国際公開番号】W WO2018220888
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2020-10-09
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2017/020168
(32)【優先日】2017-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】598014814
【氏名又は名称】株式会社コンポン研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110003007
【氏名又は名称】特許業務法人謝国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小関 良卓
(72)【発明者】
【氏名】笠井 均
(72)【発明者】
【氏名】神島 尭明
(72)【発明者】
【氏名】野中 利之
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第105566376(CN,A)
【文献】特開平07-025847(JP,A)
【文献】特開平06-128158(JP,A)
【文献】特開平06-107626(JP,A)
【文献】特開平05-117230(JP,A)
【文献】特開平04-270294(JP,A)
【文献】特開昭52-133954(JP,A)
【文献】特開昭58-039660(JP,A)
【文献】米国特許第05447865(US,A)
【文献】国際公開第94/027962(WO,A1)
【文献】国際公開第94/008961(WO,A1)
【文献】Journal of Organic Chemistry,1988年,53,5590-5592
【文献】J. Am. Chem. Soc.,1990年,112,7440-7441
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 7/18
C07C 405/00
C12P 7/42
C07B 61/00
C12N 9/18
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(II)
(式中、TESは、トリエチルシリル基を示し、Etは、エチル基を示す。)
で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩。
【請求項2】
式(i’)
で表される化合物またはその立体異性体を用いることを特徴とする、式(II)
(式中、TESは、トリエチルシリル基を示し、Etは、エチル基を示す。)
で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩の製造方法。
【請求項3】
式(i’)で表される化合物またはその立体異性体をアミノ化反応に付すことを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
式(i’)
で表される化合物またはその立体異性体を式(II)
(式中、TESは、トリエチルシリル基を示し、Etは、エチル基を示す。)
で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩に変換する工程、
式(II)の化合物と、式(III)(式中、Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Al、Snより選ばれる金属または該金属を含む基を示す。)で表される金属有機化合物を反応させ、式(IV)の化合物を得る工程、
式(IV)化合物を式(V)(式中、M’は、Li、Na、K、Mg、Ca、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Al、Snより選ばれる金属または該金属を含む基を示し、Rは、水素原子またはアルキル基を示す。)で表される有機金属化合物と反応させ、式(VI)の化合物を得る工程、
および式(VI)の化合物のシリル基を除去する工程を含む、式(VII)で示されるPGE1誘導体の製法方法。
【請求項5】
Rは、水素原子またはメチルである、請求項4項に記載の製造方法。
【請求項6】
式(i)で表される化合物またはその立体異性体を用いることを特徴とする、式(I)で表される化合物またはその立体異性体(ここで、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なって置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアリールアルキル基である。)の製造方法。
【請求項7】
式(i)で表される化合物またはその立体異性体をシリルハライドと反応させた後、ジエチルアミンと反応させ、式(I)で表される化合物またはその立体異性体を得ることを特徴とする、請求項に記載の製造方法。
【請求項8】
シリルハライドが、トリエチルシリルクロライドである、請求項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なPGE1コアブロック誘導体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プロスタグランジンE1(以下PGE1と略称する)は、血小板凝集抑制作用、血圧低下作用等の特徴ある作用を有し、末梢循環障害を改善するための医薬品として既に実用化されており、このため多数のPGE1類縁体も検討されている。
【0003】
PGE1およびその誘導体を製造するために、これまでにコーリーラクトン法(特許文献1)、共役付加反応法(非特許文献1)、3成分連結法(非特許文献2)および2成分連結法(非特許文献3および特許文献2)が開発されている。これらの方法では、中間体やコアブロック製造では工程数が多く、効率が悪いという問題点がある。
【0004】
例えば、2成分連結法においては、プロスタグランジンの重要な合成中間体としてexo-エノン化合物(c)が用いられている(非特許文献4)。この方法においては、ジビニルカルビノールのエポキシ化反応によって得られるエポキシアルコール(a)を出発原料とし、数工程を経てβ-ヒドロキシケトン(b)を導く。化合物(b)をメシル化すると、脱離反応によりexo-エノン化合物(c)を与える。この方法では、β-ヒドロキシケトン(b)を介するため、この中間体(b)における3つの水酸基を選択的に保護しなければならない。このように、従来の2成分連結法はコアブロック製造過程が煩雑である。また、中間体(c)におけるTBS(tert-ブチルジメチルシリル)保護基は高価であり、さらに環境上の問題が懸念される。なお、exo-エノン中間体(c)は不安定であるため、中間体(c)を用いた2成分連結法は工業的に非効率的である。
【0005】
上述のように、PGE1誘導体の製造方法は、中間体(b)の3つの水酸基に対して、それぞれ選択的な保護および脱保護が必要となる。そのため生成物の単離が困難であり、また反応工程数も多く、その結果、目的物の製造コストが高くなるという問題が生じる。また、不安定な中間体(c)に依存する反応行程は、工業的に不利であるが、簡便かつ安価で工業的に使用することができる中間体の開発はいまだに十分ではない。
【0006】
また、PGE1の工業的生産方法としては、下記の合成方法(非特許文献4、非特許文献5)が報告されているが、コアブロックである中間体(d)を合成するために9工程を経らなければならなく、原料価格が高くなるといった問題点がある。また、TBS保護基は高価であるのみならず、TBS保護基を除去するためにフッ化水素を使用しているために製造コストが高くなるという問題および毒性という問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】WO2010/104344
【文献】特開平2-128
【非特許文献】
【0008】
【文献】J.Am.Chem.Soc.,1972, 94, 9256
【文献】J.Am.Chem.Soc., 1988, 110, 4718-4126
【文献】J.Org.Chem., 1988, 53, 5590
【文献】有機合成化学協会誌第57巻第5号、頁422-428(1999)
【文献】F.Sato et al., J. Org. Chem., 1988, 53, 5590
