(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】ウレタン(メタ)アクリレート系組成物、活性エネルギー線重合性組成物、及び積層体
(51)【国際特許分類】
C08G 18/67 20060101AFI20220722BHJP
C08G 18/58 20060101ALI20220722BHJP
C08G 18/64 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C08G18/67 050
C08G18/67 010
C08G18/58 010
C08G18/64 007
(21)【出願番号】P 2017252246
(22)【出願日】2017-12-27
【審査請求日】2020-08-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】黒木 勇馬
(72)【発明者】
【氏名】竹内 祥子
(72)【発明者】
【氏名】小滝 智博
【審査官】前田 孝泰
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-328237(JP,A)
【文献】特開2007-101830(JP,A)
【文献】特表2011-523674(JP,A)
【文献】特表2009-533504(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0099449(US,A1)
【文献】特開2005-165176(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08F 2/00-299/08
C08L 1/00-101/16
C09D 1/00-201/10
G02B 1/00- 1/18
B32B 1/00- 43/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加したエポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)由来の構成単位と、有機ポリイソシアネート化合物(B)由来の構成単位と、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)由来の構成単位とを含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)を含有し、
(A)成分由来の構成単位、(B)成分由来の構成単位、及び(C)成分由来の構成単位の少なくともいずれかを有する化合物、並びに未反応の(A)~(C)成分の合計量が100質量%であり、
数平均分子量が500以上1400以下であり、水酸基価が70mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であ
り、
前記エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物又はフルオレン型エポキシ化合物であり、
前記多官能(メタ)アクリレート(C)は、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上である、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
【請求項2】
エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加したエポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)、有機ポリイソシアネート化合物(B)、及び水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られる、
(A)成分由来の構成単位、(B)成分由来の構成単位、及び(C)成分由来の構成単位の少なくともいずれかを有する化合物、並びに未反応の(A)~(C)成分の合計量が100質量%であり、
数平均分子量が500以上1400以下であり、水酸基価が70mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であ
り、
前記エポキシ化合物は、ビスフェノールA型エポキシ化合物又はフルオレン型エポキシ化合物であり、
前記多官能(メタ)アクリレート(C)は、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートからなる群から選択される1種以上である、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
【請求項3】
前記有機ポリイソシアネート化合物(B)が芳香族ポリイソシアネートである、請求項1
又は2に記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
【請求項4】
前記多官能(メタ)アクリレート(C)がペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの少なくともいずれか一方を含む、請求項1~
3のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
【請求項5】
光学部材に用いられる、請求項1~
4のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
【請求項6】
前記(A)成分の水酸基と(C)成分の水酸基との合計の水酸基に対する(B)成分のイソシアネート基のモル比であるNCO/OH比が0.15以上0.40以下である、請求項2に記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物、該ウレタン(メタ)アクリレート系組成物を含む活性エネルギー線重合性組成物、及び該活性エネルギー線重合性組成物の硬化物と基材との積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ等の画像表示装置は屋内のみならず、屋外においても使用するケースが増えてきている。そのため、砂埃の多い屋外でも傷がつきにくい高硬度な表面保護材を備えた表示装置が求められている。このような観点から、基材にハードコート層が積層された積層体を用いて傷つきを防止する技術が知られている。
また、液晶ディスプレイ等の画像表示装置は、表示面の視認性を高めるために、外部から照射された光線の反射率が低いことも求められている。このような観点から、ハードコート層を高屈折率化し、外部光線の反射率を低減させる試みもなされている(特許文献1)。
【0003】
ハードコート層は、例えば多官能(メタ)アクリレート等の活性エネルギー線重合性モノマー、及び必要に応じて溶剤を含有する活性エネルギー線重合性組成物を硬化して形成される。上記のとおり、光線の反射率を低減する観点から、ハードコート層は比較的屈折率が高いことが好ましいため、ハードコート層を形成するためのモノマーとしても、屈折率が高いものが求められている。
