(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】シールド掘削機のセグメント組立装置及び組立方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
E21D11/40 B
(21)【出願番号】P 2017188877
(22)【出願日】2017-09-28
【審査請求日】2020-06-26
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【氏名又は名称】高橋 久典
(74)【代理人】
【識別番号】100188891
【氏名又は名称】丹野 拓人
(72)【発明者】
【氏名】若林 正憲
(72)【発明者】
【氏名】薄井 瞳
(72)【発明者】
【氏名】金子 研一
【審査官】山崎 仁之
(56)【参考文献】
【文献】実開昭57-079698(JP,U)
【文献】特開平07-076998(JP,A)
【文献】特開2013-083151(JP,A)
【文献】特開平09-250298(JP,A)
【文献】特開平02-171499(JP,A)
【文献】特開平10-292797(JP,A)
【文献】実開平03-050699(JP,U)
【文献】中国特許出願公開第106677790(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シールド掘削機に環状に配設されたレールに沿ってエレクター装置を走行させてセグメントを組み立てるシールド掘削機のセグメント組立装置において、
前記エレクター装置は複数台が前記レールに取り付けられていて、前記エレクター装置の周方向の長さは
、複数台の前記エレクター装置が前記セグメントを把持している状態で、把持している前記セグメントが接触しても前記エレクター装置が接触しないように、前記セグメントの弧長よりも短く設定されており、前記レールに沿って複数台の前記エレクター装置を両側に移動させて複数のセグメントを個別に組み立てるようにしたことを特徴とするセグメント組立装置。
【請求項2】
前記エレクター装置には、衝突を回避するためのセンサーが装着されている請求項1に記載されたセグメント組立装置。
【請求項3】
シールド掘削機に環状に配設されたレールに沿ってエレクター装置を走行させてセグメントを組み立てるシールド掘削機のセグメント組立方法において、
前記エレクター装置はレールに複数台取り付けられていて、
前記エレクター装置の周方向の長さは
、複数台の前記エレクター装置が前記セグメントを把持している状態で、把持している前記セグメントが接触しても前記エレクター装置が接触しないように、前記セグメントの弧長よりも短く設定されており、
複数台の前記エレクター装置を周方向両側に移動させて、前記セグメントを周方向両側に交互に組み立てるようにしたことを特徴とするセグメント組立方法。
【請求項4】
シールド掘削機に環状に配設されたレールに沿ってエレクター装置を走行させてセグメントを組み立てるシールド掘削機のセグメント組立方法において
、
前記エレクター装置はレールに複数台取り付けられていて、
前記エレクター装置の周方向の長さは、複数台の前記エレクター装置が前記セグメントを把持している状態で、把持している前記セグメントが接触しても前記エレクター装置が接触しないように、前記セグメントの弧長よりも短く設定されており、
複数台の前記エレクター装置を同一方向に交互に移動させて、複数の前記セグメントを周方向両側に交互に組み立てるようにしたことを特徴とするセグメント組立方法。
【請求項5】
前記エレクター装置は、トンネルの最下端部に設置した基準位置のセグメントの両側に順次セグメントを取り付けて周方向上側に向けて組み立てるようにした請求項3または4に記載されたセグメント組立方法。
【請求項6】
前記エレクター装置には衝突を回避するためのセンサー取り付けられている請求項3から5のいずれか1項に記載されたセグメント組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセグメントをリング状に組み立ててトンネル覆工を築造するためのシールド掘削機のセグメント組立装置及びセグメント組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、シールド掘削機による掘削されたトンネルの内周の土壁にセグメントリングを組み立てて一次覆工するシールド工法が知られている。近年、大型の道路工事にシールド工法が採用されており、大口径のシールドトンネル工事が増大している。そのため、リングを形成するセグメントの数が増大し、セグメントの組み立て工数が増大している。
