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特許7109076基板吸着固定ステージ及びボール搭載装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】基板吸着固定ステージ及びボール搭載装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20220722BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
H01L21/92 604H
H01L21/92 604Z
H05K3/34 505A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2018181042
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020053540
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592141488
【氏名又は名称】アスリートFA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき国際特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】谷貝 忠
(72)【発明者】
【氏名】仙道 彩
(72)【発明者】
【氏名】仙道 雅彦
【審査官】今井 聖和
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-101502(JP,A)
【文献】特開2008-288515(JP,A)
【文献】特開2008-177264(JP,A)
【文献】特開2016-007584(JP,A)
【文献】特開2014-179424(JP,A)
【文献】特開2006-054341(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/60
H05K 3/34
H01L 23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性材料で形成されたボール配列用マスクに設けられたボール配列用孔から導電性ボールが振り込まれる基板を吸着固定し、ボール振込時に前記ボール配列マスクを前記基板に密着する基板吸着固定ステージであって、
前記基板を吸着するための真空吸引孔を有し、複数の磁性体部A及び磁性体部Bが平面一方向に隙間を有して交互に配列固定される第1プレートと、
前記第1プレートの前記ボール配列用マスクに対して反対面側に配置されており、平板のマグネットに複数の磁性体部Cの各々が複数の前記磁性体部Aの一つひとつと対向する位置に配列固定される第2プレートと、
前記磁性体部Cが前記磁性体部Aに平面的に重なる位置と、前記磁性体部Cが平面方向に前記磁性体部Aから離れ、かつ前記磁性体部Bに近接する位置と、に前記第2プレートを前記第1プレートに対して平行に移動するアクチュエータと、
を有する、
ことを特徴とする基板吸着固定ステージ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板吸着固定ステージにおいて、
前記第1プレートは、前記磁性体部A、前記磁性体部B及びこれらを保持固定する非磁性材料で形成される第1プレート本体を有しており、
前記第2プレートは、前記第1プレートに対して反対面側で前記マグネットを保持固定する非磁性材料で形成されるバックプレートを有している、
ことを特徴とする基板吸着固定ステージ。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の基板吸着固定ステージにおいて、
前記磁性体部A及び前記磁性体部Cの幅寸法は同じであり、
前記第2プレートの移動方向における前記磁性体部Aと隣り合う前記磁性体部Bとの間の距離は前記磁性体部Cの幅寸法よりも大きい、
ことを特徴とする基板吸着固定ステージ。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の基板吸着固定ステージにおいて、
前記第2プレートの最大移動量は、前記磁性体部Aと隣り合う前記磁性体部Bとの間の距離と同じである、
ことを特徴とする基板吸着固定ステージ。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の基板吸着固定ステージにおいて、
前記マグネットは四角形であり一辺をN極とし対辺をS極としたときに、複数の前記磁性体部Cは前記一辺側から前記対辺側に順に配列されており、
前記磁性体部Cの配列に従って、前記マグネットの極性が前記一辺側からN-S、S-N、N-SというようにN極とS極とが交互に配置されている、
ことを特徴とする基板吸着固定ステージ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の基板吸着固定ステージにおいて、
前記第1プレートは、前記第2プレート側の裏面に樹脂層で形成されたストライブ状の凸条部を有し、
前記凸条部の頂面は前記第2プレートに接し、前記凸条部間の溝部には前記真空吸引孔が連通している、
ことを特徴とする基板吸着固定ステージ。
【請求項7】
磁性材料で形成されたボール配列用マスクに設けられたボール配列用孔から導電性ボールを基板に振り込むボール搭載装置であって、
請求項1から請求項6のいずれかに記載の基板吸着固定ステージと、
前記ボール配列用マスク上に供給された前記導電性ボールを前記ボール配列用孔から前記基板に振り込むボール振込用スキージと、
を有し、
前記磁性体部Cと前記磁性体部Aとが平面的に重なる位置で前記ボール配列用マスクを前記基板に吸着した後に前記ボール振込用スキージを駆動してボール振込を行い、前記磁性体部Cが平面方向に前記磁性体部Aから離れ、かつ前記磁性体部Bに近接する位置に前記第2プレートを移動した後、前記ボール振込用スキージを前記ボール配列用マスクから離間させ、前記ボール配列用マスクを前記基板から版離れさせるように制御する制御部をさらに有する、
ことを特徴とするボール搭載装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板吸着固定ステージ及びボール搭載装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体チップなどの電子部品の高密度化に伴い、電子部品の接続手段として微小径の導電性ボールを基板などのパッド電極上に高密度に搭載するボール搭載装置が採用されるようになってきている。このようなボール搭載装置は、パッド電極上にフラックスを印刷し、ボール配列用マスクのボール配列用孔内に導電性ボールを振り込むことによって基板に導電性ボールを搭載するものである。
【0003】
