(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】固形物製造装置及び固形物製造設備
(51)【国際特許分類】
B05B 7/10 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
B05B7/10
(21)【出願番号】P 2018102107
(22)【出願日】2018-05-29
【審査請求日】2021-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】508091649
【氏名又は名称】有限会社浦野技研
(74)【代理人】
【識別番号】100098246
【氏名又は名称】砂場 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100094363
【氏名又は名称】山本 孝久
(72)【発明者】
【氏名】浦野 隆実
【審査官】清水 晋治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-224592(JP,A)
【文献】特開2003-062493(JP,A)
【文献】特開2014-105154(JP,A)
【文献】特開平05-196792(JP,A)
【文献】特開昭51-136097(JP,A)
【文献】特開2018-051621(JP,A)
【文献】特開2003-103203(JP,A)
【文献】特開平07-124503(JP,A)
【文献】特開2006-297308(JP,A)
【文献】特開2003-021309(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00-3/18
7/00-9/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング部材、及び、ケーシング部材内に格納されたノズル部材から成り、ノズル部材の後端部から供給された液状物質をノズル部材の先端部から吐出し、固形物を得る固形物製造装置であって、
ノズル部材は、ノズル部材の先端部からノズル部材の後端部に向かって、第1領域、第2領域、第3領域及び第4領域から構成されており、
ノズル部材は、
ノズル部材をノズル部材の軸線に沿って貫通する液状物質流路、
液状物質流路の後端部に設けられた液状物質供給口、及び、
液状物質流路の先端部に設けられた液状物質吐出口、
を備えており、
第1領域
において、ノズル部材の外面は円筒形状を有し、第1領域と対向するケーシング部材の内面と、第1領域の外面との間には、第1隙間部が設けられており、
第2領域
において、
(1)
ノズル部材の外面は第1領域側に切頭円錐形
状を有し、第2領域と対向するケーシング部材の内面と、第2領域の切頭円錐形状の外面全周との間に、第2隙間部が設けられ、
(2)ノズル部材の軸線を含む第2仮想平面に対して平行な仮想平面内に含まれたスリット部がノズル部材の軸線から所定距離離れて形成され、
第3領域
において、
(1)
ノズル部材の外面と対向するケーシング部材の内面との間に空間部が設けられ、
(2)ノズル部材の軸線に垂直な第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの外面の断面形状は円形で、かつ第2仮想平面で切断したときの外面の断面形状は、円形の最大半径部から第2領域及び第4領域に向かって滑らかに縮小するアーチ状であり、
(3)円形の最大半径部よりも第4領域側の部分に対応した位置のケーシング部材に空間部に連通した加圧流体導入部が設けられ、
第4領域は、空間部を閉塞しており、
加圧流体導入部から空間部に導入された加圧流体は、第3領域のアーチ状の外面と衝突して第2領域に向かい、スリット部を通過して旋回流となって第2隙間部及び第1隙間部を経由して外部に噴出され、
噴出加圧流体の旋回流により、液状物質吐出口の近傍で少なくとも減圧状態が形成され、減圧状態下で液状物質吐出口から吐出された液状物質が、噴出加圧流体の旋回流と混合して微粒化されて、微粒化された液状物質から水分、溶媒が分離除去されて固形物が生成されることを特徴とする固形物製造装置。
【請求項2】
(第3領域の断面形状の最大半径)/(第3領域の長さ)の値は0.01乃至0.1である請求項
1に記載の固形物製造装置。
【請求項3】
加圧流体導入部の中心は
、第3領域の円形の最大半径部よりも、1mm乃至5mm、
第4領域側に位置する請求項
1に記載の固形物製造装置。
【請求項4】
第1領域と対向するケーシング部材の先端面は、第1領域の先端面よりもノズル部材の後端部側に位置する請求項1乃至請求項
3のいずれか1項に記載の固形物製造装置。
【請求項5】
スリット部の数は1乃至8である請求項1乃至請求項
4のいずれか1項に記載の固形物製造装置。
【請求項6】
ケーシング部材及びノズル部材は、ステンレス鋼、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、又は、全芳香族ポリイミド樹脂から作製されている請求項1乃至請求項
5のいずれか1項
に記載の固形物製造装置。
【請求項7】
加圧流体は、空気又は窒素ガスから成る請求項1乃至請求項
6のいずれか1項に記載の固形物製造装置。
【請求項8】
液状物質は、液状の塗料、インク又はコーティング材料である請求項1乃至請求項
7のいずれか1項に記載の固形物製造装置。
【請求項9】
液状物質は、海水である請求項1乃至請求項
7のいずれか1項に記載の固形物製造装置。
【請求項10】
液状物質は、塩を含む請求項1乃至請求項
