(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】汚泥水吸収土嚢
(51)【国際特許分類】
C02F 11/12 20190101AFI20220722BHJP
C02F 11/00 20060101ALI20220722BHJP
E02B 3/04 20060101ALI20220722BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20220722BHJP
B01J 20/10 20060101ALI20220722BHJP
B01J 20/24 20060101ALI20220722BHJP
B01J 20/26 20060101ALI20220722BHJP
B01J 20/28 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C02F11/12
C02F11/00 F
C02F11/00 Z
E02B3/04 301
G21F9/12 501A
B01J20/10 A
B01J20/10 C
B01J20/24 B
B01J20/26 D
B01J20/28 A
B01J20/28 Z
(21)【出願番号】P 2020201706
(22)【出願日】2020-12-04
(62)【分割の表示】P 2016204213の分割
【原出願日】2016-10-18
【審査請求日】2020-12-04
(73)【特許権者】
【識別番号】310011011
【氏名又は名称】クリアーシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村 廣義
(72)【発明者】
【氏名】中村 考宏
【審査官】片山 真紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2002/0090265(US,A1)
【文献】特開2007-138690(JP,A)
【文献】登録実用新案第3170574(JP,U)
【文献】国際公開第2005/073469(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/00-78、11/00-20
B01J 20/00-34
E02B 3/04-14、7/20-54、8/02-04
G21F 9/00-36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマーのシートで形成された袋状部であって、毛細管吸水吸着作用のある繊維状からなる材料を
シート面に対して上下で、かつ、ピッチが1~10mmの波状となるように折り曲げその一面をシート面に固定させることで形成された懸濁物を付着させる付着部が外周表面に形成された通水性の袋状部と、前記袋状部に収納された吸水性樹脂と、を有することを特徴とする汚泥水吸収土嚢
【請求項2】
前記吸水性樹脂に通水補助材が分散混入されていることを特徴とする請求項1に記載の汚泥水吸収土嚢
【請求項3】
前記付着部が、植物性繊維、化学繊維、無機繊維の不織布のいずれか1種以上で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の汚泥水吸収土嚢
【請求項4】
前記吸水性樹脂に消臭剤、殺菌剤、中和剤、放射性物質吸着剤のいずれか1種以上が混入されていることを特徴とする請求項1に記載の汚泥水吸収土嚢
【請求項5】
前記付着部、前記袋状部、前記吸水性樹脂のいずれか1以上が生分解性材料で形成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1に記載の汚泥水吸収土嚢
【請求項6】
前記袋状部の周縁部の少なくとも1縁部に1以上の孔部を備えていること特徴とする請求項1乃至5のいずれか1に記載の汚泥水吸収土嚢
