(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】フォーム形成方法、フォーム形成キット、及びエアゾール製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/19 20060101AFI20220722BHJP
A61K 8/20 20060101ALI20220722BHJP
A61Q 5/08 20060101ALI20220722BHJP
A61Q 5/10 20060101ALI20220722BHJP
B65D 81/32 20060101ALI20220722BHJP
B65D 83/66 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A61K8/19
A61K8/20
A61Q5/08
A61Q5/10
B65D81/32 S
B65D83/66
(21)【出願番号】P 2016171378
(22)【出願日】2016-09-02
【審査請求日】2019-08-20
【審判番号】
【審判請求日】2020-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000222129
【氏名又は名称】東洋エアゾール工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】上條 北斗
【合議体】
【審判長】森井 隆信
【審判官】齋藤 恵
【審判官】岡崎 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-006804(JP,A)
【文献】特開2012-229318(JP,A)
【文献】特表2014-527041(JP,A)
【文献】特表2016-503814(JP,A)
【文献】国際公開第2012/015034(WO,A1)
【文献】特開2003-095883(JP,A)
【文献】特開2017-197507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K8/00- 8/99
A61Q1/00-19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物を充填した第1容器と、少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒及びアルカリ剤を含有する第2組成物を充填した第2容器とが、吐出機構を備えた吐出容器内に格納されるとともに、吐出容器内と第1容器及び第2容器との間に形成される空間に噴射剤が充填されたエアゾール製剤であって、
前記噴射剤によりそれぞれ吐出された前記第1組成物と前記第2組成物とが接触することで泡沫を形成する、染色用、又は脱色用エアゾール製剤。
【請求項2】
少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物を充填した第1内容器と、少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒及びアルカリ剤を含有する第2組成物を充填した第2内容器とが、第1外容器、第2外容器、及び吐出機構を備えたキャップ、を備えたエアゾールセット内において、
該第1外容器には該第1内容器が、該第2外容器には該第2内容器がそれぞれ格納されるとともに、第1外容器と第1内容器との間、及び第2外容器と第2内容器との間、に形成される空間に噴射剤が充填されたエアゾール製剤であって、
前記噴射剤によりそれぞれ吐出された前記第1組成物と前記第2組成物とが接触することで泡沫を形成する、染色用、又は脱色用エアゾール製剤。
【請求項3】
前記第1組成物及び前記第2組成物は、それぞれ界面活性剤を含有する、請求項
1又は
2に記載のエアゾール製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォーム形成方法に関する。また、該フォーム形成方法を適用したフォーム形成キット、及びエアゾール製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
毛髪の染色、脱色に用いられる組成物として、アルカリ剤及び酸化剤を含有する組成物が知られている。そのうち、2剤式の泡状染毛剤は、アルカリ剤と染料を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤の混合液を泡状に吐出することで、染毛操作を簡単に行うことが可能であり、1剤式泡状染毛剤と比較して、高い染毛効果を得ることが可能である。
このような2剤式の染毛剤の具体例として、アルカリ剤を含有する第1剤と、酸化剤を含有する第2剤を混合した混合液の濃度を制御することで、染色ムラを抑制する2剤式泡沫染毛剤が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
一方で、第1剤と第2剤とを混合し、該混合物を振とうにより後発泡させることによって泡状の剤型を得る染毛剤では、炭酸ガスが発生するなどの問題点が指摘され、該問題点を解決するために第2剤に界面活性剤を配合するとともに第2剤のpHを所定の範囲に調整する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-6804号公報
