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特許7109332引出口覆い具、設置構造、及び、引出口覆い具を電気機器用筐体に設置する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】引出口覆い具、設置構造、及び、引出口覆い具を電気機器用筐体に設置する方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/00 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
H05K7/00 K
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018189036
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020057732
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-07-09
(73)【特許権者】
【識別番号】591048830
【氏名又は名称】日本電設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000243803
【氏名又は名称】未来工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】臼井 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】椎谷 康彦
(72)【発明者】
【氏名】山本 善博
(72)【発明者】
【氏名】高橋 美和
(72)【発明者】
【氏名】丸尾 亮博
【審査官】ゆずりは 広行
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-196891(JP,A)
【文献】特開平04-056197(JP,A)
【文献】特開2002-299845(JP,A)
【文献】実開平05-031285(JP,U)
【文献】特開平04-297096(JP,A)
【文献】実開昭51-113116(JP,U)
【文献】実開昭59-159985(JP,U)
【文献】特開2016-096282(JP,A)
【文献】特開平08-088480(JP,A)
【文献】特開2004-248665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H05K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線引出口の周囲に磁性体からなる引出口周囲部を有する電気機器用筐体に取着される引出口覆い具であって、
前記配線引出口から引き出される配線材を包囲し、配線材の引出方向に開口する頂縁部及び裾部を有する帯状体と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記帯状体には、前記裾部を前記電気機器用筐体に固着するように、前記引出口周囲部に磁着可能な磁着部が設けられていることを特徴とする引出口覆い具。
【請求項2】
前記帯状体は、平面形状に展開可能であり、且つ、前記帯状体の両端を連結して筒状に維持するための連結維持手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の引出口覆い具。
【請求項3】
前記閉鎖手段は、前記頂縁部側の開口を紐状部材で巾着状に引き締める絞り部を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の引出口覆い具。
【請求項4】
前記閉鎖手段は、前記頂縁部に穿設された2以上の通し孔と、対向する通し孔を通って前記頂縁部側の開口を綴じる結束部材とを備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の引出口覆い具。
【請求項5】
前記帯状体は、防鼠材料を含有することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の引出口覆い具。
【請求項6】
配線引出口を有する電気機器用筐体に取着される引出口覆い具であって、
前記配線引出口から引き出される配線材を包囲し、配線材の引出方向に開口する裾部及び頂縁部を有する帯状体と、
前記裾部を前記電気機器用筐体の引出口周囲部に固定可能に前記帯状体に設けられた固着手段と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記閉鎖手段は、
前記頂縁部側の開口を紐状部材で巾着状に引き締める絞り部と、
前記頂縁部に穿設された2以上の通し孔と、
対向する通し孔を通って前記頂縁部側の開口を綴じる結束部材と、を備えることを特徴とする引出口覆い具。
【請求項7】
前記帯状体は、平面形状に展開可能であり、且つ、前記帯状体の両端を連結して筒状に維持するための連結維持手段を備え、前記連結維持手段は、他の引出口覆い具の連結維持手段と結合可能であり、前記他の引出口覆い具と協働して1つの筒状体を形成するように構成されていることを特徴とする請求項1又は6に記載の引出口覆い具。
【請求項8】
前記帯状体の頂縁部側の開口の内側に配置されたクッション材をさらに備え、前記クッション材は、前記閉鎖手段で前記頂縁部側の開口を閉鎖するときに前記配線材の外面に当接して弾性変形可能であることを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の引出口覆い具。
【請求項9】
1又は複数の配線材が引き出された配線引出口の周囲に磁性体からなる引出口周囲部を有する電気機器用筐体と、前記配線引出口を覆って閉鎖する引出口覆い具とを備える設置構造であって、
前記引出口覆い具は、
前記配線材を包囲し、前記配線材の引出方向に開口する裾部及び頂縁部を有する帯状体と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記引出口覆い具の前記裾部は、前記帯状体に設けられた磁着部を介して前記電気機器用筐体の前記引出口周囲部に磁着され、
前記閉鎖手段によって、前記帯状体の前記頂縁部側の開口内の隙間が小さくなるように前記帯状体の前記頂縁部が変形していることを特徴とする設置構造。
【請求項10】
前記引出口覆い具が前記電気機器用筐体の外部に配置されていることを特徴とする請求項9に記載の設置構造。
