(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】固定金具及び支柱の設置方法
(51)【国際特許分類】
E04F 11/18 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
E04F11/18
(21)【出願番号】P 2018066690
(22)【出願日】2018-03-30
【審査請求日】2021-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000145437
【氏名又は名称】株式会社ウッドワン
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【氏名又は名称】信末 孝之
(72)【発明者】
【氏名】菅原 康司
(72)【発明者】
【氏名】持田 湖
【審査官】荒井 隆一
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-247651(JP,A)
【文献】実開昭61-090927(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 11/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支柱の基部に形成された丸穴に挿入し、前記支柱を所定箇所に設置するための固定金具であって、
係止部材を用いて所定箇所に固定される底板部と、
前記底板部に連結され、前記底板部から立ち上がった状態で前記丸穴に挿入されて、前記丸穴の内面に平面視3点以上で接する複数の立体板部とを有し、
前記底板部を係止部材で固定するときの前記複数の立体板部が開いた開状態と、前記丸穴へ挿入するときの前記複数の立体板部が閉じた閉状態とに変化可能であることを特徴とする固定金具。
【請求項2】
前記底板部と前記複数の立体板部とが折曲可能な連結部を介して連結されていることを特徴とする
請求項1に記載の固定金具。
【請求項3】
前記丸穴に挿入された状態で、少なくとも1つの立体板部の下端が前記係止部材の上端に接することを特徴とする請求項1
又は請求項2に記載の固定金具。
【請求項4】
前記複数の立体板部の少なくとも1つの外周部が、下方に向けて凸状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至
請求項3のうちいずれか1つに記載の固定金具。
【請求項5】
基部に丸穴が形成された支柱を、底板部と複数の立体板部とを有する固定金具を用いて設置する支柱の設置方法であって、
前記複数の立体板部が開いた開状態で前記底板部を係止部材で所定箇所に固定し、
前記複数の立体板部が閉じた閉状態で前記固定金具を前記丸穴に挿入することを特徴とする支柱の設置方法。
【請求項6】
前記所定箇所が水平でない場所であるときに、前記底板部を係止部材で固定した後、前記複数の立体板部を鉛直方向となるように閉じて、前記所定箇所の傾きに合わせた支柱の丸穴に前記固定金具を挿入することを特徴とする
請求項5に記載の支柱の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、階段やホールの手摺を支持する子柱を踏板、ササラ桁、階上の床などに固定する、あるいは、仕切り壁の間柱を床上あるいは仕切り壁上に固定するための、固定金具及び支柱の設置方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、階段の手摺を支持する子柱を踏板に固定するための、様々な施工方法がある。例えば、昔ながらの伝統的な施工方法として、子柱下部に形成したφ24程度の凸状のホゾを、踏板表面に形成したホゾ穴に、接着剤を塗布して嵌め込む方法がある。また、ホゾの代わりに、円柱状の木製部材(ダボ)を用いた方法がある。これは、子柱下部と踏板表面にそれぞれダボの入る丸穴を形成し、ダボに接着剤を塗布して両側をダボ穴に挿入して、子柱と踏板を固定するものである。
【0003】
