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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】燃料給油口周辺構造
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/04 20060101AFI20220722BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20220722BHJP
   F16B 7/04 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
B60K15/04 E
B60K15/04 F
F02M37/00 301M
F16B7/04 301D
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018124126
(22)【出願日】2018-06-29
(65)【公開番号】P2020001590
(43)【公開日】2020-01-09
【審査請求日】2021-05-21
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 貴泰
(72)【発明者】
【氏名】福島 英樹
(72)【発明者】
【氏名】福満 隆崇
(72)【発明者】
【氏名】野村 浩司
【審査官】伊藤 秀行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-220590(JP,A)
【文献】実開昭61-140755(JP,U)
【文献】特開平11-182769(JP,A)
【文献】国際公開第2017/116766(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 15/04
F02M 37/00
F16B 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
大径の給油口部と、縮径パイプ部と、前記給油口部と前記縮径パイプ部とを接続する段差部を有するフューエルフィラーパイプと、該フューエルフィラーパイプの前記給油口部の側面を覆う筒状の保護カバーとを有する燃料給油口周辺構造であって、
前記保護カバーは、前記給油口部の上端から装着することができ、
前記保護カバーの前記フューエルフィラーパイプの前記段差部側には、前記保護カバーを前記給油口部に装着したときに、前記給油口部の上端から前記保護カバーが抜けるのを防止するための、前記段差部側に突出する爪部が設けられ、
前記段差部には、前記段差部から突出して形成され、前記段差部の前記給油口部の下端近傍から前記給油口部の下端の外周面と同じ高さに至るスロープ部が設けられ、
前記保護カバーの前記爪部が、前記フューエルフィラーパイプの前記段差部の前記スロープ部上を移動することにより、前記保護カバーを前記給油口部から取り外すことができ、前記保護カバーが脱着可能となっていることを特徴とする燃料給油口周辺構造。
【請求項2】
前記段差部に設けられた前記スロープ部は、凸状の弧形状若しくは略直線形状の傾斜部と、前記給油口部の下端の外周面と同じ高さの同一高さ部を有する請求項1に記載の燃料給油口周辺構造。
【請求項3】
前記保護カバーの前記爪部の前記段差部側へ突出する長さhは、前記フューエルフィラーパイプの前記段差部に設けられる前記スロープ部の高さHより小さい請求項1または請求項2に記載の燃料給油口周辺構造。
【請求項4】
前記保護カバーの側面には、前記フューエルフィラーパイプの前記給油口部の側面に当接する突部が設けられている請求項1乃至請求項3に記載の燃料給油口周辺構造。
【請求項5】
前記フューエルフィラーパイプの前記段差部に設けられた前記スロープ部の前記同一高さ部の前記給油口部の下端から下方へ突出する長さLは、前記保護カバーを前記フューエルフィラーパイプの前記給油口部に装着したときに、前記保護カバーの前記爪部が前記給油口部から下方へ突出する長さlより長い請求項2に記載の燃料給油口周辺構造。
【請求項6】
前記フューエルフィラーパイプの前記段差部に設けられた前記同一高さ部の長さWは、前記保護カバーの前記爪部の幅wより長い請求項2または請求項5に記載の燃料給油口周辺構造。
【請求項7】
前記保護カバーの前記給油口部装着時の車両前方側の側面は切り欠かれている請求項1乃至請求項6に記載の燃料給油口周辺構造。
【請求項8】