また、活性エネルギー線重合性組成物を構成する各成分は相互に相溶性が悪いと、ハードコート層を形成したときの透明性が悪化するため、透明性を高める観点から相溶性が良好であることが求められる。
特許文献2~4には、エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸が付加したエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル化合物と、ポリイソシアネート化合物等を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート系組成物をモノマーとして用いる例が開示されている。該ウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、活性エネルギー線重合性モノマー、溶剤等と混合した活性エネルギー線重合性組成物として使用され、耐熱性など各種物性が改善された硬化物が得られることが報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2013-142793号公報
【文献】特開昭60-250023号公報
【文献】特開2005-255555号公報
【文献】特開2013-53249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これら従来技術におけるウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤などの活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤との相溶性、及びウレタン(メタ)アクリレート系組成物と併用して用いる活性エネルギー線重合性モノマーとの相溶性に関しては十分ではなく、また、高屈折率化の観点からも改善の余地があった。
【0006】
本発明は、以上の事情に鑑みてなされたものであり、活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤や活性エネルギー線重合性モノマーなどと相溶性がよく、かつ屈折率が高いウレタン(メタ)アクリレート系組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構成単位を含有するウレタン(メタ)アクリレート化合物を含み、かつ数平均分子量が一定範囲のウレタン(メタ)アクリレート系組成物により、上記課題が解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[11]を提供するものである。
[1]エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加したエポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)由来の構成単位と、有機ポリイソシアネート化合物(B)由来の構成単位と、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)由来の構成単位とを含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)を含有し、数平均分子量が500~1800であるウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
[2]水酸基価が70mgKOH/g以上130mg以下である、上記[1]に記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
[3]エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加したエポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)、有機ポリイソシアネート化合物(B)、及び水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られる、数平均分子量が500以上1800以下であるウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
[4]前記(A)成分の水酸基と(C)成分の水酸基との合計の水酸基に対する(B)成分のイソシアネート基のモル比であるNCO/OH比が0.15以上0.40以下である、上記[3]に記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
[5]前記エポキシ化合物がビスフェノールA型エポキシ化合物又はフルオレン型エポキシ化合物である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
[6]前記有機ポリイソシアネート化合物(B)が芳香族ポリイソシアネートである、上記[1]~[5]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
[7]前記多官能(メタ)アクリレート(C)がペンタエリスリトールトリアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートの少なくともいずれか一方を含む、上記[1]~[6]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
[8]光学部材に用いられる、上記[1]~[7]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載のウレタン(メタ)アクリレート系組成物、及び活性エネルギー線重合性モノマーを含有する活性エネルギー線重合性組成物。
[10]さらに溶剤を含有する、上記[9]に記載の活性エネルギー線重合性組成物。
[11]基材と、該基材上に積層されたハードコート層とを有する積層体であって、ハードコート層が上記[9]又は[10]に記載の活性エネルギー線重合性組成物の硬化物である、積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤及び活性エネルギー線重合性モノマーの少なくともいずれか一方、好ましくは両方と相溶性が良好で、かつ屈折率が高いウレタン(メタ)アクリレート系組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加したエポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)由来の構成単位と、有機ポリイソシアネート化合物(B)由来の構成単位と、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)由来の構成単位とを含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)を含有し、かつ数平均分子量が500以上1800以下である。
該ウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、後述するように、活性エネルギー線重合性モノマー、溶剤などを含有する活性エネルギー線重合性組成物の一成分として用いることができる。
以下、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物について詳細に説明する。
【0010】
[ウレタン(メタ)アクリレート系組成物]
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)由来の構成単位、有機ポリイソシアネート化合物(B)由来の構成単位、及び水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)由来の構成単位を含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)を少なくとも含有する。
なお、本明細書において、エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)を単に(A)成分ということもある。有機ポリイソシアネート化合物(B)、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)、及びウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)についても同様である。
また、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基を意味する。
【0011】
ウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、後述するように、エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)、有機ポリイソシアネート化合物(B)、及び水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られる組成物であって、(A)~(C)由来の構成単位を含むウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)を少なくとも含有する。
【0012】
(D)成分は、(A)成分に存在する水酸基と(C)成分の水酸基のそれぞれが(B)成分のイソシアネート基と反応した化合物であり、(B)成分が、(A)成分及び(C)成分のそれぞれとウレタン結合で連結している。(D)成分の代表的な構造としては、(A)~(C)の各成分由来の構成単位を1個づつ有する構造であり、その他にも(A)~(C)の各構成単位の少なくともいずれかを2個以上有する構造などが存在しうる。したがって、(D)成分は、単一の構造だけではなく、複数の異なる構造を有する化合物の混合物として存在しうる。(D)成分の構造は、使用する(A)~(C)成分の種類、量、イソシアネート基と水酸基のモル比などの各反応条件に依存する。
【0013】
また、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、反応条件に依存して、上記(D)成分の他、(A)成分由来の構成単位と(B)成分由来の構成単位を有し(C)成分由来の構成単位を有しない化合物、(B)成分由来の構成単位と(C)成分由来の構成単位を有し(A)成分由来の構成単位を有しない化合物、その他、未反応の(A)~(C)成分などが含まれうる。
言い換えると、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分とを反応させて得られるものであるため、(A)成分由来の構成単位、(B)成分由来の構成単位、及び(C)成分由来の構成単位の少なくともいずれかを有する化合物に加え、未反応の(A)~(C)成分を含み得るものであり、これらモノマー、オリゴマーの混合物である。
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物における、(A)成分由来の構成単位、(B)成分由来の構成単位、及び(C)成分由来の構成単位の少なくともいずれかを有する化合物、並びに未反応の(A)~(C)成分の合計量は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物全体の90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましく、100質量%であることが特に好ましい。
【0014】
ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の数平均分子量は500以上1800以下である。ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の数平均分子量が500未満であると、該ウレタン(メタ)アクリレート系組成物を原料として、ハードコート層を形成させたときの強度が低下する傾向にある。一方、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の数平均分子量が1800を超えると、活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤及び活性エネルギー線重合性モノマーなどとの相溶性が悪化する傾向にある。活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤及び活性エネルギー線重合性モノマーなどとの相溶性をより良好とする観点から、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の数平均分子量は好ましくは600以上であり、より好ましくは700以上であり、さらに好ましくは800以上であり、そして、好ましくは1500以下であり、より好ましくは1400以下であり、さらに好ましくは1200以下である。
ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の数平均分子量は、実施例で記載の方法により測定することができる。
【0015】
ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の水酸基価は、好ましくは60mgKOH/g以上、より好ましくは70mgKOH/g以上、さらに好ましくは80mgKOH/g以上であり、そして、好ましくは140mgKOH/g以下、より好ましくは130mgKOH/g以下、さらに好ましくは120mgKOH/g以下である。ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の水酸基価をこのような範囲に調整すると、活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤及び活性エネルギー線重合性モノマーなどとの相溶性が良好となりやすい。
なお、本発明においてウレタン(メタ)アクリレート系組成物の水酸基価は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物1gをアセチル化させたとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とする水酸化カリウムのmg数であり、JIS K0070に準拠して測定することができる。
【0016】
(エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A))
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)は、エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)由来の構成単位を有する。
エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)は、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加した化合物である。
エポキシ化合物としては、特に制限されないが、例えば、ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールF型エポキシ化合物、ビスフェノールS型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、水添ビスフェノールF型エポキシ化合物、水添ビスフェノールS型エポキシ化合物、ビフェニル型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、ビフェノール型エポキシ化合物、ナフタレン型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物などが挙げられる。
中でも、エポキシ化合物としては、高屈折率のウレタン(メタ)アクリレート系組成物を得る観点から、芳香環を有するエポキシ化合物、具体的にはビスフェノールA型エポキシ化合物、フルオレン型エポキシ化合物からなる群から選択される1以上が好ましい。
【0017】
ビスフェノールA型エポキシ化合物は、ビスフェノールA骨格とエポキシ基とを有する化合物であり、好ましくは以下の一般式(1)で表される化合物である。
【化1】
一般式(1)において、Xは、直接結合、炭素数1~4のアルキレン基、又は炭素数2~4のアルキリデン基を表す。中でも、Xは、炭素数2~4のアルキリデン基が好ましく、イソプロピリデン基がより好ましい。
一般式(1)において、Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。aはそれぞれ独立に0~4の整数である。中でもaは0~2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
一般式(1)においてnは0以上の整数である。ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の数平均分子量を低くし、活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤及び活性エネルギー線重合性モノマーなどとの相溶性を良好とする観点から、nは好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
【0018】
フルオレン型エポキシ化合物は、フルオレン骨格とエポキシ基とを有する化合物であり、好ましくは以下の一般式(2-1)、又は一般式(2-2)で表される化合物である。
【化2】
一般式(2-1)において、Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。aはそれぞれ独立に0~4の整数である。中でもaは0~2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
一般式(2-1)においてnは0以上の整数である。ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の数平均分子量を低くし、活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤及び活性エネルギー線重合性モノマーなどとの相溶性を良好とする観点から、nは好ましくは0~3の整数であり、より好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
【0019】
【化3】
一般式(2-2)において、Rは、それぞれ独立に水素原子、炭素数1~5の直鎖若しくは分岐アルキル基、フェニル基、又はハロゲン原子を表す。aはそれぞれ独立に0~4の整数である。中でもaは0~2の整数であることが好ましく、0であることがより好ましい。
一般式(2-2)において、nは0以上の整数である。好ましくは0~20の整数であり、より好ましくは0~5の整数であり、さらに好ましくは0又は1であり、さらに好ましくは0である。
【0020】
(A)成分は、上記したエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加した化合物であり、好ましくはビスフェノールA型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加した化合物又はフルオレン型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加した化合物である。
ビスフェノールA型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加した化合物としては、好ましくは一般式(1)に(メタ)アクリル酸が付加した化合物であり、より好ましくは下記式(3)で表される化合物である。フルオレン型エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加した化合物としては、好ましくは一般式(2-1)又は一般式(2-2)に(メタ)アクリル酸が付加した化合物であり、より好ましくは下記式(4)で表される化合物である。
【0021】
【0022】
【0023】
(A)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
