IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サーファクトグリーンの特許一覧

特許7109404グリシンベタインアミド塩をベースとする界面活性剤組成物、その製造方法及びその使用
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2022-07-21
(45)【発行日】2022-07-29
(54)【発明の名称】グリシンベタインアミド塩をベースとする界面活性剤組成物、その製造方法及びその使用
(51)【国際特許分類】
   C09K 23/00 20220101AFI20220722BHJP
   C11D 1/90 20060101ALI20220722BHJP
   C07C 237/06 20060101ALI20220722BHJP
   C07C 309/04 20060101ALI20220722BHJP
   C07C 211/63 20060101ALI20220722BHJP
   C07C 229/12 20060101ALI20220722BHJP
   A01N 25/00 20060101ALI20220722BHJP
   A01N 25/30 20060101ALI20220722BHJP
   A01N 53/10 20060101ALI20220722BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20220722BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20220722BHJP
   C09K 23/18 20220101ALI20220722BHJP
   C09K 23/34 20220101ALI20220722BHJP
【FI】
C09K23/00
C11D1/90
C07C237/06
C07C309/04
C07C211/63
C07C229/12
A01N25/00 101
A01N25/30
A01N53/10 210
A01P7/04
C09K3/00 Z
C09K23/18
C09K23/34
【請求項の数】 6
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019112829
(22)【出願日】2019-06-18
(65)【公開番号】P2019218544
(43)【公開日】2019-12-26
【審査請求日】2022-04-08
(31)【優先権主張番号】1855359
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519221268
【氏名又は名称】サーファクトグリーン
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】フレディー・ペスル
(72)【発明者】
【氏名】フランシス・ガレ
(72)【発明者】
【氏名】ピエール-イヴ・ディヴェ
(72)【発明者】
【氏名】グザヴィエ・ルーセル
【審査官】柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2013/0338227(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0275138(US,A1)
【文献】特表2007-536424(JP,A)
【文献】特開平10-231277(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00
B01F 17/00
C11D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)式(1): Xn-[(CH3)3N+-CH2-CONH-R]n(式中、Rは8~18個の炭素原子を含む飽和又は不飽和直鎖状アルキル基である)の1種又は複数種のグリシンベタインアミド塩であって、式(1)の塩の40質量%~100質量%がグリシンベタインラウリルアミド塩である、1種又は複数種のグリシンベタインアミド塩を70質量%~85質量%、
(b)式(2): Xn-[NH3 +R]n(式中、Rは8~18個の炭素原子を含む飽和又は不飽和直鎖状アルキル基である)のアルキルアンモニウム塩であって、式(2)のアルキルアンモニウム塩の少なくとも40質量%がラウリルアンモニウム塩である、アルキルアンモニウム塩を5質量%~20質量%、
(c)式(3): Xn-[(CH3)3N+-CH2-COOR']n(式中、R'は4~8個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝鎖状アルキル基である)のグリシンベタインエステル塩を5質量%~10質量%、及び
(d)式(4): (CH3)3N+-CH2-COO-のグリシンベタインを0質量%~5質量%
(式中、Xは有機又は無機アニオンであり、nは1又は2である)
含む、界面活性剤組成物。
【請求項2】
Xが、塩化物イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、アルキル硫酸イオン、デシル硫酸イオンラウリル硫酸イオン、アリールスルホン酸イオン、ベンゼンスルホン酸イオン、パラ-トルエンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、トリフラートイオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、デシルスルホン酸イオン、ラウリルスルホン酸イオン、スルホコハク酸イオン、及びこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