前記保護カバーの前記爪部が設けられている側と反対側の上端には、ラッパ状拡管部が設けられている請求項1乃至請求項7に記載の燃料給油口周辺構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製のフューエルフィラーパイプを用いた場合の、耐後方衝突性に優れ、脱着が容易であり、且つリサイクル性を有する保護カバーを用いた燃料給油口の周辺構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の軽量化や車内空間確保等の観点から、また、成形性の良さから燃料供給経路においても樹脂化が進んでおり、燃料タンクのみならず燃料タンクと給油口をつなぐフューエルフィラーパイプにおいても樹脂化が一般的になってきている。ただし、フューエルフィラーパイプを樹脂化した場合であっても、給油ガンが挿入される給油口において、給油ガンとの接触による損傷防止から、通常、金属リテーナが使用されている。
【0003】
一方、樹脂製のフューエルフィラーパイプは、一般的に不導電性の樹脂材料で成形されているので、金属リテーナに帯電する静電気をアースすることができず、給油時等で給油ガンを挿入した時の静電気によるスパークによるガソリンへの引火を防止する必要がある。
【0004】
そこで、図4に示すように、自動車搭載用の燃料タンクに接続する樹脂製のフューエルフィラーパイプ1は、大径の給油口部11、給油口部11の下端に下方が小径になったテーパ121を設け、テーパ121の下に縮径パイプ部13を有している。給油口部11において、金属リテーナ14の上半分は導電性リング15の内周にインサートしてなり、導電性リング15の鍔122と鍔122の内周から垂下した下方突出片123とを導電性接着剤又は加熱により給油口部11の上縁に接合するとともに、給油口部11の上部の外側に幅の狭い導電性樹脂片124を縦方向に上端まで設け、導電性樹脂片124と導電性リング15の鍔122を接続することにより、金属リテーナ14のアースの基端とし、金属リテーナ14に帯電する静電気をアースしている。(特許文献1を参照)
【0005】
ところで、図4の構造では、車両において、後方からの衝突の際には、衝撃力によって給油口部11と導電性リング15とが分解し、燃料漏れのおそれがあった。図5は、車両衝突等での破壊を抑制するものであり、燃料タンクから延び、その燃料タンクに装着されるフューエルフィラーパイプ1の燃料タンクとは反対側の先端にあって、金属リテーナ14の外周面に固着される導電性樹脂層125と、導電性樹脂層125の外周面に固着される筒状保護体126と、先端開口縁127が筒状保護体126の端面及びこれに続く外周面の少なくとも一部分を抱持するフューエルフィラーパイプ1と、を具備し、更に、導電性樹脂層125の一部が筒状保護体126に設けた透孔128を貫通し、筒状保護体126の外面に突出してなる突起部129を形成することにより突起部129にアースワイヤ130の一端が取付けられるようにしている。そして、上記構造を実現するために、金属リテーナ14へ筒状保護体126を嵌装し、Oリング131を挟圧状態下、金属リテーナ14と筒状保護体126との間隙をキャビティとして、射出成形により導電性樹脂層125を形成している。(特許文献2を参照)
【0006】
一方、図6に示すように、給油口周辺を保護するプロテクタ132は、主体部133が円筒状であり、両端には車外側フランジ134と車内側フランジ135が形成され、車外側フランジ134はシール機能と緩衝機能を有する発泡性スポンジゴム等からなる弾性材136を介して車体のフィラーベース137の内側開口周縁部138に配置され、また、プロテクタ132の車内側フランジ135はホイールハウスアウタパネル139の取付部140に、座金状のシール部材141を介してボルト142止めされている。なお、図6には、フューエルフィラーパイプ1が開示されているが、その材質については触れられていない。(特許文献3を参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実全平3-59583号公報
【文献】特開平9-68126号公報
【文献】特開昭60-1026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、自動車にあっては、軽量化による排出ガス抑制等も重要であるが、環境問題の観点からは、リサイクルについても十分考慮されなければならない。上記の特許文献2の構造によれば、確かに安全に関する後方からの衝突への対応はされているが、金属リテーナ14とフューエルフィラーパイプ1の間には筒状保護体126と導電性樹脂層125が介在しているので、後にフューエルフィラーパイプ1から金属リテーナ14を取り外すことができない。そのため、リサイクル性に問題があった。
