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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】活性剤の送達のための微細構造アレイ
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20220722BHJP
   A61K 9/00 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/02 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/04 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/05 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/07 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/08 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/09 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/095 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/10 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/102 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/112 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/13 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/145 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/15 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/165 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/20 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/205 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/235 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/25 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/285 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/29 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/20 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20220722BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220722BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A61M37/00 505
A61M37/00 510
A61K9/00
A61K39/00 G
A61K39/02
A61K39/04
A61K39/05
A61K39/07
A61K39/08
A61K39/09
A61K39/095
A61K39/10
A61K39/102
A61K39/112
A61K39/12
A61K39/13
A61K39/145
A61K39/15
A61K39/165
A61K39/20
A61K39/205
A61K39/235
A61K39/25
A61K39/285
A61K39/29
A61K39/39
A61K47/10
A61K47/20
A61K47/22
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/34
A61K47/36
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2017511622
(86)(22)【出願日】2015-08-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2017-11-02
(86)【国際出願番号】 US2015047563
(87)【国際公開番号】W WO2016033540
(87)【国際公開日】2016-03-03
【審査請求日】2018-08-27
【審判番号】
【審判請求日】2021-08-30
(31)【優先権主張番号】62/044,051
(32)【優先日】2014-08-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503360296
【氏名又は名称】コリウム, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】チェン, グオファ
(72)【発明者】
【氏名】カティカネニ, サーヒトヤ
(72)【発明者】
【氏名】ガーティー-タゴエ, エサイ
(72)【発明者】
【氏名】シン, パーミンダー
【合議体】
【審判長】内藤 真徳
【審判官】栗山 卓也
【審判官】井上 哲男
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/100750(WO,A1)
【文献】特表2014-514022(JP,A)
【文献】国際公開第2008/093679(WO,A1)
【文献】特開2012-140470(JP,A)
【文献】特表2010-534622(JP,A)
【文献】特表2004-504120(JP,A)
【文献】特表2004-538048(JP,A)
【文献】特表2013-519645(JP,A)
【文献】特表2012-525342(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) ワクチン、不溶性粒状アルミニウム塩アジュバント、親水性ポリマー、および少なくとも1種の共溶媒を水性緩衝液中に含む、液体製剤を提供するステップ、
(ii) ステップ(i)からの前記液体製剤を、微細構造キャビティのアレイを有する鋳型上に分与するステップであって、前記微細構造キャビティに満たして、液体製剤で満たされた鋳型を形成するステップ、
(iii) 前記鋳型の上面から前記液体製剤の過剰を除去するステップ、
(iv) 前記液体製剤で満たされた鋳型を乾燥し、それにより、前記微細構造キャビティのそれぞれで乾燥した製剤を提供するステップ、
(v) (iv)からの前記乾燥した鋳型上に、裏打ち層を配置するステップであって、前記裏打ち層が、前記微細構造キャビティのそれぞれで乾燥した製剤への付着点を有する基部を形成して、成型された微細構造アレイを提供するステップ、および
(vi) (v)からの前記微細構造アレイを前記鋳型から取り出すステップ
を含む、微細構造アレイを作製する方法であって、
ここで、前記共溶媒がイソプロピルアルコールであり、そしてここで、前記液体製剤が10重量%イソプロピルアルコールを含む、
方法。
【請求項2】
前記分与するステップの前に、可溶性の気体で前記鋳型をパージするステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記可溶性の気体が、COおよびCHから選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ステップ(iii)の後に、前記液体製剤で満たされた鋳型に圧力を加えるステップ
をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
圧力を加えるステップが、大気圧よりも少なくとも約10psi高い圧力を加えることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
大気圧よりも少なくとも約30psi高い圧力を加える、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
圧力を加えるステップが、圧力を少なくとも約5秒間から約2分間加えることを含む、請求項4から6に記載の方法。
【請求項8】
(i) ワクチン、不溶性粒状アルミニウム塩アジュバント、親水性ポリマー、および少なくとも1種の共溶媒を水性緩衝液中に含む、液体製剤を提供するステップ、
(ii) ステップ(i)からの前記液体製剤を、微細構造キャビティのアレイを有する鋳型上に分与するステップであって、前記微細構造キャビティに満たして、液体製剤で満たされた鋳型を形成するステップ、
(iii) 前記製剤で満たされた鋳型に圧力を加えるステップ、
(iv) 前記鋳型の上面から前記液体製剤の過剰を除去するステップ、
(v) 前記液体製剤で満たされた鋳型を乾燥し、それにより、前記微細構造キャビティのそれぞれで乾燥した製剤を提供するステップ、
(vi) (v)からの前記乾燥した鋳型上に、裏打ち層を配置するステップであって、前記裏打ち層が、前記微細構造キャビティのそれぞれで前記乾燥した製剤への付着点を有する基部を形成して、成型された微細構造アレイを提供するステップ、および
(vii) (vi)からの前記微細構造アレイを前記鋳型から取り出すステップ
を含む、微細構造アレイを作製する方法であって、
ここで、前記共溶媒がイソプロピルアルコールであり、そしてここで、前記液体製剤が10重量%イソプロピルアルコールを含む、
方法。
【請求項9】
前記分与するステップの前に、可溶性の気体で前記鋳型をパージするステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記可溶性の気体が、COおよびCHから選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
圧力を加えるステップが、大気圧よりも少なくとも約10psi高い圧力を加えることを含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
圧力を加えるステップが、大気圧よりも少なくとも約30psi高い圧力を加えることを含む、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
圧力を加えるステップが、圧力を少なくとも約5秒間から約2分間加えることを含む、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記液体製剤で満たされた鋳型を乾燥するステップが、前記液体製剤で満たされた鋳型を、約5~50℃で少なくとも約30~60分間乾燥することを含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記裏打ち層が、裏打ち層の製剤から形成され、ここで、前記方法が、前記裏打ち層の製剤を乾燥するステップをさらに含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記裏打ち層の製剤を乾燥するステップが、約5~50℃の炉で乾燥することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
裏打ち基材を前記裏打ち層に添着させるステップをさらに含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記裏打ち基材が、感圧性接着剤およびUV硬化接着剤から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記微細構造アレイを、5~50℃で少なくとも約12時間乾燥させるステップ
をさらに含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記乾燥するステップが約35℃でなされる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記乾燥するステップが減圧下で行われる、請求項19または20に記載の方法。
【請求項22】
前記乾燥するステップが、約0.05Torrの水の分圧を有するチャンバで行われる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記液体製剤が、糖、界面活性剤、または抗酸化剤の少なくとも1種をさらに含む、請求項1から22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記糖が、ソルビトール、スクロース、トレハロース、フルクトース、またはデキストロースから選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記界面活性剤が、Polysorbate 20またはPolysorbate 80から選択される、請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記抗酸化剤が、メチオニン、システイン、D-アルファトコフェロールアセテート、EDTA、またはビタミンEから選択される、請求項23から25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記液体製剤が、溶液または懸濁液である、請求項1から26のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2014年8月29日に出願された米国仮出願番号第62/044,051号に基づく利益を主張しており、この仮出願は、その全体が参考として本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、微細構造のアレイ及びその関連ある特色を使用して、治療剤または薬物またはワクチンを経皮投与するための、送達システム、組成物、および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロニードルのアレイは、1970年代に、皮膚を通して薬物を投与する方法として提案された。マイクロニードルまたは微細構造アレイは、通常の経皮投与が不適切である状況で、ヒトの皮膚およびその他の生体膜を通した、またはそれらに進入する薬物の通過を容易にすることができる。微細構造アレイは、後にバイオマーカーの存在について試験される間質液などの、生体膜の近くに見出された流体を、採取するのに使用することもできる。
【0004】
近年、微細構造アレイは、それらの広範な使用を経済的に実現可能にするような様式で、調製されてきた。米国特許第6,451,240号は、マイクロニードルアレイを製造する例示的な方法を開示する。アレイが十分に安価な場合、アレイは使い捨て可能なデバイスとして提供することができる。使い捨て可能なデバイスは、デバイスの完全性が従前の使用によって損なわれないので、再使用可能なデバイスより好ましく、各使用後にデバイスを再滅菌しかつ制御された貯蔵条件下でデバイスを維持するという潜在的な必要性がなくなる。さらに、微細構造アレイは、針および冷蔵の必要性がなくなるので、開発途上国で使用するのに有利である。
【0005】
ケイ素または金属を使用したマイクロニードルアレイの製作に関する数多くの初期研究にも関わらず、金属またはケイ素をベースにしたアレイよりもポリマーに、著しい利点がある。ポリマーマイクロニードルアレイを製造する方法は、米国特許第6,451,240号に記載されているが、生分解性ポリマーで主に調製されたアレイについても記載されている。例えば、米国特許第6,945,952号および米国特許出願公開第2002/0082543号および第2005/0197308号を参照されたい。ポリグリコール酸(PGA)から作製された例示的なマイクロニードルアレイの製作に関する詳細な記載は、Parkら、J. of Controlled Release、104巻:51~66頁(2005年)に見出される。マイクロニードルアレイを介したワクチン送達は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0155330号に記載されている。微小突起アレイが溶解することも、この文献に記載されている。
マイクロニードルを使用したワクチンの経皮送達は、最近、マイクロニードル上または内部にワクチンをコーティングしまたは包封することを含むことが記載されている(Prausnitzら、Curr Top Microbiol Immunol、2009年、333巻:369~393頁)。皮内投与は、筋肉内注射に比べてより低い用量で、同じ免疫応答を引き出した。Prausnitzらは、ワクチン製剤中のアジュバントの使用について何も述べていない。