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記した従来技術における欠点または問題を解決することであり、PGE1およびその誘導体等の製造における工業的に好ましい新規な合成中間体を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、工業化に適した、経済的に好ましい、PGE1およびその誘導体等の製造における新規な合成中間体の製造方法を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、工業化に適した、経済的に好ましい、PGE1およびその誘導体等の新規な製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記のような状況に鑑み、本発明者らは、PGE1およびその誘導体の合成中間体として利用可能なシクロペンテノン誘導体およびその製造方法について鋭意研究した。その結果、本発明者らは、単糖からの水熱反応により簡便に4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテノンを製造することに成功した。本発明者らは、この4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテノン(式(i')で表される化合物またはその立体異性体)を出発原料とし、ワンポットで一挙に式(II)で表される化合物を製造できることを見出した。本発明者らはこの知見に基づき本発明の完成に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、下記〔1〕から〔22〕項に記載の発明を提供することにより上記課題を解決したものである。
〔1〕
式(II)
(式中、TESは、トリエチルシリル基を示し、Etは、エチル基を示す。)
で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩、
〔2〕
式(i’)


で表される化合物またはその立体異性体を用いることを特徴とする、式(II)

(式中、TESは、トリエチルシリル基を示し、Etは、エチル基を示す。)
で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩の製造方法、
〔3〕
式(i’)で表される化合物またはその立体異性体をアミノ化反応に付すことを特徴とする、〔2〕に記載の製造方法、
〔4〕
式(i’)

で表される化合物またはその立体異性体を用いることを特徴とする、式(VII)

(式中、Rは、水素原子またはアルキルを示す。)で表される化合物またはその立体異性体の製造方法、
〔5〕
式(II)
(式中、TESは、トリエチルシリル基を示し、Etは、エチル基を示す。)
で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩を用いることを特徴とする、
式(VII)

(式中、Rは、水素原子またはアルキルを示す。)で表される化合物の製造方法、
〔6〕
式(II)で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩を1,4付加反応に付すことを特徴とする、〔5〕に記載の製造方法、
〔7〕
式(i’)
で表される化合物またはその立体異性体を式(II)
(式中、TESは、トリエチルシリル基を示し、Etは、エチル基を示す。)
で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩に変換することを含むことを特徴とする、式(VII)
(式中、Rは、水素原子またはアルキルを示す。)で表される化合物またはその立体異性体の製造方法、
〔8〕
Rは、水素原子またはメチルである、〔4〕~〔7〕のいずれか1項に記載の製造方法、
〔9〕
式(IV)
(式中、TESは、トリエチルシリル基を示す。)で表される化合物またはその立体異性体、
〔10〕
式(VI)
(式中、TESは、トリエチルシリル基を示し、Rは、水素原子またはアルキルを示す。)で表される化合物またはその立体異性体、
〔11〕
式(I):
(式中、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なって置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアリールアルキル基である。但し、Rはtert-ブチル基であり、RおよびRは、メチル基である場合を除く。)で表される化合物またはその立体異性体、
〔12〕
、RおよびRは、それぞれ同一または異なって置換基を有していてもよいC~Cアルキル基である、〔11〕に記載の化合物またはその立体異性体、
〔13〕
、RおよびRは、それぞれ同一または異なってメチル基、エチル基またはプロピル基である、〔11〕に記載の化合物またはその立体異性体、
〔14〕
、RおよびRは、エチル基である、〔11〕に記載の化合物またはその立体異性体、
〔15〕
式(i)で表される化合物またはその立体異性体を用いることを特徴とする、式(I)で表される化合物またはその立体異性体(ここで、R、RおよびRは、それぞれ同一または異なって置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、または置換基を有していてもよいアリールアルキル基である。)の製造方法、
〔16〕
式(i)で表される化合物またはその立体異性体をシリルハライドと反応させた後、ジエチルアミンと反応させ、式(I)で表される化合物またはその立体異性体を得ることを特徴とする、〔15〕に記載の製造方法、
〔17〕
シリルハライドが、トリエチルシリルクロライドである、〔16〕に記載の製造方法、
〔18〕
式(I)で表される化合物またはその立体異性体(ここで、R、RおよびRは、〔1〕で定義した通りである。)を用いることを特徴とする、PGE1またはその誘導体の製造方法、
〔19〕
式(I)で表される化合物またはその立体異性体を1,4付加反応に付すことを特徴とする、〔18〕に記載の製造方法、
〔20〕
式(i):
で表される化合物またはその立体異性体、
〔21〕
式(i')で表される化合物またはその立体異性体を酵素と反応させることを特徴とする、式(i)で表される化合物またはその立体異性体の製造方法、
および
〔22〕
式(i)で表される化合物またはその立体異性体を用いることを特徴とする、PGE1またはその誘導体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明方法により、シクロペンテノン化合物(式(i)および式(I)で表される化合物またはその立体異性体)の新規な工業的製造方法が提供される。
【0015】
本発明の方法によれば、4-ヒドロキシ-2-ヒドロキシメチル-2-シクロペンテノンを、その1つの水酸基にアセチル保護基を導入したアセタートに変換し、得られたアセタートに対し、1工程で緩和な条件下で水酸基を保護すると同時にアミノ化を行い、目的物とする化合物(I)を容易に得ることに成功した。
【0016】
さらに本発明の方法では、化合物(I)を用いて、目的とするPGE1またはその誘導体を高収率かつ効率的に、工業的規模で簡便に製造可能である。
【0017】
さらには、本発明の方法により、医薬品およびその中間体として有用な、新規なシクロペンテノン化合物(式(i)および式(I)で表される化合物またはその立体異性体)を提供することができる。本発明の方法によって得られた新規な化合物(式(i)および式(I)で表される化合物またはその立体異性体)は、PGE1等の医薬品等の中間体および試薬として、その有用性が期待される。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において用いられる用語について以下に説明する。
特に言及しない限り、本明細書および特許請求の範囲で用いた用語は以下に述べる意味を有する。
【0019】
「アルキル基」とは、特に限定しない限り、飽和脂肪族炭化水素基、例えば、炭素数が1~20の直鎖または分岐鎖状のアルキル基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のC~Cアルキル基、ヘプチル基、1-メチルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、1,1-ジメチルペンチル基、2,2-ジメチルペンチル基、4,4-ジメチルペンチル基、1-エチルペンチル基、2-エチルペンチル基、1,1,3-トリメチルブチル基、1,2,2-トリメチルブチル基、1,3,3-トリメチルブチル基、2,2,3-トリメチルブチル基、2,3,3-トリメチルブチル基、1-プロピルブチル基、1,1,2,2-テトラメチルプロピル基、オクチル基、1-メチルヘプチル基、3-メチルヘプチル基、6-メチルヘプチル基、2-エチルヘキシル基、5,5-ジメチルヘキシル基、2,4,4-トリメチルペンチル基、1-エチル-1-メチルペンチル基、ノニル基、1-メチルオクチル基、2-メチルオクチル基、3-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、1-エチルヘプチル基、1,1-ジメチルヘプチル基、6,6-ジメチルヘプチル基、デシル基、1-メチルノニル基、2-メチルノニル基、6-メチルノニル基、1-エチルオクチル基、1-プロピルヘプチル基、n-ノニル基、n-デシル基等の基を挙げることができるが、C~Cアルキル基が好ましい。C~Cアルキル基の好ましい例は、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基またはヘキシル基である。