このようなボール搭載装置においては、ボール配列用マスクを基板に密着させることによって導電性ボールをパッド電極上に過不足なく搭載することが可能となる。特に、基板の積層数が増加し反りが発生しやすくなっていること、高密度化に伴いボール配列用孔の微細化が進んできていることなどから、ボール配列用マスクを基板に密着させることがより重要となる。また、ボール搭載後、基板をボール搭載装置から除材する際においては、反りや変形を発生させることなくボール配列用マスクを基板から解放することが求められる。なお、ボール配列用マスクを基板に密着した状態から解放することを版離れという。
【0004】
特許文献1及び特許文献2に記載のボール搭載装置は、基板を吸着固定するステージを挟んでボール配列用マスクに対面するマスク吸引手段としてマグネットを備えている。特許文献1及び特許文献2に記載のボール搭載装置は、マグネットの構成や駆動方法に相違点はあるものの共に、マグネットをボール配列用マスクに近付けてボール配列用マスクを磁気的に吸引して基板に密着させてからボール搭載を行い、ボール搭載後にマグネットをボール配列用マスクから垂直方向に遠ざけ磁気的な吸引力を弱めてからボール配列用マスクを版離れさせるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-166908号公報
【文献】特開2017-108177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に記載のボール搭載装置は、マグネットを上下動させてボール配列用マスクとの距離を変えることによってボール配列用マスクを磁気的に吸引する力を増減する。このようなボール搭載装置では、大判の基板、つまり大判のボール配列用マスクを使用する場合においては、マグネットの僅かな傾きによってボール配列用マスクを均一に吸引することができなくなるのでボール配列用マスクを基板に均一に密着させることが困難となる。この問題を解決するためには、マグネットを上下動させる駆動部の構造が複雑になってしまう。さらに、ボール搭載後にマグネットをボール配列用マスクから垂直方向に遠ざけることからボール配列用マスクが基板に張り付いたままになることや、振動することによって反ったり、変形してしまったりするという課題がある。
【0007】
また、大判のボール配列用マスクを均一に吸着するためには、マグネットの配置や吸引力をボール配列用マスクのサイズに対応させることになり、全体としての吸引力を大きくすることになる。従って、版離れの際にマグネットをボール配列用マスクから垂直方向に遠ざけるためには大きな駆動力と大きな駆動ストロークとが必要となり装置が特に高さ方向で大型化してしまうという課題がある。
【0008】
そこで、本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、ボール配列用マスクの張り付き、反り及び変形を防ぎ、過不足のない安定したボール搭載が可能であり、版離れに大きな駆動力及び駆動ストロークを必要としない簡単かつ薄型構造でボール配列用マスクの吸引力の切り換えが可能な基板吸着固定ステージ及びボール搭載装置を実現しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1]本発明の基板吸着固定ステージは、磁性材料で形成されたボール配列用マスクに設けられたボール配列用孔から導電性ボールが振り込まれる基板を吸着固定し、ボール振込時に前記ボール配列マスクを前記基板に密着する基板吸着固定ステージであって、前記基板を吸着するための真空吸引孔を有し、複数の磁性体部A及び磁性体部Bが平面一方向に隙間を有して交互に配列固定される第1プレートと、前記第1プレートの前記ボール配列用マスクに対して反対面側に配置されており、平板のマグネットに複数の磁性体部Cの各々が複数の前記磁性体部Aの一つひとつと対向する位置に配列固定される第2プレートと、前記磁性体部Cが前記磁性体部Aに平面的に重なる位置と、前記磁性体部Cが平面方向に前記磁性体部Aから離れ、かつ前記磁性体部Bに近接する位置と、に前記第2プレートを前記第1プレートに対して平行に移動するアクチュエータと、を有することを特徴とする。
【0010】
本発明の基板吸着固定ステージによれば、第2プレートの磁性体部Cと第1プレートの磁性体部Aとが重なる位置でマグネットとボール配列用マスクとの間の磁束密度が相対的に高くなる。よって、磁性材料で形成されているボール配列用マスクに強い磁気的な吸引力が働き、ボール配列用マスクは第1プレートに吸着固定されている基板に密着される。ボール配列用マスクを基板に密着させて導電性ボールを振り込めば、過不足のない安定したボール搭載が可能となる。また、磁性体部Cが磁性体部Aに重ならない位置、かつ磁性体部Cに近接する位置にあるときには、マグネットとボール配列用マスクとの間の磁束密度が相対的に低くなり、ボール配列用マスクに働く吸引力が小さくなるからボール配列用マスクを基板から小さい力で版離れさせることが可能となる。
【0011】
基板吸着固定ステージは、第2プレートを第1プレートに対して平行に移動することによって磁束密度が高い状態と低い状態とをつくり出すことができる。磁束密度を低くした状態でボール配列用マスクを版離れすることによって、版離れする際にボール配列用マスクが基板に張り付いてしまうことや、振動による反りなどのダメージをボール配列用マスクに与えずにスムーズな版離れが可能となる。さらに、第2プレートを第1プレートに対して平行に移動するため、基板に吸着したボール配列用マスクからマグネットを垂直方向に遠ざける特許文献1及び特許文献2に記載の構成よりも小さな駆動力、小さな駆動ストロークで版離れさせることが可能となり、簡単な構成でしかも薄型化することが可能となる。
【0012】
従って、本発明の基板吸着固定ステージによれば、ボール配列用マスクの張り付き、反り及び変形を防ぎつつ、過不足のない安定したボール搭載が可能であり、版離れに大きな駆動力を必要としない簡単かつ薄型構造でボール配列用マスクの吸引力の切り換えが可能となる。
【0013】
[2]本発明の基板吸着固定ステージにおいては、前記第1プレートは、前記磁性体部A、前記磁性体部B及びこれらを保持固定する非磁性材料で形成される第1プレート本体を有しており、前記第2プレートは、前記第1プレートに対して反対面側で前記マグネットを保持する非磁性材料で形成されるバックプレートを有していることが好ましい。
【0014】
第1プレート本体を非磁性材料にすることによって、マグネットからの磁束が磁性体部Aに集中したり、磁性体部Bに分散したりすることに対して影響を与えない。また、非磁性材料のバックプレートでマグネットを保持固定することによって、マグネットからの磁束に影響を与えずにマグネットを補強することができ、マグネットを含む第2プレートの反りを抑制できる。
【0015】