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、汚泥水吸収土嚢に関する。更に詳しくは、豪雨災害等で床下浸水した床下等狭い場所に滞留した懸濁状の汚泥水の懸濁物や汚水、その他災害現場や工事現場、危険物貯蔵所、養豚場等の床面に漏えいした重金属濃縮汚泥水、放射性汚染懸濁汚泥水、VOC汚染汚泥水等を吸収保持し汚水や懸濁物を簡単に外部に排出することが可能な汚泥水吸収土嚢に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、集中豪雨や台風による河川の氾濫等の洪水で床上、床下浸水して水が引いた後、住宅等の家屋の床下に砂等の粗粒子、汚物等の粗粒懸濁物や、微細な有機汚泥やシルト等の微細懸濁物を含む汚泥水が滞留し、その排除に多大の労力を要している。具体的には、洪水で床上や床下が浸水して水が引いた後、床下には大量の汚泥水が滞留する。コンクリート基礎に囲まれた床下に滞留した汚泥水の処理は、自然乾燥させるか、ポンプ等で排出するが、ポンプ等で排出する場合、汚泥水を完全に排出させることは困難で、床面やその窪地に数mm~十数mmの深さで滞留してしまう。特に最近の住宅は、居住面が畳み式と異なり、フロアー床が多く、床下に入れない構造であり、押入れ等に設置された床下点検口くらいしか活用できず、滞留汚泥水の排出は困難を極めている。また、滞留汚泥水の滞留により病害虫やカビが発生して不衛生であり、またその間、住居として使用できないという課題があった。
また、建設現場や工事現場等の床面の仕上げ作業や、養豚場等の畜産場の床面の畜産汚泥水の排出処理においても雑巾や石灰、もみ殻、新聞紙等の身近にある材料に吸収させ刷毛やほうきでかき寄せて集め、スコップで掬って排出し、次いでモップで拭きあげる作業が行われており、多大の人力と時間を要するという課題があった。
また、危険物貯蔵所の床面上等に漏出等で滞留した重金属濃縮汚泥水、放射性汚染懸濁
汚泥水、VOC汚染汚泥水の除去において、床面のポンプ等で排水しても、薄い汚泥水層は完全に除去することが困難で、特に微細で危険な汚物の除去はさらに困難を伴っていた。
【0003】
そこで、近年、これらの課題を解決するため種々の研究がなされている。
例えば、(特許文献1)、(特許文献2)には、間伐材チップと澱粉の混合物を用いて吸水速度を早め急速に膨張させるとともに、使用後は土中に埋設し生分解的処理が容易な土嚢が開示されている。また、(特許文献3)、(特許文献4)には、ヘドロ状汚泥に散布するだけでヘドロ状汚泥を速効的に固化し、汚泥の搬出、撤去の効率化を図った土壌固化剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-92486号公報
【文献】特開2007-138690号公報
【文献】特開2001-104998号公報
【文献】特開2005-113025号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記先行技術に記載の技術は以下の課題を有していた。
すなわち、(特許文献1)や(特許文献2)の技術は、澱粉などの植物性高分子重合体を用いたものは、給水力や保水力が弱く、排水作業中に土嚢を持ち上げたりして圧力がかかると保水されない水が抜け落ち作業が煩雑で作業性に欠けるという課題を有していた。また、汚泥水中の水分しか吸収しないため汚物や、シルト状物、砂状物等の懸濁物を排除できないという課題を有していた。更に、懸濁物が該高分子の表面に沈着して目詰まりを生じ更に吸水量を減少させ作業性を低下させるという課題を有していた。
・(特許文献3)や(特許文献4)の技術は、固化剤を汚泥水上に散布し、次いで、汚泥水と混合させたのち固化するまで放置し、固化後に、スコップ等でかき集めて外部に排出するという作業工程を有するが、床下等の狭い場所では、極めて作業性が悪く、採用でき難いという課題を有していた。
また、工事現場や建設現場、危険物貯蔵所等の床面でも、シルトや細粒物等の後処理を要し作業性や安全性に欠けるという課題を有していた。
原子力発電所の事故では、建屋内の排水側溝や配線ピット、溜桝内にたまっている放射性の汚染泥水は従業員が直接触ることができないので、離れた場所から吸引処理等の作業しかできず、特に微細な汚染物等は処理が著しく困難を伴うことから、作業を合理化し安全性に優れた処理方法が要望されていた。
【0006】
本発明は上記従来の技術の課題や要望を解決するもので、家屋の床下等の狭い場所や危険物貯蔵所等の床面等に滞留した汚泥水やヘドロの上に載置して汚泥水の水分や微細有機物やシルト等の微細懸濁物を吸収吸着させた後引きずり出すだけで、水分や微細懸濁物等を液漏れさせることなく吸収保持しながら床面上の汚物やシルト等の懸濁物を付着部に絡ませて保持させて排除でき、汚泥水の排除の作業性を著しく高め、省緑生、安全性に優れた汚泥水吸収土嚢の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は以下の構成を有している。
