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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】基地局のフレーム同期システム
(51)【国際特許分類】
   H04J 3/06 20060101AFI20220722BHJP
   H04W 56/00 20090101ALI20220722BHJP
   H04W 52/02 20090101ALI20220722BHJP
   H04L 7/08 20060101ALI20220722BHJP
   H04L 7/00 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
H04J3/06 A
H04W56/00 130
H04W52/02 110
H04L7/08
H04L7/00 930
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018042190
(22)【出願日】2018-03-08
(65)【公開番号】P2019161315
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】501440684
【氏名又は名称】ソフトバンク株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】503011332
【氏名又は名称】ビー・ビー・バックボーン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(74)【代理人】
【識別番号】100128691
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 弘通
(72)【発明者】
【氏名】梅原 剛
(72)【発明者】
【氏名】菅 司
【審査官】谷岡 佳彦
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2011-0069522(KR,A)
【文献】韓国登録特許第10-0577055(KR,B1)
【文献】特開2009-010955(JP,A)
【文献】特開2009-278424(JP,A)
【文献】特開2014-070897(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04J 3/06
H04W 56/00
H04W 52/02
H04L 7/08
H04L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDD(時間分割信)方式で移動局と無線通信を行う基地局のフレーム同期を行うためのシステムであって、
建物内でGPS衛星からの電波を受信可能な位置に設置され、前記GPS衛星からの電波を受信するGPS受信部と、前記GPS受信部のGPS受信信号に基づいて前記フレーム同期のための無線同期信号を送信する無線通信部とを有する第1同期信号送信装置を複数備え、
前記建物内の前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから無線同期信号を受信可能な位置に設置され、前記無線同期信号を受信する無線通信部と、前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから受信した無線同期信号に基づいて、有線接続を介して、前記フレーム同期のための有線同期信号を送信する有線通信部とを有する同期信号受信装置を備え、
前記複数の第1同期信号送信装置はそれぞれ、前記無線同期信号の送信を間欠的に行い、
前記同期信号受信装置は、前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから間欠的に受信した無線同期信号を結合した連続する同期信号に基づいて、前記有線同期信号を前記基地局に送信することを特徴とするシステム。
【請求項2】
請求項1のシステムにおいて、
前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから間欠的に送信する前記無線同期信号の送信期間は、互いに異なり、前記同期信号受信装置が各第1同期信号送信装置から間欠的に受信した無線同期信号を結合して前記無線同期信号が連続するように設定されていることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1又は2のシステムにおいて、
前記複数の第1同期信号送信装置はそれぞれ、前記無線同期信号の間欠的な送信に対応させて、前記GPS衛星からの電波の受信を間欠的に行うことを特徴とするシステム。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかのシステムにおいて、
前記第1同期信号送信装置は、前記建物の窓に設置され、電源を供給する内蔵電池を有することを特徴とするシステム。
【請求項5】
請求項4のシステムにおいて、
前記第1同期信号送信装置は、前記建物の窓の隅に設置されていることを特徴とするシステム。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかのシステムにおいて、
前記建物内に設置され、有線接続を介して前記有線同期信号を受信する有線通信部と、前記有線通信部で受信した前記有線同期信号に基づいて、前記無線同期信号を送信する無線通信部とを有する第2同期信号送信装置を更に備え、