【0020】
「アリール基」とは、単環式または二環式芳香族性炭化水素基を示し、好ましくはフェニル基、ナフチル基等のC10アリール基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0021】
「アリールアルキル基」とは、アリール基により置換されたアルキル基を意味する。好ましくはフェニルC~Cアルキル基である。フェニルC~Cアルキル基の例は、ベンジル基、1-フェニルエチル基、2-フェニルエチル基、3-フェニルプロピル基、4-フェニルブチル基、5-フェニルペンチル基、6-フェニルヘキシル基等を含むが、これらに限定されるものではない。
【0022】
「置換基を有していてもよい」とは、置換基を有していても、または無置換であってもよいことを意味する。置換基を有している場合、置換基は前記の置換可能な位置に、1~5個、好ましくは1~3個を有していてもよく、置換基数が2個以上の場合は、各置換基はそれぞれ同一または異なっていてもよい。置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基等が挙げられるが、好ましい置換基の例は、C~Cアルキル基、C~Cアルコキシ基またはハロゲン原子である。
【0023】
式(I)で表される化合物におけるR、RおよびRの具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基またはヘキシル基が挙げられ、エチル基は好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0024】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等を示し、好ましくはフッ素原子および塩素原子である。
【0025】
「塩」とは、無機酸塩または有機酸塩から成り;該無機酸塩が、好ましくは塩酸塩、硫酸塩、臭化水素酸塩、フッ化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩およびリン酸塩から成る群から選択され、より好ましくは塩酸塩、硫酸塩およびリン酸塩から成る群から選択され;該有機酸塩が、好ましくは2,5-ジヒドロキシベンゼンギ酸塩、1-ヒドロキシ-2-ナフタレンギ酸塩、酢酸塩、ジクロロ酢酸塩、トリクロロ酢酸塩、アセトヒドロキサム酸塩、アジピン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、4-クロロベンゼンスルホン酸塩、ベンゼンギ酸塩、4-アセトアミドベンゼンギ酸塩、4-アミノベンゼンギ酸塩、カプリン酸塩、カプロン酸塩、カプリル酸塩、桂皮酸塩、クエン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩、カンファースルホン酸塩、アスパラギン酸塩、樟脳酸塩、グルコン酸塩、グルクロン酸塩、グルタミン酸塩、エリソルビン酸塩、乳酸塩、アスパラギン酸塩、リンゴ酸塩、マンデル酸塩、ピログルタミン酸塩、酒石酸塩、ラウリル硫酸塩、ジベンゾイル酒石酸塩、エチル-1,2-ジスルホン酸塩、エシレート、ギ酸塩、フマル酸塩、ガラクトン酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、2-オキソグルタル酸塩、グリコール酸塩、馬尿酸塩、イセチオン酸塩、ラクトビオン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ラウリン酸塩、樟脳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メシル酸塩、1,5-ナフタレンジスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ニコチン酸塩、オレイン酸塩、オロチン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、エンボン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、4-アミノサリチル酸塩、セバシン酸塩、ステアリン酸塩、ブタンジオアート、チオシアン酸塩、ウンデシレン酸塩、トリフルオロ酢酸塩、コハク酸塩およびp-トルエンスルホン酸塩から成る群から選択され、より好ましくはメシル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩および1,5-ナフタレンジスルホン酸塩から成る群から選択される。
【0026】
「PGE1誘導体」とは、例えば、式(VII)
(式中Rは、水素原子またはアルキル基を示す。)で示される化合物を意味する。
【0027】
本明細書に記載の化合物は不斉中心を含んでいてもよく、したがって鏡像異性体として存在してもよい。本明細書に記載の化合物が2つ以上の不斉中心を有する場合、それらはさらにジアステレオマーとして存在してもよい。鏡像異性体およびジアステレオマーはより広いクラスの立体異性体に入る。実質的に純粋な分割された鏡像異性体、そのラセミ混合物、ならびにジアステレオマーの混合物等のすべての可能な立体異性体は含まれることが意図される。本明細書において開示する化合物のすべての立体異性体は、含まれることが意図される。特に記載がないかぎり、1つの異性体への言及は任意の可能な異性体に適用される。異性体組成が明記されていない場合はいつも、すべての可能な異性体が含まれる。
【0028】
[本発明の化合物(i)の製造方法]
例えば、以下に記す方法またはこれに準じた方法等(例えば、J. J. Gridley et al., Snylett., 1397. 1997; S.Akai et al., J. Org. Chem., 67, 441, 2002; E. W. Holla, J. Carbohydr. Chem. 9, 113, 1990等)によって酵素と酢酸ビニルにより位置選択的に1級アリルアルコール(i')をアセチル化し、(i)を製造することができる。
【0029】
[本発明の化合物(I)の製造方法]
化合物(i)の水酸基の保護(化合物(ia)の合成)
化合物(i)の水酸基の保護は、例えば、以下に示す方法またはこれに準じた方法等(例えば、Corey, E.J. et al., J. Am. Chem. Soc., 94, 6190, 1972; Morita, T. et al., Tetrahedron Lett., 21, 835, 1980; Y. Kita, et al., Tetrahedron Lett., 4311, 1979に記載されたシリルエーテル化等。総説として、Lalonde, M.,Chan, T.H., Synthesis, 817-845, 1985等も参照のこと)によって化合物(i)をシリルハライド化合物と反応させて行うことができる。
【0030】
シリルハライド化合物
シリルハライド化合物の種類は特に限定されず、当業界で用いられるものはいずれも本発明の方法に使用できる。例えば、トリアルキルシリルハライド化合物、モノアルキルジアリールシリルハライド化合物、トリアリールシリルハライド化合物等を用いることができる。シリルハライド化合物がアルキル基を有する場合には、アルキル基として、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基、またはtert-ブチル基等を用いることができる。これらのうち、メチル基またはエチル基が好ましい。シリルハライド化合物がアリール基を有する場合にはフェニル基等を用いることができる。シリルハライド化合物を構成するハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子等を用いることができ、塩素原子を用いることが好ましい。シリルハライド化合物として、より具体的には、トリメチルシリルクロライド(トリメチルクロロシランと呼ばれる場合もある。以下の化合物についても同様である。)、トリエチルシリルクロライド、tert-ブチルジメチルシリルクロライド、tert-ブチルジフェニルシリルクロライド、トリフェニルシリルクロライド等を挙げることができる。
【0031】
(塩基)
使用塩基としては、有機塩基および無機塩基が挙げられ、有機塩基としては、これらに限られないが、トリエチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、イミダゾール、ピリジン、4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)、n-ブチルリチウム、カリウムtert-ブトキシドが挙げられ、イミダゾールおよびピリジンが好ましい。無機塩基としては、これらに限られないが、水素化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウムまたは炭酸セシウムが挙げられる。塩基の使用量としては、原料化合物の当量以上が好ましい。さらには、原料化合物1モルに対して通常1.0~10.0モルの範囲を例示できるが、好ましくは2.0~6.0モルの範囲が良く、より好ましくは2.0~4.0モルの範囲であることが良い。
