(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】同軸ケーブルを備えた伝達装置、該装置を備えた機器及び方法
(51)【国際特許分類】
A61F 7/00 20060101AFI20220722BHJP
【FI】
A61F7/00 310Z
(21)【出願番号】P 2018546506
(86)(22)【出願日】2017-03-02
(86)【国際出願番号】 IB2017051215
(87)【国際公開番号】W WO2017149486
(87)【国際公開日】2017-09-08
【審査請求日】2020-02-28
(31)【優先権主張番号】UA2016A001370
(32)【優先日】2016-03-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】503366690
【氏名又は名称】エル.エン ソチエタ ペル アチオーニ
(74)【代理人】
【識別番号】100194113
【氏名又は名称】八木田 智
(72)【発明者】
【氏名】マゾッティ,レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】ガッリ,マウロ
(72)【発明者】
【氏名】ストッキ,リカルド
(72)【発明者】
【氏名】コルシーニ,パオロ
(72)【発明者】
【氏名】ビニ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】イネスティ,アムレット
(72)【発明者】
【氏名】リミネシ,クリスティアーノ
(72)【発明者】
【氏名】ベニ,サミュエル
【審査官】小野田 達志
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-524589(JP,A)
【文献】特表平11-511043(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 7/00
A61N 1/06
A61B 18/14
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪組織を除去するために高周波エネルギーを伝達する
伝達装置であって、
該装置が、相互に同軸に配置された外側導体(7)及び内側導体(9)を備え、前記外側導体(7)が前記内側導体(9)を囲み、外側導体(7)及び内側導体(9)が、
それらの開放端が同軸となる構造を有し、
外側導体(7)及び内側導体(9)が、内側導体(9)の前面(9A)から外側導体(7)の
環状前面(7C)にのび、表皮、真皮及び真皮の下にある脂肪細胞を連続的に横切り、表皮に対して直交する力線を有する電場を生成するように配置及び構成され、
該装置が、外側導体(7)及び内側導体(9)の前方に配置されたエネルギー伝達窓(13)を有し
、該エネルギー伝達窓が、伝達装置によって伝達されるエネルギーの周波数に対して本質的に透過性を有する材料で形成されたプレートによって閉鎖され、
該装置が、処置中に表皮及び真皮から熱を除去するための冷却システムを備
え、該冷却システムが、伝達装置の内部空間に流体結合される冷媒流通ダクトを備え、前記伝達窓を閉鎖するプレートを冷却するように構成され、
内側導体の前面及び外側導体の環状前面が、内側導体の直径より小さい軸線方向の相互距離で配置されている
ことを特徴とする高周波エネルギー伝達装置。
【請求項2】
外側導体(7)がカップ形状であり、内側導体(9)を収容する内部空間(8)を備え、該内部空間(8)が前方で前記伝達窓(13)によって閉鎖されている
ことを特徴とする請求項1に記載の伝達装置。
【請求項3】
内部空間が、内側導体(9)の前面(9A)と伝達窓(13)を閉鎖するプレートとの間に間隙(21)を備えている
ことを特徴とする請求項
1又は2に記載の伝達装置。
【請求項4】
内側導体(9)が直径(D9)を有し、外側導体(7)が内側導体(9)を収容する内径(D7)を有する空間(8)を画定し、
空間(8)の内径(D7)と内側導体(9)の直径(D9)との間の比率が、1~2の間である
ことを特徴とする請求項
1~3の何れか一項に記載の伝達装置。
【請求項5】
内側導体(9)が直径(D9)を有し、外側導体(7)が内側導体(9)を収容する内径(D7)を有する空間(8)を画定し、
空間(8)の内径(D7)と内側導体(9)の直径(D9)との間の比率が、1.2~1.5の間である
ことを特徴とする
請求項4に記載の伝達装置。
