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特許7109082面防具、動作記録システムおよび動作記録方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】面防具、動作記録システムおよび動作記録方法
(51)【国際特許分類】
   A63B 71/10 20060101AFI20220722BHJP
   A63B 69/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A63B71/10 A
A63B69/00 A
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2018248113
(22)【出願日】2018-12-28
(65)【公開番号】P2020103830
(43)【公開日】2020-07-09
【審査請求日】2021-09-07
(73)【特許権者】
【識別番号】504171134
【氏名又は名称】国立大学法人 筑波大学
(74)【代理人】
【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】星野 聖
(72)【発明者】
【氏名】島ノ江 聡
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3166207(JP,U)
【文献】特開平9-108395(JP,A)
【文献】特開2016-131782(JP,A)
【文献】特開2014-4045(JP,A)
【文献】特開2018-98664(JP,A)
【文献】特開2015-192713(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 71/10
A63B 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状の台座と、前記台座の上下方向に延びている縦金と、前記台座の左右方向に延びている複数の横金とを有する面金と、
画像を撮像する撮像部とを備える面防具であって、
前記撮像部が、前記面防具の装着者の目の高さと、鼻の高さまたは口の高さとの間の高さで、前記縦金の前側部分に取り付けられている、
面防具。
【請求項2】
前記撮像部の幅が、前記縦金の幅よりも小さい、
請求項1に記載の面防具。
【請求項3】
前記撮像部の垂直画角が85.5度以上に設定されている、
請求項1または請求項2に記載の面防具。
【請求項4】
前記面金に対して着脱可能に構成され、前記面金に取り付けられている時に前記撮像部を保護する保護部材を更に備え、
前記保護部材は、
前記縦金に対向する対向部と、
前記複数の横金に係止する係止部とを備える、
請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の面防具。
【請求項5】
前記撮像部から延びている配線部を更に備え、
前記配線部は、前記撮像部から、前記面金の内側かつ下側に向かって延ばされている、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の面防具。
【請求項6】
前記配線部は、
前記撮像部に一端が接続されるフラットケーブルと、
前記フラットケーブルの他端に接続される変換部と、
前記変換部に接続され、前記変換部を隔てて前記フラットケーブルの反対側に延びている映像信号ケーブルとを含み、
前記変換部が、前記面金の内側に配置されている、
請求項5に記載の面防具。
【請求項7】
前記映像信号ケーブルは、
前記面金と面紐との接続位置に隣接する位置で、前記面金の内側から、前記面金の外側に延ばされ、
前記面金の外側において前記面紐と束ねられる、
請求項6に記載の面防具。
【請求項8】
前記映像信号ケーブルに接続される制御ユニットを更に備え、
前記制御ユニットは、前記撮像部によって撮像された前記画像を処理する映像処理部と、バッテリとを含み、
前記制御ユニットは、前記装着者の腰の背後に固定される、
請求項6または請求項7に記載の面防具。
【請求項9】
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の面防具を備える動作記録システムであって、
前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と相手とを含む第1画像を表示する表示部と、
前記相手によって装着される相手用面防具と、
前記表示部に隣接して配置される相手用表示部とを更に備え、
前記面防具は、
前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を前記表示部に送信する通信部を備え、
前記相手用面防具は、
前記相手の武具と前記装着者とを含む第2画像を撮像する相手用撮像部と、
前記相手用撮像部によって撮像された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を前記相手用表示部に送信する相手用通信部とを備え、
前記表示部が、前記撮像部によって撮像されている前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を表示すると共に、
前記相手用表示部が、前記相手用撮像部によって撮像されている前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を、前記第1画像に同期させて表示する、
動作記録システム。
【請求項10】
前記面防具の制御ユニットは、前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像の信号を前記撮像部が50[FPS]以上のフレーム速度で生成するように、前記撮像部を制御し、
前記相手用面防具の相手用制御ユニットは、前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像の信号を前記相手用撮像部が50[FPS]以上のフレーム速度で生成するように、前記相手用撮像部を制御し、
前記表示部は、前記撮像部によって生成された前記第1画像の信号に対して映像信号の帯域圧縮を実行し、約1/5フレームにして読み出すことによって、前記第1画像を表示し、
前記相手用表示部は、前記相手用撮像部によって生成された前記第2画像の信号に対して映像信号の帯域圧縮を実行し、約1/5フレームにして読み出すことによって、前記第2画像を表示する、
請求項9に記載の動作記録システム。
【請求項11】
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の面防具を備える動作記録システムであって、
前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と相手とを含む第1画像を表示する表示部と、
前記相手によって装着される相手用面防具と、
前記表示部に隣接して配置される相手用表示部とを更に備え、
前記面防具は、
前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を記憶する記憶部を備え、
前記相手用面防具は、前記相手の武器と前記装着者とを含む第2画像を撮像する相手用撮像部を備え、
前記相手用面防具は、
前記相手の武具と前記装着者とを含む第2画像を撮像する相手用撮像部と、
前記相手用撮像部によって撮像された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を記憶する相手用記憶部とを備え、
前記表示部が、前記記憶部に記憶された前記第1画像を表示すると共に、
前記相手用表示部が、前記相手用記憶部に記憶された前記第2画像を、前記第1画像に同期させて表示する、
動作記録システム。
【請求項12】
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の面防具を用いる動作記録方法であって、
前記撮像部が前記装着者の武具と相手とを含む第1画像を撮像する第1画像撮像ステップと、
前記面防具の通信部が、前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を表示部に送信する第1画像送信ステップと、
前記相手によって装着される相手用面防具の相手用撮像部が、前記相手の武具と前記装着者とを含む第2画像を撮像する第2画像撮像ステップと、
前記相手用面防具の相手用通信部が、前記相手用撮像部によって撮像された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を相手用表示部に送信する第2画像送信ステップと、
前記表示部が、前記撮像部によって撮像されている前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を表示すると共に、
前記表示部に隣接して配置された前記相手用表示部が、前記相手用撮像部によって撮像されている前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を、前記第1画像に同期させて表示する表示ステップとを備える、
動作記録方法。
【請求項13】
請求項5から請求項8のいずれか一項に記載の面防具を用いる動作記録方法であって、
前記撮像部が前記装着者の武具と相手とを含む第1画像を撮像する第1画像撮像ステップと、
前記面防具の記憶部が、前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を記憶する第1画像記憶ステップと、
