(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】粘着テープ搬送方法および粘着テープ搬送装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20220722BHJP
H01L 21/677 20060101ALI20220722BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20220722BHJP
C09J 7/35 20180101ALI20220722BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/68 A
B65H37/04 B
C09J7/35
(21)【出願番号】P 2018083887
(22)【出願日】2018-04-25
【審査請求日】2021-04-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】394016601
【氏名又は名称】日東精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100093056
【氏名又は名称】杉谷 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100142930
【氏名又は名称】戸高 弘幸
(74)【代理人】
【識別番号】100175020
【氏名又は名称】杉谷 知彦
(74)【代理人】
【識別番号】100180596
【氏名又は名称】栗原 要
(74)【代理人】
【識別番号】100195349
【氏名又は名称】青野 信喜
(72)【発明者】
【氏名】石井 直樹
【審査官】中田 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-199158(JP,A)
【文献】特開2015-060910(JP,A)
【文献】特開2014-049626(JP,A)
【文献】特開2017-110055(JP,A)
【文献】特開2006-013452(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H01L 21/677
B65H 37/04
C09J 7/35
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着テープを搬送して載置テーブルへ載置させる粘着テープ搬送方法であって、
所定の形状に切断された前記粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を搬送アームで吸着して保持する保持過程と、
前記搬送アームで前記粘着テープを保持しながら、前記粘着テープを前記載置テーブルの近傍へ搬送させる搬送過程と、
前記粘着テープを保持している前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持しつつ前記粘着テープの保持を解除することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる載置過程と、
を備えることを特徴とする粘着テープ搬送方法。
【請求項2】
請求項1に記載の粘着テープ搬送方法において、
前記粘着層は所定の温度以上に加熱されることによって粘着状態となる熱軟化性粘着剤を含んでおり、
前記載置過程は、前記搬送アームが加熱状態となっている前記載置テーブルから離間している状態を維持することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる
ことを特徴とする粘着テープ搬送方法。
【請求項3】
請求項1に記載の粘着テープ搬送方法において、
前記粘着層は所定以上の圧力が作用することにより粘着状態となる感圧性粘着剤を含んでおり、
前記載置過程は、前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる
ことを特徴とする粘着テープ搬送方法。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の粘着テープ搬送方法において、
前記載置過程は、離間部材を前記搬送アームと前記載置テーブルとの間に介在させることより前記搬送アームと前記載置テーブルとを離間させる
ことを特徴とする粘着テープ搬送方法。
【請求項5】
請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の粘着テープ搬送方法において、
前記載置過程は、前記載置テーブルで吸引を行うことにより、前記搬送アームが保持している前記粘着テープを前記載置テーブルへ載置させる
ことを特徴とする粘着テープ搬送方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の粘着テープ搬送方法において、
前記載置過程は、前記搬送アームから気体を排出させることにより、前記搬送アームによる前記粘着テープの保持を解除させる
ことを特徴とする粘着テープ搬送方法。
【請求項7】
粘着テープを搬送して載置テーブルへ載置させる粘着テープ搬送装置であって、
所定の形状に切断された前記粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を吸着して保持する搬送アームと、
前記搬送アームを駆動させ、前記搬送アームで前記粘着テープを保持しながら、前記粘着テープを前記載置テーブルの近傍へ搬送させる搬送制御機構と、
前記粘着テープを保持している前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持しつつ前記粘着テープの保持を解除させ、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる載置制御機構と、
を備えることを特徴とする粘着テープ搬送装置。
【請求項8】
請求項7に記載の粘着テープ搬送装置において、
前記粘着層は所定の温度以上に加熱されることによって粘着状態となる熱軟化性粘着剤を含んでおり、
前記載置制御機構は、前記搬送アームが加熱状態となっている前記載置テーブルから離間している状態を維持することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる
ことを特徴とする粘着テープ搬送装置。
【請求項9】
請求項7に記載の粘着テープ搬送装置において、
前記粘着層は所定以上の圧力が作用することにより粘着状態となる感圧性粘着剤を含んでおり、
前記載置制御機構は、前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる
ことを特徴とする粘着テープ搬送装置。
【請求項10】
請求項7ないし請求項9のいずれかに記載の粘着テープ搬送装置において、
前記粘着テープを保持している前記搬送アームと前記載置テーブルとの間に介在し、前記搬送アームと前記載置テーブルとを離間させる離間部材を備える
ことを特徴とする粘着テープ搬送装置。
【請求項11】
請求項7ないし請求項10のいずれかに記載の粘着テープ搬送装置において、
前記載置テーブルは前記搬送アームが保持している前記粘着テープを吸引する吸引機構を備え、
前記吸引機構が前記粘着テープを吸引することにより、前記粘着テープを保持している前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持しつつ、前記粘着テープを前記載置テーブルへ載置させる
ことを特徴とする粘着テープ搬送装置。
【請求項12】
請求項7ないし請求項11のいずれかに記載の粘着テープ搬送装置において、
前記搬送アームは、気体を排出する気体排出機構を備え、
前記気体排出機構が前記気体を排出することにより、前記搬送アームによる前記粘着テープの保持が解除される
ことを特徴とする粘着テープ搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体ウエハ(以下、適宜「ウエハ」という)や基板などのワークに粘着テープを貼り付ける際に、当該粘着テープを搬送するための粘着テープ搬送方法および粘着テープ搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ウエハの表面に回路パターン形成処理を行った後、ウエハの裏面全体を均一に研削して薄型化するバックグラインド処理が施される。当該バックグラインド処理を行う前に、回路を保護するべくウエハの表面に保護用の粘着テープ(保護テープ)を貼り付けている。
【0003】
ウエハに保護テープを貼り付ける従来の方法としては、ウエハを保持する保持テーブルにウエハを載置した後、帯状の保護テープを繰り出してウエハへと供給させる。そして貼付けローラを保護テープ上で転動させて当該保護テープをウエハの回路面に押圧して貼付け、さらに保護テープをウエハの外形に沿って切り抜く方法が用いられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
従来の貼付け方法の他の例としては、予めウエハの形状に切断した(プリカットした)保護テープ片が貼付け保持されている帯状のキャリアテープを、保持テーブル上のウエハへと供給させる。そしてエッジ部材などでキャリアテープを折り返し走行させることにより保護テープ片をキャリアテープから剥離させ、剥離された保護テープ片をウエハに貼り付ける方法なども用いられている(例えば、特許文献2を参照)。
【0005】
【文献】特開2010-272755号公報
【文献】特開2009-229683号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来装置では次のような問題がある。
