(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】枢動ボタン付きの開放システムを備える脱着可能なハンドル
(51)【国際特許分類】
A47J 45/07 20060101AFI20220722BHJP
A47J 27/00 20060101ALI20220722BHJP
A47J 45/10 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
A47J45/07 A
A47J27/00 101E
A47J45/10 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018000692
(22)【出願日】2018-01-05
【審査請求日】2020-12-03
(32)【優先日】2017-01-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】594034072
【氏名又は名称】セブ ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ミシェル モンジェラール
【審査官】川口 聖司
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-057940(JP,A)
【文献】特開2014-064884(JP,A)
【文献】特開2011-206510(JP,A)
【文献】国際公開第2014/106964(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02769655(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 45/07
A47J 45/10
A47J 27/00-27/13
A47J 27/20-29/06
A47J 33/00-36/42
F16H 51/00
F16H 51/02
F16H 53/00-53/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁(61)を有する調理容器(60)と協働するようにされた脱着可能なハンドル(1)であって、前記脱着可能なハンドル(1)は、長手方向(3)に沿って延び、前記側壁(61)に突き当たるようにされた少なくとも1つの固定支持具(12、14)と、前記脱着可能なハンドル(1)が前記側壁(61)から脱離する開位置と脱着可能なハンドル(1)が前記側壁(61)に固定される閉位置の間で可動な錠止具(20)とを具備し、前記脱着可能なハンドル(1)は、安定した閉鎖位置から安定した開放位置へ、またその逆へと、途中、不安定なバランスの中間位置を経由して移行できるように構成された前記錠止具(20)の移動手段(30)と、当初はその安定した閉鎖位置にある前記移動手段(30)をその不安定なバランスの中間位置の先まで誘導するようにされた前記錠止具(20)開放手段(50)とを備え、前記開放手段(50)は長手方向に対して横断方向で水平面内に含まれる軸(51)に従って回転可能な開放ボタン(50a)を備える脱着可能なハンドル(1)において、前記開放ボタン(50a)は、前記移動手段(30)が前記安定した閉鎖位置にある休止引込み位置と、前記移動手段(30)が前記安定した開放位置にある引起し位置の間で可動であり、
前記開放ボタン(50a)は前記休止引込み位置と前記引起し位置の間で途中に中間引起し位置を挟んで可動であること、および前記開放手段(50)は少なくとも1つの第1の押動具(50b)と少なくとも1つの第2の押動具(50c)とを備え、前記第1の押動具(50b)は、前記開放ボタン(50a)が前記休止引込み位置から前記中間引起し位置に操作されると、前記移動手段(30)に対してその安定した閉鎖位置とその不安定なバランスの中間位置の間で作用し、前記第2の押動具(50c)は、前記開放ボタン(50a)が前記中間引起し位置から前記引起し位置に操作されると、前記移動手段(30)に対してその不安定なバランスの中間位置とその安定した開放位置の間で作用することを特徴とする脱着可能なハンドル(1)。
【請求項2】
前記第1の押動具(50b)は、前記開放ボタン(50a)がユーザによって与えられるトルクの作用を受けたときに前記移動手段(30)に第1の力を加えて前記移動手段(30)を前記安定した閉鎖位置から前記不安定なバランスの中間位置に移行させるように適合されること、および前記第2の押動具(50c)は、前記ボタンがユーザによって与えられるトルクの作用を受けたときに前記移動手段(30)に第2の力を加えて前記移動手段(30)を前記不安定なバランスの中間位置から前記安定した開放位置に移行させるように適合されることを特徴とする請求項1に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項3】
