(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】双眼ルーペおよび双眼ルーペ装置
(51)【国際特許分類】
G02B 25/00 20060101AFI20220722BHJP
G02B 23/00 20060101ALI20220722BHJP
G02C 7/08 20060101ALI20220722BHJP
G02B 7/12 20210101ALI20220722BHJP
【FI】
G02B25/00 Z
G02B23/00
G02C7/08
G02B7/12
(21)【出願番号】P 2018075113
(22)【出願日】2018-04-10
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000134648
【氏名又は名称】株式会社ナイツ
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】宗像 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 重一
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-041218(JP,A)
【文献】特開昭60-008819(JP,A)
【文献】登録実用新案第3167850(JP,U)
【文献】米国特許第06764176(US,B1)
【文献】特開2013-223115(JP,A)
【文献】登録実用新案第3204503(JP,U)
【文献】登録実用新案第3027971(JP,U)
【文献】特開2001-350123(JP,A)
【文献】特開平09-281409(JP,A)
【文献】特開平02-242221(JP,A)
【文献】特開昭64-024221(JP,A)
【文献】米国特許第05667291(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00 - 17/08
G02B 21/02 - 21/04
G02B 23/00 - 23/22
G02B 25/00 - 25/04
G02C 1/00 - 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
観察対象を拡大観察するために用いられる医療用の双眼ルーペであって、
ブラケットと、
前記ブラケットに取り付けられた一対のレンズ鏡筒と、
前記一対のレンズ鏡筒に対応させた2つのレンズが形成されており、使用時に前記一対のレンズ鏡筒の前記観察対象側を覆うように、前記ブラケットに着脱自在に取り付けられたプレートルーペと
、
前記プレートルーペの前記観察対象側の周辺部の少なくとも一部を覆った時に、当該周辺部の一部の視野を外側に広げる視野変更部材と、
前記一対のレンズ鏡筒の少なくともいずれかのレンズ鏡筒または前記ブラケットに取り付けられて前記視野変更部材を使用位置と退避位置とを切り換え可能に支持する視野変更部材支持具と、を備えることを特徴とする双眼ルーペ。
【請求項2】
前記ブラケットは、
前記一対のレンズ鏡筒を取り付けるためのレンズ鏡筒取付部と、
前記プレートルーペを取り付けるためのプレートルーペ取付部と、
前記レンズ鏡筒取付部と前記プレートルーペ取付部とを繋ぐ繋ぎ部とを有し、
前記プレートルーペの使用位置と退避位置とを切り換えるためのプレートルーペ位置切り換え機構が前記プレートルーペ取付部と前記繋ぎ部とを含み構成されていることを特徴とする請求項1に記載の双眼ルーペ。
【請求項3】
前記視野変更部材は、プリズムであることを特徴とする
請求項1または2に記載の双眼ルーペ。
【請求項4】
前記プリズムは、フレネルタイプのプリズムプレートであることを特徴とする
請求項3に記載の双眼ルーペ。
【請求項5】
前記プレートルーペは、前記2つのレンズの境界部に切り欠きまたは穴が形成されていることを特徴とする
請求項1~4のいずれかに記載の双眼ルーペ。
【請求項6】
前記ブラケットは、直接的または間接的に、照明機器または撮像機器を前記観察対象に向けて取り付けるための機器取付部が形成されていることを特徴とする
請求項1~5のいずれかに記載の双眼ルーペ。
【請求項7】
スタンドと、
1または複数の関節を有し、前記スタンドに取り付けられて先端部を使用者の所望の位置に移動自在に構成されたアームと、
前記アームの先端部に保持されたアームステーと、
前記アームステーに前記ブラケットが固定された双眼ルーペとを備える双眼ルーペ装置であって、
前記双眼ルーペは、
請求項1~6のいずれかに記載の双眼ルーペであることを特徴とする双眼ルーペ装置。
【請求項8】
前記双眼ルーペに取り付けられる照明機器または撮像機器をさらに備え、
前記アームは、前記照明機器または撮像機器の電気ケーブルを挿通可能な中空の配線挿通部を有することを特徴とする
請求項7に記載の双眼ルーペ装置。
【請求項9】
前記双眼ルーペに取り付けられる照明機器または撮像機器をさらに備え、
前記アームは、当該アームに沿わして前記照明機器または撮像機器の電気ケーブルを固定可能な配線固定部を有することを特徴とする
請求項7に記載の双眼ルーペ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、双眼ルーペおよび当該双眼ルーペを備える双眼ルーペ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
医科・眼科・歯科治療、外科手術等の医療現場において、医療用ルーペ、サージカルルーペ、サージテルルーペ等と呼ばれる双眼ルーペが活用されている。双眼ルーペを活用することにより、通常の裸眼の状態(純粋に裸眼の状態に限らず、コンタクトレンズまたは眼鏡を着用している状態を含む。)であれば詳しく観察できないような狭く微細な部位であっても、当該部位を拡大して詳しく観察することができる(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
図8は、従来の双眼ルーペ910を説明するための斜視図である。
従来の双眼ルーペ910は、
図8に示すように、ブラケット920と、ブラケット920に取り付けられた左右一対のレンズ鏡筒930L,930Rとを有する。使用者は、レンズ鏡筒930L,930Rを接眼レンズ932L,932R側から覗くことで、対物レンズ933L,933R側にある観察対象を所定の範囲において拡大観察することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、医療現場において、双眼ルーペは、体液や薬液等の飛沫で対物レンズ側が汚れてしまうことによって観察機能が損なわれる場合がある。また、観察中に状況・用途に応じて双眼ルーペの光学特性を変更させたい場合がある。