【請求項6】
内側導体(9)の前面(9A)が環状であり、かつ、外側導体(7)の環状前面(7C)が内側導体(9)の前面(9A)と同軸であり、
内側導体(9)の前面(9A)が平坦であり、かつ、
外側導体(7)の前面(7C)が平坦である
ことを特徴とする
請求項1~5の何れか一項に記載の伝達装置。
【請求項7】
内側導体(9)の前面(9A)及び外側導体(7)の前面(7C)が、内側導体(9)の直径(D9)の半分より小さい
軸線方向相互距離(d)で配置されている
ことを特徴とする
請求項1~6の何れか一項に記載の伝達装置。
【請求項8】
内側導体(9)の前面(9A)及び外側導体(7)の前面(7C)が、内側導体(9)の直径(D9)の1/8より小さい
軸線方向相互距離(d)で配置されている
ことを特徴とする
請求項1~7の何れか一項に記載の伝達装置。
【請求項9】
高周波発生装置(5)、コネクタ(3)及び請求項
1~8の何れか一項に記載の伝達装置を備えている
ことを特徴とする脂肪組織を除去するための高周波エネルギー伝達機器。
【請求項10】
前記伝達装置内に冷媒を循環させるように構成された冷却回路を備えている
ことを特徴とする請求項
9に記載の機器。
【請求項11】
前記高周波発生装置が電流を発生し、その電流の周波数が、2GHz~6GHzの間である
ことを特徴とする請求項
9又は10に記載の機器。
【請求項12】
コネクタ(3)が同軸ケーブルである
ことを特徴とする請求項
9、10又は11に記載の機器。
【請求項13】
同軸ケーブルが、伝達装置(1)の内側導体(9)に電気的に接続される内側導体と、伝達装置(1)の外側導体(7)と電気的に接続される編組外側導体とを備えている
ことを特徴とする請求項
12に記載の機器。
【請求項14】
高周波発生装置の放射を制御するように構成及び配置された制御ユニットを備えている
ことを特徴とする請求項
9~13の何れか一項に記載の機器。
【請求項15】
前記制御ユニットが、冷却回路と接続され、伝達装置(1)の少なくとも一部分での温度を制御するように構成及び配置されている
ことを特徴とする請求項
10に記載の機器。
【請求項16】
伝達装置(1)の一部分の温度、冷媒の温度、伝達装置(1)が適用される組織表面の温度の少なくとも一つを検出する温度検出システムを備えている
ことを特徴とする請求項
15に記載の機器。
【請求項17】
前記高周波発生装置が電流を発生し、その電流の周波数が、2.4GHz~2.5GHzの間である
ことを特徴とする請求項
11に記載の機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は医療用装置及び機器に関する。より詳細には、本発明は脂肪層を除去するための装置及び機器の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、審美的治療分野において、脂肪組織を選択的に除去する技術は非常に重要である。この目的のために、様々な方法が長年にわたって開発されており、そのうちの幾つかは、侵襲的手術に基づくものである。最近では、吸引によって脂肪部分を除去することが可能である脂肪吸引と呼ばれる治療法が広く使用されており、この治療法では、皮膚の小さな切れ目(数mm幅)を通して小さなカニューレを挿入して、除去すべき又は減少させるべき脂肪に到達させて、脂肪を吸い込む。吸引は、シリンジを用いて手動で、又は適切な吸引装置を用いて行われ得る。場合によっては、吸引は、脂肪を液化するために、超音波、振動、又はウォータージェットの局所適用と組み合わせることができる。
【0003】
侵襲的手術であるため、除去すべき脂肪組織の量および分布に基づいて、局所麻酔又は全身麻酔が用いられる。
【0004】
場合によっては、脂肪組織を液化するために、脂肪細胞の溶解、即ち、細胞の破壊を引き起こして脂肪細胞の液化を引き起こすのに適した液体(例えば大豆レシチン)を脂肪細胞に注入する脂肪分解処置が行われる。脂肪分解によって生じる生物学的物質は、有機体によって徐々に吸収される。
【0005】
より最近では、カニューレを介して導入された光ファイバーを用いて組織内に伝達されるレーザーエネルギーによって脂肪を液化した後、吸引カニューレを用いて脂肪細胞を吸引するレーザー補助脂肪吸引技術が開発されている。幾つかの場合、レーザー補助により脂肪細胞を細胞分解した後、その結果得られる生物学的物質が、吸引によって除去されるのではなく、有機体によって代謝される。レーザー補助脂肪分解のための方法及び装置は、米国特許US-B-6206873号に開示されている。
