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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】電気集塵装置
(51)【国際特許分類】
   B03C 3/40 20060101AFI20220722BHJP
   B03C 3/45 20060101ALI20220722BHJP
   B03C 3/41 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B03C3/40 A
B03C3/40 C
B03C3/45 Z
B03C3/41 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018004364
(22)【出願日】2018-01-15
(65)【公開番号】P2019122909
(43)【公開日】2019-07-25
【審査請求日】2020-10-20
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】315016723
【氏名又は名称】三菱重工パワー環境ソリューション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】富松 一隆
(72)【発明者】
【氏名】加藤 雅也
(72)【発明者】
【氏名】上田 泰稔
【審査官】田中 雅之
(56)【参考文献】
【文献】特公昭42-021440(JP,B1)
【文献】特開昭62-007456(JP,A)
【文献】特開2011-161329(JP,A)
【文献】特開2016-073954(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B03C 3/00-11/00
F24F 8/00- 8/99
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状とされ、その長手方向に対して直交する直交方向に所定の間隔をあけて配置された複数の集塵極と、
前記集塵極側に突出し、前記直交方向と平行に並んで配置された複数の放電部と、
を備え、
前記集塵極の横断面の等価直径は、30mm以上80mm以下とされ、前記放電部から前記集塵極へ向けて流れるイオン風の一部が前記集塵極の裏側へ抜ける電気集塵装置。
【請求項2】
所定の間隔をあけて配置された前記集塵極の開口率が、10%以上70%以下とされている請求項1に記載の電気集塵装置。
【請求項3】
一方と他方の前記放電部が、前記直交方向に並べられた前記集塵極の両側にそれぞれ配置され、
前記集塵極の前記長手方向における同一の高さに設置された前記放電部から発生するイオン風が一方向を向くようにして、前記一方の前記放電部から前記集塵極に向かうイオン風が、前記他方の放電部から前記集塵極に向かうイオン風と対向しないように配置されている請求項1又は2に記載の電気集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の電気集塵装置として、ガス流れに沿って平行に配列された平板状の集塵極と、その中央に配列された鋭利な形状を有する放電極とを備えたものが知られている。
【0003】
電気集塵装置では、集塵極と放電極との間に直流高電圧を印加し、放電極に安定したコロナ放電を行うことで、ガス流れ中のダストを帯電させる。従来の集じん理論では、帯電したダストは放電極と集塵極との間の電界下でダストに作用するクーロン力の働きにより集塵極に捕集されると説明されている。
【0004】
ところで、特許文献1,2の電気集塵装置は、ダストを通過させるための複数の貫通孔を備え、内部にダストを捕集するための閉空間を有した集塵極を備えている。特許文献1,2では、貫通孔を介して閉空間にダストを閉じ込めることで捕集ダストが再飛散しにくくさせている。
【0005】
特許文献3の電気集塵装置は、65%から85%の開口率を有するアース電極と、ガスを捕集する集塵フィルタ層と、を含む集塵極を備えている。このような集塵極を備えることにより、特許文献3では、ガス流れと直交する断面内においてイオン風を発生させ、放電極と集塵極との間を循環するらせん状のガス流れを生成させ、ダストを効率よく捕集するようにしている。特許文献3では、イオン風を積極的に利用するが、ダストを主として集じんフィルタ層に捕集させることを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5761461号公報
