IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士機械製造株式会社の特許一覧

特許7109129部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法
<>
  • 特許-部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法 図1
  • 特許-部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法 図2
  • 特許-部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法 図3
  • 特許-部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法 図4
  • 特許-部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法 図5
  • 特許-部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法 図6
  • 特許-部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法 図7
  • 特許-部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法 図8
  • 特許-部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】部品実装機およびテープ剥離リカバリ方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 13/02 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
H05K13/02 B
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021115486
(22)【出願日】2021-07-13
(62)【分割の表示】P 2016176034の分割
【原出願日】2016-09-09
(65)【公開番号】P2021170662
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000237271
【氏名又は名称】株式会社FUJI
(74)【代理人】
【識別番号】100191433
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 友希
(72)【発明者】
【氏名】高橋 明
(72)【発明者】
【氏名】本多 利充
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-127517(JP,A)
【文献】特開2016-063044(JP,A)
【文献】特開2014-011328(JP,A)
【文献】特開2010-212486(JP,A)
【文献】特開2011-181816(JP,A)
【文献】特開2003-124688(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0110588(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の部品収納部にそれぞれ部品を収納したボトムテープおよび前記ボトムテープに接着されて前記部品収納部を覆うカバーテープからなるキャリアテープを繰り出すテープ繰り出し機構、ならびに前記キャリアテープが繰り出されるにつれ前記ボトムテープと前記カバーテープとの間を進行して剥離を行うテープ剥離刃を含むテープ剥離機構を有して、部品供給位置で前記部品収納部から前記部品を供給する複数のフィーダ装置と、
前記部品供給位置で前記部品を吸着して基板に装着する吸着ノズルを保持する実装ヘッド、および前記実装ヘッドを駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、
前記テープ剥離刃によって前記ボトムテープから前記カバーテープの一方の接着部の剥離が開始されなかったと判定した場合、前記キャリアテープの先端を一旦戻した後、前記テープ繰り出し機構で再度繰り出す剥離リカバリ動作を実施する制御装置と、を備え、
前記制御装置が前記リカバリ動作の実施回数を前記複数のフィーダ装置ごとに個別に設定可能な部品実装機。
【請求項2】
複数の部品収納部にそれぞれ部品を収納したボトムテープおよび前記ボトムテープに接着されて前記部品収納部を覆うカバーテープからなるキャリアテープを繰り出すテープ繰り出し機構、ならびに前記キャリアテープが繰り出されるにつれ前記ボトムテープと前記カバーテープとの間を進行して剥離を行うテープ剥離刃を含むテープ剥離機構を有して、部品供給位置で前記部品収納部から前記部品を供給する複数のフィーダ装置と、
前記部品供給位置で前記部品を吸着して基板に装着する吸着ノズルを保持する実装ヘッド、および前記実装ヘッドを駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、
前記キャリアテープの先端が前記テープ剥離刃まで繰り出された後、前記部品供給位置で前記吸着ノズルが吸着動作を開始する以前に、前記テープ剥離刃が前記ボトムテープと前記カバーテープとの間に進入して剥離が開始されたか否かを判定する剥離開始判定部と、
前記剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された場合、前記キャリアテープの先端を一旦前記テープ剥離刃の手前まで戻して再度繰り出すリカバリ動作を実施するリカバリ動作部と、を備え、
前記リカバリ動作部が前記リカバリ動作を実施するときの変更可能なリカバリ実施条件として、前記リカバリ動作の実施回数、前記キャリアテープの先端を戻すときの戻し量、前記キャリアテープの先端を戻すときの戻し速度、および前記キャリアテープの先端を再度繰り出すときの繰り出し速度、の少なくとも1つを前記複数のフィーダ装置ごとに個別に設定可能な部品実装機。