【0006】
別の方法では、真皮及び皮下脂肪によって構成される腹部組織の皺襞を囲むプレートを用いた冷却が行われる。一定時間冷却すると、脂肪細胞が損傷し、皮下脂肪組織の細胞死を引き起こす。脂肪はその後、有機体によって徐々に除去される。
【0007】
既に、ごく最近では、経皮的エネルギー伝達を用いた脂肪細胞の脂肪分解方法が提案されている。米国特許第5,143,063号には、例えば、皮膚に適用されるエネルギー伝達装置が開示されている。エネルギーは、真皮を通過し、下にある脂肪層に到達し、脂肪細胞の破壊を引き起こす。この先行技術文献には、例えば、超音波又はマイクロ波電磁エネルギーのような、様々なエネルギー形態の使用が開示されている。
【0008】
国際特許公開WO-A-96/40369は、マイクロ波による脂肪除去のための装置及びハンドピースを開示している。このハンドピースは、皮下脂肪層を所望の温度にするために収束マイクロ波ビームを発生するアンテナのマトリックスを有する。
【0009】
欧州特許公開EP-A-2767308(米国特許公開に対応)は、皮下脂肪層を除去するためのマイクロ波エネルギー送達のための装置およびシステムを開示している。欧州特許公開EP-A-2767308号に記載された実施形態では、ホーンアンテナに、小径の内側導体と、拡径するホーン形状の外側導体とが設けられており、前記外側導体は、その直径が内側導体の10倍以上大きい端部で終端している。ホーン形状の外側導体は、内側導体に対して、内側導体の直径の倍数だけ突出する。
【0010】
放射エネルギーの経皮的伝達のためのこれらの公知の装置は、実質的に非侵襲的な処置を可能にするという利点を有するが、それらは特別に効果的ではない。
【0011】
従って、非侵襲的であるが効果的な脂肪分解処理を可能にする装置及び機器を提供する必要がある。
【発明の開示】
【0012】
第1の態様によれば、互いにほぼ同軸に配置された外側導体と内側導体とを備え、外側導体が内側導体を囲み、開放端同軸線を形成する高周波エネルギー伝達用装置が提供される。開放端同軸線は、同軸ケーブルを介して、例えば、高周波発生装置、典型的には、高周波電磁場発生装置に接続される。高周波発生装置に接続されると、開放端同軸線を形成するように配置されて構成された外側導体及び内側導体は、内側導体の前面から外側導体の前面までのびる力線を有する電磁場を発生する。開放端同軸線が治療される患者の皮膚表面と接触すると、そこから電磁場が広がる。伝達装置を、(アポトーシスメカニズムの誘発によって脂肪細胞を溶解及び/又は破壊するメカニズムを介して)脂肪層が除去されるべき皮膚領域に接触させることにより、皮膚に伝達装置が適用された領域の下の組織に、その組織層に対してほぼ直角に、即ち、表皮と脂肪層との間の界面及び脂肪層と筋肉組織との間の界面に対してほぼ直角にのびる力線に従って、電場が伝搬する。
【0013】
その結果、電流が順次、即ち、連続して様々な層を横切り、より大きな熱放散を引き起こし、従って、より高い抵抗率を有する組織の加熱がより大きくなる。これらの組織は、実際には脂肪組織であり、従って、電気エネルギーの熱エネルギーへの変換が集中し、その結果、局所的な温度上昇が生じる。
【0014】
実際には、伝達装置は、外側導体及び内側導体の前に配置されたエネルギー伝達窓を有することができる。この伝達窓は、これらの用途に使用される電磁放射周波数に対して透過性のある誘電材料のプレートによって実施され得る。有利には、使用される材料はまた、好ましくは、良好な熱伝導体である。
【0015】
この窓は、例えば、冷媒によって冷却され得る。冷媒は、低い電気損失、かつ、良好な熱導体のために誘電体であり、かつ、火傷及び局所的な過熱の危険を回避するために、閉鎖プレートの内面に沿って流される。実際に、表皮及び真皮の高周波エネルギーの通過は、電磁エネルギーの熱エネルギーへの変換及び結果として交差組織の加熱が原因となって、そこに熱を生じさせる。冷却された窓は表皮と接触して熱を除去し、組織温度を許容値内に保つ。
【0016】
別の特徴によれば、本発明は、また、高周波発生装置、コネクタ及び上述したような伝達装置を備えた高周波エネルギー伝達機器にも関する。
【0017】
さらに別の特徴によれば、以下のステップを有する脂肪層を除去する方法が提供される。
・上述したタイプの伝達装置を、その下に除去又は低減するべき脂肪層が位置している表皮部分に適用するステップであって、伝達装置を用いて、表皮部分の下にある組織容量内に、表皮に対してほぼ垂直にのび、かつ、表皮、真皮及び真皮の下にある脂肪細胞を連続的に横切る力線を有する高周波電磁場を生成するステップ