Xが、アルキルスルホン酸イオン、アリールスルホン酸イオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフラートイオン、パラ-トルエンスルホン酸イオン、又はカンファースルホン酸イオンである、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
式(1)、(2)、(3)及び(4)の化合物が、全体で組成物質量の90%~100%となることを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
式(1)、(2)、(3)及び(4)の化合物が、全体で組成物質量の100%となることを特徴とする、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
植物保護又は化粧用の活性剤、酵素、キレート剤、増粘剤、脂肪性物質、油、ワックス、ペースト状物質、充填剤、保存剤、顔料、染料、酸化防止剤、蛍光増白剤、及びこれらの混合物から選択される少なくとも1種の成分と、請求項1に記載の組成物とを組み合わせることを含む、組成物を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、グリシンベタインアミド塩をベースとする界面活性剤組成物、及び更にはその製造方法に関する。本発明はまた、湿潤剤、粒子分散剤、及び/又は腐食防止剤としての、並びに/或いは抗菌物質の殺菌力及び/若しくは殺虫物質の効果を向上させるための、並びに、身体、植物又は硬質表面を処理及び/又は浄化することを目的とする、水処理を目的とする、又は油の抽出を目的とする様々な製品の製造におけるその使用に関する。本発明の主題はまた、上記の組成物を含む製品である。
【背景技術】
【0002】
界面活性剤は、様々な製品の製造に不可欠な出発材料となる。これらの中でも、カチオン性界面活性剤の市場は実のところアニオン性又は非イオン性界面活性剤より広くはないが、それにも関わらず、それらは多数の用途、特に洗剤及び化粧料の製造、並びに水処理においても興味深いものである。
【0003】
布用柔軟剤の過半数に存在するジメチルジアルキルアンモニウム塩のようなある種の界面活性剤は、それらの毒性ゆえに、ドイツ及びオランダのようなある特定のヨーロッパの国々では使用が制限されるか、又は更には中止されつつある。環境に関する圧力の下では、界面活性剤の製造者は、汚染物質がより少ないだけではなく生分解性がより高く、かつ予想される生態毒性が最も小さい製品を提案しなければならない。環境的な制約に、できるだけ天然の製品をという消費者の要望が加わる。
【0004】
これに関連して、比較的安価な天然物質であるグリシンベタインが、界面活性剤の製造に選択される出発材料となる。グリシンベタインはスクロース抽出後に得られるてんさい糖蜜に由来するものであり、現在も依然として砂糖産業の副産物である。グリシンベタインに脂肪族アルコール及びアミンをグラフトすることにより、一般的に有毒なメチル化剤を使用して三級アミンを四級化する従来の工程なしに、カチオン性両親媒性分子を得ることができる。
【0005】
ゆえに、米国特許第7829521号は、グリシンベタインをメタンスルホン酸などのスルホン酸及びn-ブタノールなどのアルコールと反応させてグリシンベタインエステルを生成し、次にこれを少なくとも18個の炭素原子を含む植物由来の脂肪族アミンを使用するアミノリシス反応に供することにより得られるグリシンベタインアミドを提案している。こうして得られたカチオン性界面活性剤は、表面張力が少なくとも36mN/mであり、より詳細には化粧用途を目的としたものである。他の同様の短鎖界面活性剤は、F.Goursaudらによる出版物であるGreen Chem.、2008年、10、310~320頁に提示されており、具体的にはグリシンベタインラウリルアミドであり、その表面張力はまたしてもきわめて高い(50mN/m)。この界面活性剤は、特許出願WO2013/188508にも記載されている。前記文書では、粗反応混合物の表面張力(25mN/m)は純グリシンベタインアミド(38mN/m)よりも低く、家庭用洗剤におけるその使用を想定することが可能になると実証されている(Table 5)。この反応混合物は正確には、ラウリルアミドを68%、ラウリルアミンアンモニウム塩を29%、かつ残留グリシンベタインを3%含む。
【0006】
WO2013/188508に記載されている操作条件を変更することにより、本発明者らは、グリシンベタインアミドが豊富で、アルキルアンモニウム塩が非常に少ない界面活性剤組成物を得ることができ、この界面活性剤組成物は、前記文書に記載された界面活性剤組成物よりも低い表面張力を有することが見出され、したがって他の多くの用途に適している。
【0007】
グリシンベタインラウリルアミド及びラウリルベタインミリスチルアミドの混合物をベースとする同様の組成物が、WO2017/034793にて言及された。しかし、前記文書に提示されているきわめて一般的な方法では、使用する正確な操作パラメーターに関する指示が欠如しているため、この組成物を更に再現性よく得ることは可能にはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第7829521号
【文献】WO2013/188508
【文献】WO2017/034793
【非特許文献】
【0009】