【請求項11】
前記閉鎖手段は、
前記頂縁部側の開口を紐状部材で巾着状に引き締める絞り部と、
前記頂縁部に穿設された2以上の通し孔と、
対向する通し孔を通って前記頂縁部側の開口を綴じる結束部材と、を備え
前記複数の配線材の各々に隣接する位置で前記結束部材を通すように前記各通し孔が配置され、前記帯状体が前記配線材の各々を包囲していることを特徴とする請求項9又は10に記載の設置構造。
【請求項12】
配線材が引き出された配線引出口の周囲を覆うように引出口覆い具を電気機器用筐体に設置する方法であって、
前記引出口覆い具の平面状に展開された帯状体を筒状に変形し、前記帯状体で前記配線材を包囲する工程と、
前記帯状体に設けられた磁着部を、前記電気機器用筐体の磁性体からなる引出口周囲部に磁着することによって、前記帯状体の裾部を前記電気機器用筐体に固着する工程と、
前記帯状体の頂縁部に設けられた閉鎖手段を操作することによって、前記帯状体の前記頂縁部側の開口内の隙間が小さくなるように前記帯状体の前記頂縁部を原形から変形させる工程と、を含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線材が引き出される配線引出口を閉鎖するように電気機器用筐体に設置される引出口覆い具、該引出口覆い具の設置構造、及び、該引出口覆い具を電気機器用筐体に設置する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、配電盤などの電気機器用筐体では、筐体に形成された配線引出口から配線材が引き出されて、電力や電気信号の供給先又は供給元に配線される。一方で、配線引出口と配線材との間の隙間から筐体内に埃が入ったり、また、筐体内にネズミが入って配線材がかじられたりする被害が報告されている。これに対して、配線引出口の隙間を覆って電気機器用筐体を保護すべく、種々の引出口覆い具が用いられている。
【0003】
例えば、特許文献1は、電子機器筐体のシールド構造を開示する。以下、当該段落において、()内に特許文献1の符号を示す。特許文献1の電子機器筺体(1)は、中継コネクタパネル(2)と、開口部(3)と、ケーブル(4)と、シールド部(5)とを備えている。中継コネクタパネル(2)は、電子機器筺体(1)内部に配され、ケーブル(4)と接続を行なう。開口部(3)は、電子機器筺体(1)の底面を長方形状に開口させて形成してあり、ケーブル(4)を外部へ導出する。シールド部(5)は、固定枠(7)と、絞り部(10)と、ネット部(11)とからなる。ネット部(11)は、両端を開放口とした金属網からなり、その内部にケーブル(4)が挿通可能となっている。固定枠(7)は、ネット部(11)の一方の開放口に配され、開口部(3)の周縁部と略同等の大きさであり、複数個所にねじ穴を設け、開口部(3)に固定ねじ(6)により固定する。絞り部(10)は、バンド(8)と、バンド通し穴(9)からなる。バンド通し穴(9)は、ネット部(11)の他方の開放口の周囲に配され、内部にバンド(8)が挿通可能な穴を有しており、バンド(8)を調節することにより、開放口の絞り込みができる。ネット部(11)の内部にケーブル(4)を挿通後、固定枠(7)を開口部(3)の周縁部に固定ねじ(6)により固定し、バンド(8)により適度に開放口を絞り込むことにより開口部(3)の遮蔽が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実公平6- 51026号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の特許文献1の電子機器筐体(以下、電気機器用筐体)のシールド構造では、シールド部(以下、引出口覆い具)が、固定ねじによって電気機器用筐体の配線引出口の周縁に固定される。それ故、例えば、配線材の増線や交換の作業時において、電気機器用筐体内部の狭い空間で固定ねじの螺脱着脱作業を行わなければならず、引出口覆い具の電気機器用筐体からの取り外し作業や引出口覆い具の電気機器用筐体への取り付け作業に困難性が伴うことが1つの課題として挙げられる。また、引出口覆い具で電気機器用筐体の配線引出口をより確実に閉鎖することも潜在的な課題として挙げられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、その目的は、主に、電気機器用筐体に対して容易に取り付け及び取り外し可能な引出口覆い具を提供することにある。さらには、該引出口覆い具の電気機器用筐体への設置構造、及び、引出口覆い具を電気機器用筐体に設置する方法も提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の引出口覆い具は、配線引出口の周囲に磁性体からなる引出口周囲部を有する電気機器用筐体に取着される引出口覆い具であって、
前記配線引出口から引き出される配線材を包囲し、配線材の引出方向に開口する頂縁部及び裾部を有する帯状体と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記帯状体には、前記裾部を前記電気機器用筐体に固着するように、前記引出口周囲部に磁着可能な磁着部が設けられていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載の引出口覆い具は、請求項1に記載の引出口覆い具において、前記帯状体は、平面形状に展開可能であり、且つ、前記帯状体の両端を連結して筒状に維持するための連結維持手段を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の引出口覆い具は、請求項1又は2に記載の引出口覆い具において、前記閉鎖手段は、前記頂縁部側の開口を紐状部材で巾着状に引き締める絞り部を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載の引出口覆い具は、請求項1から3のいずれか一項に記載の引出口覆い具において、前記閉鎖手段は、前記頂縁部に穿設された2以上の通し孔と、対向する通し孔を通って前記頂縁部側の開口を綴じる結束部材とを備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の引出口覆い具は、請求項1から3のいずれか一項に記載の引出口覆い具において、前記帯状体は、防鼠材料を含有することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載の引出口覆い具は、配線引出口を有する電気機器用筐体に取着される引出口覆い具であって、