【0032】
(溶媒)
反応の円滑な進行等の観点から、本発明の反応は溶媒の存在下で実施することが好ましい。本発明の反応における溶媒は、反応が進行する限りは、いずれの溶媒でもよい。
【0033】
本発明の反応における溶媒としては、例えば、アミド類(例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N,N-ジエチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)等、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、より好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF))、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)等)を含むが、これらに限定されるものではない。溶媒の使用量は、反応が進行する限りは、いずれの量でもよい。本発明の反応における溶媒の使用量は当業者により適切に調整されることができる。
【0034】
(反応温度)
本発明の反応温度は、特に制限されない。一つの態様においては、収率の向上、副生成物の抑制および経済効率等の観点から、-20℃~50℃(すなわち、マイナス20℃~プラス50℃)、好ましくは-10℃~30℃(すなわち、マイナス10℃~プラス30℃)の範囲を例示できる。
【0035】
(反応時間)
本発明の反応時間は、特に制限されない。一つの態様においては、収率の向上、副生成物の抑制および経済効率等の観点から、0.5時間~120時間、好ましくは1時間~72時間、より好ましくは1時間~48時間、さらに好ましくは1時間~24時間の範囲を例示できる。しかしながら、本発明の反応時間は当業者により適切に調整されることができる。
【0036】
化合物(ia)のアミノ化反応
化合物(I)は、公知の方法またはそれに準ずる方法によって製造することができる。例えば、式(ia)の化合物を、適切な溶媒中でジエチルアミンと塩基存在下で反応させることにより、目的とする式(I)の化合物を得ることができる。
【0037】
(ジエチルアミンの使用量)
ジエチルアミンの使用量は、反応が進行する限りは特に制限されない。収率、副生成物の抑制および経済効率等の観点から、式(I)の原料1モルに対して、通常は0.8~3.0モル、好ましくは0.9~2.0モル、より好ましくは0.9~1.5モルの範囲を例示することができる。
【0038】
(塩基)
使用することができる塩基としては、例えば、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、アルカリ土類金属炭酸水素塩等の無機塩基類、ピリジン類、キノリン類、イソキノリン類、3級アミン類、2級アミン類、1級アミン類、芳香族アミン類、環状アミン類、カルボン酸アルカリ金属塩、カルボン酸アルカリ土類金属塩等の有機塩基類が挙げられるが、これらに限定されない。
【0039】
反応性、収率、価格および取り扱いの容易さ等の観点から、使用する塩基の例としては、好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、3級アミン類、カルボン酸アルカリ金属塩、より好ましくはアルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属炭酸水素塩、さらに好ましくはアルカリ金属水酸化物が挙げられる。使用する塩基の好ましい例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、トリエチルアミン、酢酸ナトリウム、酢酸カリウムが挙げられ、より好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
【0040】
使用する塩基の形態は、反応が進行する限りは特に制限されない。使用する塩基の形態としては、例えば、塩基のみの固体もしくは液体、または任意の濃度の水溶液もしくは水以外の溶媒の溶液等が挙げられる。また、用いる塩基は単独でまたは2種以上を任意の割合で混合しても良い。
【0041】
(溶媒系)
使用することができる溶媒系としては、例えば、芳香族炭化水素誘導体類、脂肪族炭化水素類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、アルコール類、ニトリル類、アミド類、アルキル尿素類、スルホキシド類、スルホン類、ケトン類、カルボン酸エステル類、カルボン酸類、芳香族複素環類、水およびこれらの2種以上の組み合わせを、任意の割合で混合した混合溶媒系が挙げられる。
【0042】
価格、取り扱いの容易さ、反応性および収率等の観点から、使用する溶媒系の例としては、好ましくは芳香族炭化水素誘導体類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、アルコール類、ニトリル類、アミド類、アルキル尿素類、スルホキシド類、スルホン類、水およびそれらからなる溶媒系、より好ましくは芳香族炭化水素誘導体類、ハロゲン化脂肪族炭化水素類、エーテル類、アルコール類、ニトリル類、アミド類、水およびそれらからなる溶媒系、さらに好ましくはニトリル類と水からなる溶媒系が挙げられる。溶媒系の具体的な好ましい例としては、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、N,N’-ジメチルイミダゾリジノン(DMI)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン、水およびそれらからなる溶媒系、より好ましくはトルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジクロロメタン、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、メチル-tert-ブチルエーテル、メタノール、エタノール、プロパノール、2-プロパノール、ブタノール、アセトニトリル、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド(DMAC)、N-メチルピロリドン(NMP)、水およびこれらの2種以上からなる溶媒系、さらに好ましくはアセトニトリルと水からなる溶媒系が挙げられる。
【0043】
(溶媒の使用量)
溶媒系を形成する溶媒の使用量としては、反応系の撹拌が十分にできる限りは特に制限されない。反応性、副生成物の抑制および経済効率等の観点から、式(I)の原料1モルに対して、水の量が通常は0(ゼロ)~10.0L(リットル)、好ましくは0.01~10.0L、より好ましくは0.1~5.0L、さらに好ましくは0.2~3.0Lの範囲を例示することができる。さらに、同様の観点から、式(I)の原料1モルに対して、水以外の上記した溶媒の量が、通常は0(ゼロ)~10.0L(リットル)、好ましくは0.01~10.0L、より好ましくは0.1~5.0L、さらに好ましくは0.2~3.0Lの範囲を例示することができる。なお、水および水以外の溶媒の混合割合は、反応が進行する限りは特に制限されない。水以外の2種以上の溶媒を用いる場合は、溶媒の混合割合は、反応が進行する限りは特に制限されない。
【0044】
(反応温度)
反応温度は、特に制限されない。収率、副生成物の抑制および経済効率等の観点から、通常は10℃~100℃、好ましくは40℃~95℃、より好ましくは45℃~85℃、さらに好ましくは50℃~70℃の範囲を例示することができる。
【0045】
(反応時間)
反応時間は、特に制限されない。収率、副生成物の抑制および経済効率等の観点から、通常は0.5時間~48時間、好ましくは0.5時間~24時間、より好ましくは1時間~12時間の範囲を例示することができる。
【0046】
上記に示す本発明の化合物(I)の製造方法において、化合物(Ia)を単離精製することなく、化合物(i)をシリルハライドと反応させた後、さらにジエチルアミンと反応させ、一挙に本発明の化合物(I)を製造することができる。
【0047】
本発明の化合物(II)のワンポット
式(i’)で表される化合物またはその立体異性体をアミノ化反応に付すことにより、式(II)で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩をワンポットで製造することができる。