【0009】
また、特許文献3の構造によれば、フューエルフィラーパイプ1とプロテクタ132を分離することは可能であるが、プロテクタ132の取り付け、取り外しには、複数個所のボルト止め、ボルト外しが必要であり、作業性に問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために請求項1の本発明は、大径の給油口部と、縮径パイプ部と、給油口部と縮径パイプ部とを接続する段差部を有するフューエルフィラーパイプと、フューエルフィラーパイプの給油口部の側面を覆う筒状の保護カバーとを有する燃料給油口周辺構造であって、保護カバーは、給油口部の上端から装着することができ、保護カバーのフューエルフィラーパイプの段差部側には、保護カバーを給油口部に装着したときに、給油口部の上端から保護カバーが抜けるのを防止するための、段差部側に突出する爪部が設けられ、段差部には、段差部から突出して形成され、段差部の給油口部の下端近傍から給油口部の下端の外周面と同じ高さに至るスロープ部が設けられ、保護カバーの爪部が、フューエルフィラーパイプの段差部のスロープ部上を移動することにより、保護カバーを給油口部から取り外すことができ、保護カバーが脱着可能となっていることを特徴とする燃料給油口周辺構造である。
【0011】
請求項1の本発明では、大径の給油口部と、縮径パイプ部と、給油口部と縮径パイプ部とを接続する段差部を有するフューエルフィラーパイプと、フューエルフィラーパイプの給油口部の側面を覆う保護カバーとを有する燃料給油口周辺構造であって、保護カバーは、給油口部の上端から装着することができ、保護カバーの段差部側には爪部が設けられているので、保護カバーを給油口部上端から装着したときに、保護カバーを給油口部に固定するとともに、保護カバーが給油口部の上端から保護カバーが抜けるのを防止することができる。
【0012】
また、爪部が段差部の給油口部側の近傍には、給油口部の下端と同じ高さに至るスロープ部が設けられているので、保護カバーを回転させることにより、保護カバーの爪部が、段差部のスロープ部上を移動し、給油口部の下端と同じ高さに到達したときに保護カバーを取り外すことができ、保護カバーを再利用することができる。
【0013】
請求項2の本発明は、段差部に設けられたスロープ部は、凸状の弧形状若しくは略直線形状の傾斜部と、給油口部の下端の外周面と同じ高さの同一高さ部を有する燃料給油口周辺構造である。請求項2の本発明では、段差部に設けられたスロープ部は、凸状の弧形状若しくは略直線形状の傾斜部を有しているので、保護カバーを回転させることにより、保護カバーの爪部が凸状の弧形状のスロープ部を徐々にせり上がることができ、一定の負荷によって保護カバーの爪部を給油口部の下端の外周面と同じ高さまで誘導することができ、作業性が向上する。
【0014】
また、スロープ部には、給油口部の下端の外周面と同じ高さの同一高さ部を有するので、保護カバーを回転させ、保護カバーの爪部を給油口部の下端の外周面と同じ高さの位置まで上げることができ、保護カバーを確実に取り外すことができる。
【0015】
請求項3の本発明は、保護カバーの爪部の段差部側へ突出する長さhは、フューエルフィラーパイプの段差部に設けられるスロープ部の高さHより小さい燃料給油口周辺構造である。請求項3の本発明では、保護カバーの爪部の段差部側へ突出する長さhは、フューエルフィラーパイプの段差部に設けられるスロープ部の高さHより小さいので、保護カバーを回転させたときに、保護カバーの爪部が段差部のスロープ部から外れることなくスロープ部上を移動することができ、給油口部の下端の外周面と同じ高さに到達したときに保護カバーを取り外すことができる。
【0016】
請求項4の本発明は、保護カバーの側面には、フューエルフィラーパイプの給油口部の側面に当接する突部が設けられている燃料給油口周辺構造である。請求項4の本発明では、保護カバーの側面には、給油口部の側面に当接する突部が設けられているので、取り付けた保護カバーが突部により給油口部の側面にしっかり固定され、振動等による保護カバーと給油口部との接触に伴う異音の発生を防止することができる。
【0017】
請求項5の本発明は、フューエルフィラーパイプの段差部に設けられたスロープ部の同一高さ部の給油口部の下端から下方へ突出する長さLは、保護カバーを給油口部に装着したときに、保護カバーの爪部がフューエルフィラーパイプの給油口部から下方へ突出する長さlより長い燃料給油口周辺構造である。
