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特許7109232モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板
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  • 特許-モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】モジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板
(51)【国際特許分類】
   H01Q 7/06 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
H01Q7/06
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018068276
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019180021
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-03-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000166443
【氏名又は名称】戸田工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】305043179
【氏名又は名称】韋僑科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】香嶋 純
(72)【発明者】
【氏名】張 正弘
(72)【発明者】
【氏名】河野 芳輝
(72)【発明者】
【氏名】顏 天霖
【審査官】鈴木 肇
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/098527(WO,A1)
【文献】国際公開第2007/088914(WO,A1)
【文献】特開2013-172241(JP,A)
【文献】特開2017-188631(JP,A)
【文献】特開2007-214646(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137386(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0214889(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 5/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のフェライト層が積層された積層体と、
前記複数のフェライト層の各々の表面に設けられたアンテナコイルと、
外部回路に接続される接続パッドと、
前記積層体と前記接続パッドとの間に設けられた引出し配線と
を備え、
前記積層体において、2種類の前記アンテナコイルが交互に積層されており、
前記引出し配線と前記接続パッドとの間に、一対のコンデンサ用電極により構成されたコンデンサが設けられていることを特徴とするモジュール基板用アンテナ。
【請求項2】
前記2種類のアンテナコイルは、アンテナパターンの形状が異なることを特徴とする請求項1に記載のモジュール基板用アンテナ。
【請求項3】
前記接続パッドが、前記引出し配線を介して、前記積層体における最上層の前記フェライト層のIC搭載面側に設けられたIC搭載用電極に接続されるとともに、該IC搭載面側と反対側に露出して設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のモジュール基板用アンテナ。
【請求項4】
前記引出し配線が、前記フェライト層の前記アンテナコイルの内側部分を介して、前記IC搭載用電極に接続されていることを特徴とする請求項3に記載のモジュール基板用アンテナ。
【請求項5】
前記コンデンサは、前記アンテナコイルと並列に接続されており、前記コンデンサと前記アンテナコイルはLC共振回路を形成することを特徴とする請求項に記載のモジュール基板用アンテナ。
【請求項6】
請求項1~請求項のいずれか1項に記載のモジュール基板用アンテナを備えることを特徴とするモジュール基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICチップ等が実装され、無線通信用モジュールとして機能するICモジュール基板用アンテナ、及びそれを用いたモジュール基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、非接触で信号の授受を行うICモジュール(非接触型のICタグやICカード)が普及し始めている。このICモジュールは、絶縁性基板の表面に導体配線が形成されたアンテナ用の配線を備えており、このアンテナ配線により、非接触による信号の授受を行うことができる。
