(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】機能部品
(51)【国際特許分類】
B60C 23/04 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
B60C23/04 110E
(21)【出願番号】P 2018234655
(22)【出願日】2018-12-14
【審査請求日】2021-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】山口 滋
【審査官】上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-157577(JP,A)
【文献】特開2018-054501(JP,A)
【文献】特開2009-175113(JP,A)
【文献】特開2002-214060(JP,A)
【文献】特開2017-154648(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ内に取り付けられ、タイヤの状態を情報として検出するための機能部品であって、
タイヤの一の状態を検出する第1センサを有する第1基板と、
前記第1センサにより検出されるタイヤの状態とは異なるタイヤの状態を検出する第2センサを有する第2基板と、
前記第1基板と前記第2基板とを電気的に接続する接続部と、を備え、
前記第1基板は、前記第1センサ及び前記第2センサにより検出された情報をタイヤの外部に出力する通信手段をさらに備え、
前記第1基板及び前記第2基板は、タイヤ半径方向に重ねて設けられ、前記第2基板がタイヤ半径方向外側に配置されたことを特徴とする機能部品。
【請求項2】
前記接続部は、連結ピンからなることを特徴とする請求項1に記載の機能部品。
【請求項3】
前記第1基板及び前記第2基板は、樹脂で一体化されたことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の機能部品。
【請求項4】
前記第1基板は、前記第1センサにより検出された情報を処理する第1処理手段を有し、
前記第2基板は、前記第2センサにより検出された情報を処理する第2処理手段を有することを特徴とする請求項1乃至請求項3いずれかに記載の機能部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤに取り付け可能な機能部品等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、タイヤ内の温度や圧力を検出する温度センサや圧力センサを設けるとともに、検出した温度や圧力をドライバー等に報知するためにタイヤ外に出力する通信装置とを備えた機能部品をタイヤ内に装着する技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、このような機能部品は、タイヤの種類、或いは、用途に応じた専用設計により製作されるため、例えば10種の用途があった場合には10種類の専用設計された実装基板を製作し性能確認をする必要があった。また、機能部品では、無線機器を通信装置として利用し、検出した情報を外部に出力しているため、公道での使用時には公的機関による使用許可の承認を取得する必要がある。このため、タイヤの種類や用途に応じて基板を製作した場合には、開発や製作に係る工数が増え、費用も増加する傾向となる。
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、機能部品として要求される性能に対応して、開発、製作工数を削減可能な機能部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための機能部品の構成として、タイヤ内に取り付けられ、タイヤの状態を情報として検出するための機能部品であって、タイヤの一の状態を検出する第1センサを有する第1基板と、第1センサにより検出されるタイヤの状態とは異なるタイヤの状態を検出する第2センサを有する第2基板と、第1基板と第2基板とを電気的に接続する接続部とを備え、第1基板は、第1センサ及び第2センサにより検出された情報をタイヤの外部に出力する通信手段をさらに備え、第1基板及び第2基板は、タイヤ半径方向に重ねて設けられ、第2基板がタイヤ半径方向外側に配置された構成とした。