前記同期信号受信装置は、有線接続を介して前記基地局に又は前記基地局及び前記第2同期信号送信装置の両方に、前記有線同期信号を送信することを特徴とするシステム。
【請求項7】
請求項6のシステムにおいて、
前記第2同期信号送信装置は、前記建物内の前記第2同期信号送信装置と同じフロアに設置されている同期信号受信装置から、有線接続を介して前記有線同期信号を受信し、前記同じフロアに設置されている他の同期信号受信装置に前記無線同期信号を送信し、
前記他の同期信号受信装置は、前記同じフロアに設置されている基地局に、有線接続を介して前記有線同期信号を送信することを特徴とするシステム。
【請求項8】
請求項6又は7のシステムにおいて、
前記第2同期信号送信装置は、前記建物の地下フロアに設置され、前記第2同期信号送信装置が設置されているフロアよりも上位階のフロアに設置されている同期信号受信装置から、有線接続を介して前記有線同期信号を受信し、前記地下フロアに設置されている他の同期信号受信装置に前記無線同期信号を送信し、
前記他の同期信号受信装置は、前記地下フロアに設置されている基地局に、有線接続を介して前記有線同期信号を送信することを特徴とするシステム。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかのシステムにおいて、
前記同期信号受信装置から有線接続を介して送信された前記有線同期信号を分岐して転送するLAN分岐装置を更に備えることを特徴とするシステム。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかのシステムにおいて、
前記同期信号受信装置から有線接続を介して前記有線同期信号を受信し、前記有線同期信号に基づいて基地局間のフレーム同期を実行可能なTDD方式の複数の基地局を更に備えることを特徴とするシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、TDD(時間分割復信)方式で移動局と無線通信を行う基地局のフレーム同期に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、同一周波数帯を使用して移動局と基地局との間で無線通信を行う通信システムとして、TD-LTE(Time Division Long Term Evolution)方式、PHS(Personal Handy Phone System)方式、DECT(Digital Enhanced Cordless Telecommunications)方式などのTDD(時分割復信)方式を用いるものが知られている(例えば、特許文献1及び非特許文献1参照)。TDD方式では、基地局から移動局へのダウンリンクと移動局から基地局へのアップリンクとを時間軸上で分割するように無線フレームが構成される。
【0003】
TDD方式の基地局が他のTDD方式の基地局のセル内に設置されているエリア(例えば、建物の同じフロアで複数のTDD方式の基地局が設置されているエリア)では、基地局間の干渉が発生するおそれがある。基地局間の干渉が発生すると、基地局と移動局との間の通信のスループットが低下したり移動局との通信ができなくなったりする。この基地局間の干渉を防止するため、ダウンリンク及びアップリンクそれぞれのタイミングを基地局間でそろえるフレーム同期が行われる。
【0004】
建物内に設置されたTDD方式の基地局のフレーム同期を行うシステムとしては、GPS衛星からの電波を受信したGPS受信信号を用いたものがある。例えば、GPS衛星からの電波を受信するGPS受信機を建物の屋上などの屋外に設置し、GPS受信機と基地局との間を同軸ケーブルで配線し、GPS受信信号を基地局に引き込んで基地局のフレーム同期を行うシステムがある。また、同軸ケーブルを介してGPS受信機とPTP(Precision Time Protocol)サーバとを接続し、UTPケーブル等のLANケーブルを介してPTPサーバ(マスター装置)及び基地局(スレーブ装置)が時刻情報の付与されたPTPパケットを互いにやり取りし、基地局(スレーブ装置)がPTPパケットの送信時刻及び受信時刻に基づいて装置間の遅延と装置間の時間のズレを算出し、基地局(スレーブ装置)の時刻をPTPサーバ(マスター装置)の時刻に合わせることにより、基地局のフレーム同期を行うシステムがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-211918号公報
【非特許文献】
【0006】
【文献】3GPP TS 36.211 V13.1.0 (2016-04), Technical Specification Group Radio Access Network; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (E-UTRA); Physical Channels and Modulation, Release 13