不溶性アルミニウム塩は、免疫アジュバントとしてほぼ80年間使用されてきた。アジュバントとしてのアルミニウム塩の使用は、長寿命皮下結節を生成することが公知である。これらの結節は、抗原のデポーを提供することによってアジュバント活性の中心をなすと、長きにわたって推定されていた。最近の研究で、結節の形成は、アルミニウム塩をデポーとして作用させて抗原を体内に保持しまたはアジュバントとして作用させる能力に、必要ではないと結論付けられた。(Munksら、Blood、2010年、116巻(24号):5191~5199頁)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】米国特許第6,451,240号明細書
【文献】米国特許第6,451,240号明細書
【文献】米国特許第6,945,952号明細書
【文献】米国特許出願公開第2002/0082543号明細書
【文献】米国特許出願公開第2005/0197308号明細書
【文献】米国特許出願公開第2009/0155330号明細書
【非特許文献】
【0007】
【文献】Parkら、J. of Controlled Release、104巻:51~66頁(2005年)
【文献】Prausnitzら、Curr Top Microbiol Immunol、2009年、333巻:369~393頁
【文献】Munksら、Blood、2010年、116巻(24号):5191~5199頁)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
治療剤の、マイクロニードルで支援される経皮送達は、ごく最近の技術開発である。製造および貯蔵の際に、かつ投与中に、良好な製剤安定性(活性剤効力の維持を含む。)を提供しながら、皮膚を介して活性剤を効果的に送達し、それによって、伝統的な液体ベースの針をベースにした方法に付随する不快感、不便さ、または化学的な不安定さがない状態で、治療上および/または免疫原性的に有効な量の活性剤を都合良く送達するための、改善された製剤および微小突起アレイが現在求められている。
【0009】
(簡単な要旨)
以下に記載され例示される、下記の態様および実施形態は、例示的で説明的であることを意味し、範囲をいかようにも限定するものではない。
【0010】
第1の態様では、微細構造アレイを作製する方法が提供される。方法は、下記のステップ:(i)ワクチンまたはワクチン成分;不溶性の粒状アジュバント、および親水性ポリマーを、水性緩衝液または水溶液中に含む液体製剤を提供するステップ;(ii)液体製剤を、複数のキャビティを有する鋳型に分与するステップ;(iii)キャビティを満たし、または他の手法で製剤を鋳型キャビティに移動させるステップ;(iv)過剰な製剤を、鋳型の上面から除去するステップ;および(v)鋳型に存在する製剤を乾燥させるステップを含む。方法は、乾燥した製剤上に裏打ち層を配置するステップを、さらに含んでいてもよい。裏打ち層を備えたまたは備えていない、乾燥した製剤は、鋳型から取り出される。実施形態において、液体製剤は、1種または複数の共溶媒を含む。具体的な実施形態では、共溶媒は、イソプロピルアルコールおよび/またはエタノールから選択される。さらなる実施形態では、製剤を鋳型上に分与する前に、鋳型を、可溶性の気体でパージする。具体的な実施形態では、可溶性の気体はCOおよびCHから選択される。他の実施形態では、方法は、液体製剤を鋳型上に分与した後に、製剤および鋳型に圧力を加えるステップを含む。実施形態において、圧力は、過剰な製剤が鋳型表面から除去された後に加えられる。一実施形態では、大気圧よりも少なくとも約10~30psi高い圧力が加えられる。別の実施形態では、圧力が、少なくとも約5秒間から少なくとも約2分間加えられる。
【0011】
第2の態様では、微細構造アレイを作製するさらなる方法が提供される。方法は、下記のステップ:(i)ワクチンまたはワクチン成分;不溶性の粒状アジュバント、および親水性ポリマーを、水性緩衝液または水溶液中に含む液体製剤を提供するステップ;(ii)液体製剤を、複数のキャビティを有する鋳型上に分与するステップ;(iii)キャビティを満たし、または他の手法で製剤を鋳型キャビティ内に移動させるステップ;(iv)圧力を、製剤および鋳型に加えるステップ;(v)過剰な製剤を、鋳型の上面から除去するステップ;および(vi)鋳型に存在する製剤を乾燥させるステップを含む。方法は、乾燥した製剤上に裏打ち層を配置するステップを、さらに含んでいてもよい。裏打ち層を備えたまたは備えていない、乾燥した製剤は、鋳型から取り出される。実施形態において、液体製剤は、1種または複数の共溶媒を含む。具体的な実施形態では、共溶媒は、イソプロピルアルコールおよび/またはエタノールから選択される。さらなる実施形態では、製剤を鋳型上に分与する前に、鋳型を、可溶性の気体でパージする。具体的な実施形態では、可溶性の気体はCOおよびCHから選択される。一実施形態では、圧力は、過剰な製剤が鋳型表面から除去された後に加えられる。一実施形態では、大気圧よりも少なくとも約10~30psi高い圧力が加えられる。別の実施形態では、圧力が、少なくとも約5秒間から少なくとも約2分間加えられる。
【0012】
実施形態では、上記方法は、製剤で満たされた鋳型を、約5~50℃で約20分間から約2時間乾燥することを含む。さらなる実施形態では、製剤で満たされた鋳型を、約30~60分間乾燥させる。具体的な実施形態では、製剤で満たされた鋳型を、少なくとも約20分、30分、45分、60分、90分、または2時間乾燥させる。他の実施形態では、方法は、裏打ち層の製剤を乾燥させることを含む。実施形態において、裏打ち層の製剤を乾燥させることは、鋳型および/またはアレイを炉内で、約5~50℃で乾燥させることを含む。
【0013】
上記に関連した別の実施形態では、上記方法は、裏打ち基材を裏打ち層に添着することをさらに含む。例示的な裏打ち基材には、例えば感圧接着剤、通気性不織含浸感圧接着剤、および紫外線硬化接着剤をポリマー(例えば、ポリカーボネートまたはポリエステル)フィルムに含めたものが、含まれる。
【0014】
なお別の実施形態では、方法は、微細構造アレイを5~50℃で少なくとも約2~12時間乾燥することを含む、追加の乾燥ステップを含む。実施形態では、追加の乾燥ステップは、約35℃で行う。他の実施形態では、乾燥は減圧下で行われる。具体的な実施形態では、乾燥は、水の分圧が約0.05Torrであるチャンバ内で行われる。
【0015】
さらなる実施形態では、液体製剤は、糖、界面活性剤、または抗酸化剤の少なくとも1種をさらに含む。追加の実施形態では、糖は、ソルビトール、スクロース、トレハロース、フルクトース、またはデキストロースから選択される。他の実施形態では、界面活性剤は、Polysorbate 20またはPolysorbate 80から選択される。なお他の実施形態では、抗酸化剤は、メチオニン、システイン、D-アルファトコフェロールアセテート、EDTA、またはビタミンEから選択される。追加の実施形態では、液体製剤は、溶液または懸濁液である。
【0016】
第3の態様では、ほぼ平面状の基部と複数の微細構造とを含む微細構造アレイであって、少なくとも1種のワクチンまたはワクチン成分と不溶性の粒状アジュバントとを生体適合性で水溶性のマトリックス中に含むアレイが、本明細書で提供される。微細構造は、対象の皮膚に貫入すると溶解し、それによってワクチンおよび粒状アジュバントを送達する。実施形態では、ワクチンまたはワクチン成分が、少なくとも1種の抗原を含む。さらなる実施形態では、ワクチンまたはワクチン成分は、アデノウイルス、炭疽菌、ジフテリア、肝炎、Haemophilus influenza aおよび/またはb、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ、日本脳炎、ライム病、麻疹、髄膜炎菌および肺炎球菌感染症、流行性耳下腺炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、ロタウイルス、風疹、帯状疱疹、天然痘、破傷風、結核、腸チフス、水痘、または黄熱病の少なくとも1種に向けられている。
【0017】
実施形態では、粒状アジュバントは、無機塩またはポリマーである。特定の実施形態では、粒状アジュバントが無機塩であり、無機塩は、アルミニウム塩、カルシウム塩、鉄塩、またはジルコニウム塩である。特定の実施形態では、アルミニウム塩は、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、およびリン酸アルミニウムから選択される。他の特定の実施形態では、カルシウム塩がリン酸カルシウムである。
【0018】
他の実施形態では、アレイは、親水性ポリマーである少なくとも1種の構造形成ポリマーを含む。
【0019】
さらなる実施形態では、マトリックスは、1種または複数の賦形剤をさらに含む。一部の実施形態では、微細構造は、糖、界面活性剤、または抗酸化剤の少なくとも1種をさらに含む。特定の実施形態では、少なくとも1種の糖が、ソルビトール、スクロース、トレハロース、フルクトース、およびデキストロースから選択される。他の特定の実施形態では、界面活性剤が、Polysorbate 20またはPolysorbate 80から選択される。なお他の実施形態では、抗酸化剤は、メチオニン、システイン、D-アルファトコフェロールアセテート、EDTA、またはビタミンEから選択される。
【0020】
追加の実施形態では、微細構造アレイは、複数の微細構造とは反対側の平面基部に添着された、裏打ち基材をさらに含む。
【0021】
実施形態では、微細構造は、ダイヤモンド状の断面を有する。さらなる実施形態では、微細構造は、先端から裏打ち層まで少なくとも約50~500μmの高さを有する。他の実施形態では、微細構造は、約100~300μmの高さを有する。なお他の実施形態では、微細構造は、少なくとも約200μmの高さを有する。
【0022】
第4の態様では、ワクチンを投与し、または対象を免疫化する方法が提供される。方法は、本明細書に記載される微細構造アレイを対象に適用することを含み、皮膚内での肉芽腫の形成が、皮下または皮内投与を含めたワクチンの投与のその他の形態に比べて低減される。
【0023】
本発明の微細構造、アレイ、方法などの追加の実施形態は、以下の記載、図面、実施例、および請求項から明らかにされよう。前述および以下の記載から理解できるように、本明細書に記載されるそれぞれおよび全ての特色と、そのような特色の2つまたはそれ超のそれぞれおよび全ての組合せは、そのような組合せに含まれる特色が相互に矛盾しないことを前提として、本開示の範囲内に含まれる。さらに、任意の特色または特色の組合せを、本発明の任意の実施形態から特に除外してもよい。
【0024】
本発明の追加の態様および利点は、付随する実施例および図面と併せて特に考慮した場合に、以下の記載および請求項に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1図1A~1Bは、加圧して(図1A)および加圧せずに(図1B)調製した微細構造アレイの画像である。
【0026】
図2図2A~2Bは、加圧して(図2A)および加圧せずに(図2B)調製した、鋳型内で乾燥した製剤の画像である。
【0027】
図3図3は、例示的な微細構造アレイを示す図である。
【0028】
図4図4は、微細構造アレイを形成する例示的な方法を示す図である。
【0029】
図5図5A~5Eは、本明細書に記載されるアレイの微細構造に関する例示的な形状を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(詳細な説明)
微細構造アレイ、活性剤製剤、および関連ある方法の、様々な態様について、より完全に以下に記載する。しかしそのような態様は、多くの異なる形に具体化されてもよく、本明細書に記載される実施形態に限定するものではないと解釈すべきであり;むしろこれらの実施形態は、本開示が徹底して完了するように、かつその範囲を当業者に完全に伝えるように、提供される。
【0031】
本開示の実施は、他に指示しない限り、当業者の範囲内の化学、生化学、および薬理学の従来の方法を用いることになる。そのような技法は、文献で完全に説明されている。例えば;A.L.Lehninger、Biochemistry(Worth Publishers,Inc.、現行版);MorrisonおよびBoyd、Organic Chemistry(Allyn and Bacon,Inc.、現行版);J.March、Advanced Organic Chemistry(McGraw Hill、現行版);Remington:The Science and Practice of Pharmacy、A.Gennaro編、20版;Goodman&Gilman The Pharmacological Basis of Therapeutics、J.Griffith Hardman、L.L.Limbird、A.Gilman、10版を参照されたい。
【0032】
ある範囲の値が提供された場合は、その範囲の上限と下限との間に介在する各値と、支持された範囲内の任意のその他の指示されたまたは介在する値とが、本開示に包含される。例えば、1μmから8μmの範囲が示された場合、2μm、3μm、4μm、5μm、6μm、および7μmも明らかに開示され、それと共に、1μm超またはこれに等しい値の範囲と8μm未満またはこれに等しい値の範囲が開示される。
定義
【0033】
本明細書で使用される単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、文脈が他に明示しない限り、複数指示対象を含む。したがって例えば、1つの「ポリマー」と言う場合には、単一のポリマー、ならびに同じまたは異なるポリマーの2種またはそれ超を含み、1つの「賦形剤」と言う場合には、単一の賦形剤、ならびに同じまたは異なる賦形剤の2種またはそれ超を含み、以下同様である。
【0034】
本発明について記載しかつ請求項に記載する場合、以下に記載される定義に従って以下の用語を使用することになる。
【0035】
本明細書で使用される「アジュバント」は、一般に、その他の薬剤の効果を修正する薬剤を指す。特定の使用において、「アジュバント」は、ワクチンの免疫応答を修正するためワクチン製剤に含まれた薬剤を指す。
【0036】
「生分解性」は、酵素的に、非酵素的に、またはそれらの両方により分解して、通常の代謝経路によって排除され得る、生体適合性かつ/または毒物学的に安全な副生成物を生成する、天然または合成材料を指す。
【0037】
本明細書で使用される「疎水性ポリマー」は、水性溶媒に不溶性の、または不十分な可溶性のポリマーを指す。本明細書で使用される「親水性ポリマー」は、水性溶媒に可溶なまたは実質的に可溶なポリマーを指す。
【0038】
「微小突出」、「微小突起」、「微細構造」、または「マイクロニードル」という用語は、角質層またはその他の生体膜の少なくとも一部に貫入させまたは穿刺するよう適合させた要素を指すのに、同義で使用される。例えば、例示的な微細構造には、本明細書に記載されるものの他に、参照により本明細書に組み込まれた米国特許第6,219,574号に記載されたマイクロブレード、米国特許第6,652,478号に記載されているエッジ付きマイクロニードル、米国特許出願公開第2008/0269685号および米国特許出願公開第2009/0155330号に記載されている微小突出を含めてもよい。
【0039】
「任意選択の」または「任意選択で」は、続けて記載される状況が生じても生じなくてもよいことを意味し、したがってこの記載は、状況が生じる場合と状況が生じない場合とを含む。
【0040】
「実質的に」または「本質的に」は、ほぼ全体または完全であること、例えばある所与の量の90%またはそれ超を意味する。
【0041】
「経皮的な」は、局所および/または全身治療のための、皮膚の内部および/または皮膚を経た薬剤の送達を指す。同じ原理が、その他の生体膜、例えば口内(例えば、口腔粘膜)、胃腸管、血液脳関門、またはその他の体組織もしくは器官もしくは生体膜であって、手術中または腹腔鏡検査もしくは内視鏡検査などの手技の最中に露出しまたは接触可能な生体膜を通した投与に適用される。
【0042】
「水溶性」の材料は、水性溶媒に可溶であるか、または実質的に可溶であると定義され得る。「水溶性」の材料は、好ましくは、皮膚または実質的に水性の性質を持つその他の膜の、中、内部、または下で溶解する。
概要
【0043】
本開示は、少なくとも部分的に、例えば活性剤を経皮投与するために微細構造アレイに使用される、ワクチン活性剤およびアジュバントを含む生体適合性かつ水溶性のマトリックスであって、特にワクチンの投与が皮下結節を引き起こさないまたは実質的に引き起こさない、マトリックスの発見に向けられている。
微細構造アレイ
【0044】
一般に、微細構造アレイは、複数の微細構造を含む。微細構造の少なくとも一部は、(i)ワクチンとして作用する少なくとも1種の治療剤と、(ii)1種または複数のポリマーとを含む、遠位層または遠位端を含む。治療剤は、1種または複数の抗原と、1種または複数のアジュバントとを含んでいてもよい。ワクチンは、単独でまたはアジュバントと共に、抗原などのワクチン活性剤を指してもよい。アレイは、微細構造が裏打ちの一方の表面から外向きに延びる、裏打ちまたは平面基部を含んでいてもよい。典型的には、本明細書で提供される溶解する微細構造の少なくとも一部は、生体適合性かつ水溶性のポリマーマトリックスとワクチンとを含む。
