(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】電気自動車充電システム、電気自動車充電装置および電気自動車充電方法
(51)【国際特許分類】
H02J 7/00 20060101AFI20220722BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20220722BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20220722BHJP
B60L 53/30 20190101ALI20220722BHJP
B60L 53/63 20190101ALI20220722BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20220722BHJP
G16Y 10/40 20200101ALI20220722BHJP
G16Y 40/10 20200101ALI20220722BHJP
【FI】
H02J7/00 P
H02J7/02 A
H02J7/02 U
H02J13/00 311R
B60L53/30
B60L53/63
G06Q50/06
G16Y10/40
G16Y40/10
(21)【出願番号】P 2021046514
(22)【出願日】2021-03-19
(62)【分割の表示】P 2017023402の分割
【原出願日】2017-02-10
【審査請求日】2021-04-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニックホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003687
【氏名又は名称】東京電力ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】特許業務法人 大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上杉 充
(72)【発明者】
【氏名】澁谷 哲
(72)【発明者】
【氏名】飯田 倫子
(72)【発明者】
【氏名】田中 正博
(72)【発明者】
【氏名】仲辻 圭吾
(72)【発明者】
【氏名】柳 達也
【審査官】大手 昌也
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-065785(JP,A)
【文献】特開2008-199752(JP,A)
【文献】韓国公開実用新案第20-2011-0007572(KR,U)
【文献】特開2013-247757(JP,A)
【文献】特開2014-090529(JP,A)
【文献】特開2012-200084(JP,A)
【文献】特開2014-007932(JP,A)
【文献】特開昭61-288743(JP,A)
【文献】特開平06-284512(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0037429(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02J 7/02
H02J 13/00
B60L 53/30
B60L 53/63
G06Q 50/06
G16Y 10/40
G16Y 40/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高圧の配電線および道路に沿って、
所定の間隔をおいて配置される複数の電気自動車充電装置と、
複数の前記電気自動車充電装置との間で充電に関する各種情報の送受信を行うサーバ装置と、
を備える電気自動車充電システムであって、
それぞれの前記電気自動車充電装置は
、
多回路開閉器、地上用変圧器、及び低圧分岐装置のうち少なくとも1つを含み、無電柱化にともない地上に設置される地上配電機器と、
前記高圧の配電線により供給される高圧の電力を、電気自動車に搭載されたバッテリを充電可能な低圧の電力に変換する変圧器を含み、前記低圧の電力を用いて前記バッテリを充電する充電器と、
前記充電器及び前記地上配電機器を収容する筐体と、
を備え
ることを特徴とする電気自動車充電システム。
【請求項2】
前記充電器は、通信ネットワークを介して前記サーバ装置と通信可能な通信部と、前記バッテリへの充電を制御する制御部とを有し、
前記制御部は、前記サーバ装置との通信により取得した所定区域における電力需給バランス情報に基づき、前記電気自動車に対する電力の供給の適否を判定することを特徴とする請求項1に記載の電気自動車充電システム。