【0006】
しかしながら、従来の双眼ルーペ910は、レンズ枠931L,931Rにそれぞれ押さえ部品等で固定されている対物レンズ933L,933Rをそれぞれ交換する必要があるため、短時間で対物レンズ933L,933Rを交換することが困難である。このため、従来の双眼ルーペ910は、対物レンズ側が汚れてしまうことによって観察機能が損なわれた際に観察機能を回復させたい場合や、観察中に状況・用途に応じて双眼ルーペの光学特性を変更させたい場合に、短時間で対処し難いという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記した問題を解決するためになされたもので、対物レンズ側が汚れてしまうことによって観察機能が損なわれた際に観察機能を回復させたい場合や、観察中に状況・用途に応じて双眼ルーペの光学特性を変更させたい場合に、短時間で対処しやすい医療用の双眼ルーペを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1]本発明の双眼ルーペは、観察対象を拡大観察するために用いられる医療用の双眼ルーペであって、ブラケットと、前記ブラケットに取り付けられた一対のレンズ鏡筒と、前記一対のレンズ鏡筒に対応させた2つのレンズが形成されており、使用時に前記一対のレンズ鏡筒の前記観察対象側を覆うように、前記ブラケットに着脱自在に取り付けられたプレートルーペとを備えることを特徴とする。
【0009】
[2]本発明の双眼ルーペにおいては、前記ブラケットは、前記一対のレンズ鏡筒を取り付けるためのレンズ鏡筒取付部と、前記プレートルーペを取り付けるためのプレートルーペ取付部と、前記レンズ鏡筒取付部と前記プレートルーペ取付部とを繋ぐ繋ぎ部とを有し、前記プレートルーペの使用位置と退避位置とを切り換えるプレートルーペ位置切り換え機構が前記プレートルーペ取付部と前記繋ぎ部とを含み構成されていることが好ましい。
【0010】
[3]本発明の双眼ルーペにおいては、前記プレートルーペの前記観察対象側の周辺部の少なくとも一部を覆った時に、当該周辺部の一部の視野を外側に広げる視野変更部材と、前記一対のレンズ鏡筒の少なくともいずれかのレンズ鏡筒または前記ブラケットに取り付けられて前記視野変更部材を使用位置と退避位置とを切り換え可能に支持する視野変更部材支持具とをさらに備えていることが好ましい。
【0011】
[4]前記視野変更部材は、プリズムであることが好ましい。
【0012】
[5]その際、前記プリズムは、フレネルタイプのプリズムプレートであることが好ましい。
【0013】
[6]本発明の双眼ルーペにおいては、前記プレートルーペの前記観察対象側を覆った時に、前記双眼ルーペの拡大倍率を変更する第2プレートルーペと、前記一対のレンズ鏡筒の少なくともいずれかのレンズ鏡筒または前記ブラケットに取り付けられて前記第2プレートルーペを使用位置と退避位置とを切り換え可能に支持する第2プレートルーペ支持具とをさらに備えていてもよい。
【0014】
[7]本発明の双眼ルーペにおいては、前記プレートルーペは、前記2つのレンズの境界部に切り欠きまたは穴が形成されていることが好ましい。
【0015】
[8]本発明の双眼ルーペにおいては、前記ブラケットは、直接的または間接的に、照明機器または撮像機器を前記観察対象に向けて取り付けるための機器取付部が形成されていることが好ましい。
【0016】
[9]本発明の双眼ルーペ装置は、スタンドと、1または複数の関節を有し、前記スタンドに取り付けられて先端部を使用者の所望の位置に移動自在に構成されたアームと、前記アームの先端部に保持されたアームステーと、前記アームステーに前記ブラケットが固定された双眼ルーペとを備える双眼ルーペ装置であって、前記双眼ルーペは、上記[1]~[8]のいずれかに記載の双眼ルーペであることを特徴とする。
【0017】
[10]本発明の双眼ルーペ装置は、前記双眼ルーペに取り付けられる照明機器または撮像機器をさらに備え、前記アームは、前記照明機器または撮像機器の電気ケーブルを挿通可能な中空の配線挿通部を有することが好ましい。
【0018】
[11]本発明の双眼ルーペ装置は、前記双眼ルーペに取り付けられる照明機器または撮像機器をさらに備え、前記アームは、当該アームに沿わして前記照明機器または撮像機器の電気ケーブルを固定可能な配線固定部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明の双眼ルーペは、使用時に一対のレンズ鏡筒の観察対象側を覆うように、ブラケットに取り付けられたプレートルーペを備えているため、医療現場における体液や薬液等の飛沫に対してプレートルーペがシールドとなり、レンズ鏡筒の対物レンズ側は汚れ難い。また、プレートルーペは、ブラケットに着脱自在に取り付けられているため、短時間で取り替え可能である。また、プレートルーペは、レンズ鏡筒よりも安価に形成することが可能である。このため、プレートルーペをディスポーザル部品として構成することは現実的である。この結果、本発明によれば、対物レンズ側(プレートルーペ)が汚れてしまうことによって観察機能が損なわれた際に観察機能を回復させたい場合に、短時間で対処しやすい医療用の双眼ルーペを提供することができる。
【0020】
また、本発明の双眼ルーペは、プレートルーペに一対のレンズ鏡筒に対応させた2つのレンズが形成されており、プレートルーペのレンズのパワーに応じた光学特性(拡大倍率、作動距離、焦点深度等)の双眼ルーペを構成することが可能である。つまり、レンズのパワーが異なる複数種類のプレートルーペを用意しておけば、プレートルーペを交換することで双眼ルーペの光学特性を容易に変更可能である。また、前述したように、プレートルーペは、ブラケットに着脱自在に取り付けられているため、短時間で取り替え可能である。この結果、本発明によれば、観察中に状況・用途に応じて双眼ルーペの光学特性を変更させたい場合に、短時間で対処しやすい医療用の双眼ルーペを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】実施形態1に係る双眼ルーペ10の斜視図である。
図1では、双眼ルーペ10に付属する部分についても二点鎖線で描かれている。
【
図2】実施形態1に係る双眼ルーペ10の三面図である。
図2(a)が上面図、