前記相手によって装着される相手用面防具の相手用撮像部が、前記相手の武具と前記装着者とを含む第2画像を撮像する第2画像撮像ステップと、
前記相手用面防具の相手用記憶部が、前記相手用撮像部によって撮像された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を記憶する第2画像記憶ステップと、
表示部が、前記記憶部によって記憶された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を表示すると共に、
前記表示部に隣接して配置された相手用表示部が、前記相手用記憶部によって記憶された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を、前記第1画像に同期させて表示する表示ステップとを備える、
動作記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、面防具、動作記録システムおよび動作記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、構造強度を保持しつつ着用時の視界を確保する剣道用面金が知られている(特許文献1参照)。特許文献1に記載された剣道用面金は、略顔面輪郭形状に形成された台座と、台座の中央の上下方向に架設された筋金(縦金)と、台座の左右方向に互いに所定の間隔を置いて架設された複数の横金とを備え、筋金(縦金)の目の位置に切欠が設けられている。
特許文献1には、面防具を着用(装着)し慣れていない小学生、中学生等の年少者や初心者は、視界を遮られることの違和感が大きいため、筋金(縦金)に切欠が設けられることに伴って、視野が広がることの効果が大きい旨が記載されている。
しかしながら、自分が打つべきタイミング、打つべき場所、相手との駆け引きなどが未修得の初心者などは、特許文献1に記載された面防具を着用(装着)しても、自分が打つべきタイミング、打つべき場所、相手との駆け引きなどを修得することはできない。
【0003】
また従来から、拳法、空手、逮捕術などの徒手格闘技用の練習及び試合に使用する防具が知られている(特許文献2参照)。特許文献2に記載された武道用防具は、日本拳法、逮捕術、空手などの徒手格闘技用の練習および試合に使用され、打撃の衝撃を吸収するためのクッション部材を有し、クッション部材が硬質クッションシートと軟質クッションシートの多重層構造となっている。
ところで、特許文献2に記載された武道用防具が用いられる場合であっても、自分が打つべきタイミング、打つべき場所、相手との駆け引きなどが未修得の初心者などは、それらを修得することはできない。
【0004】
また従来から、有効打の決まり位置やその強さを検出する有効打検知センサを内蔵した武道用防具が知られている(特許文献3参照)。特許文献3に記載された武道用防具には、有効打検知センサと、有効打検知センサからの有効打検知信号を有効打判定装置に送信する信号送信部とが配設されている。
ところで、特許文献3に記載された武道用防具が用いられる場合であっても、自分が打つべきタイミング、打つべき場所、相手との駆け引きなどが未修得の初心者などは、それらを修得することはできない。
【0005】
自分が打つべきタイミング、打つべき場所、相手との駆け引きなどが未修得の初心者などは、自分の目線に近い画像を用いて指導を受けることができれば、自分が打つべきタイミング、打つべき場所、相手との駆け引きなどを修得しやすくなると考えられる。
一方で、面金を備える面防具にカメラ、センサなどの撮像部を取り付けると、相手からの打突によって撮像部が破損してしまうおそれがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2008-142225号公報
【文献】特開2008-012178号公報
【文献】特開2003-038703号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した問題点に鑑み、本発明は、相手からの打突による破損のおそれを抑制しつつ面防具の装着者の武具と相手とを含む画像を撮像することができる面防具、動作記録システムおよび動作記録方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、環状の台座と、前記台座の上下方向に延びている縦金と、前記台座の左右方向に延びている複数の横金とを有する面金と、画像を撮像する撮像部とを備える面防具であって、前記撮像部が、前記面防具の装着者の目の高さと、鼻の高さまたは口の高さとの間の高さで、前記縦金の前側部分に取り付けられている、面防具である。
【0009】
本発明の一態様の面防具では、前記撮像部の幅が、前記縦金の幅よりも小さくてもよい。
【0010】
本発明の一態様の面防具では、前記撮像部の垂直画角が85.5度以上に設定されていてもよい。
【0011】
本発明の一態様の面防具は、前記面金に対して着脱可能に構成され、前記面金に取り付けられている時に前記撮像部を保護する保護部材を更に備え、前記保護部材は、前記縦金に対向する対向部と、前記複数の横金に係止する係止部とを備えていてもよい。
【0012】
本発明の一態様の面防具は、前記撮像部から延びている配線部を更に備え、前記配線部は、前記撮像部から、前記面金の内側かつ下側に向かって延ばされていてもよい。
【0013】
本発明の一態様の面防具では、前記配線部は、前記撮像部に一端が接続されるフラットケーブルと、前記フラットケーブルの他端に接続される変換部と、前記変換部に接続され、前記変換部を隔てて前記フラットケーブルの反対側に延びている映像信号ケーブルとを含み、前記変換部が、前記面金の内側に配置されていてもよい。
【0014】
本発明の一態様の面防具では、前記映像信号ケーブルは、前記面金と面紐との接続位置に隣接する位置で、前記面金の内側から、前記面金の外側に延ばされ、前記面金の外側において前記面紐と束ねられてもよい。
【0015】
本発明の一態様の面防具は、前記映像信号ケーブルに接続される制御ユニットを更に備え、前記制御ユニットは、前記撮像部によって撮像された前記画像を処理する映像処理部と、バッテリとを含み、前記制御ユニットは、前記装着者の腰の背後に固定されてもよい。
【0016】
本発明の一態様は、前記面防具を備える動作記録システムであって、前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と相手とを含む第1画像を表示する表示部と、前記相手によって装着される相手用面防具と、前記表示部に隣接して配置される相手用表示部とを更に備え、前記面防具は、前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を前記表示部に送信する通信部を備え、前記相手用面防具は、前記相手の武具と前記装着者とを含む第2画像を撮像する相手用撮像部と、前記相手用撮像部によって撮像された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を前記相手用表示部に送信する相手用通信部とを備え、前記表示部が、前記撮像部によって撮像されている前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を表示すると共に、前記相手用表示部が、前記相手用撮像部によって撮像されている前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を、前記第1画像に同期させて表示する、動作記録システムである。
【0017】
本発明の一態様の動作記録システムでは、前記面防具の制御ユニットは、前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像の信号を前記撮像部が50[FPS]以上のフレーム速度で生成するように、前記撮像部を制御し、前記相手用面防具の相手用制御ユニットは、前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像の信号を前記相手用撮像部が50[FPS]以上のフレーム速度で生成するように、前記相手用撮像部を制御し、前記表示部は、前記撮像部によって生成された前記第1画像の信号に対して映像信号の帯域圧縮を実行し、約1/5フレームにして読み出すことによって、前記第1画像を表示し、前記相手用表示部は、前記相手用撮像部によって生成された前記第2画像の信号に対して映像信号の帯域圧縮を実行し、約1/5フレームにして読み出すことによって、前記第2画像を表示してもよい。
【0018】
本発明の一態様は、前記面防具を備える動作記録システムであって、前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と相手とを含む第1画像を表示する表示部と、前記相手によって装着される相手用面防具と、前記表示部に隣接して配置される相手用表示部とを更に備え、前記面防具は、前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を記憶する記憶部を備え、前記相手用面防具は、前記相手の武器と前記装着者とを含む第2画像を撮像する相手用撮像部を備え、前記相手用面防具は、前記相手の武具と前記装着者とを含む第2画像を撮像する相手用撮像部と、前記相手用撮像部によって撮像された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を記憶する相手用記憶部とを備え、前記表示部が、前記記憶部に記憶された前記第1画像を表示すると共に、前記相手用表示部が、前記相手用記憶部に記憶された前記第2画像を、前記第1画像に同期させて表示する、動作記録システムである。