すなわち、従来の貼付け方法では、帯状の保護テープや帯状のキャリアテープが必要となる。近年では高密度実装の要求に伴いウエハが大型化する傾向にあるので、これら帯状テープの幅や長さも増すこととなる。その結果、保護テープの貼付けに要するテープの量が膨大になるという問題が懸念される。さらに、これら帯状テープをウエハへと案内する構成や、保護テープを貼り付けた後に不要な帯状テープを回収する構成などが複雑であるので、貼付け装置のランニングコストを抑制することは困難となる。
【0007】
そこで、発明者は検討を重ね、帯状のテープを用いることなく保護テープをウエハに貼り付ける新たな方法として、以下の構成を考案するに至った。本構成に係る比較例では、
図19(a)に示すように、予めウエハWの形状にプリカットされた保護テープPTを、搬送アーム101で吸着保持する。
【0008】
本構成において保護テープPTは、非粘着性の基材Bと粘着層Cとが積層された構造を備えている。粘着層Cは、常温では非粘着性であり、加熱されて高温になると粘着性を備える材料で構成されている。搬送アーム101は、常温状態で保護テープPTの粘着層Cを吸着する。すなわち搬送アーム101は非粘着状態となっている粘着層Cを介して保護テープPTを保持する。
【0009】
そして搬送アーム101によって保護テープPTを保持テーブル103へと搬送し、保護テープPTを保持テーブル103の保持面に載置させ(
図19(b))、搬送アーム101を退避させる。保持テーブル103は、内蔵されているヒータ105により予め加熱されている。保持テーブル103に載置されることにより、保護テープPTの粘着層Cはヒータ105によって加熱されて粘着性を有することとなる。
【0010】
最後に保護テープ片PTの上にウエハWを供給し(
図19(c))、平坦な押圧部材105でウエハWを押圧することによって、ウエハWに保護テープPTが貼り付けられる(
図19(d))。本構成では、プリカットされた保護テープPTの搬送に搬送アーム101を用いるので、帯状のキャリアテープを必要としない。よって、テープ貼付け装置の小型化および単純化が容易となる。
【0011】
しかし、このような比較例の構成では、保護テープPTを搬送および載置させる工程にエラーが発生するという新たな問題が懸念される。すなわち、
図19(b)に示すように、本比較例では保護テープPTを保持テーブル103に載置させる際に、搬送アーム101は保護テープPTを介して、加熱状態の保持テーブル103と接触する。
【0012】
当該接触により、保持テーブル103の熱が保護テープPTおよび搬送アーム101へと伝わっていく。そのため、搬送アーム101が保護テープPTから離れて退避するより前に、粘着層Cが加熱されて粘着性を備えてしまい、搬送アーム101に保護テープPTの粘着層Cが粘着する。その結果、保持テーブル103から搬送アーム101を退避させる際に、保護テープPTが搬送アーム101とともに保持テーブル103から離れる事態や、保持テーブル103上で保護テープPTの位置がずれる事態などが発生する。
【0013】
また、当該搬送過程では粘着層Cは粘着性を備えなかった場合であっても、搬送アーム101は保持テーブル103との接触によって温度が上昇する。すなわち、保護テープPTの搬送および載置を繰り返すことにより、搬送アーム101の温度は徐々に上昇していく。その結果、保護テープPTの粘着層Cが粘着性を備える所定の温度を、搬送アーム101の温度が上回ってしまい、搬送アーム101に保護テープPTが粘着して離れなくなる。よって、比較例の構成では保護テープPTの搬送工程を連続して稼働させることが困難である。
【0014】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであって、搬送アームを用いて粘着テープを搬送し、粘着テープをウエハへ貼り付ける構成において、粘着テープの搬送を連続で精度良く実行できる粘着テープ搬送方法および粘着テープ搬送装置を提供することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
第1の発明は、粘着テープを搬送して載置テーブルへ載置させる粘着テープ搬送方法であって、
所定の形状に切断された前記粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を搬送アームで吸着して保持する保持過程と、
前記搬送アームで前記粘着テープを保持しながら、前記粘着テープを前記載置テーブルの近傍へ搬送させる搬送過程と、
前記粘着テープを保持している前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持しつつ前記粘着テープの保持を解除することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる載置過程と、
を備えることを特徴とする。
【0016】
(作用・効果)この構成によれば、所定の形状に切断された粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を搬送アームで吸着して保持しながら、当該粘着テープを載置テーブルの近傍へ搬送させる。そして、載置過程では粘着テープを保持している搬送アームが載置テーブルから離間している状態を維持しつつ、粘着テープの保持を解除することによって粘着テープを載置テーブルに載置させる。
【0017】
当該離間状態を維持することにより、粘着テープを保持している搬送アームと、載置テーブルとの接触に起因して粘着層が非粘着状態から粘着状態に変化することを回避できる。そのため、粘着テープを保持している状態で搬送アームに粘着テープが粘着し、粘着テープを載置テーブルに載置させる工程にエラーが発生する事態を回避できる。
【0018】
また、上述した発明において、前記粘着層は所定の温度以上に加熱されることによって粘着状態となる熱軟化性粘着剤を含んでおり、前記載置過程は、前記搬送アームが加熱状態となっている前記載置テーブルから離間している状態を維持することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させることが好ましい。
【0019】
(作用・効果)この構成によれば、粘着層は所定の温度以上に加熱されることによって粘着状態となる熱軟化性粘着剤を含んでいる。載置過程において、搬送アームが加熱状態となっている載置テーブルから離間している状態を維持することにより、載置テーブルとの接触に起因して粘着層が加熱され、非粘着状態から粘着状態に変化することを回避できる。そのため、粘着テープを保持している状態で搬送アームに粘着テープが粘着し、粘着テープを載置テーブルに載置させる工程にエラーが発生する事態を回避できる。
【0020】
また、上述した発明において、前記粘着層は所定以上の圧力が作用することにより粘着状態となる感圧性粘着剤を含んでおり、前記載置過程は、前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させることが好ましい。
【0021】
(作用・効果)この構成によれば、粘着層は所定以上の圧力が作用することにより粘着状態となる感圧性粘着剤を含んでいる。載置過程において、搬送アームが載置テーブルから離間している状態を維持することにより、載置テーブルとの接触に起因して粘着層が押圧されて非粘着状態から粘着状態に変化することを回避できる。そのため、粘着テープを保持している状態で搬送アームに粘着テープが粘着し、粘着テープを載置テーブルに載置させる工程にエラーが発生する事態を回避できる。
【0022】
また、上述した発明において、前記載置過程は、離間部材を前記搬送アームと前記載置テーブルとの間に介在させることより前記搬送アームと前記載置テーブルとを離間させることが好ましい。
【0023】
(作用・効果)この構成によれば、離間部材を搬送アームと載置テーブルとの間に介在させることより搬送アームと載置テーブルとを離間させる。すなわち離間部材によって、粘着テープを保持している搬送アームと、載置テーブルとが接触することを防止できる。そのため、粘着テープを保持している状態で搬送アームに粘着テープが粘着し、粘着テープを載置テーブルに載置させる工程にエラーが発生する事態を回避できる。
【0024】
また、上述した発明において、前記載置過程は、前記載置テーブルで吸引を行うことにより、前記搬送アームが保持している前記粘着テープを前記載置テーブルへ載置させることが好ましい。
【0025】
(作用・効果)この構成によれば、載置テーブルで吸引を行うことにより、搬送アームが保持している粘着テープは吸引され、速やかに搬送アームから載置テーブルへと移動する。よって、粘着テープを速やかに載置テーブルに載置させることができるので、粘着テープの搬送効率を向上できる。
【0026】
また、上述した発明において、前記載置過程は、前記搬送アームから気体を排出させることにより、前記搬送アームによる前記粘着テープの保持を解除させることが好ましい。
【0027】
(作用・効果)この構成によれば、搬送アームから気体を排出させることにより、搬送アームによる粘着テープの保持が解除される。そのため、粘着テープは速やかに搬送アームから離れ、載置テーブルへと移動する。よって、粘着テープを速やかに載置テーブルに載置させることができるので、粘着テープの搬送効率を向上できる。
【0028】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
第2の発明は、粘着テープを搬送して載置テーブルへ載置させる粘着テープ搬送装置であって、
所定の形状に切断された前記粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を吸着して保持する搬送アームと、
前記搬送アームを駆動させ、前記搬送アームで前記粘着テープを保持しながら、前記粘着テープを前記載置テーブルの近傍へ搬送させる搬送制御機構と、