【文献】F.Goursaudら、Green Chem.、2008年、10、310~320頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明に従って使用する合成方法は、簡単で、効率的で、環境にやさしく無溶媒であり、かつ汚染物質を排出せず、特に高性能な界面活性剤組成物を再現性よく得るために工業規模に容易に置き換えることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の主題は、界面活性剤組成物であって、
(a)式(1): Xn-[(CH3)3N+-CH2-CONH-R]n(式中、Rは8~18個の炭素原子を含む飽和又は不飽和直鎖状アルキル基である)の1種又は複数種のグリシンベタインアミド塩であって、式(1)の塩の40質量%~100質量%がグリシンベタインラウリルアミド塩からなることが理解される、1種又は複数種のグリシンベタインアミド塩を70質量%~85質量%、
(b)式(2): Xn-[NH3 +R]n(式中、Rは8~18個の炭素原子を含む飽和又は不飽和直鎖状アルキル基である)のアルキルアンモニウム塩であって、式(2)のアルキルアンモニウム塩の少なくとも40質量%がラウリルアンモニウム塩からなることが理解される、アルキルアンモニウム塩を5質量%~20質量%、
(c)式(3): Xn-[(CH3)3N+-CH2-COOR']n(式中、R'は4~8個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝鎖状アルキル基である)のグリシンベタインエステル塩を5質量%~10質量%、及び
(d)式(4): (CH3)3N+-CH2-COO-(式中、Xは有機又は無機アニオンであり、nは1又は2である)のグリシンベタインを0質量%~5質量%
含む、界面活性剤組成物である。
【0012】
本発明の主題はまた、
(1)有機酸又は無機酸の存在下、100~180℃の温度にて、減圧下、グリシンベタイン又はその塩を直鎖状又は分枝鎖状C4~C8アルコールと反応させる工程、
(2)反応混合物を20~80℃の温度まで冷却する工程、
(3)ラウリルアミンを少なくとも40質量%含有する、8~18個の炭素原子を含む1種又は複数種のアルキルアミンを加える工程、
(4)残留アルコールを除去する工程、及び
(5)こうして得られた界面活性剤組成物を回収する工程
からなる連続工程を含む、この界面活性剤組成物を製造する方法であって、
- 1H NMRにより測定され、以下の式:
【0013】
【数1】
【0014】
(式中、
・ηは転化率であり、
・Iiは化合物iの特性シグナルの積分値[X=メシラートの場合、XOGBOR'に関しては(4.35ppm、s、2H)、XOGBに関しては(4.28ppm、s、2H)]であり、
・XOGBOR'は、生成したグリシンベタインエステル塩を示し、
・XOGBは、生成したグリシンベタイン塩を示す)により定義される
グリシンベタインのグリシンベタインエステル塩への転化率が少なくとも95%となることを可能とする条件下で工程(1)を実施すること、
- 又は、工程(1)で生成したグリシンベタインエステル塩を工程(2)と(3)の間で反応混合物から分離し、工程(4)でアルキルアミンと反応させること
を特徴とする、方法である。
【0015】
本発明の主題はまた、湿潤剤、粒子分散剤、及び/若しくは腐食防止剤としての、並びに/或いは抗菌物質の殺菌力及び/若しくは殺菌効果の持続性を向上させるための、並びに/又は殺虫物質の効果及び/若しくは持続性を向上させるための、上記の界面活性剤組成物の使用である。
【0016】
本発明の主題はまた、プラスチック又は
- 身体、植物又は硬質表面を処理及び/又は浄化することを目的とする製品、特に化粧料、車両洗浄製品、家庭用製品、工業用クリーニング製品、繊維サイジング製品、及び植物保護製品、
- 水処理を目的とする製品、
- 油の抽出を目的とする製品
の製造のための、この組成物の使用である。
【0017】
本発明の主題はまた、上記組成物並びに
(a)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、及びこれらの混合物、並びに/又は
(b)抗菌剤及び/若しくは殺虫物質
から選択される少なくとも1つの成分を含む製品である。
【0018】
本発明による界面活性剤組成物には、表面張力が低い他、生分解性であり(OECD基準310による)、環境(OECD基準201及び202による)並びにヒトに対する毒性が低く、冷可溶性であり、pHに関係なく安定しており、かつ発泡力が良好であるという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0019】
界面活性剤組成物
本発明による界面活性剤組成物は、
(a)式(1)Xn-[(CH3)3N+-CH2-CONH-R]n(式中、Rは8~18個の炭素原子を含む飽和又は不飽和直鎖状アルキル基である)の1種又は複数種のグリシンベタインアミド塩であって、式(1)の塩の40質量%~100質量%がグリシンベタインラウリルアミド塩からなることが理解される、1種又は複数種のグリシンベタインアミド塩を70質量%~85質量%、
(b)式(2)Xn-[NH3 +R]n(式中、Rは8~18個の炭素原子を含む飽和又は不飽和直鎖状アルキル基である)のアルキルアンモニウム塩であって、式(2)のアルキルアンモニウム塩の少なくとも40質量%がラウリルアンモニウム塩からなることが理解される、アルキルアンモニウム塩を5質量%~20質量%、
(c)式(3)Xn-[(CH3)3N+-CH2-COOR']n(式中、R'は4~8個の炭素原子を含む直鎖状又は分枝鎖状アルキル基である)のグリシンベタインエステル塩を5質量%~10質量%、及び
