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特許7109361生体分子の付着が低減された表面を有するポリマー基材、及びそのような基材の熱可塑性物品
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】生体分子の付着が低減された表面を有するポリマー基材、及びそのような基材の熱可塑性物品
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20220722BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20220722BHJP
   G01N 23/2273 20180101ALI20220722BHJP
【FI】
C08J7/00 306
C08J7/00 CER
C08J7/00 CEZ
G01N33/543 501J
G01N33/543 525W
G01N33/543 525U
G01N23/2273
【請求項の数】 29
(21)【出願番号】P 2018523497
(86)(22)【出願日】2016-06-15
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2018-12-20
(86)【国際出願番号】 US2016037674
(87)【国際公開番号】W WO2017087032
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-06-14
(31)【優先権主張番号】62/257,269
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/257,266
(32)【優先日】2015-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/320,246
(32)【優先日】2016-04-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/255,555
(32)【優先日】2015-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512082716
【氏名又は名称】エスアイオーツー・メディカル・プロダクツ・インコーポレイテッド
【住所又は居所原語表記】2250 Riley Street,Auburn,Alabama 36832 U.S.A
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】アーマッド・タハ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ティー・フェルツ
【審査官】加賀 直人
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-073040(JP,A)
【文献】特開平07-184989(JP,A)
【文献】国際公開第99/053988(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2011/0116992(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 7/00
G01N 33/543
G01N 23/2273
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触表面と内部とから本質的になるポリマー基材を形成する方法であって、前記接触表面が、
・1~30原子%、任意選択的に5~20原子%、任意選択的に5~10原子%のグラフト化された酸素原子、
・0~30原子%、任意選択的に0~20原子%、任意選択的に0~10原子%のグラフト化された窒素原子、及び
・70~99原子%、任意選択的に80~95原子%、任意選択的に90~95原子%の炭素原子
を含み、
前記原子%値がX線光電子分光(XPS)によって測定され、
前記接触表面が24時間後に少なくとも85%の生体分子回収率を有し、
前記方法が、炭素を含む接触表面を有するポリマー物品を準備すること;及び前記接触表面を、酸素を含む調整プラズマで処理、その後水蒸気を含む変換プラズマで処理することを含む前記ポリマー基材を形成する方法
【請求項2】
前記内部が、少なくとも80原子%、任意選択的に少なくとも85原子%、任意選択的に少なくとも90原子%、任意選択的に少なくとも95原子%、任意選択的に100原子%の炭素原子と、前記接触表面より多い原子%の炭素原子とを含む、請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記接触表面が、0.1~10原子%、任意選択的に0.1~5原子%、任意選択的に1~5原子%の、酸素がグラフトされている炭素原子を含む、請求項1又は2に記載の方法
【請求項4】
前記接触表面が、0.1~10原子%、任意選択的に0.1~5原子%の水素結合受容性基を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法
【請求項5】
X線光電子分光(XPS)によって測定されるときに、前記グラフト化された酸素原子又は窒素原子が、各場合に炭素に結合されている-N+-、-N-、=O、-O-、-O2、-O3、C=O、O-C=O、C-O-C、若しくは≡N、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせから選択される部位の形態で存在する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法
【請求項6】
前記接触表面が、熱可塑性材料を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法
【請求項7】
前記接触表面が、オレフィンポリマー、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、水素化ポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン(PCHE)、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、ポリ乳酸、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル(PAN)、アイオノマー樹脂、又は前記材料の任意の2つ以上の組み合わせ、複合材料、若しくはブレンド物を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法
【請求項8】
前記接触表面が、24時間後に少なくとも90%の生体分子回収率を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法
【請求項9】
前記生体分子回収率が、哺乳類血清アルブミン;ウシ血清アルブミン(BSA);フィブリノゲン(FBG);トランスフェリン(TFN);卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;インスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;及び前記タンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体の少なくとも1つに関して決定される、請求項8に記載の方法
【請求項10】
接触表面と内部とから本質的になるポリマー基材を形成する方法であって、前記接触表面が、
・1~30原子%、任意選択的に5~20原子%、任意選択的に5~10原子%のグラフト化された酸素原子、
・0~30原子%、任意選択的に0~20原子%、任意選択的に0~10原子%のグラフト化された窒素原子、及び
・70~99原子%、任意選択的に80~95原子%、任意選択的に90~95原子%の炭素原子
を含み、
前記原子%値がX線光電子分光(XPS)によって測定され、
以下:
・66,000ダルトンの原子質量を有する、12nMの濃度の凍結乾燥BSAの分散液に関し、前記生体分子回収率が30分後に少なくとも99%であること;
・340,000ダルトンの原子質量を有する、12nMの濃度の凍結乾燥FBGの分散液に関し、前記生体分子回収率が30分後に98%であること;
・80,000ダルトンの原子質量を有する、12nMの濃度の凍結乾燥TFNの分散液に関し、前記生体分子回収率が30分後に少なくとも90%であること;
・45,000ダルトンの原子質量を有する、12nMの濃度の凍結乾燥PrAの分散液に関し、前記生体分子回収率が30分後に少なくとも99%であること
のいずれか1つ以上が当てはまり、
前記方法が、炭素を含む接触表面を有するポリマー物品を準備すること;及び前記接触表面を、酸素を含む調整プラズマで処理、その後水蒸気を含む変換プラズマで処理することを含む前記ポリマー基材を形成する方法
【請求項11】
前記接触表面が容器の内腔表面である、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法
【請求項12】
前記接触表面が実験器具製品の流体接触表面である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法
【請求項13】
前記接触表面が、マイクロプレート、遠沈菅、ピペットチップ、ウェルプレート、マイクロウェルプレート、ELISAプレート、マイクロタイタープレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、バイアル、瓶、広口瓶、シリンジ、カートリッジ、ブリスター包装、アンプル、真空採血管、試料管、遠沈管、又はクロマトグラフィーバイアルの流体接触表面である、請求項12に記載の方法
【請求項14】
前記接触表面が水性タンパク質と接触する、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法
【請求項15】
前記接触表面が、50°~70°、任意選択的に55°~65°の蒸留水との接触角を有する、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法
【請求項16】
前記接触表面が、5キロボルト毎cm(5kV/cm)未満、任意選択的に3kV/cm未満、任意選択的に2kV/cm未満、任意選択的に1kV/cm未満の静電荷帯電を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法
【請求項17】
前記接触表面が、1つ以上の非重合性化合物の調整プラズマ、及び1つ以上の非重合性化合物の変換プラズマで処理されて前記表面を形成する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法
【請求項18】
前記調整プラズマを形成するために導入される前記1つ以上の非重合性化合物がO2を含み、前記変換プラズマを形成するために導入される前記1つ以上の非重合性化合物がH2Oを含む、請求項17に記載の方法
【請求項19】
前記変換プラズマが前記接触表面からの遠隔地点で生成され、前記変換プラズマの最も明るい地点での放射エネルギー密度に対する前記接触表面での放射エネルギー密度の割合が0.5未満、任意選択的に0.25未満、任意選択的に実質的に0、任意選択的に0である、請求項1~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記生体分子回収率がウシ血清アルブミン(BSA)、プロテインA(PrA)、又はプロテインG(PrG)のうちの少なくとも1つについて決定されたものである、請求項1に記載の方法
【請求項21】
前記接触表面が3ヶ月後に少なくとも85%の生体分子回収率を有する、請求項20に記載の方法
【請求項22】
前記生体分子回収率が1.5nM~6nMの間の濃度で決定されたものである、請求項20に記載の方法
【請求項23】
前記生体分子回収率が1.5nMの濃度のウシ血清アルブミンについて決定されたものである、請求項1に記載の方法
【請求項24】
前記生体分子回収率が1.5nMの濃度のプロテインAについて決定されたものである、請求項1に記載の方法
【請求項25】
前記生体分子回収率が1.5nMの濃度のプロテインGについて決定されたものである、請求項1に記載の方法
【請求項26】
前記生体分子回収率が96ウェルマイクロプレート上で決定されたものである、請求項23に記載の方法
【請求項27】
前記生体分子回収率が96ウェルマイクロプレート上で決定されたものである、請求項24に記載の方法
【請求項28】
前記生体分子回収率が96ウェルマイクロプレート上で決定されたものである、請求項25に記載の方法
【請求項29】
前記生体分子回収率がウシ血清アルブミン(BSA)、プロテインA(PrA)、又はプロテインG(PrG)のうちの少なくとも1つについて決定されたものである、請求項10に記載の方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、2016年4月8日に出願された米国仮特許出願第62/320,246号明細書の優先権を主張する。この出願は、開示の継続性を与えるために、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本技術は、概して、表面への生体分子の付着が低減されたプラスチック基材の表面又は表面修飾(本開示では接触表面という場合がある)に関する。より詳しくは、本技術は、基材表面へのタンパク質の付着が低減された、例えば医療器具又は実験器具製品などのプラスチック基材に関する。
【背景技術】
【0003】
血液、生体分子、及び血液検体の試験では、これらの生体物質と共に使用されるプラスチック器具への生体分子の吸着又は結合を最小限にすることが望まれる。プラスチック製のマイクロウェルプレート、クロマトグラフィーバイアル、及び他の容器、並びに試料の調製及び移動に使用されるピペット(「ピペット(pipet)」と綴られる場合もある)、ピペットチップ、遠沈管、顕微鏡用スライド、及び他の種類の実験器具(ラボウェアとも呼ばれる)は、通常、疎水性表面を有し、タンパク質、DNA、及びRNAなどの生体分子を容易に吸着する。これら及び他の種類のポリマープラスチック製実験器具の構成要素の表面は、生体分子試料の結合を生じる場合がある。そのため、様々な生体分子の付着を低減するための、生体物質と接触するプラスチック製実験器具及び他の物品の表面を得ることが望まれる。
【0004】
本発明は、化学的、生化学的、医学的、及び/又は生物的な利用を実施するための、コーティングされた容器の製造の技術分野にも関する。これらの方法及びシステムは、医学診断、医療、食品及び飲料の試験、食品及び飲料の包装、環境モニタリング、製造品質工学、創薬、及び科学研究を含む様々な用途において必須である。
【0005】
インビトロの実験室及び分析試験は、一般的に試験試料を含み、これを位置付ける専用の実験用ガラス器具及びプラスチック器具上で行われる。慣例的には、ガラス器具が使用され且つ使用され続けているが、ガラス器具は割れ易く、非常に高価であり、微粒子の問題を有する傾向があり、重金属溶出物を生じ、また、タンパク質及び他の生体物質の凝集を生じさせる場合がある。
【0006】
これらの問題のいくつかは、ガラス器具を射出成形プラスチック器具で置き換えることによって対処することができる。特に、ガラス器具の多くの問題点のため、医薬、医学研究、創薬、及び科学研究の領域などの生体物質の領域ではプラスチック器具が好ましい。プラスチック器具はガラス器具の問題のいくつかに対応するものの、プラスチック器具もいくつかの問題を生じさせる。これは、生体分子のプラスチック器具への非特異的な吸着を生じさせる場合があるだけでなく、生体分子のプラスチック器具への非特異的な結合も生じさせる場合がある。プラスチック器具も浸出性物質を含み、これはプラスチック器具の使用を妨げるか、又はプラスチック器具を多くの種類のインビトロの実験室及び分析試験に望ましくないものとする。
【0007】
また、ピペット、ピペットチップ、及び遠沈管は、試料の調製及び移動並びに試薬溶液の移動のために使用される別の種類の実験器具であるが、これも同様にガラス器具又はプラスチック器具の場合がある。血液、生体分子、及び血液検体の試験では、プラスチック製品への生体分子の吸着及び非特異的な生体分子の結合を最小限にすることが望まれる。更に、インビトロ及び分析試験において、プラスチック器具への生体分子の吸着及び生体分子の非特異的な結合を最小限にすることが望まれる。プラスチック製のマイクロウェルプレート、バイアル、及び他の容器、並びに試料を調製及び移動するために使用される疎水性表面を有するピペット、ピペットチップ、遠沈管、及び他の種類の実験器具は、タンパク質、DNA、及びRNAなどの生体分子を容易に吸着する。これら及び他の種類のポリマープラスチック製実験器具の構成要素の表面は、試料との非特異的な結合を生じる場合がある。これら及び他の種類のガラス製実験器具の構成要素の表面は、微粒子の問題を生じさせる場合があり、重金属の溶出性物質を有しており、また、タンパク質及び他の生体分子の凝集を生じさせる場合がある。ポリエチレングリコール(PEG)及び双性イオンポリマー系コーティングなどのこれまでの親水性コーティングは、優れた生体分子吸着性能を付与することが見出されてきた。これらのポリマー系コーティングの多くは物品表面に共有結合せず、流体である内容物中に移動(溶解、分散)して分析試験の障害となる及び/又はプラスチック表面を露出させてタンパク質を表面吸着させる可能性を有しており、そのため、これらの利用が限定される。物品表面に共有結合するポリマー系コーティングは、流体である内容物中に移動(溶解、分散)する可能性を有さず、分析試験を妨げるこの原因を取り除くであろう。更に、共有結合するポリマー系コーティングは、ポリマー系表面コーティングの移動を防止し、それにより物品表面の望ましくない露出を防止するであろう。
【0008】
そのため、マイクロウェルプレート、バイアル、他の容器、ピペット、ピペットチップ、遠沈管などのプラスチック実験器具の表面のための、プラスチック表面への生体分子の吸着を阻害する、共有結合するポリマー系コーティングが求められている。同様に、マイクロウェルプレート、バイアル、他の容器、ピペット、ピペットチップ、遠沈管などのプラスチック実験器具の表面のための、ポリマー系表面コーティングの移動を防止することでプラスチック表面の望ましくない露出を防止する、共有結合するポリマー系コーティングが求められている。
【0009】
例えば、薬剤などの規制された製品のための包装を製造する上で考慮すべき重要なことは、包装内に入れられる医薬製品が汚染物質を実質的に含まないことを確実にすることである。そのため、医薬品包装の製造プロセス及び医薬品包装への製品の充填プロセスは、典型的にはクリーンルーム条件で行われる。
【0010】
潜在的な汚染の1つの原因は微粒子である。微粒子による汚染は様々な原因に由来する場合があり、これは一般的には2つのカテゴリー:(1)内因性の汚染物質;及び(2)外因性の汚染物質に分けることができる。内因性の汚染物質は、例えばレーザーエッチング残渣、ろ材、クリーンルームのユニフォーム繊維、フィルターハウジング由来のゴム及びプラスチック粒子、ニードルシールドなどの製品及びプロセスに関連する微粒子である。外因性の汚染物質は、例えば毛髪、皮膚細胞、花粉、衣服の繊維、塩、及び土などの製品又はプロセスとは無関係の発生源由来である。
【0011】
ろ過システム及び適正製造基準により、容器が製造又は充填される領域の表面粒子数及び浮遊粒子数が抑制できるものの、これらのことは必ずしも容器表面上の粒子数を許容可能なレベルまで低減するとは限らない。ある具体的な課題は、帯電した粒子を引き付ける傾向がある、製造されたプラスチック容器の静電荷によってもたらされる。浮遊粒子/表面粒子の数が比較的低い場合であっても、強い静電荷を有するプラスチック容器が粒子状汚染物質を引き付けて、これらを容器に付着させる場合がある。
【0012】
この問題に対して試みられた解決策としては、エトキシル化アルキルアミン、エトキシル化アルキルアミド、ステアリン酸グリセロール、脂肪酸エステル、ポリオールのエステル又はエーテル、及びアルキルスルホン酸ナトリウムなどのポリマー用の帯電防止剤の使用が挙げられる。ポリマー中でのそのような添加剤の量は、典型的には0.1重量%~3重量%で様々である。これらの添加剤は、これらが取り込まれるプラスチック物品の静電荷の低減にある程度有効であるものの、添加剤はポリマーマトリックス中で可動性であり、表面にブルームする傾向がある。表面にブルームする添加剤は、そのような添加剤を含むポリマーで作られた容器の表面及び内容物(特に液体の内容物)を汚染する場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
そのため、それ自体が汚染物質の原因となり得る典型的な帯電防止剤を使用することなしに、これらの静電荷を低減するために処理されたプラスチック物品が必要とされている。同様に、典型的な帯電防止剤を使用することなしにこれらの静電荷を低減するための、プラスチック物品の処理方法が必要とされている。更に、これらのコーティングの多くは、反応物及び溶媒を含む流体相の化学薬品を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明のある態様は、接触表面と内部とから本質的になるポリマー基材である。接触表面は、1~30の原子状の酸素原子と、0~30原子%の窒素原子と、70~99原子%の炭素原子とを含む。原子%の値はX線光電子分光(XPS)によって測定される。
【0015】
本発明のもう1つの態様は、炭素を含む接触表面を有するポリマー物品を準備すること、及び接触表面の処理することによる、先行する請求項のいずれかに記載の基材を形成する方法である。接触表面は、水蒸気と酸素とを含む変換プラズマを用いて処理される。処理は、変換プラズマを用いて接触表面を処理する前の接触表面の生体分子回収率よりも大きい生体分子回収率を有する変換された表面を形成するのに有効な条件下で行われる。生体分子回収率は、変換された表面と接触する、0.01nM~1.4nM、任意選択的に0.05nM~1.4nM、任意選択的に0.1nM~1.4nMの濃度を有する水性タンパク質分散液について決定される。
【0016】
本発明の別の態様は、流体媒体中へのポリマーの溶解/分散の懸念なしに生体分子の表面吸着を著しく抑制し、生体分子の表面との非特異的な結合を著しく抑制することが可能である、共有結合しているポリマー双性イオンの単層又はエポキシ変性双性イオン含有コポリマーの単層を付与することにより、先行技術のコーティング及びコーティングされた容器の欠点を克服する。実施形態(i)は、表面に結合しているヒドロキシル基と、双性イオン官能基を含むシロキサン官能性ポリマーとの反応を提供する。実施形態(ii)は、確実に表面での共有結合を得るために、ヒドロキシル化プラスチック又はSiOxでコーティングされているガラス表面と、エポキシ変性双性イオン含有コポリマーとの反応を提供する。
【0017】
本発明は、ヒドロキシル化プラスチック又はSiOxでコーティングされているガラス表面と、実施形態(i)では縮合(水又は揮発性アルコールの喪失(例えば、表面SiOH+ポリマー(双性イオン-シロキサン-Si(OR)x)→表面SiO-Si(ポリマー(双性イオン-シロキサン)))+ROHによって生じる双性イオン-シロキサンコポリマーとの間、又は実施形態(ii)ではエポキシ変性双性イオン含有コポリマー(ヒドロキシル化プラスチック又はSiOxでコーティングされているガラス表面のシリルアミンカップリング剤を用いた官能化、及びそれに続くエポキシ変性双性イオン含有コポリマーの単層を形成するための双性イオン性エポキシコポリマーによる追加的な官能化によって生じる)との間の共有結合の形成を利用する。
【0018】
本発明は、概して、例えば分析化学、医学研究、創薬、及び科学研究の目的のためなどに使用される実験器具及び実験容器(例えば、クロマトグラフィーバイアル、マイクロプレート、ピペット、ピペットチップ、遠沈試験管等)、又はビーカー、丸底フラスコ、エルレンマイヤーフラスコ、メスシリンダー等など、物質が入っており生体分子と接触する他の容器及び/又は表面などの容器の表面をコーティングするための方法に関する。生体分子としては、例えば、単純な生体分子(例えば、ヌクレオチド、アミノ酸、単糖、及び脂肪酸)、核酸分子、ポリヌクレオチド、ポリペプチド、多糖、脂質、ステロイド、又はこれらの複合体(例えば、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA-タンパク質複合体)、抗体、受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、抗体融合タンパク質、並びに細胞、ウイルス、及びバクテリアを挙げることができる。本発明の好ましい用途は、例えば非経口容器であるが、本明細書に開示の方法によって処理される経口容器も範囲内である。
【0019】
より詳しくは、本発明は、例えば共有結合している(i)ポリマー双性イオンの単層又は(ii)エポキシ変性双性イオン含有コポリマーの単層に関し、これらはタンパク質などの非特異的な生体分子の実験室環境での吸着、及び/又は非特異的な結合に対する優れた耐性を示すことが知られており、双性イオンの堆積は多段階プロセスを使用して行われてきた。ここで、低コストと製品性能とを両立する商業的に実行可能なプロセスは、共有結合している(i)ポリマー双性イオンの単層コーティング又は(ii)エポキシ変性双性イオン含有コポリマーの単層の、タンパク質などの特有の生体分子に対する耐吸着特性の概念に基づいて開発された。これらの製品の共有結合している(i)ポリマー双性イオンの単層コーティング又は(ii)エポキシ変性双性イオン含有コポリマーの単層コーティングは、例えばタンパク質又は他のペプチド又はポリペプチドの試料などの試料を含む生体分子との接触にこれらを適応させるためのこれらの試料接触特性を改善することで、例えば非結合特性又は低結合特性などを有する表面を与える。例えば、本発明は、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に抵抗力を有する表面コーティングを得るための、共有結合している(i)ポリマー双性イオンの単層コーティング又は(ii)エポキシ変性双性イオン含有コポリマーの単層コーティングでのこれらの製品の表面のコーティング方法を意図している。これらの共有結合している(i)ポリマー双性イオンの単層コーティング又は(ii)エポキシ変性双性イオン含有コポリマーの単層コーティングは、生体分子を含む試料と接触する表面のためのコーティングとして使用される場合に好都合な特性を有する。
【0020】
更に、ある態様によれば、本発明は、プラスチック容器の静電荷を低減する方法である。本発明は、(i)表面に結合しているヒドロキシル基又は(ii)ヒドロキシル化プラスチック又はSiOxでコーティングされているガラス表面と、双性イオン官能基を含むシロキサン官能性ポリマーとの反応を利用することで、流体媒体中へのポリマーの溶解/分散の懸念なしに生体分子の吸着を著しく抑制し、非特異的な生体分子の表面への結合を著しく抑制することが可能である、共有結合している(i)ポリマー双性イオンの単層コーティング又は(ii)エポキシ変性双性イオン含有コポリマーの単層を得る。コーティングは、コーティングされていないこと以外は容器が本質的に同一である参照容器と比較して、容器の静電荷を低減する。
【0021】
本発明は、逐次的な反応を利用する。
【0022】
実施形態(i)では、これらの逐次反応は、(1)ヒドロキシ修飾された表面又はSiOxプラズマで修飾された表面を利用すること、次に(2)縮合(水又は揮発性アルコールの喪失(例えば、表面SiOH+ポリマー(双性イオン-シロキサン-Si(OR)x)→表面SiO-Si(ポリマー(双性イオン-シロキサン)))+ROHによって生じる双性イオン-シロキサンコポリマーを形成することを含む。ある実施形態では、ヒドロキシル官能性表面は、(A)例えばC-OH部位を形成する炭素系ポリマー表面(AC)上への、又はSi-OH部位を形成するケイ素系(SiO2又はシリコーン)表面(ASi)上へのO2/プラズマ反応により形成することができる。更に、ヒドロキシル官能性表面は、(B)例えばポリビニルアルコール(PVOH)などのポリマー又はケイ素系ポリマー表面(SiO2又はシリコーン)など、新生表面が元々有しているものであってもよい。そのため、O2/プラズマによる表面作製方法は、表面上に元々備わっているヒドロキシル部位が存在する場合には任意選択的であってもよい。
【0023】
実施形態(ii)では、これらの逐次反応は、(1)ヒドロキシ修飾表面又はSiOxプラズマ修飾表面を形成すること、次に(2)ヒドロキシ修飾表面又はSiOxプラズマ修飾表面をシリルアミンカップリング剤と反応させることによりアミン修飾表面を形成すること、次に(3)アミン修飾表面とエポキシ変性双性イオン含有コポリマーとの縮合により連結されたアミンを形成することを含む。
【0024】
コーティングは、ポリマー状と親水性(イオン性部位へ水を結合)との両方であってもよく、プラスチック表面への生体分子の吸着及び非特異的な生体分子の結合に対する、耐久性のある立体的な及び結合水のバリアを与える。
【0025】
双性イオン層は、予め形成されるポリマー双性イオンコーティングよりも薄い場合がある一方、蒸発による溶剤コーティング法は、(a)光学的に観察可能な不均一性、(b)無駄なコーティング(必要とされる/望まれるよりも厚いコーティング)となる不均一なコーティングを生じる場合があり、本発明の材料は、生体分子の吸着及び/又は結合の優れた抑制をもたらすはずである。
【0026】
関連する可能性がある特許の非網羅的なリストとしては、米国特許第6,068,884号明細書、米国特許第4,844,986号明細書、米国特許出願公開第20060046006号明細書、米国特許出願公開第20040267194号明細書、米国特許出願公開第20140004022号明細書、及び米国特許出願公開第20130209766号明細書が挙げられる。
【0027】
本明細書で引用する全ての参照文献は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0028】
本発明は、生体分子の低結合性若しくは非結合性及び/又は生体分子の低吸着性若しくは非吸着性を示す、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を得るための方法を提供する。
【0029】
方法の実施形態(i)は、(a)反応チャンバー内に基材を準備する工程;(b)反応チャンバー内を真空引きする工程;(c)O2を含有するガスを基材表面近傍に供給する工程;(d)ガスからプラズマを発生させることでヒドロキシル官能性の基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱する工程;(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む、工程;(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;(g)任意選択的に待機する工程;(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程を含む。
【0030】
方法の実施形態(ii)は、(a)反応チャンバー内に基材を準備する工程;(b)反応チャンバー内を真空引きする工程;(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給する工程;(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱する工程;(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得る工程;(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、工程;(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;(h)任意選択的に待機する工程;(i)コポリマーを除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程を含む。
【0031】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、生体分子の低結合性若しくは非結合性及び/又は生体分子の低吸着性若しくは非吸着性を示す、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を得るための方法を提供する。
【0032】
実施形態(i)は、(a)反応チャンバー内に基材を準備する工程;(b)反応チャンバー内を真空引きする工程;(c)有機ケイ素前駆体を含有し、任意選択的にO2を含有するガスを基材表面近傍に供給する工程;(d)ガスからプラズマを発生させることで結果として形成されたヒドロキシル官能性の基材表面を形成する工程;(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む、工程;(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;(g)任意選択的に待機する工程;(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程を含む。
【0033】
実施形態(ii)は、(a)SiOxでコーティングされているガラス表面である基材を反応チャンバー内に準備する工程;(b)反応チャンバー内を真空引きする工程;(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給する工程;(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱する工程;(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得る工程;(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、工程;(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;(h)コポリマー溶液を除去する工程;(i)任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させる工程;(j)任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程を含む。
【0034】
実施形態(i)は、生体分子の低結合性若しくは非結合性及び/又は生体分子の低吸着性若しくは非吸着性を示す、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を得るための方法を提供し、方法は、(a)ヒドロキシル官能性表面を有する基材を準備する工程;(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む、工程;(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;(d)任意選択的に待機する工程;(e)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程を含む。
【0035】
実施形態(i)は、双性イオン性コポリマーを、作製された基材表面に共有結合させる方法を提供する。
【0036】
実施形態(ii)は、少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤が、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、M-アミノフェニルトリメトキシシラン、P-アミノフェニルトリメトキシシラン、O-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、3-(M-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-3-[(アミノ(ポリプロピレンオキシ)]、アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチルメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、N-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、N-アミノエチル-アザ-2,2,4-トリメチル-シラシクロペンタン、N-(3-アミノプロピルジメチルシラ)アザ-2,2-ジメチル-2-シラシクロペンタン、N-N-ブチル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1,6-ジアザ-2-シラシクロ-オクタン、N-メチル-アザ-2,2,4-トリメチルシラ-シクロペンタン、1-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル))-1-アザ-2,2,4-トリメチル-2-シラシクロペンタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0037】
実施形態(ii)は、少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、□-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0038】
実施形態(ii)は、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルブト-2-エノエート、(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルシンナメート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンブタノエート、1-(オキシラン-2-イル)プロピルアクリレート、1-(オキシラン-2-イル)エチルメタクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル3-メチル-2-メチレンブタノエート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンペンタノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、2-(オキシラン-2-イル)プロパン-2-イルアクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンヘキサノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、及び(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される方法を提供する。
【0039】
実施形態(ii)は、エポキシ変性双性イオン性コポリマーを、アミンで修飾された基材に共有結合させる方法を提供する。
【0040】
実施形態(i)及び(ii)のいずれにおいても、溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0041】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングが、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する方法を提供する。
【0042】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、生体分子がヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される、方法を提供する。
【0043】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、基材が容器の表面である方法を提供する。
【0044】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、容器が、マイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;キュベット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;384ウェルプレート;1536ウェルプレート;丸底フラスコ;及びエルレンマイヤーフラスコからなる群から選択される方法を提供する。
【0045】
実施形態(i)は、1つの代替形態として、(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;(b)反応チャンバー内を真空引きすること;(c)有機ケイ素前駆体を含有し、任意選択的にO2を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;(d)ガスからプラズマを発生させることでヒドロキシル官能性の基材表面を形成すること;(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と少なくとも1つの双性イオン部位を含む、供給すること;(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(g)任意選択的に待機すること;(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0046】
実施形態(i)は、もう1つの代替形態として、(a)ヒドロキシル官能性表面を有する基材を準備すること;(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(d)任意選択的に待機すること;(e)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を更に提供する。
【0047】
実施形態(ii)は、(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;(b)反応チャンバー内を真空引きすること;(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得ること;(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給することであって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、供給すること;(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0048】
実施形態(i)は、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングが、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。生体分子は、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される。
【0049】
実施形態(ii)は、(a)SiOxでコーティングされているガラス表面である基材を反応チャンバー内に準備すること;(b)反応チャンバー内を真空引きすること;(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得ること;(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給することであって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、供給すること;(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(h)任意選択的に待機すること;(i)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0050】
実施形態(ii)において、少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤は、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、M-アミノフェニルトリメトキシシラン、P-アミノフェニルトリメトキシシラン、O-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、3-(M-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-3-[(アミノ(ポリプロピレンオキシ)]、アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチルメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、N-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、N-アミノエチル-アザ-2,2,4-トリメチル-シラシクロペンタン、N-(3-アミノプロピルジメチルシラ)アザ-2,2-ジメチル-2-シラシクロペンタン、N-N-ブチル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1,6-ジアザ-2-シラシクロ-オクタン、N-メチル-アザ-2,2,4-トリメチルシラ-シクロペンタン、1-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル))-1-アザ-2,2,4-トリメチル-2-シラシクロペンタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0051】
実施形態(ii)は、少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、b-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0052】
実施形態(i)は、(a)ヒドロキシル官能性表面を有する基材を準備すること;(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(d)任意選択的に待機すること;(e)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0053】
