(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】沈砂池
(51)【国際特許分類】
B01D 21/18 20060101AFI20220722BHJP
B01D 21/24 20060101ALI20220722BHJP
B01D 21/30 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B01D21/18 K
B01D21/24 M
B01D21/24 G
B01D21/30 J
(21)【出願番号】P 2018108757
(22)【出願日】2018-06-06
【審査請求日】2021-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】508165490
【氏名又は名称】アクアインテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107102
【氏名又は名称】吉延 彰広
(74)【代理人】
【識別番号】100172498
【氏名又は名称】八木 秀幸
(74)【代理人】
【識別番号】100164242
【氏名又は名称】倉澤 直人
(72)【発明者】
【氏名】米山 和彦
(72)【発明者】
【氏名】川上 直哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 賢二
【審査官】富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-116436(JP,A)
【文献】実開昭53-116073(JP,U)
【文献】特開2009-039698(JP,A)
【文献】特開2013-215656(JP,A)
【文献】特開平07-100306(JP,A)
【文献】特開2000-005510(JP,A)
【文献】実開平06-081603(JP,U)
【文献】特開2009-172472(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 21/00-21/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
受け入れた水に含まれている砂が池底面に沈降する沈砂池において、
所定方向に延在し、沈降した砂が集められる集積部と、
前記集積部から離れた位置で該集積部の延在方向に沿って複数配置され、沈降した砂を該集積部に向かって流すための流体を大気中に吐出する吐出口と、
隣り合う前記吐出口の間から前記集積部に向かう方向に延在する突条とを備え、
前記吐出口は、この沈砂池の側壁に沿って配置されたものであり、
前記突条は、前記池底面から突出し
、池幅方向に沿って延在したものであることを特徴とする沈砂池。
【請求項2】
前記突条は、固定部材により前記池底面に固定された、断面形状がL字状の長尺部材により構成されたものであることを特徴とする請求項1記載の沈砂池。
【請求項3】
前記吐出口は、前記池底面よりも水位を低下させた後に流体を吐出するものであることを特徴とする請求項1または2記載の沈砂池。
【請求項4】
前記突条が複数設けられ、該突条の間は、樹脂プレートによって覆われていることを特徴とする請求項1~3のうちいずれか1項記載の沈砂池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受け入れた水に含まれている砂が池底部に沈降する沈砂池に関する。
【背景技術】
【0002】
汚水処理設備には、下水および雨水などの汚水を受け入れ、その汚水に含まれている砂を池底部に設けられた溝や池底面に沈降させた後、池底面や溝に堆積した砂を集砂ピットに集めて汚水から取り除く沈砂池が設けられているものがある。この沈砂池として、池内の汚水を排出して池底面に堆積した砂を大気中に露出させた後、その砂を沈砂池の側壁近傍に設けられた吐出口から吐出させた流体の流れにより溝に向かって移動させる集砂手段を備えたものが知られている。また、側壁近傍から溝に向かって延在する複数の小トラフを池底面に設けることで、池底面を小トラフで区分けされた複数の小エリアに分割し、各小エリア毎に吐出口を配置することで、池底面に堆積した砂を効率的に溝に流す工夫がなされた沈砂池が提案されている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、沈砂池を新規に作り上げる場合には、池底面が形成される空間に小トラフを構成する樋状の部材を複数並べてから樋状の部材の周囲にコンクリートを充填することで、隣り合う小トラフの間にコンクリート面で構成された池底面を形成できるので、小トラフが設けられた池底面は比較的容易に作成できる。しかしながら、例えば既に平面状の池底面が形成されている沈砂池に小トラフを作成しようとすると、先ず池底面を構成しているコンクリートを斫り、次にその斫った部分に樋状の部材を配置し、その後に斫った部分と樋状の部材の間の隙間に液状のコンクリートを流す作業を行う必要がある。このように複数の作業が必要になる上に、特にコンクリートを斫る作業は煩雑であるため、池底面を複数の小エリアに分割するための作業費用が高価になるという問題がある。
【0005】
本発明は上記事情に鑑み、池底面が複数の小エリアに安価に分割された沈砂池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を解決する本発明の沈砂池は、受け入れた水に含まれている砂が池底面に沈降する沈砂池において、
所定方向に延在し、沈降した砂が集められる集積部と、
前記集積部から離れた位置で該集積部の延在方向に沿って複数配置され、沈降した砂を該集積部に向かって流すための流体を大気中に吐出する吐出口と、
隣り合う前記吐出口の間から前記集積部に向かう方向に延在する突条とを備え、
前記吐出口は、この沈砂池の側壁に沿って配置されたものであり、
前記突条は、前記池底面から突出し、池幅方向に沿って延在したものであることを特徴とする。
【0010】
側壁に沿って配置された吐出口から大気中に吐出された流体が池幅方向と直交する方向に広がってしまうことを突条で防止できるので、池底面に堆積した砂を池幅方向中央側に向かって効率的に流すことができる。
【0011】
さらに、この沈砂池において、前記突条は、固定部材により前記池底面に固定された、断面形状がL字状の長尺部材により構成されたものであってもよい。
【0012】
L字状の長尺部材を固定部材により池底面に固定するだけなので、簡単な作業で池底面に突条を形成できる。
【0013】
また、この沈砂池において、前記吐出口は、前記池底面よりも水位を低下させた後に流体を吐出するものであってもよい。
【0014】
水位を低下させることで池底面に堆積した砂が大気中に露出するので、沈砂池に溜まっている水が抵抗になって吐出した流体の流れが弱まることがなくなり、砂を集積部に向かって容易に流すことができる。
【0015】
また、この沈砂池において、前記突条が複数設けられ、該突条の間は、樹脂プレートによって覆われた態様であってもよい。
【0016】
この態様によれば、前記池底面が樹脂プレートによって構成されることになり、樹脂プレートは摩擦抵抗を低いので、砂を集積部に向かって容易に流すことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、池底面が複数の小エリアに安価に分割された沈砂池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の一実施形態に相当する沈砂池を含む汚水処理設備の概略断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に相当する沈砂池を上方から見た平面図である。
【
図5】(a)は、突条を示す平面図であり、(b)は、突条を示す側面図である。
【
図6】(a)は、ラップジョイントが設けられた一方の管が他方の管に結合された状態を説明するための断面図であり、(b)は、ボルトを緩めることで、ラップジョイントが設けられた一方の管が他方の管に対してその軸方向を中心として回転自在になった状態を説明するための断面図である。
【
図7】(a)は、
図4のC-C断面図であり、(b)は、沈砂池の上流側端部近傍の底面と、集砂ピット近傍の底面とを示した(a)と同様の断面図であり、(c)は、集砂ノズルによる吐出方向の変更を説明するための、(a)と同様の断面図である。
【
図9】沈砂池の水位と水位センサを示す説明図である。
【
図10】(a)は、
図7に示す供給管と集砂ノズルの第1変形例を示す図であり、(b)は、
図7に示す供給管と集砂ノズルの第2変形例を示す図である。
【
図11】第2実施形態の沈砂池を上方から見た平面図である。
【
図14】(a)は、供給管と集砂ノズルと母管の一部を示す平面図であり、(b)は、同図(a)に示す矢印F方向に供給管と集砂ノズルと母管の一部を見たF矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。本発明の一実施形態である沈砂池は、汚水処理設備に配置され、下水および雨水などの汚水に含まれる砂を沈降させた後、沈降させた砂を集砂ピットに移動させて汚水から取り除くものである。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態に相当する沈砂池を含む汚水処理設備の概略断面図である。
【0021】
図1に示すように、汚水処理設備1は、沈砂池2と、ポンプ井3と、ダム装置4とを有する。この汚水処理設備1には、下水および雨水などの汚水が流入してくる。汚水処理設備1は、
図1における左側から汚水を受け入れる。受け入れた汚水は、沈砂池2において、その汚水に含まれている砂を沈降させつつ図の右側のポンプ井3に向かってゆっくりと流れていく(
図1に示す直線の矢印参照)。以下、受け入れた汚水の流れにおける上流側を、単に上流側と称し、汚水の流れの下流側を、単に下流側と称する。
【0022】
汚水処理設備1の、沈砂池2よりも上流側には、ダム装置4が配置されている。このダム装置4は、開口壁41と、流入ゲート42と、ゲート駆動装置43とを有する。開口壁41下流側の壁面は、沈砂池2の上流端を画定している。開口壁41の下端部分には、流入口411が開口している。流入ゲート42は、開口壁41上流側の壁面に沿って上下動可能に設けられている。この流入ゲート42は、
図1に実線で示した下方位置にあるときには流入口411を閉塞してダム装置4よりも上流側にある汚水の、沈砂池2への流入を堰き止めている。また、流入ゲート42が、
図1において二点鎖線で示した上方位置に引き上げられているときには、汚水が沈砂池2に流入することを許容している。ゲート駆動装置43は、その内部に図示しない駆動機構を有しており、ダム装置4を制御する制御装置からの指令に応じて流入ゲート42を上下動させる。この上下動により、流入ゲート42は、上方位置と下方位置の何れかの位置に選択的に配置される。
【0023】
沈砂池2には、その上流側に配置された除塵機5と、中流付近に配置された集砂ピット6と、集砂ピット6内の砂を池外に搬出する揚砂ポンプ61とが設けられている。揚砂ポンプ61には揚砂管64が接続されている。揚砂ポンプ61によって吸引された砂は、この揚砂管64を通して沈砂池2の外部に設けられた不図示の沈砂分離機に送られる。除塵機5は、沈砂池2に流れ込んできた汚水に混入している混入物(し渣)を除去するためのものである。沈砂池2の構成については後に詳述する。