【文献】国際公開第2012/015034号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載のように、振とうによる後発泡により泡沫を形成することで、染毛に必要な量のみ第1剤と第2剤とを混合させ、発泡させることが可能であるから、第1剤及び第2剤の長期間保管が可能となるなどのメリットも有する。しかしながら、後発泡のため容器に第1剤と第2剤とを混合する際、使用者が適正な混合比率を維持するためには、予め適正な量準備された第1剤と第2剤とをそれぞれ使い切る使用形態とならざるを得ない。また、使用者が容器を振とうさせて発泡させると、使用者により振とうの度合いがまちまちであり、染毛時のフォーム形成にばらつきが生じる可能性が存在する。
本発明は、上記問題点に鑑みたものであり、使用者が振とうしなくても後発泡が可能なフォーム形成方法を提供することを課題とする。また、該フォーム形成方法を適用したフォーム形成キット、及びエアゾール製剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決すべく研究を進め、酸化剤として使用する過酸化水素の化学反応に着目した。そして、以下で示される過酸化水素の分解を意図的に促進させることで酸素を発生させ、該酸素をフォーム形成のために用いることを着想した。
2H2O2 → 2H2O + O2
そして、該着想に基づき、過酸化水素を含む組成物とは異なる組成物に過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有させ、過酸化水素を含有する組成物と該触媒を含有する組成物とを接触させて後発泡させることで、上記課題を解決できることを見出し、発明を完成させた。また、上記方法をエアゾール剤に適用することで、長期保存が可能なエアゾール製剤を提供できることを見出した。
【0007】
本発明の第一の要旨は、
少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物、及び少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物を準備するステップ、並びに
前記第1組成物と前記第2組成物を接触させ、後発泡させるステップ、
を含む、フォーム形成方法である。
前記第1組成物及び第2組成物は、更に界面活性剤を含むことが好ましい。
【0008】
また、本発明の第二の要旨は、
少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物、及び少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物を、各々別の容器に充填してなり、
前記第1組成物と前記第2組成物とを接触させることで後発泡によりフォームを形成し得る、フォーム形成キットである。
前記第1組成物及び前記第2組成物は、それぞれ界面活性剤を含有することが好ましく、染色用、又は脱色用であることが好ましい。
【0009】
また、本発明の第三の要旨は、
少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物を充填した第1容器と、少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物を充填した第2容器とが、吐出機構を備えた吐出容器内に格納されるとともに、吐出容器と第1容器及び第2容器との間に形成される空間に噴射剤が充填されたエアゾール製剤であって、
前記噴射剤により吐出された前記第1組成物と前記第2組成物とが接触することで泡沫を形成する、エアゾール製剤である。
前記第1組成物及び前記第2組成物は、それぞれ界面活性剤を含有することが好ましく、染色用、又は脱色用であることが好ましい。
【0010】
また、本発明の第四の要旨は、
少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物を充填した第1内容器と、少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物を充填した第2内容器とが、第1外容器、第2外容器、及び吐出機構を備えたキャップ、を備えたエアゾールセット内において、該第1外容器には該第1内容器が、該第2外容器には該第2内容器がそれぞれ格納されるとともに、第1外容器と第1内容器との間、及び第2外容器と第2内容器との間、に形成される空間に噴射剤が充填されたエアゾール製剤であって、
前記噴射剤により吐出された前記第1組成物と前記第2組成物とが接触することで泡沫を形成する、エアゾール製剤である。
前記第1組成物及び前記第2組成物は、それぞれ界面活性剤を含有することが好ましく、染色用、又は脱色用であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、使用者が振とうしなくても後発泡が可能となる、新たなフォーム形成方法を提供することができる。また、該フォーム形成方法を利用した、新たなフォーム形成キット、及びエアゾール製剤を提供することができ、該エアゾール製剤は長期保存が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係るエアゾール製剤の正面模式図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るエアゾール製剤の正面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下本発明を、実施形態を示して説明するが、本発明は具体的な実施形態のみに限定されない。