7のいずれか1項に記載の固形物製造装置。
【請求項11】
請求項1乃至請求項1
0のいずれか1項に記載の固形物製造装置、
ノズル部材を構成する液状物質供給口に液状物質を供給する液状物質供給装置、及び、
加圧流体導入部に加圧流体を供給する加圧流体供給装置、
を備えている固形物製造設備。
【請求項12】
液状物質供給装置は、ポンプ、液状物質供給口とポンプとを結ぶ配管、及び、配管の途中に配設された2つのオリフィスを備えている請求項1
1に記載の固形物製造設備。
【請求項13】
2つのオリフィスの間の配管には、排出管が接続されており、
排出管の途中にはトラップ部が設けられており、
排出管は、圧力調整手段を介して系外に繋がっている請求項1
2に記載の固形物製造設備。
【請求項14】
加圧流体供給装置は、加圧流体源、加圧流体流量制御装置及び加圧流体圧力制御装置を備えている請求項1
1乃至請求項1
3のいずれか1項に記載の固形物製造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アトマイザーの原理を応用した固形物製造装置、及び、係る固形物製造装置を備えた固形物製造設備に関する。
【背景技術】
【0002】
微細噴霧ノズルを用いて塗装を行う塗装方法が、例えば、特開2006-095477号公報から周知である。この特許公開公報に開示された微細噴霧ノズルは、塗料シャットオフノズル、及び、塗料シャットオフノズル開閉を制御するエアー駆動シリンダーを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記の特許公開公報に開示された微細噴霧ノズルを用いた場合、塗料は塗料シャットオフノズルから円錐状に吐出されるので、被塗装物の表面に形成される塗膜は、一種、ドーナッツ状となる。それ故、被塗装物の表面に均一な厚さの塗膜を形成するためには、微細噴霧ノズル及び被塗装物を相対的に、複雑に移動させなければならず、塗装装置全体の機構が複雑になる。
【0005】
従って、本発明の目的は、簡素な構成、構造であるにも拘わらず、例えば厚さといった物理量や物理的状態の均一性を容易に得ることが可能な固形物製造装置、及び、係る固形物製造装置を備えた固形物製造設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するための本発明の固形物製造装置は、
ケーシング部材、及び、ケーシング部材内に格納されたノズル部材から成り、ノズル部材の後端部から供給された液状物質をノズル部材の先端部から吐出し、固形物を得る固形物製造装置であって、
ノズル部材は、ノズル部材の先端部からノズル部材の後端部に向かって、第1領域、第2領域、第3領域及び第4領域から構成されており、
ノズル部材は、
ノズル部材をノズル部材の軸線に沿って貫通する液状物質流路、
液状物質流路の後端部に設けられた液状物質供給口、及び、
液状物質流路の先端部に設けられた液状物質吐出口、
を備えており、
第1領域の外面は円筒形状を有し、第1領域と対向するケーシング部材の内面と、第1領域の外面との間には、第1隙間部が設けられており、
第3領域と対向するケーシング部材の内面と、第3領域の外面との間には、空間部が設けられており、
第3領域と対向するケーシング部材には、空間部に連通した加圧流体導入部が設けられており、
第4領域は、空間部を閉塞しており、
ノズル部材の軸線に垂直な第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの第3領域の外面の断面の少なくとも一部は、第2領域に向かって縮小しており、
第2領域には、ノズル部材の軸線を含む第2仮想平面に対して平行な仮想平面内に含まれたスリット部が形成されており、
加圧流体導入部から空間部に導入された加圧流体は、第3領域の外面と衝突して旋回流となり、旋回流となった加圧流体は、スリット部から第1隙間部を経由して外部に噴出(噴射、吐出)される。
【0007】
上記の目的を達成するための本発明の固形物製造設備は、
上述した本発明の固形物製造装置、
ノズル部材を構成する液状物質供給口に液状物質を供給する液状物質供給装置、及び、
加圧流体導入部に加圧流体を供給する加圧流体供給装置、
を備えている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の固形物製造設備を構成する固形物製造装置、あるいは又、本発明の固形物製造装置にあっては、スリット部が形成されているので、外部に噴出(噴射、吐出)される加圧流体(便宜上、『噴出加圧流体』と呼ぶ)は旋回流となり、しかも、噴出加圧流体によって、液状物質吐出口の近傍の空間は減圧状態あるいは真空状態となる。その結果、液状物質吐出口から吐出された液状物質は、旋回流となった噴出加圧流体と混合され、液状物質に含まれる水分や溶媒が直ちに蒸発し、あるいは、昇華し、乾燥され、液状物質の組成の一部を有する微粒子状の固形物を容易に得ることができるし、固形物の抽出や固液分離を容易に行うことができる。また、旋回流となった噴出加圧流体は、全体としてみた場合、余り広がらず、一種、棒状(筒状)の流れとなるので、固形物は均一な流れとなり、例えば、噴出加圧流体に搬送されて被塗布物等の物品と固形物が衝突したとき、物品の表面に均一な厚さの固形物を得ることができる。更には、液状物質及び加圧流体の流量及び圧力を制御することで、液状物質吐出口から吐出される液状物質は均一・均質な微粒子状となり得るが故に、ミクロン・オーダーでの固形物の厚さ等の物理量や物理的状態の制御を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、