【0024】
汚水処理設備1の、沈砂池2よりも下流側には、ポンプ井3が形成されている。ポンプ井3には、沈砂池2によって砂が取り除かれた汚水が貯留される。ポンプ井3の底部は、汚水処理設備1における最深部となっている。ポンプ井3には、揚水ポンプ31と給水ポンプ33が配置が配置されている。揚水ポンプ31は、ポンプ井3に貯留された汚水を、汚水処理設備1の外部に移動するものである。揚水ポンプ31には揚水管32が接続されている。揚水ポンプ31によって吸引された汚水は、この揚水管32を通して次の段階の汚水処理を行う不図示の沈殿池等に送られる。給水ポンプ33は、上述の揚水ポンプ31よりも、ポンプ井の底部に近い位置に配置されている。給水ポンプ33には給水管34が接続されている。給水ポンプ33によって吸引された汚水は、この給水管34を通して後述する各ノズル等に送られる。給水ポンプ33によって吸引された汚水を、以下の説明では流体と称する。
【0025】
図2は、本発明の一実施形態に相当する沈砂池を上方から見た平面図である。
図2では除塵機を二点鎖線の矩形で示している。また、汚水の流れ方向を直線の矢印で示している。
【0026】
図2に示すように、沈砂池2は、左側壁Waと右側壁Wbの間に、除塵機5と、集砂ピット6と、池底面7と、主トラフ8と、集砂手段9とを備えた、平面視で概略長方形状の池である。本実施形態における主トラフ8は、集積部の一例に相当する。以下、左側壁Waと右側壁Wbとを合わせて側壁Wと称することがある。沈砂池2上流側の池幅方向中央部分には、除塵機5を支持するための支持壁10が設けられている。集砂ピット6、池底面7、および主トラフ8は、それぞれ沈砂池2の池底部に設けられている。この沈砂池2は、池底面7に沈降した砂を、沈砂池2内の汚水を排水した状態で3kg/cm
2未満の低圧力水を池底面7に吐出して集砂する、いわゆる低圧集砂方式の沈砂池である。以下、沈砂池2の長辺方向を長手方向と称し、短辺方向を池幅方向と称する。なお、本実施形態における長手方向は、沈砂池の池幅方向に直交する方向である。
【0027】
沈砂池2の上方(
図2における紙面手前側)には、図示しない建屋や配管等が配置されている場合がある。そして、その建屋等を支持する目的で、沈砂池2に隣接して柱11が形成されていることがある。
図2に示す沈砂池2では、左側壁Waの近傍に柱11が形成されている。その左側壁Waのうち、柱11の土台になる部分は、池幅方向中央に向かって突出した突出壁部Wa1が形成されている。逆に、その左側壁Waのうち、左側壁Waの上に柱11が存在しない部分では、池幅方向外側に向かって凹んだ凹み壁部Wa2が形成されているとも言える。また、突出壁部Wa1と凹み壁部Wa2とを繋ぐ部分は、長手方向および池幅方向に対して傾斜した傾斜壁部Wa3が形成されている。なお、右側壁Wbの近傍には柱が存在しないので、右側壁Wbは、平面視でほぼ直線状に形成されている。
【0028】
集砂ピット6は、沈砂池2の長手方向の中央よりもやや下流側の位置に配置されている。この集砂ピット6は、沈砂池2の左側壁Waと右側壁Wbの間にまたがって形成された凹部によって構成されている。集砂ピット6の内部には、揚砂ポンプ61と、攪拌ノズル62と、ピット用集砂ノズル63とが配置されている。集砂ピット6の、池幅方向の中央部分は、沈砂池2において最も深い最深部6aになっている。この最深部6aは、平面視で矩形をしている。揚砂ポンプ61は、この最深部6a内に配置されている。集砂ピット6の底部のうち、側壁Wから最深部6aの間は、池幅方向の中央部分にある最深部6a側に向かって徐々に深くなるように傾斜した傾斜面6bになっている。
【0029】
攪拌ノズル62は、最深部6aの各角部近傍に合計4つ配置されている。この攪拌ノズル62は、最深部6aに集められた砂を撹拌するためのものである。揚砂ポンプ61を駆動している時に攪拌ノズル62の吐出口62aから流体を吐出することで、最深部6aに集まった砂の、揚砂ポンプ61による吸引効率を高めることができる。ピット用集砂ノズル63は、池幅方向の両端部それぞれに2つづつ配置されている。沈砂池2の水位を所定値よりも低くした状態で、ピット用集砂ノズル63の吐出口63aから流体を吐出することで、傾斜面6bに堆積している砂を最深部6aに集めることができる。
【0030】
池底面7は、沈砂池2の池幅方向中央部分で主トラフ8に接続している。池底面7は、主トラフ8側端部が最も深くなるように、池幅方向外側端部にある側壁W側から池幅方向の中央側に向かって下方に約5度傾斜している。また、池底面7は、集砂ピット6に向かって集砂ピット6側端部が最も深くなるように長手方向に向かって下方に約1度傾斜している。池底面7の上には、突条72が設置されている。突条72は、側壁Wの近傍から池幅方向に延在した長尺部材である。突条72は、長手方向に等間隔に複数配置されている。本実施形態では、主トラフ8を挟んで沈砂池2の左右それぞれに28本、合計56本の突条72が配置されている。この突条72の形状および設置構造については後に詳述する。
【0031】
主トラフ8は、沈砂池2の上流側端部近傍から長手方向に延在し、集砂ピット6に接続した上流側主トラフ81と、沈砂池2の下流側端部近傍から長手方向に延在し、集砂ピット6に接続した下流側主トラフ82とから構成されている。上流側主トラフ81および下流側主トラフ82は、断面がU字状のステンレス鋼板であるトラフ形成体によって形成された溝である。上流側主トラフ81および下流側主トラフ82は、池底面7と同様に集砂ピット6に向かうにしたがって下方に約1度傾斜しており、集砂ピット6に接続した部分が最も深くなっている。
【0032】
図2に示すように、上流側主トラフ81は、2本に分岐した上流側の分岐部811と下流側の直線部812とを有しており、全体として平面視でY字状に形成されている。分岐部811は、支持壁10を挟んで長手方向にそれぞれ延在している。直線部812は池幅方向中央で長手方向に延在している。上流側主トラフ81の下流端は、集砂ピット6の最深部6aに接続している。2本の分岐部811の上流端それぞれには上流トラフ用ノズル83が設けられている。沈砂池2の水位を所定値よりも低くした状態で、これらの上流トラフ用ノズル83の吐出口83aから流体を吐出することで、上流側主トラフ81に堆積した砂を集砂ピット6に移動させることができる。
【0033】
下流側主トラフ82は、沈砂池2の幅方向中央で長手方向に直線状に延在している。下流側主トラフ82の上流端は、集砂ピット6の最深部6aに接続している。下流側主トラフ82の下流端には下流トラフ用ノズル84が設けられている。沈砂池2の水位を所定値よりも低くした状態で、この下流トラフ用ノズル84の吐出口84aから流体を吐出することで下流側主トラフ82に堆積した砂を集砂ピット6に移動させることができる。
【0034】
図2に示すように、除塵機5は、沈砂池2の上流側部分に、支持壁10を挟んで池幅方向に2つ並んで設けられている。これら2つの除塵機5、5は同一の構成を有する。除塵機5は、沈砂池2に流れ込んできた汚水に混入している混入物(し渣)を除去するためのものである。
図2の上側に示されている一方の除塵機5は、左側壁Waと支持壁10によって支持されており、
図2の下側に示されている他方の除塵機5は、右側壁Wbと支持壁10によって支持されている。池幅方向に並んで2つの除塵機5、5を配置することで、各除塵機5の池幅方向の幅を短くすることができる。除塵機5の池幅方向の幅を短くすることで、除塵機5の強度が高まり、大雨などで沈砂池2に流入する汚水の量及び流速が増大しても、除塵機5が破損してしまうことを抑制できる。
【0035】
図3は、
図2に示す沈砂池のA-A断面図である。
図3では柱および揚砂ポンプを図示省略している。また、汚水の流れ方向を直線の矢印で示している。なお、沈砂池の水面WLは、流入する雨や下水の量等によって変動するが、雨や下水が想定されている量である通常時には、
図3に示すように、沈砂池2の高さ方向の中程度の高さに位置している。
【0036】
図3に示すように、除塵機5は、無端チェーン51と、その無端チェーン51に間隔をあけて取り付けられた複数のレーキ52と、濾過スクリーン53とを有する。無端チェーン51は、沈砂池2の幅方向両側それぞれに斜めに起立した状態で設けられたものであり、地上側スプロケット511と、池底側スプロケット512に巻きかけられている。無端チェーン51の上側部分および地上側スプロケット511は、沈砂池2の地上部分に配置されている。水面WLが通常状態にある時に、図示しないモータによって円弧状の矢印Rで示した回転方向に地上側スプロケット511を駆動すると、無端チェーン51が循環し、レーキ52は水中を出入りする。
図3には通常状態の水面WLが示されている。濾過スクリーン53は、無端チェーン51の下流側に配置されている。この濾過スクリーン53は、上下方向に延びるバーが池幅方向に所定間隔(例えば、25mm~75mm)で並べられたものであり、所定間隔以上の大きさの混入物の通過を遮る。濾過スクリーン53で遮られた混入物は、レーキ52によって掻き揚げられ、掻き揚げられた混入物は、地上側で不図示のベルトコンベア等の運搬手段に載せられる。なお、池底側スプロケット512および濾過スクリーン53の下端は、池底面7および主トラフ8よりも上流側に配置されている。一方、地上側スプロケット511および濾過スクリーン53の上端は、池底面7および主トラフ8の上流側部分の上方に位置している。すなわち、無端チェーン51および濾過スクリーン53の上側部分は、池底面7および主トラフ8と長手方向において重複している。除塵機5の一部を池底面7および主トラフ8と長手方向において重複させて配置することで、沈砂池2の長手方向の長さを短くすることができる。
【0037】
集砂手段9は、沈砂池2の左側壁Wa側に配置された第1ノズルヘッダ9a、第2ノズルヘッダ9b、第3ノズルヘッダ9cと、右側壁Wb側に配置された第4ノズルヘッダ9d、第5ノズルヘッダ9e、第6ノズルヘッダ9fとを有する(
図2参照)。
図3では左側壁Wa側の集砂手段9が示されている。右側壁Wb側の集砂手段9も同様の構成をしているため、右側壁Wb側の集砂手段9は説明を省略する。第1ノズルヘッダ9a、第2ノズルヘッダ9b、第3ノズルヘッダ9cそれぞれは、10個の集砂ノズル91と、供給管92と、母管93とを有する。供給管92は、左側壁Waに対向して配置され、長手方向に延在している。母管93は、沈砂池2の上方に伸びた単管931と、単管931の池底側端部に接続された分岐管932とを有する。この単管931および分岐管932は、図示しない固定金具によって左側壁Waに固定されている。
【0038】
図4は、
図3のB部を拡大して示す拡大図である。この
図4では、汚水の流れ方向を直線の矢印で示している。
図4には側壁も示されている。また、
図4は、6つのノズルヘッダのうちの一つを示しているが、他の5つのノズルヘッダも
図4で示したノズルヘッダと同様の構成をしている。
【0039】