実施形態(i)は、作製された基材表面に双性イオン性コポリマーが共有結合する、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0054】
実施形態(ii)の少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルブト-2-エノエート、(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルシンナメート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンブタノエート、1-(オキシラン-2-イル)プロピルアクリレート、1-(オキシラン-2-イル)エチルメタクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル3-メチル-2-メチレンブタノエート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンペンタノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、2-(オキシラン-2-イル)プロパン-2-イルアクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンヘキサノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、及び(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0055】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングが、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0056】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、生体分子がヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0057】
本発明は、基材が容器の表面である、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0058】
本発明は、容器がマイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;キュベット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;及び384ウェルプレートからなる群から選択される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を提供する。
【0059】
1つの代替形態における実施形態(i)は、(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;(b)反応チャンバー内を真空引きすること;(c)O2を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;(d)ガスからプラズマを発生させることでヒドロキシル官能性の基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(g)任意選択的に待機すること;(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する容器を提供する。
【0060】
もう1つの代替形態における実施形態(i)は、(a)ヒドロキシル官能性表面基材を準備すること;(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(c)任意選択的に待機すること;(d)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する容器を提供する。
【0061】
実施形態(ii)は、(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;(b)反応チャンバー内を真空引きすること;(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得ること;(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給することであって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、供給すること;(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(h)任意選択的に待機すること;(i)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する容器を提供する。
【0062】
実施形態(i)は、(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;(b)反応チャンバー内を真空引きすること;(c)有機ケイ素前駆体と任意選択的なO2とを含有するガスを基材表面近傍に供給すること;(d)ガスからプラズマを発生させることで基材表面上にヒドロキシル官能性の表面を形成すること;(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(g)任意選択的に待機すること;(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する容器を提供する。
【0063】
実施形態(ii)は、(a)SiOxでコーティングされているガラス表面である基材を反応チャンバー内に準備すること;(b)反応チャンバー内を真空引きすること;(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得ること;(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給することであって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、供給すること;(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(h)任意選択的に待機すること;(i)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する容器を提供する。
【0064】
実施形態(i)は、(a)ヒドロキシル官能性表面基材を準備すること;(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(c)任意選択的に待機すること;(d)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する容器を提供する。
【0065】
実施形態(i)は、その代わりに、(a)ヒドロキシル官能性表面基材を準備すること;(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;(c)任意選択的に待機すること;(d)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成することによって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する容器を提供する。
【0066】
本発明は、作製された基材表面に双性イオン性コポリマーが共有結合している、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を提供する。
【0067】
実施形態(ii)は、少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤が、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、M-アミノフェニルトリメトキシシラン、P-アミノフェニルトリメトキシシラン、O-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、3-(M-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-3-[(アミノ(ポリプロピレンオキシ)]、アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチルメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、N-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、N-アミノエチル-アザ-2,2,4-トリメチル-シラシクロペンタン、N-(3-アミノプロピルジメチルシラ)アザ-2,2-ジメチル-2-シラシクロペンタン、N-N-ブチル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1,6-ジアザ-2-シラシクロ-オクタン、N-メチル-アザ-2,2,4-トリメチルシラ-シクロペンタン、1-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル))-1-アザ-2,2,4-トリメチル-2-シラシクロペンタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を提供する。
【0068】
実施形態(ii)は、少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、b-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を提供する。
【0069】
実施形態(ii)は、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルブト-2-エノエート、(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルシンナメート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンブタノエート、1-(オキシラン-2-イル)プロピルアクリレート、1-(オキシラン-2-イル)エチルメタクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル3-メチル-2-メチレンブタノエート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンペンタノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、2-(オキシラン-2-イル)プロパン-2-イルアクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンヘキサノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、及び(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を提供する。
【0070】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングが、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を提供する。
【0071】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、生体分子がヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を提供する。
【0072】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、容器が、マイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;キュベット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;及び384ウェルプレート;1536ウェルプレート;丸底フラスコ;及びエルレンマイヤーフラスコからなる群から選択される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を提供する。
【0073】
実施形態(i)は、双性イオン性コポリマーが、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、o-(メタクリルオキシエチル)-n-(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、n-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチル-ジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチル-ジエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチル-ジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのシロキサン部位と;2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの双性イオン部位とを含むことを提供する。
【0074】
生体分子の低結合性若しくは非結合性及び/又は生体分子の低吸着性若しくは非吸着性を示す、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を付与するための実施形態(i)による方法が述べられ、方法は、
(a)反応チャンバー内に基材を準備する工程;
(b)反応チャンバー内を真空引きする工程;
(c)O2を含有するガスを基材表面近傍に供給する工程;
(d)ガスからプラズマを発生させることでヒドロキシル官能性の基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱する工程;
(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む、工程;
(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;
(g)任意選択的に待機する工程;
(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程
を含む。
【0075】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)反応チャンバー内に基材を準備する工程;
(b)反応チャンバー内を真空引きする工程;
(c)有機ケイ素前駆体と任意選択的なO2とを含有するガスを基材表面近傍に供給する工程;
(d)ガスからプラズマを発生させることでヒドロキシル官能性の基材表面を形成する工程;
(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む、工程;
(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;
(g)任意選択的に待機する工程;
(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程
を含む方法である。
【0076】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)ヒドロキシル官能性表面を有する基材を準備する工程;
(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む、工程;
(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;
(d)任意選択的に待機する工程;
(e)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程
を含む方法である。
【0077】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)ヒドロキシル官能性表面を有する基材を準備する工程;
(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む、工程;
(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;
(d)任意選択的に待機する工程;
(e)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程
を含む方法である。
【0078】
実施形態(i)において、任意選択的に、双性イオン性コポリマーは、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、o-(メタクリルオキシエチル)-n-(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、n-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチル-ジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチル-ジエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチル-ジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのシロキサン部位と;2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、β-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの双性イオン部位とを含む。
【0079】
実施形態(i)において、任意選択的に、双性イオン性コポリマーは、作製された基材表面に共有結合する。
【0080】
実施形態(i)において、任意選択的に、溶媒は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0081】
実施形態(i)において、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面は、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する。
【0082】
実施形態(i)において、任意選択的に、生体分子は、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される。
【0083】
実施形態(i)において、任意選択的に、基材は容器の表面である。
【0084】
実施形態(i)において、任意選択的に、容器は、マイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;キュベット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;384ウェルプレート;1536ウェルプレート;丸底フラスコ;及びエルレンマイヤーフラスコからなる群から選択される。
【0085】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;
(b)反応チャンバー内を真空引きすること;
(c)O2を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;
(d)ガスからプラズマを発生させることでヒドロキシル官能性の基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;
(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む、供給すること;
(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(g)任意選択的に待機すること;
(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成すること
によって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材である。
【0086】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;
(b)反応チャンバー内を真空引きすること;
(c)有機ケイ素前駆体と任意選択的なO2とを含有するガスを基材表面近傍に供給すること;
(d)ガスからプラズマを発生させることでヒドロキシル官能性の基材表面を形成すること;
(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と、少なくとも1つの双性イオン部位とを含む、供給すること;
(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(g)任意選択的に待機すること;
(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成すること
によって製造される基材である。
【0087】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)ヒドロキシル官能性表面を有する基材を準備すること;
(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;
(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(d)任意選択的に待機すること;
(e)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成すること
によって製造される基材である。
【0088】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)ヒドロキシル官能性表面を有する基材を準備すること;
(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;
(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(d)任意選択的に待機すること;
(e)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成すること
によって製造される基材である。
【0089】
実施形態(i)において、任意選択的に、双性イオン性コポリマーは、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、o-(メタクリルオキシエチル)-n-(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、n-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチル-ジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチル-ジエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチル-ジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのシロキサン部位と;2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、β-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの双性イオン部位とを含む。
【0090】
実施形態(i)において、任意選択的に、双性イオン性コポリマーは、作製された基材表面に共有結合する。
【0091】
実施形態(i)において、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングは、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する。
【0092】
実施形態(i)において、任意選択的に、生体分子は、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される。
【0093】
実施形態(i)において、任意選択的に、基材は容器の表面である。
【0094】
実施形態(i)において、任意選択的に、容器は、マイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;キュベット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;及び384ウェルプレートからなる群から選択される。
【0095】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;
(b)反応チャンバー内を真空引きすること;
(c)O2を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;
(d)ガスからプラズマを発生させることでヒドロキシル官能性の基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;
(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;
(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(g)任意選択的に待機すること;
(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成すること
によって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する容器である。
【0096】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;
(b)反応チャンバー内を真空引きすること;
(c)有機ケイ素前駆体と任意選択的なO2とを含有するガスを基材表面近傍に供給すること;
(d)ガスからプラズマを発生させることで基材表面上にヒドロキシル官能性の表面を形成すること;
(e)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;
(f)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(g)任意選択的に待機すること;
(h)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成すること
によって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングである。
【0097】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)ヒドロキシル官能性表面基材を準備すること;
(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;
(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(c)任意選択的に待機すること;
(d)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成すること
によって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングである。
【0098】
実施形態(i)において、任意選択的に、
(a)ヒドロキシル官能性表面基材を準備すること;
(b)溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含有するコポリマー溶液を供給することであって、少なくとも1つの双性イオン性コポリマーが少なくとも1つのシロキサン部位と少なくとも1つの双性イオン部位とを含む2つ以上のモノマーを含む、供給すること;
(c)ヒドロキシル官能性表面を少なくとも1つの双性イオン性コポリマーと反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(c)任意選択的に待機すること;
(d)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成すること
によって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングである。
【0099】
実施形態(i)において、任意選択的に、双性イオン性コポリマーは、(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、n-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、o-(メタクリルオキシエチル)-n-(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン、n-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン、(3-アクリルオキシプロピル)メチル-ジメトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチル-ジエトキシシラン、(メタクリルオキシメチル)メチル-ジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン、メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシラン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのシロキサン部位と;2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、β-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの双性イオン部位とを含む。
【0100】
実施形態(i)において、任意選択的に、双性イオン性コポリマーは、作製された基材表面に共有結合する。
【0101】
実施形態(i)において、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングは、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する。
【0102】
実施形態(i)において、任意選択的に、生体分子は、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される。
【0103】
実施形態(i)において、任意選択的に、容器は、マイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;キュベット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;及び384ウェルプレート;1536ウェルプレート;丸底フラスコ;及びエルレンマイヤーフラスコからなる群から選択される。
【0104】
実施形態(ii)
(a)反応チャンバー内に基材を準備する工程;
(b)反応チャンバー内を真空引きする工程;
(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給する工程;
(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱する工程;
(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得る工程;
(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、工程;
(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;
(h)任意選択的に待機する工程;
(i)コポリマーを除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程
を含む、生体分子の低結合性若しくは非結合性及び/又は生体分子の低吸着性若しくは非吸着性を示す、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を付与するための実施形態(ii)による方法が述べられる。
【0105】
(a)SiOxでコーティングされているガラス表面である基材を反応チャンバー内に準備する工程;
(b)反応チャンバー内を真空引きする工程;
(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給する工程;
(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱する工程;
(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得る工程;
(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給する工程であって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、工程;
(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱する工程;
(h)任意選択的に待機する工程;
(i)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成する工程
を含む、実施形態(ii)の方法である。
【0106】
少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤が、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、M-アミノフェニルトリメトキシシラン、P-アミノフェニルトリメトキシシラン、O-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、3-(M-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-3-[(アミノ(ポリプロピレンオキシ)]、アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチルメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、N-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、N-アミノエチル-アザ-2,2,4-トリメチル-シラシクロペンタン、N-(3-アミノプロピルジメチルシラ)アザ-2,2-ジメチル-2-シラシクロペンタン、N-N-ブチル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1,6-ジアザ-2-シラシクロ-オクタン、N-メチル-アザ-2,2,4-トリメチルシラ-シクロペンタン、1-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル))-1-アザ-2,2,4-トリメチル-2-シラシクロペンタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0107】
少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、β-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0108】
少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルブト-2-エノエート、(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルシンナメート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンブタノエート、1-(オキシラン-2-イル)プロピルアクリレート、1-(オキシラン-2-イル)エチルメタクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル3-メチル-2-メチレンブタノエート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンペンタノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、2-(オキシラン-2-イル)プロパン-2-イルアクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンヘキサノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、及び(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0109】
エポキシ変性双性イオン性コポリマーがアミンで修飾された基材に共有結合する、実施形態(ii)の方法である。
【0110】
溶媒が、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0111】
非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングが、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する、実施形態(ii)の方法である。
【0112】
生体分子が、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0113】
基材が容器の表面である、実施形態(ii)の方法である。
【0114】
容器が、マイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;キュベット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;384ウェルプレート;1536ウェルプレート;丸底フラスコ;及びエルレンマイヤーフラスコからなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0115】
(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;
(b)反応チャンバー内を真空引きすること;
(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;
(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;
(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得ること;
(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給することであって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、供給すること;
(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(h)任意選択的に待機すること;
(i)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成すること
によって製造される、実施形態(ii)の非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材である。
【0116】
非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材が、
(a)SiOxでコーティングされているガラス表面である基材を反応チャンバー内に準備すること;
(b)反応チャンバー内を真空引きすること;
(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;
(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;
(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得ること;
(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給することであって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、供給すること;
(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(h)任意選択的に待機すること;
(i)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた基材を形成すること
によって製造される、実施形態(ii)の方法である。
【0117】
少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤が、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、M-アミノフェニルトリメトキシシラン、P-アミノフェニルトリメトキシシラン、O-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、3-(M-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-3-[(アミノ(ポリプロピレンオキシ)]、アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチルメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、N-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、N-アミノエチル-アザ-2,2,4-トリメチル-シラシクロペンタン、N-(3-アミノプロピルジメチルシラ)アザ-2,2-ジメチル-2-シラシクロペンタン、N-N-ブチル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1,6-ジアザ-2-シラシクロ-オクタン、N-メチル-アザ-2,2,4-トリメチルシラ-シクロペンタン、1-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル))-1-アザ-2,2,4-トリメチル-2-シラシクロペンタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0118】
少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、β-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0119】
少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルブト-2-エノエート、(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルシンナメート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンブタノエート、1-(オキシラン-2-イル)プロピルアクリレート、1-(オキシラン-2-イル)エチルメタクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル3-メチル-2-メチレンブタノエート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンペンタノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、2-(オキシラン-2-イル)プロパン-2-イルアクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンヘキサノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、及び(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0120】
非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングが、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する、実施形態(ii)の方法である。
【0121】
生体分子が、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0122】
基材が容器の表面である、実施形態(ii)の方法である。
【0123】
容器が、マイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;キュベット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;及び384ウェルプレートからなる群から選択される、実施形態(ii)の方法である。
【0124】
(a)反応チャンバー内に基材を準備すること;
(b)反応チャンバー内を真空引きすること;
(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;
(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;
(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得ること;
(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給することであって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、供給すること;
(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(h)任意選択的に待機すること;
(i)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成すること