前記粘着テープを保持している前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持しつつ前記粘着テープの保持を解除させ、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる載置制御機構と、
を備えることを特徴とする。
【0029】
(作用・効果)この構成によれば、所定の形状に切断された粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を搬送アームで吸着して保持しながら、当該粘着テープを載置テーブルの近傍へ搬送させる。そして、載置制御機構は粘着テープを保持している搬送アームが載置テーブルから離間している状態を維持しつつ、粘着テープの保持を解除することによって粘着テープを載置テーブルに載置させる。当該離間状態を維持することにより、粘着テープを保持している搬送アームと載置テーブルとの接触に起因して、粘着層が非粘着状態から粘着状態に変化することを回避できる。従って、上記方法を好適に実現できる。
【0030】
また、上述した発明において、前記粘着層は所定の温度以上に加熱されることによって粘着状態となる熱軟化性粘着剤を含んでおり、前記載置制御機構は、前記搬送アームが加熱状態となっている前記載置テーブルから離間している状態を維持することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させることが好ましい。
【0031】
(作用・効果)この構成によれば、粘着層は所定の温度以上に加熱されることによって粘着状態となる熱軟化性粘着剤を含んでいる。そして搬送アームが加熱状態となっている載置テーブルから離間している状態を維持することにより、載置テーブルとの接触に起因して粘着層が加熱され、非粘着状態から粘着状態に変化することを回避できる。従って、上記方法を好適に実現できる。
【0032】
また、上述した発明において、前記粘着層は所定以上の圧力が作用することにより粘着状態となる感圧性粘着剤を含んでおり、前記載置制御機構は、前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持することにより、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させることが好ましい。
【0033】
(作用・効果)この構成によれば、粘着層は所定以上の圧力が作用することにより粘着状態となる感圧性粘着剤を含んでいる。そして、搬送アームが載置テーブルから離間している状態を維持することにより、載置テーブルとの接触に起因して粘着層が押圧されて非粘着状態から粘着状態に変化することを回避できる。従って、上記方法を好適に実現できる。
【0034】
また、上述した発明において、前記粘着テープを保持している前記搬送アームと前記載置テーブルとの間に介在し、前記搬送アームと前記載置テーブルとを離間させる離間部材を備えることが好ましい。
【0035】
(作用・効果)この構成によれば、離間部材を搬送アームと載置テーブルとの間に介在させることより搬送アームと載置テーブルとを離間させる。すなわち離間部材によって、粘着テープを保持している搬送アームと、載置テーブルとが接触することを防止できる。そのため、粘着テープを保持している状態で搬送アームに粘着テープが粘着し、粘着テープを載置テーブルに載置させる工程にエラーが発生する事態を回避できる。
【0036】
また、上述した発明において、前記載置テーブルは前記搬送アームが保持している前記粘着テープを吸引する吸引機構を備え、前記吸引機構が前記粘着テープを吸引することにより、前記粘着テープを保持している前記搬送アームが前記載置テーブルから離間している状態を維持しつつ、前記粘着テープを前記載置テーブルへ載置させることが好ましい。
【0037】
(作用・効果)この構成によれば、載置テーブルに備えられている吸引機構で吸引を行うことにより、搬送アームが保持している粘着テープは吸引され、速やかに搬送アームから載置テーブルへと移動する。よって、粘着テープを速やかに載置テーブルに載置させることができるので、粘着テープの搬送効率を向上できる。
【0038】
また、上述した発明において、前記搬送アームは、気体を排出する気体排出機構を備え、
前記気体排出機構が前記気体を排出することにより、前記搬送アームによる前記粘着テープの保持が解除されることが好ましい。
【0039】
(作用・効果)この構成によれば、搬送アームに備えられている気体排出機構から気体を排出させることにより、搬送アームによる粘着テープの保持が解除される。そのため、粘着テープは速やかに搬送アームから離れ、載置テーブルへと移動する。よって、粘着テープを速やかに載置テーブルに載置させることができるので、粘着テープの搬送効率を向上できる。
【0040】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
第3の発明は、所定の温度以上に加熱されることによって非粘着状態から粘着状態となる熱軟化性粘着剤を含む粘着層を備える粘着テープを搬送して載置テーブルへ載置させる粘着テープ搬送装置であって、
所定の形状に切断された前記粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を吸着して保持する搬送アームと、
前記搬送アームを駆動させ、前記搬送アームで前記粘着テープを保持しながら、前記粘着テープを前記載置テーブルの近傍へ搬送させる搬送制御機構と、
前記搬送アームによる前記粘着テープの保持を解除させ、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる載置制御機構と、
前記搬送アームを冷却する冷却機構と、
を備えることを特徴とする。
【0041】
(作用・効果)この構成によれば、粘着層は所定の温度以上に加熱されることによって粘着状態となる熱軟化性粘着剤を含んでいる。そして搬送アームを冷却することにより、加熱されている載置テーブルによって搬送アームが高温となる場合であっても、当該搬送アームを当該所定の温度より低くすることができる。
【0042】
よって、搬送アームが粘着テープを保持している状態において、当該粘着テープが非粘着状態から粘着状態に変化することを回避できる。そのため、粘着テープを保持している状態で搬送アームに粘着テープが粘着し、粘着テープを載置テーブルに載置させる工程にエラーが発生する事態を回避できる。
【0043】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとってもよい。
第4の発明は、所定の温度以上に加熱されることによって非粘着状態から粘着状態となる熱軟化性粘着剤を含む粘着層を備える粘着テープをワークに貼り付ける粘着テープ貼付け装置であって、
所定の形状に切断された前記粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を吸着して保持する搬送アームと、
前記搬送アームを駆動させ、前記搬送アームで前記粘着テープを保持しながら、前記粘着テープを前記載置テーブルの近傍へ搬送させる搬送制御機構と、
前記搬送アームによる前記粘着テープの保持を解除させ、前記粘着テープを前記載置テーブルに載置させる載置制御機構と、
前記載置テーブル上の前記粘着テープにワークを載置させるワーク搬送機構と、
前記粘着テープの粘着層を加熱して前記粘着層を非粘着状態から粘着状態とさせる加熱機構と、
前記粘着テープを前記ワークに貼付けさせる貼付け機構と、
を備えることを特徴とする。
【0044】
(作用・効果)この構成によれば、所定の形状に切断された粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を搬送アームで吸着して保持しながら、当該粘着テープを載置テーブルの近傍へ搬送させる。そのため、帯状のテープを用いることなく粘着テープを所望の場所へと搬送し、ワークに粘着テープを貼り付けることができる。よって、装置の小型化とランニングコストの低下とを容易に実現できる。また、粘着層を搬送アームで吸着保持して搬送するので、粘着テープの粘着層にセパレータを添設させておく必要がない。よって所定形状の粘着テープからセパレータを剥離させるという精密かつ煩雑な操作を省略できる。
【発明の効果】
【0045】
本発明に係る粘着テープ搬送方法および粘着テープ搬送装置によれば、所定の形状にプリカットされた粘着テープのうち非粘着状態となっている粘着層を搬送アームで吸着して保持しながら、当該粘着テープを載置テーブルへ搬送して載置させる。また、搬送アームが粘着テープを保持する状態において、粘着層が非粘着状態から粘着状態への変化が防止される。従って、粘着テープを載置テーブルへ載置させる際に搬送アームから粘着テープが離れなくなる事態を回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【
図1】実施例1に係る装置の基本構成を示す平面図である。
【
図2】実施例1に係る装置の基本構成を示す正面図である。
【
図3】実施例1に係る搬送機構の構成を示す正面図である。
【
図4】実施例1に係る搬送機構の構成を示す平面図である。(a)は左右可動台の平面図であり、(b)は前後可動台の平面図である。
【
図5】実施例1に係る載置テーブルの構成を示す図である。(a)は載置テーブルの平面図であり、(b)は載置テーブルの縦断面図である。
【
図6】実施例1に係る貼付けユニットの構成を示す正面図である。
【
図7】各実施例に係る装置の動作を示すフローチャートである。(a)は実施例1のフローチャートであり、(b)は実施例2のフローチャートである。
【
