(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】電子回路を収容するための多層構造および関連する製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20220722BHJP
B29C 39/20 20060101ALI20220722BHJP
B32B 7/00 20190101ALI20220722BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
B29C39/20
B32B7/00
(21)【出願番号】P 2017552240
(86)(22)【出願日】2015-12-29
(86)【国際出願番号】 FI2015050949
(87)【国際公開番号】W WO2016107983
(87)【国際公開日】2016-07-07
【審査請求日】2018-11-29
【審判番号】
【審判請求日】2020-08-27
(32)【優先日】2014-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】516089669
【氏名又は名称】タクトテク オーユー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100126354
【氏名又は名称】藤田 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】ニスカラ,パーヴォ
(72)【発明者】
【氏名】サースキー,ヤルモ
(72)【発明者】
【氏名】ラーッパナ,パシ
(72)【発明者】
【氏名】ヘイッキネン,ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】シッパリ,ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】トルヴィネン,ヤルッコ
(72)【発明者】
【氏名】ケラーネン,アンティ
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】矢澤 周一郎
【審判官】久保 克彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-244776(JP,A)
【文献】特開平11-163499(JP,A)
【文献】久保公弘,スチレン系熱可塑性エラストマーの応用,日本ゴム協会誌,2013年,第86巻,第10号,p.309-314
【文献】森下義弘,アクリル系熱可塑性エラストマーの応用展開,日本ゴム協会誌,2013年,第86巻,第10号,p.321-326
【文献】中林裕晴,イソブチレン系熱可塑性エラストマーの基本特性と応用事例,日本ゴム協会誌,2010年,第83巻,第9号,p.284-288
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 27/00
B29C 39/20
B32B 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子回路
(electronics)を収容するための可撓性基板フィルムと、
前記可撓性基板フィルムに設けられたいくつかの電気素子と、
前記可撓性基板フィルムの第1の表面上の保護層と
、を備え
る電子デバイスのための多層構造であって、
前記可撓性基板フィルムの前記第1の表面
の反対側
の前記可撓性基板フィルムの第2の表面上に
、プラスチック層がモールド成型されており、
前記可撓性基板フィルムに変形を含む物理的な偏位を
生じさせており、
前記保護層が、前記いくつかの電気素子の位置
で前記保護層を介して行われる視知覚および触覚の検査を含む外部知覚から
、前記可撓性基板フィルムの前記物理的な偏位をマスクするように、かつ前記可撓性基板フィルムに対向する表面
の反対側
にある前記保護層の外側表面における前記可撓性基板フィルムの前記物理的な偏位に起因する表面突出部を低減するように
、構成されており、
前記保護層は
、前記いくつかの
電気素子が設けられた
前記可撓性基板フィルムの前記第2の表面上にモールド成型された前記プラスチック層を有する前記可撓性基板フィルムの表面プロファイルの局所的な前記変形
に、前記保護層と前記可撓性基板フィルムとのインタフェースで、適合するように構成された
、熱可塑性エラストマーを含む弾性材料を
備える、
ことを特徴とする、電子デバイスのための多層構造。
【請求項2】
前記可撓性基板フィルムの前記第1の表面が少なくとも前記電気素子の一部を備える、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記可撓性基板フィルムの前記第2の表面が少なくとも前記電気素子の一部を備える、請求項1または2に記載の構造。
【請求項4】
前記保護層が、電気素子をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の構造。
【請求項5】
前記保護層が、前記偏位をマスクする前記保護層の着色を含み、前記着色が前記可撓性基板フィルムの着色に従って行われる、請求項1から4のいずれか一項に記載の構造。
【請求項6】
前記保護層が前記偏位を覆い隠すように少なくとも部分的に半透明または不透明である、請求項1から5のいずれか一項に記載の構造。
【請求項7】
前記保護層および/またはモールド成型されたプラスチック層が可撓性である、請求項1から6のいずれか一項に記載の構造。
【請求項8】
前記可撓性基板フィルムが、熱可塑性材料、プラスチック、ポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、MS樹脂、PET、ガラス、ポリイミド、および金属からなる群から選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の構造。
【請求項9】
前記保護層が、熱可塑性材料、TPE(熱可塑性エラストマー)、プラスチック、金属、革、生物学的材料、および繊維材料からなる群から選択された少なくとも1つの材料を含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の構造。