【請求項3】
それぞれの前記電気自動車充電装置は、前記筐体に取り付けられ、前記充電器または前記地上配電機器から電力を供給されるサイネージ装置を更に備え、
前記サイネージ装置は、前記充電器によって実行される充電に関する情報を表示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電気自動車充電システム。
【請求項4】
前記サイネージ装置は、前記充電器による充電が実行されていない場合には、前記サーバ装置から取得したコンテンツを表示し、前記充電器による充電が実行されている場合に、充電に関する情報を表示することを特徴とする請求項3に記載の電気自動車充電システム。
【請求項5】
電気自動車に搭載されたバッテリを充電する充電器と、
地中の低圧の配電線から地上の前記電気自動車に供給される電力を中継する地上配電機器と、
車道周辺に設置され、前記充電器及び前記地上配電機器を収容する筐体と、
を備え、
前記地上配電機器は、低圧分岐装置を含み、
前記充電器は、前記バッテリへの充電を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記低圧分岐装置から取得した配電状況に関する情報に基づき、前記電気自動車に対する電力の供給の適否を判定することを特徴とする電気自動車充電装置。
【請求項6】
前記筐体に取り付けられ、前記充電器または前記地上配電機器から電力を供給されるサイネージ装置を更に備え、
前記サイネージ装置は、前記充電器によって実行される充電に関する情報を表示することを特徴とする請求項5に記載の電気自動車充電装置。
【請求項7】
前記充電に関する情報には、充電時間、充電量、充電料金、及び充電料金の割引に関する情報のうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする請求項6に記載の電気自動車充電装置。
【請求項8】
前記筐体は、前記電気自動車が停車可能な路上パーキングスペースに隣接して配置されることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれかに記載の電気自動車充電装置。
【請求項9】
請求項5に記載の電気自動車充電装置による充電方法であって、
前記充電器は、前記低圧分岐装置から取得した配電状況に関する情報に基づき、前記電気自動車に対する電力の供給の適否を判定することを特徴とする電気自動車充電方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電気自動車充電システム、電気自動車充電装置および電気自動車充電方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電動機を動力源とする電気自動車の普及にともない、住宅や店舗の駐車場等において電気自動車に搭載された駆動用バッテリを充電するための電気自動車充電装置が普及している(例えば、特許文献1参照)。この種の充電装置によれば、利用者(運転者等)は、例えば、住宅の充電用コンセントに接続された充電用ケーブルや、店舗に配置された充電スタンドが備える充電用ケーブルのコネクタを電気自動車の充電口に接続することにより、バッテリの充電を容易に行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電気自動車の利用者の利便性を向上させるためには、より多くの場所で充電を可能にする必要があるため、近年、充電装置の設置に関する電気自動車のインフラ整備が急速に進められている。
【0005】
一方、充電装置の設置場所の候補の1つとして、自動車が走行する車道周辺(例えば、路肩、植栽帯、自転車道、歩道など)が考えられるが、車道周辺のスペースには限りがあるため、充電装置のための設置スペースを数多く確保することは容易ではない。さらに、充電装置を設置する場合には、充電に必要な電力を確保する必要があるため、その設置場所では電力を容易に確保できることが望ましい。
【0006】