によって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する実施形態(ii)の容器である。
【0125】
(a)SiOxでコーティングされているガラス表面である基材を反応チャンバー内に準備すること;
(b)反応チャンバー内を真空引きすること;
(c)O2を含有し、任意選択的にアルゴンを含有し、任意選択的に窒素を含有するガスを基材表面近傍に供給すること;
(d)ガスからプラズマを発生させることで作製された基材表面を形成し、任意選択的に基材を加熱すること;
(e)少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気を供給してアミンで修飾された基材を得ること;
(f)任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒を含有するコポリマー溶液を供給することであって、コポリマーが少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含有する、供給すること;
(g)コポリマーをアミンで修飾された基材と反応させ、任意選択的に基材を加熱すること;
(h)任意選択的に待機すること;
(i)コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングされた容器を形成すること
によって製造される、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングで少なくとも一部がコーティングされている内部表面を有する実施形態(ii)の容器である。
【0126】
少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤が、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、M-アミノフェニルトリメトキシシラン、P-アミノフェニルトリメトキシシラン、O-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、3-(M-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-3-[(アミノ(ポリプロピレンオキシ)]、アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチルメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、N-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、N-アミノエチル-アザ-2,2,4-トリメチル-シラシクロペンタン、N-(3-アミノプロピルジメチルシラ)アザ-2,2-ジメチル-2-シラシクロペンタン、N-N-ブチル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1,6-ジアザ-2-シラシクロ-オクタン、N-メチル-アザ-2,2,4-トリメチルシラ-シクロペンタン、1-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル))-1-アザ-2,2,4-トリメチル-2-シラシクロペンタン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の容器である。
【0127】
少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーが、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPCを含む)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート;2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート;リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル);3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート;ω-カルボキシ(メタ)アクリレート、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)、β-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の容器である。
【0128】
少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーが、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルブト-2-エノエート、(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルシンナメート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンブタノエート、1-(オキシラン-2-イル)プロピルアクリレート、1-(オキシラン-2-イル)エチルメタクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル3-メチル-2-メチレンブタノエート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンペンタノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、2-(オキシラン-2-イル)プロパン-2-イルアクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンヘキサノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、及び(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、実施形態(ii)の容器である。
【0129】
非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングが、処理されていない基材と比較して低減された生体分子の結合を有する、実施形態(ii)の容器である。
【0130】
生体分子が、ヌクレオチド、アミノ酸、糖、脂肪酸、核酸分子、ポリペプチド、ポリヌクレオチド、多糖、脂質、ステロイド、糖タンパク質、リポタンパク質、糖脂質、DNA、DNA-タンパク質複合体、RNA、RNA-複合体、抗体、及び受容体、受容体融合構造体、受容体融合タンパク質、キメラタンパク質、抗体融合構造体、及び抗体融合タンパク質からなる群から選択される、実施形態(ii)の容器である。
【0131】
容器が、マイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;キュベット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;384ウェルプレート;1536ウェルプレート;丸底フラスコ;及びエルレンマイヤーフラスコからなる群から選択される、実施形態(ii)の容器である。
【0132】
本技術を以降の図面と組み合わせて述べる。図面内の同じ符号は同じ要素を示す。
【図面の簡単な説明】
【0133】
図1】包括的に記載されている第1の実施形態で有用な遠隔変換プラズマ処理装置を示し、そのいくつかの特徴は任意選択的である。
図2】第1のより詳しい実施形態によってマイクロプレートの遠隔変換プラズマ処理を行うための例示的なプラズマ反応装置の構成を示す。
図3】未調整且つ未変換のポリプロピレンマイクロプレートであるEppendorf LoBind(登録商標)ブランドのマイクロプレートと、第1のより詳しい実施形態による例示的な遠隔変換プラズマ処理プロセスで処理したマイクロプレートとの間の比較の生体分子回収結果を示す棒グラフである。
図4】第1のより詳しい実施形態による例示的な遠隔変換プラズマ処理プロセスで処理したマイクロプレートと、遠隔変換プラズマ処理の代わりに直接変換プラズマ処理を使用した以外は同じプロセス工程及び条件で処理したマイクロプレートとの間の比較の生体分子回収結果を示す棒グラフである。
図5】第1のより詳しい実施形態による例示的な遠隔変換プラズマ処理プロセスで処理したマイクロプレートと、非重合性化合物工程のみで第2の工程なしで処理したマイクロプレートとの間の比較の生体分子回収結果を示す棒グラフである。
図6】第1のより詳しい実施形態によってマイクロプレートの遠隔変換プラズマ処理を行うための、図1の例示的なラジオ波励起プラズマ反応装置の構成を示す。
図7】第1のより詳しい実施形態によってマイクロプレートの遠隔変換プラズマ処理を行うための、図1の別の例示的なプラズマ反応装置の構成を示す。
図8】第1のより詳しい実施形態によってマイクロプレートの遠隔変換プラズマ処理を行うための、図1の例示的なマイクロ波励起プラズマ反応装置の構成を示す。
図9】未調整且つ未変換のポリプロピレンビーカー、第1のより詳しい実施形態によって処理されたポリプロピレンビーカー、及びガラスビーカーからの生体分子(TFN)の回収率のプロットである。
図10】本発明の方法の第1の実施形態又は第2の実施形態のいずれかを行うための例示的な反応装置の構成を示す。別の好適な反応装置の構成は、米国特許第7,985,188号明細書(参照により本明細書に組み込まれる)に示され記載されている図2のものである。
図11】実施例6についてのタンパク質回収率対タンパク質濃度(BSA)のプロットである。
図12】実施例6についてのタンパク質回収率対タンパク質濃度(PrA)のプロットである。
図13】実施例6についてのタンパク質回収率対タンパク質濃度(PrG)のプロットである。
図14】実施例14についてのタンパク質回収率対タンパク質濃度(BSA)のプロットである。
図15】実施例14についてのタンパク質回収率対タンパク質濃度(PrA)のプロットである。
図16】実施例14についてのタンパク質回収率対タンパク質濃度(PrG)のプロットである。
図17】実施例15の低タンパク質結合処理されたマイクロプレート由来の抽出された有機種を特徴付けるGC-MS(ガスクロマトグラフィー-マススペクトル)プロットであり、ピークの帰属を示す。
図18】実施例15のイソプロパノールブランクについての図17と同様のプロットである。
図19図18との比較のための、ピーク帰属なしの図17と同様の実施例15からのプロットである。
図20】SiO2低タンパク質結合処理されたプレート(下のプロット)対イソプロパノールブランクのプレート(上のプロット)の、LC-MSイソプロパノール抽出イオンクロマトグラム(ポジティブAPCIモード)の実施例16からの比較である。
図21】SiO2で未調整且つ未変換のプレート(下のプロット)対イソプロパノールブランクのプレート(上のプロット)の、LC-MSイソプロパノール抽出イオンクロマトグラム(ポジティブAPCIモード)の実施例16からの比較であり、未調整且つ未変換のプレートの抽出物中のポリプロピレン成分の存在を示す。
図22】SiO2低タンパク質結合処理されたプレート(下のプロット)対イソプロパノールブランクのプレート(上のプロット)の、LC-MSイソプロパノール抽出イオンクロマトグラム(ネガティブAPCIモード)の実施例16からの比較である。
図23】全ての実施形態に関する、接触表面164と内部166とを有する基材162の図である。
【発明を実施するための形態】
【0134】
本明細書及び添付の図面中では、以下の参照符号が使用される。
【0135】
【表1】
【0136】
本明細書中では、表面への生体分子の付着を低減するための方法が開示される。最も一般的には、1つ以上の非重合性化合物の変換プラズマを用いて表面を処理することで処理された接触表面を形成することを含む、任意選択的に基材の全体若しくは一部の表面又は材料表面であってもよい表面を処理するための方法が提供される。
【0137】
用語「接触表面」及び「表面」は、別段の明示的な記載又はこれが使用される文脈による示唆がない限り同じものを意味し、各用語は、試料又は他の材料と接触する位置にあり、これと接触する試料又は他の材料とのその相互作用を決定する表面特性を有する表面を示す。接触表面のいくつかの例は、容器の内部表面(例えば、容器の内腔の境界を付ける)、又は容器、シート、ブロック、若しくは他の物体の外表面である。
【0138】
用語「内部」は、接触表面ではないが、バルク製品又はコーティングの内側の一部を形成するバルク製品又はコーティングの一部を示す。基材の接触表面がその特性を修正するために処理される実施形態では、基材の内部には処理によって修飾されない任意の部分が含まれる。
【0139】
用語「生体分子」は、任意のヌクレオチド若しくはペプチド、又はこれらの任意の組み合わせを含めるために任意の実施形態に関して使用される。ヌクレオチドには、オリゴヌクレオチド及びポリヌクレオチド(別名核酸、例えばデオキシリボ核酸(DNA)及びリボ核酸(RNA))が含まれる。ペプチドには、アミノ酸、オリゴペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質が含まれる。ヌクレオチド及びペプチドには、本技術によって処理されていない表面に付着する変性された又は誘導体化されたヌクレオチド及びペプチドも更に含まれる。
【0140】
ここで定義される生体分子としては、これらに限定されるものではないが、以下の水性タンパク質:例えばウシ血清アルブミン(BSA)などの哺乳類血清アルブミン;フィブリノゲン(FBG);例えば血液セロトランスフェリン(又はシデロフィリン、別名トランスフェリン)などのトランスフェリン(TFN);ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン);ミルクトランスフェリン;卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;例えば六量体インスリン、単量体インスリン、ブタインスリン、ヒトインスリン、組み換えインスリン、及び医薬品グレードのインスリンなどのインスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;これらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体;並びにこれらの2つ以上の組み合わせの1つ以上が挙げられる。
【0141】
表面への生体分子の付着は、表面と接触して貯蔵される水性媒体中に分散されている生体分子の水中濃度の減少として、任意の実施形態について定義される。これは、文字通りの「付着」、吸着、又は他の機構であるかどうかに関わらず、濃度減少の機構によって限定されない。
【0142】
任意の実施形態中で言及される「プラズマ」は、通常、気体形態であるその成分粒子の大規模なイオン化及び白熱(すなわち、これはグロー放電を生じる、すなわち、これは発光する)によって特徴付けられる、物質の4つの基本状態の1つの物理状態にあるその通常の意味を有する。
【0143】
「変換プラズマ処理」とは、処理された接触表面への1つ以上の生体分子の付着を低減する任意のプラズマ処理を指す。
【0144】
「調整プラズマ処理」とは、更に変換プラズマ処理を行うための表面を作製するための表面の任意のプラズマ処理を指す。「調整プラズマ処理」には、それ自体が処理された接触表面への1つ以上の生体分子の付着を低減するプラズマ処理が含まれるが、これに引き続いて処理された接触表面への1つ以上の生体分子の付着を更に低減する変換プラズマ処理が行われる。「調整プラズマ処理」には、それ自体では処理された接触表面への1つ以上の生体分子の付着を低減しないプラズマ処理も含まれる。
【0145】
「遠隔」変換プラズマ処理は、一般的には、例えばジュール毎cm3単位でのプラズマの放射エネルギー密度がプラズマグロー放電の任意の地点での最大放射エネルギー密度(以下では「最も明るい地点」という)よりも大幅に少ない「遠隔」地点に位置するが、処理される遠隔表面への1つ以上の生体分子の付着を低減するためのグロー放電の一部に遠隔表面が十分に近い表面の変換プラズマ処理である。「遠隔」は、遠隔表面が表面を調整するためのグロー放電の一部に十分に近くなければならないことを除いて、遠隔調整プラズマ処理に関しても同様に定義される。
【0146】
プラズマの最も明るい地点での放射エネルギー密度は、最も明るい地点での可視スペクトル(380ナノメートル(nm)~750nmの波長)における光の最も強い発光線の放射強度を測定することによって分光学的に決定される。遠隔地点での放射エネルギー密度は、遠隔地点での光の同じ発光線の放射エネルギー密度を測定することによって分光学的に決定される。ある地点の「遠隔性」は、最も明るい地点での放射エネルギー密度に対する遠隔地点での放射エネルギー密度の割合を測定することによって数値化される。本明細書では、「遠隔」を比率の特定の範囲として定量的に定義する。広義には、比率は0~0.5、任意選択的に0~0.25、任意選択的に約0、任意選択的にまさに0である。プラズマの暗い放電領域又はアフターグロー領域は、発光のためにはエネルギー的に十分でないものの、1つ以上の生体分子の付着を低減するために処理された接触表面を修飾するためにはエネルギー的に十分であるエネルギー種を含むことから、比率がゼロである場所は遠隔地点に測定可能な可視光が存在しないことを示すものの、遠隔変換プラズマ処理は比率がゼロである場所で行われてもよい。
【0147】
「非重合性化合物」は、表面の具体的なプラズマ処理において使用される条件下で処理された接触表面上で重合しない、又は他に付加的なコーティングを形成しない化合物として、全ての実施形態について運用上定義される。非重合条件下で使用することができる化合物の多数の非限定的な例は、O2、N2、空気、O3、N2O、H2、H2O2、NH3、Ar、He、Ne、及び前述のものの任意の2つ以上の組み合わせである。これらには、アルコール、有機酸、及び極性有機溶媒だけでなく、それらが用いられる条件と異なるプラズマ条件下で重合できる材料も含まれ得る。「非重合性」には、既存のポリマー表面と反応して結合し、表面でその組成を局所的に修飾する化合物も含まれる。非重合性コーティングの本質的な特徴的性質は、これが処理時間の増加に伴って厚みを増大させない(すなわち付加的なコーティングを形成しない)ことである。
【0148】
「基材」は、物品又は他の固体形態(顆粒、ビーズ、又は粒子など)である。
【0149】
「基材」は、基材の元々の表面(本明細書中のいずれの場所で使用されていても「表面」には表面の一部も含まれる)、又は任意の適切なコーティング法又は処理法(基材上へのコーティングの形成に有効な条件下で行われる液体塗布、気体からの凝縮、又はプラズマ強化化学蒸着などの化学蒸着等)によって作製されるコーティングされた接触表面又は処理された接触表面のいずれかとして広義には定義される。
【0150】
処理された接触表面は、全ての実施形態について、本明細書に記載されているようなプラズマ処理が行われ、そのような処理の結果として生体分子の付着が低減された表面として定義される。
【0151】
用語「任意選択的に」及び「或いは」は、本明細書及び請求項において同じ意味を有すると見なされ、互換的に使用することができる。
【0152】
任意の実施形態における「材料」は、基材を形成する任意の材料であってもよく、熱可塑性材料、任意選択的に熱可塑性の射出成形可能な材料が含まれるが、これらに限定されない。任意の実施形態の基材は、例えばオレフィンポリマー;ポリプロピレン(PP);ポリエチレン(PE);環状オレフィンコポリマー(COC);環状オレフィンポリマー(COP);ポリメチルペンテン;ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリブチレンテレフタレート(PBT);PVdC(ポリ塩化ビニリデン);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレート;ポリ乳酸;ポリ乳酸;ポリスチレン;水素化ポリスチレン;ポリ(シクロヘキシルエチレン)(PCHE);エポキシ樹脂;ナイロン;ポリウレタン、ポリアクリロニトリル;ポリアクリロニトリル(PAN);アイオノマー樹脂;又はSurlyn(登録商標)アイオノマー樹脂などの材料(ただし、これらに限定されない)から形成されてもよい。
【0153】
本明細書全体を通じて使用される用語「容器」は、液体、気体、固体、これらの任意の2つ以上を入れるか運ぶために適した任意の種類の物品であってもよい。容器の1つの例は、少なくとも1つの開口(例えば、用途に応じて1つ、2つ、又はそれを超える)と、内部接触表面を画定する壁とを有する物品である。
【0154】
任意選択的に基材の表面であってもよい表面の処理のための本発明の方法は、チャンバー中で1つ以上の非重合性化合物の変換プラズマを用いて表面を処理することで、処理された接触表面を形成することを含む。
【0155】
任意の実施形態によって様々な異なる表面を処理することができる。表面の1つの例は容器の内腔表面であり、この容器は、例えばバイアル、瓶、広口瓶、シリンジ、カートリッジ、ブリスター包装、又はアンプルである。追加の例としては、材料の表面は、例えばマイクロプレート、遠沈管、ピペットチップ、ウェルプレート、マイクロウェルプレート、ELISAプレート、マイクロタイタープレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、遠沈管、クロマトグラフィーバイアル、真空採血管、又は試料管などの実験器具製品の接触表面であってもよい。
【0156】
任意の実施形態の処理された接触表面は、任意選択的にPECVDにより堆積したSiOxyz又はSiNxyzのコーティング又は層であってもよく、この中のX線光電子分光(XPS)により測定されるxは約0.5~約2.4であり、XPSにより測定されるyは約0.6~約3であり、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)により測定されるzは約2~約9である。処理される表面のもう1つの例は、SiOx(XPSにより測定されるxは約1.5~約2.9である)、任意選択的に周期表のIII族及び/又はIV族(例えば、III族ではホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スカンジウム、イットリウム、又はランタン(アルミニウム及びホウ素が好ましい)、及びIV族ではケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、又はトリウム(ケイ素及びスズが好ましい))からの金属元素の化合物である有機金属前駆体の酸化物又は窒化物のバリアコーティング又は層である。
【0157】
任意の実施形態において表面を処理するために用いられるガスは、不活性ガスであっても反応性ガスであってもよく、O2、N2、空気、O3、N2O、NO2、N24、H2、H22、H2O、NH3、Ar、He、Ne、Xe、Kr、窒素含有ガス、他の非重合性ガス、Ar/O2混合物などのガスの組み合わせ、Arを用いた前処理調整工程後のN2/O2混合物、揮発性極性有機化合物、C1~C12炭化水素と酸素との組み合わせ、C1~C12炭化水素と窒素との組み合わせ、ケイ素含有ガス、又はこれらの2つ以上の組み合わせのいずれかであってもよい。処理には本明細書で規定される非重合性ガスが用いられる。
【0158】
任意の実施形態の揮発性極性有機化合物は、例えば、水(例えば、水道水、蒸留水、又は脱イオン水);アルコール(例えば、C1~C12アルコール、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール);グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等);グリセリン、C1~C12直鎖若しくは環状のエーテル(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、グリム(CH3OCH2CH2OCH3));ジエチレンオキシド、トリエチレンオキシド、及びテトラエチレンオキシドなどの式-CH2CH2n-の環状エーテル;環状アミン;環状エステル(ラクトン、例えばアセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、及びカプロラクトン);C1~C12アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、又はブチルアルデヒド);C1~C12ケトン(例えば、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、又はジブチルケトン);C1~C12カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸);アンモニア、C1~C12アミン(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、又はドデシルアミン);フッ化水素、塩化水素、C1~C12エポキシド(例えば、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド);又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0159】
任意の実施形態のC1~C12炭化水素は、任意選択的にメタン、エタン、エチレン、アセチレン、n-プロパン、i-プロパン、プロペン、プロピン、n-ブタン、i-ブタン、t-ブタン、ブタン、1-ブチン、2-ブチン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0160】
任意の実施形態のケイ素含有ガスは、シラン、有機ケイ素前駆体、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。ケイ素含有ガスは、任意選択的に、Si1~Si4の置換若しくは無置換のシラン(例えば、シラン、ジシラン、トリシラン、又はテトラシラン);炭化水素若しくはハロゲンで置換されているSi1~Si4シラン(例えば、テトラメチルシラン(TetraMS)、テトラエチルシラン、テトラプロピルシラン、テトラブチルシラン、トリメチルシラン(TriMS)、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、トリメトキシシラン)、ヘキサフルオロジシランなどのフッ化シラン、オクタメチルシクロテトラシラン若しくはテトラメチルシクロテトラシランなどの環状シラン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせの任意の1つ以上を含むかこれから本質的になるかこれからなる、非環状又は環状の置換又は無置換のシランであってもよい。ケイ素含有ガスは、直鎖シロキサン、単環式シロキサン、多環式シロキサン、ポリシルセスキオキサン、アルキルトリメトキシシラン、直鎖シラザン、単環式シラザン、多環式シラザン、ポリシルセスキアザン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよく、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルシクロテトラシラザン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0161】
任意の実施形態においてプラズマ処理で使用されるプラズマの励起のために使用される電力は、例えば1~1000ワット、任意選択的に100~900ワット、任意選択的に50~600ワット、任意選択的に100~500ワット、任意選択的に500~700ワット、任意選択的に1~100ワット、任意選択的に1~30ワット、任意選択的に1~10ワット、任意選択的に1~5ワットであってもよい。
【0162】
任意の実施形態においてプラズマ処理で使用されるプラズマの励起のために使用される電力のエネルギーの周波数又は種類は、プラズマゾーンでプラズマを生じさせる任意の種類のエネルギーであってもよい。例えば、これは直流(DC)であっても、又は3Hz~300GHzの周波数を有する交流(電磁エネルギー)であってもよい。この範囲の電磁エネルギーには、通常、ラジオ波(RF)エネルギー及びマイクロ波エネルギーが含まれ、より具体的には、3~30Hzの超低周波(ELF)、30~300Hzの極超長波(SLF)、300Hz~3kHzの音声周波又は極超長波(VF又はULF)、3~30kHzの超長波(VLF)、30~300kHzの低周波(LF)、300kHz~3MHzの中波(MF)、3~30MHzの高周波(HF)、30~300MHzの超短波(VHF)、300MHz~3GHzの極超短波(UHF)、3~30GHzのマイクロ波(SHF)、30~300GHzのミリ波(EHF)、又はこれらの周波数の2つ以上の任意の組み合わせとして特徴付けられる。例えば、一般的に使用されている周波数の2つの非限定的な例として、一般的には13.56MHzである高周波エネルギーが有用なRFエネルギーであり、一般的には2.54GHzである極超短波エネルギーが有用なマイクロ波エネルギーである。
【0163】
任意の実施形態においてプラズマ励起エネルギーは、処理工程中に連続的であっても、処理工程中の複数回のパルスであってもよい。パルス化される場合、これは、プラズマ処理中の規則的又は異なる順序での、1ミリ秒~1秒の範囲の時間の作動と、その後の1ミリ秒~1秒の範囲の時間の停止との交互のパルスであってもよい。1つの完全なデューティサイクル(1つの「作動」期間と1つの「停止」期間)は、1~2000ミリ秒(ms)、任意選択的に1~1000ミリ秒(ms)、任意選択的に2~500ms、任意選択的に5~100ms、任意選択的に10~100msの長さであってもよい。
【0164】
任意の実施形態において、任意選択的に、デューティサイクルの電源のオンとオフとの間の部分の関係は、例えば各デューティサイクルの時間の1~90%、任意選択的に時間の1~80%、任意選択的に時間の1~70%、任意選択的に時間の1~60%、任意選択的に時間の1~50%、任意選択的に時間の1~45%、任意選択的に時間の1~40%、任意選択的に時間の1~35%、任意選択的に時間の1~30%、任意選択的に時間の1~25%、任意選択的に時間の1~20%、任意選択的に時間の1~15%、任意選択的に時間の1~10%、任意選択的に時間の1~5%が電源オンであり、残りの時間が電源オフであってもよい。
【0165】
任意選択的に、Mark J.Kushner,Pulsed Plasma-Pulsed Injection Sources For Remote Plasma Activated Chemical Vapor Deposition,J.Appl.Phys.73,4098(1993)に記載されているプラズマのパルス化を使用することができる。
【0166】
任意の実施形態によるプラズマ処理中のプロセスガスの流量は、1~300sccm(標準立方センチメートル毎分)、任意選択的に1~200sccm、任意選択的に1~100sccm、任意選択的に1~50sccm、任意選択的に5~50sccm、任意選択的に1~10sccmであってもよい。
【0167】
任意の実施形態において、任意選択的に、プラズマチャンバーは、ガスの供給前に0.001ミリトル(mTorr,0.00013パスカル)~100Torr(13,000パスカル)の基準圧力まで減圧される。任意選択的に、任意の実施形態における供給ガス圧は、0.001~10,000mTorr(0.00013~1300パスカル)、任意選択的に1mTorr~10Torr(0.13~1300パスカル)、任意選択的に0.001~5000mTorr(0.00013~670パスカル)、任意選択的に1~1000mTorr(0.13~130パスカル)の範囲であってもよい。
【0168】
任意の実施形態において、中でプラズマが生成される処理容積は、例えば、100mL~50リットル、好ましくは8リットル~20リットルであってもよい。任意選択的に、処理される表面が100mLより小さい内腔容積を有する容器の内部表面である場合、処理容積は内腔容積以下に制限される場合がある。例えば、それに応じた処理容積を有する0.1~100mL、或いは0.5~10mLの内腔容積の容器が想定される。
【0169】
任意の実施形態におけるプラズマ処理時間は、例えば1~300秒、任意選択的に3~300秒、任意選択的に30~300秒、任意選択的に150~250秒、任意選択的に150~200秒、任意選択的に90~180秒であってもよい。
【0170】
任意の実施形態において、プラズマ処理工程の数は様々であってもよい。例えば、1つのプラズマ処理を使用することができ、任意選択的に同じ又は異なる条件を用いて2つ以上のプラズマ処理を使用することができる。
【0171】
任意の実施形態において、使用されるプラズマ処理装置は、例えば複数の例示として本明細書に記載されている図1図7図8、又は図10のものなどの任意の好適な装置であってもよい。任意の実施形態において、例えば米国特許第7,985,188号明細書の図2中に示されている、処理される容器の内腔を真空チャンバーとして用いるタイプのプラズマ処理装置も使用することができる。
【0172】
任意の実施形態のプラズマ処理プロセスは、任意選択的にイオン化ガスを使用する処理と組み合わされてもよい。イオン化ガスは、いくつかの例として、プラズマ処理に好適であるとして特定されているいずれかのガスであってもよい。イオン化ガスは、任意の適切な方法で運ばれてもよい。例えば、これはイオン化ブローオフガン又は他のイオン化ガス源から運ばれてもよい。都合のよいガス送出圧力は、1~120psi(ポンド毎平方インチ)(6~830kPa,キロパスカル)(ゲージ圧、又は任意選択的に絶対圧)、任意選択的に50psi(350kPa)である。イオン化ガスの含水率は0~100%であってもよい。イオン化ガスを用いた極性処理接触表面は、例えば1~300秒間、任意選択的に10秒間などの任意の適切な処理時間行うことができる。
【0173】
ポリマー基材の組成
任意の実施形態において、任意選択的に、前述の処理の結果物は、接触表面と内部とから本質的になるポリマー基材である。任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、1~30原子%、任意選択的に5~20原子%、任意選択的に5~10原子%の酸素原子;0~30原子%、任意選択的に0~20原子%、任意選択的に0~10原子%の窒素原子;及び80~99原子%、任意選択的に80~95原子%、任意選択的に90~95原子%の炭素原子を含み、ここで、原子%の値はX線光電子分光(XPS)によって測定される。
【0174】
任意の実施形態において、任意選択的に、規定した割合の範囲内の酸素及び/又は窒素原子は、炭素原子にグラフトされる。或いは、炭素、酸素、及び窒素原子は、基材の上に堆積して接触表面を形成してもよい。
【0175】
任意の実施形態において、任意選択的に、基材の内部は、少なくとも80原子%、任意選択的に少なくとも85原子%、任意選択的に少なくとも90原子%、任意選択的に少なくとも95原子%、任意選択的に少なくとも100原子%の炭素原子と、接触表面より多い原子%の炭素原子とを含む。
【0176】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、0.1~10原子%、任意選択的に0.1~5原子%、任意選択的に1~5原子%の、酸素がグラフトされている炭素原子を含む。
【0177】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、0.1~10原子%、任意選択的に0.1~5原子%の水素結合受容性基を含む。そのような水素結合受容性基の例としては、限定するものではないが、いずれの場合も炭素に結合する-N+-、-N-、=O、-O-、-O2、-O3、C=O、O-C=O、C-O-C、又は≡Nから選択される部位が挙げられ、任意選択的にこれらの2つ以上から選択されるか、又はこれらの2つ以上の任意の組み合わせである。
【0178】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、極性のグラフト種、任意選択的にX線光電子分光(XPS)によって測定されるC=O(カルボニル)、C-O-C(エーテル)、C-N-C(アミン)、C-N+-C(アンモニウム)、CO2(カルボキシル)、CO3、Si=O、Si-O-Si、Si-N-Si、Si-N+-Si、SiO2、SiO3、C≡N、Si≡N、又はこれらの2つ以上の組み合わせの1つ以上で修飾された炭素化合物又はケイ素化合物を含む。
【0179】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、熱可塑性材料、例えば熱可塑性樹脂、例えば射出成形された熱可塑性樹脂を含む。好適な樹脂のいくつかの非限定的な例としては、例えばオレフィンポリマー、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、水素化ポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン(PCHE)、若しくはこれらの2つ以上の組み合わせなどの炭化水素ポリマー;又は例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、ポリ乳酸、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル(PAN)、アイオノマー樹脂、Surlyn(登録商標)アイオノマー樹脂、又は上述の材料の任意の2つ以上の組み合わせ、複合材料、若しくはブレンド物などのヘテロ原子置換炭化水素ポリマーが挙げられる。
【0180】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、少なくとも10%、任意選択的に少なくとも20%、任意選択的に少なくとも30%、任意選択的に少なくとも40%、任意選択的に少なくとも45%、任意選択的に少なくとも50%、任意選択的に少なくとも55%、任意選択的に少なくとも60%、任意選択的に少なくとも65%、任意選択的に少なくとも70%、任意選択的に少なくとも75%、任意選択的に少なくとも80%、任意選択的に少なくとも85%、任意選択的に少なくとも90%、任意選択的に少なくとも95%の生体分子回収率を有する。任意の実施形態において、任意選択的に、生体分子回収率は、哺乳類血清アルブミン;ウシ血清アルブミン(BSA);フィブリノゲン(FBG);トランスフェリン(TFN);卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;インスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;これらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体の少なくとも1つに関して決定される。
【0181】
任意の実施形態において、任意選択的に、66,000ダルトンの原子質量を有するBSAに関し、生体分子回収率は、少なくとも20%、任意選択的に少なくとも30%、任意選択的に少なくとも40%、任意選択的に少なくとも50%、任意選択的に少なくとも60%、任意選択的に少なくとも70%、任意選択的に少なくとも80%、任意選択的に少なくとも90%、任意選択的に少なくとも95%、任意選択的に少なくとも99%、任意選択的に10~90%、任意選択的に20~90%、任意選択的に30~90%、任意選択的に40~90%、任意選択的に50~90%、任意選択的に60~90%、任意選択的に70~90%、任意選択的に80~90%である。
【0182】
任意の実施形態において、任意選択的に、340,000ダルトンの原子質量を有するFBGに関し、生体分子回収率は、少なくとも10%、任意選択的に少なくとも20%、任意選択的に少なくとも30%、任意選択的に少なくとも40%、任意選択的に少なくとも50%、任意選択的に少なくとも60%、任意選択的に少なくとも70%、任意選択的に少なくとも80%、任意選択的に少なくとも90%、任意選択的に少なくとも95%、任意選択的に少なくとも99%、任意選択的に10~90%、任意選択的に20~90%、任意選択的に30~90%、任意選択的に40~90%、任意選択的に50~90%、任意選択的に60~90%、任意選択的に70~90%、任意選択的に80~90%、任意選択的に15%~20%である。
【0183】
任意の実施形態において、任意選択的に、80,000ダルトンの原子質量を有するTFNに関し、生体分子回収率は、少なくとも30%、任意選択的に少なくとも20%、任意選択的に少なくとも30%、任意選択的に少なくとも40%、任意選択的に少なくとも50%、任意選択的に少なくとも60%、任意選択的に少なくとも70%、任意選択的に少なくとも80%、任意選択的に少なくとも90%、任意選択的に少なくとも95%、任意選択的に少なくとも99%、任意選択的に10~90%、任意選択的に20~90%、任意選択的に30~90%、任意選択的に40~90%、任意選択的に50~90%、任意選択的に60~90%、任意選択的に70~90%、任意選択的に80~90%、任意選択的に30~50%である。
【0184】
任意の実施形態において、任意選択的に、45,000ダルトンの原子質量を有するPrAに関し、生体分子回収率は、少なくとも10%、任意選択的に少なくとも20%、任意選択的に少なくとも30%、任意選択的に少なくとも40%、任意選択的に少なくとも50%、任意選択的に少なくとも60%、任意選択的に少なくとも70%、任意選択的に少なくとも80%、任意選択的に少なくとも90%、任意選択的に少なくとも95%、任意選択的に少なくとも99%、任意選択的に10~90%、任意選択的に20~90%、任意選択的に30~90%、任意選択的に40~90%、任意選択的に50~90%、任意選択的に60~90%、任意選択的に70~90%、任意選択的に80~90%、任意選択的に10~90%である。
【0185】
任意の実施形態において、任意選択的に、20,000ダルトンの原子質量を有するPrGに関し、生体分子回収率は、少なくとも10%、任意選択的に少なくとも20%、任意選択的に少なくとも30%、任意選択的に少なくとも40%、任意選択的に少なくとも50%、任意選択的に少なくとも60%、任意選択的に少なくとも70%、任意選択的に少なくとも80%、任意選択的に少なくとも90%、任意選択的に少なくとも95%、任意選択的に少なくとも99%、任意選択的に10~90%、任意選択的に20~90%、任意選択的に30~90%、任意選択的に40~90%、任意選択的に50~90%、任意選択的に60~90%、任意選択的に70~90%、任意選択的に80~90%、任意選択的に5~90%である。
【0186】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、例えば実験器具製品の流体接触表面などの容器の内腔表面である。好適な実験器具製品の例としては、マイクロプレート、遠沈菅、ピペットチップ、ウェルプレート、マイクロウェルプレート、ELISAプレート、マイクロタイタープレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、バイアル、瓶、広口瓶、シリンジ、カートリッジ、ブリスター包装、アンプル、真空採血管、試料管、遠沈管、又はクロマトグラフィーバイアルが挙げられる。
【0187】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は水性タンパク質と接触する。
【0188】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は0°~90°、任意選択的に20°~80°、任意選択的に40°~80°、任意選択的に50°~70°、任意選択的に55°~65°の蒸留水との接触角を有する。
【0189】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面上において、5キロボルト毎cm(5kV/cm)未満、任意選択的に3kV/cm未満、任意選択的に2kV/cm未満、任意選択的に1kV/cm未満の、帯電した静電荷を有する。
【0190】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、1つ以上の非重合性化合物の調整プラズマ、変換プラズマ、又は両方で処理されて表面を形成する。任意の実施形態において、任意選択的に、非重合性化合物は、O2、N2、空気、O3、N2O、H2、H2O、H22、NH3、Ar、He、及びNeからなる群から選択される要素の1つ以上を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。
【0191】
任意の実施形態において、任意選択的に、接触表面は、5~1000nmの厚さのPECVD堆積コーティングである。任意の実施形態において、任意選択的に、PECVD堆積コーティングは、シロキサン、オルガノシロキサン、ポリエチレングリコール(PEG)を含むガス前駆体;アセチレン、メタン、プロパン、ブタン、エタンを含むモノマーガス前駆体、及び/又は空気、酸素、若しくは水蒸気を含むコモノマーガスの任意の1つ又は組み合わせを使用して適用される。任意の実施形態において、任意選択的に、PECVD堆積コーティングは、酸素ヘテロ原子及び任意選択的に窒素ヘテロ原子を更に含むアモルファスカーボンコーティングである。例えば、アモルファスカーボンコーティングは、例えばアセチレン、エチレン、メタン、エタン、プロパン、ブタン、又はこれらの2つ以上の組み合わせなどの炭素含有モノマーガス前駆体、及び空気、酸素、水蒸気、又はこれらの2つ以上の組み合わせなどの反応性ガスを使用して適用され得る。
【0192】
生体分子の接触及び回収
任意の実施形態のプラズマ処理後、例えば容器の内腔表面などの処理された接触表面は、水性タンパク質又は他の生体分子と接触することができる。好適なタンパク質のいくつかの非限定的な例は、例えばウシ血清アルブミン(BSA)などの哺乳類血清アルブミン;フィブリノゲン(FBG);例えば血液セロトランスフェリン(又はシデロフィリン、別名トランスフェリン)などのトランスフェリン(TFN);ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン);ミルクトランスフェリン;卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);及び膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;例えば六量体インスリン、単量体インスリン、ブタインスリン、ヒトインスリン、組み換えインスリン、及び医薬品グレードのインスリンなどのインスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;これらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体;又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む水性タンパク質である。