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記基地局のフレーム同期を行うシステムにおいて、基地局のフレーム同期の精度を低下させることなく、GPS衛星からの電波を受信する装置を駆動する電池の寿命を長くしたいという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の一態様に係るシステムは、TDD(時間分割復信)方式で移動局と無線通信を行う基地局のフレーム同期を行うためのシステムであって、建物内でGPS衛星からの電波を受信可能な位置に設置され、前記GPS衛星からの電波を受信するGPS受信部と、前記GPS受信部のGPS受信信号に基づいて前記フレーム同期のための無線同期信号を送信する無線通信部とを有する第1同期信号送信装置を複数備え、前記建物内の前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから無線同期信号を受信可能な位置に設置され、前記無線同期信号を受信する無線通信部と、前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから受信した無線同期信号に基づいて、有線接続を介して、前記フレーム同期のための有線同期信号を送信する有線通信部とを有する同期信号受信装置を備え、前記複数の第1同期信号送信装置はそれぞれ、前記無線同期信号の送信を間欠的に行い、前記同期信号受信装置は、前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから間欠的に受信した無線同期信号を結合した連続する同期信号に基づいて、前記有線同期信号を送信する、
前記システムにおいて、前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから間欠的に送信する前記無線同期信号の送信期間は、互いに異なり、前記同期信号受信装置が各第1同期信号送信装置から間欠的に受信した無線同期信号を結合して前記無線同期信号が連続するように設定してもよい。
また、前記システムにおいて、前記複数の第1同期信号送信装置はそれぞれ、前記無線同期信号の間欠的な送信に対応させて、前記GPS衛星からの電波の受信を間欠的に行ってもよい。
また、前記システムにおいて、前記第1同期信号送信装置は、前記建物の窓に設置され、電源を供給する内蔵電池を有してもよい。
また、前記システムにおいて、前記第1同期信号送信装置は、前記建物の窓の隅に設置してもよい。
また、前記システムにおいて、前記建物内に設置され、有線接続を介して前記有線同期信号を受信する有線通信部と、前記有線通信部で受信した前記有線同期信号に基づいて、前記無線同期信号を送信する無線通信部とを有する第2同期信号送信装置を更に備え、前記同期信号受信装置は、有線接続を介して前記基地局に又は前記基地局及び前記第2同期信号送信装置の両方に、前記有線同期信号を送信してもよい。
また、前記システムにおいて、前記第2同期信号送信装置は、前記建物内の前記第2同期信号送信装置と同じフロアに設置されている同期信号受信装置から、有線接続を介して前記有線同期信号を受信し、前記同じフロアに設置されている他の同期信号受信装置に前記無線同期信号を送信し、前記他の同期信号受信装置は、前記同じフロアに設置されている基地局に、有線接続を介して前記有線同期信号を送信してもよい。
また、前記システムにおいて、前記第2同期信号送信装置は、前記建物の地下フロアに設置され、前記第2同期信号送信装置が設置されているフロアよりも上位階のフロアに設置されている同期信号受信装置から、有線接続を介して前記有線同期信号を受信し、前記地下フロアに設置されている他の同期信号受信装置に前記無線同期信号を送信し、前記他の同期信号受信装置は、前記地下フロアに設置されている基地局に、有線接続を介して前記有線同期信号を送信してもよい。
また、前記システムにおいて、前記同期信号受信装置から有線接続を介して送信された前記有線同期信号を分岐して転送する分岐装置を更に備えてもよい。
また、前記システムは、前記同期信号受信装置から有線接続を介して前記有線同期信号を受信し、前記有線同期信号に基づいて基地局間のフレーム同期を実行可能なTDD方式の複数の基地局を更に備えてもよい。
【0009】
本発明の他の態様に係る方法は、TDD(時間分割復信)方式で移動局と無線通信を行う基地局のフレーム同期を行うための同期信号を伝送する方法であって、建物内でGPS衛星からの電波を受信可能な位置に設置された複数の第1同期信号送信装置それぞれにおいて、GPS衛星からの電波を間欠的に受信することと、前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから、前記フレーム同期のための無線同期信号を、前記建物内に設置された同期信号受信装置に間欠的に送信することと、前記複数の第1同期信号送信装置それぞれから間欠的に受信した無線同期信号を結合した連続する同期信号に基づいて、前記フレーム同期のための有線同期信号を、前記同期信号受信装置から有線接続を介して、前記基地局に、又は、前記基地局及び前記建物内に設置された第2同期信号送信装置の両方に伝送することと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、基地局のフレーム同期の精度を低下させることなく、GPS衛星からの電波を受信する装置を駆動する電池の寿命を長くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るフレーム同期システムを適用可能なTDD方式の基地局を含む移動通信システムの一例を示す説明図。
図2】TD-LTE方式の基地局と移動局との間の無線通信に用いられる無線フレームの一例を示す説明図。
図3】TD-LTE方式の基地局間の無線フレームのずれによる干渉の一例を示す説明図。
図4】実施形態に係るTD-LTE方式の基地局間のフレーム同期の一例を示す説明図。
図5】実施形態に係るフレーム同期システムの全体構成の一例を示す説明図。
図6図5のフレーム同期システムを構成する各装置の基本構成の一例を示すブロック図。
図7】他の実施形態に係るフレーム同期システムの全体構成の一例を示す説明図。