図3の矢印A-Aに沿った本発明の固形物製造装置の模式的な端面図である。
【
図2】
図2は、
図3の矢印A-Aに沿った本発明の固形物製造装置の変形例の模式的な端面図である。
【
図3】
図3は、
図1の矢印B-Bに沿った模式的な端面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示すと同様の本発明の固形物製造装置の模式的な端面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すと同様の本発明の固形物製造装置の模式的な端面図において、加圧流体や固形物の流れを模式的に示す図である。
【
図6】
図6は、本発明の固形物製造装置を含む本発明の固形物製造設備の概念図である。
【
図7】
図7A及び
図7Bは、それぞれ、インク層が表面に形成された被塗布物の電子顕微鏡写真、及び、インク層が表面に形成された被塗布物断面の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、実施例に基づき本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではなく、実施例における種々の数値や材料は例示である。尚、説明は、以下の順序で行う。
1.本発明の固形物製造装置及び本発明の固形物製造設備、全般に関する説明
2.実施例1(本発明の固形物製造装置及び本発明の固形物製造設備)
3.その他
【0011】
本発明の固形物製造設備において、液状物質供給装置(液状物質供給系)は、ポンプ、液状物質供給口とポンプとを結ぶ配管、及び、配管の途中に配設された2つのオリフィスを備えている形態とすることができる。そして、この場合、
2つのオリフィスの間の配管には、排出管が接続されており、
排出管の途中にはトラップ部が設けられており、
排出管は、圧力調整手段を介して系外に繋がっている形態とすることができる。
【0012】
トラップ部は、液状物質の流量調整のために設けられているし、液状物質に生じる圧力変動、圧力の脈動を吸収するために設けられており、コイル状に巻かれた細管(調圧コイル)から成る形態とすることができる。圧力調整手段は、具体的には、液状物質の圧力調整絞り弁及び排出弁から成る形態とすることができる。2つのオリフィスを設けることで、固形物製造装置内の液状物質に生じた圧力変動、圧力の脈動が液状物質供給系に及ぼす影響を小さくすることができる。ポンプは、如何なる形式のポンプからも構成することができ、例えば、サーボ機構付きのシリンジポンプを例示することができる。
【0013】
上記の好ましい形態を含む本発明の固形物製造設備において、加圧流体供給装置(加圧流体供給系)は、加圧流体源、加圧流体流量制御装置及び加圧流体圧力制御装置を備えている形態とすることができる。加圧流体供給装置は、具体的には、例えば、精密レギュレータ、流量安定アキュムレータ及びマスフローコントローラを備えている。
【0014】
上記の各種の好ましい形態を含む本発明の固形物製造設備を構成する固形物製造装置、あるいは又、本発明の固形物製造装置(以下、これらの固形物製造装置を、便宜上、『本発明の固形物製造装置等』と呼ぶ)において、第2領域は第1領域側に切頭円錐形状の外面を有し、第2領域と対向するケーシング部材の内面と、第2領域の切頭円錐形状の外面との間には、第2隙間部が設けられており、加圧流体導入部から空間部に導入された加圧流体は、第3領域の外面と衝突して旋回流となり、旋回流となった加圧流体は、第2隙間部及びスリット部から第1隙間部を経由して外部に噴出(噴射、吐出)される形態とすることができる。そして、このような形態を含む本発明の固形物製造装置等において、第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの第3領域の断面形状は円形であり、第2仮想平面で切断したときの第3領域の外面の断面形状はアーチ状(クラウン状)である形態とすることができる。そして、この場合、(第3領域の断面形状の最大半径)/(第3領域の長さ)の値は0.01乃至0.1であることが好ましい。更には、これらの場合、加圧流体導入部は、第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの第3領域の断面形状が最大である部分(便宜上、『最大半径部分』と呼ぶ場合がある)よりもノズル部材の後端部側の部分に対応したケーシング部材に設けられている形態とすることができる。ここで、加圧流体導入部の中心は、第1仮想平面で切断したときの第3領域の断面形状が最大である部分(最大半径部分)よりも、1mm乃至5mm、ノズル部材の後端部側に位置する形態とすることができる。加圧流体導入部の数は、1以上であればよく、複数であってもよい。加圧流体導入部の数が複数(M)の場合、第1仮想平面に加圧流体導入部を正射影したときの正射影像は、対称軸(回転軸)をノズル部材の軸線としたM回の回転対称に配置されていることが好ましく、これによって、空間部に導入された加圧流体を一層容易に旋回流とすることができる。第2仮想平面で切断したときの第3領域の外面の断面形状をアーチ状(クラウン状)とすることで、加圧流体導入部から空間部に導入された加圧流体を容易に旋回流とすることができるし、噴出加圧流体の旋回速度の増加を図ることができる。場合によっては、第2仮想平面で切断したときの第3領域の外面の断面形状を、直線状(テーパー状)としてもよい。加圧流体導入部の軸線は、ノズル部材の軸線と交差していてもよいし、交差していなくともよい。後者の場合、空間部に導入された加圧流体を一層容易に旋回流とすることができる。また、ノズル部材の軸線と加圧流体導入部の入り口中心部とを通る仮想平面への加圧流体導入部の軸線の正射影像と、この仮想平面へのノズル部材の軸線の正射影像は90度で交わっていてもよいし、90度以外の角度で交わっていてもよい。後者の場合、ノズル部材の先端部へ向かうノズル部材の軸線の方向を正方向としたとき、この仮想平面への加圧流体導入部の軸線の正射影像と、この仮想平面へのノズル部材の軸線の正射影像とは、鋭角で交わっていることが好ましい。