【請求項3】
前記剥離開始判定部は、さらに、前記ボトムテープから前記カバーテープの両側の接着部が剥離された場合は全剥離、前記ボトムテープから前記カバーテープが剥離されなかった場合は全通過としてそれぞれ剥離動作の不具合と判定する請求項2に記載の部品実装機。
【請求項4】
前記剥離開始判定部は、
前記実装ヘッドに設けられて前記基板の位置基準マークを撮像する基板カメラと、
前記基板カメラで前記キャリアテープを撮像し、撮像した画像に基づいて前記カバーテープの剥離が開始されたか否かを判定する画像判定部と、
を備える請求項2または3に記載の部品実装機。
【請求項5】
前記画像判定部は、前記テープ剥離機構の複数の撮像位置で前記基板カメラが撮像した前記キャリアテープの画像に基づいて前記カバーテープの剥離が開始されたか否かを判定する請求項4に記載の部品実装機。
【請求項6】
前記リカバリ動作部は、
設定された前記リカバリ動作の実施回数のリカバリ動作を実施しても、前記剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された場合、前記キャリアテープを前記フィーダ装置のテープ挿入口まで戻して排出するテープ排出部を備える請求項2に記載の部品実装機。
【請求項7】
複数の部品収納部にそれぞれ部品を収納したボトムテープおよび前記ボトムテープに接着されて前記部品収納部を覆うカバーテープからなるキャリアテープを繰り出すテープ繰り出し機構、ならびに前記キャリアテープが繰り出されるにつれ前記ボトムテープと前記カバーテープとの間を進行して剥離を行うテープ剥離刃を含むテープ剥離機構を有して、部品供給位置において前記部品収納部から前記部品を供給する複数のフィーダ装置と、
前記部品供給位置で前記部品を吸着して基板に装着する吸着ノズルをもつ実装ヘッド、および前記実装ヘッドを駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、を備える部品実装機のテープ剥離リカバリ方法であって、
前記キャリアテープの先端が前記テープ剥離刃まで繰り出された後、前記部品供給位置で前記吸着ノズルが吸着動作を開始する以前に、前記テープ剥離刃が前記ボトムテープと前記カバーテープとの間に進入して剥離が開始されたか否かを判定する剥離開始判定工程と、
前記剥離開始判定工程で剥離が開始されなかったと判定された場合、前記キャリアテープの先端を一旦前記テープ剥離刃の手前まで戻して再度繰り出すリカバリ動作を実施するリカバリ動作工程と、を有し、
前記リカバリ動作工程で前記剥離リカバリ動作を実施するときの変更可能なリカバリ実施条件として、前記剥離リカバリ動作の実施回数、前記キャリアテープの先端を戻すときの戻し量、前記キャリアテープの先端を戻すときの戻し速度、および前記キャリアテープの先端を再度繰り出すときの繰り出し速度、の少なくとも1つを前記複数のフィーダ装置ごとに個別に設定するテープ剥離リカバリ方法。
【請求項8】
複数の部品収納部にそれぞれ部品を収納したボトムテープおよび前記ボトムテープに接着されて前記部品収納部を覆うカバーテープからなるキャリアテープを繰り出すテープ繰り出し機構、ならびに前記キャリアテープが繰り出されるにつれ前記ボトムテープと前記カバーテープとの間を進行して剥離を行うテープ剥離刃を含むテープ剥離機構を有して、部品供給位置において前記部品収納部から前記部品を供給する複数のフィーダ装置と、
前記部品供給位置で前記部品を吸着して基板に装着する吸着ノズルをもつ実装ヘッド、および前記実装ヘッドを駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、を備える部品実装機のテープ剥離リカバリ方法であって、
前記キャリアテープの先端が前記テープ剥離刃まで繰り出された後、前記部品供給位置で前記吸着ノズルが吸着動作を開始する以前に、前記テープ剥離刃が前記ボトムテープと前記カバーテープとの間に進入して剥離が開始されたか否かを判定する剥離開始判定工程と、
前記剥離開始判定工程で剥離が開始されなかったと判定された場合、前記キャリアテープの先端を一旦前記テープ剥離刃の手前まで戻して再度繰り出すリカバリ動作を実施するリカバリ動作工程と、を有し、
前記リカバリ動作工程で所定の実施回数の剥離リカバリ動作を実施しても、前記剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された場合、前記キャリアテープを前記フィーダ装置のテープ挿入口まで戻し、先端が整えられた状態の前記キャリアテープを装填しなおすテープ剥離リカバリ方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアテープを繰り出して部品を供給するフィーダ装置を備える部品実装機に関し、より詳細には、キャリアテープを構成するボトムテープからカバーテープを剥離するテープ剥離動作の信頼性向上に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の部品が実装された基板を生産する設備として、はんだ印刷機、部品実装機、リフロー機、基板検査機などがある。これらの設備を連結して基板生産ラインを構成することが一般的になっている。このうち部品実装機は、基板搬送装置、部品供給装置、部品移載装置、および制御装置を備える。部品供給装置の代表例として、多数の部品を所定ピッチで収納保持したキャリアテープを繰り出す方式のフィーダ装置がある。キャリアテープは、複数の部品収納部にそれぞれ部品を収納したボトムテープおよびボトムテープに接着されて部品収納部を覆うカバーテープを含む。一般的に、フィーダ装置は、ボトムテープからカバーテープを剥離して部品の供給を可能とするテープ剥離機構を備える。この種のフィーダ装置に関する技術例が特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1は、先行のキャリアテープの後に後続のキャリアテープを導入する際のカバーテープ剥離方法を開示している。このカバーテープ剥離方法は、先行のキャリアテープの終端と後続のキャリアテープの先端とを当接させて、先行のキャリアテープの終端を剥離刃(テープ剥離刃)よりも下流側に押し出す押出工程と、後続のキャリアテープの先端を剥離刃よりも上流側まで逆送する逆流工程と、後続のキャリアテープ再度移送して剥離を行う再移送工程とを含む。これによれば、先行のキャリアテープを剥離刃と干渉しない位置に押し出すことができ、後続のキャリアテープのベーステープ(ボトムテープ)とカバーテープとの間に剥離刃を正確に食い込ませることができる、とされている。