【0045】
図3は、例示的な微細構造アレイ20を示す図である。アレイは、裏打ち層、基底層、または基部22に隣接して複数の微細構造24を含む。他の実施形態では、微細構造は、図3に示されるように裏打ち層の少なくとも一部と遠位先端とを含む。ワクチン成分は、少なくとも微細構造に、または少なくとも微細構造アレイの遠位部分に含有される。図3の微細構造において、各微細構造は、少なくとも1種の抗原26と、少なくとも1種のアジュバント28とを生分解性ポリマーマトリックス30中に含む。好ましくは、微細構造の少なくとも遠位部分および/または先端は、ワクチン成分を含んだ生分解性ポリマーマトリックスを含む。アレイは、裏打ち層に隣接して裏打ち基材23をさらに含んでいてもよい。微細構造は、類似のまたは異なる組成を持つ1つまたは複数の層を含んでいてもよい。実施形態では、複数の微細構造のそれぞれは、生分解性ポリマーマトリックスから少なくとも部分的に形成される。好ましくは、微細構造の少なくとも遠位部分または遠位端は、生分解性ポリマーマトリックスから形成される。生分解性ポリマーマトリックスは、少なくとも1種の構造形成ポリマーとワクチンとを含む。好ましくは、少なくとも微細構造の遠位端は、対象の皮膚に貫入すると溶解し、それによってワクチンを送達する。
【0046】
微細構造は、1種または複数の活性剤を含んでいてもよい。1つまたは複数の実施形態で、微細構造の少なくとも一部は、微細構造内の活性剤(複数可)と同じでも異なっていてもよい1種または複数の活性剤を任意選択で含有し得るコーティングを含んでいてもよい。
【0047】
一実施形態では、微小突起アレイ内の活性剤は、例えばワクチンとして使用される1種または複数のタンパク質またはペプチドである。ワクチンは、病原特異的適応免疫を誘発させることによって身体の免疫系を刺激する。ワクチンは、本明細書ではそれぞれワクチン活性剤と考えられる少なくとも1種の抗原および少なくとも1種のアジュバントを典型的には含有する。
【0048】
抗原は、免疫応答を誘発させる任意の物質でもよい。抗原は、通常は異物である。抗原の非限定的な例には、タンパク質、ペプチド、多糖、またはこれらの部分が含まれる。しばしば、ワクチンに使用される抗原は、保護が望まれる細菌、ウイルス、またはその他の微生物の少なくとも一部を含む。他の実施形態では、抗原は、細菌、ウイルス、またはその他の微生物、例えば毒素またはタンパク質によって生成されてもよい。
【0049】
アジュバントは、特定の抗原の抗原特異的免疫応答を増強する。粒状アジュバント、特に不溶性アルミニウム塩が、80年を超えて使用されてきた。不溶性粒状アジュバントの使用は、注射部位での結節の形成をもたらす。1955年の研究は、アジュバントとしてリン酸アルミニウムと共に使用した場合、オボアルブミンまたはジフテリアトキソイドの皮下注射の1日後に、結節が形成されたことを見出した(Whiteら、J Exp Med、1955年、102巻(1号):73~82頁)。数日または数週間にわたり結節内に抗原が存在すると、接種部位に結節が抗原デポーを形成し、時間と共にゆっくり抗原を放出してプライミングおよびブースティング効果をもたらすという「デポー理論」を引き起こす(Munksら、Blood、2010年、116巻(24号):5191~5199頁)。したがって結節形成は、アジュバントの動作の要件であると長い間考えられてきた。
【0050】
アジュバント結節または肉芽腫は、疼痛、痒み、局所的な皮膚の変質、および全身症状と伴う可能性がある(Avcinら、Acta Dermatoven APA、2007年、17巻(4号):182~184頁)。変質には、多毛症、湿疹、擦過創、および色素沈着を含めることができる(Avcinら)。これらの結節は、数カ月または数年間も持続する可能性がある。結節形成は、投与形態によって様々である。結節形成は、筋肉内注射に比べ、アジュバントが皮下または皮内投与によって投与される場合に一般的である(Pittman、Vaccine、2002年、S48~S50頁)。結節形成は、男性におけるよりも女性において一般的である(Pittman)。したがって、アルミニウム塩を含有するワクチンの投与は、皮下または皮内投与に好ましくなかった。
【0051】
最近、結節形成は、アルミニウム塩がアジュバントとして作用するのに必要ではないことが発見されている(Munks)。抗原提示は抗原およびアジュバントの小粒子に依存する傾向にあるが、不快感をもたらす大結節は必要ではない(Munks)。したがって本発明の微細構造のアレイは、皮下または皮内投与で抗原特異的免疫応答を高めるが結節を形成しない不溶性粒状アジュバントを提供する。
【0052】
ワクチン活性剤には、例えば、炭疽菌、ジフテリア、A型肝炎、B型肝炎、Haemophilus influenzae a型および/またはb型、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ、日本脳炎、ライム病、麻疹、髄膜炎菌、および肺炎球菌感染症、流行性耳下腺炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、ロタウイルス、風疹、帯状疱疹、天然痘、破傷風、結核、腸チフス、水痘、および黄熱病に対して使用することが米国内で認証されたもの含めることができる。活性剤は、弱毒生細菌または死滅細菌、弱毒生ウイルス、サブユニットワクチン、コンジュゲートワクチン、合成ワクチン、ウイルスベクター、多糖ワクチン、およびDNAワクチンを含んでいてもよい。炭疽菌ワクチンの中で、PA(防御抗原)、特に組換え生成された防御抗原(rPA、即ち、組換え防御抗原)を含むワクチンが特に好ましい。ある特定の、しかし非限定的な実施形態では、ワクチンの少なくとも一部が、タンパク質をベースにしたワクチンである。
【0053】
追加の薬剤には、トリ(パンデミック)インフルエンザウイルス、Campylobacter sp.、Chlamydia sp.、Clostridium botulinum、Clostridium difficile、デング熱ウイルス、E. coli、エボラウイルス、エプスタインバールウイルス、無莢膜型Haemophilus influenzae、C型肝炎、E型肝炎、帯状疱疹を含むヘルペスウイルス、HIV、リーシュマニアおよびマラリア原虫、髄膜炎菌血清群B、ニコチン、パラインフルエンザ、ブタクサアレルゲン、呼吸器発疹ウイルス(RSV)、リフトバレー熱ウイルス、SARS関連コロナウイルス、Shigella sp.、Staphylococcus aureus、A群連鎖球菌(GAS)、B群連鎖球菌(GBS)、ダニ媒介性脳炎、ベネズエラウマ脳炎、およびウエストナイルウイルスに向けられているものが含まれる。
【0054】
薬剤は、ネコ、イヌ、およびその他の小動物用ワクチンを含めて獣医学での用途で典型的に使用されるもの、ならびにウシ、ブタ、ヤギ、ウマ、ニワトリなどの家畜に使用されるものを含むことが理解されよう。獣医学用薬剤には、パルボウイルス、ジステンパーウイルス、アデノウイルス、パラインフルエンザウイルス、Bortadella bronchiseptica、Leptospira spp.、Borrelia burgdorferi、ネコヘルペスウイルス、ネコカルシウイルス、ネコ汎白血球減少症、ネコ白血病ウイルス、ネコ免疫不全ウイルス、およびChlamydia felisに向けられているものが含まれる。獣医学用薬剤には、ウイルス性呼吸器疾患(ウシ伝染性鼻気管炎-IBR、ウシウイルス性下痢-BVD パラインフルエンザ3型ウイルス-PI3、ウシ呼吸器発疹ウイルス-BRSV)、Campylobacter fetus(ビブリオ症) Leptospirosis sp.、Trichomoniasis、Moraxella bovis(流行性結膜炎)、クロストリジウム(黒脚症)、ブルセラ症、Mannheimia haemolytica、Pasteurella multocida、Haemophilus somni、Escherichia coli、アナプラズマ病、口蹄疫ウイルス(FMDV)、ブタパルボウイルス、ブタコレラ、ブタ繁殖呼吸障害症候群ウイルス(PRRS)、ブタインフルエンザ、伝染性胃腸炎ウイルス(TGE)、Staphylococcus hyicus、Actinobacillus pleuropneumonia、萎縮性鼻炎、流行性肺炎、Haemophilus parasuis、Streptococcal meningitis、Mycoplasma gallisepticum、サルモネラ、マレック病ウイルス、および伝染性気管支炎ウイルスに向けられているものがさらに含まれる。他の獣医学用薬剤には、東部/西部ウマ脳脊髄炎、ウマインフルエンザ、ポトマックウマ熱、腺疫、ウマヘルペスウイルス、およびウマウイルス性動脈炎に向けられているものが含まれる。
【0055】
本明細書に記載されるワクチンは、1種または複数の抗原と1種または複数のアジュバントとを含んでいてもよいことが理解されよう。例えば、季節性インフルエンザワクチンは、インフルエンザのいくつかの株に向けられている薬剤を、典型的には含む。多数の抗原がワクチンに含まれる場合、抗原は、1種または複数の細菌、ウイルス、または微生物に対する免疫応答を与えることに向けられていてもよい。例えば、同じ細菌、ウイルス、または微生物に特異的な複数の抗原が、ワクチンに含まれていてもよい。あるいは、異なる細菌、ウイルス、または微生物に特異的な多数の抗原が、ワクチンに含まれていてもよい。ワクチンが多数の抗原を含む場合、ワクチンは多数のアジュバントを含んでいてもよい。ワクチンに含まれるアジュバントの数は、ワクチンに含まれる、対応する抗原の数と同じでも、少なくても多くてもよい。実施形態では、単一抗原を含むワクチンは、多数のアジュバントを含んでいてもよい。
【0056】
ワクチンが広範に使用されていることに起因して、ワクチンの安定性は、特定の状況で多数のタイプのワクチンの間に選択肢がある場合に重要な懸案事項である。例えば、活性剤が熱に対して感受性がある場合、「コールドチェーン」としばしば呼ばれる、ワクチンのために温度制御されたサプライチェーンを維持することが必要である。ワクチン用のコールドチェーンは、ワクチンを2~8℃で維持することを一般に目標とする。このようにすることは、高温気候の貧困国では特に難しい。したがって、多くのワクチンでは、微小突起アレイの固相製剤が、同等の液体ワクチンを上回る高い安定性と取り扱い易さを提供する。他の実施形態では、微小突起アレイの固相製剤は、室温(例えば、20~25℃)で貯蔵するのに高い安定性と取り扱いやすさを提供する。
【0057】
微細構造アレイは、1種または複数のアジュバントも含む。一実施形態では、アジュバントは、1種または複数の不溶性粒状アジュバントである。ある特定の実施形態では、アジュバントは無機塩またはポリマーである。適切な無機塩の例には、アルミニウム塩、カルシウム塩、鉄塩、またはジルコニウム塩が含まれる。適切な塩には、水酸化物、硫酸塩、およびリン酸塩が含まれるが、これらに限定するものではない。特に、実施形態は、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、およびリン酸カルシウムを含むが、これらに限定するものではない。
【0058】
微細構造アレイは、例えば保存剤、小分子安定化剤、界面活性剤、および抗酸化剤などを含めた、生体適合性かつ水溶性マトリックスに含めるための追加の賦形剤を含んでいてもよい。
微細構造アレイの組成
【0059】
本明細書に提示される製剤および方法により使用するのに適切な、微細構造アレイの一般的特色は、参照によりその内容全体が本明細書に明らかに組み込まれる米国特許出願公開第2008/0269685号、米国特許出願公開第2009/0155330号、米国特許出願公開第2011/0006458号、および米国特許出願公開第2011/0276028号に、詳細に記載されている。好ましくは、微細構造アレイは、ほぼ平面状の基部を含み、この基部には複数の溶解する微細構造が付着され、それぞれは基部への付着点と、対象に皮膚に貫入する遠位端とを有している。
【0060】
典型的には、微細構造の少なくとも一部は、生分解性、生体受食性、生体吸収性、および/または生体適合性のポリマーマトリックスで、好ましくは生体適合性かつ水溶性のポリマーマトリックスで形成される。マトリックスで使用するのに適切な生体適合性、生分解性、生体吸収性、および/または生体受食性ポリマーには、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG-PLA、PEG-PLA-PEG、PLA-PEG-PLA、PEG-PLGA、PEG-PLGA-PEG、PLGA-PEG-PLGA、PEG-PCL、PEG-PCL-PEG、PCL-PEG-PCLのブロックコポリマー、エチレングリコール-プロピレングリコール-エチレングリコールのコポリマー(PEG-PPG-PEG、商標名Pluronic(登録商標)またはPoloxamer(登録商標))、デキストラン、ヘタスターチ、テトラスターチ、またはペンタスターチなどのヒドロキシエチルデンプン、セルロース、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na CMC)、熱感受性HPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、ポリホスファゼン、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、その他の多糖、ポリアルコール、ゼラチン、アルギネート、キトサン、ヒアルロン酸およびその誘導体、コラーゲンおよびその誘導体、ポリウレタン、およびこれらのポリマーのコポリマーおよびブレンドが含まれる。
【0061】
好ましくは、微細構造の少なくとも一部は、1種または複数の親水性の水溶性ポリマーを含む生体適合性かつ水溶性マトリックスを含む。1つまたは複数の実施形態では、微細構造の少なくとも全遠位部分は、生体適合性かつ水溶性のマトリックスを含む。好ましい親水性、水溶性のポリマーには、多糖、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、エチレングリコールとプロピレングリコールとのコポリマー(例えば、Pluronics(登録商標))、PLGAとPEGとのブロックコポリマーなどが含まれる。
【0062】
微細構造アレイの生分解性は、架橋PVP、デンプングリコール酸ナトリウム、架橋ポリアクリル酸、クロスカルメロースナトリウム、セルロース、天然および合成ゴム、多糖、またはアルギネートなどの水膨潤性ポリマーを含むことによって促進されてもよい。
【0063】
用いられるポリマー(複数可)は、様々な、ある範囲の分子量を保持していてもよい。用いられるポリマーは、典型的には多分散性であり、したがってそれらの分子量は実際には重量平均分子量である。ポリマーは、例えば少なくとも約1キロダルトン、少なくとも約5キロダルトン、少なくとも約10キロダルトン、少なくとも約20キロダルトン、少なくとも約30キロダルトン、少なくとも約50キロダルトン、または少なくとも約100キロダルトン、またはそれ超の分子量を有する。生分解性微細構造では、ポリマーの選択に応じて、より低い分子量を有する1種または複数のポリマーを含む生分解性部分(複数可)を有することが望ましいと考えられる。ポリマーにおける強度-分子量の関係は、逆相関上にあり、典型的には、より低い分子量を持つポリマーは、より低い強度を示しかつより高い生分解性を示す傾向を有し、したがってそれらのより低い機械的強度に起因して、より破断されやすくなる。一実施形態では、少なくとも遠位層は、より低い分子量、例えば約100キロダルトン未満の少なくとも1種のポリマーを含む。別の実施形態では、少なくとも遠位層は、約80キロダルトン未満の分子量を有するポリマーを含む。
【0064】
例示的な製剤は、溶解する微細構造の生体適合性かつ水溶性マトリックスが、以下の範囲:約1~1,000kDa、約5~800kDa、または約15~700kDaの1つに包含される平均分子量を有する、上述のポリマーを含むものを包含する。例えば、デキストランなどの多糖の場合、例示的な平均分子量は、1kD、40kD、60kD、および70kDを含む。ヒドロキシエチルデンブンまたはHESの場合、例示的な平均分子量は約600,000kDであり、ヒドロキシエチルデンプンの分子量は、典型的には約20kDから約2,500kDの範囲に及ぶ。ヒドロキシエチルデンプンの1つの例示的な分子量は、約450kD~約800kDである。生体適合性かつ水溶性マトリックスを調製するための例示的な多糖には、デキストラン40、デキストラン60、デキストラン70、テトラスターチ、およびヘタスターチが含まれる。
【0065】
例示的な添加剤および/または賦形剤は、微細構造のポリマーマトリックスに含まれていてもよい。適切な賦形剤には、1種または複数の安定化剤、可塑剤、界面活性剤、キレート化剤、および/または抗酸化剤が含まれるが、これらに限定するものではない。