【文献】特許第5705461号公報
【文献】特許第4823691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電気集塵装置における集塵効率ηは、よく知られた下記のドイチェの式(式(1))により算出することができる。wは、集塵性指数(粒子状物質の移動速度)、fは、単位ガス量当たりの集塵面積である。
η=1-exp(-w×f)・・・(1)
【0008】
上記式(1)において、ダスト(粒子状物質)の移動速度wは、クーロン力による力と、気体の粘性抵抗の関係で決まるとされている。ドイチェの式(上記式(1))では、ダストが放電極から電界中を移動するとされおり、イオン風は性能への影響においては直接考慮されていない。しかしながら、その性能設計の前提であるダスト濃度は、常に放電極と集塵極との間の集じん空間内では一様であるという前提条件があり、イオン風はガスの乱れを生じさせて、ダスト濃度を一様とさせる要因の一つとして考えられている。
【0009】
イオン風は、電極間に負の電圧を印加した際に、放電極でコロナ放電によりマイナスイオンが発生し、その結果、生じるものであり、正の電圧の場合にはプラスのイオンにより生じる。以下、産業用の電気集塵装置をベースに考えるため、負の電圧を印加するケースについて記載するが、正であっても同様である。
【0010】
放電極で生じたイオン風は、集塵極に向けて、ガス流れを横切るよう流れる。集塵極に達したイオン風は、集塵極で反転して流れ方向を変える。これにより、電極間にらせん状の乱流が生じる。
【0011】
乱流のうち、放電極から集塵極へと向かう流れは、ダストを集塵極近傍まで運ぶ作用がある。集塵極近傍まで運ばれたダストは、最終的にはクーロン力により捕集される。
【0012】
しかしながら、集塵極で反転したイオン風は、収集体である集塵極から離れる方向へとダストを移動させるため、集塵を阻害するような作用もある。
【0013】
なお、特許文献3には、イオン風の効果も考慮した電気集塵装置を記載している。しかしながら、このケースでは、開口部を有する集塵極の背後にあるフィルタ層にイオン風を送り込む構造であり、主ガスの影響を受けない領域で集塵することを目的としていて、構造も複雑であること、及び、乾式ではフィルタ層に付着したダストの剥離回収が困難であった。
【0014】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、集塵効果を低減するイオン風の離反作用を抑制し、集塵効率を高めることのできる電気集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様に係る電気集塵装置は、柱状とされ、その長手方向に対して直交する直交方向に所定の間隔をあけて配置された複数の集塵極と、前記集塵極側に突出し、前記直交方向と平行に並んで配置された複数の放電部と、を備え、前記集塵極の横断面の等価直径は、30mm以上80mm以下とされ、前記放電部から前記集塵極へ向けて流れるイオン風の一部が前記集塵極の裏側へ抜ける。
【0016】
柱状の集塵極を所定の間隔をあけて配置することで、放電部から集塵極へ向けて流れるイオン風の一部が集塵極の裏側へ抜けることを許容する。これにより、イオン風が集塵極で反転されて離反する流れを抑制できる。
集塵極の横断面の等価直径を30mm以上とした。等価直径を小さくすると電界集中が大きくなり集塵性は高まる。しかし、等価直径が小さくなりすぎると、集塵に必要な電流を確保したままでは電界強度のピーク値が大きくなり火花放電が生じる。このため、等価直径としての下限は30mmである。
集塵極の横断面の等価直径を80mm以下とした。等価直径が大きくなりすぎると、集塵極近傍における電界強度の持ち上がりが殆どなくなり、平板電極の平均電界強度程度になってしまう。また、等価直径が大きいとガス流れに対して渦を発生させてしまう。このため、等価直径としての上限は80mmである。
等価直径とは、所定形状の横断面と等価な円形の直径を意味する。したがって、横断面が円形の場合は、その直径に相当する。
集塵極としては、例えば円形断面とされたパイプ形状の部材が挙げられる。ただし、横断面形状としては、円形以外には、長円形、楕円形、多角形などが用いられる。また、集塵極としては中空だけでなく中実としても良い。