図8】更に他の実施形態に係るフレーム同期システムの概略構成を示す説明図。
図9図8のフレーム同期システムを構成する各装置の基本構成を示すブロック図。
図10】(a)~(c)はそれぞれ、本実施形態に係るフレーム同期システムにおける第1同期信号送信装置及び同期信号受信装置の配置の一例を示す説明図。
図11図10のフレーム同期システムにおける窓に複数配置された第1同期信号送信装置の配置例を示す説明図。
図12図10のフレーム同期システムにおける複数の第1同期信号送信装置のGPS信号の間欠受信及び同期信号受信装置から送信される連結後の有線同期信号の一例を示す説明図。
図13】参考例に係るフレーム同期システムの概略構成を示す説明図。
図14】他の参考例に係るフレーム同期システムの概略構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1(a)及び(b)はそれぞれ、実施形態に係るフレーム同期システムを適用可能な基地局を含む移動通信システムの一例を示す説明図である。
図1(a)は、同一周波数帯で使用されるTDD(時分割復信)方式の複数の基地局(「アクセルポイント(AP)」ともいう。)として、広域のマクロセル25Aを形成する基地局(マクロセル基地局)25と、そのマクロセル25Aの中にスモールセル(「フェムトセル」、「ピコセル」ともいう。)20Aを形成する基地局(スモールセル基地局)20とを備えるセルラー方式の移動通信システムの例を示している。また、図1(b)は、同一周波数帯で使用されるTDD方式の複数の基地局として、スモールセル20Aを形成する複数の基地局20を備えるセルラー方式の移動通信システムの例を示している。図1(b)において、各スモールセルの中には、隣接する他の基地局が位置する。
【0013】
本実施形態の基地局25,20はそれぞれ、同一周波数帯(例えば1.9GHz帯の周波数帯(1880MHz~1920MHz))において、LTE/LTE-Advancedの標準規格に準拠したTD-LTE方式で移動局(「ユーザ機器」又は「UE」ともいう。)10との間で、アップリンク(UL)及びダウンリンク(DL)の双方向の無線通信を行う。
【0014】
なお、図1(a)及び(b)における基地局25,20はそれぞれ、TD-LTE方式を用いる基地局(「eNodeB」とも呼ばれる。)であるが、PHS方式やDECT方式などの他のTDD方式の基地局であってもよい。また、マクロセルの基地局25がTD-LTE方式の基地局であり、スモールセルの基地局20がPHS方式やDECT方式などの他のTDD方式の基地局であってもよい。
【0015】
スモールセル20Aを形成する基地局20は、例えば、建物の中のトラフィックが集中しているエリアに配置され、建物内に位置する多数の移動局による移動通信のトラフィック増加に対応することができる。
【0016】
図2は、TD-LTE方式の基地局と移動局との間の無線通信に用いられる無線フレームの一例を示す説明図である。図2に示すように、同一周波数帯のTD-LTE方式の無線通信における時間軸上の1単位である所定周期(Tf=10ms)の無線フレーム(RF)150は、10分割された1msのサブフレーム(SF)で構成されている。1つのサブフレーム(SF)は更に2つのタイムスロット(TS)に分割することができる。すなわち、1つの無線フレームは、10個のサブフレーム(20個のタイムスロット)で構成される。このように時間軸上で分割されたサブフレームに、例えば、基地局から移動局へのダウンリンク(DL)と、移動局から基地局へのアップリンク(UL)が交互に割り当てられる。
【0017】
図3は、TD-LTE方式の基地局間の無線フレームのずれによる干渉の一例を示す説明図である。互いに近接する複数の基地局(AP1,AP2)20間で無線フレームのずれが発生すると各基地局と移動局との間のDL及びULの通信で干渉が発生する。例えば、図3に示すようにDLのサブフレームとULのサブフレームとが対応するように無線フレームのずれが発生すると、出力が大きい基地局(AP1)20のDLの送信信号が他方の基地局(AP2)20のULに干渉し、基地局(AP2)20のULのスループットが大きく低下し、最悪の場合はULの通信ができない状態になる。
【0018】
上記基地局間の干渉を防止するため、基地局間で無線フレームのDLのサブフレームが互いに対応するとともにULのサブフレームが互いに対応するようにフレーム同期を行う必要がある(図4参照)。
【0019】
建物内に設置されたTD-LTE方式の基地局20間のフレーム同期には、GPS衛星からの電波を受信したGPS受信信号を用いることができる。このようなフレーム同期のシステムとしては、前述のように、建物90の屋上などの屋外に設置したGPS受信機910と建物90内の基地局920との間を同軸ケーブル930で配線し、GPS受信信号を基地局920に引き込んで基地局920のフレーム同期を行うシステム(図13参照)や、同軸ケーブル930を介してGPS受信機910とPTPサーバ940とを接続し、LANケーブル950及びHUB960を介してPTPサーバ940及び基地局920が時刻情報の付与されたPTPパケットを互いにやり取りし、基地局920がPTPパケットの送信時刻及び受信時刻に基づいて装置間の遅延と装置間の時間のズレを算出し、基地局920の時刻をPTPサーバ940の時刻に合わせることにより基地局920のフレーム同期を行うシステム(図14参照)がある。しかしながら、このようなフレーム同期システムでは、GPS受信機910からのアナログ信号としての同期信号を、同軸ケーブル930を介して建物内の基地局920やPTPサーバ940に引き込む必要があり、しかも、その同軸ケーブル930はLANケーブルよりも高価であり、また、デジタル信号の増幅器よりも高価なアナログ信号の増幅器が必要になる場合もあるため、設置コストが大きい。また、図9のフレーム同期システムでは、高額なPTPサーバの設置、ルータやHUBによる信号の分岐などが必要であり、更に設置コストが大きい。
