(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】車内情報表示装置の正面板構造
(51)【国際特許分類】
G09F 9/00 20060101AFI20220722BHJP
B61D 37/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
G09F9/00 350Z
G09F9/00 362
B61D37/00 G
(21)【出願番号】P 2018242084
(22)【出願日】2018-12-26
【審査請求日】2021-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】594100584
【氏名又は名称】六浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】土屋 朗
【審査官】小野 博之
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-247313(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第101285322(CN,A)
【文献】特開2016-022897(JP,A)
【文献】特開2017-159765(JP,A)
【文献】特開2016-138965(JP,A)
【文献】特開2013-023188(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 9/00-46
B61D 17/00-49/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車内で情報を表示する車内情報表示装置の正面板構造であって、
前記車内情報表示装置の正面板は、金属製の板状芯材と金属製の板状表材
そのものを
接着剤で直接貼り合わせ接合した複合材として構成されるとともに、その板状芯材に開設された第1の開口部とこの第1の開口部に対応して前記板状表材に開設された第2の開口部とが上下に重なることによって形成される多重開口部を備えた構造になっており、
前記板状芯材は、主に、前記正面板全体の機械的強度を確保する手段、前記多重開口部に配置されるデジタル機器類を支持する手段、および、複数の後付け金具が取付けられる手段として機能し、
前記板状表材は、主に、電車内から前記板状芯材が視認不可となるように該板状芯材を覆って見栄えの向上を図る手段として機能
し、
前記複数の後付け金具は、前記正面板を開閉可能とするためのヒンジと、前記デジタル機器類を支持固定するための取付けブラケットと、前記正面板の開閉操作用のハンドルとを含み、
前記取付けブラケットは、前記板状芯材および板状表材の上辺から下辺に至る長さの棒状部材で構成され、前記第1の開口部の左右両縁部を構成していること
を特徴とする車内情報表示装置の正面板構造。
【請求項2】
前記多重開口部は複数設けられており、この複数の多重開口部のうち、少なくとも一の多重開口部には、前記デジタル機器類として、デジタル情報を表示するための液晶ディスプレイその他のデジタル表示パネルが配置され、他の多重開口部には、前記デジタル機器類として、防犯カメラが配置された構造になっていること
を特徴とする請求項1に記載の車内情報表示装置の正面板構造。
【請求項3】
前記板状芯材はステンレスで形成され、
前記板状表材はアルミニウム合金で形成されていること
を特徴とする請求項1
または2のいずれか1項に記載の車内情報表示装置の正面板構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電車内で情報を表示する車内情報表示装置の正面板構造に関し、特に、従来に比べ安価で見栄えが良く機械的強度も十分な車内情報表示装置の正面板を得るのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電車では、電車の行先案内や一般の宣伝広告の映像等、乗客向けに各種情報を発信する手段として、電車内の天井と側壁の隅や電車のドア上部付近に、液晶ディスプレイを備えた車内情報表示装置を設置している(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
電車のドア上部付近に設置される車内情報表示装置の正面板は、液晶ディスプレイや防犯カメラなどのデジタル機器類を配置する開口部、その正面板の奥に位置する緊急連絡ボタンを操作するための蓋を取付ける開口部、ドア開閉ランプ装置を配置する開口部など、複数の開口部を備えた構造になっている。
【0004】