図4に示すように、分岐管932は、単管931にフランジ継手933によって接続されている。分岐管932は、単管931に接続された部分の下方側で2又に分岐しており、分岐した先の分岐部分は、沈砂池2の長手方向にそれぞれ延在している。分岐部分の先端部分には、それぞれラップジョイント934が固定された供給管92が接続されている。本実施形態では、1本の母管93に対し、分岐管932よりも上流側に配置された上流側供給管921と、分岐管932よりも下流側に配置された下流側供給管923と、上流側供給管921と下流側供給管923の間に配置された中間供給管922の、3本の供給管92が設けられている。上流側供給管921および下流側供給管923の、分岐管932と接続された一方の端部とは反対側の他方の端部は、蓋97によって閉塞されている。中間供給管922は、その両端が分岐管932と接続されている。
【0040】
上流側供給管921および下流側供給管923には、それぞれ3個の集砂ノズル91が等間隔に固定されている。また、中間供給管922には、4個の集砂ノズル91が等間隔に固定されている。これらの合計10個の集砂ノズル91が配置されている間隔は、全て等間隔に配置されている。また、第1ノズルヘッダ9a(
図3参照)の最も下流側の集砂ノズル91と、第2ノズルヘッダ9bの最も上流側の集砂ノズル91の間隔も、上述の10個の集砂ノズルの間隔と同一の間隔である。すなわち、集砂ノズル91は、沈砂池2の長手方向において全て等間隔に配置されている。なお、各供給管92に配置される集砂ノズル91の数は、供給管92の長さ等の要素に応じて適宜決定すればよい。各集砂ノズル91の先端には吐出口911が形成されている。沈砂池2の水位を所定値よりも低下させて吐出口911および池底面7に堆積している砂を大気中に露出させた状態で、集砂ノズル91の吐出口911から大気中に流体を吐出することで、池底面7に堆積している砂を主トラフ8に集めることができる。
【0041】
供給管92のうち、突出壁部Wa1に対向した部分と凹み壁部Wa2に対向した部分では、供給管92から左側壁Waまでの間隔が異なっている。すなわち、供給管92には、左側壁Waから池幅方向に第1間隔をあけて延在する第1領域92aと、左側壁Waから池幅方向に第2間隔をあけて延在する第2領域92bとが存在する。また、本実施形態の沈砂池2には、突出壁部Wa1と凹み壁部Wa2とを繋ぐ部分に傾斜壁部Wa3が形成されていることから、供給管92には、前記第1領域と前記第2領域をつなぐ領域である第3領域92cが存在する。各集砂ノズル91およびその吐出口911は、左側壁Waに対向して配置され、長手方向に並んで供給管92に固定されている。
図4に示した第2ノズルヘッダ9bでは、上流側供給管921は、突出壁部Wa1に対向して配置されている。すなわち、上流側供給管921がある領域は、第1領域92aに相当する。一方、中間供給管922のうち、最も上流側供給管921に近い部分にある吐出口911が配置された領域は、傾斜壁部Wa3に対向して配置されている。すなわち、その領域は第3領域92cに相当する。また、中間供給管922のうち、下流側供給管923側から3個の吐出口911が配置された領域と、下流側供給管923のうち、中間供給管922側から2個の吐出口911が配置された領域は、凹み壁部Wa2に対向して配置されている。すなわち、それらの領域は第2領域92bに相当する。また、下流側供給管923のうち、最も下流側にある吐出口911が配置された領域は、傾斜壁部Wa3に対向して配置されている。すなわち、その領域は第3領域92cに相当する。これらの各領域の間には、ラップジョイント934を用いた方向変更手段が設けられている。
【0042】
池底面7は、その全面が厚さ10mmの超高分子量ポリエチレンの樹脂プレート73によって構成されている。この樹脂プレート73を構成する超高分子量ポリエチレンは、エス・ケー・エスエンジニアリング社製のハイモラーである。ただし、超高分子量ポリエチレンの代わりに、例えばポリアセタール樹脂のデルリン(登録商標)や、フッ素系樹脂のテフロン(登録商標)を用いてもよい。池底面7を樹脂プレート73によって形成することで、コンクリートによって池底面7を形成した場合と比較して池底面7の平滑度が高まる上に砂に対する摩擦係数も低下するので、池底面7の上に堆積した砂が流れやすくなる。ただし、樹脂プレート73を設けずに、コンクリートによって池底面7を形成してもよい。コンクリートで池底面を形成することで、樹脂プレート73分のコストを削減することができる。樹脂プレート73の上には、複数の突条72が配置されている。突条72は、吐出口911の間から主トラフ8に向かう方向に延在している。すなわち、突条72の池幅方向外側の端部は側壁W(
図2参照)の近傍に位置し、突条72の池幅方向中央側の端部は主トラフ8を構成するU字状のトラフ形成体の縁の真上まで達している。この突条72が形成されている部分は、樹脂プレート73の上面が突条72によって覆われてしまうので、突条72が形成されている部分の樹脂プレート73は省略してもよい。すなわち、樹脂プレート73は、隣り合う突条72の間を覆うものであればよい。
【0043】
図4に示すように、突条72は、隣り合う吐出口911の間に1本づつ設けられている。また、上述したように、突条72は、長手方向に等間隔に複数配置されており、隣り合う突条72の間は池底面7が露出している。この突条72により、各吐出口911から大気中に吐出される流体が、突条72を超えて長手方向に広がってしまうこを防止できる。すなわち、隣り合う突条72によって仕切られることで、各吐出口911から吐出される流体の流下範囲になる流下領域が池底面7に複数形成されている。この流下領域は、小エリアの一例に相当する。突条72は、それぞれ等間隔に配置されているので、これらの流下領域はほぼ同一面積に形成されている。
【0044】
図5(a)は、突条を示す平面図であり、
図5(b)は、突条を示す側面図である。
図5(b)では樹脂プレートも示されている。なお、沈砂池に設置された状態では、突条は池幅方向と長手方向それぞれに若干傾斜して配置されるが、
図5では傾斜していない状態を示している。突条が沈砂池に設置された状態では、
図5(a)では、池幅方向は概略上下方向になる。また、同様の状態で、
図5(b)では、池幅方向は概略紙面に直交する方向になる。
【0045】
図5(a)および
図5(b)に示すように、突条72は、取付部721と、取付部721の一端から上方に突出した突出部722と、突出部722の上端に配置された丸棒723を有し、全体として断面がL字状をした長尺部材により構成されている。取付部721の下面は、樹脂プレート73への取付面になる。取付部721と突出部722は、厚さ4mmのステンレス製の鋼板を折り曲げて形成される。丸棒723は、突出部722の突出端に溶接された直径10mmのステンレス製の棒である。この丸棒723を設けることで、沈砂池2のメンテナンス時などに突出部722の突出端で作業員が手等を切創してしまうことを防止できる。突条72の高さ、つまり取付部721の下面から丸棒の上端までの距離は200mmである。ただし、突条72の高さは、100mm以上200mm以下であれば異なる高さであってもよい。100mm未満では、各吐出口911(
図4参照)から吐出される流体が、砂に到達した際に砂とともに突条72を乗り越えて隣の流下領域に移動してしまう可能性が高まる。一方、突条72を高くしすぎると、汚水の下流へ向かう流れを阻害して汚水が下流へ流れにくくなってしまう虞がある。さらに、突出高さが高いほど突条72に加わるモーメントが大きくなり突条72が倒れやすくなる上に、材料費が高価になってしまう。そして、200mmを超えて突条72を高くしても、流体や砂が隣の流下領域に移動することを抑制する機能は200mmの場合とほとんど変わらないため、突条は200mm以下の高さにすることが望ましい。取付部721の池幅方向の端部近傍には、取付部721を上下方向に貫通した貫通孔721aが形成されている。また、取付部721の池幅方向中央位置であって図示が省略されている部分にも貫通孔が1つ形成されている。突条72が池底面7に設置された状態において、樹脂プレート73の、貫通孔721aと対向する位置にはプレート貫通孔73aが形成されている。貫通孔721aおよびプレート貫通孔73aを通して、取付部721の上方から樹脂プレート73の下側にあるコンクリートまで不図示のケミカルアンカーを挿入することで、突条72および樹脂プレート73は下側のコンクリートに固定される。なお、突条72および樹脂プレート73は、例えば接着剤またはボルト等、ケミカルアンカー以外の固定部材で下側のコンクリートに固定してもよい。また、突条72と樹脂プレート73とを、それぞれ異なる固定手段を用いて固定してもよい。複数の突条72が池底面7に設置されると、それぞれの突条72が池底面7から上方に向かって突出し、これにより池底面7に上述した複数の流下領域が形成される。
【0046】
図6(a)は、ラップジョイントが設けられた一方の管が他方の管に結合された状態を説明するための断面図であり、
図6(b)は、ボルトを緩めることで、ラップジョイントが設けられた一方の管が他方の管に対してその軸方向を中心として回転自在になった状態を説明するための断面図である。この
図6では、一方の管として供給管を示し、他方の管として分岐管を示しているが、供給管どうしをラップジョイントを設けて接続する場合も同様の構成である。
【0047】
図6(a)および
図6(b)に示すように、供給管92の端部にはラップジョイント934が溶接されている。このラップジョイント934は、供給管92に溶接された小径部934aと分岐管932側に配置された大径部934bとから構成されている。小径部934aの外径は、供給管92の外径と同一径に形成されている。ラップジョイント934の外周には、フリーフランジ935が配置されている。このフリーフランジ935は、内径がラップジョイント934の外径よりもほんの少しだけ大きいリング状をしている。フリーフランジ935には、ボルト95が挿入されるフリーフランジ貫通孔935aが周方向に均等に8つ形成されている。フリーフランジ935は、ラップジョイント934に対し回動自在かつ軸方向に移動自在にラップジョイント934と結合している。分岐管932先端の外径部分には、固定フランジ9322が溶接されている。この固定フランジ9322には、フリーフランジ935と同様にボルト95が挿入される固定フランジ貫通孔9322aが8つ形成されている。ラップジョイント934と固定フランジ9322の間にはリング状のパッキン94が配置されている。このパッキン94は、供給管92と分岐管932とが接合された状態において、供給管92と分岐管932内部を通過する流体が漏洩することを防止するためのものである。
【0048】
ボルト95は、固定フランジ9322の固定フランジ貫通孔9322aとフリーフランジ935のフリーフランジ貫通孔935aに挿入されている。ボルト95とナット96とを締め付けた状態では、
図6(a)に示された供給管92のように、ラップジョイント934がパッキン94とともに固定フランジ9322とフリーフランジ935によって挟まれることで、分岐管932に対し供給管92が固定される。一方、ボルト95を緩めると、
図6(b)に示された供給管92のように、分岐管932に対し供給管92がその軸線方向を中心として回動可能になる。すなわち、本実施形態では、母管93(
図3参照)と供給管92とをラップジョイント934とフリーフランジ935を利用して接続しているので、供給管92は、その軸線方向を中心として、母管93に対して無段階に回動可能に構成されている。なお、ラップジョイント934の代わりにルーズフランジ等の他の遊合形フランジを用いても、母管93に対して供給管92を無段階に回動可能に接続することができる。