図2(b)が正面図、
図2(c)が側面図である。
図2(b)および
図2(c)では、双眼ルーペ10に付属する部分についても二点鎖線で描かれている。
【
図3】実施形態1に係る双眼ルーペ10のプレートルーペ40および視野変更部材50を退避位置に切り替えた状態を示す側面図である。
【
図4】実施形態1に係る双眼ルーペ装置1を説明する図である。
図4(a)は、双眼ルーペ装置1の斜視図である。
図4(b)は、アーム72における配線挿通部72cを説明する図である。
図4(c)は、変形例であるアーム172における配線固定部172cを説明する図である。
【
図5】実施形態1におけるプレートルーペ40の取り付け手順を説明する図である。
図5(a)~(b)の順で取り付け作業を行う。
【
図6】実施形態1に係る双眼ルーペ10のレンズ鏡筒30の幅および角度の調節方法を説明する図である。
図6(a)は、レンズ鏡筒30の幅調節を示している。
図6(b)は、レンズ鏡筒30の角度調節を示している。
【
図7】実施形態2に係る双眼ルーペ110の斜視図である。
【
図8】従来の双眼ルーペ910を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の双眼ルーペおよび双眼ルーペを備える双眼ルーペ装置について、図面を参照して説明する。なお、双眼ルーペは、使用者の両眼それぞれに対応するルーペ(拡大鏡)を有するが、本明細書では使用時における使用者から見た左右方向を基準として、「左」「右」方向を表している。また、図面において符号の後に「L」が付いている場合は、使用者の左眼用を表し、符号の後に「R」が付いている場合は、使用者の右眼用を表している。また、各図面は必ずしも実際の寸法を厳密に反映したものではない。
【0023】
[実施形態1]
1.実施形態1に係る双眼ルーペ10の構成
図1は、実施形態1に係る双眼ルーペ10の斜視図である。
図1では、双眼ルーペ10に付属する部分についても二点鎖線で描かれている。
図2は、実施形態1に係る双眼ルーペ10の三面図である。
図2(a)が上面図、
図2(b)が正面図、
図2(c)が側面図である。
図2(b)および
図2(c)では、双眼ルーペ10に付属する部分についても二点鎖線で描かれている。
図3は、実施形態1に係る双眼ルーペ10のプレートルーペ40および視野変更部材50を退避位置に切り替えた状態を示す側面図である。
実施形態1に係る双眼ルーペ10は、
図1および
図2(a)~(c)に示すように、ブラケット20、左右一対のレンズ鏡筒30(30L,30R)、プレートルーペ40、視野変更部材50、および視野変更部材支持具60を備え、医科・眼科・歯科治療、外科手術等の医療現場において、使用者がレンズ鏡筒30を覗くことでプレートルーペ40側にある観察対象を拡大観察するための観察器具である。なお、双眼ルーペ10は、プレートルーペ40および視野変更部材50が使用位置と退避位置とを切り換え可能に構成されているが、以下の説明において、特に退避位置にあるとの説明がない場合には、プレートルーペ40および視野変更部材50が使用位置にあるものとして説明する。
【0024】
ブラケットとは2以上の構成部品同士を結合させるものであり、さまざまな形態で構成することができるが、一例として実施形態1においては、ブラケット20は、複数の部材が組み合わされて構成されており、2以上の他の部品を取り付けられるようになっている。具体的には、ブラケット20は、一対のレンズ鏡筒30を取り付けるためのレンズ鏡筒取付部21と、プレートルーペ40を取り付けるためのプレートルーペ取付部22と、レンズ鏡筒取付部21とプレートルーペ取付部22とを繋ぐ繋ぎ部23とを有している。また、ブラケット20は、照明機器または撮像機器といった外部機器を前記観察対象に向けて直接的または間接的に取り付けるための機器取付部24が形成されている。
【0025】
レンズ鏡筒取付部21は、ある程度厚みのある略直方体状で、左右方向に延びている。レンズ鏡筒取付部21は、レンズ鏡筒30L,30Rを取り付ける際に固定ねじ21aを通すための長穴21bが左右両端部に形成されている。なお、長穴21bにはそれぞれ固定ねじ21aが2本通されるが、長穴21bの長さおよび幅は、固定ねじ21aが長穴21b内である程度動けるように設定されている。
【0026】
プレートルーペ取付部22は、回転軸22aとつまみ22bと固定爪22cとを含み構成されている。
回転軸22aは、略円柱状で、左右方向に延びている。回転軸22aの周囲の一部には、左右方向(回転軸22aの軸方向)に延びて、平面状に加工されたプレートルーペ取付面22dが形成されている。
つまみ22bは、略円柱状で、回転軸22aの先端部から左右方向(回転軸22aの軸方向)に沿って延びている。つまみ22bは、周囲にローレットが形成されている。
固定爪22cは、同じ形状の部材一対からなり、左右対称の向きで間隔をあけ、回転軸22aのプレートルーペ取付面22dの中央付近に固定されている。固定爪22cは、プレートルーペ取付面22d沿って延びる全体的には板状の部材である。固定爪22cのプレートルーペ取付面22d側の面における一対として見たときの内側は、弾性部材を介してプレートルーペ取付面22dに固定されている。これにより、固定爪22cは、プレートルーペ取付面22cに対して僅かながら可動可能になっている。また、固定爪22cのプレートルーペ取付面22d側の面における一対として見たときの外側は、プレートルーペ取付面22dとの間に隙間があり、一部にプレートルーペ取付面22d側に突出する突起(不図示)が形成されている。
なお、詳細については後述するが、プレートルーペ取付部22は、プレートルーペ取付面22dと固定爪22cとの間の隙間にプレートルーペ40の一部が嵌め込まれることで、プレートルーペ40を保持している。
【0027】
繋ぎ部23は、ある程度厚みのある略長方体状で、左右方向に対して垂直な方向に延びている。繋ぎ部23は、一端部がレンズ鏡筒取付部21に固定され、他端部に回転軸22aが通された左右方向に貫通する軸受部23aが形成されている。繋ぎ部23には、軸受部23aを通した回転軸22aを押さえることが可能なロックねじ23bが取り付けられている。繋ぎ部23は、プレートルーペ取付部22と組み合わされることで、プレートルーペ位置切り換え機構を構成している。プレートルーペ位置切り換え機構は、繋ぎ部23の軸受部23aでプレートルーペ取付部22の回転軸22aを回転自在に支持する。これによって、プレートルーペ取付部22に取り付けられたプレートルーペ40を左右方向に対して垂直な方向に回転させて、プレートルーペ40の使用位置と退避位置とを切り換え可能にしている(退避位置については