本構成によれば、通信手段が設けられた第1基板を共通の基板として利用し、機能部品として要求される性能に対応して第2基板を開発、製作すれば良いので、開発、製作工数を削減することができる。また、通信手段が設けられていない第2基板をタイヤ半径方向外側に配置することにより、通信手段からタイヤの外部に情報を出力するときに電波を遮るものがないので、タイヤの外部に精度良く情報を出力することができる。
また、機能部品の他の構成として、接続部に連結ピンを用いたり、第1基板及び第2基板を樹脂で一体化したり、第1基板が第1センサにより検出された情報を処理する第1処理手段を備え、第2基板が第2センサにより検出された情報を処理する第2処理手段を備える構成としたりしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】機能部品のタイヤへの取付例を示す図である。
【
図2】機能部品の分解斜視図、収容ケースの平面図及び部分断面図である。
【
図9】拡張基板の他の構成を示すブロック図である。
【0007】
以下、発明の実施形態を通じて本発明を詳説するが、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではなく、また実施形態の中で説明される特徴の組み合わせのすべてが発明の解決手段に必須であるとは限らず、選択的に採用される構成を含むものである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、機能部品1のタイヤ10への取付例を示す図である。
図1(a),(b)に示すように、機能部品1は、タイヤ10の路面と接するトレッド11の裏側である内周面10sの幅方向中央に配置される。機能部品1は、例えば、接着剤等によりタイヤ10の内面(内周面)10sに強固に固定される。
【0009】
そして、機能部品1は、タイヤ10をホイールリム15に組み付けて形成された閉空間(以下、タイヤ気室という)に充填された空気の圧力や温度を含むタイヤ10の状態を示す情報を検出し、検出した情報を例えば、図外の車両に設けられた本体ユニットに送信可能に構成される。
【0010】
図2(a)は、機能部品1の構成の一例を示す分解斜視図、
図2(b)は、収容ケース20の平面図、
図2(c)は、スカート4の断面図である。
図2(a)に示すように、機能部品1は、概略、タイヤ10の状態を検出するモジュール6と、モジュール6を収容する筐体2とで構成される。
【0011】
筐体2は、モジュール6の収容空間S(収容部)を有する収容ケース20と、収容ケース20に対する蓋体として機能するキャップ30とを備え、収容ケース20とキャップ30とを組み合わせることで概ね円盤状に形成される。
【0012】
収容ケース20は、円形の底部21と、底部21の外周縁からの外周に沿って延長し、底部21から環状に立ち上がる周壁部22とで形成された一方開口の有底円筒状に形成され、底部21の内底面20c及び周壁部22の内周面20aとでモジュール6を収容可能な収容空間Sを形成する。以下の説明では、周壁部22の軸Oを基準として軸方向、周方向、径方向等の用語を用いて説明する。
【0013】
周壁部22の内周面20aには、軸Oの径方向外側に向けて窪む凹部20Aや、軸O方向に向けて突出し、軸Oに沿って延長する複数の凸部20Bが形成され、収容空間Sに収容されたモジュール6を所定の位置に位置決めする。収容ケース20の底部21には、内底面20cから外底面20dへと貫通する貫通孔29が設けられている。さらに、底部21の内底面20cには、収容空間Sに収容されたモジュール6を下方から支持する図外の突起等の支持手段が設けられている。
【0014】
図2(b)に示すように、底部21の外底面20dは、軸O上に曲率中心が設けられ、該外底面20dの外周縁側よりも中央部分が軸方向外側に突出する、例えば、球面状に形成される。なお、上述の外底面20dの形状は、球面状に限定されず、適宜設定すれば良い。この外底面20dには、該外底面20dからタイヤ10の内周面10sに向けて突出する複数の凸部24が形成される。複数の凸部24は、例えば、外底面20dの軸Oに対して放射状、かつ、円周方向に均等な間隔(軸O周りに均等な間隔)で配置され、外底面20dの法線方向に延長するように形成されている。凸部24の延長する長さは、例えば、後述のスカート4を筐体2に装着したときに、スカート4の先端部44Aよりも突出しない長さで設定すると良い。複数の凸部24は、例えば、円柱等の柱形状や錐形状、或は、それらを組み合わせたり、凸部24に代えて、外底面20dから内底面20c側に窪む凹部としても良く、また凸部と凹部を組み合わせて形成しても良い。