前記配線引出口から引き出される配線材を包囲し、配線材の引出方向に開口する裾部及び頂縁部を有する帯状体と、
前記裾部を前記電気機器用筐体の引出口周囲部に固定可能に前記帯状体に設けられた固着手段と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記閉鎖手段は、
前記頂縁部側の開口を紐状部材で巾着状に引き締める絞り部と、
前記頂縁部に穿設された2以上の通し孔と、
対向する通し孔を通って前記頂縁部側の開口を綴じる結束部材と、を備えることを特徴とする。
【0013】
請求項7に記載の引出口覆い具は、請求項1又は6に記載の引出口覆い具において、前記帯状体は、平面形状に展開可能であり、且つ、前記帯状体の両端を連結して筒状に維持するための連結維持手段を備え、前記連結維持手段は、他の引出口覆い具の連結維持手段と結合可能であり、前記他の引出口覆い具と協働して1つの筒状体を形成するように構成されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に記載の引出口覆い具は、請求項1から7のいずれか一項に記載の引出口覆い具において、帯状体の頂縁部側の開口の内側に配置されたクッション材をさらに備え、前記クッション材は、前記閉鎖手段で前記頂縁部側の開口を閉鎖するときに前記配線材の外面に当接して弾性変形可能であることを特徴とする。
【0015】
請求項9に記載の設置構造は、1又は複数の配線材が引き出された配線引出口の周囲に磁性体からなる引出口周囲部を有する電気機器用筐体と、前記配線引出口を覆って閉鎖する引出口覆い具とを備える設置構造であって、
前記引出口覆い具は、
前記配線材を包囲し、前記配線材の引出方向に開口する裾部及び頂縁部を有する帯状体と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記引出口覆い具の前記裾部は、前記帯状体に設けられた磁着部を介して前記電気機器用筐体の前記引出口周囲部に磁着され、
前記閉鎖手段によって、前記帯状体の前記頂縁部側の開口内の隙間が小さくなるように前記帯状体の前記頂縁部が変形していることを特徴とする。
【0016】
請求項10に記載の設置構造は、請求項9に記載の設置構造において、前記引出口覆い具が前記電気機器用筐体の外部に配置されていることを特徴とする。
【0017】
請求項11に記載の設置構造は、請求項9又は10に記載の設置構造において、前記閉鎖手段は、前記頂縁部側の開口を紐状部材で巾着状に引き締める絞り部と、前記頂縁部に穿設された2以上の通し孔と、対向する通し孔を通って前記頂縁部側の開口を綴じる結束部材と、を備え前記複数の配線材の各々に隣接する位置で前記結束部材を通すように前記各通し孔が配置され、前記帯状体が前記配線材の各々を包囲していることを特徴とする。
【0018】
請求項12に記載の方法は、配線材が引き出された配線引出口の周囲を覆うように引出口覆い具を電気機器用筐体に設置する方法であって、
前記引出口覆い具の平面状に展開された帯状体を筒状に変形し、前記帯状体で前記配線材を包囲する工程と、
前記帯状体に設けられた磁着部を、前記電気機器用筐体の磁性体からなる引出口周囲部に磁着することによって、前記帯状体の裾部を前記電気機器用筐体に固着する工程と、
前記帯状体の頂縁部に設けられた閉鎖手段を操作することによって、前記帯状体の前記頂縁部側の開口内の隙間が小さくなるように前記帯状体の前記頂縁部を原形から変形させる工程と、を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1に記載の引出口覆い具によれば、電気機器用筐体の配線引出口の周囲に設けられた磁性体の引出口周囲部に対して、帯状体に設けられた磁着部を磁着することによって、配線引出口を周方向から包囲しつつ、引出口覆い具を電気機器用筐体に簡単に取り付けることが可能である。ここで、帯状体は、平面状に展開される有端帯状と、環状で展開できない無端帯状との両方を含む概念である。また、引出口覆い具と電気機器用筐体との結合は、磁着によるものであることから、引出口覆い具を電気機器用筐体から引き離すことで、両者を容易に離脱させることができる。すなわち、本発明の引出口覆い具は、該引出口覆い具を電気機器用筐体に対して近接又は離隔方向に移動させるだけで引出口覆い具の取り付け作業及び取り外し作業を可能とし、その作業性を大幅に改善するものである。
【0020】
請求項2に記載の引出口覆い具によれば、請求項1の発明の効果に加え、帯状体が平面形状に展開可能であり、且つ、展開した帯状体の両端を連結維持手段で連結することで筒状に組立可能である。これにより、引出口覆い具の取り付け作業において、配線引出口から配線材が引き出された状態のまま、配線材を包囲するように帯状体を平面状の展開形態から筒状の組立形態に変形させることによって、引出口覆い具を電気機器用筐体に取り付けることが可能である。また、引出口覆い具の取り外し作業においても、配線引出口から配線材が引き出された状態のまま、配線材を包囲する帯状体を組立形態から展開形態に変形させることによって、引出口覆い具を電気機器用筐体から取り外すことが可能である。すなわち、本発明の引出口覆い具は、配線材の配線引出口への挿通状態を維持したまま、引出口覆い具の取り付け作業及び取り外し作業を可能とし、その作業性を大幅に改善するものである。
【0021】
請求項3に記載の引出口覆い具によれば、請求項1又は2の発明の効果に加え、帯状体で配線材を包囲した状態で絞り部を紐状部材で巾着様に引き締めることにより、頂縁部側の開口を絞って、頂縁部側の開口における配線材との隙間を効果的に狭めることができる。
【0022】
請求項4に記載の引出口覆い具によれば、請求項1から3のいずれかの発明の効果に加え、配線材を帯状体で包囲した状態で対向する通し孔に結束部材を通すことにより、頂縁部側の開口を綴じて、頂縁部側の開口における配線材との隙間を効果的に狭めることができる。
【0023】
請求項5に記載の引出口覆い具によれば、請求項1から4のいずれかの発明の効果に加え、帯状体が防鼠材料を含有することにより、ネズミを忌避することができる。
【0024】