【0018】
この方法では、電流は、電磁場によって生成され、アポトーシスメカニズムを介して、脂肪組織を形成する脂肪細胞の少なくとも一部の脂肪細胞の即時溶解及び/又はそれに続く破壊を生じさせるのに十分な温度まで脂肪細胞を局所的に加熱する。本発明に係る伝達装置、伝達装置を使用する機器及び方法の有利な特徴及び実施例は、本発明の非限定的実施例を示す添付図面及び明細書の一部を形成する添付の特許請求の範囲を参照して、以下に説明される。
【0019】
本発明は、以下の本発明の非限定的実施例を示す添付図面及び説明により、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明に係る伝達装置の実施例の上方から見た等角投影図である。
【
図2】
図1の装置の下方から見た等角投影図である。
【
図6】
図1の伝達装置によって生成された電場の電界線のパターンを示す概略図である。
【
図7】処置中の組織内の温度分布のシミュレーションを示す図である。
【
図8】
図1の伝達装置を使用する機器のブロック図である。
【
図9】伝達装置の別の実施例の長手方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下の実施例の詳細な説明は、添付図面を参照する。異なる図面における同じ符号は、同一又は類似の構成要素を示す。加えて、図面は必ずしも縮尺通りに描かれていない。また、以下の詳細な説明は、本発明を限定するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によって画定される。
【0022】
明細書を通して参照する「一実施例」「ある実施例」又は「幾つかの実施例」は、ある実施例に関して説明した特定の特性、構造又は特徴が、開示された主題の少なくとも一つの実施例に含まれることを意味している。従って、明細書を通して、様々な場所で使う「一実施例において」「ある実施例において」又は「幾つかの実施例において」のフレーズは、必ずしも同じ実施利絵を参照しているとは限らない。さらに、特定の特性、構造又は特徴は、一つ又は複数の実施例に、任意に適切な方法で組み合わせられ得る。
【0023】
最初に
図1を参照すると、幾つかの実施例において、ハンドピースと呼ばれる全体が符号1で示された伝達装置が提供される。伝達装置1は、ケーブル、例えば、同軸ケーブル3を用いて、
図8に符号5で概略的に示される高周波発生装置に接続される。
【0024】
図1の実施例では、伝達装置1は、実質的に相互に同軸の外側導体7と内側導体9とを備えている。外側導体7は、その内部に内側導体9を収容するシート、即ち、キャビティを画定している。好ましくは、外側導体7は、通常、同軸ケーブル3の「シールド」と呼ばれる外側導体に結合され、内側導体9は、同軸ケーブル3の内側導体に結合される。この方法では、伝達装置1の外側導体7は接地され、感電の危険なしに作業者によって保持され得る。
【0025】
内側導体9は、外側に面する前面9Aを有する。
【0026】
導体7及び9は、高周波発生装置への接続のための同軸ケーブル3の出口に閉鎖端及び開放端を有する同軸線を形成する。
【0027】
外側導体7は、カップ型形状であり得、カバーによって形成された第一端部7Aを有し得、中心孔を除いて実質的に閉鎖されている。前記中心孔は、同軸ケーブル3の中心導体3C、特に、シールドと中心導体との間に介在する誘電体及び同中心導体の通過を可能にする。端部7Aは、カップの底部を形成する。符号7Bは、実質的に環状の前面7Cを有する対向する開放端を示している。外側導体7は、内側導体9を収容する内側空間8を画定する。内側導体9は、外側導体7とほぼ同軸の位置に保持され得る。例えば、外側導体7と内側導体9との間に挿入された、低損失誘電体材料11から成るインサートを設けることができる。
【0028】
内側導体9は、中実の円筒状部材で構成され得る。 外側導体7の開放端7Bは、前面7Cによって画定された窓を画定する。
【0029】
外側導体7の前面7Cと内側導体9の前面9Aとは、軸線方向に符号dで示す相互距離を有している。換言すれば、外側導体7の前面7Cは、内側部導体9の前面9Aに対して距離dだけ軸線方向に突出している。この距離は、実質的に、前面9A及び前面7Cをそれぞれ含む2つの平行な平面の間の距離である。
【0030】