【0015】
更には、上記の各種の好ましい形態を含む本発明の固形物製造装置等において、第1領域と対向するケーシング部材の先端面は、第1領域の先端面よりもノズル部材の後端部側に位置することが好ましく、この場合、第1領域と対向するケーシング部材の先端面から第1領域の先端面までの距離L1として、限定するものではないが、0.1mm乃至1mmを挙げることができる。
【0016】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の固形物製造装置等において、スリット部の数(N)は、使用する液状物質に依存して、また、本発明の固形物製造装置等の使用目的に応じて、適宜、決定すればよく、例えば、1乃至8とすることができる。スリット部の幅として、限定するものではないが、0.05mm乃至0.5mmを例示することができる。N≧2の場合、第1仮想平面にスリット部を正射影したときの正射影像は、対称軸(回転軸)をノズル部材の軸線としたN回の回転対称に配置されていることが好ましい。第2隙間部が設けられている場合、スリット部は、第2隙間部に連通していることが望ましいが、連通していなくともよい。複数のスリット部を設ける場合、スリット部の幅(あるいはスリット部の断面積)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0017】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の固形物製造装置等において、ケーシング部材及びノズル部材は、ステンレス鋼(SUS304、SUS316等)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、又は、全芳香族ポリイミド樹脂(具体的には、例えば、ベスペル(登録商標))から作製されている形態とすることができる。
【0018】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の固形物製造装置等において、加圧流体は、空気又は窒素ガスから成る形態とすることができる。
【0019】
更には、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の固形物製造装置等において、液状物質は、液状の塗料、インク又はコーティング材料である構成とすることができ、この場合、被塗布物上に、塗膜が形成され、あるいは又、インク層が形成され、あるいは又、コーティング材料層が形成される。
【0020】
塗料として、アクリル系樹脂、スチレン・アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、アクリル・シリコーン系樹脂等の各種塗料用バインダーを水や溶媒に分散、溶解させた樹脂溶液に、二酸化チタン、黒色酸化鉄、ベンガラ、クロムグリーン、カーボンブラック、銅フタロシアニン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク、クレーの無機顔料や有機顔料、及び、分散剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、成膜助剤、防カビ剤等の添加剤を必要量添加し、混合及び分散させたものを挙げることができる。また、塗料の粘度として、限定するものではないが、5mPa・s乃至0.1Pa・sを挙げることができる。被塗布物として、紙、布、ガラス、プラスチック、木材、金属材料、合金材料、メッシュ状の金属、カーボンから作製された物品、具体的には、例えば、各種建築部材や建築資材、各種樹脂成形品、各種電球やランプ、各種レンズ、自動車ガラス、ドアノブ、エンブレム、各種取手、自動車用ミラーを含む各種ミラーを例示することができる。また、メッキ層を代替することもできる。
【0021】
インクとして、銅(Cu)や銀(Ag)、アルミニウム(Al)、金(Au)、クロム(Cr)、これらの合金や化合物を含む導電性インク、プリント配線板の製造に用いられる各種レジスト材料(メッキレジスト、ソルダーレジスト、エッチングレジスト)を例示することができる。インクの粘度として、限定するものではないが、5mPa・s乃至0.1Pa・sを挙げることができる。導電性インクによって電極や配線、金属層を形成することができる。即ち、印刷法を代替することができるし、スパッタリング法を代替することもできる。インクが表面に形成された物品として、具体的には、プリント配線板、有機EL表示装置を例示することができる。インクの厚さとして4nm乃至5μmを例示することができる。インクの層は複数層が積層された形態とすることもできる。
【0022】
コーティング材料として、ハードコート材料や、反射防止膜材料、帯電防止材料、紫外線防止材料、防曇材料を例示することができるし、コーティング材料が表面に形成された物品として、具体的には、透明・高硬度ポリカーボネート樹脂製品等のプラスチック製品、各種ミラー、ガラスやプラスチックから成る透明板状製品、各種レンズを例示することができる。