【0066】
微小突起アレイは、1種または複数の糖を含んでいてもよい。微小突起アレイの生分解性および/または溶解可能性は、1種または複数の糖を含めることによって促進され得る。例示的な糖には、デキストロース、フルクトース、ガラクトース、マルトース、マルツロース、イソマルツロース、マンノース、ラクトース、ラクツロース、スクロース、およびトレハロースが含まれる。糖は、糖アルコールであってもよく、例えばラクチトール、マルチトール、ソルビトール、マンニトール、グリセロール、キシリトール、ガラクチトール、およびエリスリトールであってもよい。シクロデキストリン、例えばα、β、およびγシクロデキストリン、例えばヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンおよびメチル-β-シクロデキストリンを、マイクロニードルアレイで有利に使用することができる。特に好ましいのは糖アルコールであり、好ましくは非環式多価直鎖糖アルコールであり、これは上述の多糖と組み合わせた場合、多糖ポリマー成分に可塑様効果を示すことによって、活性剤成分(例えば、ペプチドおよびタンパク質またはタンパク質断片)を乾燥状態安定化させることおよび微小突起の機械的性質を高めることの両方で特に有効になるようである。これに関して1つの特に好ましい糖アルコールは、ソルビトールである。
【0067】
1種または複数の界面活性剤は、溶液の表面張力を変化させかつ/またはタンパク質の疎水性相互作用を低減させるため、流延溶液に添加されてもよい。当技術分野で公知の任意の適切な界面活性剤を、使用してもよい。例示的な界面活性剤には、Polysorbate 20およびPolysorbate 80などの乳化剤が含まれるが、これらに限定するものではない。別の実施形態では、製剤溶液または懸濁液における、溶媒の選択または溶媒の添加は、鋳型内での製剤の拡がりおよび/または投入を改善するのに使用してもよい。
【0068】
流延溶液または製剤は、鋳型全体および/または鋳型キャビティの全体および内部への、製剤の拡がりおよび移動を改善するために、1種または複数の共溶媒を含んでいてもよい。さらに共溶媒は、抗原またはアジュバントのいずれかの溶解度を、さらにまたは代わりに改善してもよい。一実施形態では、共溶媒の約1~25%が製剤に含まれる。実施形態では、共溶媒の約1~20%、1~15%、1~10%、1~5%、5~20%、5~15%、5~10%、10~20%、10~15%、または15~20%が製剤に含まれる。1つの例示的な共溶媒は、イソプロピルアルコールである。他の例示的な共溶媒には、エチルアルコール、メタノール、およびブタノールが含まれるが、これらに限定するものではない。一実施形態では、共溶媒は、鋳型表面の製剤の接触角を減少させることによって、製剤の拡がりおよび/または移動を改善する。実施形態では、接触角が約100°未満である。他の実施形態では、接触角が約90°未満である。他の実施形態では、接触角が約90から100°未満である。実施例1に記載されるように、10重量%のイソプロピルアルコールを含むことによって、鋳型に対する製剤の接触角が110度から79度に減少し、この低減は当初の角度のほぼ3分の1である。
【0069】
1種または複数の抗酸化剤を、流延溶液に添加してもよい。当技術分野で公知の任意の適切な抗酸化剤を、使用してもよい。例示的な抗酸化剤には、メチオニン、システイン、D-アルファトコフェロールアセテート、EDTA、およびビタミンEが含まれるが、これらに限定するものではない。
【0070】
本明細書に提示される微細構造製剤は、乾燥形態、例えば微細構造そのものの形態と、液体形態、例えば微細構造を調製するための形態の、両方にある製剤を包含することを意味する。一般に液体製剤は、水性溶媒中または緩衝液中に上述の成分を含む。例示的な緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩液およびヒスチジンを含む。
【0071】
遠位層(即ち、微細構造またはマイクロニードル層)は、より低い分子量を有する1種または複数のポリマーを含んでいてもよく、一方、近位層および/または裏打ちもしくは基部は、より高い分子量を有するポリマーを含んでいてもよい。遠位および/または近位部分のポリマーは、少なくとも部分的には、投与後に微細構造の少なくとも一部の分離または脱着が容易になるように、ポリマーの分子量に基づいて選択され得る。
【0072】
一般に、アレイの過半数を形成する微細構造の数は、少なくとも約50、好ましくは少なくとも約100、少なくとも約500、少なくとも約1000、少なくとも約1400、少なくとも約1600、少なくとも約2000、少なくとも約3000、または少なくとも約4000である。例えば、アレイ中の微細構造の数は、約1000から約4000まで、または約1000から約3000まで、または約2000から約4000まで、または約2000から約3500まで、または約2000から約3000まで、または約2200から約3200までの範囲に及んでもよい。微細構造の面積密度は、それらが小さいサイズであるなら、特に高くなくてもよく、例えばcm当たりの微細構造の数は、cm当たり少なくとも約50、少なくとも約250、少なくとも約500、少なくとも約750、少なくとも約1000、少なくとも約2000、または少なくとも約3000個またはそれ超であってもよい。
【0073】
アレイそのものは、いくつかの形状のいずれかを保有していてもよいが、アレイは一般に、約5ミリメートルから約25ミリメートル、または約7から約20ミリメートル、または約8から約16ミリメートルの直径を保有するようにサイズ決めされる。例示的な直径には、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、および25ミリメートルが含まれる。
【0074】
マイクロニードルおよびその他の突出のサイズは、製造技術および精密な適用例に応じて変わる。しかし一般に、実際に使用される微細構造およびその他の微小突出は、少なくとも約20から約1000ミクロン、より好ましくは約50から約750ミクロン、最も好ましくは約100から約500ミクロンの高さを有することが予測され得る。具体的な、しかし非限定的な実施形態では、微細構造は、少なくとも約100μm、少なくとも約150μm、少なくとも約200μm、少なくとも約250μm、または少なくとも約300μmの高さを有する。一般に、微小突起は、約1mm以下、約500μm以下、約300μm以下、または場合によっては約200μm以下、または150μmの高さを有することも好ましい。一般に、微小突出は、対象への、例えば哺乳動物対象へのいくつかの適切な作用点で、例えば大腿部、臀部、腕、または胴において、少なくとも部分的に皮膚の角質層内に貫入するように十分長い。微小突起は、少なくとも3:1(高さと基部の直径)、少なくとも約2:1、または少なくとも約1:1のアスペクト比を有していてもよい。
【0075】
微小突起は、多角形または円筒形を含むがこれらに限定されない任意の適切な形状を保有していてもよい。特定の実施形態は、4角錐型ピラミッドを含めたピラミッド形、漏斗形状、円筒、漏斗の先端および円筒の基部を有する漏斗と円筒形状との組合せ、六角形または菱形などの多角形の底部を持つ円錐を含む。微細構造に関する1つの例示的な形状は、多角形の底部を持つ、例えば六角形または菱形の底部を持つ円錐である。追加の可能性ある微小突起形状は、例えば米国特許出願公開第2004/0087992号に示されている。実施形態では、微細構造の形状の少なくとも一部は、実質的に円筒形、円錐形、漏斗形、またはピラミッド形であってもよい。微小突起は、場合によっては、基部に向かってより厚くなる形状、例えば、おおよそ漏斗の外観を有する微小突起を有し、またはより一般には、微小突起の直径は、微小突起の遠位端への距離に対して直線的に増大するよりも速く増大する。多角形微小突起は、基部に向かってより厚くなる形状、または半径もしくは直径が、微小突起の遠位端への距離に対して直線的に増大するよりも速く増大する形状を有していてもよいことが理解されよう。微小突起が基部に向かってより厚くなる場合、「基礎」と呼んでもよい基部に隣接する微小突起の一部は、皮膚に貫入しないように設計されてもよい。さらなる実施形態では、微細構造の少なくとも一部は、非対称断面寸法形状を有する。適切な非対称形状には、長方形、正方形、長円形、楕円形、円形、菱形、三角形、多角形、星形などが含まれるが、これらに限定するものではない。一部の実施形態では、遠位層は、一方向での断面寸法が、その他の方向での断面寸法よりも小さい寸法を有する。この構成を持つ例示的な断面寸法形状には、長方形、菱形、楕円形、および長円形が含まれるが、これらに限定するものではない(非限定的な例については図5A~5E参照)。微細構造の異なる部分および/または層は、異なる断面寸法形状を有していてもよいことが、さらに理解されよう。微細構造の少なくとも一部は、その長さに沿ってかつ/または遠位先端に、1つまたは複数のブレードまたは穿刺要素を含んでいてもよい。一部の好ましい実施形態では、微細構造の少なくとも一部は、鋭い、尖った、またはスパイク形状の遠位端を有する。
【0076】
一部の実施形態では、微細構造の形状は、先端、シャンク、漏斗に関して理解することができる。先端での角度は頂角であり-平面または円錐による夾角-約5度から約60度の値を有することができる。真っ直ぐなまたは実質的に真っ直ぐなシャンクは、特定の微細構造のデザインに存在しも存在しなくてもよい。シャンクの基部または先端では、遠位端に向かって、夾角が不連続でありまたは屈曲点を有する。夾角は、シャンクレス先端に関して頂角よりも大きい値になるように増大し、シャンクを持つ微細構造に関しては0度よりも大きくなるように増大する。この屈曲点を超える微細構造の部分を、「漏斗」と読んでもよい。図5Dおよび5Eは、先端12、シャンク14、屈曲点またはエッジ18、および漏斗16を含む種々の領域を画定する微細構造10の断面立面図の例を示す。漏斗は、アレイの形成に使用されることになる、より多くの充填量を可能にし、活性剤を含むアレイの体積または部分をより大きくすることが可能になる。図5Dにおいて、微細構造の直径は、遠位端からの距離に対して直線的に増大するよりも速く増大する。図1Aは、実施例2により形成された複数の微細構造を含む微細構造アレイを示す。図1Aの微細構造は、鋭い遠位端を有する。図5Dのように、図1Aの微細構造の直径は、遠位先端から近位端まで直線的に移動するよりも速く増大する。微細構造が基部に向かってより厚くなる場合、本明細書で「近位部分」、「裏打ち部分」、「基底部」、「基礎」、または「上方部分」と呼んでもよい基部に隣接する微細構造の一部は、皮膚に貫入しないように設計されてもよい。このように、基底部分または領域は、微細構造の貫入深さを制限するのに使用されてもよい。
【0077】
近位漏斗形状は、微細構造の所与の全長に合わせて、比較的大きい体積を微細構造の鋳型に分与するのを可能にする。近位漏斗形状は、微細構造の高さまたは活性剤を含有する微細構造の部分の高さを、比例して増加させる必要なしに、(満たすための)より大きい体積を提供し、その結果、微細構造内に、より長い薬物含有部分が得られる。したがって、近位漏斗形状は、鋳型への1回の充填で、微細構造の遠位部分でのより大きい中実体積を可能にする。その他の形状は、漏斗形上の微細構造に関する1回の充填および乾燥サイクルと同じ量の中実遠位部分を実現するための、数回の充填および乾燥サイクルを必要とする場合がある。
【0078】
1つの例示的な実施形態では、微細構造の少なくとも一部は、例えば図5Eに見られるような円筒状の漏斗形状を有する。この形状を持つ微細構造は、円筒状シャンク14と、近位端に任意選択の漏斗16とを有する。この実施形態では、微細構造の遠位先端は、典型的には、必ずしもいつもではないが、鋭い、尖った、または円錐上の遠位端12を有して、貫入を容易にかつ/または促進させる。微細構造は、近位端に漏斗形状を、遠位端と近位端との間に円筒状シャンクをさらに有していてもよい。漏斗は、「漏斗」形状を有する必要がないことが理解されよう。代わりに、漏斗セクションは、鋳型へのより大きい充填および/または微細構造の貫入の修正を可能にする、任意の形状を有していてもよい。例えば、漏斗セクションは多角形を有していてもよく、多角形の直径は、近位端への屈曲点から直線的に移動するよりも速く増大する。
【0079】
漏斗部分は、貫入の深さを制限するのに使用されてもよい。漏斗は、先端またはシャンクよりも、単位高さ当たり数倍高い体積を有するので、先端またはシャンクよりも、単位深さ当たり貫入するのに数倍高いエネルギーも必要とする。したがって所与のエネルギーでは、微細構造は、先端およびシャンクの長さ以下で貫入し得る。したがって漏斗は、貫入の深さを制限する微細構造内の設計要素として効果的に働くことができ、それによって、許容可能な感覚が確実になる。微細構造の貫入を制限しまたはその他の手法で影響を及ぼすのに、その他の近位端形状を使用してもよいことが理解されよう。このことは、近位端が、微細構造のシャフトまたは中央セクションよりも大きい直径または断面を有する場合に、特に言えることである。
【0080】
1つまたは複数の実施形態では、微細構造は、鋭い点または先端を有する。約5μmまたは2μm未満の先端直径が望ましいと考えられる。約1.5μm未満の先端直径が好ましく、約1μm未満の先端直径も好ましい。
【0081】
微小突起は、典型的には約0~500μmの間隔を空けて配置される。特定の、しかし非限定的な実施形態では、微小突起は、約0μm、約50μm、約100μm、約150μm、約200μm、約250μm、約300μm、約350μm、約400μm、約450μm、または約500μmの間隔を空けて配置される。微小突起の間の間隔は、微小突起の基部から測定されてもよく(基部から基部)、または先端から測定されてもよい(先端から先端)。
【0082】
さらなる実施形態では、微小突起の少なくとも一部は、微小突起アレイから脱着可能である。脱着可能な微小突起アレイは、参照によりそのそれぞれが本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2009/0155330号および米国特許出願第61/745,513号に記載されている。脱着可能な微小突起アレイは、アレイが多層から構成される層状化アプローチであって、微小突起がアレイの基部に付着している領域を含む層が、その他の層よりも容易に脱着可能である層状化アプローチを含むがこれに限定することのないいくつかの手法によって、実現されてもよい。
【0083】
微小突起を脱着する1つの利点は、鋭利物処分要件がなくなることであり、それに対してもう1つは、針刺し損傷がなくなることである。さらに、微小突起の脱着は、生分解性に起因してその先端が鈍化している微小突起が存在しないまたはこのような微小突起を持つ基材または基部が、皮膚に貫入しないので、誤使用、例えば注射針の共用を有利に実質的に低減しまたはなくすことができる。微小突起の脱着の別の利点は、薬物に富む先端が皮膚に溶解し、投与後にアレイには薬物が全くまたは最小限しか残らないので、薬物の誤使用が回避されることである。
【0084】
あるいは、均質材料で作製されたアレイを用いてもよく、この場合、材料は、より低いpHでより容易に分解可能である。そのような材料で作製されたアレイは、付着点付近でより容易に分解し易くなるが、その理由は、皮膚の表面により近い付着点は、微小突起の遠位端よりも低いpHにあるからである(皮膚の表面のpHは、一般に、さらに内側に向かう皮膚のpHよりも低く、pHは例えば、表面で約4.5であり、内側で約6.5から7.5である。)。
【0085】
その溶解度がpHに依存する材料は、例えば、純水に不溶性とすることができるが、酸性または塩基性のpH環境では溶解することができる。そのような材料または材料の組合せを使用して、アレイを、皮膚表面(pH約4.5)でまたは皮膚の内部で差別的に生分解するように作製することができる。前者の実施形態では、全アレイを生分解することができ、一方、後者では、アレイの微小突起部分を生分解して基部の基材を除去し廃棄することが可能になる。好ましい実施形態では、微細構造アレイは後者に該当し、アレイの微小突起部分は活性剤の投与後に溶解し生分解し、基部の基材を除去し廃棄することが可能になる。
【0086】
水性媒体中でのその分解可能性がpHに依存する材料は、例えば、医薬製剤に広く使用されている、商標名Eudragit(登録商標)の下でRohm Pharmaにより販売されているアクリレートコポリマーを利用することによって、作製されてもよい。pH依存性の溶解度を持つ材料のさらなる例は、ヒドロキシプロピルセルロースフタレートである。pH依存性の溶解度を持つ材料が、例えば経口剤形の腸溶コーティングとして使用するため開発されてきた。例えば、米国特許第5,900,252号およびRemington’s Pharmaceutical Sciences(18版、1990年)を参照のこと。
【0087】