[3]本発明の基板吸着固定ステージにおいては、前記第2プレートの移動方向における前記磁性体部A及び前記磁性体部Cの幅寸法は同じであり、前記磁性体部Aと隣り合う前記磁性体部Bとの間の距離は前記磁性体部Cの幅寸法よりも大きいことが好ましい。
【0016】
磁性体部Aと磁性体部Cの幅寸法を同じにすることによって、磁性体部Cを磁性体部Aに重なる位置にすればマグネットからの磁束は磁性体部Aを介して効率よく上部に誘導され、ボール配列用マスクとマグネットとの間の磁束密度が相対的に高くなる。このことによってマグネットによる吸引力が強くなりボール配列用マスクを基板に強く密着させることが可能となる。一方、磁性体部Aと磁性体部Bとの間の距離を磁性体部Cの幅寸法よりも大きくすれば、磁性体部Cを磁性体部Aから平面方向に十分離れた位置で磁性体部Bに近接する位置に配置させることが可能となる。磁性体部A、磁性体部B及び磁性体部Cをこのような位置関係にすれば、マグネットからの磁束の一部が磁性体部Bに分散し、マグネットとボール配列用マスク間と間における磁束密度が相対的に低くなる。このことによって、マグネットがボール配列用マスクを吸引する力が弱くなりボール配列用マスクの版離れを小さな力で行うことが可能となる。
【0017】
[4]本発明の基板吸着固定ステージにおいては、前記第2プレートの最大移動量は、前記磁性体部Aと隣り合う前記磁性体部Bとの間の距離と同じであることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、磁性体部Cと磁性体部Aとが重なった位置(相対的な磁束密度最大の位置)と、磁性体部Cが磁性体部Bに近接した位置(相対的な磁束密度最少の位置)とをつくりだすことが可能なる。
【0019】
[5]本発明の基板吸着固定ステージにおいては、前記マグネットは四角形であり一辺をN極とし対辺をS極としたときに、複数の前記磁性体部Cは前記一辺側から前記対辺側に順に配列されており、前記磁性体部Cの配列に従って、前記マグネットの極性が前記一辺側からN-S、S-N、N-SというようにN極とS極とが交互に配置されていることが好ましい。
【0020】
マグネットが四角形の場合、対向する一辺側をN極とし、対辺側をS極とすれば、複数の磁性体部Cはマグネットを貫通している、つまり貫通孔に埋め込まれているので複数の磁性体部Cとマグネット59との境界部において、マグネットの極性は、一辺側から対辺側に向かって順にN-S、S-N、N-S、S-N、N-S、となる。このようにすれば、N極-S極間で磁力線のループが発生し、磁力線を横切るように配置される磁性体部A及び磁性体部Bと、磁性体部Cとの相対位置を変えることによって磁束の密(吸引力大)と疎(吸引力小)とをつくり出すことが可能となる。
【0021】
[6]本発明の基板吸着固定ステージにおいては、前記第1プレートは、前記第2プレート側の裏面に樹脂層で形成されたストライブ状の凸条部を有し、前記凸条部の頂面は前記第2プレートに接し、前記凸条部間の溝部には前記真空吸引孔が連通していることが好ましい。
【0022】
このような構成にすれば、第1プレートと第2プレートとは、樹脂層を挟んでマグネットの吸引力で密着される。第2プレートは凸条部の頂部を摺動することになるので、第1プレートと第2プレートとの厚み方向の距離を一定に保持することが可能となり、マグネットとボール配列用マスクとの距離も一定となる。従って、ボール配列用マスクを均一に吸引することができることからボール配列用マスクを基板に均一に密着させることが可能となる。また、第1プレートは、凸条部間の溝部が真空吸引孔と連通して真空吸引路を構成し、基板を第1プレートに吸着固定することが可能となる。
【0023】
[7]本発明のボール搭載装置は、磁性材料で形成されたボール配列用マスクに設けられたボール配列用孔から導電性ボールを基板に振り込むボール搭載装置であって、上記[1]から[6]のいずれかに記載の基板吸着固定ステージと、前記ボール配列用マスク上に供給された前記導電性ボールを前記ボール配列用孔から前記基板に振り込むボール振込用スキージと、を有し、前記磁性体部Cと前記磁性体部Aとが平面的に重なる位置で前記ボール配列用マスクを前記基板に吸着した後に前記ボール振込用スキージを駆動してボール振込を行い、前記磁性体部Cが平面方向に前記磁性体部Aから離れ、かつ前記磁性体部Bに近接する位置に前記第2プレートを移動した後、前記ボール振込用スキージを前記ボール配列用マスクから離間させ、前記ボール配列用マスクを前記基板から版離れさせるように制御する制御部をさらに有することを特徴とする。
【0024】
本発明のボール搭載装置によれば、第2プレートを第1プレートに対して平行に移動して磁性体部Cと磁性体部Aとが平面的に重なる位置(つまり磁束密度が高い位置)でボール配列用マスクを基板に密着させて導電性ボールを基板上に振り込む。このようにすれば、過不足のない安定したボール搭載が可能となる。そして、第2プレートを第1プレートに対して平行に移動して磁性体部Cが磁性体部Aから離れた位置で磁性体部Bに近接する位置(つまり磁束密度が低い位置)においてボール配列用マスクを基板から版離れさせれば、版離れする際にボール配列用マスクが基板に張り付いてしまうことや、振動による反りなどのダメージをボール配列用マスクに与えずにスムーズな版離れが可能となる。
【0025】
従って、本発明のボール搭載装置によれば、ボール配列用マスクの張り付き、反り及び変形を防ぎつつ、過不足のない安定したボール搭載が可能であり、版離れに大きな駆動力を必要としない簡単かつ薄型構造でボール配列用マスクの吸引力の切り換えが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施の形態に係るボール搭載装置10の全体構成を示す平面図である。
図2】基板14の構成の1例を示す図である。
図3】本発明の実施の形態に係る基板吸着固定ステージ17の構成を示す図である。
図4】第1プレート52及び第2プレート53の構成を示す図である。
図5】第1プレート52と第2プレートとの位置関係を示す断面図である。
図6】磁性体部Aと磁性体部Cとが重なるときの磁束分布を示す図である。
図7】磁性体部Cが磁性体部Aから離れ、磁性体部Bに近づいたときの磁束分布を示す図である
図8】第2プレート53を第2プレート52に対して移動したときの磁束密度の変化を示すグラフである。
図9】ボール搭載方法の主要工程を示す工程説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態に係るボール搭載装置10及び基板吸着固定ステージ17について、図1図9を参照しながら説明する。
【0028】
[ボール搭載装置10の構成]