ユーザによって前記開放ボタン(50a)に与えられる同じトルクの作用を受けたとき、前記移動手段(30)に加えられる前記第1の力の値は前記移動手段(30)に対する前記第2の力の値よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項4】
前記第1の押動具(50b)および前記第2の押動具(50c)は、前記開放ボタン(50a)によるユーザの操作を受けて移動するとき、前記移動手段(30)に設けられた第1の受け面(33a)および第2の受け面(33b)にそれぞれが当接するように、さらに前記第1の受け面(33a)および前記第2の受け面(33b)をそれぞれ移動させて前記移動手段(30)をそれぞれの安定した開放位置の方へ誘導するように適合されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項5】
前記第1の押動具(50b)および前記第2の押動具(50c)は、横断方向軸(51)に沿って前記開放ボタン(50a)の両側に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項6】
前記第1の押動具(50b)および前記第2の押動具(50c)はそれぞれ短尺レバーアーム(52b)および長尺レバーアーム(52c)を備えること、ならびに前記短尺レバーアーム(52b)は前記移動手段(30)に対して前記第1の力を加えるように適合され、前記長尺レバーアーム(52c)は前記移動手段(30)に対して前記第2の力を加えるように適合されることを特徴とする請求項2に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項7】
前記第1の押動具(50b)および前記第2の押動具(50c)は、前記開放ボタン(50a)によるユーザの操作を受けて移動するとき、前記移動手段(30)に設けられた第1の受け面(33a)および第2の受け面(33b)にそれぞれが当接するように、さらに前記第1の受け面(33a)および前記第2の受け面(33b)をそれぞれ移動させて前記移動手段(30)をそれぞれの安定した開放位置の方へ誘導するように適合され、
前記第1の押動具(50b)および前記第2の押動具(50c)はそれぞれ短尺レバーアーム(52b)および長尺レバーアーム(52c)を備えること、ならびに前記短尺レバーアーム(52b)は前記移動手段(30)に対して前記第1の力を加えるように適合され、前記長尺レバーアーム(52c)は前記移動手段(30)に対して前記第2の力を加えるように適合され、
前記短尺レバーアーム(52b)は、前記第1の受け面(33a)との接触を果たすように適合された第1の誘導用輪郭端(54b)を有し、前記長尺レバーアーム(52c)は、前記第2の受け面(33b)との接触を果たすように適合された第2の誘導用輪郭端(54c)を有することを特徴とする請求項2に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項8】
前記第1の押動具(50b)および前記第2の押動具(50c)はそれぞれ短いカムおよび長いカムを備え、前記短いカムは前記移動手段(30)に対して前記第1の力を加えるように適合され、前記長いカムは前記移動手段(30)に対して前記第2の力を加えるように適合されることを特徴とする請求項2に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項9】
前記移動手段(30)は、長手方向(3)に対して横断方向(4)に延びる枢動軸(34)に従って閉鎖位置と開放位置の間で途中に不安定なバランスの中間位置を挟んで可動なレバー(35)を備えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか一項に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項10】
前記移動手段(30)は、長手方向(3)に対して横断方向(4)に延びる枢動軸(34)に従って閉鎖位置と開放位置の間で途中に不安定なバランスの中間位置を挟んで可動なレバー(35)を備え、前記第1の受け面(33a)および前記第2の受け面(33b)は前記レバー(35)に設けられることを特徴とす
る請求項4に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項11】
前記開放ボタン(50a)は前記休止引込み位置と前記引起し位置の間で長手方向(3)に対して40°から70°の間の角度ストロークにわたって枢動することを特徴とする請求項1乃至10のいずれか一項に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項12】
前記移動手段(30)は前記錠止具(20)に連結されたリンク(40)と前記リンク(40)に連結されたばね(47)とを備え、前記ばね(47)は前記錠止具(20)の位置を前記側壁(61)の厚さに適合させるようになされることを特徴とする請求項1乃至11のいずれか一項に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【請求項13】