請求項6に記載の引出口覆い具によれば、帯状体で配線材を包囲した状態で絞り部を紐状部材で巾着様に引き締めることにより、頂縁部側の開口を絞って、頂縁部側の開口における配線材との隙間を狭めることができる。さらに、配線材を帯状体で包囲した状態で対向する通し孔に結束部材を通すことにより、頂縁部側の開口を綴じて、頂縁部側の開口における配線材との隙間をより一層狭めることができる。すなわち、頂縁部側の開口の径を絞る巾着構造(絞り部、紐状部材)と、頂縁部側の開口を綴じる結束構造(通り孔、結束部材)とが協働することによって、様々な数量、形状の配線材に柔軟に対応して、頂縁部側の開口をより確実に閉鎖することが可能である。
【0025】
請求項7に記載の引出口覆い具によれば、請求項1又は6の発明の効果に加え、一の引出口覆い具の平面形状に展開した帯状体を他の引出口覆い具の帯状体に連結維持手段を介して連結することにより、より大きい面積の開口を有する1つの筒状体を形成することができる。これにより、1つの引出口覆い具で包囲しきれない大きさの配線引出口に対しても、複数の引出口覆い具を用いて柔軟に対応することが可能である。
【0026】
請求項8に記載の引出口覆い具によれば、請求項1から7のいずれかの発明の効果に加え、クッション材が帯状体内周面と配線材外周との間に介在することによって、閉鎖手段が頂縁部側の開口を閉鎖する際に、クッション材が圧縮されて、配線材への直接の負荷(圧迫)を軽減できるとともに、クッション材を配線材や帯状体内周面の形状に追従するように変形させて、より一層効果的に隙間を閉鎖することができる。これにより、電気機器用筐体内部への埃や虫の進入がより効果的に防止される。
【0027】
請求項9に記載の設置構造によれば、電気機器用筐体の配線引出口の周囲に設けられた磁性体の引出口周囲部に対して、帯状体に設けられた磁着部が磁着することによって、配線引出口を周方向から包囲するとともに閉鎖手段で頂縁部側の開口が狭まった状態で、引出口覆い具が電気機器用筐体に取り付けられている。設置構造において、引出口覆い具と電気機器用筐体との結合は、磁着によるものであることから、引出口覆い具を電気機器用筐体から引き離すことで、両者を容易に離脱させることができる。すなわち、本発明の設置構造は、該引出口覆い具を電気機器用筐体に対して離隔方向に移動させるだけで引出口覆い具の取り外し作業を可能とし、また、近接方向に移動させるだけで引出口覆い具の再取り付け作業を可能とするものであるから、配線材の増線や変更の際の作業性を大幅に改善するものである。
【0028】
請求項10に記載の設置構造によれば、請求項9の発明の効果に加え、引出口覆い具が電気機器用筐体の外部に配置されていることにより、電気機器用筐体の外部から電気機器用筐体に対して引出口覆い具を着脱することが可能であり、配線材の増線や変更の際の作業性を大幅に改善する。
【0029】
請求項11に記載の設置構造によれば、請求項9又は10の発明の効果に加え、帯状体で配線材を包囲した状態で巾着状の絞り部を紐状部材で引き締めることにより、頂縁部側の開口を絞って、頂縁部側の開口における配線材との隙間を狭めることができる。また、配線材を帯状体で包囲した状態で対向する通し孔に結束部材を通すことにより、頂縁部側の開口を綴じて、頂縁部側の開口における配線材との隙間をより一層狭めることができる。そして、頂縁部側の開口の径を絞る巾着構造(絞り部、紐状部材)と、頂縁部側の開口を綴じる結束構造(通り孔、結束部材)とが協働することで、帯状体の頂縁部で配線材1本ずつを包囲して、頂縁部側の開口をより隙間なく確実に閉鎖することが可能となった。
【0030】
請求項12に記載の方法によれば、配線引出口から配線材が引き出された状態で配線材を包囲するように帯状体を平面状から筒状に変形させ、そして、電気機器用筐体の配線引出口の周囲に設けられた磁性体の引出口周囲部に対して、帯状体に設けられた磁着部を磁着することによって、配線引出口を周方向から包囲しつつ、引出口覆い具を電気機器用筐体に簡単に取り付けることが可能である。すなわち、本発明の方法は、配線引出口から配線材が引き出された状態を維持したまま、該引出口覆い具を電気機器用筐体に磁着させることで引出口覆い具の取り付け作業を可能とし、その作業性を大幅に改善するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明の一実施形態の引出口覆い具の概略斜視図。
図2図1の引出口覆い具の(a)平面図、(b)正面図及び(c)側面図。
図3図1の引出口覆い具の展開図を示し、その(a)表面、及び、(b)裏面を示している。
図4図3の引出口覆い具のA-A断面図。
図5】本発明の一実施形態の配電盤(電気機器用筐体)の一部を示す概略斜視図。
図6】本発明の一実施形態の引出口覆い具の設置構造を示す概略斜視図。
図7図6の設置構造の平面図。
図8図6の設置構造の正面図。
図9】本発明の一実施形態の引出口覆い具を配電盤に取り付ける方法を示す模式図。
図10図1の引出口覆い具の別使用例による設置構造を示す概略斜視図。
図11図1の引出口覆い具の別使用例による設置構造を示す概略平面図。
図12図1の引出口覆い具の別使用例を示す概略平面図。
図13図1の引出口覆い具の別使用例による設置構造を示す概略平面図。
図14】本発明の変形例の引出口覆い具及びその設置構造を示す概略斜視図。
図15】本発明の変形例の引出口覆い具及びその設置構造を示す概略分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0033】
本発明の一実施形態の引出口覆い具100は、電気機器用筐体としての配電盤11に取り付けられ、配電盤11の配線引出口12を覆って閉塞し、配電盤11の内部を保護する用途に用いられる。しかしながら、電気機器用筐体は、配電盤でなくてもよく、例えば、サーバーやコンピュータシステム用の電子機器を収容する筐体であってもよい。
【0034】
図1は、本発明の一実施形態の引出口覆い具100の概略斜視図である。図2(a)~(c)は、該引出口覆い具100の平面図、正面図及び側面図である。図3(a),(b)は、該引出口覆い具100の展開形態の表面及び裏面を示している。図4は、A-A断面図である。
【0035】
図1及び図2に示すとおり、引出口覆い具100は、配線材を包囲して内挿するように(配線材の引出方向に沿った)軸方向の両端で開口した布製の筒状体からなる。本実施形態では、引出口覆い具100は、取着される配電盤11の配線引出口12の形状に合わせて平面視矩形状を有する。なお、引出口覆い具100の平面視において、長辺が短辺の約2倍の長さで形成されている。そして、引出口覆い具100は、筒状の側壁を構成する帯状体101を備えてなる。帯状体101は、軸方向の上端で開口した頂縁部102、及び、軸方向の下端で開口した裾部103を有する。引出口覆い具100は、完全に開口した状態で多種多様な配線材15の通過を許容すべく、配線引出口12以上の面積で引出方向に開口していることが好ましい。
