(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】品質信号を診断するための方法、制御装置、制御装置プログラムおよび制御装置プログラム製品
(51)【国際特許分類】
F01N 11/00 20060101AFI20220722BHJP
F01N 3/18 20060101ALI20220722BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20220722BHJP
G01N 29/024 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
F01N11/00
F01N3/18 C
F01N3/08 B
G01N29/024
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2017228876
(22)【出願日】2017-11-29
【審査請求日】2020-11-09
(31)【優先権主張番号】10 2016 225 756.0
(32)【優先日】2016-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【氏名又は名称】高橋 始
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ヤン ミヒル
(72)【発明者】
【氏名】ワインマン,ライノルト
【審査官】菅野 京一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/199777(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/144556(WO,A1)
【文献】特表2015-532387(JP,A)
【文献】特表2009-520155(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102015212622(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応剤調量システム(10)内に組み込まれた品質センサ(24)が提供する品質信号(26)を診断するための方法であって、前記反応剤調量システム(10)が、タンク(12)内に貯蔵された尿素水溶液(14)をSCR触媒(20)の上流で調量し、前記尿素水溶液(14)の品質が前記品質センサ(24)により検査される方法において、
前記品質センサ(24)が、クロック信号(38)を提供するクロック発振器(36)を備えた信号処理装置(34)を有しており、前記品質センサ(24)が前記品質信号(26)を、時間基準の測定に基づいて算出し、前記品質信号(26)を、インターフェース(40,42)を介して前記クロック信号(38)の周期に依存して制御装置(28)に伝送し、前記制御装置(28)で前記クロック信号(38)の周期のための値(52,56,68)を算出し、前記周期のための前記値(52,56,58)を少なくとも1つの周期閾値(46,48)と比較し、前記クロック信号(38)の周期のための前記値(52,56,58)が前記周期閾値(46,48)からずれたときに、誤信号(50)が提供され
、
前記品質センサ(24)が前記尿素水溶液(14)内を通過する超音波信号(30)の到達時間を評価し、この到達時間のための値を、前記インターフェース(40,42)を介して伝送することを特徴とする、品質信号を診断するための方法。
【請求項2】
2つの周期閾値(46,48)を設け、周期のための前記値(52,56,58)が上側の周期閾値(46)を上回るかまたは下側の周期閾値(48)を下回ると、前記誤信号(50)が提供されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記品質信号(26)がSENTインターフェース(40,42)を介して伝送されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
周期のための前記値(52,56,58)を、前記インターフェース(40,42)の同期パルス(54)の時間長さ(52)から算出することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記周期のための前記値(52,56,58)を、前記インターフェース(40,42)の2つの同期パルス(54)間の時間間隔(56,58)から算出することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
反応剤調量システム(10)のタンク(12)内に組み込まれた品質センサ(24)を診断するための装置において、
請求項1から5までのいずれか1項記載の診断方法を実施するために特別に整えられた制御装置(28)が設けられていることを特徴とする、品質センサを診断するための装置。
【請求項7】
品質信号(26)を診断するための、請求項6に記載された制御装置(26)内に記憶された制御装置プログラム。
【請求項8】
プログラムが制御装置(28)において実行されるときに、前記品質信号(26)を診断するための、請求項6に記載した制御装置(26)用の、機械読み取り可能な担体に記憶されたプログラムコードを有している、制御装置プログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応剤調量システム内に組み込まれた品質センサが提供する品質信号を診断するための方法であって、この場合、反応剤調量システムが、内燃機関の排気ガス通路内で尿素水溶液をSCR触媒の上流で調量する方法に関する。
【0002】
また本発明は、本発明による診断方法を実行するための特別に整えられた制御装置に関する。
【0003】
さらに本発明は、プログラムが制御装置で実行されるときに、本発明による診断方法のすべてのステップを実行する制御装置プログラムに関する。
【0004】
最後に本発明は、プログラムが制御装置において実行されるときに、本発明による診断方法を実施するための、機械読み取り可能な担体に記憶されたプログラムコードを有する制御装置プログラム製品に関する。
【背景技術】
【0005】