本開示は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、車道周辺において、設置スペースおよび充電に必要な電力を容易に確保可能とする電気自動車充電装置および電気自動車充電方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の電気自動車充電システムは、高圧の配電線および道路に沿って、所定の間隔をおいて配置される複数の電気自動車充電装置と、複数の前記電気自動車充電装置との間で充電に関する各種情報の送受信を行うサーバ装置と、を備え、それぞれの前記電気自動車充電装置は、多回路開閉器、地上用変圧器、及び低圧分岐装置のうち少なくとも1つを含み、無電柱化にともない地上に設置される地上配電機器と、前記高圧の配電線により供給される高圧の電力を、電気自動車に搭載されたバッテリを充電可能な低圧の電力に変換する変圧器を含み、前記低圧の電力を用いて前記バッテリを充電する充電器と、前記充電器及び前記地上配電機器を収容する筐体と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、車道周辺において、設置スペースおよび充電に必要な電力を容易に確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2A】
図1に示したEV充電装置(新設)およびその周辺を示す斜視図
【
図2B】
図1に示したEV充電装置(増設)およびその周辺を示す斜視図
【
図5】
図1に示したサーバ装置の概略構成を示すブロック図
【
図6】
図3に示したEV充電装置の動作例を示すフロー図
【
図7】
図3に示したEV充電装置の第1変形例を示すブロック図
【
図8】
図7に示したEV充電装置の動作例を示すフロー図
【
図9】
図3に示したEV充電装置の第2変形例を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、電気自動車に搭載されたバッテリを充電する充電器と、地中の配電線から地上に供給される電力を中継する地上配電機器と、車道周辺に設置され、前記充電器及び前記地上配電機器を収容する筐体と、を備え、前記充電器は、前記配電線から供給された電力を用いて前記バッテリを充電することを特徴とする。
【0011】
これによれば、充電器および地上配電機器を共用の筐体に収容することにより、車道周辺において、設置スペースおよび充電に必要な電力を容易に確保することが可能となる。
【0012】
また、第2の発明では、前記地上配電機器は、多回路開閉器、地上用変圧器、及び低圧分岐装置のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする。
【0013】
これによれば、無電柱化(電線地中化)にともない地上に設置される多回路開閉器、地上用変圧器、及び低圧分岐装置のうちの少なくとも1つと充電器の筐体を共用することにより、車道周辺において、設置スペースおよび充電に必要な電力を容易に確保することが可能となる。
【0014】
また、第3の発明では、前記充電器は、前記配電線から供給される電力の電圧を前記バッテリの充電用に変換する変圧器を有することを特徴とする。
【0015】
これによれば、地中の高圧の配電線から地上に供給される電力(例えば、6600V)を利用して充電に必要な電力(例えば、200V)を容易に確保することが可能となる。
【0016】
また、第4の発明では、前記充電器は、前記配電線から前記地上配電機器に対して供給された電力を用いて前記バッテリを充電することを特徴とする。
【0017】
これによれば、簡易な構成により、地中の配電線から地上に供給される電力を利用して充電に必要な電力を容易に確保することが可能となる。
【0018】
また、第5の発明では、前記充電器は、通信ネットワークを介して外部装置と通信可能な通信部と、前記バッテリへの充電を制御する制御部とを有し、前記制御部は、前記外部装置との通信により取得した所定区域における電力需給バランス情報に基づき、前記電気自動車に対する電力の供給の適否を判定することを特徴とする。
【0019】
これによれば、所定区域における電力需給バランス(例えば、余剰電力の有無等)の状況に応じて、電気自動車への充電を適切に行うことが可能となる。例えば、充電器では、充電器が設置された所定区域の電力需給が逼迫した(電力供給に適さない)場合には、充電の停止や充電料金の値上げ等を実行することができ、一方、電力需給が逼迫していない(電力供給に適する)場合には、充電の開始(または促進)や充電料金の値下げ等を実行することができる。
【0020】
また、第6の発明は、前記地上配電機器は、低圧分岐装置であり、前記充電器は、前記バッテリへの充電を制御する制御部を有し、前記制御部は、前記低圧分岐装置から取得した配電状況に関する情報に基づき、前記電気自動車に対する電力の供給の適否を判定することを特徴とする。
【0021】
これによれば、低圧分岐装置による配電状況(すなわち、低圧分岐装置から各配電対象(住宅等)に配電される電力の状況)に応じて、電気自動車への充電を適切に行うことが可能となる。例えば、充電器では、低圧分岐装置の配電対象の電力需要が比較的高い(電力供給に適さない)場合には、充電の停止や充電料金の値上げ等を実行することができ、一方、電力需要が比較的低い(電力供給に適する)場合には、充電の開始(または促進)や充電料金の値下げ等を実行することができる。