【0049】
また、
図4に示すように、第1領域92aに配置された吐出口911と第3領域92cに配置された吐出口911の間、および第2領域92bに配置された吐出口911と第3領域92cに配置された吐出口911の間にはそれぞれラップジョイント934が配置されている。従って、第1領域92aと第2領域92bと第3領域92cそれぞれに配置された吐出口911は互いに独立して供給管92の軸線方向を中心として無段階に回転可能に構成されている。この構成により、供給管92から左側壁Waまでの間隔に応じて、各領域の吐出口911における流体の吐出方向をそれぞれ設定することができる。この第1領域92aに配置された吐出口911と第3領域92cに配置された吐出口911の間に配置されたラップジョイント934は、第1方向変更手段の一例に相当する。また、第2領域92bに配置された吐出口911と第3領域92cに配置された吐出口911の間に配置されたラップジョイント934は、第2方向変更手段の一例に相当する。また、
図4に示した供給管92のうち、第1領域92aでは、第1領域92a内に並んだ3個の吐出口911における流体の吐出方向ををまとめて変更できるので、第1領域92aにおける吐出方向が容易に調整できる。
図4に示した供給管92のうち、第2領域92bでは、中間供給管922に配置された3個の吐出口911をまとめて変更でき、下流側供給管923に配置された2個の吐出口911をまとめて変更できるので、第2領域92bにおける吐出方向が容易に調整できる。すなわち、複数個の吐出口911の吐出方向をまとめて変更できるように構成した場合のラップジョイント934は、一括方向変更手段の一例に相当する。なお、第3領域92cの長手方向が短く第3領域92c内に吐出口911が存在しない場合や、第3領域92cが存在しない場合には、第1領域92aと第2領域92bの間にラップジョイント934を配置すればよい。
【0050】
図7(a)は、
図4のC-C断面図である。この
図7(a)では側壁、池底面、および突条も示されている。
【0051】
上述した様に、左側壁Waは、突出壁部Wa1と、凹み壁部Wa2とを有している。
図7(a)では、突出壁部Wa1は実線で示されており、凹み壁部Wa2は二点鎖線で示されている。
図7(a)に実線で示した吐出口911では、流体の吐出方向を供給管92の中心から真下に向かう方向(垂直方向)よりも池幅方向中央側に向かう方向に向けている。この吐出口911では、池底面7に対して流体を吐出する角度θを約50度としている。角度θを約50度にすることで、池底面7に到達した流体を主トラフ8に向かう方向と突出壁部Wa1に向かう方向とに分流させることができる。この角度θは、吐出した流体が主トラフ8に向かう方向と突出壁部Wa1に向かう方向とに分流する角度であればよく、具体的には池底面7に対して30度以上60度以下であればよい。この角度に設定することで、突出壁部Wa1のように供給管92と左側壁Waとが近い場合、すなわち第1領域92aでは、供給管92と左側壁Waの間の池底面7の上に堆積した砂にも分流した流体が到達し、その砂を洗い流すことができる。また、供給管92の垂直方向よりも池幅方向中央の主トラフ8側に流体の吐出方向が向いているので、左側壁Wa側に流れる流体の勢いよりも主トラフ8側に流れる流体の勢いが強くなる。この流体の勢いにより、供給管92と主トラフ8の間の池底面7の上に堆積した砂を効率的に主トラフ8に向けて流すことができる。
【0052】
一方、
図7(a)に二点鎖線で示した凹み壁部Wa2部分では、供給管92と左側壁Waとが離間している。このため、実線で示した吐出口911の吐出方向では、吐出した流体が分流しても凹み壁部Wa2近傍まで到達しないか、到達したとしても極僅かな量の流体しか到達しない。凹み壁部Wa2近傍に到達する流体の量が少ないと、供給管92と凹み壁部Wa2の間に堆積した砂のうち、凹み壁部Wa2近傍にある砂を十分に洗い流すことができない。
【0053】
本実施形態では、供給管92をその軸線方向を中心として回動可能に構成しているので、集砂ノズル91からの流体の吐出方向を自在に変更できる。
図7(a)には、凹み壁部Wa2の位置に対応して吐出口911から吐出される流体の吐出方向を調整した集砂ノズル91が二点鎖線で示されている。この二点鎖線で示された集砂ノズル91では、吐出口911から吐出される流体の吐出方向を、供給管92の中心から真下に向かう方向(垂直方向)よりも池幅方向外側に向けている。供給管92から左側壁Waまでの距離に応じて、吐出口911から吐出される流体の吐出方向を調整することで、第2領域92bのように供給管92と左側壁Waとが離間していても、左側壁Wa近傍に堆積している砂を十分に洗い流すことができる。なお、本実施形態では、母管93と供給管92または供給管92どうしをラップジョイント934とフリーフランジ935を利用して接続しているので、接続された供給管92をその軸線を中心として無段階に回転させることができる。無段階に回転できるので、突出壁部Wa1と凹み壁部Wa2の間にある傾斜壁部Wa3(
図2参照)に対向した位置にある供給管92(第3領域92c)では、
図7(a)に実線で示した集砂ノズル91の吐出方向と二点鎖線で示した集砂ノズル91の吐出方向の中間方向に流体の吐出方向を設定することもできる。
【0054】
また、本実施形態では、母管93に分岐管932を備えているので、1本の母管93に対して、上流側供給管921と中間供給管922と下流側供給管923の合計3本の供給管92が沈砂池2の長手方向に並んで接続されている。これに対し、分岐管932が無く、単管931に供給管92を接続する場合は、1本の母管93に対して沈砂池2の長手方向には多くても2本の供給管92しか接続できない。すなわち、母管93の先端から沈砂池2の上流側に伸びた供給管92と下流側にお伸びた供給管92の2本になる。吐出口911から吐出される流体の吐出方向は、各供給管92毎に設定できる。従って、分岐管932がない場合と比較して、分岐管932を設けた場合は、吐出口911から吐出される流体の吐出方向を、沈砂池2の長手方向において多くの箇所で調整できるので、側壁Wの形状により柔軟に対応することが可能になる。
【0055】
図7(a)に示すように、突条72の池幅方向外側の端部は、側壁Wに近接した位置にある。つまり、突条72と側壁Wの間には少しだけ隙間が開いている。この隙間がない場合、突条72と側壁Wとで形成される角部付近では、吐出口911から吐出された流体の流れが弱まってしまうので、その角部付近に堆積した砂を洗い流すことができなくなってしまう。本実施形態では、突条72と側壁Wの間に隙間が開いているので、吐出口911から吐出された流体のほんの一部がその隙間から隣の流下領域に移動することができ、その移動の際に角部付近に堆積した砂を隣の流下領域に洗い流すことができる。なお、側壁Wから突条72の端部の隙間をある程度広げても構わない。しかし、側壁Wと突条72の隙間を大きくしすぎると、各吐出口911から吐出された流体が隣の流下領域に移動しやすくなり、流下領域ごとの流体の流下量のばらつきが大きくなる恐れがあるので、隙間は一定値以下にすることが望ましい。
【0056】
図7(b)は、沈砂池の上流側端部近傍の底面と、集砂ピット近傍の底面とを示した
図7(a)と同様の断面図である。この
図7(b)では側壁および池底面も示されている。また、この
図7(b)では樹脂プレートは省略している。
【0057】
上述したように、池底面7は、集砂ピット6側端部が最も深くなるように集砂ピット6側に向かって下方に約1度傾斜している(
図3参照)。このため、沈砂池2の上流側端部近傍の池底面7よりも、集砂ピット6近傍の方が低い位置に池底面7が存在している。
図7(b)では、沈砂池2の上流側端部近傍の池底面7は実線で示されており、集砂ピット6近傍の池底面7は二点鎖線で示されている。同図に示されているように、同一の位置にある吐出口911から流体を吐出したとしても、沈砂池2の上流側端部と集砂ピット6近傍では、池底面7の高さ方向の位置が異なるので、吐出した流体の池底面7への到達点に距離Yの違いが発生してしまう。特に長手方向の長さが長い沈砂池2では、距離Yが長くなってしまい、沈砂池2の上流側端部と集砂ピット6近傍の一方に最適な吐出方向でも他方には非効率的な吐出方向になってしまうことがある。本実施形態では、吐出口911からの流体の吐出方向を変更することができるので、池底面7の深さ(供給管92から池底面7まで高さ)に対応させて最適な吐出方向に流体を吐出することができる。
【0058】
図7(c)は、集砂ノズルによる吐出方向の変更を説明するための、
図6(a)と同様の断面図である。この
図7(c)では側壁および池底面も示されている。また、この
図7(c)では樹脂プレートは省略している。
【0059】
図6(c)に示すように、集砂ノズル91は、中間部分で屈曲しており実線で示した状態では、長手方向に見て逆くの字状に形成されている。逆くの字状に形成されているので、実線で示した集砂ノズル91を、供給管92との取付部分の軸線Lを中心にして180度回転させると、二点鎖線で示した様に、流体の吐出方向を池幅方向中央側から池幅方向外側に変更することができる。集砂ノズル91を逆くの字状に形成し、集砂ノズル91と供給管92との接続部分を回転可能に構成することで、吐出口911毎に流体の吐出方向を変更することが可能になる。すなわち、本実施形態における集砂ノズル91の形状および集砂ノズル91が供給管92に対して回転可能な構成が、個別方向変更手段の一例に相当する。
【0060】
【0061】
図8に示すように、給水ポンプ33は、ポンプ井3の水を、攪拌ノズル62、ピット用集砂ノズル63、上流トラフ用ノズル83、下流トラフ用ノズル84、および集砂手段9に選択的に供給する。給水ポンプ33に接続された給水管34には、上述の各ノズルおよび集砂手段9側に流体を供給するか否かを切り替えるための供給切替弁Vaと、給水ポンプで吸い上げた流体をポンプ井3に戻すか否かを切り替えるためのリリース切替弁Vbとが設けられている。供給切替弁Vaと攪拌ノズル62の間の管路には、攪拌ノズル62に流体を供給するか否かを切り替える攪拌切替弁Vcが設けられている。供給切替弁Vaとピット用集砂ノズル63の間の管路には、ピット用集砂ノズル63に流体を供給するか否かを切り替えるピット集砂切替弁Vdが設けられている。供給切替弁Vaと上流トラフ用ノズル83の間の管路には、上流トラフ用ノズル83に流体を供給するか否かを切り替える上流トラフ切替弁Veが設けられている。供給切替弁Vaと下流トラフ用ノズル84の間の管路には、下流トラフ用ノズル84に流体を供給するか否かを切り替える下流トラフ切替弁Vfが設けられている。また、供給切替弁Vaと集砂手段9の各ノズルヘッダ9a、9b、9c、9d、9e、9fの間の各管路には、各ノズルヘッダ9a、9b、9c、9d、9e、9fに流体を供給するか否かを切り替える集砂切替弁Vg1、Vg2、Vg3、Vg4、Vg5、Vg6がそれぞれ設けられている。これらの切替弁は、電磁弁で構成されており、図示しない制御装置によって弁の開閉が制御される。
【0062】
図9は、沈砂池の水位と水位センサを示す説明図である。
【0063】