前面9A及び7Cは、好ましくは、図に示すように、シーリングリングを受けるのに適した溝の存在を除いて平坦である。電界線のより良好な分布を得るために、表面9A及び7Cは、好ましくは、低粗面度を有する。 それらは、例えば、研磨された表面であってもよい。
【0031】
好ましくは、伝達装置によって生成される電場と、脂肪分解に供される患者の身体との間のより良好な結合を得るために、距離「d」は、有利には、内側導体9の外径D9(
図4及び
図5参照)より小さく、好ましくは、直径D9のほぼ半分と等しいか、又は、それより小さい。好ましくは、距離「d」は、内側導体9の外径D9の1/4と等しいか、又は、それより小さい。より好ましは、距離「d」は、外径D9のほぼ1/5より小さい。例えば、距離「d」は、外径D9のほぼ1/8と等しいか、又は、それより小さい。
図1~7の実施例では、距離「d」はゼロではないが、ゼロにもなり得る。即ち、表面9A及び7Cは実質的に同一平面であってもよい。従って、距離「d」が上述のようにゼロと最大値との間に含まれる伝達装置1を提供することが可能である。
【0032】
幾つかの実施例では、外側導体7は、内側導体9の前面9Aに対して後方に配置された前面7Cを有し得る。
【0033】
装置の効果的な動作を得るために、前面7Cと前面9Aとの間の軸線方向距離「d」は小さく保たれる。実際、この方法では、内側導体9の前面9Aと外側導体7の前面7Cとの間にのびる電界線は、ほとんど外側導体7によって画定された容積の外側に伝播し、 上述した前面に直交する。これは、以下でより詳細に説明するように、脂肪細胞を液化するために熱の増加が必要とされる脂肪層に到達する最適な電流の流れが処理組織で生成される点で有利である。
【0034】
また、
図4及び
図5において、D7は外側導体7の内径、即ち、導体9が収容される内部空間8の直径を示す。有利な実施例では、処置される組織に向けて伝達装置からのびる電界線の形状を最適化するために、かつ、組織との効果的な結合を得るために、D7とD9との間の比率は、あまり高くするべきではなく、即ち、前面9A及び7Cは、相互に径方向に、即ち、伝達装置1の軸線A-Aに直交する方向に距離を開けすぎるべきではない。有利な実施例では、R = D7 / D9として定義される比率R、即ち、外側導体7の内径D7と内側導体9の外径D9との比率は、約1~約2の間、好ましくは 約1.1≡約1.7の間、より好ましくは約1.2≡約1.5の間である。
【0035】
内部空間8は、使用される電磁放射に対して透過性である壁によって前面で閉鎖され得、電磁場が透過壁を通って伝播するようにすることができるようにしている。例えば、透過壁は、サファイア(アルミナAl 2 O 3及び低割合の他の原子)又は良好な熱伝導率を有する他の適切な誘電材料から成るプレート13を有し得る。プレート13は、フランジ15によって外側導体7に固定され得る。プレート13は、有利には、脂肪分解処置のために高周波エネルギーが伝達されるべき患者の表皮と接触するように構成されている。
【0036】
幾つかの実施例では、伝達装置1は、伝達装置1の使用中にプレート13から熱を除去し、そこを流れる電磁エネルギーのために加熱される表皮及び真皮の温度を制限して、患者の火傷又はトラブルを回避するように構成された冷却システムを備えている。
【0037】
図示の実施例では、冷却システムは、冷媒入口ダクト17及び冷媒出口ダクト19を備える。冷媒流通ダクト17及び19は、伝達装置1の軸線A-Aと平行に延び得る。有利な実施例では、冷媒流通ダクト17及び19は、
図5に示すように、外側導体7に設けられるか、又は外側導体7の厚さに設けられたシートに収容される。
【0038】
冷媒流通ダクトの数は、例えば、より効率的な冷媒循環を得るために、図示された数とは異なり得る。冷媒は気体であってもよく、好ましくは液体であってもよい。
【0039】
図示実施例では、二つの冷媒流通ダクト17及び19が、プレート13と、プレート13に面した内側導体9の前面9Aとの間に設けられた間隙21を介して流体結合されている。
【0040】
この構成により、冷媒が間隙21内を循環し、それにより、プレート13から熱を除去し、かつ、プレート13の外面を、患者の火傷又は過熱感を避けるのに十分に低い温度に保つようにしている。
【0041】