【0018】
請求項5の本発明は、段差部に設けられたスロープ部の同一高さ部の給油口部の下端から下方へ突出する長さLは、保護カバーを給油口部に装着したときに、保護カバーの爪部が給油口部から下方へ突出する長さlより長いので、保護カバーの爪部が確実に段差部のスロープ部上を移動することができる。
【0019】
請求項6の本発明は、フューエルフィラーパイプの段差部に設けられた同一高さ部の長さWは、保護カバーの爪部の幅wより長い燃料給油口周辺構造である。請求項6の本発明では、フューエルフィラーパイプの段差部に設けられた同一高さ部の長さWは、保護カバーの爪部の幅wより長く設けられているので、保護カバーの爪部全体を給油口部の下端の外周面と同じ高さの位置まで上げることができ、保護カバーを確実に取り外すことができる。特に、保護カバーの側面に給油口部の側面に当接する突部が設けられている場合には、保護カバーを回転させるためには、ある程度強い力を必要とする。同一高さ部の長さが短い場合、力加減によっては、爪部がスロープ部を上がった後に同一高さ部を通過し、保護カバーを取り外すことができなくなる可能性がある。したがって、爪部の幅より長い同一高さ部を有することにより、確実に保護カバーを取り外すことができる。
【0020】
請求項7の本発明は、保護カバーの給油口部装着時の車両前方側の側面は切り欠かれている燃料給油口周辺構造である。本発明は、耐後方衝突性に対するものである。請求項7の本発明では、保護カバーのフューエルフィラーパイプ装着時の車両前方側の側面は切り欠かれているので、耐後方衝突性の性能面を維持しつつ、保護カバーの軽量化を図ることができる。また、切り欠かれていることにより、保護カバーの取り付け時の向きを容易に把握できるので、作業性が向上する。
【0021】
請求項8の本発明は、保護カバーの爪部が設けられている側と反対側の上端には、ラッパ状拡管部が設けられている燃料給油口周辺構造である。請求項8の本発明では、保護カバーの爪部が設けられている側と反対側の上端には、ラッパ状拡管部が設けられているので、保護カバーの脱着の際に、ラッパ状拡管部を手で持って作業することができ、作業性が向上する。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、大径の給油口部と、縮径パイプ部と、給油口部と縮径パイプ部とを接続する段差部を有するフューエルフィラーパイプと、フューエルフィラーパイプの給油口部の側面を覆う筒状の保護カバーとを有し、保護カバーは、給油口部の上端から装着でき、保護カバーの段差部側には、保護カバーを給油口部に装着したときに、給油口部から段差部側に突出する保護カバーの抜け防止用の爪部が設けられ、段差部には、段差部から突出して形成される給油口部の下端近傍から給油口部の下端と同じ高さに至るスロープ部が設けられているので、保護カバーを給油口部上端から装着したときに、保護カバーを給油口部に固定し、且つ保護カバーが給油口部の上端から保護カバーが抜けるのを防止することができる。さらに、保護カバーを回転させることにより、保護カバーの爪部が、段差部のスロープ部上を移動し、給油口部の下端の外周面と同じ高さに到達したときに保護カバーを取り外すことができる。
【0023】
また、段差部に設けられたスロープ部は、凸状の弧形状若しくは略直線形状の傾斜部と、給油口部の下端の外周面と同じ高さの同一高さ部を有しているので、保護カバーの爪部が凸状の弧形状のスロープ部を徐々にせり上がることができ、且つ、保護カバーの爪部を給油口部の下端と同じ高さの位置まで確実に上げることができ、保護カバーを確実に取り外すことができる。
【0024】
さらに、保護カバーの爪部が給油口部から段差部側へ突出する長さhとフューエルフィラーパイプの段差部に設けられるスロープ部の高さH、保護カバーをフューエルフィラーパイプの給油口部に装着したときに、保護カバーの爪部が給油口部から下方へ突出する長さlとフューエルフィラーパイプの段差部に設けられたスロープ部の同一高さ部の給油口部の下端から下方へ突出する長さL、爪部の幅wとフューエルフィラーパイプの段差部に設けられた同一高さ部の長さWとの間には、h<H、l<L、w<Wの関係を有しているので、保護カバーの爪部をフューエルフィラーパイプの段差部に設けたスロープ部に導き、保護カバーの爪部全体を給油口部の下端と同じ高さの位置まで確実に上げることができるので、保護カバーを取り外すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1の実施形態の燃料給油口周辺構造における保護カバーとフューエルフィラーパイプの関係を示す図であり、(a)は保護カバーの側面図、(b)はフューエルフィラーパイプの側面図、(c)は(b)のA-A断面図、(d)は(b)のB-B断面図である。