図8】実施例1の装置における、ステップS2の動作を示す図である。(a)は保持ユニットを示す正面図であり、(b)は搬送アームの部分を拡大した正面図である。
【
図9】実施例1の装置における、ステップS4の動作を示す図である。(a)は載置を行う前の状態を示す縦断面図であり、(b)は載置を行った後の状態を示す縦断面図であり、(c)は載置テーブルに載置された保護テープPTと離間部材との位置関係を示す平面図である。
【
図10】実施例1に係る装置における、ステップS5の動作を示す図である。(a)はウエハを保持する状態を示す正面図であり、(b)はウエハを載置させる状態を示す縦断面図である。
【
図11】実施例1の装置における、ステップS6の動作を示す図である。(a)はウエハを押圧する前の状態を示す縦断面図であり、(b)はウエハを押圧している状態を示す縦断面図である。
【
図12】実施例2に係る装置の基本構成を示す図である。(a)は搬送機構の全体を示す正面図であり、(b)は要部を拡大した正面図である。
【
図13】変形例に係る装置を説明する図である。(a)はマウントフレームの構成を示す斜視図であり、(b)はチャンバの構成を示す縦断面図である。
【
図14】変形例の装置におけるステップS5の動作を示す図である。(a)はマウントフレームを載置させた状態を示す図であり、(b)はチャンバを形成させた状態を示す図である。
【
図15】変形例の装置におけるステップS6の動作を示す図である。(a)は差圧を発生させてウエハに保護テープを貼り付ける状態を示す図であり、(b)はチャンバと押圧部材との両方を備える変形例におけるステップS6の動作を示す図である。
【
図16】変形例の構成を示す図である。(a)は載置テーブルの平面図であり、(b)は実施例のステップS4において、保護テープPTを載置させる前の状態を示す図であり、(c)は実施例のステップS4において、保護テープPTを載置させた後の状態を示す図である。
【
図17】変形例の構成を示す図である。(a)はリング状の離間部材を備える載置テーブルを示す平面図であり、(b)は搬送アームに離間部材を備える変形例を示す図であり、(c)は離間部材に対応する凹部を備える変形例を示す図である。
【
図18】変形例の構成を示す図である。(a)はノッチを備える略円形状の保護テープを用いる変形例を示す図であり、(b)は矩形状の保護テープを用いる変形例を示す図であり、(c)は載置テーブルによる保護テープの吸引および搬送アームによる気体の排出を行いつつ、保護テープを載置テーブルに載置させる変形例を示す図である。
【
図19】比較例に係る構成を示す図である。(a)は搬送アームが保護テープを保持する動作を示す図であり、(b)は搬送アームが保護テープを載置させる動作を示す図であり、(c)はウエハを載置させる動作を示す図であり、(d)はウエハに保護テープを貼り付ける動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0047】
以下、図面を参照して本発明の実施例1を説明する。なお、本実施例では、半導体ウエハW(以下、単に「ウエハW」と略称する)の回路形成面に保護テープPTを貼り付ける粘着テープ貼付け装置1に、本発明に係る搬送機構が備わった構成を例示して説明する。
【0048】
保護テープPTは
図8(b)などに示すように、基材Bと粘着層Cとが積層された構造を有している。基材Bは非粘着性の材料、一例としてプラスチック、不織布、金属箔などによって構成される。
【0049】
粘着層Cは、常温などの非加熱状態においては粘着性を有しない状態(非粘着状態)であり、加熱によって高温になると粘着性を備える状態(粘着状態)となる特性を備えている。ここで、粘着層Cが粘着性を備えるようになる温度の閾値をTとする。粘着層Cを構成する材料の一例としては、エポキシ樹脂やアクリル樹脂などの熱軟化性粘着剤が挙げられる。また、保護テープPTとして、所定の形状に予め切断された(プリカットされた)プリカットテープを用いる。本実施例において、保護テープPTは円形にプリカットされている。
【0050】
<全体構成の説明>
粘着テープ貼付け装置1は、ウエハ収納部2、テープ収納部3、搬送機構4、アライナ5、載置テーブル7、および貼付けユニット9などを備えている。ウエハ収納部2は一例としてウエハWを収納するカセットであり、多数枚のウエハWが、回路形成面(表面)を下向きにした水平姿勢で多段に差込み収納されている。テープ収納部3は一例としてカセットであり、円形にプリカットされている保護テープPTが、粘着層Cを上向きにした水平姿勢で多段に差込み収納されている。
【0051】
搬送機構4は、左右方向(図ではx方向)に水平に架設された案内レール11に左右往復移動可能に支持されている。また、搬送機構4は
図3に示すように、案内レール11に沿って左右に往復移動可能な左右可動台13が装備されている。
【0052】
また、左右可動台13に備えられている案内レール15に沿って前後方向(図ではy方向)に往復移動可能な前後可動台17が装備されている。さらに、前後可動台17の下部に、保持ユニット19が上下方向(図ではz方向)に往復移動可能に装備されている。保持ユニット19は、保護テープPTの保持とウエハWの保持とを行う。
【0053】
図1および
図4(a)に示すように、案内レール11の右端近くにはモータ20で正逆転駆動される駆動プーリ21が軸支されるとともに、案内レール11の中央側には遊転プーリ22が軸支されている。これら駆動プーリ21と遊転プーリ22とにわたって巻き掛けられたベルト23に、左右可動台13のスライド係合部13aが連結され、ベルト25の正逆回動によって左右可動台13が左右に移動されるようになっている。
【0054】
図4(b)に示すように、左右可動台13の上端近くにはモータ24で正逆転駆動される駆動プーリ25が軸支されるとともに、左右可動台13の下端近くには遊転プーリ26が軸支されている。これら駆動プーリ25と遊転プーリ26とにわたって巻き掛けられたベルト27に、前後可動台17のスライド係合部17aが連結され、ベルト27の正逆回動によって前後可動台17が前後に移動されるようになっている。
【0055】
図3に示すように、保持ユニット19は、前後移動可動台17の下部に連結された逆L字形の支持フレーム30、この支持フレーム30の縦枠部に沿ってモータ31でネジ送り昇降される昇降台32、昇降台32に回動軸33を介して縦向き支軸p周りに旋回可能に軸支された回動台34、回動軸33にベルト35を介して巻き掛け連動された旋回用モータ、回動台34の下部に軸支された搬送アーム37などを備えている。
【0056】
搬送アーム37は馬蹄形をしている。搬送アーム37の保持面には、僅かに突出した複数個の吸着パッド38が設けられている。また、搬送アーム37は、その内部に形成された流路と、この流路の基端側で連接された接続流路を介して圧空装置に連通接続されている。
【0057】
上記した可動構造を利用することで、ウエハWまたは保護テープPTは、吸着パッド38を介して搬送アーム37に吸着保持される。そして搬送アーム37は、ウエハWまたは保護テープPTを保持した状態で前後移動、左右移動、上下移動、および縦向き支軸p周りの旋回移動ができるようになっている。
【0058】
アライナ5は中央部に吸着パッド6を備えており、ウエハWや保護テープPTの位置合わせを行う。
【0059】
載置テーブル7は金属製のチャックテーブルであり、
図5(a)および
図5(b)に示すように、保護テープPTおよびウエハWを載置させる載置部8を備えている。載置部8の表面には複数個の吸着孔50が備えられている。吸着孔50の各々は、流路51を介して外部の真空装置52と連通接続されている。真空装置を用いて真空吸引を行うことにより、載置テーブル7は載置された保護テープPTを吸着保持する。
【0060】
載置テーブル7は金属製に限定されることはなく、セラミックの多孔質で形成された構成などを適宜代用してもよい。また、吸着孔50、流路51、および真空装置52は必須な構成ではなく、ウエハWを安定に保持できる構成であれば、載置テーブル7は保護テープPTを吸着する構成を省略してもよい。
【0061】
また、載置部8には複数の離間部材53が装備されているとともに、載置された保護テープPTを加熱するヒータ55が内蔵されている。実施例1において。離間部材53はピン状の部材で構成されている。各々の離間部材53は載置テーブル7から所定の長さVだけ突出するように構成されている。離間部材53は熱伝導性の低い材料で構成されているか、あるいは熱伝導性の低い材料で被覆されていることが好ましい。
【0062】
また実施例1では好ましい構成として、離間部材53はシリンダ57によって出退昇降可能に構成されている。すなわちシリンダ57によって上昇することにより、各々の離間部材53は載置テーブル7から所定の長さVだけ突出する。またシリンダ57によって下降することにより、各々の離間部材53の先端は載置テーブル7に内蔵される。
【0063】
載置テーブル7から突出した離間部材53は、載置テーブル7の上方へ保護テープPTを搬送した搬送アーム37が、載置テーブル7の載置面に接触することを防止する。言い換えれば、離間部材53により、載置テーブル7と搬送アーム37とは所定の長さVを空けて離間する状態が維持される。所定の長さVは、加熱された載置テーブル7の熱により、少なくとも搬送アーム37の温度が閾値T以上とならない程度の距離に設定される。
【0064】
図6(b)に示すように、離間部材53の各々は、載置テーブル7と中心を共有しており保護テープPTと同等または僅かに大きい径を有する円Rに接するように配設されていることが好ましい。
【0065】
離間部材53の各々を円Rに接するように配設することにより、載置テーブル7に載置された保護テープPTは離間部材53の各々によって精度良く位置決めされる。すなわち離間部材53によって保護テープPTの位置ズレを防止できる。なお、本実施例において、4本の離間部材53が等間隔に配設されている構成を例示している。