前記側壁(61)に突き当たるようにされた少なくとも2つの固定支持具(12、14)と、前記側壁(61)が前記少なくとも2つの支持具(12、14)の間に係合し得る開位置と、前記側壁(61)が前記少なくとも2つの支持具(12、14)の間で締め付けられて前記脱着可能なハンドル(1)が前記側壁(61)に固定される閉位置の間で可動な錠止具(20)とを備えることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか一項に記載の脱着可能なハンドル(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外側に湾曲した部位によって上方に延びる側壁を有する鍋または深鍋のような調理容器と協働するための脱着可能なハンドルに関する。
【0002】
本明細書では、脱着可能なハンドルについて説明する際に用いる「長手方向」、「横断方向」、「水平方向」、「垂直方向」、「下(部)」、「上(部)」、「上方」、「下方」のそれぞれの用語は、水平面上に置かれた調理容器の側壁に取り付けられて使用状態にあるときのそのハンドルを基準にしている。
【背景技術】
【0003】
特許文献1により、側壁を有する調理容器と協働するようにされた脱着可能なハンドルが知られている。この脱着可能なハンドルは、長手方向に沿って延び、側壁に突き当たるようにされた少なくとも1つの固定支持具と、脱着可能なハンドルが側壁から脱離する開位置と脱着可能なハンドルが側壁に固定される閉位置の間で可動な錠止具とを具備し、脱着可能なハンドルは、安定した閉鎖位置から安定した開放位置へ、またその逆へと、途中、不安定なバランスの中間位置を経由して移行できるように構成された錠止具の移動手段と、当初はその安定した閉鎖位置にある移動手段をその不安定なバランスの中間位置の先まで誘導するようにされた錠止具開放手段とを備え、開放手段は長手方向に対して横断方向で水平面内に含まれる軸に従って回転可能な開放ボタンを備える。開放ボタンは、移動手段が安定した閉鎖位置にある休止引起し位置と、移動手段が安定した開放位置にある引込み位置の間で可動である。これにより、ユーザは、ハンドルを調理容器から取り外したいときは、開放ボタンを押して錠止具を閉鎖位置から開放位置に移す。
【0004】
しかし、このようなハンドルは比較的コンパクトなアセンブリを形成するため、開放ボタンのストロークは短い。そのため、移動手段を安定した閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置を越えて移行させるために必要な開放ボタンの押力は大きい。
【0005】
このようなハンドルは、錠止具の閉鎖位置を幾通りもの厚さの側壁に適合させるためにレバーとばねを含むナックル継手型の錠止具移動手段を備える。レバーは、途中で不安定な中間位置を経由しつつ、閉鎖位置と開放位置の間で可動である。側壁の厚さが許容最大限度に近いときは、レバーを閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置の先まで移行させるために必要な開放ボタンの押力は一段と大きなものとなる。
【0006】
また、ユーザは、脱着可能なハンドルが固定された調理容器を扱う際、脱着可能なハンドルを握ったときに意に反して開放ボタンを押してしまう可能性がある。それによって錠止具は閉鎖位置から開放位置に移行し、ハンドルは調理容器から外れる。そのため、このような構造は調理容器の脱着可能なハンドルが脱離するリスクを有しており、ユーザまたはその環境に危険な状況をもたらす可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、上述の不都合を改善して、調理容器と協働するようにされた脱着可能なハンドルであって、ユーザが調理容器に対して容易に取り付け、取り外すことができるように、さらに調理容器をきわめて安全に取り扱うことができるように人間工学的に改善された脱着可能なハンドルを提案することにある。
【0009】
本発明のもう1つの目的は、実現する上で単純にして経済的な設計の脱着可能なハンドルを提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