【請求項10】
前記保護層が、衝撃、放射、光、熱、冷気、水分、および汚れからなる群から選択された少なくとも1つの要素に対して前記可撓性基板フィルムを保護するように構成されている、請求項1から9のいずれか一項に記載の構造。
【請求項11】
前記保護層が、着色、グラフィックス、グラフィカルなパターン、光の外部結合または反射パターン、記号、質感表現、および数値表示からなる群から選択された少なくとも1つの表示用、教示用、または装飾的な要素を含む、請求項1から10のいずれか一項に記載の構造。
【請求項12】
前記電気素子が、導体、トランジスター、ダイオード、抵抗器、キャパシタ、集積回路、発光素子、光検出素子、処理素子、メモリ素子、センサ、通信素子、電子回路サブアセンブリー、サブシステム、およびコネクターからなる群から選択された少なくとも1つの素子を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の構造。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の前記構造を備える電子
デバイス。
【請求項14】
電子回路を収容するため
の可撓性基板フィルムを得るステップであって、
前記可撓性基板フィルムの第1の表面上に保護層が設けられており、前記保護層
が、前記可撓性基板フィルムにさらに設けられたいくつかの電気素子
の位置
で前記保護層を介して行われる視知覚および触覚の検査を含む外部知覚から
、変形を含む前記可撓性基板フィルムの物理的な偏位をマスクするように、かつ前記可撓性基板フィルムに対向する表面
の反対側
にある前記保護層の外側表面における前記可撓性基板フィルムの前記物理的な偏位に起因する表面突出部を低減するように
、構成されており、このように構成された
前記保護層が
、前記いくつかの
電気素子が設けられた
前記可撓性基板フィルムの第2の表面上にモールド成型され
たプラスチック層を有する前記可撓性基板フィルムの表面プロファイルの局所的な前記変形
に、前記保護層と前記可撓性基板フィルムとのインタフェースで、適合するように構成された
、熱可塑性エラストマーを含む弾性材料を備える
、ことを特徴とする、ステップと、
前記第1の表面
の反対側
の前記可撓性基板フィルムの
前記第2の表面上に、
前記プラスチック層をモールド成型するステップであって、前記物理的な偏位もまた生成するステップと、を含む、電子デバイスのための多層構造を製造するための方法。
【請求項15】
前記基板上のいくつかの装飾的な、表示用の、もしくは教示用のフィーチャをさらに含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
一般に、本発明は、電子回路に関する。詳細には、限定することなく、本発明は、可撓性基板上に電子回路を備える多層構造の製造に関係する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子回路および電子製品との関連で様々な異なる多層構造が存在する。多層のソリューションは、熱成形、モールド成型、接着剤、熱および/または圧力に基づくラミネート加工などを使用して製造されることがある。モールド内装飾(IMD)/モールド内ラベリング(IML)は、構造内部に所望の着色、例えば、グラフィカルなパターンを組み込むために利用されることがある。
【0003】
多層構造を求める動機または要求は、関連する使用状況と同程度に多様である場合がある。決定されたソリューションが最終的に多層の性質を示す場合、サイズ節約、軽量化、コスト節約、または単なる構成部品の効率的な集積化を求める場合が比較的多い。ひいては、関連付けられた使用シナリオは、製品パッケージまたは食品ケーシング、装置ハウジング、ディスプレイ、検出器またはセンサ、車両インテリア、アンテナ、ラベルなどの視覚的なデザインに関連することがある。
【0004】
電子部品、IC(集積回路)および導体などの電子回路は、一般に複数の異なる技法によって多層構造内へ、または多層構造上に設けられることがある。当然、利用可能な表面実装デバイス(SMD)などの既製の電子回路が最終的に多層構造の内側または外側の層を形成する基板に取り付けられることもある。加えて、用語「印刷された電子回路」に該当する技術は、実際に、関連付けられた基板に直接電子回路を生成するために適用されることがある。用語「印刷された」は、この場合、限定されないが、電子/電気素子を生成することができるスクリーン印刷、フレキソ印刷、およびインクジェット印刷を含む、様々な印刷技法を指す。
【0005】
電子回路がいくつかの周囲の材料層間に埋め込まれるように、電子回路が多層構造内に含まれる場合、各層と電子回路との間、例えば、電子回路の基板と実際の取り付けられた、または印刷された電子回路との間のインタフェースが影響を受け、これによって材料の変形および汚れが生じる。これらの現象は、多くの場合、構造の外側からユーザが気付くことができる。例えば、結果として生じる審美的および触覚的不連続、または「エラー」、例えば、多層構造内部の知覚可能で急な色変化、および内部変形から発生する多層構造の表面の意図しない粗さまたは凹凸は、それぞれ、様々な形でユーザを困惑させることがあり、多層構造を含む全体的な製品の有用性、耐久性、および品質印象(実際に品質ではないとしても、品質を評価するために使用される技術的属性に応じて同様に品質である可能性がある)を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、埋め込まれた電子回路を備える多層構造に関連付けられた上記の欠点を少なくとも緩和することである。
【0007】
本目的は、本発明による多層構造および関連する製造方法の実施形態によって実現される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の[1]から[21]を含む。
[1]電子回路を収容するための可撓性基板フィルム(102)と、
好ましくは印刷された電子回路および/または表面実装によって、上記可撓性基板フィルムに設けられたいくつかの電気素子(204、206)と、