近年、スリムでシャープな意匠が好まれるようになり、柱の固定強度向上が必要となり、柱を1つ上の段の踏み板の段鼻に固定したり、柱に金属を使用した手摺とするなど工夫がなされている。柱を金属とする場合、中空の角柱を製造することは容易で、角柱の角穴に入れる角状の金具が望まれることから、金属子柱と踏板とを金具を介して固定するようにした施工方法がある。例えば、特許文献1乃至特許文献3には、上方が閉口した側面視コ字状の固定金具を踏板に取り付けて、金属製子柱の下部に挿入するようにした固定金具に関する発明が記載されている。しかしながら、柱が木製の場合、24mm厚の柱にφ12程度のダボ穴を穿つのが柱の強度的に限界で、ダボ自身の強度も考慮するとダボを更に細くは出来ず、穴径も小さく出来ず、結果柱を細く出来ない状況にある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭58-156824号公報
【文献】特開2003-213875号公報
【文献】特開2006-132231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のホゾやダボを用いた施工方法では、施工性の問題と経年劣化の問題があった。すなわち、子柱下部に形成した凸状のホゾを、踏板表面に形成したホゾ穴に嵌め込む方法は、ホゾやホゾ穴を精度よく加工するための高度な技量が要求され、精度が悪いとガタツキが生じてしまう。施工現場で現物に合わせ、手作業中心の加工をすると精度が出にくく施工性も悪い。このため、ガタツキ防止や強度を上げるために接着剤を使用し、接着剤が十分硬化するまで次の作業に移れない。
【0006】
木製部材(ダボ)を用いた方法は、踏み板表面の穴の精度(位置、傾き、ドリル振れによる大きさや形状への影響)が必要であるなど、ホゾを用いた場合と同様の問題がある。
何れの方法でも、経年変化により木材が収縮し、穴径が大きくなって、ホゾやダボとの間に隙間が出来て、施工当初は無かったがたつきが発生することが有る。
【0007】
また、特許文献1乃至特許文献3に記載した発明のように、金属製子柱と踏板とを金具を介して固定する施工では、金属の柱は肉厚を薄くしても強度が保てるために、固定金具の大きさも柱外形よりも少し小さい程度で済ます事が出来る。また、強度面からはその長さは短く出来た。しかし、これを木質材料の子柱に用いる場合には、強度面から長くする必要があり、上方が開口したコ字状の固定金具を踏板に取り付ける際に、固定金具の入口が狭く工具を入れづらい、あるいは、工具が引っかかるなど、取り付けに際して課題となる。また、固定金具の構造(床面への固定方法、上方からの締め付けの為に柱が中空である必要性、側面からネジ止めなど)も複雑であった。
【0008】
他方で、ホゾやダボの例で述べたように、木質材料に穴加工する場合、丸穴を空けるのはドリル等で容易に加工できるが、角穴はドリル刃外周に角ノミを装着した刃先を用いるなど特殊なものが必要である。また、ホゾを角形状とする加工も複雑である。ただ、柱を回転させず固定するために、角穴や、角ホゾ、角ダボが使用されることも稀にあるが、加工に手間(コスト)が掛かる。
【0009】
木質の場合、柱外形寸法が37×24mmの物で12mmφ程度の丸穴が強度面から必要となり、より細い金具が必要となる。
【0010】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、木質の柱の強度を保って挿入できる点と、優れた施工性とを両立できる、固定金具及び支柱の設置方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明の固定金具は、支柱の基部に形成された丸穴に挿入し、前記支柱を所定箇所に設置するための固定金具であって、係止部材を用いて所定箇所に固定される底板部と、前記底板部に連結され、前記底板部から立ち上がった状態で前記丸穴に挿入されて、前記丸穴の内面に平面視3点以上で接する複数の立体板部とを有することを特徴とする。
【0012】
また好ましくは、前記底板部と前記複数の立体板部とが折曲可能な連結部を介して連結されていることを特徴とする。
【0013】