例えば、式(i’)で表される化合物またはその立体異性体をハロゲン化反応に付した後、ジエチルアミンと反応させ、続いてトリエチルシリルクロライドと反応させることにより、式(II)で表される化合物またはその立体異性体またはそれらの塩をワンポットで製造することができる。
ハロゲン化反応に用いるハロゲン化剤としては、例えば、オキシ塩化リン、三塩化リン、五塩化リン、塩化チオニル、三臭化リン等が挙げられる。ハロゲン化剤の使用量は、化合物(i’)に対して、通常1~5モルである。
ジエチルアミンの使用量は、反応が進行する限りは特に制限されない。収率、副生成物の抑制および経済効率等の観点から、式(i’)の原料1モルに対して、通常は0.8~3.0モル、好ましくは1.0~2.0モルである。
本発明の化合物(II)のワンポット反応は、反応に悪影響を及ぼさない溶媒中で行われる。反応に悪影響を及ぼさない溶媒としては、例えば、ハロゲン化炭化水素類(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、1,1,2,2-テトラクロロエタン等)、エーテル類(例えば、エチルエーテル、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等)、ニトリル類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル等)、エステル類(酢酸メチル、酢酸エチル等)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ベンゾトリフルオリド等)、ピリジン等が用いられる。これら溶媒は、2種以上を適宜の割合で混合して用いてもよい。反応温度は、通常-10℃~30℃、好ましくは、0℃~25℃である。反応時間は、通常30分間~20時間である。
【0048】
[式(II)の化合物からPGE1誘導体等(式(VII))への変換]
下記の図で示されるように、式(II)(式中、TESは、トリエチルシリル基を示し、Etは、エチル基を示す。)の化合物に対して、式(III)(式中、Mは、Li、Na、K、Mg、Ca、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Al、Snより選ばれる金属または該金属を含む基を示す。)で表される金属有機化合物を用いて、1,4付加反応を進行させることにより、シクロペンテノンの3位に側鎖が導入される。それと同時にシクロペンテノン誘導体の2位にメチリデン化がおこり、効率よく式(IV)で表されるプロスタグランジン誘導体等の中間体に導くことができる。さらに式(IV)化合物に対して、式(V)(式中、M’は、Li、Na、K、Mg、Ca、Ti、Zr、Ni、Cu、Zn、Al、Snより選ばれる金属または該金属を含む基を示す。)で表される有機金属化合物を用いて、1,4付加反応を進行させることにより、式(VI)で表される化合物式に導くことができる。式(VI)の化合物のシリル基を除去することにより、式(VII)で示されるPGE1誘導体を製造することができる。
【0049】
前記反応工程式において、化合物(III)および(V)はそれ自体公知であるか、あるいは公知の方法により容易に製造することができる。
また、前記反応工程における1,4付加反応は、例えば、非特許文献4および非特許文献5に記載された方法に準じて、行うことができる。
なお、使用される化合物(VI)のシリル基の切断剤としては、好適には、ピリジニウムトルエンスルホン酸、トルエンスルホン酸等のアリールスルホン酸、メタンスルホン酸等のアルカンスルホン酸、希塩酸、希硫酸のような希鉱酸、またはテトラブチルアンモニウムフルオライドのようなアンモニウムフルオライドであり、より好適には、パラピリジニウムトルエンスルホン酸である。使用される不活性溶剤は、例えば、水、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソプロピルケトンまたはメチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エ-テル、ジメトキシエタンのようなエーテル類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、ジクロロエタンのようなハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族炭化水素類および任意の割合のそれらの任意の組み合わせを含むが、これらに限定されるものではない。好適には、アセトンと水の混合溶媒である。反応温度は、通常0℃~80℃(好適には、10℃~40℃)であり、反応時間は、通常10分間~24時間(好適には、30分間~8時間)である。
本明細書中の各反応において、反応生成物は通常の精製手段、例えば、常圧下または減圧下における蒸留、シリカゲルまたはケイ酸マグネシウムを用いた高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、あるいはカラムクロマトグラフィーまたは洗浄、再結晶等の方法により精製することができる。精製は各反応ごとに行なってもよいし、いくつかの反応終了後に行なってもよい。
【実施例
【0050】
以下に実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。本明細書中、室温は10℃から35℃を示す。なお、実施例および参考例の各物性の測定には次の機器を用いた。融点:Yanaco Mp-500V(アナテック・ヤナコ社製)。H核磁気共鳴スペクトル(H‐NMR):AVANCE-400(Burker)。内部基準物質:テトラメチルシラン。質量分析:mircOTOF-Q II-S1(Burker)
【実施例1】
【0051】
製造方法1
(R)2-(ジエチルアミノ)メチル)-4-(トリエチルシリル)オキシ)シクロペント-2-エン-1-オン
アルゴン雰囲気下、0℃で三臭化リン(19.7μL, 0.208 mmol)を(R)-4-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)シクロペント-2-エン-1-オン(66.5 mg, 0.519 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(1.7 mL)を加え、同温度で20分間攪拌した後、トリエチルシリルクロリド(0.22 mL, 1.35 mmol)とトリエチルアミン(0.29 mL, 2.08 mmol)と室温で1.5時間攪拌した。次いでジエチルアミン(0.16 mL, 3.12 mmol)と炭酸カリウム水溶液(0.1M, 1.7 mL)を加え、20分間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1:1→1:2)で精製し、(R)-2-(ジエチルアミノ)メチル)-4-(トリエチルシリル)オキシ)シクロペント-2-エン-1-オン(45.4 mg, 29%)を淡黄色の油状物質として得た。
[α]D = +18.7 (c = 1.0 in CHCl3); 1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.65 (dd, J = 8.0, 15.8 Hz, 6H), 0.96-1.04 (m, 15H), 2.32 (dd, J = 2.0, 18.4 Hz, 1H), 2.47-2.53 (m, 4H), 2.77 (dd, J = 6.0, 18.2 Hz, 1H), 3.15-3.25 (m, 2H), 4.90-4.92 (m, 1H), 7.24-7.25 (m, 1H); 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ 4.8, 6.9 12.1, 45.9, 47.4, 47.5, 68.8, 145.1, 158.9, 206.2; IR(neat): 1147, 1716, 2960 cm-1; HRMS (m/z): ([M + H]+) C16H32NO4Si2 calcd. for 298.2197, found 298.2196
製造方法2
(R)-2-(ジエチルアミノ)メチル)-4-(トリエチルシリル)オキシ)シクロペント-2-エン-1-オン
アルゴン雰囲気下、0℃で三臭化リン(42μL, 0.445 mmol)を(R)-4-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)シクロペント-2-エン-1-オン(163 mg, 1.27 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(4.2 mL)を加え、同温度で45分間攪拌した後、ジエチルアミン(0.26 mL, 2.54 mmol)を加え、室温で40分間攪拌した。次いでトリエチルアミン(0.73 mL, 5.08 mmol)とトリエチルシリルクロリド(0.54 mL, 3.18 mmol)を加え、30分間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1:1→1:2)で精製し、(R)-2-((ジエチルアミノ)メチル)-4-(トリエチルシリル)オキシ)シクロペント-2-エン-1-オン(219 mg, 42%)を淡黄色の油状物質として得た。各スペクトルデータは製造方法1と一致した。