上記可撓性基板フィルムの少なくとも第1の表面(102A)上の保護層(104)であって、実質的に、上記いくつかの素子の位置で、凹凸のある表面プロファイルまたは着色などの、上記基板の知覚可能な物理的な偏位(302、304)を、上記保護層を介して行われる外部知覚、好ましくは視知覚および/または触覚の検査からマスクするように構成された、保護層(104)と、
上記第1の表面の反対側の、上記可撓性基板フィルムの少なくとも第2の表面(102B)上にモールド成型されたプラスチック層(106)と、
備える、電子デバイスのための多層構造(101B、101C、200、300)。
[2]上記可撓性基板フィルムの上記第1の表面が少なくとも上記電気素子の一部を備える、上記[1]に記載の構造。
[3]上記可撓性基板フィルムの上記第2の表面が少なくとも上記電気素子の一部を備える、上記[1]または[2]に記載の構造。
[4]上記保護層が、好ましくは上記保護層上に印刷された電気素子、任意選択で導体をさらに備える、上記[1]から[3]のいずれか一項に記載の構造。
[5]上記保護層が、上記保護層と上記可撓性基板フィルムとのインタフェースで、上記いくつかの素子が設けられた、上記第2の表面上にモールド成型された上記プラスチック層を有する、上記可撓性基板フィルムの上記表面プロファイルと適合する(conform to)ように弾性材料を含む、上記[1]から[4]のいずれか一項に記載の構造。
[6]上記保護層が上記偏位をマスクするように着色されている、上記[1]から[5]のいずれか一項に記載の構造。
[7]上記保護層の上記着色が上記偏位を任意選択でカラーパターンによって覆い隠すように構成されている、上記[6]に記載の構造。
[8]上記保護層の上記着色が実質的に上記フィルムの上記着色に続いて行われる、上記[6]または[7]に記載の構造。
[9]上記保護層が上記偏位を覆い隠すように少なくとも部分的に半透明または不透明であり、任意選択で、所定の波長を考慮して光学的に実質的に透明な窓または領域をさらに備える、上記[1]から[8]のいずれか一項に記載の構造。
[10]上記保護層が、任意選択でいくつかの突出部、隆起部、溝、くぼみ、表面浮彫、スケールパターン、および/またはノッチを有する、凹凸のある表面プロファイルを備える、上記[1]から[9]のいずれか一項に記載の構造。
[11]上記保護層および/またはモールド成型された層が可撓性であり、好ましくは上記全体の多層構造も可撓性である、上記[1]から[10]のいずれか一項に記載の構造。
[12]上記可撓性基板フィルムが、熱可塑性材料、プラスチック、ポリマー、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、MS樹脂、PET、ガラス、ポリイミド、および金属からなる
群から選択された少なくとも1つの材料を含む、上記[1]から[11]のいずれか一項に記載の構造。
[13]上記保護層が、熱可塑性材料、TPE(熱可塑性エラストマー)、プラスチック、金属、革、生物学的材料、および繊維材料からなる群から選択された少なくとも1つの材料を含む、上記[1]から[12]のいずれか一項に記載の構造。
[14]上記保護層が、衝撃、放射、光、熱、冷気、水分、および汚れからなる群から選択された少なくとも1つの要素に対して上記可撓性基板フィルムを保護するように構成されている、上記[1]から[13]のいずれか一項に記載の構造。
[15]上記保護層が、着色、グラフィックス、グラフィカルなパターン、光の外部結合または反射パターン(例えば、表面浮彫パターン)、記号、質感表現、および数値表示からなる群から選択された少なくとも1つの表示用、教示用、または装飾的な要素を含む、上記[1]から[14]のいずれか一項に記載の構造。
[16]上記電気素子が、導体、トランジスター、ダイオード、抵抗器、キャパシタ、集積回路、発光素子、光検出素子、処理素子、メモリ素子、センサ、通信素子、電子回路サブアセンブリー、サブシステム、およびコネクターからなる群から選択された少なくとも1つの素子を含む、上記[1]から[15]のいずれか一項に記載の構造。
[17]上記可撓性基板フィルムが約300μm未満の厚さ、好ましくは約200μm未満の厚さ、最も好ましくは約150μm未満の厚さである、上記[1]から[16]のいずれか一項に記載の構造。
[18]上記[1]から[17]のいずれか一項に記載の上記構造を備える電子機器、任意選択で、リストップ機器(wristop device)、アームバンド機器、またはそれらの機器のための他のポータブルコンピューターもしくはコントローラ。
[19]上記可撓性基板フィルムの少なくとも第1の表面上に保護層が設けられた(412)、電子回路を収容するための可撓性基板フィルムを得るステップ(404)であって、上記保護層が、凹凸のある表面プロファイルもしくは着色などの、上記基板の知覚可能な物理的な偏位を、実質的に、上記フィルムにさらに設けられた(408、410)いくつかの電気素子の上記位置で、上記保護層を介して行われる外部知覚、好ましくは視知覚および/または触覚の検査からマスクするように構成されている、ステップと、
上記第1の表面の反対側の、上記可撓性基板フィルムの少なくとも第2の表面上にプラスチック層をモールド成型するステップ(416)と、
を含む、電子デバイスのための多層構造を製造するための方法(400)。
[20]上記電子回路が設けられた基板または基板保護層積層物を所望の3次元形状に熱成形するステップ(414)をさらに含む、上記[19]に記載の方法。
[21]上記基板上のいくつかの装飾的な、表示用もしくは教示用フィーチャを、任意選択で、上記基板の上記第1および/または第2の表面上に印刷するステップ(406)をさらに含む、上記[19]または[20]に記載の方法。
本発明の一態様によると、電子デバイスのための多層構造は、
電子回路を収容するための可撓性基板フィルムと、
好ましくは印刷された電子回路および/または表面実装によって前記可撓性基板フィルムに設けられたいくつかの電気素子と、
前記基板フィルムの少なくとも第1の表面上の保護層であって、実質的に、前記いくつかの素子の位置で、凹凸のある表面プロファイルまたは着色などの、基板の知覚可能な物理的な偏位を、外部知覚、任意選択で保護層を介して行われる視知覚および/または触覚の検査からマスクするように構成された、保護層と、