それらの目的は、側壁を有する調理容器と協働するようにされた脱着可能なハンドルであって、前記脱着可能なハンドルは、長手方向に沿って延び、側壁に突き当たるようにされた少なくとも1つの固定支持具と、脱着可能なハンドルが側壁から脱離する開位置と脱着可能なハンドルが側壁に固定される閉位置の間で可動な錠止具とを具備し、前記脱着可能なハンドルは、安定した閉鎖位置から安定した開放位置へ、またその逆へと、途中、不安定なバランスの中間位置を経由して移行できるように構成された錠止具の移動手段と、当初はその安定した閉鎖位置にある移動手段をその不安定なバランスの中間位置の先まで誘導するようにされた錠止具開放手段とを備え、開放手段は長手方向に対して横断方向で水平面内に含まれる軸に従って回転可能な開放ボタンを備える脱着可能なハンドルにおいて、前記開放ボタンは、移動手段が安定した閉鎖位置にある休止引込み位置と、移動手段が安定した開放位置にある引起し位置の間で可動であることを特徴とする脱着可能なハンドルによって達成される。
【0011】
このような構造では、ユーザは、脱着可能なハンドルを調理容器から外そうとするときは、開放ボタンを上方に引き起こして、錠止具が閉位置にある休止引込み位置から、錠止具が開位置になる引起し位置まで開放ボタンを移行させなければならない。そのため、ユーザが過って開放ボタンを押したとしても、脱着可能なハンドルの錠止具を偶発的に錠止解除してしまうおそれはない。
【0012】
好ましくは、開放ボタンは休止引込み位置と引起し位置の間で途中に中間引起し位置を挟んで可動であり、開放手段は少なくとも1つの第1の押動具と少なくとも1つの第2の押動具とを備える。第1の押動具は、開放ボタンが休止引込み位置から中間引起し位置に操作されると、移動手段に対してその安定した閉鎖位置とその不安定なバランスの中間位置の間で作用し、第2の押動具は、ボタンが中間引起し位置から引起し位置に操作されると、移動手段に対してその不安定なバランスの中間位置とその安定した開放位置の間で作用する。
【0013】
開放ボタンの横断方向軸に従って枢動する2つの押動具は、開放ボタンが休止引込み位置から中間引起し位置の先まで操作されると、移動手段が2つのストロークで大きく移動することを可能にする。短い第1のストロークは第1の押動具の回転によってもたらされ、長い第2のストロークは第2の押動具の回転によってもたらされる。
【0014】
有利には、第1の押動具は、開放ボタンがユーザによって与えられるトルクの作用を受けたときに移動手段に第1の力を加えて移動手段を安定した閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置に移行させるように適合され、第2の押動具は、開放ボタンがユーザによって与えられるトルクの作用を受けたときに移動手段に第2の力を加えて移動手段を不安定なバランスの中間位置から安定した開放位置に移行させるように適合される。
【0015】
それにより、第1の押動具によって発生する第1の力は短い第1のストロークをもたらし、そのストロークの中で開放ボタンはその休止引込み位置から中間引起し位置に移行する。第2の押動具によって発生する第2の力は長い第2のストロークをもたらし、そのストロークの中で開放ボタンはその中間引起し位置から引起し位置に移行する。
【0016】
有利には、ユーザによって開放ボタンに与えられる同じトルクの作用を受けたとき、移動手段に加えられる第1の力の値は移動手段に加えられる第2の力の値よりも大きい。
【0017】
移動手段を安定閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置へ移行させるために必要な第1の力は大きく、移動手段の短い第1のストロークに対して加えられる。移動手段を不安定なバランスの中間位置から安定開放位置へ移すために必要な第2の力は第1の力よりも小さく、移動手段の長い第2のストロークに対して加えられる。
【0018】
好ましくは、第1の押動具および第2の押動具は、開放ボタンによるユーザの操作を受けて移動するとき、移動手段に設けられた第1の受け面および第2の受け面にそれぞれが当接するように、さらに前記第1の受け面および第2の受け面をそれぞれ移動させて移動手段を安定した開放位置の方へ誘導するように適合される。
【0019】
それにより、第1の押動具は第1の受け面に作用し、移動手段をその安定した閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置へと誘導することができる。第2の押動具は第2の受け面に作用し、移動手段をその不安定なバランスの中間位置から安定した開放位置へと誘導することができる。
【0020】
有利には、第1の押動具および第2の押動具は、横断方向軸に沿って開放ボタンの両側に配置される。
【0021】
第1の押動具および第2の押動具は、開放ボタンによってユーザから与えられるトルクの作用を受けて横断方向軸に従って回転駆動される。
【0022】
好ましい実施形態では、第1の押動具および第2の押動具はそれぞれ短尺レバーアームおよび長尺レバーアームを備え、短尺レバーアームは移動手段に対して第1の力を加えるように適合され、長尺レバーアームは移動手段に対して第2の力を加えるように適合される。
【0023】