図2図1の(a)保護カバーを(b)フューエルフィラーパイプの給油口部に装着したときの図であり、(a)は側面図、(b)はフューエルフィラーパイプの縮径パイプ側から見た底面図である。
図3】本発明の第2の実施形態の燃料給油口周辺構造に用いられる保護カバーであり、(a)は上面図、(b)は(a)において方向から見た側面図、(c)は(a)において方向から見た側面図、(d)は(c)におけるC-C断面図、(e)は(b)におけるD-D断面図である。
図4】従来の樹脂製のフューエルフィラーパイプを用いた燃料給油口周辺構造における給油口部周辺の構造を示す断面図である。(特許文献1)
図5】従来の樹脂製のフューエルフィラーパイプを用いた燃料給油口周辺構造における給油口部周辺の構造を示す断面図である。(特許文献2)
図6】従来の燃料給油口周辺構造における断面図である。(特許文献3)
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本発明の第1の実施形態の燃料給油口周辺構造における保護カバー2とフューエルフィラーパイプ1の関係を図1図2を用いて説明し、その後に、第2の実施形態の燃料給油口周辺構造に用いる保護カバー2について図3を用いて説明する。なお、第2の実施形態の燃料給油口周辺構造に用いたフューエルフィラーパイプ1は、第1の実施形態で用いたフューエルフィラーパイプ1と同じである。また、従来例で示したものと同一部分には同一符号を付した。
【0027】
図1(a)に示すように、フューエルフィラーパイプ1の給油口部11を保護する保護カバー2は、円筒状であり、素材はステンレスである。なお、素材は、他の材料、例えば、鉄などの他の金属でもよく、また、電着等の塗装を施してもよい。本第1の実施形態で用いる保護カバー2は、フューエルフィラーパイプ1の給油口部11の全周を保護するタイプである。保護カバー2の下部には、幅w、長さlの爪部21が設けられている。また、保護カバー2の側面には、筒状の保護カバー2の内側に突出し、フューエルフィラーパイプ1の給油口部11の側面に当接する突部22が設けられている。さらに、保護カバー2の爪部21が設けられている側と反対側の上端には、ラッパ状拡管部23が設けられている。
【0028】
図1(b)に示すように、フューエルフィラーパイプ1は、大径の給油口部11と、縮径パイプ部13と、給油口部11と縮径パイプ部13とを接続する段差部12を有しており、それらは、例えば、高密度ポリエチレンで成形された樹脂製である。給油口部11には、金属リテーナ14が組み込まれ、給油口部11と金属リテーナ14との間には、金属リテーナ14に帯電する静電気をアースするための導電性リング15が組み込まれている。なお、静電気をアースするための導電性リング15から図示しないボディへの経路については、例えば、背景技術に記載した特許文献1を利用することができる。また、樹脂製のリテーナを使用してもよい。この場合は静電気の問題はないので、導電性リング15は不要となる。
【0029】
段差部12には、段差部12から突出して形成される給油口部11の下端近傍から給油口部11の下端と同じ高さに至るスロープ部16が形成されている。スロープ部16は傾斜部17(図1(c))と、給油口部11の下端の外周面と同じ高さであり、長さがWの同一高さ部18(図1(d))を有している。また、同一高さ部18の給油口部11の下端から下方への突出長さはLである。
【0030】
ここで、フューエルフィラーパイプ1の段差部12に設けられるスロープ部16の給油口部11から下方への長さL及び同一高さ部18の長さWと、保護カバー2に設けられる爪部21の長さl及び幅wとの関係は、L>l、W>wである。なお、爪部21の長さlについては、保護カバー2がフューエルフィラーパイプ1の給油口部11側から装着されたときに、保護カバー2の下端部が給油口部11の下端部を越える場合(保護カバー2の下端部が給油口部11の下端部を越える分をx)は、 L>(l+x)を満たすことが必要である。
【0031】
図2(a)に示すように、保護カバー2をフューエルフィラーパイプ1の給油口部11側から装着すると、爪部21によって保護カバー2がフューエルフィラーパイプ1の給油口部11に固定されると共に、図における上方向に抜けることを防止している。また、突部22がフューエルフィラーパイプ1の給油口部11の側面に当接することにより、保護カバー2がフューエルフィラーパイプ1の給油口部11に固定される。