【0004】
さらに、後続のキャリアテープから部品を取り出すことができない旨のエラー情報を受信した場合、再度逆流工程と再移送工程を実施する態様が開示されている。これによれば、剥離動作を再度実行することができ、人手に頼ることなく部品実装機の操業を維持できる、とされている。特許文献1に限らず、キャリアテープの先端における剥離動作の成功率は100%ではない。剥離動作に不具合の生じたとき、従来は、一旦キャリアテープを排出して先端の状態を確認し、状態が悪い場合には部品の損失を伴うテープの切断を行うなどの対応をしてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2014-127517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1の技術において、後続のキャリアテープから部品を取り出すことができない旨のエラー情報は、剥離動作に不具合が生じたことを意味する。このエラー情報は、部品移載装置の吸着ノズルが部品を吸着できなかった場合に発信される。ここで、吸着ノズルが部品を吸着したか否かを判定するために、吸着ノズルに吸着動作を実行させて部品撮影用カメラまで移動し、部品撮影用カメラで吸着ノズルの先端を撮像し、撮像した画像を画像処理して部品の有無を判定する。この判定方法は、部品を基板に装着する実生産時にしか行えない。このため、エラー情報の発信にタイムラグが生じ、剥離動作の不具合発生時に生産効率が低下する。したがって、実生産を開始する以前に、剥離動作の不具合を迅速に検出することが必要である。
【0007】
さらに、特許文献1の技術では、吸着ノズルが部品を吸着していてキャリアテープの進路に不具合の生じた場合、エラー情報が発信されずに看過されてしまう。したがって、剥離動作の不具合判定精度を高め、剥離リカバリ動作の成功率を高め、リカバリ不成功時の対応を向上することが好ましい。
【0008】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、フィーダ装置においてキャリアテープの先端がテープ剥離刃まで繰り出された後に、剥離が開始されたか否かを迅速に判定できる部品実装機、および剥離が開始されたか否かを迅速に判定できるテープ剥離リカバリ方法を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決する本発明の部品実装機は、複数の部品収納部にそれぞれ部品を収納したボトムテープおよび前記ボトムテープに接着されて前記部品収納部を覆うカバーテープからなるキャリアテープを繰り出すテープ繰り出し機構、ならびに前記キャリアテープが繰り出されるにつれ前記ボトムテープと前記カバーテープとの間を進行して剥離を行うテープ剥離刃を含むテープ剥離機構を有して、部品供給位置で前記部品収納部から前記部品を供給する複数のフィーダ装置と、前記部品供給位置で前記部品を吸着して基板に装着する吸着ノズルを保持する実装ヘッド、および前記実装ヘッドを駆動するヘッド駆動機構を有する部品移載装置と、前記テープ剥離刃によって前記ボトムテープから前記カバーテープの一方の接着部の剥離が開始されなかったと判定した場合、前記キャリアテープの先端を一旦戻した後、前記テープ繰り出し機構で再度繰り出す剥離リカバリ動作を実施する制御装置と、を備え、前記制御装置が前記リカバリ動作の実施回数を前記複数のフィーダ装置ごとに個別に設定可能である。
【発明の効果】
【0010】
本発明の部品実装機は、キャリアテープがテープ剥離刃まで繰り出された後、テープ剥離刃によってボトムテープとカバーテープの剥離が開始されたか否かを判定し、剥離が開始されなかったと判定された場合に剥離リカバリ動作を実施する。したがって、本発明によれば、剥離が開始されたか否かを迅速に判定し対処できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の部品実装機の装置構成を示す平面図である。
図2】フィーダ装置の側面図である。
図3】テープ剥離機構の構成および剥離動作を説明する平面図である。
図4図3中のキャリアテープのみを示した平面図である。
図5図4のC-C矢視方向のキャリアテープの断面図である。
図6図4のD-D矢視方向のキャリアテープの断面図であり、カバーテープの折り返し状態が示されている。
図7】カバーテープの全剥離の不具合を説明する斜視図である。
図8】カバーテープの全通過の不具合を説明する平面図である。
図9】剥離開始判定部およびリカバリ動作部の処理を含んだ制御装置の処理フローを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(1.実施形態の部品実装機1の装置構成)
本発明の実施形態の部品実装機1の装置構成について、図1を参考にして説明する。図1は、実施形態の部品実装機1の装置構成を示す平面図である。図1の紙面左側から右側に向かう方向が基板Kを搬入出するX軸方向、紙面下側の後方から紙面上側の前方に向かう方向がY軸方向である。部品実装機1は、基板搬送装置2、複数のフィーダ装置3、部品移載装置4、部品カメラ5、および制御装置6などが機台9に組み付けられて構成されている。基板搬送装置2、各フィーダ装置3、部品移載装置4、および部品カメラ5は、制御装置6から制御され、それぞれが所定の作業を行うようになっている。
【0013】