(d)式(4)(CH3)3N+-CH2-COO-(式中、Xは有機又は無機アニオンであり、nは1又は2である)のグリシンベタインを0質量%~5質量%
を含む。
【0020】
X基は、特に有機又は無機酸由来のアニオンから選択してよい。それは特に、塩化物イオン、硫酸イオン、過塩素酸イオン、アルキル硫酸イオン、特にデシル硫酸イオン又はラウリル硫酸イオン、アリールスルホン酸イオン、特にベンゼンスルホン酸イオン、パラ-トルエンスルホン酸イオン、カンファースルホン酸イオン、アルキルスルホン酸イオン、特にトリフラートイオン、メタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、デシルスルホン酸イオン、ラウリルスルホン酸イオン、スルホコハク酸イオン、及びこれらの混合物であってよい。本発明によれば、Xがアルキルスルホン酸イオン及びアリールスルホン酸イオンから、特にメタンスルホン酸イオン、エタンスルホン酸イオン、トリフラートイオン、パラ-トルエンスルホン酸イオン及びカンファースルホン酸イオンから選択されることが好ましい。有利には、それはメタンスルホン酸イオンである。
【0021】
R'がブチル基、特にn-ブチルを表すのが更に好ましい。
【0022】
有利には、式(1)、(2)、(3)及び(4)の化合物は、全体で組成物質量の90%~100%、好ましくは95%~100%となる。好適には、本発明による組成物は式(1)、(2)、(3)及び(4)の化合物のみを含む。
【0023】
方法
本発明による界面活性剤組成物は、前述したような方法に従って製造してよい。
【0024】
この方法の第1の工程は、グリシンベタイン、すなわちトリメチルグリシンのエステル化反応からなる。グリシンベタインは、植物由来又は合成由来のものであってよい。グリシンベタインは任意選択で、塩の形態、例えば無機塩の形態であってよい。グリシンベタイン塩を使用する場合を除いて、双性イオンの形態(カルボキシラート官能基が存在する)である限り、一般に有機又は無機酸を使用して事前にプロトン化することが必要である。酸は特に、無機酸、例えば塩酸、硫酸、過塩素酸などの過ハロゲン酸、及びこれらの混合物から選択することができる。変形形態としては、例えばデシル硫酸又はラウリル硫酸といったアルキル硫酸、ベンゼンスルホン酸、パラ-トルエンスルホン酸、カンファースルホン酸のようなアリールスルホン酸、トリフル酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、デシルスルホン酸、ラウリルスルホン酸などのアルキルスルホン酸、スルホコハク酸及びこれらの混合物等の有機酸から選択することができる。ルイス酸を使用してもよい。好ましくは、それはアルキルスルホン酸、特にメタンスルホン酸である。
【0025】
実際のエステル化の間に、ベタイン酸は、酸の存在下で、直鎖状又は分枝鎖状のC4~C8アルコールと反応し、塩の形態のグリシンベタインエステルとなる。アルコールの例には、ブタノール、ペンタノール、3-メチルブタン-1-オール(又はイソアミルアルコール)、フーゼルアルコール(ペンタノール、2-メチルブタン-1-オール及び3-メチルブタン-1-オールの混合物)、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール並びにこれらの混合物を含む。本明細書において、用語「ブタノール」はn-ブタノール、イソブタノール及びsec-ブタノールを等しく表す。ブタノール、及びより詳細にはn-ブタノールが、本発明での使用に好ましい。この反応は一般に溶媒の不在下で実施し、使用するアルコールが反応物及び媒体の両方ということになる。反応中に生成する水もまた、グリシンベタインを反応混合物中に溶解させることに寄与する。
【0026】
この工程を実施するため、グリシンベタイン1当量当たり、1.1~20当量、例えば2~4当量の直鎖状又は分枝鎖状のC4~C8アルコール、並びに1.0~1.5当量のスルホン酸、例えば1.0~1.2当量及び優先的には1.1当量のスルホン酸を使用することができる。エステル化は、大気圧又は減圧下にて、100~180℃、優先的には100~160℃、より優先的には120~150℃又は130~160℃の温度で実施してよい。この反応中、通常はディーンスターク装置を使用する水-アルコール混合物の蒸留により、平衡は反応生成物の生成方向に移動する。
【0027】
本発明の第1の変形形態では、少なくとも95%の転化率を達成するようにエステル化条件を調整する。これを行うため、反応媒体をまだ減圧していない場合は減圧下に置く。圧力は一般に、関与する脂肪族アルコールの鎖が長いほど、比例して低くするであろう。当業者はいずれの場合でも、反応中に生成した水が除去されるように、かつエステル生成方向に平衡が移動するように、選択した圧力を調整することができるであろう。同様に、使用するアルコールに応じて反応時間を調整するであろう。ブタノールの場合、蒸留は、例えば2~4時間の反応時間の後に開始し、例えば500~900mbar、特に600~800mbarの値にまで減圧する前に2~4時間継続してよい。
【0028】
グリシンベタインアミドを合成するための既知の方法とは対照的に、グリシンベタインのグリシンベタインエステルスルホン酸塩への転化率を1H NMRによりモニタリングし、その値が少なくとも95%に達するまで、すなわち、例えば5~48時間の範囲の時間にわたり反応を継続する。
【0029】
先行技術の方法とは対照的に、この工程が完了したとき、ジブチルアミンのような強力なヒンダード有機塩基(hindered organic base)を反応媒体に加えることは有用ではない。