【0036】
引出口覆い具100は、筒状の組立形態から平面状の展開形態へと相互に変形可能である。図3に示すように、引出口覆い具100は、展開状態では、長手状の矩形平板形状を有する。また、引出口覆い具100の表面の一端部(図3(a)の右端)、及び、裏面の他端部(図3(b)の左端)には、連結維持手段108が設けられている。本実施形態では、連結維持手段108は、帯状体101の両端部で幅方向に延在し、互いに接着可能な雄雌一対の面ファスナー108a,108aで構成されている。すなわち、帯状体121を筒状に変形させた上で、雄雌一対の面ファスナー108a,108aを接着させることにより、帯状体121を筒状に維持することができる。また、帯状体121の両端には、ハトメ孔108bが形成されている。雄雌一対の面ファスナー108a,108aを接着させると、ハトメ孔108b,108bが合致し、該ハトメ孔108b,108bに紐やピンを通すことによって、連結維持状態を補強することができる。なお、連結維持手段108は、ここで例示した面ファスナーに限らず、連結状態(筒形状)を維持できるものであれば任意の手段より選択され得る。例えば、連結維持手段として、線ファスナーやボタン、その他磁石等が採用されてもよい。また、図12で後述するとおり、連結維持手段108は、他の引出口覆い具100の連結維持手段108と結合可能であり、他の引出口覆い具100と協働して1つの筒状体を形成するようにも構成されている。
【0037】
また、頂縁部102には、閉鎖手段の一部として、頂縁部102側の開口を絞るための絞り部105が設けられている。図3及び図4に示すように、絞り部105は、帯状体121の長手方向全体に亘って延びるとともに長手方向の両端が開口した袋体(又は筒体)からなる。絞り部105の内部には、紐状部材106が両端から延び出るように通されている。引出口覆い具100の組立形態において、紐状部材106の両端を引っ張ると、絞り部105が絞られて、頂縁部102側の開口を巾着様により小径に引き締めることができる。
【0038】
さらに、頂縁部102には、閉鎖手段の一部として、複数の通し孔107が穿設されている。各通し孔107は、絞り部105と重複する位置に打ち付けられたハトメによって形成され、結束部材としての結束部材109を内挿可能な内径を有する。本実施形態では、組立形態の引出口覆い具100の長辺に5つの通し孔107が均等に配置され、短辺に2つの通し孔107が均等に配置されている。そして、引出口覆い具100の組立形態において、各通し孔109が対向して対をなすように配置されている。これら複数対の対向する通し孔109の全て又は一部に対して、結束部材109が貫通することで、頂縁部102側の開口が綴じられる。本実施形態では、結束部材109として、一般的な結束バンドが採用された。すなわち、結束部材109は、可撓性を有する長尺の扁平断面形状を有するバンド部109aと、該バンド部109aの基端に形成され、該バンド部109aを挿通及び係止して固定する矩形状のロック部109bとを備える。結束部材109のバンド部表面には、鋸歯状の複数の係止突起が設けられている。ロック部109bは、バンド部109aを挿通する係止孔を有し、内挿するバンド部109aの進行方向の移動を許容するが、逆方向の移動を規制する。バンド部109aをロック部109a内に進行させることで、バンド部109aで対象を結束することができる。他方、バンド部109aの切断により、結束部材109による結束が解除される。
【0039】
本実施形態の引出口覆い具100では、頂縁部102側の開口の径を絞る紐状部材106(絞り部105)と、頂縁部102側の開口を綴じる結束部材109(通り孔107)とが協働して閉鎖手段を構成している。この閉鎖手段によって、様々な数量、形状の配線材15に柔軟に対応して、頂縁部102側の開口を閉鎖することが可能である。
【0040】
そして、裾部103には、該裾部103を配電盤11の引出口周囲部13に固定するための固定手段としての磁着部104が設けられている。磁着部104は、組立形態において、各側壁の底辺から外方に延び出た細長い張り出し片である。換言すると、磁着部104は、裾部103の外方側に連設されている。図4に示すように、磁着部104は、布製の外装材の内側にシート状の磁石104aを内包することによって形成された。また、磁着部104は、各側壁から張り出すように、展開図において切り込みによって4つに分離している。磁石104aは、磁性体からなる引出口周囲部13に強固に磁着可能であるように比較的強力な磁力を有する磁性材料(例えば、希土類磁石)から選択されることが好ましい。
【0041】
なお、本実施形態の引出口覆い具100の主要部を構成する帯状体101は、天然繊維、化学繊維、金属繊維等の柔軟な織布又は不織布から形成され得る。また、帯状体101は、合成樹脂製や紙製などの比較的柔軟な可撓シートから形成されてもよい。さらに、帯状体101は、カプサイシンなどの防鼠剤(防鼠材料)をその材質内に含有してもよい。これにより、ネズミが配電盤11内に侵入することをより確実に防止することができる。
【0042】
図5は、本実施形態の引出口覆い具100が例示的に取り付けられる電気機器用筐体としての配電盤11の斜視図である。配電盤11は、中空の筐体であり、内部に各種電気機器や配線材15を収容する。配電盤11の筐体の側壁の少なくとも1つには、配線引出口12が設けられ、該配線引出口12から複数(本実施形態では4本)の配線材15が筐体外部へと引き出されている。配線引出口12の周囲には、鉄などの磁性体からなる引出口周囲部13が形成されている。本実施形態では、引出口周囲部13は筐体外部に定められている。なお、引出口周囲部13を磁性体とすべく、配電盤11の筐体全体が磁性材料で形成されてもよい。または、配電盤11の筐体が非磁性材料からなる場合は、引出口周囲部13を磁性体とすべく、鉄板などの磁性板を配線引出口13周囲の筐体外面に貼り付けてもよい。
【0043】
続いて、引出口覆い具100を配電盤11に取り付けた設置構造10について説明する。図6は、設置構造10の概略斜視図である。図7は、設置構造10の概略平面図である。図8は、設置構造10の概略正面図である。
