(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】リドカインおよびジクロフェナクを含む医薬用貼付剤についての投与計画
(51)【国際特許分類】
   A61K  31/196       20060101AFI20220722BHJP        
   A61K  31/167       20060101ALI20220722BHJP        
   A61K   9/70        20060101ALI20220722BHJP        
   A61P  29/00        20060101ALI20220722BHJP        
   A61P  43/00        20060101ALI20220722BHJP        
【FI】
A61K31/196 
A61K31/167 
A61K9/70 401 
A61P29/00 
A61P43/00 121 
(21)【出願番号】P 2019541327
(86)(22)【出願日】2018-01-29
(86)【国際出願番号】 EP2018052033
(87)【国際公開番号】W WO2018141662
(87)【国際公開日】2018-08-09
【審査請求日】2021-01-26
(32)【優先日】2017-01-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】000215958
【氏名又は名称】帝國製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾  憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138900
【氏名又は名称】新田  昌宏
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本  靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山  信彦
(72)【発明者】
【氏名】アントニオ・ナルディ
(72)【発明者】
【氏名】クラウス・シーネ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・ヴァハテン
(72)【発明者】
【氏名】イルムガルト・ベスル
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ショルツ
(72)【発明者】
【氏名】インゴ・フリードリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ゼバスティアン・ウルリヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジモーネ・ケーニヒ
【審査官】福山  則明
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2001/047559(WO,A1)    
【文献】特開2005-145931(JP,A)      
【文献】特開2005-145930(JP,A)      
【文献】特表2013-501051(JP,A)      
【文献】中国特許出願公開第101530401(CN,A)      
【文献】特開2005-068035(JP,A)      
【文献】特開2004-323502(JP,A)      
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K    31/00-31/80
A61K      9/00-  9/72
A61K    47/00-47/69
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
  リドカイン成分およびジクロフェナク成分を含む、
患者の疼痛の局所的な治療または予防において局所的に用いるための医薬用貼付剤であって、
  ジクロフェナク成分に対するリドカイン成分の相対的重量割合が、リドカインの非塩形態の当量およびジクロフェナクの非塩形態の当量に基づいて
、リドカイン成分:ジクロフェナク成分=7:1
~4:1の範囲内にあり、
  
リドカイン成分が非塩形態のリドカインであり、
            
  ジクロフェナク成分がジクロフェナク・エポラミンであり、
            
  患者の皮膚の領域に適用され、
連続して12時間よりも長い適用期間にわたってその適用が維持される、
医薬用貼付剤。
【請求項2】
  ジクロフェナク成分に対するリドカイン成分の相対的重量割合が、リドカインの非塩形態の当量およびジクロフェナクの非塩形態の当量に基づいて
、リドカイン成分:ジクロフェナク成分=6.5:1
~4.5:1の範囲内にある、請求項
1に記載の医薬用貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
  本発明は、疼痛の局所的な治療または予防における局所的使用のための、リドカイン成分およびジクロフェナク成分を含む医薬用貼付剤であって、ジクロフェナク成分に対するリドカイン成分の相対的重量割合が、リドカインおよびジクロフェナクの非塩形態の当量に基づいて、約7:1~約4:1の範囲内にあり、約12時間より長いが、好ましくは約24時間未満の適用期間にわたって、特に約18時間にわたって患者の皮膚の領域に適用され、その適用が持続される、医薬用貼付剤に関する。該医薬用貼付剤は、リドカインおよびジクロフェナクを皮膚内部に局所的に、場合によってはまた、有意な全身暴露を行うことなく、滑液などの他の組織に送達するのに適する。
【背景技術】
【0002】
  薬理学的に活性な成分を局所投与するのに、クリーム剤、ゲル剤、および軟膏剤などの多種多様な医薬製剤が従来技術から知られている。限局性の痛み(皮膚疼痛、筋肉痛、または関節痛)の治療には、これらの製剤は皮膚に局所的に適用され得る。
【0003】
  皮膚への局所適用のより精巧な手段が医薬用貼付剤である。しかしながら、大抵の医薬用貼付剤は、薬理学的に活性な成分を、全身投与、すなわち、それを局所投与するためではなく、経皮投与するように設計されている。医薬用貼付剤の経皮投与についての動作原理は、薬理学的に活性な成分が貼付剤から放出されること、該成分が皮膚バリアに入り、そこを通って浸透すること、そして該成分が皮下組織の潅流を通して体循環に入ることに依存しており、そこで該成分は標的とされる受容体でその薬理学的作用を発揮する。薬理学的に活性な成分の皮膚を通る浸透性は主にその物理化学特性によって決定され、これまで、皮膚投与に適する薬理学的に活性な成分の製剤は比較的少ない。
【0004】
  医薬用貼付剤はまた、薬理学的に活性な成分の非全身投与、すなわち、皮膚投与にも有用である可能性がある。一般に、例えば、皮膚投与用の鎮痛剤の医薬用貼付剤は、疼痛を和らげる望ましい薬理学的効果の他に、次の要件:
・長期にわたって適用した後でも、接触域で皮膚刺激なしで皮膚への接着性が良好であること;
・できるだけ目立たない適切な大きさであること;
・保存可能期間および貯蔵安定性が良好であること、例えば、薬理学的に活性な成分が再結晶しないこと、薬理学的に活性な成分の化学分解が低下することや、あるいは抑制さえされること;および
・流動速度をうまく調整し、医薬用貼付剤に含有される薬理学的に活性な成分を一定のまたはほぼ一定の流動速度で所定の期間にわたってできるだけ多くの関連する標的組織で利用できるようにすること
を満たさなければならない。
【0005】
  リドカインを局所投与するための組成物、ならびにジクロフェナクを局所投与するための組成物は従来技術より公知である。リドカイン貼付剤は、Lidoderm(登録商標)およびVersatis(登録商標)の商品名で販売されている。製品概要(SmPC)によれば、慢性疼痛の症状の治療にVersatis(登録商標)を用いる場合、Versatis(登録商標)は、24時間で、12時間はオンで、12時間はオフで1~3個の貼付剤を同時に使用することについて、長期使用に対して制限なく承認されている。ジクロフェナク貼付剤は、Flector Tissugel(登録商標)の商品名で販売されている。ジクロフェナクのゲル製剤は、Voltaren(登録商標)の商品名で利用できる。SmPCによれば、Flector Tissugel(登録商標)を用いる場合、24時間の範囲内で、最初の貼付剤を12時間適用し、取り外し、そして次の12時間は次の貼付剤と取り換える、すなわち、貼付剤のない期間を設けることなく、2個の貼付剤が24時間適用される。この治療計画は14日間に限定され、長期使用は承認されていない。
【0006】
  US2005/256187は、神経筋痛の症状を相乗的に局所治療するための方法および組成物に関する。この方法では、無傷の皮膚または傷口のある(open)皮膚のために、適切な局所用医薬製剤の使用が記載される。この製剤には、エステルまたはアミド型の一連の局所用麻酔剤に由来するナトリウムチャネルブロッカー、および一連の非ステロイド系抗炎症剤に由来する物質が適切な濃度で配合されており、その選択的放出が皮膚表面の上でまたは内側で起こる。この療法は、炎症性疼痛因子を細胞レベルで阻害し、またその反応における神経細胞の痛みのインパルスの伝達を同時に阻害することによって、薬理学的により効果的な神経筋痛の軽減を達成する。
【0007】
  US2011/008413は経皮薬物送達システムに関する。より詳細には、US2011/008413は、手根管症候群または腱炎に付随する徴候を治療および/または緩和するための組成物および経皮薬物送達システムを提供する。
【0008】
  US2011/033545は、急性および慢性疼痛およびそれに伴う炎症を治療するための局所用医薬調製物および方法に関する。
【0009】
  US7,018,647は、慢性関節リウマチ、変形性関節症、または腰痛などの炎症と関連付けられる疼痛に対して鎮痛効果のある外用皮膚貼付剤に関する。外用皮膚貼付剤は基質上の薬物含有基剤を被覆することにより得られ;その薬物含有基剤は、水溶性ポリマー材料、架橋剤、水、および保湿剤を必須成分として、ならびに局所麻酔剤および非ステロイド系消炎鎮痛剤を医薬成分として含有する接着性ゲル基剤を含む。
【0010】
  EP1405646は、局所麻酔剤(好ましくはリドカイン)の塩(I)と、抗炎症性化合物(II)(好ましくはジクロフェナク)とを一緒に開示する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
  従来技術での鎮痛組成物はあらゆる点で満足のいくものではない。本発明の目的は、疼痛の局所的な治療または予防に有用であり、従来技術の医薬品と比べて、有利な点のある医薬品を提供することである。痛みの緩和を改善し、持続させ、ならびにコンプライアンスおよび耐容性などの観点から、特に皮膚への異痛のない場合に限定されるものではないが、患者に他の利点があることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0012】
  本発明の目的は、特許請求の範囲の記載によって、特にリドカイン成分およびジクロフェナク成分を含む、疼痛の局所的な治療または予防において局所的に使用するための医薬用貼付剤であって、そのジクロフェナク成分に対するリドカイン成分の相対的含有量の割合が、リドカインおよびジクロフェナクの非塩形態の当量に基づいて、各々、約7:1~約4:1の範囲内にあり、患者の皮膚領域に適用され、約12時間よりも長いが、好ましくは約24時間未満で、特に約18時間の適用期間にわたって適用され続ける、医薬用貼付剤によって達成される。好ましい実施態様において、疼痛は神経障害性疼痛であるか、または神経障害性疼痛の要素を有する。
【0013】
  意外にも、リドカインおよびジクロフェナクは皮膚に同時に局所的に適用されると、それらが疼痛の治療においてシナジー作用を発揮することが発見され、それ故に本発明は医薬用局所貼付剤などの局所製剤にて同時投与することによって患者に利益を提供するものである。
【0014】
  特に、意外にも、ジクロフェナクの薬理作用が、リドカインとの局所的な同時投与により、長くなり、増強されることが発見された。その上、リドカインの薬理作用が延びたことも望ましい。ジクロフェナクの持続的作用は、基本的には、リドカインとの薬物動態学的および薬力学的の両方の相互作用を暗示し得る。しかしながら、ラットにおけるインビボでの静脈内同時投与およびインビトロでのフランツ(Frantz)細胞実験は、薬物動態学的相互作用を欠くことを明らかにした。それゆえ、意外なことに、リドカインとジクロフェナクの相互作用は薬理型であるようである。
【0015】
  本発明に係る医薬用貼付剤でのジクロフェナクとリドカインとの組み合わせは、予期せぬことに、薬理学的相互作用に起因して、単一の化学薬剤と比べて、治療的に有意な優位性があるとの証拠を提供する。意外にも、多量のリドカインを付加すると、多様な実験的試験を介して、ジクロフェナクの長期に及ぶ薬理学的増強作用、および融合的(coalistic)薬理学的作用の両方(いずれも個々に薬物活性ではない)が付与された。これらの実験的知見に鑑みて、ジクロフェナクおよびリドカインを含む医薬用貼付剤は、臨床の場において、モル過剰のリドカインの存在下でジクロフェナクの薬理学的増強作用および融合的作用を複製し、完全に利用するために、リドカインをモル過剰量で含むように設計された。ジクロフェナクの薬理学的効果の持続時間は、貼付剤中のリドカインの量の関数であり;リドカインが多いほど、ジクロフェナクの薬理学的効果は強くおよび/または長くなる、と考えられる。
【0016】
  さらには、意外にも、本発明のジクロフェナクとリドカインとの組み合わせを皮膚に適用した場合、予期せぬことに、神経障害性疼痛の局所的軽減が得られうることが発見された。ジクロフェナクは、単独では、神経障害性疼痛に対して薬力学的には効果的でないと考えられる。リドカインは、単独で、皮膚の表面に位置する神経障害性疼痛(異痛)に対して鎮痛作用を有するが、解剖学的見地からより深い部位にある構造体にある場合には鎮痛作用がない。しかしながら、局所投与されると、リドカイン単独での貼付剤は侵害受容性疼痛に対して鎮痛作用を有しない。意外にも、ジクロフェナクとリドカインとを局所的に同時投与した場合に、神経障害性疼痛に対して、および神経障害性要素を有する疼痛に対して鎮痛効果のあることが判明した。リドカインとジクロフェナクとの局所的同時投与は、以前にはアクセスできなかった炎症成分を阻害することによって神経障害性疼痛の緩和を促進しているようである。侵害受容性疼痛と神経障害性疼痛との相互作用は、今のところ、測定可能/定量可能でも、予測可能でもない。侵害受容性疼痛は、両方の疼痛要素、侵害受容性疼痛の要素、ならびに神経障害性疼痛の要素を含む、いわゆる混合疼痛状況に至る神経障害性疼痛に変化するかもしれない。
【0017】
  さらには、意外にも、本発明に係るジクロフェナクとリドカインとの組み合わせが、腎臓および/または肝臓の障害に冒されている患者を治療するのに特に有用であることが判明した。薬物の組み合わせを局所投与することによって新たに発見された治療的利益の保持または強化、ならびに両方の薬物で得られる無視できる全身性血漿中濃度を考慮して、腎障害および/または肝障害のためにジクロフェナクおよび/またはリドカインで全身的に治療できなかった患者も、この度、本発明に係る医薬用貼付剤で治療され得る。
【0018】
  本発明に係る医薬用貼付剤は局所的に皮膚に適用されると、リドカインおよびジクロフェナクは皮膚に投与され、すなわち、皮膚を(皮内に)浸透し、可能であればまた、皮膚を通って皮下組織、筋肉、および滑液などのような皮下領域に十分な量および速度で浸透し、所望の鎮痛効果を局所的に引き起こす。
【0019】
  予期せぬことに、リドカインとジクロフェナクが相乗的に作用することが発見されたため、これまでにリドカインおよび/またはジクロフェナクを単独で用いて治療できなかった痛みの症状、特に炎症性疼痛および神経障害性疼痛によって特徴付けられる疾患または症状の治療が可能となる。炎症性疼痛の例として、限定されないが、骨関節炎および腰痛に起因する疼痛が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
            【
図1】比較例1におけるリドカイン投与の結果を示す図である。
 
