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  • 特許-黒天目釉薬、黒天目茶碗の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】黒天目釉薬、黒天目茶碗の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 41/86 20060101AFI20220722BHJP
   C04B 33/34 20060101ALI20220722BHJP
【FI】
C04B41/86 A
C04B33/34
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2018214192
(22)【出願日】2018-10-30
(65)【公開番号】P2020070225
(43)【公開日】2020-05-07
【審査請求日】2021-06-24
(73)【特許権者】
【識別番号】521277969
【氏名又は名称】小野塚 恭彦
(73)【特許権者】
【識別番号】521277534
【氏名又は名称】神田 玲子
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】特許業務法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 満男
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-082438(JP,A)
【文献】特開2005-320174(JP,A)
【文献】特開2009-196875(JP,A)
【文献】特開2010-006619(JP,A)
【文献】特開2018-039704(JP,A)
【文献】特開2005-075413(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 41/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の成分:
1)カリウム長石とナトリウム長石とを含むアルカリ長石を約40重量%、
2)石灰石を約20重量%、
3)珪酸質陶石を約7重量%、
4)珪石を約25重量%、及び
5)酸化第二鉄と四三酸化鉄を含む含鉄石を約8重量%、
を含
前記アルカリ長石は、カリウム長石を36±20%、ナトリウム長石を64±20%の配合比率で含み、溶融開始温度が800℃以下である、
レイリー散乱青色光及び白色光の分光虹色に輝く黒天目茶碗のための黒天目釉薬。
【請求項2】
前記石灰石は、非結晶であり反応性が高い天然に産する鼠石である、請求項1記載の黒天目釉薬。
【請求項3】
前記含鉄石は、酸化第二鉄と四三酸化鉄とを約3:1の割合で含む、請求項1又は請求項に記載の黒天目釉薬。
【請求項4】
前記含鉄石中は、微粒子状の酸化第二鉄と、コロイド状の超微粒子(1200℃の還元焼成工程で可視光線波長の1/4~1/6)となる四三酸化鉄とを含む、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の黒天目釉薬。
【請求項5】
レイリー散乱青色光及び白色光の分光虹色に輝く黒天目茶碗の製造方法であって、該方法は
請求項1~のいずれか1項に記載の黒天目釉薬を茶碗胎土の表面に塗布する工程、
該黒天目釉薬を掛けた該茶碗胎土を約1000℃まで加熱することにより酸化焼成を行う工程、
酸化焼成を行なった茶碗胎土を一酸化炭素4~6%の雰囲気下で約1250℃まで加熱することにより還元焼成を行う工程、並びに
還元焼成を行なった茶碗胎土を約5時間かけて約1200℃まで冷却することにより還元徐冷却を行う工程、
を含むことを特徴とする、上記方法。
【請求項6】
前記酸化焼成工程において、前記カリウム長石と前記ナトリウム長石が約600℃で液固二相の平衡相を形成する液相ナトリウム長石を生成し、約800℃で前記石灰石が熱分解して生石灰を生成する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記酸化燒成工程において、約700~約1000℃で、前記生石灰と前記液相ナトリウム長石が反応することにより酸化ナトリウムと灰長石が生成する、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記還元徐冷却工程において、約1200~700℃において前記酸化ナトリウムの双晶結晶群が出現する、請求項に記載の方法。
【請求項9】