【0193】
任意選択的に、処理された接触表面は、ウシ血清アルブミン(BSA);フィブリノゲン(FBG);例えば血液セロトランスフェリン(又はシデロフィリン、別名トランスフェリン)などのトランスフェリン(TFN);ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン);ミルクトランスフェリン;卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);及び膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;例えば六量体インスリン、単量体インスリン、ブタインスリン、ヒトインスリン、組み換えインスリン、及び医薬品グレードのインスリンなどのインスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;これらのタンパク質又はペプチドの任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体の少なくとも1つに関しての未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きいタンパク質回収率を有する。
【0194】
第1のより詳しい実施形態
第1のより詳しい実施形態の基材を有する容器は、例えば上で定義したいずれかの材料から作られていてもよい。透明でガラス状のポリマーが望まれる用途(例えば、シリンジ及びバイアル用)のために、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、又はポリカーボネートが好ましい場合がある。ポリプロピレンなどの直鎖ポリオレフィン及びポリスチレンなどの芳香族ポリオレフィンも想定される。そのような基材は、非常に小さく正確な許容誤差(通常、ガラスで得られるよりもはるかに小さい)のため、例えば射出成形又は射出延伸ブロー成形(これは本開示の任意の実施形態において射出成形としても分類される)によって製造されてもよい。例えば、ホウケイ酸ガラス基材などのプラズマ処理されたガラス基材も想定される。
【0195】
第1のより詳しい実施形態の容器は、例えば、流体を保持するため(例えば、生体材料又は生物学的に活性な化合物若しくは組成物を保持するため、例えば血液又は尿などの生物体液を採取又は貯蔵するため)の試料管若しくはキュベット、例えば薬剤若しくは医薬組成物などの生物学的に活性な化合物若しくは組成物を貯蔵若しくは送達するためのシリンジ(又は例えばシリンジバレルなどのその一部)、生体材料若しくは生物学的に活性な化合物若しくは組成物を貯蔵するためのバイアル、生体材料若しくは生物学的に活性な化合物若しくは組成物を移送するためのパイプ又は他の導管(例えば、カテーテル)、などの容器であってもよい。想定される容器の他の非限定的な例は、例えばタイタ―プレート又はマイクロタイタープレート(別名マイクロプレート)などのウェル型又は非ウェル型のスライド又はプレートが挙げられる。容器の他の例としては、ピペット、ピペットチップ、エルレンマイヤーフラスコ、ビーカー、及びメスシリンダーなどの測定器具及び移送器具が挙げられる。非限定的な実施形態を実施するための実際の低減に関して本明細書で記載されている具体的な容器は、ポリプロピレン製96ウェルマイクロプレート及びビーカーである。しかし、当業者であれば、任意の種類の表面若しくは容器又は他の種類の物体に対応して処理するために、本明細書に記載の方法及び装置の構成に対して、本発明の技術との整合性がとれる修正形態及び適応形態がなされ得ることを理解するであろう。
【0196】
第1のより詳しい実施形態の容器の表面は、例えば上で列挙したいずれかの熱可塑性樹脂などの基材材料自体から作られていてもよい。任意選択的に、基材はバルク材料であってもよく、又はPECVDで堆積されたSiOxCyHz又はSiNxCyHz(式中、X線光電子分光(XPS)により測定されるxは約0.5~約2.4であり、XPSにより測定されるyは約0.6~約3であり、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)により測定されるzは約2~約9である)のpH保護コーティング又は層であってもよい。基材のもう1つの例は、PECVDで堆積されたSiOx(XPSにより測定されるxは約1.5~約2.9である)、任意選択的に周期表のIII族及び/又はIV族(例えば、III族ではホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スカンジウム、イットリウム、又はランタン(アルミニウム及びホウ素が好ましい)、及びIV族ではケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、又はトリウム(ケイ素及びスズが好ましい))からの金属元素の化合物である有機金属前駆体の酸化物又は窒化物のバリアコーティング又は層である。これらのコーティング又は層を堆積させるための方法及び装置は、2013年5月16日に公開された国際公開第2013/071138号パンフレットに詳細に記載されており、これは、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0197】
第1のより詳しい実施形態の方法は、遠隔変換プラズマ処理の使用を採用する。直接プラズマ処理と異なり、遠隔変換プラズマの場合、プラズマのイオンも電子も物品表面とほとんど接触しない。典型的には、より低いエネルギーを有する中性種はプラズマアフターグロー中に存在し、これは、スパッタリングなしで、又はイオン若しくは電子によって誘起される他のより高いエネルギーの化学反応なしで、物品表面と反応するのに十分なエネルギーを有する。遠隔変換プラズマの結果は、「直接」プラズマの高いエネルギーの影響がない穏やかな表面修飾である。
【0198】
第1のより詳しい実施形態の方法は、O2、N2、空気、O3、N2O、H2、H2O2、NH3、Ar、He、Ne、他の非重合性ガス、及び前述のものの任意の2つ以上の組み合わせなどの非重合性ガスを用いる。これらは非重合性アルコール、非重合性有機酸、及び非重合性極性有機溶媒を含んでいてもよい。調整工程(非重合性化合物工程)にAr、N2、Ar/O2混合物、又はN2/O2混合物を使用し、前処理調整工程にArを用いる実験が行われた。これら及び他の非重合性ガスは、必ずしもコーティングを堆積させない。むしろ、これらは表面を修飾するために(例えば、処理された接触表面を形成するために)表面と反応し、処理された接触表面は、未調整且つ未変換の表面の生体分子回収率よりも大きい生体分子回収率を有する。例えば、表面反応は、表面上に新しい化学官能基(カルボニル、カルボキシル、ヒドロキシル、ニトリル、アミド、アミンが挙げられるがこれらに限定されない)を生じさせることができる。これらの極性化学基は、表面エネルギーを増加させ、また、未調整且つ未変換の表面が典型的に含み得るそのままの状態では疎水性のポリマーの親水性を増加させると考えられる。疎水性表面は、通常、生体分子を表面によく結合させる一方、水分子を引き付ける親水性表面は、その表面への生体分子の結合を阻止し易くする。本発明はこの作用の原理に限定されないが、この機構によって表面への生体分子の結合が防止されると考えられる。
【0199】
任意選択的に、第1のより詳しい実施形態の方法は、基材表面に生体分子を付着させる基材表面の性質を弱めるために使用することができる。好ましくは、方法は、これらに限定されるものではないが、以下の水性タンパク質:例えばウシ血清アルブミン(BSA)などの哺乳類血清アルブミン;フィブリノゲン(FBG);例えば血液セロトランスフェリン(又はシデロフィリン、別名トランスフェリン)などのトランスフェリン(TFN);ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン);ミルクトランスフェリン;卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);及び膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;例えば六量体インスリン、単量体インスリン、ブタインスリン、ヒトインスリン、組み換えインスリン、及び医薬品グレードのインスリンなどのインスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;これらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体;並びにこれらの2つ以上の組み合わせの1つ以上を含む広範囲の生体分子について生体分子の付着を低減する。
【0200】
図1は、本明細書における遠隔変換プラズマ処理を行うための図2、6、7、及び8のそれぞれのより具体的な実施形態で共通の特徴を有する第1のより詳しい実施形態の遠隔変換プラズマ処理装置の概略的な全体図である。境界20(プラズマは目に見えるグロー放電としてここで規定される)を有するプラズマガスゾーン15中でのプラズマの生成を支援することができる流体供給源12からのプラズマガスは、流体入口13を介してプラズマゾーン15へ導入され、プラズマエネルギー源18からのプラズマエネルギーはプラズマゾーン15に供給されて、プラズマゾーン15中に境界20を有するプラズマを生じさせる。
【0201】
第1のより詳しい実施形態のプラズマエネルギーは、広義にはプラズマゾーン15中でプラズマを生じさせる任意の種類のエネルギーであってもよい。例えば、これは直流(DC)であっても、3Hz~300GHzの周波数を有する交流(電磁エネルギー)であってもよい。この範囲の電磁エネルギーには、通常、ラジオ波(RF)エネルギー及びマイクロ波エネルギーが含まれ、より具体的には、3~30Hzの超低周波(ELF)、30~300Hzの極超長波(SLF)、300Hz~3kHzの音声周波又は極超長波(VF又はULF)、3~30kHzの超長波(VLF)、30~300kHzの低周波(LF)、300kHz~3MHzの中波(MF)、3~30MHzの高周波(HF)、30~300MHzの超短波(VHF)、300MHz~3GHzの極超短波(UHF)、3~30GHzのマイクロ波(SHF)、30~300GHzのミリ波(EHF)、又はこれらの周波数の2つ以上の任意の組み合わせとして特徴付けられる。例えば、一般的に使用されている周波数の2つの非限定的な例として、一般的には13.56MHzである高周波エネルギーが有用なRFエネルギーであり、一般的には2.54GHzである極超短波エネルギーが有用なマイクロ波エネルギーである。
【0202】
第1のより詳しい実施形態の最適なアプリケーター23の特性は、周知のように、エネルギーの周波数及び出力レベルによって決定される。プラズマがラジオ波によって励起される場、例えば、アプリケーター23は電極であってもよい一方、プラズマがマイクロ波エネルギーによって励起される場合、例えば、アプリケーター23は導波管であってもよい。
【0203】
第1のより詳しい実施形態のアフターグロー領域24はプラズマ境界20の外側であるが近傍に位置しており、処理ガス17を含む。アフターグロー領域24は、プラズマ境界20の外側且つ反応チャンバー壁1及び蓋19内部の処理容積10全体であってもよく、又はアフターグロー領域24は、処理容積10の大きさ及びその中で維持される条件次第で処理容積10の一部であってもよい。アフターグロー領域24中の処理ガス17はプラズマの形成に十分な程度にはイオン化されないが、これは、プラズマなしで同じ温度及び圧力で同じガス組成で行うよりもこれが接触する表面を修飾できるようにするために十分なエネルギーを有する。
【0204】
当業者は、いくつかのガス条件が十分に化学的に反応性を有しており、プラズマがない場合に第1のより詳しい実施形態の装置9中の基材を修飾することを理解するであろう。領域の外側に目に見えるグロー放電を生じる所定の装置、プラズマ、ガス供給物、及び圧力若しくは真空条件についての、遠隔変換プラズマ処理装置の領域又はそれに隣接する領域がアフターグロー中にあるかどうかの試験は、第1のより詳しい実施形態のプラズマエネルギー18が存在しないか又は不十分である結果として、プラズマゾーンを通常画定する領域内にプラズマが存在しない場合の同じ装置、ガス供給物、及び圧力若しくは真空条件に曝された基材と比較して、所定の装置、プラズマ、ガス供給物、及び圧力下の領域に位置する基材が修飾されたか否かである。
【0205】
第1のより詳しい実施形態の遠隔変換プラズマ処理は、プラズマゾーン15内にプラズマを供給することによって行われ、これはアフターグロー領域又は遠隔変換プラズマ(同じ領域についての2つの用語)24内にアフターグローを生じさせる。これは、アフターグロー領域24内に少なくとも部分的に位置する基材表面と接触し、これを修飾する。
【0206】
遠隔変換プラズマ処理装置における第1のより詳しい実施形態の1つの選択肢として、プラズマガスは、プラズマゾーンに入り、励起してプラズマを形成し、それからより少ないエネルギーを有する場所であるアフターグロー領域24へと下流側に続き、その後、処理ガス17として定義され、基材と接触する。すなわち、プラズマゾーン15を通って流れるガスの少なくとも一部は、プラズマを形成するためにエネルギーが付与されてアフターグロー領域24まで続き、プラズマゾーン15中でよりエネルギーが大きくなり、これがアフターグロー領域24に入るときまでにエネルギーが小さくなる(ただし、プラズマゾーン15に入る前のガスと比較してなおエネルギーを有する)。この選択肢が採用される場合、プラズマ及びアフターグロー領域24は、ガスが連通し、同じガスの少なくとも一部が両方のゾーンを通って供給される。任意選択的に、ガスが流れる横断面全体にプラズマが生じない場合として、他のガスがプラズマゾーン15とアフターグロー領域24の両方を流れる一方、ガスの一部をプラズマゾーン15の境界20の外側にある状態にすることによってプラズマを回避させ、アフターグロー領域24には依然として流れるようにさせてもよい。
【0207】
第1のより詳しい実施形態の遠隔変換プラズマ処理装置の別の選択肢として、プラズマガスは、処理ガス17と異なる分子であってもよく(ただし、プラズマガスと処理ガスは同じ組成であっても異なる組成であってもよい)、プラズマガスはプラズマゾーン15内のみにあるかこれのみを通って供給され、アフターグロー領域24に存在しない一方、処理ガスはプラズマガスによってエネルギーを与えられるがプラズマガスとは別個であり、アフターグロー領域24内ではプラズマを形成するのに不十分なエネルギーのみを与えられる。
【0208】
第1のより詳しい実施形態のアプリケーター23の特性は、例えばプラズマエネルギー18の出力レベル及び周波数などの適用条件に応じて様々であってもよい。例えば、アプリケーターは電極、アンテナ、又は導波管などとして構成されてもよい。
【0209】
任意選択的に、プラズマが基材14と接触するか不必要に接近するのを防止するために、又は基材14が不均一に影響を受けることを防止するために、第1のより詳しい実施形態の処理領域にあるプラズマと少なくとも一部の基材14との間にシールド16が配置されてもよい。1つの例に関して、図1中の任意選択的なシールド16は、これをガス(特にアフターグローを形成する中性種の流れ)が流れることができるように穴が開けられていてもよいが、シールド16は、第1のより詳しい実施形態のシールドをプラズマが突き抜けるのを防止するために、プラズマを形成するエネルギーの選択に適するように構成されるか備えられる。例えば、プラズマを形成するエネルギー又はプラズマがこれを通過できないように、穴開けがサイズ調整されてもよく、又はシールドが電気的なバイアスがかけられているか電気的に接地されていてもよい。プラズマゾーンがシールドと交差する大きい領域を有している場合、この大きい領域は任意選択的に平らにされ、プラズマ境界20が第1のより詳しい実施形態の図1に示されている「平らなスポット」26を有し、これは処理される基材の表面と平行に配置することができるため、第1のより詳しい実施形態の図8に示されている後端部と一直線にならない基材14の他の部分よりも基材14の一部にはるかに近くに延在する先細の後端部で終端するプラズマと異なり、大きい領域全体にわたって等距離にある点において、この構成は有利である。
【0210】
第1のより詳しい実施形態のもう1つのシールドの選択肢は、シールドがガスもプラズマも通過させないように形成され、プラズマの一部又は全てと、処理領域の一部又は全てとの間の直接的な経路の障害として機能できることである。障害は、プラズマゾーン15からアフターグロー領域24へのガス横断面の流れの一部を塞ぐことができ、そのため、プラズマがこれを回避も通過もできない一方、イオン化ガスはシールドを避けるように流れて迂回経路によってアフターグロー領域24に到達することができる。
【0211】
第1のより詳しい実施形態のまた別のシールドの選択肢は、プラズマとの接触に耐えることができる基材の一部がプラズマに曝露され、基材14の別の部分又は遠隔変換プラズマ処理を受ける別の基材がプラズマから保護されるように、処理される基材14が処理中に装置内に位置できることである。
【0212】
第1のより詳しい実施形態の更に別のシールドの選択肢は、プラズマ領域と処理領域とを通過するガスの流れが、例えばプラズマ領域と処理領域との間を90°の角度向きを変えるなどで急激に曲げることができ、その結果、装置自体の壁が一定の処理条件下でのプラズマに対する視線(line-of-sight)から処理領域を保護できることである。
【0213】
第1のより詳しい実施形態の処理容積中の基材の方向は様々であってもよく、基材、アプリケーター、ガス、及び真空源は、任意選択的に、基材全体が遠隔変換プラズマに実質的に均一又は不均一に曝露されるように配置されてもよい。
【0214】
第1のより詳しい実施形態のもう1つの選択肢は、基材自体が反応器壁又は反応器壁の一部として機能することができ、その結果、反応器内に導入された処理ガス17が、反応器壁として機能する基材の一部を処理することである。
【0215】
第1のより詳しい実施形態のもう1つの選択肢は、処理ガス17の活性化剤である非重合性化合物又は水蒸気に加えて、反応器内に希釈ガスとして機能する第2の非重合性ガスを導入することである。希釈ガスは、所定の処理装置又は適用される条件でこれらが処理ガス17に分類されるほどには基材14と実質的に相互作用しない、流体入口13で導入されるガスとして定義される。希釈ガスは、プラズマの生成に寄与しても寄与しなくてもよい。希釈ガスは、入口13から、又は反応器内の別の場所から導入されてもよい。希釈ガスは、非重合性化合物又は水蒸気の添加速度の1体積%~10,000体積%、任意選択的に10体積%~1000体積%、任意選択的に100体積%~1000体積%の割合で添加されてもよい。
【0216】
第1のより詳しい実施形態のもう1つの選択肢として、非重合性化合物又は水蒸気の一部又は全ては、処理ガス17への途中のプラズマゾーン15を迂回するような方法で処理容積10に添加されてもよい。
【0217】
第1のより詳しい実施形態の図2は、図1の装置のもう1つの実施形態を示す。この装置も同様に、第1のより詳しい実施形態による遠隔変換プラズマ処理を行うために使用することができる。この実施形態のチャンバーは、反応チャンバー壁11によって画定され密閉される処理容積10を含み、反応チャンバー壁11は任意選択的に導電性でなくてもよい。処理容積10は流体供給源12(この事例では、処理容積10内に軸方向に発射する管状の流体入口13であるが、例えば「シャワーヘッド」型の流体供給源などの他の流体供給源も想定される)を備えている。任意選択的に、処理容積10は、処理チャンバー壁11により、又は容器若しくは処理される他の物品の内部の内腔により画定されてもよい。供給ガスは処理容積10内に供給される。環境大気圧以上の適切な条件下でのプラズマ処理も想定されるものの、プラズマ反応チャンバーは、減圧でプラズマ処理する用途のために、周囲圧力と比較して処理容積10を少なくともある程度脱気するための真空源22を任意選択的な特徴として含む。
【0218】
プラズマ反応チャンバーは、ここで、プラズマ反応チャンバーの少なくとも一部を取り囲む電極の形態である任意選択的な外側のアプリケーター23も含む。ラジオ波(RF)プラズマエネルギー源18は、アプリケーター23によって反応チャンバーと連結されており、ガスを励起する電力を供給してプラズマを形成する。プラズマは、任意選択的に流体供給源12の直近に制限される目に見えるグロー放電20を形成する。
【0219】
マイクロプレート14は、任意選択的に、処理が望まれるマイクロプレート14の表面(生体分子を含む溶液と接触/これを保持するように構成され、意図されている表面)が流体供給源12と向かい合うような方向に配置されてもよい。しかし、処理される表面は、加えて又は代わりに、図2に示されているように流体供給源12から見て外側を向いていてもよい。更に、図示の実施形態では、マイクロプレート14が流体供給源12の直接的な「視線」(すなわち遮られていない経路を有すること)にあることを阻止するために、マイクロプレート14はシールド16で保護される。実施において、流体供給源から1/2~10インチ(1~25cm)、任意選択的に2.5~5.5インチ(6~14cm)の水平距離でマイクロプレート14の表面を配置することが想定されているものの、非限定的な例として、マイクロプレート14のそれぞれの表面は、流体供給源から約2.75インチ(7cm)の水平距離に位置していてもよい。この方式では、プロセスは、マイクロプレート14の表面を処理するために、(直接プラズマと対照的に)遠隔変換プラズマを利用する。この非限定的な実施形態では、システムは、1バッチ当たり8分の総処理時間で1バッチ当たり20部品(マイクロプレート)の処理能力を有する。
【0220】
第1のより詳しい実施形態の図6は、図1の装置のもう1つの実施形態を示す。図6中のマイクロプレートを処理するために使用される方法は、ラジオ波(RF)プラズマ系を利用する。システムは、ガス供給インプットと、真空ポンプと、整合回路によって供給されるRF電力とを有する。マイクロプレートは、ウェル32を含む表側の面がチャンバーの周囲に沿ってプラズマと反対を向いてプラズマから保護される状態の方向で示されている。
【0221】
これらの詳細は、第1のより詳しい実施形態の図6中に示されており、ここには第1のより詳しい実施形態によって遠隔変換プラズマ処理を行うためにプラズマ反応チャンバー内で使用するための、第1のより詳しい実施形態の図2の装置の全ての要素を有する別の例示的な構成が示されている。第1のより詳しい実施形態のチャンバーは、流体供給源12(この事例では、処理容積10内に軸方向に発射する管状の流体入口13であるが、例えば「シャワーヘッド」型の流体供給源などの他の流体供給源も想定される)を有する反応チャンバー壁11によって画定され密閉される処理容積10を含んでいた。この実施形態の反応チャンバー壁11は、基材を出し入れすることができるように開けることができ、プロセスを収容するために及び任意選択的に処理容積を脱気するために密封することができる、取り外し可能な蓋13を備えていた。第1のより詳しい実施形態では、流体供給源12は、電気的に接地された金属素材から作られており、内部電極の形態でアプリケーターとしても機能した。よく知られているように、第1のより詳しい実施形態のプラズマは、任意選択的に内部電極なしで生じさせることができる。
【0222】
供給ガスは処理容積10内に供給された。プラズマ反応チャンバーは、処理容積10を少なくともある程度脱気するための真空源22の任意選択的な特徴を含んでいた。プラズマ反応チャンバー壁11は、プラズマ反応チャンバーの少なくとも一部を取り囲む外部アプリケーター又は電極の形態であるアプリケーター23としても機能した。この事例ではラジオ波(RF)源であるプラズマエネルギー源18は、プラズマを形成するためのガスを励起する電力を供給するために、反応チャンバー壁24によって画定されるアプリケーター23及び流体供給源12と連結された。プラズマゾーン15は、流体供給源12の直近にプラズマ境界20によって制限される目に見えるグロー放電を形成した。アフターグロー領域(別名遠隔変換プラズマ領域24)は、目に見えるグロー放電の境界20から半径方向又は軸方向に外側であり、処理される基材を越えて存在する領域である。
【0223】
表側の面28と裏面30とを有するマイクロプレート14は、その上の処理が望まれるマイクロプレート14の表側の面(生体分子を含む溶液と接触/これを保持するように構成され、意図されている表側の面)上のウェル32が流体供給源12と反対側に向き、裏面30が流体供給源12を向くような方向に配置された。マイクロプレート14の表側の面28は、マイクロプレートの表側の面28が流体供給源12の直接的な「視線」にあることを阻止するために、それ自体の裏面30で保護された。この方式では、方法は、ウェル32の表面を処理するために、(直接プラズマと対照的に)遠隔変換プラズマを利用した。
【0224】
第1のより詳しい実施形態の図7は、対応する特徴を有する図1の装置の別の実施形態を示す。図7の実施形態は、基材14のより広い領域全体にわたって処理ガス17をより均一に生成及び塗布するための、「シャワーヘッド」の流体入口13とアプリケーター23としての平板電極とを備えている。
【0225】
第1のより詳しい実施形態の図8は、対応する特徴を有する図1の装置の別の実施形態を示す。図8の実施形態は、導波管として構成されたアプリケーター23を通って運ばれるマイクロ波プラズマエネルギー18を供給する。この実施形態では、プラズマゾーン15と基材支持体21とは、管路によって連結された別個の容器内に準備される。
【0226】
第1のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、ウシ血清アルブミン(BSA);フィブリノゲン(FBG);例えば血液セロトランスフェリン(又はシデロフィリン、別名トランスフェリン)などのトランスフェリン(TFN);ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン);ミルクトランスフェリン;卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);及び膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;例えば六量体インスリン、単量体インスリン、ブタインスリン、ヒトインスリン、組み換えインスリン、及び医薬品グレードのインスリンなどのインスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;これらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体、並びにこれらの2つ以上の組み合わせの少なくとも1つに関しての未調整且つ未変換の表面の生体分子回収率よりも大きい生体分子回収率を有する。
【0227】
第1より詳しい実施形態のある任意選択的な実施形態では、プラズマ処理プロセスは、遠隔変換プラズマを使用する以下の2つの工程:(1)酸素プラズマ工程(より一般的には非重合性化合物のプラズマ工程)、及びそれに続く(2)水蒸気プラズマ工程を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。前述の工程の前、その間、又はその後に追加的な工程が付加されてもよく、その場合でも第1のより詳しい実施形態の範囲内のままであることを理解すべきである。また、酸素プラズマ工程は、窒素又は本明細書に列挙されている任意の非重合性ガスなどを含む(ただし、これらに限定されない)、酸素への任意選択的なガスを利用できることも理解すべきである。第1のより詳しい実施形態の別の任意選択的な実施形態として、プラズマ処理プロセスは、1つのプラズマ工程に組み込まれた酸素と水蒸気との遠隔変換プラズマの使用を含むか、それらから本質的になるか、又はそれらからなる。この任意選択的な実施形態は、本明細書における予備的な調整工程がない変換工程として特徴付けられる。
【0228】
第1のより詳しい実施形態の調整工程(非重合性化合物のプラズマ工程)及び2番目の処理工程(水蒸気プラズマ工程)のための任意選択的なプロセスパラメータの範囲は、第1のより詳しい実施形態の表1中に示されている。
【0229】
【表2】
【0230】
任意選択的に、非重合性ガスのプラズマ工程前に前処理工程が必要とされない。
【0231】
任意選択的に、第1のより詳しい実施形態において、基材表面を処理するために使用される遠隔変換プラズマは、RFにより生成するプラズマであってもよい。任意選択的に、第1のより詳しい実施形態と合致するプラズマ強化化学蒸着(PECVD)又は他のプラズマプロセスが使用されてもよい。
【0232】
任意選択的に、プラズマ反応チャンバー中の処理容積は、100mL~50L、好ましくは特定の用途のために8L~20Lであってもよい。任意選択的に、処理容積は、他の形状及び構成も想定されるものの、概して円筒状であってもよい。
【0233】
処理される基材の開示
これら及び他の方法によって得られる処理された基材、及び特に処理された接触表面が想定される。
【0234】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、X線光電子分光(XPS)によって測定される1~30原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に2~20原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に4~12原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に1~2原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に2~3原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に3~4原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に4~5原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に5~6原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に6~7原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に7~8原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に8~9原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に9~10原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に10~11原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に11~12原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に12~13原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に13~14原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に14~15原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に15~16原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に16~17原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に17~18原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に18~19原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に19~20原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に20~21原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に21~22原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に22~23原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に23~24原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に24~25原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に25~26原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に26~27原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に27~28原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に28~29原子%のグラフト化された酸素、任意選択的に29~30原子%のグラフト化された酸素を含む炭素化合物又はケイ素化合物を含む。
【0235】
変換され且つ任意選択的に調整された接触表面上の具体的な種(典型的には化学元素)の「原子%」又は「at.%」は、XPSによって検出される全ての種の原子、分子、又は部位の数で割った、XPSによって検出される具体的な種の原子、分子、又は部位の数に100%を乗じたものである。したがって、89個の炭素原子と、5個の窒素原子と、11個の炭素原子とが基材上で検出された全ての原子である場合、炭素の原子%は、
100%×89/(89+5+11)=84.8at.%C
である。
【0236】
本明細書において、「グラフト化された酸素」又は別のグラフト種とは、基材表面の原子又は原子群に化学的に(より具体的には共有結合的に)結合している、XPS分析により検出される酸素又は別のグラフト種を指す。基材表面でポリマーの分子上にグラフトされている種は、典型的にはポリマー分子の両端間にグラフトされ、ポリマー主鎖中に挿入されるかペンダント基として結合される。
【0237】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、X線光電子分光(XPS)によって測定される0~30原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に0.1~30原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に0.1~20原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に0.1~10原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に0.1~1原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に1~2原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に2~3原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に3~4原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に4~5原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に5~6原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に6~7原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に7~8原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に8~9原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に9~10原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に10~11原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に11~12原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に12~13原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に13~14原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に14~15原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に15~16原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に16~17原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に17~18原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に18~19原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に19~20原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に20~21原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に21~22原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に22~23原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に23~24原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に24~25原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に25~26原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に26~27原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に27~28原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に28~29原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に29~30原子%のグラフト化された窒素を含む炭素化合物又はケイ素化合物を含む。
【0238】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、X線光電子分光(XPS)によって測定される0~30原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に0~20原子%のグラフト化された窒素、0.1~30原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に0.1~20原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に0.1~10原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に0.1~1原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に1~2原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に2~3原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に3~4原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に4~5原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に5~6原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に6~7原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に7~8原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に8~9原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に9~10原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に10~11原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に11~12原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に12~13原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に13~14原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に14~15原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に15~16原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に16~17原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に17~18原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に18~19原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に19~20原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に20~21原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に21~22原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に22~23原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に23~24原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に24~25原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に25~26原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に26~27原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に27~28原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に28~29原子%のグラフト化された窒素、任意選択的に29~30原子%のグラフト化された窒素を更に含む。
【0239】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、各場合に炭素又はケイ素と結合するための、例えば-N+-、-N-、=O、-O-、-O2、-O3、又は≡Nの1つ以上など、X線光電子分光(XPS)によって測定されるグラフトされている水素結合受容性官能基を含む。
【0240】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、極性のグラフト種、任意選択的にX線光電子分光(XPS)によって測定されるC=O(カルボニル)、C-O-C(エーテル)、C-N-C(アミン)、C-N+-C(アンモニウム)、CO2(カルボキシル)、CO3、Si=O、Si-O-Si、Si-N-Si、Si-N+-Si、SiO2、SiO3、C≡N、Si≡N、又はこれらの2つ以上の組み合わせの1つ以上で修飾された炭素化合物又はケイ素化合物を含む。
【0241】
グラフト種
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、極性グラフト種で修飾された炭化水素を含み、C=O(カルボニル)、C-O-C(エーテル)、C-N-C(アミン)、CO2(カルボキシル)、CO3、N-C3、N+4、C≡N、又はこれらのグラフト種の2つ以上の組み合わせを形成している炭素の総原子割合は、基材中の炭素又は水素と結合している炭素の総原子割合の1~40%、任意選択的に5~30%、任意選択的に10~20%である。
【0242】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、極性グラフト種で修飾されたケイ素化合物を含み、Si=O、Si-O-Si、Si-N-Si、SiO2、SiO3、N-Si3、N+Si4、Si≡N、又はこれらの2つ以上の組み合わせを形成するケイ素の総原子割合は、基材中の酸素と結合しているケイ素の総原子割合の1~40%、任意選択的に5~30%、任意選択的に10~20%である。
【0243】
任意の実施形態における基材のある態様では、C=O(カルボニル)、C-O-C(エーテル)、C-N-C(アミン)、CO2(カルボキシル)、又はCO3、又はこれらの2つ以上の組み合わせを形成する炭素の総原子割合は、基材中の炭素又は水素と結合している炭素の総原子割合の1~40%、任意選択的に5~30%、任意選択的に10~20%である。