【0032】
図2(b)は、フューエルフィラーパイプ1を縮径パイプ部13側から見た底面図である。なお、図2(b)において、保護カバー2の突部22の記載は省略した。ここで、保護カバー2の爪部21のフューエルフィラーパイプ1の段差部12側へ突出する長さhと段差部12に設けられたスロープ部16の高さHとの関係は、H>hである。この状態から、図において保護カバー2を右回りに回転させると、H>h、L>lにより、爪部21がスロープ部16の傾斜部17に当接する。さらに右回りに回転させると、爪部21は傾斜部17をせり上がり、やがて前記給油口部11の下端と同じ高さの同一高さ部18に到達する。そして、W>wにより、爪部21はその全体が同一高さ部18に位置することになる。この状態から、保護カバー2を上方(図においては奥の方向)に引くと、爪部21は、段差部12の同一高さ部18から給油口部11の下端の外周面に移動することができるので、保護カバー2をフューエルフィラーパイプ1の給油口部11から取り外すことができる。
【0033】
図3は、本発明の第2の実施形態の燃料給油口周辺構造に用いる保護カバー2であり、(a)は上面図、(b)は(a)において方向から見た側面図、(c)は(a)において方向から見た側面図である。(d)は(c)におけるC-C断面図であり、主に突部22に関する。また、(e)は(b)におけるD-D断面図であり、主に爪部21に関する。一方、フューエルフィラーパイプ1については、図1及び図2と同じものを使用することができる。なお、(a)におけるAの矢印方向が車両前方である。
【0034】
本実施形態において、保護カバー2は、給油口固定部24と給油口後方衝突保護部25の2部材から構成され、給油口固定部24と給油口後方衝突保護部25はスポット溶接により一体化されている。給油口固定部24と給油口後方衝突保護部25の内径(突部22を除く)は同じである。給油口固定部24の上部にはラッパ状拡管部23が形成されている。なお、スポット溶接部は省略した。ラッパ状拡管部23には、位置合わせマーク28が刻印若しくは印刷されている。素材は、給油口固定部24と給油口後方衝突保護部25共にステンレスである。給油口後方衝突保護部25は保護カバー2がフューエルフィラーパイプ1の給油口部11に装着されたときに車体後方に位置し、後方からの衝突の際にフューエルフィラーパイプ1の給油口部11を保護する。なお、素材は、他の材料、例えば、鉄などの他の金属でもよく、また、電着等の塗装を施してもよい。
【0035】
給油口後方衝突保護部25は給油口固定部24の全周(360°)に対して、部分的にαの範囲に設けられ、さらに、給油口固定部中心26とラッパ状拡管部中心27を結び延長した線に対してβだけずれて溶接により固定されている。この結果、保護カバー2の給油口後方衝突保護部25は側面が切り欠かれた形状になっている。これにより、必要な位置に必要な範囲の保護カバー2を設けることができるので、保護カバー2の耐後方衝突性能を維持しつつ、軽量化を図ることができる。なお、この角度α及びβについては、必要な位置に必要な範囲の保護カバー2を設ける趣旨において、車種等により適宜変更が可能である。
【0036】
爪部21は、給油口後方衝突保護部25の下端に形成されており、突部22は、給油口固定部24と給油口後方衝突保護部25の双方に形成されている。その結果、本実施形態においては、保護カバー2を装着したときには、フューエルフィラーパイプ1の給油口部11は、第1の実施形態の図2(a)とは異なり、ラッパ状拡管部23まで到達している。なお、突部22は、給油口後方衝突保護部25のみに形成してもよい。
【0037】
爪部21は、図3(b)から明らかなように、保護カバー2の給油口後方衝突保護部25の下端部に形成されている。図3(e)において爪部21の左側がフューエルフィラーパイプ1の給油口部11側である。爪部21は、給油口後方衝突保護部25の下端部から一旦外側に膨らみ、その後、給油口後方衝突保護部25の内面を越えてフューエルフィラーパイプ1の給油口部11側まで曲げられ、再度、給油口後方衝突保護部25のフューエルフィラーパイプ1の給油口部11側ではあるが、外側方向に曲げられている。これは、保護カバー2のフューエルフィラーパイプ1の給油口部11への脱着を可能にすること、装着時に保護カバー2がフューエルフィラーパイプ1の給油口部11から上方向に抜けることを防止するためである。
【0038】
また、爪部21の先端部の角部及び側面部は面取りされている。これは、保護カバー2をフューエルフィラーパイプ1の給油口部11から取り外すときに、保護カバー2を回転し、フューエルフィラーパイプ1の段差部12に設けられたスロープ部16をせり上がり易くするためである。