図3参照。)。
【0028】
機器取付部24は、レンズ鏡筒取付部21の中央部に形成されている。実施形態1においては、後述のアームステー73を介して照明機器80または撮像機器90を取り付けるように構成しているため、機器取付部24には、アームステー73の取り付け面とアームステー73の固定ねじを通す穴とが形成されている。
【0029】
レンズ鏡筒30は、使用者の左眼用のレンズ鏡筒30Lと右眼用のレンズ鏡筒30Rが一対になっている。それぞれのレンズ鏡筒30L,30Rは、レンズ枠31L,31Rと、レンズ枠31L,31R内の一方側に固定された接眼レンズ32L,32Rと、レンズ枠31L,31R内の他方側に固定された対物レンズ33L,33Rとを有する。レンズ鏡筒30L,30Rは、それぞれ接眼レンズおよび対物レンズを含むいわゆるガリレオ式の光学系で、テレスコープ等と呼ばれる作動距離が無限遠の拡大鏡となっている。レンズ鏡筒30L,30Rは、レンズ鏡筒取付部21に形成された長穴21bを通し、ばね座金を挟んだ固定ねじ21aによって、スペーサを介してブラケット20に取り付けられている。以下、左右両者に該当する場合については、符号の後の「L」「R」を省略して説明する。
【0030】
レンズ枠31は、複数の略円筒状の筒が中心軸を一致させて組み合わされており、大きく分けて接眼レンズ32を固定する接眼側枠31aと対物レンズ33を固定する対物側枠31bとで構成されている。レンズ枠31は、対物側枠31bがブラケット20に取り付けられ、対物側枠31bに対して接眼側枠31aを軸方向に可変することが可能になっている。レンズ枠31は、側面の一部に平面に加工されたブラケット取付面31cが形成されている。また、レンズ枠31は、側面において、ブラケット取付面31cに対して軸方向に90°回転(レンズ枠31Lとレンズ枠31Rとでは反対方向に回転)させた位置に平面に加工されたオプション取付面31dが形成されている。
【0031】
接眼レンズ32は、球面ガラスレンズであり、レンズ枠31の接眼側枠31a内に固定されている。対物レンズ33は、球面ガラスレンズであり、レンズ枠31の対物側枠31b内に固定されている。
【0032】
プレートルーペ40は、一対のレンズ鏡筒30L,30Rに対応させた(光軸を一致または近くなるよう配置した)2つのレンズ41(41L,41R)が一体に形成された薄板状のプラスチック凸レンズである。プレートルーペ40は、ブラケット20のプレートルーペ取付部22に取り付ける側の側面が平面に加工されている。また、プレートルーペ40は、ブラケット20のプレートルーペ取付部22に取り付ける側の側面の左右2か所に門形で張り出している嵌め込み突起42が形成されている。また、プレートルーペ40は、2つのレンズ41L,41Rの境界部に切り欠きまたは穴43(
図1では切り欠き43)が形成されている。この切り欠きまたは穴43は、後述の照明機器80や撮像機器90をレンズ鏡筒30L,30R間に配置した場合に、照明機器80からの照明光や撮像機器90への入射光がけられないよう設けられている。
なお、プレートルーペ40の光学特性は、レンズ鏡筒30と組み合わせることを考慮して、双眼ルーペ10として所望の光学特性となるように適宜設定すればよい。一例として、プレートルーペ40を1.7倍の拡大倍率で形成し、レンズ鏡筒30と組み合わせて、2.6倍の拡大倍率で作動距離が40cm~100cmの双眼ルーペ10を構成してもよい。また、プレートルーペ40を2倍の拡大倍率で形成し、前例のレンズ鏡筒30と組み合わせて、3倍の拡大倍率で作動距離が30cm~45cmの双眼ルーペ10を構成してもよい。
【0033】
視野変更部材50は、フレネルタイプ(通常の光学部品を短冊状または同心円状の領域に分割して面をオフセットすることで薄板状に形成したプタイプ)のプラスチックのプリズムプレートである。視野変更部材50は、フレネル面がプレートルーペ40側を向き、プレートルーペ40の観察対象側の周辺部の少なくとも一部を覆い(
図1では、左側の周辺部の一部を覆っている)、視野変更部材50を通した周辺部の視野が外側に広がる向きに配置されている。補足すると、プリズムでは、通過する光が曲がるため、配置する向きによって視野変更部材50を配置していない場合よりも外側が見えるようになる。なお、プリズム面の斜面の角度は、広げたい視野に応じて適宜設定すればよい。
【0034】
視野変更部材支持具60は、レンズ鏡筒30L,30Rの少なくともいずれかのレンズ鏡筒30(
図1では左眼用のレンズ鏡筒30L)に取り付けられている視野変更部材支持ベース部61と、視野変更部材支持ベース部61から延びる視野変更部材支持テンプル部62と、視野変更部材支持テンプル部62の先端に固定されて視野変更部材50を保持する視野変更部材保持部63とを有している。
【0035】
視野変更部材支持ベース部61は、フランジを有する略直方体状のブロックで、フランジの部分を固定ねじで止めることにより、レンズ枠31のオプション取付面31dに取り付けられている。また、視野変更部材支持ベース部61は、外側の面から円柱状に突出するピン61aと、ピン61a近傍のねじ穴とが形成されている。
【0036】
視野変更部材支持テンプル部62は、細長い略直方体状で、プレートルーペ40の側方を横切るように左右方向に対して垂直な方向に延びている。視野変更部材支持テンプル部62は、根本側端部に視野変更部材支持ベース部61のピン61aに挟むことが可能なピン用切り欠き62aが形成されている。また、視野変更部材支持テンプル部62には、ピン用切り欠き62aの近傍に角度固定用長穴62bが形成されている。
図2(c)に示すように、視野変更部材支持テンプル部62は、ピン用切り欠き62aが視野変更部材支持ベース部61のピン61aを挟み込んだ状態で、角度固定用長穴62bに通されて視野変更部材支持ベース部61のねじ穴に螺合する固定ねじ61bによって、視野変更部材50が使用位置になる角度位置に固定される。また、視野変更部材支持テンプル部62は、ピン用切り欠き62aが視野変更部材支持ベース部61のピン61aを挟み込まない位置にずらした状態から視野変更部材支持ベース部61のねじ穴に螺合する固定ねじ61bを中心に回転させることで、
図3に示すような視野変更部材50を退避位置に切り替え可能である。
【0037】
視野変更部材保持部63は、視野変更部材支持テンプル部62の先端側端部固定されており、視野変更部材50の外側の側面に沿って延びると共に視野変更部材50の外側の角2か所を固定ねじで固定して視野変更部材50を保持している。