電気集塵装置を流れるガスの流れ方向は、集塵極が並べられた直交方向でも良いし、集塵極の長手方向でも良い。
集塵極は、槌打によるダストの剥離回収や、集塵極を移動させてブラシでダストを掻き落とす方式や、湿式洗浄も可能である。
【0017】
さらに、本発明の一態様に係る電気集塵装置は、所定の間隔をあけて配置された前記集塵極の開口率が、10%以上70%以下とされている。
【0018】
開口率が10%未満となるとイオン風の離反抑制効果が低くなる。開口率が70%を超えると有効な集塵面積が少なくなり集塵性を低下させる。
開口率αは、等価直径をd、集塵極の中心間ピッチをPcとすると、以下のように表される。
α=1-((d×3.14÷2)÷Pc)×100 [%]
【0019】
さらに、本発明の一態様に係る電気集塵装置は、一方と他方の前記放電部が、前記直交方向に並べられた前記集塵極の両側にそれぞれ配置され、前記集塵極の前記長手方向における同一の高さに設置された前記放電部から発生するイオン風が一方向を向くようにして、前記一方の前記放電部から前記集塵極に向かうイオン風が、前記他方の放電部から前記集塵極に向かうイオン風と対向しないように配置されている。
【0020】
一方と他方の放電部が、直交方向に並べられた集塵極の両側にそれぞれ配置されている場合に、一方の放電部から集塵極に向かうイオン風が、他方の放電部から集塵極に向かうイオン風と対向しないように配置するようにした。これにより、イオン風が干渉して集塵を阻害することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0021】
所定間隔をあけて配置した柱状の集塵極を用いることとしたので、イオン風が集塵極から離反するのを抑制して集塵効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の一実施形態に係る電気集塵装置を示した斜視図である。
図2図1の電気集塵装置を上方から見た平面図である。
図3図1の電気集塵装置をガス流れ方向から見た正面図である。
図4図3の変形例を示した正面図である。
図5】集塵極と突起部との位置関係を示した横断面図である。
図6】突起部と集塵極との間の電気力線を示した横断面図である。
図7】集塵極の等価直径の下限を30mmとした根拠を示すグラフである。
図8】集塵極の等価直径の上限を80mmとした根拠を示すグラフである。
図9】集塵極の電界強度の持ち上がりを示したグラフである。
図10】平板電極の電界強度の持ち上がりを示したグラフである。
図11】集塵面積比を開口率に対して示したグラフである。
図12図1の変形例を示した斜視図である。
図13図5の変形例を示した横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に、本発明に係る電気集塵装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0024】
電気集塵装置1は、例えば石炭等を燃料とする火力発電プラントに用いられ、ボイラから導かれた燃焼排ガス中のダスト(粒子状物質)を回収する。
【0025】
電気集塵装置1は、例えば金属製等の導電性とされた複数の集塵極4を備えている。集塵極4は、円形の横断面を有する中空の柱状とされた円形パイプとされており、長手方向に直交する直交方向(ガス流れG方向)に所定の間隔をあけて配列されている。ガス流れG方向に配列された集塵極4列は、所定間隔をあけて平行に複数列設けられている。集塵極4の各列の間に、放電極5が配置されている。図1では、放電極5が配置される位置が破線で示されている。
【0026】
集塵極4は接地されている。放電極5は、図示しない負の極性を有する電源に接続されている。あるいは、放電極5に接続する電源は正の極性を有していても良い。
【0027】
図2に示すように、放電極5には、トゲ状とされた複数の突起部(放電部)5aが設けられている。突起部5aは、集塵極4側に先端を向けて突出するように設けられている。突起部5aにおいてコロナ放電が発生し、突起部5aの先端から集塵極4側に向けてイオン風が発生する。
【0028】
図3には、図1をガス流れG方向から見た正面図が示されている。同図に示されているように、突起部5aは、高さ方向において、突起の向きが互い違い(同図において左右の方向に異なる向き)になるように設けられている。そして、集塵極4を挟んで、同じ高さに対応する突起部5a同士は、同じ方向に突起している。このような突起部5aの配置とすることによって、突起部5aから集塵極4側に向かうイオン風が高さ方向において略同じ方向を向くようにする。これにより、イオン風の干渉を避けることができるようになっている。