【0022】
また、第7の発明は、前記筐体に取り付けられ、前記充電器または前記地上配電機器から電力を供給されるサイネージ装置を更に備え、前記サイネージ装置は、前記充電器によって実行される充電に関する情報を表示することを特徴とする。
【0023】
これによれば、車道周辺において、充電に関する情報を表示するためのサイネージの設置スペースおよびその駆動に必要な電力を容易に確保することが可能となる。
【0024】
また、第8の発明は、前記充電に関する情報には、充電時間、充電量、充電料金、及び充電料金の割引に関する情報のうちの少なくとも1つが含まれることを特徴とする。
【0025】
これによれば、充電器を利用するユーザ(例えば、電気自動車の運転者)は充電の状況を容易に把握することが可能となる。
【0026】
また、第9の発明は、前記筐体は、前記電気自動車が停車可能な路上パーキングスペースに隣接して配置されることを特徴とする。
【0027】
これによれば、車道周辺において、路上パーキングスペースにおける電気自動車の駐車中に充電を行うことが可能となる。
【0028】
また、第10の発明は、上記第1の発明に係る電気自動車充電装置による充電方法であって、前記充電器は、外部装置との通信により取得した所定区域における電力需給バランス情報に基づき、前記電気自動車に対する電力の供給の適否を判定することを特徴とする。
【0029】
これによれば、所定区域における電力需給バランス(例えば、余剰電力の有無等)の状況に応じて、電気自動車への充電を適切に行うことが可能となる。
【0030】
また、第11の発明は、上記第1の発明に係る電気自動車充電装置による充電方法であって、前記地上配電機器は、低圧分岐装置であり、前記充電器は、前記低圧分岐装置から取得した配電状況に関する情報に基づき、前記電気自動車に対する電力の供給の適否を判定することを特徴とする。
【0031】
これによれば、低圧分岐装置による配電状況(すなわち、低圧分岐装置から各配電対象(住宅等)に配電される電力の状況)に応じて、電気自動車への充電を適切に行うことが可能となる。
【0032】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0033】
図1は、本実施の形態に係る充電システム1の全体構成図であり、
図2Aおよび
図2Bは、
図1に示したEV充電装置2およびその周辺を示す斜視図である。ここで、
図2Aは、EV充電装置2を新設した場合の例であり、また、
図2Bは、既設の地上配電機器24に充電器22を追加すること(増設)により、EV充電装置2を設けた場合の例である。
【0034】
この充電システム1は、電気自動車(図示せず)に搭載されたバッテリの充電を行うためのシステムであり、
図1に示すように、複数の電気自動車充電装置(以下、「EV充電装置」)2と、ネットワーク3を介してEV充電装置2と通信可能な外部装置としてのサーバ装置4とを備えている。
【0035】
ネットワーク3は、インターネット等から構成されるが、これに限らず、公知の通信ネットワークを適宜用いることができる。サーバ装置4は、各EV充電装置2との通信により、電気自動車の充電に関する各種情報の送受信を行うことができる。なお、本開示における「電気自動車」の用語は、少なくとも電動モーターを駆動源として道路を走行可能な車両を意味し、そのような電気自動車には、内燃機関を備えるプラグインハイブリッドカー等も含まれ得る。
【0036】
図2Aおよび
図2Bに示すように、EV充電装置2は、車道11の周辺(ここでは、車道11に隣接する歩道12)に路上設置物として設置可能である。EV充電装置2の外殻をなす箱形の筐体21には、電気自動車に搭載されたバッテリを充電する充電器22と、地中の電力線(配電線)23から地上に供給される電力を中継する地上配電機器24とが収容されている。また、筐体21には、各種情報を表示するサイネージ装置25が取り付けられている。ただし、EV充電装置2は、サイネージ装置25を備えていない構成も可能である。その場合、
図2Bの例では、既設の地上配電機器24に充電器22のみが追加されることになる。歩道12の地中に設けられた共同溝26には、複数の電力線23と共に、それらに併走するように複数の通信線27が配設されている。これらの通信線27は、ネットワーク3(
図1参照)の一部を構成する。また、ネットワーク構築の際には、地中の通信線を使用せず、無線等の手段を用いてもよい。