前記第1の表面の反対側の、前記基板フィルムの少なくとも第2の表面上にモールド成型されたプラスチック層と、
を備える。
【0009】
他の一態様によると、電子デバイスのための多層構造を製造する方法は、
基板フィルムの少なくとも第1の表面上に保護層が設けられた、電子回路を収容するための可撓性基板フィルムを得るステップであって、前記保護層が、凹凸のある表面プロファイルもしくは着色などの、基板の知覚可能な物理的な偏位を、実質的に、フィルムにさらに設けられたいくつかの電気素子の位置で、保護層を介して行われる外部知覚、好ましくは視知覚および/または触覚の検査からマスクするように構成されている、ステップと、前記第1の表面の反対側の、前記基板フィルムの少なくとも第2の表面上にプラスチック層をモールド成型するステップと、
を含む。
【0010】
好ましい一実施形態において、基板には、最初に少なくともいくつかの電子回路が設けられ、続いて、この基板上にラミネート加工によって保護層が設けられてもよく、このラミネート加工は、例えば、適切な被覆技術によって、基板に既製の層を貼り付けること、または層を直接基板上に製造することを指してもよい。
【0011】
実施形態に応じて、例えば、積層およびモールド成型の実行順番は、逆にされてもよい。モールド成型フェーズは、射出成型を一般に含むことができ、基板および任意選択で保護層がインサートとして働いてもよい。さらに、一部の実施形態では、ラミネート加工に続いて、すなわち、基板保護層積層物を形成した後に、電気素子を含む電子回路の少なくとも一部が設けられてもよい。
【0012】
一部の実施形態では、得られた多層の構造内に、複数の基板フィルム、保護層および/またはプラスチック層があってもよく、それに対して、関連付けられた製造方法は、複数の電子回路を設けるステップ、ラミネート加工するステップ、および/またはモールド成型するステップを同様に含んでもよい。マルチショットモールド成型技術も適用可能である。
【0013】
本発明の有用性は、本発明のそれぞれの特定の実施形態に応じた複数の論点から生じる。埋め込まれた電子回路によって提供されるような所定の機能性を備える、可撓性の、薄く、軽い、触覚的におよび光学的に望ましい(例えば、不透明の、半透明の、透明の、着色された、パターニングされたなどの)多層構造は、適用される方法ステップ、使用される材料、寸法および形状、ならびにスケーラビリティの点から、比較的効率的で、迅速で、信頼性があり(良好な歩留まり)、柔軟性のあるプロセスを使用して得ることができる。例えば、多層構造には、さらなるフィーチャ、例えば、任意選択で、埋め込まれた視覚的な装飾物、または様々な印刷方法によって得られる表示用グラフィックスが設けられてもよい。さらに、電子回路を備える基板は、ターゲットの3d形状が本構造に対してうまく得られるように、モールド成型する前に既に熱成形を受けていてもよい。
【0014】
特に、本発明によって、埋め込まれた電子回路と隣接する層、例えば、電子回路の1つまたは複数の基板との間のインタフェースで、視覚的な不連続を覆い隠す、もしくは均一にするのを容易に行うことができる。望ましくない、意図しない変色、色変化、およびシェーディングの影響を弱める、またはなくすことができる。さらに、モールド成型手順および埋め込まれた電子回路に起因する内部変形による多層表面の凹凸が、触覚的および/または視覚的な検査の見地から緩和される、もしくは少なくともマスクされ得る。保護層は、それ自体、最適化された着色の他に、凹凸のある表面プロファイルを組み込むことができる。そのようなプロファイルは、他の凹凸をうまくマスクすることができる。さらに、保護層は、弾力性のある(可撓性の)材料を含み、下にある基板上の電気素子および他の可能性のある素子の突き出たフィーチャと事実上適合することができる。これらの異なる有利な特徴が同時に実現されるかどうかは、問題となっている実施形態および使用される材料、それらの特性、寸法、性質、埋め込まれた構成部品の位置および数などに依存する。
【0015】
表現「いくつかの」は、本明細書では1から始まる任意の正整数を指すことがある。
【0016】
表現「複数の」は、2から始まる任意の正整数をそれぞれ指すことがある。
【0017】
表現「電気素子」は、本明細書では、一般に、実装もしくは印刷によって、または他の適用可能な据え付けもしくは生産方法によって本発明の多層構造に設けることができる導体、コンタクト領域、コネクター、電子または電気構成部品、回路、集積回路(IC)、サブアセンブリー、サブシステムなどを指すことがある。
【0018】
本発明の異なる実施形態は、添付の従属クレームにおいて開示される。
【0019】
次に、本発明について、添付図面を参照して、より詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】アームバンドまたはリストバンドコンピュータなどの電子製品と共に使用するための湾曲した/可撓性の多層構造が得られる本発明の1つの使用シナリオおよび実施形態である。
【
図2】本発明の実施形態による多層構造の内部構造物である。
【
図4】本発明による方法の実施形態を開示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、100で、アームバンドまたはリストバンドコンピュータなどの電子製品と共に使用するための湾曲した/可撓性の多層構造が得られた本発明の1つの単に例示的な使用シナリオおよび実施形態を示し、この電子製品の正面図が101Aでざっくりと描かれている。当業者は、本発明の原理が湾曲していない/非可撓性の基板および構造にも同様に十分適用され得るという事実を認める。
【0022】
多層構造を組み込むターゲット電子製品または機器101Aには、例えば、民生用電子機器、産業用電子機器、オートメーション設備、機械類、自動車製品、安全性または防護装置、コンピュータ、タブレット、ファブレット、携帯電話などのモバイル端末、警報機器、ウェアラブル電子機器/製品(衣服、帽子、フットウェアなど)、センサデバイス、測定装置、表示装置、ゲームコントローラもしくはコンソール、照明装置、マルチメディアもしくはオーディオプレーヤー、AV装置、スポーツ用品、通信装置、輸送もしくは搬送設備、バッテリー、光学デバイス、太陽光パネルもしくは太陽エネルギー機器、送信機、受信機、無線制御機器もしくはコントローラ機器が含まれてもよい。