            【
図2】比較例1におけるジクロフェナク投与の結果を示す図である。
 
            【
図3】実施例1における投与後0~90分間の結果を示す図である。
 
            【
図4】実施例1における投与後90~240分間の結果を示す図である。
 
            
            
            
            【
図8】ジクロフェナク投与、リドカイン投与、および組み合わせ投与の比較を示す図である。
 
            【
図9】CFA-PPTでのリドカイン/ジクロフェナク(離脱閾値)を示す図である。
 
            【
図10】比較例2におけるリドカインの60mg/ml投与の結果を示す図である。
 
            【
図11】比較例2におけるリドカインの30~60mg/ml投与の結果を示す図である。
 
            【
図12】比較例2におけるジクロフェナクの40~80mg/ml投与の離脱閾値を示す図である。
 
            【
図13】比較例2におけるジクロフェナクの40~80mg/ml投与の投与前の値に対する%変化を示す図である。
 
            
            【
図15】実施例6におけるジクロフェナク:リドカインの60mg/ml:30mg/mlの投与の結果を示す図である。
 
            【
図16】実施例6におけるジクロフェナク:リドカインの80mg/ml:40mg/mlの投与の結果を示す図である。
 
            
            
            【
図19】本発明に係る貼付剤(T)およびVersatis(登録商標)の貼付剤(R1)を18時間適用した後のリドカインの血漿中平均濃度-時間のプロフィール-PKセットを示す図である。
 
            【
図20】本発明に係る貼付剤(T)およびVersatis(登録商標)の貼付剤(R1)を18時間適用した後の2,6-キシリジン(リドカインの代謝産物)の血漿中平均濃度-時間のプロフィール-PKセットを示す図である。
 
            【
図21】本発明に係る貼付剤(T)およびFlector(登録商標)の貼付剤(R2)を18時間適用した後のジクロフェナクの血漿中平均濃度-時間のプロフィール-PKセットを示す図である。
 
          
【発明を実施するための形態】
【0021】
  本発明の第1の態様は、リドカイン成分およびジクロフェナク成分を含む、疼痛の局所的な治療または予防において局所的に用いるための医薬用貼付剤であって、
  ジクロフェナク成分に対するリドカイン成分の相対的重量割合が、各ケースで、リドカインの非塩形態およびジクロフェナクの非塩形態の当量に基づき、約7:1~約4:1、好ましくは約6.5:1~約4.5:1、より好ましくは約6:1~約5:1の範囲内にあり、
  患者の皮膚の領域に適用され、約12時間よりも長い適用期間にわたってその適用が維持される、
医薬用貼付剤に関する。
【0022】
  好ましくは、疼痛は神経障害性疼痛であるか、または該疼痛は神経障害性疼痛の要素を有するか、例えば神経障害性要素を有する炎症性疼痛であるか、あるいは該疼痛が混合痛の状況により侵害受容性疼痛および/または神経障害性疼痛のいずれかの不明瞭な定量的起源の疼痛である。
【0023】
  当業者は、医薬用貼付剤が、通常、種々の構成要素からなることを理解する。医薬用貼付剤のいくつかの構成要素、例えば、接着剤層(薬物含有接着剤層)あるいは別個のデポーまたはリザーバー層は、通常、医薬組成物を収容または含む能力を有するか、あるいは収容または含むように充てられるが、医薬用貼付剤の支持体層または剥離ライナーなどの他の構成要素は、典型的には、医薬組成物を収容または含むように充てられず、それを収容または含む能力も有しない。
【0024】
  本明細書において、特記されない限り、全ての重量%は、乾燥単位当たりの総重量という観点で、医薬用貼付剤の総重量またはその特定の層の総重量に関する。この点において、「乾燥単位」は、成分が固体、半固体、または液体の形態にて存在するかどうかに関係なく、その全ての成分を包含するが、エタノール、ヘプタン、および酢酸エチルなどの医薬用貼付剤を製造する過程で蒸発する揮発性溶媒は含まない。それゆえ、「乾燥単位」は、揮発性溶媒のうちの残りの含有物、例えば、あるとすれば、ヒドロゲルの水を包含するにすぎない。
【0025】
  本発明に係る医薬用貼付剤は、好ましくは、表面層と、接着剤層と、取り外し可能な保護層とを含み、ここで該接着剤層は、好ましくは、表面層(「支持体層」とも言う)と、取り外し可能な保護層(「剥離ライナー」とも言う)との間に位置付けられる。
【0026】
  リドカイン成分およびジクロフェナク成分は、医薬用貼付剤の同じ層に、あるいは別の層にて少なくとも部分的に含有されてもよい。
【0027】
  好ましい実施態様において、接着剤層は、医薬用貼付剤に含有されるリドカイン成分の全重量の少なくとも一部分、およびジクロフェナク成分の全重量の少なくとも一部分を含む。
【0028】
  好ましい実施態様において、接着剤層は取り外し可能な保護層および/または表面層に隣接する。好ましくは、接着剤層は取り外し可能な保護層と表面層に隣接する。特に好ましい実施態様において、医薬用貼付剤は、表面層、接着剤層、および取り外し可能な保護層からなり、付加的な層を含有しない。
【0029】
  好ましくは、リドカイン成分およびジクロフェナク成分は本発明に係る医薬用貼付剤の接着剤層(マトリックス貼付剤)に含有される。マトリックス貼付剤は、典型的には、医薬用貼付剤の皮膚への接着を提供する接着剤層でもあるマトリックス中に薬理学的に活性な成分を含有する(薬物含有接着剤)。
【0030】
  接着剤層は、好ましくは、表面層と取り外し可能な保護層との間に位置付けられる。好ましくは、表面層は医薬用貼付剤の外面を形成し、すなわち、医薬用貼付剤が皮膚に適用されると、表面層は医薬用貼付剤の可視できる層である。
【0031】
  好ましくは、接着剤層の2つの対向面の一方は取り外し可能な保護層と密に接触し、すなわち該保護層に隣接している。
【0032】
  好ましい実施態様において、接着剤層の2つの対向面の他方は、同様にして、その外面にて、医薬用貼付剤の外面を形成する表面層と密に接触する。本発明のこの実施態様によれば、医薬用貼付剤は、接着剤層がリドカイン成分およびジクロフェナク成分を含有するように(薬物含有接着剤)、表面層、接着剤層、および取り外し可能な保護層からなることが好ましい。
【0033】
  リドカイン成分およびジクロフェナク成分を含有する接着剤層は、液体、半固体、または固体ポリマーマトリックスの形態にて存在してもよい。
【0034】
  好ましい実施態様において、接着剤層は、リドカイン成分およびジクロフェナク成分を溶液または懸濁液の形態にて含有する、液体、好ましくは水を含む。
【0035】
  もう一つ別の好ましい実施態様において、接着剤層はゲルなどの半固体、または固体のポリマーマトリックスであり、その中にリドカイン成分および/またはジクロフェナク成分が分散、好ましくは溶解されている。
【0036】
  好ましい実施態様において、リドカイン成分および/またはジクロフェナク成分の全量が分子分散形態にて存在する。
【0037】
  もう一つ別の好ましい実施態様において、リドカイン成分の一部だけ、および/またはジクロフェナク成分の一部だけが分子分散形態にて存在し、その一方でリドカイン成分の残りおよび/またはジクロフェナク成分の残りは、デポー(ミクロリザーバーとも称される)の目的に供する、非分子分散形態にて(例えば、小滴および結晶などの形態にて)存在する。
【0038】
  好ましくは、リドカイン成分および/またはジクロフェナク成分は接着剤層中に含有され、その一方で特定の一部のリドカイン成分および/またはジクロフェナク成分は、例えば、移動および/または拡散のために、隣接する層中にて含有されてもよい。
【0039】
  好ましい実施態様において、接着剤層は少なくとも一部のリドカイン成分および少なくとも一部のジクロフェナク成分を、好ましくは本質的に全量のリドカイン成分および本質的に全量のジクロフェナク成分を含むヒドロゲルである。
【0040】
  皮膚に、好ましくはヒト皮膚に適用された後、本発明に係る医薬用貼付剤は、好ましくは、リドカイン成分ならびにジクロフェナク成分を、それらが医薬組成物中に含有される形態にて、あるいはその修飾された形態にて、相互に独立して放出する。例えば、リドカイン成分が非塩形態のリドカインである場合、本発明に係る医薬用貼付剤は、好ましくは、リドカインを非塩形態にて放出する。ジクロフェナク成分が塩形態のジクロフェナク、例えば、ジクロフェナク・カリウム塩である場合、本発明に係る医薬用貼付剤は、好ましくは、ジクロフェナクを非塩形態、または塩形態のいずれかにて放出する。
【0041】
  好ましい実施態様において、本発明に係る医薬用貼付剤は、リドカイン成分および/またはジクロフェナク成分を局所投与するためのものである。
【0042】
  好ましくは、リドカイン成分についての、およびジクロフェナク成分についての投与経路は同じであり、すなわち好ましくは、リドカイン成分およびジクロフェナク成分は共に局所投与用であるか、リドカイン成分およびジクロフェナク成分は共に非経口的局所投与用である。しかしながら、本発明はまた、ジクロフェナク成分が局所投与用であり、その一方でリドカイン成分が非経口的局所投与用である実施態様、およびリドカイン成分が局所投与用であり、その一方でジクロフェナク成分が非経口的局所投与用である実施態様を包含する。
【0043】
  医薬用貼付剤は、好ましくは、少なくとも5cm2、少なくとも10cm2、または少なくとも20cm2、より好ましくは少なくとも30cm2、少なくとも40cm2、または少なくとも50cm2、さらにより好ましくは少なくとも60cm2、少なくとも70cm2、または少なくとも80cm2、最も好ましくは少なくとも90cm2、少なくとも100cm2、または少なくとも110cm2の面積を有する。皮膚は、好ましくは、約50cm2~約250cm2、より好ましくは、約100cm2~約200cm2の範囲内で表面と接触する。
【0044】
  本発明に係る医薬用貼付剤は、種々の形状、例えば、円形または長方形とすることができ、後者では角が丸みを帯びていても、いなくてもよい。医薬用貼付剤が、関節、例えば膝または肘の皮膚に適用される場合、その形状は患者のスムーズな動きを可能とするようにカスタマイズされてもよい。
【0045】
  本発明に係る医薬用貼付剤の全体としての厚みは特に制限されない。
【0046】
  医薬用貼付剤の全体としての厚みは、好ましくは、500μm~2500μm、より好ましくは、750μm~2000μm、さらにより好ましくは、1000μm~1750μmの範囲内にある。
【0047】
  本発明に係る医薬用貼付剤は、リドカイン成分、すなわちリドカインまたはその生理学的に許容される塩を含む。
【0048】
  リドカイン(すなわち、2-(ジエチルアミノ)-N-(2,6-ジメチルフェニル)アセトアミド)(キシロカインまたはリドカインとしても知られる)は、特定の領域にある組織を麻痺させるのに、心室性頻拍症を治療するのに、および神経を遮断するのに有用である。リドカインは、次の構造式:
            【化1】
を有する。
 