【0023】
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の固形物製造装置等において、液状物質は、海水である構成とすることができ、この場合、粒子状あるいは粉末の塩(塩化ナトリウムを主成分とした「しお」であり、例えば、食塩や、ソーダ工業用、融氷雪用、水処理設備の一種の軟化器に使われるイオン交換樹脂の再生等にも使用される)を得ることができる。即ち、このような構成にあっては、固形物の抽出が行われ、あるいは又、液状物質に含まれる水分が瞬時に蒸発し、乾燥が行われる。
【0024】
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の固形物製造装置等において、液状物質は、塩である構成とすることができる。ここで、「塩」とは、酸に含まれている1以上の解離し得る水素イオンを陽イオンで置換した化合物であり、正塩、酸性塩、塩基性塩を含む。また、単塩、複塩、錯塩が含まれる。 このような構成にあっては、固形物の抽出、あるいは、液状物質に含まれる水分や溶媒が瞬時に蒸発し、あるいは、昇華し、乾燥が行われる。
【0025】
あるいは又、以上に説明した各種の好ましい形態を含む本発明の固形物製造装置等において、液状物質は、感光性樹脂材料、有機材料、果汁、産業廃棄物(産業廃棄液)、汚水(汚物)、薬剤原料である構成とすることもでき、このような形態にあっても、固形物の抽出、あるいは、液状物質に含まれる水分や溶媒が瞬時に蒸発し、あるいは、昇華し、乾燥が行われる。ここで、液状物質として、広くは、固形物の組成を有する材料(物質)が水や溶媒に分散している形態、溶解している形態を挙げることができる。固形物は、単独で存在する形態を挙げることができるし、あるいは又、例えば、被塗布物等の各種物品の表面に付着した形態あるいは形成された形態を挙げることもできる。
【0026】
固形物製造装置に供給される液状物質の流量として、限定するものではないが、1リットル/分乃至20リットル/分を例示することができるし、圧力(ゲージ圧)として0.05MPa乃至0.6MPaを例示することができる。液状物質供給口の直径として3mm乃至12mmを例示することができるし、液状物質吐出口の直径として0.5mm乃至10mmを例示することができる。液状物質吐出口から吐出される液状物質の吐出量及び吐出速度が均一であり、しかも、液状物質吐出口から吐出された液状物質は直ちに微粒子状となるが故に、固形物製造装置から離れても固形物を含む噴出加圧流体の流速の低下が少なく、液状物質吐出口から被塗布物までの距離の制約を受け難い。従って、液状物質吐出口から被塗布物までの距離を長くすることができ、最大距離として150mmを例示することができる。尚、従来の噴霧ノズルを用いた場合、噴霧ノズルから吐出された塗料を含む空気の流速の低下が著しく、噴霧ノズルから離れた被塗布物において塗料のダレが生じた。
【0027】
固形物製造装置と物品を相対的に移動させてもよい。この場合、固形物製造装置を直線的に移動させてもよいし、物品を直線的に移動させてもよいし、固形物製造装置及び物品を直線的に移動させてもよい。固形物製造装置の回転移動は不要である。固形物製造装置と物品との間に、微粒子状の固形物の通過を制御するマスクを配置することで、物品の所望の領域に固形物を形成することができる。また、固形物製造装置からの微粒子状の固形物を、例えば、回転するドラムの表面に衝突させ、ドラムの表面に付着した固形物を掻き取ることで、固形物を得ることもできる。ドラムの表面を加熱状態としてもよい。上述したとおり、液状物質吐出口から被塗布物までの距離を長くすることができるので、例えば、液状物質吐出口から被塗布物までの距離に依存した微粒子状の固形物の質量に基づく分別、分級を行うことも可能である。
【実施例1】
【0028】
実施例1は、本発明の固形物製造装置及び固形物製造設備に関する。
図3の矢印A-Aに沿った実施例1の固形物製造装置の模式的な端面図(任意の方向に延びる第2仮想平面で切断したときの固形物製造装置の模式的な断面図)を
図1に示し、
図1の矢印B-Bに沿った模式的な端面図を
図3に示す。また、
図1に示すと同様の実施例1の固形物製造装置の模式的な端面図を
図4に示し、
図1に示すと同様の実施例1の固形物製造装置の模式的な端面図において、加圧流体や固形物の流れを模式的に
図5に示す。更には、実施例1の固形物製造装置を含む実施例1の固形物製造設備の概念図を
図6に示す。尚、以下の説明において、ノズル部材の軸線をX軸、X軸に垂直であって、任意の方向に延びる軸をY軸、X軸及びY軸に垂直な軸線をZ軸とする。
【0029】
図1に示すように、実施例1の固形物製造装置20は、ケーシング部材30、及び、ケーシング部材30内に格納されたノズル部材40から成り、ノズル部材40の後端部から供給された液状物質(
図5において、白抜きの矢印で示す)をノズル部材40の先端部から吐出し、固形物(
図5において、白丸で示す)を得る固形物製造装置である。
【0030】
そして、ノズル部材40は、ノズル部材40の先端部からノズル部材40の後端部に向かって、第1領域41、第2領域42、第3領域43及び第4領域44から構成されており、
ノズル部材40は、
ノズル部材40(具体的には、ノズル部材40の中心部)をノズル部材40の軸線AXに沿って貫通する液状物質流路50、
液状物質流路50の後端部に設けられた液状物質供給口51、及び、
液状物質流路50の先端部に設けられた液状物質吐出口52、
を備えている。
【0031】