製造方法3
(R)-2-((ジエチルアミノ)メチル)-4-(トリエチルシリル)オキシ)シクロペント-2-エン-1-オン
アルゴン雰囲気下、0℃で三臭化リン(59μL, 0.62 mmol)を(R)-4-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)シクロペント-2-エン-1-オン(227 mg, 1.77 mmol)のテトラヒドロフラン溶液(5.9 mL)を加え、同温度で20分間攪拌した後、トリエチルアミン(0.49 mL, 3.54 mmol)とジエチルアミン(0.37 mL, 3.54 mmol)を加え、室温で20分間攪拌した。次いでトリエチルシリルクロリド(0.39 mL, 2.30 mmol)を加え、20分間攪拌した。反応溶液に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1:1→1:2)で精製し、(R)-2-((ジエチルアミノ)メチル)-4-(トリエチルシリル)オキシ)シクロペント-2-エン-1-オン(219 mg, 42%)を淡黄色の油状物質として得た。各スペクトルデータは製造方法1と一致した。
【実施例2】
【0052】
(3R,4R)-2-メチレン-4-[(トリエチルシリル)オキシ]-3-{(S,E)-3-[(トリエチルシリル)オキシ]オクト-1-エン-1-イル}シクロペンタン-1-オン
アルゴン雰囲気下、-78℃でn-BuLi(0.25 mL, 0.39 mmol, 1.55 M)をヨウ化ビニル(145 mg, 0.39 mmol)のジエチルエーテル溶液(1.3 mL)に加え、同温度で2時間攪拌した。次いで、LiCu(CN)(2-Th)(1.57 mL, 0.39 mmol, 0.25 M)を加え、30分攪拌した後、(R)-2-((ジエチルアミノ)メチル)-4-(トリエチルシリル)オキシ)シクロペント-2-エン-1-オン(106 mg, 0.35 mmol)のジエチルエーテル溶液(1.5 mL)を加え、-78℃で20分間攪拌した。反応混合物に飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=60:1→40:1)で精製し、(3R,4R)-2-メチレン-4-[(トリエチルシリル)オキシ]-3-{(S,E)-3-[(トリエチルシリル)オキシ]オクト-1-エン-1-イル}シクロペンタン-1-オン(114 mg, 70%)を淡黄色の油状物質として得た。
Rf = 0.33; [α]D = -40.8 (c = 0.30 in CHCl3); 1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.56-0.62 (m, 12H), 0.88 (t, J =6.8 Hz, 3H), 0.93-0.97 (m, 18H), 1.26-1.51 (m, 8H), 2.34 (dd, J = 6.4, 17.8 Hz, 1H), 2.63 (dd, J = 6.4, 17.8 Hz, 1H), 3.30-3.33 (m, 1H), 4.10-4.15 (m, 2H), 5.24-5.25 (m, 1H), 5.45-5.65 (m, 2H), 6.12-6.13 (m, 1H); 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ 4.9, 5.1, 6.9, 7.0, 14.2, 22.8, 25.2, 32.0, 38.7, 47.1, 54.6, 72.79, 72.83, 77.4, 119.5, 127.6, 137.7, 146.8, 203.7; HRMS (m/z): ([M + Na]+) C26H48O3Si2Nacalcd. for 487.3034, found 487.3029
【実施例3】
【0053】
メチル7-((1R,2R,3R)-5-オキソ-3-((トリエチルシリル)オキシ)-2-((S,E)-3-((トリエチルシリル)オキシ)オクト-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプタノエート
アルゴン雰囲気、トリエチルボラン(46.7μL, 0.047 mmol)を(3R,4R)-2-メチレン-4-[(トリエチルシリル)オキシ]-3-{(S,E)-3-[(トリエチルシリル)オキシ]オクト-1-エン-1-イル}シクロペンタン-1-オン(210 mg, 0.47 mmol)とトリブチルスズ(0.38 mL, 1.40 mmol)のトルエン溶液(1.5 mL)に-20℃で加え、3時間攪拌した。反応溶液を減圧蒸留し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーでヘキサン/酢酸エチル=50:1→20:1)で精製し、メチル7-((1R,2R,3R)-5-オキソ-3-((トリエチルシリル)オキシ)-2-((S,E)-3-((トリエチルシリル)オキシ)オクト-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプタノエート(158 mg, 56%)を無色油状物質として得た。
[α]D = -29.0 (c = 0.24 in CHCl3); 1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.55-0.62 (m, 12H), 0.88 (t, J =6.8 Hz, 3H), 0.92-0.99 (m, 18H), 1.21-1.63 (m, 18H), 1.91-1.97 (m, 1H), 2.18 (dd, J = 8.0, 18.4 Hz, 1H), 2.28 (t, J =7.6 Hz, 2H), 2.42-2.49 (m, 1H), 2.62 (ddd, J = 1.2, 7.2, 18.2 Hz, 1H), 3.66 (s, 3H), 4.1-4.13 (m, 2H), 5.49-5.61 (m, 2H); 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ 4.9, 5.1, 6.7 6.9, 7.1, 14.2, 22.8, 25.1, 25.2, 26.8, 28.0, 29.1, 29.3, 29.7, 32.0, 34.2, 38.7, 51.6, 53.2, 53.9, 73.0, 77.4, 129.0, 136.3, 174.4, 216.5; HRMS (m/z): ([M + Na]+) C33H64O5Si2Nacalcd. for 619.4184, found 619.4203
【実施例4】
【0054】
PGE1-メチルエステル
パラピリジニウムトルエンスルホン酸(PPTS、0.63 mg, 2.51μmol)をメチル7-((1R,2R,3R)-5-オキソ-3-((トリエチルシリル)オキシ)-2-((S,E)-3-((トリエチルシリル)オキシ)オクト-1-エン-1-イル)シクロペンチル)ヘプタノエート(50mg, 0.0837 mmol)のアセトン(0.83 mL)と水(0.17 mL)の混合溶液に加え、室温で6時間攪拌した。反応溶液を減圧蒸留し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧蒸留し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ジエチルエーテル/メタノール=50:1)で精製し、PGE1-メチルエステル(25.2 mg, 82%)を無色のあめ状物質として得た。
[α]D = -46.8 (c = 0.93 in MeOH); 1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ 0.89 (t, J =6.4 Hz, 3H), 1.21-1.69 (m, 18H), 1.96-2.04 (m, 1H), 2.17-2.38 (m, 5H), 2.73 (ddd, J = 1.2, 7.2, 18.4 Hz, 1H), 3.22 (brs, 1H), 3.66 (s, 3H), 4.01-4.14 (m, 2H), 5.52-5.70 (m, 2H); 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ 14.2, 22.8, 25.0, 25.3 26.7, 27.8, 29.0, 29.5, 31.8, 34.1, 37.5, 51.6, 54.6, 54.9, 72.0, 73.1, 131.9, 136.9, 174.5, 214.8; HRMS (m/z): ([M + Na]+) C21H36O5Nacalcd. for 391.2455, found 391.2459