【0066】
貼付けユニット9は、
図6に示すように、左右可動台39、前後可動台41、縦枠42、昇降枠43、屈伸リンク機構44、モータ45、および押圧部材47を備えている。左右可動台39は案内レール11に沿って、左右方向へ往復移動可能となるように構成されている。前後可動台41は、左右可動台39に備えられている案内レール40に沿って、前後方向へ往復移動可能となるように構成されている。
【0067】
縦枠42は、前後可動台41の下部に連結されており、昇降枠43は縦枠42に沿ってスライド昇降可能に支持されている。屈伸リンク機構44はモータ45の回転に応じて正逆屈伸駆動され、当該正逆屈伸駆動によって昇降枠43は上下方向に駆動される。
【0068】
押圧部材47は、昇降枠43の下端に配設されている。押圧部材47は、平坦な押圧面47aを備えている。押圧部材47は、当該押圧面47aをウエハWに当接させた状態で、載置テーブル7に載置されている保護テープPTとウエハWとを押圧する。当該押圧によって、保護テープPTはウエハWに貼り付けられる。押圧部材47の内部には、ウエハWおよび保護テープPTを加熱するヒータ49が配設されている。
【0069】
粘着テープ貼付け装置1は、制御部60を備えている。制御部60はモータ20,24、31の回転などに基づく搬送機構4の各種動作、真空装置52の動作、離間部材53の昇降移動などを例とする、粘着テープ貼付け装置1の各種動作を統括制御する。
【0070】
<動作の説明>
次に、実施例1に係る粘着テープ剥離装置1を用いて、保護テープPTをワークに貼り付けるための一連の動作を説明する。動作のフローチャートは
図7(a)に示す通りである。なお実施例1ではワークとしてウエハWを用いる構成を例示して説明する。
【0071】
ステップS1(条件設定の入力)
先ず、図示しない操作部を操作して各種条件設定を入力する。各種条件設定の一例として、ヒータ55の加熱温度および加熱時間や、載置テーブル7の載置面から離間部材53を突出させる長さV、ウエハWおよび保護テープPの径の長さ、および保護テープPTの厚みに関する情報などが挙げられる。ヒータ55の加熱温度や加熱時間は、非加熱状態では粘着性を有しない保護テープPTの粘着層Cが、加熱により粘着性を発揮して粘着状態となる程度に設定する。
【0072】
各種設定が完了すると、操作部を操作して粘着テープ剥離装置1を作動させる。作動開始により、ヒータ55により載置テーブル7が加熱されるとともに、離間部材53の先端が載置テーブル7の載置面から突出する。
【0073】
ステップS2(テープの保持)
載置テーブル7が十分に加熱されると、搬送機構4を作動させる。搬送機構4は左右可動台13および前後可動台17を適宜駆動させ、保持ユニット19をテープ収納部3の上方へ移動させる。その後、保持ユニット19を下降させ、テープ収納部3に差し込み収納されている保護テープPTの上面に搬送アーム37を近接させる。
【0074】
保持ユニット19は圧空装置を作動させ、吸着パッド38を介して保護テープPTを搬送アーム37に吸着保持させる。このとき、保護テープPTの粘着層Cおよび搬送アーム37はいずれも非加熱状態である。よって粘着層Cは非粘着状態となっているので、搬送アーム37は粘着層Cの面を吸着することにより、保護テープPTを安定かつ可逆的に保持できる。
【0075】
ステップS3(テープの搬送)
搬送アーム37による保護テープPTの吸着保持が完了すると、搬送機構4は左右可動台13および前後可動台17を適宜駆動させる。当該駆動により、搬送アーム37は保護テープPTを吸着保持した状態で、テープ収納部3からアライナ5へと保護テープPTを搬送する。
【0076】
アライナ5は吸着パッド6により保護テープPTを吸着し、保護テープPTの中心の偏差などに基づいて、x方向およびy方向に保護テープPTの位置合わせを行う。保護テープPTの位置合わせが完了すると、搬送アーム37は再び保護テープPTを吸着パッド38で吸着保持し、アライナ5から載置テーブル7の上方へと保護テープPTを搬送する。
【0077】
ステップS4(テープの載置)
保護テープPTを載置テーブル7の上方へ搬送させた後、保護テープPTを載置テーブル7に載置させる工程が実行される。すなわち、モータ31の制御により搬送アーム37を下降させ、保護テープPTを載置テーブル7の載置面に近接させていく。なお、この状態で保護テープPTは平面視において円Rの内部に位置するよう、搬送アーム37が保護テープPTを吸着する位置などが予め調整されている(
図5(a))。
【0078】
ここで、載置テーブル7の載置面から離間部材53が突出している。そのため、搬送アーム37は
図9(a)に示すように、載置テーブル7の載置面から所定長さVの距離を空けて離間している位置で、離間部材53の先端と当接する。当該当接により、搬送アーム37は離間部材53によって支持され、それ以上載置テーブル7の載置面に近づくことが防止される。
【0079】
そのため、この時点ではヒータ55の熱が保護テープPTおよび搬送アーム37に伝達され、粘着層Cや搬送アーム37が高温となることを防止できる。そのため、搬送アーム37が保護テープPTを保持している状態で粘着層Cに含まれる熱軟化性粘着剤が粘着性を発揮し、搬送アーム37から保護テープPTが離れなくなる事態の発生をより確実に回避できる。
【0080】
搬送アーム37が離間部材53に当接し、距離Vを空けて載置テーブル7から離間している状態となった後、搬送アーム37は圧空装置の作動を停止させて吸着パッド38による保護テープPTの吸着保持を解除する。吸着保持の解除により、保護テープPTは落下して載置テーブル7の載置面に載置される。
【0081】
載置された保護テープPTと離間部材53との平面視における位置関係は
図9(c)に示す通りである。離間部材53は保護テープPTの径と同等またはやや大きい径の円Rに接する位置に配置されている。そのため、載置された保護テープPTは各々の離間部材53の内側に配置されるように位置決めされ、保護テープPTの位置ズレは各々の離間部材53によって防止される。
【0082】
そして載置テーブル7において真空装置52が作動し、吸着孔50を介して吸引を行う。当該吸引により、保護テープPTは吸着孔50を介して載置テーブル7に吸着保持される。保護テープPTが載置テーブル7の載置面に載置されることにより、ヒータ55の熱が保護テープPTに伝えられる。その結果、粘着層Cは加熱されて非粘着状態から粘着状態となる。保護テープPTを載置テーブル7に載置させた後、離間部材53を下降させ、離間部材53の先端を載置テーブル7の内部に収納させる。
【0083】
ステップS5(ウエハの搬送)
保護テープPTを載置テーブル7に載置させた後、ウエハWを保護テープPTの上に搬送する操作を行う。すなわち、搬送機構4は左右可動台13および前後可動台17を適宜駆動させ、保持ユニット19をウエハ収納部2へ移動させる。そして、ウエハ収納部2に差し込み収納されているウエハWの上面を搬送アーム37の吸着パッド38で吸着させる。当該吸着により、ウエハWは搬送アーム37の下面に保持される(
図10(a))。
【0084】
搬送アーム37はウエハWを吸着保持した状態で、ウエハ収納部2からアライナ5へと搬送する。アライナ5はウエハWの中心に基づいて、ウエハWをx方向またはy方向に位置合わせさせる。またアライナ5は、ウエハWに設けられているノッチまたはオリエンテーションフラットの位置に基づいて、ウエハWをz方向の軸周りに適宜回転させ、回転方向の位置合わせも行う。
【0085】
ウエハWの位置合わせが完了すると、搬送アーム37は再度ウエハWの上面を吸着し、ウエハWをアライナ5から載置テーブル7の上方へと搬送する。そして載置テーブル7の上方に移動した後、
図10(b)に示すように搬送アーム37を下降させ、回路面が下向きとなっているウエハWを保護テープPTの上に載置させる。
【0086】
ステップS6(テープの貼付け)
ウエハWを保護テープPTの上に載置させた後、搬送アーム37を載置テーブル7から退避させ、ウエハWに保護テープPTを貼り付ける工程を実行する。すなわち貼付けユニット9を案内レール11および案内レール15に沿って適宜移動させ、押圧部材47を載置テーブル7の上方へと移動させる(
図11(a))。
【0087】
そして昇降枠43を駆動させて押圧部材47を下降させる。当該下降により、押圧部材47の押圧面47aによって、ウエハWは全面にわたって押圧される。既に加熱によって保護テープPTの粘着層Cは粘着性を備えているので、ウエハWを押圧することによって保護テープPTはウエハWの回路面に貼り付けられる(
図11(b))。なお、ヒータ49により押圧部材47を予め加熱させておき、ウエハWおよび保護テープPTを加熱しながら押圧してもよい。
【0088】
保護テープPTが貼り付けられた後、搬送アーム37はウエハWの上面を吸着保持する。そして吸着保持した状態で搬送アーム37はウエハWを載置テーブル7からウエハ収納部2へと搬送し、保護テープPTが貼り付けられたウエハWを元の位置に差し込み収納する。以上で一巡の動作が終了し、以後同じ動作が繰り返される。
【0089】
<実施例1の構成による効果>
実施例1に係る装置によれば、保護テープPTをウエハWに貼り付ける操作において、ウエハWに応じた所定の形状にプリカットされている保護テープPTを用いる。また、当該プリカットされた保護テープPTは、搬送アーム37で保持されるとともに任意の位置へと搬送される。この場合、帯状の保護テープ、および保護テープを搬送するための帯状のキャリアテープといった帯状のテープを必要としない。よって、帯状のテープを操作するために多数の装置や広い空間を確保する必要がないので、装置のコストを大きく低減できる。
【0090】