【0019】
本発明の一態様は、前記面防具を用いる動作記録方法であって、前記撮像部が前記装着者の武具と相手とを含む第1画像を撮像する第1画像撮像ステップと、前記面防具の通信部が、前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を表示部に送信する第1画像送信ステップと、前記相手によって装着される相手用面防具の相手用撮像部が、前記相手の武具と前記装着者とを含む第2画像を撮像する第2画像撮像ステップと、前記相手用面防具の相手用通信部が、前記相手用撮像部によって撮像された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を相手用表示部に送信する第2画像送信ステップと、前記表示部が、前記撮像部によって撮像されている前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を表示すると共に、前記表示部に隣接して配置された前記相手用表示部が、前記相手用撮像部によって撮像されている前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を、前記第1画像に同期させて表示する表示ステップとを備える、動作記録方法である。
【0020】
本発明の一態様は、前記面防具を用いる動作記録方法であって、前記撮像部が前記装着者の武具と相手とを含む第1画像を撮像する第1画像撮像ステップと、前記面防具の記憶部が、前記撮像部によって撮像された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を記憶する第1画像記憶ステップと、前記相手によって装着される相手用面防具の相手用撮像部が、前記相手の武具と前記装着者とを含む第2画像を撮像する第2画像撮像ステップと、前記相手用面防具の相手用記憶部が、前記相手用撮像部によって撮像された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を記憶する第2画像記憶ステップと、表示部が、前記記憶部によって記憶された前記装着者の武具と前記相手とを含む前記第1画像を表示すると共に、前記表示部に隣接して配置された相手用表示部が、前記相手用記憶部によって記憶された前記相手の武具と前記装着者とを含む前記第2画像を、前記第1画像に同期させて表示する表示ステップとを備える、動作記録方法である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、相手からの打突による破損のおそれを抑制しつつ面防具の装着者の武具と相手とを含む画像を撮像することができる面防具、動作記録システムおよび動作記録方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】第1実施形態の面防具を面防具の装着者の前側から見た概略図である。
図2図1の拡大図である。
図3】第1実施形態の面防具を面防具の装着者の右側から見た概略図である。
図4】第1実施形態の面防具の内側から面金などを見た図である。
図5】第1実施形態の面防具の撮像部に接続された配線部および制御ユニットを説明するための図である。
図6】制御ユニットの固定方法の一例を説明するための図である。
図7】第1実施形態の面防具の保護部材を説明するための図である。
図8】面金に対する撮像部の最適な取り付け位置についての検討内容を説明するための図である。
図9】面金に対する撮像部の最適な取り付け位置についての検討内容を説明するための図である。
図10】撮像部の最適な垂直画角についての検討内容を説明するための図である。
図11】撮像部の最適な垂直画角についての検討内容を説明するための図である。
図12】撮像部の最適な垂直画角についての検討内容を説明するための図である。
図13】撮像部の最適な水平画角についての検討内容を説明するための図である。
図14】撮像部の最適な水平画角についての検討内容を説明するための図である。
図15】撮像部の最適な水平画角についての検討内容を説明するための図である。
図16】撮像部の最適な水平画角についての検討内容を説明するための図である。
図17】第1実施形態の面防具の適用例(第1適用例)を説明するための図である。
図18】動作記録システムの第1実施例を説明するための図である。
図19】第1実施例の表示部によって表示される第1画像および相手用表示部によって表示される第2画像を示す図である。
図20】第1適用例の動作記録システムSにおいて実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図21】第2実施形態の面防具の撮像部に接続された配線部および制御ユニットを説明するための図である。
図22】第2実施形態の面防具の適用例(第2適用例)を説明するための図である。
図23】第2適用例の動作記録システムにおいて実行される処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の面防具、動作記録システムおよび動作記録方法の実施形態について説明する。
【0024】
<第1実施形態>
図1は第1実施形態の面防具1を面防具1の装着者WRの前側から見た概略図である。図2図1の拡大図である。図3は第1実施形態の面防具1を面防具1の装着者WRの右側から見た概略図である。図4は第1実施形態の面防具1の内側から面金11などを見た図である。図5は第1実施形態の面防具1の撮像部12に接続された配線部13および制御ユニット14を説明するための図である。図6は制御ユニット14の固定方法の一例を説明するための図である。
図1図6に示す例では、面防具1が、面金11と、撮像部12と、配線部13と、制御ユニット14とを備えている。面金11は、環状の台座11Aと、縦金11Bと、複数(図1に示す例では、14本)の横金11Cとを備えている。縦金11Bは、台座11Aの上下方向(図1図4の上下方向)に延びている。
縦金11Bは、前側部分11B1(図1図3参照)と、後側部分11B2(図3および図4参照)と、左側部分11B3(図4参照)と、右側部分11B4(図3および図4参照)とを有する。
前側部分11B1は、縦金11Bの表面のうちの、通常、赤色の塗装が施されない部分である。後側部分11B2、左側部分11B3および右側部分11B4は、縦金11Bの表面のうちの、通常、赤色の塗装が施される部分である。
横金11Cは、台座11Aの左右方向に延びている。
【0025】
図1図6に示す例では、撮像部12が、画像を撮像する例えばカメラ、センサなどである。撮像部12は、図1などに示すように、面防具1の装着者WRの目の高さH1と、鼻の高さH2または口の高さH3との間の高さH12で、縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている。詳細には、図2に示すように、撮像部12の幅W12が、縦金11Bの幅W11Bよりも小さい。
【0026】
図1図6に示す例では、配線部13が、撮像部12から延びている。配線部13は、図5に示すように、撮像部12と制御ユニット14とを接続している。配線部13は、フラットケーブル13Aと、変換部13Bと、映像信号ケーブル13Cとを含む。映像信号ケーブル13Cには、例えば、HDMI(High-Definition Multimedia Interface)(登録商標)ケーブル、同軸ケーブル(BNC型、SMA型など)、RGBケーブル、D端子ケーブルなどのような、フラットケーブル13Aよりもノイズ耐性の高いケーブルが含まれる。
他の例では、配線部13が、フラットケーブル13A、変換部13Bおよび映像信号ケーブル13Cとは異なるものによって構成されていてもよい。
【0027】
図1図6に示す例では、フラットケーブル13Aの一端が、撮像部12に接続されている。フラットケーブル13Aは、例えばフレキシブルプリント基板などのような基板部13A1と、例えばフレキシブルフラットケーブルなどのようなケーブル部13A3と、それらを接続するコネクタ部13A2とによって構成されている。撮像部12は、フラットケーブル13Aの基板部13A1に実装されている。
図2および図3に示すように、配線部13のフラットケーブル13Aの基板部13A1は、面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている撮像部12から、面金11の内側かつ下側に向かって延ばされている。詳細には、基板部13A1が、撮像部12の実装位置から、まず下向きに延ばされ、次いで、2本の横金11Cの間を通されて、面金11の内側(詳細には、面金11の内側の装着者WRの顎の位置)に向かって延ばされ、次いで、面金11の内側において、図4に示すように、コネクタ部13A2に接続されている。コネクタ部13A2から延びているケーブル部13A3は、変換部13Bに接続されている。変換部13Bは、面金11の内側に配置されている。
図1および図4に示すように、変換部13Bには、映像信号ケーブル13Cが接続されている。つまり、映像信号ケーブル13Cは、変換部13Bを隔ててフラットケーブル13Aの反対側に延びている。
詳細には、図3に示すように、映像信号ケーブル13Cは、面金11と面紐4との接続位置CNに隣接する位置ANで、面金11の内側から、面金11の外側に延ばされている。更に、映像信号ケーブル13Cは、面金11の外側において面紐4と束ねられている。
他の例では、配線部13の配置が、図1図4に示す例とは異なっていてもよい。
【0028】