開放ボタンがその休止引込み位置からその中間引起し位置に移動させられるときにユーザによって開放ボタンに与えられるトルクは、短尺レバーアームによって伝達されて、短い第1のストロークで第1の大きな力が移動手段に対して加えられ、それによって移動手段を安定した閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置に移行させる。開放ボタンがその中間引起し位置からその引起し位置に移動させられるときにユーザによって開放ボタンに与えられる同じだけのトルクは、長尺レバーアームによって伝達されて、長い第2のストロークで、より小さな力でありながら十分な第2の力が移動手段に対して加えられ、それによって移動手段を不安定なバランスの中間位置から安定した開放位置に移行させる。
【0024】
有利には、短尺レバーアームは、第1の受け面との接触を果たすように適合された第1の誘導用輪郭端を有し、長尺レバーアームは、第2の受け面との接触を果たすように適合された第2の誘導用輪郭端を有する。
【0025】
短尺レバーアームの第1の誘導用輪郭端は、移動手段に設けられた第1の受け面に当接し、その第1の受け面を移動させて移動手段をその不安定なバランスの中間位置に誘導するように適合される。長尺レバーアームの第2の誘導用輪郭端は、移動手段に設けられた第2の受け面に当接し、その第2の受け面を移動させて移動手段をその安定した開放位置に誘導するように適合される。
【0026】
好ましい実施形態では、第1の押動具および第2の押動具はそれぞれ短いカムおよび長いカムを有し、短いカムは移動手段に対して第1の力を加えるように適合され、長いカムは移動手段に対して第2の力を加えるように適合される。
【0027】
カムとは、開放ボタンによって回転駆動される半径が一定でない円筒形をいう。短いカムは最大半径R1を有し、長いカムは最大半径R2を有しており、R2はR1よりも大きい。
【0028】
そのため、開放ボタンを休止引込み位置から中間引起し位置まで移動させるときにユーザによって開放ボタンに与えられるトルクは、短いカムによって伝達されて短い第1のストロークで移動手段に大きな第1の力を加え、それによって移動手段を安定した閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置に移行させる。開放ボタンをその中間引起し位置からその引起し位置まで移動させるときにユーザによって開放ボタンに与えられる同じだけのトルクは、長いカムによって伝達されて長い第2のストロークで移動手段により小さな力でありながらも十分な第2の力を加え、それによって移動手段を不安定なバランスの中間位置から安定した開放位置に移行させる。
【0029】
有利には、移動手段は、長手方向に対して横断方向に延びる枢動軸に従って閉鎖位置と開放位置の間で途中に不安定なバランスの中間位置を挟んで可動なレバーを備える。
【0030】
レバーの閉鎖位置、開放位置および不安定なバランスの中間位置はそれぞれ移動手段の安定した閉鎖位置、開放位置および不安定なバランスの中間位置に対応する。このような可動レバーは、単純で操作の容易な錠止具の移動手段を得ることを可能にする。
【0031】
有利には、第1の受け面および第2の受け面はレバーに設けられる。
【0032】
これにより、第1の押動具および第2の押動具はレバーに直接作用する。
【0033】
好ましくは、開放ボタンは休止引込み位置と引起し位置の間で長手方向に対して40°から70°の間、好ましくは60°の角度ストロークにわたって枢動する。
【0034】
そのため、開放ボタンはその引起し位置でほぼ垂直であり、開放ボタンの配置は、開放ボタンが休止引込み位置にあるときにユーザが開放ボタンに自分の親指を置くことができるような人間工学的位置をなす。
【0035】
有利には、移動手段は錠止具に連結されたリンクとリンクに連結されたばねとを備え、ばねは錠止具の位置を側壁の厚さに適合させるようになされる。
【0036】
リンクは、レバーが枢動するときに錠止具の並進移動を可能にする。この配置は、非常に人間工学的な錠止具の移動手段を得ることを可能にする。さらに、このような手段は錠止具の位置を側壁の厚さに適合させることを可能にする。
【0037】
好ましくは、脱着可能なハンドルは、側壁に突き当たるようにされた少なくとも2つの固定支持具と、側壁がその少なくとも2つの支持具の間に係合し得る開位置と、側壁がその少なくとも2つの支持具の間で締め付けられて脱着可能なハンドルが側壁に固定される閉位置の間で可動な錠止具とを備える。
【0038】
錠止具は長手方向に並進可能である。錠止具はその開位置で少なくとも2つの支持具から離隔するように適合されて、少なくとも2つの支持具の間への側壁の挿入が可能となるようにするとともに、その閉位置では側壁に当接するように適合されて、少なくとも2つの支持具への固定が可能となるようにする。
【0039】
錠止具の開位置では、少なくとも2つの支持具は少なくとも2つの具の間への側壁の挿入を可能にする。
【0040】
把持部はユーザがその手のひらで持つことができ、ユーザは休止引込み位置にある開放ボタンに親指を置き、それを親指で引き起こすことによって脱着可能なハンドルの錠止を解除することができる。