また、保護テープPTを載置テーブル7へ載置させる際に、搬送アーム37と載置テーブル7とを離間させた状態で、保護テープPTは搬送アーム37から載置テーブル7へと受け渡しされる。
【0091】
そのため、搬送アーム37が載置テーブル7に対して接触することに起因して、搬送アーム37が保護テープPTを保持している状態で粘着層Cが閾値Tより高温となって粘着性を発揮し、搬送アーム37から保護テープPTが離れなくなるという事態を確実に回避できる。なお、上記接触とは搬送アーム37が載置テーブル7に直接接触する場合の他、
図19(b)に示すように、保護テープPTを介して搬送アーム37が間接的に載置テーブル7と接触する場合も含む。
【0092】
実施例1では搬送アーム37と載置テーブル7とを離間させることにより、搬送アーム37が保護テープPTを保持している状態でヒータ55の熱が保護テープPTに伝えられ、粘着層Cに含まれる熱軟化性粘着剤が加熱されて粘着性を発揮するという事態を回避できる。
【0093】
また、搬送アーム37と載置テーブル7とを離間させた状態を維持しつつ保護テープPTを載置テーブル7に載置させるので、ヒータ55の熱が搬送アーム37に伝えられて搬送アーム37の温度が上昇する事態も回避できる。そのため、搬送アーム37による保護テープPTの搬送を繰り返すうちに搬送アーム37の温度が閾値Tを越え、搬送アーム37が保護テープPTの粘着層Cを吸着保持する際に粘着層Cが粘着するという事態も回避できる。従って、保護テープPTを任意の場所へ搬送して載置させる動作を連続で精度よく実施できる。
【0094】
ここで、比較例に係る保護テープPTの貼り付け工程について説明する。実施例1に係る一連の貼付け工程と、比較例に係る一連の貼付け工程とは、ステップS4を除いて共通する。
【0095】
すなわち、比較例の構成を用いて保護テープPTをウエハWに貼り付ける場合、まず各種設定を行うとともに載置テーブル7を加熱させる(ステップS1)。そして搬送機構4をテープ収納部3へと移動させ、吸着パッド38を介して保護テープPTを搬送アーム37に吸着保持させる(ステップS2)。ステップS2において、保護テープPTの粘着層Cの温度は閾値Tより低く、非粘着状態となるように予め調整されている。搬送アーム37が非粘着状態の粘着層Cを吸着して保護テープPTを保持すると、搬送機構4は、テープ収納部3からアライナ5を経由して載置テーブル7の上方へと保護テープPTを搬送する(ステップS3)。
【0096】
実施例1に係るステップS4では
図9(b)に示すように、保護テープPTを保持している搬送アーム37を載置テーブル7から離間させた状態で、保護テープPTの保持を解除して保護テープPTを載置テーブル7に載置させる。一方、比較例に係るステップS4では搬送アーム37と載置テーブル7とを離間させる構成に限られない。すなわち、比較例に係るステップS4では一例として
図19(b)に示すように、搬送アーム37を下降させ、保護テープPTを保持している搬送アーム37を載置テーブル7に接触させた状態で当該保持を解除し、保護テープPTを載置テーブル7に載置させてよい。
【0097】
保護テープPTを載置テーブル7に載置させた後、搬送機構4はウエハWを吸着保持する。そして搬送機構4はウエハWをウエハ収納部2からアライナ5を経由して載置テーブル7へと搬送し、保護テープPTの上にウエハWを載置させる(ステップS5)。保護テープPTの上にウエハWを載置させた後、押圧部材47でウエハWを押圧することによってウエハWに保護テープPTを貼り付ける(ステップS6)。
【0098】
このように比較例の構成によっても実施例1と同様、帯状のテープを用いることなく保護テープPTをウエハWに精度よく貼り付けることができる。また搬送アーム37は、保護テープPTのうち非粘着状態の粘着層Cを吸着することにより当該保護テープPTを保持する。すなわち粘着層Cにセパレータを添設させておく必要がない。よって、プリカットされた状態の保護テープPTからセパレータを除去させるといった、精密さが要求される煩雑な過程を行わなくとも、プリカットされた状態の保護テープPTを安定に保持して精度よく搬送できる。
【実施例2】
【0099】
次に、本発明の実施例2を説明する。実施例1と実施例2において共通する構成については同一符号を付し、以下、実施例2に特徴的な構成について図面を用いて説明する。
【0100】
実施例2に係る粘着テープ貼付け装置1は、搬送アーム37を冷却させる冷却機構61と、搬送アーム37の温度を検知する温度センサ63と、搬送アーム37による搬送の可否を判定する判定部66とを備えている。冷却機構61は一例として
図12(a)に示すように、保持ユニット19Aに設けられている。
【0101】
冷却機構61は
図12(b)に示すように、搬送アーム37の形状に沿って配設されている複数本のエアーノズル62を備えている。エアーノズル62の各々は、電磁バルブ64を介してポンプ65と接続されている。ポンプ65から各々のエアーノズル62へと供給された気体Nが、エアーノズル62の各々から搬送アーム37へと吹き付けられ、搬送アーム37を冷却できる。
【0102】
なお、冷却機構61は気体Nを吹き付けて搬送アーム37を冷却する構成に限ることはなく、ペルチェ素子などを用いて搬送アーム37を冷却してもよい。
【0103】
温度センサ63は一例として搬送アーム37に内蔵されており、搬送アーム37の温度を逐次検知する。温度センサ63が検知した温度の情報は判定部66へと送信される。判定部66は、検知された搬送アーム37の温度F1と予め定められている許容温度Fとを比較する。許容温度Fの値は、保護テープPTの粘着層Cが確実に非粘着状態となる温度として定められる値であり、一例として10℃~25℃程度であることが好ましい。
【0104】
搬送アーム37の温度F1が許容温度Fより低い場合、判定部66は搬送アーム37による搬送を許可する内容の信号を制御部60へと送信する。この場合、搬送アーム37は保護テープPTやウエハWを搬送できる状態となる。
【0105】
一方、搬送アーム37の温度F1が許容温度Fより高い場合、判定部66は搬送アーム37による搬送を停止する内容の信号を制御部60へと送信する。この場合、搬送アーム37は保護テープPTやウエハWを搬送できない状態となる。実施例2では温度センサ63を用いた制御機構により、搬送アーム37の温度に応じて、搬送アーム37による搬送のオン/オフを制御する。
【0106】
次に、実施例2に係る粘着テープ剥離装置1を用いて、保護テープPTをウエハWに貼り付けるための一連の動作を説明する。実施例2に係る一連の動作のフローチャートは、
図7(b)に示す通りである。
【0107】
すなわち、ステップS1とステップS2との間にステップS1-aの工程を行い、かつ少なくともステップS5の後にステップS7の工程を行う点で、実施例1と実施例2とは相違する。そこで、ステップS1-aおよびステップS7の工程について以下説明する。
【0108】
ステップS1-a(アーム温度の判定)
実施例2では各種設定および載置テーブル7の加熱が完了すると、保護テープPTの保持を行う前に、搬送アーム37の判定を行う。すなわち搬送アーム37の温度F1が温度センサ63によって検知され、検知された温度F1の情報は温度センサ63から判定部66へと送信される。
【0109】
判定部66は温度F1と、許容温度Fとを比較する。許容温度Fより搬送アーム37の温度F1が低い場合、搬送アーム37が保護テープPTを保持しても粘着層Cは非粘着状態を維持する。よって、判定部66は搬送アーム37による搬送が可能であると判定し、搬送を許可する内容の信号を制御部60へ送信する。制御部60は当該信号に基づいて、各種モータおよび駆動機構を制御し、搬送アーム37の各種動作を可能とさせる。従ってこの場合、搬送アーム37によるステップS2以降の工程を実行可能となる。
【0110】
許容温度Fより搬送アーム37の温度F1が高い場合、搬送アーム37が保護テープPTを保持すると粘着層Cは粘着性を発揮して粘着状態となる場合がある。よって、判定部66は搬送アーム37による搬送が不適切であると判定し、搬送を禁止する内容の信号を制御部60へ送信する。
【0111】
制御部60は当該信号に基づいて、各種モータおよび駆動機構を制御し、搬送アーム37の各種動作を停止させるとともに、冷却機構61による冷却を実行させる。この場合、搬送アーム37は一時的に保護テープPTやウエハWを搬送できない状態となる。その一方で、制御部60によってポンプ65が作動するとともに電磁バルブ64が開放され、気体Nがエアーノズル62の各々に供給される。そして、エアーノズル62から搬送アーム37へと気体Nが吹き付けられ、搬送アーム37が冷却される。
【0112】
搬送アーム37の温度は逐次温度センサ63に検知されており、搬送アーム37の温度が許容温度F以下となるまで冷却機構61による搬送アーム37の冷却が行われる。搬送アーム37の温度が許容温度F以下となることにより、搬送アーム37は再び駆動可能となり、保護テープPTやウエハWを搬送可能となる。その結果、ステップS2以降の工程を開始することができる。
【0113】
ステップS7(搬送アームの冷却)
搬送アーム37によって保護テープPTおよびウエハWの各々が載置テーブル7に載置された後、搬送アーム37を載置テーブル7から退避させるとともに、冷却機構61によって搬送アーム37を冷却させる。すなわち、制御部60によってエアーノズル62の各々に気体Nが供給され、搬送アーム37に気体Nが吹き付けられて冷却される。
【0114】
ステップS7は、ステップS6に係る保護テープPTを貼り付ける工程と同期して行われることが好ましい。ステップS7に係る冷却工程を行うことにより、ヒータ55の熱などによって搬送アーム37の温度が上昇している場合であっても、速やかに搬送アーム37は冷却される。そのため、次の一巡におけるステップS1-aにおいて搬送アーム37の動作が停止される事態を回避できる。