ところで、シールド工法によりトンネルを掘進するに従ってその掘削壁面にセグメントを組み立て施工する組立装置や組立方法として、例えば特許文献1、2に記載されたものが提案されている。
【0003】
特許文献1に記載されたセグメント組立装置は、シールドフレーム内に設けた旋回リングの180度対向する位置に第1エレクターと第2エレクターとがそれぞれ取り付けられている。第1エレクターと第2エレクターは旋回リングによって同時に旋回可能である。第1エレクターと第2エレクターには、セグメントをそれぞれ把持ピンで把持するセグメント把持部と、更に上方の第2エレクターで支持するセグメントを押さえつける一対のガイドロッドとが設けられている。
180度対向配置された第1エレクターと第2エレクターによって、2ピースのセグメントを180度離れた位置でそれぞれ同時にトンネル内に組み付けることができる。そして、第1エレクターと第2エレクターの位置を旋回リングで同時に周方向にずらして新たな2ピースのセグメントを順次組み付けることで、半周分ずつのセグメントを同時に組み立て可能とされ、高速施工が可能とされている。
【0004】
特許文献2に記載されたセグメント組立装置は、手掘り式のシールド掘削機の掘削機本体内周にレールを環状に敷設してなり、セグメントピースを把持する1台のエレクター装置がレール上を自走するモノレール式の組立装置である。エレクター装置本体のセグメントピース把持機構と反対側に、油圧モータとオイルタンクと作動油を油圧モータに供給するパワーユニットとを備えており、油圧モータの駆動によってエレクター装置本体をレール上を自走させている。シールド掘削機による掘削断面形状が略楕円形状や複合円形や矩形などでも、エレクター装置によってレールに沿ったセグメントのリング状の組み立てを容易に行うことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平11-107696号公報
【文献】特開2013-83151号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1に記載されたセグメントの組立装置では、第1エレクター及び第2エレクターを旋回リングと一体に回転させてセグメントを組み立てる構造であるため、セグメントリングの径が大きくなった場合、より大きな駆動力を必要とするという問題がある。
特許文献2に記載されたセグメントの組立装置では、レール上をエレクター装置が駆動するため、セグメントリングの径の大小に関わらず駆動力が増大することを抑制できる。しかし、1台のエレクター装置でセグメントを把持してレールに沿って移動させて組み立てるため、掘削断面形状が大型化するとセグメントの数が増大して組み立てに手間がかかるという欠点がある。
【0007】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、大きな駆動力を必要とせずセグメントの組み立てを短時間で効率的に行えるようにしたシールド掘削機のセグメント組立装置及び組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明に係るシールド掘削機のセグメント組立装置は、掘削断面を有するシールド掘削機に環状に配設されたレールに沿ってエレクター装置を走行させてセグメントを組み立てるシールド掘削機のセグメント組立装置において、エレクター装置は複数台がレールに取り付けられていて、レールに沿って複数台のエレクター装置を両側に移動させて複数のセグメントを個別に組み立てるようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、複数のエレクター装置をレールに沿って異なる方向にそれぞれ走行させることで個別にセグメントを連結して組み立てることができるため、従来の1台のエレクター装置を用いた場合と比較して高速にセグメントリングを構築できる。しかも、複数のエレクター装置はレールに沿って個別に走行可能であるため、従来の旋回リングに対向して取り付けられた複数のエレクター装置と比較して駆動力が小さくて済み、低コストでセグメントリングを構築できる。
【0009】
また、エレクター装置には、衝突を回避するためのセンサーが装着されていることが好ましい。
複数のエレクター装置がレール上を個別に走行できるためにエレクター装置同士が当接して損傷し易かったり、把持したセグメントはエレクター装置より大型であるため互いに衝突し易かったり、作業員と接触し易い等の不具合があるが、センサーによって衝突や接触を事前に検知できるため、衝突や接触を防止できる。