図1は、ボール搭載装置10の全体構成を示す平面図である。なお、以降に説明する図は、図1において紙面の左右方向をX方向、X軸に直交する方向をY方向、紙面に垂直な方向をZ方向(高さ方向)と記載し説明する。ボール搭載装置10は、導電性ボール12(図9参照)を搭載すべき基板14をストックする基板ストッカ15と、プレアライナ16に基板14を搬送し、さらに、プレアライナ16から基板吸着固定ステージ17に基板14を搬送する基板搬送ロボット18と、基板14にフラックスF(図2参照)を印刷するフラックス印刷装置19と、フラックスFが印刷された基板14に導電性ボール12を振り込むボール振込装置21と、を有している。さらに、ボール搭載装置10は、フラックス印刷用マスク23の裏面に付着した余分なフラックスFを除去するクリーニング装置24を有している。
【0029】
基板14は、電子部品を固定して配線するための板状またはフィルム状の部材であり、半導体集積回路をはじめとする電子部品を実装したもの、あるいは、シリコン半導体基板や化合物半導体基板などのウエハを含む。フラックスFは、半田等の濡れ性を増すためのもので、導電性ボール12が例えば金ボール又は銅ボール又は導電性セラミック又は導電性プラスチックなどの場合には半田ペーストである。又、フラックスFは、ロジン系と水溶性系のいずれでも良いが、振り込まれた導電性ボール12が移動しないように粘着力が大きい組成のものを選択する。なお、導電性ボール12には半田ボールも含まれる。
【0030】
基板ストッカ15は、ロードポートと、アンロードポート(対象基板がウエハの場合にはロードポートと呼ばれることがある)とから構成される。基板搬送ロボット18は、ロードポートから基板14を取り出してプレアライナ16に搬送する。基板14がウエハの場合、基板搬送ロボット18は、プレアライナ16で基板14の中心位置と基板14の外周に形成されたノッチ方向の双方が補正された基板14を基板吸着固定ステージ17へ搬送する。その後、基板搬送ロボット18は待機位置に戻る。基板吸着固定ステージ17に載置された基板14は真空吸着された後、基板矯正装置26によって反りが矯正される。
【0031】
基板矯正装置26は、8個の押圧部材で基板14を押圧して基板14の反りを矯正するものであり、反りが比較的大きいプリント配線基板などに特に有効である。これらの押圧部材は、基板搬送ロボット18で基板14を基板吸着固定ステージ17に載置するとき、基板14を載置した基板吸着固定ステージ17を移動するとき、並びに基板搬送ロボット18で基板14を基板吸着固定テージ17から取り取り外すときに、基板14から上方向に移動することができるようになっている。基板矯正装置26に対応する基板吸着固定ステージ17の位置が、基板14を基板吸着固定ステージ17に載置する位置であり、取外す位置である。
【0032】
基板吸着固定ステージ17は、ステージX軸駆動機構30、ステージY軸駆動機構31、Z軸駆動機構及びθ軸駆動機構(共に図示は省略)によって平面方向及び高さ方向に移動される。基板吸着固定ステージ17は、フラックス印刷装置19及びボール振込装置21に基板14を搬送する。ステージX駆動機構30は、基板吸着固定ステージ17を基板矯正装置26とフラックス印刷装置19、フラックス印刷装置19とボール振込装置21との間に移動させる。基板吸着固定ステージ17の構成及び作用は、図3図8を参照して説明する。
【0033】
基板吸着固定ステージ17は、基板14を吸着固定した状態でフラックス印刷装置19の下方へステージX軸駆動機構30によって移動した後、フラックス印刷用マスク23に設けられたフラックス印刷用孔からフラックス印刷用スキージ(共に図示せず)によってフラックスFを基板14に印刷する。なお、フラックスFが、予め他所又は他工程で基板14に印刷されている場合は、この印刷工程をスキップする。クリーニング装置24は、フラックス印刷用マスク23の基板14側の裏面に付着した余分なフラックスFを、溶剤を含ませたシート又はロールを用いて除去する装置である。
【0034】
フラックスFが印刷された基板14は、基板吸着固定ステージ17に吸着固定された状態でステージX軸駆動機構30によってボール振込装置21の下方に移動される。ボール振込装置21は、ボール配列用マスク11を保持するマスク枠27と、導電性ボール12をボール配列用マスク11上に供給するボール振込ヘッド32,33と、ボール振込ヘッド32,33をY軸方向に移動する振込ヘッドY軸駆動ユニット28,28と、X方向に移動する振込ヘッドX軸駆動ユニット38と、ボール振込ヘッドユニット32,33を支持する振込ヘッドスライダ39とを有している。ボール振込ヘッド32,33は、導電性ボール12をボール配列用孔65(図9参照)内に振り込むボール振込用スキージ68(図9参照)を有している。
【0035】
ボール振込ヘッド32,33は、振込ヘッドスライダ39を介して振込ヘッドX軸駆動ユニット38に連結されている。振込ヘッドX軸駆動ユニット38は、振込ヘッドY軸駆動ユニット28,28によってY方向に移動可能である。また、振込ヘッドスライダ39は、Z軸駆動ユニット(不図示)を備えている。このような各駆動機構により、ボール振込ヘッド32,33及びボール振込用スキージ68がボール配列用マスク11上において水平移動と垂直移動とができるようになっている。
【0036】
図1では、ボール振込ヘッド32,33をX方向に2個並べた例を記載しているが、Y方向に並べること、3個以上を一列又は複数列に並べることも可能である。導電性ボール12を基板14に搭載する方法については、図9を参照して後述する。
【0037】
ボール振込装置21は、3台のカメラ40,41,41を有している。ボール配列用マスク11には、導電性ボール12を振り込むための複数のボール配列用孔65(図9参照)が形成されている。カメラ41,41は、フラックス印刷装置19から移動してきた基板14のアライメントマーク(不図示)が視野に入る位置に配設される。カメラ41,41は、架台47に取付けられた一対のカメラであり、基板14に設けられるアライメントマーク(不図示)を画像認識して、基板14の位置と角度を算出するために用いられる。プレアライナ16の役割は、基板14のアライメントマークをカメラ41,41が撮像できるように位置決めすることである。
【0038】
一方、カメラ40は、振込ヘッド用スライダ39と一緒に移動するカメラである。カメラ40は、ボール配列用孔65と基板14に設けられているパッド電極50(図2参照)の位置及びボール配列用マスク11の上面に設けられるアライメントマーク(不図示)を画像認識するために用いられる。振込ヘッドY軸駆動ユニット28,28は、架台47上に固定されている。マスク枠27は、架台47に取り付治具(不図示)を介して脱着可能に取付けられている。
【0039】
なお、図示は省略するが、ボール搭載装置10は、上述した各駆動機構及び各装置など全体の稼働に関わる制御を行う制御部を有している。制御部は、プレアライナ16、基板搬送ロボット18、フラックス印刷装置19及びボール振込装置21を下方で支えるベース22の下方に配設される制御ボックス内に格納されている。