図6は、患者の表皮表面に適用された伝達装置1の動作を示す概略図である。符号Sは外表面を示し、符号Eは表皮層を示し、符号Aは、少なくとも部分的に除去しなければならない脂肪組織によって形成された脂肪層を示し、符号Mは下の筋層を示している。図面は概略図であり、縮尺通りに描かれているとは限らない。様々な層間の境界面は、図面を簡単化するために平坦な面として示されているが、実際には、それは異なり得、例えば、真皮及び脂肪層の厚さが可変であり得る。
【0042】
同軸ケーブル3を通して付与される高周波電流によって生成された電場の力線、即ち、電界線は、符号Fで示されている。これらの電界線は、内側導体9及び外側導体7の一方から他方にのびている。より詳細には、力線Fは、内側導体9の前面9Aからのび、外側導体7の前面7Aに接近する。よく知られているように、電界線は、それらが生成された導体の表面に対して直交する。従って、電界線Fは、内側導体9の前面9A及び外側導体7の前面7Cに対して直交している。電界線のこの直交性は、例えば、これら導体の表面をラップ加工又は研磨加工することによって、これら導体の表面を低粗面化することで最適化される。この方法においては、電界線は、粗面度に応じて変形されない。
【0043】
図6の概略図から容易に理解することができるように、伝達装置1を表皮Eに載せると、力線Fは表皮表面Sに対してほぼ直交することになり、従って、これら力線Fは、層E,A及びMを連続的に横切ることになる。電磁場によって誘導される電流は同じ方向に循環する。
【0044】
電気的な観点から見ると、層E、A及びMは、直列に配置された電気インピーダンスとみなされ得、従って、開放端同軸ケーブルによって生成される電磁場によって誘導される電流(誘導及び変位電流)と交差され得る。
【0045】
脂肪組織Aのインピーダンスの抵抗部分は、表皮及び真皮E並びに筋層Mのインピーダンスの抵抗部分より大きい。そのため、二つの同軸導体7及び9から出る電場によって伝達されるエネルギーは、脂肪組織において大きく消散され、隣接する層における消散の程度は低い。従って、脂肪組織では、より大きなエネルギー量が使われ、それにより、脂肪組織は、隣接組織(表皮、真皮及び筋肉)によって達成される温度よりも高い温度まで局所的に加熱されることになる。この方法では、電磁場が組織層に平行に生成される他の装置(例えば、放射型装置)に比べて、より高い効率の伝達装置1が提供される。これら他の伝達装置では、組織層は、平行な抵抗配置のように振る舞う。この他の方法では、電流が、低い抵抗を持つ組織(表皮及び筋肉)に流れ、従って、これらの組織がより加熱され、伝達装置の効率を下げ、患者に対してより多くのトラブルを生じさせる。
【0046】
図7は、熱シミュレーションによって得られた熱分布を示している。等温線は、伝達装置の下の組織層における温度場を示す。最も低い温度は皮膚の温度であり、その理由は、表皮の抵抗率が低いためにエネルギー消散が低いこと、かつ、主として、伝達装置に組み込まれた冷却システムによる冷却効果があることにある。脂肪層における温度が最も高く、その理由は、この脂肪組織の電気インピーダンスの抵抗部分が高く、従って、電力が夏に変換される量が多いことにある。
【0047】
伝達装置1の構成要素の寸法は、例えば治療される身体の部分に基づいて適切に選択され得る。狭い身体領域及び/又は到達するのが困難な身体領域、例えば内側大腿部を治療するために、より小さな伝達装置が提供され得る。腹部、背部及び臀部のように広い領域及び/又は簡単にアクセスできる領域を治療するためには、より大きな伝達装置が使用され得る。
【0048】
同軸ケーブルが、生物学的組織に適した特性インピーダンスを有するように設計され、従って、電磁場は不一致な負荷を構成する空気中を伝搬することができないので、導体7及び9の開放端同軸線は、伝達装置を身体の表面から離した時に、電力供給が停止するように構成される。これにより装置1は本質的に安全になる。
【0049】
図8は、上述した伝達装置1が使用され得る機器10の概略図を示している。この装置10は、高周波発生装置5に加えて、発生装置5及びブロック33によって概略的に示された一つ又は複数のユーザーインターフェースに接続される中央制御ユニット31を有する。さらに、中央制御ユニット31は、伝達装置1の間隙21に流れる冷媒用の冷却ユニット35にも接続され得る。符号37は、伝達装置1を冷却ユニット35に接続する入口パイプ及び出口パイプを示している。冷却ユニット35には、空気交換器を備えた冷却システム、ペルティエ冷却器、又は伝達装置1から出た冷媒の熱を放熱するのに十分な能力を持つ任意の他の冷却システムが設けられ得る。
【0050】