【0037】
このようなEV充電装置2は、電気自動車が走行可能な車道11の周辺(少なくとも駐停車した電気自動車に対して電力を供給可能なエリア)であれば、歩道に限らず車道11に隣接する他の任意のエリア(例えば、路肩、植栽帯、自転車道など)に設置することもできる。
【0038】
電力線23は、比較的高圧(ここでは、6600V)の電力を供給する高圧電力線23Aと、比較的低圧(ここでは、100V、200V)の電力を供給する低圧電力線23Bとを含む。
【0039】
筐体21は、少なくとも地上(ここでは、歩道12)に設置可能であり、かつ充電器22および地上配電機器24を収容可能なものであれば、その材質、形状、及びサイズについて適宜変更可能である。このように、充電器22および地上配電機器24を共用の筐体21に収容することにより、車道11の周辺において、EV充電装置2の設置スペースおよび充電に必要な電力を容易に確保することができるという利点がある。
【0040】
なお、既設の地上配電機器の筐体が存在する場合には、その少なくとも一部を筐体21の構成要素として流用してもよい(例えば、
図2B参照)。また、筐体21は、少なくとも全体として実質的に一体をなす構成であれば、必ずしも充電器22および地上配電機器24を単一の収容スペースに収容する必要はない。例えば、筐体21が、充電器22用の第1の収容スペースと、この第1の収容スペースとは壁によって仕切られた地上配電機器24用の第2の収容スペースとを有する構成であってもよい。
【0041】
充電器22は、いわゆる充電スポットに設置される公知の充電スタンドと同様の機能を有しており、後述する電力メータ等の他、筐体21の外部に配置された充電ケーブル31およびその先端に設けられた充電コネクタ32等を備える。図示は省略するが、充電ケーブル31のシース内には、電力供給に用いられる電力供給用ラインおよび通信に用いられる通信用ラインが配設されている。充電システム1の利用者(運転者等)は、EV充電装置2の側壁に設けられたコネクタ保持部から充電コネクタ32を取り外して電気自動車の充電口に接続することにより、充電ケーブル31を介して所定の電力(例えば、AC200V)にて充電を行うことができる。ここでは、充電ケーブル31は、白線枠で画定された路上パーキングスペース34に駐車した電気自動車の充電口に充電コネクタ32を接続可能な長さに設定される。これにより、車道周辺において、電気自動車の駐車中に充電を行うことが容易となる。
【0042】
また、充電器22は、直接または地上配電機器24を介して間接的に地中の電力線23に電気的に接続されることにより、電力線23から供給された電力を電気自動車のバッテリの充電に利用可能である。さらに、充電器22は、通信線27に接続されることにより、ネットワーク3(
図1参照)を介してサーバ装置4と通信可能である。
【0043】
地上配電機器24は、地中の電力線23から地上に供給される電力を中継可能な機器であれば足りるが、特に、多回路開閉器、地上用変圧器、及び低圧分岐装置のうちの少なくとも1つを含むことが好ましい。それらは、従来、電柱に取り付けられていたが、無電柱化(電線地中化)にともない地上に設置されることとなった機器である。その場合、EV充電装置2は、電力線23が地中に配設された歩道12に沿って、例えば20m~50mの間隔をおいて地上に点在するように設置可能である。
【0044】
このように、EV充電装置2では、無電柱化(電線地中化)にともない地上に設置される多回路開閉器、地上用変圧器、及び低圧分岐装置のうちの少なくとも1つと充電器22の筐体を共用することにより、車道11の周辺において、EV充電装置2の設置スペースおよび充電に必要な電力を容易に確保することができる。
【0045】
サイネージ装置25は、EV充電装置2において、充電器22および地上配電機器24の上方に配置され、筐体21の側壁の開口から露出するディスプレイ35を備える。ディスプレイ35は、公知の液晶ディスプレイからなり、充電器22によって実行される充電に関する情報を表示することができる。また、ディスプレイ35は歩道側に設けられており、歩行者や、充電中の電気自動車から降車した人物(運転者等)は、ディスプレイ35に表示される映像や画像を閲覧することができる。このような構成により、車道周辺において、充電に関する情報を表示するためのサイネージ装置25の設置スペースおよびその駆動に必要な電力を容易に確保することができる。
【0046】
なお、ディスプレイ35は、液晶ディスプレイに限らず、他の公知の表示装置(例えば、路上等に映像を表示するプロジェクタ)であってもよい。また、サイネージ装置25が筐体21の外側(例えば、上壁面)に取り付けられた構成も可能である。さらに、EV充電装置2では、サイネージ装置25を省略することも可能である。