ある場合には、本明細書に提示される微小突起アレイは、多糖、糖アルコール、および活性剤などのポリマーを含む生体適合性かつ水溶性のマトリックス層の他に、1つまたは複数の追加の層を含むことが望ましいと考えられる。多層を持つアレイがなぜ望ましいと考えられるかについて、いくつかの理由がある。例えば、微小突起アレイの全体積と比較して、微小突起そのものは、活性剤などの活性成分のより高い濃度を保有することがしばしば望ましい。このようになっているのは、例えば微小突起は、多くの場合、アレイの基部よりも、より水和した環境でより素早く溶解すると予測できるからである。さらに、アレイ適用のためのある特定のプロトコールでは、アレイは短期間にわたりそのままの可能性があり、その間に本質的にごく僅かな微小突起のみがかなりの程度まで溶解することができる。突起そのものの中に、より高い濃度の活性剤を配置する望ましさは、活性剤のコストがかかる場合に特に急務である。突起そのものの中でより高い濃度の活性を実現する1つの方法は、微小突起または微小突起のかなりの割合を含む第1の活性剤含有層と、基部または基部のかなりの割合を含む、低減したまたはゼロ濃度の活性を持つ第2の層とを有することである。
【0088】
一般に、2つまたはそれ超の異なる層、即ち、複数の微細構造または突起を含む層と、微細構造を支持する基部または裏打ち層とを含む、好ましい微細構造アレイ構成では、基部層が、生体適合性の非水溶性および/または非生分解性マトリックスを含む。微細構造アレイが皮膚に貫入すると、微細構造(先端部分)は溶解し、それによって活性剤を経皮的に送達する。基部層は、好ましくは、ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリ無水物、ポリオルトエステル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリエーテルエステル、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリエステルアミド、およびこれらのコポリマーを含む、いくつかの生体適合性の非水溶性ポリマーのいずれかを含む。例示的なポリマーには、ポリアクリレート、セルロース、ポリ(乳酸)(PLA)、ポリ(グリコール酸)(PGA)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ(酪酸)、ポリ(吉草酸)が含まれる。例示的な裏打ちまたは基部層は、ポリ-ラクチド-ポリ-グリコリド(PLGA 75/25またはPLGA 50/50)を含む。一部の実施形態では、例示的な裏打ちまたは基部層は、少なくとも約50%のラクチド含量を有するPLGAを含む。例えば、鋳型内で乾燥させたワクチン活性剤を含む製剤上に、PLGA(75/25)を含む液体裏打ち層製剤を流延することについて記載する、実施例4を参照されたい。実施形態では、裏打ちまたは基部層に使用されるポリマーは、皮膚またはその他の生体膜の内部または表面に配置したときに、少なくとも1~24時間の分解半減期を有する。
【0089】
別の実施形態では、裏打ちまたは基部層は、予備形成されかつ微細構造に適用される、接着剤またはその他の層を含む。さらなる実施形態では、裏打ち層は、鋳型内で乾燥したワクチン活性剤を含む、乾燥した製剤上に流延される、液体接着剤から形成される。これらの接着剤は、典型的には、溶媒の除去を必要とせずに硬化される。適切な接着剤には、Dymaxから入手可能なDymax(登録商標)UV硬化性1128A-M、1161-M、1162-M、1165-M、1180-M、および1187-M医療用デバイス接着剤が含まれるが、これらに限定するものではない。任意の生体適合性接着剤が、裏打ち層と共に、裏打ち層の内部で、かつ/または裏打ち層として使用するのに適切であることが理解されよう。裏打ち層は、感圧性接着剤で二重にコーティングされた、不織または多孔質フィルムであってもよい。
【0090】
微細構造アレイは、対象の角質層またはその他の膜の表面に少なくとも部分的に貫入するように、十分な機械的強度を有するべきである。異なる部位での適用には、異なる機械的強度が必要になることが、理解されよう。機械的強度を評価するための1つの方法は、実施例7に記載されるような、皮膚貫入効率(SPE)研究である。好ましくは、アレイは、約50~100%のSPEを有する。他の実施形態では、アレイは、約50~80%、約50~85%、約50~90%、約50~95%、約60~80%、約60~85%、約60~90%、約60~95%、約60~100%、約75~80%、約75~85%、約75~90%、約75~95%、約75~100%、約80~85%、約80~90%、約80~95%、約80~100%、約90~95%、および約90~100%のSPEを有する。特定の、非限定的な実施形態では、アレイは、約50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%、および100%のSPEを有する。
【0091】
好ましくは、活性剤の少なくとも約50~100%は、本明細書に記載されるMSAによって送達される。送達効率は、MSAを調製し、MSAをin vivoまたはin vitroで適用することによって、決定されてもよい。送達効率を決定するin vitro法は、MSAを水性抽出媒体に、ある時間にわたり、例えば実施例7に記載されるように30分間、浸漬させるステップを含む。次いで抽出媒体を、薬剤に関して分析する。1つの分析方法は、SEC-HPLCである。単位当たりの見掛けの送達用量、および送達効率は、下式:
見掛けの送達用量=初期薬物負荷-残留薬物
薬物送達効率%=100×見掛けの送達用量/初期薬物負荷
によって計算される。
【0092】
実施形態では、MSAは、少なくとも約50~60%、約50~70%、約50~75%、約50~80%、約50~90%、約50~95%、約50~99%、約60~70%、約60~75%、約60~80%、約60~90%、約60~95%、約60~99%、約70~75%、約70~80%、約70~90%、約70~95%、約70~99%、約75~80%、約75~90%、約75~95%、約75~99%、約80~90%、約80~95%、約80~99%、約90~95%、約90~99%、または約95~99%の送達効率を有する。特定の、非限定的な実施形態では、MSAは、少なくとも約50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、99%、または100%の送達効率を有する。
活性剤
【0093】
一般に、常にとは限らないが、微小突起アレイにおける活性剤の重量濃度は、比較的高いことが望ましいが、それは微小突起を皮膚に挿入した後に、活性剤のより高い濃度を個体に提示することが可能になるからである。アレイを形成する固形分(生体適合性かつ水溶性マトリックス)中の例示的な濃度は、下記の通りである:活性剤、例えばワクチンが、重量で少なくとも約0.1%、0.5%、1%、2%、5%、10%、15%、または20%である。より好ましくは、微細構造の突起を形成する生体適合性かつ水溶性マトリックス中の固形分の重量パーセントは、活性剤が約1~15%の範囲に及ぶ。即ち、複数の中実微小突起中の活性剤、例えばワクチンの例示的な重量パーセンテージには、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、および15%、またはそれ超が含まれる。対応する液体製剤の場合、活性剤の量は、一般に、約0.05重量%から約10重量%の範囲に及ぶことになり、または好ましくは活性剤が約0.1重量%から約5重量%に及ぶことになる。特定の、しかし非限定的な実施形態では、液体製剤中の活性剤の量は、cm当たり約0.1重量%、約0.2重量%、0.25重量%、0.3重量%、0.4重量%、0.5重量%、0.6重量%、0.7重量%、0.75重量%、0.8重量%、1重量%、2重量%、3重量%、4重量%、5重量%、6重量%、7重量%、8重量%、9重量%、または10重量%である。
【0094】
身体に送達される用量は、個体の大多数においてかなりの治療および/または免疫応答を引き出すのに適切なものである。一般に、望ましい用量は、少なくとも約0.1μg/cm、少なくとも約0.5μg/cm、少なくとも約1μg/cm、少なくとも約2μg/cm、少なくとも約5μg/cm、または少なくとも約10μg/cmである。
【0095】
あるいは活性剤は、その他の経路によって、例えば筋肉内送達される用量のパーセンテージとして測定されてもよい。例えば、その他の経路によって送達される用量、例えば注射器を介して筋肉内または皮内送達される用量の、少なくとも約1%、少なくとも約10%、少なくとも約25%、少なくとも約50%、少なくとも約75%、少なくとも約100%、少なくとも約150%、または少なくとも約200%を送達することが望ましいと考えられる。あるいは、その他の経路によって送達される用量の約200%以下、約150%以下、約100%以下、約75%以下、約50%以下、約25%以下、約10%以下、または約1%以下を送達することが望ましいと考えられる。従来の経皮パッチのように、微小突起アレイによる用量送達(DDE)は、微小突起アレイの全活性剤含量より少なくてもよい。
微小突起アレイの製造
【0096】
製造方法について詳細に記載する前に、方法は、具体的な溶媒、材料、またはデバイス構造に限定されず、したがって変更してもよいことを理解されたい。本明細書で使用される用語は、単に特定の実施形態について記載するためのものであり、限定しようとするものではないことも理解されたい。
【0097】
本明細書に提示される微小突起アレイは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0269685号に記載される、2層アレイを製作するための技法を用いることによって製作することができる。一般に、本明細書に提示される微細構造アレイは、(i)活性剤、アジュバント、および親水性ポリマーを水性緩衝液中に含む液体製剤を提供するステップ、(ii)(i)からの液体製剤を、微細構造キャビティのアレイを有する鋳型上に分与し、微細構造キャビティに満たして、製剤で満たされた鋳型を形成するステップ、および(iii)製剤で満たされた鋳型を乾燥するステップによって調製される。微細構造は、鋳型から除去されても、さらに加工されてもよい。実施形態では、鋳型を可溶性の気体でパージして、液体製剤を鋳型上に分与する。実施形態では、方法はさらに、(iv)裏打ち層を、(iii)からの乾燥した鋳型上に配置し、それによって裏打ち層が、微細構造キャビティのそれぞれへの付着点を有する基部を形成して、成型された微細構造アレイを提供するステップと、(v)(iv)からの微細構造アレイを鋳型から取り外すステップとを含む。
【0098】
例示的な製剤を使用して様々な微細構造アレイを形成する例を、実施例1~5に提示する。一般に、アレイは、(a)少なくとも1種のワクチン活性剤(例えば、1種または複数の抗原)、および少なくとも1種のアジュバントを、水性溶媒または緩衝液中で混合するステップと、(b)1種または複数の水溶性、生分解性、および/または親水性ポリマーを、水性溶媒または緩衝液中で混合するステップと;(b)活性剤/アジュバントおよびポリマー(複数可)を含む緩衝液または溶媒を混合して、ポリマー溶液または懸濁液を形成するステップと;(c)ポリマー溶液または懸濁液を、キャビティのアレイを有する鋳型の表面または内部に流延し、適用し、または分与するステップと;(d)鋳型内の微細構造のキャビティを、少なくとも部分的に満たすステップと;(e)溶液もしくは懸濁液を乾燥し、またはその他の手法で有機溶媒または有機溶媒/水溶液混合物を除去して、微細構造アレイを形成するステップとによって調製される。実施形態では、ステップ(a)および(b)を組み合わせて、活性剤、アジュバント、および1種または複数のポリマーを水性溶媒または緩衝液中で混合することにより、ポリマー溶液または懸濁液を形成する。流延溶液、製剤、およびポリマー溶液または懸濁液という用語は、本明細書では同義で使用され、その1つに対する考察または参照は、それぞれおよび全ての用語を含みかつ適用されるものとする。製剤は、界面活性剤、糖、分解増強剤、キレート化剤、および抗酸化剤を含むがこれらに限定されない賦形剤を含んでいてもよい。さらなる実施形態では、製剤は、1種または複数の共溶媒を含む。活性剤およびポリマーが別々に混合される場合、賦形剤は、活性剤および/またはポリマーと混合されてもよい。賦形剤のいくつかは活性剤と混合されてもよく、その他はポリマーと混合されることが理解されよう。さらに賦形剤は別々に混合され、活性剤溶液、ポリマー溶液、または混合した活性剤/ポリマー溶液もしくは懸濁液に添加されてもよい。実施形態では、鋳型を可溶性の気体でパージし、その後、ポリマー溶液または懸濁液を鋳型上に流延させる。方法は、鋳型表面の過剰な溶液、懸濁液、または製剤を除去するステップを、さらに含んでいてもよい。典型的には、過剰な製剤は、鋳型表面から掻き取りまたはワイプされる。過剰な製剤は、溶媒を乾燥しまたはその他の手法で除去する前に、鋳型表面から除去されてもよい。溶媒または溶媒混合物は、流延溶液、製剤、懸濁液、または溶液で満たされた鋳型を乾燥することを含むがこれらに限定することのない、任意の適切な手段によって除去されてもよい。実施形態では、流延溶液、製剤、懸濁液、または溶液で満たされた鋳型は、乾燥に適切な炉内に配置される。実施形態では、溶媒を乾燥しまたは除去するステップは、鋳型を約5℃から50℃の炉内に配置することを含む。金属などの生体適合性材料で作製された、微小突起またはマイクロニードル上のコーティングとして活性剤を存在させるのとは対照的に、微小突起そのものが活性剤を含んでいる。微細構造が基材および/または裏打ち層と一体化していない場合、微細構造は、典型的には、離型する前に接着剤で基材および/または裏打ち層に添着される。
【0099】
本明細書の方法でアレイを形成するのに使用される鋳型は、様々な方法および材料を使用して作製することができる。例示的な鋳型および鋳型を作製する方法は、例えば、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0269685号に記載されている。1つの例示的な実施形態では、鋳型は、ポリジメチルシリコーンなどのシリコーンから形成された雌型である。雌型は、マスター微小突起アレイを調製し、液体鋳型材料をマスターアレイ上に流延させることによって、典型的には形成される。異なる幾何形状を有する微細構造アレイツールを、雌型を作製するのに使用することができる(一般にポリジメチルシリコーンを使用するが必ずしもその必要はない。)。追加の雌型材料は、ポリウレタン、セラミック材料、および蝋などを含む。次いでこの型を使用して、当初のツールの幾何形状を複製する微細構造アレイ(MSA)を製作する。1つの例示的なツールは、実施例6に記載されるように、微小突起の高さが約200μmであり、基部の幅が約70μmであり、突起から突起までの間隔が約200μmであるダイヤモンド形状を保有する。鋳型を乾燥し硬化させ、その結果、マスターアレイの微小突起に対応するキャビティを含んだ鋳型が得られる。本発明の方法で使用するのに適切な鋳型は、その他の方法によって調製されてもよいことが理解されよう。
【0100】
微細構造アレイを調製する方法に戻ると、微小突出または微小突起のアレイは一般に、(a)微小突出のネガに対応したキャビティを、鋳型に設けるステップ、(b)生体適合性かつ水溶性マトリックスを形成するのに適切な成分、活性剤、および溶媒を含む溶液を、鋳型上に流延するステップ、(c)溶媒を除去するステップ、および(d)得られたアレイを鋳型から取り出すステップによって形成される。実施例1は、流延製剤に関する例示的な液体製剤を提供する。実施例1に示される製剤は、ワクチン活性剤として抗原を含まないが、1種または複数の抗原が、液体流延製剤中に典型的には含まれることになることが理解されよう。これらの液体製剤は、デキストラン、ソルビトール、およびアルミニウム塩(「alum」)の組合せをアジュバントとして含む。製剤2および4は追加として、製剤と鋳型表面との間の表面張力を低下させるのに界面活性剤としてのイソプロピルアルコールを含む。鋳型を満たすステップは、製剤の表面張力および/または粘度によって影響を受ける可能性がある。例えば、水酸化アルミニウムは極性表面を有し、無極性シリコーンの鋳型と共に使用するときに、より高い表面張力を生成する。実施例1に示される実施形態では、製剤は、イソプロピルアルコールを約10重量%含む。界面活性剤は、製剤の表面張力を低減させ、鋳型表面での製剤のより良好な流れを可能にし、それにより、製剤をより効果的にキャビティ内に流すことが可能になる。鋳型表面での製剤の接触角を低減させることにより、鋳型上での製剤の流れ抵抗が減少する。界面活性剤の添加により、製剤の接触角を低減させることができ、それによって流れが改善される。実施例1に見られるように、界面活性剤としてイソプロピルアルコールを10~15重量%含むことにより、製剤の接触角は110°から79°に低減し、その低減は31°であった(約28%の接触角低減)。実施例1に見られるように、イソプロピルアルコール(IPA)などの界面活性剤を10%含有する製剤(表1の製剤2)は、製剤と鋳型表面との間の接触角の低減によって明らかなように、IPAなしの製剤(製剤1)に比べて非常に良好に拡がる。その他の界面活性剤は、鋳型表面での製剤の接触角を低減させることが同様に予測されると考えられる。
