(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】拭き取りサンプリング箇所明示シールを用いた拭き取りサンプリング方法
(51)【国際特許分類】
G01N 1/04 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
G01N1/04 V
(21)【出願番号】P 2018174801
(22)【出願日】2018-09-19
【審査請求日】2021-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】306022513
【氏名又は名称】日鉄エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090697
【氏名又は名称】中前 富士男
(74)【代理人】
【識別番号】100127155
【氏名又は名称】来田 義弘
(74)【代理人】
【識別番号】100176142
【氏名又は名称】清井 洋平
(72)【発明者】
【氏名】西山 秀雄
(72)【発明者】
【氏名】森 泰彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 肇
【審査官】前田 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特表2020-534527(JP,A)
【文献】国際公開第2019/060275(WO,A1)
【文献】特開2017-082571(JP,A)
【文献】特開2002-323414(JP,A)
【文献】特開平11-304665(JP,A)
【文献】米国特許第04715236(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
解体撤去前の汚染状況調査、解体撤去後の廃棄物分析、及びそれらの調査及び分析結果に基づく洗浄後の再調査及び再分析において実施されるPCB汚染物表面の拭き取りサンプリング方法であって、
PCB汚染物表面の拭き取りサンプリング箇所に
、予め設定された面積に切り抜かれた切り抜き部を有し、前記切り抜き部から露出するPCB汚染物表面の全域が拭き取り領域とされた、拭き取りサンプリング箇所明示シールを貼着する工程と、
前記拭き取りサンプリング箇所明示シールの切り抜き部から露出するPCB汚染物表面の全域を、試薬を含ませた脱脂綿で拭き取り、該脱脂綿をサンプル容器に収納する工程と、
前記拭き取りサンプリング箇所明示シールと前記サンプル容器にそれぞれ識別コードを付す工程と、
前記拭き取りサンプリング箇所明示シールに付した識別コードと前記サンプル容器に付した識別コードを識別コード読み取り装置で読み取り、前記2つの識別コードの情報を関連付けてコンピュータに入力する工程とを備えることを特徴とするPCB汚染物表面の拭き取りサンプリング方法。
【請求項2】
請求項1記載のPCB汚染物表面の拭き取りサンプリング方法において、前記拭き取りサンプリング箇所明示シールは耐久性と耐水性を有するフィルム素材から構成されていることを特徴とするPCB汚染物表面の拭き取りサンプリング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCB汚染物表面に貼着される拭き取りサンプリング箇所明示シールを用いた拭き取りサンプリング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCB(ポリ塩化ビフェニル)に汚染されているPCB汚染物の解体・撤去に当たっては、解体撤去前の汚染状況調査、解体撤去後の廃棄物分析、及びそれらの調査及び分析結果に基づく洗浄後の再調査及び再分析において当該PCB汚染物の汚染濃度を確認するため、当該PCB汚染物表面の拭き取りサンプリングが行われる。
【0003】
非特許文献1及び非特許文献2には、サンプリングの拭き取り試験法について次のように規定している。
非特許文献1では、分析により求めたPCB付着量を判定基準値(0.1μg/100cm2以下)と比較し、PCB廃棄物(0.1μg/100cm2超)か、産業廃棄物(0.1μg/100cm2以下)かを判定する。そして、PCB廃棄物であれば、高濃度PCB廃棄物(1000μg/100cm2超)か、低濃度PCB廃棄物(1000μg/100cm2以下)かの判定を行う。即ち、産業廃棄物、低濃度PCB廃棄物、高濃度PCB廃棄物のいずれかに分別される。
【0004】
また、非特許文献2では、分析により求めたPCB付着量を判定基準値(1000μg/100cm2以下)と比較し、高濃度PCB廃棄物(1000μg/100cm2超)か、低濃度PCB廃棄物(1000μg/100cm2以下)かを判定する。即ち、低濃度PCB廃棄物、高濃度PCB廃棄物のいずれかに分別される。