図9に示すように、に示すように、沈砂池2の集砂ピット6には水位センサ99が配置されている。この水位センサ99は、沈砂池2の水位が集砂ピット6の上端6cよりも上にある第1高水位HHWLと、水位が集砂ピット6の上端6cよりも下側で主トラフ8の下端8aよりも上にある第2高水位HWLと、水位が集砂ピット6内の下方にある低水位LWLと、第2高水位HWLと低水位LWLとの間の中間水位MWLと、低水位LWLよりさらに低いインターロック水位LLWLになったことをそれぞれ検知して出力するものである。
【0064】
上述の構成を有する汚水処理設備1の動作について
図1および
図2等を参照して説明する。沈砂池2の池底部にある程度砂が堆積した所定の時期に、汚水処理設備1は堆積した砂の除去動作を行う。この時期は、例えば月に一回など定期的でもよく、沈砂池2に流入または沈砂池2から排出された汚水の合計流量が一定量になったときでもよい。砂の除去動作では、先ず
図1に示したダム装置4の流入ゲート42を駆動して流入口411を閉塞し、汚水の沈砂池2への流入を堰き止める。次に、揚水ポンプ31を駆動して沈砂池2の水位を低下させる。ポンプ井3の水位が所定値まで下がったら揚水ポンプ31を停止する。沈砂池2の水位が第2高水位HWL(
図9参照)まで低下したら、給水ポンプ33を駆動し、
図2に示す攪拌ノズル62から流体を吐出させ、揚砂ポンプ61を駆動する。以降、この揚砂ポンプ61は、水位センサ99からの低水位LWL(
図9参照)を示す出力に応じて駆動を停止し、第2高水位HWL(
図9参照)を示す出力に応じて駆動を再開する制御が自動で実行される。一方、
図1に示す給水ポンプ33は、砂の除去動作が終わるまで駆動が継続される。集砂ピット6に流された砂は揚砂ポンプ61が駆動しているときに、揚砂ポンプ61によって沈砂池2外の不図示の沈砂分離機に運ばれる。なお、水位センサ99が第1高水位HHWLまたはインターロック水位LLWL(
図9参照)になったことを検知した場合、何らかの異常が発生したと考えられるため、アラートを表示して汚水処理設備1は砂の除去動作を停止する。
【0065】
その後、
図2に示す攪拌ノズル62と上流トラフ用ノズル83から一定時間流体を吐出させて上流側主トラフ81に堆積した砂を集砂ピット6に流す。一定時間経過後、攪拌ノズル62と上流トラフ用ノズル83からの流体の吐出を停止し、第5ノズルヘッダ9eに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させる。この吐出により、第5ノズルヘッダ9eが配置されている付近の右側壁Wbから上流側主トラフ81の間の池底面7の上に堆積した砂を上流側主トラフ81に洗い流すことができる。一定時間が経過したら、第5ノズルヘッダ9eに設けられた吐出口911からの流体の吐出を停止する。そして、攪拌ノズル62と上流トラフ用ノズル83から一定時間流体を吐出させて上流側主トラフ81に流された砂を集砂ピット6に送る。その後、攪拌ノズル62と上流トラフ用ノズル83からの流体の吐出を停止し、第2ノズルヘッダ9bに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させる。本実施形態では、左側壁Waのうち、凹み壁部Wa2および傾斜壁部Wa3の近傍にある吐出口911は、供給管92から左側壁Waまでの距離に応じて左側壁Waにある程度の流体が到達するように流体の吐出方向が調整されている。従って、第2ノズルヘッダ9bが配置されている付近の左側壁Waから上流側主トラフ81の間の池底面7の上に堆積した全ての砂を上流側主トラフ81まで洗い流すことができる。一定時間が経過したら、第2ノズルヘッダ9bに設けられた吐出口911からの流体の吐出を停止する。そして、攪拌ノズル62と上流トラフ用ノズル83から一定時間流体を吐出させて上流側主トラフ81に流された砂を集砂ピット6に送る。その後、上述の動作と同様に、第4ノズルヘッダ9d、攪拌ノズル62と上流トラフ用ノズル83、第1ノズルヘッダ9a、攪拌ノズル62と上流トラフ用ノズル83の順に流体を吐出させることで、集砂ピット6より上流側の池底部に堆積した砂は全て沈砂池2の外部に搬出される。なお、各ノズルヘッダ9a、9b、9d、9eから流体を吐出する順番は任意の順で構わない。しかし、集砂ピット6から遠い側に堆積した砂を先に流すと、流そうとする砂とともに集砂ピット6に近い側に堆積している砂が主トラフ8に流れて主トラフ内に砂が溜まってしまい、主トラフ8内の砂を集砂ピット6に送ることが困難になってしまうことがある。このため、集砂ピット6に近い側の第2ノズルヘッダ9bおよび第5ノズルヘッダ9eから流体を吐出した後に、集砂ピット6から遠い側の第1ノズルヘッダ9aおよび第4ノズルヘッダ9dから流体を吐出することが望ましい。
【0066】
上述の動作により上流側に堆積した砂を取り除いた後、攪拌ノズル62と下流トラフ用ノズル84から一定時間流体を吐出させて下流側主トラフ82に堆積した砂を集砂ピット6に流す。その後、攪拌ノズル62と下流トラフ用ノズル84からの流体の吐出を停止し、第6ノズルヘッダ9fに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させる。一定時間が経過したら、第6ノズルヘッダ9fに設けられた吐出口911からの流体の吐出を停止する。そして、攪拌ノズル62と下流側主トラフ82から一定時間流体を吐出させて下流側主トラフ82に流された砂を集砂ピット6に送る。次いで、上述の動作と同様に、第3ノズルヘッダ9c、攪拌ノズル62と下流トラフ用ノズル84の順に流体を吐出させることで、集砂ピット6より下流側の池底部に堆積した砂は全て沈砂池2の外部に搬出される。最後に、ピット用集砂ノズル63から流体を吐出することで、集砂ピット6の傾斜面6bの上に堆積した砂を最深部6aに流す。これらの動作が全て完了したら、給水ポンプ33を停止させ、所定時間経過後に揚砂ポンプ61も停止させる。この砂の除去動作において、集砂手段9の各ノズルヘッダ9a、9b、9c、9d、9e、9fに設けられた吐出口911から流体を吐出した際に、吐出した流体が対応する流下領域を流れ、隣の流下領域に流出してしまうことを突条72によって防止できるので堆積した砂を効率的に主トラフ8に流すことができる。
【0067】
なお、本実施形態では、上述の砂の除去動作を実行している時は、給水ポンプ33がくみ上げる流体の量よりも揚砂ポンプ61がくみ上げる流体の量の方が少し多くなるように設定されている。このため、除去動作を実行している間に揚砂ポンプ61は停止と再開を複数回繰り返すことになる。しかし、揚砂ポンプ61は駆動と停止を繰り返すと、駆動開始時の突入電流によりポンプ寿命が低下してしまう。この対策として、給水ポンプ33におけるくみ上げ能力と揚砂ポンプ61における流体のくみ上げ能力を近づけることで砂の除去動作における水位の変化を最小限にしてもよい。また、水位センサ99が中間水位MWLになったことを検知したら、その時点で流体を吐出しているノズルに加え、他のノズルから追加で流体を吐出させてもよい。流体を吐出するノズルを増やすことで、流体の流れに対する負荷(絞り抵抗)が減るので、給水ポンプ33が吸い上げる流体が増加し、結果として多くの流体を沈砂池2に供給することができる。これにより低水位LWLになりにくくなるので、揚砂ポンプ61が停止と再開を実行する回数を減らすことができる。ここで、他のノズルは、その次に吐出する予定のノズルヘッダに設けられた集砂ノズル91であることが望ましい。次に吐出する予定のノズルヘッダから流体を吐出させることで、次に洗い流す底面にある砂を予備的に流しておくことができるので、砂の残留をより抑制することができる。また、追加で吐出させる流体は、他の設備に蓄えられた流体であってもよい。さらに、低水位LWLになっても揚砂ポンプ61を停止しないで、その停止の代わりに給水ポンプ33がくみ上げた流体に加えて他の設備に蓄えられた流体を沈砂池2に供給するように構成してもよい。この様に構成した場合、他の設備に蓄えられた流体は、第2高水位HWLになったら沈砂池2への供給を停止すればよい。揚砂ポンプ61が停止と駆動を繰り返す回数を減らすことで、揚砂ポンプ61の劣化を抑制して寿命を延ばすことができる。
【0068】
次いで集砂手段9の変形例について説明する。以下に説明する変形例においては、
図1~
図9に示した実施形態との相違点を中心に説明し、
図1~
図9に示した実施形態における構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略する。
【0069】
図10(a)は、
図7に示す供給管と集砂ノズルの第1変形例を示す図であり、
図10(b)は、
図7に示す供給管と集砂ノズルの第2変形例を示す図である。
【0070】
第1の変形例は、供給管92にラップジョイント934が配置されておらず、供給管92と分岐管932とがフランジ結合されている点と、集砂ノズル91に球継手912を設けている点が
図7(a)に示した例と異なる。
図10(a)では、突出壁部Wa1に対応した集砂ノズル91が実線で示されており、凹み壁部Wa2に対応した集砂ノズル91が二点鎖線で示されている。この変形例では、供給管92と各吐出口911の間に球継手912が設けられている。この球継手912により、供給管92の軸線を中心とした回転方向だけでなく、それ以外の様々な方向にも流体の吐出方向を無段階に変更できる。従って、吐出口911毎に吐出方向のきめ細かい調整が可能になる。なお、供給管92にラップジョイント934を配置し、さらに集砂ノズル91に球継手912を設けてもよい。この場合、ラップジョイント934は、一括変更手段の一例に相当し、球継手912は、個別方向変更手段の一例に相当する。
【0071】
第2の変形例では、供給管92にラップジョイント934が配置されておらず、供給管92と分岐管932とがフランジ結合されている点と、供給管92の周方向に集砂ノズル91の装着部924が複数形成されている点が
図7(a)に示した例と異なる。
図10(b)では、突出壁部Wa1に対応した集砂ノズル91が実線で示されており、凹み壁部Wa2に対応した集砂ノズル91が二点鎖線で示されている。この変形例では、集砂ノズル91の装着部924が供給管92の周方向に6か所形成されている。これにより、供給管92を分岐管932に固定した後に、6か所の装着部924のうちから任意の装着部924に集砂ノズル91を装着できる。なお、集砂ノズル91装着前は、全ての装着部924に栓部材が取り付けられている。集砂ノズル91を装着する場合は、その栓部材を取り除いてから集砂ノズル91を装着する。なお、供給管92にラップジョイント934を配置し、さらに供給管92に装着部924を形成してもよい。この場合、ラップジョイント934は、一括変更手段の一例に相当し、装着部924は、個別方向変更手段の一例に相当する。なお、この変形例では、装着部924を周方向に6か所形成しているが、この装着部924は、2か所以上5か所以下でもよく、7か所以上でもよい。
【0072】
本実施形態またはその変形例によれば、池底面7から上方に突出した突条72によって流下領域を形成しているので、池底面7を形成してからでも、簡単な作業で池底面7を複数の流下領域に分割できる。これによって、複数の流下領域に分割した沈砂池2を安価に提供できる。また、吐出口911から吐出される流体の吐出方向を変更可能にしているので、池底面7に堆積した砂を残留させることなく流体で流すことができる。また、左側壁Waまたは右側壁Wbが直線状に形成されていない沈砂池でも、直線状の供給管92を用いることができるので、沈砂池2を安価に提供できる。加えて、沈砂池2の設計時や供給管92の作成時に側壁Wの形状が不明でも、沈砂池2を施工する際に吐出方向を調整することができるので、様々な形状の沈砂池2に柔軟に対応できる。