【0049】
  リドカインはクラスIb型の抗不整脈薬である。リドカインはナトリウムチャネルを遮断することで作用し、そうして心臓の収縮速度を減少させる。しびれ薬として局所的に使用されると、局所にある神経細胞は脳にシグナルを伝達できない。
【0050】
  具体的に示すために、「リドカイン成分」なる表現は、非塩形態のリドカインを、または生理学的に許容される塩形態のリドカインをいう。さらには、「リドカイン成分」なる表現はまた、多形体などのいずれの固形体、溶媒和物および共結晶体などの他の分子とのいずれの集合体、ならびにプロドラッグなどのいずれの誘導体も包含する。
【0051】
  好ましくは、リドカイン成分は、リドカイン、またはその生理学的に許容される塩を含むか、本質的にそれらから構成されるか、またはそれら自体であり、好ましくはリドカインの非塩形態である。リドカインがジクロフェナクとの塩を形成することも可能である。明示的に別段の定めをした場合を除き、本発明でのリドカイン成分の含有量または数量を規定する全ての数値は、リドカインの非塩形態の当量をベースとする。
【0052】
  本発明に係る医薬用貼付剤中のリドカイン成分の含有量は特に制限されない。
【0053】
  接着剤層中のリドカイン成分の濃度(含有量)は、接着剤層の総重量に対して、リドカインの非塩形態の重量に基づいて、好ましくは少なくとも0.10重量%であり、より好ましくは少なくとも0.20重量%であり、さらに好ましくは少なくとも0.30重量%であり、さらにより好ましくは少なくとも0.40重量%であり、さらにいっそう好ましくは少なくとも0.50重量%であり、最も好ましくは少なくとも0.60重量%であり、とりわけ少なくとも0.70重量%である。
【0054】
  リドカイン成分の含有量は、接着剤層の総重量に対して、リドカインの非塩形態の重量に基づいて、好ましくは0.01重量%~50重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%の範囲内にある。
【0055】
  接着剤層中のリドカイン成分の含有量は、リドカインの非塩形態の重量に基づいて、各ケースにて、好ましくは約2.5重量%~約7.5重量%、より好ましくは約3.0重量%~約7.0重量%、さらに好ましくは約3.5重量%~約6.5重量%、さらにより好ましくは約4.0重量%~約6.0重量%、最も好ましくは約4.5重量%~約5.5重量%の範囲内にある。
【0056】
  接着剤層中にてリドカイン成分を含有する面積濃度は、好ましくは、0.01~100g/m2の範囲内にある。典型的な面積濃度は、例えば、140cm2中に700mg、すなわち0.7g/0.014m2=50g/m2(5mg/cm2)である。接着剤層中のリドカイン成分の面積濃度は、リドカインの非塩形態の重量に基づいて、各ケースにて、好ましくは5.0±4.0mg/cm2、より好ましくは5.0±3.0mg/cm2、さらに好ましくは5.0±2.0mg/cm2、最も好ましくは5.0±1.0mg/cm2の範囲内である。
【0057】
  医薬用貼付剤に含有されるリドカイン成分および/またはジクロフェナク成分の用量の合計は、特に限定されないが、治療されるべき対象の体重、および皮膚に適用される期間などの種々の因子に応じて変化しうる。
【0058】
  リドカイン成分の用量の合計は、リドカインの非塩形態の重量に基づいて、各ケースにて、好ましくは約600mg~約800mg、より好ましくは約650mg~約750mg、最も好ましくは約700mg(例えば、699mgまたは701mg)である。
【0059】
  本発明に係る医薬用貼付剤は、ジクロフェナク成分、すなわちジクロフェナクまたはその生理学的に許容される塩を含む。
【0060】
  ジクロフェナクは、炎症を鎮めるために、特定の症状における疼痛を軽減する鎮痛薬として摂取または適用される非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)である。「ジクロフェナク」なる名称はその化学名:2-(2,6-ジクロラニリノ)フェニル酢酸:
            【化2】
に由来する。
 