高周波発生装置は、約2GHz≡約6GHzの間、好ましくは約2.3GHz≡約5.2GHzの間、より好ましくは約2.3GHz≡約3GHzの間、さらにより好ましくは約2.4GHz~2.5GHzの間の周波数で電流を生成するように構成され得る。
【0051】
伝達装置1を備えた機器10は、以下のように脂肪組織の質量を減少させる方法を実施するために使用され得る。高周波発生装置5を作動して、伝達装置1を、除去又は減少させるべき脂肪組織がその下に位置する表皮部分上に置く。上述したように、高周波発生装置5は、それが表皮に結合されるまで、導体7及び9によって形成された開放端同軸線から放射線が実質的に放射されないので、伝達装置1を皮膚上に置く前であっても作動することができる。
【0052】
必要に応じて、結合を促進にするゲル又は生体適合性オイルから成る薄層を使用して、伝達装置1を表皮と接触させると、伝達装置1は、一定時間静置され得る。代わりに、伝達装置1を、手動で又は不図示の走査システムを用いて適切な速度で動かして、実質的にプレート13によって形成された窓によって画定されている伝達装置1の接触領域よりも広い表皮Eの表面Sの部分を処置するようにしてもよい。
【0053】
伝達装置1が所定の位置に固定されたままである場合、表皮に伝達される電力及び伝達装置が定位置に留まる時間は、アポトーシス及び/又は他の脂肪細胞崩壊メカニズムを誘発するのに適した脂肪組織内の温度を達成するようにされる。好ましくは、温度は、重大な組織変性現象を回避するのに十分な低さにされる。幾つかの実施例では、治療されるべき脂肪組織で達成される温度は、約40℃≡約50℃の間、好ましくは約42℃≡約47℃の間であり得る。電磁場によって供給される電力は、約10W~約150Wの間、好ましくは約20W~約130Wの間、より好ましくは約30W~約110Wの間であり得る。他の実施例では、供給電力は、約70W~約150Wの間、好ましくは約90W~約130Wの間、より好ましくは約95W~約110Wの間であり得る。
【0054】
血液システムの熱拡散及び体温調節による組織からの熱放散を考慮すると、このオーダーの大きさで、伝達装置1が所定の処置領域に留まることができる時間は、約5分≡約20分の間、好ましくは約7≡約15分の間、より好ましくは約8≡約12分の間である。
【0055】
処置中、伝達装置に一体的に設けられ、かつ、中央制御ユニット31と接続され得る温度センサ(図示せず)を介して表皮の表面温度を検出することが可能である。また、制御ユニットは、伝達された電力を変調することができ及び/又は表皮の表面温度を適切な所定の値に保つように冷却システムのパラメータに作用することができる。
【0056】
この値は、過度の温度に対して真皮全体を保護するために、体温よりも低い値であり得る。中央制御装置は、例えば、検出された温度及び、所定の温度と表皮で検出された温度との間の差異によって生じるエラー信号に基づいて、入口ダクト17に供給される冷媒の温度を上げたり、下げたりするようにプログラムされ得る。
【0057】
さらに、中央制御ユニット31は、例えば、故障のために、冷却システムが動作を停止するか、又は表皮温度を所定の値に保つのに十分でない場合に、伝達される電力を遮断するようにプログラムされ得る。冷媒流量を上げたり、及び/又は冷媒温度を下げたりしているにもかかわらず、表皮温度が要求された温度よりも高い場合、中央制御ユニット31は、二次的に動作して、オペレータによるエラー又は故障が原因で、その値が所定の値を超えた時に伝達される高周波電力を低減させるようにプログラムされ得る。これらの最後の2つのケース(冷却システム又は高周波エネルギー伝達システムの故障)は、作業者に対するアラームの作動とも同時に作動することができる。
【0058】
故障又はエラーが原因で、温度範囲に従って処置が実行されている時に生じる温度の正確な傾向を測定できない場合にも、作業者に警告を発することができる。
【0059】
検出されたパラメータ、治療期間、脂肪組織内の推定温度、全伝達エネルギー、瞬間電力、及び他のパラメータは、ユーザーインターフェース33に表示され得、この目的のために、ユーザーインターフェース33は、モニター、ディスプレイ又は他の表示装置を有し得る。また、中央制御ユニット31は、予め設定された伝達時間に達した時、又は、総伝達エネルギーが予め設定された閾値に達した時に、伝達を中断するようにプログラムされ得る。
【0060】