本発明の請求項1に記載の汚泥水吸収土嚢は、細粒汚泥や浮遊物質等の懸濁物を付着させる付着部と、前記付着部を外周表面に備えた通水性の袋状部と、前記袋状部に収納された吸水性樹脂と、を有する構成を有している。
この構成により、以下の作用・効果を有する。
(a)表面の付着部により、汚物やシルト等の粗粒懸濁物を絡めて付着保持することができ、床面上等で汚泥水吸収土嚢を引きずるだけで細粒汚泥や浮遊物質等を付着させ排除できる。
(b)袋状部が、通水性なので、微細な有機物やシルトからなる微細懸濁物や汚水を通過させ内包された吸水性樹脂層に導くことができる。
(c)袋状部を通過した微細な懸濁物や汚水は吸水性樹脂により吸収吸着され、強固にゲル内に保持される。
(d)吸水量が1~60kgになるように吸水性樹脂の使用量を調整することにより、吸水後の汚泥水吸収土嚢を手軽に搬送することができ作業性を高める。
(e)吸水性樹脂土嚢は、吸水性樹脂がゲル化するので、搬送するのに手ごろな硬さとすることができ、また、吸水性樹脂のゲル化体は保水性に優れるので、保管中や搬送中に汚水や微細懸濁物等の液漏れがなく、外部への搬送作業が容易で作業性や安全性に優れる。特に家屋の床下等の狭い場所や危険物貯蔵所等の床面の滞留汚泥水を排出する場合は著しく作業性や安全性、省力性を高めることがわかった。
【0008】
ここで、付着部としては、袋状部の表面に起毛や固着された繊維状物や、吸水性に優れ毛細管吸水吸着作用のある微細な多孔質構造を有する材料が好ましい。
また袋状部を構成するシートの表面に繊維や目の細かい網体をループパイル状植毛部が、袋状部のシートの上面に高さが1~10mmで幅が1~10mm、ピッチが1~10mmの波状になるように折り曲げその一面を袋状部のシート面に溶着や接着等で固定したものや、袋状部の上面を起毛機で毛羽立たせたもの、等が用いられる。
また、ループ状物としては網目の大きさが0.1~10mmの網体を用いても良い。
付着部により、汚泥水を繊維間の毛管現象と汚泥のとのファンデルワールス力等により結合させ絡め取ることができる。
【0009】
袋状部の材料としては、水や微細浮遊物、シルト等の微細懸濁物は通過させるが吸水性樹脂粒子は通過させないポア径を有する透水性の織布や不織布、軟質合成樹脂製シートやゴムシート等の不透水性シートに該懸濁物は通過させるが吸水樹脂粒子は通過させない微小孔を開けた材料が用いられる。透水性を有する織布や不織布としては、親水性を有する合成樹脂等が好適に用いられる。
具体的には、不織布としては、スパンポンド法、水流交絡法等により得られるポリエステル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリアクリレート、ポリウレタン、ポリアミド等の繊維からなるものが使用できる。織布としては、セルロース繊維、タンパク繊維等の天然繊維、ビスコース法レーヨン等の再生繊維、酢酸セルロース繊維等の半合成繊維、ポリアミド、ポリビニールアルコール、ポリエステル、ポリアクリレート等の合成繊維、PETボトルや包装材等の合成樹脂を再生したリサイクル品等を用いることができる。
【0010】
吸水性樹脂としては、洪水等の淡水や高潮の海水等の電解質含有水に対して各々適合した材料が選択される。
淡水を吸収する吸水性樹脂としては、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、澱粉系、セルロース系等の天然物系樹脂、澱粉にアクリル酸塩をグラフト重合させた澱粉系、カルボキシセルロースにアクリル酸塩をグラフト重合させたセルロース系、アクリル酸系重合体、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキサイド変性物等の合成系のカルボキシル基、水酸基、エーテル基、アミド基等の親水性の官能基を有する合成樹脂が用いられる。
電解質含有水を吸収する吸水性樹脂としては、アクリルアミド・ターシャリーブチルスルホン酸親水性共重合体、ノニオン系吸水性樹脂等が用いられる。