なお、非特許文献1及び非特許文献2に記載されているサンプリングの拭き取り試験法は、PCB汚染エリアごとに使い分けて行われる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】平成4年厚生省告示第192号「特別管理一般廃棄物及び特別管理産業廃棄物に係る基準の検定方法」
【文献】環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課、「低濃度PCB含有廃棄物に関する測定方法(第3版)」、平成29年4月
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解体撤去前の汚染状況調査結果及び解体撤去後の廃棄物分析結果が、前記非特許文献1、非特許文献2に規定されている高濃度PCB廃棄物に該当すれば、当該PCB汚染物を洗浄した後、拭き取りサンプリングを再実施しなければならない。その際、一度サンプリングした箇所以外の箇所で再度サンプリングするという管理が必要となる。
【0007】
PCB汚染物の解体・撤去に伴って発生する拭き取りサンプリング箇所は膨大な数となる。そのため、作業者が、サンプリング箇所を、手書きのマーキングと作業管理台帳で記録管理する方法では、ヒューマンエラー等によるサンプリング漏れや、サンプリング箇所と当該サンプリング箇所から採取したサンプルとの組み合わせに間違いが発生するおそれがある。また、それらミスの調査・確認や再サンプリング等に膨大な時間と労力を費やすことになる。
【0008】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、サンプリング漏れや、サンプリング箇所と当該サンプリング箇所から採取したサンプルとの組み合わせ間違いを防止し、PCB汚染物表面の拭き取りサンプリング作業の効率化と正確且つ確実な作業管理を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため、本発明は、解体撤去前の汚染状況調査、解体撤去後の廃棄物分析、及びそれらの調査及び分析結果に基づく洗浄後の再調査及び再分析において実施されるPCB汚染物表面の拭き取りサンプリング方法であって、
PCB汚染物表面の拭き取りサンプリング箇所に、予め設定された面積に切り抜かれた切り抜き部を有し、前記切り抜き部から露出するPCB汚染物表面の全域が拭き取り領域とされた、拭き取りサンプリング箇所明示シールを貼着する工程と、
前記拭き取りサンプリング箇所明示シールの切り抜き部から露出するPCB汚染物表面の全域を、試薬を含ませた脱脂綿で拭き取り、該脱脂綿をサンプル容器に収納する工程と、
前記拭き取りサンプリング箇所明示シールと前記サンプル容器にそれぞれ識別コードを付す工程と、
前記拭き取りサンプリング箇所明示シールに付した識別コードと前記サンプル容器に付した識別コードを識別コード読み取り装置で読み取り、前記2つの識別コードの情報を関連付けてコンピュータに入力する工程とを備えることを特徴としている。
本発明に係るPCB汚染物表面の拭き取りサンプリング方法において、前記拭き取りサンプリング箇所明示シールは耐久性と耐水性を有するフィルム素材から構成されていることを好適とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、拭き取りサンプリング箇所明示シールに、所定面積を有する切り抜き部を設け、PCB汚染物表面の拭き取りサンプリング箇所に当該シールを貼り付けて、切り抜き部から露出するPCB汚染物表面の拭き取りを行うことにより、必要な面積分の拭き取りを正確に行うことができる。
また、拭き取りサンプリング箇所と当該サンプリング箇所から採取したサンプルを識別コードを用いてコンピュータ管理することにより、サンプリング漏れや、サンプリング箇所とサンプルとの組み合わせ間違いが防止され、作業の効率化と正確且つ確実な作業管理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施の形態に係るPCB汚染物表面の拭き取りサンプリング方法の構成を示す模式図である。
【
図2】(A)は拭き取りサンプリング箇所明示シールの一例、(B)はサンプル容器の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。
【0015】
解体撤去前の汚染状況調査、解体撤去後の廃棄物分析、及びそれらの調査及び分析結果に基づく洗浄後の再調査及び再分析において実施される、本発明の一実施の形態に係るPCB汚染物表面の拭き取りサンプリング方法の手順について、
図1及び
図2を用いて説明する。
【0016】
(1)解体撤去前の汚染状況調査及びその調査結果に基づく洗浄後の再調査におけるPCB汚染物表面の拭き取りサンプリング箇所を決定する。拭き取りサンプリングの対象がプラント機器の場合は、PCB汚染の可能性がある箇所を数点(例えば3点/機器1基)、建築物の場合は、床面や壁面等の平面を、例えば6m以下の等間隔で引いた縦横の平行線の交点をサンプリング箇所(測定点)とする。