【0015】
周壁部22の外周面20bには、後述のスカート4を取り付けるためのスカート取付部26が設けられる。スカート取付部26は、例えば、周壁部22の下側半部に設けられた複数の環状凸部23により構成される。環状凸部23は、外周面20bの円周方向に亘って延長する環状体であって、軸方向に所定の間隔で複数(本例では3本)設けられる。なお、環状凸部23は、一周に亘り延長することなく円周方向に断続的に延長する構成であっても良い。
【0016】
図2(c)に示すように、スカート4は、スカート取付部26を囲繞可能に円筒状に形成された筒部40と、当該筒部40から内周面10s側に延長する拡大部42とを備える。筒部40の内周面40aには、円周方向に沿って延長し、径方向に窪む環状凹部43が複数形成され、収容ケース20の外周にスカート取付部26を構成する環状凸部23と嵌合するケース取付部46が設けられる。
【0017】
拡大部42は、筒部40から連続し、末広がりのラッパ状に形成される。拡大部42の内周面42aは、軸断面において収容ケース20の外底面20dの外周縁からタイヤ10の内周面10s側に向けて徐々に拡径する曲面として形成される。外周面42bは、筒部40の外周面40bと滑らかに連続し、タイヤ10の内周面10sに向けて徐々に拡径する曲面として形成される。内周面42a及び外周面42bで形成される拡大部42の厚みは、内周面10s側の軸方向端部に向かうに従い、徐々に薄くなるように先細り状に設定される。内周面42aの先端部44A及び外周面42bの先端部44Bは、平坦面42cを介して接続される。つまり、平坦面42cは、内周面42aの先端部44Aと、外周面42bの先端部44Bと、軸Oと直交する平面により囲まれる環状面である。
【0018】
そして、スカート4は、収容ケース20のスカート取付部26に装着されることにより、筐体2の外底面20dからタイヤ10の内周面10s側(外底面20dから離間する方向)に延長する。
【0019】
図2(a)に示すように、キャップ30は、円形の天井部32と、天井部32の外周縁に沿って延長する周壁部34とを備える。天井部32の外側面32aには、機能部品1をタイヤ10に装着する時の方向を示す取付マークMが形成される。取付マークMは、例えば、刻印や印刷等により表示される。
図1(b)に示すように、取付マークMは、矢印をタイヤ円周方向に向けて、機能部品1をタイヤ10の内周面10sに取り付けることを示している。なお、取付マークMが示す方向は、モジュール6の検出方向に対応して適宜設定すれば良い。天井部32には、軸O方向に貫通する孔33が形成される。孔33は、キャップ30により収容ケース20の開口を閉鎖したときに、収容ケース20の収容空間Sに、タイヤ内の空気を取り入れるための導入孔として機能する。周壁部34は、収容ケース20の周壁部22の外周面20bの外周を囲繞可能な内径が設定される。上記構成からなるキャップ30は、収容ケース20に対して外側面32aに設けられた取付マークMが所定の方向を向いた状態で図外のはめ込み固定手段等により収容ケース20と一体化される。
【0020】
上述の収容ケース20及びキャップ30は、例えば、機能部品1の軽量化及び強度の観点から合成樹脂等の素材が好適である。また、スカート4は、例えば、ゴム等のエラストマーからなる弾性素材や可撓性を有する樹脂等が好ましい。
【0021】
図3は、モジュール6の分解斜視図である。本実施形態に係るモジュール6は、第1基板及び第2基板としての複数の基板60;80と、基板60と基板80とに電力を供給する電池100とを備える。基板60及び基板80は、収容ケース20に設けられた凹部20A及び複数の凸部20Bに対応するように、例えば、概略8角形に形成され、周縁を凸部20Bに接触させるとともに、周縁の一部から突出する突片60z;80zを凹部20Aに一致させて収容可能に形成される。
【0022】
基板60及び基板80には、それぞれタイヤ10の状態を検出するための異なる機能が設定される。例えば、基板60には、基本的な情報として、タイヤ10が正常な状態にあるかどうかを検出するための検出手段が設けられ、基板80には、基板60により検出された情報に加え、拡張的な機能を付加するために、さらにタイヤ10における他の状態を検出する検出手段が設けられる。以下、基板60を基本基板60、基板80を拡張基板80という。