【0073】
次に、第2の実施形態の沈砂池について説明する。これより後の説明では、これまで説明した構成要素の名称と同じ名称の構成要素には、これまで用いた符号を付して説明し、重複する説明は省略することがある。また、
図1に示したポンプ井、ダム装置、および除塵機の構成の説明は省略する。
【0074】
図11は、第2実施形態の沈砂池を上方から見た平面図である。この
図11では図の左側が上流側になり、図の右側が下流側になる。この
図11では、集砂ノズルが簡略化して示されている。
【0075】
図11に示す沈砂池2は、
図2に示す沈砂池2とは主に集砂手段9によって砂を流す方向が沈砂池2の長手方向である点で異なる。この沈砂池2の長手方向の中央には池幅方向に延在した集砂ピット6が形成されている。この集砂ピット6は、集積部の一例に相当する。集砂ピット6には、揚砂ポンプ61と攪拌ノズル62とピット用集砂ノズル63が配置されている。集砂ピット6の、左側壁Waの近傍には沈砂池2において最も深い最深部6aが形成されている。揚砂ポンプ61は、最深部6aに配置されている。集砂ピット6の底部のうち、右側壁Wb側の端部から最深部6aの間は、最深部6aに向かって徐々に深くなるように傾斜した傾斜面6bが形成されている。攪拌ノズル62は、揚砂ポンプ61の近傍に合計2つ配置されている。この攪拌ノズル62は、最深部6aに集められた砂を撹拌するためのものである。揚砂ポンプ61を駆動している時に攪拌ノズル62の吐出口62aから流体を吐出することで、最深部6aに集まった砂の、揚砂ポンプ61による吸引効率を高めることができる。ピット用集砂ノズル63は、池幅方向中央付近および右側壁Wb付近それぞれに吐出口63aを有している。沈砂池2の水位を所定値よりも低くした状態で、このピット用集砂ノズル63の吐出口63aから流体を吐出することで、傾斜面6bに堆積している砂を最深部6aに集めることができる。右側壁Wbおよび左側壁Waの下端部分には、池底面7に向かって池幅方向中央側に近づくように約45度傾斜した左ハンチWbhおよび右ハンチWahが形成されている。
【0076】
集砂手段9は、集砂ピット6よりも下流側に配置された、第11ノズルヘッダ9g、第12ノズルヘッダ9h、第13ノズルヘッダ9i、第14ノズルヘッダ9j、第15ノズルヘッダ9kと、集砂ピット6よりも上流側に配置された、第16ノズルヘッダ9m、第17ノズルヘッダ9n、第18ノズルヘッダ9p、第19ノズルヘッダ9q、第20ノズルヘッダ9rとを有する。以下の説明では、集砂ピット6よりも下流側に配置された第11~15ノズルヘッダを総称して下流側ノズルヘッダ9g~9kと称し、集砂ピット6よりも上流側に配置された第16~20ノズルヘッダを総称して上流側ノズルヘッダ9m~9rと称する場合がある。また、第11~20ノズルヘッダを総称して、全ノズルヘッダ9g~9rと称する場合がある。下流側ノズルヘッダ9g~9kそれぞれは、池幅方向に並んだ9個の集砂ノズル91と、池幅方向に延在する供給管92と、右側壁Wbに沿って配管された母管93とを有する。また、上流側ノズルヘッダ9m~9rは、9個の集砂ノズル91と、池幅方向に延在する供給管92と、左側壁Waに沿って配管された母管93とを有する。本実施形態における母管93は単管で構成されているため、各ノズルヘッダと母管93との接続は、それぞれ一ヵ所になっている。下流側ノズルヘッダ9g~9kの供給管92は、母管93との接続部分のある右側壁Wbの近傍から左側壁Waの近傍まで延在している。また、上流側ノズルヘッダ9m~9rは、母管93との接続部分のある左側壁Waの近傍から右側壁Wbの近傍まで延在している。各集砂ノズル91は、供給管92の延在方向に並んで配置されている。集砂ノズル91の先端には吐出口911が形成されている。沈砂池2の水位を池底面7よりも低下させた状態で、集砂ノズル91の吐出口911から大気中に流体を吐出することで、池底面7に堆積している砂を集砂ピット6側に洗い流すことができる。また、全ノズルヘッダ9g~9rそれぞれの供給管92は、
図11において二点鎖線で示したヘッダーカバー90で上方が覆われている。ヘッダーカバー90は、右側壁Wbの近傍から左側壁Waの近傍まで延在している。このヘッダーカバー90の構成については後述する。
【0077】
突条72は、集砂ピット6より下流側に配置された、第1突条72a、第2突条72b、第3突条72c、第4突条72d、第5突条72e、第6突条72f、第7突条72g、第8突条72hと、集砂ピット6より上流側に配置された、第9突条72i、第10突条72j、第11突条72k、第12突条72m、第13突条72n、第14突条72p、第15突条72q、第16突条72rとを有する。第1突条72aは、下流側ノズルヘッダ9g~9kそれぞれが有する、最も右側壁Wb側の吐出口群と、下流側ノズルヘッダ9g~9kそれぞれが有する、右側壁Wbから2つ目の吐出口群との間で、沈砂池2の下流端近傍から集砂ピット6まで延在している。なお、ここにいう吐出口群とは、沈砂池2の長手方向に間隔をあけて一列に配置された5つの吐出口911のことをいう(以下、同じ)。同様に、第2突条72bは、右側壁Wbから2つ目と3つ目の吐出口群の間、第3突条72cは、右側壁Wbから3つ目と4つ目の吐出口群の間、第4突条72dは、右側壁Wbから4つ目と5つ目の吐出口群の間、第5突条72eは、右側壁Wbから5つ目と6つ目の吐出口群の間、第6突条72fは、右側壁Wbから6つ目と7つ目の吐出口群の間、第7突条72gは、右側壁Wbから7つ目と8つ目の吐出口群の間、第8突条72hは、右側壁Wbから8つ目と9つ目の吐出口群の間で、沈砂池2の下流端近傍から集砂ピット6まで延在している。また、第9突条72iは、上流側ノズルヘッダ9m~9rそれぞれが有する、最も右側壁Wb側の吐出口群と、上流側ノズルヘッダ9m~9rそれぞれが有する、右側壁Wbから2つ目の吐出口群との間で、沈砂池2の上流端近傍から集砂ピット6まで延在している。同様に、第10突条72jは、右側壁Wbから2つ目と3つ目の吐出口群の間、第11突条72kは、右側壁Wbから3つ目と4つ目の吐出口群の間、第12突条72mは、右側壁Wbから4つ目と5つ目の吐出口群の間、第13突条72nは、右側壁Wbから5つ目と6つ目の吐出口群の間、第14突条72pは、右側壁Wbから6つ目と7つ目の吐出口群の間、第15突条72qは、右側壁Wbから7つ目と8つ目の吐出口群の間、第16突条72rは、右側壁Wbから8つ目と9つ目の吐出口群の間で、沈砂池2の上流端近傍から集砂ピット6まで延在している。すなわち、突条72は、池幅方向に並んだ各集砂ノズル91の吐出口911の間から集砂ピット6に向かう方向に延在している。
【0078】
図12は、
図11に示す沈砂池のD-D断面図である。この
図12では図の右側が下流側になり、図の左側が上流側になる。なお、
図12では、母管は省略している。
【0079】
図12に示すように、沈砂池2の池底面7は、沈砂池2の長手方向中央付近にある集砂ピット6に接続している。また、池底面7は、集砂ピット6に向かうに従って徐々に深くなるように階段状に形成されており、集砂ピット6よりも下流側および上流側に各々4つの段差部7aを有している。また、沈砂池2の最も下流側には、最下流段差部7bが形成されており、沈砂池2の最も上流側には、最上流段差部7cが形成されている。なお、階段状に形成された各段は、それぞれ集砂ピット6に向かうに従って下方に約2度傾斜している。
【0080】
図13は、
図12に示すE部の詳細図である。この
図13は段差部の詳細構造を示している。他の段差部も同様の構造をしているので、他の段差部の説明は省略する。
【0081】
図13に示すように、段差部7aにおける上段の池底面7は、樹脂プレート73の上面と、その樹脂プレート73の最も集砂ピット6(
図12参照)側の端部の上に固定されたヘッダーカバー90の上面によって構成されている。ヘッダーカバー90は、ステンレス製の板を断面がへの字状になるように折り曲げたものであり、一端側が上段の樹脂プレート73よりも集砂ピット6側に突出している。このヘッダーカバー90の突出端縁と下段の樹脂プレート73の上面の高さ位置の相違によって段差7a1が形成されている。ヘッダーカバー90は、不図示のケミカルアンカーにより樹脂プレート73の下側にあるコンクリートに固定されている。なお、例えば接着剤またはボルト等、ケミカルアンカー以外の固定部材で、ヘッダーカバー90を固定してもよい。また、ヘッダーカバー90は、接着剤などで突条72または樹脂プレート73に固定してもよい。ヘッダーカバー90の下方には供給管92が配置されている。逆に言えば、供給管92は上方がヘッダーカバー90によって覆われている。また、集砂ノズル91は、根本部分の上方がヘッダーカバー90によって覆われており、吐出口911を含む先端部分は、ヘッダーカバー90の突出端縁よりも集砂ピット6側に突出している。
【0082】
段差部7aにおける上段の池底面7から上方に突出した突条72と下段の池底面7から上方に突出した突条72の間には、調整板722aが設けられている。この調整板722aは、突条72の一部を構成するものであり、上段の突条72の突出部722(この段落の説明において上段突出部722uと称する)と下段の突条72の突出部722(この段落の説明において下段突出部722dと称する)とをつなげている。調整板722aを設けることで、流体や砂が段差部7aで隣の流下領域に移動してしまうことを防止できる。この調整板722aは上段突出部722uと下段突出部722dそれぞれに溶接されている。なお、調整板722aを設けずに、突条72を沈砂池2の長手方向端部から集砂ピット6まで一体で形成してもよいが、形状が複雑になり高価になってしまうので、上段突出部722uと下段突出部722dの間に調整板722aを設けることが望ましい。丸棒723は、上段突出部722uと調整板722aと下段突出部722dそれぞれの上端に沿って延在している。また、最下流段差部7bおよび最上流段差部7cは、上段の突条72および調整板722aが設けられていない点を除いて、上述した段差部7aと同様の構成をしている。
【0083】
供給管92は、流体を通過させる内部空間を画定する内壁920を有する断面が中空矩形状の管である。なお、この
図13では、供給管92の肉厚を厚く誇張して示している。集砂ノズル91は、吐出口911と反対側の端部が、内壁920によって画定された内部空間と連通した中空円筒状をしており、供給管92の内部を通過した流体を吐出口911から吐出するものである。
【0084】
図14(a)は、供給管と集砂ノズルと母管の一部を示す平面図であり、
図14(b)は、
図14(a)に示す矢印F方向に供給管と集砂ノズルと母管の一部を見たF矢視図である。この
図14では、供給管の肉厚を厚く誇張して示しており、供給管の延在方向の中間部分は省略して示している。
図14では、図の左右方向が池幅方向になる。
【0085】
図14(a)に示すように、供給管92は、母管93との接続部分を一端部分に有しており、他端に向かって延在している。供給管92の一つの面には、集砂ノズル91が取り付けられている。この集砂ノズル91が取り付けられている面は池幅方向に対して傾斜しており、供給管92全体として、他端側に向かうに従って管幅が細くなる先細り管になっている。また、