【0011】
本発明の請求項2に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1において、吸水性樹脂に通水補助材が分散混入されている構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。
(a)袋状部の中の吸水性樹脂の層は、水に浸けるとその表面のみが先に吸水してゲル化膨潤を起し、不透水層を形成し内部の吸水性樹脂層に水やシルト、微細浮遊物が通過するのを妨げ、全体のゲル化のスピードが阻害されゲル化に時間を要し、汚泥水を吸水するのに長時間を要するという課題を有していた。しかし、通水補助剤を吸水性樹脂に分散混合することにより、汚泥水が通水補助剤の内部や外表面を伝って吸水性樹脂層の内部全体に通水拡散するので、汚泥水吸収土嚢の汚泥水の吸収速度を著しく高めることができ、作業時間を著しく短縮できる。
(b)吸水性樹脂に通水補助材が分散混合されているので、吸水性樹脂が汚泥水の水分を吸収しゲル化膨張しながら、同時に、吸水性樹脂間やと吸水性樹脂と通水補助材の間に微細な有機汚泥やシルト等の微細懸濁物を捕捉し保持することができる。
(C)吸水性樹脂全体に汚泥水が吸収されるので、汚泥水の吸収速度が速く、粗粒懸濁物や、シルトや微細浮遊物等の微細懸濁物が水に同伴して付着部に誘引され粗粒懸濁物や、微細懸濁物は付着部や袋状部の繊維間に絡め取られて捕捉され、更にシルトや微細浮遊物は袋状部を通過し吸水性樹脂層に誘引捕捉され保持される。
(d)吸水性樹脂層表面に通水補助剤の一部が露出しているので、吸水性樹脂層の表面が目詰まりを生ずるのを防止し、吸水性樹脂の吸水能を維持できる。
【0012】
ここで、通水補助剤と吸水性樹脂の配合量は、吸水性樹脂の種類にもよるが99.5vol%以下好ましくは90vol%以下になるように混合される。吸水性樹脂が90vol%を超えると、吸水性樹脂が吸水を始めた際に、表面のゲル化膨張が生じ易く、99,5vol%を超えると、吸水性樹脂層の表面のゲル化膨張が一気に進み吸水性樹脂層の表面に不透水層が形成され吸水性樹脂全体のゲル化のスピードが低下する傾向が大きく、また目詰まりの現象が現れやすく、吸水性樹脂土嚢の汚泥水の吸収量が減少するので好ましくない。
【0013】
通水補助剤は0.7~10vol%以上混入される。
通水補助剤としては、比重が吸水性樹脂に近い物質を用いるのが好ましい。吸水性樹脂と均質に分散混合されやすいためである。具体的には親水性のヤシガラ粉砕物、もみ殻等の多孔質体、パーライト、パルプスラッジ紛体等が用いられる。
なかでも、セルロースを主成分とするタルクパウダー等の繊維状物が好適に用いられる。
比重の大きい汚泥水に使用する場合は砂等の重錘を適宜加えても良い。
【0014】
本発明の請求項3に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1において、付着部が、袋状部の表面に固着された綿、セルロース繊維、わら、竹繊維、ケナフ、ヤシ等の植物性繊維、レーヨン等の化学繊維、ロックウール、グラスウール等の無機繊維の不織布、織り布、ヤシガラ粉砕粉、もみ殻等の多孔質体、フェルトや連続気泡のスポンジ、親水性のメラミン樹脂、ウレタン樹脂、セルロース等のファイバーのいずれか1種以上で形成された吸水性に優れ、毛細管吸水吸着作用のある微細な多孔質構造を有する繊維状物等の材料で形成された構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。
(a)付着部を表面に備えているので、汚泥水中の懸濁物を絡め取ることができる。
(b)付着部の多数の繊維状物で粗粒状や微細状の懸濁物を絡め取るので、懸濁物の保持性に優れる。
【0015】
ここで、付着部としては、濡れやすく、表面張力の大きいものが用いられる。
汚泥水中の水分や微細な有機物やシルトを素早く吸水性樹脂層全体に分散浸透させるためである。
付着部の繊維状物の高さとしては、材料により異なるが、数mm~10mm程度が好ましい。汚泥水中の懸濁物を絡め取りやすく保持しやすいためである。
付着部の繊維状物の目付としては、材質により異なるが、10~100g/m2
の物が好ましい。懸濁物中の粗粒物を絡め取り捕捉しやすいことが分かったためである。