また好ましくは、前記底板部を係止部材で固定するときの前記複数の立体板部が開いた開状態と、前記丸穴へ挿入するときの前記複数の立体板部が閉じた閉状態とに変化可能であることを特徴とする。
【0014】
また好ましくは、前記丸穴に挿入された状態で、少なくとも1つの立体板部の下端が前記係止部材の上端に接することを特徴とする。
【0015】
また好ましくは、前記複数の立体板部の少なくとも1つの外周部が、下方に向けて凸状に形成されていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明の支柱の設置方法は、基部に丸穴が形成された支柱を、底板部と複数の立体板部とを有する固定金具を用いて設置する支柱の設置方法であって、前記複数の立体板部が開いた開状態で前記底板部を係止部材で所定箇所に固定し、前記複数の立体板部が閉じた閉状態で前記固定金具を前記丸穴に挿入することを特徴とする。
【0017】
また好ましくは、前記所定箇所が水平でない場所であるときに、前記底板部を係止部材で固定した後、前記複数の立体板部を鉛直方向となるように閉じて、前記所定箇所の傾きに合わせた支柱の丸穴に前記固定金具を挿入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明の固定金具は、支柱の基部に形成された丸穴に挿入し、支柱を所定箇所に設置するための固定金具であって、係止部材を用いて所定箇所に固定される底板部を有しているので、底板部を係止部材で所定箇所に強固に固定することができる。また、底板部に連結され、底板部から立ち上がった状態で丸穴に挿入されて、丸穴の内面に平面視3点以上で接する複数の立体板部とを有しているので、支柱と所定箇所との間を強固に固定することができる。
【0019】
また、複数の立体板部を、左側立体板部及び右側立体板部とし、左側立体板部が右側立体板部の内側に収まるようにした場合には、立ち上がった状態の形状を維持しやすいため、より強固に固定することができる。また、経年変化による木材の収縮によって、柱側の丸穴が大きくなっても、金具の立体板部の開こうとする力によって、穴の内側に接触し続けることで、がたつきが生じにくい。また、固定先に直接木ネジ等の係止部材で固定するようにすれば、下穴が不要である。また、固定先の上側からすべての施工が行えるので、施工が容易である。また、固定した底板部も柱の丸穴の中に隠れるので、外観がスリムできれいであり、床と柱の間に隙間が生じないので、根元の施工状態を隠すためのカバーなども不要である。
【0020】
また、底板部と複数の立体板部とが折曲可能な連結部を介して連結されている場合には、連結部を折曲することで、より少ない力で変形することができる。
【0021】
また、底板部を係止部材で固定するときの複数の立体板部が開いた開状態と、丸穴へ挿入するときの複数の立体板部が閉じた閉状態とに変化可能である場合には、係止部材を固定するための工具の入口を広くした状態で固定することができ、工具の取り扱いが容易である。
【0022】
また、丸穴に挿入された状態で、少なくとも1つの立体板部の下端が係止部材の上端に接する場合には、施工後に係止部材の緩みを防止することができる。
【0023】
また、複数の立体板部の少なくとも1つの外周部が、下方に向けて凸状に形成されている場合には、固定金具と支柱とを接着剤を用いることなく強固に固定することができ、施工性に優れている。
【0024】
また、本発明の支柱の設置方法は、基部に丸穴が形成された支柱を、底板部と複数の立体板部とを有する固定金具を用いて設置する支柱の設置方法であって、複数の立体板部が開いた開状態で底板部を係止部材で所定箇所に固定し、複数の立体板部が閉じた閉状態で固定金具を丸穴に挿入するので、係止部材を固定するための工具の入口を広くした状態で固定することができ、工具の取り扱いが容易である。
【0025】
また、所定箇所が水平でない場所であるときに、底板部を係止部材で固定した後、複数の立体板部を鉛直方向となるように閉じて、所定箇所の傾きに合わせた支柱の丸穴に固定金具を挿入する場合には、水平面と傾斜面との両方に共通して使用できる。
【0026】