【0244】
任意の実施形態における基材のある態様では、C-O-C(エーテル)又はC-N-C(アミン)、又はこの2つの組み合わせを形成する炭素の総原子割合は、基材中の炭素又は水素と結合している炭素の総原子割合の1~40%、任意選択的に5~30%、任意選択的に10~20%である。
【0245】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、0°~90°、任意選択的に20°~80°、任意選択的に40°~80°、任意選択的に50°~70°、任意選択的に55°~65°の蒸留水との接触角を有する。
【0246】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、少なくとも40%、少なくとも45%、任意選択的に少なくとも50%、任意選択的に少なくとも55%、任意選択的に少なくとも60%、任意選択的に少なくとも65%、任意選択的に少なくとも70%、任意選択的に少なくとも75%、任意選択的に少なくとも80%、任意選択的に少なくとも85%、任意選択的に少なくとも90%、任意選択的に少なくとも95%の生体分子回収率を有する。
【0247】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、容器の内腔表面である。
【0248】
任意の実施形態における基材のある態様では、生体分子回収率は、哺乳類血清アルブミン;ウシ血清アルブミン(BSA);フィブリノゲン(FBG);トランスフェリン(TFN);卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;インスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;及びこれらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体の少なくとも1つに関して決定される。
【0249】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、熱可塑性材料、例えば熱可塑性樹脂、例えば射出成形された熱可塑性樹脂を含む。
【0250】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、例えばオレフィンポリマー、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリメチルペンテン、ポリスチレン、水素化ポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン(PCHE)、又はこれらの2つ以上の組み合わせなどの炭化水素を含む。変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、任意選択的に、例えばポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、ポリ乳酸、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル(PAN)、アイオノマー樹脂、Surlyn(登録商標)アイオノマー樹脂、又は上述の材料の任意の2つ以上の組み合わせ、複合材料、若しくはブレンド物などのヘテロ原子置換炭化水素ポリマーを含む。
【0251】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、PECVDにより堆積したSiOxyz又はSiNxyzのコーティング又は層であり、この中でX線光電子分光(XPS)により測定されるxは約0.5~約2.4であり、XPSにより測定されるyは約0.6~約3であり、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)により測定されるzは約2~約9である。
【0252】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、SiOx(XPSにより測定されるxは約1.5~約2.9である)、任意選択的に周期表のIII族及び/又はIV族(例えば、III族ではホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スカンジウム、イットリウム、又はランタン(アルミニウム及びホウ素が好ましい)、及びIV族ではケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、又はトリウム(ケイ素及びスズが好ましい))からの金属元素の化合物である有機金属前駆体の酸化物又は窒化物のバリアコーティング又は層である。
【0253】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、実験器具製品の接触表面である。例えば、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、限定するものではないが、マイクロプレート、遠沈菅、ピペットチップ、ウェルプレート、マイクロウェルプレート、ELISAプレート、マイクロタイタープレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、バイアル、瓶、広口瓶、シリンジ、カートリッジ、ブリスター包装、アンプル、真空採血管、試料管、遠沈管、又はクロマトグラフィーバイアルの接触表面であってもよい。
【0254】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、容器の内腔表面である。
【0255】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、水性タンパク質と接触する。任意の実施形態における基材のある態様では、水性タンパク質は、例えばウシ血清アルブミン(BSA)などの哺乳類血清アルブミン;フィブリノゲン(FBG);例えば血液セロトランスフェリン(又はシデロフィリン、別名トランスフェリン)などのトランスフェリン(TFN);ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン);ミルクトランスフェリン;卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);及び膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;例えば六量体インスリン、単量体インスリン、ブタインスリン、ヒトインスリン、組み換えインスリン、及び医薬品グレードのインスリンなどのインスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;又はこれらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、若しくは成熟変異体;又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む。
【0256】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、ウシ血清アルブミン(BSA);フィブリノゲン(FBG);例えば血液セロトランスフェリン(又はシデロフィリン、別名トランスフェリン)などのトランスフェリン(TFN);ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン);ミルクトランスフェリン;卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);及び膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;例えば六量体インスリン、単量体インスリン、ブタインスリン、ヒトインスリン、組み換えインスリン、及び医薬品グレードのインスリンなどのインスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;又はこれらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、若しくは成熟変異体の少なくとも1つに関しての未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きいタンパク質回収率を有する。
【0257】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、66,000ダルトンの原子質量を有するウシ血清アルブミン(BSA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きいタンパク質回収率を有する。
【0258】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、BSAについて、70%超、任意選択的に80%超、任意選択的に90%超、任意選択的に最大100%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0259】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、340,000ダルトンの原子質量を有するフィブリノゲン(FBG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0260】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、FBGについて、20%超、任意選択的に40%超、任意選択的に60%超、任意選択的に80%超、任意選択的に最大84%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0261】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、80,000ダルトンの原子質量を有するトランスフェリン(TFN)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0262】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、TFNについて、60%超、任意選択的に65%超、任意選択的に69%超、任意選択的に最大70%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0263】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、45,000ダルトンの原子質量を有するプロテインA(PrA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0264】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrAについて、9%超、任意選択的に20%超、任意選択的に40%超、任意選択的に60%超、任意選択的に最大67%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0265】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、20,000ダルトンの原子質量を有するプロテインG(PrG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0266】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrGについて、12%超、任意選択的に20%超、任意選択的に40%超、任意選択的に60%超、任意選択的に80%超、任意選択的に最大90%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0267】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)タンパク質低結合96ウェル丸底プレート上で、66,000ダルトンの原子質量を有するウシ血清アルブミン(BSA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。LoBind(登録商標)はEppendorf AG,Hamburg,Germanyの商標である。
【0268】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、BSAについて、95%超の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0269】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、340,000ダルトンの原子質量を有するフィブリノゲン(FBG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0270】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、FBGについて、72%超の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0271】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、80,000ダルトンの原子質量を有するトランスフェリン(TFN)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0272】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、TFNについて、69%超の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0273】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、45,000ダルトンの原子質量を有するプロテインA(PrA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0274】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、20,000ダルトンの原子質量を有するプロテインG(PrG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0275】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrGについて、96%超の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0276】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、66,000ダルトンの原子質量を有するウシ血清アルブミン(BSA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0277】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、BSAについて、60%超、任意選択的に最大86%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0278】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、340,000ダルトンの原子質量を有するフィブリノゲン(FBG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0279】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、FBGについて、50%超、任意選択的に最大65%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0280】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、80,000ダルトンの原子質量を有するトランスフェリン(TFN)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0281】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、TFNについて、50%超、任意選択的に最大60%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0282】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、45,000ダルトンの原子質量を有するプロテインA(PrA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0283】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrAについて、25%超、任意選択的に最大56%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0284】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、20,000ダルトンの原子質量を有するプロテインG(PrG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0285】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrGについて、60%超、任意選択的に最大75%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0286】
任意の実施形態における基材のある態様では、炭素化合物又はケイ素化合物は、ポリプロピレン、任意選択的にポリプロピレンホモポリマーから本質的になる。
【0287】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理されたポリプロピレン接触表面は、本明細書の手順後、66,000ダルトンの原子質量を有するウシ血清アルブミン(BSA)について、未調整且つ未変換のポリプロピレン接触表面のタンパク質回収率よりも大きいタンパク質回収率を有する。
【0288】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理されたポリプロピレン接触表面は、本明細書の手順後、340,000ダルトンの原子質量を有するフィブリノゲン(FBG)について、未調整且つ未変換のポリプロピレン接触表面のタンパク質回収率よりも大きいタンパク質回収率を有する。
【0289】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理されたポリプロピレン接触表面は、本明細書の手順後、80,000ダルトンの原子質量を有するトランスフェリン(TFN)について、未調整且つ未変換のポリプロピレン接触表面のタンパク質回収率よりも大きいタンパク質回収率を有する。
【0290】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理されたポリプロピレン接触表面は、本明細書の手順後、45,000ダルトンの原子質量を有するプロテインA(PrA)について、未調整且つ未変換のポリプロピレン接触表面のタンパク質回収率よりも大きいタンパク質回収率を有する。
【0291】
任意の実施形態における基材のある態様では、処理されたポリプロピレン接触表面は、本明細書の手順後、20,000ダルトンの原子質量を有するプロテインG(PrG)について、未調整且つ未変換のポリプロピレン接触表面のタンパク質回収率よりも大きいタンパク質回収率を有する。
【0292】
任意の実施形態における基材のある態様では、炭素化合物又はケイ素化合物は、ポリプロピレンから本質的になり、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、以下の特性の任意の1つ以上を有する:
・0~90°の水接触角;
・XPSによって定量化される、処理前の炭素化合物又はケイ素化合物よりも少ない、基材中の炭素又は水素と結合している炭素の総原子割合の水素結合供与性官能基(例えば、-OH、-N-H、-N-H2、-N+3、又はこれらの2つ以上の組み合わせ);
・XPSによって定量化される、処理前の炭素化合物又はケイ素化合物よりも多い、基材中の炭素又は水素と結合している炭素の総原子割合の水素結合受容性官能基(例えば、-C=O(カルボニル)、C-O-C(エーテル)、C-N-C(アミン)、C-N+-C(アンモニウム)、CO2(カルボキシル)、若しくはCO3、又はこれらの2つ以上の組み合わせ);及び
・静電荷センサー - 3M Static Sensor718を使用して定量化される、例えば2キロボルト毎インチ(2kV/in、5kV/cm)未満、任意選択的に3kV/cm未満、任意選択的に2kV/cm未満、任意選択的に1kV/cm未満の、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面上への静電荷の帯電などの中性の電荷又は中性に近い電荷。
【0293】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、XPSによって定量化される、処理前の炭素化合物又はケイ素化合物よりも少ない、基材中の炭素又は水素と結合している炭素の総原子割合の水素結合供与性官能基(例えば、-OH、-N-H、-N-H2、-N+3、又はこれらの2つ以上の組み合わせ)を有する。
【0294】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、XPSによって定量化される、処理前の炭素化合物又はケイ素化合物よりも多い、基材中の炭素又は水素と結合している炭素の総原子割合の水素結合受容性官能基(例えば、-C=O(カルボニル)、C-O-C(エーテル)、C-N-C(アミン)、C-N+-C(アンモニウム)、CO2(カルボキシル)、若しくはCO3、又はこれらの2つ以上の組み合わせ)を有する。
【0295】
任意の実施形態における基材のある態様では、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面は、前述の通り定量化される、例えば2キロボルト毎インチ(2kV/in、5kV/cm)未満、任意選択的に3kV/cm未満、任意選択的に2kV/cm未満、任意選択的に1kV/cm未満の、変換され且つ任意選択的に調整された接触表面上への静電荷の帯電などの中性の電荷又は中性に近い電荷を有する。
【0296】
PECVDコーティング及び層
生体分子の付着を低減するためのもう1つの手法は、それぞれXPSによって測定される(i)SiOx(xは約0.5~約2.4である)の原子割合のバリアコーティング若しくは層;又はSiOxyz(xは約0.5~2.4であり、yは約0.6~約3である)の原子割合のpH保護コーティング若しくは層を接触表面として付与することである。基材上にこれらを製造するためのそのようなコーティング及び方法は、WO2014US23813に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0297】
実施例
以降の実施例を参照しつつ、様々な態様を更に詳細に説明するが、第1のより詳しい実施形態はこれらに限定されると見なされないと理解すべきである。
【0298】
全ての実施形態の試験
実施例中に別段の指示がない限り、全ての実施形態におけるプレートの試験に以降の手順を使用した。
【0299】
目的:この実験の目的は、表面がコーティングされているマイクロタイタープレート(マイクロタイタープレートは本開示では「マイクロプレート」とも呼ばれ、ウェルを有するタイプの「プレート」と呼ばれる場合もあり、本開示では3つの用語の全てが同じ意味を有する)に経時的に結合するタンパク質の量を決定することであった。
【0300】
材料:BIOTEK(登録商標)Synergy H1マイクロプレートリーダー及びBIOTEK Gen5(登録商標)ソフトウェア、MILLIPORE(登録商標)MILLI-Q(登録商標)Water System(Merck KGAA,Darmstadt,Germanyより販売)、MILLIPORE(登録商標)Direct Detectスペクトロメーター、ALEXA FLUOR(登録商標)488標識タンパク質(ウシ血清アルブミン(BSA)、フィブリノゲン(FBG)、トランスフェリン(TFN)、プロテインA(PrA)、及びプロテインG(PrG)(Molecular Probes,Inc.,Eugene,Oregon USAにより販売)、10Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、NUNC(登録商標)黒色96ウェルオプティカルボトムプレート、1Lのプラスチック瓶、25~100mLのガラスビーカー、アルミニウム箔、1~10mLのピペット、100~1000μLのピペット、0.1~5μLのピペット、50~300μLのマルチチャンネルピペット。
【0301】
上で挙げたものの1つ以上である選択されたタンパク質を、単一の表面コーティングされたマイクロプレート上で試験した。各タンパク質は、ALEXA FLUOR(登録商標)488で標識された蛍光標識粉末として受け取った。
・5mgのBSA:66,000Da
・5mgのFBG;340,000Da
・5mgのTFN:80,000Da
・1mgのPrA:45,000Da
・1mgのPrG:20,000Da
【0302】
受け取った後、各バイアルのタンパク質を追加的に光から保護するためにアルミニウム箔で包み、適宜ラベル付けし、貯蔵のために冷凍庫に入れた。
【0303】
1XのPBS(リン酸緩衝溶液)の溶液を10XのPBSのストック溶液から調製した。100mLの10XのPBSをプラスチックの1L瓶に添加し、次いでMILLIPORE(登録商標)Q-podからの900mLの蒸留水を添加して1XのPBSを形成した。100~1000μLのピペットを使用して、1000μLの1XのPBSをタンパク質の各バイアル内に別々にピペットで入れることでタンパク質溶液を作った。その後、溶液を完全に混合するために各バイアルを逆にしてボルテックスした。
【0304】
その後、各タンパク質をMILLIPORE(登録商標)Direct Detect上で試験して正確なタンパク質濃度を得た。0.1~5μLのピペットを使用して、2μLのPBSの試料をDirect Ditectの読み降りカードの1つ目のスポットの上に載せ、ソフトウェア中のブランクとして印を付けた。1つ目のタンパク質の2μLの試料を、その後、残りの3つのスポット上に載せ、試料として印を付けた。カードを読み取った後、3つのタンパク質濃度の平均をmg/mL単位で記録した。これを残りの4つのタンパク質について繰り返した。その後、タンパク質溶液を保管のために冷蔵庫内に入れた。
【0305】
各タンパク質について、1XのPBSを用いて標準曲線を作成した。標準曲線は25nMで開始し、例えば12.5nM、6.25nM、3.125nM、及び1.5625nMの1つ以上などの他の試験濃度を得るために2倍段階希釈を行った。いくつかの場合、0.5nMまでの追加的な希釈液も調製した。標準曲線から調製した12.5nMの溶液を試験に使用した。
【0306】
全ての試験するタンパク質についての希釈を行った後、各タンパク質の標準曲線を作成し、以下の通り試験した。25~100mLのガラスビーカーを5列に並べた。各ビーカーをアルミニウム箔で包み、ビーカー内の溶液の対応する曲線のタンパク質の名称及び濃度でラベル付けした。列1はBSAについての標準曲線であり、列2はFBG、列3はTFN、列4はPrA、列5はPrGであった。したがって、1番目の列は、以下の通りラベル付けした:BSA 25nM、BSA 12.5nM、BSA 6.25nM、BSA 3.125nM、BSA 1.56nM。
【0307】
標準曲線を作成した後、これを、マイクロプレートリーダーを使用して試験し、その後、以下の標準曲線を作成及び試験し、これを同じように続けた。
【0308】
分析のために、BIOTEK(登録商標)Synergy H1マイクロプレートリーダー及びBIOTEK Gen5(登録商標)ソフトウェアを使用した。
【0309】
1つ目の標準曲線を作成した後、Synergy H1上で試験される準備が整った。50~300μLのマルチチャンネルピペットを使用して、黒色オプティカルボトムプレートのウェルA1~A4に200mLの1XのPBSをピペットで入れた。次いで、200μLの25nM溶液をウェルB1~B4にピペットで入れ、200μLの12.5nM溶液をウェルC1~C4にピペットで入れ、200μLの12.5nM溶液をウェルD1~D4にピペットで入れ、200μLの12.5nM溶液をウェルE1~E4にピペットで入れ、200μLの12.5nM溶液をウェルF1~F4にピペットで入れ、及び200μLの12.5nM溶液をウェルG1~G4にピペットで入れた。同様の手順を使用して、他のタンパク質溶液の希釈液を用いてウェルを満たした。
【0310】
マイクロプレートを溶液で満たした後、これをアルミニウム箔で包み、区分と時間とをラベル付けした。
【0311】
1.5時間後、50~300μLのマルチチャンネルピペットを使用し、アルミニウム箔を突き破って、1.5時間の列(列1)のウェルから200μLのBSA溶液をピペットで出して黒色オプティカルボトムマイクロプレート内に入れた。黒色マイクロプレートをマイクロプレートトレー内に入れた。次いで、対応する実験を開くことによって他の4つのタンパク質を同じ方法で読み込んだ。同じことを2.5時間、4.5時間、及び24時間後に行った。24時間の読み取り後、メニューバーから「Plate→Export」をその後選択した。エクセル表計算が現れ、その後、所望の名前で所望の位置に保存することができる。
【0312】
BIOTEK Gen5(登録商標)ソフトウェアによって生成したデータを使用して、標準曲線とSPL1との両方からの12.5nM溶液濃度を平均化した。1.5時間時点の4つのウェルの濃度を平均化した。その後、これを2.5時間、4.5時間及び24時間についても行った。その後、各時点の平均濃度を最初の12.5nMの平均濃度で割って100を乗じることで、各時点でのパーセント回収率を得た。
%回収率@1.5時間=[平均BSA 1.5時間]/[平均12.5nM溶液]*100
【0313】
もう1つの態様では、実施形態(i)及び(ii)のいずれも、例えば化学蒸着(CVD)を使用する、例えば基材への生体分子に関する非結合特性によって特徴付けられる、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有する表面コーティングを適用する方法に関する。任意の実施形態において、基材は、ガラス又はポリマーなどの熱可塑性樹脂(例えば、ポリカーボネートポリマー、オレフィンポリマー、環状オレフィンコポリマー、ポリプロピレンポリマー、ポリエステルポリマー、ポリエチレンテレフタレートポリマー、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせ)を含んでいてもよい。
【0314】
非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティング
その主な態様では、実施形態(i)及び(ii)のいずれも、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有する容器の表面コーティングを提供する。この非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有する表面コーティングは、有利には以下の通りの方法を行うことによって作製される。
【0315】
表面の修飾は、例えば様々な条件でポリプロピレンマイクロプレート(NUNC、96ウェル、0.5ml、丸底)などの市販の製品に対して行われてもよい。例えば、実施形態(i)及び(ii)のいずれも、i)例えばヒドロキシル化プラスチック又はSiOxでコーティングされたガラス表面などを得るための基材調整段階;ii)非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有する表面コーティングを得るための共重合段階の2つの段階を含み得る。
【0316】
実施形態(i)及び(ii)のいずれの方法も、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有する表面コーティングを生じさせる。例えば、本発明は、生体分子の低結合性又は非結合性を示す、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有する表面がコーティングされた表面を得るための方法を提供する。本発明は、生体分子の吸着を抑制する、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有する表面がコーティングされた表面を得るための方法も提供する。好ましい実施形態では、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングは、準備された基材に共有結合するが、準備された基材と他の方式で結合してもよい。
【0317】
共重合可能なシロキサンモノマー
実施形態(i)は、例えば(3-アクリルオキシプロピル)トリメトキシシラン;メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン;n-(3-アクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン;o-(メタクリルオキシエチル)-n-(トリエトキシシリルプロピル)ウレタン;n-(3-メタクリルオキシ-2-ヒドロキシプロピル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン;メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン;メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン;メタクリルオキシプロピルトリエトキシシラン;(3-アクリルオキシプロピル)メチル-ジメトキシシラン;(メタクリルオキシメチル)メチル-ジエトキシシラン;(メタクリルオキシメチル)メチル-ジメトキシシラン;メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン;メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン;メタクリルオキシプロピルジメチルエトキシシラン;メタクリルオキシプロピルジメチルメトキシシランなどの共重合可能なシロキサンモノマーを利用する。
【0318】
共重合可能なエポキシポリマー
実施形態(ii)は、例えば共重合可能なエポキシモノマーを利用する場合がある。重合可能なエポキシモノマーの非限定的な例としては、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート(GMA)、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルブト-2-エノエート、(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、(E)-(オキシラン-2-イル)メチルシンナメート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンブタノエート、1-(オキシラン-2-イル)プロピルアクリレート、1-(オキシラン-2-イル)エチルメタクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル3-メチル-2-メチレンブタノエート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンペンタノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレート、2-(オキシラン-2-イル)プロパン-2-イルアクリレート、(オキシラン-2-イル)メチル2-メチレンヘキサノエート、(3-メチルオキシラン-2-イル)メチルメタクリレート、及び(3,3-ジメチルオキシラン-2-イル)メチルアクリレートが挙げられる。これらのモノマーは単独で使用されてもこれらの混合物として使用されてもよい。
【0319】
シリルアミンカップリング剤
実施形態(ii)は、シリルアミンカップリング剤を利用する場合がある。非限定的な例としては、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシラン、M-アミノフェニルトリメトキシシラン、P-アミノフェニルトリメトキシシラン、O-アミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリス(メトキシエトキシエトキシ)シラン、11-アミノウンデシルトリエトキシシラン、3-(M-アミノフェノキシ)プロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルシラントリオール、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルジイソプロピルエトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]エチレンジアミン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノメチルトリエトキシシラン、N-(6-アミノヘキシル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-11-アミノウンデシルトリメトキシシラン、(アミノエチルアミノメチル)フェネチルトリメトキシシラン、N-3-[(アミノ(ポリプロピレンオキシ)]アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルシラントリオール、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノイソブチルメチルジメトキシシラン、(アミノエチルアミノ)-3-イソブチルジメチルメトキシシラン、(3-トリメトキシシリルプロピル)ジエチレントリアミン、N-ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルトリメトキシシラン、N-メチルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-(N-アリルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、(シクロヘキシルアミノメチル)トリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノプロピルトリメトキシシラン、N-エチルアミノイソブチルメチルジエトキシシラン、(フェニルアミノメチル)メチルジメトキシシラン、N-フェニルアミノメチルトリエトキシシラン、N-メチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(N-スチリルメチル-2-アミノエチルアミノ)-プロピルトリメトキシシラン塩酸塩、(2-N-ベンジルアミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)アミン、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス[(3-トリメトキシシリル)プロピル]-エチレンジアミン、ビス(メチルジエトキシシリルプロピル)アミン、N-アリル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、N-アミノエチル-アザ-2,2,4-トリメチル-シラシクロペンタン、N-(3-アミノプロピルジメチルシラ)アザ-2,2-ジメチル-2-シラシクロペンタン、N-N-ブチル-アザ-2,2-ジメトキシシラ-シクロペンタン、2,2-ジメトキシ-1,6-ジアザ-2-シラシクロ-オクタン、N-メチル-アザ-2,2,4-トリメチルシラ-シクロペンタン、及び1-(N-(N’,N’-ジメチルアミノエチル))-1-アザ-2,2,4-トリメチル-2-シラシクロペンタンが挙げられる。これらの試薬は単独で使用されてもこれらの混合物として使用されてもよい。
【0320】
共重合可能な双性イオン性モノマー
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、例えば共重合可能な双性イオン性モノマーを利用することができる。共重合可能なモノマーの非限定的な例としては、例えば2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)、2-(メタクリルオキシ)エチル2-(ジメチルアンモニオ)エチルホスフェート(別名=2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)エチルカルボキシレート、2-(メタクリルオキシ)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート、2-(メタクリルアミド)エチル-2-(ジメチルアンモニオ)プロピルスルホネート、リン酸2-(メタクリロイルオキシ)エチル2-(トリメチルアンモニオ)エチルエステル)、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリプロピルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリブチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシブチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-3’-(トリメチルアンモニオ)プロピルホスフェート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、4-(メタ)アクリロイルオキシブチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、5-(メタ)アクリロイルオキシペンチル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、6-(メタ)アクリロイルオキシヘキシル-4’-(トリメチルアンモニオ)ブチルホスフェート、2-(ビニルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンゾイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(スチリルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(p-ビニルベンジル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニル)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アクリロイルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ビニルカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(ブチロイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2-(クロトノイルオキシ)エチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、エチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ブチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル-(2’-トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレート、β-カルボキシエチル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレート、及びスルホプロピル-3,3-ジメチルアンモニウムエチルメタクリレートが挙げられる。これらのモノマーは単独で使用されてもこれらの混合物として使用されてもよい。
【0321】
実施形態(i)で有用なラジカル重合性モノマーの例には、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート及び2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートモノマー;ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、及びメトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレートなどのポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートモノマー;フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヘキサヒドロフタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n=2~5)モノ(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネートなどのω-カルボキシ(メタ)アクリレート;N-ビニル-2-ピロリドン、ビニルピリジン、(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、及びグリコ-2-ヒドロキシエチルモノメタクリレート(GEMA)も含まれる。
【0322】
実施形態(i)について、コポリマーは、例えば、溶媒中、任意選択的に重合開始剤の存在下で、少なくとも1つのモノマーと任意選択的な1つ以上のモノマーとを含むモノマー組成物をラジカル重合することによって得ることができる。ラジカル重合は、窒素、アルゴン、二酸化炭素、又はヘリウムなどの不活性ガスで雰囲気を置換した系内で行われてもよい。
【0323】