付着部の繊維状物の剛性としては、材料により異なるが、0.1d~15d程度の繊維径を用いるのが好ましい。
また袋状部を構成するシートの表面に繊維や、不織布、目の細かい網体をループパイル状の立体状の植毛部として、袋状部のシートの外周面に高さが1~10mmで幅が1~10mm、ピッチが1~10mmの波状になるように折り曲げその一面を袋状部のシート面に溶着や接着等で固定したものや、袋状部の上面を起毛機で毛羽立たせたものが用いられる。
また、繊維を所定高さの波上に水平方向に重ね合わせて透水性の生地上に接着や溶着でパイル状に立体植毛したものも、粗粒上の懸濁物をも強力に保持し脱落させないので好ましい。
【0016】
本発明の請求項4に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1において、袋状部に消臭剤、殺菌剤、中和剤、放射性物質吸着剤のいずれか1種以上が混入されている構成を有している。
この構成により、請求項1で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。
(a)吸水性樹脂中に消臭剤が混入されているので、吸水性樹脂土嚢を外部に取り出した際に、消臭されているので、不快臭がなく取り扱い性に優れる。
(b)吸水性樹脂中に殺菌剤や中和剤、放射性物質吸着剤が混入されているので、安全性に優れる。
ここで、放射性物質吸着材としては、ゼオライト、プルシアンブルー、結晶化シリコチタネート、合成ゼオライト、チタン酸塩等が用いられる。
【0017】
本発明の請求項5に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1乃至4のいずれか1に記載の発明において、付着部、袋状部、吸水性樹脂のいずれか1以上が生分解性材料で形成されている構成を有している。
この構成により、請求項1乃至4のいずれか1に記載の発明で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。
(a)汚泥水を吸水吸着し安定して保持した吸水性樹脂土嚢を埋立地等にそのまま埋設でき作業性に優れる。
ここで、生分解性ポリマーとしては、微生物系、天然物系、化学合成系が用いられる。
具体的には、ポリ乳酸、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コー3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートサクシネート等が持いられる。
中でも、ポリ乳酸系が、土壌中の微生物や紫外線により生分解を受けやすいので好適に用いられる。
【0018】
本発明の請求項6に記載の汚泥水吸収土嚢は、請求項1,3乃至5のいずれか1に記載の発明において、袋状部の周縁部の少なくとも1縁部に1以上の係止孔を備えた構成を有している。
この構成により、請求項1,3乃至5のいずれか1に記載の発明で得られる作用・効果に加えて、以下の作用・効果を有する。
(a)係止孔にロープ等の係止具を締結して、吸水性樹脂土嚢を汚泥水の滞留部分に投げ込み、汚泥水を吸収させたのち、係止具を引きずり出しながら床面を清掃するとともに、汚泥水を吸収した吸水性樹脂土嚢を取り出すことができる。
(b)係止孔に係止具を備えた吸水性樹脂土嚢を放射性汚泥水の除去に使用する場合、作業員が滞留汚泥水から離れた場所から操作、作業をできるので、人体への放射線被曝等の被害を防止し、作業性、安全性に優れる。
ここで、係止孔としては、1縁部に1以上形成される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施の形態1の汚泥水吸収土嚢の一部破断平面模式図
【
図3】実施の形態1の汚泥水吸収土嚢が汚泥水を吸収吸着した状態を示す中央断面模式図
【
図4】実施の形態1の汚泥水吸収土嚢を洪水で浸水した家屋で使用している状態を示す模式図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明実施の形態について図面を用いて説明する。尚、本発明は実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1の汚泥水吸収土嚢の一部破断平面模式図である。