図1図6に示す例では、制御ユニット14が、撮像部12の制御などを行う。制御ユニット14は、映像信号ケーブル13Cに接続されている。制御ユニット14は、映像処理部14Aと、バッテリ14Bと、通信部14Cとを備えている。映像処理部14Aは、
撮像部12によって撮像された画像の処理などを行う。バッテリ14Bは、撮像部12、映像処理部14A、通信部14Cなどに電力を供給する。通信部14Cは、後述する表示部5(図17参照)との通信を行う。
制御ユニット14は、図6に示すように、装着者WRの腰の背後に固定される。
他の例では、制御ユニット14が、装着者WRの腰の背後以外の箇所に固定されてもよい。
【0029】
図7は第1実施形態の面防具1の保護部材15を説明するための図である。詳細には、図7(A)は面金11に取り付けられていない状態における保護部材15の斜視図である。図7(B)は面金11に取り付けられた状態における保護部材15の斜視図である。
図7に示す例では、面防具1が、面金11に対して着脱可能に構成された保護部材15を更に備えている。保護部材15は、図7(B)に示すように面金11に取り付けられている時に、撮像部12(図1等参照)を保護する。詳細には、保護部材15は、例えば面防具1が装着者WRに装着されていない時に面金11に取り付けられることによって、撮像部12を保護する。
保護部材15は、本体部15Aと、本体部15Aから延びている左上係止部15Eと、右上係止部15Fと、左下係止部15Gと、右下係止部15Hとを備えている。本体部15Aは、撮像部12を覆うことによって、撮像部12を保護する。左上係止部15E、右上係止部15F、左下係止部15Gおよび右下係止部15Hは、保護部材15が面金11に取り付けられる時に面金11の2本の横金11Cに係止する。詳細には、左上係止部15Eと右上係止部15Fとが同一の横金11Cに係止し、左下係止部15Gと右下係止部15Hとが同一の横金11Cに係止する。
本体部15Aは、収容部15Bと、上側対向部15Cと、下側対向部15Dとを有する。収容部15Bは、凹状に構成されている。詳細には、保護部材15が面金11に取り付けられている時に撮像部12が収容部15Bに収容されるように、収容部15Bは構成されている。上側対向部15Cおよび下側対向部15Dは、保護部材15が面金11に取り付けられている時に、面金11の縦金11Bの前側部分11B1に対向する。
他の例では、面防具1が保護部材15を備えていなくてもよい。
【0030】
本発明者等は、鋭意研究において、面金11に対する撮像部12の最適な取り付け位置についての検討を行った。
図8および図9は面金11に対する撮像部12の最適な取り付け位置について検討内容を説明するための図である。詳細には、図8(A)は高身長の相手PNが低身長の装着者WRに対して通常の面打ちを行う場合を示している。図8(B)は高身長の相手PNが低身長の装着者WRに対して通常の喉突きを行う場合を示している。図8(C)は高身長の相手PNが低身長の装着者WRに対して面防具1の撮像部12を破壊する打突を行う場合を示している。図9(A)は低身長の相手PNが高身長の装着者WRに対して通常の面打ちを行う場合を示している。図9(B)は低身長の相手PNが高身長の装着者WRに対して通常の喉突きを行う場合を示している。図9(C)は低身長の相手PNが高身長の装着者WRに対して面防具1の撮像部12を破壊する打突を行う場合を示している。
図1図4に示すように、撮像部12が、面防具1の装着者WRの目の高さH1と鼻の高さH2または口の高さH3との間の高さH12で、面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている場合であって、高身長の相手PNが低身長の装着者WRに対して通常の面打ちを行う場合(図8(A)に示す場合)には、面防具1の装着者WRの面布団2(図1および図3参照)が相手PNの武具(竹刀)PNMに接触するものの、撮像部12は、相手PNの武具(竹刀)PNMに接触しない。つまり、本発明者等は、高身長の相手PNが低身長の装着者WRに対して通常の面打ちを行う場合(図8(A)に示す場合)には、高さH12で面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている撮像部12が破損してしまうおそれが殆ど無いことを見い出した。
【0031】
図1図4に示すように、撮像部12が高さH12で面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている場合であって、高身長の相手PNが低身長の装着者WRに対して通常の喉突きを行う場合(図8(B)に示す場合)には、面防具1の装着者WRの垂れ(突き当て)3(図1および図3参照)が相手PNの武具(竹刀)PNMに接触するものの、撮像部12は、相手PNの武具(竹刀)PNMに接触しない。つまり、本発明者等は、高身長の相手PNが低身長の装着者WRに対して通常の喉突きを行う場合(図8(B)に示す場合)には、高さH12で面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている撮像部12が破損してしまうおそれが殆ど無いことを見い出した。
図1図4に示すように、撮像部12が高さH12で面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている場合であっても、高身長の相手PNが低身長の装着者WRに対して面防具1の撮像部12を破壊する打突を行う場合(図8(C)に示す場合)には、撮像部12が、相手PNの武具(竹刀)PNMに接触するおそれがある。しかしながら、図8(C)に示すような相手PNの打突は、通常ではあり得ない打突であるため、本発明者等は、図8(C)に示すような相手PNの打突によって撮像部12が破損してしまうおそれは殆ど無いと考えた。
【0032】
図1図4に示すように、撮像部12が高さH12で面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている場合であって、低身長の相手PNが高身長の装着者WRに対して通常の面打ちを行う場合(図9(A)に示す場合)には、面防具1の装着者WRの面布団2が相手PNの武具(竹刀)PNMに接触するものの、撮像部12は、相手PNの武具(竹刀)PNMに接触しない。つまり、本発明者等は、低身長の相手PNが高身長の装着者WRに対して通常の面打ちを行う場合(図9(A)に示す場合)には、高さH12で面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている撮像部12が破損してしまうおそれが殆ど無いことを見い出した。
図1図4に示すように、撮像部12が高さH12で面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている場合であって、低身長の相手PNが高身長の装着者WRに対して通常の喉突きを行う場合(図9(B)に示す場合)には、面防具1の装着者WRの垂れ(突き当て)3(図1および図3参照)が相手PNの武具(竹刀)PNMに接触するものの、撮像部12は、相手PNの武具(竹刀)PNMに接触しない。つまり、本発明者等は、低身長の相手PNが高身長の装着者WRに対して通常の喉突きを行う場合(図9(B)に示す場合)には、高さH12で面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている撮像部12が破損してしまうおそれが殆ど無いことを見い出した。
図1図4に示すように、撮像部12が高さH12で面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている場合であっても、低身長の相手PNが高身長の装着者WRに対して面防具1の撮像部12を破壊する打突を行う場合(図9(C)に示す場合)には、撮像部12が、相手PNの武具(竹刀)PNMに接触するおそれがある。しかしながら、図9(C)に示すような相手PNの打突は、通常ではあり得ない打突であるため、本発明者等は、図9(C)に示すような相手PNの打突によって撮像部12が破損してしまうおそれは殆ど無いと考えた。
【0033】
上述したように、第1実施形態の面防具1では、撮像部12が、面防具1の装着者WRの目の高さH1と鼻の高さH2または口の高さH3との間の高さH12で、面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている。
そのため、第1実施形態の面防具1では、相手PNからの打突による破損のおそれを抑制しつつ、撮像部12によって、装着者WRの武具WRM(図8および図9に示す例では、竹刀)と相手PNとを含む画像を撮像することができる。
詳細には、第1実施形態の面防具1では、相手PNからの打突による破損のおそれを抑制しつつ、撮像部12によって、装着者WRの目線に近い画像(例えば稽古中の画像、競技中の画像など)を撮像することができる。
その結果、第1実施形態の面防具1では、撮像部12によって撮像された画像を用いる(例えば表示部5(図17参照)に表示する)ことにより、装着者WRが打つべきタイミング、装着者WRが打つべき場所、相手PNとの駆け引きなどを、装着者WRなどに修得させることができる。
【0034】
また、第1実施形態の面防具1では、上述したように、撮像部12の幅W12が、縦金11Bの幅W11Bよりも小さい。
そのため、第1実施形態の面防具1では、撮像部12が装着者WRの視界を遮ってしまうおそれを抑制することができる。
つまり、第1実施形態の面防具1では、撮像部12が装着者WRの視界を遮ってしまうおそれを抑制しつつ、撮像部12によって装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む画像を撮像することができる。