【0023】
101Bで、湾曲したおよび/または可撓性のデバイス101Aの側面図が示され、本構造は、表示素子103をさらに受け入れる。あるいは、ディスプレイ103は、スクリーンの動作を検査することができるように、ディスプレイ103の見る部分が製品の(実質的に連続的でおよび/または平面の可能性がある)外側表面の一部を画成するように、あるいは少なくとも実質的に光学的に透明な材料によってカバーされるように、構造内部に部分的にまたは完全に埋め込まれていてもよい。ディスプレイ103は、タッチセンシティブであってもよく、したがってタッチスクリーンの機能性を実装することができる。本構造は、ユーザに専用の制御入力手段を提供するために、いくつかのスイッチ、ボタン、ノブなどが補足されていてもよい。ここでもまた、当業者は、本発明のすべての実施形態が表示素子103を含む必要はないこと、および関連する使用状況の特定の要求事項を考慮して、もしある場合は、いくつかの代替のまたは追加の素子が含まれてもよいことを理解されるであろう。図示される例は、多くは、可能性のある実生活の使用シナリオにおいて、提案されたソリューションについてのわずかな中心的なアイデアを具体化させる上で、本例のコンパクトな性質および適用可能性という理由から選択された。
【0024】
101Cで、多層構造の一部をより詳細に示す。任意選択で、熱可塑性材料を含む、または熱可塑性材料から成る、第1の表面102Aおよび第2の表面102Bを有する可撓性のプラスチックフィルム102は、貼り付けられた保護層104およびモールド成型されたプラスチック層106に隣接する。図示された寸法は、例示であるが、多くの実施形態では、フィルム102は、モールド成型された層106よりも、また保護層104よりも実質的に薄い場合がある。
【0025】
様々な実施形態において、多層構造は、実際には、複数の可撓性フィルム、モールド成型層および/または保護層を備えることがあり、これらは、それらの構成(例えば、寸法、形状、配向、材料など)の点から相互に似ていても、または異なっていてもよいが、簡単にするため、図示された例は、それぞれの上記のタイプの1つの層のみを示す。また、さらなる層、例えば、記号、絵もしくは文字数字情報を確立する、例えば、装飾的な層または表示用グラフィックスを含む層が構造に配置されていてもよい。したがって、IMDまたはIML技法が適用可能である。
【0026】
設けられる層それぞれは、ラミネート加工によって全体的に構造に貼り付けられても、または、例えば、適切な堆積/被覆方法またはモールド成型を使用して、直接、構造に生成されてもよい。
【0027】
図2は、200で、例えば、埋め込まれた電子回路に重点を置いて上記の多層構造の内部構造を示す。実際は、少なくとも、熱可塑性の可能性がある材料の可撓性フィルム102には、実現可能な製造または実装技術によって、電子部品、導体、またはチップ(IC)などのいくつかの電気素子204、206が設けられている。実装技法には、例えば、表面表装およびスルーホール実装が含まれてもよい。印刷などの製造は、様々な他の選択肢のなかでもとりわけ、スクリーン印刷またはインクジェットを指すことがある。任意選択で、得られた多層構造の各層は、電子回路を収容するための孔または他のフィーチャを含む。一般に、層は、平らな形状を有してもよいが、より複雑な、本質的に三次元の構成も可能である。
【0028】
得られた多層(スタック)構造は、オーバーラップする層の数を考慮して、任意選択で、相互に異なる多層の部分を含んでもよい。ある位置で、別の位置よりも多数の積み重ねられた層(すなわち、追加の層)があってもよい。一般に、各層は、重ね合わせられてもよいが、単一性(一部の層は、例えば、実質的に同一の横方向平面上の複数の分散した素子から構築されてもよい)、幅、および/または高さの点で異なってもよい。すべての層が相互に重ね合わせられて存在する必要はないが、多層のスタックの高さに沿って違ったやり方で配置されてもよい。当然ながら、連続する層は、少なくとも所定の場所で互いに接触していなければならない。各層は、スルーホールまたは窓を含むことができる。
【0029】
図において、数字204は、(例えば、能動的、受動的、もしくは電気機械的な)構成部品または回路を指し、一方、数字206は、導体または他の導電性領域を指し、それらは全体に、構成部品/回路204よりも平らである場合があるが、必ずしもそうである必要はない。数字204は、電子回路サブアセンブリーまたはサブシステムをさらに指すことができる。サブアセンブリー/システムは、それ自身の可撓性または剛性の基板、例えば、ポリイミドを主成分とするFPC(可撓性プリント回路)、または剛性のPCB(プリント回路板、例えば、FR4)を内蔵してもよい。いくつかの所望の構成部品などの電子回路は、使用される材料が実際に損傷を受けずにはんだ付けに耐える場合は、例えば、印刷された電子回路よりも全体に高い部品密度を得るために、はんだ付けによってそのような基板に設けられてもよい。
【0030】
さらに、隣接する保護層104およびモールド成型層106には、それら自身の電子回路が設けられていてもよい。電子回路に加えて、上文で言及したように、多層構造の各層は、他の素子、またはフィーチャ、例えば、装飾的なフィーチャを組み込むことができる。例えば、化学的に活性な層またはフィーチャが含まれてもよい。
【0031】
図3は、300で、点線の楕円によって囲まれた、
図2の多層構造の一部の拡大図を表す。図は、電子回路204、206を収容する基板フィルム102上の層106のモールド成型から生じる、視覚的にまたは触覚的に不快にさせるアーチファクトに対処するために、提案されたソリューションがどのように利用され得るかを示す。フィルム102がある有限の厚さ、長さ、形状などを有する電子回路を備えるため、隣接する層104、106に対するインタフェースは、モールド成型された層106および可能性のある保護層104が導入されるとき、さらなる応力または圧力によって不可避的に影響を受ける。これは、色ずれ、構造内部の知覚可能な陰影、ならびに構造変形を引き起こすことがある。埋め込まれた電子回路および他の素子は、全体の多層構造を変形させることがあり、それにより、例えば、下にある素子に実質的に対応する位置の表面にバンプが現われることがある。また、電子回路の実装または製造は、それ自体が、インタフェースにおいて、例えば、インタフェースの基板に望ましくない影響を引き起こす。例えば、導電性インク、ペースト、もしくは接着剤の意図しない着色、汚れ、または近傍の基板あるいは他の層への吸収/拡散が起きることがある。