【0044】
設置構造10は、複数の配線材15が引き出された配線引出口12の周囲に磁性体からなる引出口周囲部13を有する配電盤11と、配線引出口12を覆って閉鎖する引出口覆い具100とを備えてなる。図6乃至図8に示すとおり、配電盤11の引出口周囲部14に対して、引出口覆い具100の磁着部104が磁着することによって、帯状体101が配線引出口12及び複数の配線材15を周方向から包囲するように、引出口覆い具100の裾部103が配電盤11外面に着脱自在に取り付けられている。また、本実施形態の設置構造10では、引出口覆い具100が配電盤11の外部に配置されている。これにより、既に配線された配電盤11に対して、配線材15の増線や交換等の際、引出口覆い具100を配電盤11に対して容易に着脱作業することができる。
【0045】
また、引出口覆い具100の頂縁部102側の開口が(図1の全開状態から)狭まるように変形し、配線材15との間の隙間が相対的に小さくなっている。より具体的には、複数の配線材15が筒状の帯状体101を貫通した状態で、紐状部材106が最大限引き出されている。そして、絞り部105が巾着様に収縮して、帯状体101内面が配線材15の外面に当たるまで頂縁部102側の開口が小径に絞られている。紐状部材106が結ばれて、縮径状態が維持されている。さらに、複数の配線材15の各々に隣接して位置する、対向する通し孔107,107に結束部材109が通されて、帯状体101の対向する側壁が互いに近接又は当接するように綴じられている。この結束部材109による結束によって、図7に示すように、各配線材15が帯状体101の頂縁部102によって個別に包囲されている。換言すると、隣接する配線材15間にも帯状体101が介在して、配線材15間の隙間が消されている。すなわち、頂縁部102側の開口は、絞り部105(紐状部材106)及び通し孔107(結束部材109)によって協働的に閉鎖されている。その結果、本設置構造10では、各配線材15が帯状体101の頂縁部102によって隙間無く包囲され、埃やネズミの侵入が抑えられている。
【0046】
次に、図9を参照して、引出口覆い具100を配電盤11に取り付けて設置構造10を構築する方法について説明する。ここでは、配線材15が配線引出口12から延び出た状態の配電盤11に対して引出口覆い具100を事後的に取り付ける方法を説明するが、引出口覆い具100を配電盤11に取り付けた後に、配線材15が配線されてもよい。
【0047】
まず、配電盤11の配線引出口12の形状寸法に合う引出口覆い具100を準備し、引出口覆い具100を平面状の展開形態に維持する。次に、図9(a)に示すように、引出口覆い具100の平面状の帯状体101を筒状に丸めるように変形させつつ、帯状体101で配線材15を包囲する。帯状体101の両端に形成された連結維持手段108である面ファスナー108a,108a同士を接着することにより、帯状体101を筒状の組立形態に維持することができる。その前後において、帯状体101の側壁部分に対して磁着部104を外方に略直角に折り曲げる。そして、引出口覆い具100を配線材15の引出方向に沿って配電盤11側にスライドさせ、帯状体101に設けられた磁着部104を引出口周囲部13に磁着して、帯状体101の裾部102を配電盤11外面に固着する。
【0048】
図9(b)の固着した段階では、頂縁部102側の開口が全開であり、配電盤11内部が開口を介して露出している。次に、閉鎖手段を操作することによって、帯状体101の頂縁部102側の開口内の隙間を閉鎖するように帯状体101の頂縁部102を原形から変形させる。具体的には、絞り部105から延び出る紐状部材106の両端を引っ張って結ぶことで、頂縁部102側の開口を縮径させるように絞ることができる。このとき、図9(c)に示すように、頂縁部102の内面が、配線材15の外周に当接して隙間が当初より相対的に小さくなっているが、隣接する配線材15間には帯状体101が介在せず隙間が残っている。そして、図9(c)に示すように、隣接する配線材15の間に一対の通り孔107を対向配置する。このとき、帯状体101が柔軟なシートであることから、頂縁部102を周方向にずらすことにより、各通り孔107を所定の位置に移動させることができる。そして、幅方向に対向する通り孔107,107に結束部材109のバンド部109a先端を差し込んだ上で、バンド部109aで環を作るようにバンド部109a先端をロック部109bの係止孔に挿通して締め上げることにより、対向する頂縁部102を綴じることができる。すなわち、結束部材109を用いて、隣接する配線材15の間の隙間を閉鎖することができる。この工程を複数の対向する通り孔107,107について順次行う。その結果、配線材15、1本ずつを帯状体101の頂縁部102で包囲することができ、隙間がほとんどない設置構造10を構築することができる。
【0049】
図10は、本実施形態の引出口覆い具100の別使用例を示す。図10に示す設置構造10’のように、磁着部104が配電盤11の内面に磁着され、帯状体101が配線引出口12から外部に引き出されて、閉鎖手段が配電盤11の外部に配置されてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、各結束部材109が配線材15の間の一対の通し孔107,107にそれぞれ挿通された形態が例示されたが、本実施形態の引出口覆い具100の使用方法は上記使用例に限定されない。例えば、図11に示す設置構造10”のように、1つの結束部材109を4つの通し孔107(対向する2対の通り孔107)に通して、結束部材109で配線材15の外周を取り囲むように、結束部材109で結束してもよい。この場合、1つの通し孔107に2本の結束部材109が挿通され得る。また、図示しないが、帯状体101の長辺側の側壁の通し孔107と短辺側の側壁の通し孔107とを対向配置させて、結束部材109を斜めに通してもよい。
【0051】