図14(b)に示すように、供給管92の高さは、その供給管の延在方向全体を通じて同一である。従って、内壁920によって画定された内部空間の断面積は、母管93との接続部分のある一端側から他端側に向かうに従って徐々に小さくなるように構成されている。母管93から流体が供給されると、他端側に向かう流体には管内の移動に際して圧力損失が発生する。上述のように、供給管92を先細り管に構成することで、損失が発生した分の圧力を補い、供給管92内を通る流体の圧力をほぼ均一にすることができる。そして、供給管92内の流体の圧力を均一にすることで、集砂ノズル91の吐出口911から吐出される流体の吐出圧力および吐出流量を、延在方向に並んだ全ての吐出口において均一にすることができる。
【0086】
次に、上述の構成を有する汚水処理設備1の動作について
図1および
図11等を参照して説明する。沈砂池2の池底部にある程度砂が堆積した所定の時期に、汚水処理設備1は堆積した砂の除去動作を行う。この時期は、例えば月に一回など定期的でもよく、沈砂池2に流入または沈砂池2から排出された汚水の合計流量が一定量になったときでもよい。砂の除去動作では、先ず
図1に示すダム装置4の流入ゲート42を駆動して流入口411を閉塞し、沈砂池2への汚水の流入を堰き止める。次に、揚水ポンプ31を駆動して沈砂池2の水位を低下させる。ポンプ井3の水位が所定値まで下がったら揚水ポンプ31を停止する。沈砂池2の水位が第2高水位HWL(
図9参照)まで低下したら、給水ポンプ33を駆動し、
図11に示す攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63から流体を吐出させ、揚砂ポンプ61を駆動する。以降、この揚砂ポンプ61は、水位センサ99からの低水位LWL(
図9参照)を示す出力に応じて駆動を停止し、第2高水位HWL(
図9参照)を示す出力に応じて駆動を再開する制御が自動で実行される。一方、
図1に示す給水ポンプ33は、砂の除去動作が終わるまで駆動が継続される。集砂ピット6に流された砂は揚砂ポンプ61が駆動しているときに、揚砂ポンプ61によって沈砂池2外の不図示の沈砂分離機に運ばれる。なお、水位センサ99が第1高水位HHWLまたはインターロック水位LLWL(
図9参照)になったことを検知した場合、何らかの異常が発生したと考えられるため、アラートを表示して汚水処理設備1は砂の除去動作を停止する。
【0087】
次いで、
図11に示す攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63からの流体の吐出を停止した後、集砂ピット6よりも下流側の第1段目の池底面7に堆積した砂を集砂ピット6に洗い流す。具体的には、第15ノズルヘッダ9kに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて集砂ピット6と第15ノズルヘッダ9kの間の池底面7に堆積した砂を集砂ピット6に洗い流す。そして、第15ノズルヘッダ9kからの流体の吐出を停止し、攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63から所定時間流体を吐出させて集砂ピット6内の砂を揚砂ポンプ61で吸い上げる。
【0088】
次に、
図11に示す攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63からの流体の吐出を停止した後、集砂ピット6よりも下流側の第2段目の池底面7に堆積した砂を集砂ピット6に洗い流す。具体的には、第14ノズルヘッダ9jに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第15ノズルヘッダ9kと第14ノズルヘッダ9jの間の池底面7に堆積した砂を第15ノズルヘッダ9kよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第14ノズルヘッダ9jからの流体の吐出を停止し、第15ノズルヘッダ9kに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて集砂ピット6と第15ノズルヘッダ9kの間の池底面7にある砂を集砂ピット6に洗い流す。そして、第15ノズルヘッダ9kからの流体の吐出を停止し、攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63から所定時間流体を吐出させて集砂ピット6内の砂を揚砂ポンプ61で吸い上げる。
【0089】
次に、
図11に示す攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63からの流体の吐出を停止した後、集砂ピット6よりも下流側の第3段目の池底面7に堆積した砂を集砂ピット6に洗い流す。具体的には、第13ノズルヘッダ9iに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第14ノズルヘッダ9jと第13ノズルヘッダ9iの間の池底面7に堆積した砂を第14ノズルヘッダ9jよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第13ノズルヘッダ9iからの流体の吐出を停止し、第14ノズルヘッダ9jに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第15ノズルヘッダ9kと第14ノズルヘッダ9jの間の池底面7にある砂を第15ノズルヘッダ9kよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第14ノズルヘッダ9jからの流体の吐出を停止し、第15ノズルヘッダ9kに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて集砂ピット6と第15ノズルヘッダ9kの間の池底面7にある砂を集砂ピット6に洗い流す。そして、第15ノズルヘッダ9kからの流体の吐出を停止し、攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63から所定時間流体を吐出させて集砂ピット6内の砂を揚砂ポンプ61で吸い上げる。
【0090】
次に、
図11に示す攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63からの流体の吐出を停止した後、集砂ピット6よりも下流側の第4段目の池底面7に堆積した砂を集砂ピット6に洗い流す。具体的には、第12ノズルヘッダ9hに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第13ノズルヘッダ9iと第12ノズルヘッダ9hの間の池底面7に堆積した砂を第13ノズルヘッダ9iよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第12ノズルヘッダ9hからの流体の吐出を停止し、第13ノズルヘッダ9iに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第14ノズルヘッダ9jと第13ノズルヘッダ9iの間の池底面7にある砂を第14ノズルヘッダ9jよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第13ノズルヘッダ9iからの流体の吐出を停止し、第14ノズルヘッダ9jに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第15ノズルヘッダ9kと第14ノズルヘッダ9jの間の池底面7にある砂を第15ノズルヘッダ9kよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第14ノズルヘッダ9jからの流体の吐出を停止し、第15ノズルヘッダ9kに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて集砂ピット6と第15ノズルヘッダ9kの間の池底面7にある砂を集砂ピット6に洗い流す。そして、第15ノズルヘッダ9kからの流体の吐出を停止し、攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63から所定時間流体を吐出させて集砂ピット6内の砂を揚砂ポンプ61で吸い上げる。
【0091】
次に、
図11に示す攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63からの流体の吐出を停止した後、集砂ピット6よりも下流側の第5段目の池底面7に堆積した砂を集砂ピット6に洗い流す。具体的には、第11ノズルヘッダ9gに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第12ノズルヘッダ9hと第11ノズルヘッダ9gの間の池底面7に堆積した砂を第12ノズルヘッダ9hよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第12ノズルヘッダ9hに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第13ノズルヘッダ9iと第12ノズルヘッダ9hの間の池底面7にある砂を第13ノズルヘッダ9iよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第12ノズルヘッダ9hからの流体の吐出を停止し、第13ノズルヘッダ9iに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第14ノズルヘッダ9jと第13ノズルヘッダ9iの間の池底面7にある砂を第14ノズルヘッダ9jよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第13ノズルヘッダ9iからの流体の吐出を停止し、第14ノズルヘッダ9jに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて第15ノズルヘッダ9kと第14ノズルヘッダ9jの間の池底面7にある砂を第15ノズルヘッダ9kよりも上流側に洗い流す。一定時間経過後、第14ノズルヘッダ9jからの流体の吐出を停止し、第15ノズルヘッダ9kに設けられた吐出口911から一定時間流体を吐出させて集砂ピット6と第15ノズルヘッダ9kの間の池底面7にある砂を集砂ピット6に洗い流す。そして、第15ノズルヘッダ9kからの流体の吐出を停止し、攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63から所定時間流体を吐出させて集砂ピット6内の砂を揚砂ポンプ61で吸い上げる。所定時間経過したら攪拌ノズル62およびピット用集砂ノズル63からの流体の吐出を停止する。
【0092】
その後、同様の動作により、集砂ピット6よりも上流側の、集砂ピット6に近い側の池底面7から順に、堆積した砂を上流側ノズルヘッダ9m~9rを用いて洗い流して、揚砂ポンプ61で吸い上げる。すなわち、集砂ピット6よりも上流側の各段に堆積した砂を、集砂ピット6に近い側から段毎に集砂ピット6まで洗い流す動作を順番に実行して揚砂ポンプ61で吸い上げる。
【0093】
