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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】食器洗い機用洗浄剤
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/30 20060101AFI20220722BHJP
   C11D 3/43 20060101ALI20220722BHJP
   C11D 3/16 20060101ALI20220722BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20220722BHJP
   C11D 1/29 20060101ALI20220722BHJP
   C11D 1/75 20060101ALI20220722BHJP
   C11D 17/08 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C11D3/30
C11D3/43
C11D3/16
C11D3/50
C11D1/29
C11D1/75
C11D17/08
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018118758
(22)【出願日】2018-06-22
(65)【公開番号】P2019218515
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2021-03-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】須田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】河野 三美
(72)【発明者】
【氏名】森山 洋匡
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-227443(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0240562(US,A1)
【文献】特開2016-183242(JP,A)
【文献】特表2010-529287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D 1/00- 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)成分:界面活性剤、
(b)成分:キレート剤、
(c)成分:下記式(c1)で表されるアミン化合物、
(d)成分:非環式テルペン(d1)、環式テルペン(d2)、直鎖又は分岐鎖の炭素数8~12のアルカナール(d3)及び酪酸エステル(d4)からなる群から選ばれる1種以上、及び溶媒を含有し、
前記(a)成分が、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤及び半極性界面活性剤から選ばれる1種以上を含み
前記(b)成分が、クエン酸、L-グルタミン酸二酢酸、エチレンジアミン四酢酸及びこれらの塩からなる群から選ばれる1種以上を含み
食器洗い機用洗浄剤の総質量に対して、前記(a)成分の含有量が0.1~15質量%、前記(b)成分の含有量が1質量%以上、前記(c)成分の含有量が0.005~0.2質量%、前記(d)成分の含有量が0.005~0.5質量%であり、
(c)/(d)で表される、前記(d)成分に対する前記(c)成分の質量比が0.1~10である、食器洗い機用洗浄剤。
-N((CHNH ・・・(c1)
(式中、Rは炭素数8~18の直鎖のアルキル基、炭素数8~18の分岐鎖のアルキル基、炭素数8~18の直鎖のアルケニル基、又は炭素数8~18の分岐-鎖のアルケニル基であり、nは2~6の整数である。)
【請求項2】
前記(d)成分が、リナロール、シトロネロール、リモネン、メントール、1,8-シネオール、メントン、及びオクタナールからなる群から選ばれる1種以上である、請求項1に記載の食器洗い機用洗浄剤。
【請求項3】
食器洗い機用洗浄剤の総質量に対して、前記(c)成分と前記(d)成分の合計の含有量が0.01~1質量%である、請求項1又は2に記載の食器洗い機用洗浄剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食器洗い機用洗浄剤に関する。
【背景技術】
【0002】
家族の多い家庭やレストランなど頻繁に使用される食器洗い機、又は固体脂やタンパクなどの強固な複合汚れを連続して洗う等の過酷な条件で使用される食器洗い機にあっては、庫内の残菜フィルター周り等に汚れが蓄積することがある。庫内の汚れは、食器が再汚染されるという心理的不安を使用者に与えるため好ましくない。
【0003】