常により厳しくなる排気ガス規制法を満たすために、内燃機関、特にディーゼルエンジンの排気ガス中の二酸化窒素を低減させる必要がある。このために、内燃機関の排気ガス通路内にSCR触媒(Selective Catalytic Reduction)を配置することが公知であり、このSCR触媒は、内燃機関の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)を還元剤の存在のもとで窒素に還元する。これによって排気ガス中の窒素酸化物の割合が著しく低減される。反応の進行のためにアンモニアが(NH3)が適しており、このアンモニアは排気ガスに添加混合される。従って、還元剤としてNH3若しくはNH3を分離する反応剤が使用される。通常は、このために、SCR触媒の上流で排気ガス通路内に噴射される水性の尿素水溶液が還元剤の前駆物質として使用される。この溶液から、還元剤として作用するアンモニアが形成される。32.5%の水性の尿素溶液は、AdBlue(R)の販売名で商業的に得ることができる。
【0006】
尿素水溶液は、内燃機関の操作員によって補給されてよい。補給された物質が実際に正しい尿素水溶液であるかどうか、若しくは尿素水溶液内の尿素濃度が適切な規格ISO22241若しくはDIN70070に相当しているかどうかの検査によって、必要なNOx還元率が維持されることが保証される。当局は、尿素水溶液の補給時に可能なごまかしの試みを検知し、かつ相応の手段、例えば可能な内燃機関始動回数の制限または内燃機関トルクの低下を開始させることができるようにするために、検査を要求する。
【0007】
尿素水溶液を診断するために、品質センサが設けられており、この品質センサは、尿素水溶液の品質を検出する。このような品質センサを備えた還元剤調量システムは、例えば特許文献1により公知である。
【0008】
特許文献2(事前公開されていない)には、反応剤調量システム内に組み込まれた超音波品質センサが提供する品質信号を修正するための方法および装置について記載されている。超音波品質センサは、反応剤アンモニアの前駆物質としてタンク内に貯蔵された尿素水溶液内の音響到達時間を算出する。品質センサにより提供された品質信号は、時間基準の測定に基づいている。
【0009】
特に自動車への適用において、センサデータを専用に伝送するために、いわゆるSENTプロトコルが開発されており、このSENTプロトコルは、非特許文献1によって、J2716の名称で個別に詳述されていて、WWW.SAE.orgで閲覧することができる。例えばhttp://www.elektronikpraxis.vogel.de/messen-und-testen/articles/405111にも開示されている非特許文献2には、オシロスコープによる分析に基づくSENTプロトコルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】独国特許出願公開第10139142号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015212622号明細書
【非特許文献】
【0011】
【文献】“Society of Automotive Engineers (SAE)「自動車技術会」、J2716、WWW.SAE.org
【文献】専門雑誌“Elektronik Praxis”,Vogel-Verlag, 16.05.2013「電子工学の実際、フォーゲル出版社、2013年5月16日発行」、http://www.elektronikpraxis.vogel.de/messen-und-testen/articles/405111
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の課題は、時間基準の測定に基づいて得られた品質信号を診断するための方法および装置を提供することであって、この装置には、品質センサの正常な機能が保証されなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0013】
反応剤調量システム内に組み込まれた品質センサが提供する品質信号を診断するための方法で、反応剤調量システムが、タンク内に貯蔵された尿素水溶液をSCR触媒の上流で調量し、尿素水溶液の品質が品質センサにより検査される、本発明による方法は、品質センサが、クロック信号を提供するクロック発振器を備えた信号処理装置を有しており、品質センサが品質信号を、時間基準の測定によりクロック信号に基づいて算出し、品質信号を、インターフェースを介してクロック信号の周期に依存して制御装置に伝送し、制御装置の信号評価でクロック信号の周期のための値を算出し、周期のための前記値を少なくとも1つの周期閾値と比較し、クロック信号の周期のための値が周期閾値からずれたときに誤信号が提供されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
本発明による方法は、オンボード診断を実現するために、品質センサの診断を可能にする。この場合、前提条件は、品質センサが時間基準の測定により品質信号を算出する、ということである。時間測定は、クロック発振器のクロック信号に基づいている。品質信号の伝送は、クロック信号の周期に依存してインターフェースを介して行われる。クロック信号若しくはクロック信号の周期は、例えば、パルスの時間長さを決定し、この時間長さは、インターフェース、例えば直列インターフェース、例えば直列SENTインターフェースを介して伝送され、この場合、クロックに依存するパルス継続時間は、コード化された品質信号の情報を含む。
【0015】
従って、クロック信号の周期のための値を評価することによって、品質信号の診断が可能である、何故ならば、時間基準の測定の際に誤ったクロック信号は、相応に誤った品質信号を生ぜしめるからである。
【0016】
本発明による方法の好適な変化実施例および態様は、それぞれ従属する方法請求項の対象である。
【0017】
本発明による装置は、本発明による診断方法を実施するための制御装置の特別な構成に関する。
【0018】
本発明による制御装置プログラムは、品質信号を診断するための制御装置に記憶されている。
【0019】