しかし、前記のような従来の正面板は、一枚の金属板に対して穴開けや曲げ等の機械加工と仕上げ塗装を施すことによって製造している。その機械加工とは、具体的には前述の開口部などを形成する穴開け加工や、各種後付け金具(例えば、正面板を開閉可能とするためのヒンジ、デジタル機器類を支持固定するための取付けブラケット、正面板の開閉操作用のハンドルなど)をアーク溶接で取付け固定する溶接加工である。このため、前記のような従来の正面板によると、その製造過程においてアーク溶接の熱による歪が生じることは避けられず、そのような歪による正面板の湾曲を修正する職人作業が必要となり、製造コストが高くならざるを得ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたもので、その目的は、安価で見栄えが良く機械的強度も十分な車内情報表示装置の正面板を得るのに好適な車内情報表示装置の正面板構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は、電車内で情報を表示する車内情報表示装置の正面板構造であって、前記車内情報表示装置の正面板は、金属製の板状芯材と金属製の板状表材そのものを直に接着剤で貼り合わせ接合した複合材として構成されるとともに、その板状芯材に開設された第1の開口部とこの第1の開口部に対応して前記板状表材に開設された第2の開口部とが上下に重なることによって形成される多重開口部を備えた構造になっており、
前記板状芯材は、主に、前記正面板全体の機械的強度を確保する手段、前記多重開口部に配置されるデジタル機器類を支持する手段、および、複数の後付け金具が取付けられる手段として機能し、前記板状表材は、主に、電車内から前記板状芯材が視認不可となるように該板状芯材を覆って見栄えの向上を図る手段として機能し、前記複数の後付け金具は、前記正面板を開閉可能とするためのヒンジと、前記デジタル機器類を支持固定するための取付けブラケットと、前記正面板の開閉操作用のハンドルとを含み、前記取付けブラケットは、前記板状芯材および板状表材の上辺から下辺に至る長さの棒状部材で構成され、かつ、前記第1の開口部の左右両縁部を構成していることを特徴とする。
【0008】
前記本発明において、前記多重開口部は複数設けられており、この複数の多重開口部のうち、少なくとも一の多重開口部には、前記デジタル機器類として、デジタル情報を表示するための液晶ディスプレイその他のデジタル表示パネルが配置され、他の多重開口部には、前記デジタル機器類として、防犯カメラが配置された構造になっていることを特徴としてもよい。
【0011】
前記本発明において、前記板状芯材はステンレスで形成され、前記板状表材はアルミニウム合金で形成されていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、車内情報表示装置の正面板構造として、前述の通り、正面板は、金属製の板状芯材と金属製の板状表材とを貼り合わせ接合した複合材で構成するとともに、その板状芯材に対して機械的機能(具体的には、正面板全体の機械的強度を確保する手段、デジタル機器類を支持する手段、および、複数の後付け金具が取付けられる手段としての機能)を持たせる一方、板状表材に対しては装飾的機能(具体的には、電車内から板状芯材が視認不可となるように該板状芯材を覆って見栄えの向上を図る手段としての機能)を持たせるように構成した。
【0013】
このため、本発明によると(1)板状芯材と板状表材は構造上分離しているので、例えば、板状芯材と板状表材の貼合わせ接合前に、板状芯材に対してアーク溶接で後付け金具を取り付けても、その溶接の熱で見栄えの良い板状表材が歪むことはなく、そのような歪による湾曲を修正する職人作業を省略できること、および、(2)板状芯材の板厚調整や後付け金具で板状芯材を補強すること等によって十分な機械的強度が得られることから、安価で見栄えが良く機械的強度も十分な車内情報表示装置の筐体を得るのに好適な車内情報表示装置の正面板構造を提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明を適用した車内情報表示装置の概略正面図。
【
図2】(a)は
図1の車内情報表示装置の正面板を裏面から見た組立図(貼り合せ接合後の状態)、(b)はその正面板の分解斜視図(貼り合せ接合前の状態)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明を適用した車内情報表示装置の概略正面図、
図2(a)は
図1の車内情報表示装置の正面板を裏面から見た組立図(貼り合せ接合後の状態)、
図2(b)はその正面板の分解斜視図(貼り合せ接合前の状態)である。
【0017】
《車内情報表示装置の概要》
図1の車内情報表示装置1は、電車の行先案内や一般の宣伝広告の映像等、乗客向けに各種情報を発信する手段として、同図に示したように電車のドアD上部付近に取付けられるものであり、その車内情報表示装置1の正面板2は電車内から視認可能な位置に配置されている。
【0018】
《正面板の詳細構成》
図2(a)および(b)を参照すると、
図1の車内情報表示装置1において、その正面板2は、金属製の板状芯材3と金属製の板状表材4とを貼り合わせ接合した複合材5として構成されるとともに、複数の多重開口部6を備えた構造になっており、各多重開口部6は、いずれも、板状芯材3に開設された第1の開口部61とこの第1の開口部61に対応して板状表材4に開設された第2の開口部62とが上下に重なることによって形成されている。
【0019】
板状芯材3と板状表材4とを貼り合わせ接合する手段としては、例えば、接着剤、両面テープ、ねじ止め等が考えられるが、これらに限定されることはなく、その接合の手段は必要に応じて適宜変更可能である。
【0020】
複数の多重開口部6のうち、第1から第4の多重開口部6A、6B、6C、6Dは正面板2の同一面上に位置し、第1および第2の多重開口部6A、6Bには、デジタル機器類7として、デジタル情報(前述の電車の行先案内や一般の宣伝広告の映像等)を表示するためのデジタル表示パネル7A(