特許文献1には、脂肪酸アルカノールアミド、キレート剤及び酵素を含有し、油汚れ等に対する再汚染防止性能を有する食器洗い機用洗浄剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-227445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1の洗浄剤は、複合汚れの蓄積防止効果が必ずしも充分でなく、過酷な条件下でも庫内に汚れが蓄積し難い洗浄剤が求められる。
本発明は、汚れの蓄積抑制効果に優れた食器洗い機用洗浄剤の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は以下の態様を有する。
[1](a)成分:界面活性剤、(b)成分:キレート剤、(c)成分:下記式(c1)で表されるアミン化合物、(d)成分:非環式テルペン(d1)、環式テルペン(d2)、直鎖又は分岐鎖の炭素数8~12のアルカナール(d3)及び酪酸エステル(d4)からなる群から選ばれる1種以上、及び溶媒を含有し、食器洗い機用洗浄剤の総質量に対して、前記(b)成分の含有量が1質量%以上である、食器洗い機用洗浄剤。
-N((CHNH ・・・(c1)
(式中、Rは炭素数8~18の直鎖のアルキル基、炭素数8~18の分岐鎖のアルキル基、炭素数8~18の直鎖のアルケニル基、又は炭素数8~18の分岐鎖のアルケニル基であり、nは2~6の整数である。)
[2](c)/(d)で表される、前記(d)成分に対する前記(c)成分の質量比が0.1~10である、[1]の食器洗い機用洗浄剤。
[3]食器洗い機用洗浄剤の総質量に対して、前記(c)成分と前記(d)成分の合計の含有量が0.01~1質量%である、[1]又は[2]の食器洗い機用洗浄剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明の食器洗い機用洗浄剤は、汚れの蓄積抑制効果に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
(食器洗い機用洗浄剤)
本発明の食器洗い機用洗浄剤(以下、単に洗浄剤ということがある)は、(a)~(d)成分、及び溶媒を含有する組成物である。
【0009】
<(a)成分>
(a)成分は界面活性剤である。(a)成分は洗浄力および汚れの蓄積防止効果に寄与する。(a)成分は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。以下、(a)成分の例を挙げる。
【0010】
[アニオン界面活性剤]
アニオン界面活性剤は、大別すると、スルホン酸塩タイプ、硫酸エステル塩タイプ、カルボン酸塩タイプ、リン酸エステルタイプが挙げられる。
スルホン酸塩タイプとしては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル硫酸塩、アルカンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩、α-スルホ脂肪酸アルキルエステル塩、アルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸等が挙げられる。
硫酸エステル塩タイプとしては、アルキル硫酸エステル塩、アルケニル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩等が挙げられる。
カルボン酸塩タイプとしては、アルキルエーテルカルボン酸塩、アミドエーテルカルボン酸塩、スルホコハク酸塩、アミノ酸系アニオン界面活性剤等が挙げられる。
上記アニオン界面活性剤は、炭素数8~18のアルキル基又は炭素数8~18のアルケニル基を有することが好ましく、炭素数8~18のアルキル基が好ましい。当該アルキル基又は当該アルケニル基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。
油再汚染抑制、茶渋洗浄力、及び低泡性が確保しやすい点からスルホン酸塩タイプが好ましく、特にアルカンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩が好ましい。
アニオン界面活性剤を構成する塩としては、ナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム等の金属塩等が挙げられる。
【0011】
[ノニオン界面活性剤]
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレン型ノニオン界面活性剤、アルキルフェノール、高級アミン等のアルキレンオキシド付加体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー、脂肪酸アルカノールアミン、脂肪酸アルカノールアミド、多価アルコール脂肪酸エステル又はそのアルキレンオキシド付加体、多価アルコール脂肪酸エーテル、アルキル(又はアルケニル)アミンオキシド、硬化ヒマシ油のアルキレンオキシド付加体、ソルビタン脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル、N-アルキルポリヒドロキシ脂肪酸アミド、アルキルポリグリコシド、グリセリン脂肪酸エステル等が挙げられる。前記ノニオン界面活性剤は、炭素数8~18のアルキル基又は炭素数8~18のアルケニル基を有することが好ましく、炭素数8~18のアルキル基が好ましい。当該アルキル基又は当該アルケニル基は、直鎖であってもよく、分岐鎖であってもよい。