【0003】
例えば、Cu-Zn系などの非磁性体のフェライトからなる非磁性体材料により形成された複数の絶縁体層が積層された積層体と、各絶縁体層の表面に設けられ、Ag等の導電性材料により形成されたパターン導体部とを備えたモジュール基板が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/152333号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載のモジュール基板においては、ICチップ等を実装した後、外部回路に接続する際に、アンテナコイルのインダクタンスの変動が大きくなるため、ICチップ搭載面等に、アンテナコイルの周波数を調整するためのコンデンサを別個に設けなければならず、当該周波数の調整が困難になるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、上述の問題に鑑み、アンテナコイルの周波数の調整を容易に行うことができるモジュール基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のモジュール基板用アンテナは、複数のフェライト層が積層された積層体と、複数のフェライト層の各々の表面に設けられたアンテナコイルと、外部回路に接続される接続パッドと、積層体と接続パッドとの間に設けられた引出し配線とを備え、積層体において、2種類のアンテナコイルが交互に積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明のモジュール基板によれば、ICチップが搭載されたモジュール基板を外部回路に接続する前に、アンテナコイルの周波数の調整を容易に行うことができる。その結果、外部回路に接続する際に、周波数調整用のコンデンサ等による周波数の調整を行う必要がなくなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第1実施形態に係るモジュール基板の断面図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。
図3】本発明の第2実施形態に係るモジュール基板の断面図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
(第1実施形態)
図1は、本実施形態に係るモジュール基板の断面図であり、図2は、本実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。
【0012】
図1に示すように、モジュール基板1は、複数(本実施形態においては4層)のフェライト層3~6が積層された積層体2と、複数のフェライト層3~6の各々の表面に設けられたアンテナコイル3a~6aと、外部回路(不図示)に接続される接続パッド7と、積層体2と接続パッド7との間に設けられた引出し配線8とを備えている。
【0013】
フェライト層3~6は、例えば、非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成されており、これらのフェライト層3~6が積層されることにより、積層体2が形成されている。
【0014】
非磁性体フェライトの主成分としては、例えば、Zn系フェライトの粉体を用いることができ、これらの成分の組成比は、Feが40.0~50.0モル%、ZnOが35.0~50.0モル%、及びCuOが5~20モル%であることが好ましい。
【0015】
また、各フェライト層3~6の厚みは、特に限定されないが、積層セラミック工法を行うとの観点から、50μm~100μmが好ましい。
【0016】
アンテナコイル3a~6aは、導電性材料により形成されており、矩形状に渦巻きされたアンテナパターンにより形成されている。
【0017】
また、フェライト層3~6には、フェライト層3~6を厚み方向に貫通する層間接続導体20a~20cが設けられており、アンテナコイル3a~6aは、層間接続導体20a~20cを介して電気的に接続されている。そして、本実施形態のモジュール基板1においては、アンテナコイル3a~6aと層間接続導体20a~20cとにより、アンテナコイル3a~6aの全体が電気的に接続されて、アンテナとして機能するアンテナコイル3a~6aが形成されている。
【0018】
アンテナコイル3a~6a、及び層間接続導体20a~20cを形成する材料は、特に限定されず、例えば、銀、銅等を使用することができる。
【0019】
また、図1図2に示すように、積層体2における最上層のフェライト層3のIC搭載面3b側には、IC搭載用の絶縁層9が設けられており、この絶縁層9の外表面9aにIC搭載用電極12が設けられている。なお、絶縁層9は、上述のフェライト層3~6と同様に、例えば、非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成することができる。
【0020】