【0038】
2.実施形態1に係る双眼ルーペ装置1の構成
図4は、実施形態1に係る双眼ルーペ装置1を説明する図である。
図4(a)は、双眼ルーペ装置1の斜視図である。
図4(b)は、アーム72における配線挿通部72cを説明する図である。
図4(c)は、変形例であるアーム172における配線固定部172cを説明する図である。
実施形態1に係る双眼ルーペ装置1は、
図4(a)(b)に示すように(併せて
図1も適宜参照。)、前述した双眼ルーペ10と、設置台70と、照明機器80と、撮像機器90とを備えている。
【0039】
設置台70は、スタンド71とアーム72とアームステー73とを備えており、使用者が観察対象を観察しやすくなるように、双眼ルーペ10、照明機器80、および撮像機器90を所定の位置および向きで支持している。
【0040】
スタンド71は、下面にキャスタが取り付けられた基台71aと、基台71aの上面から上方に延びるポール71bからなっており、フロアに設置されている。
【0041】
アーム72は、根本側がスタンド71のポール71bに対して上下移動可能かつポール71bを軸に回転可能取り付けられている。アーム72は、複数の関節J1~J4を有するいわゆる多関節アームである。アーム72は、先端部72aが門形に形成されている。アーム72は、先端部72aの根本側から使用者が握りやすいような棒状のグリップ72bが突出している。アーム72は、使用者がグリップ72bを握り動かすことで、先端部72aを所望の位置に移動自在に構成されている。アーム72は、先端部72aが中空のパイプ部材で形成され、先端部72aの内側が配線等を挿通可能な配線挿通部72cとなっている。
【0042】
アームステー73は、細長い略直方体状のブロック部材であり、アーム72の先端部72aの最先端の部位に保持されている。アームステー73は、アーム72に保持されている側と反対側に双眼ルーペ10のブラケット20が固定されている(
図1参照。)。
【0043】
照明機器80は、照明光を観察対象に向けて照射する機器であり、レンズ鏡筒30Lとレンズ鏡筒30Rと間に配置されるよう、照明機器取付具81(
図2参照。)を介してアームステー73に取り付けられている。照明機器80の照明光は、プレートルーペ40の切り欠き43を通過して観察対象に照射される。また、照明機器80の電気ケーブル80aは、アーム72の配線挿通部72cに挿通されて配線処理されている。
【0044】
撮像機器90は、先端に取り付けられたレンズを含み、静止画または動画を記録するカメラである。撮像機器90は、撮像機器取付具91を介してアームステー73に取り付けられている。撮像機器90は、観察対象を捉えられるように撮像機器取付具91によって傾き等を調整することが可能に構成されている。また、撮像機器90の電気ケーブル90aは、アーム72の配線挿通72cに挿通されて配線処理されている。
【0045】
3.実施形態1に係る双眼ルーペ装置1の使用方法
医療現場によって異なるが、双眼ルーペ装置100は、概ね次のような使用方法となる。なお、滅菌等の作業が必要になる場合もあるが、滅菌等の作業については説明を省略する。
【0046】
(1)プレートルーペ40のセット
図5は、実施形態1におけるプレートルーペ40の取り付け手順を説明する図である。
図5(a)~(b)の順で取り付け作業を行う。
まず、プレートルーペ40をブラケット20に取り付ける。光学特性の異なる複数のプレートルーペを用意している場合には、予定する観察内容を検討し、観察に適する光学特性のプレートルーペ40を選択してブラケット20に取り付ける。プレートルーペ40をブラケット20に取り付けるには、まず、
図5(a)に示すように、一方の手の指をプレートルーペ取付部22のつまみ22bから遠い側の固定爪22c付近に添え、他方の手に持ったプレートルーペ40の対応する嵌め込み突起42を、指を添えた固定爪22cとプレートルーペ取付面22dとの間の隙間に差し込む。差し込んだ嵌め込み突起42が固定爪22cに嵌め込まれたことを確認したら、
図5(b)に示すように一方の手でつまみ22bを持って、まだ差し込まれていない嵌め込み突起42をつまみ22b側の固定爪22cとプレートルーペ取付面22dとの間の隙間に差し込む。後から差し込んだ嵌め込み突起42がつまみ22b側の固定爪22cに嵌め込まれたことを確認し、プレートルーペ40をブラケット20に取り付ける作業が完了する。
なお、ブラケット20からプレートルーペ40を取り外すには、つまみ22b側を両側に開いてつまみ22b側の嵌め込み突起42を外してから、つまみ22bから遠い側を開いてもう片方の嵌め込み突起42を外せばよい。
【0047】
(2)レンズ鏡筒30の目幅と角度の調節
図6は、実施形態1に係る双眼ルーペ10のレンズ鏡筒30の幅および角度の調節方法を説明する図である。
図6(a)は、レンズ鏡筒30の幅調節を示している。
図6(b)は、レンズ鏡筒30の角度調節を示している。
次に、使用者および予定する観察対象の位置に合わせ、
図6(a)に示すようにレンズ鏡筒30の幅調節、および
図6(b)に示すようにレンズ鏡筒30の角度調節を行う。実施形態1では、レンズ鏡筒30は、ばね座金を挟んだ固定ねじ21aによってブラケット20に取り付けられており、ばね座金の反力で位置が保持されている。このため、いずれの調節も、レンズ鏡筒30L,30Rに保持されている力以上の力を手で加えて、
図6(a)の矢印が示す左右方向に移動させる、または
図6(b)の矢印が示す内向き外向きに回転させることで、所望の幅または角度に調節する。
【0048】
(3)視野変更部材50のセット
次に、予定する観察内容を検討し、例えば助手が位置する側等、視野を広げたい側に視野変更部材50を取り付ける。
【0049】
(4)双眼ルーペ10の位置の調節
次に、アーム72をスタンド71に対して上下させたり、アーム72のグリップ72bを握って動かしたりして、観察しやすい双眼ルーペ10の位置、向きに調節する(
図4a参照。)。
【0050】
(5)観察対象の観察、観察中の調整
次に、使用者は、双眼ルーペ10を接眼レンズ32側から覗き、観察対象を拡大観察する。使用者は、状況に応じて、プレートレンズ40の交換、プレートレンズ40の使用位置と退避位置との切り換え、視野変更部材50の退避位置と使用位置との切り換え、等を適宜調整する。例えば、観察中に、プレートレンズ40が汚れて観察に支障をきたす場合には、新しいプレートレンズ40に交換する。また、観察中に、双眼ルーペ10の光学特性変更したい場合には、プレートレンズ40を退避位置に切り替えたり、プレートレンズ40を別の光学特性のプレートレンズに交換したりする。また、観察中に視野範囲を広げる必要がない場合には、視野変更部材50を退避位置に切り替える。その他、アーム72のグリップ72bを握って観察ポイントを変更したりする。