油再汚染抑制、茶渋洗浄力、及び低泡性が確保しやすい点からポリオキシアルキレン(エチレンオキシド、プロピレンオキシドをランダム又はブロック重合物が好ましい)型ノニオン界面活性剤、アルキルポリグリコシド、グリセリン脂肪酸エステルが好ましい。
【0012】
[両性、半極性界面活性剤]
半極性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミンオキシド、ヤシアルキルジメチルアミンオキシド、ラウリルジエチルアミンオキシド、n-ドデシルジメチルアミンオキシド等のアルキルジメチルアミンオキシド系のもの;ラウリン酸アミドプロピルアミンオキシド等のアルカノイルアミドアルキルジメチルアミンオキシド系のもの等が挙げられる。アルキルジメチルアミンオキシド系のものがより好ましい。
両性界面活性剤としては、カルボン酸塩型、硫酸エステル塩型、スルホン酸塩型、リン酸エステル塩型が挙げられる。カルボン酸塩型の両性界面活性剤が好ましい。
カルボン酸塩型の両性界面活性剤としては、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリン酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシアルキルアミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0013】
洗浄剤の総質量に対して、(a)成分の含有量は0.1~ 15質量%が好ましく、0.1~10質量%がより好ましく、0.2~3質量%がさらに好ましい。(a)成分の含有量が上記範囲の下限値以上であると洗浄力及び汚れの蓄積防止効果に優れ、上限値以下であると低泡性に優れる。食器洗い機では泡立ちが多すぎると運転が停止する場合があるため、洗浄剤は低泡性であることが好ましい。
また、優れた汚れの蓄積防止効果が得られやすい点で、(a)成分が、少なくともアニオン界面活性剤を含むことがより好ましい。(a)成分の総質量に対して、アニオン界面活性剤の含有量の合計が20質量%以上であることが好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましい。100質量%でもよい。
【0014】
<(b)成分>
(b)成分はキレート剤である。(b)成分は汚れの蓄積防止効果に寄与する。
食器洗い機用の洗浄剤の分野で公知のキレート剤を使用できる。(b)成分は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。以下、(b)成分の例を挙げる。
【0015】
低分子キレート剤として、例えば、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、β-アラニン二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、L-グルタミン酸二酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸、セリン二酢酸、アスパラギン二酢酸、メチルグリシン二酢酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、アミノトリメチレンホスホン酸、トリポリリン酸、又はこれらの塩などが挙げられる。
低分子キレート剤を構成する塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩、カリウム塩がより好ましい。
上記に挙げたなかでも複合汚れ蓄積防止性能の観点から、エチレンジアミン四酢酸、ニトリロ三酢酸、β-アラニン二酢酸、エチレンジアミン二コハク酸、L-アスパラギン酸-N,N-二酢酸、ジヒドロキシエチルエチレンジアミン二酢酸、ヒドロキシエチルイミノ二酢酸、クエン酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、グリコールエーテルジアミン四酢酸、L-グルタミン酸二酢酸、1,3-ジアミノ-2-ヒドロキシプロパン四酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸、ジヒドロキシエチルグリシン、3-ヒドロキシ-2,2’-イミノジコハク酸、セリン二酢酸、アスパラギン二酢酸、メチルグリシン二酢酸、及びこれらの塩からなる群より選ばれる1種以上のキレート剤を用いるのが好ましい。