実施形態(ii)について、コポリマーは、例えば、溶媒中、任意選択的に重合開始剤の存在下で、少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと、任意選択的な1つ以上の双性イオン性モノマーと、少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーと、任意選択的な1つ以上の共重合可能なエポキシモノマーとを含むモノマー組成物をラジカル重合することによって得ることができる。重合は、窒素、アルゴン、二酸化炭素、又はヘリウムなどの不活性ガスで雰囲気を置換した系内で行われてもよい。
【0324】
実施形態(i)及び(ii)のいずれについても、重合開始剤に関して制限はない。ラジカル重合のための従来の重合開始剤を使用することができる。開始剤の例としては、t-ブチルペルオキシピバレート、t-ブチルペルオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルペルオキシアセテート、1,1,3,3-テトラメチルブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、コハク酸ペルオキシド、ベンゾイルペルオキシド、3,5,5-トリメチルヘキサノイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルヒドロペルオキシド、tert-ブチルペルアセテート、クメンヒドロペルオキシド、2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン、ジクミルペルオキシド、2,5-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-2,5-ジメチルヘキサン、2,4-ペンタンジオンペルオキシド、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン,1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、ベンゾイルペルオキシド、2-ブタノンペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシ及び2-エチルヘキシルカーボネートなどの有機過酸化物;,;2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)ジヒドロクロリド、ジメチル2,2’-アゾビスイソブチレート、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)-プロピオンアミド、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミジン)、及び2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオニトリル)などのアゾ化合物;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸-亜硫酸水素塩系、及びヒドロキシメタンスルフィン酸などの無機ラジカル開始剤が挙げられる。これらの重合開始剤は単独で使用されてもこれらの混合物として使用されてもよい。
【0325】
実施形態(i)及び(ii)のいずれについても、使用される重合開始剤の量は、望ましくはモノマーの総量100重量部当たり、0.001重量部~10重量部、より好ましくは0.01重量部~5重量部である。
【0326】
実施形態(i)及び(ii)のいずれについても、コポリマーの構造単位として機能するモノマーを溶解させコポリマーと反応しない溶媒である限り、コポリマーを製造するための溶媒に関して制限はない。溶媒は混合溶媒であってもよい。溶媒は、例えば、水、メタノール、エタノール、エタノール、イソプロパノール、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、塩化メチレン、1,2-ジクロロエタン等、又はこれらの組み合わせであってもよい。
【0327】
基材表面の作製
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、作製された基材表面を得るための基材表面の作製を提供する。作製された基材表面は、例えばポリプロピレンマイクロプレートなどのヒドロキシル化プラスチック表面を得るために容器の平らな表面上を酸素プラズマ処理することによって例えば作製されてもよい。或いは、実施形態(i)について、ある実施形態では、ヒドロキシル官能性表面は、(A)例えばC-OH部位を形成する炭素系ポリマー表面(AC)上への、又はSi-OH部位を形成するケイ素系(SiO2又はシリコーン)表面(ASi)上へのO2/プラズマ反応により形成することができる。更に、ヒドロキシル官能性表面は、(B)例えばポリビニルアルコール(PVOH)などのポリマー又はケイ素系ポリマー表面(SiO2又はシリコーン)等、新生表面が元々有しているものであってもよい。そのため、O2/プラズマによる表面作製方法は、表面上に元々備わっているヒドロキシル部位が存在する場合には任意選択的であってもよい。
【0328】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、例えばSiOxでコーティングされたガラス表面を形成するためのSiOx堆積による基材表面の作製を提供する。SiOxでコーティングされた表面は、例えばプラズマ強化化学蒸着(PECVD)によって作製することができる。本明細書に規定されている任意のコーティング(例えば、ケイ素、酸素、及び任意選択的な炭素を含むコーティング)を堆積させるためのPECVD装置及び方法は、例えば国際公開第2013/071138号パンフレット(2013年5月16日公開)に開示されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0329】
任意の実施形態において有用なPECVDタイプの化学蒸着プロセスのもう1つの例は、プラズマインパルス化学蒸着(PICVD)である。PICVDのための好適な装置及びプロセス条件は、例えば米国特許第7399500号明細書に見ることができる。
【0330】
任意の実施形態において有用な化学蒸着プロセスのもう1つの例は、パルスプラズマ強化化学蒸着(PPECVD)である。PPECVDのための好適な装置及びプロセス条件は、例えばS.J.Limb,K.K.S.Lau,D.J.Edell,E.F.Gleason,K.K.Gleason,Molecular Design Of Fluorocarbon Film Architecture By Pulsed Plasma Enhanced And Pyrolytic Chemical Vapor Deposition,PLASMA POLYMERIZATION 4 1999 21~32に見ることができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0331】
実施形態(i)及び(ii)のいずれにおいても有用な化学蒸着プロセスのもう1つの例は、熱分解化学蒸着(PCVD)である。PCVDのための好適な装置及びプロセス条件は、例えばS.J.Limb,K.K.S.Lau,D.J.Edell,E.F.Gleason,K.K.Gleason,Molecular Design Of Fluorocarbon Film Architecture By Pulsed Plasma Enhanced And Pyrolytic Chemical Vapor Deposition,PLASMA POLYMERIZATION 4 1999 21~32に見ることができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0332】
実施形態(i)で有用な化学蒸着プロセスのもう1つの例は、例えばヘキサフルオロプロピレンオキシドなどの前駆体の熱分解である。熱分解のための好適な装置及びプロセス条件は、例えばJ.Wang,X.Song,R.lia,J.Shen,G.Yang,H.Huang,Fluorocarbon Thin Film With Superhydrophobic Property Prepared By Pyrolysis Of Hexafluoropropylene Oxide,APPLIED SURFACE SCIENCE 258 2012 9782~9785に見ることができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0333】
実施形態(i)及び(ii)のいずれにおいても、好ましくは、PECVDは、低結合性若しくは非結合性及び/又は生体分子の吸着に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を得るための基材上のバリア層を生じさせるために使用される。PECVDを使用してコーティングを適用するための方法は米国特許第7,985,188号明細書中で教示されており、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0334】
実施形態(i)及び(ii)のいずれとの関係でも、以下のPECVD法は、通常、最初のバリア層を付与するために適用され、これは、(a)基材表面の近傍に、それぞれ本明細書に規定の通り、実施形態(i)の場合には前駆体を含む気体状の反応物、実施形態(ii)の場合にはシリルアミンカップリング剤、及び任意選択的にO2を供給する工程;及び(b)気体状の反応物からプラズマを発生させることでプラズマ強化化学蒸着(PECVD)によって基材表面上にコーティングを形成する工程を含む。実施形態(i)のある態様では、バリアコーティングは、シラザン及びシロキサンのいずれかであってもよい。実施形態(ii)のある態様では、バリアコーティングはシリルアミンとなる。
【0335】
実施形態(i)及び(ii)のいずれのPECVD方法でも、コーティングの特徴は、有利には以下の条件:プラズマ特性、プラズマを照射する際の圧力、プラズマを生成するためにかけられる出力、気体状の反応物中のO2の存在及び相対的な量、プラズマ体積、並びに前駆体(実施形態(i)の場合)又はシリルアミンカップリング剤(実施形態(ii)の場合)の1つ以上によって定められる。任意選択的に、コーティングの特性は、気体状の反応物中のO2の存在及び相対的な量、並びに/又はプラズマを生成するためにかけられる出力によって定められる。
【0336】
実施形態(i)及び(ii)のいずれの更に好ましい態様でも、プラズマは減圧(周囲圧力又は大気圧と比較して)で生成される。任意選択的に、減圧は300mTorr未満、任意選択的に200mTorr未満、更に任意選択的に100mTorr未満である。
【0337】
実施形態(i)及び(ii)のいずれのPECVDも、任意選択的にマイクロ波又はラジオ波、任意選択的にラジオ波の周波数で電力供給される電極で前駆体を含む気体状の反応物にエネルギーを与えることによって行われる。実施形態を行うために好ましいラジオ波は、「RF波」とも呼ばれる。本発明を行うための典型的なラジオ波の範囲は、10kHz~300MHz未満、任意選択的に1~50MHz、更に任意選択的に10~15MHzの周波数である。例えば、13.56MHzの周波数が好ましく、これはPECVD作業を行うための政府が認可した周波数である。本発明は、例えば27.12MHz、又は40.68MHzなどの他の周波数で行ってもよい。
【0338】
実施形態(i)及び(ii)のいずれについても、マイクロ波電源に対してRF電源を使用することの複数の利点が存在する:RFは低出力で作動するため、基材/容器の加熱が少ない。本発明の焦点はプラスチック基材上にプラズマコーティングを載せることであるため、基材の融解/歪みを防止するためにより低い処理温度が望ましい。マイクロ波PECVDを使用する場合に基材の過熱を防止するために、出力をパルス化することによりマイクロ波PECVDはショートバーストで行われる。出力のパルス化は、コーティングのサイクル時間を延ばし、これは本発明において望ましくない。より高い周波数のマイクロ波も、プラスチック基材中の残留水、オリゴマー、及び他の材料など揮発性物質のガスの放出を生じさせる場合がある。このガスの放出はPECVDコーティングを妨げる場合がある。PECVDのためにマイクロ波を使用することの主な懸念事項は、基材からのコーティングの剥離である。剥離は、コーティング層の堆積前にマイクロ波が基材の表面を変化させるために生じる。剥離の可能性を減らすために、コーティングと基材との間の良好な接着を得るためのマイクロ波PECVD用の界面コーティング層が開発された。RF PECVDでは剥離の危険性がないためそのような界面コーティング層は必要とされない。最後に、本発明によるバリア層は、有利には低出力で適用される。マイクロ波出力よりもRF電力は低い出力で作動し、PECVDプロセスを制御する。それにも関わらず、マイクロ波は、あまり好ましくはないものの、例えば300MHz~300GHzなどの適切な処理条件下で利用可能である。
【0339】
更に、実施形態(i)及び(ii)のいずれの本明細書に記載の全てのPECVD法についても、プラズマを生じさせるために使用される出力(ワット)と、その中でプラズマが生成する内腔の容積との間に固有の関係が存在する。典型的には、内腔は、本発明によりコーティングされる容器の内腔である。同じ電極系が用いられる場合、RF出力は容器の容積に合わせる必要がある。例えば、O2に対する前駆体の比率などの気体状の反応物の組成、及びPECVDコーティング法の出力以外の全ての他のパラメータが設定された後、容器の形状が維持されてその容積のみが変化する場合、これらは典型的には変化しないであろう。この場合、出力は容積に正比例することになる。そのため、本明細書によって与えられる出力対容積比から出発して、同じ形状の容器内の同じ又は同様のコーティングを得るためにかけなければならない出力を容易に見出すことができる。
【0340】
実施形態(i)のために前駆体が準備される。好ましくは、前記前駆体は有機ケイ素化合物(以降では「有機ケイ素前駆体」ともいう)、より好ましくは例えば直鎖シロキサン、単環式シロキサン、多環式シロキサン、ポリシルセキシオキサン、アルキルトリメトキシシラン、トリアルコキシシラン、これらの前駆体のシラザン類似体(すなわち直鎖シラザン、単環式シラザン、多環式シラザン、ポリシルセキシオキサザン(polysilsesquioxazane))、シラザン、トリメチルシラン、トリアルキルシラザン、テトラメチルシラザン、及びこれらの前駆体の任意の2つ以上の組み合わせからなる群から選択される有機ケイ素化合物である。前駆体は、例えばPECVDなどによってバリアコーティングを形成するのに有効な条件下で基材に塗布される。その結果、前駆体は重合され、架橋され、部分的若しくは完全に酸化され、又はこれらの任意の組み合わせが行われる。
【0341】
実施形態(i)及び(ii)のいずれかの追加的な態様では、コーティングは、例えばSiOxコーティングなどのバリアコーティングである。典型的には、バリアコーティングは、ガス又は液体に対する、好ましくは水蒸気、酸素、及び/又は空気に対するバリアである。バリアは、例えば採血管の内部など、バリアコーティングでコーティングされた容器内部を真空にする及び/又は真空を維持するためにも使用することができる。
【0342】
実施形態(i)の方法は、同じ又は異なる反応条件下で同じ又は異なる有機ケイ素前駆体からPECVDによって製造される1つ以上のコーティングを適用することを含んでいてもよい。例えば、容器は、有機ケイ素前駆体としてヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を使用してSiOxバリアコーティングで最初にコーティングされてもよい。
【0343】
実施形態(ii)の方法は、同じ又は異なる反応条件下で同じ又は異なるシリルアミンカップリング剤からPECVDによって製造される1つ以上のコーティングを適用することを含んでいてもよい。例えば、容器は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSOを使用してSiOxバリアコーティングで最初にコーティングされた後、シリルアミンカップリング剤でコーティングされてもよい。
【0344】
基材表面
実施形態(i)及び(ii)のいずれのためにも、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有するコーティングは、例えば容器の壁又はその一部などの基材表面に適用され得、これはガラスであってもよく、又はこれは、例えばオレフィンポリマー;ポリプロピレン(PP);ポリエチレン(PE);環状オレフィンコポリマー(COC);環状オレフィンポリマー(COP);ポリメチルペンテン;ポリエステル;ポリエチレンテレフタレート;ポリエチレンナフタレート;ポリブチレンテレフタレート(PBT);PVdC(ポリ塩化ビニリデン);ポリ塩化ビニル(PVC);ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレート;ポリ乳酸;ポリ乳酸;ポリスチレン;水素化ポリスチレン;ポリ(シクロヘキシルエチレン)(PCHE);エポキシ樹脂;ナイロン;ポリウレタン、ポリアクリロニトリル;ポリアクリロニトリル(PAN);アイオノマー樹脂;Surlyn(登録商標)アイオノマー樹脂;ガラス;ホウケイ酸ガラス、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせを含む熱可塑性材料である。
【0345】
コーティングされた容器
実施例(i)及び(ii)のいずれのためにも、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有する表面コーティングでコーティングされた物品は、例えばシリンジバレル、又は例えばシリンジプランジャー若しくは容器の蓋などの容器の接触表面上に前記コーティングを有する容器の一部又は容器の蓋などの壁上、好ましくは内壁上に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は結合に対する抵抗力を有する表面コーティングを有する容器であってもよい。本発明は、上述の方法により得られるコーティング、前記コーティングでコーティングされた表面、及び前記コーティングでコーティングされた容器を更に提供する。
【0346】
実施形態(i)及び(ii)のいずれとの関係でも、「容器」は、例えば実験器具及び医療器具などのより広い集合の例示的な部分集合である。容器自体は物質を入れる又は運ぶのに適した任意の種類の物品であってもよい。物質は、液体、気体、固体、又はこれらの任意の2つ以上であってもよい。容器の1つの例は、少なくとも1つの開口と、内部接触表面を画定する壁とを有する物品である。任意選択的に、内部接触表面の少なくとも一部は、本開示により処理される「接触表面」を画定する。本発明との関係における用語「少なくとも」は、その用語に続く整数「~と同じか又はそれより多い」ことを意味する。したがって、本発明との関係において、容器は1つ以上の開口を有する。
【0347】
実施形態(i)及び(ii)のいずれについても、試料管(1つの開口)又はシリンジバレル(2つの開口)の開口のような1つ又は2つの開口が好ましい。容器が2つ以上の開口を有する場合、これらは同じ大きさのものであっても異なる大きさのものであってもよい。2つ以上の開口が存在する場合、1つの開口は本発明による官能化されたバリアコーティング法のためのガス入口用に使用することができる一方、他方の開口は蓋をされるか開けられたままにされる。
【0348】
実施形態(i)及び(ii)のいずれの容器も、例えば血液又は尿のような体液を採取又は貯蔵するためなどの試料管、例えば薬剤又は医薬組成物などの生物学的に活性な化合物若しくは組成物を貯蔵若しくは送達するためのシリンジ(又は例えばシリンジバレルなどのその一部)、生体材料又は生物学的に活性な化合物若しくは組成物を貯蔵するためのバイアル、例えば生体材料又は生物学的に活性な化合物若しくは組成物を移送するためのカテーテルなどのパイプ、又は例えば生体材料又は生物学的に活性な化合物若しくは組成物を保持するためなどの流体を保持するためのキュベットであってもよい。
【0349】
実施形態(i)及び(ii)のいずれの容器も任意の形状であってもよい。容器の1つの例は、その開口端の少なくとも1つに隣接する実質的に円筒状の壁を有する。通常、このタイプの容器の内壁は、例えば試料管又はシリンジバレル内のように円筒状に形作られている。一般的に概して円筒状である試料管及びシリンジ又はこれらの部品(例えば、シリンジバレル)、バイアル、及びペトリ皿も想定される。
【0350】
実施形態(i)及び(ii)のいずれに関しても想定される容器のいくつかの他の非限定的な例は、例えばタイタ―プレート又はマイクロタイタープレートなどのウェル型又は非ウェル型のスライド又はプレートが挙げられる。想定される容器のまた別の非限定的な例としては、インペラ接触表面、ポンプチャンバー接触表面等など、ポンプで運ばれる材料と接触するポンプの接触表面が挙げられる。想定される容器の更に別の非限定的な例としては、複数の例として、静脈点滴システム、血液処理システム(人工心肺又は血液成分分離装置など)、透析システム、又はインスリン送達システムなどの流体の封入、ポンプ移送、処理、濾過、及び送達のシステムの一部が挙げられる。そのような容器の部品の例は、管類、ポンプ内部接触表面、薬剤又は生理食塩水が入った袋又は瓶、互いの系の部品を接続するためのアダプタ及び管類コネクタ、静脈注射針及び注射針アセンブリ、膜及びフィルター等である。容器の他の例としては、ピペット、ピペットチップ、エルレンマイヤーフラスコ、ビーカー、及びメスシリンダーなどの測定及び移送器具が挙げられる。
【0351】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、アンプル、バイアル、シリンジ、瓶、袋、又は他の封入容器、撹拌ロッド、インペラ、撹拌ペレット等など、医薬品又は他の材料と接触して使用される又は使用できる器具の任意の接触表面(これらも「接触表面」の定義の範囲内である)への用途を更に有する。
【0352】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、アンプル、バイアル、シリンジ、瓶、袋、又は他の封入容器、撹拌ロッド、インペラ、撹拌ペレット等など、生体分子又は生体分子溶液と接触して使用される又は使用できる器具の任意の接触表面(これらも「接触表面」の定義の範囲内である)への用途を更に有する。
【0353】
実施形態(i)及び(ii)のいずれかによって処理することができる流体又は組織との接触表面を有するいくつかの具体的な医療器具及び実験器具は、寒天ペトリ皿;血液培養器具;血液試料カセット;血液採取システム;瓶;毛細管血採取器具;カテーテル;セルリフター;セルスクレーパー;セルスプレッダー;遠心分離機の構成要素;採取及び移送器具;容器;カバーガラス;クライオ/フリーザーボックス;凸面顕微鏡スライド;直接試験及び血清学的器具;平板顕微鏡スライド;微生物学的器具及び消耗品;微生物学的試験器具;顕微鏡スライド;分子診断器具;ペトリ皿;ピペット;ピペットチップ;試料採取容器;試料採取管;試料採取/貯蔵器具;振とうフラスコ;エルレンマイヤーフラスコ;ビーカー;メスシリンダー;及びシリンジである。
【0354】
実施形態(i)及び(ii)のいずれも、物品が例えばマイクロプレート;遠沈管;ピペットチップ;ピペット;マイクロウェルプレート;ELISAプレート;マイクロタイタープレート;96ウェルプレート;384ウェルプレート;1536ウェルプレート;丸底フラスコ;ビーカー;メスシリンダー;及びエルレンマイヤーフラスコの少なくとも1つを含む、本発明の官能化されたバリアコーティングで処理された容器を提供する。
【0355】
実施形態(i)及び(ii)のいずれとの関係でも、「容器」は、少なくとも1つの開口と、内部表面を画定する壁とを有する任意の種類の容器であってもよい。基材は、内腔を有する容器の内壁であってもよい。本発明は具体的な容積の容器に必ずしも限定されないものの、内腔が例えば0.5~50mL、任意選択的に1~10mL、任意選択的に0.5~5mL、任意選択的に1~3mLなどの空孔容積を有する容器が想定される。基材表面は、少なくとも1つの開口と、内部表面とを有する容器の内部表面の一部又は全てであってもよい。
【0356】
容器のコーティング
実施形態(i)及び(ii)のいずれかの上述のコーティング方法によって容器がコーティングされる場合、コーティング方法は複数の工程を含む。開口端と、閉口端と、内部表面とを有する容器が準備される。表面の修飾は、例えば様々な条件でポリプロピレンマイクロプレート(NUNC、96ウェル、0.5ml、丸底)などの市販の製品に対して行われてもよい。例えば、方法は、i)例えばヒドロキシル化プラスチック又はSiOxでコーティングされたガラス表面などを得るための基材調整段階;ii)非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有する表面コーティングを得るための共重合試薬段階の2つの段階を例えば含み得る。
【0357】
好ましくは、実施形態(i)及び(ii)のいずれの方法も、容器ホルダーと容器の内部との間に密封された連通が得られるように容器ホルダー上に容器の開口端を取り付けることによって行われる。この好ましい態様では、気体状の反応物は容器ホルダーを通して容器内に導入される。特に好ましい態様では、本発明のコーティング方法のために、容器ホルダーと、内部電極と、外部電極と、電源とを含むプラズマ強化化学蒸着(PECVD)装置が使用される。
【0358】
実施形態(i)及び(ii)のいずれの容器ホルダーも、処理するために取り付けられた位置で容器を受けるポートを有する。内部電極は、容器ホルダー上に取り付けられた容器内に収容されるように配置される。外部電極は、容器ホルダー上に取り付けられた容器を受けるように位置する内部を有する。電源は、内部電極及び/又は外部電極に交流を供給し、容器ホルダー上に取り付けられた容器内にプラズマを形成する。典型的には、電源は外部電極に交流を供給する一方、内部電極は接地される。この実施形態では、容器がプラズマ反応チャンバーを画定する。
【0359】
実施形態(i)及び(ii)のいずれかのいくつかの実施形態では、容器は米国特許第6828028号明細書に記載の通り調製されたコポリマー溶液中に浸漬される。
【0360】
実施形態(i)及び(ii)のいずれにおいても、基材は、任意選択的に反応チャンバー内に配置されてもよく、反応チャンバーは真空引きされ、酸素を含むガスが反応チャンバーに添加される。作製された基材表面を形成するために、プラズマがガスから任意選択的に加熱しながら生成される。
【0361】
実施形態(i)では、作製された基材は、その後、溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含むコポリマー溶液で処理される。実施形態(ii)では、作製された基材は、その後、任意選択的に酸素の存在下で、任意選択的に加熱しながら、少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含む蒸気と反応することでアミンにより官能化された基材表面を形成する。実施形態(ii)において、アミンにより官能化された基材表面は、その後、任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒と少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含むコポリマー溶液で処理される。実施形態(i)及び(ii)のいずれにおいても、任意選択的な以下の工程は、加熱し、コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に基材表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成することである。
【0362】
実施形態(i)において、任意選択的に、基材は反応チャンバー内に配置され、反応チャンバーは真空引きされ、有機ケイ素前駆体を含有し、任意選択的に酸素も含むガスが反応チャンバーに添加される。プラズマは、任意選択的にラジオ波照射により、任意選択的にマイクロ波照射により、任意選択的に加熱により、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)によってガスから生成されて、作製された基材表面を形成する。作製された基材を、その後、任意選択的に加熱しながら、溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含むコポリマー溶液で処理し、任意選択的に待機し、コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に基材表面を加熱することで、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面が形成される。
【0363】
実施形態(ii)では、任意選択的に、SiOxでコーティングされたガラス表面である基材は反応チャンバー内に配置され、反応チャンバーは真空引きされ、酸素を含むガスが反応チャンバーに添加される。プラズマは、任意選択的にラジオ波照射により、任意選択的にマイクロ波照射により、任意選択的に加熱により、プラズマ強化化学蒸着(PECVD)によってガスから生成されて作製された基材表面を形成する。作製された基材は、その後、任意選択的に酸素の存在下で、任意選択的に加熱しながら、少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含む蒸気と反応することでアミンにより官能化された基材表面を形成する。アミンで官能化された基材を、その後、任意選択的に重合開始剤の存在下で、任意選択的に加熱しながら、溶媒と少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含むコポリマー溶液で処理し、任意選択的に待機し、コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に基材表面を加熱することで、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面が形成される。
【0364】
いくつかの実施形態において、基材は反応チャンバー内に配置され、反応チャンバーは真空引きされ、有機ケイ素前駆体を含有し、任意選択的に酸素も含むガス(実施形態(i)の場合)又は酸素を含有するガス(実施形態(ii)の場合)が反応チャンバーに添加される。実施形態(i)及び(ii)のいずれにおいても、プラズマは、任意選択的にラジオ波照射により、任意選択的にマイクロ波照射により、任意選択的に加熱により、パルスプラズマ強化化学蒸着(PPECVD)によってガスから生成されて作製された基材表面を形成する。実施形態(ii)において、作製された基材表面は、その後、任意選択的に酸素の存在下で、任意選択的に加熱しながら、少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含む蒸気と反応することでアミンにより官能化された基材表面を形成する。アミンで官能化された基材を、その後、任意選択的に重合開始剤の存在下で、任意選択的に加熱しながら、溶媒と少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含むコポリマー溶液で処理し、任意選択的に待機し、コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に基材表面を加熱することで、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面が形成される。
【0365】
実施形態(i)及び(ii)のいずれにおいても、任意選択的に、基材は反応チャンバー内に配置され、反応チャンバーは真空引きされ、酸素を含むガスが反応チャンバーに添加される。プラズマは、任意選択的にラジオ波照射により、任意選択的にマイクロ波照射により、任意選択的に加熱により、熱分解化学蒸着(PCVD)によってガスから生成されて作製された基材表面を形成する。実施形態(i)では、作製された基材は、その後、溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含むコポリマー溶液で処理される。実施形態(ii)では、作製された基材表面は、その後、任意選択的に酸素の存在下で、任意選択的に加熱しながら、少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含む蒸気と反応することでアミンにより官能化された基材表面を形成する。アミンで官能化された基材を、その後、任意選択的に重合開始剤の存在下で、任意選択的に加熱しながら、溶媒と少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含むコポリマー溶液で処理し、任意選択的に待機し、コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に基材表面を加熱することで、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面が形成される。
【0366】
実施形態(ii)において、任意選択的に、基材は真空プラズマチャンバー内に置かれ、真空プラズマ反応器は脱気され、その後、酸素を含有し、任意選択的にアルゴンを含み任意選択的に窒素を含むガスが添加される。その後、ガスはRF波のエネルギーで照射される。照射を終了し、基材を少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気に曝露することで、アミンで修飾された基材が得られる。アミンで修飾された基材を、その後、任意選択的に重合開始剤の存在下で、任意選択的に加熱しながら、溶媒と少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含むコポリマー溶液で処理し、任意選択的に待機し、コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に基材表面を加熱することで、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面が形成される。
【0367】
実施形態(ii)において、任意選択的に、SiOxでコーティングされたガラス表面である基材は真空プラズマチャンバー内に置かれ、真空プラズマ反応器は脱気され、その後、酸素を含有し、任意選択的にアルゴンを含み任意選択的に窒素を含むガスが添加される。その後、ガスはRF波のエネルギーで照射される。照射を終了し、基材を少なくとも1つのシリルアミンカップリング剤を含有する蒸気に曝露することで、アミンで修飾された基材が得られる。
【0368】
アミンにより修飾された基材表面は、その後、任意選択的に重合開始剤の存在下で、溶媒と少なくとも1つの共重合可能な双性イオン性モノマーと少なくとも1つの共重合可能なエポキシモノマーとを含むコポリマー溶液で処理される。実施形態(i)及び(ii)のいずれにおいても、方法は、任意選択的に、加熱し、コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に基材表面を加熱し、その結果、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を形成することが継続される。
【0369】
実施形態(i)において、任意選択的に,基材は反応チャンバー内に配置され、反応チャンバーは真空引きされ、有機ケイ素前駆体を含有し、任意選択的に酸素も含むガスが反応チャンバーに添加される。作製された基材を、その後、任意選択的に加熱しながら、溶媒と少なくとも1つの双性イオン性コポリマーとを含むコポリマー溶液で処理し、任意選択的に待機し、コポリマー溶液を除去し、任意選択的に、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面を乾燥させ、任意選択的に基材表面を加熱することで、非特異的な生体分子の吸着及び/又は非特異的な結合に対する抵抗力を有するコーティングされた表面が形成される。
【0370】
以降の実施例を参照しつつ本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されると見なされないことが理解されるべきである。
【実施例
【0371】
第1のより詳しい実施形態の実施例1
ポリプロピレンの96ウェルマイクロプレートを、第1のより詳しい実施形態の任意選択的な態様に従ってプラズマ処理した。マイクロプレートを処理するために使用したプロセスは、ラジオ波(RF)プラズマシステムを使用した。システムは、ガス供給口と、真空ポンプと、整合回路によって供給されるRF電力とを有していた。マイクロプレートは、チャンバーの周囲に沿ってプラズマと反対を向いてプラズマから保護された。これらの詳細は図2中に示されている。保護により、マイクロプレートの表面上の遠隔地点での放射密度と、プラズマ放電の最も明るい地点との間の比率が0.25未満である遠隔プラズマ処理となった。
【0372】
この非限定的な実施例により使用された2工程の遠隔変換プラズマプロセスは、第1のより詳しい実施形態の表2にまとめられている。
【0373】
【表3】
【0374】
第1のより詳しい実施形態のこの遠隔変換プラズマプロセスによって得られる処理されたマイクロプレートの表面上の生体分子の結合に対する抵抗力は、全ての実施形態の試験を行うことによって分析した。パーセント回収率は、溶液中に残るタンパク質(すなわちマイクロプレートの表面に結合しなかったもの)の最初の濃度の割合である。
【0375】
この試験において、パーセント回収率のために3つの異なる種類のマイクロプレートのサンプルを試験した。サンプルには、(1)未調整且つ未変換のポリプロピレンマイクロプレート(「未調整且つ未変換」のサンプル);(2)SiO2 Medical Productsによって成形され本明細書の実施例1に記載の第1のより詳しい実施形態により変換されたポリプロピレンマイクロプレート(「SIO」サンプル);及び(3)「Eppendorf LoBind」ブランドのマイクロプレート(「Eppendorf LoBind」サンプル)が含まれていた。図3中の棒グラフは、この比較試験の結果を示す。第1のより詳しい実施形態の図3が示すように、変換されたSiO2プレートは、未調整且つ未変換のサンプルと比較した生体分子回収率の60%の増加と、Eppendorf LoBindサンプルと比較した生体分子回収率の8~10%の増加とを有していた。
【0376】
したがって、第1のより詳しい実施形態の遠隔変換プラズマ処理により、他の公知の方法よりも低い生体分子の付着(又は逆により高い生体分子の回収率)が得られることが示された。実際、SiO2サンプルとEppendorf LoBindサンプルとの比較データは、Eppendorf LoBindがタンパク質に耐性を有する実験器具の業界標準と見なされていたことから特に驚くべきことであった。SiO2プレートのEppendorf LoBindサンプルと比較した効果の8~10%の増加は、最新技術と比較した著しい改善を表している。
【0377】
第1のより詳しい実施形態の実施例2
第1のより詳しい実施形態のこの実施例では、2番目のサンプルが遠隔変換プラズマの代わりに直接プラズマで処理された以外(これは重要な除外である)はSIOと同じプロセス工程及び条件で変換された同じマイクロプレート(「直接プラズマ」サンプル)と、実施例1のSiO2プレートとが比較された。驚くべきことに、図4中に示されているように、直接プラズマサンプルは24時間後に72%の生体分子回収率を有していた一方、SIO2プレート(これは遠隔変換プラズマによる以外には同じ条件/プロセス工程で処理された)は、24時間後に90%の生体分子回収率を有していた。この注目すべき工程の変更は、直接プラズマの代わりに第1のより詳しい実施形態の遠隔変換プラズマを使用することのみから得られる予期しなかった改善を示す。
【0378】
第1のより詳しい実施形態の実施例3
第1のより詳しい実施形態のこの実施例では、2番目の処理工程(水蒸気プラズマ工程又は変換プラズマ処理)が行われずに第1のより詳しい実施形態の方法の調整工程(すなわち非重合性化合物プラズマ工程又は調整プラズマ処理)のみで処理された同じマイクロプレート(「工程1のみ」のサンプル)と実施例1のSIOサンプルとが比較された。図5中に示されているように、工程1のみのサンプルは約25℃(特段の指示がない限り本明細書中の全てのタンパク質試料のエージングは25℃である)で24時間後に50%の生体分子回収率を有していた一方、SIO2プレート(遠隔変換プラズマによっても行われた以外は同じ条件/プロセス工程で処理された)は24時間後に90%の生体分子回収率を有していた。したがって、第1のより詳しい実施形態の実施形態による方法の両方の工程を使用すると、調整工程単独のみを使用するよりも大幅に改善された生体分子回収率となる。
【0379】
第1のより詳しい実施形態の実施例4(仮想実施例)
第1のより詳しい実施形態の更に想定される任意選択的な利点は、利点を相殺する高い溶出性物質のプロファイルなしで生体分子の付着に対する高いレベルの抵抗力を与えることである。例えば、Eppendorf LoBind(登録商標)実験器具は、化学添加剤のために生体分子の付着に対する抵抗力を有するが、化学添加剤は基材から基材と接触する溶液に溶出する傾向がある。対照的に、第1のより詳しい実施形態は、基材にその生体分子の付着に対する抵抗性を付与するためにポリマー基材中に混合される化学添加剤に依存しない。また、第1のより詳しい実施形態の方法は、処理された基材から化合物又は粒子が溶出しないか溶出させない。更に、本開示に記載のpH保護プロセスが変換された表面から化合物又粒子が溶出しないか溶出させないことも決定された。
【0380】
したがって、ある任意選択的な態様では、本開示の技術(本明細書に記載の第1のより詳しい実施形態)は、変換処理前の表面の生体分子回収率を有する変換物を形成するために材料又はワークピースとしても言及される表面を処理するための方法に関し、この中のいずれの調整処理又は変換処理も基材の溶出物プロファイルを物質的に増加させない。本出願人らは、これが未調整且つ未変換の表面と変換された表面との間の実際の比較試験により裏付けられると考えている。
【0381】
第1のより詳しい実施形態の実施例5
未調整且つ未変換のポリプロピレン(UTPP)製実験用ビーカー、第1のより詳しい実施形態により遠隔変換プラズマ処理されたポリプロピレン(TPP)製実験用ビーカー、及び未調整且つ未変換のガラス製実験用ビーカーからの生体分子回収率を比較するために、第1のより詳しい実施形態の実施例1と同様の試験を行った。使用した生体分子は凍結乾燥したBSA、FBG、TFN、PrA、及びPrGの12nM分散液であった。
【0382】
第1のより詳しい実施形態の1回目の試験では、生体分子分散液はビーカー内で作製され、複数回吸引することでこれを混合した。生体分子の回収率は相対蛍光単位(RFU)で測定した。最初のRFUの読み取り(0分)を100%回収率のベースラインとして設定し、次いでビーカー内の生体分子分散液をピペットチップで1分間撹拌し、その後の残りの試験時間にわたり、実験台の上でそのまま静置した。生体分子回収率は最初に測定し、その後、それぞれ5分間隔で試料を抜き出してパーセンテージ生体分子回収率を測定した。結果は表3に示されている。
【0383】
【表4】
【0384】
表4に示されている結果を有する第1のより詳しい実施形態の2回目の試験は、第1のより詳しい実施形態によって処理されていないガラスビーカーを基材として使用したことを除いて1回目の試験と同じ方法で行った。
【0385】
【表5】
【0386】
第1のより詳しい実施形態の図9は上の表のTFNの結果をプロットしており、未調整且つ未変換のポリプロピレン製ビーカーについてのプロット34、処理されたポリプロピレン製ビーカーについての36、及びガラスについての38を示す。図9が示すように、処理されたポリプロピレン製ビーカーは、10~30分後に最も高い生体分子回収率を与え、ガラスは10~30分後により低い生体分子回収率を生じ、未調整且つ未変換のポリプロピレン製ビーカーは最初の測定後の全ての時間で最も低い生体分子回収率を与えた。
【0387】
第1のより詳しい実施形態の実施例6
タンパク質とプレートとを24時間接触させた後の、タンパク質濃度に対する2つのマルチウェルポリプロピレンプレートからの生体分子の回収率を比較するために、第1のより詳しい実施形態の実施例1と同様の試験を行った。「SiO2」プレートはポリプロピレンから成形され、実施例1に従ってプラズマ処理した。「CA」(競合A)プレートは、低減された非特異的なタンパク質の結合を与えるコーティングを備えた市販の競合品のポリプロピレン製プレートであった。
【0388】
結果は表5及び図11~13に示されており、全ての試験濃度で、変換されたSiO2プレートから各種類の本質的に全てのタンパク質が回収され、そのため、回収率は濃度と無関係であったことを示す。対照的に、CAプレートからのタンパク質回収率は特に低濃度において濃度に大きく依存した。
【0389】
【表6】
【0390】
第1のより詳しい実施形態の実施例7
実施例6に記載の種類の変換された「SiO2」プレート及び「CA」プレートからの生体分子の回収率を比較するために、第1のより詳しい実施形態の実施例1と同様の試験を行った。使用した生体分子は凍結乾燥したBSA、FBG、TFN、PrA、及びPrGの1.5又は3nMの分散液であった。
【0391】
条件及び結果は表6に示されている。BSA、PrA、PrG、及びTFNタンパク質について、変換されたSiO2プレートはCAプレートと比較して著しく優れたタンパク質回収率を与えた。FBGタンパク質について、変換されたSiO2プレートはCAプレートよりも優れたタンパク質回収率を与えた。
【0392】
【表7】
【0393】
第1のより詳しい実施形態の実施例8
96ウェル、500μLのSiO2及びCAのプレートを比較するために、第1のより詳しい実施形態の実施例7と同様の試験を行った。条件及び結果は表7に示されている。BSA、PrA、PrG、及びTFNタンパク質だけでなく、1.5nMの濃度のFBGについても、変換されたSiO2プレートはCAプレートと比較して著しく優れたタンパク質回収率を与えた。3nMの濃度のFBGは変則的であった。
【0394】
【表8】
【0395】
第1のより詳しい実施形態の実施例9