【実施例5】
【0055】
4-ヒドロキシ-2-(アセトキシメチル)シクロペンタ-2-エン-1-オン
アルゴン雰囲気下、4-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(5.83 g, 45.5 mmol)の乾燥アセトン(30 mL)と酢酸ビニル(60 mL)の混液にPPL(豚膵臓リパーゼ)(2.91 g, 50w/w%)を加え、室温で20時間攪拌した。反応溶液をセライトで濾過した後、有機溶媒を減圧蒸留し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=1:2)で精製し、4-ヒドロキシ-2-(アセトキシメチル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(3.02 g, 36%)を淡黄色の油状物質として得た。また、4-ヒドロキシ-2-(ヒドロキシメチル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(1.45 g, 25%)を淡黄色の油状物質として回収した。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ = 2.11 (s, 3H), 2.38 (dd, J = 2.0, 18.4 Hz, 1H), 2.88 (dd, J = 6.4, 18.4 Hz, 1H), 4.78-4.79 (m, 1H), 5.02 (bra, 1H), 7.38-7.39 (m, 1H) ppm. 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ = 20.9, 45.1, 57.8, 68.8, 142.7, 185.1, 170.7, 204.0 ppm. HR-MS (ESI-TOF): m/z C8H10O4Na ([M + Na]+) calcd. for 193.0471, found 193.0471
【実施例6】
【0056】
2-(ジエチルアミノメチル)-4-(トリエチルシリルオキシ)シクロペンタ-2-エン-1-オン
アルゴン雰囲気下、クロロトリエチルシラン(1.29 mL, 7.63 mmol)、トリエチルアミン(2.23 mL, 16.4 mmol)およびDMAP(71 mg 0.587 mmol)を4-ヒドロキシ-2-(アセトキシメチル)シクロペンタ-2-エン-1-オン(1.0 g, 5.87 mmol)の無水ジクロロメタン溶液に加え、室温で0.5~1時間攪拌した。原料の消失をTLCで確認した後、テトラヒドロフラン(5 mL)、0.1M炭酸カリウム水溶液(15 mL)およびジエチルアミン(3.05 mL, 29.4 mmol)を加え、さらに40分間室温で攪拌した。反応混合物に水を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=2:1→1:2)で精製し、2-(ジエチルアミノメチル)-4-(トリエチルシリルオキシ)シクロペンタ-2-エン-1-オン(1.45 g, 83%)を淡黄色の油状物質として得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ = 0.65 (dd, J = 8.0, 15.8 Hz, 6H), 0.96-1.04 (m, 15H), 2.32 (dd, J = 2.0, 18.4 Hz, 1H), 2.47-2.53 (m, 4H), 2.77 (dd, J = 6.0, 18.2 Hz, 1H), 3.15-3.25 (m, 2H), 4.90-4.92 (m, 1H), 7.24-7.25 (m, 1H) ppm. 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ = 4.8, 6.9 12.1, 45.9, 47.4, 47.5, 68.8, 145.1, 158.9, 206.2 ppm. HR-MS (ESI-TOF): m/z C16H32NO4Si2 ([M + H]+) calcd. for 298.2197, found 298.2196
【実施例7】
【0057】
PGE1誘導体
(3R,4R)および(3S,4S)-3-((S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクト-1-イン-1-イル)-2-メチレン-4-((トリエチルシリル)オキシ)シクロペンタン-1-オン
アルゴン雰囲気下、ノルマルブチルリチウム(1.25 mL, 1.93 mmol)を(S)-tert-ブチルジメチル-(オクト-1-イン-3-イロキシ)シラン(500 mg, 2.08 mmol)の乾燥トルエン溶液(4 mL)に0℃で加え、30分間攪拌させた後、塩化ジエチルアルミニウムヘキサンの溶液(1.0M)(2.08 mL, 2.08 mmol)を加え、室温でさらに30分間攪拌させた。調製した有機アルミニウム試薬を-78℃に冷却し、2-(ジエチルアミノメチル)-4-(トリエチルシリルオキシ)シクロペンタ-2-エン-1-オン(412 mg, 1.38 mmol)の乾燥トルエン溶液(5 mL)を滴下した。同温度で30分間攪拌した後、さらに室温で1時間攪拌した。反応混合物に1N塩酸水溶液および飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=50:1)で精製し、(3R,4R)および(3S,4S)-3-((S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクト-1-イン-1-イル)-2-メチレン-4-((トリエチルシリル)オキシ)シクロペンタン-1-オン(トランス体)(408 mg, 64%)を淡黄色の油状物質として、(3S,4R)および(3R,4S)-3-((S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクト-1-イン-1-イル)-2-メチレン-4-((トリエチルシリル)オキシ)シクロペンタン-1-オン(シス体)(156 mg, 24%)を淡黄色の油状物質として得た。
トランス体
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ = 0.091 (s, 3H), 0.10 (s, 3H), 0.64 (dd, J = 7.6, 15.4 Hz, 6H), 0.87-0.99 (m, 21H), 1.28-1.69 (m, 8H), 2.34 (dd, J = 7.2, 18.6 Hz, 1H), 2.72 (dd, J = 6.4, 18.0 Hz, 1H), 3.53-3.55 (m, 1H), 4.25-4.35 (m, 2H), 5.55-5.56 (m, 1H), 6.14 (d, J = 2.8 Hz, 1H) ppm. HR-MS (ESI-TOF): m/z C26H48O3Si2Na ([M + Na]+ ) calcd. for 487.3034, found 487.3029
シス体
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ = 0.010 (s, 3H), 0.12 (s, 3H), 0.61 (dd, J = 8.0, 16.4 Hz, 6H), 0.88-0.97 (m, 21H), 1.26-1.69 (m, 8H), 2.41-2.44 (m, 2H), 3.68-3.69 (m, 1H), 4.38-4.41 (m, 1H), 4.52-4.54 (m, 1H), 5.56-5.60 (m, 1H), 6.17 (d, J = 3.2 Hz, 1H) ppm. 1HR-MS (ESI-TOF): m/z C26H48O3Si2Na ([M + Na]+) calcd. for 487.3034, found 487.3030
メチル7-((1R,2S,3R)-2-((S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクト-1-イン-1-イル)-5-オキソ-3-((トリエチルシリル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタノエートの製造