【0051】
4.実施形態1の効果
実施形態1に係る双眼ルーペ10は、使用時に一対のレンズ鏡筒30の観察対象側を覆うように、ブラケット20に取り付けられたプレートルーペ40を備えているため、医療現場における体液や薬液等の飛沫に対してプレートルーペ40がシールドとなり、レンズ鏡筒30の対物レンズ側は汚れ難い。また、プレートルーペ40は、ブラケット20に着脱自在に取り付けられているため、短時間で取り替え可能である。また、プレートルーペ40は、レンズ鏡筒30よりも安価に形成することが可能である。このため、プレートルーペ40をディスポーザル部品として構成することは現実的である。この結果、実施形態1によれば、対物レンズ側(プレートルーペ)が汚れてしまうことによって観察機能が損なわれた際に観察機能を回復させたい場合に、短時間で対処しやすい医療用の双眼ルーペを提供することができる。
【0052】
また、実施形態1に係る双眼ルーペ10は、プレートルーペ40に一対のレンズ鏡筒30に対応させた2つのレンズ41(41L,41R)が形成されており、プレートルーペ40のレンズ41のパワーに応じた光学特性(拡大倍率、作動距離、焦点深度等)の双眼ルーペ10を構成することが可能である。つまり、レンズ41のパワーが異なる複数種類のプレートルーペ40を用意しておけば、プレートルーペ40を交換することで双眼ルーペ10の光学特性を容易に変更可能である。また、前述したように、プレートルーペ40は、ブラケット10に着脱自在に取り付けられているため、短時間で取り替え可能である。この結果、実施形態1によれば、観察中に状況・用途に応じて双眼ルーペの光学特性を変更させたい場合に、短時間で対処しやすい医療用の双眼ルーペを提供することができる。
【0053】
また、実施形態1に係る双眼ルーペ10は、ブラケット20のプレートルーペ取付部22と繋ぎ部23とでプレートルーペ40の使用位置と退避位置とを切り換えるためのプレートルーペ位置切り換え機構が構成されているため、プレートルーペ40を通した双眼ルーペ10の観察よりレンズ鏡筒30のみの観察の方が状況に適している判断した場合に双眼ルーペを退避させてレンズ鏡筒30のみの観察に切り替えることを可能とする。これにより、使用状況に対応しやすい医療用の双眼ルーペを提供することができる。
【0054】
また、実施形態1に係る双眼ルーペ10は、使用位置において、プレートルーペ40の周辺部の一部を覆い、周辺部の視野を外側に広げる視野変更部材50を備えているため、使用者が観察中に観察対象からより離れた範囲の動きを察知することを可能とする。例えば、手術中の第三者により器械出しされたメス等を手元から安全に離れた位置から察知することも可能とする。これにより、より安全に観察することができる医療用の双眼ルーペを提供することができる。
また、実施形態1に係る双眼ルーペ10は、一対のレンズ鏡筒30L,30Rの少なくともいずれかレンズ鏡筒またはブラケット20に取り付けられて視野変更部材50を使用位置と退避位置とを切り換え可能に支持する視野変更部材支持具60とを備えているため、周辺視野を広げる必要がない場合に視野変更部材50を退避させることを可能とする。これにより、使用状況に対応しやすい医療用の双眼ルーペを提供することができる。
【0055】
また、実施形態1においては、視野変更部材50は、プリズムであるため、プリズム面の角度に従い周辺視野を広げることができる。プリズムは、プリズム面の角度を設定するだけで所望の周辺視野の範囲に合わせやすいため、視野変更部材50として好ましい。
【0056】
また、実施形態1においては、視野変更部材50は、フレネルタイプのプリズムプレートであるため、薄く軽く形成される。このため、視野変更部材50の使用位置と退避位置との切り換えを楽に行うことができると共に、コンパクトなプレートルーペ10を構成することができる。
【0057】
また、実施形態1においては、プレートルーペ40は、2つのレンズ41(41L,41R)の境界部に切り欠きまたは穴43が形成されているため、この切り欠きまたは穴43から照明光を照射することで、レンズ鏡筒30の光軸に対して傾きが少ない照明光を観察対象に照射することが可能となる。これにより、観察対象に対して影を少なくして明瞭な観察を行うことができる。
【0058】
また、実施形態1においては、ブラケット20は、直接的または間接的に、照明機器80または撮像機器90を観察対象に向けて取り付けるための機器取付部24が形成されているため、レンズ鏡筒30に対して照明機器80または撮像機器90の位置関係を一定にすることが可能となる。これにより、安定した観察または安定した記録をすることができる。
【0059】
また実施形態1に係る双眼ルーペ装置1は、スタンド71と、当該スタンド71に取り付けられて先端部72aを使用者の所望の位置に移動自在に構成されたアーム72と、当該アーム72の先端部72aに保持されたアームステー73と、当該アームステー73にブラケット20が固定された双眼ルーペ10とを備えているため、双眼ルーペ10を使用者の所望の空間位置に配置することができ、使用者が装着する必要がなくなる。これにより、さまざまな効果を奏する双眼ルーペ10を楽に使用することができる。
【0060】
実施形態1においては、アーム72は、照明機器80の電気ケーブル80aまたは撮像機器90の電気ケーブル90aを挿通可能な中空の配線挿通部72cを有しているため、電気ケーブル80a,90aがアーム72に沿って綺麗に配線処理される。これにより、配線が邪魔で観察に支障をきたすおそれを回避することができる。
【0061】
[実施形態2]
1.実施形態2に係る双眼ルーペ110の構成
図7は、実施形態2に係る双眼ルーペ110の斜視図である。
実施形態2に係る双眼ルーペ110は、