基板搬送装置2は、基板Kを装着実施位置に搬入し位置決めし搬出する。基板搬送装置2は、一対のガイドレール21、22、一対のコンベアベルト、およびバックアップ装置などで構成されている。一対のガイドレール21、22は、機台9の上面中央を横断して搬送方向(X軸方向)に延在し、かつ互いに平行して機台9に組み付けられている。一対のガイドレール21、22の向かい合う内側に、図略の無端環状の一対のコンベアベルトが並設されている。一対のコンベアベルトは、コンベア搬送面に基板Kの両縁をそれぞれ戴置した状態で輪転して、基板Kを機台9の中央部に設定された装着実施位置に搬入および搬出する。装着実施位置の下方には、図略のバックアップ装置が配設されている。バックアップ装置は、基板Kを押し上げて水平姿勢でクランプし、装着実施位置に位置決めする。これにより、部品移載装置4が装着実施位置で装着動作を行えるようになる。
【0014】
複数のフィーダ装置3は、それぞれ部品を順次供給する。複数のフィーダ装置3は、幅方向寸法が小さな扁平形状であり、機台9の上面のパレット台91上に並べて装備される。各フィーダ装置3は、本体部31、本体部31の後部に設けられたテープリール39、本体部31の前端付近の上部に設けられた部品供給位置32などを有している。テープリール39には、キャリアテープ8(図4図5参照)が巻回保持されている。このキャリアテープ8が所定ピッチずつ繰り出され、部品が収納状態を解除されて部品供給位置32に順次供給される。フィーダ装置3の詳細な構成は後述する。
【0015】
部品移載装置4は、複数のフィーダ装置3の各部品供給位置32から部品を吸着採取し、位置決めされた基板Kまで搬送して装着する。部品移載装置4は、X軸方向およびY軸方向に水平移動可能なXYロボットタイプの装置である。部品移載装置4は、ヘッド駆動機構を構成する一対のY軸レール41、42およびY軸スライダ43、実装ヘッド44、ノズルツール45、吸着ノズル46、ならびに基板カメラ47などで構成されている。一対のY軸レール41、42は、機台9の両方の側面寄りに配置されて、前後方向(Y軸方向)に延在している。Y軸レール41、42上に、Y軸スライダ43が移動可能に装架されている。Y軸スライダ43は、Y軸ボールねじ機構によってY軸方向に駆動される。
【0016】
実装ヘッド44は、Y軸スライダ43に移動可能に装架されている。実装ヘッド44は、フィーダ装置3の部品供給位置32で吸着ノズル46により部品89を吸着し、基板Kに装着する。実装ヘッド44は、X軸ボールねじ機構によってX軸方向に駆動される。ノズルツール45は、実装ヘッド44に交換可能に保持される。ノズルツール45は、部品を吸着して基板Kに装着する吸着ノズル46を1本または複数本有する。基板カメラ47は、実装ヘッド44にノズルツール45と並んで設けられている。基板カメラ47は、基板Kに付設された位置基準マークを撮像して、基板Kの正確な位置を検出する。
【0017】
部品カメラ5は、基板搬送装置2とフィーダ装置3との間の機台9の上面に、上向きに設けられている。部品カメラ5は、実装ヘッド44がフィーダ装置3から基板K上に移動する途中で、吸着ノズル46に吸着されている部品の状態を撮像する。部品カメラ5の撮像データによって部品の吸着姿勢の誤差や回転角のずれなどが判明すると、制御装置6は、必要に応じて部品装着動作を微調整し、装着が困難な場合には当該の部品を廃棄する制御を行う。
【0018】
制御装置6は、機台9に組み付けられており、その配設位置は特に限定されない。制御装置6は、基板Kに装着する部品の種類および装着順序、当該の部品を供給するフィーダ装置3などを指定した装着シーケンスを保持している。制御装置6は、基板カメラ47および部品カメラ5の撮像データ、ならびに図略のセンサの検出データなどに基づき、装着シーケンスにしたがって部品装着動作を制御する。また、制御装置6は、生産完了した基板Kの生産数や、部品の装着に要した装着時間、部品の吸着エラーの発生回数などの稼動状況データを逐次収集して更新する。制御装置6は、オペレータに情報を表示するための表示部や、オペレータによる入力設定を行うための入力部を備えている。制御装置6は、後述する処理フローを実行して、本発明の剥離開始判定部およびリカバリ動作部の役割を果たす。
【0019】
(2.フィーダ装置3の詳細な構成)
次に、フィーダ装置3の詳細な構成について説明する。図2は、フィーダ装置3の側面図である。フィーダ装置3は、本体部31の後端の中間高さ付近にテープ挿入口33を有している。テープ挿入口33から本体部31の前端上部に向けて繰り出しレール34が配設されている。繰り出しレール34の前端付近の上面に、部品供給位置32が設定されている。部品供給位置32の後方に、テープ剥離機構7が配設されている。
【0020】
部品供給位置32の前後の繰り出しレール34の下側に、第1および第2スプロケット351、352が回転可能に軸承されている。第1および第2スプロケット351、352の歯は、繰り出しレール34に形成された溝から突出して、キャリアテープ8のスプロケット孔84に嵌入する。第1および第2スプロケット351、352は、図略の前側サーボモータにより同期して駆動され、かつ、正転および逆転の切り替えが可能になっている。
【0021】
繰り出しレール34のテープ挿入口33に近い後方寄りの下側に、第3および第4スプロケット353、354が回転可能に軸承されている。第3および第4スプロケット353、354の歯は、繰り出しレール34に形成された溝から突出して、キャリアテープ8のスプロケット孔84に嵌入する。第3および第4スプロケット353、354は、図略の後側サーボモータにより同期して駆動され、かつ、正転および逆転の切り替えが可能になっている。繰り出しレール34、第1~第4スプロケット351~354、ならびに、前側および後側サーボモータなどにより、テープ繰り出し機構が構成されている。
【0022】
フィーダ装置3のテープ挿入口33の後方には、キャリアテープ8の巻回されたテープリール39が回転可能に支承されている。テープ装填作業で、作業者は、テープリール39からキャリアテープ8の先端を引き出して、テープ挿入口33から第4スプロケット354まで挿入する。すると、第3および第4スプロケット353、354が正転駆動され、キャリアテープ8が繰り出される。キャリアテープ8の先端が第2スプロケット352まで到達すると、第1および第2スプロケット351、352が正転駆動され、キャリアテープ8が部品供給位置32まで繰り出される。これが、キャリアテープ8の自動装填機能である。フィーダ装置3が有する自動装填機能により、2本のキャリアテープ8を接続するスプライシング作業は不要となっている。