また、図1図2に示すように、積層体2における最下層のフェライト層6側には、接続パッド搭載用の絶縁層10が設けられており、この絶縁層10の外表面10aに外部回路に接続される接続パッド7が設けられている。なお、絶縁層10は、上述のフェライト層3~6と同様に、例えば、非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成することができる。
【0021】
接続パッド7を形成する材料は、例えば、銀や銅、銀と白金やパラジウムの合金等を使用することができる。
【0022】
また、図1図2に示すように、積層体2と接続パッド搭載用の絶縁層10との間に、引出し配線用の絶縁層11が設けられており、この絶縁層11の表面に引出し配線8が設けられている。なお、絶縁層11は、上述のフェライト層3~6と同様に、例えば、非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成することができる。
【0023】
引出し配線8を形成する材料は、特に限定されず、例えば、上述のアンテナコイル3a~6aを形成する導電材料を使用することができる。
【0024】
そして、本実施形態においては、図2に示すように、積層体2において、アンテナパターン(渦巻きパターン)の異なる2種類のアンテナコイル3a~6aが交互に積層されている点に特徴がある。
【0025】
より具体的には、図2に示すように、アンテナコイル3aと5aは同一の矩形状の渦巻きパターンを有するとともに、アンテナコイル4aと6aは同一の矩形状の渦巻きパターンを有しており、積層体2において、渦巻きパターンの異なる2種類のアンテナコイルが交互に積層(即ち、積層体2の厚み方向において隣接するアンテナコイルの渦巻きパターンが異なるように積層)されている。
【0026】
従って、アンテナコイル3a~6aのインダクタンスの変動を抑制することが可能になり、ICチップ(不図示)が搭載されたモジュール基板1を外部回路に接続する前に、アンテナコイル3a~6aからなるアンテナの周波数の調整を容易に行うことができる。また、周波数調整用のコンデンサによる周波数の調整を行う必要がなくなるため、当該コンデンサが不要になる。
【0027】
また、本実施形態においては、図2に示すように、接続パッド7が、引出し配線8を介して、絶縁層9の外表面9aに設けられたIC搭載用電極12に接続され、絶縁層9の外表面9a側と反対側に(即ち、絶縁層10の外表面10aから)露出するように設けられている。
【0028】
従って、半田等により、容易に、モジュール基板1を外部回路に接続することが可能になる。
【0029】
また、絶縁層10~11には、絶縁層10~11を厚み方向に貫通する層間接続導体21a~21fが設けられており、接続パッド7と引出し配線8は、層間接続導体21a~21fを介して電気的に接続されている。
【0030】
また、フェライト層3~6、及び絶縁層9,11には、フェライト層3~6、及び絶縁層9,11を厚み方向に貫通する層間接続導体22a~22fが設けられており、接続パッド7と電気的に接続された引出し配線8は、層間接続導体22a~22fを介して、IC搭載用電極12に電気的に接続されている。そして、このような構成により、本実施形態のモジュール基板1においては、接続パッド7が、引出し配線8を介して、積層体2における最上層のフェライト層3のIC搭載面3b側に設けられたIC搭載用電極12に電気的に接続されている。
【0031】
また、図2に示すように、接続パッド7は引出し配線8のみに接続されており、アンテナコイル3a~6aには接続されていない。従って、アンテナコイル3a~6aが交信リーダーと交信した状態において、ICチップから出力される信号を独立して基板側に送ることが可能になる。
【0032】
また、図2に示すように、引出し配線8は、各フェライト層3~6のアンテナコイル3a~6aの内側部分を介して、IC搭載用電極12に接続されている。従って、引出し配線8の引き回しがコンパクトになるため、モジュール基板1の小型化を図ることが可能になる。
【0033】
なお、アンテナコイル6aは、層間接続導体22gを介して引出し配線8に接続されるとともに、当該引出し配線8は、層間接続導体22hを介して、IC搭載用電極12に接続されている。
【0034】
そして、以上に説明したモジュール基板1の接続パッド7を、半導体素子が搭載された外部回路に電気的に接続することにより、アンテナコイル3a~6aからなるアンテナと半導体素子とが電気的に接続されたモジュールが作製される。そして、アンテナで受信された信号が半導体素子に送信されて処理されるとともに、半導体素子から送られてきた信号がアンテナから外部に発信される。
【0035】
次に、モジュール基板の製造方法について説明する。まず、このフェライト層3~6、及び絶縁層9~11の原料粉末である非磁性材料及びバインダを混合した混合物に溶剤を添加して混合し、フェライト分散体を作製する。
【0036】
次に、このフェライト分散体をドクターブレード法等の公知のシート成形法を使用して、非磁性層のグリーンシートを作製して所望の形状に切断する。