【0032】
図3において、点線303は、必要な程度にまで、本発明の原理に従っていないシナリオにおいて(色欠陥以外の)可能性のある結果を示す。基板102上の電子回路204は、モールド成型されたプラスチック106によって多層構造の上面の方に押され、それにより、頂部層(または、複数存在する場合は、層)104が著しく上に向かって曲がる。中間層およびインタフェースが、下方の素子204の上方の位置306で、基板102および保護層104の屈曲に関連して同様に曲がる、または変形することがあるのは明らかである。しかしながら、本発明の様々な実施形態では、そのような突出部は現われない、または少なくともそれらのサイズが低減する。加えてまたは代替え的に、表面突出部の、さらに本構造の内部インタフェースにおける欠陥(色不連続、汚れ、拡散など)の審美的もしくは触覚的影響を最小化することができる。
【0033】
保護層104は、基板フィルムを、例えば、物理的衝撃、放射、光、熱、冷気、水分、および/または汚れに対して保護するように構成され得る。保護特性は、層の厚さおよび材料、ならびに多層構造に層を固定するための取り付け技法を適切に選択することによって達成され得る。
【0034】
特に、保護層104は、素子204、206の位置で、(汚れ、変形、拡散などに起因する)凹凸のある湾曲表面プロファイル、陰影、または着色などの知覚可能で望ましくない基板の物理的偏位を、主として視知覚および/または触覚の検査を指す外部知覚からマスクするように有利には構成される。
【0035】
一実施形態において、保護層104は、保護層と基板フィルムとの間のインタフェースで、前記いくつかの素子が設けられた基板フィルムの表面プロファイルと適合するように、弾性の、または「弾力がある」材料を含む。したがって、多層構造の外部表面上の突出部は、本質的に避けられないとしても、少なくとも低減する。
【0036】
加えてまたは代替えとして、偏位をマスクするように少なくとも1つの保護層が着色されてもよい。
【0037】
保護層104の着色は、任意選択でグラフィカルなおよび/またはカラーのパターンによって偏位を覆い隠すように構成されてもよい。異なる形態、記号、絵、数、文字、単語などが、所望のマスク効果をもたらすように保護層に生成されてもよい(または、それらは当然に、または本質的に存在してもよい)。
【0038】
保護層104の着色は、実質的に、フィルムの着色に従って行われてもよく、それにより、電子回路またはモールド成型手順によって保護層に導入されるアーチファクトが外部(視覚的)調査からマスクされる。
【0039】
保護層104は、偏位を覆い隠すように少なくとも部分的に半透明、または不透明であってもよく、任意選択で、所定の波長を考慮して光学的に実質的に透明な窓もしくは領域をさらに備えることができる。
【0040】
さらに、保護層104は、任意選択で突出部、隆起部、溝、凹部、くぼみ、スケールパターン、および/またはノッチを有する凹凸のある(頂部/外部)表面プロファイルを備えることがある。層104の表面プロファイルは、本質的にそのような場合があり、および/またはそのようなプロファイルは、例えば、彫刻、圧延、彫り刻み、刻印、もしくは型押しによって技術的に生成されることがある。層104の凹凸のある表面プロファイルおよび質感は、普通ならば下にある層102、106、素子204、206によって引き起こされる望ましくない視覚的および形状的偏位(例えば、ランダムなむら)をそれぞれ、視覚的および/または触覚的にマスクすることができる。
【0041】
保護層104は、プラスチック(例えば、TPU(熱可塑性ポリウレタン)もしくは他の熱可塑性エラストマー(TPE))、金属、革、他の生物学的、有機および/または繊維材料などの材料を含んでもよい。
【0042】
保護およびマスキング機能を有する他に、保護層104は、使用される色、グラフィカルなパターン、質感などによって多層構造に所望の外観および感触または質感を提供することができる。生物学的材料の場合、層104は、例えば、革、うろこ状のカバーもしくはトカゲ/ヘビの皮、または強烈な視覚的な外観、効率的なマスク効果および独特の触感を提供する他の同様の材料を含んでもよく、あるいはそれらを模倣してもよい。
【0043】
さらに、表示用および/または教示用機能が、グラフィックス表示(記号、テキストなど)を有する保護層104または下にある層を設けることによって達成され得る。
【0044】
基板102に加えて、保護層104は、好ましくは基板102上に印刷された(例えば、他の埋め込まれた電子回路に面する内表面上に、および/または構造の内部構造物に通じる任意選択の貫通接続を有する外表面上に)電気素子、任意選択で導体を備えることができる。
【0045】
図3で明示的に提示されたシナリオに再び戻ると、ドーム形状302(層106の凹部および層104の突部)は、層104、106が直接もしくは間接的に、物理的に接触するまたは面する埋め込まれた電子回路に起因する、多層構造の内側のキャリアー(基板)および隣接する層104、106の持ち上がった異常を表わす。モールド成型された層106は、溶融状態で好ましくは設けられ、それにより、この層106は、素子204、206を避けて取り囲むが、基本的にもとの自然な位置から押し出される既存の層102、104に対しては圧力/力および関連する応力を引き起こす。外部障害物を考慮して、十分な弾力性および/または他の種類の適応性を有する層104の材料が適切に選択されているため、表面突出部303は、好ましくは回避され、またはサイズが少なくとも低減する。
【0046】