【0101】
上述の液体活性剤製剤は、例えば、一般にワクチン活性剤、アジュバント、ポリマー、および任意選択でその他の賦形剤または添加剤を水性溶媒または緩衝液中で混合することによって、形成される。適切な水性溶媒には、水、アルコール(例えば、プロパノールおよびブタノールなどのC1からC8アルコール)、アルコールエステル、またはこれらの混合物が含まれるがこれらに限定するものではない。他の実施形態では、溶媒が非水性である。適切な非水性溶媒には、エステル、エーテル、ケトン、ナイトライト、ラクトン、アミド、炭化水素、およびそれらの誘導体、ならびにそれらの混合物が含まれるが、それらに限定するものではない。他の非限定的な実施形態では、溶媒は、アセトニトリル(ACN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水、またはエタノールから選択される。溶媒の選択は、活性剤および/またはポリマーの1つまたは複数の性質によって決定されてもよいことが理解されよう。流延溶媒は、水性および非水性溶媒の混合物を含んでいてもよいことが、さらに理解されよう。流延溶媒は、水性の混合物または非水性溶媒の混合物を含んでいてもよいことも理解されよう。異なる溶媒または溶媒混合物を、プロセスの異なる段階で使用してもよいことがさらに理解されよう。
【0102】
製剤は、鋳型表面におよび/または鋳型キャビティ内に導入されまたは分与される。次いで鋳型は、ワイピング、圧縮、および加圧などのいくつかの適切な技法のいずれかを使用して、満たされる。製剤が鋳型上に分与される場合、製剤は、任意の適切な手段によってキャビティ内に移動する。一実施形態では、製剤は鋳型表面に分与される。鋳型表面をエッジ付きツールでワイプし、製剤が鋳型全体にわたってワイプされるにつれて製剤はキャビティ内に移動する。別の実施形態では、溶液が存在している鋳型表面を覆って、溶液または製剤を、鋳型上および少なくとも部分的にキャビティ内に拡げる。なお他の実施形態では、鋳型を覆うことなく溶液を鋳型上に拡げる。過剰な溶液をワイプする、またはその他の手法で鋳型表面から除去してもよい。別の実施形態では、可溶性の気体を使用して、流延溶液をキャビティの内部またはさらに内部へと移動させる。具体的な、しかし非限定的な可溶性の気体は、COおよびCHである。
【0103】
さらなる実施形態では、鋳型を、カバーと共にまたはカバーなしで加圧して、溶液を鋳型のキャビティの内部にまたはさらに内部へと移動させる。加圧は、製剤が鋳型表面に分与される場合および/または製剤がキャビティ内に分与される場合に使用されてもよい。加圧は、流延溶液を持つ鋳型を、当技術分野で公知の加圧容器内に配置することによって、実現されてもよい。加圧では、大気圧より少なくとも約3psi、約5psi、約10psi、約14.7psi、約20psi、約30psi、約40psi、または約50psi高い圧力を用いてもよい。他の実施形態では、加圧は、大気圧よりも少なくとも約3~50psi高い圧力を用いる。他の実施形態では、加圧は、大気圧よりも少なくとも約3~40psi、約3~30psi、約3~20psi、約3~14.7psi、約3~10psi、約3~5psi、約5~50psi、約5~30psi、約5~20psi、約5~14.7psi、約5~10psi、約10~50psi、約10~30psi、約10~20psi、約10~14.7psi、約20~50psi、約20~30psi、または約30~40psi高い圧力を用いる。実施例2に記載されるようにかつ図1A~1Bおよび2A~2Bに示されるように、乾燥前に鋳型を加圧することにより、乾燥プロセスが始まる前に液体製剤をキャビティ内に押し込みまたは引き込む。図2Aに見られるように、製剤充填レベルは、加圧のないキャビティでの製剤充填レベル(図2B参照)よりも、加圧後に低下する。キャビティの、より低い充填レベルは、製剤がキャビティのさらに内部に、特にキャビティの先端に移動したことを示す。このことは、乾燥前に加圧ステップを使用して形成された微細構造を示す図1Aによって、さらに明らかにされる。図に見られるように、微細構造は、鋭い、画定されたエッジを有し、これは製剤が、遠位先端であっても完全に鋳型表面に接触したことを示している。対照的に、図1Bに見られるように、加圧ステップなしで形成された微細構造は、トランク状であり不規則であり、鋳型キャビティが製剤で満たされずに空隙が残されていることを示す。
【0104】
圧力は、製剤を鋳型キャビティ内に押し込みまたは引き込むのに適切な、ある期間にわたって加えてもよい。実施形態では、圧力は、少なくとも約5秒から約5分間加えられる。他の実施形態では、圧力は、少なくとも約5秒から4分、約5秒から3分、約5秒から2分、約5~90秒、約5~60秒、約5~30秒、約5~15秒、約30秒から約5分、約30秒から4分、約30秒から3分、約30秒から2分、約30~90秒、約30~60秒、約1~5分、約1~4分、約1~3分、約1~2分、約60~90秒、約90秒から約5分、約90秒から4分、約90秒から3分、約90秒から2分、約2~5分、約2~4分、約2~3分、約3~5分、約3~4分、または約4~5分にわたって加えられる。特定の、非限定的な実施形態では、圧力は、少なくとも約5秒、10秒、15秒、20秒、30秒、45秒、60秒、90秒、2分、3分、4分、または5分間加えられる。
【0105】
鋳型は、流延溶液の分与が改善されるようにかつ/または気泡の存在を回避しもしくは低減させるように、流延溶液を分与する前に処理されてもよい。実施形態では、流延溶液が鋳型を濡らす能力が改善されるように、鋳型またはその部分を処理する。適切な処理は、当技術分野で公知であり、例えば、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2008/0269685号に記載されている。さらに、または別に、流延溶液は、起泡を防止し、低減させ、または最小限に抑えるための成分を含んでいてもよい。1つの例示的な成分は、消泡剤である。表面処理の別の実施形態は、流延溶液または懸濁液が鋳型表面を濡らす能力を改善する物質で、鋳型の少なくとも一部をコーティングするステップを含む。非限定的な実施形態では、鋳型表面の少なくとも一部は、炭酸カルシウム、酢酸エチル、シリコーン流体、または酸素プラズマの少なくとも1種でコーティングされる。
【0106】
製剤をキャビティ内に移動させた後、鋳型に含有される液体製剤を、例えば、粘度、固形分含量、液体製剤と鋳型との間の表面相互作用など、それぞれの液体製剤の物理化学的性質に応じて、いずれか1つまたは多数の一次乾燥ステップで乾燥する。1ステップ一次乾燥では、鋳型に含有される液体製剤を、約25℃から約40℃の範囲に及ぶ温度でインキュベーターオーブン内に直接配置して、水を除去する。1ステップ乾燥は、概して20分から数時間を要する可能性がある。2ステップ乾燥プロセスにおいて、第1のステップは低速乾燥ステップであり、液体製剤で満たされた鋳型を、制御された湿度および/または圧力の下で乾燥する。一実施形態では、まず鋳型を、制御された湿度のチャンバ内に、例えば相対湿度が約10~95%または75~90%RH、温度が約5~50℃のチャンバ内に、約1分から60分間置く。別の実施形態では、鋳型を、水の分圧が約0.01mTorrから約230Torrであり温度が約5~50℃または約10~50℃であるチャンバ内で最初に乾燥する。初期乾燥ステップの後、鋳型を、約5~50℃の範囲に及ぶ温度のインキュベーターオーブン内に、約20分から数時間にわたって配置する。
【0107】
別の実施形態では、製剤を持つ鋳型を、鋳型の真下、下、または下方から乾燥する。製剤は、鋳型の実質的に真下、下、または下方から乾燥されてもよいことが理解されよう。下からの乾燥方法には、乾燥に必要な時間を短縮するという利益がある。実施形態では、微細構造の製剤を、下側から5~30分間乾燥する。他の実施形態では、製剤を、下側から5~25分、5~20分、5~15分、5~10分、10~25分、10~20分、10~15分、15~25分、15~20分、または20~25分間乾燥する。具体的な実施形態では、製剤を、下側から約5、10、15、20、25、または30分間乾燥する。実施形態では、鋳型を、約5~50℃に製剤の温度が維持されるようにまたは実質的に維持されるように加熱する。製剤は、伝導および/または放射加熱を使用して、下方から乾燥してもよい。実施形態では、鋳型表面を下方から加熱する。上述の温度、時間、および設備を含むがこれらに限定されないパラメーターは、下からの乾燥方法に適用することが企図されかつ意図されることが理解されよう。
【0108】
二次乾燥ステップ(複数可)は、減圧下で行ってもよい。乾燥方法は、参照により本明細書に組み込まれる米国公開番号(代理人整理番号091500-0501/8131.US00)にさらに記載されている。
【0109】
乾燥の後、裏打ち層は、乾燥した製剤含有鋳型上に流延させてもよく、それによって複数の微小突起に付着される。別の実施形態では、裏打ち層は、他の手法で複数の微小突起に添着させてもよい。
【0110】
一実施形態では、液体裏打ち製剤は、鋳型の表面またはキャビティの内部に分与される。液体裏打ち製剤は、1種または複数のポリマーを適切な溶媒に溶解しまたは懸濁することによって、典型的には調製される。好ましい実施形態では、1種または複数のポリマーが生体適合性である。典型的には、常にとは限らないが、ポリマーが非生分解性である。別の実施形態では、裏打ち製剤は、1種または複数の生分解性および/または非生分解性ポリマーを含んでいてもよい。適切な生分解性ポリマーは、上述の通りである。適切な非生分解性ポリマーは、当技術分野で公知であり、両親媒性ポリウレタン、ポリエーテルポリウレタン(PEU)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ(乳酸-co-グリコール酸)(PLGA)、ポリ乳酸(PLA)、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、アクリルポリマー、例えば商標名Eudragit(登録商標)で販売されているもの、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリアミド-イミド(PAI)、および/またはこれらのコポリマーを含むがこれらに限定するものではない。他の適切なポリマーは、本明細書にその全体が組み込まれる米国特許第7,785,301号に記載されている。実施形態では、微小突起の成分(即ち、製剤の成分)は、裏打ち層に使用される溶媒に溶解しない。一般に、裏打ち層を流延するのに使用される溶媒は、アセトニトリル、エタノール、イソプロピルアルコール、および酢酸エチルなどの有機溶媒である。例示的な裏打ち製剤を、実施例3に記載する。
【0111】
さらなる実施形態では、裏打ち層は、非溶媒ベースの液体接着剤である。これらの接着剤は、溶媒の除去を必要とせずに硬化されることになる。適切な接着剤には、Dymax(登録商標)UV硬化性1128A-M、1161-M、1162-M、1165-M、1180-M、および1187-M医療用デバイス接着剤が含まれるが、これらに限定するものではない。任意の生体適合性接着剤が、裏打ち層と共に、裏打ち層の内部で、かつ/または裏打ち層として使用するのに適切であることが理解されよう。この層は、感圧性接着剤で二重にコーティングされた不織または多孔質フィルムであってもよい。
【0112】
液体裏打ち製剤は、活性剤流延溶液の場合と同じまたは類似の方法によって、キャビティ内に移動させてもよい。液体裏打ち層製剤が使用される場合、裏打ち層製剤の溶媒は、乾燥プロセスによって除去される。裏打ち層を乾燥するための乾燥条件は、活性剤の安定性に影響を及ぼすことなく裏打ち層溶媒を効果的に除去することができるように、かつ/または裏打ち層を適正に(例えば、均一に)形成するように、制御されるべきである。一実施形態では、鋳型は、制御された空気流中で圧縮乾燥空気(CDA)ボックス内に配置され、次いで約5~50℃の炉内に配置される。
【0113】
裏打ち層は、典型的には、最初に圧縮乾燥空気(CDA)ボックス内で、ある期間にわたり、例えば約15分から2時間にわたり、制御された空気流で乾燥し、その後、対流炉内で、例えば35℃から80℃の範囲に及ぶ温度で、約30~90分間乾燥する。次いで裏打ち基材を、任意選択で裏打ちまたは基部層上に配置する。裏打ち基材の材料は、例えば、ポリカーボネートフィルム中の、通気性の不織感圧性接着剤または紫外線硬化性接着剤とすることができるが、多くのタイプの材料を使用することができる。図4は、ドラッグインチップ(DIT)および裏打ち層を有する微細構造を形成する、流延方法を示す図である。液体DIT溶液を、微細構造に望ましい形状の少なくとも1つのキャビティを有する鋳型上に流延する。鋳型の上面をワイプして、過剰な製剤を除去する。次いで液体DITを、制御された条件下で乾燥して溶媒を除去し、その結果、キャビティの底部または遠位端に中実DIT層が得られる。この乾燥したDIT部分は、微細構造アレイの遠位部分である。裏打ち層は、キャビティ内の残りの空間が満たされるように、かつ任意選択で裏打ち層製剤の層がキャビティ間に延びるように、流延させる。裏打ち層を乾燥させるが、このとき、得られるアレイは、複数の微細構造が裏打ち層からある角度で延びる状態で、裏打ち層を有するようにする。付着された微細構造を持つ裏打ち層を鋳型から取り出し、好ましくは、常にではないが、最終乾燥ステップに供して微細構造アレイ(MSA)を形成する。MSAは、最終乾燥ステップに供される前に鋳型から取り出されてもよいことが理解されよう。
【0114】
裏打ち層を持つ微小突起は、任意選択で基部または基材上に位置決めされてもよい。基材は、裏打ち層に加えて存在してもよくまたは裏打ち層の代わりに使用してもよい。微小突起または裏打ち層は、任意の適切な手段によって基材に付着されてもよい。1つの非限定的な実施形態では、微細構造が、接着剤を使用して基材に付着される。適切な接着剤には、アクリル接着剤、アクリレート接着剤、感圧性接着剤、両面接着テープ、両面接着コーティング付き不織または多孔質フィルム、およびUV硬化性接着剤が含まれるが、これらに限定するものではない。1つの例示的な両面テープは、3Mから入手可能な#1513二重コーティング付き医療用テープである。例示的な、しかし非限定的なUV硬化性接着剤は、1187-M UV光硬化性接着剤などの、Dymax医療用接着剤である。当技術分野で公知の任意の医療用デバイス接着剤が、適切と考えられることが理解されよう。一実施形態では、基材が通気性の不織感圧接着剤である。基材は、存在する場合には裏打ち層上に配置され、または微小突起の近位表面に配置される。基材は、微小突起に接着されまたは付着される。別の実施形態では、基材は、ポリカーボネートフィルム中のUV硬化した接着剤である。UV接着剤は、裏打ち層の最上部または微小突起の近位表面に分与され、ポリカーボネート(PC)フィルムで覆われて、接着剤を拡げかつUV融合システムを使用して硬化する。一実施形態では、UV硬化用量が約1.6J/cmである。基材を微小突起に付着しまたは接着させた後、微小突起アレイを鋳型から取り出す。アレイが裏打ち層を含む場合、基材は、微細構造に関して既に述べたように裏打ち層に付着されまたは接着されることが理解されよう。
【0115】
実施例2および4に記載されるように、ポリマーマトリックスを鋳型上に流延する。鋳型をCOでパージし、過剰な製剤を鋳型の上面から除去する。鋳型を加圧し、製剤を乾燥方法により乾燥して、活性剤(複数可)を含む微細構造アレイの遠位部分または端部を形成する。ポリマー裏打ち層を、鋳型上に流延する。裏打ち製剤を持つ鋳型を、実施例4に記載されるようにかつ上記のように乾燥する。任意選択の実施形態では、通気性の不織層および感圧性接着剤からなる裏打ち基材を、実施例5に記載されるように裏打ち層上に配置する。別の実施形態では、UV接着剤を裏打ち層上に分与し、5mLのPCフィルムなどのポリマーフィルムで覆い、UV接着剤を、UV硬化線量が1.6J/cmのUV融合システムを使用して硬化して、裏打ち基材を形成する。
【0116】
鋳型から取り出した後、微細構造アレイは、典型的には打ち抜かれて適切にサイズ決めされたセクションになり、次いで最終乾燥ステップに供して、乾燥した活性剤含有製剤から残留水分除去しかつ裏打ち層から溶媒を除去してもよい。最終乾燥ステップは、真空(約0.05Torr)中で、室温またはそれよりも高い温度、例えば35℃で、数時間という長期にわたって実行されてもよい。
【0117】
望む場合には、次いで微細構造アレイを、まとめてまたは個別に包装しまたは封止することができ、好ましくは気密パッケージに包装することができる。包装された微細構造アレイ(複数可)は、乾燥剤を含んでいてもよい。本明細書で提供される微細構造アレイは、キットの部分として提供されてもよく、このキットはアプリケータデバイスを含んでいてもよい。