また、第1領域41の外面41’は円筒形状を有し、第1領域41と対向するケーシング部材30の内面31と、第1領域41の外面41’との間には、第1隙間部61が設けられており、
第3領域43と対向するケーシング部材30の内面33と、第3領域43の外面43’との間には、空間部45が設けられており、
第3領域43と対向するケーシング部材30には、空間部45に連通した加圧流体導入部35が設けられており、
第4領域44は、空間部45を閉塞している。
【0032】
更には、ノズル部材40の軸線AXに垂直な第1仮想平面と平行な仮想平面で切断したときの第3領域43の外面43’の断面の少なくとも一部は、第2領域42に向かって縮小しており、
第2領域42には、ノズル部材40の軸線AXを含む第2仮想平面に対して平行な仮想平面(便宜上、『第3仮想平面』と呼ぶ)内に含まれたスリット部63が形成されており(
図3参照)、
加圧流体導入部35から空間部45に導入された加圧流体は、第3領域43の外面43’と衝突して旋回流となり、旋回流となった加圧流体は、スリット部63から第1隙間部61を経由して外部に噴出(噴射、吐出)される。
【0033】
尚、より具体的には、第2領域42は第1領域側に切頭円錐形状の外面42’を有し、第2領域42と対向するケーシング部材30の内面32と、第2領域42の切頭円錐形状の外面42’との間には、第2隙間部62が設けられている。また、より具体的には、加圧流体導入部35から空間部45に導入された加圧流体は、第3領域43の外面43’と衝突して旋回流(
図5において、黒い矢印で示す)となり、旋回流となった加圧流体は、第2隙間部62及びスリット部63から第1隙間部61を経由して外部に噴出(噴射、吐出)される。尚、
図5において、外部に噴出された噴出加圧流体を矢印及び黒い矢印で示し、液状物質吐出口52から吐出された微粒子状の固形物を白丸で示す。
【0034】
円筒形状を有する第1領域41の外面41’と、切頭円錐形状を有する第2領域42の外面42’とは、繋がっている。第3領域43の外面43’の断面の少なくとも一部は、第2領域42に繋がる部分である。即ち、第3領域43の外面43’の断面の縮小した部分は、第2領域に繋がる部分から第4領域に向かって延びている。スリット部63は、空間部45と連通し、且つ、第1隙間部61と連通している。スリット部63は、第2隙間部62と連通していてもよいし、第2隙間部62と連通していなくともよい。スリット部63は第3仮想平面内に含まれるが、第3仮想平面は第2仮想平面と厳密に平行である必要は無い。第1隙間部61は、第1領域41と対向するケーシング部材30の内面31と第1領域41の外面41’との間の全周に設けられていることが望ましいが、これらの間の一部分に設けられていてもよい。第2隙間部62は、第2領域42と対向するケーシング部材30の内面32と第2領域42の外面42’との間の全周に設けられていることが望ましいが、これらの間の一部分に設けられていてもよい。加圧流体導入部35は、第2仮想平面内に位置する。切頭円錐形状の外面42’のノズル部材後端部側の直径をR
TC-2、第2領域に繋がった第3領域43の外面43’の直径をR
30としたとき(
図4参照)、R
TC-2とR
30は、限定するものではないが、0.3≦R
30/R
TC-2≦0.7を満足することが好ましい。
【0035】
また、実施例1の固形物製造設備(固形物製造システム)10は、
図6に示すように、
上述した実施例1の固形物製造装置20、
ノズル部材40を構成する液状物質供給口51に液状物質を供給する液状物質供給装置70(液状物質供給系)、及び、
加圧流体導入部35に加圧流体を供給する加圧流体供給装置80(加圧流体供給系)、
を備えている。
【0036】
実施例1の固形物製造設備10において、
図6に示すように、液状物質供給装置70は、ポンプ71、液状物質供給口51とポンプ71とを結ぶ配管72、及び、配管72の途中に配設された2つのオリフィス73,74を備えている。更には、2つのオリフィス73,74の間の配管72には排出管75が接続されており、排出管75の途中にはトラップ部76が設けられており、排出管75は、圧力調整手段77を介して系外に繋がっている。
【0037】
ポンプ71は、如何なる形式のポンプからも構成することができ、例えば、サーボ機構付きのシリンジポンプを例示することができる。また、トラップ部76は、液状物質の流量調整のために設けられているし、液状物質に生じる圧力変動、圧力の脈動を吸収するために設けられており、コイル状に巻かれた細管(調圧コイル)から成る。2つのオリフィス73,74を設けることで、固形物製造装置20を移動させたときに固形物製造装置20内の液状物質に生じた圧力変動、圧力の脈動が液状物質供給系に及ぼす影響を小さくすることができる。圧力調整手段77は、具体的には、液状物質の圧力調整絞り弁及び排出弁から成る。圧力調整手段77の上流には圧力計78が配置されている。
【0038】
加圧流体供給装置80は、加圧流体源、加圧流体流量制御装置及び加圧流体圧力制御装置を備えており、具体的には、例えば、加圧流体源81、精密レギュレータ82、流量安定アキュムレータ83、マスフローコントローラ84、加圧流体流量制御装置85から構成されており、これらは配管87で結ばれている。精密レギュレータ82の下流には圧力計86が配置されている。加圧流体は、空気又は窒素ガスから成る。配管87は、加圧流体導入部35に繋がっている。
【0039】