(A)成分は、公知の方法で製造することが可能であり、例えば、所定量のエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを混合し、重合禁止剤の存在下で、90~120℃程度に加熱すればよい。
【0024】
(有機ポリイソシアネート化合物(B))
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)は、有機ポリイソシアネート化合物(B)由来の構成単位を有する。
(B)成分としては、特に限定されず、公知のものを使用することができる。(B)成分としては、例えば、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン4,4′-ジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′-ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、等の芳香族ポリイソシアネートなどが挙げられる。また、前記有機ポリイソシアネート化合物として、上記の脂肪族ポリイソシアネート又は芳香族ポリイソシアネートを環化させて得られるイソシアヌレート化合物を用いることもできる。
これらの中でも、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の屈折率を高める観点からは、芳香族ポリイソシアネートが好ましく、キシリレンジイソシアネートがより好ましい。
(B)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0025】
(水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C))
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物に含まれるウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)は、水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)由来の構成単位を有する。
水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)は、1個以上の水酸基を有し、かつ2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であり、前記した(A)成分以外の化合物である。活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤及び活性エネルギー線重合性モノマーなどと相溶性の良好なウレタン(メタ)アクリレート系組成物を得る観点から、(C)成分は、1個の水酸基を有する化合物であることが好ましく、1個の1級水酸基を有する化合物であることがより好ましい。(C)成分として、1個の水酸基を有する多官能(メタ)アクリレートを用いることで、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の数平均分子量及び水酸基価を所望の範囲に調整しやすく、相溶性が良好となりやすい。
【0026】
(C)成分としては、例えば、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ソルビトールジ(メタ)アクリレート、ソルビトールトリ(メタ)アクリレート、ソルビトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらの中でも、(C)成分としては、1個の水酸基を有する点から、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、ソルビトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの少なくとも1つを含むことが好ましく、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、及びジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレートの少なくともいずれか一方を含むことがより好ましい。
(C)成分は1種単独で用いてもよいし、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0027】
(ウレタン(メタ)アクリレート化合物(D))
ウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)は、(A)~(C)成分由来の構成単位を含有する化合物である。また、上記したとおり(D)成分は反応条件によって種々の構造をとりうるが、(D)成分の代表的な構造は、(A)~(C)成分由来の構成単位を1個ずつ含有する構造である。
例えば、エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)としてビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物、有機ポリイソシアネート化合物(B)としてキシリレンジイソシアネート、多官能(メタ)アクリレート(C)としてペンタエリスリトールトリアクリレートを使用した場合のウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)の代表的な構造は以下のとおりである。
【0028】
【0029】
(D)成分に該当する上記化合物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルアクリル酸付加物の2つの水酸基のうちの1つの水酸基及びペンタエリスリトールトリアクリレートの水酸基のそれぞれがキシリレンジイソシアネートのイソシアネート基と反応した化合物であり、各成分がウレタン結合で連結している。
(D)成分に該当する上記化合物は、未反応の水酸基が残存しているが、該水酸基がさらに別のキシリレンジイソシアネートのイソシアネート基と反応する場合なども考えられる。すなわち、(D)成分は、各成分の使用量などにより、種々の構造をとりうる。
【0030】
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、エポキシ化合物に(メタ)アクリル酸が付加したエポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物(A)、有機ポリイソシアネート化合物(B)、及び水酸基を有する多官能(メタ)アクリレート(C)とを反応させて得られる。
これらの各成分を反応させる際の(A)成分の水酸基と(C)成分の水酸基との合計の水酸基に対する(B)成分のイソシアネート基のモル比(NCO/OH比)は、好ましくは0.15以上、より好ましくは0.20以上、さらに好ましくは0.25以上であり、そして、好ましくは0.45以下、より好ましくは0.40以下、より好ましくは0.35以下、さらに好ましくは0.30以下である。