【0039】
突部22は、図3(d)から明らかなように、給油口固定部24と給油口後方衝突保護部25に形成され、フューエルフィラーパイプ1の給油口部11側に曲げられ、その後、給油口固定部24、給油口後方衝突保護部25と平行、若しくは先端が若干外側を向くように形成される。これは、保護カバー2の装着時に保護カバー2を突部22によってフューエルフィラーパイプ1の給油口部11に当接させて固定すると共に、保護カバー2のフューエルフィラーパイプ1の給油口部11への脱着を可能にするためである。なお、図3においては、4カ所(内3か所は直線上に)形成されているが、給油口部11側への曲げ量、また、それらを設ける位置と個数に関しては、フューエルフィラーパイプ1の給油口部11への保護カバー2の固定力が規定の範囲内であれば、適宜変更が可能である。
【0040】
また、突部22の側面部のフューエルフィラーパイプ1の給油口部11側は角部が面取りされた形状にすることが望ましい。これは、保護カバー2をフューエルフィラーパイプ1の給油口部11から取り外すため、保護カバー2を回転するときに、フューエルフィラーパイプ1の給油口部11の側面上を突部22が移動し易くするためである。
【0041】
保護カバー2をフューエルフィラーパイプ1の給油口部11へ装着するときは、ラッパ状拡管部23の位置合わせマーク28を基準に、爪部21をフューエルフィラーパイプ1の給油口部11の外形に合わせて装着する。爪部21は、上述の形状をしているので、給油口部11の外側外周面を移動し、給油口部11の下端を越えたところで、突出部分が給油口後方衝突保護部25の内側側面より内側に戻り、保護カバー2をフューエルフィラーパイプ1の給油口部11に固定するとともに、保護カバー2が給油口部11の上端から抜けるのを防止することができる。
【0042】
一方、保護カバー2を外すときは、図2(b)の説明と同様に、保護カバー2を回転させると、爪部21はフューエルフィラーパイプ1の段差部12のスロープ部16の傾斜部17に当接し、その後傾斜部17をせり上がり、やがて前記給油口部11の下端の外周面と同じ高さの同一高さ部18に到達する。そして、W>wにより、爪部21はその全体が同一高さ部18に位置することになる。この状態から、保護カバー2を上方に引くと、爪部21は、段差部12の同一高さ部18から給油口部11下端の外周面に移動することができるので、保護カバー2をフューエルフィラーパイプ1の給油口部11から取り外すことができる。
【0043】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0044】
例えば、同一高さ部18において、傾斜部17と反対側の端部に、凸部を設けてもよい。凸部は、保護カバー2を取り外す際に、保護カバー2の爪部21が同一高さ部18を通過し、保護カバー2を取り外すことができなくなるのを防止するためのストッパーの役割を果たす。この場合、凸部は、一定の幅(周方向の長さy)を有してもよいし、半球状等のドット形状(周方向の長さy)であってもよい。なお、凸部を設けた場合の同一高さ部18の長さWと保護カバー2の爪部21の幅wとの関係は、(W-y)>wとなる。
【0045】
例えば、本実施形態では、フューエルフィラーパイ1の段差部12は、給油口部11とほぼ直角の関係の位置に設けられたが、大径の給油口部11の下端に下方が小径になるテーパを有し、テーパの下を縮径パイプ部13としてもよい。この場合は、スロープ部16の傾斜部17は、図1(b)や図2(a)のように一定の幅とはならず、同一高さ部18に向かうにしたがって幅が広がる形状になる。
【0046】
例えば、本実施形態では、フューエルフィラーパイプ1の段差部12から突出して設けられるスロープ部16は、縮径パイプ13の外周面には接していないが、スロープ部16の高さHを縮径パイプ13の外周面に接するまで大きくしてもよい。この場合は、スロープ部6の強度が増加するメリットがある。ただし、スロープ部6の重量が増加するデメリットもある。
【符号の説明】
【0047】
1 フューエルフィラーパイプ
2 保護カバー
11 給油口部
12 段差部
13 縮径パイプ部
14 金属リテーナ
15 導電性リング
16 スロープ部
17 傾斜部
18 同一高さ部
21 爪部
22 突部
23 ラッパ状拡管部
24 給油口固定部
25 給油口後方衝突保護部
26 給油部固定中心
27 ラッパ状拡管部中心
28 位置合わせマーク
図1
図2
図3
図4
図5
図6