【0115】
気体Nの供給を所定時間行う、または搬送アーム37の温度が所定温度以下となる、などを例とする所定の条件を満たすことによりステップS7の工程は完了する。ステップS6およびステップS7の工程が完了することにより、実施例2に係る一巡の動作は完了する。
【0116】
なお実施例2において、ステップS7に係る搬送アーム37の冷却過程は、ステップS6の後に行う構成に限られず、搬送アーム37の温度を閾値Tより低く維持できるよう、適宜タイミングで行ってよい。一例として、ステップS1からS6までの工程と同期して、搬送アーム37を冷却し続けてもよい。
【0117】
また実施例2のステップS4では、搬送アーム37と載置テーブル7とを離間させた状態で保護テープPTを載置テーブル7に載置させる構成(
図9(b))に限ることはない。すなわち、冷却機構61により搬送アーム37の温度を少なくとも閾値Tより低く維持できる限りにおいて、
図19(b)に示すように保護テープPTを保持する搬送アーム37を載置テーブル7に接触させた状態で保護テープPTを載置テーブル7に載置させてもよい。
【0118】
実施例2では冷却機構61、温度センサ63、および判定部66を備えることにより、搬送アーム37の温度を確実に許容温度F以下である状態で、保護テープPTを搬送できる。そのため、高温となっている搬送アーム37が保護テープPTの粘着層Cを吸着することにより、粘着層Cが加熱されて粘着性が上昇し、保護テープPTが搬送アーム37に粘着して離れなくなるという事態を確実に回避できる。
【0119】
本発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0120】
(1)上記各実施例および比較例に係る構成において、保護テープPTをワークに貼り付けるステップS6の工程は、押圧部材47を用いてウエハWを保護テープPTに押圧させる構成に限定されるものではない。一例としてウエハWをチャンバ内に収納させ、減圧作用によりウエハWに保護テープPTを貼り付ける構成が挙げられる。
【0121】
ここでは当該構成の一例として、
図13(a)に示すような、ウエハWの裏面とリングフレームfにわたって支持用の粘着テープDTが貼り付けられたマウントフレームMFをワークとして用いる。そしてマウントフレームMFのうちウエハWをチャンバ内に収納させ、減圧作用によりウエハWに保護テープPTを貼り付ける。
【0122】
以下、(1)に係る変形例の構成について説明する。変形例に係る粘着テープ貼付け装置1は、
図13(b)に示すように、一対の上ハウジング71aと下ハウジング71bとを備えている。上ハウジング71aと下ハウジング71bとは一体化することによりチャンバ71を構成する。チャンバ71は密閉状態となっており、上ハウジング71aと下ハウジング71bの各々には図示しない電磁バルブと真空装置が接続されている。
【0123】
上ハウジング71aは貼付けユニット9に設けられており、昇降枠43の下端に配設されている。貼付けユニット9における他の構成は、
図6に示す実施例1の構成と共通する。すなわち
図13(b)では、貼付けユニット9が押圧部材47の代わりにチャンバ71を備える構成を例示している。
【0124】
下ハウジング71bは載置テーブル7に設けられており、載置部8の周囲に配設されている。また、載置テーブル7は下ハウジング71bの周囲に、リングフレームfを保持するフレーム保持部70を備えている。また下ハウジング71bのうち、上ハウジング71aと接する円筒上部はフッ素加工などの離型処理が施されている。
【0125】
チャンバ71の径は、支持用の粘着テープDTの幅および長さよりも小さくなるように構成されている。すなわちマウントフレームMFのうちウエハWを下ハウジング71bの内部に納めた状態で上ハウジング71aを昇降移動させることにより、ウエハWの外周からリングフレームfの内径の間で露出する粘着テープDTを両ハウジング71a、71bで挟み込むことになる。
【0126】
また、(1)に係る変形例において、ウエハ収納部2にはウエハWの代わりに、支持用の粘着テープDTを上向きにしたマウントフレームMFが多段に差し込み収納されている。
【0127】
次に、(1)に係る変形例においてウエハWに保護テープPTを貼り付ける一巡の動作を説明する。
図7(a)および
図7(b)に示す一連の動作のうち、ステップS5およびステップS6の工程について、チャンバ71を利用する変形例と、押圧部材47を利用する各実施例とは相違する。そこで共通する工程については説明を省略し、ステップS5およびステップS6の工程について説明する。
【0128】
ステップS5(ウエハの搬送)
ステップS1ないしS4の工程により、保護テープPTは載置テーブル7の載置部8に載置されるとともに、ヒータ55によって保護テープPTが加熱される。保護テープPTの載置および加熱が完了すると、搬送アーム37はウエハ収納部2へと移動し、マウントフレームMFの粘着テープDTを吸着することによって、マウントフレームMFを保持する。
【0129】
搬送アーム37はアライナ5によってマウントフレームMFの位置合わせを行った後、マウントフレームMFを載置テーブル7の上方へと搬送する。そして搬送アーム37を下降させ、
図14(a)に示すように、マウントフレームMFを載置テーブル7に載置させる。
【0130】
このとき、リングフレームfはフレーム保持部70に保持される。また、リングフレームfとウエハWとの間における粘着テープDTは下ハウジング71bの円筒上部に接している。ウエハWと保護テープPTとは所定の距離を空けて近接対向している。すなわち、マウントフレームMFを載置テーブル7に載置させる際に、搬送アーム37はヒータ55の熱による温度上昇が発生しない程度に載置テーブル7の載置面から離間している。
【0131】
ステップS6(テープの貼付け)
マウントフレームMFを載置テーブル7に載置させた後、搬送アーム37を載置テーブル7から退避させ、昇降枠43を駆動させて上ハウジング71aを下降させる。この下降に伴って、
図14(b)に示すように、リングフレームfとウエハWとの間における粘着テープDTは上ハウジング71aと下ハウジング71bとによって挟持され、密閉状態のチャンバ71が形成される。このとき、粘着テープDTがシール材として機能し、チャンバ71の内部空間は粘着テープDTによって、上ハウジング71a側と下ハウジング71b側との2つの空間に分割される。
【0132】
チャンバ71が形成された後、制御部60によって電磁バルブの開閉を調整するとともに真空装置の作動を開始させ、上ハウジング71aの内部と下ハウジング71bの内部とを同じ速度で減圧させる。所定の気圧まで両空間が減圧されると、電磁バルブを閉じるとともに真空装置の作動を停止させる。
【0133】
制御部60は、電磁バルブの開度を調整してリークさせながら上ハウジング71aの内部を所定の気圧まで徐々に高める。このとき、下ハウジング71bの内部の気圧は上ハウジング71aの内部の気圧よりも低くなるので、
図15(a)に示すように、差圧によって粘着テープDTがウエハWとともに下ハウジング71bへと引き込まれていく。その結果、ウエハWの下面に保護テープPTが貼り付けられていく。
【0134】
ウエハWに保護テープPTが貼り付けられると、制御部60は上ハウジング71aの内部と下ハウジング71bの内部とを同じ気圧に調整する。このとき、載置部8を上昇させてリングフレームfの上面とウエハの上面とを同じ高さにすることが好ましい。気圧を調整した後、昇降枠43を駆動させて上ハウジング71aを上昇させて両ハウジングの内部を大気開放する。
【0135】
大気開放を行った後、搬送アーム37を載置テーブル7に移動させ、吸着パッド38を介して粘着テープDTを吸着することによりマウントフレームMFを保持する。そして保護テープPTが貼り付けられたマウントフレームMFをウエハ収納部2へ搬送し、再度差し込み収納する。
【0136】
ここまで、(1)に係る変形例として押圧部材47を省略した構成を例示したがこれに限ることはなく、押圧部材47とチャンバ71とを協働させて保護テープPTを貼り付けてもよい。すなわち
図15(b)に示すように、上ハウジング71aの内部に押圧部材47を昇降移動可能に配設してもよい。この場合、チャンバ71を形成させて差圧を発生させる時点で、押圧部材47を下降させてウエハWおよび粘着テープDTを押圧する。当該構成により、保護テープPTをより精度良くワークに貼り付けることができる。
【0137】
(2)上記各実施例、比較例および各変形例に係る構成において、離間部材53は、
図5に示すような構成に限られない。以下、離間部材の構成に係る変形例について説明する。
【0138】
第1に、
図16(a)に示すように、保護テープPTを載置させる領域に相当する円Rの内部に、1または2以上の離間部材53を配設してもよい。この場合、ステップS4において、載置部8の載置面から突出させた離間部材53の先端で保護テープPTを支持することにより、搬送アーム37から離間部材53へと保護テープPTが受け渡される(
図16(b))。
【0139】
このとき、搬送アーム37と載置テーブル7とは離間部材53によって、少なくとも所定の長さVを空けて離間することが保証されている。従って、ヒータ55の熱が搬送アーム37に伝えられて搬送アーム37の温度が上昇する事態を確実に回避できる。保護テープPTが離間部材53に支持されると、制御部60は離間部材53を下降させて載置部8に内蔵させる。その結果、
図16(c)に示すように、搬送アーム37から載置テーブル7へと保護テープPTが受け渡され、保護テープPTは載置部8に載置される。
【0140】
第2に、離間部材53はピン状の部材に限ることはなく、