【0041】
本発明は、外側に湾曲した縁部によって上方に延びる側壁を備える調理容器と上述したような脱着可能なハンドルとを少なくとも構成要素とする組立体にも関する。変形実施形態では、湾曲した縁部は垂直な中間部位と縁端部とを備える。
【0042】
本発明の目的、態様および利点については、添付の図面を参照しながら、非限定的な例として示す本発明の具体的実施形態に関する以下の説明によってよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】本発明の1つの具体的実施形態による調理容器と協働する脱着可能なハンドルの斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III断面による脱着可能なハンドルの断面図である。
【
図4】開放ボタンが引起し位置にあるときの
図1の脱着可能なハンドルの斜視図である。
【
図7】
図1の脱着可能なハンドルの開放ボタンと移動手段を示した正面図であって、開放ボタンは休止引込み位置にあり、移動手段は安定した閉鎖位置にあるときの図である。
【
図8】
図1の脱着可能なハンドルの開放ボタンと移動手段を示した正面図であって、開放ボタンは中間引起し位置にあり、移動手段は不安定なバランスの中間位置にあるときの図である。
【
図9】
図1の脱着可能なハンドルの開放ボタンと移動手段を示した正面図であって、開放ボタンは引起し位置にあり、移動手段は安定した開放位置にあるときの図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1および
図2に示すように、脱着可能なハンドル1は、水平な底壁70と、水平な底壁70から立ち上がる側壁61であって、外側に広がるように湾曲した縁部64によって上方に延びる側壁とを備える調理容器60と協働するようにされている。側壁61は内側面62と外側面63とを有する。湾曲した縁部64は側壁61を延長するものであるとともに調理容器60の上部開口を画定するものでもある。湾曲した縁部64は、垂直な中間部65と、垂下した自由端67を有する端縁66とを有する。
【0045】
図1から
図6までのとおり、脱着可能なハンドル1は、構造材10が配設された把持部2を備える。脱着可能なハンドル1は長手方向3に延びる。構造材10は一方の端部に2つの側方脚11a、11bを備える金属部材である。2つの側方脚11a、11bは構造材10の端部に長手方向3に対して横断方向に配設される。2つの側方脚11a、11bは下方に延び、側壁61の湾曲した縁部の垂直な中間部65と協働するようにされた内部支持具12を形成する第1の内部支持部位12aおよび第2の内部支持部位12bをそれぞれの端部に備える。
【0046】
図3から
図5に示すように、脱着可能なハンドルは、側壁61の外側面63と協働するようにされた第1の外部支持部位14aおよび第2の外部支持部位14bを有する外部支持具14を備える。
【0047】
内部支持具12を形成する第1の内部支持部位12aおよび第2の内部支持部位12bと、外部支持具14を形成する第1の外部支持部位14aおよび第2の外部支持部位14bとは、脱着可能なハンドル1を調理容器60に組み立てる際に側壁61および湾曲した縁部64を挿入することができるように垂直軸に沿ってオフセットしている。
【0048】
図3および
図6のとおり、脱着可能なハンドル1は、開位置と閉位置の間で長手方向3に並進可能なラッチ20からなる錠止具を備える。ラッチ20は、長手方向3に対して横断方向4に第1の支持部21aと第2の支持部21bを有する衝止壁21(
図6)を備える。
【0049】
ラッチ20の開位置では、衝止壁21を形成する第1の支持部21aおよび第2の支持部21bは、内部支持具12から離隔することで、側壁61が内部支持具12と外部支持部14の間に挿入され、内部支持部位12aおよび第2の内部支持部位12bが湾曲した縁部64の垂直な中間部位65に突き当たることができるように、さらに外部支持部位14a、14bが側壁61の外側面63に突き当たることができるようにされる。
【0050】
ラッチ20の閉位置では、衝止壁21を形成する第1の支持部21aおよび第2の支持部21bが垂下する自由端67に支えられるようにされて、垂下する自由端67が衝止壁21に対して衝止されるようにする。
【0051】
図3から
図6のとおり、脱着可能なハンドル1は、安定した閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置を経由して安定した開放位置まで移行できるように構成されたラッチ20によって形成される錠止具の移動手段30を備える。移動手段30は、長手方向3に対して横断方向4に延びる枢動軸34に従って枢動可能に把持部2に取り付けられたレバー35と、レバー35が枢動したときにラッチ20が移動できるようにするリンク40とを備える。リンク40は、第1の端部41では軸43に従って枢動可能にラッチ20に取り付けられ、第2の端部42では、レバー35内に設けられた細長い開口部31の中を摺動可能に取り付けられた軸44に従ってレバー35に取り付けられる。