【0035】
また、本発明者等は、鋭意研究において、撮像部12の最適な画角についての検討を行った。武具WRM、PNMが最も短い短剣道の竹刀などである場合に、撮像部12に要求される画角は最も大きくなると考えられる。そこで、本発明者等は、短剣道の竹刀を用いて、撮像部12の最適な画角についての検討を行った。
図10図12は撮像部12の最適な垂直画角についての検討内容を説明するための図である。詳細には、図10(A)は装着者WRと相手PNとの距離が約150cmの場合における撮像部12の垂直画角を説明するための図である。図10(B)は装着者WRと相手PNとの距離が約110cmの場合における撮像部12の垂直画角を説明するための図である。図11は一般的な仕様のカメラの対角画角を説明するための図である。
図12(A)は装着者WRと相手PNとの距離が約150cmの場合に相手PNの全身を含む垂直方向200cmの範囲を撮像部12の画像に含めるために必要な撮像部12の垂直画角を説明するための図である。図12(B)は装着者WRと相手PNとの距離が約110cmの場合に相手PNの全身を含む垂直方向200cmの範囲を撮像部12の画像に含めるために必要な撮像部12の垂直画角を説明するための図である。
【0036】
図10(A)に示すように、装着者WRと相手PNとの距離が約150cmの場合、撮像部12の垂直画角が70度以上(詳細には、68.3度以上)であれば、170cmの身長を有する相手PNの前足(図10(A)に示す例では、右足)のつま先から、相手PNの頭の少し上までの範囲の全てを、撮像部12によって撮像できることを、本発明者等は見い出した。
装着者WRと相手PNとの距離が約150cmの場面は、「触刃の間合い(装着者WRと相手PNとの距離)」に相当し、剣先が触れるか触れないかの装着者WRと相手PNとの距離に相当する。装着者WRと相手PNとの距離が約150cmになる場面は、攻撃するか、あるいは、一歩下がって間合いを切るかの判断場面である。そのため、装着者WRと相手PNとの距離が約150cmの場合における装着者WRの武具(竹刀)WRMと相手PNの全身とを含む画像を撮像部12によって撮像することにより、装着者WR等は、その画像を用いることによって、触刃の間合いにおける攻撃するか、あるいは、一歩下がって間合いを切るかの駆け引きを修得することができる。
【0037】
図10(B)に示すように、装着者WRと相手PNとの距離が約110cmの場合、撮像部12の垂直画角が85.5度以上であれば、170cmの身長を有する相手PNの前足(図10(B)に示す例では、右足)のつま先から、相手PNの頭の少し上までの範囲の全てを、撮像部12によって撮像できることを、本発明者等は見い出した。
装着者WRと相手PNとの距離が約110cmの場面は、「交刃の間合い(装着者WRと相手PNとの距離)」に相当し、剣先が交わる装着者WRと相手PNとの距離に相当する。装着者WRと相手PNとの距離が約110cmになる場面は、攻撃を続けるしかない判断場面(つまり、約110cmの装着者WRと相手PNとの距離は、攻撃を続けるしかない対人距離)である。そのため、装着者WRと相手PNとの距離が約110cmの場合における装着者WRの武具(竹刀)WRMと相手PNの全身とを含む画像を撮像部12によって撮像することにより、装着者WR等は、その画像を用いることによって、その場面で装着者WRが打つべきタイミング、打つべき場所を修得することができる。
【0038】
図11に示すように、一般的な仕様のカメラ(センサ)の対角画角は例えば80.7度であり、有効画素数は例えば1296×816[pix]ある。有効画素数からカメラの水平画角および垂直画角を計算すると、水平画角が43.01度(=80.7度×816/1531)になり、垂直画角が68.31度(=80.7度×1296/1531)になる。
つまり、本発明者等は、一般的な仕様のカメラ(センサ)を撮像部12として用いることによっては、装着者WRと相手PNとの距離が約110cmの場合(交刃の間合い)における前足のつま先から頭の少し上までの範囲を含む相手PNの全身を撮像できないことを見い出した。
なお、短剣道のような剣術系武道において、間合いとは、相手の後ろ足から自分の後ろ足までの距離を意味する場合が多いように思われる。しかし、本発明では、面防具に取り付けたカメラ(センサ)からの見えと画角を問題にするため、前足のつま先や面防具頭頂のような、カメラで撮像した時の相手競技者の輪郭を対象とする。そのため、間合いや相手との距離と言った場合、おおよそ、両者の中間である「相手の体幹から、自分の体幹までの距離」の意味合いで間合いという単語を使用した。ただし、間合いの意味はこれらだけに限定されるものではない。
【0039】
より高画角の映像が必要なのが垂直方向なので、まず、必要な垂直画角について考える。
図12(A)に示すように、身長が170cmの成人男性(相手PN)の前足(図12(A)に示す例では、右足)のつま先から頭の少し上までの範囲を撮像する例を考える。詳細には、カメラ(センサ)と相手PNとの距離がxcmの場合に、垂直画角が68.3度のカメラ(センサ)によって、身長(170cm)+マージンとして垂直方向200cmの範囲を撮像する例を考える。
下記の式により、距離xは147.49…cmになる。
【0040】
tan(68.3/2)=(200/2)/x
tan34.15=0.678…
x=147.49…
【0041】
つまり、垂直画角68.31度のカメラ(センサ)(すなわち、一般的な仕様のカメラ(センサ))を用いる場合、カメラ(センサ)と相手PNとの距離が150cm以上であれば、垂直方向200cmの範囲の全体を撮像することができる。
上述したように、装着者WR(カメラ(センサ))と相手PNとの距離が約150cmの場面は、触刃の間合いに相当する。
【0042】
次に、カメラ(センサ)と相手PNとの距離が約150cmよりも近い約110cmの場合(交刃の間合い)を考える。
図12(B)に示すように、身長が170cmの成人男性(相手PN)の前足(図12(B)に示す例では、右足)のつま先から頭の少し上までの範囲を撮像する例を考える。詳細には、カメラ(センサ)と相手PNとの距離が110cmの場合に、垂直画角がθ[deg]のカメラ(センサ)によって、身長(170cm)+マージンとして垂直方向200cmの範囲を撮像する例を考える。
下記の式により、垂直画角θは85.547…degになる。
【0043】
tan(θ/2)=(200/2)/110
tan-10.90909…=θ/2
θ=84.547…
【0044】
つまり、垂直画角85.5度のカメラ(センサ)を用いることによって、カメラ(センサ)と相手PNとの距離が110cmであっても、垂直方向200cmの範囲の全体を撮像することができる。垂直画角85.5度のカメラ(センサ)のアスペクト比は、例えば3:2、4:3、5:3、16:9、16:10、1:1などの任意の値であってよい。
【0045】
図13図16は撮像部12の水平画角についての検討内容を説明するための図である。詳細には、図13および図14はカメラ(センサ)と相手PNとの距離が約150cmの場合に(つまり、触刃の間合いにおいて)一般的な仕様のカメラ(センサ)によって撮像された相手PNおよび相手PNの武具PNMの画像を示している。
カメラ(センサ)と相手PNとの距離が約150cmの場合、有効画素数が1296×816[pix]の一般的な仕様のカメラ(センサ)を用いることによって撮像できる水平方向の範囲は、下記の式により、約94.4cmになる。
【0046】
150×(816/1296)=94.44…[cm]
【0047】
すなわち、有効画素数が1296×816[pix]の一般的な仕様のカメラ(センサ)を用いることによって、図13および図14に示すような、相手PNと武具PNMとが約94.4cmの水平方向の範囲に含まれる画像を撮像することができる。
仮に、相手PNの武具PNMの先端が、画像の垂直方向の範囲からはみ出す場合であっても(つまり、相手PNの武具PNMの先端が画像に含まれない場合であっても)、装着者WR等は、相手PNの全身が含まれるその画像を用いることによって、触刃の間合いにおける攻撃するか、あるいは、一歩下がって間合いを切るかの駆け引きを修得することができる。
【0048】
図15および図16はカメラ(センサ)と相手PNとの距離が約110cmの場合に(つまり、交刃の間合いにおいて)一般的な仕様のカメラ(センサ)によって撮像された相手PNおよび相手PNの武具PNMの画像を示している。
カメラ(センサ)と相手PNとの距離が約110cmの場合、有効画素数が1296×816[pix]の一般的な仕様のカメラ(センサ)を用いることによって撮像できる水平方向の範囲は、下記の式により、約69.3cmになる。
【0049】
110×(816/1296)=69.259…[cm]
【0050】
すなわち、有効画素数が1296×816[pix]の一般的な仕様のカメラ(センサ)(対角画角80.7度、水平画角43度)を用いることによって、図15および図16に示すような、相手PNと武具PNMとが約69.3cmの水平方向の範囲に含まれる画像を撮像することができる。
仮に、相手PNの武具PNMの先端が、画像の垂直方向の範囲からはみ出す場合であっても(つまり、相手PNの武具PNMの先端が画像に含まれない場合であっても)、装着者WR等は、相手PNの全身が含まれるその画像を用いることによって、交刃の間合いで装着者WRが打つべきタイミング、打つべき場所を修得することができる。
【0051】