96ウェル、1000μLの変換されたSiO2プレート及びCAプレートを比較するために、第1のより詳しい実施形態の実施例7と同様の試験を行った。条件及び結果は表8に示されている。BSA、PrA、及びPrGタンパク質について、変換されたSiO2プレートはCAプレートと比較して著しく優れたタンパク質回収率を与えた。FBGタンパク質は実質的に優れたタンパク質回収率を示さなかった。
【0396】
【表9】
【0397】
第1のより詳しい実施形態の実施例10
384ウェルの55μL(変換されたSiO2)対200μL(CA)のシャロープレートを比較するために、第1のより詳しい実施形態の実施例7と同様の試験を行った。条件及び結果は表8に示されている。BSA、PrA、及びPrGタンパク質について、変換されたSiO2プレートはCAプレートと比較して著しく優れたタンパク質回収率を与えた。FBGタンパク質は実質的に優れたタンパク質回収率を示さなかった。
【0398】
【表10】
【0399】
第1のより詳しい実施形態の実施例11
StabilBlot(登録商標)BSA Blocker(BSAタンパク質の付着を低減するために使用される市販の処理剤、SurModics,Inc.,Eden Prairie,MN,USAから販売)で処理されたポリプロピレン製プレートと、第1のより詳しい実施形態のSiO2変換されたプレートとを比較するために、第1のより詳しい実施形態の実施例1と同様の試験を行った。条件及び結果は表10に示されている。ここで、変換されたSiO2は実施例1のプレートであり、プレートAは5%のBSAブロッカーで1時間処理されたポリプロピレン製プレートであり、プレートBは1%のBSAブロッカーで1時間処理されたポリプロピレン製プレートである。FBGタンパク質以外は、ここでも本発明の技術がBSAブロッカーのプレートと比較して優れた結果を与えた。
【0400】
【表11】
【0401】
第1のより詳しい実施形態の実施例12
1~4か月のより長い期間にわたっての、実施例1によってSiO2変換されたプレートのタンパク質回収率を比較するために、第1のより詳しい実施形態の実施例7と同様の試験を行った。条件及び結果は表11に示されており、これは、相当な期間にわたって全てのタンパク質について、タンパク質の付着に対する略変わらない抵抗性が観察されたことを示す。
【0402】
【表12】
【0403】
第1のより詳しい実施形態の実施例13
ディープ(500μL)ウェルを有する2つの96ウェルプレート(全ての96ウェルプレートで2時間後に2nMのPrAタンパク質を試験したことを除いて実施例1に従って作製された変換されたSiO2プレートと、これも96ウェルプレートで2時間後に2nMのPrAタンパク質を試験した他方の競合Aプレート)を使用して、単一のプレートの異なるウェル間での結合の均一性を試験した。1つのプレート上の各ウェルからのタンパク質回収率を測定し、その後、平均化し、整理し(96ウェル内で最も高い回収率と最も低い回収率を決定)、標準偏差を計算した。変換されたSiO2プレートについて、平均回収率は95%であり、回収率の範囲は11%であり、標準偏差は2%であった。CAプレートについて、平均回収率は64%であり、回収率の範囲は14%であり、標準偏差は3%であった。
【0404】
1000μLのウェルを有する96ウェルプレートも使用して前の段落と同じ試験を行った。変換されたSiO2プレートについて、平均回収率は100%であり、回収率の範囲は13%であり、標準偏差は3%であった。CAプレートについて、平均回収率は62%であり、回収率の範囲は25%であり、標準偏差は3%であった。
【0405】
この試験は、CAプレートのタンパク質に抵抗力のあるコーティングと同様に、実施例1の変換処理により、異なるウェル間で少なくとも均一な回収率にできることを示した。これは、SiO2プラズマ処理がプレート全体にわたって非常に均一であることを示唆している。
【0406】
第1のより詳しい実施形態の実施例14
この実施例は、タンパク質とプレートとを96時間接触させた後の、タンパク質濃度に対する2つのマルチウェルポリプロピレン製プレートからのタンパク質の回収率を比較するために行った。SiO2プレートはポリプロピレンから成形され、実施例6に従ってプラズマ変換した。「EPP」プレートは、市販の競合品であるポリプロピレンEppendorf LoBind(登録商標)プレートであった。試験手順は、最も小さいタンパク質濃度が実施例6のものよりもはるかに低い0.1nMであったことを除いて実施例6と同じである。
【0407】
結果は表12及び図14~16に示されている。実際、変換されたSiO2プレート(プロット152、154、及び158)とEppendorf LoBind(登録商標)プレート(すなわち「EPP」プレート、プロット150、156、及び160)との比較データは、Eppendorf LoBindがタンパク質に耐性を有する実験器具の業界標準と見なされていたことから特に驚くべきものであった。実施例で試験した全ての3つのタンパク質(すなわちBSA、PrA、及びPrG)について、変換されたSiO2プレートについて濃度に関わらずタンパク質回収率は実質的に一定で高かった。しかし、「EPP」プレートについて、タンパク質回収率は低濃度で劇的に下がった。特に極低濃度(例えば、0.1nMから1.5nM未満)では、SiO2変換されたプレートについてのタンパク質回収率は「EPP」プレートよりもはるかに優れていた。
【0408】
SiO2変換されたプレートの実際のタンパク質回収率は、100%にデータ点に割り当てられる誤差限界を加えたものを超えないはずであることから、表12中のアスタリスクが記されているデータによって示されているPrGタンパク質について、0.1nMのSiO2変換されたプレートのデータ点を異常値として見なした。他のデータ点の傾向から大きく逸脱していることから、0.1nMのEPPプレートのPrGデータ点も異常値として見なした。これらの異常なデータ点は図16に示されていない。
【0409】
【表13】
【0410】
第1のより詳しい実施形態の実施例15
GC-MS法を使用した、本発明の低タンパク質結合性を有する変換されたマイクロプレートから抽出した有機種の特徴付け
この試験は、本発明の変換処理が基材と接触する溶液に溶出物を追加することになるかどうかを評価するために、96ウェルマイクロプレート上で行った。マイクロプレートはポリプロピレンから成形され、実施例6に従ってプラズマで変換された。
【0411】
抽出手順
96ウェルマイクロプレート中の合計16個のウェルに300μLのイソプロパノール(IPA)を添加した。添加後、プレートをガラスプレートで確実に覆い、室温で72時間貯蔵した。抽出後、16個のウェルの中身を1つの別個のバイアル内で合わせ、蓋をし、反転させて混合した。各一定分量をGC-MS分析用のオートサンプラーのバイアルに移した。
【0412】
GC-MS分析条件及び結果
GC-MS(ガスクロマトグラフィー-マススペクトル)分析条件は表13に示されており、割り当てがなされた8個のピークの注釈付きの得られたプロットが図17に示されており、ピークの帰属は表14に記載されている。
【0413】
【表14】
【0414】
【表15】
【0415】
図18及び図19は、図17と同じ方法で測定されたGC-MSプロットを示し、イソプロパノールブランク(図18)対実施例15に従って変換されたSiO2の低タンパク質結合処理されたマイクロプレート(図19)についての抽出された有機種を特徴付けている。
【0416】
第1のより詳しい実施形態の実施例16
LC-MS法を使用したSiO2低タンパク質結合性を有する変換されたマイクロプレートから抽出した有機種の特徴付け
LC-MS(液体クロマトグラフィー-マススペクトル)法を使用して有機抽出物を分析し、本発明の変換処理が基材と接触する溶液に有機溶出物を追加することになるかどうかを評価した。抽出手順は実施例15と同じである。
【0417】
LC-MS分析条件及び結果
分析は、Agilent G6530A Q-TOFマススペクトロメーターを用いて行い、抽出物はポジティブとネガティブとの両方のAPCIモードで分析した。ポジティブAPCIについてのLC-MS条件は表15中に示されており、ネガティブAPCIについてのLC-MS条件は表16中に示されている。
【0418】
図20は、SiO2低タンパク質結合変換されたプレート(下のプロット)対イソプロパノールブランク(上のプロット)の、LC-MSイソプロパノール抽出イオンクロマトグラム(ポジティブAPCIモード)の比較を示す。
【0419】
図22は、SiO2低タンパク質結合変換されたプレート(下のプロット)対イソプロパノールブランク(上のプロット)の、LC-MSイソプロパノール抽出イオンクロマトグラム(ネガティブAPCIモード)の比較を示す。
【0420】
イソプロパノールブランク(上のプロット)に対して、SiO2変換されたプレートについての唯一の一致していないピークはm/z529のものであり、これは未調整且つ未変換のSiO2プレートのイソプロパノール抽出物(図21、下のプロット)中のIrganox(登録商標)1076と一致する。したがって、この抽出された化合物は、本発明の低タンパク質結合処理によって追加されたものではない。これは、未調整且つ未変換のSiO2プレートからも抽出されたことから、樹脂由来である。
【0421】
【表16】
【0422】
【表17】
【0423】
第1のより詳しい実施形態の実施例17
ICP-MS法を使用した、SiO2マイクロプレートから抽出した無機種の特徴付け
3つの種類の96ウェルマイクロプレートの無機抽出物レベルを比較するためにICP-MS法を使用した。3つの種類のマイクロプレートは、未調整且つ未変換の市販のLabcyteポリプロピレンマイクロプレート(Labcyte)、未調整且つ未変換の市販のPorvairポリプロピレンマイクロプレート(Porvair)、及びSiO2 Medical Products,Inc.によりポリプロピレンから成形され、実施例6に従ってプラズマで変換された、SiO2低結合プラズマ変換マイクロプレートである。
【0424】
抽出手順
2%v/vの硝酸(HNO3)の脱イオン(DI)水溶液で満たしたマイクロプレートのウェルをガラスプレートで覆い、室温で72時間抽出した。その後、約3mLの溶液をオートサンプラーチューブに移し、Agilent 7700xスペクトロメーターを使用してICP-MSにより分析した。条件は表17に示されている。
【0425】
ICP-MS分析条件及び結果
結果は表18に示されている。結果は、変換されたSiO2プレートの硝酸抽出物が、未調整且つ未変換のLabcyte及びPorvairプレートと略等しい低レベルの無機物を有することを示す。したがって、SiO2 Medical Productsの低タンパク質結合変換処理は、無機抽出物を追加しない。
【0426】
【表18】
【0427】
【表19】
【0428】
第1のより詳しい実施形態の実施例18
処理された接触表面の特性を決定するために、特にポリマーへグラフトされた部位の導入を定性的に及び定量的に示すために、実施例1の処理された96ウェルマイクロプレートに対してX線光電子分光(XPS)分析を行った。
【0429】
本開示において、用語「グラフト化」は、その組成及び特性を改良する目的で元々の材料に特定の部位を化学的に結合させるために、プラズマ処理又は他の手段によってなどでマイクロプレート又は他の基材の元々の表面を修飾することを指し、表面に多くの又は全てのグラフト化された部位を残し、その表面の特性を改良するが、表面を覆うコーティングを組み込むことにはならない。
【0430】
XPSは、2つのウェル間のマイクロプレートの上面と、ウェルの側壁の略半分降りた位置の、2つの位置の処理された接触表面上で行った。全ての隣接するウェルの汚染を避けるためにランドに試料がないままにする必要があることから、側壁での測定が最も適切である。
【0431】
XPSのために使用した分析パラメータは、以下の通りである。
装置 PHI Quantum 2000
X線源 モノクロAlka 1486.6eV
受光角度 ±23°
取り出し角 45°
分析面積 600μm(マイクロメートル)
電荷補正 C1s 284.8eV
イオン銃条件 Ar+、1keV、2×2mmラスター
スパッタレート 15.6Å/分(SiO2と均等)
【0432】
XPSは水素を検出しないが、炭素、窒素、及び酸素は検出する。未処理のポリプロピレン表面などの炭化水素のXPSは、炭素のみに加えて微量の複数の他の元素を検出するであろう。しかし、実施例1の処理された接触表面のXPSは、表19の原子割合(100%に正規化)を与えた。
【0433】
【表20】
【0434】
この結果は、ポリプロピレンマイクロプレートの上面及び側壁でのポリプロピレン中への相当量の原子割合(約8~9原子%)の酸素のグラフト化を示すが、主成分が炭素のままであることから、元の表面を覆うコーティングの形成又はバルク組成の変化はない。
【0435】
第1のより詳しい実施形態の実施例19
実施例1に従って処理されたポリプロピレンマイクロプレートの表面の化学成分に注目して、別のXPS分析を行った。表20に示されている化学成分が検出された。右の列は側壁のデータを正規化しており、C及びHに結合している100原子パーセントのCに対する割合として正規化されている。
【0436】
【表21】
【0437】
これらの部位は、表面の特性を変化させるが、やはり元の表面を覆うコーティングの形成又はバルク組成の変化はない。
【0438】
第1のより詳しい実施形態の実施例20
第1のより詳しい実施形態の実施例1に従って処理された96ウェルのマイクロプレート上での蒸留水の接触角を測定した。接触角試験のための分析装置は、協和界面科学株式会社(東京、日本)製の接触角計DM-701型であった。接触角を得るために、各試験片から得た小片の内側表面上に5つの水滴を載せた。試験条件及びパラメータは下にまとめられている。プレートを壊して処理された接触表面を露出させた。各試験片について、最も代表的な小片を試験のために選択した。全てのサンプルについて、1μL(1マイクロリットル)の液径を使用した。試験片の湾曲のため、曲率補正ルーチンを使用して接触角を正確に測定した。
【0439】
第1のより詳しい実施形態の接触角試験条件及びパラメータ
・試験装置 - DM-701接触角計
・液体ディスペンサー - 22ゲージステンレス鋼針
・液径 - μL(1マイクロリットル)
・試験液 - 蒸留水
・環境 - 大気中の空気、室温(約25℃)
・各試験片についての曲率半径(マイクロメートル、μm) - 測定の通り
【0440】
対照として、未処理のポリプロピレンマイクロプレート表面の接触角を同じ方法で測定した。未処理のポリプロピレンの接触角は82°であった一方、第1のより詳しい実施形態の処理された接触表面の接触角は60°であった。この試験は、コーティングの付加又はバルク材料の変化なしで、プラズマ処理によって低接触角の親水性表面が更に多く付与されることを示す。
【0441】
第2のより詳しい実施形態
ポリオレフィン及び様々な他のポリマーに適用することができ、任意選択的にタンパク質の付着を50%超削減する、第2のより詳しい実施形態による方法が開発された。方法は、プラズマ処理によって大気圧又は減圧で行うことができる1~4工程又はそれを超える工程を基本とする。方法は、幅広い高分子材料(多くの他の材料に加えて、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリスチレン)、及び多くの他の製品に加えて、実験器具、診断用装置、コンタクトレンズ、医療器具、又はインプラントなどの製品に適用することができる。
【0442】
第2のより詳しい実施形態の第1の任意選択的な工程は、水、揮発性の極性有機化合物、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせを含む極性液体処理剤で表面を処理して極性処理された接触表面を形成することである。
【0443】
第2のより詳しい実施形態の第2の任意選択的な工程は、表面をイオン化ガスで処理することである。
【0444】
第2のより詳しい実施形態の第3の任意選択的な工程は、窒素含有ガス、不活性ガス、酸化ガス、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む調整プラズマで表面を処理して調整された接触表面を形成することである。
【0445】
第2のより詳しい実施形態の第4の工程は、水;揮発性極性有機化合物;C1~C12炭化水素及び酸素;C1~C12炭化水素及び窒素;ケイ素含有ガス;又はこれらの2つ以上の組み合わせの変換プラズマで表面を処理して処理された接触表面を形成することである。
【0446】
第2のより詳しい実施形態の処理される表面は、様々な異なる材料製であってもよい。材料の複数の有用な種類は、熱可塑性材料、例えば任意選択的に射出成形された熱可塑性樹脂であってもよいポリマーなどの例えば熱可塑性樹脂である。例えば、材料は、オレフィンポリマー、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、環状オレフィンコポリマー(COC)、環状オレフィンポリマー(COP)、ポリメチルペンテン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ塩化ビニリデン(PVdC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリカーボネート、ポリ乳酸、ポリスチレン、水素化ポリスチレン、ポリシクロヘキシルエチレン(PCHE)、エポキシ樹脂、ナイロン、ポリウレタン、ポリアクリロニトリル、ポリアクリロニトリル(PAN)、アイオノマー樹脂、Surlyn(登録商標)アイオノマー樹脂、又は上述の材料の任意の2つ以上の任意の組み合わせ、複合材料、若しくはブレンド物であってもよく、又はこれらが含まれ得る。
【0447】
第2のより詳しい実施形態によって様々な異なる表面を処理することができる。表面の1つの例は容器の内腔表面であり、この容器は、例えばバイアル、瓶、広口瓶、シリンジ、カートリッジ、ブリスター包装、又はアンプルである。追加の例としては、材料の表面は、例えばマイクロプレート、遠沈管、ピペットチップ、ウェルプレート、マイクロウェルプレート、ELISAプレート、マイクロタイタープレート、96ウェルプレート、384ウェルプレート、遠沈管、クロマトグラフィーバイアル、真空採血管、又は試料管などの実験器具製品の接触表面であってもよい。
【0448】
第2のより詳しい実施形態のまた別の例は、表面がPECVDにより堆積したSiOxyz又はSiNxyzのコーティング又は層であってもよいことであり、この中でX線光電子分光(XPS)により測定されるxは約0.5~約2.4であり、XPSにより測定されるyは約0.6~約3であり、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)により測定されるzは約2~約9である。別の例は、表面が、SiOx(XPSにより測定されるxは約1.5~約2.9である)、任意選択的に周期表のIII族及び/又はIV族(例えば、III族ではホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、スカンジウム、イットリウム、又はランタン(アルミニウム及びホウ素が好ましい)、及びIV族ではケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、又はトリウム(ケイ素及びスズが好ましい))からの金属元素の化合物である有機金属前駆体の酸化物又は窒化物のバリアコーティング又は層である。
【0449】
第2のより詳しい実施形態の極性液体処理剤は、例えば、水(例えば、水道水、蒸留水、又は脱イオン水);アルコール(例えば、C1~C12アルコール、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、s-ブタノール、t-ブタノール);グリコール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ポリエチレングリコール等);グリセリン、C1~C12直鎖若しくは環状のエーテル(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、グリム(CH3OCH2CH2OCH3));ジエチレンオキシド、トリエチレンオキシド、及びテトラエチレンオキシドなどの式-CH2CH2n-の環状エーテル;環状アミン;環状エステル(ラクトン、例えばアセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン、及びカプロラクトン);C1~C12アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、又はブチルアルデヒド);C1~C12ケトン(例えば、アセトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、又はジブチルケトン);C1~C12カルボン酸(例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、又は酪酸);アンモニア、C1~C12アミン(例えば、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、又はドデシルアミン);フッ化水素、塩化水素、C1~C12エポキシド(例えば、エチレンオキシド又はプロピレンオキシド);又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。これに関連して、「液体」は、処理の温度、圧力、又は他の条件下での液体を意味する。
【0450】
第2のより詳しい実施形態の極性液体処理剤との表面の接触は、噴霧、ディッピング、フラッディング、浸漬、流し塗り、塗布器による転写、蒸気の凝縮、又は極性液体処理剤のその他の塗布などの任意の有用な方式で行うことができる。表面を第2のより詳しい実施形態の極性液体処理剤と接触させた後、表面は、例えば1秒~30分間放置されてもよい。
【0451】
第2のより詳しい実施形態のイオン化ガス処理では、イオン化ガスは、いくつかの例としては、空気;窒素;酸素;不活性ガス(例えば、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、又はクリプトン);又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。イオン化ガスは、任意の適切な方法で運ばれてもよい。例えば、これはイオン化ブローオフガン又は他のイオン化ガス源から運ばれてもよい。都合のよいガス送出圧力は、1~120psi(6~830kPa)(ゲージ圧、又は任意選択的に絶対圧)、任意選択的に50psi(350kPa)である。イオン化ガスの含水率は0~100%であってもよい。イオン化ガスで極性処理された接触表面は、例えば1~300秒間、任意選択的に10秒間などの任意の適切な処理時間行うことができる。
【0452】
第2のより詳しい実施形態の調整プラズマ処理では、窒素含有ガス、不活性ガス、酸化ガス、又はこれらの2つ以上の組み合わせをプラズマ処理装置内で使用することができる。窒素含有ガスは、窒素、亜酸化窒素、二酸化窒素、四酸化二窒素、アンモニア、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。不活性ガスは、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、クリプトン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。酸化ガスは、酸素、オゾン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0453】
第2のより詳しい実施形態の変換プラズマ処理では、水;揮発性極性有機化合物;C1~C12炭化水素及び酸素;C1~C12炭化水素及び窒素;ケイ素含有ガス;又はこれらの2つ以上の組み合わせをプラズマ処理装置内で使用することができる。極性液体処理剤は、例えば本明細書中で述べた極性液体処理剤のいずれかであってもよい。C1~C12炭化水素は、任意選択的にメタン、エタン、エチレン、アセチレン、n-プロパン、i-プロパン、プロペン、プロピン、n-ブタン、i-ブタン、t-ブタン、ブタン、1-ブチン、2-ブチン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0454】
第2のより詳しい実施形態のケイ素含有ガスは、シラン、有機ケイ素前駆体、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。ケイ素含有ガスは、任意選択的に、Si1~Si4の置換若しくは無置換のシラン(例えば、シラン、ジシラン、トリシラン、又はテトラシラン);炭化水素若しくはハロゲンで置換されているSi1~Si4シラン(例えば、テトラメチルシラン(TetraMS)、テトラエチルシラン、テトラプロピルシラン、テトラブチルシラン、トリメチルシラン(TriMS)、トリエチルシラン、トリプロピルシラン、トリブチルシラン、トリメトキシシラン)、ヘキサフルオロジシランなどのフッ化シラン、オクタメチルシクロテトラシラン若しくはテトラメチルシクロテトラシランなどの環状シラン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせの任意の1つ以上を含むか、それから本質的になるか、又はそれからなる、非環状又は環状の置換又は無置換のシランであってもよい。ケイ素含有ガスは、直鎖シロキサン、単環式シロキサン、多環式シロキサン、ポリシルセキシオキサン、アルキルトリメトキシシラン、直鎖シラザン、単環式シラザン、多環式シラザン、ポリシルセスキアザン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。ケイ素含有ガスは、テトラメチルジシラザン、ヘキサメチルジシラザン、オクタメチルトリシラザン、オクタメチルシクロテトラシラザン、テトラメチルシクロテトラシラザン、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせであってもよい。
【0455】
第2のより詳しい実施形態の調整プラズマによる処理、処理プラズマによる処理、又は両方は、プラズマチャンバー内で行うことができる。プラズマチャンバーは、2枚の金属プレート間に処理容積を有していてもよい。処理容積は、例えば100mL~50リットル、例えば約14リットルであってもよい。任意選択的に、処理容積は略円筒状であってもよい。
【0456】
第2のより詳しい実施形態のプラズマチャンバーは、処理チャンバーの少なくとも一部を取り囲む略円筒状の外部電極を有していてもよい。
【0457】
第2のより詳しい実施形態のプラズマチャンバーへのガスの供給のために、チューブ状のガス入口が処理容積内に突出していてもよく、これを通して供給ガスがプラズマチャンバー内に供給される。プラズマ反応チャンバーは、任意選択的に処理容積を少なくともある程度脱気するための真空源を含んでいてもよい。
【0458】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、調整プラズマ又は変換プラズマのための励起エネルギーは、1~1000W、任意選択的に100~900W、任意選択的に500~700W、任意選択的に1~100W、任意選択的に1~30W、任意選択的に1~10W、任意選択的に1~5Wであってもよい。
【0459】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、プラズマチャンバーは、調整プラズマ又は変換プラズマによる処理にガスを供給する前に0.001ミリトル(mTorr)~100Torrの基準圧力まで減圧される。
【0460】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、ガスは、全てのガスについて1mTorr~10Torrの全圧及び1~300sccm、任意選択的に1~100sccmの供給量において調整プラズマ処理又は変換プラズマ処理のために供給される。
【0461】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、ガスは、1~300秒間、任意選択的に90~180秒間にわたり調整プラズマ処理又は変換プラズマ処理のために供給される。
【0462】
第2のより詳しい実施形態の処理後、例えば容器の内腔表面などの処理された接触表面は、水性タンパク質と接触することができる。好適なタンパク質のいくつかの非限定的な例は、例えばウシ血清アルブミン(BSA)などの哺乳類血清アルブミン;フィブリノゲン(FBG);例えば血液セロトランスフェリン(又はシデロフィリン、別名トランスフェリン)などのトランスフェリン(TFN);ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン);ミルクトランスフェリン;卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);及び膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;例えば六量体インスリン、単量体インスリン、ブタインスリン、ヒトインスリン、組み換えインスリン、及び医薬品グレードのインスリンなどのインスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;これらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体;又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む水性タンパク質である。
【0463】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、ウシ血清アルブミン(BSA)などの哺乳類血清アルブミン;フィブリノゲン(FBG);例えば血液セロトランスフェリン(又はシデロフィリン、別名トランスフェリン)などのトランスフェリン(TFN);ラクトトランスフェリン(ラクトフェリン);ミルクトランスフェリン;卵白オボトランスフェリン(コンアルブミン);及び膜結合メラノトランスフェリン;プロテインA(PrA);プロテインG(PrG);プロテインA/G;プロテインL;例えば六量体インスリン、単量体インスリン、ブタインスリン、ヒトインスリン、組み換えインスリン、及び医薬品グレードのインスリンなどのインスリン;医薬用タンパク質;血液又は血液成分のタンパク質;これらのタンパク質の任意の組み換え型、修飾型、全長前駆体、シグナルペプチド、プロペプチド、又は成熟変異体の少なくとも1つに関しての未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きいタンパク質回収率を有する。
【0464】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Nunc A/S Corporation,Denmarkから販売されているNUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、66,000ダルトンの原子質量を有するウシ血清アルブミン(BSA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0465】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、BSAについて、70%超、任意選択的に80%超、任意選択的に90%超、任意選択的に最大100%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0466】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、340,000ダルトンの原子質量を有するフィブリノゲン(FBG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0467】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、FBGについて、20%超、任意選択的に40%超、任意選択的に60%超、任意選択的に最大80%、任意選択的に最大84%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0468】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、80,000ダルトンの原子質量を有するトランスフェリン(TFN)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0469】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、TFNについて、60%超、任意選択的に65%超、任意選択的に69%超、任意選択的に最大70%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0470】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、45,000ダルトンの原子質量を有するプロテインA(PrA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0471】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrAについて、9%超、任意選択的に20%超、任意選択的に40%超、任意選択的に60%超、任意選択的に最大67%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0472】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、20,000ダルトンの原子質量を有するプロテインG(PrG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0473】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、NUNC(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrGについて、12%超、任意選択的に20%超、任意選択的に40%超、任意選択的に60%超、任意選択的に80%超、任意選択的に最大90%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0474】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、66,000ダルトンの原子質量を有するウシ血清アルブミン(BSA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。Eppendorf LoBind(登録商標)プレートは、Eppendorf LoBind AG,Hamburg,Germanyから販売されている。
【0475】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、BSAについて、95%超の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0476】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、340,000ダルトンの原子質量を有するフィブリノゲン(FBG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0477】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、FBGについて、72%超の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0478】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、80,000ダルトンの原子質量を有するトランスフェリン(TFN)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0479】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、TFNについて、69%超の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0480】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、45,000ダルトンの原子質量を有するプロテインA(PrA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0481】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、20,000ダルトンの原子質量を有するプロテインG(PrG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0482】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、Eppendorf LoBind(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrGについて、96%超の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0483】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、66,000ダルトンの原子質量を有するウシ血清アルブミン(BSA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。GRIENER(登録商標)プレートは、オーストリアのGreiner Holding AGから販売されている。
【0484】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、BSAについて、60%超、任意選択的に最大86%の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0485】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、340,000ダルトンの原子質量を有するフィブリノゲン(FBG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0486】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、FBGについて、50%超、任意選択的に最大65%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0487】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、80,000ダルトンの原子質量を有するトランスフェリン(TFN)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0488】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、TFNについて、50%超、任意選択的に最大60%の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0489】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、45,000ダルトンの原子質量を有するプロテインA(PrA)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0490】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrAについて、25%超、任意選択的に最大56%の、24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0491】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、20,000ダルトンの原子質量を有するプロテインG(PrG)について、未調整且つ未変換の表面のタンパク質回収率よりも大きい24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0492】
第2のより詳しい実施形態において、任意選択的に、処理された接触表面は、本明細書の手順後、GRIENER(登録商標)96ウェル丸底プレート上で、PrGについて、60%超、任意選択的に最大75%の24時間時点のタンパク質回収率を有する。
【0493】
実施例21
以降は第2のより詳しい実施形態の方法の詳述及び実施例である。
【0494】
第2のより詳しい実施形態の方法は、NUNC(登録商標)によって製造された96ウェルのポリプロピレンマイクロプレートに対して行った。
【0495】
第2のより詳しい実施形態の以下の工程を部品に対して行った。
【0496】
受け取った状態のままのプレートに、第2のより詳しい実施形態に従って、本明細書では極性液体処理剤と呼ぶ水道水(任意の極性溶媒と同様、脱イオン水又は他の水も使用できる)を噴霧することによって接触させ、1分30秒間そのまま置くことで、極性処理された接触表面を得た。
【0497】
その後、第2のより詳しい実施形態に従ってイオン化空気を部品に吹き付けた。これを本明細書では、極性処理された接触表面の50psiの圧力のイオン化ガスとの接触という。任意選択的に、空気の代わりに又は空気に加えて、ガス(窒素、アルゴン、又は他の任意の圧縮ガス)を使用することもできる。ガス(部品への吹き付けに使用される)の含水率は0~100%であってもよい。1~300秒の時間を使用することができるものの、部品は約10秒間吹き付けられた。
【0498】
その後、部品を第2のより詳しい実施形態の以下の工程のためのキャリアの上に載せた。載せる前又は載せた後に1~300秒(合計で1~600秒)の保持時間を採用することができる。
【0499】
その後、第2のより詳しい実施形態に従ってイオン化された加圧ガスで処理された接触表面を調整プラズマで処理するために部品をプラズマチャンバー内に入れた。この理論の範囲又は正確さにより本発明を限定するものではないが、第2のより詳しい実施形態の調整プラズマが、マイクロプレートの表面から非高分子性の添加剤を取り除き及び/又は親水性のナノテクスチャー加工された表面(別名頂部と凹部のナノ構造)を形成し、これにより表面の官能化が行い易くなるという理論を立てることができる。この理論によれば、ナノ構造は、あらゆる疎水性の窪みに比較的大きいタンパク質が接近することを立体的に防ぐ一方、「頂部」の親水化を促進するであろう。更にこの理論によれば、生成するラジカルの相対的な安定性を考慮すると、プラズマによる調整(別名活性化)は、調整工程時にヒドロキシル(ラジカル)官能基又はメチル/メチレンラジカルよりもアミン(ラジカル)官能基を利用して行う方がよいであろう(アミンラジカルは、例えばヒドロキシルラジカルよりも安定であり、メチルラジカルよりも簡単に形成される)。これは、処理工程時に更に作られるか修飾される「ハンドル」又は連結点となることができる。
【0500】
本実施例で使用された第2のより詳しい実施形態の例示的なプラズマ処理チャンバーは、図10に示される構成を有していた(任意選択的なチャンバーも使用することができる - 以下を参照されたい)。
【0501】
第2のより詳しい実施形態の図10を参照すると、アルミニウムの底部112とアルミニウムの蓋114(これは使用時に閉じられるが、図10では出し入れ時のような開いた状態で示されている)を有する円筒状のセラミックチャンバー110が示されている。チャンバー110は、直径約12インチ(30cm)であり、深さ8インチ(20cm)である。バルブ20によって制御される、真空ポンプ118へ真空管116を供給するチャンバーのポンピングポートは、底部(アルミニウム底部112)にあり、これは直径約4インチ(10cm)であり、1/2インチ(12mm)の直径のガス入口122は処理領域124内へポンピングポートを通って同心円状に突出していた。ポンピングポート全体にプラズマスクリーン(図示せず)が取り付けられ、これは銅スクリーンとスチールウールから構成された。ガスはチャンバー10の下のガス系126を通ってガス入口122へ供給された。圧縮ガス(例えば、供給源130から)及び36インチ(90cm)の長さのキャピラリー132(0.006インチ(0.15mm)内部ID)のために128などのマスフローコントローラーが使用され、閉止弁136を経由してマニホールド134内へ供給される水の供給量が制御された。セラミックチャンバー110は、外側を同心円状に包む銅電極138を有していた。これは約7インチ(18cm)の高さであった。電極138は、最適な電力結合(低反射出力)のためにマッチングされるCOMDEL(登録商標)1000-ワットRF(13.56MHz)電源42の50オームの出力を可能にするCOMDEL(登録商標)マッチング回路140と接続された。COMDEL(登録商標)装置は、Comdel,Inc.,Gloucester,Massachusetts,USAから販売されている。電源142は、標準同軸ケーブル144を介してCOMDEL(登録商標)マッチングネットワーク40と連結された。プロセス圧力を測定するために、2つのキャパシタンスマノメータ(0~1Torr及び0~100Torr)(図示せず)が真空管116(別名ポンプライン)に取り付けられた。
【0502】
第2のより詳しい実施形態の方法は、大気プラズマ又はジェットを使用することによるなど、多様なプラズマ処理チャンバー内で行うことができる。部品は、1~1000個の部品のバッチ(上述の通り)で処理されてもよく、又はロードロックを用いた半連続運転で処理されてもよい。大気中での処理の場合、チャンバーは必要とされないであろう。任意選択的に米国特許第7,985,188号の図2及び添付の明細書に記載のように1つの部品を処理してもよい。
【0503】