さらに、別使用例として、図12に示すように、頂縁部102側の開口において、配線材15を取り囲むようにクッション材110が選択的に配置されてもよい。換言すると、本発明の引出口覆い具は、帯状体の頂縁部側の開口内側に配置されたクッション材を備えてもよい。図12に示す設置構造10””のように、クッション材110の介在により、(結束部材109による結束なしに)絞り部105によって開口が絞られるだけで、クッション材110が圧縮変形して帯状体101内周面と配線材15外周との間の隙間が効果的に埋められている。しかしながら、図12は一例にすぎず、結束部材109をクッション材110に貫通させて、結束部材109で帯状体101の頂縁部102側の開口をさらに綴じるように使用してもよい。すなわち、クッション材110が帯状体101内周面と配線材15外周との間に介在することによって、結束部材109による結束の際にクッション材が圧縮されて、配線材15への直接の負荷(圧迫)を軽減できるとともに、クッション材を配線材15や帯状体101内周面の形状に追従するように変形させて、より一層効果的に隙間を閉鎖することができる。これにより、配電盤11内部への埃や虫の進入がより効果的に防止される。なお、クッション材は、帯状体の頂縁部の内面に貼り付けられてもよく、あるいは、弾性圧縮された状態で支持されるだけでもよい。
【0052】
さらなる使用例として、配電盤の配線引出口が十分に大きく、1つの引出口覆い具100では包囲できない場合には、複数の引出口覆い具100を周方向に連結して使用してもよい。図13は、2つの引出口覆い具100,100を連結して用いた例を示している。図13(a)に示すように、一の引出口覆い具100の連結維持手段108の表面側(図3(a)の右端)の面ファスナー108aが、他の引出口覆い具100の連結維持手段108の裏面側(図3(b)の左端)の面ファスナー108aに接着することによって、1つのより大径の開口を有する筒状体を形成し、より広い面積を有する配線引出口12を包囲している。そして、各引出口覆い具100,100の頂縁部102,102を縮めるように紐状部材106,106を引っ張ることにより、より大径の開口を絞ることができる。さらに、8本の配線材15の間にそれぞれ対向して位置する通し孔107,107に結束部材109を挿入することにより、図13(b)に示すように、より大きい配線引出口12に対応した設置構造10’’’を構築することができる。すなわち、本実施形態の引出口覆い具100は、2以上の(同じ)引出口覆い具100を組み合わせて使用することにより、種々のサイズの配線引出口を有する電気機器用筐体に対応することが可能である。
【0053】
以下、本発明に係る一実施形態の引出口覆い具100の作用効果について説明する。
【0054】
本実施形態の引出口覆い具100によれば、配電盤11の配線引出口12の周囲に設けられた磁性体の引出口周囲部13に対して、帯状体101に設けられた磁着部104を磁着することによって、配線引出口12を周方向から包囲しつつ、引出口覆い具100を配電盤11に簡単に取り付けることが可能である。また、引出口覆い具100と配電盤11との結合は、磁着によるものであることから、引出口覆い具100を配電盤11から引き離すことで、両者を容易に離脱させることができる。さらに、帯状体101が平面形状に展開可能であり、且つ、展開した帯状体101の両端を連結維持手段108で連結することで筒状に組立可能である。これにより、引出口覆い具100の取り付け作業において、配線引出口12から配線材15が引き出された状態のまま(換言すると、配線材15を配電盤11から取り外すことなく)、配線材15を包囲するように帯状体101を平面状の展開形態から筒状の組立形態に変形させることによって、引出口覆い具100を配電盤11に取り付けることが可能である。また、引出口覆い具100の取り外し作業においても、配線引出口12から配線材15が引き出された状態のまま(換言すると、配線材15を配電盤11から取り外すことなく)、配線材15を包囲する帯状体101を組立形態から展開形態に変形させることによって、引出口覆い具100を配電盤11から取り外すことが可能である。すなわち、本実施形態の引出口覆い具100は、該引出口覆い具100を配電盤11に対して近接又は離隔方向に移動させるだけで引出口覆い具100の取り付け作業及び取り外し作業を可能とし、尚且つ、配線材15の配線引出口12への挿通状態を維持したまま、引出口覆い具100の取り付け作業及び取り外し作業を可能とすることから、その作業性を大幅に改善するものである。
【0055】
また、本実施形態の引出口覆い具100によれば、帯状体101で複数の配線材15を包囲した状態で絞り部105を紐状部材106で巾着様に引き締めることにより、頂縁部102側の開口を絞って、頂縁部102側の開口における配線材15との隙間を狭めることができる。また、配線材15を帯状体101で包囲した状態で対向する通し孔107,107に結束部材106を通すことにより、頂縁部102側の開口を綴じて、頂縁部102側の開口における配線材15との隙間をより一層狭めることができる。特には、従来(特許文献1)の引出口覆い具では、バンドで開口を絞り込むだけであることから、配線材の間に隙間が生じることが避けられない。そして、その隙間から埃やネズミが侵入する虞があった。これに対して、本実施形態では、開口径を狭める巾着構造(絞り部105、紐状部材106)と、配線材15を挟んで開口を綴じる結束構造(通し孔107、結束部材109)とが協働することで、帯状体101の頂縁部102で配線材15を1本ずつ包囲して、頂縁部102側の開口をより隙間なく閉鎖することができる。
【0056】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の実施形態や変形例を取り得る。以下、本発明の別実施形態を説明する。各実施形態において、下二桁の符番が共通する構成要素は、特定のない限り、同一又は類似の特徴を有し、その説明を一部省略する。
【0057】
(1)本発明の引出口覆い具は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。例えば、図14は、本発明の別実施例の引出口覆い具200及びその設置構造20を示している。引出口覆い具200は、配線材25の引出方向に開口する頂縁部202及び裾部203を有する帯状体201と、頂縁部202に設けられ、頂縁部202側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備える。帯状体201には、裾部203を電気機器用筐体21に固着するように、引出口周囲部23に磁着可能な磁着部204が設けられている。本実施形態では、閉鎖手段が、上記実施形態の引出口覆い具100と異なる。すなわち、図14に示すように、閉鎖手段は、通し孔207と結束部材209から構成されてもよい。この変形例では、結束部材209は留めピンであるが、本発明の結束部材は、結束バンドや留めピンに限定されず、例えば、ピン、スナップボタンなどの他の部材から選択されてもよい。すなわち、本発明の閉鎖手段は、頂縁部側の開口を狭めることが可能であればよく、絞り部(紐状部材)又は通し孔(結束部材)の少なくとも一方が省略された任意の手段であってもよい。