微細構造アレイの特徴
【0118】
本発明の微細構造アレイは、その中に液体および乾燥形態で含有される活性剤を安定化させる(化学的一体性および活性剤効力の維持の観点から)、溶解する生体適合性かつ水溶性マトリックスを含み、さらに、良好な機械的性能および良好な貯蔵安定性を有する微細構造アレイが得られる。
【0119】
開示による例示的な微細構造アレイは、製造中および貯蔵後の両方において、有利な活性剤の安定性を実証した。例えば、生体適合性かつ水溶性マトリックスを含む活性剤は、約0.1重量%から約7重量%の範囲に及ぶ活性剤濃度で水性緩衝液に溶解した場合、活性剤粒度、化学的一体性、および活性剤効力の維持の1つまたは複数によって測定されるように、5℃で少なくとも7日間にわたる活性剤の安定性によってさらに特徴付けられる。好ましくは、微細構造アレイを調製するのに使用される液体製剤は、製造プロセス中に活性剤の一体性を維持するのに十分安定である。製剤の安定性を評価する例示的な方法を、実施例8に記載する。さらに、微細構造アレイは、好ましくは良好な室温貯蔵安定性を、長期間にわたって(即ち、少なくとも1~3カ月)保有する。例えば実施例8を参照されたい。最後に、本明細書で提供される微細構造アレイを介した例示的な活性剤の経皮投与から得られる免疫原性応答は、好ましくは、類似の液体活性剤の筋肉内投与で観察された応答と少なくとも同程度に良好である。このように、前述の内容は、本明細書で提供される微細構造アレイ、関連する製剤、および方法の、有利な特色を裏付ける。
使用方法
【0120】
本明細書に記載される方法、キット、微細構造アレイ、ならびに関連あるデバイスおよび製剤は、ヒトまたは動物対象に活性剤を経皮的に投与するために使用される。
【0121】
記載される微細構造アレイは、例えばアレイを皮膚に押し付けることによって、手作業で皮膚に適用してもよい。より好ましくは、アプリケータを使用して、微細構造アレイの皮膚へのおよび皮膚を介した適用を補助する機構を提供する。アプリケータの好ましいタイプは、バネ荷重式機構を有するものであり、それによって、バネに貯蔵されるエネルギーを用いてアレイを皮膚内に推進させる。適切な、例示的なアプリケータは、その全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2011/0276027号に記載されたものを含む。例えば、例示的なアプリケータは、典型的にはプランジャまたはピストンを含むことになり、その場合、微細構造アレイはプランジャの遠位端に位置決めされており、それによってアクチュエータ(または作動部材)が作動してプランジャを解放する。プランジャは、典型的には、解放されるまで拘束または制約位置で保持される。プランジャが解放されると、プランジャは皮膚に衝撃を与え、それによって微細構造アレイで皮膚表面を穿刺しまたは破壊することが可能になる。微細構造アレイの残りの部分は、プランジャ遠位端から自動的にまたは手作業で除去されてもよい。
【実施例
【0122】
以下の実施例は、本質的に例示であり、いか様にも限定しようとするものではない。数値(例えば、量、温度など)に関して正確さを確実にするよう努力がなされてきたが、いくらかの誤差および偏差を考慮すべきである。他に示されない限り、部は重量部であり、温度は℃を単位とし、圧力は、大気圧または大気圧付近である。
略語
API 活性医薬成分、
HPLC 高性能液体クロマトグラフィー
MSA 微細構造アレイ
SDS-PAGE ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動
SEC サイズ排除クロマトグラフィー
SPE 皮膚貫入効率
TDS 経皮送達システム
DSL 動的光散乱
IM 筋肉内
(実施例1)
活性剤を含有する液体製剤
【0123】
ワクチン活性剤の原液または製剤は、抗原アジュバントおよびポリマーを水溶液に溶解することによって調製する。糖、界面活性剤、および/または抗酸化剤を含む賦形剤も、溶媒に添加する。液体流延製剤(ここでは、ワクチン抗原を除外して示される)は、Dextran 70(医薬品級、MW70,000)、ソルビトール、およびアルミニウム塩(「alum」)を水性緩衝液に添加し、容器を、回転速度<60RPMのローラミキサ(MediMix(商標))内に室温で約3時間配置することによって、得られた溶液を穏やかに混合することによって調製する。製剤の2種は、イソプロピルアルコールなどの追加の溶媒を水性緩衝液に添加することをさらに含む。製剤は、以下の表1にまとめたように調製する。接触角の測定は、それぞれの製剤の約5μlの液滴を、シリコーン鋳型の平らな部分に分与することによって行う。液滴の画像を獲得し、液滴とシリコーン鋳型表面との間の液体の接触角を、Image Jを使用して測定した。
【表1】
(実施例2)
微細構造アレイの流延(casting)
【0124】
液体流延製剤は、実施例1により調製する。二酸化炭素をシリコーン鋳型内にパージし、その後、液体製剤を鋳型キャビティ内に充填する。COパージ後、液体製剤を鋳型上に分与させる。過剰な製剤を鋳型の上面から除去する。鋳型をペトリ皿に移し、直ぐに加圧チャンバ内に配置する。圧力(圧縮した乾燥空気)を徐々に30psiまで増大させ、30psiで90秒間維持し、その後、ゼロpsiまで徐々に減少させる。過剰な製剤を除去した後の加圧は、乾燥プロセスが開始する前に液体製剤をキャビティ内に押し込むのを助けると考えられる。初期乾燥ステップ後に加圧した状態およびしない状態で形成された微細構造アレイの例を、それぞれ図1Aおよび1Bに示す。加圧が完了した後、鋳型内の液体DITを32℃のインキュベーターオーブン内に約30分間置いて、一次乾燥を行う。ポストワイプ加圧を使用して形成された微細構造アレイは、先端までキャビティを満たした。ポスト加圧がないと、製剤はキャビティの最先端に充填されず、空隙が残され、その結果、図1Bに示されるようにトランク状の針が得られる。図2Aは、製剤を鋳型からワイプした後に加圧して調製された、鋳型内の乾燥した製剤の画像である。図2Bは、鋳型内の乾燥した製剤の画像であり、製剤は、過剰な製剤をワイプした後に加圧されていなかった。加圧により形成された微細構造は、鋳型内でより低くかつより深く、製剤が鋳型キャビティの端部(先端)まで満たされたことを示している。図2Bに見られるように、加圧なしで形成された微細構造は、鋳型内でより高く、製剤が鋳型キャビティを満たさなかったことを示している。
(実施例3)
裏打ち層用の液体製剤
【0125】
微細構造アレイ用に基底または裏打ち層を流延するのに、種々のポリマー溶液を使用してもよい。裏打ち層用の液体製剤は、1種または複数のポリマーを、約10~40重量%のポリマー濃度で溶媒または溶媒混合物に、室温でまたはほぼ室温で溶解することによって調製される。裏打ち層を流延するための例示的な液体製剤は、70重量%のアセトニトリルに溶解した30重量%のPLGA(75/25)を含む。
(実施例4)
裏打ち層を備えた微細構造アレイの流延
【0126】
微細構造は、実施例2により調製する。実施例3により調製された液体裏打ち層製剤を、鋳型上に分与する。裏打ち層製剤をワイプすることによって、薄膜を流延する。鋳型を、圧縮乾燥空気(CDA)ボックス内で約30分間、制御された空気流で乾燥させる。次いで鋳型を、45℃の対流炉内で約90分間乾燥して、裏打ち層を備えた微細構造アレイ(MSA)を形成する。
(実施例5)
裏打ち基材を備えた微細構造アレイの流延
【0127】
裏打ち基材は、裏打ち層にアプリケータデバイスを接続するのに使用されてもよい。例示的な裏打ち基材は、とりわけ、(i)裏打ち層の最上部に配置された通気性の不織感圧性接着剤と、(ii)裏打ち層上に流延されてUVにより硬化されたUV硬化性接着剤とを含む。
【0128】
裏打ち層を持つ微細構造アレイは、実施例4により調製する。通気性の不織層と感圧性接着剤とからなる裏打ち基材を、裏打ち層上に配置する。MSAを鋳型から取り出し、1または2cmのアレイに打ち抜く。最終乾燥ステップを、打ち抜かれたMSA上で行って、残存する水分の全てを、微細構造先端のAPI流延製剤から完全に除去し、裏打ち層からは残留溶媒を除去する。この最終乾燥は、35℃の減圧(約0.05Torr)下で一晩実行する。MSAを、ポリフォイルパウチ内に個々に封止する。
(実施例6)
アレイツールの調製
【0129】
異なる幾何形状を持つ微細構造アレイツールを使用して、雌型を作製することができる(一般に、ポリジメチルシリコーンを使用して)。次いでこの鋳型を使用して、当初のツールの幾何形状を複製する微細構造アレイ(MSA)を製作する。これらの実施例で使用される1つの例示的なツールは、微小突起の高さが200μm、基部の幅が70μmであり、微小突起から微小突起までの間隔が200μmの、ダイヤモンド形状を保有する。図2A~2Bは、使用中にダイヤモンド形状のキャビティを有する例示的な鋳型を示す。
(実施例7)
in vitro皮膚貫入効率
【0130】
全層ブタ皮膚を腹部から切り取り、次いでクリップし剪毛して剛毛を除去する。上述のように調製されたMSAを、アプリケータを使用して、剪毛した皮膚部位に適用することにより、各微小突起の少なくとも一部を皮膚に挿入するのに適切な力を加え、その場で約5~15分間にわたり手で保持する。適用部位を色素で染色し、写真を撮って、微細構造アレイの貫入を視覚化する。貫入を、コンピュータベースの画像解析プログラムを使用して定量する。次いで皮膚貫入効率(SPE)を、下記の通り、MSAに関して予測される微細構造の理論上の数に基づき計算する:
%SPE=100×(貫入の数/微細構造の数)。
(実施例8)
経皮によるalumのin vivo皮膚許容度
【0131】
alum含有ワクチンの筋肉内および皮下投与は一般に十分耐容性があるが、alum含有溶液の皮内注射は、皮膚内での肉芽腫の形成をもたらす可能性があることが、文献に報告されている(Vogelbruchら、Allergy、2000年、55巻:883~887頁)。in vivo皮膚許容度の研究は、MSAによる皮内投与後のalumに対する局所皮膚反応を評価するために、ミニブタで実行した。適用部位を、7日間にわたりモニターして、皮膚の刺激(紅斑/浮腫)および存在する場合には結節形成を評価した。alum MSAで処置された部位を、液体alum製剤の皮内注射器注入と比較した。投与されたalumの量は、両方の方法で同じであった。2タイプのプラセボMSA(alumを含有しない溶解可能な及び非溶解可能な微細構造を持つ)についても試験をして、製剤の賦形剤および/または皮膚に貫入する機械的作用が、観察される任意の刺激に関与するか否かを評価した。視覚的な皮膚刺激の評価および組織病理学的評価は、適用後の7日間の最中に、alum MSAで処置した部位とプラゼボMSAで処置した部位との間に明らかな相違を示さなかった。皮内注射器注入部位の全てにおいて、注射後の4日から始まり7日間まで、小さい隆起または結節を皮膚の直下に感じることができる。ID注射部位に関する組織病理学的評価は、異物反応の存在を確認した。alum MSAで処置した部位に関してまたはプラセボMSAで処置した部位のいずれかに関して、結節または異物反応は観察されなかった。
【0132】
1. (i) ワクチン、不溶性粒状アジュバント、および親水性ポリマーを水性緩衝液中に含む、液体製剤を提供するステップ、
(ii) ステップ(i)からの液体製剤を、微細構造キャビティのアレイを有する鋳型上に分与するステップであって、微細構造キャビティに満たして、製剤で満たされた鋳型を形成するステップ、
(iii) 鋳型の上面から過剰な液体製剤を除去するステップ、
(iv) 製剤で満たされた鋳型を乾燥するステップ、
(v) (v)からの乾燥した鋳型上に、裏打ち層を配置するステップであって、裏打ち層が、微細構造キャビティのそれぞれで乾燥させた製剤との付着点を有する基部を形成して、成型された微細構造アレイを提供するステップ、および
(vi) (v)からの微細構造アレイを鋳型から取り出すステップ
を含む、微細構造アレイを作製する方法。
2. ステップ(iii)の後に、製剤で満たされた鋳型に圧力を加えるステップ
をさらに含む、実施形態1の方法。
3. (i) ワクチン、不溶性粒状アジュバント、および親水性ポリマーを水性緩衝液中に含む、液体製剤を提供するステップ、
(ii) ステップ(i)からの液体製剤を、微細構造キャビティのアレイを有する鋳型上に分与し、微細構造キャビティに満たして、製剤で満たされた鋳型を形成するステップ、
(iii) 製剤で満たされた鋳型に圧力を加えるステップ、
(iv) 鋳型の上面から過剰な液体製剤を除去するステップ、
(v) 製剤で満たされた鋳型を乾燥するステップ、
(vi) (v)からの乾燥した鋳型上に、裏打ち層を配置するステップであって、裏打ち層が、微細構造キャビティのそれぞれで乾燥させた製剤との付着点を有する基部を形成して、成型された微細構造アレイを得るステップ、および
(vii) (vi)からの微細構造アレイを鋳型から取り出すステップ
を含む、微細構造アレイを作製する方法。
4. 液体製剤が共溶媒をさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~3の方法。
5. 共溶媒がイソプロピルアルコールである、組み合わせたまたは別々の実施形態1~4の方法。
6. 共溶媒がエタノールである、組み合わせたまたは別々の実施形態1~5の方法。
7. 分与するステップの前に、可溶性の気体で鋳型をパージするステップをさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~6の方法。
8. 可溶性の気体が、COおよびCHから選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態1~7の方法。
9. 圧力を加えるステップが、大気圧よりも少なくとも約10psi高い圧力を加えることを含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~8の方法。
10. 大気圧よりも少なくとも約30psi高い圧力が加えられる、組み合わせたまたは別々の実施形態1~9の方法。
11. 圧力を加えるステップが、圧力を少なくとも約5秒間から約2分間加えることを含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~10の方法。
12. 分与ステップの前に、鋳型を可溶性の気体でパージするステップをさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~11の方法。
13. 可溶性の気体がCOおよびCHから選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態1~12の方法。
14. 製剤で満たされた鋳型を乾燥するステップが、製剤で満たされた鋳型を、約5~50℃で少なくとも約30~60分間乾燥することを含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~13の方法。
15. 裏打ち層の製剤を乾燥するステップ
をさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~14の方法。
16. 裏打ち層の製剤を乾燥するステップが、約5~50℃の炉で乾燥することを含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~15の方法。
17. 裏打ち基材を裏打ち層に添着させるステップをさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~16の方法。
18. 裏打ち基材が、感圧性接着剤およびUV硬化接着剤から選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態1~17の方法。
19. 微細構造アレイを、5~50℃で少なくとも約12時間乾燥させるステップ
をさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~18の方法。
20. 乾燥するステップが約35℃でなされる、組み合わせたまたは別々の実施形態1~19の方法。
21. 乾燥するステップが減圧下で行われる、組み合わせたまたは別々の実施形態1~20の方法。
22. 乾燥するステップが、約0.05Torrの水の分圧を有するチャンバで行われる、組み合わせたまたは別々の実施形態1~21の方法。
23. 液体製剤が、糖、界面活性剤、または抗酸化剤の少なくとも1種をさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態1~22の方法。
24. 糖が、ソルビトール、スクロース、トレハロース、フルクトース、またはデキストロースから選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態1~23の方法。
25. 界面活性剤が、Polysorbate 20またはPolysorbate 80から選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態1~24の方法。