【0023】
また、第1~第4スプロケット351~354が逆転駆動されると、キャリアテープ8は手前側に戻され、最終的には、第4スプロケット354の後方まで排出される。これが、キャリアテープ8の自動排出機能であり、本発明のテープ排出部に相当する。また、キャリアテープ8が装填された後には、第1~第4スプロケット351~354がピッチ送りで正転駆動される。これにより、キャリアテープ8は、部品供給位置32で順次部品を供給する。
【0024】
(3.テープ剥離機構7の構成および剥離動作)
次に、テープ剥離機構7の構成について説明する。図3は、テープ剥離機構7の構成および剥離動作を説明する平面図である。また、図4は、図3中のキャリアテープ8のみを示した平面図である。図3および図4において、キャリアテープ8を構成するカバーテープ81は、便宜的にハッチングを付して示されている。また、接着部85、86および部品89は、便宜的に黒塗りで示されている。図5は、図4のC-C矢視方向のキャリアテープ8の断面図である。図6は、図4のD-D矢視方向のキャリアテープ8の断面図であり、カバーテープ81の折り返し状態が示されている。
【0025】
図4および図5に示されるように、キャリアテープ8は、カバーテープ81およびボトムテープ82を含む。ボトムテープ82のテープ幅方向の中央から一方の側縁に寄った位置には、テープ長さ方向に等ピッチで多数の矩形状の部品収納部83が設けられている。各部品収納部83に、それぞれ部品89が収納保持されている。ボトムテープ82の他方の側縁に寄った位置には、テープ長さ方向に等ピッチで多数のスプロケット孔84が穿設されている。
【0026】
ボトムテープ82の上面には、カバーテープ81(ハッチング示)が剥離可能に接着されている。詳述すると、ボトムテープ82の部品収納部83と一方の側縁との間に、テープ長さ方向に延びる接着部85(黒塗り示)が設定されている。また、ボトムテープ82の部品収納部83とスプロケット孔84との間に、テープ長さ方向に延びる接着部86(黒塗り示)が設定されている。2つの接着部85、86に対して、カバーテープ81の両縁に近い部分が接着されている。カバーテープ81は、その幅寸法がボトムテープ82よりも小さく、部品収納部83を覆うが、スプロケット孔84を覆わない。
【0027】
図3に示されるように、テープ剥離機構7は、2枚の側板77、78、第1テープガイド71、第2テープガイド72、テープ剥離刃73、および、テープ折返し板74などで構成されている。第1テープガイド71および第2テープガイド72は、薄板状の部材であり、繰り出しレール34の上側に離隔して平行に配設される。第1テープガイド71および第2テープガイド72と繰り出しレール34との離隔寸法は、キャリアテープ8の厚みよりもわずかに大きい。キャリアテープ8は、この離隔寸法の間を通過する。
【0028】
第1テープガイド71の後部は、2枚の側板77、78の間に架け渡されて全幅を占めている。第1テープガイド71の前部は、他方の側板78寄りに配置されている。第1テープガイド71の前方寄りに、キャリアテープ8のスプロケット孔84を目視可能とする長円状のスプロケット孔窓711が形成されている。第1テープガイド71のその他の複数位置にも、キャリアテープ8を目視可能とする符号略の切欠き窓が形成されている。第1テープガイド71の後方に、キャリアテープ8の有無を検出するテープ検出センサ712が配設されている。第1テープガイド71の上面に、位置基準となる位置マーク715が付設されている。
【0029】
第2テープガイド72は、第1テープガイド71の前方寄りに並んで配置され、一方の側板77に取り付けられている。第2テープガイド72は、部品供給位置32に相当する部分が切り欠かれている。第2テープガイド72の上面に、位置基準となる位置マーク725が付設されている。第1テープガイド71と第2テープガイド72との間に、前後方向に延びる開口部75が形成されている。開口部75の前側は、第1および第2テープガイド71、72の間で幅方向に狭く開口しており、部品供給位置32まで通じている。開口部75の後側は、第1テープガイド71と一方の側板77との間に形成され、幅方向に広く開口している。
【0030】
テープ剥離刃73は、一方の側板77から幅方向に張り出して取り付けられており、開口部75の後側に配置されている。テープ剥離刃73は、先端の幅が狭くかつ上下に薄く、後尾の幅が広くかつ上下に厚く形成されている。テープ剥離刃73は、先端が後方を向いてキャリアテープ8に対向するように配置されている。さらに、テープ剥離刃73は、配設高さが調整されて、その先端がボトムテープ82とカバーテープ81との間に進入するようになっている。
【0031】
テープ折返し板74は、テープ剥離刃73の後尾に連なり、一方の側板77から幅方向に張り出して配設されている。テープ折返し板74は、第1テープガイド71および第2テープガイド72の上側に離隔して平行に配置される。テープ折返し板74は、カバーテープ81を折り返して部品収納部83を開放できるように、テーパ形状の側縁741をもち、テープ剥離刃73から離れる前方に向かって徐々に拡幅されている。テープ折返し板74と第1テープガイド71との離隔寸法は、カバーテープ81の折り返しが良好に行われるように調整されている。テープ折返し板74は、部品供給位置32に相当する部分が切り欠かれている。
【0032】
次に、テープ剥離機構7の剥離動作について説明する。テープ剥離機構7に向かってキャリアテープ8の先端が繰り出されてくると、キャリアテープ8の先端とテープ剥離刃73とが対向する。そして、さらにキャリアテープ8が繰り出されると、テープ剥離刃73は、ボトムテープ82とカバーテープ81との間に進入し、両テープ82、81の間を進行する。本実施形態において、テープ剥離刃73は、一方の接着部85を剥離し、他方の接着部86を剥離しない。このため、カバーテープ81は、一方の接着部85が剥離され、他方の接着部86が接着された状態で繰り出される。
【0033】