【0030】
上記の第1の変形形態では、次に反応媒体を20~80℃、好ましくは40~80℃の温度まで冷却する。
【0031】
本発明による方法の第2の変形形態では、この場合好ましくは20~40℃の値にまで低くして実施する上記の冷却工程の前にグリシンベタインの転化率が少なくとも95%である必要はなく、わずか75%~90%、例えば約80%であってよい。しかし、この第2の変形形態では、エステル化反応の生成物を処理して、生成したグリシンベタインエステル塩を反応媒体から分離する。これを行うために、例えば反応媒体の濾過を実施してよく、これによりアルコールに可溶な上記の塩化エステルを可溶ではない他の成分から分離することが可能となる。
【0032】
次に、ラウリルアミンを少なくとも40質量%含む1種又は複数種のC8~C16アルキルアミンを反応媒体(第1の変形形態)又は単離したエステル(第2の変形形態)のいずれかに加える。これを行うために、ラウリルアミンを単独で、又はラウリルアミンと例えばココナッツ油から得られる他のアルキルアミンとの混合物を使用してよい。このような混合物は通常、ラウリルアミンを40質量%~60質量%、ミリスチルアミンを15質量%~22質量%、パルミチルアミンを5質量%~12質量%、ステアリルアミンを2質量%~12質量%、カプリルアミンを4質量%~7質量%、カプリリルアミンを3質量%~7質量%含む。アルキルアミンの添加は、好ましくは、減圧下での蒸留により残留アルコールの一部及び微量の残留水を除去した後に実施する。この工程では、アルキルアミンを有利には溶融形態にて使用する。添加するアルキルラウリルアミンの量は、例えば、最初に使用するグリシンベタイン1当量当たり0.9~1.5当量及び好ましくは1.0~1.2当量としてよい。このアミノリシス反応は通常、減圧下、例えば、1~30mbarの圧力にて、50~180℃、好ましくは120~140℃の温度で実施する。
【0033】
アミノリシス反応と並行して、アルコールを減圧下での蒸留により除去する。アミノリシス反応及び蒸留は、1~7時間、特に3~5時間の時間にわたり実施する。
【0034】
次に、こうして得られた界面活性剤組成物を回収する。
【0035】
使用
本発明による界面活性剤組成物の表面張力値は、NF EN規格14370に従って測定して、24mN/m未満、又は更に22mN/m未満、かつ一般に20mN/m以上である。
【0036】
ゆえに、湿潤剤、粒子分散剤、及び/又は腐食防止剤としての、並びに/又は抗菌物質の殺菌力及び/若しくは殺虫物質の効果を向上させるための様々な用途におけるその使用を想定することが可能である。特に、プラスチック、又は特に、
- 身体、植物、布若しくは硬質表面を処理及び/若しくは浄化することを目的とする製品、特にシャンプー、液状石けん、バブルバス及びシャワージェルなどの化粧料、自動車、トラック、列車、バス若しくは飛行機などの車両洗浄用製品、窓ガラス、壁面、床若しくは台所用品用洗剤などの家庭用製品、洗濯洗浄製品若しくは柔軟剤、工業用クリーニング製品、繊維サイジング製品、植物保護製品、塗料若しくはワニスのような顔料製品、
- 水処理を目的とする製品、
- 油の抽出を目的とする製品
などの様々な製品の製造に使用してよい。
【0037】
本発明による組成物を窓ガラス若しくは車両の車体表面、又は布のような硬質表面のクリーニングに使用する場合、乾燥時にわずかな水垢も残すことなく、表面のその後の乾燥を促進することが特に観察されている。加えて、表面が車両である場合、ホイール上の微細な制動粒子(braking particle)のクリーニングが、従来のカチオン性界面活性剤と比較して改善されることが観察された。最後に、本発明による組成物のアルカリ性媒体中での効力により、酸性組成物の使用に関連する欠点、特にそれらの腐食作用を回避することが可能となる。
【0038】
水処理の場合、本発明による組成物を用いると、生分解性がないこと又は生分解性がより遅いことを考慮すると更にかなりの環境影響がある従来のカチオン性界面活性剤とは対照的に、イオン交換樹脂の有効性を損なうことなくバイオフィルムを剥離させることが可能となる。バイオフィルムを剥離させるこの能力は、油の抽出プロセスにおいても活用することができる。
【0039】
化粧用途では、本発明による組成物は従来のアニオン性界面活性剤と相溶性であり、それらが生成する泡の柔らかく滑らかな性質を向上させることができる。それは更に、鉄を含有するエアロゾルデバイスを腐食から保護する。
【0040】
本発明による組成物は、そのバイオベースという性質を考慮すると、プラスチックの製造において、プラスチックのリサイクル能力に影響を及ぼすことなくその表面に静電的性質を付与することを可能とする。
【0041】
植物保護製品の製造において使用する場合、本発明による組成物は活性材料の持続性及び除草剤、農薬又は植物成長調整剤のような製品の耐水性を向上させることが可能となるため、より少量で使用することが可能である。したがって、この組成物は、例えば中性又はアルカリ性媒体を含む製品中に、水中で25%にまで希釈した形態で、0.4質量%の割合で加えることができる。
【0042】
本発明による組成物は更に、装置の腐食を制限するために油を抽出、備蓄、保管又は精製する方法においても使用してよい。この用途では、それを例えば500~1000ppmの割合で油に加えてよい。
【0043】