【0020】
そこで、本実施形態では、以下に示すようにGPS受信機から建物内の基地局へアナログ信号を伝送する高価な同軸ケーブルの配線及び基地局への引き込み、高額なアナログ信号の増幅器やPTPサーバの設置、ルータやHUBによる信号の分岐などが不要になるように構成してフレーム同期システムの設置コストを低減している。
【0021】
図5は、実施形態に係るフレーム同期システムの全体構成の一例を示す説明図である。また、図6は、図5のフレーム同期システムを構成する各装置の基本構成の一例を示すブロック図である。図5及び図6は、地上3階及び地下3階のビルからなる建物90の各階のフロアにTD-LTE方式のスモールセルを形成する基地局(AP)20を設置した例を示している。
【0022】
本実施形態のフレーム同期システムは、GPS衛星80からの電波(GPS信号)を受信するGPS受信機能を有する第1同期信号送信装置30と、第1同期信号送信装置30と無線通信可能な同期信号受信装置40と、LANケーブルを介して同期信号受信装置40と通信可能な第2同期信号送信装置35とを備えている。
【0023】
第1同期信号送信装置30は、例えば手のひらにのる程度の小型サイズ(例えば、幅:100mm以下、長さ:150mm以下、厚さ:100mm以下のサイズ)であり、GPS受信機能を有し、建物90内でGPS衛星80からの電波(GPS信号)を受信可能な位置(例えば窓際の位置)に設置される。第1同期信号送信装置30を窓に設置する場合、窓の景観を損なわないように、窓の目立たない位置に設置される。また、第1同期信号送信装置30を例えば高層ビル、オフィスビル、ホテル、病院等の窓に設置する場合、窓の景観という観点とは異なる観点から、設置場所について各種制約がある。例えば、 第1同期信号送信装置30を病院等の窓に設置する場合には、第1同期信号送信装置30が医療機器に影響を与えないようにするなど、設置位置の制約がある。そのため、各種制約から電源ケーブルを引き込めない際にも対応できるように内蔵電池304で駆動するように構成されている。
【0024】
第1同期信号送信装置30は、GPS衛星80からの電波(GPS信号)を受信するアンテナ及びGPS受信機等を含むGPS受信部301と、GPS受信部301のGPS受信信号に基づいてフレーム同期のための無線同期信号を送信するアンテナを含む無線通信部302と、GPS受信部301及び無線通信部302を制御する制御部303とを有する。制御部303は、例えばCPU、RAM,ROM等の記憶手段、クロック等を有し、所定の制御プログラムが実行されることにより、第1同期信号送信装置30内の各種信号処理や制御を行う手段として機能する。
【0025】
同期信号受信装置40は、同期信号のリピータ機能を有し、建物90内の第1同期信号送信装置30からの無線同期信号を受信可能な位置に設置される。同期信号受信装置40は、第1同期信号送信装置30からの無線同期信号を受信する無線通信部401と、無線通信部401で受信した無線同期信号に基づいて、LANケーブル(例えばUTPケーブル)50を介して、フレーム同期のための有線同期信号を送信する有線通信部402と、無線通信部401及び有線通信部402を制御する制御部403とを有する。同期信号受信装置40の無線通信部401は、第2同期信号送信装置35からの無線同期信号も受信することができる。有線通信部402は、有線同期信号としての後述のPTP信号を送信するPTPマスタとして機能するように構成してもよい。制御部403は、例えばCPU、RAM,ROM等の記憶手段、クロック等を有し、所定の制御プログラムが実行されることにより、同期信号受信装置40内の各種信号処理や制御を行う手段として機能する。
【0026】
第2同期信号送信装置35は、同期信号のリピータ機能を有し、建物90内に設置される。第2同期信号送信装置35は、LANケーブル(例えばUTPケーブル)50を介して同期信号受信装置40からの有線同期信号を受信する有線通信部351と、有線通信部351で受信した有線同期信号に基づいて無線同期信号を送信する無線通信部352と、有線通信部351及び無線通信部352を制御する制御部353とを有する。有線通信部351は、有線同期信号としての後述のPTP信号を受信するPTPスレーブとして機能するように構成してもよい。制御部353は、例えばCPU、RAM,ROM等の記憶手段、クロック等を有し、所定の制御プログラムが実行されることにより、第2同期信号送信装置35内の各種信号処理や制御を行う手段として機能する。
【0027】
第1同期信号送信装置30及び第2同期信号送信装置35から同期信号受信装置40への無線同期信号の送信は、例えば、電波法等で免許が不要とされている特定小電力無線局などの所定の空中線電力(例えば0.01W以下)及び所定の周波数帯(例えば、920MHz)の電波を用いることができる。図5中の一点鎖線で示したエリア350は、第1同期信号送信装置30及び第2同期信号送信装置35から送信された無線同期信号の電波が同期信号受信装置40で受信可能なエリアを示している。
【0028】