カバーテープ81は、開口部75の後側から前側へと進むにつれ、テープ剥離刃73の側面に沿って、他方の接着部86の上方に立ち上がってゆく。さらに、カバーテープ81は、テープ折返し板74のテーパ形状の側縁74に沿って、他方の側板78の方向に折り返されてゆく。最終的に、カバーテープ81は、部品供給位置32において図6に示される折り返し状態となる。これにより、部品収納部83の上部が開放されて、部品89の吸着が可能になる。部品89が吸着された後、キャリアテープ8は、カバーテープ81がボトムテープ82に接着されたままの状態で、フィーダ装置3の前方へ排出される。
【0034】
(4.剥離動作の不具合事例)
次に、テープ剥離機構7の剥離動作の不具合の2事例について例示説明する。図7は、カバーテープ81の全剥離の不具合を説明する斜視図である。本来、テープ剥離刃73は一方の接着部85のみを剥離するものである。しかしながら、両方の接着部85、86がともに剥離されてしまう場合が生じ得る。この場合、カバーテープ81の全体が開口部75から逸脱してしまい、カバーテープ81の進路が不定となる。したがって、吸着ノズル46が部品供給位置32で部品89を吸着できても、進路不定のカバーテープ81により支障が生じるので、基板Kの生産を行うべきでない。
【0035】
また、図8は、カバーテープ81の全通過の不具合を説明する平面図である。テープ剥離刃73がボトムテープ82とカバーテープ81との間に進入できずにカバーテープ81の上側を通過してしまうと、カバーテープ81が剥離されない。すると、キャリアテープ8の全体が部品供給位置32まで装填される全通過の不具合が発生する。この場合、吸着ノズル46は部品供給位置32で部品89を吸着できず、基板Kの生産は行われない。
【0036】
(5.制御装置6の処理フローによる剥離開始判定部およびリカバリ動作部の実現)
実施形態の部品実装機1は、テープ剥離機構7の剥離動作の不具合を迅速に判定するとともに、不具合をできるだけ自動でリカバリしてオペレータの作業を軽減することを目標としている。これを実現するために、制御装置6は、剥離開始判定部およびリカバリ動作部の処理を含んだ処理フローを実行する。
【0037】
制御装置6は、剥離開始判定部の処理として、キャリアテープ8の先端がテープ剥離刃73まで繰り出された後、部品供給位置32で吸着ノズル46が吸着動作を開始する以前に、テープ剥離刃73がボトムテープ82とカバーテープ81との間に進入して剥離が開始されたか否かを判定する。また、制御装置6は、リカバリ動作部の処理として、剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された場合に、キャリアテープ8の先端を一旦テープ剥離刃73の手前まで戻して再度繰り出す剥離リカバリ動作を実施する。制御装置6の処理フローについて、以降に詳述する。
【0038】
図9は、剥離開始判定部およびリカバリ動作部の処理を含んだ制御装置6の処理フローを説明する図である。なお、処理フローの一部は、オペレータによって実行される。図9の第1工程S1で、オペレータは、変更可能なリカバリ実施条件を設定する。リカバリ実施条件は、剥離リカバリ動作の実施回数nの上限を定めた指定回数N、キャリアテープ8の先端を戻すときの戻し量L、キャリアテープ8の先端を戻すときの戻し速度Vr、およびキャリアテープ8の先端を再度繰り出すときの繰り出し速度Vfの少なくとも一項目を含む。リカバリ実施条件は、使用するキャリアテープ8の幅寸法や材質、構造の類似性に着目してフィーダ装置3を分類したフィーダグループごとに設定される。また、リカバリ実施条件は、全てのフィーダ装置3に共通に設定されてもよく、フィーダ装置3ごとに個別に設定されてもよい。
【0039】
ここで、指定回数Nは、剥離リカバリ動作の成功率の向上、およびリカバリ不成功時のタイムロスなどが勘案されて設定される。例えば、図8で説明した全通過の不具合は、剥離リカバリ動作を繰り返すことで成功率の向上が期待できる。一方、図7で説明した全剥離の不具合は、剥離リカバリ動作を行っても正常状態には戻らず、いたずらに時間が過ぎてしまう。したがって、オペレータは、或る指定回数Nを設定して見切りをつける必要がある。
【0040】
また、戻し量Lは、テープ剥離刃73の先端と部品供給位置32との距離D1(図3参照)よりも大きいことが必要である。その理由は、第5工程S5の剥離開始判定部の処理が行われる時点で、キャリアテープ8の先端が部品供給位置32まで装填されていることによる。仮に、戻し量Lを距離D1よりも小さく設定すると、キャリアテープ8の先端がテープ剥離刃73の手前まで戻らず、剥離リカバリ動作が無意味になる。一方、戻し量Lは、テープ検出センサ712と部品供給位置32との距離D2(図3参照)よりも小さいことが好ましい。仮に、戻し量Lを距離D2よりも大きく設定すると、キャリアテープ8の先端がテープ検出センサ712よりもテープ挿入口33側まで戻ってしまう。これにより、テープ検出センサ712はテープ未検出の信号を出力するので、余分な処理が必要となって好ましくない。
【0041】
また、繰り出し速度Vfは、テープ剥離刃73がキャリアテープ8の先端に進入するときの状況を制御でき、剥離リカバリ動作の成功率に影響する。例えば、初回の剥離動作で不具合が発生した場合に、剥離リカバリ動作時の繰り出し速度Vfを初回よりも小さく設定することで、安定した剥離リカバリ動作が期待できる。また例えば、戻し量Lとの関連で、テープ剥離刃73がキャリアテープ8の先端に進入するときに、繰り出し速度Vfが加速途中の不安定な状態であると好ましくない。なお、戻し速度Vrの影響は小さいかもしれないが、戻し速度Vrの過大な設定は、キャリアテープ8に不要なテンションや弛みを生じる一因となり得る。
【0042】
次に、第2工程S2で、生産する基板Kの種類が決定されて、基板の生産が開始される。ただし、吸着ノズル46により部品89を吸着および装着するという実生産が開始されるのでなく、まず、最適化処理の演算や、オペレータによる段取り作業が行われる。最適化処理では、生産する基板Kの種類に合わせて、部品89の装着順序や使用する吸着ノズル46の種類、フィーダ装置3のパレット台91上の並び順などが最適化される。オペレータは、最適化処理の演算結果に基づいて、吸着ノズル46やフィーダ装置3、供給リール39などを準備する。