また、解体撤去後の廃棄物分析に基づく洗浄後の再分析では、解体撤去物がドラム缶、鉄箱等の容器群となるため、各容器サンプリングが適用され、各々の容器から各検体をランダムサンプリングする。
【0017】
(2)解体撤去前の汚染状況調査、解体撤去後の廃棄物分析、及びそれらの調査及び分析結果に基づく洗浄後の再調査及び再分析それぞれにおいて、PCB汚染物である各検体(
図1では検体10、11)の表面の拭き取りサンプリング箇所に拭き取りサンプリング箇所明示シール12、13を貼り付ける。
【0018】
拭き取りサンプリング箇所明示シール12、13の一例を
図2(A)に示す。拭き取りサンプリング箇所明示シール12、13の中央部には、予め設定された面積に切り抜かれた切り抜き部12a、13aが形成されており、切り抜き部12a、13aから露出するPCB汚染物表面の全域が拭き取り領域とされている。
【0019】
非特許文献1の規定に従う場合、1検体当たりの拭き取り面積は500cm2と定められているため、切り抜き部12a、13aの面積は500cm2とする。しかし、各検体の寸法及び形状は様々であり、1箇所で500cm2の拭き取り面積を確保できない場合もある。そのため、例えば250cm2、100cm2、50cm2の切り抜き部を有する拭き取りサンプリング箇所明示シールを作成しておき、これら拭き取りサンプリング箇所明示シールを組み合わせて使用することで、500cm2となるようにする。
【0020】
また、非特許文献2の規定に従う場合、1検体当たりの拭き取り面積は2箇所以上にて合計100cm2以上と定められているため、切り抜き部12a、13aの面積は合計100cm2以上とする。しかし、各検体の寸法及び形状は様々であるため、例えば75cm2、50cm2、25cm2の切り抜き部を有する拭き取りサンプリング箇所明示シールを作成しておき、これら拭き取りサンプリング箇所明示シールを組み合わせて使用することで、100cm2以上となるようにする。
【0021】
拭き取りサンプリング箇所明示シール12、13は、耐久性及び耐水性を有するフィルム素材(例えば、PE、PETなど)から構成されており、識別しやすいように、赤色などの有色シールとされている。拭き取りサンプリング箇所明示シール12、13の貼着面には強粘着性の接着剤が塗布され、塗布面は剥離紙(図示省略)で保護されている。拭き取りサンプリング箇所明示シール12、13を貼り付ける際は、剥離紙を剥がして拭き取りサンプリング箇所に拭き取りサンプリング箇所明示シール12、13を貼り付ける。
【0022】
(3)拭き取りサンプリング箇所明示シール12、13の切り抜き部12a、13aから露出するPCB汚染物表面の全域を、試薬(例えばノルマルヘキサン)を染み込ませた脱脂綿(図示省略)で拭き取り、該脱脂綿をサンプル容器14、15に収納する。サンプル容器14、15(
図2(B)参照)は密閉性を有するものとする。
【0023】
(4)拭き取りサンプリング箇所明示シール12、13に識別コード16、17を付すと共に、サンプル容器14、15に識別コード18、19を付す。識別コード16~19にはバーコードやQRコード(登録商標)などを用いることができる。
【0024】
(5)識別コード読み取り装置20に検体10の名称等の情報を入力後、検体10に貼り付けた拭き取りサンプリング箇所明示シール12の識別コード16を識別コード読み取り装置20で読み込む。
(6)識別コード読み取り装置20にサンプル容器14の名称等の情報を入力後、サンプル容器14に付した識別コード18を識別コード読み取り装置20で読み込む。
(7)識別コード読み取り装置20で読み込んだ識別コード16と識別コード18の情報を関連付けてコンピュータ21に入力する。識別コード読み取り装置20からコンピュータ21へのデータ入力には無線LANやUSB等を利用する。
【0025】
検体11についても(5)~(7)と同様の処理を行う。
【0026】
(8)コンピュータ21を用いて、日時、検体名(解体品の名称)、拭き取りサンプリング箇所とサンプル容器の関連付け(紐付け)等、情報を整理し管理する。
【0027】
以上、本発明の一実施の形態について説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、上記実施の形態では、拭き取りサンプリング箇所明示シールの形状を四角形としているが、これに限られるものではなく、円など他の形状でも良い。同様に、切り抜き部の形状も四角としているが、円など他の形状でも良く、設定された切り抜き面積を有していればよい。
【符号の説明】
【0028】
10、11:検体、12、13:拭き取りサンプリング箇所明示シール、12a、13a:切り抜き部、14、15:サンプル容器、16、17、18、19:識別コード、20:識別コード読み取り装置、21:コンピュータ