本発明の主題はまた、例えば本発明による組成物並びにアニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、抗菌剤及び/又は殺虫物質、並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の化合物を含む、上述したものから選択される製品である。アニオン性界面活性剤の例は、エトキシ化脂肪族アルコール硫酸塩、スルホコハク酸塩、サルコシン酸塩、アルキル及びジアルキルリン酸塩、脂肪酸石けん、並びにこれらの混合物である。非イオン性界面活性剤は、例えば、所望によりポリエトキシ化されたグリセロールの脂肪酸エステル、所望によりポリエトキシ化されたソルビタンの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、スクロース、例えばステアリン酸スクロースの脂肪酸エステルなどの、ポリオールの脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエーテル、糖の脂肪族アルコールエーテル、特にアルキルポリグルコシド(APG)、ポリシロキサン変性ポリエーテル、及びこれらの混合物から選択してよい。抗菌剤は、四級アンモニウム、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド及びホルムアルデヒド)、エタノール、ハロゲン化誘導体、酸化剤、フェノール化合物、パラベン、イソチアゾロン(又はイソチアゾリノン)、安息香酸塩、イミダゾリン、ヒダントイン、グアニジン、乳酸などの有機酸、並びにこれらの混合物から選択してよい。殺虫物質は、有機リン剤(例えば、アセファート、クロルピリホス又はブロモホス)、ニコチノイド、ピレスロイド(例えば、ペルメトリン、ビフェントリン又はフェンバレラート)、モノテルペン(例えば、p-メンタン-3,8-ジオール)、有機ハロゲン化合物(例えば、リンダン、ジコホル又はトクサフェン)、N,N-ジエチル-3-メチルベンズアミド、ピレスラム誘導体(pyrethrum derivatives)(例えば、ピレトリンI、ピレトリンII又はジャスモリンI)、スルホン、スルホン酸、ホルムアミジン、ベンゾイル尿素、ロテノン、アルカロイド、クアシン、リアニドン(ryanidone)、アコニチン、ゲラニオール、及びこれらの混合物から選択してよい。
【0044】
この製品は、有利には水溶液又は水性ゲルの形態である。変形形態としては、水中油型若しくは油中水型エマルション、又は更にはペーストの形態であってよい。いずれの場合でも、この製品に含まれる水性相のpHは、有利には1~12、特に8~12、好ましくは9~11の範囲である。この製品は、使用目的に好適な任意のデバイス、特にポンプアクションボトル、チューブ、ジャー、エアロゾル装置又はふき取り用の布にパッケージしてもよい。
【0045】
それは、本発明による界面活性剤組成物を有利には0.1質量%~25質量%、例えば1質量%~10質量%含む。
【0046】
本発明による製品は、抗菌剤、殺虫物質及び上述の界面活性剤に加えて、目的の用途に応じて、植物保護又は化粧用の活性剤、酵素、キレート剤、増粘剤、脂肪性物質(油、ワックス及び/又はペースト状物質)、充填剤、保存剤、顔料及び染料、酸化防止剤、蛍光増白剤、並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1種の成分を更に含んでよい。
【実施例
【0047】
本発明は、純粋に例示目的のために与えられ、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定することを意図しない以下の実施例に照らして、より明確に理解されるであろう。
【0048】
(実施例1)
本発明による界面活性剤組成物(第1の変形形態)の合成
グリシンベタイン(1.0当量)、ブタノール(3.0当量)、及び70%メタンスルホン酸溶液(1.1当量)を、冷却管を取り付けた反応器に入れる。混合物を、大気圧にて140℃まで加熱する。3時間の反応後、ブタノールを満たしたディーンスターク装置を反応器に取り付ける。水-ブタノール共沸混合物の蒸留は開始時に十分顕著なので、混合物を大気圧で放置する。更に3時間反応させた後、水-ブタノール共沸混合物の蒸留速度が低下した場合、水の除去を促進して平衡がグリシンベタインブチルエステル方向に移動することを可能とするため、圧力を700mbarにまで低下させる。転化率は、1H NMR分析でモニタリングする。
【0049】
・NMR法は、基準として3.31ppmのメタノールシグナルを取得しつつ、CDCl3/CD3OD混合物(1/1、v/v)に溶解させたサンプルの1Hスペクトルを得ることからなる。その後、種々の化合物の特性シグナルを積分する。MsOGBOBu(4.35ppm、s、2H)、MsOGB(4.28ppm、s、2H)、ブタノール(3.53ppm、t、2H)、メタンスルホン酸塩(2.74ppm、s、3H)、ジブチルエーテル(3.40ppm、t、4H)、ここで、XOGBOBuは生成したグリシンベタインエステルスルホン酸塩を表し、XOGBは生成したグリシンベタインスルホン酸塩を表す。メタンスルホン酸塩の特性シグナルには、媒体中に存在するメタンスルホン酸だけではなく、グリシンベタイン及びブチルベタイナートメシラート(butyl betainate mesylate)(MsOGBOBu)の対イオンであるメタンスルホン酸イオンも考慮に入れる。
【0050】
反応の転化率は、以下の計算
【0051】
【数2】
【0052】
による積分値によって得られる。式中、
・ηは転化率であり、
・Iiは化合物iの特性シグナルの積分値である。
【0053】