【0043】
次の第3工程S3で、オペレータは、段取り作業の一環でフィーダ装置3をパレット台91にセットする。次の第4工程S4で、キャリアテープ8の装填作業が行われる。初回の装填作業では、オペレータがフィーダ装置3に供給リール39をセットして、キャリアテープ8の先端をテープ挿入口33に挿入し、以降はフィーダ装置3の自動装填機能による。これにより、キャリアテープ8の先端が部品供給位置32まで装填される。
【0044】
次の第5工程S5で、制御装置6は、実装ヘッド44の基板カメラ47およびソフトウェアで実現された画像判定部を用いて、剥離開始判定部の処理を実施する。具体的に、制御装置6は、テープ剥離刃73から部品供給位置32までの範囲に基板カメラ47を移動させてキャリアテープ8を撮像し、撮像した画像を画像処理して剥離が開始されたか否かを判定する。基板カメラ47が撮像する撮像位置として、例えば、図3に示されるテープ剥離刃73の撮像位置P1およびP2、スプロケット孔窓711の撮像位置P3、および部品供給位置32の撮像位置P4の4箇所を設定できる。これらの撮像位置P1~P4は、位置マーク715、725が参照されることで、正確に位置決め制御される。なお、基板カメラ47は、上記した4箇所の撮像位置P1~P4の複数をまとめて撮像してもよく、個別に撮像してもよい。
【0045】
基板カメラ47は、撮像位置P1~P4においてキャリアテープ8を撮像するが、実際にはカバーテープ81を撮像するケース、ボトムテープ82を撮像するケース、およびキャリアテープ8以外のテープ剥離機構7の構成部材を撮像するケースが生じる。この3ケースは、例えば、画像の輝度の違いにより判別できる。そして、判別内容に基づいて、制御装置6は、剥離が開始されたか否かを判定できる。
【0046】
制御装置6は、撮像位置P1でカバーテープ81が判別された場合に、剥離の開始あるいは全剥離の不具合と判定する。制御装置6は、撮像位置P1でテープ剥離刃73が判別された場合に、全通過の不具合と判定する。制御装置6は、撮像位置P2でテープ剥離刃73が判別された場合に、剥離の開始あるいは全通過の不具合と判定する。制御装置6は、撮像位置P2でカバーテープ81が判別された場合に、全剥離の不具合と判定する。
【0047】
さらに、制御装置6は、スプロケット孔窓711の撮像位置P3でカバーテープ81が判別された場合に、剥離の開始と判定する。制御装置6は、撮像位置P3でボトムテープ82のスプロケット孔84が判別された場合に、全剥離または全通過の不具合と判定する。制御装置6は、部品供給位置32の撮像位置P4でボトムテープ82が判別された場合に、剥離の開始または全剥離の不具合と判定する。制御装置6は、撮像位置P4でカバーテープが判別された場合に、全通過の不具合と判定する。
【0048】
したがって、複数の撮像位置P1~P4での撮像および判別を組み合わせることにより、剥離が開始されたか否かの判定結果の精度を向上できる。カバーテープ81の全剥離の不具合は、本実施形態によれば判定可能であり、部品供給位置32で部品89を吸着できるか否かに基づく従来技術では判定できない。4箇所の撮像位置P1~P4の画像の輝度の違いにより剥離が開始されたか否かを判定する。例えば、4箇所の撮像位置P1~P4のそれぞれにおいて、カバーテープ81を撮像するケース、ボトムテープ82を撮像するケース、およびキャリアテープ8以外のテープ剥離機構7の構成部材を撮像するケースのそれぞれについて予め輝度値を取得し、実際に各撮像位置P1~P4を撮像した際の輝度値と比較することにより、各撮像位置P1~P4の状態を判定することが可能となる。
【0049】
次の第6工程S6で、制御装置6は、剥離の開始が判定されたときに処理フローの実行を第7工程S7に進め、そうでないときに処理フローの実行を第11工程S11に進める。第7工程S7で、制御装置6は、吸着ノズル46による部品89の吸着および装着を制御して、基板Kの実生産を開始し、継続する。実生産を継続してゆくと、第8工程S8でキャリアテープ8が終端まで繰り出されて部品切れになる。すると、オペレータは、新しい供給リール39を準備して、第4工程S4に戻る。
【0050】
また、第11工程S11で、剥離リカバリ動作の実施回数nが指定回数N未満のとき、制御装置6は、処理フローの実行を第12工程S12に進める。実施回数nが指定回数Nに達しているとき、制御装置6は、剥離動作の不具合が解消されないリカバリ不成功時と判断して、処理フローの実行を第14工程S14に進める。第12工程S12は、剥離動作に何らかの不具合が生じ、かつ、剥離リカバリ動作の実施回数nが指定回数N未満のときに行われるキャリアテープ8の戻し処理である。制御装置6は、第1工程S1で設定された戻し速度Vrを用いて、キャリアテープ8を設定された戻し量Lだけ手前側に戻すように制御する。
【0051】
次の第13工程S13で、制御装置6は、剥離リカバリ動作の実施回数nを1だけカウントアップして、処理フローの実行を第4工程S4に戻す。第13工程S13から戻ったときの第4工程S4で、オペレータは関与せず、制御装置6は、キャリアテープ8の自動装填機能を働かせる。すなわち、制御装置6は、第1工程S1で設定された繰り出し速度Vfを用いて、キャリアテープ8を戻し量Lだけ再度繰り出すように制御する。この後、第5工程S5以降が繰り返される。本発明のリカバリ動作部は、第11工程S11、第12工程S12、第13工程S13、および第4工程S4によって実現されている。
【0052】
また、リカバリ不成功時の第14工程S14で、制御装置6は、テープ排出部の処理に相当する自動排出機能を働かせる。これにより、キャリアテープ8の先端がテープ挿入口33の付近まで排出される。次の第15工程S15で、制御装置6は、フィーダエラーを表示してオペレータに報知し、処理フローの実行を第3工程S3に戻す。第3工程S3で、オペレータは、不具合の解消されなかったフィーダ装置3を新しいフィーダ装置3に交換する。この後、第4工程S4以降が繰り返される。
【0053】
(6.実施形態の部品実装機1の態様および効果)