【0061】
  具体的に示すために、「ジクロフェナク成分」なる表現は、非塩形態のジクロフェナク、または生理学的に許容される塩、特にナトリウム塩、最も好ましくはエポラミン塩形態のジクロフェナクをいう。さらには、「ジクロフェナク成分」なる表現はまた、多形体などのいずれの固形体、溶媒和物および共結晶体などの他の分子とのいずれの集合体、ならびにプロドラッグなどのいずれの誘導体も包含する。
【0062】
  好ましくは、ジクロフェナク成分は、ジクロフェナク、またはその生理学的に許容される塩を含むか、本質的にそれらから構成されるか、またはそれら自体であり、好ましくはジクロフェナク・エポラミンである。ジクロフェナクがリドカインとの塩を形成することも可能である。明示的に別段の定めをした場合を除き、本発明でのジクロフェナク成分の含有量または数量を規定する全ての数値は、ジクロフェナクの非塩形態の当量をベースとする。
【0063】
  本発明に係る医薬用貼付剤中のジクロフェナク成分の含有量は、特に制限されない。
【0064】
  接着剤層中のジクロフェナク成分の濃度(含有量)は、接着剤層の総重量に対して、ジクロフェナクの非塩形態の重量に基づいて、好ましくは少なくとも0.10重量%、より好ましくは少なくとも0.20重量%、さらに好ましくは少なくとも0.30重量%、さらにより好ましくは少なくとも0.40重量%、さらにいっそう好ましくは少なくとも0.50重量%、最も好ましくは少なくとも0.60重量%、特に少なくとも0.70重量%である。
【0065】
  ジクロフェナク成分の含有量は、接着剤層の総重量に対して、ジクロフェナクの非塩形態の重量に基づいて、好ましくは0.01重量%~50重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%の範囲内にある。
【0066】
  接着剤層中のジクロフェナク成分の含有量は、ジクロフェナクの非塩形態の重量に基づいて、各ケースにて、好ましくは約0.50重量%~約1.40重量%、より好ましくは約0.60重量%~約1.30重量%、さらに好ましくは約0.70重量%~約1.20重量%、さらにより好ましくは約0.80重量%~約1.10重量%、最も好ましくは約0.90重量%~約1.00重量%の範囲内にある。
【0067】
  接着剤層および薬物層中でのジクロフェナク成分の面積濃度は、好ましくは、各々、0.01~50g/m2の範囲内にある。典型的な面積濃度は、例えば、140cm2中に130mg、すなわち0.13g/0.014m2=9.3g/m2(0.93mg/cm2)である。接着剤層中のジクロフェナク成分の面積濃度は、ジクロフェナクの非塩形態の重量に基づいて、各ケースにて、好ましくは0.93±0.80mg/cm2、より好ましくは0.93±0.60mg/cm2、さらにより好ましくは0.93±0.40mg/cm2、最も好ましくは0.93±0.20mg/cm2の範囲内にある。
【0068】
  医薬用貼付剤に含有されるジクロフェナク成分の全用量は、特に限定されないが、治療されるべき対象の体重、および皮膚での適用期間などの種々の因子に応じて変化しうる。
【0069】
  ジクロフェナク成分の全用量は、ジクロフェナクの非塩形態の重量に基づいて、好ましくは約85mg~約200mg、より好ましくは約100mg~約150mg、最も好ましくは約130mg(例えば、129mgまたは131mg)である。
【0070】
  ジクロフェナク成分に対するリドカイン成分の相対的重量割合は、リドカインの、およびジクロフェナクの非塩形態の当量に基づいて、各ケースにて、約7:1~5:1、好ましくは約6.5:1~約4.5:1、より好ましくは約6:1~約5:1の範囲内にある。
【0071】
  リドカインの非塩形態の分子量は約234g/モルである。ジクロフェナクの非塩形態の分子量は約296g/モルである。それゆえ、その両方が、リドカインの非塩形態、およびジクロフェナクの非塩形態の当量を単位として表される、ジクロフェナク成分に対するリドカイン成分の7:1との相対的重量割合は、約8.85:1の相対的モル割合に相当し、それに対して5:1の相対的重量割合は約6.32:1の相対的モル割合に相当する。
【0072】
  好ましくは、ジクロフェナク成分に対するリドカイン成分の相対的重量割合は、組成物が疼痛緩和についてシナジー効果を示すような重量割合である。
【0073】
  本発明に係る医薬用貼付剤は接着剤層を含むことが好ましい。
【0074】
  好ましくは、接着剤層はマトリックスを形成するポリマーを含み、そのマトリックス中にリドカイン成分および/またはジクロフェナク成分が分散されている(薬物含有接着剤)。
【0075】
  好ましくは、該接着剤層は、
(i)ポリシリコーンベースの感圧接着剤、
(ii)ポリアクリレートベースの感圧接着剤、
(iii)ポリイソブチレンベースの感圧接着剤、
(iv)スチレンゴムベースの感圧接着剤、および
(v)ヒドロゲルベースの感圧接着剤
からなる群より選択される感圧接着剤を含む。
【0076】
  接着剤層の厚みは、特に制限されず、貼付剤内での機能(例えば、薬物含有接着剤)、リドカイン成分および/またはジクロフェナク成分ならびに賦形剤の含有量、医薬用貼付剤を皮膚に適用する処方期間などの多くの因子に依存してもよい。
【0077】
  好ましくは、接着剤層の厚みは1.0~1000μmの範囲内にある。
【0078】
  接着剤層の厚みに対する表面層の厚みの割合は特に限定されない。好ましい実施態様において、表面層の厚みは接着剤層の厚みよりも大きい。もう一つ別の好ましい実施態様において、接着剤層の厚みは表面層の厚みよりも大きい。
【0079】
  好ましくは、接着剤層に含有される感圧接着剤は、ヒドロゲル形成剤、ヒドロコロイド、親水性ゲル形成剤、またはそれらの混合物をベースとすることが好ましいヒドロゲルを含む。
【0080】
  好ましい親水性ゲル形成剤、ヒドロゲル形成剤、およびヒドロコロイドは、各々、無機ヒドロゲル形成剤、天然有機ヒドロゲル形成剤、半合成有機ヒドロゲル形成剤、および合成有機ヒドロゲル形成剤を包含するが、これらに限定されない。好ましい天然有機ヒドロゲル形成剤は、寒天、アルギン酸およびアルギン酸塩、アラビアガム、ゼラチン、トラガカント、ならびにジャガイモデンプン、コーンスターチ、米デンプン、および小麦デンプンなどのデンプンを包含する。好ましい半合成有機ヒドロゲル形成剤は、セルロース誘導体、好ましくはメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルメロースナトリウム、およびヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)を包含する。好ましい合成有機ヒドロゲル形成剤は、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポビドン、およびコポビドンを包含する。
【0081】
  ヒドロゲルは、例えば、ポリ(ビニルアルコール)、カルメロースナトリウム、ポリ(アクリル酸)、ポリ(アクリル酸ナトリウム塩)、およびゼラチンを含む、ポリマー混合物を基礎としてもよい。
【0082】
  ヒドロゲルのさらなる成分として、グリセロール、プロピレングリコール、および/または精製水などの溶媒;ソルビトールおよび/または尿素などの保湿剤が挙げられてもよいが、これらに限定されない。
【0083】
  医薬用貼付剤の接着剤層は、医薬用貼付剤に慣用的に含有される他の医薬成分を含有してもよい。
【0084】
  医薬用貼付剤の接着剤層は、接着剤層および薬物層の各々の中にあるリドカイン成分および/またはジクロフェナク成分の結晶化を阻害する結晶化阻害剤を含むことが好ましい。それゆえ、結晶化阻害剤は、好ましくは、リドカイン成分および/またはジクロフェナク成分と同じ層に含有される。好ましくは、該層中に配合される結晶化阻害剤の量は、該層の総重量に対して、1.0~20重量%、より好ましくは2.5~17.5重量%、さらに好ましくは5.0~15重量%、さらにより好ましくは6.0~14重量%、さらにいっそう好ましくは7.0~13重量%、最も好ましくは8.0~12重量%、特に9.0~11重量%の範囲内にある。好ましい結晶化阻害剤として、ポリビニルピロリドン(ポビドン、ポリビドン)(例えば、コリドン(Kollidon)25)、N-ビニル-1-アザ-シクロヘプタン-2-オン・ホモポリマー、N-ビニルピぺリジン-2-オン・ホモポリマー、ポリエチレングリコール、ポロキサマー(例えば、ルトロール(Lutrol)F127)、およびコポビドン(例えば、コリドンVA64)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0085】
  結晶化阻害剤に対するリドカイン成分およびジクロフェナク成分の総含有量のモル割合は、好ましくは1000:1~1:1000、より好ましくは250:1~1:250、さらに好ましくは100:1~1:100、さらにより好ましくは50:1~1:50、さらにいっそう好ましくは25:1~1:25、最も好ましくは10:1~1:10、特に5:1~1:5の範囲内にある。
【0086】
  本発明に係る医薬用貼付剤の接着剤層は、好ましくは、リドカイン成分および/またはジクロフェナク成分のヒト皮膚内への、場合によってはまた、ヒト皮膚を通り、組織下への、皮内浸透および透過を促進する透過成分を、すなわち、1つ以上の皮内浸透促進剤を含有するのが好ましい。皮内浸透促進剤は当業者に公知である(例えば、Smithら、Intradermal Penetration Enhancers, CRC Press, 1995を参照のこと)。
【0087】
  好ましくは、リドカイン成分および/またはジクロフェナク成分を含有する医薬用貼付剤の接着剤層は、少なくとも1つの皮内浸透促進剤を含有する。
【0088】
  透過成分に対するリドカイン成分およびジクロフェナク成分の総重量の相対的重量割合は、好ましくは25:1~1:1000、より好ましくは10:1~1:250、さらに好ましくは5:1~1:100、さらにより好ましくは1:1~1:50、さらにいっそう好ましくは1:2~1:25、最も好ましくは1:6~1:20、特に1:9~1:17の範囲内にある。
【0089】
  接着剤層内に含まれる透過成分の含有量は、接着剤層の全重量に対して、好ましくは1.0~20重量%、より好ましくは2.5~17.5重量%、さらに好ましくは5.0~15重量%、さらにより好ましくは6.0~14重量%、さらにいっそう好ましくは7.0~13重量%、最も好ましくは8.0~12重量%、特に9.0~11重量%の範囲内にある。
【0090】
  好ましい皮内浸透促進剤として、
a)ジメチルスルホキシド(DMSO)およびデシルメチルスルホキシドなどのスルホキシド;
b)ジエチレングリコールモノエチルエーテル(トランスクトール)およびジエチレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル;
c)ラウリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、セチルトリメチルアンモニウムブロミド、塩化ベンザルコニウム、ポロキサマー、ポリソルベート(例えば、ポリソルベート80)、およびレシチンなどの界面活性剤;
d)1-n-ドデシルシクロアザシクロヘプタン-2-オンなどの1-置換アザシクロヘプタン-2-オン;
e)エタノール、プロパノール、オクタノール、ドデカノール、オレイルアルコール、およびベンジルアルコールなどのアルコールおよび脂肪アルコール;
f)プロピレングリコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、ソルビトール、ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン(例えば、モビオール4-88)、トリアセチン、およびポリエチレングリコール・モノラウレートなどのポリオール、ポリオールのエステル、およびポリオールのエーテル;
g)サリチル酸およびサリチル酸塩、クエン酸、レブリン酸、カプリル酸、およびコハク酸などの有機酸;ならびにジカルボン酸およびセバシン酸ジブチレンなどのそれらのエステル;
h)ラウリン酸、オレイン酸、および吉草酸などの脂肪酸;パルミチン酸イソプロピル、プロピレングリコールモノラウレート、乳酸ラウリル、オレイン酸オレイル、およびオレイン酸エチルなどの脂肪酸エステル;
i)尿素、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、およびラウロカプラム(アゾン(Azone)(登録商標))などのアミドおよび他の窒素化合物;
j)テルペン;
k)アルカノン;
l)他のオリゴマーまたはポリマー;
ならびに上記のいずれかの物質の混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0091】
  好ましくは、医薬用貼付剤の接着剤層は酸化防止剤を含む。適切な酸化防止剤は、アルファートコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、アスコルビン酸、またはn-プロピルガレートを包含するが、これらに限定されない。
【0092】
  好ましくは、接着剤層は、エデト酸ナトリウムまたはエデト酸二ナトリウムなどのキレート化剤を含む。
【0093】
  好ましくは、接着剤層は、メチル-4-ヒドロキシベンゾエートおよび/またはプロピル-4-ヒドロキシベンゾエートなどの保存剤を含む。
【0094】
  酸化防止剤の含有量は、接着剤層の総重量に対して、好ましくは0.01~10重量%、より好ましくは0.05~7.5重量%、さらに好ましくは0.1~2.5重量%、さらにより好ましくは0.5~1.5重量%、さらにいっそう好ましくは0.7~1.3重量%、最も好ましくは0.8~1.2重量%、特に0.9~1.1重量%の範囲内にある。
【0095】
  キレート化剤の含有量は、接着剤層の総重量に対して、好ましくは0.001~1.0重量%、より好ましくは0.005~0.75重量%、さらに好ましくは0.01~0.25重量%、さらにより好ましくは0.05~0.15重量%、さらにいっそう好ましくは0.07~0.13重量%、最も好ましくは0.08~0.12重量%、特に0.09~0.11重量%の範囲内にある。
【0096】
  保存剤の含有量は、接着剤層の総重量に対して、好ましくは0.001~1.0重量%、より好ましくは0.005~0.75重量%、さらに好ましくは0.01~0.5重量%、さらにより好ましくは0.02~0.25重量%、さらにいっそう好ましくは0.03~0.2重量%、最も好ましくは0.04~0.15重量%、特に0.05~0.1重量%の範囲内にある。
【0097】
  好ましい実施態様において、本発明に係る医薬用貼付剤は、満足のいく貯蔵安定性および保存期間を示す。この点について、「満足のいく」なる語は、好ましくは、本発明に係る医薬用貼付剤が、好ましくは、FDAおよび/またはEMAによる貯蔵安定性および保存期間についての要件を満たすことを意味する。
【0098】
  本発明に係る医薬用貼付剤は、好ましくは、表面層を含む。
【0099】
  本明細書にて使用される「表面層」なる語は、医薬用貼付剤を適用した後に表面層となるいずれの層をもいう。この定義は、医薬用貼付剤にて一般的に使用される耐久性の支持体層、および薄くて柔軟性のある貼付剤に典型的に使用される取り外しできない薄フィルムを包含する。表面層は、テッシュ、織布、不織布、およびフリースなどを包含してもよい。ポリエチレンテレフタラート不織布が好ましい。
【0100】
  表面層の厚みは特に限定されない。好ましくは、表面層の厚みは0.1~5000μmの範囲内にある。
【0101】
  本発明に係る医薬用貼付剤は、好ましくは、取り外し可能な保護層(剥離ライナー)を含む。
【0102】
  好ましくは、取り外し可能な保護層は、ポリマーフィルムおよびシリコーンコーティングまたはフルオロポリマーコーティングを含む。好ましくは、ポリマーフィルムは、ポリオレフィン、特にポリエチレンまたはポリプロピレンのフィルム、またはポリエステル、特にポリエチレンテレフタラートのフィルムである。
【0103】
  好ましい実施態様において、取り外し可能な保護層は、シリコーン被覆ポリオレフィンまたはシリコーン被覆ポリエステルフィルム、例えば、シリコーン被覆のポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、またはポリエチレンフィルムである。
【0104】
  もう一つ別の好ましい実施態様において、取り外し可能な保護層は、フルオロポリマー被覆のポリオレフィンまたはポリエステルフィルム、例えばフルオロポリマー被覆のポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレン、またはポリエチレンフィルムである。
【0105】
  取り外し可能な保護層の厚みは特に限定されない。好ましくは、取り外し可能な保護層の厚みは、0.1~500μmの範囲内にある。
【0106】
  本発明に係る医薬用貼付剤は医薬用貼付剤を製造するための標準的技法により製造され得る。かかる標準的技法は当業者に公知である(例えば、H.A.E. Bensonら、Topical and Dermal Drug Delivery: Principles and Practice, John Wiley & Sons; 2011; A.K. Banga, Dermal and Intradermal Delivery of Therapeutic Agents: Application of Physical Technologies, CRC Press Inc;2011を参照のこと)。
【0107】
  本発明に係る医薬用貼付剤は、疼痛、好ましくは中程度~重度の疼痛の治療または予防に使用されるものである。同様に、本発明はまた、疼痛、好ましくは中程度~重度の疼痛を治療または予防するための本発明に係る医薬用貼付剤の製造における、本発明に係るリドカイン成分および/またはジクロフェナク成分の使用に関する。同様に、本発明はまた、疼痛、好ましくは中程度~重度の疼痛を治療または予防する方法であって、本発明に係る医薬用貼付剤をその必要とする対象の皮膚に適用することを含む方法に関する。
【0108】
  治療または予防される疼痛は、中程度、中程度~重度、または重度であることが好ましい。該疼痛は、慢性または急性であっても;および/または中枢および/または末梢であっても;および/または神経障害性および/または侵害受容性であってもよい。中枢性/末梢性疼痛との、および侵害受容性/神経障害性疼痛との関連において、「および/または」は、全ての痛みが異なる成分、例えば侵害受容性成分、ならびに神経障害性成分を有する可能性のあることを反映する。好ましくは、該疼痛は、末梢であっても中枢であってもよい慢性神経障害性疼痛であり;末梢であっても中枢であってもよい急性神経障害性疼痛であり;末梢であっても中枢であってもよい慢性侵害受容性疼痛であり;あるいは末梢であっても中枢であってもよい急性侵害受容性疼痛である。異なる成分を診断し、区別する方法は当業者に公知である。例えば、神経障害性疼痛の要素は、ペインDETECTアンケートの手段により診断されてもよい。
【0109】
  疼痛は、急性または慢性の疼痛、中枢または末梢の疼痛、内臓痛、炎症性、または神経障害性疼痛であってもよい。
【0110】
  好ましい実施態様において、疼痛は急性疼痛または慢性疼痛である。
【0111】
  好ましい実施態様において、疼痛は、背痛、好ましくは腰痛;骨関節炎に起因する疼痛、好ましくは膝の骨関節炎、腰の骨関節炎、手の骨関節炎、脊椎の骨関節炎、または肘の骨関節炎に起因する疼痛;内臓痛、リウマチ性疼痛、筋骨格痛、関節痛、痛風性疼痛、または炎症性疼痛である。
【0112】