図示されたケースでは、層102、104、106はすべて、いくつかの電子素子204、206の少なくとも一部を収容する。たとえ基板層102が上方へ曲がり、それによって保護層104が306で引っ込むように湾曲しても、層104は、例えば、材料弾力性の観点から構成されており、それにより、上記のバンプ303が好ましくは実質的に除外され、または少なくとも相当に低減する。
【0047】
代替え的にまたは加えて、層104の表面の構造(プロファイル)または色、グラフィックス、パターンなどは、バンプ303の影響を、たとえその場所に基本的に存在するとしても、触覚的におよび/または視覚的にマスクするように選択されてもよい。上文で述べたように、外部環境に面する層104の外表面は、凹凸のある表面プロファイルをその目的のために備えることができる。そのような表面プロファイルは、触覚的に心地よく、例えば、ある規則的なまたは擬似規則的なパターンに従うことがある。さらに、電子回路204、206に面する層104の内表面は、さらに、または一部のシナリオでは可能性として代わりに、例えば、モールド成型されたプラスチック層106によって凹部の方へ押された電子回路204、206の突出部分を収容するための凹部を備え、したがって層104の外側表面上の望ましくないバンプ303のサイズを低減させることができる。
【0048】
基板フィルム102の可能性のある特性を考慮して、基板フィルム102は、例えば、約300ミクロン未満の厚さ、好ましくは約200ミクロン未満の厚さ、最も好ましくは約150ミクロン未満の厚さであってもよい。
【0049】
基板フィルム102は、例えば、プラスチック/ポリマー(ポリ炭酸塩(PC)、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリイミド、メタクリル酸メチルとスチレン(MS樹脂)の共重合体、ポリエチレンテレフタレート(PET))、または金属を含んでもよい。これらの材料は、モールド成型された層106および/または保護層104にも利用され得る。
【0050】
フィルム102は、フィルムの表面の平面に対して、突出部、隆起部、溝、または凹部などの浮彫の形態または形状、任意選択でスルーホールを含んでもよい。これらのフィーチャは、フィルム102内部に導体、構成部品などの素子を収容する、または少なくとも部分的に埋め込むために利用されてもよい。同様のフィーチャは、保護層104内にあってもよい。
【0051】
図4は、本発明による方法の実施形態を開示する流れ
図400を含む。
【0052】
402で、開始フェーズを参照すると、材料、構成部品およびツールの選択、取得、較正ならびに他の構成などの必要なタスクが行われてもよい。個々の素子および材料の選択が、協働し、多層構造および本構造が配置することができる可能性のあるターゲット製品の選択された製造プロセスを乗り切る特別の注意が払われなければならず、この製造プロセスは、当然ながら好ましくは、例えば、製造プロセスの仕様書および構成部品のデータシートに基づいて、または生産されたプロトタイプの調査およびテストによって前もってチェックされる。したがって、とりわけ、モールド成型/IMD、ラミネート加工、熱成形、および/または印刷装置が、この段階で動作状態に立ち上げられることがある。
【0053】
404で、少なくとも1つの、好ましくは可撓性の、電子回路を収容するための基板フィルムが得られる。既製の基板材料、例えば、プラスチックフィルムのロールが取得され、任意選択で、被覆され、(初めに、所望の色、または、例えば、最適の透明度もしくは半透明度でない場合は)着色され、彫刻され、浮き彫りにされ、成形されるなどの処理がなされてもよく、あるいは基板それ自体が、所望の開始材料からモールド成型または他の方法によって社内でゼロから生成されてもよい。
【0054】
406で、装飾物、グラフィカルなしるし、色などは、例えば、印刷によってフィルム上に生成されてもよい。これは、任意選択の項目であって、省略されてもよく、またはその位置が方法の流れにおいて変えられてもよい。代替えとしてまたは加えて、保護層など他の層に、そのようなフィーチャが設けられてもよい。例えば、スクリーン印刷またはインクジェットが適用されてもよい。装飾的な、または表示用(例えば、教示用)フィーチャは、IMD/IML互換の方法を使用して、全体に設けられてもよい。
【0055】
408および410で、電気トレース(導体)が、例えば、印刷によって基板の所望の位置に設けられてもよく、構成部品が適切な実装技法によってそれぞれ取り付けられてもよい。FPC構造をこのようにして形成することができる。実装は、例えば所望の機械的なおよび電気的な接続を確立し、確実にするために、接着剤、ペーストおよび/または導電性インクを使用することを含んでもよい。項目408および410は、実施形態に応じて、繰り返しまたは交互に実行されてもよく、それらの項目を専用の実行フェーズに分離することは必ずしも必要ではなく、可能でさえない。加えてまたは代替えとして、一部の実施形態では、項目408および/または410は、以降に記載されるラミネート加工412または熱成形414を行って初めて、実行されてもよい。
【0056】
412で、少なくとも1つの保護層が、前記いくつかの素子の位置で基板の知覚可能な物理的な偏位を外部知覚から実質的にマスクするように、前記基板フィルムの少なくとも第1の表面(例えば、本構造/ホストデバイスが使用されているときに、ユーザの目に最も見える層である可能性がある本構造の主要なまたは所定の外側表面)上に積層される。(例えば、層は、ある特徴的な臭いを有することがあるが、たいていは視覚的および/または触覚的な)知覚が、実施形態および使用事例に応じて、保護層を介して行われ、すなわち、ユーザまたは他の当事者が保護層を介して多層構造を知覚する。加えてまたは代替えとして、知覚は、例えば、多層構造が露出された状態の製品を考慮して、モールド成型された層を介して行われることがあり、それにより多層構造が様々な角度から検査され得る。本構造を組み込むリストバンドまたはアームバンドは、そのような製品の1つの例であってもよい。しかしながら、これらの種類の製品に関してでさえ、ある特定の知覚方向が、主要な知覚方向、または保護層の知覚方向などの、最重要の知覚方向と考えられてもよい。
【0057】