このようなNCO/OH比であると、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の数平均分子量が所望の範囲となり、活性エネルギー線重合性組成物に含有されるアルコール系、ケトン系などの各種溶剤及び活性エネルギー線重合性モノマーなどと相溶性の良好なウレタン(メタ)アクリレート系組成物を得やすくなる。
各成分を反応させる際の(A)成分と(C)成分のモル比((A)成分モル数/(C)成分モル数)は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物(D)を得やすくする観点から、
0.5以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましく、そして、1.5以下であることが好ましく、1.2以下であることがより好ましい。
【0031】
(A)~(C)成分を反応させる具体的方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(A)成分、(C)成分、及び必要に応じて溶剤を混合させ、これらに(B)成分を添加して反応させればよい。反応は、60℃以上110℃以下の条件で行うことが好ましく、触媒、重合禁止剤等の添加剤の存在下で行うことが好ましい。
触媒としては、トリエチルアミン、ピペラジン、トリエタノールアミン等のアミン化合物、有機金属化合物等を用いることができる。該有機金属化合物としては、ジブチルスズジラウレート、スズオクトエート、スズラウレート、ジオクチルスズジラウレート等の有機スズ化合物、2-エチルヘキサン酸亜鉛等の有機亜鉛化合物、ジルコニウムテトラアセチルアセトナート等の有機ジルコニウム化合物、ビスマストリオクテート等の有機ビスマス化合物等を用いることができる。
重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、p-メトキシフェノール、p-ベンゾキノン等を用いることができる。
【0032】
(ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の用途)
本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、活性エネルギー線重合性組成物に含有される各種溶剤及び活性エネルギー線重合性モノマーなどとの相溶性が良好である。したがって、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物を含む活性エネルギー線重合性組成物及び該組成物の硬化物は透明性が高い。
また、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物の屈折率は比較的高く、具体的な屈折率の値としては、好ましくは1.50以上であり、より好ましくは1.51以上であり、そして、好ましくは1.65以下であり、より好ましくは1.60以下である。
ウレタン(メタ)アクリレート系組成物の屈折率が比較的高いため、該組成物を原料とした各種材料の屈折率も高くなる。よって、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、このような特性を生かして、光学部材として用いることが好ましい。
具体的には、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、ハードコート層を形成させるための材料として用いることが好ましい。
【0033】
[積層体]
本発明の積層体は、基材と、該基材上に積層されたハードコート層とを有する積層体である。該ハードコート層は、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物及び活性エネルギー線重合性モノマーとを少なくとも含有する活性エネルギー線重合性組成物の硬化物であることが好ましい。本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物をハードコート層に用いることで、透明性が高く、かつ外部光線から照射された光の反射を少なくすることができる積層体が得られ、該積層体を画像表示装置の画像表示面に用いた場合に、表示面の視認性が良好となる。
【0034】
積層体における基材の種類としては、特に限定されず、金属基材、ガラス基材、樹脂基材などを用いることができ、中でも透明性、加工特性を良好とする観点から樹脂基材が好ましい。
樹脂基材の構成材料としては、例えば、セルロース誘導体、シクロオレフィン系樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリイミド、ポリアリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、アモルファスポリオレフィン、変性アクリル系ポリマー、ポリスチレン、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、トリアセチルセルロース、ポリエチレンナフタレート、環状オレフィンコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリフェニルサルファイドなどを挙げることができる。
基材の形状は、特に限定されず、フィルム状、板状など、使用目的によって適宜選択すればよいが、柔軟性を良好とするためフィルム状であることが好ましい。基材の厚さとしては、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは20μm以上であり、そして好ましくは300μm以下であり、より好ましくは200μm以下である。
【0035】
ハードコート層は、後述する活性エネルギー線重合性組成物の硬化物であることが好ましい。ハードコート層の厚みは、要求される硬度及び反射防止性等に応じて適宜調整すればよいが、例えば、1μm以下20μm以下とすることができる。
また、本発明の積層体においては、ハードコート層上にハードコート層よりも屈折率の低い低屈折率層を設けてもよい。これにより、反射防止性をより向上させることができる。より反射防止性を向上させる観点から、ハードコート層よりも屈折率が高い高屈折率層をハードコート層と低屈折率層の間に設けてもよい。
【0036】
(活性エネルギー線重合性組成物)
活性エネルギー線重合性組成物は、本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物、及び活性エネルギー線重合性モノマーを少なくとも含み、これら以外にも、後述する溶剤、重合開始剤、硬度又は屈折率を調整するための微粒子などを含んでもよい。