  好ましくは、本発明に係る医薬組成物ならびに医薬用貼付剤は、炎症性疼痛、好ましくは慢性関節炎痛および腰痛、または神経障害性疼痛の要素での痛みの治療または予防に用いるのに適している。
【0113】
  本明細書において、神経障害性疼痛は、神経障害または神経機能異常に起因する疼痛である。好ましくは、神経障害性疼痛は急性神経障害性疼痛および慢性神経障害性疼痛より選択される。神経障害性疼痛は身体感覚(体性感覚系)を含む神経系の中枢または末梢部分に影響を及ぼす損傷または疾患により引き起こされるかもしれない。好ましくは、本発明に係る医薬用貼付剤は、慢性神経障害性疼痛または急性神経障害性疼痛、末梢神経障害性疼痛または中枢神経障害性疼痛、単神経障害性疼痛または多神経障害性疼痛の治療において使用されるためのものである。神経障害性疼痛が慢性である場合、その疼痛は慢性末梢神経障害性疼痛または慢性中枢神経障害性疼痛であってもよく、好ましい実施態様において、慢性末梢単神経障害性疼痛または慢性中枢単神経障害性疼痛であってもよく、もう一つ別の好ましい実施態様において、慢性末梢多神経障害性疼痛または慢性中枢多神経障害性疼痛であってもよい。神経障害性疼痛が急性である場合、その疼痛は急性末梢神経障害性疼痛または急性中枢神経障害性疼痛であってもよく、好ましい実施態様において、急性末梢単神経障害性疼痛または急性中枢単神経障害性疼痛であってもよく、もう一つ別の好ましい実施態様において、急性末梢多神経障害性疼痛または急性中枢多神経障害性疼痛であってもよい。
【0114】
  中枢神経障害性疼痛は、脊髄損傷、多発性硬化症、およびある種の発作において認められる。線維筋痛は中枢性疼痛障害である可能性があり、神経障害性疼痛に効果的である医薬に応答する。したがって、本発明に係る医薬用貼付剤は、線維筋痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、および肢端紅痛症(ミッチェル病(Mitchell’s disease))の治療にも適する。糖尿病性神経障害および他の代謝性症状は別として、疼痛性末梢神経障害の一般的な原因は、帯状疱疹の感染、HIV関連性神経障害、栄養不足、毒素、悪性腫瘍の遠隔での兆候、遺伝および免疫介在性障害、または神経幹への物理的外傷である。神経障害性疼痛は、がんにおいては、末梢神経に対するがんの直接的結果(例えば、腫瘍による圧迫の結果)として、あるいは化学療法、放射線照射の損傷、または手術の副作用として一般的である。
【0115】
  本発明の特に好ましい実施態様において、疼痛は神経障害性疼痛または神経障害性の要素のある疼痛である。
【0116】
  本発明の好ましい実施態様において、神経障害性疼痛または神経障害性の要素のある疼痛は、三叉神経痛[G50.0]、神経根障害[M54.1]、前頸部痛[M54.2]、坐骨神経痛[M54.3]、背痛[M54.8、M54.9]、筋肉痛[M79.1]、線維筋痛、皮膚の錯感覚[R20.2]、糖尿病性神経障害、化学的に誘発される神経障害、帯状疱疹、HIV誘発性神経障害、および損傷より由来の神経障害からなる群より選択され、ここで括弧内の情報はICD-10による分類をいう。
【0117】
  本発明の好ましい実施態様において、神経障害性疼痛または神経障害性の要素のある疼痛は、腰痛、骨関節炎に起因する疼痛、好ましくは膝の骨関節炎、臀部の骨関節炎、手の骨関節炎、脊椎の骨関節炎、または肘の骨関節炎に起因する疼痛;パニック障害[エピソード性発作性不安][F41.0]、持続性身体表現性疼痛障害[F45.4]、専ら心理的要因のみと関連付けられる疼痛障害[F45.41]であるか、またはそれらに付随する疼痛;非器質性性交疼痛[52.6];片頭痛[G43];他の頭痛症候群[G44];非定型顔面痛[G50.1];痛みを伴う幻肢症候群[G54.6];他に分類されない急性および慢性疼痛[G89];眼痛[H57.1];肩の痛み[M25.51];脊椎痛[M54.];腰痛[M54.5];胸椎における疼痛[M54.6];他の肩の病変に起因する痛み[M75.8];他に分類されない他の軟組織障害[M79];詳細不明の神経痛および神経炎[M79.2];肢の痛み[M79.6];他の特定される骨の障害[M89.8];上腹部に限局した疼痛[R10.1];頭痛[R51];他に分類されない疼痛[R52];慢性難治性疼痛[R52.1];他の慢性疼痛[R52.2];詳細不明の疼痛[R52.9];前兆を伴うデング熱[A97.1];神経衰弱症[F48.0];他の特定される神経症性障害[F48.8];詳細不明の神経症性障害[F48.9];性交疼痛[N94.1];膣痙[N94.2];からなる群より選択され、ここで括弧内の情報はICD-10による分類をいう。
【0118】
  侵害受容性疼痛とは、刺激が筋肉、骨、皮膚、または内部器官に組織損傷を生じさせる場合にもたらされる不快症状をいう。本明細書において、侵害受容性疼痛は、有害な強度に近いか、またはそれを越える刺激に対してのみ応答する末梢神経線維(侵害受容器)の刺激により惹起され、有害刺激のモードに従って分類されてもよく;最も一般的なカテゴリーは「熱的」(加熱または冷却)、「機械的」(破砕、切裂きなど)、および「化学的」(切り傷にヨード、眼にチリ・パウダー)である。侵害受容性疼痛はまた、「内臓」、「体深部」、および「体表面」の痛みに分類することもできる。
【0119】
  内臓痛は、身体の内部器官またはその周辺の組織に発生する、ある種の侵害受容性疼痛で説明される。この形態の疼痛は、通常、有害な細胞が炎症すること、ならびに健康な細胞が圧迫または拡張されることより由来する。内臓痛は特定の領域に限定される傾向にないため、この疼痛を受けている患者は一般に痛みを感じやすい。がんはよくある内臓痛の原因である。内臓痛の例として、詳細不明の狭心症[120.9];他の特定される肛門および直腸の疾患[K62.8];詳細不明の腎疝痛[N23];他の特定される陰茎の障害[N48.8];他の特定される男性生殖器の障害[N50.8];乳房痛[N64.4];女性生殖器および月経周期に付随する疼痛および他の症状[N94];月経中期の排卵に伴う下腹部の疼痛[N94.0];他の特定される女性生殖器および月経周期に付随する症状[N94.8];腹部および骨盤の疼痛[R10];骨盤および会陰部の疼痛[R10.2];下腹部の他の部分に局在する疼痛[R10.3];他の詳細不明の腹部の疼痛[R10.4];排尿に伴う疼痛[R30];泌尿系に関連する他の詳細不明の症候および兆候[R39.8];非器質性膣痙[F52.5];非器質性性交疼痛[52.6];詳細不明の疼痛を伴う排尿[R30.9]が挙げられるが、これらに限定されず;ここで括弧内の情報はICD-10による分類をいう。
【0120】
  体性痛は、身体に損傷を加えることによりもたらされる、侵害受容性疼痛である。体性痛は、一般に、病変部に限られ、体がその病変部に対する損傷を修復する場合にはその痛みは和らぐ。深部体性痛は、靭帯、腱、骨、血管、筋膜、および筋肉にて侵害受容体を刺激することで始まり、鈍く、うずくような、局在性に乏しい痛みである。例として、捻挫および骨折が挙げられる。表在痛は、皮膚または表面組織で侵害受容体が活性化することで始まり、鋭く、はっきりとしており、かつ明確に局在している。
【0121】
  本発明によれば、侵害受容性疼痛が少なくとも3か月間生じているとすれば、それは慢性に分類されるのが好ましい。好ましくは、慢性侵害受容性疼痛は、慢性内臓痛、慢性深部体性痛、および慢性表面体性痛より選択される。
【0122】
  好ましい実施態様において、疼痛は、耳痛[H92.0];他の特定される鼻および副鼻腔の障害[J34.8];他の咽頭の疾患[J39.2];顎関節障害[K07.6];他の特定される歯および支持構造物の障害[K08.8];他の特定される顎の疾患[K10.8];他の詳細不明の口腔粘膜の病変[K13.7];舌痛[K14.6];関節痛[M25.5];咽頭および胸部の疼痛[R07];咽頭痛[R07.0];呼吸の際の胸痛[R07.1];前胸痛[R07.2];他の胸痛[R07.3];詳細不明の胸痛[R07.4];急性腹痛[R10.0];他の詳細不明の皮膚感覚障害[R20.8];急性疼痛[R52.0];心臓および血管の補綴具、インプラント、および移植片の他の合併症[T82.8];泌尿生殖器の補綴具、インプラント、および移植片の他の合併症[T83.8];整形外科用内部補綴具、インプラント、および移植片の他の合併症[T84.8];持続勃起症[N48.3];顎の炎症性症状[K10.1];舌炎[K14.0];事故、抜歯、または局所的歯周病による歯の喪失[K08.1];火傷および虫歯[T20-T32];凍傷[T33-T35]からなる群より選択され;ここで括弧内の情報はICD-10による分類をいう。
【0123】
  好ましい実施態様において、該疼痛は慢性ではなく、急性に分類され、特に好ましくは、該疼痛は急性炎症性疼痛である。
【0124】
  本発明によれば侵害受容性疼痛の好ましい原因として、骨が折れるか、破砕すること、打撲、火傷、切り傷、炎症(感染または関節炎より由来)、および捻挫が挙げられる。それゆえ、侵害受容性疼痛は、術後疼痛、がん性疼痛、腰痛、および炎症性疼痛を包含する。
【0125】
  本発明のさらに好ましい実施態様において、疼痛は、日焼けによる痛み、入れ墨をする前の痛みの予防、乾癬のプラーク、アキレス腱痛、踵骨棘(「Fersensporn」/calcaneussporn)、モートン神経腫、入れ墨後の痛み/炎症、皮膚のレーザー治療、例えば、火炎性母斑、足底線維腫、足底筋膜炎を除去した後の痛み/炎症;限局性乾癬;および放射線照射後の皮膚における持続痛からなる群より選択される。
【0126】
  典型的な関節痛の症状として、疼痛、硬直、腫れ、関節での熱感、脱力、および疲労が挙げられる。
【0127】
  典型的な筋骨格疼痛の症状は、背部痛、頸部痛、腱炎、筋肉痛、ならびに筋肉、腱、靭帯、および骨に影響を及ぼすいずれの疼痛も包含する。
【0128】
  典型的な痛風の徴候は、強い関節痛、持続的不快感、腫れ、および発赤を包含する。
【0129】
  本発明に係る医薬用貼付剤は、皮膚に適用される期間が1日未満であるように設計されるのが好ましい。このように、この実施態様によれば、リドカイン成分および/またはジクロフェナク成分の同時および連続的投与は、所定の時間が満了した後に、使用した医薬用貼付剤を取り外し、それを新たな医薬用貼付剤と交換することにより維持され得る。
【0130】
  本明細書に記載されるように、数個の本発明に係る医薬用貼付剤を、例えば、2または3個の医薬用貼付剤を同時に皮膚に適用し、適用期間が経過した後に同時に取り外すことも可能である。しかしながら、簡潔にするために、この単一の医薬用貼付剤と複数の医薬用貼付剤は、本明細書の記載を通して区別しない。当業者はこの実施態様も発明の範囲内にあることを理解する。
【0131】
  好ましい実施態様によれば、本発明に係る医薬用貼付剤は、慢性の症状に使用され、すなわち、慢性使用のためのものである。
【0132】
  医薬用貼付剤は、皮膚に適用期間にわたって適用され、つづいて中断期間(適用が中断された期間)を設け、その間は医薬用貼付剤が皮膚に適用されないように設計される。このように、リドカイン成分および/またはジクロフェナク成分の間欠投与は、適用期間が終了した後に、使用した医薬用貼付剤を取り除き、中断期間が終了した後に、それを新たな医薬用貼付剤と交換することにより達成され得る。
【0133】
  医薬用貼付剤は患者の皮膚の領域に適用され、約12時間、好ましくは少なくとも約13時間、より好ましくは少なくとも約14時間、さらに好ましくは少なくとも約15時間、いっそうより好ましくは少なくとも約16時間、最も好ましくは少なくとも約17時間、特に約18時間の適用期間にわたってその適用が維持されるが、いずれの場合にも、約24時間未満であることが好ましい(好ましくは一日当たり約24時間未満である)。
【0134】
  好ましくは、適用期間の終了後、医薬用貼付剤は皮膚から取り外され、他のいずれの医薬用貼付剤も、少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間、さらにより好ましくは少なくとも約3時間、さらに好ましくは少なくとも約4時間、最も好ましくは少なくとも約5時間、特に約6時間の中断期間にわたって皮膚領域に適用されず、他のいずれの医薬用貼付剤も全く適用されないことが好ましい。
【0135】
  適用期間および中断期間は合わせて約24時間続くことが好ましい。
【0136】
  好ましくは、医薬用貼付剤は、患者の皮膚の領域に適用され、約18時間の適用期間にわたってその適用が維持され、その適用期間が終了した後に、医薬用貼付剤が皮膚から取り外され、約6時間の中断期間にわたって、他の医薬用貼付剤が皮膚の領域に適用されず、好ましくは他の医薬用貼付剤を全く適用しない。この投与計画は、鎮痛効果、患者のコンプライアンス、および皮膚への耐用性に関して、特に長期治療において、最適化されることが判明した。
【0137】
  本発明に係る医薬用貼付剤を適用しなければならない皮膚、典型的にはヒト皮膚の位置は特に限定されない。医薬用貼付剤は局所疼痛の治療または予防に使用されるため、該医薬用貼付剤は、典型的には、治療または予防されるべき疼痛の起源にごく接近した患者の皮膚の位置に適用される。
【0138】
  好ましくは、本発明に係る医薬用貼付剤は、胸の皮膚、または膝の皮膚、または肘の皮膚、または臀部の皮膚、または手の皮膚、または脊椎の皮膚、または背中、特に腰の皮膚に適用される。
【0139】
  好ましい実施態様において、本発明に係る医薬用貼付剤は皮膚の同じ位置に繰り返し適用される;すなわち、第1の医薬用貼付剤が使用された後には、所望の薬理効果を維持するために第2の医薬用貼付剤と取り換えることを必要とし、その第2の医薬用貼付剤は、前に第1の医薬用貼付剤が適用された皮膚の同じ位置に適用されるのが好ましい。
【0140】
  意図する適用の期間は、好ましくは、少なくとも1、2、3、4、5、6、または7日間であるが、さらに長くすることもでき、基本的には限定されず、急性または慢性の症状において一時的な使用から長期にわたる使用の範囲である。好ましい実施態様において、意図する適用の期間は、好ましくは、少なくとも8、9、10、11、12、13、または14日間である。好ましい実施態様において、意図する適用の期間は、好ましくは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、または16週間である。好ましくは、かかる投与計画では、毎日、医薬用貼付剤をヒト皮膚に約18時間(適用期間)適用し、つづいて新しい貼付剤を、好ましくは皮膚の同じ領域に適用する前に、約6時間(中断期間)の中断を設ける。
【0141】
  本発明に係る医薬用貼付剤は、哺乳類の皮膚、好ましくはヒト(小児または成人)の皮膚に投与するためのものである。
【0142】
  本発明の特に好ましい実施態様において、治療を意図する受容者は、腎臓および/または肝臓の障害のある患者である。
【0143】
  中程度または重度の疼痛に罹患している対象は、遺伝的傾向、後天性肝臓、および/または腎臓疾患、または別の原発性障害または疾患あるいは同じ障害または疾患を治療するのに投与される医薬の副作用などの種々の理由で、肝臓および/または腎臓の機能が損傷しているかもしれない。例えば、NSAIDは腎不全を生じさせる可能性のあることが知られている。
【0144】
  肝臓の機能試験は慣用的に実施され、対象の肝臓の状態に関する情報が得られる。肝臓の試験結果は、細胞の完全性、機能性、および胆管と連結した状態と関連付けられてもよい。これらの試験を用い、肝臓疾患の存在を検出し、異なる型の肝障害を区別し、既知の肝臓損傷の程度を判断し、治療に対する応答を追跡することができる。肝不全は、末期の肝疾患についてのモデル(MELD)スコア、チャイルド・ピュー(Child-Pugh)スコア、またはコン(Conn)スコアを含む、種々のいずれかのスコアを用いて数値化することができる。チャイルド・ピュースコアは、2つの臨床的特徴(脳障害および腹水)および3つの実験室ベースの変数(S-アルブミン、S-ビリルビン、およびプロトロンビン時間)を利用する。各測定は1~3の点で採点され、点3は最も重度の異常を示す。5個の全ての事項についての点数を合計し、次に肝機能をチャイルド・ピュークラスA~Cに分類する。
【0145】
  同様に、腎機能試験を慣用的に実施し、対象の腎臓の状態に関する情報が得られる。腎不全は、腎臓が血液から老廃物を適切に濾過できない医学的状態である。腎不全は、血液が腎臓の糸球体において濾過される割合である糸球体濾過率(GFR)の減少によって主に測定される。これは、尿生成物の減少または不在、あるいは血中の老廃物(例えば、クレアチニン)を測定することで検出される。GFRは、血中のクレアチニン濃度、尿中のクレアチニン濃度、および24時間にわたって収集された尿の容量から計算できる。しかしながら、臨床診療において、血清中クレアチニンレベルに基づくクレアチニンクレアランスの推定値を慣用的に用い、種々の式に従ってGFR(eGFR)を測定する。
【0146】
  多くの鎮痛剤は肝臓または腎臓の機能が損なわれている対象に投与されてはならず、あるいはそのような対象には推奨されず、少なくとも治療中に特定の注意および配慮を必要とする。
【0147】
  肝臓は大多数の薬物の薬物動態において中心的な役割を果たす。肝機能障害は、肝代謝または胆汁排泄により除外された薬物の血液/血漿クリアランスを減少させるだけでなく、それは血漿タンパク質の結合にも影響を及ぼし、順次、分配および排除のプロセスに影響を及ぼし得る。進行性肝硬変において一般的である門脈体循環シャントは、高除去性薬物を経口投与した後のその薬物の全身循環以前の排除(すなわち、第1通過効果)を実質的に減少させ、それゆえ吸収の程度に有意な増加をもたらすかもしれない。慢性肝疾患は薬物代謝活性における可変的で均一でない減少に付随する。肝硬変の対象はオピオイド鎮痛薬の主たる副作用に対してより感受的である(R.K. Verbeeck、Eur J Clin Pharmacol. 2008, 64(12), 1147-61)。
【0148】
  腎障害の対象において、腎排泄により薬物が除去されるため、しばしば、用量調整が必要とされる。腎および肝機能を損傷した対象における疼痛の治療にも問題がある。腎不全の存在下では、これらの薬物の代謝作用および薬物動態において有意な変化が生じ、それは親化合物ならびに活性または毒性の代謝物の蓄積に起因した有害な反応に至りうる(P. Niscolaら、G Ital Nefrol. 2011, 28(3), 269-77)。
【0149】
  その結果、肝臓または腎臓障害のある対象における疼痛治療は困難であることが多く、従来の鎮痛薬が常に適用できるわけではない。それゆえ、十分に許容され、副作用が全くないか、ほんのわずかしかなく、肝または腎機能が損傷した対象にさえ用量調整を行う必要がなく、投与され得る鎮痛薬に対する需要がある。
【0150】
  肝および腎機能は、当業者によって容易に評価され、慣用的な分析に供することができる。当業者であれば、肝機能の損傷および/または腎機能の損傷した対象を、各々、肝機能の損傷していないおよび/または腎機能の損傷していない対象と、容易かつ明確に区別することができる。
【0151】
  対象の肝機能の損傷の程度は、軽度、中程度、または重度であってもよい。好ましくは、肝機能の損傷は、少なくとも軽度あるか、あるいは少なくとも中程度、または重度である。この点において、「少なくとも軽度」は軽度、中程度、および重度を包含し、それに対して「少なくとも中程度」は中程度および重度を包含する。
【0152】
  好ましい実施態様において、肝機能の損傷は、チャイルド・ピュースコアに従い、肝障害の程度に応じて、対象がクラスA(軽度)、B(中程度)、またはC(重度)のいずれか一つに分類され得る:
            【表1】
            【表2】
          