【0023】
図4は、基本基板60のブロック図である。以下、基本基板60及び拡張基板80に設定される機能の一例について説明する。
図4(a)に示すように、基本基板60は、第1センサとしてのタイヤ10の気室内の温度を取得する温度センサ62及び気室内の圧力を取得する圧力センサ64、各センサ62;64により検出された検出値をタイヤの外部に出力するための通信装置67、複数のセンサ62;64により検出された情報を処理するとともに、複数のセンサ62;64及び通信装置67の動作、拡張基板80との情報の授受を処理する第1処理手段としての制御処理装置70を備える。
【0024】
温度センサ62及び圧力センサ64は、キャップ30に設けられた孔33を介して収容空間S内に導入されたタイヤ気室内の空気によりタイヤ気室内の空気の温度及び圧力を検出する。温度センサ62及び圧力センサ64は、制御処理装置70から出力される信号に基づいて動作する。
【0025】
図4(b)に示すように、通信装置67は、送信部68と、受信部69とを備える。送信部68は、概略送信回路68A及び送信アンテナ68Bで構成され、受信部69は、概略受信回路69A及び受信アンテナ69Bとで構成される。
送信部68は、制御処理装置70から入力された情報を送信回路68Aにより所定の
信号に変換し、送信アンテナ68Bから図外の車両に設けられた本体ユニットに送信する。送信部68は、例えば、制御処理装置70から情報が入力される毎に動作する。
【0026】
受信部69は、機能部品1を管理するための図外の機能部品管理装置から受信アンテナ69Bに対して所定の電波が入力されたときに、受信回路69Aが電波の受信ありと判定し、外部から制御処理装置70への通信回路を開き、入力された情報を制御処理装置70に出力する。また、電波の受信が所定時間ない場合には、受信部69は、機能を停止する。
【0027】
制御処理装置70は、プログラム等が記憶されるメモリ等の記憶手段72,演算処理手段として機能するCPU74、入出力手段76を備え、所謂コンピュータとして動作する。
【0028】
記憶手段72には、例えば、基本基板60に設定される固有の識別番号や、温度センサ62及び圧力センサ64の動作を制御するためのプログラム、通信装置67を動作させるためのプログラム、通信装置67の受信部69に外部から信号が入力されたときの処理を実行するためのプログラム、拡張基板80を制御するためのプログラム等が記憶される。また、記憶手段72には、温度センサ62、圧力センサ64により検出されたタイヤ10内の温度、圧力等の情報が履歴として記憶される。
【0029】
入出力手段76は、温度センサ62及び圧力センサ64を動作させるための信号の出力や、温度センサ62及び圧力センサ64により検出された温度及び圧力の入力のインターフェース、拡張基板80との通信を可能にするインターフェースとして機能する。
【0030】
制御処理装置70は、CPU74が記憶手段72に記憶されたプログラムを実行することにより、例えば、温度センサ62及び圧力センサ64等による温度及び圧力の検出を制御するセンサの動作、通信装置67の動作、拡張基板80との情報の授受等の動作を制御する。
【0031】
制御処理装置70は、例えば、記憶に設定されたサンプリングタイムに基づいて、温度センサ62及び圧力センサ64に信号を出力し、温度センサ62及び圧力センサ64により温度及び圧力を検出させる。そして、温度センサ62及び圧力センサ64により検出された温度及び圧力の情報を、例えばデジタル信号等の所定の信号に変換し、通信装置67に出力する。
【0032】
また、制御処理装置70は、受信部69との通信回路が開かれたときに、機能部品1を管理する図外の機能部品管理装置から電波により入力される指令に基づいて、記憶手段72に記憶された情報を出力したり、更新したり、追加したりする。例えば、機能部品管理装置から識別番号の入力があった場合には、記憶手段72に識別番号を記憶させ、識別番号の要求があった場合には、識別番号を送信部68を介して出力する。
つまり、所謂RFIDとしての機能を有する。
【0033】
また、制御処理装置70は、拡張基板80から情報が入力された場合、入力された情報を通信装置67の送信部68に出力する。また、制御処理装置70は、受信部69との通信回路が開かれた状態において、機能部品管理装置から拡張基板80に関する指令が入力された場合、入力された指令を拡張基板80に出力する。