図17(a)に示すように、支持リング54のようなリング状の部材を配設してもよい。そして、支持リング54の内径を保護テープPTの径と同じまたは僅かに大きい径に調整することが好ましい。支持リング54の内径を調整することにより、支持リング54は保護テープPTの位置ズレを防ぐ位置合わせ部材としても機能することができる。
【0141】
第3に、離間部材53を載置テーブル7に配設させる構成に限ることはなく、
図17(b)に示すように、搬送アーム37に配設してもよい。離間部材53を搬送アーム37に配設させる構成であっても、ステップS4において、搬送アーム37と載置テーブル7とは所定の長さを空けて確実に離間するように調整される。そして当該離間状態を維持しつつ、搬送アーム37から載置テーブル7へと保護テープPTが受け渡され、保護テープPTは載置テーブル7に載置される。
【0142】
第4に、突出した凸部となっている離間部材53と嵌合する、凹部56がさらに設けられていることが好ましい。離間部材53が載置テーブル7に配設されている場合、凹部56は搬送アーム37に設けられる。離間部材53が搬送アーム37に配設されている場合、凹部56は載置テーブル7に設けられる(
図17(c))。凹部56は平面視において、離間部材53に対応する位置に設けられる。
【0143】
凹部56を備えることにより、ステップS4において搬送アーム37から載置テーブル7へと保護テープPTを受け渡す際に、離間部材53と凹部56とを嵌合させることができる。当該嵌合により、平面視において搬送アーム37と載置テーブル7とは精度よく位置合わせされる。よって、保護テープPTを載置テーブル7に載置させる位置を精度よく制御できる。
【0144】
(3)上記実施例2に係るステップS1-aにおいて、搬送アーム37の温度F1が許容温度Fより高い場合、搬送アーム37を冷却機構61で冷却して許容温度F以下とした後にステップS2以降の工程を再開させる構成を例示したがこれに限られない。すなわち、搬送機構4に搬送アーム37を複数設けさせ、許容温度F以下の温度となっている搬送アーム37を選択して保護テープPTの搬送に使用する構成であってもよい。
【0145】
このような(3)に係る変形例では、搬送に用いている搬送アーム37の温度F1が許容温度Fより高い場合、当該搬送アーム37の使用を停止させる。そして残りの搬送アーム37の温度を温度センサ63によって検知し、許容温度F以下の温度となっている搬送アーム37を選択する。そして選択された搬送アーム37を保護テープPTの搬送に用いてステップS2以降の工程を再開させる。
【0146】
このような(3)に係る変形例の構成であっても、実施例2と同様に、保護テープPTの搬送に用いられる搬送アーム37の温度は確実に許容温度F以下とすることができる。よって、搬送アーム37に保護テープPTの粘着層Cが粘着する事態を回避できる。
【0147】
(4)上記各実施例、比較例および各変形例に係る構成において、保護テープPTの粘着層Cは、加熱により粘着性を発揮する熱軟化性接着剤を有する構成を例示して説明したが、粘着層Cの構成は加熱により粘着状態となる構成に限られない。特に押圧部材47で押圧することによってワークに保護テープPTを貼り付ける構成において、粘着層Cは加圧によって粘着状態となる構成であってもよい。
【0148】
このような(4)に係る変形例において、保護テープPTの粘着層Cは感圧性粘着剤を含んでおり、予め決められた所定の閾値T1以下の圧力が作用している条件下では粘着性を有さず、所定の閾値T1より大きい圧力が作用することによって粘着性を発揮して粘着状態となる。
【0149】
感圧性粘着剤を備える保護テープPTをワークに貼り付ける工程は、各実施例のような熱軟化性粘着剤を備える保護テープPTを用いる構成における工程と共通する(
図7(a)、(b))。すなわち、ステップS1~S5の各工程において、保護テープPTの粘着層Cには閾値T1以下の圧力しか作用しないので、粘着層Cは搬送アーム37に粘着することはない。
【0150】
特にステップS4において、搬送アーム37は載置テーブル7から離間させた状態を維持しつつ、保護テープPTを載置テーブル7に載置させる(
図9(b)を参照)。そのため、保護テープPTを載置させる際に搬送アーム37が保護テープPTを過度に押圧することを防止できる。よって、粘着層Cが粘着状態となる事態を回避できる。
【0151】
そして、ステップS6において押圧部材47を下降させてウエハWを押圧することにより、粘着層Cには閾値T1より大きい圧力が作用する。当該押圧により、感圧性粘着剤を備える粘着層Cにおいて粘着性が発生し、保護テープPTはウエハWに粘着して貼り付けられることとなる。
【0152】
図19(b)に示すように、保護テープPTを保持する搬送アーム37を、載置テーブル7に接触させるまで下降させて載置テーブル7に保護テープPTを載置させる場合、搬送アーム37が載置テーブル7に接触することによって保護テープPTが過度に押圧されることがある。その結果、粘着層Cに閾値T1を越える圧力が作用して粘着層Cが粘着状態となり、保護テープPTが搬送アーム37から離れなくなるという事態が発生する。
【0153】
本発明の構成では、搬送アーム37を載置テーブル7から離間させた状態で載置テーブル7に保護テープPTを載置させるので、感圧性粘着剤を含む保護テープPTをウエハWに貼り付ける構成においても、当該保護テープPTをウエハWに貼り付ける工程を連続して精度良く実行できる。
【0154】
(5)上記各実施例、比較例および各変形例に係る構成において、粘着テープを貼り付ける対象となるワークとしてウエハWの他に、リングフレームfおよびウエハWをワークとする構成を例示したがこれに限られない。ワークとして用いられる構成としては、ウエハWの他にガラス基板、セラミック基板、FPCを例とする有機材料基板、精密部品等の金属材料、リングフレームなど種々の物品が挙げられる。
【0155】
(6)上記各実施例、比較例および各変形例に係る構成において、ワークに貼り付ける粘着テープの一例として回路保護用の保護テープPTを例にとって説明したが、ワークに貼り付ける粘着テープは保護テープに限ることはない。すなわち、支持用の粘着テープ(ダイシングテープ)や粘着テープを剥離するための剥離テープなど、他の用途に用いる粘着テープにも本発明の構成を適用できる。
【0156】
(7)上記各実施例、比較例および各変形例に係る構成において、保護テープPTが円形である場合を例示したが、ワークに貼り付けられる粘着テープは円形に限られない。一例として、ノッチやオリエンテーションフラットを備えるウエハWの形状に対応した、円の一部に凹部や直線を有する略円形にプリカットされた保護テープPTが挙げられる。
【0157】
図18(a)は、ノッチNが形成された保護テープPTを用いる場合を例示している。この場合、複数の離間部材53のうち、離間部材53aは保護テープPTの円周部に近接または当接する位置に設けられている。そして離間部材53bは保護テープPTのノッチ部分Nに近接または当接するよう、離間部材53aと比べて載置部8の中心に近い位置に配設されている。
【0158】
このように、ノッチやオリエンテーションフラットの有無に応じて離間部材53の位置を調整することにより、保護テープPTおよびウエハWはx方向およびy方向へ位置ズレする事態を回避できるだけでなく、z軸周りに回転する方向へ位置ズレする事態も回避できる。
【0159】
また、基板をワークとする場合に、当該基板の形状に応じて矩形にプリカットされた保護テープPTを用いる場合にも本発明の構成を適用できる。この場合、
図18(b)に示すように、保護テープPTにおいて対角線上の頂点をそれぞれ近接または当接して挟むように、各々の離間部材53を配設することが好ましい。このような配置にすることで、矩形状の保護テープPTは、x方向またはy方向に位置合わせされるだけでなく、z軸周りの回転方向にも位置合わせされることとなる。よって、載置テーブル7に載置させる保護テープPTの位置を精度良く制御できる。
【0160】
(8)上記各実施例、比較例および各変形例において、ステップS4では搬送アーム37による保護テープPTの吸着保持を解除させ、自然落下により保護テープPTを搬送アーム37から載置テーブル7へと載置させている構成を例示しているが、これに限られない。すなわち、真空装置52を作動させ、吸着孔50を介した保護テープPTの吸引を開始させた後に搬送アーム37による保護テープPTの吸着保持を解除させてもよい(
図18(c)、符号N1)。この場合、載置テーブル7が吸着孔50を介して保護テープPTを吸引することにより、保護テープPTは速やかに搬送アーム37から離れて載置テーブル7へと載置される。吸着孔50および真空装置52は、本発明における吸引機構に相当する。
【0161】
さらに、搬送アーム37は気体を排出する排出ノズル75を備え、排出ノズル75から気体を排出させながら保護テープPTの吸着保持を解除させてもよい。この場合、
図18(c)に示すように、排出ノズル75から排出される気体N2により保護テープPTは速やかに搬送アーム37から離れて載置テーブル7へと載置される。排出ノズル75は本発明における気体排出機構に相当する。
【0162】
なお、
図18(c)は保護テープPTを載置テーブル7へ載置させる際に、吸着孔50による吸引N1と排出ノズル75による気体N2の排出の両方を行う構成を例示しているが、いずれか一方のみを行ってもよい。
【符号の説明】
【0163】
1 … 粘着テープ貼付け装置
2 … ウエハ収納部
3 … テープ収納部
4 … 搬送機構
5 … アライナ
7 … 載置テーブル
9 … 貼付けユニット
11 … 案内レール
13 … 左右可動台
15 … 案内レール
17 … 前後可動台
19 … 保持ユニット
37 … 搬送アーム
39 … 吸着パッド
47 … 押圧部材
53 … 離間部材
60 … 制御部
61 … 冷却機構
62 … エアーノズル
63 … 温度センサ
W … 半導体ウエハ
PT … 保護テープ