【0153】
  チャイルド・ピュー分類によるこのカテゴリー化は、個々のEMAガイドライン(Guideline on the evaluation of the pharmacokinetics of medicinal products in subjects with impaired hepatic function, 17 February 2005, CPMP/EWP/2339/02)およびFDAガイドライン(Guidance for Industry - Pharmacokinetics in subjects with impaired hepatic function: Study design, data analysis, and impact on dosing and labeling, May 2003)と一致している。
【0154】
  好ましくは、対象の肝機能の損傷は、チャイルド・ピュースコアに従って、クラスA、B、またはCのいずれかである。
【0155】
  好ましい実施態様において、対象は、チャイルド・ピュー分類に従って、スコアの合計が、少なくとも5、または少なくとも6、または少なくとも7、または少なくとも8、または少なくとも9、または少なくとも10、または少なくとも11、または少なくとも12、または少なくとも13、または少なくとも14、または15で分類される。
【0156】
  肝機能の損傷の原因は、特に限定されるものではなく、遺伝的傾向(例えば、先天的代謝障害など)、後天性肝疾患(例えば、肝炎などの感染による疾患、アルコールなどの中毒物質による疾患、および脂肪肝など)、または別の原発性障害または疾患を治療するのに投与される医薬(例えば、化学療法およびNSAIDなど)の副作用を包含する。
【0157】
  対象の腎機能の損傷の程度は、軽度、中程度、または重度であってもよい。好ましくは、腎機能の損傷は、推定糸球体濾過率(eGFR)の減少の観点から見るのが好ましく、少なくとも軽度あるか、あるいは少なくとも中程度、または重度である。この点において、「少なくとも軽度」は軽度、中程度、および重度を包含し、それに対して「少なくとも中程度」は中程度および重度を包含する。
【0158】
  上記されるように、腎損傷は、種々の分類系により、定性的および定量的に記載されてもよい。好ましくは、本発明に係る医薬用貼付剤を対象に適用する場合、使用される分類系と関係なく、本発明のあらゆる範囲の腎損傷に対して、用量を調整する必要はない。
【0159】
  好ましい実施態様において、腎機能の損傷は、Cockcroft-Gaultの式によって得られる推定クレアチニンクリアランス(Cl
CR)に基づくか、腎疾患における食餌の修飾(Modification of Diet in Renal Disease(MDRD))に由来する推定糸球体濾過率(eGFR)に基づく。Cockcroft-GaultおよびeGFRは、一般的に使用される血清-クレアチニンをベースとする2つの式である。腎損傷の程度に応じて、対象は、eGFRまたはCL
CRを基礎とする腎機能の以下の分類に従って、段階1(正常)、段階2(軽度)、段階3(中程度)、段階4(重度)、または段階5(末期の腎疾患)のいずれかに分類され得る。
            