エステル化反応の転化率が98%に到達したら、反応混合物を60℃に冷却させる。この冷却段階の間、ディーンスタークアセンブリを蒸留装置と交換し、反応混合物中のブタノールの一部及び微量の残留水を除去するために、反応器を減圧下に置く。混合物が60℃になったら、事前に溶融しておいたラウリルアミン(1.1当量)を加える。次に、反応混合物を減圧下で130℃にまで加熱する。圧力を10mbarまで徐々に低下させる。ブタノールを全て蒸留(約4時間)した後、反応混合物を回収し、界面活性剤組成物とする。
【0054】
この組成物の質量組成は以下の通りである。
【0055】
【表1】
【0056】
水酸化ナトリウムを使用してpHを10に調整した後、この界面活性剤組成物の表面張力をCMCで測定した。
【0057】
表面張力の測定は、水平に吊した白金リングを備えたKruss表面張力計を使用して、NF EN規格14370に従って実施した。各測定の前に、リングを入念にクリーニングし、火炎乾燥する。サンプルゴブレット(sample goblet)は、熱的に25℃に制御されたチャンバ内に置いた円錐形のPTFE容器である。各測定の前にサンプルをMilli-Q水で調製し、マグネットバーを使用して連続的に撹拌する。
【0058】
このように測定した表面張力は、22mN/mであった。
【0059】
(実施例2)
本発明による界面活性剤組成物(第2の変形形態)の合成
グリシンベタイン(1.0当量)及びブタノール(3.0当量)を、ブタノールで満たしたディーンスターク装置を取り付けた反応器に入れる。混合物を、700mbarの減圧下で140℃にまで加熱する。公称温度及び圧力値に達したら、70%メタンスルホン酸溶液を混合物に加える。転化率は、1H NMR分析でモニタリングする。エステル化反応の転化率が約80%に到達したら、反応混合物を室温及び大気圧に戻す。次に、固体のグリシンベタインメシラート(glycine betaine mesylate)をブタノール中に溶解しているブチルメシラートベタイナートから分離するため、混合物を濾過する。蒸留装置を取り付けた反応器内に、濾液を投入する。事前に溶融しておいたラウリルアミン(0.9~1.5当量)を加える。次に、反応混合物を減圧下で130℃にまで加熱する。圧力を10mbarまで徐々に低下させる。ブタノールを全て蒸留(約4時間)した後、反応混合物を回収し、本発明による界面活性剤組成物とする。
【0060】
(実施例3)
比較界面活性剤組成物の合成
わずか91%の転化率を得るようにエステル化条件を調整したことを除いて、実施例1に記載した方法と同様のやり方で界面活性剤組成物を製造した。
【0061】
これを行うため、グリシンベタイン(1.0当量)、ブタノール(3.0当量)、及び70%メタンスルホン酸溶液(1.1当量)を、ブタノールで満たしたディーンスターク装置を取り付けた反応器に入れる。混合物を、大気圧にて140℃まで加熱する。反応時間が延びるにも関わらず、転化率は91%を超えない。
【0062】
反応混合物を60℃にまで冷却させる。混合物が60℃になったら、事前に溶融しておいたラウリルアミン(1.1当量)を加える。次に、反応混合物を減圧下で130℃にまで加熱する。圧力を10mbarまで徐々に低下させる。ブタノールを全て蒸留(約4時間)した後、反応混合物を回収し、界面活性剤組成物とする。
【0063】
こうして得られた界面活性剤の質量組成は、次の通りである。
【0064】
【表2】
【0065】
したがって、この組成物は、本発明による組成物よりも少ないグリシンベタインラウリルアミド、及び多いラウリルアンモニウム塩を含む。この差はこの組成物の表面張力に直接的に影響を及ぼすものであり、本発明による界面活性剤組成物の表面張力よりも高い(CMCで25mN/m)ことが証明されている。
【0066】
(実施例4)
本発明による界面活性剤組成物の合成
グリシンベタイン(1.0当量)及びヘキサノール(3.0当量)を、ヘキサノールで満たしたディーンスターク装置を取り付けた反応器に入れる。70%メタンスルホン酸溶液(1.1当量)を入れた均圧滴下漏斗を反応器の蓋に取り付ける。混合物を撹拌し、650mbarの減圧下で160℃にまで加熱する。反応条件に達したら、70%メタンスルホン酸溶液を反応混合物に徐々に加える。添加が完了したら、水の除去を促進して平衡がグリシンベタインエステル方向に移動することを可能とするため、圧力を一様に350mbarまで低下させる。転化率は、1H NMR分析でモニタリングする。
【0067】
NMR法は、基準として3.31ppmのメタノールのシグナルを取得しつつ、CDCl3/CD3OD混合物(1/1、v/v)に溶解させたサンプルの1Hスペクトルを得ることからなる。その後、種々の化合物の特性シグナルを積分する。MsOGBOC6(4.35ppm、s、2H)、MsOGB(4.28ppm、s、2H)、ヘキサノール(3.53ppm、t、2H)、メタンスルホン酸塩(2.74ppm、s、3H)、ジヘキシルエーテル(3.40ppm、t、4H)、ここで、XOGBOC6は生成したグリシンベタインエステルスルホン酸塩を表し、XOGBは生成したグリシンベタインスルホン酸塩を表す。メタンスルホン酸塩の特性シグナルには、媒体中に存在するメタンスルホン酸だけではなく、グリシンベタイン及びヘキシルメシラートベタイナート(hexyl mesylate betainate)(MsOGBOC6)の対イオンであるメタンスルホン酸イオンも考慮に入れる。
【0068】
反応の転化率は、以下の計算
【0069】
【数3】
【0070】
による積分値によって得られる。式中、
・ηは転化率であり、
・Iiは化合物iの特性シグナルの積分値である。
【0071】