さらにクエン酸、L-グルタミン酸二酢酸、メチルグリシン二酢酸、ジエチレントリアミン五酢酸、エチレンジアミン四酢酸又はこれらの塩が好ましく、クエン酸、エチレンジアミン四酢酸又はその塩が特に好ましい。
【0016】
洗浄剤の総質量に対して、(b)成分の含有量は、酸型として1質量%以上であり、1~30質量%が好ましく、2~30質量%がより好ましく、3~30質量%がさらに好ましく、5~25質量%が特に好ましく、10~25質量%が最も好ましい。
(b)成分の含有量が好ましい下限値以上であると、汚れの蓄積防止効果に優れる。上限値以下であると組成物の液安定性((b)成分の析出抑制)を維持しやすい。
【0017】
<(c)成分>
(c)成分は下記式(c1)で表される化合物である。(c)成分は汚れの蓄積防止効果に寄与する。(c)成分は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
-N((CHNH ・・・(c1)
は炭素数8~18の直鎖のアルキル基、炭素数8~18の分岐鎖のアルキル基、炭素数8~18の直鎖のアルケニル基、又は炭素数8~18の分岐鎖のアルケニル基である。炭素数8~18の直鎖のアルキル基が好ましく、炭素数12の直鎖のアルキル基又は炭素数14の直鎖のアルキル基がより好ましい。
nは2~6の整数である。2又は3が好ましく、3がより好ましい。
(c)成分が、N-(3-アミノプロピル)-N-ドデシルプロパン-1,3-ジアミン(Rが炭素数12の直鎖のアルキル基、nが3である化合物)を含むことが好ましい。
【0018】
洗浄剤の総質量に対して、(c)成分の含有量は0.005~0.2質量%が好ましく、0.007~0.07質量%がより好ましく、0.02~0.05質量%さらに好ましい。(c)成分の含有量が上記範囲内であると汚れの蓄積防止効果に優れる。
【0019】
<(d)成分>
(d)成分は、非環式テルペン(d1)、環式テルペン(d2)、直鎖又は分岐鎖の炭素数8~12のアルカナール(d3)及び酪酸エステル(d4)からなる群から選ばれる化合物である。
(d)成分は汚れの蓄積防止効果に寄与する。(d)成分は1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
非環式テルペン(d1)としては、Myrcene(ミルセン)、Dihydrolinalool(ジヒドロリナロール)、Linalool(リナロール)、Undecenal(ウンデセナール)、Citronellol(シトロネロール)、Citral(シトラール)、Geranyl iso butyrate(ゲラニルイソブチレート)、Geraniol(ゲラニオール)、Linalyl acetate(酢酸リナリル)、Nerol(ネロール)、Myrcenol(ミルセノール)、Lavandulol(ラバンジュロール)等が挙げられる。
【0021】
環式テルペン(d2)としては、α-pinene(α-ピネン)、Limonene(リモネン)、Terpine-4-ol(テルピネン-4-オール)、Perillaldehyde(ペリルアルデヒド)、L-carvone(L-カルボン)、1,8-cineol(1,8-シネオール)、Menthone(メントン)、Camphor(カンファー)、Menthol(メントール)、Terpinene(テルピネン)、Phellandrene(フェランドレン)等が挙げられる。
【0022】
アルカナール(d3)としては、Octanal(オクタナール)、Nonanal(ノナナール)、Decanal(デカナール)、Undecanal(ウンデカナール)、Dodecanal(ドデカナール)、Trimethyl hexanal(トリメチルヘキサナール)等が挙げられる。
【0023】
酪酸エステル(d4)としては、Isoamyl butyrate(酪酸イソアミル)、Heptyl butyrate(酪酸ヘプチル)、Propyl butyrate(酪酸プロピル)、Hexyl butyrate(酪酸ヘキシル)、Ethyl butyrate(酪酸エチル)、Methyl butyrate(酪酸メチル)等が挙げられる。
【0024】
汚れの蓄積防止効果に優れる点で、(d)成分がリナロール、シトロネロール、リモネン、メントール、1,8-シネオール、メントン、及びオクタナールからなる群(i)から選ばれる1種以上を含むことが好ましく、リナロール、リモネン、メントン、及びオクタナールからなる群(ii)から選ばれる1種以上を含むことがより好ましい。
(d)成分の総質量に対して、前記群(i)の化合物の含有量の合計が20~100質量%であることが好ましく、60~100質量%以上がより好ましく、80~100質量%以上がさらに好ましい。
【0025】
汚れの蓄積防止効果に優れる点で、(d)成分が、非環式テルペン(d1)の1種以上と、環式テルペン(d2)、アルカナール(d3)及び酪酸エステル(d4)からなる群から選ばれる1種以上とを組み合わせることが好ましい。