本発明の第1の実施形態はフォーム形成方法であり、少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物および少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物を準備するステップ、並びに前記第1組成物と前記第2組成物とを接触させ、後発泡させるステップ、を含むフォーム形成方法である。
【0014】
第1組成物は、少なくとも過酸化水素を含有する組成物である。過酸化水素は、組成物中に含有されていればよい。そのため、組成物に配合する原料として過酸化水素を用いてもよく、また、原料として過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウムなどを用い、組成物中で過酸化水素を発生させてもよい。
【0015】
第2組成物は、少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する組成物である。このような触媒としては、鉄、亜鉛、銅、銀、白金、リチウム、セリウム、コバルト、マンガン、ニッケル、バナジウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、バリウムなどの金属化合物であってよく、活性炭や、カタラーゼ、ぺルオキシダーゼなどの酵素を含むドライイースト、などの非金属触媒であってもよく、上記機能を有すれば特段限定されるものではない。具体的には、オキシ硫酸バナジウム水和物、塩化銅、硫酸銅、塩化カリウム、硝酸カルシウム、塩化リチウム、酢酸マグネシウム、重クロム酸カリウム、硝酸バリウム、塩化コバルト、硫酸セリウム、塩化セリウム、硫酸バナジウム、二酸化マンガン、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化カリウム、などがあげられる。
【0016】
本実施形態では、上記第1組成物と第2組成物とを接触させることで、以下で示される過酸化水素の分解を促進させることで酸素を発生させ、フォームを形成させることを特徴とする。
2H2O2 → 2H2O + O2
第2組成物が含有する触媒量は、過酸化水素の分解を促進できる限り限定されないが、通常第1組成物中の過酸化水素100質量部に対し1質量部以上、好ましくは2質量部以上であり、より好ましくは10質量部以上であり、また通常500質量部以下であり、好ましくは300質量部以下である。触媒量は所望のフォーム形状により適宜決定される。
【0017】
本実施形態は、過酸化水素を含む第1組成物と、過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物とを接触させることでフォームを形成する方法であり、例えば染色用途又は脱色用途に好適に適用することができる。これは脱色用の酸化剤として過酸化水素が一般的に用いられるとの理由によるものである。そのため、本発明は染色用途又は脱色用途にのみ限定されるものではないが、以下、染色用途又は脱色用途(まとめて染毛剤用途とも称する。)に用いられる場合の具体例を挙げて説明する。
【0018】
染毛剤用途とする場合、第1組成物は酸化剤として過酸化水素を含む。第1組成物中における過酸化水素の含有量は、通常1質量%以上、好ましくは3質量%以上であり、また通常15質量%以下、好ましくは12質量%以下である。
また、過酸化水素の分解を防ぐため、第1組成物のpHは通常酸性であり、2以上6以下であることが好ましい。
【0019】
第2組成物は、通常アルカリ剤、及び酸化染料を含む。アルカリ剤は過酸化水素の脱色機能を向上させるため、また、酸化染料は毛髪の染色のため、染毛剤に通常配合される。また第2組成物は、染毛剤において酸化剤として用いられる他の酸化剤を含んでもよい。他の酸化剤としては、過硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸アンモニウム、ペルオキソ二硫酸カリウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウムなどがあげられる。
【0020】
アルカリ剤としては、アンモニア、炭酸塩、炭酸水素塩、ケイ酸塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、リン酸塩、アルカノールアミン等があげられる。第2組成物中におけるアルカリ剤
の含有量は、通常1質量%以上、好ましくは2質量%以上であり、また通常15質量%以下、好ましくは10質量%以下である。
【0021】
酸化染料としてはp-フェニレンジアミン、p-アミノフェノール、トルエン-2,5-ジアミン、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、2-(2-ヒドロキシエチル)-p-フェニレンジアミン、4-アミノ-3-メチルフェノール、6-アミノ-3-メチルフェノール、o-アミノフェノール、1-ヒドロキシエチル-4,5-ジアミノピラゾールなどの染料中間体、レゾルシン、2-メチルレゾルシン、メタアミノフェノール、5-アミノオルトクレゾール、5-(2-ヒドロキシエチルアミノ)-2-メチルフェノール、メタフェニレンジアミン、2,4-ジアミノフェノキシエタノール、1-ナフトール等のカップラーが例示される。酸化染料の含有量は、第1組成物と第2組成物との混合液とした際に、通常1質量%以上、好ましくは1.5質量%以上であり、また通常5質量%以下、好ましくは4質量%以下である。
【0022】