アルゴン雰囲気下、1,4付加体(310 mg, 0.661 mmol)、メチル6-ヨードヘキサノエート(508 mg, 1.98 mmol)、トリブチルスズ(0.53 mL, 1.98 mmol)およびAIBN(10.8 mg, 0.0661 mmol)の脱酸素トルエン溶液(1.3 mL)を80℃で4時間攪拌した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=30:1→20:1)で精製し、メチル7-((1R,2S,3R)-2-((S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクト-1-イン-1-イル)-5-オキソ-3-((トリエチルシリル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタノエート(160 mg, 40%)(トランス体)を淡黄色の油状物質として、メチル7-((1S,2S,3R)-2-((S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクト-1-イン-1-イル)-5-オキソ-3-((トリエチルシリル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタノエート(40.9 mg, 10%)(シス体)を淡黄色の油状物質として得た。
トランス体
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ = 0.090 (s, 3H), 0.10 (s, 3H), 0.63 (dd, J = 7.6, 15.8 Hz, 6H), 0.87-0.98 (m, 21H), 1.28-1.63 (m, 18H), 2.15-2.31 (m, 2H), 2.29 (t, J = 7.6, 2H), 2.68-2.69 (m, 2H), 3.66 (s, 3H), 4.25-4.35 (m, 2H) ppm. 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ = 4.9, 6.9, 13.7, 14.2, 16.5, 18.4, 22.7, 25.05, 21.1, 25.9, 26.8, 26.9, 29.1, 29.2, 29.3, 29.4, 31.6, 34.2, 38.9, 42.3, 47.6, 51.6, 55.1, 55.2, 63.2, 73.5, 84.0, 85.0, 174.4, 215.5 ppm. HR-MS (ESI-TOF): m/z C33H62O5Si2Na ([M + Na]+) calcd. for 617.4028, found 617.4027
シス体
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ = 0.061 (s, 3H), 0.070 (s, 3H), 0.59 (dd, J = 8.0, 16.0 Hz, 6H), 0.85-0.96 (m, 21H), 1.26-1.79 (m, 18H), 2.19 (d, J = 18.4 Hz, 1H), 2.27-2.34 (m, 2H), 2.56 (dd, J = 4.8, 18.6 Hz, 1H), 3.12 (d, J = 7.6 Hz, 1H), 3.34 (t, J = 6.8, 1H), 3.65 (s, 3H), 4.26-4.29 (m, 1H), 4.46 (d, J = 4.8 Hz, 1H) ppm. 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ = 4.5, 6.9, 14.1, 18.4, 22.7, 24.2, 25.0, 25.1, 25.9, 26.1, 27.7, 27.8, 29.2, 29.4, 31.5, 31.53, 32.5, 33.6, 33.94, 34.2, 38.9, 41.4, 46.0, 49.4, 51.6, 51.7, 63.1, 63.2, 72.4, 80.5, 88.0, 174.4, 217.5 ppm. HR-MS (ESI-TOF): m/z C33H62O5Si2Na ([M + Na]+) calcd. for 617.4028, found 617.4028
メチル7-((1R,2S,3R)-2-((S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクト-1-イン-1-イル)-3-ヒドロキシ-5-オキソシクロペンチル)ヘプタノエート(脱TES体)の製造
メチル7-((1R,2S,3R)-2-((S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクト-1-イン-1-イル)-5-オキソ-3-((トリエチルシリル)オキシ)シクロペンチル)ヘプタノエート(10.0 mg, 0.0169 mmol)を酢酸-THF-H2O(3:1:1)の混液(1.0 mL)に加え、1.5時間攪拌した。H2Oで希釈し、酢酸エチルで抽出した後、有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を減圧留去し、得られた残渣を少量のシリカゲルで溶出し、メチル7-((1R,2S,3R)-2-((S)-3-((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)オクト-1-イン-1-イル)-3-ヒドロキシ-5-オキソシクロペンチル)ヘプタノエート(8.0 mg, 99%)を無色の油状物質として得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ = 0.11 (s, 3H), 0.13 (s, 3H), 0.87-91 (m, 12H), 1.20-1.68 (m, 18H), 2.19-2.37 (m, 5H), 2.62-2.77 (m, 2H), 3.66 (s, 3H), 4.28-4.38 (m, 2H) ppm
【実施例8】
【0058】
(3R,4R)および(3S,4R)-2-メチレン-4-((トリエチルシリル)オキシ)-3-((S,E)-3-((トリエチルシリル)オキシ)オクト-1-エン-1-イル)シクロペンタン-1-オン
アルゴン雰囲気下、ノルマルブチルリチウム(0.198 mL, 0.308 mmol)を(S,E)-トリエチル((1-ヨードオクト-1-エン-3-イル)オキシ)シラン(113 mg, 0.308 mmol)のジエチルエーテル溶液(1.0 mL)に-78℃で加え、2時間攪拌した。次いで2-チエニルシアノクプラート(0.25M, 1.23 mL, 0.308 mmol)を-78℃で加え、さらに30分間攪拌した。調製したビニルクプラートに2-(ジエチルアミノメチル)-4-(トリエチルシリルオキシ)シクロペンタ-2-エン-1-オン(48.5 mg, 0.154 mmol)のジエチルエーテル溶液(1.5 mL)を加えた。50分間攪拌した後、飽和塩化アンモニウム水溶液を加え、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸マグネシウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=40:1)で精製し、(3R,4R)および(3S,4R)-2-メチレン-4-((トリエチルシリル)オキシ)-3-((S,E)-3-((トリエチルシリル)オキシ)オクト-1-エン-1-イル)シクロペンタン-1-オン(41.6 mg, 60%)を淡黄色の油状物質として得た。
1H NMR (400 Mz, CDCl3) δ = 0.55-0.63 (m, 12H), 0.86-0.97 (m, 21H), 1.23-1.50 (m, 8H), 2.35 (dd, J = 3.2, 18.4 Hz, 1H), 2.64 (dd, J = 6.0, 18.4 Hz, 1H), 3.22-3.35 (m, 1H), 4.07-4.13 (m, 2H), 5.24-5.27 (m, 1H), 5.44-5.65 (m, 2H), 6.11-6.12 (m, 1H) ppm. 13C NMR (100 Mz, CDCl3) δ = 4.9, 5.1, 6.9, 14.2, 14.2, 22.8, 25.0, 31.9, 32.0, 38.6, 47.3, 54.6, 54.7, 72.8, 73.2, 119.5, 127.6, 137.7, 146.8, 203.5 ppm. HR-MS (ESI-TOF): m/z C26H48O3Si2Na ([M + Na]+) calcd. for 487.3034, found 487.3029
【比較例1】
【0059】
(非特許文献4)有機合成化学協会誌第57巻第5号、頁422-428(1999)では、PGE1製造の最終工程において非常に腐食性、毒性の高いフッ化水素を用いてTBS基を除去している。そのため、精製処理により厳密に取り除く必要がある。それに比べ、TES基は酢酸水溶液中で簡便に除去可能である。また、Eur. J. Org. Chem. 1999, 2655 にも記載の通り、2成分連結法から合成したPGE1の最終工程でPPTS触媒存在下、水-アセトン溶媒で反応を行うことでもTES基の除去が可能である。分液操作で容易に精製可能であるため、環境および製造の観点からも優れているといえる。