【0010】
本発明によるシールド掘削機のセグメント組立方法は、掘削断面を有するシールド掘削機に環状に配設されたレールに沿ってエレクター装置を走行させてセグメントを組み立てるシールド掘削機のセグメント組立方法において、エレクター装置はレールに複数台取り付けられていて、複数台のエレクター装置を周方向両側にそれぞれ移動させて、セグメントを周方向両側で交互に組み立てるようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、複数台のエレクター装置をレール上を周方向両側にそれぞれ移動させて個別にセグメントを把持して搬送させ、個別に取り付けてリング状に組み立てることができる。しかも、従来の旋回リングに対向して取り付けられた複数のエレクター装置と比較して駆動力が小さくて済み、低コストである上にセグメントリングを短時間で高速に構築できる。
【0011】
本発明によるシールド掘削機のセグメント組立方法は、掘削断面を有するシールド掘削機に環状に配設されたレールに沿ってエレクター装置を走行させてセグメントを組み立てるシールド掘削機のセグメント組立方法において、エレクター装置はレールに複数台取り付けられていて、複数台のエレクター装置を同一方向に交互に移動させて、複数個のセグメントを周方向両側に交互に組み立てるようにしたことを特徴とする。
本発明によれば、セグメントを把持した複数台のエレクター装置をレールに沿って一方向に移動させて複数のセグメントを取り付け、その後に複数台のエレクター装置を他方向に移動させて複数のセグメントを取り付ける作業を交互に行うことで、セグメントリングを短時間で高速に構築できる。しかも、従来の旋回リングに対向して取り付けられた複数のエレクター装置と比較して駆動力が小さくて済み、低コストである。
【0012】
また、エレクター装置は、トンネルの最下端部に設置した基準位置のセグメントの両側に順次セグメントを取り付けて周方向上側に向けて組み立てるようにしてもよい。
セグメントを最下端部から上方に向けて周方向両側に組み上げることで、自重でセグメント同士が緊密に当接して組み立て精度が向上する。
また、エレクター装置には衝突を回避するためのセンサー取り付けられていてもよい。
複数台のエレクター装置はレールに沿って個別に移動可能であるため、他のエレクター装置やセグメント、或いは作業員に接触し易いが、センサーを取り付けることで衝突や接触等を回避できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によるシールド掘削機のセグメント組立装置及び組立方法によれば、複数のエレクター装置をレールに沿って移動させて複数のセグメントを個別または交互に組み立てるため、高速施工で効率的にセグメントを組み立てできる上に、掘削断面の径の大きさに関わらずエレクター装置の駆動力の変化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態によるシールド掘削機の要部断面図である。
【
図3】実施形態によるセグメント組立装置におけるエレクター装置とレールを示す模式図である。
【
図4】
図3に示すエレクター装置によるセグメントの組立方法を示す部分拡大図である。
【
図5】掘削トンネル内におけるシールド掘削機による掘進時間とセグメントリングの組み立て時間のタイムチャートの図である。
【
図6】変形例によるセグメントの組立方法を示す
図4と同様な図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態によるシールド掘削機のセグメント組立装置及びセグメント組立方法について
図1~
図6を参照して説明する。
図1~
図5は実施形態による掘削断面を有するシールド掘削機1のセグメント組立装置2を示すものである。
図1に示す本実施形態によるシールド掘削機1には、筒状体の掘削機本体3内の前部に切羽側と坑内側とを仕切る隔壁4が設けられている。隔壁4には切羽を掘削するカッタ5と、カッタ5で掘削された掘削土砂を削泥材と混練するチャンバ6とが設けられている。掘削機本体3を構成するリングガーダー部3aの内周にセグメント組立装置2が組み付けられている。掘削機本体3のテール部(テールスキンプレート)3bの内周にセグメントSがリング状に組み立てられたセグメントリングRが配列されてトンネル軸方向に互いに連結されている。
【0016】
セグメントSは内径寸法に応じて適宜数のセグメントS(