本実施形態においては、第1組成物、第2組成物のいずれか一方又は両方に界面活性剤を含有させることが、形成したフォームの安定性の観点から好ましい。
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0023】
アニオン性界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸トリエタノールアミン等のポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン、ポリオキシエチレン(1)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(2)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(3)ラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(4,5)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸ナトリウム等があげられる。
【0024】
カチオン性界面活性剤としては、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウムなどのアンモニウムカチオンを含む活性剤等があげられる。
【0025】
ノニオン性界面活性剤としては、モノヤシ油脂肪酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;POE・POPセチルエーテル、POE・POPデシルテトラデシルエーテルなどのポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル;モノステアリン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;POEラノリンアルコールなどのポリオキシエチレンラノリンアルコール;POE硬化ヒマシ油などのポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;POEセチルエーテル、POEステアリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEラウリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POEオクチルドデシルエーテル、POEイソセチルエーテル、POEイソステアリルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル;モノステアリン酸ポリエチレングリコールなどのポリエチレングリコール脂肪酸エステル;モノラウリン酸ヘキサグリセリル、モノミリスチン酸ヘキサグリセリル、モノラウリン酸ペンタグリセリル、モノミリスチン酸ペンタグリセリル、モノオレイン酸ペンタグリセリル、モノステアリン酸ペンタグリセリル、モノラウリン酸デカグルセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノイソステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノリノール酸デカグリセリルなどのポリグリセリン脂肪酸エステル;モノオレイン酸POEグリセリルなどのポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル;モノパルミ
チン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノイソステアリン酸POEソルビタン、モノオレイン酸POEソルビタンなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;モノラウリン酸POEソルビット、テトラステアリン酸POEソルビット、テトラオレイン酸POEソルビットなどのポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステルなどがあげられる。
【0026】
両性界面活性剤としては、ラウリン酸アミドプロピル酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルベタイン、ミリスチン酸アミドプロピルベタイン、パーム核油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルヒドロキシスルホベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミンオキシド、ヒドロキシアルキル(C12-14)ヒドロキシエチルメチルグリシンなどがあげられる。
これらの界面活性剤の含有量は、第1組成物と第2組成物との混合液とした際に、通常1質量%以上、好ましくは1.5質量%以上であり、また通常10質量%以下、好ましくは8質量%以下である。
【0027】
本実施形態においては、適度な粘度を付与するため、第1組成物、第2組成物のいずれか一方又は両方に、水溶性ポリマーに代表される増粘剤を含有させてもよい。水溶性ポリマーとしては、グアーガム、カラギーナン、キサンタンガム、デキストラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、アルギン酸塩などの天然高分子、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニル重合体、(メタ)アクリル酸系重合体、セルロース系重合体などの合成高分子があげられる。