イオン化された加圧ガスで処理された接触表面を第2のより詳しい実施形態の調整プラズマで処理するために装填した後、チャンバー内部の圧力は50mTorrまで減圧された。10-6Torrまでの又は100Torrの高い基本圧力も許容可能である。基本圧力に到達した後、30sccm(標準立方センチメートル毎分)で窒素ガス(純度99.9%、99.999%の高純度又は95%の低純度も使用することができる)がチャンバーに入れられ、40mTorr(1mTorrの低い圧力又は10Torrの高い圧力も使用することができる)の処理圧力に到達した。その後、13.56MHzの周波数で90~180秒間、600ワットを使用してプラズマを生じさせたが、1~300秒の処理時間でも良好に作用するであろう。1Hz~10GHzの周波数も可能である。処理時間が完了した後、プラズマを停止させ、ガスを抜いて(これは必須ではないが)基本圧力に戻した。第2のより詳しい実施形態のこの調整プラズマ処理により、マイクロプレート上に調整された接触処理表面が生じた。
【0504】
次に、調整された接触表面は、同じ装置中で第2のより詳しい実施形態の変換プラズマを用いて処理されたが、代わりに他の装置を使用することもできる。
【0505】
この理論の範囲又は正確さにより本発明を限定するものではないが、第2のより詳しい実施形態の作用の1つのメカニズムとして、変換プラズマが、調整プラズマ処理により生じた親水化された部位又は「ハンドル」の更なる官能化(親水性の「エクステンダー」)を与えると理論付けすることができる。この理論によれば、この延長機能は、(1)ポリエチレンオキシドの縮合(PEG化)法又は(2)表面「ハンドル」(調整プラズマ処理由来の官能基)及び/又は親水性エクステンダー種のプラズマ活性化によるベタイン/双性イオン(内部イオン対)法に行うことによって得ることができる。この理論によれば、本明細書における「エクステンダー」とは、変換プラズマの成分である。この理論によれば、処理された接触表面上により多い親水性種を形成するための表面「ハンドル」及び「エクステンダー」種の再結合により、親水性の立体的に安定化された表面が与られ、水の立体的な反発(hydrosteric repulsion)によりタンパク質の表面への結合の抑制がもたらされる。この理論によれば、処理された接触表面上にベタイン種又はスルホベタイン種を生じさせるために、環状エステル(ラクトン)又は環状スルホエステル(サルトン)を利用することができる。
【0506】
変換プラズマは、第2のより詳しい実施形態に従って以下の通り照射される。チャンバーを脱気し(又は脱気された状態のままにし)、約30sccmの流れで0.006インチ(0.15mm)の直径のキャピラリー(長さ36インチ(91cm))からチャンバー内へ水蒸気を流し入れることで、26~70mTorr(ミリトル)の処理圧力を得た。水蒸気の流れは1~100sccmの範囲であってもよく、1mTorr~100Torrの圧力も可能である。その後、600ワットでプラズマを生じさせ、90~180秒間持続させたが、1~300秒の処理時間でも良好に作用するであろう。その後、プラズマを停止し、真空ポンプのバルブを閉め、次いでチャンバーを通気して大気に戻した。その結果、処理された接触表面が形成された。チャンバーを通気するために室内空気を使用したが、窒素を使用することもできるであろう。任意選択的に、水蒸気又は他の極性溶媒を含む材料を使用することもできるであろう。
【0507】
第2のより詳しい実施形態のチャンバーを通気させた後、蓋を外してキャリアを取り出した。次いで部品を取り出した。この時点で部品はそのままの状態で直ちに使用でき、又はこれらは保管又は輸送のためにプラスチック製の袋、アルミニウム箔、又は他の包装内に包装されてもよい。
【0508】
得られた表面(第2のより詳しい実施形態の上述の処理により)はタンパク質の付着の大幅な低減を示した。結果は表21~24に示されている。
【0509】
様々な他の物品を処理するために、第2のより詳しい実施形態の同様なプロセスを使用することができる。これらには、例えば、マイクロプレート、遠沈管、ピペットチップ、ウェルプレート、マイクロウェルプレート、ELISAプレート、マイクロタイタープレート、例示した96ウェルプレート、384ウェルプレートの接触表面などの実験器具;例えばバイアル、瓶、広口瓶、シリンジ、カートリッジ、ブリスター包装、アンプル、真空採血管、試料管、遠沈管、クロマトグラフィーバイアルなどの容器;又はカテーテル、ステント、心臓弁、導線、ペースメーカー、インスリンポンプ、外科用品、人工心肺、コンタクトレンズ等など、タンパク質を含む血液及び他の液体若しくは医薬品と接触することになる表面を有する医療器具などが含まれる。
【0510】
第2のより詳しい実施形態の任意選択的なプロセス
上述の通り水を部品に塗布してもよく(第2のより詳しい実施形態のミスト又は高湿キャビネットにより)、その後、
・第2のより詳しい実施形態の上で記載した通りの、イオン化空気の部品/製品への吹き付け、その後、
・窒素を含むプラズマ(イオン化ガス)を利用する減圧での第2のより詳しい実施形態の前処理、その後、以下の1つの最終処理:
i.メタン及び空気
ii.メタン及び窒素
iii.メタン及び水
iv.上の任意の組み合わせ
v.任意の他の炭化水素ガス
vi.シラン及び窒素
vii.シラン及び水
viii.シランの代わりに任意の有機ケイ素
が行われる。
【0511】
【表22】
【0512】
【表23】
【0513】
【表24】
【0514】
【表25】
【0515】
第2のより詳しい実施形態の表に対する注釈:
処理 - これは、プレートが本明細書に記載の第2のより詳しい実施形態の方法により処理されたかどうかを示す(ns3,N - 窒素プラズマのみ(イオン化された加圧ガスで処理された接触表面の調整プラズマによる処理)、H - 水プラズマのみ(水、揮発性極性有機化合物、C1~C12炭化水素及び酸素、炭化水素及び窒素、ケイ素含有ガス、又はこれらの2つ以上の組み合わせを含む変換プラズマでの調整された接触表面の処理による処理された接触表面の形成)、1/+/H - イオン化された窒素プラズマと水プラズマ、すなわち極性処理された接触表面とイオン化ガスとの接触;イオン化された加圧ガスで処理された接触表面の調整プラズマでの処理による調整された接触表面の形成:及び調整された接触表面の変換プラズマでの処理)、U/C - 未被覆又は処理済み、これらは受け取ったままの状態のプレートであった、Lipidure - これは市販の液体の塗布され且つ硬化された化学品である。
【0516】
プレート - NUNC(登録商標) - Eppは、プラスチックメーカーであるEppendorf LoBind(登録商標)の略称である。
【0517】
噴霧 - 第2のより詳しい実施形態のコーティング前に、プレートに水を「霧状にして吹き付けた」又は噴霧したことを示す。これは、水、揮発性の極性有機化合物、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせを含む極性液体処理剤に表面を接触させて極性処理された接触表面を形成することの例である。
【0518】
W/Dは、第2のより詳しい実施形態のいずれかの場合において、プレートが噴霧されてから直ちにイオン化空気を吹き付けられた(W)か否か、又はこれらが1~20分おいてからイオン化空気を吹き付けられたか(D)か否か(極性処理された接触表面のイオン化ガスとの接触)を示す。
・N-時間=秒単位での窒素ガス処理時間
・H-時間=秒単位での水ガス処理時間
・出力 - 標準はRF電源にかけられる600ワットであり、50%は300ワットであった。
・BSA、FBG、PrA、PrG、TFNは全て試験で使用したタンパク質であった。
【0519】
第2のより詳しい実施形態のヒドロキシル含有率についての試験
例えば96ウェルマイクロプレートのウェル表面など、各記載したプロセスによって製造された処理された接触表面を、未調整且つ未変換の表面と比較したXPS、SIMS、及び水との接触角によって分析し、本発明の処理により生じる相違を決定する。以下の結果が考慮される。
【0520】
第2のより詳しい実施形態のXPS分析
第2のより詳しい実施形態の処理された接触表面の原子組成を特徴付けるために、「本発明で予定されている極性液体、イオン化ガス、調整プラズマ、又は変換プラズマによる処理のいずれか又は全ての前」対「第2のより詳しい実施形態の変換プラズマ処理後」のX線光電子分光(XPS)が使用される。
【0521】
本発明の処理は、基本構造を被覆する又はバルク材料を修飾するのではなく、表面で基本構造を修飾すると考えられることから、第2のより詳しい実施形態のXPSデータは、相対感度要素、及び表面が表面の直下のバルク材料と異なる組成を有すると仮定したモデルを使用して定量化される。分析体積は分析面積(スポット径又は開口サイズ)と情報の深さの積である。光電子はX線侵入深さ(典型的には数ミクロン)の範囲内で生じるが、上面の脱出深さ又は深さの範囲内の光電子のみが検出される。
【0522】
第1のより詳しい実施形態及び第2のより詳しい実施形態のXPS装置は、Physical Electronics,Inc.,Eden Prairie,Minnesota,USAから販売されているPHITMQuantum 2000 XPSシステムである。PHITMXPSは、X線源としてMonochromated Alka 1486.6eV X線エネルギーを使用する。示されている値は、検出された元素を使用して100%に正規化した。検出限界は約0.05~0.1原子パーセントであった。
【0523】
XPSは水素を測定又は検出しないが、酸素、ケイ素、窒素、及び炭素を検出及び測定する。結果として、表面のヒドロキシル濃度の増加を調べるためにXPSを使用する場合、調べられるアーティファクトは、未調整且つ未変換の表面の酸素レベル及び/又は処理された接触表面の下の酸素レベルと比較した物品の表面での酸素の増加である。
【0524】
第2のより詳しい実施形態のXPS分析は、本発明の極性液体処理剤、イオン化ガス、調整プラズマ、及び/又は変換プラズマの処理工程のいずれかを使用する処理、又はこれらの処理の累積的な結果が、処理された接触表面で酸素濃度の増加を生じさせるか否かを決定するために使用される。変換プラズマ処理の結果として、処理された接触表面で検出される酸素のレベルは、処理された表面の下の酸素レベルよりも大きく、また極性液体、イオン化ガス、調整プラズマ、又は変換プラズマによるいずれかの処理前の対応する表面で検出される酸素のレベルよりも大きいと見込まれる。
【0525】
SIMS分析
第2のより詳しい実施形態の本発明の処理された及び未調整且つ未変換のサンプルの二次イオン質量分析(SIMS)が計画される。SIMSは、固体表面及び薄膜の組成を分析するために使用される。SIMSでは、処理された及び未調整且つ未変換の表面は、集束イオンビームを向けることによって処理され、これは各表面に対して様々な組成を有していてもよく、これは表面材料から二次イオンを放出させる。1~2nm(ナノメートル)の深さまでの表面の化学組成を決定するために、二次イオンの質量/電荷比がマススペクトロメーターにより測定される。酸素及びヒドロキシル基を求めていることから、イオンビームは検出の妨げとなる酸素ビームではないと考えられる。イオンビームは、例えばセシウムイオンビームであってもよく、これは容易に未調整且つ未変換の及び処理された接触表面並びにバルクサンプルの全ての成分から区別することができる。第2のより詳しい実施形態のSIMS分析の結果は、未処理且つ未変換の表面に対して、処理された接触表面から検出される酸素、ヒドロキシル、及び酸素含有部位の合計を増加させると考えられる。
【0526】
接触角分析
本発明の処理の効果を決定するために、第2のより詳しい実施形態の、未調整且つ未変換の表面に対する処理された接触表面についての接触角分析を行うことができる。
【0527】
第2のより詳しい実施形態の接触角試験のための分析装置は、協和界面科学株式会社(東京、日本)製の接触角計DM-701型である。接触角を得るために、各試験片から得た小片の内表面上に5つの水滴を載せる。試験条件及びパラメータは下にまとめられている。各試験片について、最も代表的な小片を試験のために選択する。全ての試料について、1μL(1マイクロリットル)の液径を使用する。試験片の湾曲のため、曲率補正ルーチンを使用して接触角を正確に測定する。
【0528】
第2のより詳しい実施形態の接触角試験条件及びパラメータ
・試験装置 - DM-701接触角計
・液体ディスペンサー - 22ゲージステンレス鋼針
・液径 - μL(1マイクロリットル)
・試験液 - 蒸留水
・環境 - 大気中の空気、室温(約25℃)
【0529】
第2のより詳しい実施形態の結果
本明細書で述べた第2のより詳しい実施形態のCOPプラスSiOxyzpH保護コーティングから作製した試験片が、全ての試験した試験片で最も大きい平均接触角を有している。COPプラスpH保護コーティングから作製した試験片についての平均接触角は99.1°(度)である。未被覆のCOP試験片についての平均接触角は90.5°である。ガラス試験片は10.6°の著しく低い平均接触角を有している。このデータは、pH保護コーティングが未被覆のCOP容器の接触角を増加させることを示す。表面安定化層又はpH保護コーティングを有さないSiOxでコーティングされている容器はガラスと同様の結果を示すと見込まれ、これは表面安定化層又はpH保護コーティングと比較した親水性コーティングの関係を示す。
【0530】
第2のより詳しい実施形態の本発明の変換プラズマ処理は、直接COP基材に行われるかSiOxyz(pH保護コーティング又は層)表面に行われるかに関わらず、基材の接触角を大幅に小さくすると期待される。任意選択的な他の処理と共に、表面上への本発明の変換プラズマ処理を使用することで、0°~90°、任意選択的に20°~80°、任意選択的に40°~80°、任意選択的に50°~70°、任意選択的に55°~65°、任意選択的に5°~90°、任意選択的に10°~70°、任意選択的に10°~40°の接触角が達成可能であると見込まれる。
【0531】
実施例22 - 第2のより詳しい実施形態のpH保護コーティング又は層を有するバイアル
環状オレフィンコポリマー(COC)樹脂を射出成形して、5mlのCOCバイアルのバッチを形成する。環状オレフィンポリマー(COP)樹脂を射出成形して、5mlのCOPバイアルのバッチを形成する。製造したCOC及びCOPのバイアルに対して、XPS、SIMS、及び接触角試験を行う。これらのバイアルは、以下でサンプル1バイアルと呼ばれる。
【0532】
それぞれCOC及びCOPのバイアルのサンプルを、この実施例で述べられている第2のより詳しい実施形態の同じプロセスによってコーティングする。COC及びCOPのバイアルは、プラズマ促進化学蒸着(PECVD)によって2層のコーティングで被覆される。第1の層は、酸素及び溶質のバリア特性を有するSiOxからなり、第2の層はSiOxyzpH保護コーティング又は層である。(任意選択的に、非プラズマCVD(化学蒸着)、物理蒸着(蒸気がその化学組成を変えずに表面上に凝縮される)、スパッタリング、大気圧堆積など、PECVD(プラズマ促進化学蒸着)以外の他の堆積方法も使用できるが、限定されない)。
【0533】
第2のより詳しい実施形態のSiOxyzpH保護コーティング又は層を形成するために、OMCTS、アルゴン、及び酸素を含む前駆体ガス混合物を各バイアル内へ導入する。バイアル内部のガスは、ラジオ波(13.56MHz)電源によって容量結合電極間で励起される。これらのCOCバイアルの準備及び対応するこれらのCOPバイアルの準備は、米国特許出願公開第2015-0021339A1号明細書の実施例DD及び関連する開示に詳細に記載されている。COC及びCOPのバイアルの得られたSiOxyzpH保護コーティング又は層表面に対して、XPS、SIMS、及び接触角試験を行う。これらのバイアルは、以下でサンプル2バイアルと呼ばれる。
【0534】
COC及びCOPのバイアルの内部を、その後、唯一の供給ガスとしての窒素ガスを使用して第2のより詳しい実施形態の調整プラズマで更に処理し、その後、唯一の供給ガスとしての水蒸気を使用して第2のより詳しい実施形態の変換プラズマで処理することで(共に本明細書に記載の通り)、処理された内部表面を有するバイアルを得る。COC及びCOPのバイアルの得られた処理された内部表面に対して、XPS、SIMS、及び接触角試験を行う。これらのバイアルは、以下でサンプル3バイアルと呼ばれる。
【0535】
SiOx又はSiOxyzコーティングなしのサンプル1バイアルと同じバイアルも、唯一の供給ガスとしての窒素ガスを使用して第2のより詳しい実施形態の調整プラズマで直接処理し、その後、唯一の供給ガスとしての水蒸気を使用して第2のより詳しい実施形態の変換プラズマで処理することで(共に本明細書に記載の通り)、処理された内部表面を有するバイアルを得る。これらのバイアルは、以下でサンプル4バイアルと呼ばれる。
【0536】
第2のより詳しい実施形態のそれぞれのバイアル及び予想される試験結果は、第2のより詳しい実施形態の表23中にまとめられている。第2のより詳しい実施形態の表16において、「=」は同じ基材(COC又はCOP)のサンプル1と同じであること意味し、「<」は同じ基材のサンプル1より小さいことを意味し、「>」は同じ基材のサンプル1より大きいことを意味する。
【0537】
第1のより詳しい実施形態の実施例23
この実験では、処理された表面の特性を決定するために、特にポリマーへグラフトされた部位の導入を定性的に及び定量的に示すために、6つのタイプの96ウェルマイクロプレートに対してプラズマ処理した後、X線光電子分光(XPS)分析を行った。
【0538】
6つのタイプの96ウェルマイクロプレートは、未処理のポリプロピレンPorvairマイクロプレートと、第1のより詳しい実施形態に従って下のプラズマ処理1~5の方法の1つで処理されたマイクロプレートとである。詳細なプラズマ処理手順は下に示されており、変数は表25に示されている。
【0539】
プラズマ処理1(すなわちO2及び水の2段階処理):
真空チャンバーの内部にある固定具にマイクロプレートを取り付けた後、真空チャンバーの蓋を閉じた。真空を作動させ、チャンバー内部から大気ガスを除去する一方、チャンバーを密閉した。大気ガスを排出して酸素ガスの侵入を生じさせるためにプラズマの活性化は30秒遅らせた。チャンバーの圧力はこの30秒間安定化させた。酸素プラズマを真空チャンバー内で活性化させた。300秒後に酸素プラズマを失活させた。チャンバーの真空を開放し、蓋を開けた。チャンバーの内部にある固定具からマイクロプレートを取り外した。
【0540】
30秒後、酸素をチャンバーから排気し、10sccmの流量で水蒸気をチャンバー内に導入した。水プラズマをチャンバー内で活性化させた。180秒後に水プラズマを失活させた。チャンバーの真空を開放した。チャンバーの蓋を開けた。チャンバーの内部にある固定具からマイクロプレートを取り外した。
【0541】
プラズマ処理2(すなわち1段階でのO2/水混合物処理):
真空チャンバーの内部にある固定具にマイクロプレートを取り付けた後、真空チャンバーの蓋を閉じた。その後、チャンバー内部から大気ガスを除去した一方、チャンバーを密閉した後に真空を作動させた。大気ガスを排出して酸素ガス及び水蒸気の侵入を生じさせるためにプラズマの活性化は30秒遅らせた。酸素は95sccmの速度で流した。水蒸気は10sccmの速度で流した。チャンバーの圧力はこの30秒間安定化させた。その後、酸素-水プラズマを真空チャンバー内で活性化させた。300秒後に酸素-水プラズマを失活させた。処理が完了した後、チャンバーの真空を開放し、チャンバーの蓋を開けた。チャンバーの内部にある固定具からマイクロプレートを取り外す。
【0542】
プラズマ処理3(すなわちO2処理のみ):
真空チャンバーの内部にある固定具にマイクロプレートを取り付けた後、真空チャンバーの蓋を閉じた。チャンバーを密閉してチャンバー内部から大気ガスを除去した後に真空を作動させた。大気ガスを排出して酸素ガスの侵入を生じさせるためにプラズマの活性化は30秒遅らせた。酸素は95sccmの速度で流した。チャンバーの圧力はこの30秒間安定化させた。酸素プラズマを真空チャンバー内で活性化させた。300秒後に酸素プラズマを失活させた。処理が完了した後、チャンバーの真空を開放し、チャンバーの蓋を開けた。チャンバーの内部にある固定具からマイクロプレートを取り外した。
【0543】
プラズマ処理4(すなわち水処理のみ):
真空チャンバーの内部にある固定具にマイクロプレートを取り付けた後、真空チャンバーの蓋を閉じた。チャンバー内部から大気ガスを除去した一方、チャンバーを密閉した後に真空を作動させた。大気ガスを排出して水蒸気の侵入を生じさせるためにプラズマの活性化は30秒遅らせた。水蒸気は10sccmの速度で流した。チャンバーの圧力はこの30秒間安定化させた。水プラズマをチャンバー内で活性化させた。180秒後に水プラズマを失活させた。処理が完了した後、チャンバーの真空を開放し、チャンバーの蓋を開けた。チャンバーの内部にある固定具からマイクロプレートを取り外す。
【0544】
プラズマ処理5(すなわち空気処理のみ):
真空チャンバーの内部にある固定具にマイクロプレートを取り付けた後、真空チャンバーの蓋を閉じた。チャンバー内部から大気ガスを除去した一方、チャンバーを密閉した後に真空を作動させた。未調節の大気ガスを排出して調節した大気ガスを侵入させるためにプラズマの活性化は30秒遅らせた。大気ガスは100sccmの速度で流した。チャンバーの圧力はこの30秒間安定化させた。大気プラズマを真空チャンバー内で活性化させた。300秒後に大気プラズマを失活させた。処理が完了した後、チャンバーの真空を開放し、チャンバーの蓋を開けた。チャンバーの内部にある固定具からマイクロプレートを取り外した。
【0545】
【表26】
【0546】
実施例18に記載されているものと同じ方法でXPSを行った。6つのタイプのマイクロプレートについてのXPSの結果は表26及び表27に示されている。表26は、O、N等などのグラフト化された原子の原子パーセントを示す。表27は、全て水素結合受容性基であるC-O、C=O、及びO-C=Oなどの特定の炭素含有種に帰属される表26中で報告されているグラフト化されている炭素の原子パーセント、並びにポリプロピレンの形態で残っている炭素から本質的になる炭素-炭素又は水素-炭素結合(「C-(C,H)」)に含まれる表26中で報告されている炭素の原子パーセントを示す。表27中の全ての炭素含有種の合計は、少なくともいくつかの場合には標準的な実験誤差のために表26中に報告されている炭素の原子パーセントからわずかに変動する。
【0547】
【表27】
【0548】
【表28】
【0549】
タンパク質結合特性と表面の特徴との関係を決定するために、6つのタイプのマイクロプレートに対してタンパク質回収率の試験も行った。試験手順は「全ての実施形態の試験」に記載されている。表面に24時間接触させた後の、1.5nMの5つのタンパク質(すなわちBSA、FBG、PrA、PrG、及びTFN)についての6つのタイプのマイクロプレートの回収率は、表28に示されている。結果は、水素結合受容性基であるグラフト化されたO原子及び「C-O」、「C=O」、及び「O-C=O」種を組み込むと、タンパク質の結合が低下する(すなわちタンパク質回収が増える)ことを示す。例えば、プラズマ処理1は、最も多い量のグラフト化されたO原子を導入し、これにより処理された表面は最も高いタンパク質回収率を有する。
【0550】
【表29】
【0551】
実施例24 - バリア及びpH保護コーティング
この実験では、処理された表面の特性を決定するために、3つのタイプの96ウェルマイクロプレートに対してX線光電子分光(XPS)分析を行った。3つのタイプのマイクロプレートは、未処理のポリプロピレン(UTPP)Porvairマイクロプレート、液体接触表面としてバリアコーティングを有するマイクロプレート、液体接触表面としてpH保護コーティングを有するマイクロプレートである。バリアコーティング及びpH保護コーティングの塗布方法は本明細書に記載されている。実施例14に記載されているものと同じ方法でXPSを行った。3つのタイプのマイクロプレートについてのXPSの結果は表29に示されている。表29は、表面のC、N、O、及びSiの原子パーセントを示す。
【0552】
【表30】
【0553】
3つのタイプのマイクロプレートのタンパク質回収率についても試験した。試験手順は「全ての実施形態の試験」に記載されている。表面に24時間接触させた後の、1.5nMの5つのタンパク質(すなわちBSA、FBG、PrA、PrG、及びTFN)についての3つのタイプのマイクロプレートの回収率は、表30に示されている。結果は、バリアコーティングされた表面は、未処理のポリプロピレン表面と比べてタンパク質の結合を減らすことを示す。
【0554】
【表31】
【0555】
仮想例25
更に、ガス前駆体を使用してタンパク質の結合に対する抵抗力を与える他の想定されるPECVDコーティングされた接触表面は、シロキサン、オルガノシロキサン、又はポリエチレングリコール(PEG)前駆体のPECVDによって被覆された表面を含み、その結果、コーティングが接触表面を特徴付ける。そのようなPECVDによって被覆される表面は、本明細書に記載のバリアコーティング又は層である。
【0556】
仮想例26
・1~30原子%、任意選択的に5~20原子%、任意選択的に5~10原子%の、グラフト化された酸素原子、
・0~30原子%、任意選択的に0~20原子%、任意選択的に0~10原子%の、グラフト化された窒素原子、及び
・80~95原子%、任意選択的に90~95原子%の炭素原子
を含む、タンパク質の結合に対する抵抗力を与える本発明の接触表面を形成するために想定される代替の方法は、アセチレン、エチレン、メタン、プロパン、ブタン、エタン、又はこれらの2つ以上の組み合わせなどをモノマーガス前駆体として使用し、更に必要な酸素及び任意選択的に窒素ヘテロ原子を与える空気、酸素、水蒸気、又はこれらの任意の2つ以上の組み合わせなどのコモノマーガスとの組み合わせを用いるか、又はこれらコモノマーガスを後続のPECVD処理工程として用いる、PECVDによるアモルファス炭素のコーティングの塗布である。
【0557】
仮想例27、実施形態(i)
(工程1)市販の成形されたポリプロピレン96ウェルマイクロプレートを真空プラズマ(Rf又はマイクロ波)反応器内に入れる。反応器を約1torrまで脱気し、次いで酸素/アルゴンガス混合物(各10/10sscm)を約50ワットのRf出力で5秒間開始する。表面C-OHの増加は、3300cm-1(CO-H伸縮)及び1600cm-1(C-OH伸縮)の増加を観察するFTIR-ATRによってモニタリングすることができる。
【0558】
(工程2)その後、ヒドロキシ修飾されたマイクロプレートをプラズマ反応器から取り出し、米国特許第6828028号明細書中でのコポリマーについての記載と同様の方法で合成した、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)と、トリメトキシシリルエチルメタクリレートとのコポリマーの2%w/vエタノール溶液中に浸漬する。
【0559】
溶液を除去し、60~80℃で2時間、マイクロプレートを真空下で加熱及び乾燥させる。
【0560】
タンパク質、全血、及び血清の抑制についてのマイクロプレートウェルの性能は、当該技術分野で確立されているUV、蛍光標識タンパク質、放射性標識タンパク質などの標準的なタンパク質回収法により評価することができる。本出願人は、回収率は平均で60%より良いはずであると見込んでいる。
【0561】
仮想例28、実施形態(ii)
(工程1)市販の成形されたポリプロピレン96ウェルマイクロプレートを真空プラズマ(Rf又はマイクロ波)反応器内に入れる。反応器を約1torrまで脱気し、次いで酸素/アルゴンガス混合物(各10/10sscm)を約50ワットのRf出力で5秒間開始する。表面C-OHの増加は、3300cm-1(CO-H伸縮)及び1600cm-1(C-OH伸縮)の増加を観察するFTIR-ATRによってモニタリングすることができる。
【0562】
(工程2)電源を停止し、酸素/アルゴンガスを停止し、N-(アミノエチル)-2,2,3-トリメチル-2-アザ-1-シラシクロペンタン)[Gelest]が入っている予め脱気されている容器からの前記アザ試薬の蒸気に、処理したばかりのマイクロプレートを1分間曝露した。表面アルキル-NH2の増加は、3300cm-1(O-H伸縮)の減少及び約1140cm-1(C-N伸縮)の増加を観察するFTIR-ATRによってモニタリングすることができる。
【0563】
(工程3)その後、アミンで表面修飾されたマイクロプレートをプラズマ反応器から取り出し、米国特許第6828028B1号明細書(参照により組み込まれる)の実施例1に記載の通り合成した、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2’-(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート(MPC)とジグリシジルメタクリレート(GMA)とのコポリマーの2%w/vエタノール溶液中に浸漬する。
【0564】
溶液を除去し、60~80℃で2時間、マイクロプレートを真空下で加熱及び乾燥させる。
【0565】
タンパク質、全血、及び血清の抑制についてのマイクロプレートウェルの性能は、当該技術分野で確立されているUV、蛍光標識タンパク質、放射性標識タンパク質などの標準的なタンパク質回収法により評価することができる。本出願人は、回収率は平均で60%より良いはずであると見込んでいる。
【0566】
仮想例29、実施形態(i)及び(ii)
最初の基材がSiOxプラズマコーティングされたポリプロピレンマイクロプレートである以外、実施形態(i)について実施例27で及び実施形態(ii)について実施例2で記載されているものと同じ手順を利用する。SiOxプラズマコーティングは他の技術で記載されている。成形されたプラスチック物品からの潜在的な溶出性及び浸出性の組成物からの溶質バリア性能を得るために、SiOxコーティングは、ウェル全体で少なくとも5ナノメートルの厚さである必要がある。
【0567】
表面Si-OHの増加は、3300cm-1(SiO-H伸縮)の増加を観察するFTIR-ATRによってモニタリングすることができる。
【0568】
実施例30(実施形態(i)及び(ii)
タンパク質結合評価手順(実施形態(i)及び(ii)の全てのコーティングされたマイクロプレートについての概要)
目的:この実験の目的は、表面コーティングされたマイクロタイタ―プレートへの経時的なタンパク質の結合量を決定することである。
【0569】
材料:BioTek Synergy H1マイクロプレートリーダー及びGen5ソフトウェア、Millipore Milli-Q Water System、Millipore Direct Detectスペクトロメーター、Alexa Fluor488標識タンパク質(ウシ血清アルブミン、フィブリノゲン、トランスフェリン、プロテインA、及びプロテインG)、10Xリン酸緩衝生理食塩水(PBS)、Nunc黒色96ウェルオプティカルボトムプレート、1Lのプラスチック瓶、25~100mLのガラスビーカー、アルミニウム箔、1~10mLのピペット、100~1000μLのピペット、0.1~5μLのピペット、50~300μLのマルチチャンネルピペット。
【0570】
実験:
- 表面がコーティングされた1つのマイクロプレートに対して5つのタンパク質:ウシ血清アルブミン(BSA)、フィブリノゲン(FBG)、トランスフェリン(TFN)、プロテインA(PrA)、及びプロテインG(PrG)を試験する。
- 各タンパク質は、Alexa Fluor 488で標識された蛍光標識粉末として受け取る。
○5mgのBSA:66,000Da
○5mgのFBG:340,000Da
○5mgのTFN:80,000Da
○1mgのPrA:45,000Da
○1mgのPrG:20,000Da
- 受け取った後、各バイアルのタンパク質を追加的に光から保護するためにアルミニウム箔で包み、適宜ラベル付けし、貯蔵のために冷凍庫に入れる。
- 1XのPBSの溶液を10XのPBSのストック溶液から調製する。
○100mLの10XのPBSをプラスチック製の1Lの瓶に添加し、引き続きMillipore Q-podからの蒸留水900mLを添加する。
- 100~1000μLのピペットを使用して、1000μLの1XのPBSを、タンパク質の各バイアル内に別々にピペットで入れることでタンパク質溶液を調製する。
- その後、溶液を完全に混合するために各バイアルを逆にしてボルテックスする。
- その後、各タンパク質をMillipore Direct Detect上で試験して正確なタンパク質濃度を得る。
○0.1~5μLのピペットを使用して、2μLのPBSの試料をDirect Detectの読み降りカードの1つ目のスポットの上に載せ、ソフトウェア中のブランクとして印を付ける。
○その後、1つ目のタンパク質の2μLの試料を残りの3つのスポット上に載せ、試料として印を付ける。
○カードを読み取った後、3つのタンパク質濃度の平均をmg/mL単位で記録する。
○これを残りの4つのタンパク質について繰り返す。
- その後、タンパク質溶液を保管のために冷蔵庫内に入れる。
【0571】
タンパク質結合分析
- 各タンパク質について、1XのPBSを用いて標準曲線を作成する。
○標準曲線は25nMで開始し、残りの12.5nM、6.25nM、3.125nM、及び1.5625nMの4つの濃度を得るために段階希釈を行う。
○標準曲線から調製した12.5nMの溶液を試験に使用する。
- 必要とされる25nM標準の量は、以下の通りである:
○マイクロプレート上で、各タンパク質を入れるべき合計で16個のウェルのために、4つの時点について試験し、各時点で4つのウェルを試験する。
○250μLの12.5nM溶液を各ウェル内に入れる。
○16ウェル*250μLの12.5nM溶液=4000μL=4mLの12.5nMの標準溶液。
○標準曲線を得るために使用した溶液及び最初の試料の読み取りのために使用した溶液を考慮してその体積に2mLを追加する。
○そのため、合計6mLの12.5nM標準溶液が必要とされる。
○段階希釈が行われることから、必要とされる25nMの体積を得るためにその数を2倍する。
○6mL*2=12mLの25nM溶液が必要とされる。
○何らかのミスが生じる場合の保険として、20mLの25nM標準溶液を調製する。
○2つ以上のマイクロプレートを試験する場合、この計算は調節することができる。
・例えば、2つのマイクロプレートを試験する場合:
・(4時点)(4ウェル)=16ウェル
・(16ウェル)(2プレート)=32ウェル
・(32ウェル)(250μL溶液)=8000μL=必要とされる8mLの12.5nM溶液
・8mL+2mL=必要とされる10mLの12.5標準溶液
・(10mLの溶液)*2=必要とされる20mLの25nM標準溶液
・=30mLの25nM標準溶液
- 25nM溶液を調製するために必要とされる各タンパク質の量は、Millipore Direct Detectから得られるタンパク質濃度を使用して計算される。
・1mg/mL=1g/L
・Da=g/mol
・1nM=1.0E-9M
・1L=1.0E6μL
・1μL=0.001L
Pr(M)=Pr(g/L)÷Pr MW(g/mol)
11=M22
(Pr(M))V1=(2.5E-8M)(V2L)
→V1=(2.5E-8M)(V2L)÷[Pr(M)]
→V1=PrのxL
→V1=(PrのxL)(1.0E6μL)
→V1=PrのxμL
xmLのPr溶液=(xμL)(0.001mL)
必要とされるxmLの溶液-xmLのPr=必要とされるxmLの1X PBS
25nMのPr溶液=xμLのPr+xmLの1X PBS
例)20mLの25nMのBSA溶液が必要とされ、BSAの濃度は5.165mg/mLである
5.165g/LのBSA÷66000g/molのBSA=7.826E-5 MのBSA
11=M22
(7.826E-5MのBSA)V1=(2.5E-8Mの標準溶液)(0.02L)
1=5.0E-10÷7.826E-5
1=6.389E-6L
1=(6.389E-6L)(1.0E6μL)
1=必要とされる6.389μLのBSA
(6.389μL)(0.001mL)=0.006389mLの25nM溶液
合計20mLの溶液-0.006389mLの25nMのBSA=19.994mLの1XのPBS
25nMのBSA溶液=6.389μLのBSA+19.994mLのPBS
【0572】
- 5つ全てのタンパク質についての計算を行った後、各タンパク質についての標準曲線を作成し、試験する。
○25、100mLのガラスビーカーを5列に並べる。
○各ビーカーをアルミニウム箔で包み、ビーカー内の溶液の対応する曲線のタンパク質の名称及び濃度でラベル付けする。
○列1はBSAについての標準曲線であり、列2はFBG、列3はTFN、列4はPrA、列5はPrGである。
○したがって、1番目の列は、以下の通りラベル付けされる:BSA 25nM、BSA 12.5nM、BSA 6.25nM、BSA 3.125nM、BSA 1.56nM。
○第1の曲線は、xmLの1XのPBSとxμLのタンパク質を、25nMとラベル付けされた第1のビーカーに添加することによって作成する。
○25nMの溶液の半分を12.5nMビーカー内にピペットで入れ、その後、1XのPBSを12.5mLのビーカー内にピペットで入れ、必要とされる最終溶液を調製する。
・例えば、20mLの25nM溶液を調製する場合、10mLの25nM溶液と、10mLの1XのPBSを12.5nMのビーカーに添加することで、20mLの12.5nM溶液を得る。
・その後、同じことを行って他の3つの濃度を調製する。
○標準曲線を作成した後、マイクロプレートリーダーを使用して試験し、その後、以下の標準曲線を作成して試験し、以降同様とする。
【0573】
- 分析のためにBio Tek Synergy H1マイクロプレートリーダー及びGen5ソフトウェアを使用する。
- ソフトウェアを含むコンピューターにsynergy H1を繋ぎ、ソフトウェアを開いてリーダーをオンにする。
○ソフトウェアにおいて、「Protocols→Create New」をクリックしてプロトコルを設定する。
○「Multi-plate Assay Protocol」を選択し、入力するプレートの数は5である。
○プロトコルを形成した後、「Procedure→Read」を選択する。
○「read window」において、「Fluorescence intensity」及び「Endpoint/Kinetic」を選択し、「OK」を押す。
・「Read Step」ウインドウで「Excitation」波長を485に設定し、「Emission」波長を528に設定する。
・「Top read」を選択する。
・「Filter Set 1 Options」ウインドウ、「Read Step」ウインドウ、及び「Procedure」ウインドウで「Options→Automatic Gain Adjustment」を選択し、「OK」を押す。
○その後、「Plate Layout」リンクを選択する。
・「Plate Layout」ウインドウで「Blanks」、「Standard Curves」、及び「Samples」を選択し、次に「Next」ボタンを選択する。
・「Blank」タブで繰り返しの数を4に設定し、「Next」を押す。
・「Standard Curve」タブで繰り返しの数を4に設定し、nMを「Unit」ボックスに入れ、0.5を「Factor」ボックスに入れる。「STD1」ボックスに25を入力し、「STD2,STD3,STD4 AND STD5」についてのボックスをクリックして残りの標準曲線の値を入れる。その後、「next」ボタンをクリックする。
・「Sample」タブで繰り返し数を4に設定して「Finish」ボタンをクリックする。
・「Plate Layout」ウインドウを表し、「Plate1」タブ上で「BLK」をクリックしてスポットA1~A4に入れ、25nMをB1~B4に入れ、12.5nMをC1~C4に入れ、6.25nMをD1~D4に入れ、3.125nMをE1~E4に入れ、1.5625をF1~F4に入れ、SPL1をG1~G4に入れる。
・「Plate2」、「Plate3」、「Plate4」、及び「Plate5」のタブについて、SPL2をA1、B1、C1、及びD1のスポットに入れる。
・2つ以上のマイクロプレートを試験する場合にはSPL3をA2、B2、C2、及びD2のスポットに入れ、試験するマイクロプレートの数に応じて以下同様とする。
・その後、「OK」ボタンを選択する。
○その後、「Data Reduction」リンクを選択し、「Data Reduction」ウインドウで「Standard Curve」リンクを選択し、「Y Axis Data」についてのドロップダウンメニューで「485,528」を選択する。その後、「Standard Curve」と「Data Reduction」ウインドウとの両方で「OK」を選択する。
○その後、「Report/Export Builders」リンクを選択し、「New Export to Excel」を選択する。
・「Content」リンクを選択し、「General Format」ドロップダウンボックスを「Matrix」から「Row-wise Table」へと変更する。
・「New Export to Excel」及び「Report/Export Builders」の両方のウインドウで「OK」選択する。
○その後、プロトコルを「File→Save As Protocol1」をクリックしてセーブする。
【0574】
- 1つ目の標準曲線を形成した後、SynergyH1上での試験の準備が整う。
○50~300μLのマルチチャンネルピペットを使用して、200μLの1XのPBSを黒色オプティカルボトムマイクロプレートのウェルA1~A4にピペットで入れる。
・その後、200μLの25nM溶液をウェルB1~B4にピペットで入れる。
・200μLの12.5nM溶液をウェルC1~C4にピペットで入れる。
・200μLの6.25nM溶液をウェルD1~D4にピペットで入れる。
・200μLの3.125nM溶液をウェルE1~E4にピペットで入れる。
・200μLの1.5625nM溶液をウェルF1~F4にピペットで入れる。
・200μLの12.5nM溶液をウェルG1~G4にピペットで入れる。
- Gen5ソフトウェアを開き、「Experiments→Create Using an Existing Protocol→Protocol1」を選択する。
○プレート1~5は、プレート名(例えば、Plate1)をクリックし、「Information」を右クリックし、テキストボックスにプレートの名前を入力し、「OK」をクリックすることによってラベル付けすることができる。
・Plate1:標準
・Plate2:1.5時間
・Plate3:2.5時間
・Plate4:4.5時間
・Plate5:24時間
○その後、標準曲線を含む黒色のオプティカルボトムマイクロプレートを、Synergy H1のトレーの上に置く。
○その後、「Plate1(Standards)」を右クリックし、オプション「Read Plate1」を選択する。
○その後、実験は「File→Save As」をクリックすることによって保存することができる。
○各タンパク質は独自の実験を必要とするため、第1の実験をBSAとして保存し、第2の実験をFBGとして保存し、以下同様とする。
○各標準曲線を作成した後、上の工程を繰り返す。
【0575】
- 標準曲線を作成して試験をした後、12.5nMの溶液以外の全てを廃棄してもよい。
- 試験するマイクロプレートを6つの区分に区切る。
○Shaprieを使用して、行D&E、列4&5、及び8&9間に線を引く。
○左上隅の1つ目の区分をBSAとラベル付けし、上中央区分はFBG、右上区分はTFN、左下区分はPrA、右下区分はPrG、下中央区分はなしのままにする。
・BSAの区分について、1列目に1.5時間の印を付け、2列目が2.5時間、3列目が4.5時間、及び4列目が24時間である。
・FBGについて、5列目が1.5時間、6列目が2.5時間、7列目が4.5時間、及び8列目が24時間である。
・TFN:9列目が1.5時間、10列目が2.5時間、11列目が4.5時間、及び12列目が24時間である。
・PrA:1列目が1.5時間、2列目が2.5時間、3列目が4.5時間、及び4列目が24時間である。
・PrG:9列目が1.5時間、10列目が2.5時間、11列目が4.5時間、及び12列目が24時間である。
- マイクロプレートをラベル付けした後、充填の準備が整う。
○50~300μLのマルチチャンネルピペットを使用して、250μLの12.5nMのBSAをBSA区分のウェルにピペットで入れる。
○これを各タンパク質について行う。
- マイクロプレートを溶液で満たした後、これをアルミニウム箔で包み、区分と時点をラベル付けする。
【0576】
- 1.5時間後、50~300μLのマルチチャンネルピペットを使用し、アルミニウム箔を突き破り、1.5時間の列(列1)の4つのウェルから200μLのBSAをピペットで出して黒色オプティカルボトムマイクロプレートに入れる。
○Gen5ソフトウェアを開き、「Experiments→BSA」を選択する。
○黒色マイクロプレートをマイクロプレートトレー内に置く。
○その後、「Plate2(1.5hr)」を右クリックし、「Read Plate2」オプションを選択する。
○その後、「File→Save」を選択する。
- 次いで、対応する実験を開けることによって他の4つのタンパク質を同じ方法で読み込む。
- 同じことを2.5時間、4.5時間、及び24時間後に行う。
- 24時間後、その後にメニューバーから「Plate→Export」を選択する。
- エクセル表計算が現れ、その後、所望の名前で所望の位置にこれを保存することができる。
【0577】
データ:
- Gen5ソフトウェアによって生成したデータを使用して、標準曲線とSPL1の両方からの12.5nM溶液濃度を平均化する。
○1.5時間時点の4つのウェルの濃度を平均化する。
○その後、これを2.5時間、4.5時間及び24時間についても行う。
○その後、各時点の平均濃度を最初の12.5nMの平均濃度で割って100を乗じることで、各時点のパーセント回収率を得る。
・%回収率@1.5時間=[平均BSA 1.5時間]/[平均12.5nM溶液]*100
その後、エクセルでグラフを作成し、経時での各タンパク質のパーセント回収率をグラフ化する。
【0578】
本技術を具体的な実施例及びその実施形態を参照しつつ詳細に説明してきたが、その趣旨及び範囲から逸脱することなく、それらに対する様々な変更形態及び修正形態がなされ得ることは当業者に明白であろう。追加的な開示は請求項中に示されており、これらは本明細書の一部と見なされ、各請求項は任意選択的且つ任意選択的な実施形態を規定する。
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