実施例1の固形物製造装置において、第1仮想平面と平行な仮想平面(YZ仮想平面)で切断したときの第3領域43の断面形状は円形であり、第2仮想平面(XY仮想平面)で切断したときの第3領域43の外面の断面形状はアーチ状(クラウン状)である。そして、(第3領域43の断面形状の最大半径)/(第3領域43の長さ)の値は0.01乃至0.5であることが好ましく、具体的には、0.2とした。加圧流体導入部35は、最大半径部分43”よりもノズル部材40の後端部側の部分に対応したケーシング部材30に設けられている。具体的には、加圧流体導入部35の中心は、最大半径部分43”よりも、1mm乃至5mm、ノズル部材40の後端部側に位置し、より具体的には、0.5mmノズル部材40の後端部側に位置する。
【0040】
第1領域41と対向するケーシング部材30の先端面30Aは、第1領域41の先端面41Aよりもノズル部材40の後端部側に位置する。ここで、第1領域41と対向するケーシング部材30の先端面30Aから第1領域41の先端面41Aまでの距離L
1を、具体的には、以下の表1のとおりとした。実施例1の固形物製造装置において、スリット部63の数(N)を4とし、スリット部63の幅W
Slit(
図3参照)を、具体的には、以下の表1のとおりとした。第1仮想平面にスリット部63を正射影したときの正射影像は、対称軸をノズル部材40の軸線AXとした4回の回転対称に配置されている。ケーシング部材30及びノズル部材40を、全芳香族ポリイミド樹脂(具体的には、ベスペル)から、切削加工によって作製した。また、
(A)第1隙間部61の幅W
1
(B)第2隙間部62の幅W
2
(C)第3領域43の断面形状の最大半径r
max
(D)第3領域43と対向するケーシング部材30の内面の半径r
30
(E)液状物質流路50の後端部に設けられた液状物質供給口51の直径R
in
(F)液状物質流路50の先端部に設けられた液状物質吐出口52の直径R
out
(G)加圧流体導入部35の直径R
gas
(H)切頭円錐形状の外面42’のノズル部材先端部側の直径R
TC-1
(I)切頭円錐形状の外面42’のノズル部材後端部側の直径R
TC-2
(J)第2領域に繋がった第3領域43の外面43’の直径をR
30
(K)ノズル部材40の軸線AXを含む第2仮想平面と、スリット部63が設けられた仮想平面(第3仮想平面)との間の距離D
Slit(
図3参照)、
を以下の表1のとおりとした。以上に説明したL
1、 W
1 、W
2 、r
max 、r
30、R
in、R
out 、R
gas 、R
TC-1、R
TC-2及びR
30に関しては、
図4を参照のこと。
【0041】
〈表1〉
L1 :0.5mm
WSlit:0.3mm
DSlit:0.5mm
W1 :0.1mm
W2 :0.1mm
rmax :252mm
r30 :4.2mm
Rin :1.0mm
Rout :2.0mm
Rgas :2.4mm
RTC-1:3.2mm
RTC-2:7.0mm
R30 :4.0mm
【0042】
実施例1においては、液状物質を液状の塗料とした。また、被塗布物として紙を用いた。第1領域41の先端面41Aから被塗布物までの平均距離を150mmとした。液状物質及び加圧流体の流量及び圧力(ゲージ圧であり、以下においても同様)を表2のとおりとした。
【0043】
〈表2〉
液状物質の流量:1cc/分
液状物質の圧力:0.1MPa
加圧流体の流量:1×10-3ノルマルm3/分
加圧流体の圧力:0.2MPa
【0044】
紙の表面に形成された塗膜は、均一な厚さを有し、塗膜にムラは生じなかった。また、旋回流となった噴出加圧流体は、全体としてみた場合、余り広がらず、一種、棒状の流れとなるので、固形物は均一な流れとなり、被塗布物の表面に凹凸部がある場合であっても、凹凸部を均一に被覆することができ、被塗布物の段差部に、固形物の一種のダレや溜まりが生じることはなかった。
【0045】
液状物質をインクとした。具体的には、銀(Ag)から成る導電性インク(溶剤:テトラデカン)を使用して、被塗布物としてプラスチックシートを用いた。第1領域41の先端面41Aから被塗布物までの平均距離を150mmとした。液状物質及び加圧流体の流量及び圧力を上記の表2と同様とした。
【0046】
インク層が表面に形成された被塗布物の電子顕微鏡写真を
図7Aに示し、インク層が表面に形成された被塗布物断面の電子顕微鏡写真を
図7Bに示すが、被塗布物の表面に形成された銀粒子から成るインク層は、均一な厚さを有し、インク層にムラは生じなかった。また、旋回流となった噴出加圧流体は、全体としてみた場合、余り広がらず、一種、棒状の流れとなるので、固形物は均一な流れとなり、被塗布物の表面に凹凸部がある場合であっても、凹凸部を均一に被覆することができ、被塗布物の段差部に、固形物の一種のダレや溜まりが生じることはなかった。
【0047】
液状物質をコーティング材料とした。具体的には、反射防止膜材料を使用して、被塗布物としてプラスチックから成る透明板状製品(プラスチック板)を用いた。第1領域41の先端面41Aから被塗布物までの平均距離を150mmとした。液状物質及び加圧流体の流量及び圧力を上記の表2と同様とした。
【0048】
被塗布物の表面に形成されたコーティング材料は、均一な厚さを有し、コーティング材料にムラは生じなかった。また、旋回流となった噴出加圧流体は、全体としてみた場合、余り広がらず、一種、棒状の流れとなるので、固形物は均一な流れとなり、被塗布物の表面に凹凸部がある場合であっても、凹凸部を均一に被覆することができ、被塗布物の段差部に、固形物の一種のダレや溜まりが生じることはなかった。
【0049】
液状物質を海水とした。具体的には、高濃度の塩水(濃度:4質量%)を使用した。そして、液状物質吐出口52から2m離れた所にステンレス鋼板を配置した。液状物質及び加圧流体の流量及び圧力を以下の表3のとおりとした。