なお、図4に示すように、すべての突起部5aを同一方向(同図では右方向)に向くようにして、イオン風の方向を揃えるようにしても良い。
【0029】
図5には、集塵極4と突起部5aとの位置関係が示されている。図5は、図2に示した構成において、ある高さ位置の突起部5aの位置で切断して示した横断面図となっている。したがって、平面視した図2のように両側に突起部5aが現れておらず、一方のみに向いた突起部5aのみが示されている。図5に示すように、集塵極4の中心間ピッチPcと突起部5aの中心間ピッチPdとを等しくすることが好ましい。そして、隣り合う集塵極4間に対向するように突起部5aを千鳥状に配置することが好ましい。このように配置することで、図6に示すように、電気力線が各集塵極4に均等に分配され、かつ、集塵極4の円形とされた横断面の突起部5aから見て奥行き側まで電気力線を到達させることができる。なお、図5に示した符号Dは、集塵極4と突起部5aとの直交方向(同図において上下方向)における距離であり、例えば125mm~250mmとされている。
【0030】
このように集塵極4の奥行きまで電気力線が到達することを考慮して、突起部5a側から集塵極4を正面視したときの開口率αは以下のように表される。
α=1-((d×3.14÷2)÷Pc)×100 [%]
ここで、dは集塵極4の等価直径である。等価直径とは、所定形状の横断面と等価な(同一面積を有する)円形の直径を意味する。したがって、本実施形態のように集塵極4の横断面が円形の場合は、その直径に相当する。
開口率αは、10%以上70%以下とされている。その根拠については、後に図11を用いて説明する。
【0031】
集塵極4の等価直径dは、30mm以上80mm以下とされている。
集塵極4の横断面の等価直径dを30mm以上とした理由は以下の通りである。等価直径dを小さくすると電界集中が大きくなり集塵性は高まる。しかし、等価直径dが小さくなりすぎると、図7に示すように、集塵に必要な電流密度(例えば0.3mA/m)を確保したままでは電界強度のピーク値が大きくなり火花電界強度の10kV/cmを超えて火花放電が生じる。このため、等価直径dとしての下限は30mmである。
【0032】
集塵極4の横断面の等価直径dを80mm以下とした理由は以下の通りである。等価直径dが大きくなりすぎると、集塵極4の近傍における電界強度の持ち上がり(後に図9を用いて説明する。)が殆どなくなり、穴のない平板電極の平均電界強度(2kV/cm)程度になってしまう。また、等価直径dが大きいとガス流れに対して影響を及ぼし渦を発生させてしまう。このため、等価直径dとしての上限は80mmである。例えば、上記と同じ条件で算出される等価直径dが30mmのときの平均電界強度は約5.7kV/cmである。
なお、図8の縦軸は平均電界強度とされており、集塵極4の表面積で平均化した電界強度である。この平均電界強度は、図7の縦軸のピーク電界強度とは異なる。ピーク電界強度は、集塵極4の表面のうち最も電界強度が高い位置における電界強度である。
【0033】
次に、図9を用いて、集塵極4の近傍の電界強度の持ち上がりについて説明する。同図に示すように、横軸が位置を示しており、y軸に相当する位置に突起部5aが位置しているものとする。縦軸は電界強度である。電界強度は、突起部5aの位置で最も高くなり、集塵極4との間で極小値をとった後に、再び集塵極4に向かいながら増大する。集塵極4の近傍では、電界強度の増加率(傾き)が大きい領域Bが存在する。これは、集塵極4の近傍はダストやマイナスイオンが有する空間電荷の影響で電界強度が高くなるからである。この領域Bにおける電界強度の増大を“電界強度の持ち上がり”という。領域Bではクーロン力が支配的となる領域となり、集塵極4におけるダストPの集塵が効果的に行われる。
【0034】
領域Bよりも突起部5a側の領域Aは、イオン風の支配領域とされる。領域Aでは、ガス中のダストPは、クーロン力も受けつつ、主としてイオン風に伴って集塵極4へと導かれる。
【0035】
図10には、参考例として、集塵極として従来のような穴なしの平板電極7を用いた場合の電界強度が示されている。同図から分かるように、平板電極7近傍における電界強度の絶対値は、図9に示した円形パイプとされた集塵極4よりも小さく、電界強度の持ち上がりも小さい。したがって、円形パイプとされた集塵極4よりも集塵性能が劣ることが分かる。