【0037】
活性エネルギー線重合性組成物に含有される活性エネルギー線重合性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等のエチレン性不飽和結合を有するラジカル重合性のモノマーが挙げられる。ここで、本発明における活性エネルギー線重合性モノマーとは、繰り返し単位を1つのみ有するモノマーのみならず、繰り返し単位を2つ以上有するオリゴマー、ポリマーも包含する。
活性エネルギー線重合性モノマーとしては、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性のモノマーを含むことが好ましく、多官能(メタ)アクリレートを含むことがより好ましい。本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物は、(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性のモノマーとの相溶性が良好であり、特に多官能(メタ)アクリレートとの相溶性が良好である。なお、多官能(メタ)アクリレートとは、2以上の(メタ)アクリロイル基を有するラジカル重合性モノマーを意味する。
多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレートモノステアレート等のジアクリレート;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート;ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が挙げられる。硬度が高いハードコート層を得る観点から、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等が好ましい。活性エネルギー線重合性組成物に含有される活性エネルギー線重合性モノマー及び本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物の合計量は、活性エネルギー線重合性組成物の全固形分に対して、後述する微粒子を含有する場合には、好ましくは30質量%以上であり、そして好ましくは90質量%以下である。また、後述する微粒子を含有しない場合には、好ましくは70質量%以上であり、そして好ましくは100質量%以下である。
【0038】
活性エネルギー線重合性組成物には、更に溶剤を含有させてもよい。溶剤は、活性エネルギー線重合性組成物中の各成分と反応せず、該各成分を溶解又は分散し得る溶剤の中から適宜選択して用いればよい。例えば、イソプロピルアルコール、エタノール等のアルコール系溶剤;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル等のエステル系溶剤;ハロゲン化炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;及びこれらの混合溶剤が挙げられる。本発明のウレタン(メタ)アクリレート系組成物はこれらの各種溶剤との相溶性が良好であり、特にアルコール系溶剤又はケトン系溶剤との相溶性が良好である。したがって、活性エネルギー線重合性組成物に溶剤を含有させる場合は、アルコール系溶剤及びケトン系溶剤の一方又は両方を用いることが好ましい。
溶剤を用いる場合は、活性エネルギー線重合性組成物の固形分濃度(組成物の全質量に対する全固形分の合計質量の割合)は、好ましくは0.1質量%以上であり、そして好ましくは40質量%以下である。
【0039】
活性エネルギー線重合性組成物には、ハードコート層とした際の硬度を高める観点又は屈折率を調整する観点から、微粒子を含んでもよい。微粒子は、無機微粒子でも有機微粒子でもよいが、硬度付与の観点から無機微粒子が好ましい。無機微粒子としては、例えば、シリカ(SiO2)、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物微粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物微粒子などが挙げられる。
【0040】
活性エネルギー線重合性組成物には、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物及び活性エネルギー線重合性モノマーの重合を開始させるための重合開始剤を含有させることが好ましい。重合開始剤の中でも、光重合開始剤が好ましく、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物類等が挙げられる。より具体的には、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、ベンジルジメチルケトン、1-(4-ドテシルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、ベンゾフェノン等を例示できる。
光重合開始剤を用いる場合は、その含有量は、ウレタン(メタ)アクリレート系組成物及び活性エネルギー線重合性モノマーの合計100質量部に対して、0.1質量部以上20質量部以下程度とすればよい。
【0041】
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、基材に活性エネルギー線重合性組成物を塗布し塗膜を形成させた後、該塗膜を光照射することにより硬化させて、ハードコート層を形成させる方法が挙げられる。
活性エネルギー線重合性組成物を塗布し塗膜を形成させる方法としては、従来公知の塗布方法を用いることができる。塗布方法としては、例えば、スピンコート法、ディップ法、スプレー法、スライドコート法、バーコート法、ロールコーター法、メニスカスコーター法、フレキソ印刷法、スクリーン印刷法、ビードコーター法等を挙げることができる。
塗膜の光照射には、主に、紫外線、可視光、電子線又は電離放射線等が使用され、紫外線を使用する場合には、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプ等の光線から発する紫外線などを使用すればよい。
なお、光照射の前に、必要に応じて塗膜を乾燥させてもよい。乾燥方法としては、例えば、減圧乾燥、加熱乾燥、又はこれらの乾燥を組合わせる方法等が挙げられる。
【実施例】
【0042】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの例によってなんら限定されるものではない。
【0043】
各物性の測定方法及び評価方法は、次の通りである。
<屈折率(固形分換算値)>
得られたウレタンアクリレート系組成物のメチルエチルケトン溶液の屈折率を、アッベ屈折率系を使用し、25℃にて測定した。得られた測定値と、溶剤であるメチルエチルケトン単独の屈折率、並びにウレタンアクリレート系組成物の固形分重量及び溶剤の重量から、ウレタンアクリレート系組成物の屈折率(固形換算値)を算出した。