図1参照)が配置される。デジタル表示パネル7Aの一例として、
図1の車内情報表示装置1では、液晶ディスプレイを採用したが、これに限定されることはない。
【0021】
第3の多重開口部6Cには、デジタル機器類7として防犯カメラ7B(
図1参照)が配置される。そして、
図1の車内情報表示装置1では、第4の多重開口部6Dに蓋9(
図1参照)を設置し、この蓋9を開けることにより正面板2の奥に位置する緊急連絡ボタン(図示省略)を操作できるように構成してある。
【0022】
また、この
図1の車内情報表示装置1では、板状芯材3と板状表材4それぞれの下部縁を内側に折り曲げることによって正面板2の下部に底板部21が設けられる構造、その正面板2の底板部21に第5の多重開口部6Eが位置する構造、および、第5の多重開口部6Eにドア開閉ランプ装置10(
図1参照)が配置される構造を採用している。
【0023】
《板状芯材の詳細》
板状芯材3は、主に、正面板2全体の機械的強度を確保する手段、多重開口部6に配置される前述のデジタル機器類7を支持する手段、および、複数の後付け金具11が取付けられる手段として機能している。
【0024】
後付け金具11の具体例として、
図1の車内情報表示装置1においては、(1)正面板2を開閉可能とするためのヒンジ11A、(2)デジタル機器類を支持固定するための取付けブラケット11B、(3)ドア開閉ランプ装置10を支持固定するための取付けブラケット11C、(4)正面板2の開閉操作用のハンドル11Dを採用しているが、これらに限定されることはない。
【0025】
ヒンジ11Aは、板状芯材3の上縁部に配置されたヒンジ軸(図示省略)と、このヒンジ軸を中心に回転可能な羽板11A-1とで構成され、その羽板11A-1を図示しないフレームにねじ止め固定することにより、正面板2はヒンジ11Aを介して開閉可能となるように構成してある。
【0026】
取付けブラケット11Bは、先に説明した多重開口部6の周囲等、デジタル機器類を設置する部位の周辺に位置し、かつ、板状芯材3に対してスポット溶接で固定された構造になっている。スポット溶接に代えてアーク溶接を採用することも可能であるが、アーク溶接では板状芯材3において溶接歪が生じ易いので、溶接歪が生じ難いスポット溶接の採用が好ましい。
【0027】
正面板2の強度はその板厚の調整によって確保できるほか、
図1の車内情報表示装置1では、先に説明した取付けブラケット11Bの上下両端P1、P2を板状芯材3に対して溶接することでも、正面板2の強度を確保している。
【0028】
ハンドル11Dは、U形状の丸棒を栓溶接(プラグ溶接)で正面板2の底板部21裏側に取付け固定した構造になっている。
【0029】
図1の車内情報表示装置1では、板状芯材3をステンレス(例えばSUS304t2)で製造しているが、ステンレス以外の金属材料で板状芯材3を製造してもよい。
【0030】
《板状表材の詳細》
板状表材4は、主に、電車内から板状芯材3が視認不可となるように該板状芯材3を覆って見栄えの向上を図る手段として機能する。
図1の車内情報表示装置1では、その板状表材4の表裏面に対して塗装による見栄えの良い化粧処理を施しているが、板状表材4の裏面は電車内から見えないので化粧処理を省略してもよい。
【0031】
また、この
図1の車内情報表示装置1では、板状表材4をアルミニウム合金(例えばA5052P)で作製しているが、アルミニウム合金以外の金属で板状表材4を作製してもよい。
【0032】
《以上のまとめ》
以上説明した
図1の車内情報表示装置1では、その正面板2の具体的な構造として、正面板2は、金属製の板状芯材3と金属製の板状表材4とを貼り合わせ接合した複合材で構成するとともに、その板状芯材3に対して機械的機能(具体的には、正面板2全体の機械的強度を確保する手段、デジタル機器類を支持する手段、および、複数の後付け金具11が取付けられる手段としての機能)を持たせる一方、板状表材4に対しては装飾的機能(具体的には、電車内から板状芯材3が視認不可となるように該板状芯材3を覆って見栄えの向上を図る手段としての機能)を持たせるように構成を採用した。
【0033】
このため、前記のような正面板2の具体的な構造によると、(1)板状芯材3と板状表材4は構造上分離しているので、例えば板状芯材3と板状表材4の貼合わせ接合前に、板状芯材3に対してアーク溶接で後付け金具11を取り付けても、その溶接の熱で見栄えの良い板状表材4が歪むことはなく、そのような歪による湾曲を修正する職人作業を省略できること、および(2)板状芯材3の板厚調整や後付け金具11(11B)で板状芯材3を補強すること等によって十分な機械的強度が得られることから、安価で見栄えが良く機械的強度も十分な車内情報表示装置1の正面板2が得られる。
【符号の説明】
【0034】
1 車内情報表示装置
2 正面板
21 底板部
3 板状芯材
4 板状表材
5 複合材
6 多重開口部
6A 第1の多重開口部
6B 第2の多重開口部
6C 第3の多重開口部
6D 第4の多重開口部
6E 第5の多重開口部
61 第1の開口部
62 第2の開口部
7 デジタル機器類
7A デジタル表示パネル
7B 防犯カメラ
9 蓋
10 ドア開閉ランプ装置
11 後付け金具
11A ヒンジ
11B 取付けブラケット
11C 取付けブラケット
11D ハンドル
D 電車のドア