【0036】
図11には、開口率αに対する集塵面積比が示されている。集塵面積比は、開口率0%(隙間がない場合)のときの集塵性能を1とした場合に、同じ集塵性能を発揮する場合の集塵面積を示すものである。したがって、集塵面積比は、小さいほど捕集効率が高いことを示す。
【0037】
図11に示されているように、開口率αが10%以上70%以下の場合に集塵面積比が0.8以下となる。したがって、開口率αは10%以上70%以下(適用範囲)が好ましい。
【0038】
次に、本実施形態の電気集塵装置1の動作を説明する。
電気集塵装置1では、放電極5に電源から負電圧を印加することで、突起部5aの先端でコロナ放電が発生する。ガス流れGに含まれるダストは、コロナ放電により帯電される。従来の電気集塵装置の捕集原理では、帯電されたダストは、クーロン力により接地された集塵極4に引き寄せられ、集塵極4上に捕集されるとされてきたが、実際にはイオン風の影響が大きく作用している。
【0039】
コロナ放電が発生すると、突起部5a近くでマイナスイオンが発生し、そのマイナスイオンが電界によって集塵極4に向けて移動し、イオン風が生じる。そのためクーロン力がダストに作用すると同時に、集塵極4に向かって流れるイオン風が、ガス流れGに含まれるダストを集塵極4の近傍まで移動させるように作用する。そして、集塵極4の近傍の領域B(図9参照)では、電界強度の持ち上がりが大きいので効果的にダストを集塵する。また、円形パイプとされた集塵極4を所定の間隔をあけて配置することで、突起部5aから集塵極4へ向けて流れるイオン風の一部が集塵極4の裏側へ抜けることを許容する。これにより、イオン風が集塵極4で反転されて離反する流れを抑制できるため、捕集効率が向上する。
【0040】
ダストを含んで集塵極4に向かって流れるイオン風の一部は、集塵極4の間を通り抜ける。図3及び図4に示したように、同一高さにおける突起部5aの全てが同一方向に向けられているので、イオン風は一方向に向けられ、互いに干渉することがない。
【0041】
集塵極4に捕集されたダストは、槌打によって剥離回収される。あるいは、集塵極を移動させてブラシでダストを掻き落とす方式や、湿式洗浄を採用しても良い。
【0042】
本実施形態によれば、以下の作用効果を奏する。
円形パイプとされた集塵極4を所定の間隔をあけて配置することで、突起部5aから集塵極4へ向けて流れるイオン風の一部が集塵極4の裏側へ抜けることを許容する。これにより、イオン風が集塵極4で反転されて離反する流れを抑制できる。
【0043】
集塵極4の横断面の等価直径dを30mm以上80mm以下とした。これにより、集塵極4の集塵性能を向上させることができる。
【0044】
開口率αを10%以上70%以下とした。これにより、有効な集塵面積を確保して集塵性能を向上させることができる。
【0045】
同一の高さに設置された突起部5aから発生するイオン風が一方向を向くようにして、他の高さに設定された突起部5aから発生するイオン風と干渉しないようにした(図3参照)。これにより、イオン風によって集塵が阻害されることを抑制することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態は、以下のように変形することができる。
図1では、ガス流れGの方向が、集塵極4の長手方向に直交するようになっていたが、図12に示すように、ガス流れGの方向を集塵極4の長手方向としても良い。
【0047】
また、図5では、集塵極4のピッチPcと突起部5aのピッチPdを同等として説明したが、図13に示すように、集塵極4のピッチPcを突起部5aのピッチPdよりも小さくしても良い。この場合には、各集塵極4に電気力線が可及的に均等に分配されるように整列させて配置することが好ましい。
【0048】
また、本実施形態では、集塵極4として円形パイプとして説明したが、集塵極4の横断面形状としては、円形以外に、長円形、楕円形、多角形などを用いても良い。また、集塵極4としてはパイプのような中空に代えて中実としても良い。
【符号の説明】
【0049】
1 電気集塵装置
4 集塵極
5 放電極
5a 突起部(放電部)
7 平板電極
α 開口率
d 等価直径
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13