機械読み取り可能な担体に記憶されたプログラムコードを有する、本発明による制御装置プログラム製品は、プログラムが制御装置において実行されるときに、本発明による診断方法を実行する。
【0020】
本発明による診断方法および本発明による装置のその他の好適な変化実施例および態様は明細書に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】反応剤調量システム内に取り付けられた品質センサを診断するための本発明による方法を実施する反応剤調量システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施例が
図1に示されていて、以下に詳しく説明されている。
【0023】
図1は、タンク12内に貯蔵された尿素水溶液14を、SCR触媒20の上流で内燃機関18の排気ガス通路16内に調量する反応剤調量システム10を示す。内燃機関18は、例えば原動機として自動車に設けられている。尿素水溶液14から排気ガス通路16内において高温でアンモニア(NH3)が発生し、アンモニアは、内燃機関18の排気ガスのNOx成分を還元させるための、SCR触媒20内の還元剤として用いられる。
【0024】
尿素水溶液14の必要な調量率は、好適な形式で調量弁22によって決定される。
【0025】
尿素成分の精確な濃度に関して尿素水溶液14を診断するために品質センサ24が設けられており、この品質センサ24は、品質信号26を測定して制御装置28に提供する。
【0026】
尿素水溶液14は、劣化プロセスに晒され、この劣化プロセスにおいて尿素水溶液14は分解し、この際にアンモニアが発生するので、尿素濃度が低下する。さらに、尿素水溶液14の補給時に、例えば水の割合が増加されることによって細工されることを排除することができない。この場合も、尿素濃度が低下する。しかしながら、尿素水溶液14の尿素濃度が低下すると、所定の調量率において、調量弁22によって低すぎる実際の調量率が得られるので、SCR触媒20内のNOx還元はもはや最大可能な値を得ることはなく、これによって、場合によっては予め設定されたNOx濃度がSCR触媒20の下流でもはや維持されなくなる。尿素水溶液14の尿素濃度は、規格ISO22241若しくはDIN70070に従って概ね32.5質量%に維持されるべきである。
【0027】
品質センサ24は、時間基準の測定を実施する。適切な方法は、超音波信号30の信号到達時間を検出する例えば超音波測定である。このために、品質センサ24は超音波センサ32と信号処理装置34とを有しており、信号処理装置34は、クロック信号38を提供するクロック発振器36を有している。超音波センサは、冒頭に述べた特許文献2に詳しく記載されており、この特許文献2が参照される。
【0028】
クロック信号38は、超音波センサ32にも、また第1のインターフェース40にも使用される。
【0029】
第1のインターフェース40は品質信号26を提供し、この品質信号26は制御装置28に伝送され、ここで第2のインターフェース42によって受信される。品質信号26の伝送は、クロック発振器36によって提供されたクロック信号38の時間に関連付けられるべきである。このような形式の伝送は、例えば直列インターフェースを介して例えば冒頭に述べたSENTプロトコルによって可能である。
【0030】
インターフェース40,42を介して伝送された品質信号26のクロック信号38への依存性に基づいて、制御装置28は、クロック信号38の評価若しくはクロック信号38の周期の評価を可能にする。
【0031】
図1には、例えばSENTプロトコルによる直列のデータ伝送の枠内における品質信号26の経時変化が示されている。
【0032】
本発明による診断は、クロック信号38の周期若しくは周波数のための値を制御装置28で算出し、評価することに基づいている。何故ならば、周期が目標値からずれている場合、誤ったクロック信号38だけではなく、明らかに誤った時間基準の測定も品質センサ24により推論され得るからである。
【0033】
制御装置28は信号評価器44を有しており、この信号評価器44に第1および第2の周期閾値46,48が提供され、この信号評価器44は誤りがあった場合に誤信号50を提供する。
【0034】
クロック信号38の周期のための値52,56,58として、例えば同期パルス54、例えばSENTプロトコルの時間長さ52が考慮され得る。選択的にまたは追加的に、例えばSENTプロトコルの互いに直接連続する2つの同期パルス54間の時間間隔56に基づいて評価が行われてよい。選択的にまたは追加的に、例えばSENTプロトコルの2つの同期パルス54間の別の時間間隔58に基づいて、クロック信号38の周期のための値の評価が行われてよいが、この場合、別の時間間隔58内に所定数の同期パルス54が存在している。
【0035】
クロック信号38の周期のための前記値52,56,58は、信号評価器44において1つまたは2つの周期閾値46,48と比較される。誤信号50は、クロック信号38の周期のための値52,56,58が第1の周期閾値46を上回っているか、またはクロック信号38の周期のための値52,56,58が第2の周期閾値48を下回っているときに、提供される。
【0036】
誤信号50は、別の信号処理装置で処理され、かつ/または例えば表示されてよい。発生した誤信号50は、クロック信号38の周期にずれが生じていて、その結果、誤った品質信号26が品質センサ24から制御装置28へ伝送されたことを意味する。誤信号50が発生すると、品質センサ24の点検が必要となり、品質センサ24は修理されるかまたは交換される。誤信号50によって、場合によっては前記オンボード診断が実施されてよい。
【符号の説明】
【0037】
10 反応剤調量システム
12 タンク
14 尿素水溶液
16 排気ガス通路
18 内燃機関
20 SCR触媒
22 調量弁
24 品質センサ
26 品質信号
28 制御装置
30 超音波信号
32 超音波センサ
34 信号処理装置
36 クロック発振器
38 クロック信号
40 第1のインターフェース
42 第2のインターフェース
44 信号評価器
46,48 周期閾値
50 誤信号
52 値、時間長さ
54 同期パルス
56 値、時間間隔
58 値、時間間隔