このように、本発明の固定金具及び支柱の設置方法は、木質の柱の強度を保って挿入できる点と、優れた施工性とを両立できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明の実施形態に係る固定金具の(A)平面図、(B)正面図、(C)底面図、(D)左側面図である。
【
図5】固定金具の他の施工状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
次に、
図1乃至
図12を参照して、本発明の実施形態に係る固定金具について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る固定金具100の(A)平面図、(B)正面図、(C)底面図、(D)左側面図である。
図2は、固定金具100の形状変化を示す斜視図である。
【0029】
図1及び
図2に示すように、固定金具100は、底板部10、左側立体板部20、連結部30、右側立体板部40及び連結部50から構成されている。固定金具100は、鉄板等の金属板を打ち抜いて折曲することにより、容易に製造することができる。
【0030】
底板部10は矩形状であり、中央部分に孔11が設けられている。孔11は、固定金具100を踏板などに固定するための係止部材である木ネジ6を挿通させるためのものである。
【0031】
底板部10の対向する位置(対向する辺)には、折曲可能な連結部30及び連結部50が設けられている。そして、断面コ字状の左側立体板部20が連結部30を介して底板部10に連結されている。同様に、断面コ字状の右側立体板部40が連結部50を介して底板部10に連結されている。
図2(A)は、連結部30,50を折り曲げる前の状態を示しており、
図1及び
図2(B)は、連結部30,50を折り曲げた後の状態を示したものである。連結部30,50を折り曲げることにより、左側立体板部20及び右側立体板部40を立ち上げて、固定金具100を角柱状にすることができるようになっている。
【0032】
左側立体板部20は、板材20a,20b,20cにより、底板部10から立ち上げる前の状態で上方を開口部とする断面コ字状に形成されている。同様に、右側立体板部40は、板材40a,40b,40cにより、底板部10から立ち上げる前の状態で上方を開口部とする断面コ字状に形成されている。また、左側立体板部20の開口部外側の間隔(板材20bの外側と板材20cの外側の間隔)は、右側立体板部40の開口部内側の間隔(板材40bの内側と板材40cの内側の間隔)よりも狭くなっており、連結部30,50を折り曲げて固定金具100を角柱状にしたときに、左側立体板部20が右側立体板部40の内側に収まるようになっている。
【0033】
次に、
図3及び
図4を参照して、本実施形態に係る固定金具100を用いた施工方法について説明する。
図3は、固定金具100の施工手順を示す図である。
図4は、固定金具100の施工状態を示す斜視図である。
【0034】
固定金具100は、階段の手摺を支持する子柱を踏板に固定するためのものである。
図4に示すように、階段1には、手摺2を支持するための親柱4と複数の子柱3が設置されている。親柱4は床面に固定されており、複数の子柱3は踏板5の上に固定されている。このとき、踏板5に取り付けられた固定金具100は、子柱3の底部に形成された丸穴7に挿入された状態になっている。
【0035】
子柱3を踏板5に固定するにあたっては、まず
図3(1)に示すように、連結部30,50を折り曲げる前の状態(左側立体板部20及び右側立体板部40が開いた開状態)で、固定金具100を踏板5に置き、底板部10の孔11に係止部材である木ネジ6を挿通させて踏板5にねじ込んで固定する。このとき、固定部材100はまだ角柱状ではなく、孔11の上方は広く開いている。従って、木ネジ6をねじ込むための工具(ドライバー等)の邪魔にならず、取り扱いが容易である。なお、踏板5には予め木ネジ6をねじ込む穴を形成しておいてもよい。
【0036】