図1において、1は家屋の床下に滞留した汚泥水の排出に好適に形成された汚泥水吸収土嚢、2は起毛されたビニロン繊維やループパイル状植毛で形成された付着部、3は表面に付着部2が縫着や、部分的に接着や溶着されて固定されたポリブチレンサクシネート等の生分解性ポリマーのシートで形成された袋状部、4は吸水性樹脂と通水補助剤を袋状部3に内包する内包部、5は袋状部3の周囲の内側で吸水性樹脂と通水補助剤が漏出するのを防ぐため縫着や接着で封止された封止部、6は袋状部3の封止部5の外側に形成された縁部、7は縁部6に形成されたロープや鉤等の係止具8を係止する係止孔である。
【0021】
図2は、
図1のA-A線断面模式図である。
図2において、付着部2は起毛されたビニロン繊維や、ピッチが数mmでポリエステル繊維、レーヨン繊維、ポリオレフィン繊維、ポリエステル繊維で作成されピッチが約1~10mm程度でループパイルで形成され、毛足が数mm乃至10mmの長さで作成されポリオレフィン製の不織布に溶着され袋上部3の外周表面に接着等で固定されている。袋状部3の内包部4には吸水したとき重量が約30Kgになるように99.5vol%以下の吸水性樹脂4aと0.7vol%以上の通水補助材4bが調整され均一に混合分散されて封入されている。
【0022】
図3は、実施の形態1の汚泥水吸収土嚢が汚泥水を吸収吸着した状態を示す中央断面模式図である。
図3において、9は吸水性樹脂4aが汚泥水を吸収する際に水に同伴して付着部2で捕捉された粗粒汚泥粒子や浮遊物等の粗粒懸濁物、10は吸水性樹脂や通水補助材で吸収吸着され捕捉された汚泥水中のシルトや微細有機物等の微細懸濁物である。
【0023】
以上のように作成された実施の形態1の吸水性樹脂土嚢について、以下その使用方法を図面を用いて説明する。
図4は実施の形態1の汚泥水吸収土嚢を洪水で浸水した家屋で使用している状態を示す模式図である。
図4において、11は洪水で床下浸水を被災した家屋の住人、12は床下点検口、13は床下に滞留した滞留汚泥水である。吸水性樹脂土嚢1aは滞留した汚泥水を吸収吸着してゲル化膨潤している。吸水性樹脂土嚢1aは係止孔7にロープ等の係止具8で締結されて汚泥水の滞留場所に投げ込まれている。
まず、住人11は床下点検口12から滞留汚泥水13を確認し、吸水性樹脂土嚢1の縁部6の係止孔7にロープからなる係止具8を固定し、次いで、床下点検口12から係止具8の付いた吸水性樹脂土嚢1を滞留汚泥水13に投げ込む。投げ込まれた吸水性樹脂土嚢1の袋状部3に内包された吸水性樹脂4aは通水補助剤4bが分散混入されているので、強い吸水力で汚泥水を吸収する。水を吸収する際に吸収力が強いことから汚泥懸濁物も同時に吸収し、粗粒懸濁物9は袋状部3の表面の付着部2の起毛された或いはループパイル状に植毛された繊維群に絡め取られ、シルトや微細な有機物等からなる微細懸濁物10は袋状部3の繊維間等を通過して吸水性樹脂層に浸入する。吸水性樹脂4aには通水補助剤4bが混入されているので吸水性樹脂層全体に水やシルトや微細な有機物等からなる微細懸濁物10を行き渡らせ短時間で全体をゲル化膨潤させる。次いで、全体がゲル化膨潤した吸水性樹脂土嚢1aを取り出すために引きずるとそれに合わせて、吸水性樹脂土嚢1aの下面の付着部2の繊維群等が床面上の汚物等を絡め取りながら出てくるので、床面の汚泥水や汚泥を一気に排出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明は、家屋の床下等の狭い場所や危険物貯蔵所、放射性汚泥水、酸素欠乏場所、硫化水素等の有毒ガス発生場所等に滞留した汚泥水やヘドロの上に載置して汚泥水を吸収吸着させた後引きずり出すだけで、汚水やシルトや有機汚泥等の微細な懸濁物を吸収保持しするとともに、汚泥水中や床面上の汚物やシルト等の粗粒状若しくは細粒状の懸濁物を付着部に絡ませて保持させ、引き出すだけで、床下等の狭い場所や危険物貯蔵所等の床面等に滞留した汚泥水を排除でき、汚泥水の排除の作業性を著しく高めることのできる汚泥水吸収土嚢の提供する。
【符号の説明】
【0025】
1 吸水性樹脂土嚢
1a 汚泥水を吸収吸着してゲル化膨潤した吸水性樹脂土嚢
2 付着部
3 袋状部
4 内包部
4a 吸水性樹脂
4b 通水補助剤
5 封止部
6 縁部
7 係止孔
8 係止具
9 粗粒懸濁物
10 微細懸濁物
11 住人
12 床下点検口
13 滞留汚泥水