エステル化反応の転化率が98%に到達したら、反応混合物を60℃にまで冷却させる。この冷却段階の間、ディーンスターク装置を蒸留装置と交換し、反応混合物中のヘキサノールの一部及び微量の残留水を除去するために、反応器を減圧下に置く。混合物が60℃になったら、事前に溶融しておいたラウリルアミン(1.1当量)を加える。次に、反応混合物を減圧下で150℃にまで加熱する。圧力を10mbarまで徐々に低下させる。ヘキサノールを全て蒸留(約4時間)した後、反応混合物を回収し、界面活性剤組成物とする。
【0072】
この組成物の質量組成は以下の通りである。
【0073】
【表3】
【0074】
水酸化ナトリウムを用いてpHを10に調整した後、この界面活性剤組成物の表面張力をCMCで測定した。
【0075】
表面張力の測定は、水平に吊した白金リングを備えたKruss表面張力計を使用して、NF EN規格14370に従って実施した。各測定の前に、リングを入念にクリーニングし、火炎乾燥する。サンプルゴブレットは、熱的に25℃に制御されたチャンバ内に置いた円錐形のPTFE容器である。各測定の前にサンプルをMilli-Q水で調製し、マグネットバーを用いて連続的に撹拌する。
【0076】
このように測定した表面張力は、20mN/mであった。
【0077】
(実施例5)
本発明による界面活性剤組成物の合成
グリシンベタイン(1.0当量)及びオクタノール(3.0当量)を、オクタノールで満たしたディーンスターク装置を取り付けた反応器に入れる。70%メタンスルホン酸溶液(1.1当量)を入れた均圧滴下漏斗を反応器の蓋に取り付ける。混合物を撹拌し、650mbarの減圧下で160℃にまで加熱する。反応条件に達したら、70%メタンスルホン酸溶液を反応混合物に徐々に加える。添加が完了したら、水の除去を促進して平衡がグリシンベタインエステル方向に移動することを可能とするため、圧力を一様に100mbarまで低下させる。転化率は、1H NMR分析でモニタリングする。
【0078】
・NMR法は、基準として3.31ppmのメタノールのシグナルを取得しつつ、CDCl3/CD3OD混合物(1/1、v/v)に溶解させたサンプルの1H NMRスペクトルを得ることからなる。その後、種々の化合物の特性シグナルを積分する。MsOGBOC8(4.35ppm、s、2H)、MsOGB(4.28ppm、s、2H)、オクタノール(3.53ppm、t、2H)、メタンスルホン酸塩(2.74ppm、s、3H)、ジオクチルエーテル(3.40ppm、t、4H)、ここで、XOGBOC8は生成したグリシンベタインエステルスルホン酸塩を表し、XOGBは生成したグリシンベタインスルホン酸塩を表す。メタンスルホン酸塩の特性シグナルには、媒体中に存在するメタンスルホン酸だけではなく、グリシンベタイン及びオクチルメシラートベタイナート(octyl mesylate betainate)(MsOGBOC8)の対イオンであるメタンスルホン酸イオンも考慮に入れる。
【0079】
反応の転化率は、以下の計算
【0080】
【数4】
【0081】
による積分値によって得られる。式中、
・ηは転化率であり、
・Iiは化合物iの特性シグナルの積分値である。
【0082】
エステル化反応の転化率が99%に到達したら、反応混合物を60℃にまで冷却させる。この冷却段階の間、ディーンスターク装置を蒸留装置と交換し、反応混合物中のオクタノールの一部及び微量の残留水を除去するために、反応器を減圧下に置く。混合物が60℃になったら、事前に溶融しておいたラウリルアミン(1.1当量)を加える。次に、反応混合物を減圧下で150℃にまで加熱する。圧力を5mbarまで徐々に低下させる。オクタノールを全て蒸留(約4時間)した後、反応混合物を回収し、界面活性剤組成物とする。
【0083】
この組成物の質量組成は以下の通りである。
【0084】
【表4】
【0085】
水酸化ナトリウムを用いてpHを10に調整した後、この界面活性剤組成物の表面張力をCMCで測定した。
【0086】
表面張力の測定は、水平に吊した白金リングを備えたKruss表面張力計を使用して、NF EN規格14370に従って実施した。各測定の前に、リングを入念にクリーニングし、火炎乾燥する。サンプルゴブレットは、熱的に25℃に制御されたチャンバ内に置いた円錐形のPTFE容器である。各測定の前にサンプルをMilli-Q水で調製し、マグネットバーを使用して連続的に撹拌する。
【0087】
このように測定した表面張力は、20mN/mであった。
【0088】
(実施例6)
配合物
以下で「GBA C12」と表される本発明による界面活性剤組成物を使用して、数種類の製品を製造することができる。
家庭用洗剤
80%乳酸 2.00%
GBA C12 0.40%
ヒドロキシエチルセルロース 0.30%
キレート剤 0.20%
芳香剤 0.20%
染料 0.01%
脱イオン水 100.00%までの適量
【0089】
この製品は硬質表面のクリーニングに使用することができる。
車両のボディーワークシャンプー
GBA C12 3~5%
エトキシ化アルコール 0~5%
キレート剤* 5~10%
水酸化ナトリウム 0.5~2%
水 100.00%までの適量
*AkzoNobel社から入手したDissolvine(登録商標)GL又はBASF社から入手したTrilon(登録商標)M
【0090】
この製品は車両に塗布してよく、次いで5分間の放置時間の後、高圧で洗い落としてよい。
水処理
MEA(モノエタノールアミン 5~10%
GBA C12 20~25%
再付着防止ポリマー 10~25%
水 100%までの適量
殺虫剤
ピレスラム 2%
可溶化剤 3%
ソルビタンエステル 2%
GBA C12 1%
フェロモン 0.2%
消泡剤 0.1%
水 100%までの適量