【0040】
[基板14の構成]
図2は、基板14の構成の1例を示す図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は、図2(a)の点線で囲まれた領域Aを拡大して示す図、図2(c)は、パッド電極部を拡大して示す部分断面図である。図2は、再配線された基板14の1例を示しており、上面14aには多数のパッド電極50が形成されている。図2では、点線Aで囲まれたパッド電極群51が縦方向に5個、横方向に5個設けられた例を表しているが、数や配列はこれに限定されない。また、パッド電極50の数や配列も1例であって限定されない。なお、パッド電極50が、基板14の上面14aに設けられた凹部内に形成されていてもよい。
【0041】
図2(c)に示すように、基板14の上面14aにはパッド電極50が形成されている。パッド電極50にはフラックスFが印刷される。フラックスFは、マスク印刷装置19においてフラックス印刷用マスク23とフラックス印刷用スキージ(図示せず)を使用して印刷される。フラックス印刷用マスク23には、図2に示すパッド電極50の配列に合わせてフラックス印刷用孔(図示せず)が設けられている。次に、基板吸着固定ステージ17の構成及び作用について図3図8を参照して説明する。
【0042】
[基板吸着固定ステージ17の構成及び作用]
図3は、基板吸着固定ステージ17の構成を示す図であり、なお、図3は、図4(a)のD-D切断線で切断された断面に相当する構成を表している。基板吸着固定ステージ17は、基板14を吸着する第1プレート52と、第1プレート52の下方に配置される第2プレート53とを有している。第1プレート52と第2プレート53とは、ストライプ状の樹脂層54を挟んで磁気的に密着する。第1プレート52は、基板14を吸着するための複数の真空吸引孔55を有する第1プレート本体56と、第1プレート本体56の平面一方向(図3ではX方向)に交互に隙間を有して配列される複数の磁性体部A及び磁性体部Bと、から構成されている。第1プレート本体56は非磁性材料で形成されている。なお、樹脂層54の厚みは磁気的には薄いほどよいが、本例においては1mmとした。樹脂層54は、耐圧縮性、耐熱性及び摺動性が優れた材料が好ましく、例えば、アラミド樹脂などである。
【0043】
第2プレート53には、平板のマグネット57に複数の磁性体部Cの各々が複数の前記磁性体部Aの一つひとつ(各々)と対向することが可能な位置、つまり重なり合うことが可能に配列固定されている。第2プレート53の第1プレート52に対して反対面側には、非磁性材料で形成されるバックプレート58が固定されている。磁性体部A,B,Cには、初透磁率が高い鉄系金属が使用される。
【0044】
図3に示すように、第1プレート52は、周囲4辺で第1プレートホルダ59の枠部59aによって保持固定されている。枠部59aには、ストライプ状の樹脂層54で形成された溝部54b(図4(c)参照)に連通する横孔59cが形成されていて、真空吸引孔55と横孔59cとで真空吸引流路が構成される。横孔59cは図示しない真空装置に接続される。第1プレートホルダ59の底部59bの外面側にはアクチュエータ60が固定されており、アクチュエータ60は連結部材61によって第2プレート53に連結し、第2プレート53をX方向に移動させる。アクチュータ60としては、例えば、エアシリンダーやボールねじ駆動機構などが使用可能である。但し、駆動推進力は数十kgレベルのものを使用する。図3では、磁性体部Cが磁性体部Aと磁性体部Bの中間で磁性体部Bに近接する位置にある場合を例示している。なお、近接する位置とは、磁性体部Aの図示右方側端部位置が磁性体部Bの図示左方側端部位置と一致したときの位置である。第1プレート52及び第2プレートの構成及び位置関係については図4を参照してさらに詳しく説明する。
【0045】
図4は、第1プレート52及び第2プレート53の構成を示す図であり、両者が磁気吸引力で密着した状態を表している。図4(a)は平面図、図4(b)は、図4(a)のD-D切断線で切断した断面図、図4(c)は図4(a)のE-E切断線で切断した断面図である。図4(a)に示すように、第1プレート52には、X方向に磁性体部A、磁性体部B、磁性体部A、磁性体部B、…というように磁性体部Aと磁性体部Bとが直線的に間隔を有して交互に配列されている。これら磁性体部の配列を磁性体列と呼ぶ。本例においては磁性体列がY方向に5列配列されている。第1プレート52には、厚み方向に貫通する複数の真空吸引孔55が形成されている。真空吸着孔55は、磁性体部A及び磁性体部Bがない場所、かつ溝部54bの範囲内であれば、数、サイズ及び配置などは適宜設定可能である。なお、磁性体部Aと磁性体部Bとの間の距離をPとする。
【0046】
図4(b)に示すように、磁性体部A及び磁性体部Bは、非磁性材料で形成された第1プレート本体56に埋め込まれている。磁性体部A及び磁性体部Bは、非磁性材料の接着剤等の接合手段で第1プレート本体56に固定される。磁性体部A及び磁性体部Bは、第1プレート本体56から基板14を吸着する面に突出させない。
【0047】
第2プレート53は、平板のマグネット57、磁性体部C及びバックプレート58で構成されている。磁性体部Cは、第1プレート52の磁性体部Aに対して平面形状、サイズ及び配列が同じである。図4においては、第1プレート52と第2プレート53とがボール配列用マスク11を吸着可能に配置された場合を表している。従って、磁性体部Aと磁性体部Cとは同じ場所で重なり合う。図4(a)では、磁性体部A及び磁性体部Cが重なり合う箇所を斜めの格子で表している。磁性体部Cは、マグネット57を厚み方向に貫通するよう埋め込まれ、接着剤などの磁気的に影響しない接合手段で固定される。磁性体部Cは、マグネット57の表裏両面から突出しない。
【0048】
マグネット57は四角形の平板であり、第1プレート52よりも少なくとも距離Pの寸法分だけX方向の外径が小さい。図4(b)に示す構成例においては、マグネット57の図示左方端辺をN極、右方側端辺をS極とした。図4(b)においては、マグネット57に埋め込まれた磁性体部Cを図示左方側から右方側に順に磁性体部C1,C2,C3,C4として説明する。マグネット57の極性は、左方側端辺と磁性体部C1の間においてはN-S、磁性体部C1と磁性体部C2の間においてはS-N、磁性体部C2と磁性体部C3の間においてはN-S、磁性体部C3と磁性体部C4の間においてはS-N、磁性体部C4と図示左方側端辺の間においてはN-Sとなる。すなわち、各磁性体部Cとの境界部において、マグネット57の極性は異なる極性が交互に配列されることになる。各磁性体列においても同じ極性配列となる。マグネット57においては、S極とN極との間に磁力線のループが存在することになる。
【0049】