【0050】
〈表3〉
液状物質の流量:1.0リットル/分
液状物質の圧力:0.1MPa
加圧流体の流量:1×10-2ノルマルm3/分
加圧流体の圧力:0.4MPa
【0051】
ステンレス鋼板に衝突して得られた塩(しお)は、微粒子状の結晶体であり、乾燥していた。
【0052】
液状物質を塩とした。具体的には、クエン酸塩を使用した。そして、液状物質吐出口52から2m離れた所にステンレス鋼板を配置した。液状物質及び加圧流体の流量及び圧力を上記の表3と同様とした。
【0053】
ステンレス鋼板に衝突して得られたクエン酸塩は、一種の膜状となり、微粒子の集合体であり、乾燥していた。
【0054】
実施例1の固形物製造装置にあっては、スリット部が形成されているので、外部に噴出(噴射、吐出)される加圧流体(噴出加圧流体)は旋回流となり、しかも、噴出加圧流体によって、液状物質吐出口の近傍の空間は減圧状態あるいは真空状態となる。尚、噴出加圧流体を旋回流にすることで、より効率良く、液状物質吐出口の近傍の空間を減圧状態あるいは真空状態にすることができる。そして、以上の結果として、液状物質吐出口から吐出された液状物質は、旋回流となった噴出加圧流体と混合され、液状物質に含まれる水分や溶媒が直ちに蒸発し、あるいは、昇華し、乾燥され、液状物質の組成の一部を有する微粒子状の固形物を容易に得ることができるし、固形物の抽出や固液分離を容易に行うことができる。また、旋回流となった噴出加圧流体は、全体としてみた場合、余り広がらず、一種、棒状(筒状)の流れとなり、固形物は均一な流れとなり、ドーナッツ状の流れとはならないので、例えば、噴出加圧流体に搬送されて被塗布物等の物品と固形物が衝突したとき、物品の表面に均一な厚さの固形物を得ることができる。更には、液状物質及び加圧流体の流量及び圧力を制御することで、液状物質吐出口から吐出される液状物質は均一・均質な微粒子状となり得るが故に、ミクロン・オーダーでの固形物の厚さ等の物理量や物理的状態の制御を容易に行うことができる。
【0055】
しかも、例えば、物品の表面に均一な厚さの固形物を形成することができるが故に、固形物製造装置の複雑な移動、固形物製造装置と物品との相対的な複雑な移動は不要である。従って、固形物製造装置全体の簡素化を図ることができるし、汎用のロボット等に容易に取り付けることができるし、固形物製造装置の適用範囲の拡大を図ることができる。また、大気中での操作を行うことができるので、高価で特別な真空設備が不要であり、固形物製造装置の製造コストの削減、固形物の製造コストの低減を図ることができる。更には、液状物質吐出口から吐出された液状物質は、微粒子状となり、物品と衝突するので、物品の段差部等において固形物がだれるといった現象が発生し難い。固形物を得るために、乾燥における熱源や乾燥設備は、原則、不要である。
【0056】
しかも、液状物質の利用効率が高い。例えば、従来のスプレー装置を使用した場合と比較して塗料の使用量を約1/2とすることができた。例えば、塗料において、顔料や添加物の粒径等に制限、制約は余り無いし、使用する溶剤の制限も余り無い。幅広い厚さ範囲(例えば、0.1μm乃至100μm)の固形物の形成が可能であるし、固形物製造装置と物品との相対的な移動速度を1mm/秒乃至500mm/秒とすることが可能である。
【0057】
以上、本発明を好ましい実施例に基づき説明したが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。実施例において説明した固形物製造装置、固形物製造設備の構成、構造は例示であり、適宜、変更することができるし、使用した液状物質、得られた固形物、固形物を得るための固形物製造装置の運転条件等も例示であり、適宜、変更することができる。
図3の矢印A-Aに沿った本発明の固形物製造装置の変形例の模式的な端面図を
図2に示すように、ノズル部材の第3領域43とノズル部材の第2領域42の境界近傍のノズル部材の第3領域43の部分、及び/又は、ノズル部材の第3領域43とノズル部材の第4領域44の境界近傍のノズル部材の第3領域43の部分に、旋回流の流れの制御のための凹部43aを形成してもよい。
【符号の説明】
【0058】
10・・・固形物製造設備(固形物製造システム)、20・・・固形物製造装置、30・・・ケーシング部材、30A・・・ケーシング部材の先端面、31・・・第1領域と対向するケーシング部材の内面、32・・・第2領域と対向するケーシング部材の内面、33・・・第3領域と対向するケーシング部材の内面、35・・・加圧流体導入部、40・・・ノズル部材、41・・・ノズル部材の第1領域、41’・・・第1領域の外面、41A・・・第1領域の先端面、42・・・ノズル部材の第2領域、42’・・・切頭円錐形状の外面、43・・・ノズル部材の第3領域、43’・・・第3領域の外面、43”・・・最大半径部分、43a・・・凹部、44・・・ノズル部材の第4領域、45・・・空間部、50・・・液状物質流路、51・・・液状物質供給口、52・・・液状物質吐出口、61・・・第1隙間部、62・・・第2隙間部、63・・・スリット部、70・・・液状物質供給装置、71・・・ポンプ、72・・・配管、73,74・・・オリフィス、75・・・排出管、76・・・トラップ部、77・・・圧力調整手段、78・・・圧力計、80・・・加圧流体供給装置、81・・・加圧流体源、82・・・精密レギュレータ、83・・・流量安定アキュムレータ、84・・・マスフローコントローラ、85・・・加圧流体流量制御装置、86・・・圧力計、87・・・配管、AX・・・ノズル部材の軸線