図2では14ピース)が略リング状に組み立てられ、最後のK型セグメント(キーセグメント)Kを嵌め込むことでセグメントリングRが形成されることになっている。本実施形態ではK型セグメントKはセグメントリングRの上端部に嵌合されている。各セグメントSは同一形状でもよいし、異なる形状でもよい。
図1において、シールド掘削機1には、既設のセグメントリングRのセグメントSに反力をとって掘削機本体3を前進させるシールドジャッキ9が設置されている。チャンバ6には、カッタ5で掘削された土砂を排出するスクリューコンベア10の先端部が設置され、スクリューコンベア10は後方に向けて斜め上方に傾斜して設置されている。セグメント組立装置2の後方には、セグメントリングRに組み立てられたセグメントSの形状保持装置11が設置されている。
【0017】
セグメント組立装置2には、リングガーダー部3aの内周にレール13が環状に敷設され、レール13上を図示しないガイドローラを介してエレクター装置15が走行可能に設置されている。環状のレール13はリングガーダー部3aに連結されている。レール13は、例えば上述した特許文献2に記載されたように、断面略T字状に形成されていてもよいし、他の適宜の断面形状を有していてもよい。また、エレクター装置15は、レール13の長手方向に沿って形成されたラックに噛合するピニオンギアを有したラック&ピニオン方式を設けている。或いは、走行スプロケットチェーン方式やスプロケットピンローラ列方式等を用いてもよい。
【0018】
エレクター装置15には、図示しないピニオンギアを備えた油圧モータと、作動油を貯留するオイルタンクと、オイルタンクから作動油を油圧モータに供給するパワーユニットとが備えられている。油圧モータの駆動によって正逆回転するピニオンギアがレール13のラックに噛合しながら回転することで、エレクター装置15がレール13に沿って全周を自走可能とされている。エレクター装置15は無線または有線のコントローラ(図示せず)によって油圧モータの駆動を制御され、レール13上を周方向に走行可能とされている。
【0019】
図3はレール13に装着されたエレクター装置15を示すものであり、1条のレール13に複数台、例えば同一構造の2台のエレクター装置15が装着されている。2台のエレクター装置15は、一方が第一エレクター装置15Aであり、他方が第二エレクター装置15Bである。各エレクター装置15には、上述した特許文献1と同様に、セグメント把持部16として各セグメントSの中央に取り付けられた把持ピン17aに係合する溝部17とその両脇をサポートするサポートジャッキ18とが設けられている。セグメント把持部16には、溝部17とサポートジャッキ18を一体的にトンネル軸方向及び周方向に微調節移動する調節機構(図示せず)が設置されている。
【0020】
セグメントSは例えば略長方形板状のものを円弧状に湾曲させたものであり、その弧状の長さ(以下、弧長という)が例えば3m50cm、トンネル軸方向の幅の長さが1m~1m50cm程度とされている。そのため、エレクター装置15でセグメントSを把持した場合、周方向のエレクター装置15の長さよりもセグメントSの弧長の方が周方向両側に長く設定されているものとする。
第一エレクター装置15Aと第二エレクター装置15Bで把持するセグメントSを他のセグメントSに連結するための作業員も2グループ準備しておくものとする。
【0021】
これら第一エレクター装置15Aと第二エレクター装置15Bには、それぞれセンサー20a、20bが内蔵されている。センサー20a、20bは例えば光センサーであり、或いは赤外線センサーや超音波センサー等でもよい。センサー20a、20bは、一方のエレクター装置15が他方のエレクター装置15や、エレクター装置15で把持するセグメントSに接触したり近接したりした場合に、警告表示したりエレクター装置15を緊急停止させたりする。これによってエレクター装置15やセグメントSの損傷を阻止できる。
また、エレクター装置15は、セグメントS同士を連結する作業を行う作業員に接近等した場合にも警報等で警告したりエレクター装置15を緊急停止させたりして、作業員の安全を確保する。
【0022】
本実施形態によるシールド掘削機1のセグメント組立装置2は上述した構成を備えており、次にその組立方法について
図4により説明する。
図4において、セグメントリングRの基準となる最初のセグメントSをセグメントS0とし、その後に順次供給されるセグメントSをS1,S2,S3,……とする。
先ず掘進工程において、シールド掘削機1のカッタ5でトンネルの土壁を掘削して掘進する。そのため、次にシールド掘削機1をセグメントリングRのトンネル軸方向の幅分だけ前進させてセグメント組立装置2も前進させ、新たなセグメントリングRを構築するスペースを前方に確保する。