【0047】
図3は、
図2Aおよび
図2Bに示したEV充電装置2のより詳細な構成を示す図であり、
図4は、
図2Aおよび
図2Bに示したサイネージ装置25の概略構成を示すブロック図である。ここでは、地上配電機器24として地上用変圧器を用いた例を示している。
【0048】
充電器22は、地中の高圧電力線23Aに接続された変圧器41と、変圧器41によって変圧された電力に関し、充電コネクタ32側への供給量(すなわち、EV充電装置2を利用する電気自動車の電力使用量)を計測する電力メータ42と、充電器22の動作を制御する充電制御器43とを備える。
【0049】
変圧器41は、高圧電力線23Aから供給された電力の電圧(ここでは、6600V)を電気自動車のバッテリの充電用の電圧(ここでは、200V)に変換する。変圧器41によって変換された電力は、電力メータ42および充電ケーブル31(電力供給用ライン)を介して電気自動車に供給される。これにより、充電器22では、地中の高圧電力線23Aから地上に供給される電力を利用して充電に必要な電力を容易に確保することができる。同様に、変圧器41は、高圧電力線23Aからの電力の電圧をサイネージ装置25の駆動用の電圧(ここでは、100V)に変換し、この変換した電力を、電力メータ44を介してサイネージ装置25に供給可能である。
【0050】
充電制御器43は、メモリ(図示せず)に記憶された所定のプログラムを実行することで、充電制御に関する各種処理を実行する制御部としてのプロセッサ51と、通信線27を介してネットワーク3(
図1参照)に接続される通信部としての通信インタフェース(I/F)52とを備えている。後に詳述するように、充電制御器43は、EV充電装置2が位置する所定区域における電力需給バランス情報をサーバ装置4から定期的に取得することにより、電気自動車に対する電力の供給の適否を判定することができる。
【0051】
また、充電制御器43は、充電ケーブル31(通信用ライン)を介して、充電対象の電気自動車に関する各種情報(例えば、車両の識別情報、走行履歴、車両における各種センサの検出情報、電子支払い決済情報、会員番号、ポイントカード番号等)を取得することが可能であり、それらの情報をEV充電装置2による充電サービス(例えば、充電料金の割引や、各種クーポンの発行等)に利用する。
【0052】
地上配電機器24は、変圧器61を備えた地上用変圧器(いわゆるパットマウント変圧器)である。変圧器61は、高圧電力線23Aから供給された高圧の電力を、地上の需要側で必要とされる低圧(ここでは、100V、200V)の電力に変換する。また、変圧器61は、低圧電力線23Bにも接続される。
【0053】
サイネージ装置25は、充電制御器43(プロセッサ51)からの信号に基づき、充電器22によって実行される充電に関する情報を取得し、この情報をディスプレイ35に表示することができる。
【0054】
また、サイネージ装置25は、
図4に示すように、ディスプレイ35の他に、EV充電装置2やネットワーク3(
図1参照)に接続される通信I/F71と、ディスプレイ35での表示に用いられる各種情報を格納する補助記憶装置等を含む記憶部72と、サイネージ装置25の各種動作を制御するプロセッサ73とを備える。
【0055】
通信I/F71は、EV充電装置2から送信される充電に関する情報や、サーバ装置4から配信されるコンテンツを受信する。また、通信I/F71は、それら充電に関する情報およびコンテンツの表示方法に関する命令(表示開始指示や表示終了指示など)をEV充電装置2およびサーバ装置4からそれぞれ受信する。
【0056】
通信I/F71は、通信線27を介してネットワーク3に接続されており、サイネージ装置25は、サーバ装置4からユーザに有用なコンテンツ(例えば、渋滞情報、気象情報、周辺地域のイベント情報、防犯に関する情報、周辺店舗のクーポン情報などを含む)を通信I/F71を介して適宜取得することにより、その取得したコンテンツを充電に関する情報と共に(或いは充電に関する情報の代わりに)ディスプレイ35に表示することが可能である。なお、サイネージ装置25が、公知の無線機を備えることにより、通信線27を介することなくネットワーク3を介したサーバ装置4との無線通信を行う構成も可能である。
【0057】
また、EV充電装置2から送信される充電に関する情報には、充電時間、充電量、充電料金、及び充電料金の割引に関する情報のうちの少なくとも1つが含まれる。これにより、充電器22を利用するユーザ(例えば、電気自動車の運転者)は充電の状況を容易に把握することが可能となる。