樹脂層54は、第1プレート52の裏面側に設けられており、ストライプ状の凸条部54aで形成されている。凸条部54aは第1プレート52のX方向端部に亘って延在されており、本例ではY方向に5条形成されている。各凸条部間の隙間を溝部54bとする。溝部54bには、真空吸引孔55が連通しており、真空吸引孔55と溝部54bとで真空吸引路が構成される。従って、凸条部54aは、真空吸引孔55がない場所に設けられる。凸条部54aの頂面54cは第2プレート53(マグネット57)に接する。すなわち、第1プレート52と第2プレート53は、樹脂層54を挟んでマグネット57の磁力で密着される。
【0050】
図5は、第1プレート52と第2プレートとの位置関係を示す断面図である。図5(a)はボール配列用マスク11を吸着するときの位置、図5(b)は版離れをするときの位置を表している。図5(a)において、磁性体部Aと磁性体部Bの間の距離をPとする。なお、本例においては、第1プレート52の左方側の端部と第2プレート53の左方側端部の位置は一致しているものとする。図5(b)においては、第2プレート53を第1プレート52に対して距離Pだけ図示右方側に移動した状態で、磁性体部Cは、磁性体部AからX方向に離れ、磁性体部Bに対してはX方向で近接した位置である。すなわち、図5(a)に示す位置関係においては、マグネット57から磁性体部C、磁性体部Aを介して上方(ボール配列用マスク11)に向かう磁束の密度が相対的に最大となり、図5(b)に示す位置関係においては、マグネット57から磁性体部C、磁性体部A及び磁性体部Bを介して上方(ボール配列用マスク11)に向かう磁束の密度が相対的に最少となる。次に、図6図8を参照して磁性体部A及び磁性体部Bに対する磁性体部Cの位置によって磁束密度が変化することについて説明する。
【0051】
図6は、磁性体部Aと磁性体部Cとが重なるときの磁束分布を示す図であり(図5(a)で示す位置関係に相当する)、図7は、磁性体部Cが磁性体部Aから離れ、磁性体部Bに近づいたときの磁束分布を示す図である(図5(b)で示す位置関係に相当する)。図6及び図7は、シミュレーションによって得た磁束分布を示す図である。図6及び図7を比較しながら説明する。図6に示すように、磁性体部Aと磁性体部Cとが重なる位置にあるときには、マグネット57から磁性体部C、磁性体部Aを介して上方に向かう(ボール配列用マスク11に向かう)磁束分布は、図7に示す位置関係にある場合よりも密である。すなわち磁束密度が高く、磁性材料で形成されるボール配列用マスク11を第2プレート53側に強く吸引し、基板14に吸着させることが可能となる。
【0052】
一方、図7に示す位置関係においては、マグネット57から磁性体部Cを経た磁束は磁性体部Aと磁束体部Bに分散する。マグネット57から磁性体部Cを介して出る磁束は一定であるから、上方に向かう(ボール配列用マスク11に向かう方向)磁束分布は、図6に示す位置関係にある場合よりも疎となる。すなわち磁束密度が低く、ボール配列用マスク11を第2プレート53側に吸引する力が相対的に弱くなり、ボール配列用マスク11を基板14から弱い力で離間させること、つまり版離れさせることが可能となる。
【0053】
図8は、第2プレート53を第2プレート52に対して移動したときの磁束密度の変化を示すグラフである。横軸に第1プレート52に対する第2プレート53(つまり磁性体部C)の位置、つまり第2プレート53の移動距離(mm)、縦軸に上方に向かう磁束密度(mT)を表す。この磁束密度は磁気シミュレーションによって得られた値である。磁性体部Aと磁性体部Bとの間の距離Pを7.5mmとし、第2プレート53の最大移動距離Pを7.5mmとした。図8に示すように、磁性体部Aと磁性体部Cとの位置が一致しているとき、つまり移動距離が0のときに磁束密度は170mTであり、第2プレート53を移動していく、つまり磁性体部Aから離れていくのに従い徐々に磁束密度は低下して移動距離が7.5mmの位置、つまり磁性体部Cが磁性体部Bに近接した位置で100mTとなる。
【0054】
なお、図示は省略するが、磁性体部Cが7.5mmを超えて移動する(磁性体部Cが磁性体部Bに重なり合う)と、磁性体部Aの磁束密度は疎となり、磁性体部Bの磁束密度は密となる。しかし、磁性体部Bの平面積は磁性体部Aの平面積よりも大きいため、図6に示す磁性体部Aの磁束密度よりも疎となる。従って、磁性体部Cの位置と磁性体部Aの位置とが一致したときに最大磁束密度となり、磁性体部Cが磁性体部Bに近接したときに最少磁束密度となる。よって、第2プレート53が最大磁束密度となる位置でボール搭載を行い、第2プレート53が最少磁束密度となる位置で版離れすればよい。
【0055】
[ボール搭載方法]
図9は、ボール搭載方法の主要工程を示す工程説明図である。なお、図9は、各構成要素を簡略化して表している。図9(a)は、基板14を吸着した基板吸着固定ステージ17をボール配列用マスク11の下方に移動した状態を示している。基板14には、フラックス印刷装置19によってパッド電極50上にフラックスFが印刷されている(図2(c)参照)。基板吸着固定ステージ17は、予めアクチュエータ60によって第2プレート53を磁性体部Cが磁性体部Aに重ならない位置で、磁性体部Bに近接する位置(磁束密度が最少の位置)に移動させている。つまり、基板搬送ロボット18によって基板14を基板吸着固定ステージ17に搬送し、基板14を吸着固定し、フラックス印刷工程を経てボール振込装置21に移動するまでの基板搬送経路においては、第1プレート52と第2プレート53とが磁性体部A,Bから上方に向かう磁束密度が低い状態で基板14を搬送する。
【0056】
ボール配列用マスク11には、図2に示すパッド電極50に対応して開口されたボール配列用孔65が設けられている。ボール配列用孔65は、導電性ボール12をパッド電極50上に配列するものである。ボール配列用マスク11には基板14に向かって複数のポスト66が突設されている。ボール配列用マスク11はマグネット57の磁力で基板14に密着させるため磁性材料で形成されているが、ボール配列用マスク11の密着を高めるためポスト66も磁性材料で形成し磁力によるボール配列用マスク11の基板14に対する密着性をより高める場合もある。ポスト66は、ボール配列用孔65から平面方向に離れた位置に配置され、基板14にボール配列用マスク11を均一に密着させるようにバランスよく配置されている。本例において、ボール配列用マスク11を基板14に密着させるということは、ポスト66を介して密着させるということである。
【0057】
基板14をボール振込装置21に搬送したところで、ボール配列用孔65とパッド電極50との位置合わせ(位置補正という)を行う。この位置合わせ工程においては、カメラ40による位置検出データに基づき、基板吸着固定ステージ17をステージX軸駆動機構30、ステージY軸駆動機構31、θ軸駆動機構(図示せず)によって平面方向の位置補正を行う。位置補正後、Z軸駆動機構(図示せず)によってボール配列用マスク11に基板14が接触する位置まで基板吸着固定ステージ17を上昇させる。なお、ボール配列用マスク11と基板14との間に僅かな隙間があってもよい。