実施形態の部品実装機1は、複数の部品収納部83にそれぞれ部品89を収納したボトムテープ82、およびボトムテープ82に接着されて部品収納部83を覆うカバーテープ81を含むキャリアテープ8を繰り出すテープ繰り出し機構、ならびにキャリアテープ8が繰り出されるにつれボトムテープ82とカバーテープ81の剥離を行うテープ剥離刃73を含むテープ剥離機構7を有し、部品供給位置32で部品収納部83から部品89を供給するフィーダ装置3と、部品供給位置32で部品89を吸着して基板Kに装着する実装ヘッド44を有する部品移載装置4と、を備える部品実装機1であって、キャリアテープ8の先端がテープ剥離刃73まで繰り出された後、テープ剥離刃73によってボトムテープ82とカバーテープ81の剥離が開始されたか否かを判定する剥離開始判定部(第5工程S5)と、剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された場合にキャリアテープ8の先端を一旦戻した後再度繰り出すことによって剥離リカバリ動作を実施するリカバリ動作部(第11、第12、第13、第4工程S11、S12、S13、S4)を備える。
【0054】
これによれば、キャリアテープ8がテープ剥離刃73まで繰り出された後、テープ剥離刃73によってボトムテープ82とカバーテープ81の剥離が開始されたか否かを判定し、剥離が開始されなかったと判定された場合に剥離リカバリ動作を実施する。したがって、剥離が開始されたか否かを迅速に判定し対処できる。
【0055】
特に、生産する基板Kの種類を変更するときの段取り作業では、多数のフィーダ装置3で供給リール39を交換してキャリアテープ8を装填する場合が多い。この場合、実施形態によれば、実生産を開始する以前に全部のフィーダ装置3で剥離動作の不具合を判定して、予め剥離リカバリ動作あるいはオペレータによる対応により部品供給に万全を期すことができる。これに対して、従来技術では、段取り作業時に剥離動作の不具合を判定できず、実生産を開始してから剥離動作の不具合が判明し、その後の対応が必要になって生産効率が低下する。したがって、本実施形態によれば、剥離が開始されたか否かを実生産の開始以前に判定して、生産効率の低下を予防できる。
【0056】
さらに、剥離開始判定部は、実装ヘッド44に設けられて基板Kの位置基準マークを撮像する基板カメラ47と、キャリアテープ8を撮像し、撮像した画像に基づいてカバーテープの剥離が開始されたか否かを判定する画像判定部と、を含んで構成される。
【0057】
これによれば、部品供給位置32で部品89を吸着できるか否かに基づく従来技術で判定できなかったカバーテープ81の全剥離の不具合が判定可能になる。つまり、実施形態によれば、剥離動作の不具合判定精度を従来技術よりも高められる。また、既存の基板カメラ47と制御装置6のソフトウェアとを組み合わせて剥離開始判定部を構成でき、センサなどを追加しなくてよいので、コストの上昇が抑制される。
【0058】
さらに、リカバリ動作部が剥離リカバリ動作を実施するときの変更可能なリカバリ実施条件として、剥離リカバリ動作の実施回数nの上限を定めた指定回数N、キャリアテープ8の先端を戻すときの戻し量L、キャリアテープ8の先端を戻すときの戻し速度Vr、およびキャリアテープ8の先端を再度繰り出すときの繰り出し速度Vf、の少なくとも1つを含む。これによれば、リカバリ実施条件を可変に設定できる。したがって、同じ剥離動作を単純に繰り返す場合と比較して、剥離リカバリ動作の成功率が高められる。
【0059】
さらに、リカバリ実施条件は、剥離リカバリ動作の実施回数nの上限を定めた指定回数Nを含み、リカバリ動作部が指定回数Nの剥離リカバリ動作を実施しても、剥離開始判定部により剥離が開始されなかったと判定された場合、キャリアテープ8をテープ挿入口33まで戻して排出するテープ排出部(第14工程S14)をさらに備える。これによれば、キャリアテープ8を引き出して先端の状態を確認したり、先端の状態を修正したりするオペレータの作業を軽減できる。
【0060】
また、実施形態の部品実装機1は、テープ剥離リカバリ方法として実施することができる。すなわち、実施形態のテープ剥離リカバリ方法は、複数の部品収納部83にそれぞれ部品89を収納したボトムテープ82およびボトムテープ82に接着されて部品収納部83を覆うカバーテープ81を含むキャリアテープ8を繰り出すテープ繰り出し機構、ならびにキャリアテープ8が繰り出されるにつれボトムテープ82とカバーテープ81の剥離を行うテープ剥離刃73を含むテープ剥離機構7を有して、部品供給位置32で部品収納部83から部品89を供給するフィーダ装置3におけるテープ剥離リカバリ方法であって、キャリアテープ8の先端がテープ剥離刃73まで繰り出された後、テープ剥離刃73によってボトムテープ82とカバーテープ81の剥離が開始されたか否かを判定する剥離開始判定工程(第5工程S5)と、剥離開始判定工程で剥離が開始されなかったと判定された場合、キャリアテープ8の先端を一旦戻した後再度繰り出すことによってカバーテープ81の剥離リカバリ動作を実施するリカバリ動作工程(第11、第12、第13、第4工程S11、S12、S13、S4)と、を有する。
【0061】
実施形態の部品実装機のテープ剥離リカバリ方法の効果は、実施形態の部品実装機1の効果と同じである。
【0062】
(7.実施形態の応用および変形)
なお、実施形態において、リカバリ不成功時に第15工程S15から第3工程S3に戻ってフィーダ装置3を交換するが、これに限定されない。例えば、リカバリ不成功時に、オペレータは、挿入口33からキャリアテープ8を引き出して先端の状態を確認し、キャリアテープ8の先端の状態を整えた後に、第4工程S4のキャリアテープ8の装填作業からやり直してもよい。本発明は、その他にも様々な応用や変形が可能である。
【符号の説明】
【0063】
1:部品実装機、2:基板搬送装置、3:フィーダ装置、32:部品供給位置、4:部品移載装置、44:実装ヘッド、46:吸着ノズル、47:基板カメラ、5:部品カメラ、6:制御装置、7:テープ剥離機構、73:テープ剥離刃、8:キャリアテープ、81:カバーテープ、82:ボトムテープ、83:部品収納部、89:部品、9:機台、K:基板

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9