【0037】
次に、各グリーンシートに、層間接続導体20a~20c,21a~21f,22a~22hを形成する。より具体的には、まず、フェライト層3~6、及び絶縁層9~11となるセラミックグリーンシートに、例えば、ピンやレーザビームで穴あけ加工を行い、スルーホールを形成する。次に、このスルーホールに対して、上述の銀、銅等を主成分とする導電性ペーストを用意し、この導電性ペーストをスルーホールに充填する。
【0038】
次に、フェライト層3~6となるセラミックグリーンシートの各々の表面にアンテナコイル3a~6aを形成する。より具体的には、セラミックグリーンシートの表面上に、上述の銀、銅等を主成分とする導電性ペーストをスクリーン印刷法などの方法で塗布し、アンテナコイル3a~6aを形成する。
【0039】
次に、絶縁層9~11となるセラミックグリーンシートの各々の表面に、上記アンテナコイル3a~6aの形成方法と同様にして、接続パッド7、引出し配線8、及びIC搭載用電極12を形成する。
【0040】
次に、フェライト層3~6、及び絶縁層9~11となるセラミックグリーンシートを、図2に示す順序に積層し、静水圧プレスを行うことにより加圧して圧着(ラミネート処理)を行い、マザー積層体を得る。圧着後のマザー積層体を所定寸法にカットする。そして、カットした積層体に対して焼成処理を行うことにより、図1に示すモジュール基板1が製造される。
【0041】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図3は、本発明の第2実施形態に係るモジュール基板の断面図であり、図4は、本発明の第2実施形態に係るモジュール基板の分解斜視図である。なお、上記第1実施形態と同様の構成部分については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0042】
図3図4に示すように、本実施形態のモジュール基板30においては、接続パッド7と引出し配線8との間に、一対のコンデンサ用電極23,24により構成されたコンデンサ25が設けられている点に特徴がある。
【0043】
そして、このようなコンデンサ25を設けることにより、アンテナコイル3a~6aの周波数の微調整が可能になるため、アンテナコイルの周波数の調整を更に容易に行うことが可能になる。
【0044】
また、図3図4に示すように、接続パッド搭載用の絶縁層10と引出し配線用の絶縁層11との間に、コンデンサ用電極用の絶縁層26,27が設けられている。そして、絶縁層26の表面にコンデンサ用電極23が設けられるとともに、絶縁層27の表面にコンデンサ用電極24が設けられている。
【0045】
なお、絶縁層26,27は、上述のフェライト層3~6と同様に、非磁性体フェライトからなる非磁性体材料により形成してもよく、磁性体フェライトからなる磁性体材料により形成してもよい。また、絶縁層26,27の一方のみを非磁性体材料(または磁性体材料)により形成してもよい。
【0046】
なお、磁性体フェライトの主成分としては、例えば、Ni-Zn系フェライトの粉体を用いることができ、これらの成分の組成比は、Feが46~50mol%、NiOが20~27mol%、ZnOが15~22mol%、CuOが9~11mol%、及びCoOが0~1.0mol%であることが好ましい。
【0047】
また、コンデンサ用電極23,24を形成する材料は、特に限定されず、例えば、上述のアンテナコイル3a~6aを形成する金属材料を使用することができる。
【0048】
コンデンサ用電極23,24は、例えば、上述の銀、銅等を主成分とする導電性ペーストを用意し、この導電性ペーストを、絶縁層26,27の表面に塗布することにより形成することができる。
【0049】
また、図3図4に示すように、本実施形態のモジュール基板30においては、コンデンサ25が、アンテナコイル3a~6aと並列に接続されており、コンデンサ25とアンテナコイル3a~6aはLC共振回路を形成している。また、コンデンサ25は、接続パッド7には接続されていない。
【0050】
即ち、本実施形態のモジュール基板30においては、コンデンサ25は、単体としての機能(例えば、電圧調整機能等)を有しておらず、アンテナコイル3a~6aの特性向上(即ち、LC共振回路における周波数fの調整)のみに寄与している。
【産業上の利用可能性】
【0051】
本発明のモジュール基板は、ICチップ等が実装され、無線通信用のアンテナとして機能する積層型コイル部品(ダイナミックタグ)を内蔵するモジュール基板として有効に利用できる。
【符号の説明】
【0052】
1 モジュール基板
2 積層体
3~6 フェライト層
3a~6a アンテナコイル
3b IC搭載面
7 接続パッド
8 引出し配線
9~11 絶縁層
9a,10a 絶縁層の外表面
12 IC搭載用電極
20a~20c,21a~21f,22a~22h 層間接続導体
23,24 コンデンサ用電極
25 コンデンサ
26,27 絶縁層
30 モジュール基板
図1
図2
図3
図4