【0028】
本実施形態においては、泡立ちを良くする、毛髪を保湿する、などの目的で、第1組成物、第2組成物のいずれか一方又は両方に油性成分を含有させてもよい。
油性成分としては、オリーブ油、大豆油、ゴマ油、ナタネ油、アボガド油、ヒマシ油などの油脂;ミツロウ、カルナウバロウ、ホホバ油などのロウ;セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ベヘニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコールなどの高級アルコール;パラフィン、ポリイソブテン、スクワラン、ワセリンなどの炭化水素;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸;アジピン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、パルミチン酸イソプロピルなどのエステル;ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ポリエーテル変性ポリシロキサン、アルキル変性ポリシロキサンなどのシリコーン;エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコール;が例示される。
【0029】
本実施形態においては、第1組成物に、第2組成物と接触させた際に第2組成物が含有する成分を溶解させるため、溶剤を含有させてもよい。
溶剤としては、通常水が用いられるが、その他エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、ブタノールなどのアルコールを含有させてもよい。
【0030】
その他、第1組成物、第2組成物のいずれか一方又は両方に、必要に応じ防腐剤、安定化剤、pH調整剤、酸化防止剤、キレート化剤、賦形剤、香料、紫外線防止剤、保湿剤等を含有させてもよい。
【0031】
本実施形態では、第1組成物、第2組成物共に、その剤形は特に限定されることはないが、染毛剤用途の場合には、クリーム剤形であることが、その効果を発揮するうえで好ましい。
【0032】
本発明の第2の実施形態は、少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物、及び少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物を、各々別の容器に充填し
てなり、前記第1組成物と前記第2組成物とを接触させることで後発泡によりフォームを形成し得る、フォーム形成キットである。
【0033】
本実施形態で用いる組成物は、第1組成物と第2組成物とを接触させることで後発泡させる組成物であることから、接触前の状態では各々別の容器に充填されており、使用時に両組成物を接触させることで、使用時にのみフォームを形成できる。
各組成物を充填する容器は特段限定されるものではない。染毛、脱毛用途の場合には、樹脂製及び金属製のボトル型容器やチューブ型容器が一般的であるが、これらに限られない。また、染毛、脱色用途の場合には、フォーム形成キットがコーム(櫛)を更に備えることが好ましい。コームを備える場合、第1組成物と第2組成物を容器からコーム上にそれぞれ吐出し、接触させることでフォームを形成させ、そのままフォームを毛髪に適用することができる。
なお、第2の実施形態であるフォーム形成キットにおいて、第1組成物及び第2組成物の説明は、第1の実施形態におけるフォーム形成方法の説明が援用される。
【0034】
本発明の第3の実施形態は、少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物を充填した第1容器と、少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物を充填した第2容器とが、吐出機構を備えた吐出容器内に格納されるとともに、吐出容器と第1容器及び第2容器との間に形成される空間に噴射剤が充填されたエアゾール製剤であって、前記噴射剤により吐出された前記第1組成物と前記第2組成物とが接触することで泡沫を形成する、エアゾール製剤である。以下、第3の実施形態の具体例を、図面を用いて説明する。
【0035】
図1は、第3の実施形態に係るエアゾール製剤の正面模式図である。エアゾール製剤100は、筐体4及び吐出機構5を備えた吐出容器内に、第1容器1及び第2容器2が格納され、かつ密閉されてなる。第1容器1には少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物が充填されており、また、第2容器2には少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物が充填されている。吐出容器内には、筐体4と第1容器1及び第2容器2との間に空間3が形成され、該空間3には第1組成物及び第2組成物を吐出機構5から吐出させるための噴射剤が充填される。吐出機構5は、第1容器1及び第2容器2に充填された組成物を吐出する吐出口をそれぞれ有し、吐出口より吐出された第1組成物と前記第2組成物とが接触することで、泡沫を形成し得る。
【0036】