本発明者等による研究結果を考慮し、第1実施形態の面防具1では、撮像部12の垂直画角が85.5度以上に設定されている。
そのため、第1実施形態の面防具1では、短剣道の交刃の間合いにおいても、相手PNの前足つま先から頭の少し上までの範囲を含む相手PNの全身像の画像を撮像することができる。
【0052】
また、第1実施形態の面防具1では、上述したように、面防具1が、面金11に対して着脱可能に構成された保護部材15を備えている。
そのため、第1実施形態の面防具1では、装着者WRが面金11を装着していない時に撮像部12が破損してしまうおそれを抑制することができる。
【0053】
また、第1実施形態の面防具1では、上述したように、配線部13(詳細には、配線部13のフラットケーブル13Aの基板部13A1)が、撮像部12から、面金11の内側かつ下側に向かって延ばされている。
そのため、第1実施形態の面防具1では、配線部13が装着者WRの視界を遮るおそれを抑制することができ、相手PNからの打突によって配線部13(詳細には、コネクタ部13A2、変換部13Bを含む配線部13)が破損してしまうおそれを抑制することができる。また、装着者WRの汗によって配線部13(詳細には、コネクタ部13A2、変換部13Bを含む配線部13)が濡れてしまうおそれを抑制することができる。
【0054】
また、第1実施形態の面防具1では、上述したように、配線部13がフラットケーブル13Aと変換部13Bと映像信号ケーブル13Cとを含む。
そのため、第1実施形態の面防具1では、配線部13がフラットケーブル13Aのみによって構成される場合よりもノイズを低減することができる。
【0055】
また、第1実施形態の面防具1では、上述したように、映像信号ケーブル13Cが、面金11と面紐4との接続位置CNに隣接する位置ANで、面金11の内側から、面金11の外側に延ばされ、面金11の外側において面紐4と束ねられている。
そのため、第1実施形態の面防具1では、装着者WRの動作を妨げることなく、映像信号ケーブル13Cの位置を安定させることができる。詳細には、装着者WRの動作中に、面金11の内側から外側に配線部13が出てきてしまうおそれを抑制することができる。
【0056】
また、第1実施形態の面防具1では、上述したように、撮像部12によって撮像された画像の処理などを行う映像処理部14Aと、バッテリ14Bとを含む制御ユニット14が、装着者WRの腰の背後に固定される。
そのため、第1実施形態の面防具1では、装着者WRの動作を妨げることなく、撮像部12によって撮像される画像の処理を行うことができる。また、相手PNからの打突によって制御ユニット14が破損してしまうおそれを抑制することができる。
【0057】
第1実施形態の面防具1は、剣道、銃剣道、短剣道、なぎなた等において装着者WRの頭部への攻撃を保護するために装着者WRによって装着される面防具として利用可能である。
第1実施形態の面防具1では、装着者WRの競技中、あるいは、装着者WRの稽古中に、撮像部12が破損するおそれを抑制しつつ、装着者WRの動作を妨げることなく、装着者WRの武具WRM(例えば剣など)と相手PNの動作とを含む画像を撮像し、記録することができる。
装着者WRは、第1実施形態の面防具1を用いることによって、自分が打つべき時、打つべき場所、相手PNとの駆け引きを修得することができ、自身の武道技能を効果的に向上させることができる。
【0058】
〔第1適用例〕
図17は第1実施形態の面防具1の適用例(第1適用例)を説明するための図である。詳細には、図17は第1実施形態の面防具1が適用された動作記録システムSの一例を示す図である。
図17に示す例では、動作記録システムSが、第1実施形態の面防具1と、表示部5と、相手用面防具P1と、相手用表示部P5とを備えている。
上述したように、面防具1の制御ユニット14の通信部14Cは、表示部5との通信を行う。詳細には、通信部14Cは、面防具1の撮像部12によって撮像された面防具1の装着者WRの武具WRMと、相手PNと、相手PNの武具PNMとを含む画像である第1画像を送信する。
表示部5は、通信部14Cから送信された第1画像を受信する。また、表示部5は、第1画像の表示を行う。詳細には、表示部5は、撮像部12によって撮像されている面防具1の装着者WRの武具WRMと、相手PNと、相手PNの武具PNMとを含む第1画像をライブで表示する。
相手用面防具P1は、相手PNによって装着される。相手用面防具P1は、面防具1と同様に構成されている。
他の例では、相手用面防具P1の構成と面防具1の構成とが異なっていてもよい。
【0059】
図17に示す例では、相手用面防具P1が、相手用面金P11と、相手用撮像部P12と、相手用配線部P13と、相手用制御ユニットP14とを備えている。
相手用面金P11は、面防具1の面金11と同様に構成されている。相手用撮像部P12は、面防具1の撮像部12と同様に構成されている。相手用撮像部P12は、相手用面防具P1を装着する相手PNの武具PNMと、装着者WRと、装着者WRの武具WRMとを含む画像である第2画像を撮像する。
相手用配線部P13は、面防具1の配線部13と同様に構成されている。相手用制御ユニットP14は、面防具1の制御ユニット14と同様に構成されている。
他の例では、相手用面金P11の構成と、面防具1の面金11の構成とが異なっていてもよい。あるいは、相手用撮像部P12の構成と、面防具1の撮像部12の構成とが異なっていてもよい。あるいは、相手用配線部P13の構成と、面防具1の配線部13の構成とが異なっていてもよい。あるいは、相手用制御ユニットP14の構成と、面防具1の制御ユニット14の構成とが異なっていてもよい。
【0060】
つまり、図17に示す例では、相手用制御ユニットP14が、面防具1の制御ユニット14の通信部14Cと同様に構成された相手用通信部P14Cを備えている。相手用通信部P14Cは、相手用表示部P5との通信を行う。詳細には、相手用通信部P14Cは、相手用撮像部P12によって撮像された相手PNの武具PNMと、装着者WRと、装着者WRの武具WRMとを含む画像である第2画像を送信する。
他の例では、相手用通信部P14Cの構成と、面防具1の通信部14Cの構成とが異なっていてもよい。
【0061】
図17に示す例では、相手用表示部P5が、相手用通信部P14Cから送信された第2画像を受信する。また、相手用表示部P5は、第2画像の表示を行う。詳細には、相手用表示部P5は、相手用撮像部P12によって撮像されている相手PNの武具PNMと、装着者WRと、装着者WRの武具WRMとを含む第2画像をライブで表示する。
詳細には、図17に示す例では、表示部5と相手用表示部P5とが、例えば1つの表示装置によって構成され、隣接して配置されている。また、相手用表示部P5は、表示部5によって表示されている第1画像に同期させて、第2画像を表示する。
その結果、図17に示す例では、例えば表示部5に表示される第1画像(面防具1の装着者WRの武具WRMと、相手PNと、相手PNの武具PNMとを含む画像)を用いることによって、装着者WRが打つべきタイミング、装着者WRが打つべき場所、相手PNとの駆け引きなどを、第1画像を見る者に修得させることができる。
また、例えば相手用表示部P5に表示される第2画像(相手PNの武具PNMと、装着者WRと、装着者WRの武具WRMとを含む画像)を用いることによって、相手PNが打つべきタイミング、相手PNが打つべき場所、装着者WRとの駆け引きなどを、第2画像を見る者に修得させることができる。
【0062】
図17に示す例では、動作記録システムSが、面防具1と、表示部5と、相手用面防具P1と、相手用表示部P5とを備えているが、他の例(第1適用例の変形例)では、動作記録システムSが相手用面防具P1と相手用表示部P5とを備えていなくてもよい。つまり、この例では、相手PNが装着する面防具に撮像部が備えられていない。
この例においても、表示部5に表示される第1画像(面防具1の装着者WRの武具WRMと、相手PNと、相手PNの武具PNMとを含む画像)を用いることによって、装着者WRが打つべきタイミング、装着者WRが打つべき場所、相手PNとの駆け引きなどを、第1画像を見る者に修得させることができる。
【0063】
[第1実施例]
図18は動作記録システムSの第1実施例を説明するための図である。
本発明者等は、図18に示す第1実施例において、上述した撮像部12および相手用撮像部P12として、2台のカメラモジュールIU233(ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社製)を用い、上述した制御ユニット14の映像処理部14Aおよび相手用制御ユニットP14の映像処理部として、2台のシングルボードコンピュータRaspBerryPi(登録商標)を用いた。
撮像部12および相手用撮像部P12としての2台のカメラモジュールIU233が、2名の対人武道(例えば短剣道)競技者を一人称視点で撮影した。制御ユニット14の映像処理部14Aおよび相手用制御ユニットP14の映像処理部としての2台のシングルボードコンピュータRaspBerryPiが、2台のカメラモジュールIU233の制御を行った。
図18に示す第1実施例では、アクセスポイントAPを用いたWiFi(登録商標)接続環境において、親機としてのコンピュータPCから、プログラムの並列起動・停止および動画の再生を行った。
フレキシブルフラットケーブル(FFC)が電磁波によるノイズの影響に弱く長距離のデータ転送に適さない問題を解決するため、図18に示す動作記録システムSでは、フレキシブルフラットケーブル(ケーブル部13A3)と映像信号ケーブル13Cとの間の変換を行う変換部13Bとして変換基板を用いた。映像信号ケーブル13C(例えばHDMIケーブル)は、内部がシールド構造になっているため、長距離のデータ転送に適している。フレキシブルフラットケーブルでは50[cm]のデータ転送が限界であったが、HDMI変換により200[cm]でも問題なく動作することを、本発明者等は確認した。