【0023】
セグメントSの組立工程において、セグメントSは図示しないセグメント供給装置によってセグメント組立装置2の近傍に移動させる。最初のセグメントS0はトンネルの最下端部(基準位置)に設置し、既設のセグメントリングRのセグメントSの前側の主桁面にボルトや継手等で連結する。このとき、第一エレクター装置15A及び第二エレクター装置15Bはレール13上を基準位置から周方向両側に逃げた位置に保持されている。
【0024】
次に供給されるセグメントS1は例えばトンネルの最下端部のセグメントS0の上に載置される。第一エレクター装置15Aがレール13上を走行してセグメント把持部16でセグメントS1を把持する。第一エレクター装置15AはセグメントS1を把持した状態で、一方向、例えば
図4で左方向に移動され、基準位置のセグメントS0の継手面にセグメントS1の継手面を当接させ、作業員がボルトや継手等で連結させる。そして、第一エレクター装置15AはセグメントS1をセグメント把持部16から離す。
【0025】
基準位置のセグメントS0上では、第一エレクター装置15AがセグメントS1を持ち運ぶと、次のセグメントS2が供給されて載置される。そして、第二エレクター装置15Bはレール13上を走行してセグメントS0上のセグメントS2をセグメント把持部16で把持する。このとき、第一エレクター装置15Aは基準位置のセグメントS0の左側に移動しているため、第二エレクター装置15Bと衝突することはない。
次いで、第二エレクター装置15BはセグメントS2を把持して図上、右側に移動し、セグメントS0の他方の継手面に継手面を当接させてセグメントS2を連結させる。この時、第一エレクター装置15Aが基準位置のセグメントS0上に移動し、新たなセグメントS3を把持して再度左側に移動する。
【0026】
このように第一エレクター装置15Aと第二エレクター装置15Bがレール13上を交互に周方向に移動して順次セグメントSを把持して移送する。そして、基準位置のセグメントS0の左右両側にセグメントS1、S2、S3、S4、…を交互に順次当接させて連結する。
セグメントS0の周方向両側に連結されたセグメントSの列は次第に上方に連結されていくため、セグメントSの自重によって基準位置のセグメントS0を中心に互いに緊密に接合される。レール13上を往復動する第一エレクター装置15A及び第二エレクター装置15Bによって交互に半周分ずつセグメントSを組み立てることができる。
そして、セグメントリングRの上端部において、最後のセグメントとして、K型セグメントKを両側のセグメントS11、S12間の隙間に嵌合させて連結することで、セグメントリングRが組み立てられる。
【0027】
しかも、各エレクター装置15にはセンサー20a、20bが設けられているため、組立工程において、一方のエレクター装置15が他方のエレクター装置15やセグメントSと衝突しそうな場合には、これを検知して警報を発するか緊急停止して衝突を回避できる。また、第一エレクター装置15Aまたは第二エレクター装置15BやセグメントSがセグメントSの連結作業を行う作業員に接触しそうな場合には、センサー20a、20bで検知して緊急停止させることで衝突を回避することができる。
【0028】
図5はシールド掘削機1のカッタ5によるトンネルの掘進工程とセグメントSの組立工程についてのタイミングチャートを示す図である。
実施形態と従来技術において、トンネル掘進工程では、セグメントSの幅分だけシールド掘削機1のカッタ5でトンネルを掘削するのに例えば50分かかるとする。その後、掘削したトンネルの土壁にセグメントSを組み立ててセグメントリングRを構築するに際し、従来技術では1台のエレクター装置で100分かかっていた。これに対し、本実施形態では、2台のエレクター装置15A,15Bで左右両側に交互にセグメントSを組み立てるため、従来技術の半分の時間である50分でセグメントリングRを構築できた。
【0029】
上述のように本実施形態によるシールド掘削機1のセグメント組立装置2及び組立方法によれば、レール13上を走行する2台の第一及び第二エレクター装置15A,15Bで基準位置のセグメントS0の両側に半周分ずつ交互にセグメントSを組み立てることができる。そのため、セグメントリングRの組み立て時間が従来の半分の時間で済み、短時間で効率的にセグメントリングRを構築できる。そのため、単位時間当たりのシールドトンネルの掘進距離が増加して効率的である。
【0030】
その際、第一エレクター装置15A及び第二エレクター装置15Bは個別にレール13上を自走可能であるため、従来の旋回リングに対向して取り付けた2台のエレクター装置と比較して駆動力が小さくて済み、低コストである。