【0058】
再び
図3を参照して、プロセッサ51は、サイネージ装置25のディスプレイ35の表示や外部装置との通信を制御する。例えば、プロセッサ51は、充電器22による充電が行われていない場合には、サーバ装置4からのコンテンツをディスプレイ35に表示する一方、充電が行われている場合には、コンテンツの表示を中断して(或いは、コンテンツが表示される画面の一部の領域に)充電に関する情報を表示することができる。
【0059】
また、プロセッサ51は、充電時間の計測ならびに充電量、充電料金及び充電料金の割引率の算出等を実行するともに、充電器22の利用者に提供される各種サービスに関する処理を実行することができる。例えば、プロセッサ51は、充電ケーブル31(通信用ライン)を介して取得した電気自動車からの情報に基づき、充電対象の電気自動車が充電料金の割引を適用すべき対象であるか否かを判定することができる。
【0060】
なお、電力線23から電力をEV充電装置2または地上配電機器24に供給するための各配線や、通信線27からの信号(通信データ)を伝送する各配線は、地下から筐体21の下壁を貫通して筐体21内に導入される。
【0061】
図5は、
図1に示したサーバ装置4の概略構成を示すブロック図である。
【0062】
サーバ装置4は、ディスプレイ35に表示するためのコンテンツや、所定区域における電力需給バランス情報を適宜格納する補助記憶装置等を含む記憶部81と、ネットワーク3に接続される通信I/F82と、サーバ装置4の各種動作や充電システム1における各部の動作を制御するプロセッサ83とを備える。
【0063】
プロセッサ83は、通信I/F82を介して、予め設定されたタイミングで所定のコンテンツをサイネージ装置25に対して配信する一方、EV充電装置2に対して所定区域における電力需給バランス情報を送信する。また、プロセッサ83は、通信I/F82を介して、それらコンテンツの表示方法に関する命令(表示開始指示や表示終了指示など)をサイネージ装置25に送信する。
【0064】
なお、充電システム1では、上述の充電制御器43による処理の一部をサーバ装置4が実行する構成も可能である。また、充電システム1では、サイネージ装置25に対してコンテンツを配信するサーバと、EV充電装置2に対して所定区域における電力需給バランス情報を送信するサーバとを個別に設けてもよい。
【0065】
図6は、
図3に示したEV充電装置2の動作例を示すフロー図である。
【0066】
EV充電装置2では、まず、サーバ装置4から対象区域(EV充電装置2の設置場所を含む所定の区域)における電力需給バランス情報を取得し(ST101)、この電力需給バランス情報に基づき、当該対象区域の電力需給が逼迫しているか否かを判定する(ST102)。この電力需要の判定は、予め設定された電力使用量の閾値との比較に基づき行うことができる。
【0067】
そこで、電力需給が逼迫していない(すなわち、電気自動車への電力の供給に適する)と判定した場合(ST102:Yes)には、EV充電装置2は、充電を実施(すなわち、電気自動車への充電を許容)する(ST103)。この場合、EV充電装置2は、充電を許容するだけでなく、充電を促進するための処理(例えば、割引率の向上等)を適宜実行することが可能である。
【0068】
一方、電力需給が逼迫している(すなわち、電気自動車への電力の供給に適さない)と判定した場合(ST102:No)には、EV充電装置2は、充電を停止(すなわち、電気自動車への充電を禁止)する(ST104)。この場合、EV充電装置2は、充電を停止する代わりに、充電を抑制するための処理(例えば、充電料金の値上げ、充電時間の制限、充電可能な属性(会員登録しているかどうかなど)の限定等)を適宜実行することが可能である。
【0069】
このように、EV充電装置2では、所定区域における電力需給バランス(例えば、余剰電力の有無等)の状況に応じて、電気自動車への充電を適切に行うことができる。
【0070】
図7は、
図3に示したEV充電装置の第1変形例を示すブロック図であり、
図8は、
図7に示したEV充電装置2の動作例を示すフロー図である。ここでは、地上配電機器24として低圧分岐装置を用いた例を示している。なお、以下で特に言及しない事項については、上述のEV充電装置2の場合と同様とする。
【0071】
図7に示すように、地上配電機器24は、分岐スイッチ91を備えた低圧分岐装置である。分岐スイッチ91は、低圧電力線23Bから供給された低圧(ここでは、100V、200V)の電力を、配電ライン92を介して図示しない各配電対象(住宅等)に配電する。