【0026】
洗浄剤の総質量に対して、(d)成分の含有量は0.005~0.5質量%が好ましく、0.007~0.07質量%がより好ましく、0.01~0.06質量%がさらに好ましく、0.02~0.05質量%特に好ましい。(d)成分の含有量が前記範囲内であると汚れの蓄積防止効果が得られやすい。
【0027】
(c)/(d)で表される、(d)成分に対する(c)成分の質量比は0.1~10が好ましく、0.15~6がより好ましく、0.4~3がさらに好ましい。上記範囲内であると汚れの蓄積防止効果により優れる。
また、洗浄剤の総質量に対して、(c)成分と(d)成分の合計の含有量((c)+(d))が0.01~1質量%であることが好ましく、0.03~0.5質量%がより好ましく、0.05~0.1質量%がさらに好ましい。上記範囲内であると汚れの蓄積防止効果により優れる。
【0028】
<溶媒>
本発明の洗浄剤は溶媒を含む。溶媒としては、水が好ましく、水以外に水混和性有機溶媒を用いてもよい。
「水混和性有機溶媒」とは、25℃のイオン交換水1Lに50g以上溶解する有機溶媒をいう。水混和性有機溶媒としては、水と混合した際に均一な溶液となるものであればよく、そのなかでも、炭素数2~4の一価アルコール、炭素数2~4の多価アルコール、グリコールエーテル等が挙げられる。
【0029】
<任意成分>
本発明の洗浄剤には、本発明の目的に反しない限り、食器を洗浄するための洗浄剤に通常含まれる如何なる成分も含むことができる。
例えば、酵素(アミラーゼ、プロテアーゼ等)、増粘剤、植物抽出エキス、吸油剤、消泡剤、食器保護剤、増粘剤、着色剤、ハイドロトロープ剤、酸化防止剤、pH調整剤、着色剤、香料(ただし、(d)成分を除く。)、漂白剤等が挙げられる。
【0030】
洗浄剤のpH(25℃)は、5以上が好ましく、8以下が好ましく、より好ましくは6~8である。
本明細書におけるpH(25℃)は、JIS Z 8802:1984「pH測定方法」に準拠した方法により測定される値である。
【0031】
<洗浄剤の製造方法>
本発明の洗浄剤の製造方法は特に限定されず、従来公知の製造方法を用いることができる。
例えば、溶媒と、(a)成分と、(b)成分と、(c)成分と、(d)成分と、必要に応じて任意成分と、を混合することにより調製される。
【0032】
<洗浄剤の使用方法>
本発明の洗浄剤は、食器洗い機を用いた洗浄に用いられる。食器洗い機の機種は特に限定されない。洗浄剤の使用量は食器等の汚れの程度に応じて設定できる。
食器洗い機による洗浄方法は、洗浄とすすぎの各工程をいずれも有する方法が好ましい。例えば、常温(好ましくは5~30℃程度)の水道水を食器洗い機庫内に導入して調製される洗浄液を、所定の洗浄温度(洗浄時に循環する洗浄液の温度)まで昇温しながら洗浄対象物を洗浄する工程(以下「洗浄工程」という。)と、洗浄後の洗浄対象物を、常温の水道水ですすぐ工程(以下「すすぎ(1)工程」という。)と、常温の水道水を、好ましくは70~75℃まで2~3℃/分で昇温しながら、前記すすぎ(1)工程後の洗浄対象物をさらにすすぐ工程(以下「すすぎ(2)工程」という。)を有する方法が挙げられる。洗浄工程での洗浄時間は、10~40分間が好ましい。
一般的な標準コースの場合、洗浄工程における洗浄温度が55~65℃程度、昇温速度が2~3℃/分程度である。低温コースは、例えば、洗浄温度が35~45℃程度、昇温速度が1℃/分程度である。
いずれのコースにおいても、洗浄剤の1回の使用量は、水道水約3リットルに対して2~9gが好ましい。
【0033】
本発明の洗浄剤は、(a)~(d)成分及び溶媒を含み、洗浄剤の総質量に対して、(a)成分が0.1~10質量%、(b)成分が酸換算で1~30質量%、(c)成分が0.007~0.07質量%、(d)成分が0.005~0.5質量%、溶媒が40~97質量%であり、(c)/(d)の質量比が0.1~10、(c)+(d)の含有量が0.01~1質量%であることが好ましい。
なお、洗浄剤の各成分の含有量の合計は、100質量%を超えない。
【実施例
【0034】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0035】
(使用原料)
<(a)成分>
[アニオン界面活性剤]
a-1:SAS、第2級アルカンスルホン酸ナトリウム、クラリアントジャパン株式会社製、製品名「HOSTAPUR SAS 30A」。
a-2:AS、直鎖アルキル(C10)硫酸エステルナトリウム、fluoro chem社製、製品名「n-Decyl sodium sufate」。
a-3:AES(2)、ポリオキシエチレン(平均繰返し数2)直鎖アルキル(C12/14=75/25)エーテル硫酸ナトリウム、新日本理化株式会社製、製品名「シノリン SPE-1250」。
a-4:LAS、直鎖アルキル(炭素数12-14)ベンゼンスルホン酸ナトリウム、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、製品名「ライポン LS-250」。