第1同期信号送信装置30及び第2同期信号送信装置35から送信される無線同期信号は、例えば、GPS受信信号に基づいて生成された、絶対時刻に同期した所定周期(例えば、1秒)のPPS(Pulse Per Second)基準信号である。無線同期信号は、所定の基準周波数(例えば、1MHz又は10MHz)の基準クロック信号(Time-of-Day reference signal)を含んでもよい。
【0029】
同期信号受信装置40から基地局20及び第2同期信号送信装置35に送信される有線同期信号は、例えばIEEE1588で規定されているPTP(Precision Time Protocol)の規格に準拠した時間同期用のPTP信号である。
【0030】
また、LANケーブル(例えばUTPケーブル)50は、建物90に他の用途で設置済みの既存のLANケーブルであってもよく、また、既存のHUBを利用して任意に分岐して配線することができる。なお、有線同期信号の伝送を行う有線接続には、LANケーブル50以外のデジタル信号を伝送するケーブルを用いてもよい。例えば、有線接続には、光ファイバケーブルを用いてもよい。
【0031】
図5において、建物90の地上階(1階~3階)それぞれの窓等に取り付けられた第1同期信号送信装置30は、屋外のGPS衛星80からの電波を受信し、所定の搬送周波数(例えば920MHz)で屋内に無線同期信号を発信する。
【0032】
第1同期信号送信装置30と同じ階(1階~3階)に設置された同期信号受信装置40は、第1同期信号送信装置30から発信された無線同期信号を受信し、有線(例えば、UTPケーブルなどのLANケーブル)を介して近傍のスモールセルの基地局20に有線同期信号を送信する。基地局20は、同期信号受信装置40から受信した有線同期信号に基づいて、所定の時間精度(例えば、±1.5μs以下の精度)でフレーム同期を行うことができる。
【0033】
更に、3階に設置された同期信号受信装置40は、有線(例えば、UTPケーブルなどのLANケーブル)を介して、同じ3階に設置された第2同期信号送信装置35に対して有線同期信号を送信する。第2同期信号送信装置35は、同期信号受信装置40から有線同期信号を受信し、同じ3階に設置された同期信号受信装置40に対して無線同期信号を発信する。同期信号受信装置40は、第2同期信号送信装置35から発信された無線同期信号を受信し、近傍のスモールセルの基地局20に有線同期信号を送信する。基地局20は、同期信号受信装置40から受信した有線同期信号に基づいて、所定の時間精度(例えば、±1.5μs以下の精度)でフレーム同期を行うことができる。このように同じ階に第1同期信号送信装置30、同期信号受信装置40及び第2同期信号送信装置35を設置することにより、LANケーブルを追加配線することなく、同じ階で同期信号を受信可能なエリアを広くすることでき、同じ階の広範囲のエリアにわたって設置されている基地局20が同期信号を受信してフレーム同期を行うことができるようになる。
【0034】
また、1階に設置された同期信号受信装置40は、有線(例えば、UTPケーブルなどのLANケーブル)を介して、一つ下の階(地下1階)に設置された第2同期信号送信装置35に対しても有線同期信号を送信する。地下1階に設置された第2同期信号送信装置35は、地上1階に設置された同期信号受信装置40から有線同期信号を受信し、地下1階に設置された同期信号受信装置40に対して無線同期信号を発信する。地下1階に設置された基地局20は、同期信号受信装置40から有線同期信号を受信し、所定の時間精度でフレーム同期を行うことができる。
【0035】
地下1階に設置された同期信号受信装置40は、第2同期信号送信装置35から無線同期信号を受信し、有線(例えば、UTPケーブルなどのLANケーブル)を介して、近傍のスモールセルの基地局20に有線同期信号を送信するするとともに、更に一つ下の階(地下2階)に設置された第2同期信号送信装置35に対しても有線同期信号を発信する。以上の無線同期信号及び有線同期信号の送受信を繰り返することにより、フレーム同期に用いる同期信号を建物90の地下3階のフロアまで供給することができる。
【0036】
以上、本実施形態によれば、従来システムにおける建物の屋上などの屋外に設置したGPS受信機と建物内の基地局との間を高価な同軸ケーブルの配線及び基地局への引き込み、高額なPTPサーバの設置などが不要になる。従って、建物90内の各階に設置されている複数の基地局20にフレーム同期を行うための同期信号を配信するフレーム同期システムの設置コストを低減することができる。
【0037】
特に、本実施形態によれば、同一フロア内での配線の引き回しを最小限に抑えることができ、配線をコンパクトすることができる。また、同期信号受信装置40側にPTPマスタとしての機能を持たせることにより、第1同期信号送信装置30にPTPマスタの機能を持たせる必要がなく、第1同期信号送信装置30内のデバイスの数量を少なくすることができる。従って、第1同期信号送信装置30の重量を軽減でき、第1同期信号送信装置30の内蔵電池304の電池消費を軽減することができる。また、有線同期信号の配信のための配線を同期信号受信装置40から行うため、地上階の窓際に設置した第1同期信号送信装置30への追加配線が不要となり、建物90内の基地局(AP)20用に配線されている既存のLANケーブル(UTPケーブル)を、有線同期信号の配信に有効活用することができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、同期信号受信装置40と第2同期信号送信装置35との間の配線にLANケーブル(UTPケーブル)を使用しているため、高価な同軸ケーブルや光ケーブルを使用する場合や、シリアルケーブル又はUSBケーブルを使用する場合とは異なり、建物90内の既存のLANケーブル(UTPケーブル)を使用することができ、追加のケーブル配線が不要である。また、同期信号受信装置40と第2同期信号送信装置35との間に赤外線通信やBluetooth(登録商標)、WiFi等の無線通信を使用する場合に比して、同期信号の遅延が小さく、より精度の高いフレーム同期が可能になる。また、同期信号受信装置40と第2同期信号送信装置35とを離して配線することができるため、同期信号受信装置40と第2同期信号送信装置35とを一体的に構成する場合に比して第2同期信号送信装置35から出力する電波の干渉の影響を小さくすることができ、また、同期信号を配信できるエリアを地下エリアまで容易に展開することができる。