しかも、最下端部である基準位置のセグメントS0の周方向両側に半周分ずつ交互にセグメントSを下側から上側に向けて組み立てるため、セグメントSの自重によって緊密に精度良くセグメントリングRを組み立てできる。
【0031】
以上、本発明の実施形態によるシールド掘削機1のセグメント組立装置2及び組立方法について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されることはなく、本発明の要旨を変更しない範囲で適宜の変更や置換等が可能であり、これらはいずれも本発明に含まれる。以下に、本発明の変形例等について説明するが、上述の実施形態と同一または同様な部分、部材には同一の符号を用いて説明を省略する。
【0032】
図6は変形例によるシールド掘削機1のセグメント組立方法を示す図である。
変形例によるセグメント組立方法において、第一エレクター装置15A及び第二エレクター装置15Bがレール13上を同時に同一方向に交互に移動することで、基準位置のセグメントS0の両側に2ピースのセグメントSを順次組み立てることができる。即ち、基準位置のセグメントS0の上にセグメント供給装置で新たなセグメントS2を供給し、これを第一エレクター装置15Aで把持する。第一エレクター装置15Aを例えば左側に移動させると共に、次に供給される新たなセグメントS1を第二エレクター装置15Bで把持する。
そして、第一エレクター装置15A及び第二エレクター装置15Bを同時に左側に移動することで、セグメントS0の左側の継手面にセグメントS1の一方の継手面を当接させ、更にセグメントS1の他方の継手面にセグメントS2の継手面を当接させ、それぞれボルトや継手等で連結させる。
【0033】
次に、第二エレクター装置15Bをレール13に沿って右側に移動させて、基準位置のセグメントS0上に供給された新たなセグメントS4を把持し、更に右側に移動させる。第一エレクター装置15Aも右側に移動させて基準位置のセグメントS0上に供給された新たなセグメントS3を把持し、更に右側に移動させる。第一エレクター装置15A及び第二エレクター装置15Bを同時に右側に移動させることで、セグメントS0の右側の継手面にセグメントS3の一方の継手面を当接させ、更にセグメントS3の他方の継手面にセグメントS4の継手面を当接させ、それぞれボルトや継手等で連結させる。
【0034】
このような作業をレール13上で交互に行うことで、セグメントS0の周方向両側に2ピースのセグメントSを交互に連結させることができ、短時間でセグメントリングRの組み立てを行える。
なお、セグメント供給装置で基準位置のセグメントS0上に供給するセグメントSは1ピースに代えて2ピースにしてもよい。この場合には第一エレクター装置15A及び第二エレクター装置15Bで同時に各セグメントSを把持できるため、把持と搬送が一層効率的になる。
【0035】
上述した実施形態や変形例では、トンネルの最下端部のセグメントS0を基準にしてその両側に交互に1ピースまたは2ピースのセグメントSを組み立てることで上方に向けてセグメントリングRを構築するようにした。このような組立方法によれば、連結した各セグメントSが基準位置のセグメントS0に向けて自重を加えるため、セグメントSの組立精度が向上する。
しかし、このような組立方法に代えて、トンネルの上端部や中間高さのセグメントSを基準位置としてその両側に交互にセグメントを組み立てるようにしてもよい。或いは、基準位置のセグメントSを設置しないで、第一エレクター装置15A及び第二エレクター装置15Bで順次セグメントSを把持して周方向両側に搬送するようにしてもよい。
【0036】
上述した実施形態や変形例において、セグメントリングRを構築する各セグメントSは、最後に嵌合させるK型セグメントKとその両側のセグメントSを除いた他のセグメントSを同一形状のものとしてもよい。或いは、それぞれ長さや形状が相違するものを用いてもよい。
また、複数台のエレクター装置15は2台に限定されることなく、3台または4台以上レール13に設置してもよい。この場合でも、基準位置のセグメントS0の両側に1または複数ピースのセグメントSを順次組み立てることで一層組み立て速度が速くなる。
【符号の説明】
【0037】
1 シールド掘削機
2 セグメント組立装置
5 カッタ
13 レール
15 エレクター装置
15A 第一エレクター装置
15B 第二エレクター装置
16 セグメント把持部
17 溝部
17a 把持ピン
18 サポートジャッキ
S セグメント
K K型セグメント
R セグメントリング