[ノニオン界面活性剤]
a-5:AEP、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(平均繰返し数:EO=2.4、PO=4.9)、BASF社製、製品名「Plurafac LF403」。
a-6:APG、2エチルヘキシルグルコシド、ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製、製品名「AG6202」。
a-7:DGML、ジグリセリンモノラウレート、理研ビタミン社製、製品名「DL-100」。
[半極性界面活性剤]
a-8:AX、n-オクチルジメチルアミンオキシド、Lonza社製、製品名「FMB AO-8」。
【0036】
<(b)成分>
b-1:EDTA、エチレンジアミン四酢酸、東京化成工業株式会社製、試薬。
b-2:クエン酸、扶桑化学工業株式会社製、製品名「精製クエン酸(無水)」。
b-3:GLDA、グルタミン酸二酢酸4ナトリウム塩、Akzo Nobel社製、製品名「Dissolvine GL-47-S」。
<(c)成分>
c-1:トリアミン、ロンザ社製、製品名「Lonzabac12.100」、前記式(c1)においてRが炭素数12の直鎖のアルキル基、nが3である化合物。
【0037】
<(d)成分>
製造元の記載が無いものは東京化成工業株式会社製、試薬である。「 」内はCAS番号である。
[非環式テルペン(d1)]
d-1:Myrcene(ミルセン、「123-35-3」)。
d-2:Geranyl iso butyrate、(ゲラニルイソブチレート、シグマアルドリッチ社製、製品名「3,7-DIMETHYL-2,6-OCTADIENYL ISOBUTYRATE」、試薬、「2345-26-8」)。
d-3:Linalol、(リナロール、「78-70-76」)。
d-4:Undecenal、(ウンデセナール、「2463-77-6」)。
d-5:Citral、(シトラール、「5392-40-5」)。
d-6:Citronellol、(シトロネロール、「106-22-9」)。
d-7:Dihydrolinalool、(ジヒドロリナロール、「18479-51-1」)。
[環式テルペン(d2)]
d-9:Limonene、(リモネン、「138-86-3」)。
d-10:α-pinene、(α-ピネン、「80-56-8」)。
d-11:Menthol、(メントール、「2216-51-5」)。
d-12:1,8-Cineole、(1,8-シネオール、「470-82-6」)。
d-13:Menthone、(メントン、「14073-97-3」)。
d-14:Perillaldehyde、(ペリルアルデヒド、「2111-75-3」)。
d-15:L-carvone、(L-カルボン、シグマアルドリッチ社製、試薬。「99-49-0」)。
d-16:Camphor、(カンファー、「76-22-2」)。
d-17:Terpinen-4-ol、(テルピネン-4-オール、「20126-76-5」)。
[アルカナール(d3)]
d-18:Decanal、(デカナール、「112-31-2」)。
d-19:Nonanal、(ノナナール、「124-19-6」)。
d-20:Octanal、(オクタナール、「124-13-0」)。
[酪酸エステル(d4)]
d-21:Ethyl butyrate、(酪酸エチル、「105-54-7」)。
【0038】
<比較成分>
d’-22:Hedione(ヘディオン、和光純薬株式会社製、ジヒドロジャスモン酸メチル、試薬、「24851-98-7」)。
d’-23:eugenol(オイゲノール、「97-53-0」)。
d’-24:methyl salicylate(サリチル酸メチル、「119-36-8」)。
<任意成分>
表中の任意成分(1)は、下記の酵素(1)0.3質量%、酵素(2)0.65質量%、及びシリコーン化合物(1)0.1質量%である。
酵素(1):アミラーゼ、ノボザイムズジャパン株式会社製、製品名「ターマミルウルトラ300L」。
酵素(2):プロテアーゼ、ノボザイムズジャパン株式会社製、製品名「サビナーゼウルトラ16XL」。
シリコーン化合物(1):東レダウコーニング社製、製品名「XIAMETER ACP-1500 ANTIFOAM COMPOUND」。
pH調整剤:硫酸(関東化学株式会社製)、48%水酸化ナトリウム(旭硝子株式会社製)。
【0039】
(実施例1~50、比較例1~7)
表1~5に示す組成(単位:質量%)に従い、溶媒の水に(a)成分、(b)成分、(c)成分、(d)成分、任意成分とpH調整剤を溶解することにより、各例の洗浄剤0.8kgをそれぞれ調製した。比較例5は(d)成分の代わりに比較成分を配合した。