【0052】
レバー35は、閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置を経由して開放位置までの間で枢動軸34に従って回転可能である。そのほか、移動手段は、摺動可能に取り付けられた軸44とレバー35の横断方向壁32の間に配設された圧縮ばね47をさらに備える。この圧縮ばね47は、調理容器60の湾曲した縁部64の幾何学形状に応じて閉位置におけるラッチ20の位置を調整することができる。
【0053】
図3のとおり、レバー35の閉鎖位置では、第2の端部42がその周りを枢動する軸である軸44は枢動軸34および軸43を通る直線6よりも上に位置する。第2の端部42は、圧縮ばね47の作用で把持部2の内壁に当接した状態で保持される。そのため、ユーザが脱着可能なハンドル1に対して何らかの力を維持する必要もなく、ラッチ20は当然のこととしてその閉位置に保たれる。レバー35は、第2の端部42がその周りを枢動する軸である軸44が枢動軸34および軸43を通る直線よりも下に移動すると、その不安定なバランスの中間位置の先へと導かれる。
【0054】
図1から
図6で見て取れるように、脱着可能なハンドル1は、最初は安定した閉鎖位置にある移動手段30を不安定なバランスの中間位置の先へと移行させることができる開放手段50を備えている。開放手段50は、構造材10の開口部80内で把持部2の上面に設けられた開放ボタン50aを備える。開放ボタン50aは、脱着可能なハンドル1の長手方向3に対して水平な横断方向軸51の周りに回転可能である。
図7から
図9までに示すように、開放ボタン50aはレバー35がその閉鎖位置にある休止引込み位置(
図7)と、レバー35がその不安定なバランスの中間位置にある中間引起し位置(
図8)と、レバー35がその開放位置にある引起し位置(
図9)の間で動作可能である。
【0055】
図6から見て取れるように、脱着可能なハンドル1は、把持部2の内壁とラッチ20に備えられたストッパ22の間に配置されたラッチ20の復帰手段5を備える。復帰手段5は、ラッチ20が閉位置にあるときは圧縮状態で働き、レバー35がその完全開位置に誘導されたときには、ストッパ22に対して復帰力を与えてラッチ20をその開位置に誘導するように適合される。
【0056】
図6のとおり、開放手段50は、開放ボタン50aによって横断方向軸51に従って回転可能な第1の押動具50bおよび第2の押動具50cを備える。第1の押動具50bおよび第2の押動具50cは横断方向4に開放ボタン50aの両側に突出して配置される。第1の押動具50bおよび第2の押動具50cは、第1の誘導用輪郭端54bおよび第2の誘導用輪郭端54cをそれぞれ有する短尺レバーアーム52bおよび長尺レバーアーム52cをそれぞれ備える。レバー35は、第1の誘導用輪郭端54bおよび第2の誘導用輪郭端54cと協働するようにされた第1の受け面33aおよび第2の受け面33bを備える。
【0057】
図7および
図8から見て取れるように、短尺レバーアーム52bの第1の誘導用輪郭端54bは、レバー35に設けられた第1の受け面33aに当接するように適合されており、開放ボタン50aが休止引込み位置(
図7参照)から中間引起し位置(
図8参照)に操作されると、レバー35の短い第1のストロークをもたらす。短尺レバーアーム52bは、短い第1のストロークで第1の受け面33aに第1の力を与えて、移動手段をその安定した閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置に移動させるように適合されている。
図7のとおり、開放ボタン50aの休止引込み位置では、リンク40の第2の端部42がその周りを枢動する軸44は、リンク40の第1の端部41がその周りを枢動する軸43および枢動軸34を通る直線6よりも上に位置する。そのため、移動手段30は、ばね47および復帰手段5の作用により、当然のことながらその安定した閉鎖位置に保たれる。
図8のとおり、開放ボタン50aの中間引起し位置では、長尺レバーアーム52cの第2の誘導用輪郭端54cが第2の受け面33bの誘導を開始し、一方、短尺レバーアーム52bの第1の誘導用輪郭端54bは、軸44が軸43および枢動軸34を通る直線6よりも上に位置するため、第1の受け面33aから離れ始める。そのため、移動手段はその不安定なバランスの中間位置にあって、その安定した開放位置に移行する態勢にある。
【0058】
図8および
図9から見て取れるように、長尺レバーアーム52cの第2の誘導用輪郭端54cは、レバー35に設けられた第2の受け面33bに当接するように適合されており、開放ボタン50aが中間引起し位置(
図8参照)から引起し位置(