図7及び電界線Fの形状を参照して説明したように、処置中に、組織内の変位及び伝導電流は、各層E,A及びMを介して同じ量の電流が直列に流れるようにされている。従って、損失がより大きい脂肪層Aは、より多くの量のエネルギーが熱の形態で消散される層である。脂肪組織内が十分な温度に達し、かつ、適切な時間維持され、脂肪細胞の少なくとも一部を除去するために必要な効果が生じていると評価した時に、高周波エネルギー伝達は、発生装置5への電力供給を遮断することによって、又は、単に、伝達装置1を表皮から離すことによって停止される。
【0061】
電力は、伝達装置が形成された時に予め設定され得る深さで最大値を持つ熱分布を伴って、伝達装置1に直接隣接する領域の表皮の下で略円筒状の容積に従って同軸線7,9によって分配される。これは、開放端同軸ケーブルを備えた伝達装置の形態の本質的な特徴である。この方法では、伝達装置1の窓13の領域が、脂肪細胞の数を減少させるために温度上昇が必要とされる全容積を処置するのに必要な領域よりも小さい場合、プロセスは連続する領域で繰り返され得、必要に応じて、同じ量の高周波に繰り返し曝されることを避けるために、表皮上の既に処置が行われた領域にマーキングがされ得る。
【0062】
脂肪組織における局部的な温度上昇によって引き起こされる脂肪細胞の損傷により、実質的に脂肪細胞が、生体によって吸収され、代謝される化合物に変換される。
【0063】
しかしながら、現在使用されている幾つかの方法に従って、吸引カニューレを用いて脂肪分解から生じる液体を吸引する工程を介在させることも可能である。
【0064】
図4~
図7において詳細に示される伝達装置1の実施例では、内側導体9の前面9Aとプレート13の内面との間に間隙21が設けられている。この隙間により、治療中に患者の表皮を過熱するのを避けるために、冷媒を効率的に循環させることが可能になる。しかしながら、間隙21は、前面9A及び7Cの間に距離「d」を必要とし(
図4及び
図5参照)、このことが、送達装置1の電気効率に影響を及ぼす可能性がある。
【0065】
幾つかの実施例では、この距離を可能な限り小さくし、ゼロにまで減らすことが好ましい。 例えば、幾つかの実施形態では、冷却回路は、冷却用間隙21の存在を回避するように構成され得る。
【0066】
図9は、伝達装置1の一実施例の軸A-Aを含む平面に従った断面図であり、この実施例では、間隙21は排除されているか、又は実質的に排除されている。従って、この実施例では、前面9A及び7Cが存在する平面間の軸線方向の距離「d」は、
図4及び
図5の実施例よりも実質的に小さくされ得る。幾つかの実施例では、距離「d」はほぼゼロにされ得る。
【0067】
幾つかの実施例では、伝達装置1は冷却されていなくてもよく、また、冷却が外側導体7の外側に配置された冷却システム(図示せず)によって実行されてもよい。別の実施例では、
図9に概略的に示すように、冷却は、外側導体7及び内側導体9の内側に形成された冷媒流通ダクトによって実行され得る。例えば、
図4及び
図5を参照して既に説明した入口ダクト17及び出口ダクト19は、前面7Cに隣接する外側導体7の内部に画定された環状前側ダクト22に流体的に結合され得る。内側ダクト9の内部の前面9Aの近くに形成された環状ダクト20、間隙、又は冷却ダクトのネットワークに冷媒を流すために、二つ以上の入口ダクト16及び出口ダクト18が内側導体9に設けられ得る。
【0068】
前面7C及び9Aに隣接する冷却ダクトの製造を容易にするために、導体7及び9の前部は、各導体の主要部分を形成する円筒状本体に対して分離した機械部品によって形成され得る。
【0069】
(加圧され得る)流体が流れる間隙21がない場合、内側導体9が収容される内部空間8を閉鎖するプレート13は、より薄くされ得る。場合によっては、プレート13は省略され得る。幾つかの実施例では、プレート13の代わりに、薄い層状の交換可能な要素が設けられ得、該要素は、伝達装置1を保護するために、例えば、患者の身体に対するその結合を改善するために伝達装置1に塗布されたジェルや埃が伝達装置1の内部に入り込むことを防止するために、前面に設けられ得る。プレート13の厚さを薄くすることによって、又、プレートを除去することによって、電場と処置されるべき組織との間の結合をより良くすることが可能である。
【0070】
外側導体7と内側導体9との間の流体循環がないため、外側導体7の前面7Cに形成されたシールを排除することができ、従って、そのシールを収容するために設けられた環状溝も排除することができる。これにより、前面7Cを完全に平坦にして、電界線のパターンを最適化することが可能になる。