具体的には、1Lビーカー(直径12cm)内に、水を洗浄剤全体の約70質量%(約0.56kg)となるように投入した。HEIDON FBL1200スリーワンモーター(新東科学株式会社製)の撹拌機に直径7.5cm、幅1.5cm、角度45度の4枚羽パドルを装備し、その後、内容物が飛び散らないように回転数400~900rpmで撹拌しながら(a)成分、(b)成分を混合し、pH調整剤(水酸化ナトリウムまたは硫酸)を添加しpHを7に調整した。その後、常温まで冷却後、(c)成分、(d)成分、任意成分を前記撹拌機の回転数を650rpmで撹拌しながら加えた。添加終了後、5分間撹拌し、洗浄剤全体が100質量%(0.8kg)となるように残りの水を加え、前記撹拌機の回転数650rpmで1分間撹拌することにより洗浄剤を得た。
洗浄剤のpH(25℃)は、25℃に調整した洗浄剤を、ガラス電極式pHメーター(製品名「HM-30G」、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて測定した。
【0040】
以下の表において、表中の配合量は純分換算値である。(b)成分の含有量は無水の酸型としての含有量である。表中の空欄はその成分が配合されていないことを意味する。pH調整剤の含有量「適量」は、各例の洗浄剤のpHを所定の値にするのに要した量である。水の含有量「バランス」は、洗浄剤に含まれる全成分の合計の含有量が100質量%となるように加えられる残部を意味する。
得られた洗浄剤における(c)/(d)の質量比、洗浄剤の総質量に対する(c)成分と(d)成分の合計の含有量((c)+(d))を表に示す。また上記の方法でアミン臭抑制効果を評価した結果を表に示す(以下、同様)。
各例の洗浄剤について、下記の方法で汚れの蓄積抑制効果を評価した。結果を表中に示す。
【0041】
<汚れの蓄積抑制効果の評価方法>
食器洗い機として、自動食器洗い乾燥機(パナソニック株式会社製、機種「NP-40SX2」)を用いた。洗浄処理は、自動食器洗い乾燥機に設定されている標準コース(節電モード)で運転することにより行った。節電モードとは、通常モードと比較して、洗浄工程での水温が15℃低く設定されている。標準コース(節電モード)の内容を以下に示す。
標準コース(節電モード):
自動食器洗い乾燥機に洗浄剤を投入した後、約5℃の水道水を庫内に導入して調製される洗浄液を40℃まで2~3℃/minで昇温しながら20分間洗浄を行い、洗浄液を排水する。次いで、新たな水道水を導入し、すすぎ(2分間/回)と排水との繰返し3回を行う。排水後、新たな水道水を導入し、70℃まで2~3℃/minで昇温しながらすすぎ1回(最終すすぎ)20分間を行い、排水後、温風を循環させながら食器等を乾燥する。
【0042】
試験は、複合汚れを連続して洗うという過酷な条件で行った。
複合汚れモデルとして、牛脂/ラード/バター/サラダ油=3/3/3/1(質量比)の混合油汚れと、レトルトカレー(製品名「ボンカレーゴールド21辛口」)、生卵(Lサイズ)、ご飯(自主流通米一類こしひかり相当、米と水の量の比は炊飯器の標準とし、炊飯後12時間以内のものを使用する)を混合したカレーご飯汚れを用いた。汚れは陶器皿(半径100mm、高さ15mm)にそれぞれを付着させ、残菜フィルター周りの蓄積汚れを評価した。
具体的には、前記混合油2gを皿に付着させたものを2枚用意した。これとは別に、前記レトルトカレー200g、生卵1個、ご飯150gの混合物(カレーご飯)を皿に30gのせ、皿表面を均一に汚染したのち、カレーご飯を捨てたものを3枚用意した。なお、カレーご飯を捨てる際、米を10粒程度残し、スプーンで潰した。用意した5枚の汚染された皿を前記自動食器洗い乾燥機に装填し、洗浄剤6g(水道水約3リットルに対して)を投入し、標準コース(節電モード)で洗浄処理した。
同様の汚染された皿(計5枚)の洗浄処理を一日一回、連続して10日間行った。
10日目の洗浄処理の後、残菜フィルター周りの汚れ具合を目視で観察し、下記の基準で複合汚れ残りを評価した。また、残菜フィルター周りを指でさわり、下記の基準でヌルつきを評価した。
目視で汚れ残りが確認できなければ、汚れの蓄積抑制効果が良好であると判定できる。またヌルつきが少ないほど汚れの蓄積抑制効果がより優れると判定できる。
(複合汚れ残りの評価基準)
A:目視で汚れを確認できない。
B:目視で汚れがわずかに確認できる。
C:目視で汚れをはっきり確認できる
(ヌルつきの評価基準)
A:全くヌルつかない。
B:わずかにヌルつきを感じる。
C:ややヌルつきを感じる。
D:ヌルつきを感じる。
【0043】
【表1】
【0044】
【表2】
【0045】
【表3】
【0046】
【表4】
【0047】
【表5】
【0048】
表1~5に示されるように、実施例1~50の洗浄剤は、複合汚れを連続して洗浄しても庫内に汚れ残りが確認できず、汚れの蓄積抑制効果が良好であった。
(b)成分の含有量が少ない比較例1、(a)成分を含まない比較例2、(c)成分を含まない比較例3、(d)成分を含まない比較例4、5、6、7は、庫内に汚れ残りが確認され、汚れの蓄積抑制効果が不充分であった。