【0058】
図9(b)は、ボール配列用マスク11を基板14に密着させた状態を示している。位置補正後、第2プレート53をアクチュエータ60によって図5(a)で示す位置に移動する。図6において説明したように、マグネット57から磁性体部C、磁性体部Aを介してボール配列用マスク11に向かう磁束密度が高くなり、ボール配列用マスク11は磁気的に吸引されて基板14に密着する。ボール配列用マスク11は、ポスト66を介して基板14に強く密着する。ポスト66は、パッド電極50に印刷されたフラックスFがボール配列用マスク11に付着しない高さ、かつ導電性ボール12がボール配列用孔65によって位置が規定される範囲(導電性ボール12がボール配列用孔65から飛び出さない範囲)の高さとする。
【0059】
図9(c)は、導電性ボール12を基板14上に振り込む工程を示す図である。まず、ボール振込用スキージ68がボール配列用マスク11に接触するまでボール振込ヘッド32,33を降下させる。ボール振込ヘッド32,33は、図示しないボール供給装置からボール供給路67を通って基板14上に所定量の導電性ボール12を供給する。供給された導電性ボール12は、ボール振込用スキージ68によってボール配列用孔65から基板14上に振り込まれる。ボール振込用スキージ68は、回転しつつボール配列用マスク11上を移動し導電性ボール12を基板14上に配列させる。ボール振込用スキージ68は結束線状部材であって、取付け部からボール配列用マスク11に向かって末広がり形状を有する環状のブラシである。図9(c)では、ボール振込用スキージ68を簡略化して表しており、径方向に間隔を有して二重構造としてもよい。導電性ボール12をボール振込用孔65へ振り込んだ後、ボール振込ヘッド32,33を稼働初期位置(図1に示す位置)まで退避させる。
【0060】
図9(d)は、ボール配列用マスク11の版離れ直前を示す図である。導電性ボール12をボール振込用孔65へ振り込んだ後、アクチュエータ60によって第2プレート53を磁性体部Cが磁性体部Aに平面的に重ならない位置で、磁性体部Bに近接する位置に移動する。ボール配列用マスク11とマグネット57(磁性体部C)との間の磁束密度は、図9(b),(c)に示す状態のときよりも相対的に低くなっていることからボール配列用マスク11を基板14から小さい力で版離れし易くなっている。
【0061】
図9(e)は、ボール配列用マスク11の版離れ直後を示す図である。磁性体部Cが磁性体部Aから離れた位置で磁性体部Bに近接する位置にあるときに、基板吸着固定ステージ17をZ軸駆動機構(図示せず)によって図9(a)に示す高さ位置まで降下させて版離れさせる。図9(e)に示す基板吸着固定ステージ17の状態においては、各磁性体部とボール配列用マスク11との間の磁束密度が相対的に低くなっているのでボール配列用マスク11の基板14からの版離れを小さな駆動力で行うことができる。導電性ボール12は、パッド電極50上に印刷されたフラックスFの粘着力によって保持される。導電性ボール12が配列された基板14は、基板吸着固定ステージ17に吸着固定された状態でステージX軸駆動機構30によってフラックス印刷装置19、基板矯正装置26を経て基板搬送ロボット18によって基板ストッカ部15のアンローダ側に除材される。
【0062】
以上説明した基板吸着固定ステージ17は、磁性材料で形成されたボール配列用マスク11に設けられたボール配列用孔65から導電性ボール12が振り込まれる基板14を吸着固定するものである。基板吸着固定ステージ17は、基板14を吸着するための真空吸引孔55を有し、複数の磁性体部A及び磁性体部Bが平面一方向に隙間を有して交互に配列固定される第1プレート52と、第1プレート52のボール配列用マスク11に対して反対面側に配置されており、平板のマグネット57に複数の磁性体部Cの各々が複数の磁性体部Aの一つひとつと対向する位置に配列固定される第2プレート53と、磁性体部Cが磁性体部Aに平面的に重なる位置と、磁性体部Cが平面方向に磁性体部Aから離れ、かつ磁性体部Bに近接する位置と、に第2プレート53を第1プレート52に対して平行に移動するアクチュエータ60と、を有している。
【0063】
磁性体部Cと磁性体部Aとが重なり合う位置でマグネット57とボール配列用マスク11との間の磁束密度が相対的に高くなる。よって、磁性材料で形成されているボール配列用マスク11には強い磁気的な吸引力が働き、ボール配列用マスク11は第1プレート52に吸着固定されている基板14に密着される。ボール配列用マスク11を基板14に密着させて導電性ボール12を振り込めば、過不足のない安定したボール搭載が可能となる。また、磁性体部Cが磁性体部Aに重ならない位置で、磁性体部Cに近接する位置にあるときには、マグネット57とボール配列用マスク11との間の磁束密度が相対的に低くなり、ボール配列用マスク11に働く磁気的な吸引力が小さくなるからボール配列用マスク11を基板14から小さい力で版離れさせることが可能となる。
【0064】
基板吸着固定ステージ17は、第2プレート53を第1プレート52に対して平行に移動することによって磁束密度が高い状態と低い状態とをつくり出すことができる。磁束密度を低くした状態でボール配列用マスク11を版離れすることによって、版離れする際にボール配列用マスク11が基板14に張り付いてしまうことや、振動による反りなどのダメージがないスムーズな版離れが可能となる。さらに、第2プレート53を第1プレート52に対して平行に移動するため、基板14に吸着したボール配列用マスク11からマグネット57を垂直方向に遠ざける特許文献1及び特許文献2に記載の構成よりも小さな駆動力、小さな駆動ストロークで版離れさせることが可能となり、簡単な構成でしかも薄型化することが可能となる。
【0065】
また、第1プレート52は、磁性体部A、磁性体部B及びこれらを保持固定する非磁性材料で形成される第1プレート本体56を有しており、第2プレート53は、第1プレート52に対して反対面側でマグネット57を保持する非磁性材料で形成されるバックプレート58を有している。
【0066】
第1プレート本体56を非磁性材料にすることによって、マグネット57からの磁束が磁性体部Aに集中させたり、磁性体部Bに分散させたりすることに影響を与えない。また、非磁性材料のバックプレート58でマグネット57を保持固定することによって、マグネット57からの磁束に影響を与えずに補強することができる。
【0067】
また、第2プレート53の移動方向における磁性体部A及び磁性体部Cの幅寸法は同じであり、磁性体部Aと隣り合う磁性体部Bとの間の距離は磁性体部Cの幅寸法よりも大きくしている。
【0068】