【表3】
          
【0160】
  eGFRまたはCLCrに基づくこのカテゴリー分類はそれぞれのFDAガイダンスと一致する(Guidance for Industry - Pharmacokinetics in subjects with impaired renal function: Study design, data analysis, and impact on dosing and labeling, draft guidance, March 2010, Revision 1)。本発明によれば、腎機能の軽度、中程度、および重度の損傷についての異なる閾値は、特定の下位群の対象に、例えば小児科の対象に適用してもよい。これらの異なる閾値は当業者に公知であり、最新のFDAガイダンスに従うのが好ましい。
【0161】
  好ましくは、対象の腎機能の損傷は、推定糸球体濾過率(eGFR)またはクレアチニンクレアランスClCrで、段階2、3、または4の損傷である。
【0162】
  好ましい実施態様において、対象は、eGFRおよびCLCrで、個々に、90未満であるか、多くて85であるか、多くて80であるか、多くて75であるか、多くて70であるか、多くて65であるか、多くて60であるか、多くて55であるか、多くて50であるか、多くて45であるか、多くて40であるか、多くて35であるか、多くて30であるか、多くて25であるか、多くて20であるか、多くて15であるように分類され、どちらの場合でも、各々、mL/分/1.73m2およびmL/分である。
【0163】
  腎機能を損傷する原因は、特に限定されず、遺伝的傾向、後天性腎疾患(例えば、糖尿病、動脈性高血圧、感染に起因する慢性腎疾患)、または別の原発性障害または疾患を治療するのに投与される医薬の副作用(例えば、化学療法、NSAID)を包含する。
【0164】
  本発明のもう一つ別の態様は、疼痛の局所的な治療または予防に用いるための上記した複数の医薬用貼付剤を含むキットであって、
  第1の医薬用貼付剤が患者の皮膚の領域に適用され、約12時間よりも長い、より好ましくは少なくとも約13時間、さらにより好ましくは少なくとも約14時間、さらに好ましくは少なくとも約15時間、さらにより好ましくは少なくとも約16時間、最も好ましくは少なくとも約17時間、特に約18時間の第1の適用期間にわたってその適用が維持されるが、いずれの場合にも、約24時間未満であることが好ましく;
  第1の適用期間の終了後、医薬用貼付剤が皮膚から取り外され、他のいずれの医薬用貼付剤も、少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間、さらにより好ましくは少なくとも約3時間、さらに好ましくは少なくとも約4時間、最も好ましくは少なくとも約5時間、特に約6時間の第1の中断期間にわたって皮膚の同じ領域に適用されず、好ましくは他のいずれの医薬用貼付剤も適用されず;
  第1の中断期間の終了後、第2の医薬用貼付剤が患者の皮膚の同じ領域に適用され、約12時間よりも長い、より好ましくは少なくとも約13時間、さらにより好ましくは少なくとも約14時間、さらに好ましくは少なくとも約15時間、さらにより好ましくは少なくとも約16時間、最も好ましくは少なくとも約17時間、特に約18時間の第2の適用期間にわたってその適用が維持されるが、いずれの場合にも、約24時間未満であることが好ましく;および
  第2の適用期間の終了後、第2の医薬用貼付剤が皮膚から取り外され、他のいずれの医薬用貼付剤も、少なくとも約1時間、より好ましくは少なくとも約2時間、さらにより好ましくは少なくとも約3時間、さらに好ましくは少なくとも約4時間、最も好ましくは少なくとも約5時間、特に約6時間の第2の中断期間にわたって皮膚の同じ領域に適用されず、好ましくは他のいずれの医薬用貼付剤も適用されない
キットに関する。
【0165】
  第1の適用期間および第2の適用期間は、各々約18時間であり、第1の中断期間および第2の中断期間は、各々約6時間であることが好ましい。
【0166】
  好ましくは、本発明に係るキットは、少なくとも1、2、3、4、5、6、または7個の本発明に係る医薬用貼付剤を含む。好ましい実施態様において、本発明に係るキットは、少なくとも8、9、10、11、12、13、または14個の本発明に係る医薬用貼付剤を含む。好ましい実施態様において、本発明に係るキットは、少なくとも14、21、28、35、42、49、または56個の本発明に係る医薬用貼付剤を含む。好ましくは、本発明に係るキットに含有される本発明のありとあらゆる医薬用貼付剤は、約18時間(適用期間)にわたってヒト皮膚に適用され、つづいて約6時間の休止(中断期間)を設け、その後で新たな貼付剤を、好ましくは、皮膚の同じ領域に適用することができる。
【0167】
  下記の実施例は本発明をさらに詳しく説明するものであり、その範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0168】
  CFA-後肢炎症、肢圧試験において、相互作用研究を単回投与研究として行った。
パートA-腹腔内注射
【0169】
  下記の比較例1および実施例1~4において、化合物または化合物の組み合わせは腹腔内注射により投与された(
図1~9)。
 
【0170】
比較例1-別々の投与
【0171】
  両方の化合物の用量依存性効能はそれらが単独で投与された時に観察された。リドカインは10mg/kg~46.4mg/kg(ip)の用量範囲で用量依存性効能を示し(
図1);ジクロフェナクは21.5mg/kg~100mg/kg(ip)の用量範囲で用量依存性効能を示した(
図2)。
 
【0172】
実施例1-組み合わせ投与(リドカイン:ジクロフェナク=1:3.17の割合)
【0173】
  リドカイン:ジクロフェナクの組み合わせ(21.5mg/kg:68.1mg/kg)を試験した:
・CFA-PPTにおけるリドカイン/ジクロフェナク(投与前の値に対する%変化)
・用量割合(リドカイン/ジクロフェナク):21.5mg/kg:68.1mg/kg=1:3.17
【0174】
  投与した後の0~90分間の時間窓についての結果を
図3に示す。投与した後の90~240分間の時間窓についての結果を
図4に示す。
 
【0175】
  実験は、所定の条件下にて、ジクロフェナク(68.1mg/kg:ip)およびリドカイン(21.5mg/kg:ip)の腹腔内投与が、各々単独で投与された場合に20~25%の範囲で同様の効能を示すことを明らかにした。ジクロフェナクとリドカインとの組み合わせは、投与した後の15~60分間で相加的相互作用を示し、90分では相乗(すなわち、シナジー)効果を示した。この研究は、再び、投与した90分後に、おそらくは投与した120分後にシナジー作用を示した。
【0176】
実施例2-組み合わせ投与(リドカイン:ジクロフェナク=1:2.16の用量割合)
【0177】
  リドカイン:ジクロフェナクの組み合わせ(31.6mg/kg:68.1mg/kg)を試験した:
・CFA-PPTにおけるリドカイン/ジクロフェナク(投与前の値に対する%変化)
・用量割合(リドカイン/ジクロフェナク):31.6mg/kg:68.1mg/kg=1:2.16
【0178】
  結果を
図5に示す。リドカイン:ジクロフェナクの、31.6mg/kg:68.1mg/kg=1:2.16の割合での組み合わせは、投与した60分後、90分後、120分後、および180分後にシナジー作用を示した。
 
【0179】
実施例3-組み合わせ投与(リドカイン:ジクロフェナク=2.16:1の用量割合)
【0180】
  リドカイン:ジクロフェナクの組み合わせ(46.4mg/kg:21.5mg/kg)を試験した:
・CFA-PPTにおけるリドカイン/ジクロフェナク(投与前の値に対する%変化)
・用量割合(リドカイン/ジクロフェナク):46.4mg/kg:21.5mg/kg=2.16:1
【0181】
  結果を
図6に示す。リドカイン:ジクロフェナクは、46.4mg/kg:21.5mg/kg=2.16:1の用量割合で、投与した90分後および120分後にシナジー作用を示した。
 
【0182】
実施例4-組み合わせ投与(リドカイン:ジクロフェナク=1:1.47の用量割合)
【0183】
  リドカイン:ジクロフェナクの組み合わせ(31.6mg/kg:46.4mg/kg)を試験した:
・CFA-PPTにおけるリドカイン/ジクロフェナク(投与前の値に対する%変化)
・用量割合(リドカイン/ジクロフェナク):31.6mg/kg:46.4mg/kg=1:1.47
【0184】
  結果を
図7に示す。リドカイン:ジクロフェナクは、31.6mg/kg:46.4mg/kg=1:1.47の用量割合で、投与した90分後および120分後にシナジー作用を示した。
 