図9参照)に操作されると、レバー35の長い第2のストロークをもたらす。長尺レバーアーム52cは、長い第2のストロークで第2の受け面33bに第2の力を与えて、移動手段をその不安定なバランスの中間位置から安定した開放位置に移動させるように適合されている。
図9のとおり、開放ボタン50aの引起し位置では、軸44は軸43および枢動軸34を通る直線6よりも上に位置する。そのため、レバー35は第2の力の作用を受けてその開放位置に誘導される。閉鎖位置から開放位置へのレバー35の移動はリンク40を介してラッチ20をその開位置に誘導する。それにより、脱着可能なハンドル1は調理容器60に対する錠止を解除される。
【0059】
長尺レバーアーム52cの長い第2のストロークの最後では、ばね47および復帰手段5の作用により、レバー35は、第2の押動具50cがレバーに対して力を及ぼさなくなるその開放位置から、
図4に示すようなその完全な開位置に持って行かれる。
【0060】
操作としては、調理容器60から脱着可能なハンドル1を取り外すときには、ユーザは把持部2をつかみ、親指でトルクをかけて開放ボタン50aを引き起こして、短尺レバー52bと長尺レバー52cをそれぞれ備える第1の押動具50bおよび第2の押動具50cを枢動させる。それにより、短いレバーアーム52bの第1の誘導用輪郭端54bは、短い第1のストロークで第1の受け面33aに第1の力を加えて、レバー35をその閉鎖位置から不安定なバランスの中間位置に移行させる。長いレバーアーム52cの第2の誘導用輪郭端54cは、長い第2のストロークで第2の受け面33bに第2の力を加えて、レバー35をその不安定なバランスの中間位置からその開放位置に移行させる。閉鎖位置から開放位置へのレバー35の移行はリンク40を介して閉位置から開位置へのラッチ20の移動をもたらす。
【0061】
脱着可能なハンドル1を調理容器60に組み立てるときは、ユーザは把持部2をつかんで、上述したのと同じやり方でラッチ20をその開位置に持って行く。すると、衝止壁21は内部支持具12から離隔する。ユーザは、湾曲した縁部64および側壁61を内部支持具12と支持具14の間に挿入して、垂直な中間部位65が内部支持部位12aおよび内部支持部位12bに当たるように、側壁61の外側面63が外部支持部位14aおよび外部支持部位14bに当たるようにする。次いで、ユーザは、レバー35を押すことによってレバー35をその開放位置から閉鎖位置に移行させ、それによってラッチ20をその開位置から、衝止壁21を形成する第1の支持部21aおよび第2の支持部21bが端縁66の垂下する自由端67に支持されて、湾曲した縁部64を内部支持具12および外部支持具14で衝止するその閉位置に誘導する。これにより、脱着可能なハンドル1は調理容器60に固定される。
【0062】
本発明が、もっぱら例としてのみ掲げて説明し、図示した実施形態だけにいささかも限定されるものでないことは言うまでもない。様々な要素の構成という観点からの変更や、等価の技術による置換えによる変更などは、それによって本発明の保護対象領域から外れることなくなお可能である。
【0063】
1つの変形実施形態では、開放手段に設けられた第1の押動具と第2の押動具はそれぞれ短いカムと長いカムを備え、カムによって運動を与えられる従動体を形成する移動手段に対して短いカムは第1の力を加えるように適合され、長いカムは第2の力を加えるように適合される。
【0064】
逆に、開放手段は、移動手段に設けられた第1の押動具および第2の押動具に対して力を加えるように適合された単一のレバーを備えるものであることができる。第1の押動具および第2の押動具はそれぞれ短いカムの輪郭および長いカムの輪郭を有することができる。
【0065】
別の変形実施形態では、側壁に突き当たるようにされた固定支持具は固定顎部からなり、錠止具は可動クランプからなる。
【符号の説明】
【0066】
1 脱着可能なハンドル
2 把持部
3 長手方向
4 横断方向
5 復帰手段
6 直線
10 構造材
11a 側方脚
11b 側方脚
12 内部支持具
12a 第1の内部支持部位
12b 第2の内部支持部位
14 外部支持具
14a 第1の外部支持部位
14b 第2の外部支持部位
20 ラッチ
21 衝止壁
21a 第1の支持部
21b 第2の支持部
22 ストッパ
30 移動手段
31 細長い開口部
32 横断方向壁
33a 第1の受け面
33b 第2の受け面
34 枢動軸
35 レバー
40 リンク
41 第1の端部
42 第2の端部
43 軸
44 軸
47 圧縮ばね
50 開放手段
50a 開放ボタン
50b 第1の押動具
50c 第2の押動具
51 横断方向軸
52b 短尺レバーアーム
52c 長尺レバーアーム
54b 第1の誘導用輪郭端
54c 第2の誘導用輪郭端
60 調理容器
61 側壁
62 内側面
63 外側面
64 湾曲した縁部
65 垂直な中間部
66 端縁
67 垂下した自由端
70 平な底壁
80 開口部