【0064】
上述したように、撮像部12は、面防具1の装着者WRの目の高さH1と、鼻の高さH2または口の高さH3との間の高さH12で、縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている。そのため、図18に示す第1実施例では、装着者WRの視界を妨げることなく、撮像部12によって一人称視点の画像(動画像)を撮像することができた。
上述したように、配線部13のフラットケーブル13Aの基板部13A1は、面金11の縦金11Bの前側部分11B1に取り付けられている撮像部12から、面金11の内側かつ下側に向かって延ばされている。図18に示す第1実施例では、配線部13を、面内で垂直に装着者WRの顎方向に取り回した。詳細には、配線部13として、専用のマウントを設計し、3Dプリントした配線部を用いた。
映像信号ケーブル13Cを用いて映像転送路の延長が可能になったため、ゴム製のベルトを用いることによって、制御ユニット14の映像処理部14AとしてのシングルボードコンピュータRaspBerryPiとバッテリ14Bと通信部14Cとを装着者WRの腰の背後に装着した。同様に、相手用制御ユニットP14を相手PNの腰の背後に装着した。
面防具1および相手用面防具P1の重量部分を重心付近にあたる腰に集めたことにより、装着者WRおよび相手PNに対する侵襲性を最小限に抑えることができた。
シングルボードコンピュータRaspBerryPiにおいては、1枚の基板上に最低限のCPU(Central Processing Unit)、メモリ、データバスが組み込まれている。
【0065】
図18に示す第1実施例では、API(Application Programming Interface)のサンプルコードを流用して、撮像部12および相手用撮像部P12の制御を行った。
第1実施例において、本発明者等は、シングルボードコンピュータRaspBerryPiのリソースで長時間安定した撮像を行うためには、約50[FPS]が限界であることを見い出した。
そこで、第1適用例の動作記録システムSでは、面防具1の制御ユニット14は、装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像の信号を撮像部12が50[FPS]以上のフレーム速度で生成するように、撮像部12を制御する。また、相手用面防具P1の相手用制御ユニットP14は、相手PNの武具PNMと装着者WRとを含む第2画像の信号を相手用撮像部P12が50[FPS]以上のフレーム速度で生成するように、相手用撮像部P12を制御する。
そのため、第1適用例の動作記録システムSでは、動作記録システムSのコストを低減しつつ、撮像部12および相手用撮像部P12が長時間安定した撮像を行うことができる。
【0066】
また、図18に示す第1実施例において、本発明者等は、アクセスポイントAPの転送速度に制約があることを見い出した。
そこで、第1適用例の動作記録システムSでは、表示部5は、撮像部12によって生成された第1画像の信号に対して映像信号の帯域圧縮を実行し、約1/5フレームにして読み出すことによって、第1画像を表示する。また、相手用表示部P5は、相手用撮像部P12によって生成された第2画像の信号に対して映像信号の帯域圧縮を実行し、約1/5フレームにして読み出すことによって、第2画像を表示する。
そのため、第1適用例の動作記録システムSでは、動作記録システムSのコストを低減しつつ、表示部5および相手用表示部P5が安定した表示を行うことができる。詳細には、動作記録システムSのコストを低減しつつ、第1画像と第2画像とを同期させて安定的に表示することができる。
【0067】
図19は第1実施例の表示部5によって表示される第1画像および相手用表示部P5によって表示される第2画像を示す図である。詳細には、図19は装着者WRと相手PNとの稽古中の第6時点における第1画像と第2画像とを示す図である。
図19に示す第6時点の前の第1時点では、表示部5に表示される第1画像に含まれる相手PNと、相手用表示部P5に表示される第2画像に含まれる装着者WRとの距離が、遠い間合いになる。
次いで、第2時点では、表示部5に表示される第1画像に含まれる相手PNと、相手用表示部P5に表示される第2画像に含まれる装着者WRとの距離が、一足一刀の間合い(近間)になる。
次いで、第3時点では、相手用表示部P5に表示される第2画像に含まれる装着者WRが、武具WRM(短竹刀)を表から擦り上げる。
次いで、第4時点では、相手用表示部P5に表示される第2画像に含まれる装着者WRが、武具WRM(短竹刀)を剣上剣まで持ち上げる。
次いで、第5時点では、相手用表示部P5に表示される第2画像に含まれる装着者WRが、小手打ちをする。
次いで、図19に示す第6時点では、相手用表示部P5に表示される第2画像に含まれる装着者WRが、喉突きをしている。
【0068】
図20は第1適用例の動作記録システムSにおいて実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図20に示す例では、ステップS1において、面防具1の撮像部12が装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像を撮像する。また、相手用面防具P1の相手用撮像部P12が、相手PNの武具PNMと装着者WRとを含む第2画像を撮像する。
次いで、ステップS2では、面防具1の通信部14Cが、ステップS1において撮像された装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像を表示部5に送信する。また、相手用面防具P1の相手用通信部P14Cが、ステップS1において撮像された相手PNの武具PNMと装着者WRとを含む第2画像を相手用表示部P5に送信する。
次いで、ステップS3では、表示部5が、撮像部12によって撮像されている装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像を表示する。また、表示部5に隣接して配置された相手用表示部P5が、相手用撮像部P12によって撮像されている相手PNの武具PNMと装着者WRとを含む第2画像を、第1画像に同期させて表示する。
【0069】
<第2実施形態>
以下、本発明の面防具、動作記録システムおよび動作記録方法の第2実施形態について説明する。
第2実施形態の面防具1は、後述する点を除き、上述した第1実施形態の面防具1と同様に構成されている。従って、第2実施形態の面防具1によれば、後述する点を除き、上述した第1実施形態の面防具1と同様の効果を奏することができる。
【0070】
図21は第2実施形態の面防具1の撮像部12に接続された配線部13および制御ユニット14を説明するための図である。
図5に示す例では、制御ユニット14が、映像処理部14Aと、バッテリ14Bと、通信部14Cとを備えているが、図21に示す例では、制御ユニット14が、映像処理部14Aと、バッテリ14Bと、記憶部14Dとを備えている。記憶部14Dは、撮像部12によって撮像された装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像を記憶する。
【0071】
〔第2適用例〕
図22は第2実施形態の面防具1の適用例(第2適用例)を説明するための図である。詳細には、図22は第2実施形態の面防具1が適用された動作記録システムSの一例を示す図である。
図22に示す例では、動作記録システムSが、第2実施形態の面防具1と、表示部5と、相手用面防具P1と、相手用表示部P5とを備えている。
上述したように、第2実施形態の面防具1の制御ユニット14の記憶部14Dは、撮像部12によって撮像された第1画像を記憶する。
表示部5は、記憶部14Dに記憶された第1画像を読み出して表示する。詳細には、表示部5は、撮像部12によって撮像された面防具1の装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像をオフラインで表示する。
相手用面防具P1は、相手PNによって装着される。相手用面防具P1は、第2実施形態の面防具1と同様に構成されている。
他の例では、相手用面防具P1の構成と第2実施形態の面防具1の構成とが異なっていてもよい。
【0072】
図22に示す例では、相手用面防具P1が、相手用面金P11と、相手用撮像部P12と、相手用配線部P13と、相手用制御ユニットP14とを備えている。
相手用面金P11は、第2実施形態の面防具1の面金11と同様に構成されている。相手用撮像部P12は、第2実施形態の面防具1の撮像部12と同様に構成されている。相手用撮像部P12は、相手用面防具P1を装着する相手PNの武具PNMと、装着者WRと、装着者WRの武具WRMとを含む画像である第2画像を撮像する。
相手用配線部P13は、第2実施形態の面防具1の配線部13と同様に構成されている。相手用制御ユニットP14は、第2実施形態の面防具1の制御ユニット14と同様に構成されている。
他の例では、相手用面金P11の構成と、第2実施形態の面防具1の面金11の構成とが異なっていてもよい。あるいは、相手用撮像部P12の構成と、第2実施形態の面防具1の撮像部12の構成とが異なっていてもよい。あるいは、相手用配線部P13の構成と、第2実施形態の面防具1の配線部13の構成とが異なっていてもよい。あるいは、相手用制御ユニットP14の構成と、第2実施形態の面防具1の制御ユニット14の構成とが異なっていてもよい。