【0039】
また、本実施形態によれば、既存のLANケーブル(UTPケーブル)を利用できるため、建物90の地上階から地下階にわたる広範囲エリアをカバーして同期信号を配信するためにLANケーブルの追加配線が不要である。特に、地上1階から地下への窓際の配線を行う必要がない。また、地上1階の第1同期信号送信装置30から地下の第2同期信号送信装置35に直接配線する場合に設ける高性能なHUB(低遅延なHUB)が不要である。
【0040】
なお、図5の実施形態において、第1同期信号送信装置30を基準にし、無線同期信号の送受信の1回あたりの同期信号の時間精度Δtを±1.5μsとした場合、地下1階の基地局20では、無線同期信号の2回の送受信を経由して同期信号を受信するため同期信号の時間精度Δt(B1F)は±3.0μsになる。同様に、地下2階の基地局20では、無線同期信号の3回の送受信を経由して同期信号を受信するため同期信号の時間精度Δt(B2F)は±4.5μsになり、地下3階の基地局20では、無線同期信号の4回の送受信を経由して同期信号を受信するため同期信号の時間精度Δt(B3F)は±6.0μsになる。このように第1同期信号送信装置30を基準にしたときの同期信号の時間精度は地下にいくほど劣化する。しかしながら、地下の同一フロア内に位置する複数の基地局20間では、同期信号の時間精度を±1.5μs以下にすることができ、フレーム同期を精度よく行うことができるため、地下の同一フロア内の基地局間の干渉を確実に防止できる。
【0041】
図7は、他の実施形態に係るフレーム同期システムの全体構成の一例を示す説明図である。なお、図7において、前述の図5と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。図7は、地上1階の同期信号受信装置40と地下の基地局20及び第2同期信号送信装置35とを、LANケーブル50で直接接続せずに、LAN分岐装置としてのHUB55を介して接続している。地上1階の同期信号受信装置40からLANケーブル50を介して送信された有線同期信号は、HUB55で分岐され、地下の基地局20及び第2同期信号送信装置35に転送される。
【0042】
特に、図7の実施形態によれば、地上1階の同期信号受信装置40から、既存のLANケーブル50及びHUB55を介して、地下の複数の基地局20及び第2同期信号送信装置35に転送できるため、同期信号の配信エリア(範囲)を地下へ容易に拡大することができる。
【0043】
なお、図7の実施形態において、第1同期信号送信装置30を基準にし、無線同期信号の送受信の1回あたりの同期信号の時間精度Δtを±1.5μsとした場合、地下1階の基地局20では、無線同期信号の送受信を経由せずに同期信号を受信するため同期信号の時間精度Δt(B1F)は±1.5μsのままである。また、地下2階及び地下3階の基地局20では、無線同期信号の2回の送受信を経由して同期信号を受信するため同期信号の時間精度Δt(B2F)及びΔt(B3F)は±3.0μsになる。しかしながら、図7の実施形態においても、地下の同一フロア内に位置する複数の基地局20間では、同期信号の時間精度を±1.5μs以下にすることができ、フレーム同期を精度よく行うことができるため、地下の同一フロア内の基地局間の干渉を確実に防止できる。
【0044】
図8は、更に他の実施形態に係るフレーム同期システムの概略構成の一例を示す説明図である。また、図9は、図8のフレーム同期システムを構成する各装置の基本構成を示すブロック図である。なお、図8及び図9において、前述の図5及び図6と共通する部分については同じ符号を付し、説明を省略する。
【0045】
図8及び図9のフレーム同期システムにおいて、建物90の窓際に設置されるGPS受信機能付きの第1同期信号送信装置31は、本実施形態の第1同期信号送信装置30とは異なり、PTP信号を送信するPTPマスタとして機能する有線通信部305を更に備える。第1同期信号送信装置31の有線通信部305は、GPS受信部301のGPS受信信号に基づいてフレーム同期のための有線同期信号(PTP信号)を、LANケーブル(例えばUTPケーブル)50,51を介して送信する。第2同期信号送信装置35は、LANケーブル(例えばUTPケーブル)50,51を介して第1同期信号送信装置31からの有線同期信号を受信する。
【0046】
図8及び図9のフレーム同期システムにおいても、従来システムにおける建物の屋上などの屋外に設置したGPS受信機と建物内の基地局との間の高価な同軸ケーブルの配線及び基地局への引き込み、高額なPTPサーバの設置などが不要になる。従って、建物90内の各階に設置されている複数の基地局20にフレーム同期を行うための同期信号を配信するフレーム同期システムの設置コストを低減することができる。
【0047】