固定金具100を踏板5に取り付ける際は、上から(底板部10の表側から)木ネジ6をねじ込むだけなので、踏板5に下穴をあけなくてもよい。また、子柱3を強固に固定するために、より長いダボを使用しなくても、木ネジでの固定であればダボよりも短い木ネジで同様の強度を出せる。ダボの場合、踏板の厚みより長いダボは使用できなかったが、その制限がなくなる。
【0037】
次に、
図3(2)に示すように、固定金具100の連結部30,40を折り曲げて左側立体板部20及び右側立体板部40を立ち上げる。なお、
図3(2)も開状態の一種(半開き)であり、半開き状態にしておいてから踏板5に置き、底板部10を木ネジ6で固定してもよい。そして、
図3(3)に示すような角柱状にする(左側立体板部20及び右側立体板部40が閉じた閉状態)。連結部30,50には、折り曲げ用の折り目を形成しておくとよい。
【0038】
次に、
図3(4)に示すように、子柱3の底部に形成した丸穴7に固定金具100を上端部から挿入する。丸穴7の深さは固定金具100が収まるように確保されている。また、
図3(4)のa-a矢視断面図に示すように、丸穴7は円筒状であって、角柱状の固定金具100とは、4点で接して固定されるようになっている。
【0039】
なお、固定金具100が丸穴7の中でガタつかないように、角柱状にしたときの大きさを設定することが好ましい。このとき、固定金具100を構成する左側立体板部20の開口部が右側立体板部40の開口部の内側に当接してストッパーの役目を果たすようにすることもできる。また、固定金具100を角柱状にする際に、左側立体板部20及び右側立体板部40が開く方向に付勢されるように、調整して折り曲げることによって、丸穴7に挿入した状態で丸穴7の内面を押圧するようにすることもできる。
【0040】
施工時に、固定金具100の左右の立体板部20,40を指でつまむなどして閉じながら、丸穴7の中に挿入する。丸穴7の中に入った後は、金属の持つ反発力で立体板部を開こうとし、丸穴7の内側の側面に添う。この開こうとする力は、固定金具の形状ばらつきも吸収する。このような力で保持されるので、接着剤を使用しなくてもよい。これにより、接着剤が乾くまで待つ必要なく次の工程(手摺部分を付けるなど)を施工できる。また、解体する場合は、手摺部分(柱上端が留められた部分)を外した後、柱を抜き取ることができ、その後固定金具を開いて木ネジを外すことで容易に解体できる。
【0041】
また、固定金具100の左右の立体板部20,40が長いほど、丸穴7の内側に接触する面積が増え、固定に効果がある。
【0042】
また、底板部10は、子柱3の丸穴7に入る大きさとすることにより、子柱設置後に固定金具100が隠蔽されるので、意匠性に優れる。
【0043】
また、子柱3の上端に取り付けられる手摺2の下面に、下に開口する凹型の溝を形成し、四角い子柱3をその溝に差し込んで施工し、さらに子柱間の溝をフィレットで塞ぐことにより、四角い子柱が回転するのを防ぐことができる。
【0044】
本実施形態に係る固定金具100は、支柱3の基部に形成された丸穴7に挿入し、子柱3を踏板5に設置するための固定金具100であって、木ネジ6を用いて踏板5に固定される底板部10を有しているので、底板部10を木ネジ6で踏板5に強固に固定することができる。また、底板部10に連結され、底板部10から立ち上がった状態で丸穴7に挿入されて、丸穴7の内面に平面視4点で接する左右の立体板部20,40とを有しているので、支柱3と踏板5との間を強固に固定することができる。
【0045】
また、立体板部を左側立体板部20及び右側立体板部40とし、左側立体板部20が右側立体板部40の内側に収まるようにしたので、立ち上がった状態の形状を維持しやすいため、より強固に固定することができる。また、経年変化による木材の収縮によって、柱側の丸穴7が大きくなっても、金具の立体板部20,40の開こうとする力によって、穴の内側に接触し続けることで、がたつきが生じにくい。また、固定先に直接木ネジ6で固定するようにすれば、下穴が不要である。また、固定先の上側からすべての施工が行えるので、施工が容易である。また、固定した底板部10も柱の丸穴7の中に隠れるので、外観がスリムできれいであり、床と柱の間に隙間が生じないので、根元の施工状態を隠すためのカバーなども不要である。
【0046】