【0044】
<数平均分子量>
得られたウレタンアクリレート系組成物の数平均分子量(Mn)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めた。測定条件は、以下のとおりである。
測定装置:東ソー社製GPC HLC-8220
カラム:Shodex LF-404を2本直列に接続して使用
検出器:示差屈折率(RI)検出器
標準ポリスチレン:Agilent Technologies製Easical Type PS-2ポリスチレン(分子量範囲580~364,000)
サンプル濃度:0.2wt%のTHF溶液
移動相:THF
送液速度:0.35ml/min
カラム温度:40℃
試料注入量:10μL
【0045】
<水酸基価>
得られたウレタンアクリレート系組成物の水酸基価(mgKOH/g)は、JIS K0070に準拠して測定した。
【0046】
<相溶性>
(1)得られたウレタンアクリレート系組成物50質量部に、メチルエチルケトン50質量部を配合して十分に攪拌して、メチルエチルケトンに対する相溶性の評価試料とした。
(2)得られたウレタンアクリレート系組成物50質量部に、イソプロピルアルコール50質量部を配合して十分に攪拌して、イソプロピルアルコールに対する相溶性の評価試料とした。
(3)得られたウレタンアクリレート系組成物50質量部に、ペンタエリスリトールトリアクリレート50質量部を配合して十分に攪拌して、ペンタエリスリトールトリアクリレートに対する相溶性の評価試料とした。
上記(1)~(3)の相溶性の評価試料それぞれについて、次の評価基準で評価した。
A:透明
B:僅かに白濁
C:白濁、若しくは分離
【0047】
エポキシ化合物の(メタ)アクリル酸エステル化合物として、以下の化合物を用いた。
(1)ビスフェノールA型エポキシ化合物のアクリル酸エステル
【化7】
(2)フルオレン型エポキシ化合物のアクリル酸エステル
【化8】
【0048】
(C)成分としては以下のものを使用した。
(1)ペンエリスリトールトリアクリレート(混合物)
ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートとの混合物
水酸基価:118.0mgKOH/g
(2)ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(混合物)
ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとの混合物
水酸基価:95.0mgKOH/g
【0049】
[実施例1]
(A)成分としてビスフェノールA型エポキシ化合物のアクリル酸エステル化合物46.8質量部、(C)成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート(混合物)45.9質量部、添加剤としてp-メトキシフェノール0.05質量部、ジオクチルスズジネオデカノエート0.04質量部、溶剤としてメチルエチルケトン42.7質量部を混合し、60℃まで昇温させた。次いで、(B)成分としてキシリレンジイソシアネート7.3質量部を約30分かけて滴下した後、75℃まで昇温した。残存イソシアネート濃度が0.1%以下になるまで反応させ、以下に示す(A)成分、(B)成分、及び(C)成分由来の構成単位を有するウレタンアクリレート化合物(D)を含有するウレタンアクリレート系組成物のメチルエチルケトン溶液を得た。評価結果を表1に示す。
【0050】
実施例1における代表的なウレタンアクリレート化合物(D)の構造
【化9】
【0051】
[実施例2~5]
各成分の種類及び量を表1のとおり変更した以外は実施例1と同様にして、ウレタンアクリレート系組成物のメチルエチルケトン溶液を得た。評価結果を表1に示す。
実施例2~4で得た(A)成分、(B)成分、及び(C)成分由来の構成単位を有するウレタンアクリレート化合物(D)の代表的な構造を以下に示す。
【0052】
実施例2における代表的なウレタンアクリレート化合物(D)の構造
【化10】
【0053】
実施例3におけるウレタンアクリレート化合物(D)の代表的な構造
【化11】
【0054】
実施例4における代表的なウレタンアクリレート化合物(D)の構造
【化12】
【0055】
[比較例1]
(A)成分としてビスフェノールA型エポキシ化合物のアクリル酸エステル化合物90.6質量部、添加剤としてp-メトキシフェノール0.05質量部、ジオクチルスズジネオデカノエート0.04質量部、溶剤としてメチルエチルケトン42.7質量部を混合し、60℃まで昇温させた。次いで、(B)成分としてキシリレンジイソシアネート9.4質量部を約30分かけて滴下した後、75℃まで昇温した。残存イソシアネート濃度が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレート系組成物のメチルエチルケトン溶液を得た。評価結果を表1に示す。
【0056】
[比較例2]
各成分の種類及び量を表1のとおり変更した以外は比較例1と同様にして、ウレタンアクリレート系組成物のメチルエチルケトン溶液を得た。評価結果を表1に示す。
【0057】
[比較例3]
(C)成分としてペンタエリスリトールトリアクリレート95.0質量部、添加剤としてp-メトキシフェノール0.05質量部、ジオクチルスズジネオデカノエート0.04質量部、溶剤としてメチルエチルケトン42.7質量部を混合し、60℃まで昇温させた。次いで、(B)成分としてキシリレンジイソシアネート5.0質量部を約30分かけて滴下した後、75℃まで昇温した。残存イソシアネート濃度が0.1%以下になるまで反応させ、ウレタンアクリレート系組成物のメチルエチルケトン溶液を得た。評価結果を表1に示す。
【0058】
[比較例4]
各成分の種類及び量を表1のとおり変更した以外は比較例3と同様にして、ウレタンアクリレート系組成物のメチルエチルケトン溶液を得た。評価結果を表1に示す。
【0059】
【0060】
実施例1~5の結果より、本発明のウレタンアクリレート系組成物は、屈折率が高く、また、メチルエチルケトン、イソプロピルアルコール、ペンタエリスリトールトリアクリレートに対する相溶性が良好であることが分かった。
メチルエチルケトン、イソプロピルアルコールなどの溶剤、及びペンタエリスリトールトリアクリレート等の多官能(メタ)アクリレートはハードコート層を形成させるための活性エネルギー線重合性組成物の一成分として用いられるものである。したがって、これらの結果から、本発明のウレタンアクリレート系組成物を用いて、活性エネルギー線重合性組成物を作製した場合は、相溶性のよい組成物となることが分かる。
これに対して、本発明の要件を満たさない比較例1~4のウレタンアクリレート系組成物は、屈折率が低いか又は相溶性が悪く、本発明のような良好な物性バランスは達成できなかった。