図7に示すように、ブラケット20、左右一対のレンズ鏡筒30(30L,30R)、プレートルーペ40、第2プレートルーペ140、および第2プレートルーペ支持具160を備え、使用者がレンズ鏡筒30を覗くことでプレートルーペ40側にある観察対象を拡大観察するための観察器具である。実施形態2に係る双眼ルーペ110は、実施形態1に係る双眼ルーペ10の視野変更部材50および当該視野変更部材50を支持する視野変更部材支持具60を、第2プレートルーペ140および当該第2プレートルーペ140を支持する第2プレートルーペ支持具160に置き換えたものである。以下では、双眼ルーペ10に対して置き換えた部分について説明し、他の部分の説明を省略する。なお、第2プレートルーペ140の使用位置と退避位置との切り換えについては実施形態1の視野変更部材50と同様である。また、双眼ルーペ110は、照明80がブラケット20に対してレンズ鏡筒30が取り付けられている側と反対側に取り付けられている。
【0062】
第2プレートルーペ140は、一対のレンズ鏡筒30L,30Rに対応させた(光軸を一致または近くなるよう配置した)2つのレンズ141(141L,141R)が一体に形成された薄板状のプラスチックレンズである。なお、プレートルーペ140の光学特性は、レンズ鏡筒30およびプレートルーペ40と組み合わせることを考慮して、双眼ルーペ110として所望の光学特性となるように適宜設定すればよい。このとき、プレートルーペ40も第2プレートルーペも退避させない場合、プレートルーペ40だけ退避させる場合、第2プレートルーペ140だけを退避させる場合、プレートルーペ40も第2プレートルーペ140も退避させる場合が考えられるが、いずれの場合においても光学ルーペとして使用できるように設定できることが好ましい。
【0063】
第2プレートルーペ支持具160は、レンズ鏡筒30L,30Rの少なくともいずれかのレンズ鏡筒30(
図7では両方のレンズ鏡筒30L,30R)に取り付けられている第2プレートルーペ支持ベース部161と、第2プレートルーペ支持ベース部161から延びる第2プレートルーペ支持テンプル部162と、第2プレートルーペ支持テンプル部162の先端に固定されて第2プレートルーペ140を保持する第2プレートルーペ保持部163とを有している。第2プレートルーペ支持ベース部161および第2プレートルーペ支持テンプル部162は、実施形態1の視野変更部材支持ベース部61および視野変更部材支持テンプル部62と同様であるため、説明を省略する。
【0064】
各第2プレートルーペ保持部163は、第2プレートルーペ140の外側の稜線部を固定ねじ固定することで、第2プレートルーペ140を保持している。
【0065】
2.実施形態2の効果
実施形態2に係る双眼ルーペ110は、使用位置において、プレートルーペ40を覆い、双眼ルーペ110の拡大倍率を変更する第2プレートルーペ140と、一対のレンズ鏡筒30L,30Rの少なくともいずれかレンズ鏡筒またはブラケット20に取り付けられて第2プレートルーペ140を使用位置と退避位置とを切り換え可能に支持する第2プレートルーペ支持具160とを備えている。このため、双眼ルーペ110は、状況に応じて、プレートルーペ40を通して観察する場合、第2プレートルーペ140を通して観察する場合、プレートルーペ40および第2プレートルーペ140を通して観察する場合、プレートルーペ40および第2プレートルーペ140を通さないで観察する場合を切り換えて、拡大倍率等の光学特性を切り替えることを可能とする。これにより、使用状況に対応しやすい医療用の双眼ルーペを提供することができる。
【0066】
以上、本発明を上記の実施形態に基づき説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。その趣旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば、次のような変形も可能である。
【0067】
(1)上記実施形態において記載した構成要素の数、材質、形状、位置、大きさ、角度、光学特性等は例示であり、本発明の効果を損なわない範囲において変更することが可能である。
【0068】
(2)実施形態1に係る双眼ルーペ10は、照明機器80または撮像機器90がアームステー73を介して間接的にブラケット20の機器取付部24に取り付けられるように構成されているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ブラケットに照明機器80または撮像機器90の取り付け部が形成されて、照明機器80または撮像機器90を直接的に取り付けるように構成されていてもよい。
【0069】
(3)実施形態1においては、ブラケット20のプレートルーペ取付部22は、プレートルーペ取付面22dと固定爪22cとの間の隙間にプレートルーペ40の嵌め込み突起42が嵌め込まれることで、プレートルーペ40を保持する構造であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プレートルーペ取付部22にプレートルーペの一部をねじ止めやクリップ止めしてプレートルーペを取り付ける構造であってもよい。
【0070】
(4)実施形態1においては、プレートルーペ位置切り換え機構は、繋ぎ部23でプレートルーペ取付部22を回転自在に支持する構造で、プレートルーペ40を左右方向に対して垂直な方向に回転させて、プレートルーペ40の使用位置と退避位置とを切り換え可能にしていたが、プレートルーペ40の使用位置と退避位置とを切り換え可能にするものであれば、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プレートルーペ切り換え機構が繋ぎ部に対してプレートルーペ取付部をスライド可能な構造で、プレートルーペをスライドさせることでプレートルーペの使用位置と退避位置とを切り換え可能にするものであってもよい。また、プレートルーペ切り換え機構が繋ぎ部に対してプレートルーペ取付部を着脱可能な構造で、プレートルーペを着脱させることでプレートルーペ40の使用位置と退避位置とを切り換え可能にするものであってもよい。
【0071】
(5)実施形態1においては、レンズ鏡筒30は、接眼レンズ32および対物レンズ33を含むいわゆるガリレオ式の光学系であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、レンズ鏡筒が対物レンズ、プリズム、および接眼レンズで構成されたいわゆるケプラー式(プリズム式)であってもよい。なお、接眼レンズと対物レンズとの間に中間レンズを含むよう構成してもよい。
【0072】
(6)実施形態1においては、レンズ鏡筒30は、テレスコープ等と呼ばれる作動距離が無限遠の光学特性であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、レンズ鏡筒が、有限の作動距離の拡大鏡であり、プレートルーペを装着することで作動距離が変わるものであってもよい。