【0034】
図3に示すように、上述の温度センサ62、圧力センサ64、通信装置67の送信回路68A及び受信回路69A並びに制御処理装置70として機能する制御回路は、例えば、一つのチップに機能を集約したモジュールとして一体化され、センサユニット61として基板表面に実装される。また、通信装置67を構成する送信アンテナ68B及び受信アンテナ69Bは、アンテナユニット63として、センサユニット61とは別体として基板表面に実装され、例えば、基板の同一面に設けられる。
【0035】
図5は、拡張基板80のブロック図である。
図6は、ひずみセンサ82の概略構成図を示す図である。
図5に示すように、拡張基板80は、第2センサとしてのタイヤの変形を検出するひずみセンサ82と、ひずみセンサ82により検出された情報を処理するとともに、ひずみセンサ82の動作を制御する第2処理手段としての制御処理装置90とを備える。
【0036】
図3,
図6に示すように、ひずみセンサ82は、フレキシブルケーブル等の接続線83により、拡張基板80に接続される。ひずみセンサ82は、例えば、ひずみゲージ84、ブリッジ回路86、ストレインアンプ88等を備える。ひずみゲージ84は、ブリッジ回路86の一部を構成する。ブリッジ回路86には、例えば、ストレインアンプ88から電圧が印加され、ひずみゲージ84がひずみを検出したときの抵抗値の変化に伴う電圧値の差分を信号としてストレインアンプ88に出力する。
【0037】
ストレインアンプ88は、信号増幅回路88A、A/D変換器88B、電力供給部88Cとを備え、ブリッジ回路86から入力される信号を信号増幅回路88Aで増幅し、増幅された信号をA/D変換器88Bによりデジタル信号に変換して制御処理装置90に出力する。つまり、ひずみゲージ84により検出されたひずみ量に応じた電圧値がストレインアンプ88によって、拡張基板80にデジタル信号として出力される。
【0038】
本実施形態では、
図3に示すように、ひずみセンサ82には、例えば、ひずみゲージ84、ブリッジ回路86、ストレインアンプ88の機能を一つのチップに集積し、矩形状の所謂ピエゾ抵抗式半導体として構成されたセンサチップを適用した。ひずみセンサ82は、例えば、計測面82aが規定され、この計測面82aをタイヤ10の内周面10sに対向するように、筐体2の外底面20dに取り付けられる(
図7(c)参照)。このようにひずみセンサ82を取り付けることにより、タイヤ10が周方向や幅方向等に変形したときのひずみを等方的に検出することができる。また、ひずみセンサ82に半導体のものを用いることにより、信頼性、及び耐久性を向上させることができる消費電力を少なくすることができる。
【0039】
図5(b)に示すように、制御処理装置90は、プログラム等が記憶される記憶手段92,演算処理手段として機能するCPU94、入出力手段96を備え、所謂コンピュータとしての機能を有する。制御処理装置90は、例えば、ひずみセンサ82によるタイヤのひずみの検出動作、及びひずみセンサ82により検出されたひずみを、基本基板60に設けられた制御処理装置70に規定されたフォーマットで出力するための処理を実行するとともに、記憶手段92にひずみを記憶する。また、制御処理装置90は、制御処理装置70を介して、機能部品管理装置から入力された指令に基づいて動作し、指令に基づく処理を実行した結果を基本基板60に出力する。
図3に示すように、制御処理装置90は、例えば、ワンチップコンピュータとして構成され、拡張基板80に実装される。
【0040】
上述の基本基板60には、拡張基板80を接続するための基板接続手段78、拡張基板80には、基本基板60と接続するための基板接続手段98が設けられている。
基板接続手段78は、基本基板60のセンサユニット61及びアンテナユニット63が実装された実装面の裏面に設けられ、基板接続手段98は、拡張基板80の制御処理装置90が実装された実装面と同一面側に設けられている。つまり、機能部品1をタイヤ10の内周面10sに取り付けたときに、基本基板60が拡張基板80よりも半径方向内側に位置するように接続される。
【0041】
基板接続手段78は、拡張基板80との情報の授受が行われる入出力部78Aと、拡張基板80から供給される電力を受電する受電部78Bとを備える。また、基板接続手段98は、基本基板60との情報の授受が行われる入出力部98Aと、基本基板60に電力を供給する給電部98Bとを備える。