以上の各実施形態のフレーム同期システムにおいて、以下に示すように、建物90の同一フロア内に複数の第1同期信号送信装置30が設置され、同期信号受信装置40は複数の第1同期信号送信装置30から無線同期信号を受信するように構成されている。
【0048】
図10(a)~(c)はそれぞれ、更に他の実施形態に係るフレーム同期システムにおける第1同期信号送信装置及び同期信号受信装置の配置の一例を示す説明図である。なお、本実施形態のフレーム同期システムの全体構成及び各装置の基本構成は、前述の図5及び図6と同様であるため、それらの説明は省略する。
【0049】
本実施形態のフレーム同期システムでは、建物90の地上階の同一フロアにおいて窓91の内面に、電池を内蔵した複数の第1同期信号送信装置30が配置されている。例えば図10(a)及び図10(b)では二つの窓91のそれぞれに第1同期信号送信装置30が2台ずつ配置され、図10(c)では一つの窓91に3台の第1同期信号送信装置30が配置されている。図10(a)~(c)において同期信号受信装置40は同一フロアにある複数の第1同期信号送信装置30のすべてから無線同期信号を受信できる位置に配置されている。なお、同期信号受信装置40が無線同期信号を受信できるように建物90の同一フロアに設置する第1同期信号送信装置30の数は2台でもよいし、5台以上であってもよい。
【0050】
図11は、図10の実施形態のフレーム同期システムにおける窓91に複数配置された第1同期信号送信装置30の配置例を示す説明図である。図11に示すように、複数の第1同期信号送信装置30はそれぞれ、窓91の内面の景観を大きく損なわない箇所(例えば窓の上部左右の隅)に貼り付けて設置することができる。また、第1同期信号送信装置30は電池を内蔵しており、視界に入りやすい電源ケーブルがないため、フロアのコンセントの近くに設置するという制約を受けることなく、景観を大きく損なわない箇所(例えば窓の上部左右の隅)に設置することができる。
【0051】
図12は、図10の実施形態のフレーム同期システムにおける複数の第1同期信号送信装置30のGPS信号の間欠受信及び同期信号受信装置から送信される連結後の有線同期信号の一例を示す説明図である。なお、図12は、同一フロアに3台の第1同期信号送信装置30を配置した例を示しているが、同一フロアに配置する第1同期信号送信装置30の数は2台でもよいし、4台以上であってもよい。
【0052】
図12において、複数の第1同期信号送信装置30はそれぞれ、無線同期信号RF1~RF3の送信を間欠的に行うことにより、各第1同期信号送信装置30における消費電力を低減し、各第1同期信号送信装置30を駆動する電池の寿命を長くすることができる。従って、第1同期信号送信装置30を大型化することなく、第1同期信号送信装置30の電池交換などのメンテナンスコストを低減することができる。
【0053】
また、同期信号受信装置40は、複数の第1同期信号送信装置30それぞれから間欠的に受信した無線同期信号RF1~RF3を連結した連続する同期信号に基づいて、連結後の連続した有線同期信号Sを送信することにより、複数の第1同期信号送信装置30を一つの第1同期信号送信装置と見なすことができ、基地局20におけるフレーム同期の精度の低下を抑制できる。
【0054】
特に、本実施形態では、複数の第1同期信号送信装置30それぞれから間欠的に送信する無線同期信号RF1~RF3の送信期間T1~T3は、互いに異なり、同期信号受信装置40が各第1同期信号送信装置30から間欠的に受信した無線同期信号を結合して無線同期信号が連続するように設定されている。これにより、同期信号受信装置40を介して基地局20に供給される同期信号に欠落部分がなくなり、基地局20におけるフレーム同期の精度の低下をより確実に抑制できる。
【0055】
なお、図10図12の実施形態において、複数の第1同期信号送信装置30はそれぞれ、無線同期信号RF1~RF3の間欠的な送信に対応させて、GPS衛星80からの電波(GPS信号)の受信を間欠的に行ってもよい。この場合は、第1同期信号送信装置30における消費電力を更に低減することができる。GPS衛星80から発信される同期信号は時間的に連続している信号であるが、このGPS衛星から連続的に発信される同期信号を連続的に受信しようとすると、第1同期信号送信装置30における消費電力が大きくなってしまう。特に、GPS衛星からの同期信号の受信動作は、高周波増幅、ミキサ、局部発振、中間周波増幅、時刻などのコードデータの復調などの多くの処理を伴うため、第1同期信号送信装置30における消費電力の中で、GPS衛星からの同期信号の受信動作による消費電力が一番大きい。従って、第1同期信号送信装置30においてGPS衛星80から発信される同期信号を間欠受信することが消費電力の削減に最も寄与する。そして、第1同期信号送信装置30では、前述のように有線同期信号を間欠的に発信することによって消費電力が更に削減される。
【符号の説明】
【0056】
10 移動局
20 スモールセルの基地局
20A スモールセル
25 マクロセルの基地局
25A マクロセル
30 第1同期信号送信装置
301 GPS受信部
302 無線通信部
303 制御部
304 電池
35 第2同期信号送信装置
351 有線通信部
352 無線通信部
353 制御部
40 同期信号受信装置
401 無線通信部
402 有線通信部
403 制御部
50 LANケーブル
55 HUB
80 GPS衛星
90 建物
91 窓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
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