磁性体部Aと磁性体部Cの幅寸法を同じにすることによって、磁性体部Cを磁性体部Aに重なる位置にすればマグネット57からの磁束は磁性体部Aを介して効率よく上部に誘導され、ボール配列用マスク11とマグネット57との間の磁束密度が相対的に高くなる。このことによってマグネット57による吸引力が強くなりボール配列用マスク11を基板14に強く密着させることが可能となる。一方、磁性体部Aと磁性体部Bとの距離を磁性体部Cの幅寸法よりも大きくすれば、磁性体部Cを磁性体部Aから平面方向に十分離れた位置で磁性体部Bに近接する位置に配置させることが可能となる。磁性体部A、磁性体部B及び磁性体部Cをこのような位置関係にすれば、マグネット57からの磁束の一部が磁性体部Bに分散し、マグネット57とボール配列用マスク11との間における磁束密度が相対的に低くなる。このことによって、マグネット57がボール配列用マスク11を吸引する力が弱くなりボール配列用マスク11の版離れを小さな力で行うことが可能となる。
【0069】
また、第2プレート52の最大移動量は、磁性体部Aと隣り合う磁性体部Bとの間の距離と同じである。このようにすれば、磁性体部Cと磁性体部Aとが重なった位置(相対的な磁束密度最大の位置)と、磁性体部Cが磁性体部Bに近接した位置(相対的磁束密度最少の位置)と、をつくりだすことが可能なる。
【0070】
また、磁性体部Cは、マグネット57の厚みを貫通し、マグネット57は四角形であり一辺(図4では左方側端辺)をN極とし対辺(図4では右方側端辺)をS極としたときに、複数の磁性体部Cはマグネット47を貫通して一辺側から対辺側に順に配列されていることから磁性体部Cの配列に従って、マグネット57の極性が一辺側からN-S、S-N、N-SというようにN極とS極とが交互に配置される。このようにすれば、N極-S極間で磁力線のループが発生し、磁力線を横切るように配置される磁性体部A及び磁性体部Bと、磁性体部Cとの相対位置を変えることによって磁束の密(吸引力大)と疎(吸引力小)とをつくり出すことが可能となる。
【0071】
また、第1プレート52は、第2プレート53側の裏面に樹脂層54で形成されたストライブ状の凸条部54aを有し、凸条部54aの頂面54cは第2プレート53に接し、凸条部54a間の溝部54bには真空吸引孔55が連通している。
【0072】
このような構成にすれば、第1プレート52と第2プレート53とは、樹脂層54を挟んでマグネット57の吸引力で密着される。第2プレート53は凸条部54aの頂部を摺動するので、第1プレート52と第2プレート53との厚み方向の距離を一定に保持することが可能となる。従って、マグネット57とボール配列用マスク11との距離も一定となり、ボール配列用マスク11を基板14に均一に密着固定させることが可能となる。樹脂層54を摺動性が優れた材料とすれば、第2プレート53の移動負荷を抑えることが可能となる。
【0073】
また、以上説明したボール搭載装置10は、磁性材料で形成されたボール配列用マスク11に設けられたボール配列用孔65から導電性ボール12を基板14に振り込む装置である。ボール搭載装置10は、基板吸着固定ステージ17と、ボール配列用マスク11上に供給された導電性ボール12をボール配列用孔65から基板11に振り込むボール振込用スキージ68と、を有している。ボール搭載装置10は、磁性体部Cと磁性体部Aとが重なる位置でボール配列用マスク11を基板14に吸着した後、ボール振込用スキージ68を駆動してボール振込を行い、磁性体部Cが平面方向に磁性体部Aから離れ、かつ磁性体部Bに近接する位置に第2プレート53を移動した後、ボール振込用スキージ68をボール配列用マスク11から離間させ、ボール配列用マスク11を基板14から版離れさせるように制御する制御部をさらに有している。
【0074】
ボール搭載装置10は、第2プレート53を第1プレート52に対して平行に移動して磁性体部Cと磁性体部Aとが重なる位置(つまり磁束密度が高い位置)でボール配列用マスク11を基板14に密着させて導電性ボール12を基板41上に振り込む。そして、第2プレート53を第1プレート52に対して平行に移動して磁性体部Cが磁性体部Aから離れた位置で、磁性体部Bに近接する位置(つまり磁束密度が低い位置)においてボール配列用マスク11を基板14から版離れさせる。
【0075】
このように、第2プレートを第1プレートに対して平行に移動するため、ボール配列用マスク11から基板14を垂直方向に遠ざけて吸引力を弱める特許文献1及び特許文献2に記載の構成よりも小さな駆動力、小さな駆動ストロークで版離れさせることが可能となり、版離れの際にボール配列用マスク11が振動することによるダメージを抑えることができる。
【0076】
従って、ボール搭載装置10によれば、ボール配列用マスクの張り付き、反り及び変形を防ぎつつ、過不足のない安定したボール搭載が可能であり、版離れに大きな駆動力を必要としない簡単かつ薄型構造でボール配列用マスクの吸引力の切り換えが可能となる。
【0077】
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。前述した実施の形態では、1種類の導電性ボール12を基板14に搭載する基板吸着固定ステージ17及びボール搭載装置10を例示して説明したが、直径が異なる複数種類の導電性ボールを搭載することが可能である。例えば、導電性ボールの直径が2種類の場合、ボール搭載装置が大径用のボール振込装置と小径用のボール振込装置とを有し、大径用のボール振込装置においては大径用のボール配列用マスクを使用して大径の導電性ボールを基板上に振り込む。小径用のボール振込装置においては小径用のボール配列用マスクを使用して小径の導電性ボールを基板上に振り込む。基板の搬送は、同一の基板吸着固定ステージ17にて行うことが可能である。このように複数種類の導電性ボールを基板上に振り込む場合においても、ボール配列用マスクの反りや変形を防ぎつつ、過不足のない安定したボール搭載が可能であり、大きな駆動力を必要としない簡単な構造で薄型の装置でボール配列用マスクの吸引力の切り換えが可能となる。
【0078】
また、前述した実施の形態では、導電性ボール12を基板14上に搭載する基板吸着固定ステージ17及びボール搭載装置10を例示して説明したが、例えば、導電性ボール12に替えて柱状部材を基板に搭載させることが可能である。
【符号の説明】
【0079】
10…ボール搭載装置、11…ボール配列用マスク、12…導電性ボール、14…基板、17…基板吸着固定ステージ、32,33…ボール振込ヘッド、52…第1プレート、53…第2プレート、54…樹脂層、54a…凸条部、54b…溝部、54c…頂面、55…真空吸引孔、56…第1プレート本体、57…マグネット、58…バックプレート、60…アクチュエータ、65…ボール配列用孔、68…ボール振込用スキージ、A,B,C…磁性体部、P…磁性体部Aと磁性体部Bとの距離
図1
図2
図3
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図9