前記還元焼成を行う工程において、約1240℃における熱分解により、前記四三酸化鉄はコロイド状の超微粒子に砕粒化されて酸化鉄を沈積し、それによって茶碗胎土と釉薬界面にレイリー散乱青色光を反射する、請求項のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
黒色釉薬では、カリ長石を主に調合されていてナトリウム長石はあまり使われていない。着色鉄石は紅柄(酸化第二鉄)の微粒子で、貫入防止にカオリン質粘土、燒結硬化に珪酸質陶石、陶石の溶融温度の引き下げに土灰を主に非結晶質の石灰石が配合されていて還元燒成(1240~1250℃)で造られている。釉薬の長石、珪石等のガラス化釉層の反射光に耀く黒天目茶碗は、完成の域に技術開発は達している。
本発明は好ましくは以下の態様を含む。
(態様1)
下記の成分:
1)カリウム長石とナトリウム長石とを含むアルカリ長石を約40重量%、
2)石灰石を約20重量%、
3)珪酸質陶石を約7重量%、
4)珪石を約25重量%、及び
5)酸化第二鉄と四三酸化鉄を含む含鉄石を約8重量%、
を含む、レイリー散乱青色光及び白色光の分光虹色に輝く黒天目茶碗のための黒天目釉薬。
(態様2)
前記アルカリ長石は、カリウム長石を36±20%、ナトリウム長石を64±20%の配合比率で含み、溶融開始温度が800℃以下である、態様1に記載の黒天目釉薬。
(態様3)
前記石灰石は、非結晶であり反応性が高い天然に産する鼠石である、態様1又は態様2に記載の黒天目釉薬。
(態様4)
前記含鉄石は、酸化第二鉄と四三酸化鉄とを約3:1の割合で含む、態様1~態様3のいずれか1つに記載の黒天目釉薬。
(態様5)
前記含鉄石中は、微粒子状の酸化第二鉄と、コロイド状の超微粒子(1200℃の還元焼成工程で可視光線波長の1/4~1/6)となる四三酸化鉄とを含む、態様1~態様4のいずれか1つに記載の黒天目釉薬。
(態様6)
レイリー散乱青色光及び白色光の分光虹色に輝く黒天目茶碗の製造方法であって、該方法は
態様1~5のいずれか1つに記載の黒天目釉薬を茶碗胎土の表面に塗布する工程、
該黒天目釉薬を掛けた該茶碗胎土を約1000℃まで加熱することにより酸化焼成を行う工程、
酸化焼成を行なった茶碗胎土を一酸化炭素4~6%の雰囲気下で約1250℃まで加熱することにより還元焼成を行う工程、並びに
還元焼成を行なった茶碗胎土を約5時間かけて約1200℃まで冷却することにより還元徐冷却を行う工程、
を含むことを特徴とする、上記方法。
(態様7)
前記酸化焼成工程において、前記カリウム長石と前記ナトリウム長石が約600℃で液固二相の平衡相を形成する液相ナトリウム長石を生成し、約800℃で前記石灰石が熱分解して生石灰を生成する、態様6に記載の方法。
(態様8)
前記酸化燒成工程において、約700~約1000℃で、前記生石灰と前記液相ナトリウム長石が反応することにより酸化ナトリウムと灰長石が生成する、態様7に記載の方法。
(態様9)
前記還元徐冷却工程において、約1200~700℃において前記酸化ナトリウムの双晶結晶群が出現する、態様8に記載の方法。
(態様10)
前記還元焼成を行う工程において、約1240℃における熱分解により、前記四三酸化鉄はコロイド状の超微粒子に砕粒化されて酸化鉄を沈積し、それによって茶碗胎土と釉薬界面にレイリー散乱青色光を反射する、態様6~9のいずれか1つに記載の方法。
【実施例1】
【0002】
黒天目茶碗の見込みに掛ける本発明の釉薬(図1B)を素燒の胎土に薄目に掛けて酸化・還元燒成を図2の工程に準じて行い本発明の光彩を放つ黒色茶碗を得た(図4B)。
【実施例2】
【0003】
茶碗の外側(表層)には公知の黒天目釉薬(図1A)を掛け茶碗の見込には本発明の釉薬(図1B)を掛けて酸化・還元燒成(図3)の製造工程を実施してレイリー散乱青色光彩および白色光の分光虹色に耀く黒天目茶碗を造ることができた(図4B)。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1】本発明品茶碗の見込釉薬Bの調合割合を示す図。
図2】本発明の酸化・還元燒成工程でおこる化学反応説明図。
図3】本発明の燒上げ還元燒成(1240~1250℃)工程で泡立った釉薬の泡痕および胎土と釉薬層界面に沈積したコロイド状の超微粒が放つレイリー散乱光(青色)の写真3A-本発明茶碗の表面;3B-同品の見込の胎土と釉薬の界面図。
図4】本発明の製造徐冷却工程で結晶化した酸化ナトリウムの双晶写真図4A;本発明の製造工程で作陶した白色分光の虹色に耀く黒天目茶碗の内側見込写真図4B
図1
図2
図3
図4