【0042】
基本基板60の基板接続手段78及び拡張基板80の基板接続手段98を互いに電気的に接続する方法として、例えば、連結ピンによる接続が好適である。連結ピンによる接続の例としては、基本基板60の入出力部78A及び受電部78Bに、基板に実装可能なピンソケットを適用し、拡張基板80の入出力部98A及び給電部98Bにピンソケットに対応し、ピンソケットに挿入可能なピンを有するピンヘッダを基板に実装して物理的に接続すれば良い。つまり、ピンソケット及びピンヘッダにより基本基板60と拡張基板80とを接続する接続部を構成する。このように連結ピンを用いて基本基板60と拡張基板80とを接続することにより、連結ピンにより互いの位置関係が保持することができるため、基本基板60と拡張基板80との距離を最小限に設定することができる。その結果、収容空間S内における基板60;80の占有空間が小さくなり、スペース効率を向上させることができる。
なお、基本基板60と拡張基板80との接続は、ピンソケット及びピンヘッダによる接続に限定されず、直接、導電性を有するピンによりはんだ付け等により互いを接続しても良い。また、連結ピンによる接続に限定されず、フレキシブルケーブル等により電気的に接続しても良い。
【0043】
また、基本基板60及び拡張基板80は、それぞれ電池100を接続可能な受電端子79及び受電端子99を備える。受電端子79;99は、それぞれの基板60;80において、板厚方向に貫通する長孔として2箇所所定距離離間して設けられる。各長孔は、内周面及び周縁部の所定範囲が導電体により覆われ、電極として基板表面に露出するように構成される。各基板60;80において、一方の長孔がプラス極、他方の長孔がマイナス極に設定される。拡張基板80に設けられた受電端子99は、給電部98Bと接続される。
【0044】
図3に示すように、電池100は、所謂ボタン電池であって、基本基板60や拡張基板80に設けられた受電端子79;99に挿入可能な接続端子102を備える。接続端子102は、例えば、電池100に設定された各電極にはんだ付け等により接合され、それぞれ同一方向に向けて延長する延長片102Aを備える。延長片102A;102Aは、互いの延長する間隔が、各基板60;80に設けられた一対の受電端子79;99の離間する距離よりもやや短く設定され、受電端子79;99を挟持可能に形成される。一方の延長片102Aが受電端子79或いは受電端子99のプラス極、他方の延長片102Aが受電端子79或いは受電端子99のマイナス極に接続可能に形成される。
【0045】
図7(b)に示すように、上記構成によれば、モジュール6は、基本基板60の基板接続手段78と、拡張基板80の基板接続手段98とを接続することで、基本基板60と拡張基板80とが一体化され、次に、拡張基板80の受電端子99に電池100の接続端子102を接続することで拡張基板80に電池100を取り付けられて構成される。つまり、電池100の電力は、拡張基板80の受電端子99に供給され、拡張基板80の給電部98Bに接続される基本基板60の受電部78Bを介して基本基板60に電力が供給される。
【0046】
そして、基本基板60と一体化された拡張基板80に電池100を装着した状態で、収容ケース20に収容される。まず、収容ケース20の底部21に設けられた貫通孔29にひずみセンサ82を接続線83を貫通させながら、モジュール6を収容空間S内の所定の位置に配置しつつ、ひずみセンサ82を外底面20dの中央に配置し、ひずみセンサ82と、接続線83とを外底面20dに接着剤等の固定手段により固定する。
【0047】
次に、モジュール6が収容された収容空間Sに充填材50を充填し、硬化させることにより、基本基板60と拡張基板80とが固定され、拡張基板80と電池100が固定される。その結果として、充填材50により互いに固定された基本基板60、拡張基板80及び電池100で構成されたモジュール6が収容ケース20に固定されるとともに、底部21に設けられた貫通孔29が閉塞される。充填材50の充填される位置は、例えば、温度センサ62及び圧力センサ64がセンサユニット61として一体化されているため、センサユニット61に設けられた空気取り入れ孔を塞がないように、例えば、センサユニット61の上面に達しない位置まで充填すると良い。充填材50には、例えば、合成樹脂等を素材とするものが好適である。充填材50の素材としては、筐体2内に収容されたモジュール6への防水、防塵、基板保護ができるものであれば良く、例えば、ウレタン系樹脂、或いは、エポキシ系樹脂の合成樹脂が挙げられる。このような素材を充填材50に適用することにより、タイヤ10の回転時、特に高速回転したときであっても充填材50が電池100や基本基板60;80から受ける力に対して十分な耐性を維持できる。特に、エポキシ系の樹脂を用いることにより、防水、防塵、基板保護の保護に加え、さらに耐候性を向上させることができる。