【0185】
腹腔内投与した実験の概要
【0186】
  リドカイン(21.5mg/kg:ip)およびジクロフェナク(68.1mg/kg:ip)の腹腔内投与は、各々単独で投与された場合に20~25%の範囲で同様の効能を示した。リドカインとジクロフェナクとの組み合わせは、投与した後の15~60分間で相加的相互作用を示し、90分では相乗効果(すなわち、シナジー効果)を示した。
図8に示すように、リドカイン(21.5mg/kg;ip)およびジクロフェナク(68.1mg/kg;ip)の腹腔内投与は、単独で投与された場合に、20~25%の範囲で同様の効能を示した。
 
【0187】
  ジクロフェナクとリドカインとの組み合わせは投与した15~60分後に相加的相互作用を示し、90分で相乗効果を示した。
【0188】
CFA-PPTでのリドカイン/ジクロフェナク(離脱閾値)を
図9に示す。
パートB-皮膚への局所適用
 
【0189】
  下記の比較例2および実施例5~8において、化合物または化合物の組み合わせを軟膏または溶液によって肢に局所的に投与した(
図10~18)。
 
【0190】
  化合物または化合物の組成物を軟膏または溶液として局所的に投与した場合のその効能を試験した。研究は、雄のアルビノラット(体重:150~180g)にて、それに完全フロイントアジュバント(CFA)を注射することで肢浮腫を誘発して行われた。CFAは、皮下注射の後に7~8日間続く疼痛反応を引き起こす免疫増強剤として使用される、鉱油中に乳化させた、不活化かつ乾燥のヒト型結核菌の組成物である。
【0191】
  比較例2および実施例5~8の研究は、以下の操作:50μLのCFAを足底を通して右後肢に注射し、24時間後に機械的痛覚過敏を誘発する操作に従って行われた。短時間の麻酔の間に、1つの化合物または化合物の組み合わせを含む軟膏を右後肢に投与し、その肢にポリエチレン(PE)ホイルおよび滑らかなテープを巻き付け、肢舐めを防止した。ビヒクルの処方は4%ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)/10%ジメチルスルホキシド(DMSO)およびアクア・イニ(aqua ini)であった。
【0192】
  炎症を起こした肢にポインターを押し付けることで疼痛を測定した。そのポインターは、一定の速度で増大し、線形スケールでモニターされる圧力を発揮する。ラットが肢を離脱し(反らし)始めると痛みを感じているとみなす。この値(グラム単位で示される離脱閾値)は、動物が痛みを感じる圧力である(カットオフ値450g)。試験化合物の効能は、化合物を投与した後の離脱閾値の、投与前の値(化合物を投与する前の離脱閾値)に対する%変化として表される。
【0193】
比較例2-別々の投与
【0194】
  最適なインキュベーション時間は1時間であると同定された(リドカインについての典型的なデータを
図10に図示する)。リドカインおよびジクロフェナクの個々の化合物は、局所的に投与された場合に、その用量依存性効能が観察された。リドカインは30mg/ml~60mg/mlの用量範囲で用量依存性効能を示し(
図11)、ジクロフェナクは40mg/ml~80mg/mlの用量範囲で用量依存性効能を示した(
図12および13)。
 
【0195】
実施例5-組み合わせ投与(ジクロフェナク:リドカイン=1.5:1の濃度割合)
【0196】
  ジクロフェナク:リドカイン=1.5:1(60mg/ml:40mg/ml)の組み合わせを試験した:
・CFA-PPTにおけるジクロフェナク/リドカイン(投与前の値に対する%変化)
・濃度割合(ジクロフェナク/リドカイン):60mg/ml:40mg/ml=1.5:1
【0197】
  実験は、所定の条件下、ジクロフェナク(60mg/ml)およびリドカイン(40mg/ml)の局所投与が、各々単独で投与された場合に、90分後に、15~25%の範囲で同様の効能を示すことを明らかにした。ジクロフェナクとリドカインとの組み合わせは、投与した後の90~120分間で相加的相互作用を示し、120~180分間で相乗効果(すなわち、シナジー効果)を示した。
【0198】
  投与した後の60~180分間の時間窓についての結果を
図14に示す。
 
【0199】
実施例6-組み合わせ投与(ジクロフェナク:リドカイン=2:1の濃度割合)
【0200】
  ジクロフェナク:リドカインが2:1(60mg/ml:30mg/mlおよび80mg/ml:40mg/ml)の濃度割合である2つの組み合わせを試験した:
・CFA-PPTにおけるジクロフェナク/リドカイン(投与前の値に対する%変化)
・濃度割合(ジクロフェナク/リドカイン):60mg/ml:30mg/ml=2:1、および80mg/ml:40mg/ml=2:1
【0201】
  ジクロフェナク:リドカインの、60mg/ml:30mg/ml=2:1の濃度割合での組み合わせは、投与した60分、90分、120分、および180分後にシナジー効果を示した(
図15)。ジクロフェナク:リドカインの、80mg/ml:40mg/ml=2:1の割合での組み合わせは、投与した150分および180分後にシナジー効果を示した(
図16)。
 
【0202】
  ジクロフェナク:リドカインを80mg/ml:40mg/ml=2:1の濃度割合にて組み合わせた、150分間および180分間での効能は、ジクロフェナクを80mg/mlの単独で、またはリドカインを40mg/mlの単独で投与した場合に、それらが共に同じ窓時間で効能が15%より下であるのと比べて、それらの値が約40%~50%と実質的に高かった。
【0203】
実施例7-組み合わせ投与(ジクロフェナク:リドカイン=2.7:1の濃度割合)
【0204】
  ジクロフェナク:リドカインが2.7:1(80mg/ml:30mg/ml)の濃度割合である組み合わせを試験した:
・CFA-PPTにおけるジクロフェナク/リドカイン(投与前の値に対する%変化)
・濃度割合(ジクロフェナク/リドカイン):80mg/ml:30mg/ml=2.7:1
【0205】
  結果を
図17に示す。ジクロフェナク:リドカインは、80mg/ml:30mg/ml=2.7:1の濃度割合にて、投与した150分および180分後にシナジー効果を示した。
 
【0206】
実施例8-組み合わせ投与(ジクロフェナク:リドカイン=1:1の濃度割合)
【0207】
  ジクロフェナク:リドカインが1:1(40mg/ml:40mg/ml)の組み合わせを試験した:
・CFA-PPTにおけるジクロフェナク/リドカイン(投与前の値に対する%変化)
・割合(ジクロフェナク/リドカイン):40mg/ml:40mg/ml=1:1
【0208】
  結果を
図18に示す。ジクロフェナク:リドカインは、40mg/ml:40mg/ml=1:1(濃度割合)にて、投与した120分後により優れた効能を示した。
 
【0209】
皮膚に局所適用した実験の概要
【0210】
  局所的に適用した場合、ジクロフェナク/リドカインの、1.5:1、2.2および2.7:1の濃度割合での組み合わせはシナジー相互作用を示した。相乗効果は、その大部分が、後の時点で、すなわち投与してから少なくとも120分間経過した後に生じた。
【0211】
  本発明に係るジクロフェナクおよびリドカインの組み合わせは、予期せぬことに、薬理学的相互作用に起因して、単一の薬剤と比べて有意な治療的優位性を提供する。意外にも、多量のリドカインを付加すると、多様な実験的試験を介して、ジクロフェナクの長期に及ぶ薬理学的増強作用、および融合的薬理学的作用の両方(いずれも個々に薬物活性ではない)が付与された。
【0212】
実施例8-医薬用貼付剤
【0213】
  本発明に係る典型的な医薬用貼付剤は、140cm2の皮膚との接触面を有し、ポリエチレンテレフタレート不織布の表面層(支持体層)、ジクロフェナク成分およびリドカイン成分をヒドロゲル中に含む接着剤層、および取り外し可能な剥離ライナーからなる。
【0214】
  接着剤層を形成する接着性ペーストの典型的な成分を以下の表にまとめて示す:
               【表4】
             
【0215】
実施例9-医薬用貼付剤
【0216】
  実施例8の貼付剤のリドカインおよびジクロフェナクの相対的全身性生物学的利用能を、リドカインだけを含有する市販の貼付剤(Versatis(登録商標))およびジクロフェナクだけを含有する市販の貼付剤(Flector(登録商標)Tissugel)と比較した。リドカイン5%およびジクロフェナク・エポラミン1.3%を含有する固定用量の組み合わせ貼付剤を腰部に単回18時間適用した後のリドカインおよびジクロフェナクの相対的全身性生物学的利用能を、健康な成人対象にて、Versatis(登録商標)およびFlector(登録商標)Tissugel貼付剤と比べて評価した。その臨床試験は、健康な男性および女性の対象にて、無作為の、単一部位、非盲検、単回投与、3方向クロスオーバー、探索的フェーズI試験として設計された。主目的は、単回投与した後に、本発明の貼付剤から放出される、ならびに市販の貼付剤Versatis(登録商標)およびFlector(登録商標)Tissugel(ジクロフェナク貼付剤)から放出されるリドカインおよびジクロフェナクの相対的全身性生物学的利用能を評価することであった。皮膚刺激性および貼付剤接着性について、さらなるデータを収集した。この試験では生物学的同等性評価は意図されなかった。
【0217】
  PKサンプリングは貼付剤を適用した58時間経過後(貼付剤を取り外した40時間後)まで行われた。対象の内訳-安全性セット:22人の対象、PKセット:22人の対象。登録のための訪問-1日目-治療シーケンスへの割り当て-治療期間1(4日間)、治療期間2(4日間)、またはIMP適用の間のウォッシュアウト相の3~10日間-治療期間3(4日間)-治療期間3から7~14日経過した後の最終訪問。各治療期間において、単一の貼付剤を18時間適用し、1日目から貼付剤を取り外した40時間後まで入院した。
【0218】
  本発明に係る貼付剤(T)およびVersatis(登録商標)の貼付剤(R1)を18時間適用した後のリドカインの血漿中平均濃度-時間のプロフィール-PKセットを
図19に示す。両方の貼付剤のPK時間プロフィールの時間的経過は、全体として暴露が低く類似しているが、本発明に係る貼付剤の方が連続してより低いと結論付けることができる。
 
【0219】
  本発明に係る貼付剤(T)およびVersatis(登録商標)の貼付剤(R1)を18時間適用した後の2,6-キシリジン(リドカインの代謝産物)の血漿中平均濃度-時間のプロフィール-PKセットを
図20に示す。両方の貼付剤のPK時間プロフィールの時間的経過は、全体として暴露が低く類似しているが、本発明に係る貼付剤の方が連続してより低いと結論付けることができる。
 
【0220】
  本発明に係る貼付剤(T)およびFlector(登録商標)の貼付剤(R2)を18時間適用した後のジクロフェナクの血漿中平均濃度-時間のプロフィール-PKセットを
図21に示す。両方の貼付剤のPK時間プロフィールの時間的経過は、全体として暴露が低く類似しているが、本発明に係る貼付剤の方が連続してより低いと結論付けることができる。
 
【0221】
薬物動態パラメータの平均値±標準偏差(変動係数%、n)の概要-PKセット:
               【表5】