また、底板部10と左右の立体板部20,40とが折曲可能な連結部30,50を介して連結されているので、連結部30,50を折曲することで、より少ない力で変形することができる。
【0047】
また、底板部10を木ネジ6で固定するときの左右の立体板部20,40が開いた開状態と、丸穴7へ挿入するときの左右の立体板部20,40が閉じた閉状態とに変化可能であるので、木ネジ6を固定するための工具の入口を広くした状態で固定することができ、工具の取り扱いが容易である。
【0048】
また、本実施形態に係る支柱の設置方法は、基部に丸穴7が形成された子柱3を、底板部10と左右の立体板部20,40とを有する固定金具100を用いて設置する支柱の設置方法であって、左右の立体板部20,40が開いた開状態で底板部10を木ネジ6で踏板5に固定し、左右の立体板部20,40が閉じた閉状態で固定金具100を丸穴7に挿入するので、木ネジ6を固定するための工具の入口を広くした状態で固定することができ、工具の取り扱いが容易である。
【0049】
このように、本発明の固定金具及び支柱の設置方法は、木質の柱の強度を保って挿入できる点と、優れた施工性とを両立できるものである。
【0050】
また、
図4には、子柱3の一部をササラ桁8上面に直接立てている。この場合、ササラ桁8上面は傾斜しており、子柱3の下端を傾斜に合わせて斜めに切断したものを使用するが、固定金具100はそのままで以下のように使用する(
図4b部詳細図参照)。まず、傾斜した面の所定位置に、係止部材6を用いて、開状態で固定する。左右の側板部20,40を立ち上げる際に、鉛直となるように、底板部10からは角度を持って閉じる。左右の側板部20,40は上下にずれた状態で角柱状となるが、この水平面視形状、大きさは、通常の閉状態と同じ大きさと成るので、子柱3の丸穴7にそのまま挿入することが出来、これにより、同じ金具を使用して傾斜面にも子柱を鉛直に固定することが出来る。
【0051】
すなわち、子柱3を設置する所定箇所が水平でない場所であるときに、底板部10を係止部材6で固定した後、左右の立体板部20,40を鉛直方向となるように閉じて、所定箇所の傾きに合わせた支柱3の丸穴7に固定金具を挿入することにより、水平面と傾斜面との両方に共通して使用できる。
【0052】
また、
図4には、吹き抜けホールの2階の廊下の端に手摺が付いた様子を示しており(
図4c部)、子柱3がボーダー部分に設置されるが、この場合にも固定金具100を使用することができる。
【0053】
また、この固定金具100は、階段やホール2階に設ける手摺の子柱に限らず、例えば
図5に示すように、仕切り壁上に、すのこ状のパーテションウォールが設置されている場合の、その間柱13(
図5d部)の固定にも使用することができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態に係る固定金具及び支柱の設置方法について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【0055】
例えば、上記実施形態では、左側立体板部20が右側立体板部40の内側に収まるようになっているが、角柱状にすることができれば、互い違いに重なり合うようにしてもよい。
【0056】
また、底板部の4つの角先端のいくつかを、設置面側に若干の角度で折り曲げておく事で、木質材の踏み板やササラ桁に先端が食い込むことで、固定金具の回転を防ぐ効果を生じさせることも出来る。すなわち、係止部材6をねじ込む際には、係止部材との摩擦により固定金具自体が回転することを防ぎ、また、施工後では、子柱を回転させる力が加わった場合でも床との間の回転を防ぐ効果を持つ。
【0057】
さらに、固定金具の変形例を、
図6~
図12に示す。なお、本発明の固定金具は、支柱の丸穴に挿入された状態で、複数の立体板部が丸穴の内面に平面視3点以上で接する形状になっていればよい。
【0058】
図6に示す固定金具200は、一枚の板を折り曲げ加工したもので、開状態では湾曲部分があるが、ドリルのチャック部を妨げない程度の高さ(12φの丸穴に入るには少なくとも6mm以下の高さとなる)であり、閉状態では、丸穴の中に十分な長さで挿入される。