また、本発明の第4の実施形態は、少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物を充填した第1内容器と、少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物を充填した第2内容器とが、第1外容器、第2外容器、及び吐出機構を備えたキャップ、を備えたエアゾールセット内において、該第1外容器には該第1内容器が、該第2外容器には該第2内容器がそれぞれ格納されるとともに、第1外容器と第1内容器との間、及び第2外容器と第2内容器との間、に形成される空間に噴射剤が充填されたエアゾール製剤であって、前記噴射剤により吐出された前記第1組成物と前記第2組成物とが接触することで泡沫を形成する、エアゾール製剤である。前記第1外容器と前記第2外容器は、前記キャップと脱着可能であってもよい。キャップと、第1外容器及び/又は第2外容器とを脱着可能とすることで、一方の外容器に格納された容器内の組成物の残量が少なくなった場合に、交換することが可能となる。以下、第4の実施形態の具体例を、図面を用いて説明する。
【0037】
図2は、第4の実施形態に係るエアゾール製剤の正面模式図である。エアゾール製剤200は、第1外容器11b、第2外容器12b、及び吐出機構15を備えたキャップ16、を備えたエアゾールセットからなる。第1外容器11bには第1内容器11aが格納され、かつ第1内容器11aには少なくとも過酸化水素を含有する第1組成物が充填されて
いる。第2外容器12bには第2内容器12aが格納され、かつ第2内容器12aには少なくとも過酸化水素の分解を促進させる触媒を含有する第2組成物が充填されている。エアゾールセット内において、第1外容器11bと第1内容器11aとの間、及び第2外容器12bと第2内容器12aとの間には空間13がそれぞれ形成され、該空間には、第1組成物及び第2組成物を吐出機構15から吐出させるための噴射剤が充填される。吐出機構15は、第1内容器11a及び第2内容器12aに充填された組成物を吐出する吐出口をそれぞれ有し、吐出口より吐出された第1組成物と前記第2組成物とが接触することで、泡沫を形成し得る。
【0038】
吐出容器又はエアゾールセット内に充填される噴射剤は特段限定されず、液化ガスを使用してもよく、圧縮ガスを使用してもよい。本実施形態に係るエアゾール製剤は、第1組成物と第2組成物とを吐出容器又はエアゾールセットから吐出し、接触させることで後発泡できる製剤であるため、吐出と同時に泡沫を形成する必要がなく、液化石油ガス、ジメチルエーテルなどの可燃性液化ガスを噴射剤として使用してもよいが、安全性の高い圧縮ガスを用いることが好ましい。
圧縮ガスは特段限定されないが、上記のとおり安全性の観点から、可燃性ではないガスを用いることが好ましい。具体的には、二酸化炭素、窒素、亜酸化窒素などがあげられる。
本実施形態では、吐出機構は特に限定されないが、第1組成物及び第2組成物を同時に、所望の量を吐出できる構造であることが好ましい。
【0039】
以下実施例により本発明を更に詳細に説明する。
<実施例1>
以下の処方により、第1組成物と第2組成物を調製した。第1容器及び第2容器の2つの独立した容器を内部に備えた二重構造を有するエアゾール容器を準備し、調製した第1組成物及び第2組成物をそれぞれ第1容器及び第2容器に充填した。そして、エアゾール容器には、第1容器と第2容器の間に形成される空隙に窒素ガスを充填し、エアゾール製剤を得た。
得られたエアゾール製剤から組成物を1:1の比で吐出したところ、吐出物は3分経過時には良好な泡沫を形成し、また15分経過時にも泡沫を持続して形成した。
(第1組成物)
精製水 75.9wt%
過酸化水素水35%水溶液 17.1wt%
※エマコールHD-2146 7.0wt%
(第2組成物)
精製水 87.0wt%
ヨウ化ナトリウム 6.0wt%
※エマコールHD-2146 7.0wt%
なお、※エマコールHD-2146は、セタノール、ミツロウ、パルミチン酸イソプロピル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、セチル硫酸ナトリウム、精製水、の各成分を含む。
【0040】
<実施例2乃至7>
次に、実施例1において、第2組成物に含まれるヨウ化ナトリウムの配合量を表1のとおり変化させ、発泡組成物を評価した。
評価は、200mLメスシリンダに第1組成物を5g、第2組成物を5gそれぞれ投入し、ガラス棒にて均一になるまで撹拌した。均一に撹拌した後、発泡速度、泡沫量、保型性の確認を目視にて行った。評価基準は以下のとおりである。
【0041】
(発泡速度)
◎:混合直後と比較した体積変化率が200%以上になるまでの時間が3分以内
○:混合直後と比較した体積変化率が200%以上になるまでの時間が3分1秒以上10分以内
△:混合直後と比較した体積変化率が200%以上になるまでの時間が10分1秒以上30分以内
×:混合直後と比較した体積変化率が200%以上になるまでの時間が30分1秒以上
(泡沫量)
◎:混合直後と比較した混合15分後の体積変化率が500%以上
○:混合直後と比較した混合15分後の体積変化率が300%以上499%以下
△:混合直後と比較した混合15分後の体積変化率が150%以上299%以下
×:混合直後と比較した混合15分後の体積変化率が149%以下
(保型性)
◎:混合後、15分以上泡沫形成が維持された
○:混合後、10分以上14分59秒以下泡沫形成が維持された
△:混合後、5分以上9分59秒以下泡沫形成が維持された
×:混合後、5分経過時に泡沫が消滅した
【0042】
【符号の説明】
【0043】
100、200 エアゾール製剤
1 第1容器
11a 第1内容器
11b 第1外容器
2 第2容器
12a 第2内容器
12b 第2外容器
3、13 空間
4 筐体
5、15 吐出機構
16 キャップ