【0073】
(7)実施形態1においては、レンズ鏡筒30の接眼レンズ32および対物レンズ33は、球面ガラスレンズであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、接眼レンズまたは対物レンズが接合レンズ、非球面レンズ、フレネルレンズといった一般的な球面レンズ以外のレンズであってもよい。また、プラスチックレンズであってもよい。
【0074】
(8)実施形態1においては、視野変更部材50は、フレネルタイプのプラスチックのプリズムプレートであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、視野変更部材がフレネルタイプのプリズムプレートではなくブロック状のプリズムであってもよいし、ガラスの部材であってもよい。また、視野変更部材が、屈曲レンズ、ハーフミラー、ミラーであってもよい。
【0075】
(9)実施形態1においては、視野変更部材50は、プレートルーペ40の左側の周辺部を覆って外側(左側)へ視野を広げたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、下側の周辺視野を広げたい場合には下側に視野変更部材を配置すればよいし、左右両側の周辺視野を広げたい場合には左右両側2か所に視野変更部材を配置すればよい。
【0076】
(10)実施形態1においては、視野変更部材支持具60は、視野変更部材保持部63に視野変更部材50を固定ねじによって保持している。また、実施形態2においては、第2プレートルーペ支持具160は、第2プレートルーペ保持部163に第2プレートルーペ140を固定ねじによって保持しているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、視野変更部材保持部に爪が形成されており、視野変更部材保持部が視野変更部材50の一部を爪に嵌め込むことで視野変更部材50を保持するものであってもよい。また、第2プレートルーペ保持部に爪が形成されており、第2プレートルーペ保持部が第2プレートルーペ140の一部を爪に嵌め込むことで第2プレートルーペ140を保持するものであってもよい。
【0077】
(11)実施形態1における視野変更部材支持具60または実施形態2における第2プレートルーペ支持具160は、レンズ鏡筒30に取り付けられているが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ブラケット10に取り付けられていてもよい。
【0078】
(12)実施形態1における視野変更部材支持具60または実施形態2における第2プレートルーペ支持具160は、レンズ鏡筒30に対して回転することで視野変更部材50または第2プレートルーペ140の使用位置と退避位置とを切り換えていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、視野変更部材支持具60または第2プレートルーペ支持具160がレンズ鏡筒30に対してスライドすることで、視野変更部材50または第2プレートルーペ140の使用位置と退避位置とを切り換えるものであってもよい。また、視野変更部材支持具60または第2プレートルーペ支持具160がレンズ鏡筒30に対して着脱自在にすることで、視野変更部材50または第2プレートルーペ140の使用位置と退避位置とを切り換えるものであってもよい。
【0079】
(13)実施形態1におけるプレートルーペ40または実施形態2における第2プレートルーペ140は、薄板状のプラスチック凸レンズであったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、プレートルーペがガラスであってもよいし、他の光学部品と組み合わせたときに拡大鏡を構成できれば、凹レンズであってよい。また、フレネルレンズであってもよい。
【0080】
(14)実施形態2においては、第2プレートルーペ140は、2つのレンズ141(141L,141R)が一体に形成されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、左右のレンズを分離させた構成で、全体の幅、角度(特に内向き、外向き)を調節できるよう形成されていてもよい。
【0081】
(15)実施形態1においては、アーム72は、多関節アームであったが、使用用途に応じて使用者が先端部72aを所望の位置に移動できればよく、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、関節にフレキシブルジョイントを採用し、1の関節でも高い自由度で先端部を移動させる構成であってもよい。
【0082】
(16)実施形態1に係る双眼ルーペ装置1は、アーム72の配線挿通部72cに照明機器80の電気ケーブル80aおよび撮像装置90の電気ケーブル90aを挿通することで配線処理されているが、配線が観察の邪魔にならない効果を得るために、次の変形例も有効である。この変形例は、
図4(c)に示すように、アーム172に沿わして照明機器80の電気ケーブル80aまたは撮像機器90の電気ケーブル90aを固定するための配線固定部172cを設けるものである。配線固定部172cは、配線を固定できれば特に限定されるものではないが、例えばケーブルを着脱自在なケーブルバンドであってもよい。
【0083】
(17)実施形態1に係る双眼ルーペ10は、双眼ルーペ装置1において、スタンド71によってフロアに設置されていたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ブラケットに耳かけを取り付け、眼鏡のように使用者に装着するものであってもよい。
【符号の説明】
【0084】
1…双眼ルーペ装置、10,110…双眼ルーペ、20…ブラケット、21…レンズ鏡筒取付部、22…プレートルーペ取付部、23…繋ぎ部、24…機器取付部、30(30L,30R)…レンズ鏡筒、40…プレートルーペ、41(41L,41R)…(プレートルーペの)レンズ、43…切り欠きまたは穴、50…視野変更部材、60…視野変更部材支持具、70…設置台、71…スタンド、72,172…アーム、72a,172a…(アームの)先端部、72c…配線挿通部、172c…配線固定部、73…アームステー、80…照明機器、80a…(照明機器の)電気ケーブル、90…撮像機器、90a…(撮像機器の)電気ケーブル、140…第2プレートルーペ、160…第2プレートルーペ支持具、J1~J4…(アームの)関節