【0058】
(2)本発明の引出口覆い具は、上記実施形態に限定されず、種々の形態を取り得る。例えば、図15は、本発明の別実施例の引出口覆い具300及びその設置構造30を示している。引出口覆い具300は、配線材35の引出方向に開口する頂縁部302及び裾部303を有する帯状体301と、頂縁部302に設けられ、頂縁部302側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備える。該閉鎖手段は、上記実施形態の引出口覆い具100と共通している。帯状体301には、裾部303を電気機器用筐体31に固着するように、引出口周囲部33に着脱自在に接着可能な接着部304が設けられている。本変形例では、接着部304及び引出口周囲部33は、雌雄一対の面ファスナー304a、33aからなる。すなわち、本発明において、引出口覆い具と電気機器用筐体との固着手段は、磁力以外の手段であってもよい。
【0059】
(3)本発明の引出口覆い具は、上記実施形態の形状寸法に限定されず、種々の形状寸法をとり得る。例えば、引出口覆い具は、平面視円形状、長円形状、楕円形状、多角形状などの筒状体であってもよい。また、本発明の引出口覆い具は、展開形態に変形可能でなくてもよい。この場合、引出口覆い具を電気機器用筐体の引出口周囲部に取り付けた上で、配線材を配線することが必要となる。
【0060】
(4)上記実施形態の設置構造では、引出口覆い具が電気機器用筐体の外部に配置されたが、筐体の内外問わず配置されてもよい。
【0061】
(5)本明細書は、引出口覆い具及び設置構造が以下の形態A,Bを取り得ることも実質的に開示する。
A.配線引出口を有する電気機器用筐体に取着される引出口覆い具であって、
前記配線引出口から引き出される配線材を包囲し、配線材の引出方向に開口する裾部及び頂縁部を有する帯状体と、
前記裾部を前記電気機器用筐体の引出口周囲部に固定可能に前記帯状体に設けられた固着手段と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記帯状体は、平面形状に展開可能であり、且つ、前記帯状体の両端を連結して筒状に維持するための連結維持手段を備え、
前記連結維持手段は、他の引出口覆い具の連結維持手段と結合可能であり、前記他の引出口覆い具と協働して1つの筒状体を形成するように構成されていることを特徴とする引出口覆い具。
B.1又は複数の配線材が引き出された配線引出口の周囲に磁性体からなる引出口周囲部を有する電気機器用筐体と、前記配線引出口を覆って閉鎖する複数の引出口覆い具とを備える設置構造であって、
前記引出口覆い具は、
前記配線材を包囲し、前記配線材の引出方向に開口する裾部及び頂縁部を有する帯状体と、
前記裾部を前記電気機器用筐体の引出口周囲部に固定可能に前記帯状体に設けられた固着手段と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記帯状体は、平面形状に展開可能であり、且つ、前記帯状体の両端を連結して筒状に維持するための連結維持手段を備え、
前記複数の引出口覆い具が、前記連結維持手段によって前記配線引出口の周囲方向に連結して、協働して1つの筒状体を形成していることを特徴とする設置構造。
当該形態において、固着手段及び/又は閉鎖手段は、上記実施形態に限定されずに任意に選択され得る。すなわち、上記実施形態(図12)で例示した技術的思想に基づいて、本明細書は、固着手段を磁着部から他の手段(例えば、面ファスナーや接着剤など)に変更し、及び/又は、閉鎖手段を他の手段に変更した形態をも実質的に開示するものである。
【0062】
(6)本明細書は、引出口覆い具及び設置構造が以下の形態C,Dを取り得ることも実質的に開示する。
C.配線引出口を有する電気機器用筐体に取着される引出口覆い具であって、
前記配線引出口から引き出される配線材を包囲し、配線材の引出方向に開口する裾部及び頂縁部を有する帯状体と、
前記裾部を前記電気機器用筐体の引出口周囲部に固定可能に前記帯状体に設けられた固着手段と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記帯状体の頂縁部側の開口の内側に配置されたクッション材をさらに備え、前記クッション材は、前記閉鎖手段で前記頂縁部側の開口を閉鎖するときに前記配線材の外面に当接して弾性変形可能であることを特徴とする引出口覆い具。
D.1又は複数の配線材が引き出された配線引出口の周囲に磁性体からなる引出口周囲部を有する電気機器用筐体と、前記配線引出口を覆って閉鎖する引出口覆い具とを備える設置構造であって、
前記引出口覆い具は、
前記配線材を包囲し、前記配線材の引出方向に開口する裾部及び頂縁部を有する帯状体と、
前記裾部を前記電気機器用筐体の引出口周囲部に固定可能に前記帯状体に設けられた固着手段と、
前記頂縁部に設けられ、前記頂縁部側の開口を閉鎖する閉鎖手段と、を備え、
前記帯状体の頂縁部側の開口の内側には、クッション材が配置され、前記クッション材は、前記閉鎖手段による前記頂縁部側の開口の閉鎖に従って、前記配線材の外面に当接して弾性変形していることを特徴とする設置構造。
当該形態において、固着手段及び/又は閉鎖手段は、上記実施形態に限定されずに任意に選択され得る。すなわち、上記実施形態で例示した技術的思想に基づいて、本明細書は、固着手段を磁着部から他の手段(例えば、面ファスナーや接着剤など)に変更し、及び/又は、閉鎖手段を他の手段に変更した形態をも実質的に開示するものである。
【0063】
本発明は上述した実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0064】
10 設置構造
11 配電盤(電気機器用筐体)
12 配線引出口
13 引出口周囲部
15 配線材
100 引出口覆い具
101 帯状体
102 頂縁部
103 裾部
104 磁着部(固着手段)
105 絞り部
106 紐状部材
107 通し孔
108 連結維持手段
108a 面ファスナー
108b ハトメ孔
109 結束部材
110 クッション材
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