26. 抗酸化剤が、メチオニン、システイン、D-アルファトコフェロールアセテート、EDTA、またはビタミンEから選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態1~25の方法。
27. 液体製剤が、溶液または懸濁液である、組み合わせたまたは別々の実施形態1~26の方法。
28. 第1の表面およびそれとは反対側の第2の表面を有する、ほぼ平面状の基部と、
基部から外向きに延びる複数の生分解性微細構造であり、各微細構造が、基部との付着点および対象の皮膚に貫入する遠位先端を有する、複数の生分解性微細構造と
を含む微細構造アレイであって、
(i) 複数の微細構造が、ワクチンおよび不溶性の粒状アジュバントを、生体適合性かつ水溶性のマトリックス中に含み、生体適合性かつ水溶性のマトリックスが、少なくとも1種の構造形成ポリマーを含み、
(ii) 基部が、生体適合性の非水溶性ポリマーマトリックスを含み、
微細構造は、対象の皮膚に貫入すると溶解し、それによってワクチンおよび粒状アジュバントを送達する微細構造アレイ。
29. ワクチンが少なくとも1種の抗原を含む、実施形態28の微細構造アレイ。
30. ワクチンが、アデノウイルス、炭疽菌、ジフテリア、肝炎、Haemophilus influenza aおよび/またはb、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ、日本脳炎、ライム病、麻疹、髄膜炎菌および肺炎球菌感染症、流行性耳下腺炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、ロタウイルス、風疹、帯状疱疹、天然痘、破傷風、結核、腸チフス、水痘、または黄熱病の少なくとも1種に向けられている、組み合わせたまたは別々の実施形態28~29の微細構造アレイ。
31. 粒状アジュバントが、無機塩またはポリマーである、組み合わせたまたは別々の実施形態28~30の微細構造アレイ。
32. 無機塩が、アルミニウム塩、カルシウム塩、鉄塩、またはジルコニウム塩である、組み合わせたまたは別々の実施形態28~31の微細構造アレイ。
33. アルミニウム塩が、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、およびリン酸アルミニウムから選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態28~32の微細構造アレイ。
34. カルシウム塩がリン酸カルシウムである、組み合わせたまたは別々の実施形態28~33の微細構造アレイ。
35. 構造形成ポリマーが親水性ポリマーである、組み合わせたまたは別々の実施形態28~34の微細構造アレイ。
36. 生体適合性かつ水溶性のマトリックスが、1種または複数の賦形剤をさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態28~35の微細構造アレイ。
37. 複数の微細構造が、糖、界面活性剤、または抗酸化剤の少なくとも1種をさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態28~36の微細構造アレイ。
38. 少なくとも1種の糖が、ソルビトール、スクロース、トレハロース、フルクトース、およびデキストロースから選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態28~37の微細構造アレイ。
39. 界面活性剤が、Polysorbate 20またはPolysorbate 80から選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態28~38の微細構造アレイ。
40. 抗酸化剤が、メチオニン、システイン、D-アルファトコフェロールアセテート、EDTA、またはビタミンEから選択される、組み合わせたまたは別々の実施形態28~39の微細構造アレイ。
41. 複数の微細構造とは反対側で平面状の基部に添着された裏打ち基材をさらに含む、組み合わせたまたは別々の実施形態28~40の微細構造アレイ。
42. 微細構造がダイヤモンド形の断面を有する、組み合わせたまたは別々の実施形態28~41の微細構造アレイ。
43. 微細構造が、先端から裏打ち層まで少なくとも約50~500μmの高さを有する、組み合わせたまたは別々の実施形態28~42の微細構造アレイ。
44. 微細構造が、約100~300μmの高さを有する、組み合わせたまたは別々の実施形態28~43の微細構造アレイ。
45. 微細構造が、少なくとも約200μmの高さを有する、組み合わせたまたは別々の実施形態28~44の微細構造アレイ。
46. 組み合わせたまたは別々の実施形態28~45の微細構造アレイを適用するステップであって、皮膚内での肉芽腫の形成が、注射器または針による皮内または皮下投与に比べて低減されるステップ
を含む、対象にワクチンを投与する方法。
47. 皮下投与が筋肉内である、実施形態46の方法。
【0133】
本発明は、例えば、以下を提供する:
(項目1)
(i) ワクチン、不溶性粒状アジュバント、および親水性ポリマーを水性緩衝液中に含む、液体製剤を提供するステップ、
(ii) ステップ(i)からの前記液体製剤を、微細構造キャビティのアレイを有する鋳型上に分与するステップであって、前記微細構造キャビティに満たして、製剤で満たされた鋳型を形成するステップ、
(iii) 前記鋳型の上面から過剰な液体製剤を除去するステップ、
(iv) 前記製剤で満たされた鋳型を乾燥するステップ、
(v) (v)からの前記乾燥した鋳型上に、裏打ち層を配置するステップであって、前記裏打ち層が、前記微細構造キャビティのそれぞれで乾燥させた前記製剤への付着点を有する基部を形成して、成型された微細構造アレイを提供するステップ、および
(vi) (v)からの前記微細構造アレイを前記鋳型から取り出すステップ
を含む、微細構造アレイを作製する方法。
(項目2)
前記液体製剤が、少なくとも1種の共溶媒をさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記共溶媒がイソプロピルアルコールである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記共溶媒がエタノールである、項目2に記載の方法。
(項目5)
前記分与するステップの前に、可溶性の気体で前記鋳型をパージするステップをさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目6)
前記可溶性の気体が、CO およびCH から選択される、項目5に記載の方法。
(項目7)
ステップ(iii)の後に、前記製剤で満たされた鋳型に圧力を加えるステップ
をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目8)
圧力を加えるステップが、大気圧よりも少なくとも約10psi高い圧力を加えることを含む、項目7に記載の方法。
(項目9)
大気圧よりも少なくとも約30psi高い圧力を加える、項目7に記載の方法。
(項目10)
圧力を加えるステップが、圧力を少なくとも約5秒間から約2分間加えることを含む、項目7から9に記載の方法。
(項目11)
(i) ワクチン、不溶性粒状アジュバント、および親水性ポリマーを水性緩衝液中に含む、液体製剤を提供するステップ、
(ii) ステップ(i)からの前記液体製剤を、微細構造キャビティのアレイを有する鋳型上に分与するステップであって、前記微細構造キャビティに満たして、製剤で満たされた鋳型を形成するステップ、
(iii) 前記製剤で満たされた鋳型に圧力を加えるステップ、
(iv) 前記鋳型の上面から過剰な液体製剤を除去するステップ、
(v) 前記製剤で満たされた鋳型を乾燥するステップ、
(vi) (v)からの前記乾燥した鋳型上に、裏打ち層を配置するステップであって、前記裏打ち層が、前記微細構造キャビティのそれぞれで乾燥させた前記製剤への付着点を有する基部を形成して、成型された微細構造アレイを提供するステップ、および
(vii) (vi)からの前記微細構造アレイを前記鋳型から取り出すステップ
を含む、微細構造アレイを作製する方法。
(項目12)
前記液体製剤が、少なくとも1種の共溶媒をさらに含む、項目11に記載の方法。
(項目13)
前記共溶媒がイソプロピルアルコールである、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記共溶媒がエタノールである、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記分与するステップの前に、可溶性の気体で前記鋳型をパージするステップをさらに含む、項目11から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記可溶性の気体が、CO およびCH から選択される、項目15に記載の方法。
(項目17)
圧力を加えるステップが、大気圧よりも少なくとも約10psi高い圧力を加えることを含む、項目11から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
圧力を加えるステップが、大気圧よりも少なくとも約30psi高い圧力を加えることを含む、項目11から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
圧力を加えるステップが、圧力を少なくとも約5秒間から約2分間加えることを含む、項目11から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記製剤で満たされた鋳型を乾燥するステップが、前記製剤で満たされた鋳型を、約5~50℃で少なくとも約30~60分間乾燥することを含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目21)
前記裏打ち層の製剤を乾燥するステップ
をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目22)
前記裏打ち層の製剤を乾燥するステップが、約5~50℃の炉で乾燥することを含む、項目21に記載の方法。
(項目23)
裏打ち基材を前記裏打ち層に添着させるステップをさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目24)
前記裏打ち基材が、感圧性接着剤およびUV硬化接着剤から選択される、項目23に記載の方法。
(項目25)
前記微細構造アレイを、5~50℃で少なくとも約12時間乾燥させるステップ
をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目26)
前記乾燥するステップが約35℃でなされる、項目25に記載の方法。
(項目27)
前記乾燥するステップが減圧下で行われる、項目25または26に記載の方法。
(項目28)
前記乾燥するステップが、約0.05Torrの水の分圧を有するチャンバで行われる、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記液体製剤が、糖、界面活性剤、または抗酸化剤の少なくとも1種をさらに含む、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目30)
前記糖が、ソルビトール、スクロース、トレハロース、フルクトース、またはデキストロースから選択される、項目29に記載の方法。
(項目31)
前記界面活性剤が、Polysorbate 20またはPolysorbate 80から選択される、項目29または30に記載の方法。
(項目32)
前記抗酸化剤が、メチオニン、システイン、D-アルファトコフェロールアセテート、EDTA、またはビタミンEから選択される、項目29から31のいずれか一項に記載の方法。
(項目33)
前記液体製剤が、溶液または懸濁液である、前記項目のいずれかに記載の方法。
(項目34)
第1の表面およびそれとは反対側の第2の表面を有する、ほぼ平面状の基部と、
前記基部から外向きに延びる複数の生分解性微細構造であって、各微細構造が、前記基部との付着点および対象の皮膚に貫入する遠位先端を有する、複数の生分解性微細構造とを含む微細構造アレイであって、
(i) 前記複数の微細構造が、ワクチンおよび不溶性の粒状アジュバントを、生体適合性かつ水溶性のマトリックス中に含み、前記生体適合性かつ水溶性のマトリックスが、少なくとも1種の構造形成ポリマーを含み、
(ii) 前記基部が、生体適合性の非水溶性ポリマーマトリックスを含み、
前記微細構造は、前記対象の皮膚に貫入すると溶解し、それによって前記ワクチンおよび前記粒状アジュバントを送達する
微細構造アレイ。
(項目35)
前記ワクチンが少なくとも1種の抗原を含む、項目34に記載の微細構造アレイ。
(項目36)
前記ワクチンが、アデノウイルス、炭疽菌、ジフテリア、肝炎、Haemophilus influenza aおよび/またはb、ヒトパピローマウイルス、インフルエンザ、日本脳炎、ライム病、麻疹、髄膜炎菌および肺炎球菌感染症、流行性耳下腺炎、百日咳、ポリオ、狂犬病、ロタウイルス、風疹、帯状疱疹、天然痘、破傷風、結核、腸チフス、水痘、または黄熱病の少なくとも1種に向けられている、項目34または35に記載の微細構造アレイ。
(項目37)
前記粒状アジュバントが、無機塩またはポリマーである、項目34から36のいずれか一項に記載の微細構造アレイ。
(項目38)
前記無機塩が、アルミニウム塩、カルシウム塩、鉄塩、またはジルコニウム塩である、項目37に記載の微細構造アレイ。
(項目39)
前記アルミニウム塩が、水酸化アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム、およびリン酸アルミニウムから選択される、項目38に記載の微細構造アレイ。
(項目40)
前記カルシウム塩がリン酸カルシウムである、項目38に記載の微細構造アレイ。
(項目41)
前記構造形成ポリマーが親水性ポリマーである、項目34から40のいずれか一項に記載の微細構造アレイ。
(項目42)
前記生体適合性かつ水溶性のマトリックスが、1種または複数の賦形剤をさらに含む、項目34から41のいずれか一項に記載の微細構造アレイ。
(項目43)
前記複数の微細構造が、糖、界面活性剤、または抗酸化剤の少なくとも1種をさらに含む、項目34から42のいずれか一項に記載の微細構造アレイ。
(項目44)
前記少なくとも1種の糖が、ソルビトール、スクロース、トレハロース、フルクトース、およびデキストロースから選択される、項目43に記載の微細構造アレイ。
(項目45)
前記界面活性剤が、Polysorbate 20またはPolysorbate 80から選択される、項目43に記載の微細構造アレイ。
(項目46)
前記抗酸化剤が、メチオニン、システイン、D-アルファトコフェロールアセテート、EDTA、またはビタミンEから選択される、項目43に記載の微細構造アレイ。
(項目47)
前記複数の微細構造とは反対側で平面状の基部に添着された裏打ち基材をさらに含む、項目34から46のいずれか一項に記載の微細構造アレイ。
(項目48)
前記微細構造がダイヤモンド形の断面を有する、項目34から47のいずれか一項に記載の微細構造アレイ。
(項目49)
前記微細構造が、先端から前記裏打ち層まで少なくとも約50~500μmの高さを有する、項目34から48のいずれか一項に記載の微細構造アレイ。
(項目50)
前記微細構造が、約100~300μmの高さを有する、項目49に記載の微細構造アレイ。
(項目51)
前記微細構造が、少なくとも約200μmの高さを有する、項目49に記載の微細構造アレイ。
(項目52)
項目34から51のいずれか一項に記載の微細構造アレイを適用するステップであって、皮膚内での肉芽腫の形成が、注射器または針による皮内または皮下投与に比べて低減されるステップ
を含む、対象にワクチンを投与する方法。
(項目53)
前記皮下投与が筋肉内である、項目52に記載の方法。
いくつかの例示的な態様および実施形態について、これまで論じてきたが、当業者なら、それらのある特定の修正、置換え、付加、およびそれらの部分組合せが理解されよう。したがって、以下の添付される請求項および以後導入される請求項は、それらの真の精神および範囲内にあるように、そのような修正、置換え、付加、および部分組合せの全てを含むと解釈されるものとする。
【0134】
本明細書で述べた全ての特許、特許出願、および刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。しかし、明確な定義を含有する特許、特許出願、または刊行物が参照により組み込まれる場合、それらの明確な定義は、それらが見出される組み込まれた特許、特許出願、または刊行物に適用され、必ずしも本出願の文章、特に本出願の請求項に適用される必要はなく、その場合には、本明細書で提供された定義が取って代わられることを理解すべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E