基板の偏位をマスクする他に、保護層は、下にある層の表面形態と適合するように構成されてもよく、ならびに保護層自身の外側表面は、最小限の変形の兆候しか示さず、および/または実際にできる限りわずかしか変形しないようにすることができる。最適の構成には、可能性のあるさらなる要因に加えて適切な材料の厚さおよび弾力性を見出すことが必要な場合がある。
【0058】
保護層は、ラミネート加工中に開始材料から確立されてもよく、または既製の材料層が取り付けられてもよい。被覆または切断などの任意選択の処理段が適用されてもよい。
【0059】
ラミネート加工は、例えば、接着剤、圧力および/または熱を使用して、当業者の制御および適用可能な設備の下で実行され得る。材料がこの処理手順を乗り切る注意が払われる。
【0060】
基板上に既製の保護層を積層する代わりに、基本的に、基板の材料および保護層自体に適した任意の所望の被覆または他の適用可能な技法が、保護層を関連付けられた材料から直接基板上に確立するように利用されてもよい。
【0061】
保護層には、例えば、電気素子および/またはスルーホールを含む様々なフィーチャが、ラミネート加工の後に、および/またはラミネート加工の前に設けられてもよい。上述したように、一部の実施形態では、保護層は、トレースおよび構成部品などの電気素子を設ける前に、またはそれらの電気素子を設ける間に基板に設けられてもよい。
【0062】
414で、熱成形などの成形が任意選択で行われてもよい。熱成形中に、好ましくは電子回路が既に設けられている基板フィルムが、実質的に所望の3次元の形状に成形されてもよい。電子回路は、熱成形中に生じる最大の応力の位置、例えば、最大の圧力または湾曲の位置を回避するように好ましくは配置されている。
【0063】
一部の実施形態では、項目412および414の相互実行の順番は、逆にされてもよい。さらに、項目412および/または項目414は、モールド成型416後に実行されてもよい。
【0064】
一般に、多層構造の層の表面に電気素子を実装する、または生成する代わりに、それらの電気素子は、層内に、例えば、層の異なる凹部に埋め込まれてもよい。
【0065】
416で、例えば、熱可塑性、熱硬化性、または弾性材料の、好ましくは、プラスチック層は、前記第1の表面の反対側の、前記基板フィルムの少なくとも第2の表面上にモールド成型される。射出成型が適用されてもよい。基板および(既に存在する場合は)任意選択で保護層は、モールドのインサートとして使用されてもよい。任意選択で、マルチショットまたは多成分モールド成型が、例えば、構造に複数の材料を設けるために適用される。プラスチック層は、光電子部品(LED、感光性検出器)または、例えば、OLED(有機LED、発光ダイオード)ディスプレイなどのディスプレイを含むことができる、下にある電子回路に視覚的な経路を提供するために、少なくとも部分的に光学的に透明であってもよく、および/または凹部もしくはスルーホールを備えてもよい。プラスチック層は、加えてまたは代替えとして、不透明な、例えば、着色された、もしくはグラフィックスを含む、または半透明な部分を含んでもよい。プラスチック層には、様々な目的のために、例えば、光学的な使用(例えば、光内部結合、外部結合、散乱、または反射)のために、表面浮彫の形態または他のフィーチャがさらに設けられていてもよい。
【0066】
当業者は、使用される材料、寸法、および構成部品に照らして、実地試験によって最適のプロセスパラメータを前もって知る、または決定する。一般的なガイダンスのために、ほんのわずかな例示的なガイドラインしか提供することができない。基板フィルムがPETで、基板フィルム上にオーバーモールドされるプラスチックがPCである場合、溶融PCの温度は、摂氏280度~摂氏320度あってもよく、適用可能な成型温度は、摂氏約20度~95度の範囲にあってもよく、すなわち、例えば、摂氏約80度であってもよい。使用される基板フィルムおよびプロセスパラメータは、基板がプロセス中に実質的に固体の状態を維持するように選択される。前もって据え付けられる可能性のある電子回路は、それらがモールド成型中に静止した状態を維持するように、好ましくは基板に取り付けられている。
【0067】
任意選択で、ロールツーロール技法が、トレース/構成部品を有する基板を設ける、または層を一緒に集積化するなどの製造方法の実行中に、少なくとも選択されたフェーズに対して利用されてもよい。ロールツーロールの適用には、使用される材料層に、なんらかの可撓性が必要である。したがって、最終製品(得られた多層構造、さらには最終的に多層構造を受け入れるデバイス)が可撓性である場合がある。しかしながら、本発明は、よりの剛性の強い材料シート、または一般にいくつかの所望の材料を有するシナリオにも実際には適用可能である。
【0068】
418で、方法の実行が終了する。
【0069】
本発明の範囲は、本発明の均等物と共に添付の特許請求の範囲によって決定される。当業者は、開示された実施形態が例示の目的のためにのみ構築されており、上文で精査された、提案されたソリューションの革新的な中心部分が、それぞれの現実の使用事例によりよく適合するさらなる実施形態、実施形態の組合せ、変形形態、および均等物をカバーするという事実を認識するであろう。提供された多層構造に関して、一部の実施形態では、例えば構造は、単に層タイプ当たり1つのインスタンスの代わりに、例えば、複数の基板、保護層および/またはモールド成型層を含んでもよい。同様の層が、互いに隣接していても、間に異なる層を有していても、または多層構造内に他のある構成を確立してもよい。上文で明示的に精査されていないいくつかのさらなる層、例えば、熱的に、電気的に、化学的に、さもなければ絶縁する/ブロックする、導電性のまたは活性な層が同様に構造に含まれていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
101A 電子製品
101B 多層構造
101C 多層構造
102 プラスチックフィルム
102A 第1の表面
102B 第2の表面
103 表示素子
104 保護層
106 プラスチック層
200 多層構造
204 構成部品または回路
206 導体
300 多層構造
302 ドーム形状
303 表面突出部
400 流れ図