以上の動作により、池底面7に堆積した砂を集砂ピット6に洗い流し、揚砂ポンプ61で吸い上げて沈砂池2外の不図示の沈砂分離機に送ることができる。その際、各吐出口群の間は突条72で仕切られているので、各吐出口911から吐出した流体は対応する流下領域を流れ、隣の流下領域に流出してしまうことを防止できるので堆積した砂を効率的に集砂ピット6に流すことができる。この砂の除去動作では、池底面7に堆積した砂のうち、集砂ピット6に近い段にある砂を集砂ピット6まで洗い流して揚砂ポンプ61で吸い上げた後に、その次に集砂ピット6に近い段にある砂を洗い流している。これにより、特定の段に砂が溜まりすぎてしまい、その段に溜まった砂を集砂ピット6側の段に洗い流すことが出来なくなってしまうことが防止している。また、集砂ピット6に砂が溜まりすぎてしまい、揚砂ポンプ61で吸い上げることができなくなってしまうこともない。
【0094】
本発明は上述の実施形態や変形例に限られることなく特許請求の範囲に記載した範囲で種々の変形を行うことが出来る。たとえば、本実施形態では、下水および雨水が流入してくる汚水処理設備1の沈砂池2に本発明を用いているが、雨水のみが流入してくる雨水処理設備の沈砂池にも適用できる。また、本実施形態では、突条72を断面がL字状の長尺部材により構成しているが、上方が開口したコの字状の断面を有する長尺部材や、逆T字状の断面を有する長尺部材で構成してもよく、断面がI字状の長尺部材で構成してもよい。コの字状の長尺部材で構成した場合は、2本の突条72を1つの長尺部材により形成できる。また、突条72は、新規に沈砂池2を作り上げる場合に小トラフの代わりに用いてもよく、小トラフが形成されていない既存の池底面2に用いてもよい。また、樹脂プレート73の上に突条72の取付部721を配置したが、取付部721の上に樹脂プレート73を配置してもよい。この場合、樹脂プレート73を池幅方向において複数に分割し、隣り合う樹脂プレート73の間から突条72の突出部722を突出させればよい。
【0095】
以上説明した2つの実施形態またはその変形例によれば、池底面7に堆積した砂を残留させることなく流体で流すことができる沈砂池2を提供することができる。また、沈砂池2を安価に提供できる。
【0096】
本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0097】
受け入れた水に含まれている砂が池底面に沈降する沈砂池において、
所定方向に延在し、沈降した砂が集められる集積部と、
前記集積部から離れた位置で該集積部の延在方向に沿って複数配置され、沈降した砂を前記集積部に向かって流すための流体を大気中に吐出する吐出口と、
複数の前記吐出口が前記所定方向に並んで配置された供給管と、
前記供給管に接続され、該供給管に流体を供給する母管とを有し、
前記供給管は、前記母管との接続部から離間するに従って該供給管の内部断面積が小さくなるものであることを特徴とする沈砂池。
【0098】
また、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0099】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記底面に沈降した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する吐出口とを有し、
前記吐出口から吐出される流体の吐出方向を変更可能にしたことを特徴とする沈砂池。
【0100】
この沈砂池において、
前記吐出口が設けられた供給管と、
前記供給管に流体を供給する母管とを有し、
前記供給管は、該供給管の軸線方向を中心として前記母管に対して回動可能なものであってもよい。
【0101】
また、上記沈砂池において、
前記供給管は、複数の吐出口を備えたものであってもよい。
【0102】
さらに、上記沈砂池において、
前記吐出口が設けられた供給管を有し、
前記吐出口は、前記供給管と該吐出口の間に配置された球継手によって流体の吐出方向を変更可能なものであってもよい。
【0103】
加えて、上記沈砂池において、
前記吐出口が着脱可能に設けられた供給管を有し、
前記供給管は、前記吐出口が装着される装着部を該供給管の周方向に複数有するものであってもよい。
【0104】
また、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0105】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記底面に沈降した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する吐出口と
前記側壁よりも池幅方向中央側に配置され、複数の前記吐出口が前記所定方向に並んだ供給管とを有し、
前記供給管は、前記側壁から池幅方向に第1間隔をあけて延在する第1領域と、該側壁から池幅方向に第2間隔をあけて延在する第2領域を有するものであり、
前記第1領域に配置された吐出口と前記第2領域に配置された吐出口とは、互いに独立して流体の吐出方向を変更可能であることを特徴とする沈砂池。
【0106】
前記第1領域に設けられた吐出口は複数であってもよいし1個であってもよい。前記第1領域に設けられた吐出口が複数である場合には、それらの吐出口からの流体の吐出方向をまとめて変更可能であることが好ましい。また、前記第2領域に設けられた吐出口も複数であってもよいし1個であってもよい。前記第2領域に設けられた吐出口が複数である場合にも、それらの吐出口からの流体の吐出方向をまとめて変更可能であることが好ましい。ここにいう「まとめて変更可能」とは、例えば、前記供給管のうちの、前記第1領域の部分と前記第2領域の部分とが、該供給管の軸線方向を中心として別個に回動することで実現される。加えて、前記供給管のうちの、前記第1領域の両端部分に回動可能部が設けられていてもよく、前記第2領域の両端部分に回動可能部が設けられていてもよい。なお、前記供給管は、直線状の管であってもよいし、多少曲がった部分が設けられた管であってもよい。
【0107】
前記供給管は、前記第1領域と前記第2領域をつなぐ第3領域が設けられたものであり、
前記第3領域に設けられた吐出口は、前記第1領域に設けられた吐出口および前記第2領域に設けられた吐出口とは別に、流体の吐出方向を変更可能であるものであってもよい。
【0108】
前記第3領域は、前記側壁との間隔が延在方向に、漸次変化する傾斜した領域であってもよいし、段階的に変化する領域であってもよい。
【0109】
また、前記第3領域に設けられた吐出口も複数であってもよいし1個であってもよい。前記第3領域に設けられた吐出口が複数である場合には、それらの吐出口からの流体の吐出方向もまとめて変更可能であることが好ましい。ここにいう「まとめて変更可能」とは、例えば、前記供給管のうちの、前記第3領域の部分が、前記第1領域の部分および前記第2領域の部分とは別に、該供給管の軸線方向を中心として回動することで実現される。
【0110】
また、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0111】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記側壁に対向して配置され、前記底面に沈降した砂を該側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する複数の吐出口とを有し、
前記側壁は、池幅方向中央側に突出し前記所定方向に延在した突出壁部と該池幅方向外側に向かって凹み前記所定方向に延在した凹み壁部とを有するものであり、
前記吐出口は、前記突出壁部と前記凹み壁部それぞれに対向して配置されたものであり、
前記突出壁部に対向して配置された吐出口から吐出される流体の吐出方向に対して、前記凹み壁部に対向して配置された吐出口から吐出される流体の吐出方向を異なる方向に変更可能な方向変更手段を備えたことを特徴とする沈砂池。
【0112】
さらに、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0113】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記側壁に対向して配置され、前記所定方向に延在した供給管と、
前記供給管に配置され、前記底面に沈降した砂を該側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する複数の吐出口とを有し、
前記側壁は、池幅方向中央側に突出し前記所定方向に延在した突出壁部と該池幅方向外側に向かって凹み前記所定方向に延在した凹み壁部とを有するものであり、
前記吐出口は、前記突出壁部に対向した位置と前記凹み壁部に対向した位置それぞれに配置されたものであり、
前記供給管は、前記突出壁部に対向した位置に配置された吐出口と、前記凹み壁部に対向した位置に配置された吐出口との間に、吐出口から吐出される流体の吐出方向を変更可能な方向変更手段を備えたものであることを特徴とする沈砂池。
【0114】
また、この沈砂池において、
前記側壁は、前記突出壁部と前記凹み壁部の間に形成され、前記所定方向および前記池幅方向に対して傾斜した方向に延在した傾斜壁部を有し、
前記吐出口は、前記傾斜壁部に対向した位置にも配置されたものであり、
前記供給管は、前記突出壁部に対向して配置された吐出口と、前記傾斜壁部に対向して配置された吐出口との間に、該吐出口から吐出される流体の吐出方向を変更可能な第1方向変更手段を備え、
前記凹み壁部に対向して配置された複数の吐出口と、前記傾斜壁部に対向して配置された吐出口との間に、前記吐出口から吐出される流体の吐出方向を変更可能な第2方向変更手段を備えたものであってもよい。
【0115】
加えて、本実施形態の沈砂池からは、以下の発明概念も抽出できる。
【0116】
受け入れた水に含まれている砂が沈降する沈砂池において、
側壁よりも下方になる池底部に設けられ、所定方向に延在した溝と、
前記池底部に設けられ、前記溝に接続した底面と、
前記底面に沈降した砂を前記側壁側から前記溝に向かって流すための流体を吐出する複数の吐出口と、
前記複数の吐出口のうちの少なくとも2つの吐出口から吐出される流体の吐出方向をまとめて変更可能な一括方向変更手段と、
前記吐出口から出される流体の吐出方向を該吐出口毎に変更可能な個別方向変更手段とを備えたことを特徴とする沈砂池。
【0117】
なお、以上説明した各実施形態や各変形例の記載それぞれにのみ含まれてい
る構成要件であっても、その構成要件を、他の実施形態や他の変形例に適用してもよい。 また、これまでに説明した沈砂池は、受け入れた水に含まれている砂が池底面に沈降する沈砂池において、
所定方向に延在し、沈降した砂が集められる集積部と、
前記集積部から離れた位置で該集積部の延在方向に沿って複数配置され、沈降した砂を該集積部に向かって流すための流体を大気中に吐出する吐出口と、
隣り合う前記吐出口の間から前記集積部に向かう方向に延在する突条とを備え、
前記突条は、前記池底面から突出したものであることを特徴としてもよい。
ここで集積部は、沈砂池の池幅方向に延在するものであってもよく、沈砂池の池幅方向に直交する方向に延在するものであってもよい。また、突条は、池幅方向に延在するものであってもよく、沈砂池の池幅方向に直交する方向に延在するものであってもよい。
この沈砂池によれば、複数の小エリアに分割された池底面を安価に構成できる。
【符号の説明】
【0118】
2 沈砂池
6 集砂ピット
7 池底面
8 主トラフ
72 突条
73 樹脂プレート
911 吐出口
W 側壁