【0059】
図7に示す固定金具300は、左右の立体板部が略半円状に加工されたものであり、左右の立体板部の立ち上げを、表方向にすることもできるし裏方向にすることもできる。すなわち閉状態で、(D)は向かい合わせに、(E)は背中合わせに合わされたもので、(E)は柱の丸穴の壁に左右の立体部の端部が当る際に、円弧状の部分の弾力性で丸穴の壁に強く当る様に寸法を調整することが出来る。
【0060】
図8に示す固定金具400は、上記で詳細に説明した物であり、(D)に示すように立ち上げて使用する。さらに、(E)は、左側立体板部の加工をコの字よりも先端を更に折り曲げて三角状にしている。これにより、係止部材である木ネジの頭を抑え、木ネジの緩みを防止することが出来る。すなわち、木ネジが緩む様に回転する際は、摩擦によりその回転を防止し、また、回転に伴い上方に持ち上がる木ネジの頭を抑えることで、下方向の力を加えて持ち上がりにくくする効果を生じる。このように、丸穴に挿入された状態で、少なくとも1つの立体板部の下端が係止部材の上端に接するようにすれば、施工後に係止部材の緩みを防止することができる。
【0061】
図9に示す固定金具500は、
図8に示す固定金具400の左右の立体板部を表裏逆に使用して折り曲げたものである。ただし、左右の立体板部の幅を同一としている。開状態は、若干の角度を持ってV字型に折り曲げた状態となる。
【0062】
図10に示す固定金具600は、
図9に示す固定金具500の左右の立体板部下端を尖らせ、木質の支柱の丸穴に食い込んで、抜け方向の力に対抗するようにしたものである。このように、複数の立体板部の少なくとも1つの外周部が、下方に向けて凸状に形成されていれば、固定金具と支柱とを接着剤を用いることなく強固に固定することができ、施工性に優れている。
【0063】
図11に示す固定金具700は、底板部を三角形にし、3つの立体板部をL字状にしたもので、閉状態では互いにかみ合って、三角柱状となり、丸穴に挿入される。
【0064】
図12に示す固定金具800は、底板部の4辺からそれぞれ立体板部が設けられ四角柱状になるものである。
【0065】
これらの金具の閉状態で、円柱、角柱、三角柱などの上方が、わずかに小さく窄む形状とする事で、支柱の丸穴に入れやすくするなどの工夫も出来る。もし、抜け止めのために、接着剤による固定が必要な際は、支柱の丸穴に奥に接着剤を入れた後に金具を挿入する事で、接着剤の余分なはみ出しを防ぎながら固着する施工が可能になる。
【0066】
これらの金具の底板部は、施工後は、支柱の丸穴の中に納まるが、底板部から立体板部が立ち上げる連結部は、折り曲げられる際に、底板部の平面よりも外側に、はみ出る形で立ち上がる。そのため、支柱の丸穴に対して余裕をもって収まる様に、例えば丸穴に内接するあるいは内包される、辺を持つ四角や三角などの形状を取ることに意味がある。また連結部は折り曲げる方向に対して平板であることが折り曲げ方向を規定しやすくなるため、同様に、四角や三角などの直線の辺を持つ底板形状が適している。
【0067】
また、丸穴に対して丸い接合具(固定金具、あるいは、ダボなど)を入れる場合、例えば、支柱の丸穴の径寸法が切削工具の磨耗により小さくなった場合でも、丸穴に挿入できる様に接合具の径を小さく作った場合、1点のみで接するか、付勢しても2点で接する様になり、丸穴との接合が弱くなる。これに対し本願での立体部が丸くないものは、付勢され、角があり、その角が木材にあけた丸穴内面に3点以上で接し、あるいは、木材面に食い込む様にしたことで、丸穴の径寸法が小さくなった場合でも、差し込むことが出来ると共により強く接合するという更なるメリットが有る。
【符号の説明】
【0068】
1 階段
2 手摺
3 子柱
4 親柱
5 踏板
6 木ネジ(係止部材)
7 丸穴
8 ササラ桁
10 底板部
11 孔
13 間柱
17 丸穴
20 左側立体板部
30 連結部
40 右側立体板部
50 連結部
100 固定金具
200 固定金具
300 固定金具
400 固定金具
500 固定金具
600 固定金具
700 固定金具
800 固定金具