【0048】
上述のように構成された機能部品1は、筐体2の外周に取り付けられたスカート4の内周面42aと、筐体2の外底面20dで形成されたカップ状の空間に接着剤を充填してタイヤ10の内周面10sに接着される。つまり、ひずみセンサ82は、接着剤に埋設した状態でタイヤ10の内周面10sに接着される。
【0049】
なお、上記実施形態では、基本基板60に拡張基板80を取り付けた例を示したが、タイヤ10の温度、圧力をモニタリングする場合には、
図8に示すように、基本基板60に電池100を直接取り付けても良い。
【0050】
図9は、拡張基板80の他の形態を示すブロック図である。上記実施形態では、拡張基板80にひずみセンサ82を取り付けるものとして説明したが、これに限定されず、拡張基板80に搭載される機能は、必要に応じて設定すれば良い。即ち、加速度センサであっても良く、また、
図9(a)に示すように、基本基板60に設けた圧力センサ64よりも高圧の範囲を測定する高圧用圧力センサ82であっても良く、また、鉱山などで使用される重荷重車用のタイヤのようにタイヤ気室内に水が注入される場合には、水圧用圧力センサ82等としても良い。なお、いずれの場合であっても、各センサに対応した制御処理装置90を拡張基板80に設け、センサにより検出した情報を、基本基板60の制御処理装置70が対応可能なフォーマットで基本基板60に出力するように構成することが好ましい。また、拡張基板80により検出した情報は、拡張基板80が備える制御処理装置90の記憶手段92に記憶させておくことで、基本基板60の記憶手段72への負担を軽減できる。これにより、記憶手段72の容量を小さく、即ち、記憶手段72としてのメモリを小型化することができる。
【0051】
また、上記実施形態では、基本基板60に温度センサ62及び圧力センサ64を設け、拡張基板80にひずみセンサ82を設けるものとして説明したが、基本基板60や拡張基板80に設けられるセンサの数量はこれに限定されず、適宜設定すれば良い。
【0052】
また、上記実施形態では、モジュール6を2枚の基板60;80により構成した場合について説明したが、これに限定されず、3枚以上であっても良い。この場合、各拡張基板には、拡張基板同士を接続する、上述の接続ピン等のような接続部を設けて電気的に接続すれば良い。
【0053】
以上説明したように、タイヤの基本となる状態を検出する検出手段と通信装置67を備える基本基板60を作成し、タイヤの種類、或いは、用途に応じて拡張基板80を作成することにより、通信装置67が設けられた基本基板60を共通の基板として利用し、機能部品として要求される性能に対応して基本基板60の機能を拡張する拡張基板80を開発、製作すれば良いので、開発、製作工数を削減することができる。
また、通信装置67が設けられていない拡張基板80をタイヤ半径方向外側、即ち、機能部品1におけるタイヤ10への取付部(スカート4)側に上下方向に配置することにより、通信装置67からタイヤ10の外部に情報を出力するときに電波を遮るものがないので、確実にタイヤ10の外部にタイヤ10の状態を示す情報を出力することができ、通信性能を向上させることができる。
また、基本基板60と拡張基板80とを上下方向に連段させて配置するように各基板を構成することで、各基板を小型化することができ、モジュール6のタイヤ10への取付面積を最小化することができる。
なお、基本基板の構成は、上記実施形態で説明したものに限定されず、例えば、タイヤの種類、或いは、機能部品1に求められる用途に応じて、基本となる基板の機能を抽出し、選択的に必要とされる機能については拡張基板に機能を移行すれば良い。
【符号の説明】
【0054】
1 機能部品、2 筐体、4 スカート、6 モジュール、10 タイヤ、
50 充填材、60 基本基板、62 温度センサ、64 圧力センサ、
67 通信装置、80 拡張基板、82 ひずみセンサ、100 電池、
S 収容空間。