【0073】
つまり、図22に示す例では、相手用制御ユニットP14が、第2実施形態の面防具1の制御ユニット14の記憶部14Dと同様に構成された相手用記憶部P14Dを備えている。相手用記憶部P14Dは、相手用撮像部P12によって撮像された第2画像を記憶する。
他の例では、相手用記憶部P14Dの構成と、第2実施形態の面防具1の記憶部14Dの構成とが異なっていてもよい。
【0074】
図22に示す例では、相手用表示部P5が、相手用記憶部P14Dに記憶された第2画像を読み出して表示する。詳細には、相手用表示部P5は、相手用撮像部P12によって撮像された相手PNの武具PNMと装着者WRとを含む第2画像をオフラインで表示する。
詳細には、図22に示す例では、図17に示す例と同様に、表示部5と相手用表示部P5とが、例えば1つの表示装置によって構成され、隣接して配置されている。また、相手用表示部P5は、表示部5によって表示されている第1画像に同期させて、第2画像を表示する。
その結果、図22に示す例では、例えば表示部5に表示される第1画像(面防具1の装着者WRの武具WRMと、相手PNと、相手PNの武具PNMとを含む画像)を用いることによって、装着者WRが打つべきタイミング、装着者WRが打つべき場所、相手PNとの駆け引きなどを、第1画像を見る者(装着者WRおよび相手PNも含む)に修得させることができる。
また、例えば相手用表示部P5に表示される第2画像(相手PNの武具PNMと、装着者WRと、装着者WRの武具WRMとを含む画像)を用いることによって、相手PNが打つべきタイミング、相手PNが打つべき場所、装着者WRとの駆け引きなどを、第2画像を見る者(装着者WRおよび相手PNも含む)に修得させることができる。
【0075】
図22に示す例では、動作記録システムSが、面防具1と、表示部5と、相手用面防具P1と、相手用表示部P5とを備えているが、他の例(第2適用例の変形例)では、動作記録システムSが相手用面防具P1と相手用表示部P5とを備えていなくてもよい。つまり、この例では、相手PNが装着する面防具に撮像部が備えられていない。
この例においても、表示部5に表示される第1画像(面防具1の装着者WRの武具WRMと、相手PNと、相手PNの武具PNMとを含む画像)を用いることによって、装着者WRが打つべきタイミング、装着者WRが打つべき場所、相手PNとの駆け引きなどを、第1画像を見る者(装着者WRおよび相手PNも含む)に修得させることができる。
【0076】
[第2実施例]
次に、第2実施形態の面防具1が適用された動作記録システムSの実施例である第2実施例について説明する。
本発明者等は、第1実施例において、第1実施例と同様に、撮像部12および相手用撮像部P12として、2台のカメラモジュールIU233(ソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社製)を用い、制御ユニット14の映像処理部14Aおよび相手用制御ユニットP14の映像処理部として、2台のシングルボードコンピュータRaspBerryPi(登録商標)を用いた。
撮像部12および相手用撮像部P12としての2台のカメラモジュールIU233が、2名の対人武道(例えば短剣道)競技者を一人称視点で撮影した。制御ユニット14の映像処理部14Aおよび相手用制御ユニットP14の映像処理部としての2台のシングルボードコンピュータRaspBerryPiが、2台のカメラモジュールIU233の制御を行った。
第2実施例では、第1実施例と同様に、フレキシブルフラットケーブル(ケーブル部13A3)と映像信号ケーブル13Cとの間の変換を行う変換部13Bとして変換基板を用いた。
【0077】
第2実施例においても、第1実施例と同様に、装着者WRの視界を妨げることなく、撮像部12によって一人称視点の画像(動画像)を撮像した。また、配線部13として、専用のマウントを設計し、3Dプリントした配線部を用いた。
第2実施例においては、ゴム製のベルトを用いることによって、制御ユニット14の映像処理部14AとしてのシングルボードコンピュータRaspBerryPiとバッテリ14Bと記憶部14Dとを装着者WRの腰の背後に装着した。同様に、相手用記憶部P14Dを備える相手用制御ユニットP14を相手PNの腰の背後に装着した。
詳細には、記憶部14Dにおいて、撮像部12によって撮像された第1画像を連番の複数の画像ファイルとしてSDストレージに保存した。また、シングルボードコンピュータRaspBerryPiにファイルサーバソフトSambaを入れて仮想的にNASのように扱うことによって、ファイルの読み書きを外部のコンピュータPCから実行できるようにした。
同様に、相手用記憶部P14Dにおいて、相手用撮像部P12によって撮像された第2画像を連番の複数の画像ファイルとしてSDストレージに保存した。
【0078】
第2実施例では、第1実施例と同様に、APIのサンプルコードを流用して、撮像部12および相手用撮像部P12の制御を行った。
第2実施例においても、シングルボードコンピュータRaspBerryPiのリソースで長時間安定した撮像を行うためには、約50[FPS]が限界である。
そこで、第2適用例の動作記録システムSにおいても、面防具1の制御ユニット14は、装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像の信号を撮像部12が50[FPS]以上のフレーム速度で生成するように、撮像部12を制御する。また、相手用面防具P1の相手用制御ユニットP14は、相手PNの武具PNMと装着者WRとを含む第2画像の信号を相手用撮像部P12が50[FPS]以上のフレーム速度で生成するように、相手用撮像部P12を制御する。
【0079】
第2実施例において、本発明者等は、画像の読み出しを行いながら描画を行う場合(動画の再生を行う場合)に速度の制約があることを見い出した。
そこで、第2適用例の動作記録システムSでは、表示部5は、撮像部12によって生成された第1画像の信号に対して映像信号の帯域圧縮を実行し、約1/5フレームにして読み出すことによって、第1画像を表示する。また、相手用表示部P5は、相手用撮像部P12によって生成された第2画像の信号に対して映像信号の帯域圧縮を実行し、約1/5フレームにして読み出すことによって、第2画像を表示する。
そのため、第2適用例の動作記録システムSにおいても、動作記録システムSのコストを低減しつつ、表示部5および相手用表示部P5が安定した表示を行うことができる。詳細には、動作記録システムSのコストを低減しつつ、第1画像と第2画像とを同期させて安定的に表示することができる。
【0080】
図23は第2適用例の動作記録システムSにおいて実行される処理の一例を示すフローチャートである。
図23に示す例では、ステップS11において、面防具1の撮像部12が装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像を撮像する。また、相手用面防具P1の相手用撮像部P12が、相手PNの武具PNMと装着者WRとを含む第2画像を撮像する。
次いで、ステップS12では、面防具1の記憶部14Dが、ステップS11において撮像された装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像を記憶する。また、相手用面防具P1の相手用記憶部P14Dが、ステップS11において撮像された相手PNの武具PNMと装着者WRとを含む第2画像を記憶する。
次いで、ステップS13では、表示部5が、ステップS12において記憶部14Dに記憶された装着者WRの武具WRMと相手PNとを含む第1画像を表示する。また、表示部5に隣接して配置された相手用表示部P5が、ステップS12において相手用記憶部P14Dに記憶された相手PNの武具PNMと装着者WRとを含む第2画像を、第1画像に同期させて表示する。
【0081】
以上、本発明を実施するための形態について実施形態を用いて説明したが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変形及び置換を加えることができる。上述した各実施形態および各例に記載の構成を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1…面防具、11…面金、11A…台座、11B…縦金、W11B…幅、11B1…前側部分、11B2…後側部分、11B3…左側部分、11B4…右側部分、11C…横金、12…撮像部、H12…高さ、W12…幅、13…配線部、13A…フラットケーブル、13A1…基板部、13A2…コネクタ部、13A3…ケーブル部、13B…変換部、13C…映像信号ケーブル、14…制御ユニット、14A…映像処理部、14B…バッテリ、14C…通信部、14D…記憶部、15…保護部材、15A…本体部、15B…収容部、15C…上側対向部、15D…下側対向部、15E…左上係止部、15F…右上係止部、15G…左下係止部、15H…右下係止部、2…面布団、3…垂れ、4…面紐、5…表示部、CN…接続位置、AN…位置、WR…装着者、WRM…武具、H1…高さ、H2…高さ、H3…高さ、PN…相手、PNM…武具、S…動作記録システム、P1…相手用面防具、P11…相手用面金、P12…相手用撮像部、P13…相手用配線部、P14…相手用制御ユニット、P14C…相手用通信部、P14D…相手用記憶部、P5…相手用表示部
図1
図2
図3
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