【0072】
また、次に説明するように、充電制御器43(プロセッサ51)は、地上配電機器24(分岐スイッチ91における配電状況のモニタリング部)から配電状況に関する情報を取得することにより、電気自動車に対する電力の供給の適否を判定することができる。
【0073】
図8に示すように、EV充電装置2では、まず、地上配電機器24から各配電対象(住宅等)に配電される電力の配電状況に関する情報を取得し(ST201)、この配電状況に関する情報に基づき、当該配電対象の電力需要が比較的高いか否かを判定する(ST202)。この電力需要の判定は、予め設定された各配電対象への電力供給量の閾値との比較に基づき行うことができる。
【0074】
そこで、電力需要が高くない(すなわち、電気自動車への電力の供給に適する)と判定した場合(ST202:Yes)には、EV充電装置2は、通常の充電を実施(すなわち、電気自動車への充電を許容)する(ST203)。この場合、EV充電装置2は、充電を許容するだけでなく、充電を促進するための処理(例えば、割引率の向上あるいは無料化等)を適宜実行することが可能である。
【0075】
一方、電力需給が高い(すなわち、電気自動車への電力の供給に適さない)と判定した場合(ST202:No)には、EV充電装置2は、充電を停止(すなわち、電気自動車への充電を禁止)する(ST204)。この場合、EV充電装置2は、充電を停止する代わりに、充電を抑制するための処理(例えば、充電料金の値上げ、充電時間の制限、充電可能な属性(会員登録しているかどうかなど)の限定等)を適宜実行することが可能である。
【0076】
このように、EV充電装置2では、低圧分岐装置による配電状況(すなわち、低圧分岐装置から各配電対象(住宅等)に配電される電力の状況)に応じて、電気自動車への充電を適切に行うことができる。
【0077】
図9は、
図3に示したEV充電装置2の第2変形例を示すブロック図である。なお、以下で特に言及しない事項については、上述のEV充電装置2(第1変形例を含む)の場合と同様とする。
【0078】
図9に示すように、地上配電機器24は、分岐スイッチ91を備えた低圧分岐装置である。ここでは、分岐スイッチ91から、EV充電装置2およびサイネージ装置25に対してそれぞれ給電用ライン95、96を介して低圧(100V、200V)の電力を供給可能な点において上述の第1変形例の場合とは異なる。
【0079】
このような構成により、第2変形例に係るEV充電装置2では、充電器22に変圧器を設ける必要がなく、簡易な構成により、地中の配電線から地上に供給される電力を利用して充電に必要な電力を容易に確保することができる。
【0080】
以上、本開示を特定の実施の形態に基づいて説明したが、これらの実施の形態はあくまでも例示であって、本開示はこれらの実施の形態によって限定されるものではない。例えば、外部装置は、サーバ装置に限らず、同様の機能を果たしうる他の情報機器であってもよい。また、EV充電装置2がネットワーク3に接続されることも必須ではない。例えばEV充電装置2をスタンドアローン型とし、EV充電装置2にサーバ装置4と同様の機能を果たしうる制御部が設けられた構成としてもよい。なお、上記実施の形態に示した本開示に係る電気自動車充電装置および電気自動車充電方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本開示に係る電気自動車充電装置および電気自動車充電方法は、車道周辺において、設置スペースおよび充電に必要な電力を容易に確保することを可能とし、車道周辺に設置される電気自動車充電装置および電気自動車充電方法などとして有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 :充電システム
2 :EV充電装置
3 :ネットワーク
4 :サーバ装置(外部装置)
11 :車道
12 :歩道
21 :筐体
22 :充電器
23 :電力線
23A :高圧電力線
23B :低圧電力線
24 :地上配電機器
25 :サイネージ装置
26 :共同溝
27 :通信線
31 :充電ケーブル
32 :充電コネクタ
34 :路上パーキングスペース
35 :ディスプレイ
41 :変圧器
42 :電力メータ
43 :充電制御器42
44 :電力メータ
51 :プロセッサ(制御部)
52 :通信I/F(通信部)
61 :変圧器
71 :通信I/F
72 :記憶部
73 :プロセッサ
81 :記憶部
82 :通信I/F
83 :プロセッサ
91 :分岐スイッチ
92 :配電ライン
95 :給電用ライン
96 :給電用ライン